06/05/23 労働政策審議会労働条件分科会 第57回議事録             第57回労働政策審議会労働条件分科会          日時 平成18年5月23日(火)          10:00〜          場所 厚生労働省17階共用第21会議室 ○西村分科会長 ただいまから第57回労働政策審議会労働条件分科会を開催いたしま す。本日は、久野委員、渡辺章委員、石塚委員、八野委員、奥谷委員が欠席です。渡邊 佳英委員と島田委員は少し遅れて来られるとのことです。  それでは、本日の議題に入ります。4月11日以降の分科会では「労働契約法制及び労 働時間法制に係る検討の視点」を事務局に用意してもらい、これを素材として議論をし ていただいたところです。前回は、そのうちの労働契約法制の最後まで議論をいただき ました。まず最初に、3月29日の分科会で労働時間法制について議論した際に、委員か ら資料の追加として指摘された事項について、事務局で資料の準備ができたようですの で、その説明をお願いします。また、検討の視点の労働時間の部分は、最初の説明から かなりの時間が経っていますので、記憶を新たにする意味でそのポイントについて説明 をお願いします。 ○紀陸委員 ちょっといいですか。スケジュール的にはいまお話のように、これから労 働時間の問題に入りますが、前回の契約法制までのところで、使用者側で申し述べてい ないいくつかの重要な点がありますので、少し補足させていただきます。視点の中の3 〜5頁の重要な労働条件変更に関するルール、採用内定とか転籍、転勤のところですが、 私どもとしては紛争解決のためのルールを明確化する際に、本当に確立した最高裁判例 のルール化については反対しません。しかし、そうでない部分については基本的に慎重 であるべきだということです。それから、解雇ルールの明確化。これは、整理解雇の特 に4要素が最高裁で確立しているとはいえないと考えていますので、整理解雇の4要素 に関するルール化については反対であるということです。特に解雇の金銭解決について は、早期実現をお願いしたいということです。最後に、有期労働契約をめぐるルール化。 これも、仮に厳格にルールを作って運用すると、労使双方にプラスではない面や意図し たものとは違う結果が出てくる可能性が大いにあるという点だけは留意しておくべきで はないかと思いまして、その点だけ付け加えさせていただきたいと思います。以上です。 ○西村分科会長 それでは、監督課長、お願いします。 ○大西監督課長 お手元の資料No.1の参考資料について説明します。管理監督者が労災 補償を受けたケースについての話がありましたが、大分前の分科会のときにはデータと しては集計項目が入っていないということで、説明しました。今回、東京労働局の中で 分析していただいた資料がありますので、それを紹介します。  1頁は、48の事業場の業種別の割合が書いてあります。規模別は、2枚目に書いてあ ります。御質問の管理監督の立場にあるものについては、そこに書いてありますように 48人の被災者のうち11人であったということです。そのほかの一般労働者の従事業務 別の内訳については、2頁の下の表にあるとおりです。  続いて、資料No.1の検討の視点の6頁です。これは、4月11日に説明した中身ですが、 少し時間が経っていますのでごく簡単にポイントだけ説明させていただきたいと思いま す。  まず、「労働者の健康確保のための休日」。一定時間数を超えて時間外労働させた場合 に、労働者の疲労回復を図る観点から、時間外労働をした時間数に応じて算出される日 数について、健康確保のための休日を付与するという中身です。この一定時間数という のは、要するに疲労するということですので、例えば、1か月45時間の残業に近い数字 を一定時間数という具合に考えて、また疲労回復を図るということですので、残業をし ていただいたところから非常に接近したその月や翌月、そのような範囲で休んでいただ く。健康確保のための休日は、一応無給ということで法定休日に近い性格のものではな いかという具合に考えている、という検討の視点の内容です。  2つ目は、時間外労働の抑制策としての割増賃金の引上げです。割増率をどうするか については、従来から、かえって残業が増えるのではないか、あるいはコストの増加に 耐えられないなど、いろいろ議論があったかと思います。ただ、現時点で非常に時間外 労働が長いということについて、どのように対応していくのか、あるいは少子化などの 枠組みの中でも家族の団らんなども含めて、非常に大きな議論になっているところです。 そういった意味で、例えば一定時間数をどのようにもっていくのか。これは現在の労働 基準法との関係でいいますと、例えば1カ月45時間が上限ですので、その中で週に1日 ないし2日は定時に帰っていただくというようなイメージの数字が一つ考えられるので はないか。そこまできたところで、割増率を引き上げるということで、この長時間労働 を抑制するというメッセージを発していくというような考え方としてはいかがでしょう かという形で提言させていただきました。  続いて、年次有給休暇制度です。使用者による時季指定については、年休の取得率が 50%を割り込んで低位で推移しているため、その年休をどのように使えばいいのかとい うことです。当然年休というのは、労働者が手を挙げたらそこで時季指定、という考え 方が従来からあるわけですが、果たしてそれだけでいいのかということです。アンケー ト調査などを見ますと、職場の仕事の兼合いや周りの人に気を使ってなかなか手を挙げ にくいというような結果もありましたので、そうでしたら使用者のほうから、どういう 日を休みにするのかということを予め聴いていただいて調整するという意味で、使用者 の方から労働者に対して、予め時季を聴いたうえで休暇を付与するということを考えら れないかという提案です。年次有給休暇のうち一定日数と書いてありますのは、冒頭申 し上げた、労働者が本来決めていくという時季指定の考え方との調整をどう図るかとい うことです。ちなみに、現在労働基準法にあるような計画年休では、5日間は労働者が 行って、そのほかの部分について計画年休制度という整理になっていることが参考にな るのではないかとも考えられます。  時間単位の年次有給休暇についても、現在の労働基準法の枠組みの中では、このよう な時間単位での分割は基本的に認められないとなっています。これは、やはり休暇はま とまって取るのが原則であるという考え方に立っているわけです。ただ、実際問題とし て、子供が急に病気になったとか、何かの都合で保育園に迎えに行かなければいけない ときに、年次有給休暇を活用できないかどうかということであろうかと思います。そう いった観点でここに書いているのは、労使協定でどういうことがいいのかを議論してい ただく必要があるのではないか、あるいはこれも申し上げたように、年次有給休暇の本 来のまとまった休みを取るというところからの調整ですので、年次有給休暇制度本来の 目的に沿った利用を阻害しない限度でということです。これははっきり書いていません が、例えば一定日数の上限を決めることも当然あり得るのではないかと考えているわけ です。そういった範囲で、時間単位の年次有給休暇を検討してもいいのではないかとい うことです。  退職時の年休手当の清算については、これも実態として退職するときに年休が余って いると、ただ退職までの残日数との関係でなかなか使い切らないというときに、どうす るかという議論です。これは、あくまでも退職時との関係ですので、年休の取得の抑制 に繋がることのないようなクリアが必要なのではないかと併せて考えているところです。  続いて、自律的労働時間制度の創設。これは、新しい枠組みとしていろいろ工場労働 の時代と変わってきて、特にホワイトカラーの方で組織がフラット化してきて、管理監 督はしていないが非常に権限がある方も増えてきています。そのような方々を中心に、 労働者側からの要望としても時間に捉われず働きたいという方もいらっしゃいます。そ のような働き方、仕事、業務に就く人と健康の確保をどのようにマッチさせていくかだ と思います。  その中で、ポイントとしては使用者から具体的な労働時間の配分が指示されないこと というのは、このような自律的な労働時間制度としての前提になるかと思います。あと は、業務量適正化の観点から、業務量の調節という機能が加えられないかということで す。これについては、時間の配分は指示しないが業務量がたくさんあり過ぎてあまり自 由に配分しろといわれても、結局長くなってしまうというようなことがないような業務 の調節について、労働者が個人でそれは多過ぎるといって断わるパターンもあれば、そ うではなくて労使で業務量を計画的に調整する仕組みというものを考えられないかとい うことです。  続いて、週休2日相当の休日、一定日数以上の連続する特別休暇など相当程度の休日 が確保されていることが確実に見込まれること。これについては、後ほど効果のところ で説明しますが、通常の労働日の労働時間管理を行わない制度として考えていますので、 そうした場合に、どのような形で総枠を押さえていくかを考えると、出勤した日か出勤 していない日かで押さえていくということです。逆にいえば、休日は本当に確実に休ん でいただく、その代わり出勤した日はその労働者の自由な裁量で仕事をしていただくと いう枠組みとして考えられないかということです。また、健康確保のための健康のチェ ックですが、これは当然労働者の方が自由な裁量で働いていただくとなると、労働時間 の枠組みによる健康の確保が外れてくるという仕組みとして考えていますので、それに 代わるものとしてここに書いてあるように労働者が申し出た場合、あるいは定期的な面 接指導で疲れているか疲れていないかをチェックしながら運用していくということを考 えているわけです。  3番目の*の年間に支払われることが確実に見込まれる賃金の額については、やはり 自分の裁量で働く働き方をする労働者にふさわしい年収があるのではないか。労働時間 の管理という枠組みを外すに当たって、やはりそれを外しても大丈夫というような考え 方に立った年収という考え方も一つあるのではないかと考えられます。  その次の○で、対象労働者と個別の労働契約で書面により合意していることが必要で はないか。これについては、やはり労働者の意思、こういう働き方をしたいという意思 を確認するという意味です。  次の○で、ネガティブリストとして、物の製造の業務に従事する者を指定して、この 制度の対象にならないことを明確にすること。これについては、要するに長いこと働け ば当然賃金が上がるという非常に相関関係の強い、時間が長ければ必ず上がるというも のについては、本来自律的労働時間制度ということで考えているものと相容れない部分 があるのではないかということで、そのようなものについて外していくのも一つの考え 方として成り立つのではないかと考えます。  導入要件等については、労使の実質的な協議に基づく合意によるということです。例 えば、類似の制度として、いまある企画業務型裁量労働制を考えますと、そこでは労使 委員会の制度がありますので、そういったことも参考にしながら議論していただければ ありがたいと考えています。  対象労働者の範囲を労使合意で具体的に明確にする。これは、それぞれの事業場にお いて、どういう方が対象になるのかというのは、やはりその実態を知っている労使で合 意をしていただくことが重要になってくるのではないか、実務的にも、そのようなこと が必要ではないかという提案です。  効果については、労働基準法第35条及び第39条は適用し、その他の労働時間等に関 する規定は適用しないということです。これについては、労働基準法上の第41条に管理 監督者がありますが、それに少し似たような書き方になっています。41条の近辺にこの 自律的労働時間制度の対象者というような形で書いていくことを想定しているわけでは なくて、むしろ現在の裁量労働制の枠組みに近いようなところで整理をしていくような 論点があるのではないかということをこの検討の視点では提案しています。  管理監督者のところですが、その範囲については、現在伝統的な管理監督者という労 働条件の決定その他の労務管理について事業主と一体的な立場にある方のほか、通達で は銀行業務等でスタッフ職のような方も管理監督者になる場合があるという解釈でやっ ているわけです。その外縁の部分が明らかでないのかどうかという点について、議論い ただければありがたいと思います。そういう意味で、明確にしていくということではな いかと考えています。もちろん、本来管理監督者でない方が管理監督者として扱われて いるのは、これはここの議論とは別に、やはりそういうことはあってはならない話です ので、当然労働基準監督官が監督の際に遭遇した場合には、当然指導して直していただ くということです。その部分は、ここの議論とは少し別の話ではないのかなと考えてい ます。  現行の裁量労働制の見直しについては、アンケート調査によると苦情処理の窓口が十 分ではないため、苦情処理制度をどのように改善するかというような議論があるかと思 います。今回新しい自律的労働時間制度との関係で、専門業務型裁量労働制、あるいは 企画業務型裁量労働制をどのように位置付けていくのかという議論もあるかと思いまし て、このように整理しているところです。  以上駆け足で恐縮ですが、そのような観点で従来の説明を再確認という意味で補足さ せていただきました。 ○西村分科会長 それでは、いまポイントを説明していただきました検討の視点のうち、 労働時間法制の部分について、御議論をいただきたいと思います。本日、その検討の視 点の最後まで、一通り議論ができますように御協力をお願いします。それでは、前のほ うの6頁の「時間外労働の削減等」について、御意見があれば、お伺いしたいと思いま す。 ○小山委員 具体的な御議論の前に提供していただいた資料について、私の方から以前 の労働条件分科会で管理監督者の労災認定の状況についての資料の請求をしたものです から、少し質問と意見を申し上げたいと思います。  一つは、この対象となったのが東京労働局の昨年度の事例ということのようですが、 最初にありますように、労働時間の不適正な管理、長時間労働や不適切な健康管理を原 因として過労死・過労自殺等を発生させ、労働基準監督署が労災認定を行った48事業場 ということでありますが、この48というのは、どういう区分けをされたデータなのか、 要するに脳血管及び心臓疾患などによる死亡の労災認定を取り上げたものなのか、もう 少し幅広い対象なのかをお聞きしたいと思います。 ○田代主任監察官 お答えします。東京労働局のほうで、詳細な区分として、脳心臓疾 患が何件とか、精神障害、あるいは過労自殺が何件とか、そういうような疾病原因ごと には、はっきりしておりません。ただ、いずれにせよここに書いてありますとおり、い わゆる過労死、あるいは過労自殺、過労による重篤な健康障害を負った事業場であって、 労災の認定があり、指導の対象としたものが合計の48事業場であると、こういう具合に なっております。 ○小山委員 いま厚生労働省の資料で、管理監督者の労災の被災状況について、特にこ こでいう過労死や過労自殺のデータというのは、前回の説明だとそういう調査の仕方を していないというお話だったのですが、脳血管、心臓疾患等による労災認定のデータの 中にそういう職種業務内容の分類というのは、ないのでしょうか。何かで、それに近い ようなものを見た記憶があるのですが。 ○大西監督課長 職種別という観点で発表している資料がありまして、そういうところ に管理的・事務的・販売的というようなのが載っているのはございましたが、そういう 管理監督者という視点から正確に整理した資料はないということでございます。 ○小山委員 わかりました。そういたしますと、今回東京労働局で調査していただいて 大変ありがたいのですが、決して天文学的な数字の件数があるわけではないので、全国 のデータについて、是非お調べいただきたいと思います。というのは、今回議論をして いる労働時間法制の見直しの中で、特に管理監督者のいまの働き方が一体どうなってい るのか、そこでどういう現実があるのかということを、この労働条件分科会として、し っかり把握した上で議論をしていかないと、いま既に過労死・過労自殺の問題等が社会 的に大きく問題になっている中で、その実態把握も正確でないまま議論するわけにはい かないということで、今回東京労働局で御苦労いただいたのかと思いますが、是非全国 レベルでの調査・把握をお願いしたいと思います。 ○大西監督課長 可能かどうか、よく検討してやらせていただきたいと思います。ただ、 私どもといたしまして一応前回の御指摘を受けて、時間的な制約の中で、やらせていた だいておりますので、こういう資料も参考にしながら、是非御議論をしていただきたい と思います。 ○西村分科会長 この検討の視点の6頁の「時間外労働の削減」のところから、御意見 をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。 ○田島委員 時間外労働については、いま小山委員が発言したように、過労死とか、過 労自殺、あるいは以前のデータにあったように労働時間の二極化、とりわけ60時間以上 も働く人たちが増えている。短時間労働は短時間労働で増えているわけですが、二極化 ということがあります。  とりわけ30代の人たちが長時間労働化しているという問題がありますし、この冒頭に 書かれているように、「長期間にわたる恒常的な時間外労働の削減」というのは、やはり 喫緊の課題というか、これから本当に政策的に進めなくてはいけないと思いますが、こ ういう観点の下で時間外労働の抑制策として割増賃金について検討しなければなりませ ん。日本は欧米に比べて割増が25%であまりにも安く、率が低いですね。これは事実で す。以前に「仕事と生活の調和に関する検討会」に出された資料によりますと、労働者 を一人雇い入れるのと、割増率の均衡が52%だというのが、たしか出ていたと思います。 その52%の均衡の水準から見ると、割増が25%というのは、結果的に残業をやらせれば やらせるほど、使用者側が超過利潤を得るような仕組みになっているから、やはり問題 であると思いますし、そういう意味では、一定時間を超えたところの割増率を引き上げ るのではなくて、欧米並みに、あるいはアジア諸国でもたぶん50%水準が一般的だろう と思いますが、そういう形で、一定時間を上回ったところの割増率を引き上げますよと いうことではなくて、時間外については25%があまりにも安過ぎるという視点になぜ立 たないのか、理解できません。  もう一点はいま通常日の時間外が25%で、法定休日が35%というのがありますが、こ れについても、両方とも、私は低いと思いますし、時間外を削減ということであるなら、 そこを引き上げる施策を提案されて当たり前だと思います。そうなっていないというこ とに対して、なぜなのか、というのを事務方からお聞かせいただければと思います。 ○西村分科会長 事務方のほうにお聞きになりますか。 ○田島委員 やはり欧米と比較しても、あまりにも低いわけです。そういう中で、こう いう冒頭に「恒常的な時間外労働の削減」というところを打ち出している限り、一定時 間を超えたところの割増率ではなくて、やはり割増率そのものが低過ぎるという観点に なぜ立たないのかということをお聞きしたいのです。 ○大西監督課長 その点につきましては、私が先ほど冒頭御説明しましたが、割増率を どうするかというのは従来から、欧米との比較の議論もありますし、残業をかえって増 やすのではないかという議論もあるし、コストに響くのではないかという議論もあると いうことで、なかなか一致した点が見出せないというようなことがあったのではないか と思います。そうした中で、私どもとして、今回はまず基本的な考え方で、長時間労働 を抑えていくというようなことを、まず第一の課題に検討を進めていくと、当然長くな ると負荷が多くなるというような仕組みを検討すると、こういうようなものが一つ考え られるのではないか。一定時間数で、長い時間に対する、これをやらない、というよう なものをコストの面からも手当てをしていくということで、一定時間数で段階をつける というようなことが今回のここの検討の視点のミソではないのかと考えています。  いま、委員御指摘のように、根っこから上げたほうがいいというようなのは、もちろ ん意見としてそういうのはあると思いますし、根っこから上げて、さらに段階をつけて 上げるというような案でも、それは別に考え方の方向性としては相反しているわけでは ないと思います。ですから、根っこをどうするのかという議論は、もちろん使用者側の 意見も聞いて、それがまとまるかどうかというお話なので、そういう御意見を是非使用 者側から頂戴したいと思います。私どものここの提案のミソというのは、途中で負荷を 加速度的にかけるということによって、時間数を一定範囲内に抑えていこうというよう な効果が期待できないかどうかというような観点から、こういう提案をさせていただい たわけでございます。 ○西村分科会長 いま説明がありましたが、使用者側の方、いかがでしょうか。最初の 1時間から、現在の割増率を改めて、5割という御意見だったのですが、この点につい て、いかがでしょうか。 ○紀陸委員 基本的に長時間労働の抑制という大きな課題を我々は持っていますが、い まお話のように、時間外労働のお金を引き上げることにより抑制できるかというと、少 し違うのではないかという感じがするのです。いろいろな事業場を見ていても、結局あ る特定の部門の、特定の人というか、かかる部分はある程度限られているわけですね。 したがって、いちばん大事なのは、どうやってそれぞれの事業場の中で、働き方を見直 しうるかというところが基本的にないと、一律的に割賃を上げることによって、時間外 労働が抑制できるかというと、そういうことではないだろうと思います。  おそらくその点は現場の労働者の方でわかっているのではないかと思うのです。私ど もとして、根っこからもそうですし、一定時間を超えてというところは同じなのですが、 割賃の引上げによって長時間労働の抑制という考え方は、とてもではないが納得できな いし、使側の納得だけではなくて、労働側の方々も決して全部が全部賛成するものでは ないのではないかと思います。ここのところは、職場の中で、本当に労使が、いまはや りの「仕事と生活の調和」ではないですが、時間をかけて、要員の組換えをどうするか という問題とか様々なことを考えないと、この後にある「自律的労働時間制度の創設」 ともからむ問題ですから、仕事のやり方、やらせ方を変えていく、そういうことによっ て対処していくべき問題ではないかと考えます。  もちろん、ここで代償的な休日ですが、こういうようなことについては私どもも健康 確保というのはいちばん大事な点でありますので、そこを担保するために労使の話合い によって、代償的な休日を与えるということについては、決して反対するものではあり ませんが、少なくとも、お金で時間外労働を抑制するという点は、全く正確的な効果が 期待できないという意味で、この点は明確に反対したいと思います。  その下の「年休」のところについても申し上げたいと思います。使用者の時季指定の 話が出ていますが、ここは従来と違った仕組みになるので、ちょっと慎重に検討したい と思っております。少なくとも、使用者による時季指定と抱き合わせて、一定の計画年 休、年休日数を法律で強制的に消化させることの義務づけ、これはちょっと堪忍をして いただきたいということであります。あくまで、そういう制度を就業規則で選択できる、 というような仕組みであるならばというようなことであります。  時間単位の年休取得、これについてもやり方が大きく変わってきますので、手間の問 題とも考え合わせて、慎重に検討したいという考え方でおります。退職時の年休手当の 清算、これも選択肢の一つとして設けるというのであれば、そこの点では反対をしない というような基本的な考えでいます。7頁の問題はまた追ってというふうに思っていま す。 ○平山委員 いまの件について、少し補足なのですが、長時間労働、特に恒常的な時間 外労働の削減をするということを、労使合わせて努力しなければいけない。これは共通 だと思います。ここが違っているとは思いません。ただ、割増賃金のところ一点でもっ て、いろいろなことが調和できるかどうかという点は、よほど慎重に考えないといけな いと思います。おそらく、恒常的な時間外労働の削減というのは、これは健康管理の上 からアプローチすることもあるし、いろいろな手立てを講じるというほかの側面もある でしょう。年休取得もあるでしょう。そういうことの総合的な結果として出る、こうい うことだと思います。  割増賃金でほとんどのことが片付くということで、ここにあまり焦点を当て過ぎるの はどうかと思います。ある意味で言えば、労務費、「またコスト論だ」と言われるのかも しれないけれど、これは現実の問題ですから、たぶん日本の労務コストは、世界一だと は言いませんが、我々の業界の中でいえば世界一だろうと思います。相当高い水準にあ ることは事実です。トップレベルですね。  そういう中で、多くの企業が国際マーケットで仕事をしている。仕事をしているとい うのは、利潤追求という面で捉えられるかもしれないけれど、雇用を維持できる力、働 く場所を持てる力という競争条件を持っているということですから、たぶん競争条件と いうのは、いくつかあるのですが、やはりコスト競争力が非常に大きなウエイトです。 それから、いろいろな先端的なものを世界に先駆けて出せる、こういう競争力もありま す。いろいろな観点があるでしょうが、コスト競争力というのは抜けない観点です。結 果的にこの一点を過大に求めるということになれば、コスト競争力は間違いなく落ちて いく方向にいくと思います。その辺のバランスはよく考えるということだと思います。 割増賃金一点で解決しようということではないのではないかと思います。それは是非補 足させていただきたい。 ○田島委員 時間外労働削減を割増賃金の率だけで改善できるとは、私は思わないし、 いま使用者側から出されたような働き方の問題とか、仕事の負荷の問題とか、様々な課 題はあると思います。ただ、根本的には、いま恒常的に要員不足という職場が多くて、 仕事量の負荷が高まっています。だからこそ、二極化現象というのが出ていると思うの です。あるいは恒常的な残業とか、過労死、過労自殺という問題もです。  そうすると、それはなぜ恒常的になるのかといった場合には、やはり要員を増やすよ りは一人一人の負荷を多くしたほうがコスト競争力が高くなるわけです。ということと、 コスト競争力がいま問題になりましたが、先ほど私が発言したように、欧米の場合には 最低50%の割増を払っているわけです。日本は逆に25%しか払わないというのは、コス ト競争力で逆に高過ぎるのではないですかと。だからこそ残業が恒常的に増えてしまう という問題が出るのではないのかと。したがって、52%という均衡割増率が示されてい ましたが、やはりそこにきちっと近付けるような形にしていかないと、いまの日本のこ ういう長時間残業は改善されない。  したがって、単に割増を増やして、所得を増やしたいという意味で言っているのでは なくて、やはり残業をさせたほうが、経営者にとって、よりコスト競争力が高いからだ という形でなってしまったら、私は逆の側面があるだろうと。事務方にお聞きしたいの ですが、あるいは公益の先生でもいいのですが、こうやって、割増を一定時間数を上回 ったら、率を引き上げるという制度は、ほかの国にはあるのか。一定時間数を入れるの がミソだと言ったけれど、私はミソではなくてミスではないかとちょっと思ったのです が、そういう制度はそのほかにあるのですか。 ○荒木委員 事実についてだけ、私の知っている限りお答えします。まず英米独仏の各 国において、割増賃金を5割にしているというお話もございましたが、5割に設定して いる国はアメリカだけです。ドイツとイギリスは割増賃金の規制は法律では定めており ません。5割くらい払っているという慣行がございますが、これは労働協約が設定して いるので、法律で規制しているのではございません。フランスは当初の割増賃金が25% で、御質問があった、一定時間を超えた場合には、25%を50%に引き上げるという、段 階的な割増賃金規制を行っているのがフランスということでございます。 ○小山委員 いまのに関連するお話なのですが、今回のこの事務方のお書きになった文 章の組立て方自体もそうなのですが、長時間労働を見直さなければいけないと、それは そのとおりなのですが、我々が労働基準法の中で、労働時間法制を考えるときに、そこ が原点なのかどうなのかということなのです。長時間労働だから、労働基準法の労働時 間法制を見直そうというのは、これは本末転倒も甚だしいのではないかと思います。  本来、我々労働者の生活と仕事というバランスをどう考えていくのか。これから日本 の経済社会の中で、勤労者の働き方をどう考えていくのか。そのことが国際競争にも、 平山委員がおっしゃるとおり、能力開発であったり、様々な能力向上につながるわけで す。ですから、そういう観点から議論をしていかないと、長時間労働をなくすために時 間法制をどうしましょうかというのではなくて、本来あるべき労働時間のあり方、仕事 のあり方、家庭のあり方、生活のあり方の中から、きちっと議論をしていかないと、時 間外割増は長時間労働をなくすためではなくて、本来8時間労働のところを上回ること に対するペナルティーとしてある制度なのですから、そのことから議論をしていかない と、議論の行末を間違えてしまうのではないかという心配があります。そのことについ て事務局に、どういうお考えで、こういうペーパーの出し方をされているのかというこ とをお聞きしたいと思います。 ○大西監督課長 委員のまさにおっしゃるとおりでございまして、結局どういう生活と どういう仕事、どういう働き方がいいのかというのは、非常に重要な問題として考えて いかなければならないということについては、もちろん我々も同じような考え方でござ います。そうした中で、では現実に目の前に起こっているようなことについて、有効に 対処していくというようなことは重要だと思います。そういった観点で、基本的な考え 方は過労死の防止ということと、少子化対策と、二つ並べて書いてあるわけですが、当 然少子化対策は国全体としても大きな問題でありますし、そういうご家庭でどういう生 活をしていくかというようなことだろうと思います。過労死の防止は、小山委員から資 料の御請求もございましたが、当然目の前にある問題点をどのように解決していくかと いうような点でございます。そういった意味で、両方の視点を含めて、御議論をしてい ただきたいと思います。  もちろん、少子化対策の観点でどういう働き方がいいのかというのは、この場で御議 論いただきたいと思いますし、私が説明の中でもお話をしましたが、毎日残業するので はなくて、週に1日とか2日は家に帰って家庭の団らんをするとか、どういう働き方が いいのか、ではそれに合わせた制度としてどういう仕組みがいいのかというような御議 論も含めて、そういう点からの御議論というのは、非常に重要だと思います。では、そ れに合わせた制度として、現行の仕組みの中で、どういうように変えていくのがいいの か、そういう議論になっていくのではないでしょうか。 ○平山委員 時間外労働をペナルティーだという視点から見るという、この視点も確か にあると思います。ただし、これは時間外労働をしてもらうことに対するペイだと思い ます。そのペイがいくらか、ペイをどう決めるのだという視点もあると思います。いま の議論のところは労働基準法で基準を定めようということですから、どういうペイを払 うのかということと、その基準として、ペナルティーだと、ここを混同しないことがす ごく大事だと思います。多分、いま割増率25%といいながら、日本中の労使関係の中で、 すべてが25%かというと、それはないと思います。それは労働需給だとか、人をどれだ け求めるか、産業間でも差がありますし、それからいろいろな競争条件のこともありま す。基準どおりという所もあるでしょうし、もっとペイを多くしてでも働いてもらいた いという所は、これを超えて、それぞれの所でやっているわけです。  ペイということについて言えば、たぶんこれはある種のバランスの中でそれぞれの労 使が判断をしている。本当に苦しい所は、基準で高められたら本当に働く場所を失って しまうということだってあり得るわけです。やはり基準を議論しているということと、 それぞれの所の事情の中でどうペイを払うかというのは、別の視点で考えていくのだろ うと。そういう意味では、労働基準法の改正として、あまねくすべてに適用されるとい う基準については、非常に慎重に考えるということではないかと思います。 ○小山委員 時間外労働について、コストということで、日本の労務費が高いと言われ ますが、日本の労働時間の長さというのは国際的に見ても非常に長いわけです。長い時 間働いて、それなりの賃金を払っているという実態だろうというように思います。です から、時間給で比較したら、日本は決して高くないということになるのではないでしょ うか。そこで、使用者側の皆さんは、いつもグローバル化だとか、そういうことをおっ しゃるのですが、こういうときに限って、世界でいちばん低い時間外割増率の制度を持 った日本については、そういうところについてはほおかぶりしながら、都合のいいとこ ろだけは、グローバル化、グローバル・スタンダードとおっしゃる。これは、やはりも う少し真摯に考えていただかないと。何で日本だけ、こんなに割増率が低いのか。これ は実態として、日本が世界でいちばん低い労働時間割増率ではないかというふうに言っ たら間違いなのかどうなのか、ちょっと公益の先生でもいいですし、事務局のほうでも いいですがお答えください。  いまの日本の25%という実態がきわめて低いという認識の上に立って、議論をしてい かないと適切な割増率を考えることはできません。  ですから、いま我々が見直さなければいけないのは、本来8時間労働なのだと。やは り8時間は睡眠しなければいけないのだと。8時間は自分の生活のために使わなければ いけないのだと。この当たり前の労働時間のあり方について、8時間労働制というのは、 決して工場労働を念頭においた制度ではないです。やはり、人間のあるべき姿としての 8時間労働制だと思います。人間生活の上で必要な時間としての8時間労働制だと思い ます。その上に立って、是非議論をしていっていただきたいと思います。 ○西村分科会長 公益委員の方、この2つ目の○の時間外労働の抑制策としての割増賃 金の引上げ、という提案につきまして、何か御意見ございますか。 ○荒木委員 先ほどのグローバル・スタンダードと比べてどう見るかというテーマです が、諸外国で日本より割増率が高いと言われるのは、法律によってそうなっているとは 必ずしも言えないというところが客観的なところだと思います。ただ、ヨーロッパの場 合は産業別の協約がありますので、組合のほうでは、例えばドイツは割増賃金の規制は ありません。ありませんが、協約でもって、非常に高い。例えば5割とか、場合によっ ては、休日労働の場合は100%とか、そういう高い割増率を設定しておりますが、これ は労使が法律でなくてやっているという実態だと思います。ですから、日本において、 企業別組合ということで、一企業が結んでも、それがその社会全体に広まらないという 問題をどう考えるかというのが一つの検討課題だと思います。  もう一つの割増率25%という数字自体は必ずしも低くはないと思いますが、問題は基 礎になる賃金にどれだけを算定しているかということです。日本の場合はボーナスの比 率が非常に高いという問題がありまして、それがカウントアウトされると、実質的には 割増はそれほど高くはならないといったことが影響しているのではないかと考えます。 ○谷川委員 この時間外労働の実態を見ますと、長時間労働をしているのは、ここには 年代の例示が出ていますが、たぶん業種によっても、年代によっても、個々に分類をし ていきますと、実態は随分違うのではないかと思います。それを総じて、全体で、こう いう法律で最低限こうだということを決めるということは、本当にそれが抑制効果にな るのだろうかということになりはしないかという感じがするのです。私は日本の労使関 係であったり、労働組合がなくても、いろいろな話合いの場であったりと、かなり成熟 をしてきているような状況にある中で、こういう課題は、やはりもう少し一点トリガー 的になるよりも、全体でどうするかということと、それから局面、局面に当たって、ど う改善をしていくかに取り組んだほうが効果があるのではないかという感じがします。  今日までの50〜60年経っている、いろいろな日本の企業の労働条件の決め方の中で、 あるバランスを取りながら、労使で今日まで取り決めてきているわけであります。先ほ ど平山委員も言いましたが、時間外についても、おそらく最低以上の率で決めている企 業もかなり多いわけでして、そういうバランスの中で決まっていますので、この一点だ けが突出するというのは、本当に効果をもたらすのかといささか疑問なのです。 ○渡邊佳英委員 私も製造業ですが、製造業というのは、やはりいかに生産効率をよく するかということがいちばんです。その中で、変動要因としては労務費がいちばんで、 いちばんコストを削減できるわけです。当社としては、いかに時間外労働をしないかと いうことが、やはりコストの中でいちばん占めますので、そういうことで、時間内でい かに効率化するかということを、やっているわけです。ですから、討論すると、ほかは よくわからないというところはあるのですが、やはり先ほど谷川委員がおっしゃったよ うに業種によって、いろいろな所があると思います。ですから、やはりそういう実情で、 一律的に法律でやるのではなくて、業態、業種、あるいはケース・バイ・ケースで対処 するのがいちばんいいのではないかと思っています。  先ほどの健康確保のための休日というような形で、これはちょっと疑問はあるのです が、では休日を与えたら、みんな本当に休むかとなると、私は旅行でも行ったら、逆に 疲れてしまうのではないかと思います。やはり、そういう休日を与えるならば、本当に 休んでもらえないと困るわけです。法律よりも、個人個人で健康管理をやってもらうの がいちばんではないかと思います。 ○原川委員 割増賃金のことと、年休のことと、2点申し上げたいのです。割増賃金に ついて、高い、低いという議論は、一つの議論としてはあるかとは思いますが、実際い ま出ましたように、世の中のバランスということも非常に重要なことだと思います。特 に中小企業の場合は、現実の中小企業が置かれている厳しい経営環境があるわけです。 それを無視しては、経営はできないということです。中小企業で470万ぐらいの個人、 法人の企業がありますが、7割の雇用者に働いてもらっているわけです。ですから、そ ういうところで、企業としても大きな雇用の役割を担っているし、極端な議論で、そう いう基盤を失うようなことは、とてもできない。そういうことを考えなければいけない と私は思います。  特に中小企業の場合には、残業時間10時間以下が大体5割を超すぐらいのところで、 数字的には平均して55%ぐらいになるわけですが、ただ、ものづくり産業、鉄鋼・機械、 そういうところの中小企業は、大企業とともに国際競争の中で、その役割の一端を担っ ているわけです。そういうところで、中小企業の従業員の皆さんも働いているというこ とです。  中小企業の取引の特徴というのは、前から何回も申し上げて恐縮ですが、一つは、い ま出たようなコストダウン要請。国際競争の中で生き抜くためにコストダウンが取引先 からも非常に強く要請されていますので、そういったコスト削減ということに血道を上 げている。これが生死を決める最大の要因だと言っても過言ではないと思います。もう 一つは、短納期化、あるいは突発的な受注という取引慣行があります。これは競争が激 しくなればなるほどこういった傾向が強くなるということです。中小企業はこういう二 つのことに対応して、幅の狭い利益の中で人を雇用しつつ、自らも生き抜いていかなけ ればならない。そういうような厳しい環境の中でやっているということですから、急激 な負担増や事業運営に対する規制強化ということは直ちに経営に直結することになりま すので、そこは大いに慎重にしていただかなければならないと考えます。  それから、もう一つ、休日の問題ですが、人間であれば休日をたくさん与えられてう れしくない人はないと思います。ただ、中小企業の場合には、人が限られている。そし て、突発的な仕事や短納期的な仕事が多い、経営的にも毎日が非常に楽でない経営をし ている、ということを考えると、自ずと人数に制限が出てくることは否めない事実です。 そういう中で、あれこれということで年休を、例えば残業した場合に代償年休を与える ということになった場合には、人数に制限がありますから、そこの企業では年休を増や すことによって残業時間が増えるということが考えられます。残業時間が増えればまた 年休が増える。そういうことで、これも非常に厳しい経営の中でつらい事業運営を強い られることになりますので、ただ年休を与えればいいということではない。もちろん、 健康管理は重要であることは認識しておりますし、仕事のやり方に工夫をしていくとい うことの周知の必要性は十分感じております。しかし、現実の問題というのも目を背け ることはできないということですので、その辺のそういうバランスというものをよく考 慮して決めるべきだと思います。 ○西村分科会長 いま労働基準法の36条で限度基準が定められておりますが、経営者の 方はそういう限度基準を超えた残業の場合でも割増賃金はあまり手を触れていないとい う感じなのでしょうか。触れるべきではないという感じなのでしょうか。この点はいか がでしょうか。 ○山下委員 いまいろいろな委員の方から現状の説明もあったかと思いますが、現実と して、すでに割増賃金の設定とか、各企業で自主的に労使自治で行われているケースも たくさんあると思います。また、年次有給休暇の例えば時間単位での取得等についても 年休という考え方ではなく、フレックスタイムの導入等によって、そういう時間に対し て非常に柔軟な働き方もかなり進んでいる所がすでにあると思いますので、法律で何か 決めるというよりは労使で話をして、それぞれの業態、業種に従って決めていくやり方 のほうが現実に合っているのではないかと思います。 ○長谷川委員 何か、ものすごくガッカリして何とも言いようがない。本当に何とも言 えない気持で涙が出てきてしまう。まず、憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な 最低限度の生活を営む権利を有する」と言っています。その後に、27条で国民の勤労権 と義務が書かれていて、2項で「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準 は、法律でこれを定める」と。これを受けて労働基準法が出てくるのだと思うのです。 基本的に、憲法で国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有するとなってい るわけです。使用者であろうが労働者であろうが、私たちの1日は24時間しかないので す。24時間のうち8時間は働く、だから8時間労働となっているわけです。あと8時間 は寝なければいけないのです。寝なければ次の日に起きられないでしょう、働けないで しょう。企業が求める、労働者にきちんと労働してもらうためには8時間の睡眠をして もらわなければいけない。たまに少し変わった人がいて4時間ぐらいでいいという、そ の人は例外ですよ。普通の一般の人は8時間寝ます。  その次の8時間、会社と自分の家は隣ではないです。私は毎日八王子から通勤してい ます。ホームライナーで1時間30分ですよ。往復で3時間ではないですか。それから、 食事をしなければいけないですよ、お風呂にも入らなければいけないですよ、テレビも 見なければいけない、新聞も読まなければいけない、読書もしなければいけない。いつ やれというのですか。まず、議論はそこからですよ。例えば、私が1日48時間あるとい うのだったら残業もたくさんできます。でも、私は、24時間をどのように配分しましょ うかというのが労働基準法の精神だと思うのです。  企業のバランス論とか国際競争力とか、そこは労側はよくわかっています。皆、単組 に行けば労使交渉をやるわけですから、国際競争で闘っていかなければならないのは知 っています。でも、それだとしても、いま我が国で何が起きているかといえば、この近 代国家、我が国で過労自殺とかうつとか、そういうことですよ。そのことは働く時間に 問題があります。これは日本の中でも常識ですよ。うつが起きている、過労自殺が起き ている、これは常識ですよ。日本の中でうつとか過労自殺がないと言う人は誰もいない ですよ。それは労働時間に問題があったのではないですか、ということで労働時間問題 が取り沙汰されたことも事実ですよね。  それと、もう一つは、いま教育基本法が国会で議論されていますが、教育基本法を話 すときに家庭生活が大切だというのです。家族でご飯を食べなければいけない。家族で 朝ご飯を食べなさい、夕ご飯を食べなさい、と言ってもいつ家族でご飯を食べろという のですか。だから、労働時間を考えるときには単一の企業の話ではないのです。我が国 の国民の労働時間をどう考えるかということです。この現状、家族が一緒にご飯を食べ る暇もない。子ども一人で、ファーストフードを買ってきて、ペットボトルのジュース か何かを飲んで食べる。それで本当にいいのですか。その結果が、我が国の国民が、世 界の中でも教育水準が落ちたとか能力が下がったと言われたのではないですか。それを 回復しましょうと、いまやっているわけでしょう。  そうすると、労働時間の配分、24時間をどうすればいちばんいいのですかということ になります。本当は、今回、私は事務局に言いたかったのですが、36条の過半数労働組 合と労使協定があれば時間外労働させることができるというのは削除すればいいのです。 我が国では労働時間は1日8時間、週40時間、それ以上働かせてはならないというのが いちばんいいのです。そうすればワークシェアリングもうまくいくと思うのです。いま 失業している人たちも皆企業に雇われていくと思うのですよ。  ただ、それは少し暴論だと思うのです。だとすれば、どうやって均衡点を探るかとい うのがここの議論だと思うのです。現状、労働時間の実態調査で明らかになっているの は、家庭や地域社会も崩壊している、過労自殺も増えている、メンタルヘルスも増えて いる。こういう状況の中で、憲法で言われている国民が健康で文化的な生活をするため には労働時間をどうしましょうかという、そこの議論をもう少し労使が真摯に議論しな いとこの問題は大変なことになるのではないか。個別企業がうちの会社は国際競争で 云々と言いたくなるのは当然です、どこだってそれは必ず出ますよ。賃金交渉のときに 必ずそうなるわけです。しかし、もう少し現状を認識して、労働基準法の中で何をすれ ばいいのかということだと思います。  私は、労側委員が皆言っていますが、なぜ割賃を上げるかといいますと、割賃を上げ れば、おそらく、50%、52%ぐらいになれば1人雇ったほうがいいということになると 思うのです。企業は、時間外で働かせようか、それとも1人雇おうかというときに、こ れだったら1人雇ったほうがいいということになる。だから、そこの点でしょうと。い ま、非常に簡単に労働者に時間外をさせて、1年間で1,000時間もさせているようなこ とに対して、どうやって歯止めをかけて、削減をして、文化的な生活ができるかという ことの方策を検討しましょうと。お互いにそこのところに立たないとこの問題は本当に 平行線になってしまうのではないか。私は、労働時間になるとなぜすぐにそう言うかと いうと、もっと日本人が豊かで、この国で生まれて、この国で仕事をして、どこへ行っ ても、やっぱり良い国だ、日本の企業も良い、というふうなものにすることが必要なの ではないかなと思っているからなんです。  あと、先ほど荒木先生がおっしゃっていましたが、ヨーロッパは協約でみんな適用さ れていくわけです。日本の労働組合は、私どもに責任があって恥ずかしいのですが、い つも公益の岩出先生から「労働組合組織率は18%じゃないか」と言われる度に、もっと 連合が組織をかけて頑張らなければいけないと思うのですが、結局、労組法の拡張適用 だって条件が厳しいですから、協約締結をしてもなかなか拡張適用にならないわけです。 企業別労働組合ですから、協約がなかなか地域などに広がらないということはあるわけ ですが、80何%の労働者は労働組合がない企業にいます。過労自殺とかうつとか、そう いうものを職場からなくしていって、国民が健康で文化的な生活ができることと、企業 も世界の中で闘ってきちんと仕事ができるようにするためにはどの方法がいいのかとい うことについて、もう少し労使で一歩踏み出すことが必要なのではないかと私は思いま す。いつも演説ばかりしてすみません。 ○田島委員 あと、私は、長時間労働の問題と年休という制度は一体だと思いますし、 以前に示されたデータでもこの10年間の取得率が10ポイント下がって、平成5年は 56%だったのが平成16年度の調査だと46.6%と、過半数以上が有休の取得の権利があ るのに行使できないという現実があるわけです。会社が大変だとか忙しいな、休めば仲 間に迷惑がかかる、あるいは自分の仕事の負荷が後で増えてしまうということで有給休 暇をとらないという現実がある。権利として保障があるのにもかかわらず、半分以上は 捨てている現実があるわけです。取得率をもっと向上させていくというのは労使が本格 的に考えていかなければいけない課題だろうと思います。  そういう意味で、その中で有休の取得率を増やさなければいけないのに時間単位の発 想が出てくる。それは逆ではないか。アンケート調査でも、1日の取得プラスまとめて 取れる連続休暇を最低何日間は与えなければいけないという形で出てくるのだったら、 取得率の向上に役立つはずなのですが、そうではなくて時間単位だと。時間単位という のは両刃の刃というか、そういう声も確かにあります。「有休を1時間、2時間取れば済 んでしまう用件なら1日丸々休むな」と言われることも想定されますし、そういう意味 では、有給休暇を本当に見直していくのだったらば、経営者は権利として保障されてい る有給休暇は与えなければいけない。  あと、本人の希望で連続休暇を例えば最低1週間なら1週間は休みなさいと。指定さ れた年末年始とか5月とか、夏季休暇以外に自分が指定できるような有休取得策を考え る。経営者の方は、この有休取得が上がるとまたコスト論が出てくると思いますが、私 は、100%行使して当たり前の制度は、100%行使できるような制度化に皆がどうやって 考えていくかということをやらないといけないだろうと思います。だから、有給休暇を こんなに細かくしようということではなくて、もっと大きくしましょうというふうにな ぜならないのか。荒木先生、ヨーロッパでは、連続休暇というか、本人の行使はバカン スも含めてあると聞いているのですが、その点はどうなのですか。 ○荒木委員 年次有給休暇というのは、諸外国では最低でも1週間単位でまとめて取る。 1週間以下に分割してはいけないという法制がある所もあります。ということなのです が、実は、現在の39条の年次有給休暇の制度の下でも計画年休は取れることになってい るわけです。計画年休で労使が話し合って、連続休暇を取ろうと思えば取れるわけです が、そういう法改正をやっても一向に取得率は上がるどころか、かえって下がっている。 ということで、研究会報告ではこれをどうするかということで議論しまして、現状、日 本の制度は、労働者が年休を指定して、この日に取りたいと言ってきて、それは業務の 正常な運営を妨げるから駄目だ、別の日にしてくれと、そういう仕組みなのです。おそ らく、こういう仕組みを取っている国は世界中でも日本、あるいは日本をモデルとした 国ぐらいしかないと思います。  どこでも使用者のほうで労働者の意見を聴いて、使用者のほうで時季を指定する。つ まり、年休を付与する義務が第一義的に使用者に課されているということです。現状で は、労働者が言い出さなければ、使用者は黙っていれば与えなくて済んでしまっている わけです。これは、田島委員がおっしゃるとおり、年休というのは100%消化するのが 当たり前の状況でありまして、おそらく、年休消化率という概念は日本にしかない。ほ かの国では年休は100%消化するのが当たり前ということですので、ここで研究会報告 のほうは発想を転換して、今までは労働者が取りたいときにという、それが労働者の利 益になると思ってそういう制度にしてきたのですが、そうではなくて、年休というもの をきちんと使用者のほうの責任で与えるということに発想を転換したらどうかという提 言がここには含まれていると思います。  最初に課長からお話があったように、しかし現状では労働者が取りたいときに取れる という機能も無視できませんので、現在、いわゆる自由年休というものを5日間保障し ておりますが、そういうことも勘案して、労働者が取りたいときに取れる年休は一定程 度確保しながら、しかし使用者のほうで年休をきちんと与える義務があるということに 踏み切ってはどうかと。そういう提言ではないかと考えています。 ○岩出委員 最初の労働者の健康確保とか時間外の抑制とか、その辺に関しては、現状 を踏まえると、先ほど来労働側がおっしゃっている趣旨を踏まえた、現行から比べれば 健康確保に一歩進んだ提案と思っていますので、もっと詰めた議論をする必要は多々あ ると思いますが基本的に賛成です。年休に関して質問と意見なのですが、一定日数を与 えるというのは、例の計画年休も行われていて一定日数に達していれば当然クリアする という趣旨でいいのか確認したいと思います。それから、時間年休は確かにいろいろな 問題があることは私もわかりますし、労務管理上の問題はある。ただし、公務員はこれ を使っているのではないかと思いますから、労働組合を含めてこういった問題点等の指 摘がなされているのかどうか。この辺をお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○大西監督課長 最初に使用者の時季指定と計画年休制度との違いですが、計画年休と 使用者による時季指定はどちらが優先するのかということについて、一つの考え方とし て、例えば計画年休をやっている所は計画年休でやっていただいて、そうではないとこ ろで例えば使用者の時季指定をやっていただくという考え方も成り立つのではないかと 考えております。もう一つ、時間単位の年次有給休暇につきましては、公務員では現行 制度としてあります。これについてはいろいろ聞いてはいるのですが、特にこれで何か 問題が生じているということは、いまのところないのではないかと考えております。  それと、先ほどの田島委員の御意見の中で、取得率との関係、年休の取得率の向上で すが、基本的には1番目の○の使用者による時季指定は、公益の荒木委員からも御説明 がありましたように、取得率の向上という観点からは直接資するというか、そういう方 向性に向かっているという具合になります。2つ目の時間単位の年次有給休暇について は、ばらばらに取るのがいいのかどうかというのは確かに御議論があるところでありま して、そういう意味で、私どもとしてこの年次有給休暇制度本来の目的に沿った利用を 阻害しない限度でというこの一定枠があるのではないか。そして、検討の視点には直接 記述していないのですが、研究会の報告書の中では、例えば半日とか1日で年休取得を 申請した場合に「いや、あなたは2時間でいいですよ」というような時季変更はないの ではないかという御議論も行われていたところです。この点につきましては、実際にそ ういうニーズが一定程度見られるという現実もあるのではないか。それと、この年休の 本来の趣旨、目的という観点から、制度を調整しつつ柔軟な年休取得のあり方も一つい いのではないかという、そういうような観点で御提言させていただきました。そういう ことですので、1番目の○の年休の取得率向上にストレートに貢献するのではないかと いうことと、2番目の○の年休の制度との調整を図りながらその利便性を向上させると いう意味で、多少、効果みたいなものに違いがあるのではないかと考えております。 ○長谷川委員 いまのことは労働組合の中でも少し意見が分かれています。一つは、使 用者による時季指定はもともとの年休に対する年休権と労働者が持っている時季指定権 の問題をどう扱うのかということで、ここはもう少し議論が必要なのではないかと思っ ています。もう一つは、具体的に職場の中で何が起きてくるかというと、年休取得を向 上させるためにそういう方法があるだろうということについてはそうだなということも あるのですが、もう一方でそういう問題で心配があるということと、使用者が指定した ときに必ず休まなければいけないということで、結果的にある混乱は職場の中で起きて くるのではないか。それと、先生がおっしゃったように、現行ある計画年休との関係を どのように調整するのかということで、ここはもう少し議論が必要だと思っています。  時間単位の年次有給休暇も組合の中では賛否2つです。一つは、そもそも年休暦日と いう考え方に対して、これを崩すことになるから問題だという意見。ただ、子育てをし ている人は何日間か限定した上で時間休の取り崩しが必要だという意見があります。だ から、ここは私どもももう少し組織の中で議論しないといけないと思っています。まだ ここは議論が十分にされ尽くしてはいません。 ○谷川委員 この時間外労働削減の基本的な考えの中で、少子化対策の観点からという ことで、おそらく労働市場が小さくなるでしょう、ということを意味しているのだろう と思います。だけど、私も分析はしているわけではありませんが、当社などで言うと、 団塊の世代の人たちがかなり出ていまして確かに少子化の傾向はあるのですが、高能度 の技能を有している人たちがこれから社会に出て行っているのです。そういう人たちの 力を借りるということからすれば、こういう時間外労働であったり年休が取れなかった りというような職場の対策の中にも考えられまして、そんなようなことを含めていま当 社も36協定を結んだり労働時間をあれしたりする中で、高技能を有している団塊世代の 人たちとどうマッチングしていくとその辺がうまくできるか。「これは一企業の例だから あまり普遍性はありませんね」と言われるとそうなのですが、そのようなことも考える とまだ少し総合的に施策があるのではないかという感じもしまして、御参考までに。 ○西村分科会長 時間もだいぶ経っておりますので7頁の「自律的労働時間制度の創設」 に移りたいと思いますが、この点についていかがでしょうか。 ○島田委員 この自律的労働時間制度の問題ですが、この前も話したように、これは労 働基準法の改正案ですね。労働基準法は最低限の制度です。この最低限というのは何を もって最低限かということがあるのです。先ほど出たように、生活環境の最低限云々と したら、前は10時間労働だったのが、豊かにしましょうということで8時間になった。 だから、私は、今の議論でしたら、生活というか、国際競争があったら9時間労働にし ましょう、10時間労働に戻しましょう、という議論が最初にあると思っています。  逆に言ったら、これが我々日本人が最低限暮らす中での労働としての最低基準という 考え方をしたときに、例外規定をどんどん増やしていく。要するに、この自律的労働時 間制度にしても、企画業務型裁量労働にしても、36協定にしても、すべてが基準法で守 られるべき環境の例外規定ですね。それをどんどん増やしていったときに、本当にいい のかということが一つあります。ただ、これは事務局に聞きたいのですが、36協定を結 んでいなくて残業をしている所がどれだけあるのか。企画業務型裁量労働やみなし労働 だといって、今の企業内において、何も出さずに残業をやっている所はどれだけあるの ですか。全部チェックできているかというと一つもできていないのではないですか。と いうことは最低基準は担保できないということでしょう。現実的に例外規定をつくった ときに、健康を確保しましょう、やりましょうと。それは労使自治の中で何とか維持し ているけれども、労使自治がない所は維持できない。労働者は絶対対等の立場ではない わけです。それに対して文句が言えますか。  企画業務型裁量労働において仕事量を増やします。できないからお前は能力がないの だと言われたときに、もともとの契約と違うのではないですかと言える労働者が現実的 にどれだけいるのですか、そんなものが担保になるのですか、ということを言いたい。  もともと、基準法に例外規定をそんなにたくさんつくっていく話をこの分科会の中で 出していいのかということが基本的にあると思うのです。だから、労働側としては基準 法の趣旨から言ったらおかしいという例外を、どんどん広げていくような感覚しか見え ないですね。 ○西村分科会長 廣見委員は違った意味で手を挙げていたのかもしれませんが、いまの 御意見はどうでしょうか。 ○廣見委員 私は、先ほど来からの御意見も聞かせていただきまして、今回、我々がや ろうとしていることは何なのだろうか。このように考えてみますと、何回か前のときに 申し上げたかもしれませんが、一つ、現実に目の前に長時間労働の問題があるのではな いか。それがまた健康障害を引き起こしているような、非常に過重な長時間労働と申し ますか、そういう問題がある。これにどのように対応していったらいいのか。確かに、 労使自治でそういう問題の解決に御努力もされている。しかし、労使の自治だけでこの 問題が解決されていくのかという観点からすると、やはり何らかの手当てが必要なので はないか。こういう意味で出されているのだろう、併せて年休の問題もそうだろうとい う気がいたします。特に、長時間労働の問題は、どちらかといえば使用者側、管理者側 の対応に解決を求めなければならないような性格が多いのではないかと、正直言ってこ のような気がいたします。  ただ、一方、荒木委員からもありましたが、年休の問題は労働者の権利になっている わけですので、その権利が十分に消化されていないというところに実態の問題がある。 とすれば、これは労働側は本来もっといろいろ考えるべきことなのかもしれないのです が、しかし現実論としては消化率が下がっている。そういう意味で、いまここに出され ているような視点からは、本来の趣旨、原点から考えたときにさてどうなのかという問 題があるのかもしれませんが、この時季指定権の問題、あるいは時間単位の問題等々、 一定の枠を押さえながら現実的対応ということで、ある意味では現実的な解決策が出さ れているのではないかと思うわけです。そういう意味では全体としてのバランスの中で 出されている。  もう一つの大きな問題は、まさに自律的労働時間の問題でありまして、これは大きな 変化の中でこういう形で働きたい、働いたほうがいいのではないかという実態がある。 そういう問題にどのように応えていったらいいのかということで提案がされてきている と思います。確かに、これにつきましても、いまのお話のようなことで、正直言って、 労働側の委員の方はかなり厳しい見方もしておられるのだろうと思います。しかし、一 方でそういう実態にどのように対応していくかということを考えたときに、きちっとし た前提条件を整理しながら、条件整備をしながら考えていく必要があるのではないか。 その自律的労働時間制度そのものに内在する問題をどのように押さえていくかという仕 組みの仕方の問題もありますし、その前にいまの長時間労働みたいな問題にきっちり対 応をとっていくことも前提的な条件整備として必要なのではないか。そういう意味では、 私は、これ全体がいまの状況に対して一定の判断の下に出されている提案だと思います ので、個々の問題ももちろん大切ではありますが、バランスという言葉も先ほどから出 ていますが、全体としてのバランスという視点から御議論をしてお互いに深めていけれ ばいいかなと、こんな気がしております。 ○小山委員 自律的労働時間制度の導入などをしたらとんでもないことになる、結論か ら言えばそういうことをまず申し上げておきたいと思います。もともと、前回からも申 し上げましたが、こういう自律的な労働時間というのが一体あるのかないのか。いま、 所定労働時間の中でいかに自律的な働き方をするのかということが求められる時代なの です。それが評価につながる、いまの大きな企業の労務管理というのはそういう状況だ ろうと思います。  自律的に働く人たちは自分の労働時間をコントロールできる、自己管理ができるのだ ということならば、自分の健康管理だってできるはずなのです。しかし、できていない ではないですか。今日いただいた資料で見ても、管理監督者が、ここで言うと約23%の 方が、過労死や過労自殺ということで労災認定を受けていらっしゃる。さらに、一般労 働者という所を見ると、営業職が10人、システムエンジニアが5人、現場施工管理者が 4人。実は、この人たちは労働時間管理が非常に難しい人たちでありまして、営業職の 場合はみなし労働時間制を使っている場合が多い。システムエンジニアは、大体、裁量 労働制を使っている場合が多い。現場施工管理者も、どちらかというとみなし労働制を 使いながら運用されている例が多い。いわば、労働時間管理がきちっとされにくい職種 の人たちなのです。その人たちがその比率が非常に高く過労死や過労自殺ということで、 これは労災認定されたものだけですから、労災認定されずに裁判で争っている方もたく さんいらっしゃるわけであって、そういう実態があるのです。  自分で労働時間を管理して、業務量も管理する。そうすれば、当然、自分の健康だっ て管理できるはずなのにできていないという実態が、この東京労働局のデータだけでも 明らかではないですか。それがここで、自律的労働時間制度で時間管理をしないという ことにした場合、一体この人たちは得をするのか損をするのか。この労働者にとってプ ラスなのかマイナスなのかという問題なのです。我々労働側の委員としては、労働者に とってプラスなことだったら賛成します。しかしこの新制度は、どう考えたってマイナ スしかないのではないですか。プラスになることは何もないではないですか。自分の労 働時間を自由にできるのならば、それはすでに裁量労働制だってあるではないですか。 フレックスタイム制だってあるではないですか。それにもかかわらず、ここにあえて時 間管理の適用除外をする新しい制度を導入することで労働者にとってプラスになること は何一つない。むしろ、こういう健康障害をもたらすような実態を闇の中に放置するこ とにしかならないわけです。時間管理をしなくなったら実態だって把握できなくなりま すよ。先ほどの長時間労働の現状という問題を共通認識で皆お持ちになった。その共通 認識がありながら、なぜこんな制度がいまの日本で入れられるのですか。そもそも、そ ういうこの制度の導入の意図というものが、労働基準法の改正をするわけですから、本 当に労働者にとってプラスになるのだということを、是非、事務局は示していただきた いと思います。 ○岩出委員 いまの小山委員の見解に関しては、例えば具体的に言うと○の1番目の* の2のポツの2つ目ですか、健康確保措置の一環として時間把握等をすることによって ある程度担保されると思っています。そういう意味で、基本的にはこういうニーズがあ るということ。それから、例えばの話、○の1番目の*の2のポツの1の週休2日相当 の休日というのは、普通の労働者以上に確保される面があったりとか、さまざまな配慮 がなされた制度だと認識していますので、そこを確認したいのですが、ポツの1の所の 週休2日相当の休日というのはどのタームで把握できることか。その下の○の書面によ る合意というのは撤回の可能性の有無に関して、つまり嫌だったら逃げられるかどうか。 それから、その下の導入要件の所で、あえて労使の実質的協議と書いているのはどうい う趣旨なのか。その下の効果の所ですが、法定休日の適用もあると書いていながら、8 頁に来て「その他の云々」とあって休日が出てくるのはどういうわけなのか。この辺を お聞きしたいのです。 ○大西監督課長 週休2日相当の休日のタームにつきましては、特に月ごとという限定 的なものではなくて、四半期ごととか1年ごととか、そういうのを通じて週休2日相当 ということで比較的柔軟に検討していただきたいという考えでございます。合意の撤回 ですが、当然、こういう労働者の方として想定される方はそういう働き方をしたいとい う方を対象にしようと考えていますので、そういう方がしたくないという状況になるこ ともあるわけですので、それを解消するということはあるわけです。労使の実質的な協 議に基づく合意につきましては、労働契約法制の中での御議論の結果を踏まえてという こともありますし、現在、裁量労働制の中で企画業務型裁量労働制では労使委員会とい う制度をとっていますので、それも参考になるのではないかと考えております。その他、 労働時間、休憩・休日に関する規定につきましては、基本的には割増賃金の部分等につ いての規定が適用除外されるという意味でありまして、この法定休日の部分については 35条は適用があるということです。それと、その前にいただいた意見の中で、時間管理 とこの新しい制度の考え方はどこが違うかといいますと、今までの裁量労働制について は、結局、みなし労働時間ということで、業務量についてはそういう時間で処理できる 業務量という形でクッションを置いて算定していたのではないかと考えます。例えば、 管理監督者の手前で、労務の権限はないけれども業務上の権限があるような方が、ある ときは会議等があって長くいなければいけないけれども、ある日は非常に短い時間で済 むという場合に、その時間を介在させるのではなくて、直接業務量、その人の業務量が 多いのかどうかという手法によってそういう方の疲労を防ぐ。それは疲労があってはな らない話なのですが、そういう業務量を直接調整できるような仕組みができないのかと いうような点で7頁の○の1の1つ目の*と、この業務量適正化の観点から既存の業務 との調節という、こういう仕組みについて何か考えられないのかということを御議論い ただきたいということでこういう提案をさせていただきました。いわゆる、業務量を直 接縛っていく仕組みができないかどうかということです。  それと、その一つ前に島田委員から御指摘がありましたが、企画業務型裁量労働制と 専門業務型裁量労働制と新しい自律的労働時間制度との関係ですが、当然、対象者とし て重複する方がかなりあることが想定されますので、その三つの制度、現行の制度を含 めた見直しということをしていただくのは必要だと思います。これは8頁ということで、 頁は後ろになっていますが、別に、分けていただく必要もなくて、どういうことにする のかという御議論を一気にしていただくことは誠に結構だと思いますので、そういうも のも含めて検討していくということで御理解いただければよろしいと思います。 ○岩出委員 いまの休日の点ですが、35条は適用されると。ただし、その後ろでは、休 日に関する規定は適用しないと言っている。その休日に関する規定を適用しないという のは、36協定とか割増賃金が適用ないという意味で言っているのですか。 ○大西監督課長 はい。 ○岩出委員 要するに、休ませなければいけない。36協定の適用がないということは、 逆に言うと休日労働させてはならないという意味なのですか。 ○大西監督課長 ここのところは7頁の*の2つ目、「週休2日相当の休日、一定日数以 上の連続休暇があることなど、相当程度の休日が確保されることが確実に見込まれるこ と」ということですね。 ○岩出委員 1年間何とかのタームでやっているわけだから、週単位では必ずしも見な いわけですね。それは少し矛盾しているのではないですか。 ○大西監督課長 いや、それは、例えば年間の労働日数は何日、休日はこの日を確保し ますということを契約等で契約していただくとか、そういうことも考えられるのではな いかと思います。 ○秋山調査官 考え方としては、7頁の下の法定休日のほうがターム的には先に来てい るのです。4週4日は、1か月単位で見て、必ず1か月に4日は休ませてください。こ こは例えば36条で協定を結んでも休日労働はできないということですので、月単位で見 て毎月4日は必ず休んでもらう。その上で、例えば年間のタームにした場合には、1年 を通じてみて、当初合意した週休2日相当の休みが確実に確保されているかどうか。そ れがダブルで書かれているようなイメージでおります。 ○岩出委員 休日割増はないのですね。 ○秋山調査官 休日労働させることはできないということです。4週4日です。 ○西村分科会長 使用者の方は、いまの提案になっているところの業務量の適正化とい うことが果たしてできるのかどうか、既存の業務との調整ということができるのかどう か。あるいは、時間管理を外すというのは大きな懸念だという話もありますが、こうい う点についていかがでしょうか。 ○平山委員 7頁の対象労働者の要件等の1つ目の○の所に「自律的な働き方をするこ とがふさわしい仕事」という言葉があります。これはすごく簡単に書いてありますが、 こういう議論が出るというのはそういう仕事のウエイトが上がっているということだと 思いますし、これがどういうことだというのは皆が共通認識を持てるように議論をして いかないといけないと思いますが、私自身は、これは経営側とか労側とかということで はなくて、たぶん、日本の産業競争力、これは国内にしても国際的にしても、コストで 力を付けてきたという側面と、世界の先端を走る商品なり技術で働く場所を確保してき たという両面があると思います。  かつてはコストの面が強かったのでしょうが、いまは後者のほうが相当に上がってき ていると思います。いま日本でこれだけの雇用になってきているということについては、 いろいろな業界を見ても技術が世界の先端を走れているのだという部分で確保できてい る働き場所が随分たくさんある。おそらく、そのウエイトはすごく上がっているのだろ うし、これからはますますそうなのだろうなと思います。コスト競争というより技術競 争がいろいろな所で展開されていくという流れになっている。そういうときに先端を走 れる商品なり技術なりいろいろな戦略なりというものをきちんと保てる、その日本全体 としての力というものをどういう働き方の中で担保していくのか。これは、働き方をい かにあれしてもここは必須で、すごく必要なところだと思うのです。おそらく、これは あまり認識が変わらないのだろうと思います。  ここでいちばん力を出してもらうという意味で、自律的な働き方をすることがふさわ しい仕事というのは現実の局面であると思っています。これは何となく一般論で言って いるわけではなくて、むしろ労使の皆さんは競争から排除されて引いていったことを相 当に経験されているはずです。それとの関係で見れば、いまの点については共通認識で きるのではないかという気がします。そういう意味で、この種の働き方について、どう いうお互いの合意の中で基準法の中に組み込んでいくかということは、将来のためには きちんと議論をするテーマであると、これは本当にそう思います。たぶん、そういう中 で入り口としてはいろいろ細かいところもあるのだと思うのです。いきなり業務量の調 整と言われてもなかなか難しいのですが、きちんと健康に働けるという条件を軸にしな がら、どういうやりようがあるのか。もちろん、年間労働時間の観点もあるでしょうし、 そういうことも合意しながらこの議論をしていくというのは必須ではないかと思います。  ただ、この2つ目の○についてお聞きしたいのですが、対象労働者と個別の労働契約 で書面による合意となっていますが、確かに、そういう働き方をしたいという個人の「し たい、したくない」というアプローチもあるかもしれませんが、先ほども言いましたよ うに、自律的な働き方をするふさわしい仕事があるということです。それは対象の集団、 それが業務集団なのか職種集団なのか能力集団なのか、いろいろな集団の概念があるか もしれない。基本は、そういう働き方がふさわしい仕事の集団としてどうしていこうか というのが妥当なのだろうと思います。やや個人の判断の余地が大きく出ているなとい う気がします。それで、集団での合意ということと個別に合意していることとの関係で、 何か検討した上でこうしているのだというところがあればお聞かせいただきたいと思い ます。それと、導入要件の2つ目ですが、全労働者の一定割合以内という制約を付ける 意味合いはどういうところにあるのだろうか。この2点をお願いします。 ○大西監督課長 一つ目ですが、集団と個別の関係ですが、要するに、この自律的な働 き方をすることがふさわしい仕事ということが一つある、これは集団の側面があるわけ です。そういう仕事に就いて能力を発揮していただくというのがこの制度として有効活 用される道であるということであると、当然、仕事を通じた自己実現とか能力発揮を御 本人が望んでいる、そういう意欲のある方がその仕事に就く、そういうのがいちばん良 いシステムではないか。要するに、仕事は自律的な働き方がふさわしいけれども、本人 は、そういうことは望んでいないという方がそこに就いたときに果たしてそれはうまく いくのかどうかということがあります。要するに、企業の中でこういうシステムを採用 するという仕組みが、まさに、この働き方がふさわしい仕事という面でありますし、そ こに個別の方が入っていくときに、私はそういうことで頑張りたいと言うのか、私はそ れで結構ですということで出ていくのか、そういう面での合意が重要ではないかという 検討の上でこういうことにしたということでございます。  一定割合につきましては、この研究会の報告の中では管理監督者の手前の方を想定し ているという御議論もあったわけですが、通常の場合ですと、こういう自律的な働き方 をすることがふさわしい仕事というのは企業の中で一定割合以内なのではないかという ことです。これは、ある意味では外見的な基準として想定されるものがあるのであれば、 そういう割合を検討していく必要があるのではないかという視点でございます。もちろ ん、標準的なものと例外的なものがある普通の企業、普通の製造業や商業という企業と、 ごく特殊なケースで、何とかの資格を持った方の事務所みたいな所で、多少の違いが想 定されることが考えられますが、通常の多くの企業での割合というものを想定してもよ ろしいのではないかという考え方でございます。 ○西村分科会長 先ほど、組合の方から、時間管理を外すということについて懸念があ るという御発言があったと思うのですが、健康管理のためにも時間管理を全く外すとい うことは御懸念ないですか。 ○紀陸委員 基本的に、使用者側も健康管理の重要性は認識しているつもりですし、す でに管理職についても安衛法で時間把握の義務が課されましたよね。あれは枠組みなの ですが、それをどうやって運用していくかということが非常に重要な問題だと思ってい ます。したがって、これを入れるについて、健康管理の仕組みと運用をきちんとやって いくことは重要だと思っております。その面から業務量の確保云々も担保していけばい いのではないか。あまり細かく分けていっても逆に非常に運営がやりにくくなるとか、 そういう弊害も生じますので、労側がいちばん心配されているのは個々人の健康だと思 うのです。だからそこはきちんとやりますよ、ということで制度の運用を図っていくべ きではないかと思います。先ほどの東京都のものもありますが、これが全体だからとい うのではなくて、こういうことをできるだけなくすために自律的な働き方をやっていこ うという、いわば、大きな意識の転換なり、現実に合わせたことをしていこうというこ とであって、しかも、これは選択肢を拡大するという仕組みなので、労働者の方々に何 のプラスもないとかデメリットばかりではないかという御懸念は払拭していただいてい いのではないかと思っています。 ○長谷川委員 私は、自律的労働時間制度の創設という少しわからない抽象的な表現で はなくて、8時間を超えて働いても時間外割増を払わない制度と言ったほうが非常にわ かりやすいのではないかと思うのです。中身を読めばそういうことでしょう。要するに、 労働時間管理をしないわけですから、いくら働いても、この給料しか払いませんよとい う話ではないか。それと、「労働時間の配分の指示がされないこと」となっているのです が、どういう人たちが労働時間の配分をされないで自律的な働き方をするかというのは、 私の事業場で見る限りは、管理監督者はそうですが、それ以外でそういう人たちが本当 にいるのかどうか。  この間の労働時間法制の緩和の中で、まず、41条で適用除外があって、38条の4で企 画業務型裁量労働があって、38条の3で専門業務型裁量労働があって、38条の2で事業 場外みなしがあって、32条の3でフレックスタイム制があるわけですね。これを、例え ば小山さんたちがアメリカへ調査に行ったのですが、アメリカのホワイトカラー・イグ ゼンプションと対比すると、我が国の労働時間というのは、それと似たような同じよう な制度がたくさんあるわけです。それから、この自律的という言い方は本当におかしい と思っているのです。「働いても割賃を払われない労働者、だけど管理監督者とは違う」 というふうに、「管理監督者になる一歩手前」と言ったほうが労働者はわかりやすいので はないかと思うのですが、なぜそこにこういう制度を入れなければいけないのかという 必要性が分かりません。  もっと言うと、割賃を払いたくないものだから、こういう割賃を払わない一つの集団 をつくろうという感じがある。だから、先ほど、41条の管理監督者ではない所だと言う けれども、むしろ、41条の管理監督者の所で新しいものをつくるとしかどうしても見え ないと思ったのです。それと、労働時間の配分の指示がないということは、いつ来てい つ帰ろうが、時間中に床屋に行こうが美容院に行こうが病院に行こうが全然関係ない、 どうぞ御自由にということが我が国企業の文化の中で、事業場の中で許されるのか。ア メリカのホワイトカラー・イグゼンプションを見た人は本当に自由だと言っているので す。会社に来る時間も帰る時間も全然チェックしない、そういう仕事の与え方だと言う のです。その代わり、かなり厳しくいろいろなことが決められているわけですが、私は この7頁に書いてある自律的労働時間制度の創設というこのザクッとしたものは今日的 の労働時間をめぐる状況の中では非常に無理だと思いますので、労側は全員一致、この 導入の必要性はないと判断しています。 ○紀陸委員 基本的に長谷川さんはおわかりになられておっしゃっているのだと思うの ですが、処遇と働き方は時間を基軸にして働いていたというものの関係が変わってきて いる部分があるということは否定できないと思うのです。すべてというわけにはいきま せんが、相当にそれは変わってきているので、従来の増えてきたみなしを超えて新しい 一つのイグゼンプションの制度をつくろうという、これは労働側の中でも御意見がある のではないでしょうか。だから、そういう働き方で処遇が結び付いている所はそういう ような選択肢を設けるということで、これは、一種、後戻りができないような状況があ るわけですね。そこは、私ども、「そもそも論」としてきちんと御認識いただきたいと思 いますし、すべてという話ではありませんので、みなしを超えた働き方の選択肢の拡大 という、これをどういう形で行くかまだ詰めなければいけない点がありますが、そうい うことであって、決して入り口から時間外労働のペイを払わないがためにという視点だ けで捉えられると議論が全然先に行かないので、そこのところは十分御留意いただきた いと思っています。 ○小山委員 いま紀陸さんから、労働側の中にもこういうものを必要としているのでは ないか、というお話がありましたが、これは大変大きな誤解があるのでよく実態を把握 していただきたいと思うのですが、労働団体にはありません。個別の労働者に聞くと、 こういう時間管理は煩わしい、だから自由に残業でも何でもやらしてくれ、という声は あります。現に、それはそういうケースはありますよ。それはどういう場合かというと、 いま特に不払残業の問題等で管理が厳しくされる。しかし、自分は仕事をやりたい。し かし、時間が制限される。そのためにごまかしてやらなければいけない。こういう煩わ しいことはしたくないのだ、というような個別の労働者の話はあるのです。ただ、その 労働者がどういう働き方をしているかというと、簡単に言えばかなりの長時間労働をや っている。その御本人はそれで納得してやっている場合が多いわけです。  そして、労働相談とか、このサービス残業の問題の電話相談をとると、電話をかけて くるのは御本人ではなくてその家族なのです。あるいは、友人だったりするのです。本 人はその異常な状態に気がつかないわけです。周りが「おかしい、あんな働き方をして いたらあいつは死んじゃうぞ」と言って電話をしてくるわけです。だから、本人の同意 があればいい、本人の同意があるから長時間労働がなくなるとか、あるいはこういう過 労死がなくなるということにはならないわけです。労働者は皆、仕事を一生懸命やりた いという意識は持っているわけです。自律的に働こうというのは皆持っていますよ。そ して、いまの賃金制度はそのように変わりつつある。自律的に働くということと労働時 間を管理するかしないかということは関係ない話なのです。所定労働時間の中で自律的 に働こうという提案をされているのは、むしろ経営側の皆さんですよ。それは何時間で も自由に働こうということではないのです。ですから、労働者の側にもこういう要望が あるのではないかというのは大変大きな誤解がある。もうその仕事にはまってしまって いて客観的に判断できなくなる、あるいは追い詰められてこの仕事をせざるを得なくな る。それが一人一人の労働者の弱さでもあるわけですから、そのことを救うのは労働基 準法でなければいけないのではないですか。 ○西村分科会長 公益側の委員の方はいかがですか。 ○今田委員 そういう小山さんの御心配を受けて、まさに、今回の改正が立ち上がって いると理解しています。つまり、そういうケースの場合に一方では長時間労働によって 過労死があり、それに歯止めをかけようというのが前半で議論した労働時間の時間外労 働の規制であり、健康管理のための年次有給休暇制度をきちんと柔軟に充実したものに しよう、時間を削減し休暇をとろうと。そういう形で長時間労働で過労死までいく極端 なケースに対応しようと。もう一方で、仕事がのってガンガンやってしまうのだけれど も、面白いかもしれないけれどもという御指摘があった。その人たちに対しても、ここ にあるように、休日という形で健康管理というものをきちんとして、さらに自らの労働 時間については通常の39条レベルの休暇をきちっと取得する、ある意味では義務づける。 今日の後半の自律的のほうはそういう枠組みなのでしょう。だから、そういう意味では、 現状は両方ともやられていないから長時間でグズグズになって過労死までいくという。 それは皆さんもそうだし、マスコミも含めて、この現状をどうかしなければいけないの だという、そのための両面からの方策として事務局なりから出てきた案であるという、 そういう理解をしていました。 ○長谷川委員 働いた時間に割賃を払えばいいではないですか。なぜ割賃を払わない。 だから、私は、自律的ではなくて、8時間を超えて働いても割賃を払わない制度だと書 いたほうがよくわかると言っているのです。なぜ割賃を払わない制度を新しく導入しな ければいけないかと私は聞いているのです。健康管理のことを聞いているのではないで すよ。 ○今田委員 その分の割賃を払って、きちんと矯正をしましょうと。そういう働き方の 人に対しては労働時間を厳しくして割賃も払いましょうという議論をしているわけでし ょう。 ○長谷川委員 だから、8時間を過ぎたら割賃を払うというのは労働基準法に書いてあ るのです。だから、割賃を払えばいい話でしょう。 ○渡邊佳英委員 労働基準法を制定して結構長く、前にも言ったと思うのですが、労働 管理ができる職種と、いまは携帯電話があって、パソコンがあって、職種によっては労 働時間管理ができなくなっている職種が多いわけです。例えば営業の人で、私の友達は ゴルフをやっている最中に携帯電話が鳴って商売をやっているという人も多いわけです し、そういうのが現実的ですから、そういう人たちにどうやって労働対価を与えるかと いうことは我々として考えなければいけないのではないか。時間管理ができる人、時間 管理ができない人があるのではないかと私は思います。 ○新田委員 それで今は裁量労働とかみなし労働があるわけでしょう。いろいろな制度 がある中で、先ほど時間外とか年休の議論をしたけれども、廣見先生はああいうふうに おっしゃっていただいたのですが、要するに今ある条件の中でやらなければならないこ とをできていない。できていない現実があって、それでこうした制度を導入しようとい うのは違うのではないですかと私は言いたい。例えば、読売新聞がこういう大きな特集 を書いてくれたのですが、その中で、例えば「労働時間の見直しの論点」ということで 書かれているのは「年次有給休暇の時間単位での取得」とあって、その下に「管理企画 部門や専門技術職などのホワイトカラーを想定した労働時間を自由に決められる自律的 労働時間の創設」「一定水準以上の年収が見込まれる人などを対象」と書いてあって、そ の下の記事の中に「この制度は繁忙期には長時間働き、仕事が少なくなれば短時間で切 りあげられるなどの働き方が可能になる」とポンと書いてあるだけなのです。これだけ 書いてあればいいではないかと。ところが現実はどうなのでしょうかということで私た ちはいま議論をしているわけです。  その上で言えば、さすがに、事務局も、いろいろな条件をここに書かないとこれには 入りませんと書いているわけです。時間管理を外しますとだけは書いてない。特に、健 康は留意しますと書いてあるけれども、これは何をするのですか。どんなことをするの ですか。具体的なイメージがわからない。もっと言えば、自由に働けるというふうにい ろいろな議論をされて、おっしゃっているようなことも私もわからないではない。企業 側の時間管理というものを外したら本当に無責任になるとしか思えない、だからいろい ろな問題が起こっているのではないですか、と言いたいですね。そういう意味で、いま ある制度、法規の中でやらなければならないことをもっときちんとやって、例えば今日 出された資料にもありましたが、管理監督者25%という所はありますが、これの管理監 督者の中身はどうかということをやったことはありますか。管理監督者の規定において とか、その種のことを1回きちんとやってみたらどうでしょうかと私は言いたいのです。 その上で、いま見て何があるのかといえば、長時間労働があるならばそれにどう手を打 つか、年休取得についてはどう手を打つのか、ということをやってみる。そして、その 上でこういうような物言いで、働きたい、働いてもらいたい、成果をあげてもらいたい という制度が導入できる風土ができればいいと。それはないだろうというのが私の考え 方だし、感じですね。とても無理だと思う。これではやはり労働者はボンと放り出され てしまって痛いめに遭わされるとしか思えないですね。 ○西村分科会長 労働時間の話をしながら、何か、時間がオーバーして大変申し訳ない と思うのですが、最後の8頁の管理監督者の話が新田委員から出ましたので。 ○長谷川委員 まだまだ管理監督者のことも残っていますので、労働時間は次回にやっ てください。 ○西村分科会長 4回にわたりまして労働契約法制と労働時間にかかわる検討をしてき ましたが、これまでの議論を踏まえまして、その検討の視点をベースにしつつ、可能で あればということなのですが、事務局で一定の方向性を示せるようなものを用意してい ただいて、次回はこの残ったところも含めまして議論をしていきたいと思いますが、い かがでしょうか。 ○長谷川委員 今日の労働時間のところで後半部分が残っていますので、労働時間とい うのは皆の関心が非常に高いわけですから、きちっと議論していただきたいと思います。 ○西村分科会長 それでは、次回の日程についてお願いします。 ○大西監督課長 次回の労働条件分科会は6月13日火曜日17時から19時まで、厚生労 働省18階の専用第22会議室で開催する予定でございます。よろしくお願いいたします。 ○西村分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。本日の議事録の署 名は長谷川委員と平山委員にお願いいたします。お忙しい中、どうもありがとうござい ました。                        (照会先) 労働基準局監督課企画係(内線5423)