06/05/18 第31回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第31回厚生科学審議会科学技術部会  議事次第  ○ 日  時  平成18年5月18日(木)13:00〜15:00  ○ 場  所  厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館 9階)  ○ 出 席 者    【委 員】 矢崎部会長          今井委員 井村委員 岩谷委員 垣添委員 加藤委員 岸委員     木下委員 黒川委員 永井委員 長尾委員                 長谷川委員 松本委員 南委員   【参考人】 中畑委員(ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会)  【議 題】   1.ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(案)について   2.厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(案)について   3.戦略研究課題の進捗状況について〔報告〕   4.その他  【配布資料】   1.ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(案)について   2.厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(案)について   3.戦略研究課題の進捗状況について〔報告〕   参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿 ○林研究企画官  それでは先生方の定足数が揃われましたので、これから第31回厚生科学審議会科学技 術部会を開催させていただきます。まず最初に、いつも申し上げていることですが、傍 聴の皆様におかれましては、傍聴にあたって、すでにお配りしております注意事項をお 守りいただきますよう、お願いいたします。  それでは委員の先生方にはご多忙の中お集まりをいただきまして、どうもありがとう ございます。本日は金澤委員、北村委員、笹月委員、竹中委員、中尾委員、宮村委員か らご欠席の連絡をいただいております。南委員は遅れていらっしゃるとのことです。委 員20名のうち、出席委員は過半数を超えておりますので、会議が成立いたしますことを ご報告いたします。  次に委員の変更についてご報告いたします。前社団法人日本医師会常任理事の橋本信 也委員がお辞めになりまして、今回から新たに社団法人日本医師会常任理事の木下勝之 委員がご就任されています。この結果、現在の委員は参考資料1の名簿のとおりとなっ ておりますので、ご確認をお願いいたします。  本日、議題1の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(案)」の審議の関係で、 このヒト幹細胞を用いる臨床研究の在り方に関する専門委員会の委員長でいらっしゃい ます、京都大学大学院医学研究科教授の中畑先生に、参考人としてご出席をいただいて おりますので、ご紹介申し上げます。  続きまして、本日の会議資料の確認をさせていただきます。第31回厚生科学審議会科 学技術部会の「議事次第」というA4の1枚紙に配付資料を記載しております。資料1 が「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(案)について」、資料2が「厚生労働 省における動物実験等の実施に関する基本指針(案)について」、資料3が「戦略研究 課題の進捗状況について(報告)」です。参考資料1は、先ほど申し上げた厚生科学審 議会科学技術部会の名簿です。配付資料は以上ですが、資料の欠落等がございましたら、 事務局までお知らせいただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。それ では矢崎部会長、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  本日は大変お忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございました。特に中畑 先生にはわざわざご出席をありがとうございます。木下委員が初めてのご出席ですので、 一言お願いできればと思います。 ○木下委員  はじめまして。日本医師会からまいりました木下でございます。この3月まで順天堂 大学の医学部産婦人科を主宰しておりまして、この4月から、はからずも医師会で仕事 をするようになりました。先端医療の部門を担当させていただいておりますので、この 会に出席させていただくことになりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○矢崎部会長  よろしくお願いいたします。それでは議題1の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関す る指針(案)」です。まず最初に、関山疾病対策課長からご説明をお願いします。 ○関山疾病対策課長  それでは資料1の1/48です。ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針については パブリックコメントを実施し、35団体等から意見数151件ありました。そのうち大臣告 示として公布する指針の修正が必要と考えられるご意見が5点ありました。その修正点 のご意見を以下に書いています。1点目は本指針の目的に「再生医療の推進」という文 言を盛り込むべきではないか。2点目としては指針の適応となる対象疾患等に、形態に よる障害を含めるべきではないか。3点目として今日ご欠席ですが北村委員からもご意 見がありました、基本原則の4の品質等の確認の事項において、ヒト幹細胞は安全性が すでに確認されていると言えるのかというご意見。4点目として、第3章のヒト幹細胞 の採取において自己細胞移植の場合は、ヒト幹細胞の採取の目的を優先して行うことが あり得るのではないかという意見。5点目として第6章で公布と施行の期間の見直しを 求める意見があり、これらに対して下線部の修正を行ったところです。  また、施行日についてはご意見を踏まえて、9月1日に変更しました。これらの修正 を盛り込んだのが3/48の「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針(案)」です。 なお、通し番号の37頁に、パブリックコメントで寄せられ集約した意見及びそれに対す る回答の全体版を添付しています。 ○矢崎部会長  それでは今日ご出席いただいた中畑先生から、何か補足があればよろしくお願いいた します。 ○中畑委員(ヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委員会)  現在のところ特に追加はございません。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。これはヒト幹細胞を用いた臨床研究の在り方に関する専門委 員会で検討された結果、パブリックコメントでいま課長が述べられた5カ所を訂正させ ていただいたということです。何か委員の皆さんでご意見はございませんでしょうか。 前回は一応ラフに見ていただいてご意見をいただいたのですが、まずこの訂正を認めて いただけますでしょうか。よろしいでしょうか。                  (了承の声) ○矢崎部会長  どうもありがとうございます。そのほか、ございますでしょうか。 ○加藤委員  通し番号の15頁、研究責任者はヒト幹細胞臨床研究を実施、継続または変更するにあ たり云々と書いてあって、あらかじめ当該臨床研究の実施計画を記載した書類を作成し、 研究機関の長の許可を受けなければならないと記載されていますが、この研究機関の長 というのは、非常にさまざまな研究機関に属する研究者が、この指針の下に構成される と思うのですが、この表現ですべて大丈夫なのでしょうか。あるいは研究機関の長とは 具体的にどんなことを指して言っているのでしょうか。 ○関山疾病対策課長  文字どおり研究機関という組織がありますが、組織責任者たる部門長が該当します。 例えば病院ならば病院長といった方々が対象として、この研究機関の長に該当すると考 えています。また、その点について細則でも例示を出そうと思っています。 ○加藤委員  この書類に載っているのですか。 ○関山疾病対策課長  今後、その運用にあたりそういう必要があるということですと、そのように対応させ ていただこうと考えています。 ○矢崎部会長  最後に参考の「流れ図」というのは、新たに付いたわけですね。 ○関山疾病対策課長  この点については、前回笹月委員からご指摘がありましたので、研究機関の長のポジ ションと厚生労働大臣のポジション、倫理審査委員会のポジションをこのような形で修 正させていただきました。 ○矢崎部会長  このような流れに沿って、申請した後の研究の実施、重大な事態の発生、あるいは後 の中間報告と結果の報告をやっていただく。これは他省庁との関連でご説明いただけま すか。 ○関山疾病対策課長  他省庁との関係ですが、ヒト幹細胞、体性幹細胞です。この取扱いですが、基礎研究 については文部科学省が研究の任にあたるということです。今回審議していただいてい るこの指針は、まさに臨床研究の分野においてヒト幹細胞を利用した臨床研究を、いか に適切に実施していくかというための指針です。こういった基礎分野、臨床分野で両省 庁がそれぞれ役割分担をしているという状況です。 ○矢崎部会長  そうしますと、この分野で厚労省が指針を出して、ヒト幹細胞に対する臨床研究には この指針に従ってください、あらゆる施設がこの指針に従ってくださいという理解でよ ろしいのですね。 ○関山疾病対策課長  はい、そうです。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。そのほかはよろしいでしょうか。                  (了承の声) ○矢崎部会長  それでは修正をお認めいただいたということで結論させていただきたいと思います。 どうもありがとうございました。それでは中畑先生、大変ありがとうございました。                 (中畑委員退席) ○矢崎部会長  続きまして動物実験等の実施に関する基本指針(案)、これは厚生労働省の基本指針 ということで、事務局から説明をお願いします。 ○林研究企画官  厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(案)について資料2に沿い 説明します。この動物実験の基本指針案については、今年3月8日の第29回の科学技術 部会で一度ご検討いただきました。その後、3月16日から4月5日までパブリックコメ ントの募集を行いました。今般、その取りまとめが終了し、基本指針案本文の必要な修 文を行いましたので、改めてご検討をお願いするものです。  資料2の1/39〜5/39ページまでが最新の指針案です。その後、7/39〜12/39 ページにかけて修正部分を見え消しにした資料を付けています。13/39〜19/39ページ までがパブリックコメントで出てきた意見とそれに対する当方の考え方を整理したもの です。13/39ページの上のパラグラフですが、パブリックコメントでは全部で106件の 提出者から899件の意見が寄せられました。動物愛護の立場と実験を実施する立場の双 方からの意見がありましたが、主な意見を3つほど紹介します。  1つは動物実験が必要不可欠であるという表現がこの基本指針には入っております が、この表現に対して否定的な意見がありました。このことに関し厚生労働省としては、 動物実験のすべてが適切な代替法に置き換えられる状況には現在ないことから、やはり ヒトの健康の保持・増進のためには、現段階では動物実験は必要不可欠な手段であると 考えています。  2つ目にいくつか個別の内容に共通することとして動物愛護の観点について、もう少 し盛り込むべきという意見をいただいています。この基本指針の案にも、前回も説明し た3Rの原則を盛り込むなど、動物愛護の観点も盛り込んでいますが、私どもの基本指 針の主眼は科学的観点に基づき、適正な動物実験を実施すべきことを規定したことにあ るので、動物愛護については動物愛護及び管理に関する法律、あるいは環境省で定めて いる実験動物の飼育及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準において、そちらで対応さ れるべきものであろうと考えています。  3つ目は実験計画の内容、教育訓練の内容、情報公開方法などを詳細に基本指針の中 に規定すべきという意見です。この意見に対しては、基本指針は名前のとおり基本とな る指針、方針を示すもので、これとは別に各実験を実施される機関において動物実験の 実施状況は一律でないことから、詳細な内容や実施方法等については、現在日本学術会 議で金澤委員が中心にご検討いただいているガイドラインを参考にして、各実施機関に おいて検討していただくことになろうと考えています。  次にパブリックコメントを踏まえて行った追加、あるいは修文がありますので、それ らを簡単にご紹介します。8/39ページの第2の1として、下線を付してある実施機関 の長の責務の規定を追加して、文部科学省の基本指針の規定と揃えました。  また、10/39ページの第4の2、動物実験委員会の構成ですが、規定を修正し、(1)の 動物実験等に関して優れた識見を有する者(実際に動物実験を行う研究者)と、(2)の実 験動物に関して優れた識見を有する者(実験動物の管理に携わる獣医師等)の方々が、 いずれも含まれるように表現を改めました。当初の案では、そのいずれかが含まれてい ればいいと読めましたので、いずれも含まれるよう表現を改めたものです。なお、動物 実験等と、実験動物の両方に精通した方もおられると思いますが、その場合はこの2つ を兼ねることは差し支えありません。  さらに第5の1、科学的合理性の確保の規定を追加しましたが、これも文部科学省の 基本指針と規定を揃えたものです。資料の説明は以上ですが、今後の予定ですが、本基 本指針案は本日のこの部会で了承いただきますと、動物の愛護及び管理に関する法律の 一部改正法が本年6月1日に施行の予定なので、それと合わせて6月1日から施行する 予定です。  今日いただきますご意見を踏まえ必要な修文を行った上で、関係者に対し通知を出す 予定です。また、本日いただいた意見以外にも、もし必要であれば文部科学省の基本指 針と言葉を揃えたりするために、若干の文言修正があり得るかもしれませんので、この 点はあらかじめご了承いただきたいと思っております。  文部科学省と厚生労働省の基本指針案を踏まえ、現在日本学術会議において、各機関 が機関内規定を策定する参考となるガイドラインの検討を進めていただいています。そ ちらのほうが5月末には取りまとめられると聞いていますので、そちらも出来上がりま したら、私どもの基本指針と一緒に関係者に送付させていただく予定です。事務局から の説明は以上です。ご審議をよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  それではご意見がありましたらよろしくお願いいたします。 ○黒川委員  いま報告があったとおりですが、共通の基盤ですので、金澤委員を委員長に環境省、 農林水産省、文部科学省、厚生労働省の人たちといろいろやっております。たぶん来週 それを一応案として出そうと思っていますので、よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  これはお互いに情報を交換しながら、環境省は環境省の所管をメインとした指針とい うことですか。 ○黒川委員  学術会議でやるということだから、みんなが乗ってきているという格好です。それで ないと、なかなかうまくいかないと思うのです。 ○矢崎部会長  学術会議で全体を統合ということですかね。 ○黒川委員  そうですね。全体に共通するガイドラインという格好のプラットホームをうちで出し て、そうしたら皆さんに参加していただいたということになります。 ○矢崎部会長  そうですか。そのほかにいかがでしょうか。7頁以降の訂正はパブリックコメントだ けでなくて、修正されているわけですね。 ○林研究企画官  今回の修正としては、1つはいまご指摘のあったパブリックコメントに基づいて行っ たものがあります。もう1つは、文部科学省をはじめ他省が同時並行で進めている基本 指針の文言と揃える観点からの修正があります。 ○矢崎部会長  前回と本筋は変わらないということですね。 ○林研究企画官  はい、そのとおりです。 ○矢崎部会長  日本学術会議で各省庁からの指針を共通のプラットホームで、大所高所からまとめて いただくということですが、厚生労働省の指針として、これをお認めいただけますでし ょうか。 ○垣添委員  その日本学術会議が全体の統一的なプラットホームに相当するものを作るときに、厚 生労働省の指針の特殊性は一体どこにあるのでしょうか。つまり、厚生労働省としてこ ういうものを作らなければいけないというものは何なのかということなのですが。 ○林研究企画官  実際的な理由を申し上げますと、それぞれの省の所管の研究機関、あるいは団体など があるので、そこを対象に作る必要がありました。文部科学省が作られているのはあく までも大学、あるいは文部科学省系列の研究機関に対象が限定されているので、厚生労 働省としては厚生労働省所管の団体、研究機関、独法、あと厚生労働省が所管している 分野の営利法人、具体的には製薬企業等といったところも視野に入っていて、対象が各 省によって違うということがあります。 ○垣添委員  中身は同じなわけでしょう。 ○林研究企画官  ほとんど同じですが、ただ私どものほうは製薬企業等も入っていて、企業秘密の観点 からいろいろな制約があることもあるので、若干の違いはあります。 ○黒川委員  そのように各省庁で若干対象によって違うところはあるのですが、動物については共 通のところは一緒です。それを各省庁でやっているから、だんだん齟齬が出たりするの で、そうすると両方でやりましょうというのはなかなか難しいらしくて、うちのほうで はすごくこれは大事だと思って、委員会を立ち上げたら、みんな乗ってくれたという格 好だと思います。だから、共通のところは共通で作って、それぞれ違うところはそれぞ れ出していただければと思います。 ○安達厚生科学課長  この指針自身は省によって対象が違いますので、私どもだけが書かなければいけない ような項目などは各省によって違ってきます。ただ、いちばん重要なのは黒川委員がお っしゃったように出口のところで、各機関が共通のガイドラインを踏まえて取扱規程を 作っていくということなので、その出口を学術会議にお願いし、各省のどの指針にも対 応できるようなガイドラインを作っていただいているということです。 ○矢崎部会長  このヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針というのは、臨床研究全体を言ってい るので、今回の動物実験に関する基本指針はそれぞれの研究の特殊性を持った場所をそ れぞれ分担して、指針を決める。基本原則は同じだと理解していただければよろしいで すね。  やはり動物実験などは企業でやっておられるのは企業秘密等に関連するのでしょう か。 ○黒川委員  矢崎部会長がおっしゃるとおりに、18期、19期と先生がおられたときに、動物実験の いろいろな話があって、愛護法の話と実験とかライフサイエンスが大事だという話で学 術会議が報告書を出していますが、実際に国として作るときになかなか省庁の縦割のと ころもあってそれぞれの担当で苦労はされているのですが、こちらの委員会でもそうい うのを立ち上げて、実際にどう作ろうというと、環境省、農林水産省みんな乗ってきて くれますから、コミュニケーションの横の流れがよくなって、最終的に出たときには、 国民から見ると非常に見やすい形になっているのではないかと思います。いろいろご支 援いただければと思います。 ○矢崎部会長  それではこの基本指針をお認めいただけますでしょうか。                   (了承の声) ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。それではこの指針をお認めいただいたということで、 次に移らせていただきます。次は戦略研究課題の進捗状況についてですが事務局からお 願いします。 ○林研究企画官  戦略研究課題の進捗状況に関し、資料3に沿って説明します。1.平成18年度戦略研 究課題についてです。1)に研究プロトコールの概要というタイトルがあります。ここ に記載してあるように平成17年度は黒川委員の特別研究班において、平成18年度戦略 研究のプロトコール、1つはがん対策のための戦略研究、もう1つがエイズ予防のため の戦略研究で、この2つを策定していただいています。  これらのプロトコールの策定にあたっては、17年度の糖尿病、自殺・うつの2つの戦 略研究がありますが、その2つの戦略研究の際の経験も踏まえ、実際に現場で研究を実 施する研究リーダーの方の裁量性といいますか、コミットメントを高めるために、プロ トコールは研究対象、研究方法及びアウトカムからなる概要のみとしています。  2)の実施機関については【参考】にある各要件を満たす団体を選定することとされ ていますが、がん対策は部内でもいろいろと検討を重ねてきましたが、適当な団体が見 出せなかったために、18年度は差し当たり健康局がん対策推進室があたることとしてい ます。エイズ予防はエイズ予防財団が実施機関として選定されています。  資料3の2頁以降に、がん対策、エイズ予防それぞれに概要を付けていますので、別 紙1のがん対策のための戦略研究の概要は所管課の健康局がん対策推進室から、4頁か らの別紙2のエイズ予防のための戦略研究の概要は健康局疾病対策課から、それぞれ説 明をしてもらいますので、よろしくお願いします。 ○がん対策推進室(佐々木補佐)  別紙1に基づきがん対策推進室から、がん対策のための戦略研究の概要について説明 します。2課題を考えており、課題1として乳がんに関して超音波検査による乳がんの 検診の普及です。この課題を選定したのは我が国は乳がん死亡者が増加をしていること、 40代の乳がん患者の罹患に関しての検診の方法について、現在マンモグラフィというも のを推進しているわけですが、超音波検査についての有用性の検証もがん対策上求めら れてきているという状況です。そのような観点から、超音波検査による乳がんの検診、 それによって乳がん死亡率の減少を目指して、乳がん検診における超音波の有効性を検 証するためのランダム化比較試験を考えています。これが課題1です。  課題2として、がん患者、在宅も含め緩和ケアの推進が課題になっているわけですが、 現状、終末期在宅での療養を多くの患者が希望されているわけです。実際に入院、在宅 も含めて緩和ケアサービスを受ける患者の割合は1割未満です。それと在宅死亡の割合 が6%という現状があり、そのような状況を踏まえて緩和ケアを推進していくために、 どのような地域の連携、緩和ケアの普及を実践していくかということを目指し、この研 究を実施させていただきたいと思っています。目標としてはがん患者における緩和ケア の利用率を上昇させることと、がん死亡者における在宅死亡の割合を増加することです。 がん対策推進室からは以上です。 ○疾病対策課(野上補佐)  続いて健康局疾病対策課からエイズ予防のための戦略研究について説明します。別紙 2に今回の概要、問題認識を説明しています。エイズ患者の増加サイクルがあります。 真ん中に不適切な性的接触、コンドームの非使用による不適切な性的接触により、感染 者が増えてくるわけで、抗体陽性判明者という形で検査をしていただければ、抗体陽性 であることがわかります。ところが、現在日本の場合には検査をしない方がほとんどで、 検査をする方の4倍程度の人が隠れたHIV感染者という形でいると言われています。 このような方々が適切な治療を受けることなく、いまHARRTという良い治療法があ りますが、このような治療を受けることなく感染者のままいるという形で、いきなりエ イズを発症してしまい、自身がHIV感染者であったということがわかるという現状が あります。  また、このような方々が知らないうちに、また次の感染を引き起こしているという問 題点があります。このようなことから普及啓発を一生懸命行うことにより、右図にある ようにコンドームの使用率を増加させること、適切な性的接触を促すということで、コ ンドームの使用率の増加をさせる。これはいままでの研究事業において普及啓発を通し て、コンドームの使用という行動変容を促すことは可能であるということがわかってき ています。このような適切な性的接触を促し、HIV感染者の減少を目指していきたい。 そしてこのような方々に感染の早期発見の機会を、いま現在も保健所等で行っています が、普及啓発を通して、より検査に行っていただく。そういうことで検査をされた方々 がHARRTという治療法を受けることによって、発症予防という形で患者という形で は登録されずに、感染者という形で発見してもらうという方向にしていきたいと考えて います。  そういう意味でアウトカムとしては感染者を減らすことは早急には難しいですが、H IV検査受検者数を2倍にするという目標を立てることにより、単純計算をしていくと、 エイズの発症者数が25%は減るであろうと考えています。こういう形で最終的なアウト カムとしては、いきなりエイズを発症するという悲劇はないという方向を目指していき たいと考えています。  次頁です。そういう意味で課題を2つセットしています。大きな流れとしては課題2 にありますが、いま言ったアウトカムを念頭に、都市在住者一般の方々への普及啓発を 集中的に行うことによって、その行動変容を促す。そしてその結果を経時的に測ってい くことによって、その行動変容が行えるという仮説をもう一度実証したいと考えていま す。さらには課題1にあるように、一般国民の方々よりもフォローが確実に行えるとい う意味で、現在そのような方々が集まる場を中心に、研究を介入することが可能になり つつあります。発展場というような場所ですが、そういうフォローしやすい感染者、特 に阪神圏でいまフォローしやすくなってきていますので、そのような方々に同じように 集中的に普及啓発し、在宅検査なども促し、そのような場で濃密に直接に普及啓発を行 うことによって、検査、行動変容ができるということを実証していきたいと思います。  また、これらフォローできるということを念頭に置いているので、そのような行動変 容をしやすい方々、また、しにくい方々の差を明確にしていって、次の時期に施策にも 役立てていきたいと考えています。この結果を基に、直接的に研究が終わった時点で、 施策に役立てていけるものと考えています。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。戦略研究は2回目の研究の……。 ○黒川委員  これは矢崎部会長にだいぶお世話になって、いま動いているところですが、こういう 研究のスタイルは初めてです。実際に糖尿病のことは矢崎部会長のところにファンディ ングエイジェンシーとしてやっていただいているのですが、実に現場に行くとものすご い問題がたくさんあります。それを一つひとつ解きほぐしながら、こういうことができ る機能を築いていこうと思っていますので、オペレーションがスムーズにいくまでは結 構時間はかかるかもしれませんが、それはいまの既存のところをどうやって動かしてい くかという1つの戦略性もあるので、ペイシェンスが必要とは思っています。それをい ちばん感じている一人が矢崎部会長だと思いますが、1つのプロジェクトでやっていま す。  うつ病も始まっており、実際にやってみると臨床をやる先生方の問題、オペレーショ ンする機関等のいろいろな問題があり、矢崎部会長にご支援いただいているところです。 それをやりながら臨床研究、あるいはトランスレーショナルリサーチの基盤が、少しで も動くようにするというのがもう1つのエフェクトで出てくると思います。  今年のがんについては垣添委員もご存じのように、たくさんのいろいろな研究がされ ています。実際に公募したような、いろいろな臨床の研究もたくさんやっていますが、 それをずっと私どもの委員でレビューし、一体いま何が現実的に問題があって欠けてい るかという話と、プライオリティをセットさせていただいて、このような2つがいいの ではないかという話です。公募研究だといろいろな研究者がやるのですが、3年、4年 経って、これは一体どうなったのというと、誰もチェックしていないのです。うまくい かなくてもいいのですが、研究申請書を書いたときと違って、うまくいかないことはい くらでもあるわけです。うまくいかなかった理由は何なのかという検証がされていない のです。ですからその次にうまくいくにはどうしたらいいかという話がないということ もわかっていく。これもかなりヒアリングした後、いろいろやりたいことはあるのだけ れども、ほかに同時にやっていることもあるのではないかという話で、こういうのを2 つ取り上げたということです。  実はエイズの人たちにもだいぶヒアリングしたのです。ヒアリングをしてみると、エ イズの研究者たちはこういうことが必要だとか、治療だとか言いますが、むしろもっと 大きなことをするとあまり関心がないかもしれないけれども、パブリック・キャンペー ンのほうがもっと大事ではないかという話で、そういうことを実際に公募した研究でや っているものもいくつもあるのです。ところがその評価やうまくいっていなかった理由、 どうしたらうまくいくだろうかという検証がされていない。その辺もやった上で、実際 いまこのようなことをやっている人たちのいくつかのグループとかなり時間をかけてヒ アリングしました。そうでないと、ここに書いてあることがうまくいくかいかないか、 全くわからないようにしてやっているわけではなくて、現在どの程度、誰がどれくらい やっているかということの実績を評価した上で、これだったらうまくいくかもしれない という話で、この2つのテーマを選ばせていただきました。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。いかがでしょうか。 ○垣添委員  がん対策の戦略研究の課題1です。現在我が国の乳がん検診は40歳代以降を対象に、 マンモグラフィを中心に、2年に一度検査するという体制になっています。マンモグラ フィというのはご承知のように、乳房組織の微細な石灰化を検出するということで、40 歳代の乳がんというのは乳房組織がまだしっかりしている方が多いですから、微細な白 い石灰化の部分が組織に埋もれて検出しにくくなってくる。したがって、それを検出す るために超音波がどのくらい効果を発揮するかを検証するという、研究の意義は十分に よくわかるのですが、ここに書いてある40歳代以上の女性を6万人4年間でリクルート して、さらに4年間追う。そしてアウトカムが乳がん死亡率の3割減少というのは、乳 がんというのは非常に経過の長いがんですから、4年、4年でいったとしても、とても 結論が出せないのではないかという心配をします。つまり、課題の重要性はよくわかり ますが、アウトカムの設定が少し具合いが悪いのではないかという気がします。 ○黒川委員  私たちが決めているわけではなくて、専門家たちのヒアリングをしますので、3年と いうのはおそらくこういうことからいうと、例えば10年経ったらとかであって、4年の 出口が3割だということは現実的ではないと思います。先生のおっしゃるとおりだと思 いますので、この辺もかなり検討していただいているので、具体的なプロトコール、数 字目標をアウトカムでつけてしまうというのは、逃げ道になっているところが結構多く て、達成できないことに予算を付けてしまうことがよくあるのです。だから、この効果 があるかどうかを見るということだと、総合科学技術会議辺りで数値目標と言いますが、 それは例の論文のアウトプットのインパクトファクターののりであまり意味がないので す。もう少しその辺は賢く書いてほしいのだけれども、政策的な問題から何か数値目標 を出せと言っているのと同じです。先生がおっしゃるとおりなのです。具体的な話は、 もう少しここでプロトコールや何かを作って、公募して参加するという話をエフェクテ ィブにどうやってリクルートできるか、実際にはがんセンターの土屋病院長などとよく 相談していますが、その辺を参考にさせていただければと思っています。確かにアウト カムをここで4年後にこうなるとは思っていません。そうでしょう。そのコメントを入 れておいてください。ありがとうございます。そのとおりだと思います。 ○矢崎部会長  志は高く持つというのは少し非科学的ですかね。数値があると目標を目指して行動す るという効果はありますが、果たして数値が妥当性の高いものかどうかというのは、ま た別問題ですね。 ○黒川委員  ただリアリスティックでない数字を出して、出せなかったときにどうするのかという 話になると、いままではそれで逃げ切っていた人が多いわけなのだけれども、そういう わけではなくて、もう少し国民と意味を共有すれば、こういう計画自身が意味があるの だと。仮説をテストするのが極めてリーズナブルであるという話になってくればいいわ けだろうと思います。こういうのをいちいち書かされるのは非常にリアリスティックで はなくて、エントリーナンバーなどもいろいろ患者の数も実際の実数と、疫学的に十分 調べておいて、どこまでいけば有意義な差がどのくらいの期間で出るかという、疾患に よって違いますので、その辺はきちんとサイエンティフィックな、ある程度のエビデン スに基づいた仮説を作っていただきたいというのが、これからの希望です。 ○長谷川委員  エイズ対策ですが、いますごく問題なのは、日本は先進国で唯一ティーンエイジャー のHIV感染が増えている国です。みんな減り始めて、もう何年か経つのに、日本だけ は増えている。ですから、このエイズのこれを見ても対象が相変わらず同性愛の方々と か、フォローしやすい特殊なグループみたいなことでおやりになっているけれども、問 題はいまやその段階にあるのではないと思います。いろいろな予防キャンペーンをやっ てきていますが、唯一日本が増え続けたことは、何らかの理由でうまくいっていないと いうことだと思いますから、そこをきちんと評価して、どうしてそうなってしまったの かというところを明らかにしてほしいと思います。 ○黒川委員  確かにヒアリングしてみるとそうなのですが、タイなどは1983年ぐらいに2、3例出 たときに、国家的なキャンペーンをしました。全部明け透けにしてコンドームとかいろ いろな所にエイズ予防という話を一斉にやりました。日本の場合はそういうことをやら なかったでしょう。なぜかというと、最初が血友病の輸血の問題だったからかもしれま せんが、そういう背景があって、何となく日陰の身で集まっていたというのがすごくま ずいのです。  具体的にそれをやろうというのが、こちらの課題の設定はやっていたのだけれども、 実際にどういうスタディなり、行政的なキャンペーンは別として、あくまでも厚生科学 の話からいうと、適切だというスタディをいろいろヒアリングしてみると、現在いま先 生がおっしゃったようなことを私たちはいちばんやってくださいという話で、かなりい ろいろなヒアリングをしたのですが、なかなかそこのインフラができていないのです。 だから、そういうわけでこの課題2というのが、実際にかなり若い人を対象にしてうま くいっているのがあるので、これも少し伸ばしたらいいのではないか。左側は先生がお っしゃるようにかなり時代遅れだと思うでしょう。だけどこれがリアリティなのです。 それだけクローゼットから出てきていないというカルチャーがあるではないですか。そ れは血友病の問題から始まったという一面もあるかなとは思っています。それは変えて いく1つのきっかけになればいいのではないかと思うので、これもかなりヒアリングし ました。  だからそのリアリティと先生がおっしゃることを私たちは目指したいのですが、そう いうことだと思います。 ○矢崎部会長  いまのご意見は感染症として正面から取り組むべきだというご意見ですね。 ○黒川委員  もっと教育とかコンドームの使用とか、セーフセックスの問題とか、もっと明らかに する。特に若い人たちが知らないで、繰り返しクラミジアの問題、中絶の問題、10代 の中絶はいまものすごく増えていますから、そういうところにすぐにかかわってくるこ となのです。そういうことを明け透けという必要はないのだけれども、かなり強い意思 で、みんなにセーフセックスというのがどうだとか、避妊の問題も、ピルの問題など、 そういうことがあまり若い人たちの自分の問題という認識をいままで育成していなかっ たのではないか、それを実はやりたかったのです。  それでかなりヒアリングしたのだけれども、研究者がみんな研究とか治療という話ば かりになってしまい、そういう話をしているのではないとだいぶ言ったのですが、それ で是非変わるようなカルチャーを1つ出せればいいなと思います。 ○疾病対策課長(野上)  この男性同性愛者というものがいま感染経路としては6割を占めており、感染経路と してマジョリティになりつつあります。特に先生がおっしゃるように20代、30代とい う若者の世代が多いのです。エイズ発症者の中において異性間性的接触を抜いて同性愛 が感染経路の第1位になってきているので、そういう意味でも男性同性愛者対策という のが、決してマイナーではないと考えています。 ○黒川委員  長谷川委員はあまり納得しないかもしれないけれども、これは実を言うと、この間の 発表でもそうなのだけれども、去年の新規発症者は男性同性愛者がいちばん多かった。 あれは新規発症者を全部レジスターしている結果とはとても思えないのです。つまり、 レジスターした人の中ではそういうのが多かったけれども、実際は水面下の人がいくら でもいるわけで、そういうことから考えると、いまこういう事業をされているので、こ れは厚生科学なのか、むしろ地方自治体と合わせた行政的な事業ではないかという気も しているのです。だから私どもは非常にヘジテイトするところもあるのです。そういう 意味ではむしろ本当のエイズの発症がどのくらいあるか、つかめていない。そこのとこ ろに私はいちばん問題があると思っています。  2番目については、そういうことをやっているグループがあって、かなり実績を上げ ています。こういうのは厚生科学としては非常にいいのではないか。  もう1つは事業、あるいは政府公報の戦略の問題だろうと思っています。 ○矢崎部会長  そのほかにはいかがでしょうか。そうすると今いただいたご意見を含めて、実際の研 究のプロトコールを作る際に反映させていただければということでよろしいでしょう か。 ○黒川委員  是非、長谷川委員などで、次のステップにどのように実際により国民が予防する、理 解を広げていくかという施策のほうが、よほど大事だと思っています。 ○矢崎部会長  がんの戦略研究についてもは垣添委員にまたご意見を出していただくとして、一応こ の概要についてお認めいただけますでしょうか。よろしいでしょうか。                  (了承の声) ○矢崎部会長  ありがとうございました。続いて事務局からお願いします。 ○林研究企画官  いまの資料3の1頁です。頁の下に2.平成19年度戦略研究課題についてというのが あります。これについて簡単に報告します。1つ目の○です。平成19年度戦略研究候補 課題は、行政ニーズに基づく研究課題を網羅的に把握し、公平な観点から選定するとと もに、実現可能性等についても検討するために、まずは厚生労働省内で検討することを 考えています。具体的には省内に各局の科学技術調整官がおり、その科学技術調整官か ら構成される科学技術調整官会議というのがありますので、そういったところでまず議 論することにしています。  現在この科学技術調整官会議で出てきた候補課題の一覧を資料3の6頁に付けていま す。別紙3という資料です。いま全部で5つあり、1つは感覚器、研究テーマに視覚・ 聴覚障害者を20%低減させるような介入・支援手法の確立に関する研究です。2番目、 3番目は小児関係で、生殖補助医療の研究と小児疾患克服のための科学的基盤の研究で す。4番目が腎疾患ということで腎疾患の発症、進展を予防し、血液透析を導入される 患者の増加を打ち止めにするような研究。5番目が高齢者運動機能回復のための研究と いうことで、高齢者運動機能の低下に適した臨床介入手法の開発研究です。  今日は現状の報告ですが、これをご覧になり委員の先生方からも、行政ニーズの観点 から見て適切と思われる候補課題案がほかにありましたら、次回、6月に部会を予定し ていますので、そのときまでに事務局までお知らせをいただければと思っています。  この候補課題案は事務局で網羅的に整理した上で、今後この部会で絞り込みを行い、 最終的にここでの審議を経て、決定していただきたいと考えています。 ○矢崎部会長  これは候補でまた同じように2課題になるわけですね。 ○林研究企画官  一応その方向で考えています。 ○黒川委員  実はこれで審議していただいて、先生たちにもやっていただいている糖尿病とは当然 違うのだけれども、もう1本新たな公募型のプロジェクトというのをやりましたね。そ れは公募して1年間やっていただいて、こういうアウトカムのフレームに入れるのが適 切かどうか、体裁からいうとフィージビリティ・スタディみたいなものを公募したでは ないですか。それもだんだん出てきますので、そういうところのどれを選ぶかというの を1つの根拠にしていけばいい。いままでの難病対策とかもあるでしょうから、そうい う意味では行政的にどういうプライオリティがあるのかという話と、一方では公募で吸 い上げながらどのようなものができるかという話の両方が出てくる。いずれはこういう システムは、厚生労働省的な、ここの部会で審査するようなアウトカムのいろいろなプ ロトコールが出てくるまで、是非先生のリーダーシップでよろしくお願いします。 ○矢崎部会長  ありがとうございます。これから1頁に書いてある科学技術調整官会議でご議論いた だいて、その間、もし委員の先生方でこういうテーマがあるのではないか。フィージビ リティ・スタディのアウトカムというのは去年始まりましたね。 ○林研究企画官  はい、そちらも始まっております。 ○矢崎部会長  その結果が出てくるのは、おそらくまだまだ先ですよね。 ○黒川委員  今年度始まったばかり……。 ○安達厚生科学課長  今年度からということで、昨年12月に募集し、今年の3月ぐらいまでに各事業ごとに 課題の採択が終わっています。したがって、今年度中にいわゆるプロトコールについて 研究し、研究成果は今年度末にまとまることになるかと思います。評価はさらにその後 になるかと思います。 ○矢崎部会長  そのようなプロセスで、19年度の戦略研究の課題を決めさせていただきたいと思いま すが、ご了承いただけますでしょうか。 ○今井委員  3番目の次世代健全育成戦略研究の子供の健やかな成長・発達を阻害する小児疾患の 具体的なものを、お教えいただければと思います。というのは、いわゆる小児科の教科 書的な従来の疾患なのか、それとも昨今、発達障害と言われているいろいろな疾患があ りますが、そういうのも入っているのか。その辺をお願いします。 ○母子健康課(斉藤補佐)  いま先生からご質問をいただきました対象疾患ですが、国立成育医療センター等の関 係者の皆様ともご相談中です。まずは単一遺伝子の異常疾患という形で、例えばムコ多 糖症ですとか、慢性肉芽腫症といったものから始め、先生がご指摘のような発達障害と いったところまでもやれるのか、といったところをいま精査しているところです。 ○今井委員  ありがとうございました。是非、発達障害のほうまで入れていただけるとうれしいと 思います。 ○矢崎部会長  是非、いまのご意見を反映するように検討をお願いしたいと思います。そのほかにい かがでしょうか。 ○岩谷委員  視覚、聴覚障害者を20%低減させるとありますが、この20%という数字がどこから出 てきたのかを教えていただきたいのです。 ○障害保健福祉部企画課(武井補佐)  今回の視覚障害者は主に障害者手帳を持っている方々を念頭に置いているわけです。 最近非常に増えているのが緑内障、糖尿病性の網膜症、加齢性黄斑変性、高度難聴をき たすような疾患です。そうした疾患に対して、発症の推移を見た、予防の可能性を検討 させていただきましたが、大体早期に介入して早期に治療した場合に、視覚障害者、も しくは聴覚障害者を防止できるという一定の結論に達しており、予防から治療で、あと は人工網膜や人工内耳といったような再生医学的なものも含めて、いま増えている疾患 を抑制できるといった前提に立って考えています。 ○永井委員  この場合、何を100とするかですね。現在の患者数の20%低減なのか、高齢社会にな れば当然増えていくわけですので、予想される増加数に対して20%低減なのか、そこは きっちりしておいたほうがいいと思います。 ○黒川委員  実は私もそのときにそういう質問をしたのです。だんだん高齢社会になってきて、当 然加齢に従って増えるものであればあまり意味がないから、どういうふうにするかとい う話。それから感覚器戦略といっても感覚器にもいろいろありますので、先生もご存じ のように去年か一昨年、学術会議で感覚器疾患の戦略という報告を出しましたね。だか ら、あれも少し参考にして、それをやっていたような人たちにも少しヒアリングをして、 リアリスティックにはどうだという話を聞いた上で決めたらどうだという話も出してい ます。厚生労働省としてもいろいろな研究はいままでにもありますので、それをしっか りレビューして、先ほど言ったように単に数字を出せば何かうまくいくかのような、そ ういうのはまずいという話をしています。 ○障害保健福祉部企画課(武井補佐)  確かに先ほどご議論がありました数値目標のことを念頭に置いた上で、今後プロトコ ールの検討や、今後の研究の中でのさらなる検討を進めたいと思っています。先ほどご 指摘いただきましたように、将来の推計値を20%に押さえるのか、足元の現状値を基準 にして、それを20%に押さえるかということなのですが、いま議論しているのは将来推 計に基づいて、現状のままだと上昇トレンドにいくけれども、それを20%に抑制すると いうことを考えているので、現実のフィージビリティもまた考えながら、こうした点に ついてはさらに議論を進めたいと考えています。 ○長谷川委員  先ほどのエイズ対策の話もそうなのですが、いろいろな生活習慣病の概念が最近は出 てきましたから、何か1つの原因で1つをすると、これが治るという、そういうもので はない現象がたくさんあるというのは、だいぶ世の中に浸透してきたと思うのです。エ イズの話も感染経路はもちろん細かくしなければいけないのですが、若い人たちのセッ クスに対する態度が激変しているとか、教育の中できちんとした知識が実感をもって伝 えられていないという、ほかのことが全部影響しているわけです。  子供の健やかな成長、発達の問題も子供の発達だけではなくて、妊婦がダイエットし て、すごく子宮内環境が悪くなっているなど、そういうことも含まれているので、1つ のピンポイントで戦略的な研究は作らなければいけないのでしょうけれども、その現象 が人間の生活の広い範囲にわたって変化が起こっていることが、全部関連しているのだ ということを念頭に置いて、その研究の結果、ほかのところもどうしたらいいかという ことが提言できるような形、発見できるような形で意識を持ったプロジェクトにしてい ただきたいと思います。 ○黒川委員  長谷川委員のおっしゃるとおりで、これはヒューマンビヘイビアの問題もあるし、そ れを囲む社会的な背景や変化があるわけです。だからエイズの話のときも、全部のステ ップがどうだという話を、厚生労働省と研究班でブレーンストーミングしたのです。い ままでの研究を見ていると公募しているけれども、過去にやったこと、公募して例えば 3年やったけれども、これはどうなったのというとみんな知らないというのです。うま くいかなくてもいいのです。だけどなぜうまくいかなかったのか、どこに問題があるの かと検証しない限り、いつまで経ってもいい話が出てこないのです。社会的な背景を、 上流から、それについてここを変えるにはどうするかという話を全部シートを書いて、 かなり議論した後で、やっていることをある程度つかんでヒアリングをしたのです。そ れでいまはこうかなと。だけどいま委員がおっしゃったようなことはかなりチャートも 作ってやりました。  2番目は将来の予測値というお返事があったのだけれども、役所の返事はうまいので す。何を言われても必ず良い返事をするという、これはすごいなと思うのですが、質問 されるまでは言わないというのはうまいところです。実は矢崎部会長もよくご存じだと 思うし、外口さんもよくご存じだと思うのですが、予測値をそれでは出してとおっしゃ るけれども、その予測値を出す根拠になっている1次データは、厚生労働省が持ってい るのです。つまり、人口動態にしても社会保障のものも、特別出生率だって法案が通っ た後、1.29だったなど、ああいうことを言う。だからその1次データが、研究者やいろ いろなシンクタンクや調べたい人に公開されていないところにいちばんの問題があるの です。だから、人口動態の推計の基だって、財務省やほかの役所はアクセスできないし、 財務省のデータは厚生労働省はアクセスできない。  学術会議で一昨日シンポジウムをやって宣言も出していますが、政府の1次データは 公共のプロパティですから、普通の先進国であれば統計局ですがセンサスビューローと いうのがあって、そのセンサスビューローがクォリティから個人データは別として、ミ クロデータ化するまで、きちんと管理しているのです。それを公共財として出しなさい というのは、外のシンクタンクもそうだし、学術研究もそうで、そういうのにはアベイ ラブルにしていないというところに問題があるのです。  一昨日のシンポジウムで国連の担当しているチョンさんを呼んできたら、日本はGD Pが2番目に大きくて、いろいろな話で影響力があるにもかかわらず、日本のそういう 統計に基づいているデータ、つまり国の政策から何から、原材料はデータが大事ではな いですか、それが各省庁が料理して出してくるから、極めて信頼度が低くなってきて、 日本の貢献が極めて評価が低いのです。こういうことを私たちは知っていたから、学術 会議は毎年のように提言を出しているのです。  ようやく内閣府で一元的に何とかという話になっていますから、明後日に、官邸の会 議でそれが出ると思います。そういうところが今の日本です、うちでは予測値を計算し て調べるというけれども、それは学者の社会とかいろいろな人に、こういうミクロデー タがあるのだけれども、どう思いますかといろいろな政策立案の選択肢を出さない限り、 常に縦割の役所が原材料を持っているのを、自分たちの都合のいいように料理したもの しか私たちは見せられていない。OECDもそうなのですが、日本の出してくるデータ は極めて信用が低いのではないかということがかなり知られています。  日本の経済学者がいろいろな経済の論文を出したりする。医療政策もそうなのですが、 材料を学術の研究材料としても提供していないから、経済学者が言う論文が、国際的に は評価が低いもう1つの理由があるのです。  だからそういう意味でセンサスビューローがあるのはいいのだけれども、各省庁のも のを全部一元的に統計局に集めて、それをしっかり管理して、どのように使うかという 話は、省が持っているわけではなくて、内閣府とか総理府とか官邸の機能ということに しなくてはいけない。原材料は各省庁の力の根元だから、ものすごい抵抗をする。よう やくいまになってわかってきたかなという話になっているのだと思いますので、是非、 委員のほうもそれをプッシュしていただければと思います。この部会も是非そういう認 識を皆さんで共有するのが大事ではないかと思います。 ○矢崎部会長  その1次データは門外不出の存在なのでしょうか。 ○安達厚生科学課長  基本的にただいまお話の出ました人口動態統計については、指定統計ですので、統計 法に基づいて実施されています。集計前の一次データのいわゆる目的外使用については、 一つひとつ判断が必要です。個人情報保護に係るガイドラインの議論をしたときも、そ ういう目的外使用に関して、さまざまなデータを学問のために使うにはどうしましょう ということで議論はありましたが、そのような議論の結果として、学問のためとはいえ、 一次データの目的外使用がどんどんできるような仕組みにはなっていないということか と思います。 ○黒川委員  だから今年の国勢調査はかなり拒否した人が多いとニュースに出ていたでしょう。そ ういうデータはすごく大事だから、これは公権力で収集しなければいけないのです。そ れで規制改革委員会でああいうのは民間に外注すればいいということを出してきたので す。だけど学術会議はそんなことをしてはいけないのだと、報告書を出しています。あ あいうのは公権力でみんながやらなくてはいけないということを普段から言っていなく てはいけない。ただやったことを省庁だけが持っていて、マイクロデータ化して、分析 の材料にするというところがないのです。つまり、そのデータは私たちパブリックのも のだからということで、国民のものというカルチャーがない。先生たちが信用されてい ないという、そういうことはたくさんあります。だけど、それで役所も信頼をなくして いて、国全体が信頼をなくしているというのが、そこにはあるという話です。  つまり、これは公共のものである。官のものではなくて公のものだという社会になっ ていないだけの話で、是非そのように指導してください。  誤解するようなことを言われて、研究者が駄目ではなくて、政府の一次データは公共 財だという意識になって、公共財だからこそ使って、私たちが学術研究で政策に役立て たいという、社会からの責任を付託されているのだという意識が、まだ学者にもないと いうところに問題がある。だから、今度独法になって、国立大学のお金も学長の権限に なったでしょう。ある学長と話をしていたら、権限があるから、私のお金だから自分の 裁量で決められるのに、いろいろな評議会とか、教授会とか学部長がガタガタというか ら、本当に困ってしまうと。私はそうではなくて、それは私たちのお金なのだよと言い ました。そういう発想がないのは、役所と同じ発想なのではないかと思います。 ○松本委員  いま厚生労働省の方が個人情報保護法を引き合いに出されたのだけれども、ちょっと 筋違いかという気がします。というのは、個人情報保護法は個人情報を保護しているわ けで、統計処理された情報については何も言っていないわけです。そちらのほうはそれ ぞれの法律の特定の縛りにすぎないわけで、情報を提供した個人のどうこうの話ではな いので、それはちょっと議論を分けた上で、それぞれの統計の根拠法のほうが、そうい う目的のために縛って、公共のお金をかけて集めたものについて、みんなで使えるよう にしないということが果たしていいのかどうかという観点から、再検討されるべきであ って、個人情報のほうはまたそれはそれで別の議論が必要かと思います。 ○矢崎部会長  是非厚生労働省のほうでも統計の1次データの利用法についてご検討いただければと 思います。あるいは何か検討会を作っていただいてもいいかもしれませんね。よろしい でしょうか。どうもありがとうございました。それでは本日の議題はこれで終了したい と思います。事務局から連絡事項をお願いします。 ○林研究企画官  次回の科学技術部会はすでに先生方には日程調整させていただきましたところ、6月 9日(金)の10時から12時の予定でお願いをしたいと思います。場所は現在調整中で す。正式なご案内は詳細が決まり次第、お送りさせていただきますので、よろしくお願 いいたします。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。それでは先ほどご議論のあった平成19年度の戦略研究課題 についても、ご意見が委員の方にはおありでしょうから、是非、事務局にお寄せいただ いて、またご議論いただきたいと思います。本日は大変お忙しいところをお集まりいた だきまして、どうもありがとうございました。これで閉会にさせていただきます。 −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111 (直通)03-3595-2171 - 1 -