資料 1

感染症の予防の総合的な推進を図るための
基本的な指針の改正について(案)

.改正の趣旨等
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下「感染症法」という。)の一部が改正され、病原体等の所持等を規制する制度が創設されること等から、感染症法第9条の規定に基づき国が定める基本指針の規定事項に、人権の尊重に関する事項、特定病原体等を適正に取り扱う体制の確保に関する事項等を追加するほか所要の整備を行うもの。


.今回の検討にあたってのポイント
 ・病原体等の所持等を規制する制度が新規に創設されるため、今回、特定病原体等を適正に取り扱う体制の確保について検討を行う。


,特定病原体等を適正に取り扱う体制の確保に関する事項(案)

十 特定病原体等を適正に取り扱う体制の確保に関する事項
 特定病原体等(一種病原体等、二種病原体等、三種病原体等及び四種病原体等を言う。以下同じ。)の適正な管理に関する基本的な考え方
 国は、特定病原体等の病原性及び国民の生命又は健康に対する影響に応じて、一種病原体等から四種病原体等まで適正に分類し、それぞれの病原体等について、所持又は輸入の禁止、許可及び届出、基準の遵守等の規制を適切に行うことにより、これら特定病原体等の所持者等に対し、適正な管理を行わせる必要がある。

 国における適切な特定病原体等の規制の実施
(1)一種病原体等については国内で所持することを禁止しており、さらに国内への輸入についても禁止していることから、国は、これを厳格に遵守させる必要がある。しかしながら、試験研究のため、一種病原体等のうち政令で定める一種病原体等(「特定一種病原体等」という。以下同じ。)については、国又は独立行政法人等の施設であって厚生労働大臣が指定した施設において特別に所持できることとしており、国は、当該施設における特定一種病原体等の管理等が適切に実施されていることを適時把握しておくことが重要である。
(2)二種病原体等については、その病原体等の所持を行う施設は事前に厚生労働大臣から許可を得る必要があるが、国は、その許可にあたっては、当該所持の目的を踏まえ、欠格条項及び許可基準に基づき、適切かつ公正な審査を行うことが重要である。なお、この場合においては、必要に応じて専門家の意見を聞くこととする。また、輸入の許可についても、国は、輸入の許可の基準に適合していることを厳格に確認することが重要である。
(3)三種病原体等については、その病原体等を所持する施設は所持後7日以内に厚生労働大臣へ届出することとなっているが、国は、その届出された情報を適切に整理・把握することが重要である。
(4)これら病原体等については、その病原体が安全かつ適正に取り扱われる(バイオセーフティ)体制を構築すると同時に、盗取等の事故が起きない体制(バイオセキュリティ)を構築する必要がある。従って、国では、このような要件を加味し、当該病原体等毎に所持等を行う施設の基準と、その病原体等の保管等を行う際の基準を作成し、各施設においてこれらが遵守されていることの確認に努める必要がある。なお、施設がこれら基準を遵守していないと認められる場合には、必要な改善命令等を行うことにより、特定病原体等の所持施設が同基準を遵守するよう監督する必要がある。
(5)同じ病原体の中でも、人を発病させるおそれがほとんどないものとして厚生労働大臣が指定したものについては、当該規制の対象外となるが、国は、その審査について厳格に行う必要がある。この場合においては、必要に応じて専門家の意見を聞くこととする。
(6)国は、(1)〜(5)の事項を的確に行うための人員等の体制確保に努める必要がある。

 特定病原体等に係る情報の管理
(1)患者から分離・培養・同定された病原体等に関する詳細な情報は、患者の医療のみならず、例えば当該病原体等の遺伝子情報等の解析することによって発生原因の特定・感染の広がり等を推測することが可能となるなど、感染予防対策上、きわめて重要な役割を担っている。従って、国は、このような情報について、広く収集するような体制について検討を行う必要がある。
(2)国は、指定、許可及び届出により、当該病原体を所持している施設に関する情報や当該施設における病原体等の所持に関する情報、その他特定病原体等に関連する情報を把握した場合には、当該情報を適切に管理するとともに、その情報の重要性に鑑み第三者には開示しないこととする。

 特定病原体等の取り扱い等に関する周知の徹底・人材の確保
(1)特定病原体等を適切に取り扱うための基準について、広く関係者に周知徹底することは、特定病原体等による国民の生命又は健康に対する影響を未然に防ぐためにも重要である。このようなことから、国は、特定病原体等を所持している医療機関、大学等の研究施設、地方衛生研究所等の検査機関等に対して、特定病原体等の適切な取り扱い等に関する情報を適時提供することが重要である。
(2)国は、各研究機関を所管する関係行政機関と連携し、特定病原体等の適切な取り扱い等に関する周知を行うことが重要である。
(3)特定病原体等による国民の生命又は健康に対する影響を未然に防ぐためには、その取り扱う体制の構築のほか、実際に使用する者の知識の確保も必要である。このようなことから、関係者等は、実際に病原体等を使用する者に対し、バイオセーフティの考え方を周知するとともに、これらの者が実際に扱う特定病原体等に関する知識・技術の向上のための研修等を行う必要がある。

 関係各機関との連携
(1)国は、盗取、行方不明等の事故時や、火災等の災害時に、特定病原体等による感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため、すみやかに、関係行政機関に対し病原体等の所持等に関する情報を連絡する必要がある。
(2)事故等が発生した場合には、国は、関係行政機関と連携を取りつつ、必要に応じて、関係者からの報告や当該施設への立ち入り等により、迅速かつ的確に対応することが重要である。
(3)特定病原体等が不正に輸入されることを防止するため、国は、関係行政機関と十分な連携を図ることが重要である。
(4)国は、都道府県に対し、特定病原体等による感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するために必要な協力を要請し、適切な連携を図る必要がある。

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