06/04/17 平成18年4月17日中央社会保険医療協議会診療報酬調査専門組織各分科会 医療機関のコスト調査分科会議事録 第11回診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会 議事録 (1)日 時  平成18年4月17日(月)16:30〜18:12 (2)場 所  霞が関東京會舘 シルバースタールーム (3)出席者  田中滋分科会長 石井孝宜委員 猪口雄二委員 井部俊子委員         今中雄一委員 尾形裕也委員 柿田章委員 近藤正晃ジェームス委員         椎名正樹委員 手島邦和委員 松田晋哉委員         <事務局>         堀江保険医療企画調査室長 他 (4)議 題  平成17年度調査研究結果の報告について         ・医療のIT化に係るコスト調査         ・医療安全に関するコスト調査 (5)議事内容   ○田中分科会長   ただいまより第11回診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会を開催させ ていただきます。  委員の皆様にはお忙しい中を御出席いただきましてありがとうございます。  まず、委員の出欠状況について事務局から報告を受けているところによりますと、本 日は、須田委員、高木委員、西岡委員、原委員が御欠席でございます。  それでは、審議に入らせていただきます。  本日は、「平成17年度調査研究結果の報告について」を議題といたします。  本分科会においては、平成17年度の調査研究として、中医協・診療報酬基本問題小委 員会で御了承を得た4つの研究調査を行ったところでありますが、本日はそのうち2つ の調査、すなわち「医療のIT化に係るコスト調査」、「医療安全に関するコスト調 査」について、それぞれ報告を受けたいと思います。  それでは、まず「医療のIT化に係るコスト調査」について、中心となってまとめて いただきました松田委員より説明をお願いいたします。 ○松田委員   お手元に報告書案がございますので、今まで行ってきたこと、内容について、かいつ まんでお話をさせていただきます。  まず1ページですが、1.調査の背景と目的が書いてあります。  (1)調査の背景としては、医療のIT化に関するグランドデザインというものがあり ますが、それに応える形で調査を行うということが今回の課題であったわけです。  医療のIT化は、標準化・透明化された医療情報を国民に提供し、医療機関としての 説明責任を果たすこと、医療の安全性の向上、医療情報の共有による地域の医療資源の 適正化、院内システムの効率化といった課題にこたえるための手段として、現在その重 要性を増しているとあります。  しかしながら、そういうことが本当に起こっているのか、導入・維持に対するコスト はどのくらいかかるのかということについては、IT化を進める上できちんと把握しな ければならない問題である。その問題意識について、今回、この調査を行ったわけです。  (2)調査の目的ですが、本調査は、医療のIT化に伴うコスト(各種ITシステム導 入に伴う追加コスト、導入の結果としての削減可能であるコスト)の実態を把握し、診 療報酬体系における評価の在り方について検討するための資料を作成するとともに、今 後の医療のIT化の推進方策を検討するための基礎資料を得ることを目的としています。  先行研究がありませんので、平成17年度においては、医療のIT化として先進席な取 り組みを行っている医療機関を対象に、ITに係るコストの範囲等を明らかにするとと もに、ITの導入効果を測定するための指標を探ることを目的として、プレリミナリー な調査という形でヒアリングを中心として行いました。  2.調査の概要です。  (1)調査対象は、病院が17施設、診療所が7施設、保険薬局が3施設という比較的小 規模なものになりましたが、ヒアリングは細かくやっておりまます。  (2)調査の内容ですが、本調査では、以下の1から8に掲げる項目についてヒアリン グ調査を行いました。ヒアリング項目の詳細については55ページ以降のヒアリングシー トを参照いただきたいと思いますが、ここでは概要を簡単に説明いたします。  1. 調査施設の基本的な状況として、病床数、入院・外来の状況、職員の状況、診療 報酬点数の算定状況を把握しています。入院患者数、外来患者数、職員数については、 平成13〜16年度の5カ年における各年9月時点の状況の推移を把握しました。  2. 収支情報について、平成13〜16年度における医業収入、医療費用の推移を把握し ました。  3. 資産情報というのはバランスシートのことですが、平成13〜16年度における流動 資産、固定資産の推移を把握しました。  4. ITシステム・機器概要情報については、こちらでヒアリングシートをつくりま して、どれが使われているかをあらかじめチェックしていただいて、それについて調査 をしました〔稼働状況(稼働中、開発中、計画中、予定なし)の状況を把握しました。  5. 院内システム導入・運用に関する検討体制については、施設内のITシステムの 運用・管理を担当する専門部署の状況、ベンダーのサポート体制を把握しました。また、 システム運用等に係る院内検討委員会・ワーキンググループ等の組織・開催状況を把握 しました。  6. ITシステム・機器個別情報ですが、システム種類ごとに、契約形態、契約内容、 システム構成、導入時期・方法・目的、導入前の状況、導入コスト、院内体制の変更な どについて聞いております。導入効果につきましては、こちらで削減コスト、安全性の 向上、在庫の適正化、稼働律の向上等を提示して、実際の状況について現場でヒアリン グをさせていただきました。  7. 診療報酬請求のための入力項目とシステム化の状況ですが、レセプト電算処理へ の対応状況に着目し、レセ電導入に要するコスト(各種マスター整備のための経費な ど)及びレセ電導入によるコスト節減効果を把握しました。  8. DPC対応の状況ですが、今回の対象病院の多くは急性期病院でしたので、DP C導入に要するコスト(コーディング、レセプト作成のためのシステム導入経費など) 及びDPC導入によるコスト節減効果を把握しました。  (3)調査の体制ですが、事前に私と今中先生、伏見先生、石川先生が集まりまして、 どういう項目をどのように評価するのかということを検討して、実際にはみずほ情報総 研の方たちと一緒にヒアリングをするという形で調査を行いました。  4ページですが、3.調査結果の概要について説明させていただきます。14ページ以 降に個々の事例についてまとめてありますので、ここでは病院の結果をまとめたものに ついて説明させていただきます。  (1)医療のIT化に伴うコストですが、システム導入保守に係る費用と施設内の人的 資源の投下に関する費用に大別してコストの推計をしています。  1. システム導入保守に係る費用ですが、医療のIT化に伴うコストには、実際にベ ンダーに支払っているシステム本体の導入費用と、その後の保守費用があります。本体 としてはソフトウェア・ハードウェア(サーバ・PC端末・LAN等ネットワーク)が あります。  本体の導入費用を導入時に一括で支払っている医療機関は少なく、5〜6年の期間に わたるリース契約をベンダーと締結しているケースが多くみられました。なお、保守契 約をベンダーと別途締結しているケースが多いものの、本体のリース契約に含めている ケースもみられました。  システム導入に関してはカスタマイズの状況に応じて費用が異なっています。対応が 2つに分かれていまして、ベンダーが開発している電子カルテ系のシステムをそのまま 導入して、導入後にシステムのカスタマイズを行わず、それに合わせる形で院内の業務 プロセスを変えている施設がありました。もう1つは、これまでの院内の作業工程を重 視して、それに合わせる形でカスタマイズを行っている施設もあります。カスタマイズ を行っている施設の方が導入費用は高くなっています。  5ページですが、病院におけるシステム導入保守費用を1病床当たりのシステム導入 保守費用という形で、対象施設について病床数と導入保守費用の額をみたものです。  1病床当たりでみますと約25万円から100万円までばらつきがあります。その原因と しては、リースであるのか、リース契約の内容、カスタマイズの状況によって大きくぶ れています。  すべての施設が5年間リースとみなして算出しますと、1病床当たり1年分の保守費 用は平均55万円程度となっています。これは11病院の平均ですので、この数値を一般化 できるものではないと考えています。後で出てきます他の指標についても同じです。  6ページは単年度医業収入当たりのシステム導入保守費用の比率をみたものですが、 医業収入と病床規模の相関はみられず、平均で2.6%程度でした。  2. 施設内の人的資源の投下ですが、これについては、どのようにシステムを導入し てきたのか、それに合わせて人がどのように動いたのか、どのように人的資源が投入さ れたのかということをみる必要がありますので、(1)システム決定から実際の稼働までの ところと、(2)システム導入後から安定的費用までの2つの段階に区分して考えています。  (1)システム導入決定から実際の稼働までのところは図3に模式図が書いてありますが、 これに沿う形でコストの推計を行っています。  システム導入決定から実際の稼働までのプロセスにおいては、まず、システム導入に 係る院内の意思決定に伴い、システム専管部署が設置・拡充され、その専管部署が事務 局を務める院内検討体制を組織して運営するというのが一般的でした。  システム専管部署では、システムの導入にあたっての仕様原案を作成するとともに、 院内の各分科会・ワーキンググループ、さらには全体委員会での検討結果に基づき、仕 様書の検討を進めます。この検討結果として作成された仕様書に基づいてベンダーが選 定され、実際のシステム開発の段階へ移行するという形でした。  システム稼働にあたっては、事前に院内の全スタッフを対象にした教育・研修期間が 設けられ、スタッフは一定時間参加することになります。また、数回にわたる全体リハ ーサルを経て、実際の稼働日を迎えるというのが一般的な流れです。  多くの施設ではシステム専管部署が設置されています。常勤は1人が多いようでした が、実際にはいろんな職種がかかわっていますので、常勤換算すると2〜6人程度で回 っているという形になります。その他の職員としては、システム開発に伴う看護部等か らの配置転換を初め、システムベンダーからの常駐もみられました。また、臨床の医師 等によるボランタリーな協力もみられました。  多くの病院で院内検討委員会が組織されていました。病院の規模によって違いますが、 10〜40人程度の組織をつくって、1カ月に1回程度開催し、問題点の洗い出し、改善点 の要求等をやっているようでした。  院内スタッフの教育・研修・リハーサルですが、どこの病院でも大規模なリハーサル をやっているようでした。大学病院等では終了時間後に1回2時間の研修を合計4回、 受講を義務づけているところもありました。  (2)システム稼働後から安定的な運用までですが、このプロセスにおいては、実際に使 用する各現場から要望・クレーム等が出てきますので、それを専管部署が一元的に吸収 し、優先順位をつけてベンダーと調整しています。  電子カルテシステムの導入に伴い、患者の診察場面における電子カルテへの入力業務 が、当初、どの施設でも大きな負荷になっているようでした。医師が入力するのは難し いので、専属の秘書を雇って、医師が読み上げた内容を入力するという形で対応してい るところもありました。  このように、医療のIT化に係る施設内人的資源の投下としては、いろいろな人件費 がかかっています。システム専管部署職員の人件費、院内検討体制に参加する人件費、 教育・研修・リハーサルに関する人件費、システム運用をサポートするスタッフの人件 費、レセプト電算処理システムやDPCへの対応に要する人件費などがありますが、医 療機関によってかなり異なるというのが現状でした。  (2)医療ITの導入効果ですが、次の3つに分けています。  1. 削減可能であるコストです。どのくらい削減できたのかについては数字として出 ている組織もありますが、多くの場合は定量的には推計できておりませんので、定性的 なものです。  定性的に削減可能なコストとしては、電子化されたことによって、カルテやレントゲ ン写真、伝票といった紙・フイルムの使用量の減少が挙げられます。さらに、それらの 媒体の保管スペースが不要になるため、相当程度のスペースコストの削減がみられまし た。  リハビリのスタッフが自分の患者さんのデータを見ようと思うと病棟まで行ってカル テを持ってこなければならなかったのが、電子カルテの場合はその場所で見ることがで きるので、情報共有のためにカルテを持ち運ぶクラークの人件費が削減できたのではな いかという病院もありました。実際にどのくらい削減できたのかということについては 定性的な議論の範囲を出ておりません。  2. 安全性の向上等の質の確保ですが、指定された薬剤の処方量が一定量を超えると 警告メッセージを表示するなど、一定の自動チェック機能が盛り込まれることにより、 インシデントが減ったということがどの医療機関からも指摘されていました。  誤読文字・文章が減少したということがあります。ただ、間違って入力されたものが チェックのシステムをくぐり抜けてしまい、間違った情報がずっといってしまうという 問題点も指摘されました。  外来採血室において患者認証システムを導入することによって患者の取り違えが減少 したということもあります。  患者へのサービス向上として、動画を初めとして画像ツールを患者に見せることがで きるので患者への説明効果が向上したということがあります。患者の待ち時間が短縮さ れたとか、会計ミスが減少したということもあります。  責任範囲の明確化ということでは、データ入力作業がパスワード管理されているため、 スタッフの責任範囲が明確化されたということです。  3. その他の効果としては、業務の軽減、人員の適正配置などが挙げられました。一 方、入力業務がふえたということもDPC病院では言われておりますので、この辺につ いては今後きちんと評価する必要があるのではないかと考えています。  業務の軽減としては、採血用スピッツの自動作成が可能となり、看護師の業務軽減が 図られた。確認作業に伴う精神的負担が少なくなったと指摘する病院もありました。  人員の適正配置としては、電子カルテの導入により病歴室スタッフの一部を地域医療 連携センターでの新規業務に配置転換することができた。システム導入により院内事務 文書の形式が統一された結果、各科間の人員配置転換が容易になったということが指摘 されています。  12ページですが、4.今後の課題です。  今回の調査の結果として、システムの導入保守に係る費用、施設内の人的資源の投下 を定量的、定性的に把握する方法論の糸口が見えてきたと考えていますが、これを一般 化するには今後の検討が必要ではないかと考えています。  今後の課題として次の3つが考えられます。  (1)ITシステムの定義付けの問題です。調査当初において「システム」の定義が不 明確であったため、ヒアリングの際の質問事項に漏れがありました。具体的には、ハー ドウェアにネットワークを含むのか、ソフトウェアにウイルス対策等を含めるのかなど です。この調査漏れを補うため、電話・メール等で複数回にわたり対象施設に確認を依 頼したケースもありました。今後は調査対象とするシステムの範囲を明確に定義した上 で調査を実施する必要があるのではないかと考えています。  (2)システム導入維持費用の定義付けです。自主開発した場合と外部からパッケージ を入れた場合がありますが、どこまでを考えるのかというのは難しい問題ですし、調査 をする上でこの部分が少し甘かったと考えています。  (3)ベンダーによる開発部分の定義付けです。本調査の対象施設では、システムのパ ッケージを導入すると同時に、ある程度の開発・カスタマイズを進めているケースが多 くみられました。この場合、ベンダーによっては、将来の他施設への展開を見込んで、 本体費用を抑えたり、ベンダーの社員を無償で病院に駐在させてシステム保守と同時に 開発・カスタマイズの方向性を模索する場合もあり、把握できる本体費用が純粋にシス テム機能の対価として認められないケースもありました。今後は、ベンダーによる開発 ・カスタマイズ部分の定義付けを行い、調査すべき導入維持費用の把握方法を検討する 必要があると思います。  IT化のコストを推計するための方法論は具体的に見えてきた部分もありますが、シ ステムをどのように定義するか、コストの範囲をどのように定義付けるかということに ついては今後の検討課題であると考えました。  IT化が進むことによって他施設間の連携が進むことが想定されましたが、実際にヒ アリングをしてみますと、電子媒体によって他の施設にウイルスをうつしてしまう可能 性があるので、電子媒体での連携は望ましくないと考えている施設もあります。安全面 のことも考えて、これからシステムを考えていかないとIT化が進まない部分もあるの かなということがみえてきました。  ここまでが今回の調査の主な内容です。14ページ以降、今回の調査対象施設の概要を まとめてありますので、参考にしていただければと思います。以上です。 ○田中分科会長   大変興味ある成果を説明していただきまして、ありがとうございました。  ただいまの報告について、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。 ○尾形委員   大変興味深い報告だと思います。御苦労さまでした。2点ほど感想を述べさせていた だきますと、5ページの図1は非常に興味深い図だと思います。これだけ見ると規模の 経済が働いてないように見えるんですが、サンプル数が少ないので、今後さらに検証し ていただきたいと思います。  今回は先進的な取り組みを行っている病院が中心ということなので急性期の病院が中 心になるのは当然だと思うんですが、全体に広げていく時には医療機関の急性期・慢性 期とか特性によってコスト、ベネフィットの両面でいろいろ違いが出てくる可能性があ るかと思いますので、広げる時にはその辺も御配慮いただければと思います。 ○手島委員   大変難しい調査を要領よくやっていただいたと思いますが、導入後の実際の運用とい うのが当初の想定どおりうまくやられているのかどうか。医薬品の場合、例えば前日に オーダリングされて、当日になったらキャンセルされてるとか、いろんなケースがある と思います。入力が大変だから云々というのが8ページにありますが、フォローがきち んとできているのかどうか。患者さんの間違ったデータが入ってしまうと、医療安全の 面で後で問題が生じるのではないかと心配なのですが、その辺についていかがでしょう か。 ○松田委員   実際にそういう問題は起こっております。特にクリニカルパスを処方とあわせてオー ダーに使っている施設において、パスに載ってる患者さんについて、パスに載せた段階 で約束処方が発生します。それでバリアンスが発生してしまうと、そこで全部キャンセ ルして、後は臨時線でやらなければいけない。そういう運用をしている施設がありまし た。つくり込みすぎてしまったことによって大きな負荷がかかっているという問題があ りますので、その辺はこれから考えなくてはいけないと思います。  そういうことがないようにするために、クリニカルパスは事後の評価にしか使わずに、 処方のオーダリングとは分離して運用している施設もありました。  もう一つは、患者さんの持参薬をどのように管理するかという問題もありました。入 院する前に飲んでいた薬を入院後も飲み続ける場合ですが、それをどうするかという問 題もありました。 ○柿田委員   5ページに1病床当たりのシステム保守導入費用の検討結果がありまして、医業収入 に対して平均2.6%ということですが、導入費用は病床数が多いほど多くなっていると いうことは、一床あたり平均55万円より多くかかっているということですか。 ○松田委員   規模が大きい施設の方が導入に関しては費用がかかるというのは事実です。LANに してもそうですし、コンピュータを設置する台数も多いですし、研修費用も多くかかり ますので、規模の大きい施設の方がそれだけ費用がかかる形になっております。 ○柿田委員   規模が大きければトータルの費用は多くなるわけですけど、1病床当たりの導入費用 はほとんど同じということでいいのでしょうか。特定機能病院などの大型病院ですと末 端の作業が多くなりますから、多様なファクターが絡んできますが、その辺はどうでし ょうか。 ○松田委員   その部分はカスタマイズをどこまでやってるかということが関係してきます。調査対 象でカスタマイズを一切やってない大規模な病院がありますが、カスタマイズの状況が かなりきいてきますので、一概には言えない部分だと思います。  もう一つは、どの程度までIT化しているかということがあります。画像系とか検査 系まで全部やってるところと、そこにはまだ踏み込んでないところとありますので、そ の範囲と、カスタマイズをどのくらいやってるのかというところで費用にばらつきが出 てくると思います。 ○田中分科会長   今回の調査は規模だけがファクターではないので、規模との関係は直接的にはみられ ないということですね。 ○井部委員   ITの導入効果にどんなものがあるのか私は関心があったんですけど、10ページの上 から2つ目の○に「本調査の対象施設では、IT化の導入前後での費用の削減効果等に ついて把握していない施設がほとんどであり」ということで、計画的に費用対効果をみ ようとしていなくて、ただやみくもに入れなくちゃいけないみたいなところがあったと 思うんです。18年度は定量的な把握をするという計画のようですけど、これから導入す る、あるいは導入半ばであるといった施設について、ちゃんと把握できるような計画を 提示することを考えてもいいのではないかと思うんです。その点についてはいかがでし ょうか。 ○松田委員   今回のヒアリング結果をもとにして、評価をするための指標を考えてみたいと思って います。そういう指標を設定して、それが把握できるような調査票、ヒアリングの方法 を考えていきたいと思っています。  今回の調査で思いましたのは、急性期病院は提供しているサービスの内容が施設によ ってばらつきが大きいということです。リハビリ病院とか療養型施設でIT化をやって いるところは効果が見えやすい部分がありましたので、この調査が継続するのでしたら、 わかりやすいところの調査をやってみたいと考えています。 ○井部委員   この調査に参加することによってリーズナブルな導入ができるといったメリットがあ るのではないかと思っておりますので、早くこの調査を全国に広めて参加を促すという ことは病院にとって利益があることではないかと思いました。 ○松田委員   今回、調査対象になった急性期病院は補助金をもらっている施設がありました。導入 することを前提として補助金をもらっていますので、導入前後の効果の測定を明確に頭 に入れてIT化に臨んだ施設は少なかったように思います。対象施設の選定のところか らしっかり考えて、御指摘いただいたような点を継続的に調査していきたいと思ってお ります。 ○石井委員   1ページに医療のIT化に関する定義のようなことが書いてあって、「医療情報を国 民に提供し、医療機関としての説明責任を果たすこと、医療の安全性の向上、医療情報 の共有による地域の医療資源利用の適正化、院内システムの効率化」と4つあるんです が、これらについてはまだほとんど実現されてないというのが今の医療界の現実なんで しょうか。これからどんどんIT化を進めることによって、この4つのことを果たして いこうとした時に、現在の先進的な病院の取り組みではコスト的に全く足りないのでは ないかと考えてよろしいのかどうか。社会全体から求められている医療のIT化を進め るには、11の病院程度のレベルのIT投資では無理なんだよというのかどうかというあ たりについて御意見をお持ちだと思うんです。  1病床当たり55万円というのを365日で割ると1,500円になるんですね。急性期ですと、 かなり高い病院なら入院単価は1日当たり4〜5万ですから、そこそこの比率になって ますよね。療養系ですと1日当たり17,000〜18,000円ですから、1,500円というと、も のすごい比率になるわけです。その辺を含めて、研究結果を踏まえた上での見解をお聞 きできればと思います。 ○松田委員   1ページに書いてあるIT化の目的に対して欠けているものは、フォーマットの標準 化だと思います。情報化は各施設がいろいろされるわけですが、そのフォーマットが標 準化されてないことが大きな問題ではないかと思います。そこが標準化されることによ ってコスト的に安くできる部分があります。  各施設、各ベンダーが、レセプトシステムが厚生労働省の標準マスターに対応してい るようにすれば、その部分でコストが安くなるでしょうし、日本のレセプトの情報量の 多さと細かさを考えると、それをベースにして、国民を対象としたアウトカムデータ、 プロセスデータを出すことが可能になりますので、ベースとなる情報のフォーマットの 標準化が必要だろうと思います。  どこまでを、どのように標準化して出していくのかということに関する指針は、提供 者の側からの提案も必要でしょうし、患者さんからの要求という形での提案も必要かも しれませんが、どのようなフォーマットで、どこまでを標準化して出していくのかとい うことに関する枠組みを設定していただくことが大事だろうと思います。  それがないと医療情報の共有化はできないわけです。違ったシステム間で情報を共有 しようとすると、伝達手段を標準化しなければなりませんので、大きなコストがかかり ます。情報を共有化するにはベースになる情報の標準化をやらないといけないだろうと 思っています。  電子媒体で情報を提供するということは、情報と一緒にウイルスも提供することにな ってしまうかもしれないので、電子的な情報の共有は難しいということを強調しておら れる診療所がありました。フォーマットを標準化して、それに合わせてセキュリティの システムも共通化すれば、そういう問題も解決できます。  IT化を進めるには、ベースとなる情報の標準化、システムの標準化をやる必要があ ると考えています。それをやれば、各病院が投資しているお金で、おつりがくるぐらい のレベルでできるのではないかと思います。コンピュータがどんどん安くなっていった のと同じで、そういうことが一般的になってくれば、単体にかかるコストは安くできる のではないかと思います。各病院がやっている医療行為はそんなにばらばらではなくて、 共通化している作業をシステムの方でばらばらにしているだけですので、そこを標準化 することでコストは下げられると考えています。 ○猪口委員   電子カルテを入れると、しばらくすると落ち着くみたいですけど、当初は患者さんの 評判が落ちるし、処理能力も落ちるし、下手すると医療安全も逆の方に向かうというこ とがあって、なかなか導入が難しい。標準化というのがとても大事で、標準化すること によって、そこからカスタマイズが始まるんですね。それぞれの医療機関に合わせてつ くれるんですが、それがないがゆえに、それぞれが過大な投資をしてる。補助金がつい てる間は開発費用も出ていたんでしょうが、ここから先はかなり厳しいと思われます。  大手の開発会社とかソフトウェアの会社とか、フォーマットを統一しようという動き はあるんでしょうか。それがないとコストダウンも図れないし、日本の中で統一したも のが広がっていくというのは先が見えないなと思ってるんですが、その辺の動きはいか がでしょうか。 ○松田委員   標準化に向けて動いているという話は余り聞いておりません。ぜひ標準化に向けて動 いていただきたいと思います。  電子カルテについて申しますと、ヒアリングさせていただいた施設で、うまくいって る施設は2つ工夫をしています。1つは、電子化すべきものと電子化すべきでないもの と分けていて、紙のカルテを残しています。紙の部分を残しながら電子化できるところ は電子化していくという運用をしている施設と、もう1つは、医療秘書を置いている施 設がうまくいっていました。ドクターが診察の中で患者さんと話していることを隣でセ クレタリーが打ち込むという形で運用している施設は、患者さんにもドクターにもスト レスをかけずに電子カルテを外来で運用しているという状況があるようでした。  院内でIT化をして業務改善をやっていく中で浮いてきた人材をセクレタリーとして 配置するという形で運用している施設もありますし、セクレタリーを別に雇っている診 療所もありました。セクレタリーがいないと外来での診療業務を電子カルテでやってい くのは難しいという現状があるようでした。これから若い先生方が現場で第一線を担っ ていくようになると、若い先生はITに慣れてるでしょうから、問題はないのではない かという意見もありました。 ○手島委員   52ページに「O薬局では全自動錠剤分包機が導入されている」とあるのですが、これ によって薬剤師の人員が削減できるのかどうか。薬局では処方せんの枚数に応じて必要 薬剤師を算定していますので、大幅に削減できるということになると、そちらに影響す る可能性があるわけです。今のところは影響するようにも思えないんですが、その辺は どうでしょうか。 ○松田委員   導入したことによって作業が効率化したということと安全性が高まったという知見は ありますけど、それによって薬剤師が削減できるのかというと、患者さんへの説明業務 がありますので、これを入れたからといって薬剤師が削減できるような状況ではないと 認識しております。 ○近藤委員   今回、削減可能なコストの項目がいくつか出てきましたが、調査をした医療機関では、 投資に見合うコスト削減効果はあったのでしょうか。  また、コスト削減では投資回収できなかった場合、安全性の向上など、他の対投資効 果も考えられますが、投資効果を測定する指標についての仮説を教えていただけますで しょうか。 ○松田委員   まず1点目ですが、今回のIT化に関する投資で、投資額に見合った効果があったか ということに関しては、多くの施設は否定的です。IT化に見合った削減効果があっと は認識していないようです。  ある施設は、そもそもそんなことを考えてIT化をしていないというコメントがあり ました。何のためなのかというと、患者さんに対する説明をするためである。画像につ いても検査についても患者さんにわかりやすい形でビジュアルにいろんなものを使って 説明する。それによって患者さんの満足度を高めていく。自分が受けている治療に関す るコンプライアンスを高めていくために使っているのだということです。その施設の場 合はすべてのデータが画面に出るわけです。エコーのデータも動画で見ることができま すし、内視鏡での検査結果も動画で見られる。そういうものを見て患者さんが納得して、 それをCDにして、それを使って研修医の教育も行っています。  今回の調査対象施設では医療の質を高めるという点で情報化、IT化が必要であると いう認識でやっているというのが印象に残っています。そういうものをどのように評価 するかということになると、患者さんのコンプライアンスの向上とか、患者さんの医療 の内容に対する理解度を評価するような調査票を設計する必要があろうかと考えていま す。 ○田中分科会長   まだ御意見があるかと思いますが、時間の関係で次の報告に移らせていただきます。  「医療安全に関するコスト調査」について、今中委員より説明をお願いいたします。 ○今中委員   まず、診調組コ−3の「平成17年度医療安全に関するコスト調査−調査報告書(案) −」の概要を説明いたします。  1.調査の概要ですが、(1)調査の目的は、今まで論じられているとおりですので省 略いたします。  (2)調査の対象は、病院(300床未満)、一般診療所(有床、無床)、歯科診療所、保 険薬局です。ランダムに選んだわけではなく、先進的に熱心に取り組んでおられて、調 査に御協力いただける意思のある医療機関及び保険薬局ということになります。  最終的に、300床未満の病院が7施設、一般有床診療所が7施設、無床診療所が6施 設、歯科診療所が9施設、保険薬局が10施設の参加ということになりました。  (3)調査の実施体制ですが、当委員会委員の猪口先生、松田先生を初めとして専門的 に深いコミットメントいただきまして、調査を無事に進めることができました。  2.調査の内容ですが、病院の書面調査項目を2〜3ページに示しています。人的投 資コスト、設備コスト、その他、人員配置状況・活動状況に分けて、全体で21領域に及 び、具体的な取り組みやコストに関係する事象についてデータを拾い上げていきました。  4ページには一般診療所の書面調査項目、5ページに歯科診療所の書面調査項目を示 しています。6ページは保険薬局の書面調査項目ですが、同じような考え方でデータを とる枠組みを作成することができました。  23ページの4.書面調査の結果を先にごらんいただきたいと思います。  (1)病院の取り組み状況ですが、調査項目を一覧で示しています。  1.委員会・会合として、安全管理委員会、感染制御委員会、事故調査委員会、薬事委 員会、その他の委員会とありますが、薬事委員会、その他の委員会については安全管理 に関係する部分を抜き出すような形でデータをとるように試みています。  2.内部レビューとしては、院内視察・査察、マニュアル遵守、診療録レビュー、各種 検討会(化学療法、輸血、抗生剤)などです。  これらについては、1990年ごろからの新しい取り組みについて情報収集することを原 則として行っています。医療安全に係るコストというと医療機関にかかっているすべて のコストにたどりつくことになりかねませんので、何らかの形でスコープを区切る必要 があります。1999年に有名な事故がありましたが、そのころから医療機関では医療安全 管理委員会を動かしたりインシデントレポートを日常的にとって分析して対策を立てて いくということが行われだしました。そのほか制度等のリコメンデーションも出てきた こともあり、それ以降、新しく出てきた取り組みを挙げて、増分のコストをみていこう ということで進めています。  そのほかの項目として、3.院内研修、4.院外研修、5.安全管理機器・設備、6.感染制 御機器・設備、7.医療機器の管理、8.医薬品の管理、9.廃棄物処理、10.インシデント レポート・アクシデントレポートを書いたり分析したり改善を立案したりする主に人的 部分のコスト、11.マニュアルづくりに関係するところ、12.外部評価、13.院内感染サ ーベイランス、14.職業感染防止、15.賠償責任保険、16.安全管理に関する人員配置、1 7感染制御に関する人員配置などです。これらが配置されている場合は、自分の仕事の 何割ぐらいをこの仕事につぎ込んでいるかということを把握しました。  一部のものについては明確に参入されていない部分がありまして、それは合計では参 入されず、別掲という形で出しているものがあります。それは外部評価の部分、マニュ アル作成の部分、IT機器の部分です。賠償責任保険の部分については一部書いてあり ますが、必ずしもしっかりとれているとはいえない状況があります。  25ページから一般診療所(有床)、一般診療所(無床)、歯科診療所、保険薬局につ いて掲載していますが、それぞれの医療サービス提供体制に応じた形で修正して調査を 行っております。  次に8ページの3.調査結果の概要です。8ページの上に調査対象施設数を示してい ます。書面調査とヒアリング調査を行っていますが、書面調査のみの施設、うちヒアリ ング調査を行った施設、ヒアリング調査のみの施設の数を示しています。  81ページ以降に調査シートを載せております。以前に紹介させていただいたものと基 本的には同じですが、各施設の類型別に作成したデータを載せておりますので、御参照 いただければと思います。  前に戻りまして、10ページは病院の結果概要です。病院は7施設を対象としましたが、 実際にコストデータがとれた6施設の数字を出しています。  10ページの表は人的投資、設備、その他の項目について医業収入割合を平均的に出し ています。  その下の別掲という表は、上記の費用に含まれていない外部評価、マニュアル作成、 IT機器(導入費用)について人件費、物件費の割合を出したものです。  IT機器のどの部分を安全のための原価とするかというのは研究の途中ですので、今 回は安全に関係するようなIT機器を導入するための費用を出しています。購入費とい うのは初期的にものでして、年間の維持費用はリース料という形で出しています。  外部評価、マニュアル作成についても初めの投資部分と更新に係る部分を別に出して います。  この調査においては施設によって不ぞろいなところがありましたので、合計には含め ず、別に出しています。  11ページの下の図は病院ごとの1病床1日当たりの費用と、費用の内訳を人件費と物 件費の割合という形で出しています。  29ページ以降、施設ごとの調査結果を示しています。  29ページは病院Aですが、許可病床20〜50床、医師11〜15人、薬剤師2人、看護職員 36〜40人、医療技術員16〜20人、その他の職員6〜10人という構成の病院です。初診患 者数は約700人、再診患者延べ数は約5,300人、医業収入は約113億円、院外処方律は100 %です。  この病院においては、今回、合計のスコープに入れた範囲での医業収入割合は1.4% となっていますが、病院Bを見ますと2.8%となっており、それなりのばらつきがあり ます。今回の平均値は10ページに出しているとおりです。  調査の前提にありますように、今回の調査は方法論の開発という意味合いが大きいも のであり、対象施設も限定された施設ですので、一般化できるような値ではありません。 数字がひとり歩きしないように望むところであります。  12ページは有床の一般診療所の結果概要、14ページは無床の診療所の結果概要です。 もともと想定されていたことですが、調査を行ってさらに強く実感されたことは、診療 所においては機能が違うということです。内科をやっているところ、産婦人科をやって いるところ、耳鼻科をやっているところではハイリスクのある処置はどのくらいなされ るかということがかなり違ってきます。今後の課題のところでも述べていますが、有床、 無床ということだけでなく、診療所の機能を分類して把握しないと一般化できるような データはとれないと考えています。今回の対象となった診療所もそれぞれ異なる機能を もったところです。  16ページは歯科診療所の結果概要です。歯科診療所は医療安全に関する年間費用を対 医業収入比でみると、7施設平均で4.0%でした。特に感染制御に関して、この数年間 いろいろな対策がふえてきているところが大きいのではないかと考えられます。他の施 設もそうですが、今回は99年当時からやることがどれだけふえているかということに焦 点を置いていますので、今回の値が低いから余りやってないということではなくて、も ともといろいろとやっておられると99年以降の増分が少なくなると考えられます。  18ページは保険薬局の結果概要です。合計額を出す時にITに関係する費用は入れて おりませんが、保険薬局においては他の施設以上にIT化が安全確保、誤認防止に大き く貢献しています。IT機器にどのくらいの投資をしているかということは各保険薬局 でかなりばらつきがありますので、今回は別枠で出していますが、これらについてもI T導入の状況に応じたコストの把握が重要になると思われます。  62ページ以降はヒアリング調査の結果ですが、安全についての取り組みの内容につい てプラスアルファの情報をいろいろ集めていこうということで、数字だけでなく質的な 情報をとりまとめています。大病院と共通していると思われる取り組み、特徴のある取 り組み、新しい取り組み、取り組みにおける課題等についてヒアリングでお聞きしたこ とをとりまとめています。  21ページに調査結果の考察と今後の課題を書いています。  今回の調査は、医療安全に係るコストを把握するための調査手法の開発を意図したも のですが、それなりに標準化されたデータをとっていけるということが今回わかったか と思います。ただし、対象施設数が限られていますので、この結果は全国の傾向を代表 するものではありません。把握したコストについても調査で規定した内容に限られてい ることに留意する必要があります。  全般的に、医療安全に係る取り組み内容は、医療機関等の特性などによって異なる傾 向があります。例えば、施設の種類や規模、扱う診療科目、外科的処置の実施の有無、 院外処方の実施状況などによって取り組みが異なる傾向があり、それが反映されている と考えられます。  このため、調査対象を決める際に、医療機関等の特性などを勘案して区分する必要が あり、調査対象の区分、並びに各区分における標本数の規模について今後検討する必要 があると考えられます。  今後の課題として次の5つを書いています。  ○調査対象の項目や範囲の検討ですが、これは今申し上げたようなことです。  ○IT機器や外部評価に関しては費用負担が大きく、現在は施設によって導入状況に 格差があり、特に、IT機器については医療安全に係るコストの把握が難しいため、今 回の調査ではそのコストは別掲としました。また、医療安全等に関するマニュアル作成 等のコストについても、作成・更新を繰り返しているため年間費用としての把握が困難 でした。これらの取り組みの医療安全に係るコストをどのように算出するかについて今 後検討する必要があります。  ○人的コストについては、今回は国家公務員の給与単価を適用しましたが、民間医療 施設等においては給与水準は異なると考えられることから、より適切な人件費の把握の 堅調が必要になると考えられます。  ○規模の違いとコストとの関連ですが、今回の調査では規模による違いを調整するた めにコストの医業収入割合を算出し、施設の種類ごとに平均値を求めました。また、病 院と有床診療所では1病床1日当たりの費用、無床診療所と歯科診療所では患者1人1 回当たりの費用、保険薬局では処方せん1枚当たりの費用を算出しましたが、病院では 外来の規模、外科的処置の規模、院外処方の実施規模などにやりコストが異なってくる ことに留意する必要があります。  ○医療安全に係るコストの把握については、取り組みに対する効果の把握と評価が必 要となりますが、効果計測の手法は確立されておりません。医療安全対策に資する効果 計測手法(クリニカルインディケーター等)は、国を中心として各種の研究が進められ ており、今後の研究成果が待たれるところです。今回の調査では、取り組みによる効果 を把握することができませんでしたが、それを測定する指標についても今後検討してい くことが求められます。  次に、コ−4について簡単に説明させていただきます。これは先ほどの調査の方法論 のもとになるものですが、厚生労働科研費をいただいて、300床以上の病院を対象とし て行われた調査です。  方法論の粗筋は同じですが、8施設に協力していただいて調査を進めました。  調査項目については同様のものです。  結果ですが、32ページに施設別の総コストをまとめた図表があります。対象施設の範 囲の中で、医療安全の全コストではなく、99年以降の増分のコストを出したものですが、 上の図は今回対象とした施設のコストの分布です。左端は約300床の病院、右端は約1,0 00床の病院ですが、今回対象とした8病院を病床数順に並べたものです。  下の図も同じ順番ですが、単純に比例計算して500床換算に直したものです。250床な ら2倍して、1,000床なら半分にして載せています。○印は右側のパーセントに相当す るもので、医業収益に占める割合です。今回は対象病院が少ないので、全体的な傾向を これで論じるのは難しいのですが、大きい病院ではパーセントが小さめに出ているかも しれません。それに関して、はっきりしたことは言えないと思います。  34ページですが、全体を集約するために8施設の平均値を求めたものが右端のモデル IIIです。500床規模に換算して、各項目について年間にかかる金額を出しています。医 療者の平均的な給与を各種別で加重平均しますと740万円ぐらいになります。医療安全 に係るコストは1億6,700万円ですから、年間23人雇えるぐらいの金額であるというこ とになります。  モデルIは各項目について最も多く資源を投じていた施設の数値を使い、モデルIIは 各項目について2番目に資源を投じていた施設の数値を使って、それぞれ足し上げると どうなるかということで、達成可能な最大量を出しています。参考までに計算してみま した。  8ページに結論を書いています。今回、スコープの上で重要な点は、ITシステムの うち安全に寄与している部分はまだ抽出できておりませんので、その部分は入っており ません。医療の安全、医療の質確保で重要である説明と同意、記録・書類作成について も今回はデータとして入れておりません。説明と同意に関しては、この5〜10年間で時 間と人数がふえていますが、我々の非公式な概算では、今回把握したコストと同レベル ぐらいのコストが上乗せされているのではないかと考えています。ITコストについて も同じような額が上乗せされているのではないかと考えています。以上で説明を終わら せていただきます。 ○田中分科会長   ありがとうございました。科研費の方とあわせて膨大な作業を行っていただきました。 調査方法の開発が見えてきたので限界もわかり、実際の数値は興味があるものです。  それでは、ただいまの報告について、御質問、御意見をお願いいたします。 ○今中委員   ちょっと補足させていただきます。今回対象とした医療施設は病院、診療所、歯科診 療所、保険薬局ですが、300床未満の病院でも急性期の病院、療養型の病院等があるわ けで、今後も調査をするとしたら、そのあたりの機能や医療内容を区分して把握してい く必要があると思います。今回は大学病院が入っておりません。大学病院では安全管理 室に専従の人がいたり、感染制御に対する人の配置が一般病院と比較すると大きくなっ ていると思いますので、大学病院の調査をするとプラスアルファされたような増になっ てくるのではないかと考えています。 ○柿田委員   コ−3の24ページの表の13、16、17の項目には情報がない施設がありますが、300床 以下でも専従の方がいないと安全管理はなかなか困難であろうとおもいます。データで は500床以上の大きな病院は人件費のウエイトが高いようですが、300床以下の病院は物 の方が多くて人件費の負担が少ないというように読めます。300床以下100以上のところ にも大病院並みに専従の方を入れるようなことを考える必要があると思いますが、その 辺はどのようにお考えでしょうか。 ○今中委員   23ページ、24ページの表で「−」と書いてあるところは必ずしもやってないというこ とではなくて、情報のとり方の難しさもあり、今回は急いで調査をやったこともありま して、的確に情報収集ができなかったところも混ざっておりますので、誤解が生じると ころかと思います。各施設でデータがあったのに入手できなかっただけなのか、それと もやっていなかったのか、小さいけどやっていたというものを区分して印をつけており ます。  どのページでもいいんですが、「・」の場合は該当データがない、「−」の場合はや っていない、「0」が入っているものは小さいけど0ではないという形で区分して入れ るように努力しております。  違う観点で申しますと、300床以上の方で病床との関係でみましたところ、大きい施 設では医業収益に占める割合が、活動をたくさんやっていても小さくなるような規模の 経済的な要素があるようなアウトカムになっています。中小病院においてはいろんな形 で医療安全管理がなされていますので、そのあたりの情報収集は難しいことと、1人が 頑張ることで全体における比重が小さい施設では高くなりますので、小さい施設につい ては慎重な議論が必要ではないかと思っています。 ○事務局(堀江保険医療企画調査室長)   経過を申し上げますと、8月ごろに課題設定の話をしまして、10月に中医協に調査を することを了解していただき、そのあと10月から調査手法を確定して、12月には中間報 告をしていただきましたが、このコスト調査分科会でちょっとだけ発言された今中先生、 松田先生に調査をお願いしまして、大変ありがとうございました。  今回は短い期間で先進的な施設に限定するという形にしましたが、先進という言葉自 体に明確な定義があるわけではなくて、よくやっていそうなことで有名なところにした というのが事実です。2.6%がどうしたということをこの場で出すのが適当かどうかと いうのも悩みながらも、しかし、きちっとやっていくとこういう形で、手にとって見え るような形でのまとめが可能なんですよということは言いたかったというのが先生方の お話だったのではないかと思っているところです。  いろいろ課題が出てきて、これからどうしたらいいかということについて私は悩んで いるところです。病院は大中小ありますし、慢性期中心のところ、急性期中心のところ、 診療所においても眼科ばかりやってるところもあれば精神科みたいなところもあるかも しれません。  これから先、調査研究をやっていく時に、日本全国のものを全部調べたら、それにこ したことはないんですが、どこに重点を置いたらいいかというところに悩みがあります。 同類のものをたくさん集めて、手法なり、外に向けても言えるような結果を出していっ た方がいいのか、あらゆるものを少しずつ拾っていった方がいいのか。多種多様大量が 一番よくわかるんですが、今中先生なり松田先生なり、すべての施設にあたってきちっ と見ていただいてるものが、だんだん精度が落ちていきかねない。調査の標準化みたい なことがなされていくといいんでしょうけど、その辺が悩ましいなと考えているところ です。お礼のような悩みのようなことを発言させていただきました。 ○田中分科会長   いいまとめになったのではないでしょうか。単にデータをふやすと標準化できなくな るわけですね。 ○松田委員   今年の調査は両方いっぺんにやるしかなかったので、そういう形になってしまったと 思うんですが、今回の調査を踏まえて、IT化に係る事項をいくつか調査票でつくれる と思いますし、安全に関する調査項目もつくれると思います。多くの施設に調査票とい う形でアンケートを送って、どういう施設でどういうことが行われているのかという大 規模なサーベイが一つやって、もう一つは典型的な施設を設定して、それについてどの くらいコストがかかっているのか、その両方から攻めていくという方法があるのではな いかと思います。 ○今中委員   今回、機能別なり種類別にやっていくことの重要性もわかったわけですが、どの辺に 重点を置くかは政策的なインプットも必要だと思います。安全に関して申しますと、参 加施設に負担をかけないで、標準化した形でデータをとるにはどうしたらいいかという あたりが明確になってきたと思いますので、次のステップが17年度に確立したのではな いかと思っております。 ○田中分科会長   今後さらに研究が進められると思いますが、それに対してアドバイスがあれば、事務 局を通じてお願いしたいと思います。  本日御議論いただいた「平成17年度医療のIT化に係るコスト調査の結果報告」並び に「平成17年度医療安全に関するコスト調査の結果報告」につきましては、本分科会に おいて了承し、中医協・診療報酬基本問題小委員会の求めに応じ、私から報告したいと 思いますが、いかがでしょうか。    (異議なし)  ありがとうございます。  それでは、そのような取り扱いにさせていただきたいと思いますので、よろしくお願 いいたします。  なお、誤解のないように申し上げますが、当分科会で議論されている内容は、中医協 ・診療報酬基本問題小委員会の了解を得て、初めて成案となるものであり、報道等に当 たっては、その旨御留意いただきますよう、よろしくお願いいたします。  よろしければ、本日予定しておりました議題については以上ですので、本日の分科会 は終了したいと思います。  研究をしていただきました松田先生、今中先生に改めてお礼を申し上げます。  次回の開催について、事務局より説明をお願いします。 ○事務局(堀江保険医療企画調査室長)  決まった日時はございませんので、追って御連絡申し上げます。 ○田中分科会長   それでは、第11回診療報酬調査専門組織・医療機関のコスト調査分科会を終了させて いただきます。  本日はお忙しい中をありがとうございました。 (終了) 【照会先】  厚生労働省保険局医療課保険医療企画調査室  代表03−5253−1111(内線3287)