06/04/27 未承認薬使用問題検討会議 第8回速記録             第8回未承認薬使用問題検討会議速記録                             平成18年4月27日(木)                                14:00〜16:00                             於・はあといん乃木坂 ○川原医薬食品局審査管理課長  定刻になりましたので、ただいまより第8回未承認薬使用問題検討会議を開催させて いただきます。  議事に入ります前に、構成員の先生方の異動と本日の出欠について御報告いたします。 本日の会議より、これまで構成員でおられました寺岡暉先生にかわりまして、日本医師 会治験促進センター長の岩砂和雄先生に構成員に御就任をいただいております。しかし、 岩佐先生は本日は御欠席でございます。岩佐先生を除きまして本日は構成員の先生方全 員が御出席の予定でございますが、吉田先生は交通事情によりましておくれておられる ということでございます。有吉先生も間もなくお見えになるものと思います。  本日、御議論をお願いする個別品目の検討にあたりましては、事前に堀田座長よりワ ーキンググループの専門家7名を御指名いただいております。資料4にワーキンググル ープの専門家のリストを御指名いただいております。本日の会議では、この検討結果を 御報告いただくために、国立がんセンター中央病院から藤原先生に、国立成育医療セン ターから中村先生と奥山先生に、千葉大学附属病院から花岡先生に、国立循環器病セン ターから山本先生に参考人として御出席をいただいておりますことを御報告いたします。 ご多忙のところを御出席いただきまして、ありがとうございます。  それでは堀田先生、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。 ○堀田座長  それでは始めたいと思いますが、まず、事務局から本日の配付資料の確認を行ってい ただきます。 ○事務局  それでは、配付資料の確認をいたします。  議事次第、座席表、配付資料一覧のほか、資料1は.前回検討会議での結論に基づい てワーキンググループで検討を行った医薬品等のリストでございます。資料2−1から 2−6までが、個別の6つの医薬品についての検討結果の報告書でございます。資料3 は、ことしの1月から3月に欧米4カ国で承認された医薬品のリストでございます。資 料4は、ワーキンググループの専門家委員のリストでございます。参考資料1番から5 番までは、開催要項、委員の名簿等でございますので、御参照いただきますようお願い いたします。  なお、この4月で構成員の先生で御所属がかわられた先生がおられましたので、新し い御所属にかえましたものが参考資料2でございますので、御確認をいただきますよう お願いいたします。  そのほか、構成員の先生方の机の上に、今回、個別に御検討をお願いいたします資料 2と3と計11個の医薬品の添付文書、これは欧米のものなのですがコピーを置かせてい ただいております。大部で、かつ英文なのですが、傍聴されている方々の中でこの資料 を御希望される方は、恐縮でございますが会議終了後に事務局までお声をおかけいただ きますようお願いいたします。 ○堀田座長   ありがとうございました。それでは、ただいまの資料にもし欠落等がございましたら、 お申し出いただきますようにお願いいたします。  それでは議事に入りたいと思います。今回の個別の品目の検討に入る前に、前回、1 月の検討会議で検討がされまして早期の治験開始や承認申請を行うべきだとこの検討会 として結論した品目につきまして、現在までの進捗状況を事務局から報告していただき たいと思います。 ○事務局  それでは、前回の1月の検討会議において個別に御検討いただきました4品目につい て、口頭で恐縮ですが、現在までの状況を御報告いたします。  まず一つ目はネララビンというお薬でございまして、効能効果は、T細胞性の急性リ ンパ芽球性白血病等を効能効果とする薬品でございました。このネララビンにつきまし ては、グラクソ・スミスクライン社に対して本剤について早期に治験を開始をするよう に要請をいたしました。本剤は、前回会議の検討当時、既に同社によりまして治験に向 けた準備が開始をされておりました。そして現在までに準備がほぼ整いまして、近いう ちに治験が開始される見込みという報告をいただいております。  2品目目は、ペグアスパラガーゼでございます。こちらは、急性リンパ性白血病を効 能とすると薬でございます。本剤については、国内で本剤の開発に取り組む意向を示し ていただいた企業が、現在、欧米で本剤の承認を有しておりますエンゾン社と相談を行 っているところという報告を受けております。  3つ目は、フェニル酪酸ナトリウムでございます。小児の疾患である尿素サイクル異 常症のお薬でございます。これについては、米国で本剤の承認を有しておりますユーサ イクルドファーマ社が本剤の日本での開発に関心を示しておりまして、現在、日本国内 での臨床開発、承認申請の作業を行っていただける企業の選定等の検討が行われている と聞いております。  4品目目はオクスカルバゼピンで、抗てんかん薬でございます。こちらは、アメリカ 等で本剤の承認を有しておりますノバルティスファーマ社に対して本剤の開発の検討の 要請をいたしましたところ、同社としましては、検討会議の結論を真摯に受けとめてお り、また、本剤のような第2世代の抗てんかん薬の医療ニーズは理解はするものの、開 発の決定までには種々の検討が必要でございまして、結論に至るまでもう少しお時間を いただきたいという回答をいただいております。  以上、御報告でございます。 ○堀田座長  ありがとうございます。ネララビンにつきましては近いうちに治験開始という予定で ありますし、ペグアスパラガーゼについては現在、メーカー側との相談を行っていると いうことでございます。あとは、尿サイクル異常症に対するフェニル酪酸ナトリウムに ついては、企業の選定が進められているということであります。最後にオクスカルバゼ ピンについては、企業の役割は十分認識はしているけれども、治験という形で進めるの は今のところ結論は得られていない、こういうことでありました。このことについて何 か御質問がありましたら、構成員の先生方から御質問いただけますでしょうか……。よ ろしいでしょうか。  もしなければ、本日の具体的な議事に入りたいと思います。まずは、前回の会議にお いてワーキンググループで検討を行うべきとされた医薬品、学会や患者団体から追加で 検討要望があった品目について検討を行いたいと思います。事務局から、資料1につい て説明をお願いいたします。 ○事務局  それでは、資料1に基づきまして簡単に御説明を申し上げます。  資料1に6つの医薬品を記載しておりますが、そのうちのナンバー1からナンバー4 については、前回、1月の検討会議において昨年10月から12月の間に欧米4カ国で新 たに承認された医薬品を御紹介をした際に、ワーキンググループで詳しい検討を行った 上で今回の検討会議に報告をする、という御結論をいただいた4品目のリストでござい ます。ポサコナゾール、アバタセプト、レナリドミド、コニバプタンの四つでございま す。  それから下のナンバー5とナンバー6は、前回の会議以降、学会、患者団体から追加 で検討の御要望をいただいた医薬品でございます。ニチシノンは、遺伝性高チロシン血 症I型のお薬でございます。アルグルコシダーゼアルファは、糖原病II型(ポンペ病) のお薬でございます。  実はナンバー6のアルグルコシダーゼアルファについては、ちょうどことしの3月29 日にEUで初めて承認になった医薬品で、これについては資料3にもダブって記載をい たしておりますが、EUでの承認の前から患者団体から御要望をいただいておりまして、 ちょうどタイミングよく3月に承認されましたので、あわせて今回、御検討いただくと いうことでございます。  以上、これら6つの医薬品について、ワーキンググループで検討結果の報告書をおま とめいただいておりますので、これに基づいて御検討をお願いいたします。 ○堀田座長  ありがとうございます。それでは、ただいまの御説明を受けまして、本日検討すべき 6つの薬剤について順次、ワーキンググループでの報告書をまとめていただいておりま すので、検討に移りたいと思います。  まず資料2−1、ポサコナゾールについて、藤原先生から御説明をお願いいたします。 ○藤原参考人  資料2−1で、ポサコナゾールでございます。  トリアゾール系の抗真菌薬で、この製剤は経口、オーラルサスペンジョンしかござい ません。対象疾患は、侵襲性の真菌感染症。外国の承認状況は、先ほど事務局から御説 明がありましたように、EUで昨年の10月25日に承認されております。  資料のワーキンググループの検討結果報告書を読み上げさせていただきます。  対象疾患としては、このような侵襲性真菌感染症というのは、HIVとか抗がん剤と か免疫抑制剤を使用しているような患者さん、いわゆる免疫機能が低下している患者さ んで非常に多いものでございまして、本邦でも既に数種類の抗真菌薬が存在しておりま す。ただ、現在の既存の抗真菌薬での治療は若干抗菌スペクトルが狭いとか入手可能な 剤型が限定されるとか、副作用が多くてしばしば投与を中断せざるを得ない状況等がご ざいまして、さらにオプションが増えることは期待されているというのが臨床現場の実 状でございます。  このポサコナゾールの医療上の有用性としては、2番目に書いてありますように、1 腎機能障害のある患者さんにおいても用量調節の必要がない、2抗菌力がすぐれている、 という点が挙げられております。  このポサコナゾールに関する臨床試験成績は公表資料が少のうございまして、ようや く今月とか先月のClinical Infectious Diseaseとかにぼちぼち論文が出始めていると ころでございますが、今回の報告書をまとめた背景は、EUのパブリックアセスメント レポートといいまして向こうのEMEAの審査報告書でございますが、以下の記述はそ こに記載されている臨床試験成績をもとに作成いたしました。  詳細は、真ん中あたりのEMEAのサイトにいっていただいてPDFファイルを落と していただくと読めると思います。  臨床試験成績のところから読み上げますと、アムホテリシンBまたはイトラコナゾー ル耐性もしくは不耐容になった侵襲性アスペルギルス症患者を対象として、本剤400mg BID、これは800mg/dayのことでございますが、それを経口投与した場合の有効性を 検討するためのオープンラベルの非対照試験というのがEUでは実施されていて、それ をもとに承認されております。  結果としては、107例中45例に有効という判定がなされております。有効の基準に関 しては、先ほどのEMEAの審査報告書の中に詳細が記載されております。  そのほかにもレトロスペクティブに診療録から見直した試験成績もEUの申請資料に 含まれておりまして、これは既存の抗真菌薬治療群における有効率が86分の22、26% として報告されておりました。  アスペルギルス症以外の適応症としては、フサリウム症あるいはクロモブラストミコ ーシス、マイセトーマ、コクシジオイデス、これらにもそこにそれぞれ書いてあるよう な有効性が示された、としてあります。  主な副作用としては消化器障害。これはお手元の添付文書等にアドバースイベントと して詳細が記載されております。  この薬は、現在の抗真菌感染症治療薬として従来用いられているアゾール系抗真菌薬、 アムホテリシンBに加えて、ボリコナゾールやキャンディン系の抗真菌薬が登場して使 用されている中で、EUの規制当局としても審査の過程でプロスペクティブなスタディ が実際は余り大きな比較試験として行われていないことが問題になったと審査報告書の 中に批判的に書いてございまして、今後、EUの方の申請企業は、アムホテリシンBま たはイトラコナゾールに耐性もしくは不耐容な侵襲性アスペルギルス症の患者さんを対 象として、キャンディン系の抗真菌薬対象の比較試験を実施するように求められており、 それをやると聞いております。  以上を踏まえまして、ワーキンググループとしては、本剤は他のアゾール系薬剤より すぐれた抗菌力を有する等の特徴は有しているものの、本剤以外にもアゾール系、アゾ ール耐性菌に抗菌力を有し、かつ腎機能障害患者において用量調節の必要がない薬剤と して、既に本邦でもミカファンギンなどが上市されておりまして、EUにおいてもキャ ンディン系抗真菌薬を対照とした比較臨床試験が実施されることとなっています。その 状況を見つつ、また重篤な真菌感染症に対する薬剤の選択肢をふやすという観点から、 国内臨床開発が進められることが適切であろうと判断した、とまとめております。  以上でございます。 ○堀田座長  ありがとうございました。ただいまのポサコナゾールにつきまして御検討いただきた いと思いますが、まず何か御質問等はございますでしょうか……。  日本では最近は、ミカファンギンあるいはボリコナゾールが上市されてまだ比較的日 が浅い状況でありますが、前回の検討会議で、幾つかの選択肢が、むしろこういった重 篤な疾患には必要だろうということで、これをワーキンググループに資料をつくってい ただくべく、検討していただいた経緯があります。いかがでしょうか。林先生、何かご ざいますか。 ○林構成員  EUの添付文書を拝見しても、今の御説明の抗菌力の特徴がうかがえます。剤型が経 口懸濁剤に限られているため、患者さんの症状によっては使いづらい症例もあるとは思 いますが、それでも選択肢を用意しようということに関して、前回合意した内容に沿っ てこれが開発されることは正しいことだと考えます。そういった方向で進めていただく ことで私は問題ないかと思います。 ○後藤構成員  前回、そういう形でお願いをしたわけですが、今回、この書いていただいた報告書に ありますように、この薬剤として抗菌力としては確かにアムホテリシンBとかあるいは ボリコナゾールと同じようなかなり強い抗菌力を持っていることと、なおかつこれに耐 性あるいは不耐容のものに対する適応をEUで有しているということで、非常に特徴が ある薬剤だと思います。またムーコルとかフサリウムとか、なかなか難しい真菌に対す る抗菌力も少なくとも試験管内では抗菌力が認められているということがございますし、 また一方では毒性の方の問題に関しても、腎機能に関する調整が必要ない。そういう点 でこの薬剤は非常に特徴がありますし、それを踏まえて化学療法学会から開発の意見書 が出たという状況にございます。ですから、こういう形の報告書ということでよろしい と思います。  しかし一方では、現時点では抗真菌薬に関してそれほど品目は多くない状況にござい ますが、我が国の臨床現場でベータグルカンの阻害薬であるミカファンギンというもの が一つ存在していますし、近い将来には恐らくアムホテリシンBに関してはリポソーム 製剤が使える状況が出てくるでしょうし、あるいはボリコナゾールという今お話ししま したような菌に対してもある程度有効な薬剤も現在は使える状況になっています。さら に、イトラコナゾールというアスペルギルス系に非常に効力があると言われている薬剤 の静注薬も出てくる、そういう状況がございますので、そういう状況を踏まえてこの薬 剤のきちんとしたポジショニングを考える意味で、EUの方でカスポファンギンを対照 にしたスタディが行われるということですから、それを参考にしながら開発するという 報告書の趣旨は非常に理にかなっていると考えます。 ○堀田座長  ありがとうございました。ほかの先生、いかがでしょうか。 ○栗山構成員  抗真菌剤というのはいろいろな種類があると思いますが、トリアゾール系というのは 結局アゾールというかそちらの方の薬ですよね。そしてミカファンギンは、これまた違 う系統ではないでしょうかね。ですから、同じ系統のアゾール系の中ではポサコナゾー ルの位置づけはどういうふうになるのでしょうか。 ○堀田座長  藤原参考人、いがかでしょう。 ○藤原参考人  それは今、だんだんといろいろな臨床試験を行っておりまして、例えばこの5月の Clinical Infectious Diseaseでは、エイズの患者さんを対象にした試験成績とか、こ れはフルコナゾールとポサコナゾールとの比較試験とかというのが行われておりまして、 現状ではいろいろなアゾール系の抗真菌剤あるいはミカファンギンの抗真菌剤との比較 試験が世界各地で進行中、あるいはこれからレポートが出てくる段階で、ポジショニン グがはっきりするのだと思いますが、後藤先生の方がお詳しいと思いますので。 ○後藤構成員  今お話しされたようなことだと思います。もう一つ、副作用の方の問題がございます が、同じアゾール系の中でアスペルギルスに非常に有効だ。けれども、例えば視覚の問 題とか、実際的にはかなり使いにくい状況があるような薬剤に関しては、有効性と副作 用との兼ね合いでどう考えるかということになってくると思います。 ○堀田座長  例えば同じアゾール系の中で比較試験をやっているような、そういう情報はないので すか。 ○藤原参考人  私の手元には今はないのですが、報告はこのエイズの患者でフルコナゾールとの比較 はあったというのを、昨日、パブメドで見たのですが。ほかもこれから出てくるのでは ないかとは思いますが。 ○堀田座長  わかりました。ほかに御意見はありますか。 ○栗山構成員  私がお伺いしたかったのは、選択の幅を広げるという意味では、ある系統の中でいろ いろ広げるということもあるのですが、ミカファンギンはちょっと違う系統だと思うの です。抗生剤系ですね。こちらのアゾール系の抗真菌剤の中ではこの薬はどういう位置 づけになるのか、最強のものなのかそうではないのか、そこなのです。もしそうであれ ば、これはこれとしてかなりもっておく必要はあるかなという気はしますが。 ○藤原参考人  EUの承認申請資料から判断するに、vitroではいろいろなデータが出て、この薬は いいとかという成績もありますが、臨床もヘッド・トゥ・ヘッドでこの薬と比較して、 この薬が本当に勝っているというデータは今のところ申請資料の中にはなかったので、 そこはこれから明らかにされるのだと思います。だから、今の時点でエビデンスに基づ いてこれが非常に臨床上すぐれ、臨床試験成績から非常にスーペリア、よりすぐれてい るということはなかなか言いにくいと思いますので、これからの臨床試験成績の集積状 況を待たざるを得ないのではないかと思いますが。 ○堀田座長  ほかにいかがでしょうか……。そうしましたら、ポサコナゾールがアゾール系の中の 最強かどうかというのはまだこれからの問題としまして、選択肢を広げていくというこ の検討会での趣旨に従って、この薬はワーキンググループからの報告のとおりに開発の 検討を企業に要請するというスタイルではいきたいと思います。ありがとうございます。  それでは、続きまして資料2−2、アバタセプトについて、これは花岡先生から御説 明願います。 ○花岡参考人  資料2−2をごらんください。  医薬品名、アバタセプトについて御説明いたします。  本剤は、抗リウマチ薬の注射製剤でございまして、対象疾患は中等度または重度の活 動性の関節リウマチとしてございます。  外国の承認状況は、米国では1つ以上のDMARD、これは疾患修飾性リウマチ治療 薬という、現在、日本でも多く使われている薬の総称ですが、これあるいはTNF拮抗 薬に十分に反応しない中等度または重度の活動性の関節リウマチとされております。  対象疾患について、先生方よく御存じでしょうけれど簡単に御説明いたします。関節 リウマチは関節滑膜の炎症を主座としておりまして、関節の疼痛、腫脹から関節の変形 及び破壊を生じる疾患でございます。疾患の原因として、免疫の異常がかかわっている とされております。炎症の主座は主に手の関節から全身及びその結果、軟骨及び骨の破 壊の進行で、生活の質の低下をもたらす疾患でございます。  最近ですが、疾患の発症後1年以内に進行が最も速いという観察結果より、米国では 2002年にアメリカリウマチ学会の治療ガイドラインを発表いたしまして、発症3カ月以 内に抗リウマチ薬を開始し、無効ならばメトトレキサート、以下、MTXと訳しますが、 MTXを中心とした強力な抗リウマチ薬の投与が推奨されております。本邦でも状況は 同じでございまして、現在、MTXが国内では標準治療薬として使用されており、現在、 さらにMTXで治療抵抗性の場合には生物製剤が使用されています。  本剤の医療上の有用性については、まず、この薬は生物製剤の中に位置づけられるの ですが、生物製剤として最近使用されている薬には、抗腫瘍壊死因子−α、TNF−α といった方が先生方は御存じだと思いますが、この抗TNF−α作用を有する関節リウ マチの治療薬としてはインフリキシマブ等があります。また、このほかにも本邦初の生 物製剤である抗IL−6作用を有するトシリズマブの開発も現在進んでおります。これ らの生物製剤は、MTX抵抗性の関節リウマチに対して有効でございまして、従来のD MARDと比較して関節破壊の促進あるいはQOLの改善などにもすぐれた効果を示し ているという臨床試験の結果がございます。しかし、一方でインフリキシマブに代表さ れる薬剤の有効性はACR20で40から60%でございまして、必ずしもすべての患者さ んに対して有効ではございませんで、現在、この薬に対して治療抵抗性の場合の新たな 治療薬が必要とされています。  さて、本剤はCTLA4Ig、これはサイトトキシック・リンフォサイトアソシエー トアンチゲン4ヒュージョンプロテインのことですが、これは主に作用機序としてはT 細胞のシグナルの抑制する作用を有しております。前述の生物製剤がTNF−αやIL 6のサイトカインに作用することと全く異なる作用機序を有している薬剤でございまし て、この点から新たな既存の生物製剤に抵抗性の関節リウマチの患者さんに対して新た な治療法として期待されています。  この明確な機序について簡単に御説明いたします。CTLA4の細胞外ドメインとヒ トのIgGのFcドメインからこの薬剤は構成されておりまして、抗原提示細胞のCD 80やCD86に結合し、CD80や86がT細胞上のCD28と結合することを阻害します。 これは通常、T細胞では、ファーストシグナルとしてT細胞レセプターが抗原提示細胞 のMHCに提示された抗原ペプタイドを認識して、そこから抗原T細胞からTセルへの ファーストシグナルが伝わります。そのあと、さらにセカンドシグナルとして、CD80 やCD86とCD28を介した共刺激シグナルによって、これはセカンドシグナルですが、 これによってTセルの活性化が起きるのですが、ここのセカンドシグナルのところがこ の薬によってブロックされまして、これでT細胞の活性化が抑制されます。それによっ て、そのあとの免疫応答下流の炎症性サイトカイン、TNF−α等の産生を抑制して、 疾患活動性を抑えるという薬剤でございます。  臨床試験成績について御説明いたします。英国の添付文書によりますと、本剤の有効 性を示す主要な臨床試験として、スタディIからスタディVまでのプラセボ対照の二重 盲検比較試験の結果が示されております。特にこの中で特筆すべきところはスタディIII ですが、ここでMTXに対して効果不十分であった関節リウマチ患者さん638名を対象 として、MTXに対して本剤を上乗せをしている試験がございます。これでは、主要評 価項目としてACR50をしておりまして、本剤群で12カ月投与期間で48%、プラセボ 群で18%と有意差を示しております。  また、副次的な評価項目として、ここでは関節破壊の評価を幾つかの項目でしてあり ますが、これについても有意差がついております。  さらにスタディIVでは、これはTNF−α治療薬に対して先ほどのインフリキシマブ 等の治療薬ですが、これに対して効果不十分であった患者さん389名を対象に同様なプ ラセボ対照試験を実施しておりまして、ここではACR50が本剤群で20%、またプラセ ボ群では6%ということで、有効性に対して明らかに本剤がまさっているという結果が 出ております。  一方、安全性については、当然、この薬は他剤と比べてより免疫応答の上流のところ でストップしているので、十分気をつけていなければいけないということは考えられま す。実際に臨床試験の中では、感染症、悪性腫瘍、そのほかに他の生物製剤でも同様に ありましたように投与時反応、過敏性反応などが報告されております。特に臨床試験で わかった結果では、この薬とTNF−α製剤を両方一緒に使うことはかなり重篤な感染 症を引き起こす可能性があるということで、現在のところ米国の添付文書では併用につ いては「すべきではない」と記載をされております。そのほか、まだ安全性のデータが 少ないために、悪性腫瘍に対して肺がんが多少多く出ていたというので、それについて 本当にいいのかとか、あるいは幾つかの疑問が残っておりまして、これについては米国 では市販後に大規模な調査をすることになっております。  以上のことより、検討結果を次に示してあります。本剤の米国における適応疾患はこ こに示したとおりでございますが、TNF−α治療薬に対して効果不十分の患者さんに 対して本剤の臨床的な期待は非常に高いのですが、一方では安全性に対して十分な検討 が必要と考えられます。このため、現在、国内で承認申請に向けた治験の実施進行中で ありまして、その円滑な実施とともに国内外のデータの精密な評価を通じた有効性と安 全性の確認が必要と考えられ、当面は国内での進行中の治験を見守ることが適当である と考えております。 ○堀田座長  ありがとうございました。リウマチ領域のお薬についてはこの検討会で初めての品目 でございます。ただいまの御説明のような、新しく米国で承認されたアバタセプトにつ いて、構成員の先生方から何か御質問はございますでしょうか。あるいはコメントをい ただけますでしょうか。  このものは、現在、ブリストルマイヤーズスクイブが治験中なのですか。 ○花岡参考人  はい、現在、治験中です。フェーズIが終了して、結果はまだ出ていないそうですが、 フェーズIIがこれから、治験届が多分提出されたころではないかと聞いております。 ○堀田座長  わかりました。そうしますと、現在もう既に治験は進行中であるということのようで あります。この薬は効果の期待も高いけれども、免疫抑制がかなりあるので十分注意が 必要だというコメントをいただきましたが、いかがですか。 ○川西構成員  私自身、こういうものを品質の方からいつも見せていただいていまして、有効性とい うことから考えても、今御報告にありましたように、ある部分、期待がもてますが、ど ちらにしても絶対的というものはほとんどない相対的なものであって、なおかつこの辺 のものは、御報告がありましたように確かにこれは免疫機構のかなり上流の部分を抑え ますから、安全性に関する注意は非常にしなくてはならない。ですから、私も今の報告 の結論は強く支持します。もちろん開発は積極的に企業には行ってほしいところですが、 特に安全性の面では十分な注意をしながら治験の結果を待って、それが最も妥当な結論 だと思います。  堀田座長 ほかの先生はいかがでしょうか。 ○篠山構成員  これは、単に私自身の個人的な興味でお聞きするのですが、この薬物はリウマチ以外 にどういう疾患を対象として治験が行われているのですか。今のはリウマチだけなので すか。 ○花岡参考人  米国で治験として実際にどれくらいされたか詳しいところは存じあげていないのです が、乾癬に対して本剤の臨床研究は治験かどういう区切りになっているかわかりません が、乾癬に対してされているという記載がございます。また、そのほかの自己免疫疾患 に対して、この薬の有効性が期待されているので、マウスの実験から始まっていろいろ 検討がされているというところでございます。 ○篠山構成員  今、いろいろな疾患が、今までのような固定の概念ではなくて、免疫機序を介するも のであるという新しい説がたくさんありますね。私自身も、心不全の機序はサイトカイ ンのオーバープロダクションによるという、サイトカインハイポセシスをわりあい早い 時期から提唱した方で、抗サイトカイン薬が心不全の治療にも効くのではないかという ことを一時、期待したことがあるのですが、ここに先生が書いておられるエンブレルな ども、これは心不全に対して実際に治験が行われ、心不全に対しては有効でなかったと いうデータが出ています。  ですから、この薬物が今、リウマチを対象にして出ていますが、ほかにもどういう検 討が行われているかをお聞きしたわけであります。 ○花岡参考人  生物製剤全体に対しては、この冒頭に書いてありますが関節リウマチがリウマチ関連 疾患、膠原病の一疾患でございますので、当然、他の疾患に対しても有効性が期待され るところでありまして、TNF−α製剤に対してはほかのリウマチ関連疾患に対して今、 多くトライアルされているところであります。市場は関節リウマチが一番広いというこ とで治験もしやすいということで、とっかかりとしては関節リウマチが最初だったのだ ろうと思うのですが、インフリキシマブはクローン病で適応を取ったように、本剤につ いても当然、他の領域にどんどん広げていくことは考えられます。 ○堀田座長  よろしいでしょうか。それでは、御意見をいただきましたように、本剤についてはワ ーキンググループからの報告のとおり、国内の現在進行中の治験を見守って、その副作 用あるいはその効果について観察していくということにしたいと思いますが、よろしい ですか。ありがとうございます。  次に資料2−3でありますが、レナリドミドにつきまして藤原先生から説明していた だきます。 ○藤原参考人  資料2−3でございます。  レナリドミド、経口の抗がん剤、抗悪性腫瘍薬でございます。  対象疾患は、ミエロディスプラスティックシンドローム、骨髄異形成症候群でござい まして、アメリカでは既にここに示しますような効能効果、ここに一つ、5qの欠失と いうサイドジェネティックアブノマリティを入れるのを忘れておりましたが、実際には 効能効果の中に5qの欠失を有するMDSという記載になっておりますので、お手元の 添付文書をごらんいただければと思います。  MDSでございますが、報告書の対象疾病のところを読んでいただくとわかるように、 単クローン性の骨髄幹細胞の異常によって起こる無効造血を特徴とする多彩な疾患群の 総称としていわれております。主に高齢者に発症して、本邦での発症年齢の中央値は70 歳代。年間の発表率は10万人当たり約7人ぐらいであります。全体の25から40%は急 性骨髄性白血病に移行しますが、一般的にMDSに対する化学療法の効果は一時的で、 短期間で再発して、高齢者では治療関連毒性が高頻度に発生することから、同種造血幹 細胞移植を行ったとしても予後は非常に悪く、白血化した場合の生存期間中央値は1年 に満たないという重篤な疾患でございます。そのため、安全で有害事象の少ない新規薬 剤は現場から強く望まれているものでございます。  このレナリドミドはサリドマイドの誘導体で、血管新生抑制作用あるいは抗サイトカ イン作用を含む多様な免疫修飾作用を持つ分子標的治療薬の一つでございます。ただし、 今のところではサリドマイドのような神経毒性や催奇形性という報告はされておりませ んが、添付文書の中ではこのあたりは非常に厳しく、ボックストワーニングとか重篤な 副作用としてこういうものの可能性があると記述されております。  米国では、43例の症候性貧血または輸血依存性のMDSを対象とした第I/II相試験 というのがFDAの承認申請資料の一つの資料となっているわけで、これは2005年のニ ューイングランドジャーナルの2月号に出ているペーパーにほぼ同じなのですが、レナ リドミド25mg連日経口投与、あるいは10mg連日経口投与、あるいは10mg21日間投与し て1週間休薬の4週おき投与の3群でフェーズI/IIスタディが行われておりまして、 全体で56%が輸血非依存性となって、55%が細胞遺伝学的な寛解を得られておりました。  グレード3、4、これはNCI-CTCといわれる米国の抗がん剤の臨床試験で一番広 く使われている副作用の基準でございますが、NCI-CTCのグレード3、4の有害事 象としては、添付文書でも強調されておりますように好中球減少と血小板減少という血 液毒性が結構な頻度で出るということで注目されております。  このニューイングランドジャーナルに出たペーパーを踏まえまして、米国ではさらに 5qの欠失に絞った輸血依存性のMDS146例に対する第II相試験が行われておりまし て、これは昨年のASCO、これはアメリカ臨床腫瘍学会と呼ばれる全世界で一番大き ながん治療の学会でございますが、そのASCOのプレナリーセッションといいまして、 最もその年度内で注目すべき演題の一つとして選ばれているナンバー5というアブスト ラクトナンバーでございますが、そこで146例の5q欠失をもつMDSのフェーズII スタディの結果が報告されておりまして、その中でも非常に高い有効性を示した、とな っております。  このため、2005年、昨年の12月28日にFDAでこの報告書の外国承認状況に書いて おるような効能効果の内容で承認されました。  また一方、サリドマイドもそうなのですが、多発性骨髄腫に対してこのレナリドミド は注目される薬剤の一つでございまして、サリドマイドとともにまだ欧米でも多発性骨 髄腫に対しての適応というものはないのでございますが、サリドマイドとデキサメタゾ ンの併用が現在、多発性骨髄腫の標準治療の一つとなりつつある中で、レナリドミドと デキサミンサンの併用療法も注目されておりまして、これは昨年の12月のBloodですね、 アメリカ血液病学会雑誌にその第II相試験の一つが出ておりまして、奏効率90%という ことで、今後、この領域でも開発が注目されるものと思っております。  ワーキンググループの結論としては、最後のセクションでございますが読み上げます。 現在、本邦において標準治療が確立しておらず、また、根治が極めて困難であるMDS の患者にとって、本薬剤は生活の質の改善を含め多大な利益をもたらすことが期待され る。我が国における早期の治験開始が強く望まれる。その際、米国では本剤がサリドマ イドと構造が類似していることから、妊婦及び妊娠可能な女性には禁忌とされ、特別に 制限された供給プログラムのもとでのみ使用が可能となっており、我が国における治験 実施に当たっても相当の留意をする必要がある、と考えております。  御審議、よろしくお願いします。 ○堀田座長  ありがとうございました。それでは、このレナリドミドにつきまして、御意見、御質 問をいただきたいと思います。いかがでしょうか。 ○有吉構成員  質問したいのですが、MDSの中で輸血が絶対に必要になるようなケースは、日本で 年間どのくらいが対象になるかということが一つ。  それから、これはサリドマイドの誘導体で、今、藤原先生がおっしゃったように非常 に催奇性について慎重にならなければいけないということで、アメリカのこの仕様もサ リドマイド並みのセーフティガードがきちっとつくられている。ですから当然これは未 承認薬として俎上にあがったわけですので、これはできるだけ早く患者さんのもとへも たらしてあげたい薬だなという気はするのですが、今、サリドマイドの治験が行われて いると聞いておりますが、それと同じような形の組織が構築できるかどうかという問題 があると思います。  その2点を教えていただきたいと思います。 ○藤原参考人  堀田先生の方が多分お詳しいので、その辺は。 ○堀田座長  輸血の頻度は、恐らく経過中には7〜8割の患者が最終的には輸血にいかざるを得な い。当初は、貧血の程度が軽くても、慢性進行性の疾患でということであります。一方 で、白血病に近くなると、この薬よりはむしろ抗腫瘍剤を使わざるを得ないことになり ますので、全体としては初期には輸血依存いうのは30%から半数ぐらいというふうに思 います。 ○有吉構成員  白血病化を防ぐという作用はないのですね。 ○堀田座長  この薬につきましては、そういう作用よりは輸血依存性を脱却するということですが、 染色体異常ですね、5qマイナスが消失することからみますと、防ぐ効果はあるのでは ないかと思います。 ○有吉構成員  一方では、これはかなりマルチプルミエローマに期待されていると思うのです。ここ にもありますように。ですから、近い将来、FDA、ことしの3月くらいに承認されて いるのではないですか。そういう意味もありまして、できたらできるだけ早くという気 はするのですが、問題は安全性の問題をどうガードするかということなのですが。 ○堀田座長  これは藤原参考人のレポートのように、現在までは催奇形性については動物実験等で は出ていないということなのですが、実際にヒトに使っていない、まだ歴史も浅いわけ ですから、それがどうなるかということをFDAはかなり慎重に対応しているのだと思 います。したがって今のところ、サリドマイドに近い対応になっているのではないかと 思います。日本でサリドマイドが今、ちょうど治験が登録が終了してこれから申請に入 るのだと思うのですが、そのような対応で日本でもやっているという状況でございます。 ○有吉構成員  治験が終わったあと、安全性確認試験などの段階で十分安全性を担保できるようなア メリカ並のあれが形づくれるかどうかということを質問しているのですが。 ○堀田座長  それはどうでしょう。当局から何か御意見はありますか。 ○川原課長  これはサリドマイドの治験の開始の際にも、サリドマイドは昨年の1月にこの検討会 議の第1回目で御議論いただいたわけですが、サリドマイドの治験を開始するにあたり ましても、相当、今、有吉先生の御指摘のような点で安全性を確保しなければならない ということがございまして、そのために実際にサリドマイドの治験の開始は昨年の夏以 降になったと思います。そのためには万全の準備をしたということでございます。  したがいまして、この品目については今のところ、動物実験のデータではサリドマイ ドのようなリスクはないのではないかということなのですが、実際問題としてそれはわ かりませんので、そうしますと、治験の段階では当然、サリドマイドに準じたような形 で安全確保措置を講じた上で治験をやっていただくということになってくると思います。 このワーキンググループの報告にもそのように藤原先生からも書いていただいておるわ けですが、私どもで実際の治験を開始するにあたっては、このワーキンググループの報 告が御了承されればということですが、事務局レベルでも十分この報告を踏まえて指導 して、安全確保措置については万全を期して実施してもらうように努めることになりま す。 ○林構成員  今のことに関連してなのですが、私も全く同感で、この報告書が本会議後に、公開の 時代ですのでウェブ上に載ると思いますので、最後のところが確かに口頭での説明では 「十分配慮を」とおっしゃられていたのですが、記載内容として「留意する必要がある」 という穏やかなトーンではなくて、この検討会では「厳重な管理体制を確保した上で実 施する必要がある」というふうに明言する方が良いと考えています。米国のレブアシス トという供給管理システムがあることに配慮して、我が国でも厳重管理でやっていくべ きではないかと感じております。よろしくお願いします。 ○堀田座長  ありがとうございました。浜田構成員、何か御意見はありますか。 ○浜田構成員  全く同感でございまして、こういったことになりますと、厳重な体制は患者さんのた めにもぜひ必要だと思いますので、その点は考慮された方がいいと思います。 ○堀田座長  ありがとうございます。今回、レナリドミドについては、米国での承認は5qマイナ スといわれる染色体異常を伴ったMDSなのでありますが、少し前倒しで恐らく承認が 近々に取れるであろうという骨髄腫に対しても踏み込んでいただいたということであり ます。この報告書の中でサリドマイドが「デキサメタゾンの併用が標準治療となってい る」と断定するのはちょっとどうかなと思います。先ほど、説明の表現はもうちょっと やわらかいトーンだったのですが、まだ標準的治療とはちょっと言えない。ようやくフ ァーストラインに使われるようになってきた段階だと思いますので、その辺は記述を改 めたいと思います。 ○川原課長  これはウェブサイトに載せますので、もし修文するとしますと、「現在、標準的な治 療となりつつあるが」ぐらいの表現でございましょうか。 ○堀田座長  それぐらいならかまわないと思います。 ○川原課長  藤原先生もそれでよろしゅうございますでしょうか。 ○藤原参考人  ええ。そうとも言えるので、しゃべるときにはそういうふうにぼかしたのですが。 ○川原課長  それでは、事務局でそのように修文をいたしましてウェブサイトへの掲載はいたした いと思います。どうもありがとうございました。 ○栗山構成員  サリドマイドは、以前、すごく広く使われた別な作用があったわけですね。今はサリ ドマイドの多発性骨髄腫に対する作用が注目されてこういう使い方で出ているのですが、 この薬は昔、サリドマイドが使われたようなああいう作用はないのですかね。 ○堀田座長  催眠作用ということですか。 ○栗山構成員  そうです。 ○堀田座長  それはないということになっていると思います。 ○栗山構成員  ちゃんとどこかへ書いておいた方がいいと思います。 ○堀田座長  これは、神経作用という意味合いで書いてあるのだと思いますが、藤原先生、そうで すか。 ○藤原参考人  睡眠薬のような作用というのは余り明確にはなかったと記憶しているのですが、もう 一度、添付文書を見直してみます。 ○堀田座長  では、その辺をはっきりさせるということで記述をしていただきたいと思います。な かなかこれは微妙な、いろいろな意味合いで解釈が難しい薬でもあります。大変有効で 期待される一方でいろいろな注意が必要だということですね。 ○堀内構成員  同じことですが、「有用性について」の3行目に「神経毒性や催奇形性は報告されてい ない」と書いてありますが、「報告されていない」というのは「ない」というニュアンス に取られかねないと思いますので、「確認されていない」等に書き方をかえた方が良いと 思います。そうしないと、これはかなり安全だというニュアンスに取られかねないので はないかと心配です。 ○川原課長  例えば「神経毒性や催奇形性は、現在までのところ確認されていない」とか、そうい う書き方でよろしゅうございますでしょうか。 ○堀田座長  では、そのように誤解されないような形にしておきましょう。微妙なところですので。 ○川原課長  そこは、ウェブサイトの掲載にあたりましてはそのように修正させていただきます。 ○堀田座長  では、よろしくお願いいたします。それではこの品目については、ワーキンググルー プからの報告のとおり、有効性、安全性を十分注意しながら開発を進めるように企業に 要請をしていただきたい。このものは現在、米国ではセルジーンコーポレーションが開 発しているという状況でありますが、日本で受けるところを見つけて要請していただき たいと思います。 ○川原課長  承知いたしました。 ○堀田座長  それでは、続きましてコニバプタンにつきましては、山本先生からよろしくお願いい たします。 ○山本参考人  資料2−4をごらんください。医薬品名、コニバプタン。  概要ですが、アルギニン・バソプレシン受容体拮抗薬で、剤型は注射剤でございます。  対象疾病として低ナトリウム血症とされておりますが、米国での承認効能は、体液正 常型の低ナトリウム血症とされております。  対象疾病ですが、低ナトリウム血症は入院患者さんの数%にみられる非常によくみら れる病態ですが、分類としては、脱水、浮腫等の体液異常があるかないかということを みまして、体液正常型、脱水のある場合は体液の喪失型、それから体液過剰型、それは 浮腫を臨床的に見る、そのように三つに分けて低ナトリウム血症の分類がございます。 このお薬については、その中で体液の正常の、つまり脱水も浮腫も見られない低ナトリ ウム血症に対する承認を取られております。  体液正常型の低ナトリウム血症の原因疾患としては、SIADH、抗利尿ホルモン不 適合分泌症候群、甲状腺機能低下症、アジソン病、糖質コルチコイド欠乏症、また、薬 剤の影響による場合も多うございます。また、SIADHの原因としては、肺がん等の 悪性腫瘍、頭蓋内病変でも起こることが知られておりますが、中に特発性のSIADH というものも見られることがあることがわかっております。  ということで、対象疾病ですが、原因疾患は多岐にわたっておりまして、臨床現場で は比較的よく観察される病態といえると思います。なお、我が国では塩酸モザバプタン、 これは大塚製薬ですが、平成13年8月にSIADHにおける低ナトリウム血症の改善と いうことで、希少疾患用の医薬品に指定されております。  治療の基本は原疾患の治療と薬剤の除去ということになりますが、低ナトリウム血症 でもナトリウム濃度が115mEq/L以下になりますと、中枢神経症状を起こすということも ございまして、重篤な場合には適切な治療が必要ということがございます。ということ で、状況によりましては重篤化する疾患ということができると思います。  一方、血清ナトリウムの補正についても危険が伴うことが知られておりまして、急激 に上昇をきたす場合には、急激というのは12mEq/L、これは抜けておりますが、24時間 以内に12mEq/Lを超す上昇を認める場合を急速な上昇と呼んでおりまして、この場合、 central pontine myelysisというものを引き起こしまして、重篤な神経後遺症を起こす 場合があることがわかっております。  本剤については、バソプレシンのV1A及びV2リセプターのアンタゴニストという ことでございます。現在は、このような効能効果を持つ医薬品はございませんが、塩酸 モザバプタンの非ペプチド性のバソプレシンV2受容体拮抗薬でございまして、こちら は経口薬でございますが、同種同効薬と言えます。  米国の添付文書によりますと、プラセボ対照二重盲検試験を行っておりまして、これ は種々の原因による体液正常型の低ナトリウム血症患者さん56名に対して実施されて おりまして、そのときの治療前の平均ナトリウム濃度が124ということです。そして、 プラセボ群21名、本剤の40mg/day18名、本剤80mg/day17名の3群で、それぞれ4日間の 投与をされております。この場合、プラセボに対して40mg/day群で明らかにナトリウム 濃度の上昇を示しておりまして、それには有意に高いということで、さまざまな尺度で 見られております。また、20mg/dayと40mg/dayのオープンラベル比較試験もされており ますが、添付文書上にはその中の詳細な結果は示されておりません。  一方、有害事象でございますが、一番多かったものが投与部位の疼痛、静脈炎等でご ざいまして、本治験、比較試験では15から20%ということですが、健常人から患者さ んまで、この薬を投与された者の5割以上に何らかの形でのインジェクションサイトリ アクション(injection site reaction)がみられたということが書いてございます。  また、先ほど申し上げました血清ナトリウム濃度の急速な上昇が患者さんの9%に認 められたということですが、幸いにして治験では神経症状の出現は見られておりません。 また、肝機能障害、腎機能障害、それから高齢者でも血中濃度が上昇するということで ございまして、また、CYP3A4の阻害作用を有する薬剤及びジゴキシンとも相互作 用が指摘されておりまして、特にCYP3A4の阻害作用を有する薬剤については併用 禁忌とされております。  また、体液過剰型の低ナトリウム血症の多くの場合がうっ血性心不全患者さんが多い のですが、うっ血性心不全患者さんに対しても治験をやった形跡がございますが、それ については有効性及び安全性は確立されていないという記載が添付文書に見られており ます。ただし、根拠となるべき詳細データについては示されておりません。こちらはイ ンターネット等でも検索しましたが、まとまった形でのものは出てきませんでしたので、 確認はできておりません。  ということで検討結果でございますが、本剤は非常に重篤な中枢神経症状を有する体 液正常型の低ナトリウム血症の患者に対して、ナトリウム補正のために短期間、4日間 投与する目的で開発、承認されております。我が国においては、同種同効薬である塩酸 モザバプタン、こちらは経口剤ですが、近い将来に承認される見込みがございまして、 剤型は異なるものの、臨床現場のニーズはある程度、塩酸モザバプタンの方で満たされ る可能性はございます。ただし、注射剤であることから、意識障害等のある患者さんに も投与できるというような利点はございますので、有効性、安全性は注意深く検討しつ つ、我が国においても開発を進めてもよろしいかと考えております。  以上でございます。 ○堀田座長  ありがとうございました。それでは、ただいまのコニバプタンについて御質問、コメ ントをいただきたいと思います。 ○篠山構成員  利尿作用はどうなのですか。利尿作用に関しての影響はこの薬物は特に。 ○山本参考人  はっきりとした利尿作用というか、そういう形でのデータは示されておりませんが、 参考資料の添付文書には、米国添付文書ですが、12ページに、イフェクティブ・ウォー タークリアランスということで、ウォータークリアランスも改善するということが示さ れております。 ○篠山構成員  経口薬の大塚製薬のV2アンタゴニストが初めて臨床試験が行われたのは、うっ血心 不全でした。そして非常に有効であって、しかも今まで心不全で利尿薬を使う場合には 必ず神経体液性ファクター、特にレニンアンジオテンシン系が刺激されるということで いろいろな副作用があった。それを防ぐことができるV2アンタゴニストは非常に有効 ではないか、心不全に対しては新しい治療法を展開させるのではないか、というような 意見があったのですが、これは経口薬ですのでこれとはちょっと違うのですが、なぜ利 尿作用がないのかなという気がするのです。  経口薬の場合は、続けて飲みますので、1回服用したときにはガッと利尿作用がつく のですが、場合によってはすぐに耐性が生じて効果がだんだん少なくなるのではないか。 だから投与してもかまわない、というような意見であったと思うのですが。 ○山本参考人  はっきりした利尿作用については、体重の増加・減少でありますとか排尿量でありま すとか、そういうことはデータとして全く添付文書に載っておりませんで、ただ有害事 象の方に、一つは口渇、それから排尿が頻尿になるというようなものが、プラセボでは 頻尿はゼロなのですが、40mgを投与した方では6%に見られたということがございます ので、利尿作用は確かにあるのだと思います。ただ、残念ながら今回の添付文書にはそ れを示す具体的なデータはございません。  コニバプタンについても、添付文書を見ましても、またインターネット等で検索をし ましても、明らかに製薬会社は途中までうっ血性心不全に対しての治験を行っていたと 思われます。うっ血性心不全については120mg/dayまで投与したという記載もございま す。ただしその詳細が全くありませんで、パブメド等でもちょっと引いたのですがやは り出てきておりません。そして、最終的に添付文書にはうっ血性心不全に対しての有効 性も安全性もエスタブリッシュされていないということが、むしろ注意事項として載っ てしまっているということでございます。 ○有吉構成員  SIADHというのは臨床的にかなりきちっとしたクライテリアがたしか5つほどあ りまして、今、利尿作用の問題を言われましたが、一般的に細胞外液と細胞内液の分布 の問題であって、恐らくこの薬がうっ血性心不全に効かなかったというのは、うっ血性 心不全というのは利尿で解決する一面があると思うのですが、SIADHというのは利 尿で解決する問題ではなくて、結局、水中毒ですから、そういう意味でこの大塚の薬と 大分作用機序が違うのではないかと思うのですが、そういう意味からいうと、SIAD Hを明確に診断した場合には、むしろこの薬は必要な薬ではないのでしょうか。 ○山本参考人  塩酸モザバプタンはバソプレシンV2受容体拮抗薬ということで、本薬はバソプレシ ンのV1A及びV2Aリセプターのアンタゴニストということでございますが、アルギ ニンバソプレシンのホルモンの作用を発現するのに直接かかわっているのはV2リセプ ターであるというような記載がございます。どちらにしましても、本薬コニバプタンも 塩酸モザバプタンもどちらもV2リセプターのアンタゴニストでございますので、アル ギニンバソプレシンをダイレクトに拮抗作用があるということですので、先生のおっし ゃいますようにSIADHに対してはダイレクトな治療薬という可能性はございます。  ただ、今回の米国の治験では、SIADHを含んで、さらにそのほかの原疾患を持つ ものも含まれておりますので、米国ではSIADHを含んだ形でもう少し広い効能がつ いているということでございます。 ○堀田座長  ほかに。 ○川西構成員  これの同種同効薬の塩酸モザバプタンは、先日、医薬品第一部会で審議されたもので、 適応は、異所性抗利尿ホルモン産生腫瘍によるバゾプレシン分泌不適切症候群というふ うに多分限定されていると思うのです。そういう意味で、私はこの結論に対してはこれ でいいのだろうと思うのですが、表現上、この塩酸モザバプタンが、例数などが結構少 なかったようで、まだ相当に使用の制限があるということが多分依然として続く。ただ、 このたぐいのものは新しい作用メカニズムですから、やはり慎重に考えなくてはならな いということで考えれば結論は同じなのですが、塩酸モザバプタンというのが、今のと ころ、患者団体の方からの要望もないようですので、それほどそれを配慮する必要はな いかもしれませんが、それが変わるものかという表現が近々に変わることになるかどう かというのは、まだわからないような印象をそのときに受けました。 ○山本参考人  「対象疾病について」のところで書いております希少疾病医薬品の効能効果について はこの希少疾病医薬品が指定されたときの効能効果を書いておりますので、承認される といたしましたときには、通っていく様子をみながら事務局と相談しまして、書き方を 調整させていただきたいと思います。 ○堀田座長  いろいろ御意見をいただきました。このものは、確認ですが、既に治験は始まってい るのですか。これはアステラスですよね。 ○事務局  過去に別の効能で治験をやった経緯があったようですが、一旦、今、中断されたまま という。 ○堀田座長  今はとまっている。それで、塩酸モザバプタンは既に承認申請が行われているという ことですね。 ○事務局  モザバプタンの方は、今、川西先生がおっしゃったように医薬品の部会にかかってお りまして、承認までもう少し時間がかかりますが、承認する方向で今、動いております。 ○堀田座長  わかりました。それでは、いろいろ御意見をいただきましたが、このものについては、 モザバプタンで代わるものかどうかというのは議論がありますが、緊急性ということに ついては今のところ塩酸モザバプタンで対応できるのではないかという意見もございま す。したがってこれは、性急にということではなくて慎重に安全性、有効性を検討しな がら開発を進めてくださいということでまいりたいと思いますが、いかがでしょうか。 よろしいですか。 ○川原課長  事務局としましても承知いたしました。 ○堀田座長  ありがとうございました。  それでは、これまでが前回からの宿題でありました4つの品目でありますが、それ以 後、患者団体もしくは学会から要望のありましたものが2つございます。資料2−5の ニチシノンについて、中村先生方から御説明いただきます。 ○中村参考人  国立成育医療センターの中村でございます。  医薬品名、ニチシノン。欧米での販売名がオーファディン。  これは、先天性代謝異常である遺伝性高チロシン血症I型に対する経口剤でございま す。  米国及びEUで承認されております  対象疾患ですが、遺伝性高チロシン血症I型(以下、HT−1と略します)は、チロ シン分解酵素の一つであるフマリルアセト酢酸ヒドラーゼの先天的欠損で、中間代謝産 物であるフマリルアセト酢酸やその分解産物等がたまることで肝障害、腎尿細管障害を 引き起こします。また、サクシニルアセトンがポルフォビリノゲン合成酵素の活性を阻 害する等で、ポルフィリン症をも呈することが知られています。  最も一般的な経過を取るものが全体の80%を占めますが、これは劇症で生後数週から 数カ月で発生、肝不全の兆候が生じまして、2から8カ月でその多くが肝不全で死亡い たします。2カ月以前で発症した症例の1年死亡率は60%でございますし、生存例でも 2歳以降までに肝硬変を呈する。また、37%あるいは18%という報告がございますが、 肝細胞がんも合併するということでございます。その他、症状進行が緩徐な症例もあり ますが、大部分の症例は生命予後不良で肝移植の適応となります。我が国で現在、本症 と診断された症例は、わずか6例であるという報告があります。  医療上の有用性ですが、本剤はチロシンの分解に必要な4ヒドロキシフェニルピルビ ン酸酸化酵素の阻害剤です。この酵素は、チロシン分解酵素カスケードでHT−1の欠 損酵素の上流にあるということです。そして効果が期待できるわけですが、ただし、チ ロシンの体内濃度を下げることはできませんので、チロシン、フェニルアニンの摂取制 限を併用する必要があります。この摂取制限との併用により、米国で2002年、EUで 2005年に承認されております。  この承認の際に評価の対象とされた臨床試験はGCP準拠ではございませんで、これ はスウェーデンの大学病院の医師らを調整医師としてコンパッショネートユースで行っ た国際オープン試験、NTBC試験と呼ばれていますが、これの結果に基づくものでご ざいます。投与量も91年には0.6mg/kg/dayで開始されておりますが、それでは効かな いということで、93年には1mg/kg/dayを開始用量として適宜増量と投与量も変更され たという状況です。91年から97年に組み入れられた207例のデータを主な有効性の解 析対象。また、増量規定が勧告されたあとの93年7月から2000年3月までに組み入れ られた250名についても、補足的な解析の対象としてデータがEMEAの評価資料等に 掲載されております。  主要解析における2年及び4年生存率は96%及び93%。また、試験終了後の追跡調査 による5年生存率を、食事療法単独の過去の生存率調査と比較したところ、治療開始時 の年齢が2カ月未満の群では、摂取制限群は28%に対して82%、治療開始時の年齢が2 から6カ月で51%に対して95%と高い。また6カ月以降に開始されたものについても、 10年生存率でみますと86%と、摂取制限群の59%より高かったということが報告され ております。また肝不全等による死亡率も、摂取制限群より低いということです。  補足的解析では、生化学的指標について主に検討されていますが、90%以上の症例で 治療開始1週間以内に尿中サクシニルアセトン値が正常値に下がるなど、各種検査値異 常も大幅に改善しております。  安全性についてですが、EMEAによる審査の際には、NTBCスタディ以外に市販 後の安全性定期報告のデータ等を含めて評価されております。そのNTBCスタディの ピボタルな試験の207症例で重篤なもの49件の多くは疾患の自然経過に関連し、肝細胞 がんとかそういったものでございまして、因果関係を否定できないとされた重篤な有害 事象は、一過性の血小板減少3例のみでありました。  また、製造販売後を含む治療症例566名で、肝不全、悪性腫瘍と肝移植以外の重篤な 有害事象が29例ありましたが、ここに書いてありますようにけいれん、貧血等のもので ございます。非重篤の有害事象145件のうち多かったのは視覚障害と血液障害で、ただ、 これらによって治療が中断された症例はなかったということです。視覚障害については、 血中チロシン高値からの二次的現象と考えられておりまして、自然に、あるいはチロシ ン・フェニルアニンの摂取制限の強化により消失したということでございます。  国内では、個人輸入により2例の日本人HT−1患者に対する使用経験が報告されて おり、いずれも有効で、明らかな副作用も報告されておりません。  検討結果でございます。本剤は、HT−1の臨床症状を改善するのみならず、肝障害 の進行を抑え、生命予後も劇的に改善いたします。HT−1に対する他の有効な治療法 は肝移植だけであり、ニチシノンは米国、EUで承認されているのみならず、教科書的 にも第一選択とされております。  現在、同薬剤の対象となる国内症例は、知られている範囲でたった1例ということで ございまして、欧米での臨床試験データをもって承認申請を認め、承認後は長期にわた る製造販売後調査などで可能な限り国内情報を収集することが望ましいと考えます。製 薬企業にとっても収益を出しにくいこのような極めてまれな疾患を対象とした薬剤の開 発については、海外の小企業が積極的に国内での申請を行えるような対策、例えば英文 の海外承認申請データをそのまま承認申請に使用するなど、を考慮すべきであると考え ます。  以上でございます。 ○堀田座長  ありがとうございます。大変希少で、かつ重篤な疾患で、治療がおくれると致命的な 疾患だということで非常に限られた適応ではありますが、こういったものをどのように 国内で扱っていくかという大変重要な課題に踏み込んだ提案をこのワーキンググループ からしていただいたと思います。それでは御検討いただきたいと思いますが、いかがで しょうか。 ○大澤構成員  中村先生から御報告がございましたように、私自身もこのように非常にまれな疾患で、 しかも生後2カ月未満に治療を開始した場合と6カ月以降に開始した場合とでは治療効 果も非常に異なるというような状況においては、一刻も早く治療が開始される環境を日 本の子供たちのためにつくれることが望ましいと考えます。御検討いただいた報告の最 終のところにおまとめいただいている方法を本邦でもぜひ考えていただきたいと思いま す。 ○堀田座長  ありがとうございます。ほかの先生はいかがでしょうか。  日本で治療を受けた2人は、コンパッショネートユースではなくて個人輸入で治療し ているのですか。 ○中村参考人  奥山参考人の方が専門領域なので、奥山参考人から。 ○奥山参考人  コンパッショネートユースです。実際は無償で供給されていますが、形式的には個人 輸入の形式を取っていると思います。 ○堀田座長  このあとに続くもう一つのアルグルコシダーゼアルファについても同様な問題を含ん でおりますので、あとでまとめて御議論をいただくこともあるかと思いますが、このも のについて特別に何か御指摘あるいは御質問がありましたらお願いしたいと思います。 ○堀内構成員  教えていただきたいのですが、本邦で診断された症例はわずか6例ということですが、 実際上はどのくらいの数になるのでしょうか。診断されなくても早い時期に亡くなって しまうケースが多いのではないかと思いますが、実際上はどのくらいか、わかりました ら教えて下さい。 ○奥山参考人  実際のところ、これは非常に特異的な肝臓の異常、小児科では珍しい肝硬変とかにな るので、診断がつかないうちに亡くなっている症例もあるとは思いますが、それほど多 いとは思えない。この疾患は常染色体劣性遺伝病ですが、この種の遺伝病は頻度の低い ものも多いので、この疾患についても本当に症例が少ないと考えます。 ○堀田座長  ありがとうございます。いかがでしょうか。このワーキンググループの提案は、国内 で治験をやって患者さんに届くのがおくれるよりは、海外のデータを使って承認申請を すべきであるということと、それが海外にしか企業がないとすれば、海外からも承認申 請が行える手だてをすべきではないかという提案で、大変従来のものから踏み込んだ提 案をしていて、私はそれをぜひ進めたいと思います。何か御意見はございますでしょう か。吉田構成員、いかがですか。 ○吉田構成員  エイズのことを考えると前例もないわけではないし、ちゅうちょすることはないので はないかと私は思います。 ○堀田座長  ありがとうございます。そのほかの御意見はありますでしょうか。あるいは、ちょっ とそれは待てよ、という意見がありましたらぜひいただきたいと思います。 ○川西構成員  私も吉田先生の御意見に賛成です。 ○堀田座長  ありがとうございます。この疾患の特殊性と重篤性にかんがみますと、そのような対 応をすることが我々としての一つの任務ではないかと思います。それではこのものにつ いては、ただいまのように早期の承認申請及びその後の十分な市販後の調査をきちんと して、それを報告を受けるという形でむしろ安全性を担保していくことがよろしいので はないかと思います。よろしくお願いします。 ○川原課長  本薬については、一応欧米でこれを製造販売している企業名はわかっておりますが、 日本にその企業のエージェント的なところはあるようでございますので、そことの接触 を開始いたしたいと思います。 ○堀田座長  そのようによろしくお願いいたします。  それでは、本日の検討の最後の品目はアルグルコシダーゼアルファであります。ポン ペ病に対する治療薬でありますが、これについては奥山参考人にお願いしたいと思いま す。 ○奥山参考人  成育医療センターの奥山です。よろしくお願いいたします。資料2−6をごらんくだ さい。  医薬品名、アルグルコシダーゼアルファ。欧州での販売名はマイオザイムでございま す。  酵素製剤でありまして、対象疾患は糖原病II型。別名、ポンペ病と申します。  外国の承認状況は、3月末にEUで承認されているということであります。  まず、ポンペ病について簡単に御説明いたします。ポンペ病は、酸性α−グルコシダ ーゼの先天的な欠損で、細胞内小器官でありますライソゾームにおけるグリコーゲンの 分解が阻害されます。そして、ライソゾーム内にグリコーゲンが蓄積し、そのことによ って細胞組織が障害されるということで、致命的な希少疾患であります。  海外での発症率は、約4万から5万の出生に1人。また、慈恵医大の衛藤教授らが厚 生労働省のライソゾーム病の研究班の中で調査したところによりますと、我が国での患 者さんは29例。これは、ここに書いてありますように回答施設259施設、回答率30% 前後でありますが、もともとライソゾーム病というのは希少疾患で、多くの施設で興味 を持って専門的に診療しているわけではないので、このぐらいの回答ですがほぼ全例を カバーしているのではないかと考えております。ちなみに、ポンペ病家族会でも日本人 患者総数を30人前後と把握していると聞いております。  その障害ですが、心筋、呼吸筋及び骨格筋で顕著でありまして、全身のミオパチー、 呼吸筋が障害されて呼吸不全、心筋が障害されて心不全を呈します。  ポンペ病の発症年齢及び病態の進行の程度はさまざまでありまして、典型的乳児型、 非典型的乳児型、小児型、成人型などのサブタイプに分類されますが、オーバーラップ もかなりあります。典型的乳児型というのは、生後12カ月までに症状が出現し、心筋及 び骨格筋の筋力低下が急速に進行し、心不全、呼吸不全によりほとんどの患者さんが生 後1年以内に死亡する重篤な病気です。その他、発症年齢が比較的おそく、症状の進行 が緩徐な症例もあります。現在のところ、本剤以外に有効な治療法は全くございません。 対症的には治療されておりますが、実質的な効果はなく、病態は進行していくというも のでございます。  本剤の医療上の有用性ですが、本剤は遺伝子組み換え技術によりつくられたヒト型酸 性α−グルコシダーゼです。欠損している酵素そのものであります。本剤によりライソ ゾーム内にこの酵素が供給されましてライソゾーム機能が回復し、症状を改善いたしま す。  臨床試験は、米国とEUで同時に行われておりまして、本年3月にEUで承認されま した。乳児型に対する治療の比較対照は、本剤の投与を受けていない168症例のコホー ト研究の症例から選択されております。以下、ヒストリカル対照群と呼ばせていただき ます。主要試験、ピボタルな試験は1602という試験で、初回投与時が生後6カ月以下の 18例に対するオープン試験であります。9例にはプロキロ20ミリ、ほかの9例にはプ ロキロ40ミリを投与して、52週投与された時点でヒストリカル対照群42症例と比較さ れております。  まず、生後18カ月の対照群での生存率ですが、ヒストリカル対照群は42例中1例し か生存していなかったのに対して、本剤投与群は生存率100%、18例すべてが生存して おりました。しかも侵襲的な人工呼吸器、人工補助なしの生存、すなわち気管切開であ るとかインキュベーションなどがなくすごしていた方々が18カ月の時点で83.3%とい うことでありました。あとは、治療開始52週における統計的な生存期間でも、ヒストリ カル対照群に比べて延長しているということが報告されております  そのほかに1702というオープン試験がございます。これは発症時が12カ月未満で、 初回投与時月齢が6から36カ月の非典型的乳児型を主な対象とした21例で、プロキロ 20ミリの隔週投与が行われました。投与開始52週後の生存率は73%で、ヒストリカル 対照群86例の生存率37%に比べて有意に高い状態でありました。87%の症例で、左室 心筋容量の低下が認められるなど、心機能の改善も認められました。成長の改善維持も 多くの患者さんで認められまして、40%の患者さんでは運動機能の改善も認めました。  EMEAの報告によりますと、乳児型ポンペ病に対する本剤の有効性は明らかである としておりますが、それより遅発型の方に関してはまだ有効性のデータは限られていて、 これはジェンザイム社がやっておりますが、ジェンザイム社は無作為化プラセボ対照二 重盲検試験等を実施することを検討しているということでございます。  次に安全性の評価についてでありますが、2005年3月までに登録された61例につい て行われました。大半の患者で1件以上の有害事象が出現しておりましたが、ほとんど は本剤との関連性がないと判定されました。本剤と関係があると判定された有害事象の 多くは軽症から中等症で、82%は投与に関連した反応とみなされました。投与中に9例 が死亡しておりますが、本剤との関連はなく、本来の病気による死亡と考えられました。 そのほか、有害事象により治療を中止した患者さんはおりませんでした。  最も頻度の高い有害事象は発熱ですが、そのうち本剤との関連があると判断されたも のは、これは静注製剤でありますが、静注投与時の発熱で一過性のものでありました。 静注投与時あるいはその直後に起きる皮膚の発赤、じんましん、発熱、発疹は、インフ ュージョンアソシエーテッドリアクション、投与関連反応と呼ばれますが、1702及び 1602の試験39症例中18例に起きるなど高頻度には認められましたが、これらは投与ス ピードの減速、あるいは一時的な中断により対応可能で、投与関連反応によって投与量 を減少しなければならなかった、あるいは治療を中止しなければならなかったという症 例はございませんでした。  その他、重篤な有害事象として呼吸不全、肺炎、カテーテル関連の感染、呼吸窮迫、 酸素飽和度低下、細気管支炎、嚥下性肺炎、発熱などがございましたが、これらのうち 70%は軽度から中等度で、重度の有害事象15例62件は、本剤との因果関係はないと判 定されました。  また、これは酵素製剤でありますので抗体ができることがあるわけですが、本剤投与 開始後3カ月以内にほとんどの症例で抗rhGAA抗体は認められました。しかしながら中 和抗体、すなわちこのGAAの物質の効果を弱めてしまうような抗体の出現は2例あり ましたが、あとはイムンコンプレックスをつくって腎障害が発生した、ネフローゼにな ったという症例が1例報告がありますが、このネフローゼになった症例に関しては、こ の本当の試験が始まる前の製造法の異なるGAAによるものであるということでありま す。  これが海外での報告でありますが、乳児形ポンペ病の日本人の患者さんが1名、英国 での1702の臨床試験に参加し、この患者さんは帰国後もコンパッショネートユースとし て本剤の投与を継続的に受けております。  以上が医療上の有用性ということですが、ワーキンググループとしての検討結果を御 報告申し上げます。  本剤は、これまで有効な治療法が全くなかったポンペ病の進行を抑制できる唯一の治 療法であります。安全性は比較的高く、その効果は生命予後を大きく改善するのみなら ず、心筋機能、運動機能の改善等にも効果があります。何より人工呼吸器装着が不要に なることによって、生活の質にも劇的な改善をもたらします。このように臨床的に重要 性の極めて高い希少疾病用医薬品であることを踏まえ、日本人患者データを含む欧米で の臨床試験データをもって申請を認め、承認後は長期にわたる製造販売後調査などで可 能な限り国内情報を収集することが望ましいと考えます。  本疾患は重篤であるのみならず早期の治療開始が予後を大きく左右いたしますので、 迅速な審査による早期の承認を総合機構等には期待したいところであります。また、製 薬企業に対しては、人道的、倫理的見地から、本剤の審査期間中であっても国内患者さ んに対する本剤のコンパッショネートユース的な供給を、なるべく多くの患者さんに希 望したいと思います。さらに治療に当る医師におかれましては、関連学会等で研究班を 組織して本剤の治療経過を科学的に分析し、学術誌等に報告していただくことが望まし いと考えます。  以上です。 ○堀田座長  ありがとうございました。先ほどの品目と比較的よく似たシチュエーションにあると 思いますが、このものは別の遺伝性の希少疾患、ポンペ病に対する治療薬であります。 今のワーキンググループの報告につきまして、大澤構成員からコメントをいただけます か。 ○大澤構成員  私自身も奥山先生の御意見に賛成でございます。私どもの教室でも2例の患者さんが いらっしゃいまして、小児型ですが、1例はまだあまり問題はないのですが、もう1例 の方は成人に達していらっしゃいます。大学を卒業するころから呼吸器が必要になって いまして、生命が危ぶまれるような状況にあったのですが、実際にコンパッショネート ユースの個人輸入で本剤を使用開始していただいていまして、まだ使用して数カ月です が、かなり呼吸状態が改善してきています。早期に使用開始できる状況をつくることが 非常に望まれると思います。 ○堀田座長  ありがとうございます。そのほかの先生はいかがでしょうか。 ○吉田構成員  典型型で本剤を使った場合の長期生存はどのぐらいあるのですか。 ○奥山参考人  まだ長期生存というか、全例生存中なのでわかりません。 ○吉田構成員  なるほど。最高でどれぐらいになっているのですか。 ○奥山参考人  試験が始まったのが2年前なので、3歳とか4歳ぐらいではないかと思います。 ○吉田構成員  もう一つ、治療戦略的にはかなりシンプルで、ヒト型のグルコシダーゼを入れてしま うというのですが、メカニズムとして静注するとそのまま自動的にライソゾームへデリ バーされてしまうのですか。 ○奥山参考人  ライソゾームの酵素というのは、ちょっと細かいことになりますが、細胞の中ででき ますと、ゴルジ体というところからマンノース6リン酸リセプターと結合してライソゾ ームに運ばれます。そのマンノース6リン酸リセプターというのは細胞膜にもございま すので、外から投与したものも細胞膜上のマンノース6リン酸リセプターをもってライ ソゾームに運ばれる、そういうメカニズムをもっております。 ○堀田座長  これは、リコンビナントの製品のたんぱく製剤ですが、これに対して抗体が高頻度に できるというのは、遺伝的にその遺伝子の産物をもっていないから余計できる、そうい うことなのですか。 ○奥山参考人  そのとおりです。 ○堀田座長  それで、抗体産生が致命的になるということはないという先ほどのお話ですね。 ○奥山参考人  はい。これはほかのライソゾーム病でもファブリー病でもゴーシェ病でも抗体はみら れるのですが、それで致命的になるとか、効果が減ずるということもほとんど報告され ておりません。 ○堀田座長  よろしいでしょうか。それでは、いろいろ御議論いただきましたが、本剤についても ワーキンググループからの報告のとおり、企業に早期の承認申請をしていただきたいと 思います。よろしくお願いします。 ○川原課長  承知いたしました。 ○堀田座長  それでは、本日の次の議題でございますが、資料3として、この1月から3月に欧米 4カ国のいずれかの国で承認された医薬品リストが配付されていると思いますが、これ についての検討に移りたいと思います。事務局から簡単に説明をお願いします。 ○事務局  それでは、資料3に基づいて簡単に御報告を申し上げます。  ことしの1月から3月の間に欧米4カ国のいずれかで我が国に先立ちまして承認され た薬が全部で六つございましたので、リストアップをいたしております。  まず1番は、成分がスニチニブという製品でございまして、ことしの1月26日にアメ リカで承認をされました。  これは、経口剤、カプセル剤でございます。  効能効果が、消化管間質腫瘍。イマチニブによる治療によっても進行した、またはイ マチニブ、これは販売名クリベックですが、イマチニブに不耐容。それから、進行性腎 細胞がんということでございます。  作用機序としては、チロシンキナーゼの阻害薬ということでございます。  本剤国内状況と書きましたが、我が国でも治験が今、進行中でございます。  2番目は、成分名がラノラジンというお薬です。  徐放性の経口剤でございまして、効能効果が慢性狭心症。ただし「QT間隔を延長す るために他の抗狭心症薬で十分な反応が得られない場合に限る」というような縛りがつ いております。こちらも、1月にアメリカで承認をされております。  こちらは国内で過去、治験が行われたのですが、平成12年ごろに開発が中止をされま して、現在は開発は行われていないという状況でございます。  3番目は、ルビプロストンでございます。  これはソフトカプセル剤の経口剤で、効能効果が慢性特発性の便秘ということでござ います。  本剤については、特に国内での開発はまだやられていないということでございます。  4番目は、ロチゴチンでございます。  これは、EUで2月に承認がなされました。貼付剤でございまして、早期の特発性パ ーキンソン病の症候の治療ということでございます。  本剤につきましては、国内状況のところに書いておりますように、治験が国内でも実 施をされているところでございます。  5番目は、アニデュラファンギンでございます。  アメリカで2月に承認がなされております。注射剤でございまして、カンジダ性敗血 症、食道カンジダ症等の真菌感染症に使われる抗真菌薬でございます。これについては、 企業が国内での開発を検討中であるという段階でございます。  6番目は、先ほど資料2−6で御検討いただきましたアルグルコシダーゼアルファで ございまして、ちょうど3月29日にEUで承認されていましたのでここに記載してござ いますが、説明は省略させていただきます。  以上でございます。 ○堀田座長  ありがとうございます。全部で6品目でありますが、最後のアルグルコシダーゼアル ファはただいま検討しましたので、5品目ということになります。この中で、さらにワ ーキンググループで検討していただく必要のある薬剤を検討していただきたいと思いま す。  最初に、スニチニブについていかがでしょうか。これは、GISTと腎がんを対象に してのチロシンキナーゼインヒビターであります。 ○浜田構成員  国内での治験は今はどのぐらいまでいっているのでしょうか。 ○事務局 詳細はあれですが、恐らくフェーズIIぐらいをやっているところだと思いま す。 ○有吉構成員  このスニチニブというのは非常に大きな特徴は、今までの薬剤と違いましてかなりリ スポンスが高いのですね。20数%から30%を出している。ソラフェニブという既に治験 の終わった腎がんのあれよりはかなりリスポンスレートが高いというのが大きな特徴だ と思います。アメリカで腎がんが承認されていますが、私の調べたところによりますと、 アメリカでもこれはサバイバルベネフィットといいますか生存率に関する情報がないの に承認したのはかなり有効性が高いということで、FDAも市販後試験を要請している のですね。必要だという条件でやっているわけです。  これについて私は厚生労働省にお伺いしたいのは、この未承認薬の検討会はこれで1 年数カ月やっておりますが、安全性確認試験あるいは治験が終わったあとの試験が必要 だということが言われた中で、どの程度の状況になっているかというのは一度も報告が ないのですが、どうなっているのでしょうか。 ○事務局  先生の御質問は、この検討会で過去に御検討いただいた品目の中で、安全性確認試験 がどの程度の品目でやられているかということでよろしいでしょうか。 ○有吉構成員  はい。 ○事務局  それにつきましては今回は御用意できなかったのですが、前回お配りいたしました過 去の検討品目についての一覧表の中でもちょっと御紹介をいたしましたが、四つの薬に ついては安全性確認試験が今、進行しております。 ○有吉構成員  それは、私は例えば今、資料2−6のアルグルコシダーゼアルファのところで非常に 大きな問題が2つ指摘されたと思うのですが、1つは、オーファンドラッグみたいな非 常に希少疾患のものはともかくとして、日本の治験は今、1件当たり100万円以上かか っている状況の中で、安全性確認試験がスムーズに行われていないのではないかという ことを危惧しているのですが、そういうことはありませんか。  というのは、欧米ではコンパッショネートユースあるいはイスクパンディッドアクセ スプログラムという形で、例えば腎がんの方だと思いますが、スニチニブは治験以外に 確か1700例が投与されているのです。私はこのシステムに問題があるのではないかと思 うのですが、実際問題、安全性確認試験という名前で、患者さんに本当に有用な薬が提 供されているかどうかということの検証がこの会議で全くできないないというのは大き な問題だと思うのですが、その点は大丈夫なのでしょうか。 ○川原課長  急用で中座しまして申しわけございません。安全性確認試験も、この会議のスタート のときに御説明しましたように薬事法上の治験という枠組みでということで、承認審査 中であっても患者さんへの投与の機会を提供するということで始めたわけでございます。 ただ、そうは申し上げましても、薬事法上の治験ということでございますので、GCP でございますとかいろいろ制約はかかってくるわけでございます。そういう中で、実際 問題として欧米で承認をされておりましても、日本において安全性、有効性が最終的に 確認ができていない段階では、患者さんへの安全というところもみなければなりません し、治験ということになれば、現実問題としてそれが実施できる医療機関、医師、そう いったいろいろ制約も出てくるかと思います。そういう意味では、もちろん場所的なも の、いろいろ開発のタイミング等との関係も出てくると思いますが、そういう点で現状 のような状況にはなっていると思いますが。 ○有吉構成員  私は、未承認薬のこの会が開かれて、このシステムのあり方は薬剤を提供するという よりもむしろ混合医療の問題から出てきたという経緯はあるにしても、きちっとした形 で患者さんにできるだけ早く提供するという趣旨からいえば一度考え直すべきことでは ないかと。これは、今のスニチニブのアメリカのデータを私は見てそう思った次第なの で。  もう一つ、今まさにおっしゃいました安全性の確認なのですが、実はこれはここでの 問題ではないかもしれませんが、ヨーロッパのEMEAと日本の機構の間で有害事象の 評価について、哲学的な違いといいますか大きな差があるのですね。例えば先ほどのア ルグルコシダーゼアルファのところで「安全性はほとんど問題ない」とおっしゃったの ですが、日本でいうと「必ずしも否定はできない」というところに入ってくるのですよ。 そうすると、これは安全に問題があるということになるのですね。そうすると、せっか くICHがありながら、EMEAと日本で考え方が違うというのは非常に大きな問題な のですね。そういう問題を抱えながらこの会議をやっているということについて、もう 少し考え直すべき点があると思うのですが、いかがでしょう。 ○堀田座長  確かに治験の進捗に関して、私も自分で治験責任者、調整者をやらせていただいて、 今、先生の御指摘は常々思っているところなのですが、それは日本のGCPの運用の問 題になります。重要なご指摘ではありますが、また別の機会に議論させていただきたい と思います。ただ、ここの検討会の一番重要な任務は、患者さんの切実な要望にできる だけこたえるということで、必要なものは早く治験を開始するなり承認申請をもってい く。そのためにはどれを選別すべきかということでありますので、治験そのものの進捗 に関してはまたいろいろ議論があると思います。 ○黒川大臣官房審議官(医薬担当)  審議官の黒川ですが、有吉構成員の初めのお話については、川原課長から述べられた と思いますので、後半の安全性について、EMEAとかFDAと私どもは若干の違いが あるのではないか、それを何とかすべきではないか、こういう御指摘だと思います。  今の背景と現状を少し申し上げますと、有効性については、これは標準的な治療法を 対象とした比較臨床試験など、それで力量が定められますから、おおよそ説得力あるデ ータは世界共通としてみられるということになるわけですが、副作用問題などについて は、その集団、例えば国民とかあるいは文化圏とか、そういったものが一つの生活の安 全というレベルで、私どもはこれを受け入れる、受け入れない、どれだけのベネフィッ トに対してかくかくしかじかのリスクを払うというものが違ってきているわけです。こ れが、例えば渋くて厳しいといわれるがんの化学療法に対するものの見方とか、幾つか の現実的な違いになっているわけであります。  もちろん、データ等によりまして私どもは医療あるいは医薬品に関係するものは、で きるだけそういった難しい問題をわかりやすく患者さんあるいは国民一般に説明するわ けでございますが、それはその社会がこれは受け入れる、受け入れないという最終的な 価値判断といいますかそういったことが、現在、これは私どもだけではなくて国際的に も置かれている状況ではないかと思います。  したがって、同じ安全性のデータであっても、結果として例えば適応が違ったり、若 干使用上の注意が違ったりすることは、これは自然のなりゆきという部分もあります。 最も大切なことは、少なくとも諸外国で、あるいは日本の中で出ている安全性データに ついて不要な遅れなくそれを把握して管理し、かつ評価をして手当をする。これが国際 的にも確立するところでございまして、そういった意味では我々もEMEAとそれこそ ICHで様式などを決めてやっているわけでございまして、具体的なその先の部分につ いてはおおよそ患者、国民が決める部分が大きい。こういう実状を御説明申し上げたい と思います。 ○堀田座長  私が治験の進め方についての議論は別の場所でと言ったのは、この件に関しては私も 言いたいことが山のようにある。だけどここでは余り言いたくないということでありま す。決してここで議論を閉じたいわけではないのですが、この会の性質上、そのような 形で進めさせていただきたいと思います。治験のあり方委員会等がまたこれに対して対 応していただいているようでありますので、藤原先生などもこの点については治験あり 方委員会でいろいろ主張していただいて、またそこで議論していただきたいと思います。  今のスニチニブも含めていかがでしょうか、次のステップにいくかどうかということ であります。先回、ソラフェニブに関しては国内治験がほとんど終了しており、今さら ここでプッシュしても余り変わらないだろうということで検討の対象にいたしませんで したが、このスニチニブについては、有吉構成員のお話ですとさらに効果が期待できそ うだということです。治験は今、実施中ということで、少し状況は違いますが、このも のについていかがいたしましょうか。 ○堀内構成員  スニチニブはカイネースインヒビターですが、ターゲットが幾つものリセプターとい うことが特徴です。従来の考え方は、スペシフィックなカイネースの阻害というニュア ンスのものが多かったのですが、いろいろな部位を阻害をする。リセプターもいろいろ なものを阻害するし、細胞内のカイネースも阻害する可能性があるということですので、 大変興味深い薬だと思います。ぜひ検討をしていただきたいと思います。  ただ、80ぐらいのカイネースについて阻害効果を見ているようなのですが、どのくら いの特異性があるのかについても、わかったら調べていただきたいと思います。 ○堀田座長  わかりました。そのように要請がございました。そうしましたら、このものについて はワーキンググループの検討対象に取り上げさせていただきたいと思います。 ○吉田構成員  治験もほとんど終わりに近づいて迅速審査ということになれば、そちらの方がお金は かからないのですかね。ワーキンググループの負担もあるだろうし、なんでもかんでも やらせるというと、ワーキンググループの方々の本業もありますし(笑い)。 ○川原課長  先生方に大変御負担をおかけして申しわけないのですが、先ほど座長からお話がござ いましたが、前回、似たようなお話がございましたので、ソラフェニブの方と同じよう な形になるかと思うのですが、これまでも審査中のものとか申請間際のものについても、 一応その時点でワーキンググループで評価を行ったということはございますので、もち ろんある程度限られたオープンになった海外での公表文献とか添付文書に基づくワーキ ンググループでの判断ということにはなりますが、それ自体はこちらでお決めいただけ ればと思いますが。これまでも、それ自体が申請間際だからとかそういうことだけでは、 それはだからやらないという形には必ずしもなっておりません。 ○堀田座長  ということですが、いいですか。それでは治験そのものは粛々と進行しているようで す。こちらとしてはそれについてエンカレッジするかどうかということだと思いますの で、特に支障がなければこれは検討対象にしていただきたいと思います。  その次のラノラジンについてはいかがでしょうか。これは慢性狭心症治療薬ですが、 1回、治験は中止して、開発はしていないということのようでありますが、学会からの 要望もないようであります。 ○篠山構成員  実際に平成12年に開発を中止しているというのがどういう原因であるか、まずその点 だけがはっきりすればと思いますが。 ○堀田座長  その点は把握していますか。 ○事務局  企業から簡単に事情を聞いておりますが、こういった患者さんには薬物治療よりも、 例えば血行再建処置とかがなされていることが多くて薬物治療を必要とする患者さんが 余り多くなくて、薬効評価がなかなか難しいのではないかという事情でやめたと聞いて おります。 ○堀田座長  いかがですか。 ○山本参考人  ラノラジンについて米国の添付文書を参考までに確認してまいりましたが、QT延長 は、この薬はドーズディペンデントにQT延長がみられるということでございまして、 治験の中で有害事象として起こっております。どうもそれはこの薬の特徴のようでござ いまして、ドーズディペンデントにQTを延長させるために、この効能効果が慢性狭心 症と書いてございますが、要は先ほどのようなインターベンション等も難しい、また他 の抗狭心症薬というのは具体的にはニトログリセリン、それからカルシウム拮抗剤、そ の他のベータブロッカー等々でも狭心痛が持続的に起こるということで、本剤の治験は 狭心痛の回数の減少をみておりまして、そのためにQT延長がありますのでかなり狭い 範囲で、要はほかの薬でも完全に狭心痛が抑えられない患者に限り、ということでござ います。 ○篠山構成員  わかりました。副作用でQT延長があるから使いにくいということですよね。もしそ うであれば、代用薬はあるのではないかという気はするのですが。 ○堀田座長  ありがとうございました。この検討会議で検討対象にするのは、疾患の重篤性、緊急 性、それから代替治療薬があるか・ないか、そういうところでの判断でありますので、 その点でいえば、今、篠山構成員のおっしゃったように、この品目については緊急性と して扱う必要はないということでよろしいですか。ありがとうございます。  それでは、その次の慢性便秘薬でありますが、このものも重篤性といえば便秘で重篤 の人も中にはあるかもしれませんが、どんなものでしょうか。ほかに同効代替薬はある ように思いますので、これは通常の治験をやるならやっていただきたいと思います。  それからロチゴチン、何か舌をかみそうな薬ばかりですが、貼付剤ですね。早期の特 発性パーキンソン病ですが、これはいかがいたしましょうか。これは既に治験実施中と いうことになっております。このまま、重篤性とかそういうのは余りないので、通常に 治験をやっているならそれでもいいのではないかという気はいたしますが、何か特別、 御意見はありますか……。よろしいですか。では、これはそうさせていただきます。  最後になりますが、カンジダ敗血症に対する抗真菌薬ですね。これはアニデュラファ ンギン、ファンギン系の薬ですかね、これについてはいかがでしょうか。これも開発中 のようでございます。これをよく御存じの後藤先生。 ○後藤構成員  これは、キャンディン系の薬剤ですが、キャンディン系の抗真菌薬に関しては日本で はもう既に代替薬がございますし、深在性真菌症の中でも、先ほど申し上げましたよう にアスペルギルスの侵襲性のものとかフサリウムとか、あるいはムーコルなどに関して は、治療に難渋する場合も多いわけですが、カンジダに関してはある程度、現在の薬剤 でも治療できる状況にありますので、重篤性、緊急性、それから代替薬、その意味から すれば通常の開発でもよろしいかなと思います。 ○堀田座長  ありがとうございます。既に開発中ですので、これは慎重に観察していただくという ことにしたいと思います。  検討すべきものは以上だと思いますが、何か事務局からございますか。 ○川原課長  途中で一時中座いたしまして申しわけございませんでしたが、そういたしますと1番 のスニチニブと、それから前回、先ほど座長がちょっとお話しされましたソラフェニブ についてはいかがいたしましょうか。 ○堀田座長  それにつきましては、先回は特別に検討対象にしなくてもいいだろうという話でした が、スニチニブと同列に並ぶものとして一応比較しておくというのもいいのではないか と思いますが、有吉構成員、いかがでしょう。 ○有吉構成員  私はスミチニブの方は全く文献しか知らないのであれですから、同じようにやってい ただいても結構だなと思います。 ○堀田座長  それでは、藤原参考人におかれましては2つでしんどいですが、よろしくお願いいた します。  それでは、事務局は確認してください。 ○川原課長  それでは、前回の品目を1品目と今回のスニチニブ、2品目について次回、御検討い ただくようなことで準備をしたいと思います。 ○堀田座長  それでは、特に御質問がなければ本日の会議を終わりたいと思いますが、何かつけ加 えることがありましたら事務局からお願いいたします。 ○事務局  どうもありがとうございました。本日御検討いただきました品目につきましては、会 議の結論を事務局から該当企業に伝達をさせていただきまして、次回の本検討会議でそ の状況の報告をいたします。  次回の開催日程でございますが、次回は7月に開催をさせていただく予定でございま す。そこで、本日、先生方の机の上に7月分と次々回の10月分の日程調整の紙を置かせ ていただきましたので、もしお書き込みいただければそのまま机の上に置いていってい ただくか、あるいはお持ち帰りいただきまして、後ほど事務局にファクスでご返送いた だきますようお願いいたします。  次回の検討会議では、本日、次回までに検討という結論がありました2品目について、 ワーキンググループでの検討を御報告いただきます。それから、この4月から6月の3 カ月間に欧米4カ国で承認をされました薬について、今回と同様にリストを配付いたし まして、御検討いただく予定でございます。  以上でございます。 ○堀田座長  ありがとうございました。それでは、本日の検討会議をこれで終了します。ちょっと 時間がオーバーしまして申しわけありませんでした。御苦労さまでした。 ○川原課長  どうもありがとうございました。 (了) 照会先 厚生労働省医薬食品局審査管理課 TEL:03−5253−1111