06/05/19 第12回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 第12回労働政策審議会労働条件分科会最低賃金部会議事録 1 日 時  平成18年5月19日(金)15:00〜16:15 2 場 所  厚生労働省議室 3 出席者     【委員】 公益委員   今野部会長、武石委員、田島委員 労働者側委員  須賀委員、高橋氏、橋委員、中野委員、横山委員        使用者側委員  池田委員、川本委員、杉山委員、原川委員   【事務局】厚生労働省   青木労働基準局長、松井審議官、熊谷総務課長、                前田勤労者生活課長、名須川主任中央賃金指導官、                吉田副主任中央賃金指導官、梶野課長補佐 4 議事次第  (1)今後の最低賃金制度の在り方について  (2)その他 5 議事内容 ○今野部会長  ただ今から「第12回最低賃金部会」を開催いたします。本日は、石岡委員、勝委員、 中窪委員、加藤委員、石委員、竹口委員、前田委員がご欠席です。なお、石委員の 代理として、高橋日本労働組合総連合会最低賃金対策室次長にご出席をいただいており ます。よろしくお願いします。  それでは議題に移ります。本日も論点について議論をしていただきたいと思います。 まず、前回の部会で今回問題になっている職種別設定賃金がなぜ必要か、ということに ついて改めて説明してほしいというご意見がありましたので、資料4に従って説明をい たします。  1枚の図になっておりますので、それを見ていただきたいと思います。全体の構成と しては「背景」があって、その背景が変わったので仕事をベースにする賃金決定という のが必要になってきて、というのが「必要性」です。そういう賃金決定をすると、こん な効果があります、というのが「効果」に書いてあります。それを実現するには、どう したらいいかということで「新たな制度の仕組み」が必要だということで、一番最後に 書いてあり、その仕組みが「職種別設定賃金」である。このような全体の構成になって います。そういう全体を頭に入れていただきながら説明させていただきます。  まず「背景」です。大きく言うと、労働市場の変化と賃金制度の変化があるだろうと いうことで、2つに分けています。前者の「労働市場の変化」については、産業構造が 変化して、サービス業等が増加し、派遣労働者やパートタイム労働者が増加する。それ に従って、就業形態が多様化している。それとともに、企業内においても働き方が多様 化している。同時に、労働移動の増大も進んでいます。そういう変化が見られるという ことです。  「賃金制度の変化」については、かつての年功制を前提とした賃金制度では、既に限 界が来ている。年齢や勤続などの属人的要素のある属人給よりも、仕事給の導入が進み、 賃金の構成要素のうちで、職務や職種などの仕事の内容等に対応する部分が拡大してい ると考えています。  以上の背景の変化を前提にすると、今までのような賃金制度ではもう対応ができない ため、こうした変化に対応できるような、公正で効率的な賃金決定システムの構築が必 要になっている。その構築すべきシステムというのは、仕事内容等を基軸としたシステ ムとして考えられる。ですから、仕事内容等を基軸としたシステムを構築することがで きれば、労働者にとっても企業にとっても、あるいは社会にとっても大変大きな効果が ある、ということを「効果」で書いています。  まず労働者にとっては、公正な賃金決定システムに基づき、公正な処遇が図られるこ とにより、公平性や納得性が高まって、能力の有効発揮の機会が増加すると考えられる。 企業にとっては、仕事をベースにした賃金秩序を編成して、仕事をベースにした賃金相 場を形成することにより、労働力の一層の有効活用が図れる。以上の結果として、社会 全体としても労働生産性の向上と、持続的な経済発展が望める。  そこから先に矢印があります。以上のような視点に立って検討いたしますと、仕事内 容等を基軸として、賃金を決定する労使の取組みを支援するための新たな制度が必要で あると考えられます。その新たな制度の仕組みとは、労使の自主的な取組みをベースと し、それを補完・促進するための制度であること、労働市場の中で従事する仕事に応じ て公正な処遇を図ることができる仕組みであること、基幹的な職種に応じた企業横断的 な処遇の確保を図ることができる仕組みであることが必要である。このような仕組みを 「職種別設定賃金」と名付けてはどうかということです。  いずれにしても、職種別設定賃金は労使の自主的な取組みを基本とするものですから、 具体的な制度設計に当たっては、関係労使が実態もよく踏まえて議論していただいて、 実効が上がるような制度として構築していくことが必要であると考えております。以上 が、前回、必要性についてもう少し整理してくれ、ということについてまとめたもので す。  この必要性については、私どもはこうして整理しましたが、労使それぞれご意見があ ると思います。その必要性についての議論は、職種別設定賃金のイメージをある程度労 使双方で共有していただかないと、しっかりした議論は難しいのではないかと考えてお ります。したがって、職種別設定賃金のイメージづくりを少しやった上で、改めて必要 性については議論していきたい。そんな進め方をしたいと考えておりますので、ご理解 をいただきたいと思います。  一応、私に与えられた宿題は発表させていただきました。次に、今日の主要なテーマ は、前回の部会で論点について労使各側から意見が出されておりますが、それ以前の部 会での意見を含めて整理するとともに、前回の部会での質問に対する私の回答について、 趣旨に沿って文言を整理いたしましたので、それについて事務局からご説明をお願いし ます。 ○前田勤労者生活課長   資料1については、公益委員試案ということで、従来の資料です。資料2は「主な論 点」とありますが、前回の「今後の論点」と同じものです。資料3は、「公益委員試案 の考え方と公益委員試案に対する労使の意見」ということで整理しております。資料2 の「主な論点」のそれぞれの項目に沿って整理しています。それは4つに分かれていま すが、一番左にそれぞれの論点について、公益委員試案でどういうふうに表現されてい るか整理しています。左側から2つ目は、前回の質問について部会長からお答えがあり ましたが、それについて整理したものです。公益委員試案に対して、これまでの部会で 出されている労働者側及び使用者側の意見を労使それぞれ整理したということです。  1頁目の(1)の適用対象労働者については、公益委員試案の中身はここに書いてあ るとおりです。それについて使用者側の意見として、適用対象労働者については、基本 的に、職種別の企業内最低賃金に関する労働協約を踏まえて決めるべきというご意見が ありました。一定程度以上の技能を有する者ということになっていますが、その公益委 員試案について、それを測る尺度としては経験年数、勤続期間、国家資格、あるいは検 定を採用するのは適当ではないというご意見です。  公益委員試案の考え方として説明した中では、対象はポジティブリスト方式で定義し て、「基幹的な職種」は一般的には当該産業に特有の職種で一定程度以上の技能を有す る者。ただ、その定義についてはやり方はいろいろあるので、具体的にどのように決め るかについては、今後、さらに議論をしていただきたいということです。  (2)の申出要件については、一定数以上の労働者又は使用者の申出により行うこと ができる、と公益委員試案ではなっています。それについて、労働者側の意見として、 新しい職種別設定賃金の実効性を高めることや、労働組合の組織率の実態を考えると、 現行の産業別最低賃金の申出要件に比べて相当程度緩和すべきというご意見です。  一方、使用者側のご意見は、労使の自主的取組みを補完するということで、現行の産 業別最低賃金よりも高い基準とすべきということです。具体的には分子が、職種別の基 幹職の最低賃金に関する労働協約に示されている対象労働者数、分母がその職種の基幹 職の対象労働者数で、新設が3分の2以上、改定が2分の1以上とすべきというご意見 です。  公益委員試案の考え方として、母数については当該職種の労働者とするのか、あるい はそれ以外も含めるのか、今後ご議論をいただきたいということです。  2頁目で、公益委員試案では、申出は賃金に関する労働協約が一定程度以上締結され ている場合に行うことができることになっています。それについて、労働者側の意見と して、労働協約以外の合意、機関決議や個人合意もカウントすべきということです。申 出は諮問発議の契機であって、決定金額は労働協約と完全にリンクしないということも 考えられることから、労働協約以外の合意も重みに違いはないということで、「一定程 度」についてはゼロも含めて考えるべきというご意見です。  使用者側のご意見として、申出については、これまでの産業別最低賃金に関する全員 協議会の報告などに照らすと、機関決定や個人合意を含めた申出は認めるべきではない ということです。また、労働者が基幹的な職種に就いているかどうかというものは、明 確にわかるのは労働協約であるということで、労働協約による申出とすべきということ です。  公益委員試案の考え方のところでは、労働協約がない場合には申出ができないことが 1つです。協約の中でどのような職種かがわかる必要があるということですが、協約で 具体的にどう表現するかについては今後ご議論をいただきたいということです。協約の 中で、賃金の下限を決める内容が入っていることが必要であろうということです。「一 定数」については、協約が適用されている者だけか、それ以外も含むかという論点があ るわけですが、現段階では、機関決議や個人合意を排除して考えていく必要はないだろ うということです。  3頁目の(3)の決定手続については、適用対象者を決定手続のところでどのように 決定していくのかということです。これについては、公益委員試案に対する使用者側の ご意見としては、申請された労働協約に記されている職種別の最低賃金の協約で定めて いる基幹的な職種を、適用対象労働者とすべきということです。公益委員試案の考え方 としては、その協約で適用対象者を決めて、そのままそれを審議会で決める場合もある だろうし、協約を踏まえて審議会でさらに労使で何か加えるということもあるので、そ の辺は実情を勘案して決めていただきたいということです。  最低賃金審議会における審議の在り方、公益委員の役割や労使の合意の在り方という ことです。公益委員試案については、最低賃金審議会の労使が合意した場合、職種別設 定賃金の設定を行うことになっておりますが、これについて労働者側の意見としては、 労使対等性確保という観点からも公益委員の役割は大きいということです。現在の産業 別最低賃金については「全会一致」という運用がありますが、審議会令においては過半 数の決定になっており、審議会の民主的運営という観点からは過半数の決定とすべきと いうご意見です。  使用者側のご意見は、労使の取組みの補完という趣旨からしても、公益委員の役割は 労使の意見を調整するコーディネータ役と位置付けるべきということと、労使が一致し て見直しに取り組めるという観点から、労使全員の合意とすべきというご意見です。公 益委員試案の考え方としては、公益委員も入れた合意なのか、労使のみの合意とするの か。合意について全会一致なのか、多数決なのか、あるいはそれ以外なのか、さらに今 後ご議論をいただきたいということです。  4頁目の職種別設定賃金の設定について、公益委員試案では、必要性審議と金額審議 を分けて行わないこととする。労働者側の意見としては、分けて行うのではなく、一括 審議すべきということです。その場合、当該産業の労使が、職種別設定賃金の審議に当 たって、構成員として入って決めるべきということです。ただ、具体的な流れのイメー ジについては、実態を踏まえてさらに議論して再提起してもよいのではないかというこ とです。  使用者側のご意見としては、公益委員試案に対しては必要性審議と金額審議について はこれまでどおり分けて行うべきということです。必要性がありで金額改定がゼロとい うのが必ずしもおかしいというわけではなく、金額審議が必要ということと、金額をい くらにするかというのは別だというご意見です。  公益委員試案の考え方として、分けて行わないということについては、基本的には労 使の自主的な取組みをベースとしているということで、労働協約の拡張方式に近いので、 行政の関与を減らすということから、必要性審議と金額審議を分ける必要はないのでは ないかということです。  5頁目の職種別設定賃金の水準の設定・改正に係る手続については、使用者側のご意 見として、労働協約拡張方式のような考え方をとるべきではなく、現行の産業別最低賃 金と同様に審議を行って金額を決定すべきというご意見です。  (4)の移行期間中の適用の在り方ということで、公益委員試案では十分な移行期間 の中で、大きな混乱が生じることのないようにということです。労働者側の意見として、 移行期間は十分長い期間を確保すべきということと、移行期間中についても現在の産業 別最低賃金についての新設や水準改正が行えるようにすべきということです。移行期間 は職種別設定賃金の根拠法施行後とするのが妥当といったご意見です。  使用者側については、移行期間が3年間というのは長いのではないか、仮に3年とい うことであれば、廃止されることが明らかな産業別最低賃金について、新設を認めない のはもちろん、改正についても認めるべきではないということです。移行期間中におい て、ある産業で1つでも職種別設定賃金が設定されたら、既存の産業別最低賃金は廃止 すべきというご意見です。  職種別設定賃金の根拠法については、労働者側のこれまでの意見として、例えば労働 時間等設定改善法の改正などが考えられる。いずれにしても、労使の自主的な処遇改善 の取組みをオーソライズするために、民事効を含む法体系の中で措置すべきということ で、労働契約法については反対であるということです。職種別設定賃金の根拠法につい ては、最低賃金法改正と一括して審議して決定すべきというご意見です。  7頁目の「地域別最低賃金」については、(1)の生活保護との関係の考慮について ですが、労働者側の意見として、生活扶助、住宅扶助、医療扶助、生業扶助、勤労控除 といったものを念頭に置くべきということです。生活保護との整合性は、今後地域別最 低賃金がすべての労働者の賃金の最低限を保障する安全網として十全に機能するように、 ということからいって欠かせないというご意見です。  使用者側のご意見として、最低賃金制度と社会福祉政策との整合性を図ることについ ては疑問を禁じ得ないということです。労働の対価である賃金と社会福祉としての生活 保護というのは、根本的に異なるのではないかというご意見です。生活保護の水準その ものが適正かどうか、という点も議論すべきではないかというご意見です。最低賃金法 の中で、現在「労働者の生計費」と書いてあり、この中で生活保護も生計費をベースに しているということで、これまでも既に議論されてきたので、今まで以上に生活保護と の関係を考慮する必要はないというご意見です。  公益委員試案の考え方としては、社会保障政策との整合性を図る中で「生活保護」を 取り上げたということです。考え方としては、最低賃金は生活保護水準を下回るべきで はないということですが、現在、生活保護水準自体についての見直しが重要な課題にな っている中で、最低賃金の決定については、様々な要素を総合的に勘案するわけですが、 生活保護もその一つの要素であることを明らかにしたということです。具体的にどう整 合性をとるかについては、今後の検討課題ということです。  8頁目の(2)の地域における労働者の賃金についてですが、「類似の労働者の賃金」 については、「地域における労働者の賃金」に改めるということです。これについての 使用者側のご意見は、「地域における労働者」と改めると、地域における一般労働者と 捉えられる可能性があって妥当ではないということです。地域別最低賃金が適用される 可能性が高い、パートタイム労働者やアルバイトといった方をむしろ参考にすべきとい うことで、変えるのであれば「地域における類似の労働者」とすべきということです。 特に中小企業で最低賃金を適用される可能性が高いということで、小規模零細企業の実 情をよく考慮していく必要があるということです。  公益委員試案の考え方については、現行法は地域別最低賃金だけではなく、産業別、 あるいは職業別を前提にしているもので、「類似の労働者」としていると理解している。 今後、地域別最低賃金だけの根拠法になるので、「地域における労働者の賃金」に改め るということです。  9頁目の(3)の罰則の強化です。公益委員試案では、地域別最低賃金違反に係る罰 金額を、労働基準法24条よりも高いものとするという考え方です。これについて、使用 者側のご意見としては、現行が低いことは理解するが、最低賃金法の罰則は制定以来、 ずっと据え置かれているということで、強化するということであれば、そういった歴史 的な経緯も踏まえて議論すべきである。もう1つは、最低賃金の機能のためには、罰金 額を引き上げることよりも、広報や行政指導などを通じて、周知徹底して法令遵守を促 すことが必要ではないかということです。前回までの意見の整理は以上です。 ○今野部会長  前回までの議論の整理をしていただきましたので、今日の議論も含めて、論点につい て引き続き議論をしていきたいと思います。労使ともご意見がありましたらお願いしま す。 ○須賀委員  これまでの議論の経過、あるいはそれまでに提起されてきた労使の意見、さらには公 益委員側から補強のあった考え方等について、全体を整理していただいた資料の説明が ありました。おおむねこの内容で、これまでの論議の経過であったと判断できると思い ます。資料2の「主な論点」に基づいて、資料3で特に労働者側の意見が空白になって いる部分について、論点に沿って少しご意見を申し上げます。  1頁目の(1)の適用対象労働者の定義については、公益委員試案に示されている考 え方と同様の考え方に立っていいのではないか、と労働者側としては考えております。 適用対象労働者については、全国、あるいは全産業を横断的に一定の職種の労働者を対 象とする必要はないと考えています。一定の地域の中分類等を対象とした特定の産業の 中の職種の労働者に限定してもいいのではないかと考えております。その考え方の範囲 の中で、適用対象労働者については、申請時点で、申請をする立場にある者が確定する。 そしてそのことによって申請ができると考えていいのではないか。  2つ目は、一定数以上の中身の話です。これまで基本的に労働者側として議論の中で 考え方を表明してきましたが、1点のみ追加いたします。セーフティネットとしてきち んと機能させるという意味では、その決定をする地方最低賃金審議会の役割は非常に重 要であるという認識に立っております。そうした中で、私どもにとっては非常に残念な ことですが、場合によっては、労働組合の組織率が極端に低いことも考えられます。先 ほど申し上げたように、地方最低賃金審議会の役割からかんがみますと、その審議会の 建議によって設定することができる、という考え方もとり得ると思います。この点を1 点追加いたします。  同様に、一定程度以上の「一定程度」の考え方ですが、ここでも1点だけ追加いたし ます。ここでは労働協約の位置付けをどうするのか、非常に重要になってくると考えて います。賃金に関する労働協約という意味では、幅広い概念で労働協約を捉えていく必 要があると考えています。最低賃金協定を含める賃金の範囲と水準を定めた賃金協定等 についても、この労働協約の概念の中に含めていくべきだと考えています。また、職種 についても、労働協約に具体的な記述をする必要はないと、労働協約の性質上考えます。 実質的には基幹的な職種がその労働協約の中に含まれている、という解釈でもいいので はないかということで、そうあるべきだと主張しておきたいと思います。  3点目は「決定手続」の関係で、適用対象労働者の決定の仕方についてです。申出の 内容に既定する職種の基幹的労働者を適用対象労働者とすべきだと考えていることは、 先ほど申し述べたとおりです。その際に、一定の要件を設けることについては、その必 要性は否定いたしません。しかし、その裏返しとして、異議申立てもフローの中で示さ れておりました。その異議申立ての要件も、併せてきちんと整えておく必要はあるので はないか。公益委員の役割なり、あるいは労使合意の在り方の項に関しては、特段追加 することはありません。  4頁目の必要性の審議と金額審議の分離についても、既に公益委員側の考え方も補足 されてますし、私どもが申し述べてきた意見の中で補足すべき点はございません。  5頁目の水準の設定と改正に係る手続の関係で、1点だけ申し述べます。労働協約が 締結されていることを申出の要件と求めるのであれば、その水準の決定に際しても、労 働協約に締結されている内容を重視していく必要があると考えます。労働協約に締結さ れている水準を基本に、金額審議を行うのは当然であると労働者側としては考えます。  移行期間中の適用の関係については、1つ追加いたします。取り分け、長年にわたり 産業別最低賃金が運用されてきたわけですが、これを廃止して、新たな仕組みとして職 種別設定賃金を運用することになるわけですから、現行の産業別最低賃金からの円滑な 移行、あるいは転換が重要になってくると考えており、それをどう運用するのか、水準 の改正はもとより、新設も含めて何らかの措置を講ずる必要があると考えていることを 追加いたします。  その他の根拠法の関係についても、既に申し述べておりますので、ここでは追加する ことはありません。以上が、職種別設定賃金にかかわる追加です。  次に、地域別最低賃金にかかわる内容について補足させていただきます。特に生活保 護との関係の考慮のことでは、大変重要なことを私どもなりに既に述べておりますが、 1点だけ補っておきたいと思います。これまでも生活保護の議論はいろいろとなされて きたわけですが、その基本となっているのは1962年、つまり昭和37年に社会保障制度 審議会の中で、社会保障制度の総合調整に関する基本方策についての答申及び社会保障 制度の推進に関する勧告が出されているわけです。この中にも明確に最低賃金と生活保 護との関係が、公益委員試案にあるような考え方に立って記載されています。また、直 近では2004年12月に生活保護制度のあり方に関する専門委員会の報告書が出されてお りますが、その中にも同様の視点で雇用政策との関係が明確に記載されています。した がって、最低賃金は雇用政策の重要な一部だとその中でも明記されていますし、今議論 されている、地域別最低賃金という意味での社会的なセーフティネットの役割をさらに 強化していこう、という視点での検討だと考えますと、生活保護との関係について十分 な整合性を図ることは当然である、と考えていることを改めて追加いたします。  (2)の「地域における労働者の賃金」の類似の労働者と地域における労働者の考え 方については、地域における労働者をどう捉えるのかというのは、セーフティネットと しての機能をどのように担保するのか、あるいは効力のあるものにならしめるのかとい う意味で、非常に重要であると考えております。そういう視点に立って1点追加いたし ます。地域における労働者というのは、当然地域別最低賃金の適用を受けている労働者 全体を指すと考えたいと思います。したがって、その比較の対象についても、適用対象 者全体のことを指すのは当然のこととして考えています。  最後に、罰則の強化についてです。この部会での検討は、セーフティネットとしての 機能をより高める。さらにそれを特化することによって、実効あるものにしていく目的 での検討である以上、あるいはその結果での改正であることを目指していくのであれば、 現行の最低賃金法の制定当時の考え方に則って、罰則については十分に強化を図ってい く必要があると考えています。たくさんの意見を申し述べてきましたが、既にこれまで の部会の中等々で整理をされているところもありますので、それに追加していただくこ とで意見に代えさせていただきます。 ○今野部会長  他の委員から補足はありますか。 ○中野委員  少し補足させていただきます。地域別最低賃金のところで、生活保護との関係で最低 賃金が雇用政策の重要な一部というのが、生活保護の制度のあり方に関する専門委員会 報告に載っていると、須賀委員から発言されましたが、明確にそのように書かれている とは思っておりません。ただ、私は最低賃金というのは雇用政策の中での重要な一部と いう認識を持っておりますので、そのように整合性を考えるのは当然であると考えます。  もう1点、適用対象労働者、地域別最低賃金の地域における労働者とは、比較対象で ある適用労働者全体と主張いたしました。この中身は、ILOの第30号の勧告になりま すが、大多数の組織労働者の協約がある場合にはその協約の水準で、それがない場合に は、国全体、あるいは一定の地域における一般的労働者の平均的賃金を考慮すべきであ る、という勧告が出されております。ですから、それをやはり経済的に大きな国になっ た日本の現状の中では、国際的な勧告を尊重すべきであるという立場から申し述べた次 第です。 ○今野部会長  使用者側の委員からはご意見はございますか。こうやって整理されていますが、少し ニュアンスが違うとか、そういうことでも結構です。あるいは改めて追加されることが あればお願いします。 ○川本委員  前回代理でしたが使用者側としての意見は大体申し述べまして、本日資料3に書かせ ていただいております。補足をしておくと1頁の(1)の2つ目のポチに「一定程度以 上の技能」というご指摘があるわけです。これは私どもが言ったことですが、ただもう 1つ補足をして意見を申し述べておきたいと思います。今回、職種別賃金という概念が 強く出てきているという本来の考え方に基づいて考えると、働く方が自分でどれだけの 技能をもっているかという、その有無ということではなく、発揮能力、つまり何の仕事 をしているのか。具体的な仕事の中身で本来定義されるべきであろうと思っております。 付け加えさせていただきたいと思います。 ○原川委員  中小企業の立場で申し上げたいと思います。1つは3頁の「決定手続」、4頁の「必 要性審議と金額審議」、5頁の「職種別設定賃金の水準の設定・改正に係る手続」の3 つに関連するわけです。4頁の「必要性と金額審議を分けて行わない」という欄に、公 益委員試案の考え方として、「労使の自主的な取組み」というのが2行目に書いてあり ます。これはまさにそのとおりだと思いますが、この職種別設定賃金は、実態としては どうしても大企業を中心に申出が行われることになるかと思うのですが、4頁の下の枠 に書いてあるように、労使の自主的な取組みという以上は、中小企業の使用者側の意思 をやはり反映させるべきであると考えております。  1つは4頁のように、労働協約拡張方式ということになれば、大企業を中心とした申 出によって金額が自動的におそらく決まるというようなことは、是非とも避けるべきで あると思います。それから5頁の下の「職種別設定賃金の水準の設定・改正に係る手続」 においても、審議会でこういうものをきちんと審議して、決めるという方式にすべきで あると考えます。最後に4頁の必要性と金額の審議ということになるわけですが、これ もそういう場で中小企業の意見を反映するしか方法はないわけです。決定すればそれは 中小企業に効力が及ぶということになりますので、そうするとやはり審議会の役割とい うのは、中小企業の声を反映するという点においても、非常に重要な意味を有するので はないかと考えるわけです。必要性の審議を十分尽して、金額の審議を行うべきである ということで、やはりこれは別々に区別して行うのが、中小企業に対する配慮として必 要ではないかと考えております。 ○今野部会長  ありがとうございました。他にございますか。 ○池田委員  必要性審議の問題は、この間も申し上げたところと重複するかもしれないのですが、 今もお話になったように中小企業がなかなか理解できない。大企業では今日の新聞のよ うに、従業員確保のためにパートタイム労働者から正社員に採用している動きですから、 一時期とは労働者の契約形態が変わってきました。ここにあるパートタイム労働者の増 加、就業形態の変化がワンテンポ遅れているかなという感じがするのです。特に東京商 工会議所でも今アンケートをやっているということで、現状でも職種別設定賃金に対し て、1つは従業員の納得が本当に得られるかということ。やはり1人の人間がいろいろ なことをやっているので、前回申し上げたように「あなたはここよ、これこれ」という ことで、それによって賃金を決めたり、人事異動をしたりすることが非常に難しいとい うことで、これが仮に決められても、中小企業としては非常に扱いにくい制度になると いうことです。まだいまひとつ商工会議所の経営者の皆さんにとっては、この必要性が なかなか理解できないところがあると思います。  例えばサービス産業でいえばコンビニなどをやっていても、スーパーにしても、売る 人と購買する人とひととおりやってはじめて一人前になるわけです。あなたは購買専門 と言ったときに、そこへ行けば賃金は高いのですと、それが区別できるのかということ もあると思います。本当に中小企業として、どのようにやっていいのかということが、 実態がなかなか分りにくいことがあるので、もう少しその辺の根拠について議論をして いただきたいと思います。  この間中野委員が、労働者側としてのメリットを3つぐらいおっしゃっていてわかっ たのです。経営者側としてのメリットは何なのかなというところが、特に大企業の方に はどういうメリットがあるか、中小企業にとってどのようなメリットがあるかというこ とが、少し理解しがたい面があります。その辺をもう少し教えていただければと思って います。 ○今野部会長  他にございますか。必要性については先ほどもお話したように、少し形も考えながら 議論させていただければと思っています。1つだけ例を挙げると、先ほど、1人の人が いろいろな仕事をしているから、職種別設定賃金など設定すると、仕事がやりにくくて 仕方ないということをおっしゃられた。職種別賃金あるいは仕事別賃金などの議論があ るときは必ずその意見が出てくるのですが、それは作り方によります。  例を挙げると、仕事別賃金というとアメリカが一番典型です。アメリカは非常に狭い 範囲で職種を定義してしまったものですから、今おっしゃられるような状況が生まれて、 組織の生産性がすごく落ちたという反省があります。そこですごく大括りにしてしまっ た。大括りにすると実際上は、その括りの中でいろいろな仕事が全部入ってしまうので、 あるいは配置転換上もその括りの中で異動するのがほとんどなので、そういう問題は回 避できた。でもやはりある程度は仕事で押えたいということで、アメリカは1980年代以 降そのようにして賃金の制度を変更してきたのです。これは1つの例なのです。ですか ら作り方との関係があるので、そのようなこともありますので、少し作り方等をイメー ジしながら、やはり必要性の議論をさせていただいた方がいいかなとは思っております。 ○須賀委員  先ほど使用者側の委員からいくつかご意見が出てきましたが、部会の議論の根幹にも かかわるのではないかな、という部分での受け止めをした意見がありましたので、少し 考え方を聞かせていただければと思い、質問をさせていただきます。先ほど大企業中心 の申出になる、そうすると中小企業、特に使用者側の意思が反映できないとおっしゃい ましたし、もう一方、経営者にとって何もメリットがない。あるいは大企業のメリット は、中小企業のメリットはということもおっしゃいました。もともとこの最低賃金とい うのは、メリットがあるとかないとか、あるいは中小企業の声が、大企業が申請するこ とによって大企業の、私も大企業の出身の労働組合の役員ですが、その申出をしている ということは少し違うのではないかと思っています。  例えば申出でいくと、労働者の立場に立って、確かに申請をしているのは大企業出身 の私どものような組合役員でしょうけれども、未組織の皆さん方にどういうセーフティ ネットとしての最低賃金を作るのかということで、金額の審議も含めて、申請をしてい るはずなのです。またそのために労使が審議会の場の中で、話し合っているはずなので す。ここは是非、そういうスタンスでこの問題は考えていくべきではないかと私は思っ ておりますので、そのことに関して少しここで議論させていただければありがたいと思 っています。  メリット、デメリットで考えていくと、もちろん大企業にとって何もメリットはあり ません。中小企業に効くような、そういう最低賃金を作る、つまり賃金の社会性をセー フティネットとして、どのように確保していくのかということが、本来この最低賃金制 度に求められている一番大きな根幹にあるはずなのです。ここは是非、使用者側の皆さ ん方もそういうスタンスでこの議論を進めていただければありがたいと思いますので、 できればもう少しそこの辺について意見の補足をしていただければ助かります。要望と しては先ほど最後に申し述べましたような、そういうスタンスでの議論をお願いしたい と思います。以上です。 ○原川委員  私が申し上げたのは、これまでの産業別最低賃金も同じですけれども、大体申出をす る、発議するというのは、数がまとまったその地域の大工場、そういう所が中心のこと がほとんどだと思うのです。この職種についてあるいは金額の水準について、我々はこ ういうことで職種別設定賃金を設定するという申出をするという場合に、そこまでは中 小企業というのは、その前に労使の合意があるかどうか分りませんけれども、少なくと も中小企業の意見というのは、そこには全く入らないとは言いませんけれども、ほとん ど入らないのではないかという懸念があるわけです。  したがって、私が言いたいのは、申出をした後に、先ほど必要性ということでいろい ろな意味が混在してしまったと思いますが、地方の審議会の中での審議というのは、非 常に中小企業の意思を反映することにおいて、重要な役割を果たすということを言いた かったわけです。そういうことですから、水準もそういう中でしっかり話し合って決め るべきだということです。話合いの仕組みとしても、必要性と金額の審議を一緒にして やるべきというような意見が載っているのですが、これは審議会の中の必要性の審議で すけれども、これをしっかり審議した上で、金額の審議、従来のやり方でやるような、 そういう慎重なやり方をした方がいい。もっと言うとそうするべきであると考えるわけ です。 ○今野部会長  他にご意見ございますか。先ほどの須賀委員の御意見のメリット、デメリットについ ては、本当は私は異論もあるところもあるのですが、私としては今日はその議論は必要 性議論と同じですので、少し避けたいと思います。それ以外で質問あるいはご意見ござ いますか。 ○杉山委員  今日の資料4「職種別設定賃金の必要性について」ということを整理していただいた わけですが、この背景、必要性、効果とあるところ、ここまではかねて使用者側の諸団 体等もこれは進めるべきだと言ってきたことであって、全く異論のないところであろう と思います。「新たな制度の仕組み」というところに結び付くときに、職種別設定賃金 という言葉というのは非常に幅の広い意味だろうと思います。今回決めようとしている ことは、職種別の下限賃金のみを決めようとしておるので、それは最低賃金部会で検討 していることにも現れているわけです。賃金全体ということであれば、全く意見が一致 するところ、よくわかるところが、なぜ職種別下限賃金を設定する理由に結び付くのか。 そこから急に何か崖を飛び降りるような感じになるものですから、よくわからないとい うところにつながっておるのではないかという感想をもちましたので、少し申し上げさ せていただきたいと思います。 ○今野部会長  今おっしゃられた意見を正確に理解する点に絞って質問します。どのようにするかわ かりませんが、職種で見た場合、基幹的労働者はいろいろな労働者がいますから、それ が何ランクかに分かれた場合に、それぞれのランクについて下限を決めていると、職種 別設定賃金という言葉になじんだ内容であるというお話と受け取っていいですか。 ○杉山委員  過去言われてきたのは、仕事別賃金にしろ、職務給にしろ職種別ということと、例え ば仕事別のランク別、能力のランクであったりする賃金表全体の設定、これを改善しな いと結局、公正で効率的な賃金決定システムとは言えないのではないか。それを下限の ところだけ決めれば、なぜ公正で効率的な賃金決定システムなのかよくわからないとい うことです。 ○池田委員  今回この職種別設定賃金というお話ですけれど、これは民法で決められたものではな くて、罰則はないわけですね。そうするとひとつの特別法ということになるわけで、特 に遵守しなくてもいいということになります。 ○今野部会長  でも見つかったら払わなければ駄目ですよ。 ○池田委員  見つかったら払うのですか。 ○今野部会長  そのとおりです。 ○池田委員  そうするとこれは職種別設定賃金という、最低賃金ではないのですか。これは労使が 一致して、この業界のこの能力は日本の将来にとって増やそう、やはり国際的にも競争 力を上げて、ものづくりの国として。今、サービス産業ということをかえっておっしゃ っているから、サービス産業部門でこれから国際的にも労使が一致して設定して、産業 別最低賃金よりも高い賃金を設定して、そういうことによりどういう経済効果があるの かというところが一致して作れるのであれば、その人たちだけで作ればいいのであり、 その賃金が他の県、中小企業にまで全部影響して、今まで上げなくてもよかったものが、 急にこの業種は今度は上げざるを得なくなってしまった、最低賃金だということになる と、それは経営者としては何のためなのかということになるのです。ですからその辺が 今度は罰則もないし、民法できちんと決められたものでなく、民法外で決められ、過半 数でも決められてしまうということになる。そんな簡単に決められてしまったものでも、 中小企業の生産性に対して効果のあるものでないと、なかなか経営者は何でこのような ことをやるのかということになります。 ○今野部会長  これも池田委員がおっしゃられた内容を理解したいための質問ですが、今おっしゃっ た労使で、例えば今なら情報技術者が日本にとって非常に重要で、この人たちをどうに かしたい。そのときに労使で相談して、ではこのくらいのお金を払おうではないか、そ うしないと良い人材も集まらないし、やる気も起きないぞと。そういう労使というのは、 企業内の労使のことをイメージされているのですか。それとも企業を超えた労使をイメ ージされているのかが、よくわからなかったのです。 ○池田委員  一応そういう組合の組織に入っていれば、組織と組織の話合いになりますね。それが 話合いの中で、今おっしゃる、先生がこの部門をもっと強化しようと、国として他の国 に負けないようなレベルに上げようではないかということであれば、経営者としてのメ リット、人材を増やすにはメリットは出てくると思います。 ○今野部会長  そうするとそのときに、もしそうやって労使が少し企業を超えた形で相談をされて、 これから情報技術者がきちんとしないとやはり日本は危ないぞということでやると、情 報技術者でも中小企業で働いている人がいますから、その人についてもその賃金を払わ ないと、日本全体はよくならないです。ということはずっと適用されるということにな ります。 ○池田委員  それに参画すれば、そういう意識をもってくれれば中小企業の人たちが。 ○今野部会長  いや、今のお話は日本全体を良くしようという話ですから。そうすると最初相談され たときに、参加する会社もありますけれど、結果的にはそれ以外の会社も参加していた だかないと、日本全体の情報技術者のレベルアップになりませんから、ではそれでいこ うというと、職種別設定賃金に近くなってくるかなというように、お話を聞いていたの です。 ○池田委員  そういう部分では理解できると思います。将来の方向性というものであれば。ただ単 に組織化して、急に底の部分を上げてしまうと、産業別に変わって、やはりセーフティ ネットとしてだけ上げてしまおうという意識だと、経営者としてはあまりメリットはな いなという。 ○今野部会長  ちょっと表現が下手だったのかもしれませんが、気持ちとしてはそういうことがあり ます。ただそういうことをやるときに、職種別設定賃金とすれば、先ほど杉山委員がお っしゃったように、職種別設定賃金という名前がいいのか、あるいはこれだけでいいの か、いろいろな問題はあると思います。そういうことも含めて、少し形を考えながらや らないと、なかなか議論はしにくいかなと私は何となく今思っています。 ○池田委員  私の解釈は、パートタイム労働者が増加してきたのは、リストラによって企業がパー トタイム労働者に負ってきたけれども、これからは人手不足の時代になってきて一般社 員化している。ただ就業形態が多様化したのは、そのようにパートタイム労働者をどん どん採用して、今まで社員がやっていた部分をパートタイム労働者の人に任せたので、 パートタイム労働者の人たちがやる職種がとても増えてきたということです。そういう ことで多様化ということになってきたのではないかと思います。  今、逆にそれを専門化しようという、パートタイム労働者も引き上げて一般社員にし て、専門家的に育てていこうという時代になった場合にはじめて、職種別設定賃金とい うのが出てきて、「同じパートタイム労働者でもそこの部分をやるのなら、これだけの お金を払うよ」というところで、そこを定着させて養成していこうということであれば、 理解できる面もあるのです。それは、その職種が全部最低賃金に変わるものだというの なら、地域別最低賃金があるからいいではないかという。 ○今野部会長  ここに書いてある、例えば就業形態の多様化もおっしゃられたように、最近企業は調 子が良くなってきて、パートタイム労働者を正社員化するという動きも確かにあります。 物事というのはいつも両方の力があるので、しかし片方では例えば正社員の中で、育児 などいろいろな問題があって、短時間で働きたいという人も増えているわけです。その ように同時に動いているので、パートタイム労働者だけでいうと、パートタイム労働者 は景気が良くなったから一方的に減るかどうかというのは、なかなかそれは難しい問題 だと思います。ただヨーロッパなど他の国の経験をみると、構造として就業形態の多様 化というのはあると。昔のように正社員一本で、みんなフルタイムという昔の姿に帰る とは到底思えない。そういう趣旨でここには書いてあるのです。他にご意見はございま すか。 ○川本委員  今、池田委員と今野部会長で意見交換がされましたが、その中で今回は罰則なし、見 つかったら払わなければいけないという話がありました。確認ですが、この職種別設定 賃金が決まった場合、それを下回る賃金を支給している会社があったとすれば、その賃 金は無効となります。そして無効となっても、その賃金でやっていたらば、労働基準法 の賃金不払原則がかかってきますと、こういうことでよろしいのでしょうか。 ○今野部会長  それでよろしいのですよね。 ○前田勤労者生活課長  はい、そういうことです。 ○川本委員  つまり賃金不払ということになりますと、罰金がかかると、こういうことですね。 ○前田勤労者生活課長  はい、そういうことです。 ○川本委員  もう1つ、パートタイム労働者の話が出たので、必要性の話ということでなしに、一 般的に非常に企業が厳しかったので、コスト的な問題でパートタイム労働者が増えたと いうご指摘です。あるいは正社員がやっていた仕事がどんどんパートタイム労働者に置 き換わっているから増えたのだというご指摘。これは一般的にあるわけですが、一般的 に世の中に出ている指摘の中で、一番欠けているのが、実はICT化が進んだというこ とだと思っています。つまりかつては新入社員で入って、長年熟練をしていかなければ、 会社にとっても困ったという分野が非常にあったのですが、ICT化により非常に仕事 がマニュアル化され、標準化され、かつ単純化したというのがあります。そういう中で 実はパートタイム労働という形の働き方というのもかなり増えたのではないか。そうい う要因もかなりあるのではないかと考えているということだけ申し上げておきたいと思 います。 ○今野部会長  他にございますか。前回もそうですが、今日は論点にしたがって労使の意見をお聞き したわけですが、かなり対立点も多く、もしかしたら公益委員との対立点もたくさんあ るようです。したがって今日は一応ご意見をいただきましたので、その後少し自由な議 論もさせていただき、少し私の進め方の思いもお話をさせていただきました。そのよう なことを全部踏まえて、今後どのように進めたらいいかを私どもで考えさせていただけ ないかと思いますが、いかがでしょうか。それからもう一度進め方についてご相談をさ せていただくということで、こちらも変な言い方ですが、作戦を練り直して、もう少し スムーズに進むようにしたいと思います。かなり労使のご意見の違いというのが明確に なって、これで今、ガクッと固まってしまっていますので、私が以前に考えたようなや り方で、もしやってしまうと、またこのままずっとただ回を重ねることだけになって、 あまり有益ではないと思いますので、少し進め方を考えさせていただくと。それについ てはご相談をさせていただくということで、よろしいでしょうか。  では今日はそういうことでまとめさせていただき、十分ご意見をいただきましたので 終わりにさせていただきたいと思います。本日の議事録の署名は、横山委員、池田委員 にお願いしたいと思います。それでは終わります。ありがとうございました。    【本件お問い合わせ先】   厚生労働省労働基準局勤労者生活部    勤労者生活課最低賃金係    電話:03−5253−1111            (内線5532)