06/04/14 第27回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会議事録 厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会 第27回議事録 平成18年4月14日(金) 厚生労働省共用第7会議室 ○矢野補佐 まだ遅れていらっしゃる先生方がいらっしゃるようですが、定刻になりま したので、ただいまから第27回厚生科学審議会疾病対策部会造血幹細胞移植委員会を開 催いたします。  本日は小達委員、西川委員、麦島委員から御欠席との連絡をいただいております。ま た日本医師会の役員改正に伴いまして、橋本委員から木下委員への交代を予定しており ますので御報告いたします。また本日は、議事に即しまして、骨髄移植推進財団の坂田 ドナーコーディネート部長、小瀧移植調整部長に参考人として御出席いただいておりま す。  次に資料の確認をさせていただきます。資料は4点ございます。  資料1 非血縁者間骨髄移植とさい帯血移植の現状について  資料2 造血幹細胞移植委員会における議論の整理  資料3は財団の提出資料で、骨髄移植のコーディネートの状況について  資料4は小寺先生の提出資料で、同種末梢血幹細胞ドナーの安全性に関する検討  おそろいでしょうか。不備等がございましたら事務局までお申しつけください。  それでは、議事の進行を齋藤委員長にお願いしたいと思います。 ○齋藤委員長 おはようございます。我が国における造血幹細胞移植は、関係者の御尽 力によりましてほぼ順調に進んでいると思います。ただ、現場におきましては、いろい ろな課題が残されております。本日は久しぶりの委員会ですので、まず、骨髄移植とさ い帯血移植の現状についての説明から始めたいと思います。では事務局、よろしくお願 いします。 ○高岡主査 それでは、事務局より資料1について御説明いたします。  非血縁者間骨髄移植とさい帯血移植の現状についてですけれども、大きくは、これま での非血縁者間骨髄移植とさい帯血移植の移植実施数と、それぞれの移植後成績、無病 生存率と、骨髄バンク事業についてということで骨髄バンクドナー登録者数や移植率な ど、それからさい帯血バンク事業についてということでさい帯血の保存数などについて、 参考で平成18年の診療報酬改定について御説明申し上げます。  まず最初に移植実施数でございますけれども、骨髄移植が92年度から、さい帯血移植 が96年度からそれぞれ開始されて以来、2005年度は、骨髄移植が908件、さい帯血移 植が653件実施されております。昨年度末には総累計が1万件を超えております。  次に真ん中のグラフですけれども、左側が骨髄移植の年代別の移植実施件数の推移、 右側がさい帯血バンクによる移植の年代別実施件数の推移となっています。若年成人、 実線のひし形と、網掛けの黒三角の移植が伸びております。下段の表は、真ん中のグラ フの実数を示しているものでございます。  次のページに、疾患ごとの分布をお示ししております。上が骨髄移植の疾患ごとの分 布で、下がさい帯血移植の疾患ごとの分布となっております。  骨髄移植は、主な対象疾患といたしまして急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、 こちらが合計で累計1,800件以上と1,700件以上となっております。ほかに慢性骨髄性 白血病、このような疾患が主な対象疾患としてございます。さい帯血移植につきまして は、慢性骨髄性白血病への移植よりも骨髄異形成症候群、悪性リンパ腫などの移植の方 が多く行われております。  次のページに、骨髄移植後の無病生存率を示しております。骨髄移植については、急 性骨髄性白血病と、急性リンパ性白血病と、慢性骨髄性白血病の3疾患の移植後成績を お示ししております。グラフは、横軸が移植後日数で、縦軸が無病生存率ということで ございますけれども、CRというのが寛解ですので、どの病期に骨髄移植を受けたかで 移植後の成績が違うということでございます。例えば急性骨髄性白血病の第1寛解期に 骨髄移植を受けたということであれば、10年間再発せずに生存しているような確率は 60%程度というふうに言えるということでございます。病期が進むごとに移植の成績が、 無病生存率が下の方に動いていっているのが、悪くなっているということでございます。  下の方が急性リンパ性白血病で、これも同じように第1寛解期の5年無病生存率とい うふうに表の中では書いてございますが、10年のところでもほぼプラトーになっており まして、57プラスマイナス5%程度ということでございます。  次のページに、慢性骨髄性白血病の病期別の無病生存率が書いてございます。こちら は、慢性期と移行期と急性転化の時期についての病期別の無病生存率ということでござ います。  次に、さい帯血移植後の無病生存率についてお示ししております。骨髄移植と若干表 記は違いまして大変恐縮でございますけれども、さい帯血移植後の急性リンパ性白血病 の患者さんの移植後およそ2500日ということで、移植後7年の無病率が31%。急性骨 髄性白血病につきましては、2200日強ということで6年の無病生存率が26%という結果 になっております。  次のページには移植歴のありなし、ミニ移植かどうかと小児か成人かということで成 績の比較を出しておりますが、それぞれ移植歴がある、もしくはミニ移植で、成人の方 が成績が若干落ちているというような結果になっております。  次のページには、急性白血病以外のさい帯血移植後の無病生存率をお示ししておりま す。  続きまして次のページですけれども、骨髄バンク事業ということでございまして、骨 髄バンクドナー登録者数の推移を示しております。昨年度は4万5,585人の新規骨髄バ ンクドナー登録者がございまして、累計で24万2,858人の登録をいただいております。 いよいよドナー登録者数が30万人の目標に近づいているという状況でございます。  下のグラフは未成年者のドナー登録者の推移ということでございまして、2005年3月 よりドナー登録可能年齢を引き下げて18歳から登録できるようになりまして、それに伴 いまして、2,500人以上の未成年者の登録を2006年3月までにいただいているという状 況でございます。  次のページですけれども、上の段が年齢別のドナー登録者の実数ということでござい まして、18歳から54歳までの方にドナーの登録をしていただいているという状況でご ざいます。昨年ドナー登録者の対象年齢の拡大をいたしまして、先ほどお話しいたしま した未成年以外でも、51歳以上の方にも登録いただけるようにしたところでございます。  下段のグラフは、HLA適合率と骨髄移植率ということでございますが、適合率とい うのはHLA型の適合するドナーを見つけられる患者の割合ということでして、83.4% となっておりますが、下の説明書きのところ、国内患者のみでしたら、93.7%の患者さ んがHLA型の適合するドナーを見つけることができているという状況でございます。 一方、移植率が黒い棒線になりますが、こちらは骨髄移植を受けられた患者の割合で、 35.9%となっておりますが、国内患者のみであれば40.8%ということでございます。  次のページは、ドナー登録者が患者さんと照合するまでに要している時間ということ ですけれども、ドナー候補者の早期絞り込みということで、平成17年3月から、ドナー 登録時のHLA検査をDNAタイピング検査にしておりまして、その結果、昨年2005 年に照合となりました1万9,132人のうち3,975人が1年未満での照合がなされ、また その内訳といたしましては、800件以上が1カ月で照合されているという状況になって おります。  次のページですけれども、コーディネートの中断状況、こちらをドナー側から分析し たものでございます。2005年に、コーディネートの開始のシートを1万9,318人のドナ ー候補者の方にお送りしているところ、シートが返ってこなかったのが1,842というこ とで、1割弱の方から返事がないということが左上の円グラフでございます。結局は 8,672人の方はドナー側の理由でコーディネートが中断されており、その理由といたし ましては、健康上の理由と健康以外の理由がございますが、都合がつかない、連絡がと れない、何かの疾患の治療中ということが主な理由として上げられております。つまり、 半数近くのドナー候補者が、結局は骨髄提供を断るといった状況にございます。  次に、さい帯血バンク事業ですけれども、この表につきましては、各さい帯血バンク の保存本数と現在の公開本数ということでお示ししております。右下のところ、公開数 の一番下の計というところ、2万4,102となっておりますのが、2005年度末での公開本 数でございます。上の採取年度別さい帯血データ送付数の計というところの、一番下の 2万8,496件というのがさい帯血のデータを送付された数ですので、ここから公開が取 り消しされた、もしくは移植の報告がなされた、などを差し引きますと、2万4,102の さい帯血が昨年度末時点で公開されているという状況になっております。  次のページですが、保存計画数ということで、上から保存数と、供給数と、保存残数 となっております。保存数から供給数を引いたものが保存残数ということで、それぞれ につきまして細胞数ごとにランクで分けておりまして、3×10?未満と、3×10?から6 ×10?、6×10?以上ということでランクに分けております。右下の四角ですが、保存残 数の合計の6×10?個以上のところをごらんいただきますと、こちらが平成18年度中の 見込みでございますが、2万1,883となっておりますのは、6×10?個以上の細胞数を含 むさい帯血が18年度見込みでは2万1,883となるということで、2万個保存を目標とし ていたものが平成18年度中に達成される見込みということでございます。  次のページは、保存さい帯血の有核細胞数の分布と、移植に使用されたさい帯血の有 核細胞数の分布ですが、4〜5×10?個の細胞数のものが最も頻度が高く保存されていて、 一方移植に使用されているのは12×10?個の細胞数のさい帯血が最も頻度高く使われ、 10×10?個以上のものがおよそ頻度高く移植に使用されているといった状況でございま す。  次のページは、過去2年間の細胞数の多いさい帯血の保存数と移植使用数ということ でございますが、こちらの2005年をごらんいただきますと、全公開数4,161のうちの 10×10?以上というのが1,130。公開されているうちのおよそ3割は10×10?個以上のさ い帯血という中で、移植に使用されているものが639あるうちの10×10?個以上の細胞 数を含むさい帯血は568ということで、9割近くを占めているような状況です。10×10 ?個以上のさい帯血は、A−Bということで2005年は562。これが、1年間で差し引き 保存された10×10?個以上のさい帯血ということでございます。  最後に参考といたしまして、平成18年度の診療報酬改定について御説明申し上げます。 増点の要望は受け入れられませんでしたが、全体改定率が3.16%のマイナスであったに もかかわらず、造血幹細胞移植につきましては従前どおりの技術料で、マイナスとはな りませんでした。また、これまではDPCによる包括評価の対象でありましたさい帯血 移植について、出来高払いとなりましたことを御報告申し上げます。以上でございます。 ○齋藤委員長 ありがとうございました。我が国で非血縁者間の骨髄移植が始まって約 14年、それからさい帯血が始まって約9年だと思いますが、いろんなデータが今説明あ りましたけれども、何か御意見、御質問がありましたらどうぞ。 ○小寺委員 ちょっと追加といいますか、委員の皆様が今事務局の方から報告していた だいた3ページから6ページにかけての生存曲線を眺められるときに、非血縁者間骨髄 移植とさい帯血移植で、グラフの色も変わっていれば、スケールも違っていて、何本か ある曲線の理由づけも随分違っているということにお気づきになると思いますが、今年 度から日本造血細胞移植学会の方で、こうした多様な造血幹細胞移植を一つの報告用紙 で学会のデータセンターにすべて登録していただく。そこで一元的に解析をするという 体制をとりました。これは今スタートしているところであります。したがって来年度以 降、もし皆様方にこういうデータをお示しするときには、同じ色の同じ分類分けのもう 少し比較しやすいものが出るだろうということをちょっと補足しておきます。 ○齋藤委員長 いかがでしょうか。今の移植の成績ですけれども、やはり骨髄移植とさ い帯血移植と、今の段階では成績がかなり違いますよね。例えば急性白血病で、骨髄の 場合は第1寛解期にやれば60%は10年無病生存ですから、治癒したと考えていいと思 いますが、そういうデータがあるのですが、さい帯血の場合は、これは数が少ないため に分けていないのでちょっと比較できないんですよね、移植を受けられた患者さんのバ ックグラウンドが違うので。だんだんそういうものも出てくるとは思いますが。  それから7ページに行きますと、骨髄バンクのドナー登録者は2005年が突出して非常 に多いですよね。それから8ページでは、やはり骨髄移植ですが、国内の患者さんの場 合は約94%の方がHLAの適合するドナーは見つかったけれども、実際に移植を受けら れたのは40%というわけで、50%ぐらいの方が、適合しても移植まで行かなかったとい うことですよね。  それから9ページで少し興味があると思ったのは、上の、登録者が患者さんと照合す るまでで、12年とか13年という方がいますけれども、これはどういう理由ですか。非 常にまれなHLA型ということですか。10年以上かかっているというのは。小瀧さん、 何か説明できますか。 ○小瀧参考人 済みません、細かい分析はしておりませんが、恐らくおっしゃったよう に今までなかったHLA型がこれで出てきた。珍しいHLA型ということだと思います。 ○齋藤委員長 10ページに行きますと、コーディネートの初期の段階で中断したという のが、実際にこれは開始シートを送付したのが1万9,318件で、引き算をしていきます と、1,974人ぐらいしか残らないですよね。最初の段階で1万になって、そこで8,600 落ちますから残りは約2,000で、したがって初期段階を通るのは、最初のシートを送付 した約1割でしょうか。 ○坂田参考人 よろしいですか。最初の段階で中断が8,672とございますが、この中に は、左側のシート未返送の方も含まれておりまして、コーディネート継続が約1万ござ いますので、55%ぐらいはコーディネートが次の段階に進むということでございます。 下の円グラフは、中断した8,672例の理由を詳細に分析したものでございます。 ○齋藤委員長 見方がちょっと違っていました。それからさい帯血では、12ページはち ょっと小さい数字で保存計画数が見にくいのですが、先ほど説明がありましたように、 18年度には細胞数の多いものが2万個を超えて保存できる。したがって、初期の目的は ほぼ達成したということだと思います。  それからさい帯血については、やはり14ページの下の図を見ていただきたいのですけ れども、2004年も2005年も、公開しているのは細胞数の少ないのが約8割ありますが、 移植に使用されたのは圧倒的に黄色い部分(細胞数の多いもの)が使われているという ことを明白に示していると思います。 ○掛江委員 質問なのですが、今の12ページの計画のところでは、多いものとして6× 10?個以上という単位なわけですよね。14ページの方では、10×10?個以上という基準で 御報告いただいていると思いますが、これは同じ基準でまとめていただくということは 難しいのでしょうか。 ○齋藤委員長 13ページの下に図がありますね。実際に使われたものは、ごらんのよう に圧倒的に10×あるいは11×10?個以上が多いんです。したがって次のページのものは、 少し上の方で切っているんですね。 ○青木委員 13ページの、先ほど委員長がおっしゃったように、使われるのは11以上 が非常に多いと。上のグラフの方で、保存さい帯血の有核細胞数は、6から9までが圧 倒的に多いわけです。したがって、6×以上を2万個保存した、目標を達成したといっ ても、実際に使われるのはその中で非常に少ないという現実であります。  より多い、できれば10×10?個以上を保存したいわけですけれども、今6×10?個で大 体採取のうち3割を保存する。10以上にすると、恐らく1割ぐらいになるだろうと思い ますが。一方で私どもがバンクをやりながら非常に心が痛むのは、せっかく提供してい ただいて、その7割の方の保存ができない。10×以上にすると9割の方の保存ができな いという心の痛みがある一方、しかし使用されないものをたくさん保存するというのも 非常にまた問題である。やはりそこら辺は割り切って、今後は使われるような細胞数の ものだけを保存する必要があるのではないかとも思っております。  それから先ほどの移植成績のところで、非常にさい帯血移植は生存率が低いような印 象を受けるわけですけれども、さい帯血バンクを始めた当初、対象患者が骨髄移植で適 合しなかった人という条件があったわけです。したがって、身内にも適合者がいない人 が骨髄バンクに登録した。そこでもさらに適合者がいなかったという非常に悪い条件の ところでの移植が、結構この中に入っているわけです。最近はそういう縛りがなくなり ましたから、条件のいいときに移植した、医療機関のいろいろ成績の差がありますけれ ども、成績のいい医療機関ではほぼ9割近い人が生存している。そして、ハイリスクの 患者さんでも6割ぐらいが生存しているという例もありますので、これだけを見て判断 しないでいただきたいということを申し上げておきます。 ○齋藤委員長 それでは次に進みたいと思います。今までの委員会の議論を整理して、 どこまで実施されているか、あるいは課題について事務局からお願いします。 ○矢野補佐 それでは、資料2を御覧いただきたいと思います。これまでの当委員会で の議論を整理させていただいております。最近の実施状況と課題について御説明させて いただきたいと思います。枠の右手が実施状況と残された課題ということで、◎の部分 が実施したもの、それから●の部分を課題として記載させていただいております。  まずAの造血幹細胞移植に係る需給バランスですけれども、施策の前提ということで 3つ目の丸で、先ほど齋藤委員長にも触れていただきましたが、HLAの適合率と移植 率について差があるということで、移植成立率の向上が課題となっております。  1の骨髄移植のドナー登録者の拡大についてですけれども、上から2つ目の丸、献血 窓口におけるドナー登録の拡大につきましては、昨年ドナー登録手続の簡素化等を行う とともに、日赤ボランティアの活動などを財団で実施しております。  次の丸の、ドナー登録者確保の観点から、安全性が担保されることを確認した上で、 ドナー登録者の上限年齢を引き上げ、下限年齢を引き下げる方向で見直す。これにつき ましては、昨年ドナー登録者の対象年齢を拡大いたしました。これまで20歳から50歳 であったものを、下限につきましては昨年の3月に20歳から18歳に引き下げをしてお ります。上限につきましては、昨年の9月に50歳から54歳に引き上げをして拡大をし ております。  2番目のさい帯血の保存目標についてですけれども、2つ目の丸、現在、さい帯血の 公開保存個数については約2万4,000個。そのうち6×10?個のものは約1万8,000個と なっております。これは、利用状況を踏まえて今後の保存目標について検討するという ことが現在課題となっております。  3点目の末梢血幹細胞移植等新たな医療技術の有効性についてです。これまで委員会 では、末梢血幹細胞移植を非血縁間に拡大するかどうかについては、日本造血細胞移植 学会においてフォローアップされている安全性・有効性に関するデータを見た上で再度 検討する。非血縁者間の末梢血幹細胞移植を行う場合には、コーディネートは非血縁者 間の骨髄移植と一体的に骨髄移植推進財団で行うことは適当という議論が行われており ました。これにつきましては、現在日本造血細胞移植学会においてデータを整理中とい うことでございまして、現在の検討状況については、後半に小寺先生からお話をいただ くこととなっております。  続きましてBの造血幹細胞移植の実施体制についてです。3番の骨髄バンク事業とさ い帯血バンク事業の連携につきましては、現在、骨髄、さい帯血両バンクにおいて、事 業の連携について検討しているところでございます。  4点目、これは本日議題として御議論いただくところですけれども、効果的・効率的 な骨髄移植、さい帯血移植の実施についてです。(2)のコーディネート手続及び実施体 制についてですが、ドナー候補者の早期絞り込みによるコーディネートの迅速化等の観 点から、ドナー登録時のHLA検査についてDNAタイピング検査に移行するのが適当 であるという御議論をいただきまして、これは昨年の3月より実施しております。  その次の、コーディネートの迅速化は重要であり、財団においてコーディネート業務 の見直しを行うことが必要であるということにつきましては、これもまた後ほど財団の 方からお話がありますけれども、コーディネートの迅速化のための業務の見直しを進め ておりまして、コーディネートの迅速化コースを設定するということを実施しておりま す。  採取施設と移植施設の課題への対応に関しましては、採取施設、調整医師の確保が難 しくなっているということで、これも後ほど財団の方から御説明をいただきます。  Cに行きまして、造血幹細胞移植に係るドナー・レシピエントの一層の安全性等の確 保についてです。一層の安全性確保のための各基準等の見直しということで、さい帯血 バンク事業については、現在の基準はおおむね評価されるけれども、さらに医薬品並み の品質、安全性等の確保のために何が必要かという観点から、諸外国の基準等を参考に しつつ検討を進めることが必要であるという御議論をいただいております。これにつき ましては、現在、中畑先生の研究班において調査検討を行っていただいているところで す。  最後のページになりまして、造血幹細胞移植の財源に関してですけれども、4番目、 骨髄移植における患者負担の軽減。これにつきましては、右手の下から2つ目の丸にな りますけれども、昨年の7月から患者負担金を引き下げておりまして、平均的なケース の患者負担金は現在27万1,000円ということになっております。以上です。 ○齋藤委員長 ありがとうございました。論点の整理の説明をしていただきましたけれ ども、何か御意見、御質問いかがでしょうか。 ○新美委員 今いただいた中のAのところ、最初のところですが、移植率の向上が課題 ということで、さい帯血と骨髄について母集団に性格の違いがあるということが青木先 生の方から御説明ありましたけれども、さい帯血に関しまして、母集団にバイアスがか かっているところについて分けるようなデータはあるのでしょうか。要するに、骨髄が だめでさい帯血ということが明確なものと、そうでなくてダイレクトにさい帯血に行っ たという場合の移植の成功率について、何かデータはあるのでしょうか。 ○齋藤委員長 一部あると思います。今言われるのは、病期によって、例えば子供の急 性リンパ性白血病で第1寛解期に移植したらどうかという、そのデータがやっとあると 思います。 ○新美委員 こういう議論をしていくときには、できるだけ母集団をそろえるようなデ ータを見せていただくとありがたいと思います。 ○小寺委員 先ほどの繰り返しになりますが、そういうフラストレーションは私ども移 植の方をやっている専門医の間でもございまして、これ以上ばらばらにデータを解析し ていたらいけないということで、同一のフォームを使ってセンターで解析するという方 向に行きますので、次回はもうちょっといいデータになると思います。 ○齋藤委員長 ほかにいかがでしょうか。 ○石井委員 Bのところの、黒丸のついております骨髄・さい帯血バンクにおいて事業 の連携について検討中ということですが、どのような報告にどの程度進んでいるのか、 ある程度お話しいただければと思いますが。 ○齋藤委員長 どなたに答えてもらいましょうか。小寺委員かあるいは財団の方で。 ○小瀧参考人 先ほど申しおくれました骨髄移植推進財団移植調整部長の小瀧でござい ます。よろしくお願いいたします。  現在さい帯血バンクとの連携におきましては、具体的な項目としては進んでおりませ んが、1つ、HLAの照合を骨髄の場合さい帯血の場合と分けるのではなく、先生方が どちらのソースでもHLAの照合を一気に見られるといったような環境整備については 話し合っており、ホームページ上でどうやったらうまく見られるかということを話し合 っております。 ○坂本委員 骨髄のドナーをふやすために、年金を引き下げるということが昨年から行 われていますが、その他日赤ではボランティアの活用でありますとか、登録手続を簡素 化するとか、新しく始めたことの効果と今そういう形をしておられてさらに課題はどの ようなものがあるのでしょうか。 ○齋藤委員長 坂田さん、あるいは室長、いかがですか。 ○片岡室長 効果につきましては、正確な分析はできていないのですが、最初の資料で 御説明いたしましたが、昨年度新規の登録者数が4万5,000人を超えています。今まで は多いときでも2万5,000前後ぐらいだったのですが、昨年度は非常にふえております。 これは登録要件の拡大を行ったということもあるのですが、それ以上に今まで皆さん方 がいろいろ努力されていたものの積み重ねで、日赤をはじめ都道府県、それから全国の ボランティアの皆さん、いろんな方がこれまでやってきたことが結実してうまくいって いるかと思います。  個々の効果についても、分析しなければいけないとも思っていますが、お話にありま した日赤ボランティアの活用については、試行的に始めているところで、日赤ボランテ ィアの活用自体についてまだそれほどはっきりとした効果はないと思います。ただ日赤 全体としても、非常に取り組んでいただいておりますので。昨年度ふえた原因は様々な 要因によるものと考えておりますが、それが今後も持続できるように今年度も頑張りた いと思っております。いろいろな方にいろいろとお話を聞きながら、効果的なものがあ れば今後とも引き続きやっていきたいと思っております。 ○坂田参考人 少し補足してよろしいでしょうか。登録者の分布に関しましては、先ほ どの資料1の8ページにあるかと思いますけれども、18歳からに年齢が引き下げられた ことによりまして、やはり立ち上がりが2年早くなりましたので20歳の登録者がふえて くるかなということで、HLAの照合検索をするドナー数全体がふえてくるのではない かということが1つ上げられるかと思います。  それから、今年度1年間で4万5,000人ほどの登録者がふえたということですが、3 月から登録時のDNAタイピングを実施しておりますので、先ほど論点整理の中にもあ りましたように、DNAタイピング済みの登録ドナーがふえれば早い時期でドナー候補 者を絞り込みできるということで、コーディネートの効率化につながるというふうに考 えております。  また年齢の引き上げに関しましては、昨年9月から登録は54歳まで引き上げられまし て、これも先ほどの8ページの資料によりますと、まだ少ないのですけれども、52歳以 上のドナーの方も少しずつふえております。ただ9月以降、骨髄提供をされた方に関し ましては、52歳以上の提供者はまだおりません。現状でございます。 ○齋藤委員長 それではこの論点整理のところに、今後検討した方がいいような事項が ありましたら、課題がありましたら御意見を伺いたいと思いますが。よろしいでしょう か。また後ほどありましたら、つけ加えたいと思います。  それでは次に各論の議論に入りたいと思います。まず骨髄移植のコーディネートの迅 速化、先ほどの論点整理にも上がっておりましたけれども、その議論を行いたいと思い ます。そこで坂田参考人から、ドナー登録の現状について説明をお願いいたします。 ○坂田参考人 申しおくれました、骨髄移植推進財団ドナーコーディネート部の坂田で ございます。資料3につきまして説明させていただきます。  非血縁者間の骨髄移植のコーディネートの状況についてということで、まず1ページ 目はコーディネートの流れでございます。委員の先生方は既に御承知かと思いますが、 患者登録されますとまずドナーの適合検索が行われまして、並行して最大5名までドナ ーコーディネートが行われます。ドナーの方には、まず書類の審査ということで、提供 の意思、それから日程の都合ですとか健康の状態等を問診票で記入していただいて、ア ンケート調査を行います。その後、各地区のコーディネートが開始になりまして、ドナ ーの確認検査、最終同意、それから骨髄採取施設と日程を決定いたしまして術前検診、 骨髄提供というぐあいに進んでまいります。  骨髄移植推進財団の列の真ん中辺に採取ドナー選定というところがございます。この 段階で、主治医がドナー候補者を1人に絞り込みまして、ここから先最終同意の面談は 絞り込んだ1人のドナー候補者について進めてまいりますが、このドナー選定から骨髄 採取までの期間を迅速コースでは目標値40日に設定しております。  後ほどまた説明させていただきますが、最近ではこの骨髄採取ドナーの選定と同時に、 骨髄採取施設それから日程の調整を開始して、できるだけ早く骨髄採取の日程を決める ということで迅速化に取り組んでおります。  続いて2ページ目でございます。こちらは2005年の1月から12月に登録した患者さ んが、ことしの2月の段階でどのような動きになっているかというものを見たものでご ざいます。新規登録患者が2,253名ということですが、この中には海外から登録してい る患者さんも含まれておりまして、国内の登録患者が1,610名、海外の登録患者が643 名でございます。真ん中より下の方に、コーディネート開始が73%とございますが、せ っかくコーディネートを開始してもやはり途中で患者登録を取り消してしまわれる患者 さんがまだ多数ございます。その理由を見てみますと、一番多いのが、やはり患者さん がお亡くなりになるケースでございます。また、病状が悪化、あるいは骨髄が間に合わ ないためにさい帯血移植に切りかえるといった患者さんがいらっしゃることがおわかり になるかと思います。ここで、やはり待っている患者さんにいかに迅速に骨髄を提供す るかということが重要であろうかと思います。  続いて3ページ目でございますが、移植例数と移植率についてお示ししてございます。 先ほど対策室の方の説明では、トータルでこれまで35%程度の移植率という説明がござ いましたが、一番下の表を見ていただきますと、国内、海外それぞれの患者数をトータ ルしましてこれまで累計で35%の移植率。国内患者だけで見てみますと40%程度の移植 率ということでございます。特に最近3カ年について、これはこの期間中の新規患者登 録数と同期間の移植例数の単純な比率を示してございますけれども、最近では55%前後 の移植率ということで、かなり移植率は高くなってきていると考えられます。またこの 数値につきましては、諸外国と比べますと非常に高い数値ということで、日本の骨髄移 植医療といいますか、このシステムが非常に患者さんの治療法として非常に、適してい るのではないかと考えます。  続いて4ページ目でございます。これはコーディネート件数の推移を過去4年間振り 返ってみたものでございます。表の一番上を見ていただきますと、患者登録数を示して ございますが、特に2005年の国内患者は1,610名ということで、前年に比べまして14% の伸び。中でも2005年の後半、10月以降の伸びが非常に顕著になっております。また それに伴いまして骨髄採取・移植件数もふえておりますが、採取件数も2005年は907 件ということで、対前年14%。非常に業績が好調でございます。また、途中の各コーデ ィネート段階も著しく業務量を増加しておりまして、各地区事務局を初めコーディネー ト現場への業務負荷が大きくなっている現状でございます。  一方で5ページ目のコーディネート期間でございますが、コーディネート期間は毎年 順調に短縮されておりまして、特に2004年の8月から迅速コースを設置いたしました。 その導入の効果かと思われますが、2004年から2005年にかけて、上のグラフは患者登 録から移植日、下のグラフに関しましてはドナー指定日から骨髄採取日ということで、 下はドナーコーディネートの期間を見ているのですが、いずれも2005年は前年に比べて 15日間短縮しております。これは先ほど申しましたように、迅速コースの効果と見てい いのではないかと考えております。  続いて6ページでございます。これは各地区別のコーディネートの件数及び期間をグ ラフにしたものでございます。コーディネート件数では関東地区が全国の約3割を担当 しております。棒グラフの部分でございます。それから上の折れ線の部分は、2003年2004 年2005年のそれぞれのコーディネート期間を見たものでございますが、関東地区のコー ディネート期間が全国の中では若干長くなっております。かなり短縮に向けて努力して いるところも見受けられるかと思いますが、関東地区においては非常に件数も多いもの ですから、調整が困難になっているなということがおわかりいただけるかと思います。  7ページに関しましては、2005年だけですけれども、全国7地区に分けてコーディネ ートを行っておりますが、7地区のコーディネート件数、各コーディネート行程のコー ディネート件数の詳細を示したものでございます。  8ページ目の表はちょっと細かくて恐縮ですが、これも2005年のコーディネート期間 を追ったものでございます。真ん中の全国と書いたところに、左から中央値、平均値、 最頻値、最大値、最小値という数字が載っておりまして、中央値の部分の一番下を見て いただきますと、そこに127.0という数字がございまして、これが先ほどグラフでお示 ししましたドナーコーディネートの日数です。ドナー指定から採取日までの日数でござ います。その上の154という数字が、患者登録から移植日までの日数になっております。 また右側の表は各地区別の日数でございますが、地区別の平均値ということで、中央値 を財団の方では出していませんので、参考にしていただければと思います。各行程の細 かい日数管理をこういったところでしておりまして、おくれているところを事務局員が 頑張って督促したりして、1日でも短くするようにと努力しているところでございます。  9ページもまた細かい表で恐縮ですが、骨髄移植推進財団の方で認定している採取施 設に関しましては、全国で150施設ございます。150施設というと、かなりたくさんあ ってまだまだ採取を受けていただけそうなのですが、実は関東地区でこのうち約40施設 があるのですが、それでも施設が足りない。なかなか骨髄採取を受け入れていただけな い。その理由としては先生方が非常にお忙しいということで、調整に非常に苦慮してい る状況でございます。  10ページ目に参りまして、迅速コースコーディネートについて報告させていただきま す。先ほど申しましたように、2004年の8月から迅速コースのコーディネート、患者登 録の方を受けつけておりまして、2005年1年間の状況をデータで示しております。まず 患者さんにつきましては、今迅速コースを受け入れているのは国内患者さんに限るとい う条件をつけてございます。国内患者のうち迅速コースを希望される患者さんが約4割 いらっしゃいます。また右側の円グラフの方ですが、これはドナーの方の迅速コースの 割合ですが、このドナーの中には海外患者とのコーディネートの対象ドナーを含みます ので、ほとんどのドナーの方が、迅速コースをお願いしますと言うと非常に協力的で、 日程的には御協力いただける方が多いという印象でございます。  下のグラフですが、帯グラフの方はコーディネート期間を示しております。4つの帯 グラフで示しておりますが、一番上が目標値でございます。迅速コースを設置したとき に、迅速コースの目標値、これはドナーコーディネート開始から骨髄採取までの目標値 を80日間と設定いたしました。  2番目の帯グラフでは、迅速コースのみのデータの中央値を見たものでございますが、 前半の行程が幾つかありますが、前半の行程は目標値をクリアしております。ところが 一番最後の行程ですね。先ほど1ページで説明しましたドナー選定されてから骨髄採取 までの目標値40日に対しまして、実績では60日ということで、ここの期間が長くなっ ております。目標値にはほど遠い数値でございますが、これは先ほどから申しておりま すとおり、骨髄採取の採取施設との日程調整が非常に困難で、採取施設が決まりにくい、 あるいは先生方がお忙しいのでなかなか患者さんの御希望の日程で調整が困難というよ うな状況であります。ただ、2005年の全体の中央値の実績の、各行程の合計でございま すが、120日と比べますと23日も短くなっておりますので、このあたりは迅速コースの 効果かなと。前半の各行程に関しましては、コーディネーター初め地区事務局が、日程 調整を含めて迅速コースということで非常に調整の努力をしている。努力の結果、この 目標値をクリアしているという点をおわかりいただけるかと思います。  11ページは事例で示しておりまして、コーディネート期間が短い事例はどうなってい るかということを見たものでございますが、前半の行程ももちろんでございますが、先 ほどから申しております後半の行程ですね。ドナー選定されてから採取に至るまでの行 程が40日台で調整できてくると、かなり期間が短くなってくるのではないかなと。こち らの18例につきましては、目標の80日をクリアした事例を示してございます。  下の表でございますけれども、迅速コーディネートを希望する患者さんにつきまして は、月別のばらつきはほとんどなくて、大体4割前後で推移している。ドナーさんの方 も、月ごとのデータでございますけれども、ほぼ同じぐらいの数値で推移しているとい うことでございます。  最後の11ページの下のグラフは、迅速コースと標準コースのコーディネート期間の分 布をグラフにしたものでございまして、迅速コースの分布がやはり期間の短い100日前 後のところにピークが来ております。標準コースでは若干長くなって、120日から150 日ぐらいのところにピークが来ているというのがおわかりいただけるかと思います。  最後のページになりますけれども、やはり待っている患者さんを救命するためには、 いかに先ほど話しました移植率を高くするか。移植率は現在55%程度ですが、これを 60%とか70%に上げていくためには、やはり迅速化というものも欠かせないと考えてお ります。そういったコーディネートの迅速化をさらに進めるために、今一番事務局で困 っていることが、骨髄採取の受け入れをいかに確保していくか。施設をふやすというこ ともなかなか難しいかと思いますが、1つの施設で今以上に受け入れていただく、1件 でも多く骨髄採取を受け入れていただくにはどうしたらいいかということを検討してい かなくてはならないのではないかと思っておりまして、特に関東については採取病院の 確保が困難ですけれども、一方で今現在、患者登録が非常にふえております。特にこの 3月は国内患者だけで200例の患者登録がございまして、これが数カ月先には移植の調 整をしなくてはならないということになってきますから、今の状況のままですと、非常 に採取の調整が困難な状況がますます懸念されるというような状況でございます。  また、そういった先生方にどうして受け入れていただけないかということを聞きます と、非常にお忙しいというようなお返事が返ってきます。造血細胞移植というのが、骨 髄だけではなくていろいろな移植医療が非常に増加して先生方はお忙しくなっているの かなと考えるのですけれども、そういう中でスタッフの確保ができない、血液内科の医 師の確保ができないというような声も聞かれます。とすると、先ほどの各コーディネー ト段階で、確認検査、最終同意のときには、それぞれ調整医師の先生方にも御協力いた だいているところですが、そういったコーディネート行程での調整医師の負担軽減とい うことも今後考えていかなくてはいけないのかと思っております。そこで、コーディネ ートの手続の見直し等につきましては、引き続き検討をしていきたいと思います。  もう一つここには載せておりませんけれども、業務量の飛躍的な増加、それからさら なる迅速化に取り組んでいくという部分では、事務局のマンパワーを含めてそういった 強化をして、体制強化が急務であろうということも考えているところでございます。以 上でございます。 ○齋藤委員長 ありがとうございました。御意見、御質問、いかがでしょうか。 ○小澤委員 今、血液内科医の不足で採取施設の調整が大変であるというお話を伺いま したけれども、また一方で今度は移植実施施設の方で、やはり移植の適応がありながら なかなかスケジュール調整が大変で大分おくれてしまうといった事情も、恐らく採取ま でに時間がかかる理由の1つになっているのではないかと思いますが、その辺に関する 何かデータみたいなものはありますか。 ○小瀧参考人 データの方はお示ししていないのですけれども、具体的な1施設の事例 といたしまして、7月1カ月間に非血縁の移植待機患者さんが10名ほどいらっしゃいま した。その施設は木・金でしか移植ができないということで、お1人の非血縁の方の日 程調整によって10人すべての患者さんのスケジュールが狂ってくるということで、それ が迅速に決まってこないことには残りの方々も決まらないということで、結果、希望す る移植日程で移植ができないといったような状況が生じておりました。これは1施設だ けですけれども、関東それから近畿地区、それから中部地区の移植件数の多い施設は、 同じような状況が起こっているかと推察いたします。 ○坂田参考人 少し補足してよろしいですか。具体的な数値はお手元にお示ししてござ いませんけれども、調整の部分では、関東地区では、1人ドナーの方が選定されて調整 するときには、2施設3施設に都合を伺うのは当たり前、中には10施設ぐらい当たって やっと採取施設が決まるというような状況もございます。それから、今は4月でござい ますけれども、4月の段階でドナー選定されてきまして、6月ぐらいの日程でしか調整 ができない。地域によっては、もう7月ぐらいも視野に入れて採取の日程調整をしない となかなか決まってこないということで、ドナー選定がふえて移植をふやそうとすると どんどん日程が先にずれ込んでいってしまうということで、悪循環になっていってしま うのかなという現実がございます。 ○齋藤委員長 今の小澤委員の御質問は多分、ドナーからの採取の段階にネックがある のか、採取したものを移植するところにベッドが足りないのか、どちらが大きいかとい うことだと思いますけれども。 ○坂田参考人 やはり採取の方の問題が大きいかと思います。患者さんはなるべく早く 移植したいと希望する方が多いのですが。 ○青木委員 先ほどは、先生が忙しくてというお話ですが、本当にそれだけですか。手 術室が足りないとか、あきを待っているとか、そのあたりはどうですか。 ○坂田参考人 実際にそういった声も聞かれます。施設によるのですけれども、先生が 足りないだけではなく、麻酔科医の確保が難しいということですとか、オペ室がなかな か確保できない。中には、病棟のベッドがなかなかあかないというような声もございま す。内科の場合には、手術というのは外科と違いまして臨時的な手術という認識の施設 もあるのではないかというようなお声もございました。 ○柴田委員 9ページの一覧表ですが、これを見ると移植と採取がきっちりバランスが とれているのはよくわかる。ところが一目で見ると、個々の病院でものすごくアンバラ ンスがある。移植数が多くて採取数が非常に少ない、逆に、移植は余りやっていないけ れども、採取は非常に熱心にやっていただいているというのがあるのですが、この整理 を何かうまいことできないですかね。  さっきの話もそうですが、小澤先生とか財団の方のお話も、非常に苦労されているの はよくわかるのですが、この一覧表を何とかうまいこと整理できたら、その辺が何とか ならないかなという気がするんです。ただそういう感じだけで。よろしくお願いしたい と思います。 ○坂田参考人 実際見ていただきますと、まだまだ数が少ないという印象を持たれる施 設もあるかと思いますし、柴田先生の御指摘のように、アンバランスな施設もございま す。移植をたくさんやっている施設はやはり先生方もお忙しいということで、たくさん やっている施設にはできるだけ努力をしていただくように事務局員も声かけはさせてい ただいているのですが、ままならないという状況でございます。御指摘の点につきまし ては、今後事務局としても何とか工夫をして、努力をしていきたいとは思います。 ○柴田委員 採取病院と移植病院の距離の、遠くの方まで取りに行く、できるだけ地域 内でやるという、そのあたりのところは以前と余り変わりませんか。 ○坂田参考人 日程優先で来ますと、採取を調整するためには余り地域にこだわってい られないのかなと。一番優先されるのはHLAの適合度ということになろうかと思いま す。一番HLAの適合度の高いドナーを選んでくる。その中で、複数ドナーがいる場合 には、やはり近い施設を選ばれる先生もいらっしゃると思いますけれども、逆にドナー コーディネートに関して考えると、ドナーの方は、近い施設ということではなくて、遠 くても日程を優先して調整するということでかなり無理はお願いしております。移植の 施設も、骨髄をいただけるならば遠くても行くというようなスタンスではないかと思い ます。 ○小瀧参考人 関連してですけれども、地方の移植施設の先生方は、ごらんいただきま したように関東エリアというのは非常に日数がかかるということを肌で感じておられる ので、急ぐ患者さんは関東エリアのドナーの方ではなくて、違うエリアの方を選ばれる といったような、本来の目的とは違うそういった選び方が現実に起こってきてしまって いるということもございます。 ○小寺委員 柴田委員のお話とも関連するのですが、全国的に見て、血液病というのは どちらかというとセンター化する傾向にあります。これは疾病の性質上手間がかかると かいろいろなことがありまして、普通の病院は余り喜ばないということがあるものです から、患者さんを例えば財団の認定病院のようなところに移植と関係なくても送るとい う傾向が今少しずつ出てきている。したがって、認定病院というのは、通常の血液病を 診るだけでも昔と比べると忙しくなっているということがあります。そういったところ を背景に移植をする。移植をするからには採取もしなければいけないということになり ますと、極めて多忙ということで、忙しさが増加しているのだろう、それが関東などで もあらわれているのではないかと私は思います。  この問題を解決するというのは、本当に根っこから変えようとしますと、移植そのほ かの血液病そのものをやっている、そういう施設に対してそれなりのワーキングスタッ フをふやしていくというようなことも一応は視野に入れる必要があるだろう。これはな かなか難しいことだと思いますが、そういった気がいたします。マンパワーの不足とい うことがベースにあるだろうと思います。 ○齋藤委員長 ほかにいかがでしょうか。 ○新美委員 今の議論にも絡むのですが、このいただいた9ページの資料ですが、こう いうふうにざっと北から南まで並べるというのではなくて、移植数の多い順から並べた り採取数が多い順に並べてみて、それがどういう特徴ないしはどういう問題点を含んで いるのかというのを、一度分析の資料としてあれこれ操作をしてみていただくとありが たいですが。そうすると施策なども立てやすくなるのではないかと、そういうふうに思 います。  それからもう一つよろしいでしょうか。3ページの図ですけれども、新規登録患者数 と移植例数を単純にやって移植率というのを出すのは、ちょっとミスリーディングだと 思いますので、余りこれは外でひとり歩きしないように慎重に扱っていただいた方がい いと思います。むしろ移植率というと、皆さんは全患者数みたいな印象をとってしまう 可能性がありますので、この辺は中での議論として、新しい患者さんがふえたら、全体 から見てこれくらいの移植をしていますよというのはわかるのですけれども、ひとり歩 きする可能性があるのでちょっと慎重にしておいていただいたらいいかなと思います。 ○齋藤委員長 採取施設というか、採取が十分ではないことが分かりました。採取病院 の数をふやすのは難しいということでしょうか。その理由をちょっと説明してください。 ○小瀧参考人 財団の方では、採取に当たりまして認定条件を設けております。過去2 年間で5例の骨髄採取を行っていることというのが条件になるのですが、その条件がな いと今度は移植認定にもならないということで、採取が前提になっております。そうし ますと、実際には血縁の方々の骨髄採取を2年間に5例行っていただかなければならな いということで、最近ではPBSCTですとか、さい帯血といったことで、移植ソース も以前とは異なる背景がございまして、骨髄採取そのものの件数がなかなかそろわない。 そうしますと認定にこぎつけないということで、ふえないといった背景がございます。 ○小寺委員 難しいところで、こういう採取がなかなかうまくいかないというときには ふやそうという声が出るわけでありますが、一方、ドナーさんに何かちょっとトラブル が起こると、やはりこれは厳密にやる必要があるということになってしまうので、そこ ら辺が今、行ったり来たりでやっているということです。そういう意味では足りないで すよね。経験のあるところでもっとたくさんやれるという方向が、私はそういう意味で は一番いいのではないかと思いますが。 ○齋藤委員長 それでは、本日の議論を参考にして財団と厚生労働省で検討していただ くということでよろしいでしょうか。  もう一つの各論であります。これも先ほどの論点整理に上がっておりました。末梢血 幹細胞移植について議論を行いたいと思います。現在、我が国では血縁者間における末 梢血幹細胞移植というのが行われておりまして、その現状について小寺委員より説明を お願いします。 ○小寺委員 それでは、お手元の資料4と同じものが後ろのスライドに出ますが、その 両方を使って御説明いたします。  これは、論点整理の資料2の中では、Aの3の末梢血幹細胞移植等新たな医療技術の 有効性に関係することであります。先の審議会で、まず日本造血細胞移植学会が行って いる血縁者間におけるドナーの安全性がどの程度担保されるのかということを待って、 この審議会で検討するということで宿題をいただいておりまして、私は学会、並びに研 究費をいただいてこのテーマを検討してまいりました。その両方の立場から、今回御報 告させていただきます。  今からお話しするデータは、厚生労働省の研究班と日本造血細胞移植学会の共同事業 であり、また一部はEBMT、欧州・ブラッド・アンド・マロー・トランスプラント・ グループとの共同作業の報告でございます。共同研究をしていただきました先生方、こ の1ページ目の下に名前が上がっておりますが、これは日本造血細胞移植学会のドナー 委員会のメンバーであります。  次のページをおめくりください。ちょっとスライドが出るまで資料だけでお話ししま すが、この背景と目的ですが、同種末梢血幹細胞移植、PBSCTと言いますが、2004 年の4月に我が国でも健康保険の適用を受け、それ以降最初の年から、血縁者では既に 骨髄をはるかに上回る数で実施され始めたという新技術であります。しかしながら、こ の時点で我々はPBSCドナーの安全性は必ずしも確立されていないと考えまして、日 本造血細胞移植学会を中心に、すべての末梢血幹細胞ドナーの採取にかかわる急性期及 び中長期有害事象の実態を把握し、もし発生した場合にはそれを速やかに実施施設に情 報伝達するとともに、それらに対する予防策を講じて実施するシステムというものを構 築いたしました。  下のスライドがその仕組みでございますが、日本造血細胞移植学会ドナー登録センタ ーというものを新設いたしまして、採取施設から義務として、急性期の有害事象を起こ ったらすぐに報告するということと、採取後30日目の、これは採取細胞数等を含む詳細 なデータでありますが、それを提出させるということと、その後毎年5年間にわたって ドナーさんに健康診断を受けていただいて、その結果を報告していただくということ。 それを各採取施設に義務として課しました。  この中で、特に1、2に関しましては――1、2、3すべてでございますが、G−C SFの関連企業、それを製造販売している企業がございますが、健常者にG−CSFを 投与するという新しい薬効の追加に伴う市販後調査をこの学会を介して行うようにとい う当局の指導がございまして、それに基づいて財政支援を行うということになっており ます。ここで得られたデータをそれぞれ採取施設にホームページを介して知らせると同 時に、データをその関連企業に提供するということでございます。  5年間の新規登録と、それぞれの症例について5年間健康診断を行うということです ので、計10年間のプロジェクトで、昨年度2005年がちょうどその半ばでございます。 今年度はその後半に入っているということであります。  3ページをごらんください。同種末梢血幹細胞の適格基準というものを学会と、ちょ っとここに書いてございませんが、日本輸血学会と共同でつくりました。これが適格基 準でございまして、ドナーの安全性を担保するために、ドナーはこういった疾患を有す ることなく健康であって、なおかつ年齢が原則としては19歳から54歳であるというふ うに定めました。  その下が結果でございますが、5年間の登録総数が3,262例。うち74例が2回提供者 ということを含んでおりますが、それが233診療科から出されました。Day30のチェッ クですが、これは85.8%の回収率でありました。現在もこれはさらに督促している最中 であります。  次のページをごらんください。ドナーの適格基準の充足状況でございますが、身体条 件で、適格基準を満たしていなかったというのが2.0%ございました。私どもの予想よ りは多くがこの学会の適格基準を遵守していてくれたと考えております。年齢に関しま しては、これは実は小児が外れておりまして、小児のドナーからこの方法で取るときに は、原則的にIRBを通してから行うということで許可しておりますので、25.5%、こ の多くは小児ということであります。  比較的重篤な急性期の有害事象率は、ここにございますように3,262例のうちで50 件、1.5%ございました。このうち49件は施設が自主的に報告したものであり、1例が、 施設からの報告がなかったのですが、30日目の報告書がその施設から出ておりまして、 そこで学会本部が重篤であると判定したものであります。  急性期有害事象の内訳でありますけれども、下から見ていただきますと、アフェレー シスと書いてありますが、これは幹細胞を採取する作業を申します。この幹細胞を採取 する作業に恐らくは関連しているだろうということで、よく知られている一過性のもの が一番下に書いてございまして、その中で発熱とか、実は比較的太い針を静脈に刺して 3時間ぐらい採取するということを場合によっては2日間行うわけですが、そこの部位 の感染といったようなことがあったということと、迷走神経反射とかテタニーといった 症状は、こういう体外循環をするときによく起こることが知られております。このよう なことが起こっている。  それから真ん中ですが、G−CSFというお薬の5日間の皮下注射に関連している可 能性がかなり強いと思われるものが書いてあります。最も多いのは血小板減少でござい まして、13例に見られたということで、その程度はいろいろであります。なお、この血 小板減少に関しましては、先のアフェレーシスとも関連しているところで双方にまたが るものですが、よく知られているものであります。そのほかにここにあるようなものが あります。  これらのどれとも関連がはっきりしないというか、明らかに重篤であってやはりこれ は看過できないというものが7例、0.21%ございました。その内訳は、間質性肺炎が2 例、狭心症発作が1例、くも膜下出血が1例、胆石胆のう炎と痛風発作の合併したもの が1例、静脈血栓症が1例、後腹膜血腫が1例ということであります。  次に年次健診状況、すなわち中長期の有害事象に関する結果をお示しします。2004年 の3月までに提供された方が2005年の3月に1年目の健康診断を受けられるというこ とですので、この期間の4年間に提供された方の1年ごとの健康診断の実施状況を示し ておりますが、2,849件の健康診断実施がございまして、1,370人の方が受けられたとい うことであります。しがたいまして、件数宛の年次健診実施率は、2000年度が683人の 方が提供されておりまして、そのすべての方が受けられれば4回毎年受けられているわ けですから、掛ける4ということになりますので、そういう件数宛で計算いたしまして、 40.4%の受診率。人数宛でいきますと49.2%。約2人に1人が健康診断を受けられたと いうことであります。これは、この事業に協力された方ということで、同意を得てから ということですので、そういったことで100%にはなっていないということです。  次のページをおめくりください。年次健診結果でございますが、1,370人の方で、発 生した健康診断の結果を示しております。有害事象があった場合、1人の人が複数の有 害事象があったという場合がありますが、それは主たるものを採用しております。そう しますと、健康上の問題がなかったという人が4分の3であります。それから、何らか の健康上の問題があったという方が4分の1でありまして、そのうち提供前からあった というものが7%。提供後発生したもので、明らかに一過性であるとか、事故とか妊娠 といったものと、高血圧、糖尿病、それから手術、精神神経疾患というものが9.6%。 これ以外のもので、すなわち提供後発生し、今の一過性のものだとか、事故だとか、妊 娠といったものを除いたものが8.7%ございまして、そのうち非悪性疾患が8.1%、非血 液系悪性腫瘍が0.5%、8件、血液系悪性腫瘍が0.07%、1件という結果でありました。  このうちで比較的重篤な中長期有害事象というものは、すべてこのBの3のところに 属するわけでありまして、これは採取チームまたは学会のドナー登録センターで判定さ れたものを合わせたものですが、28件ございまして、2.0%というふうに算出されまし た。  その中長期有害事象の内訳でありますが、血液学的悪性腫瘍が、急性骨髄性白血病が 1件、そのほかの悪性腫瘍が、ここにございますようなものが発生していた。それから 非腫瘍性の疾患といたしましては、甲状腺機能異常を初めとしてこういったものがあっ たということであります。  学会の適格基準というのを先に定めておりましたけれども、それと急性期及び中長期 有害事象の発生率との関係でありますが、こうして見ますと、急性期の有害事象を呈し た症例が適格基準を満たさない症例の中から少し多目に出ているのではないかというこ とが言えるかと思います。  次のページをおめくりください。これから後は日欧共同作業による骨髄と末梢血のド ナーの安全性の比較ということに関する報告であります。調査項目は提供後30日以内の ドナーの死亡、提供後30日以内の重篤な有害事象、提供後今日に至るまでに発生した血 液学的悪性腫瘍ということであります。後方視的と書いてありますが、このうち日本の 末梢血のデータに関しましては、今までお示ししました前方視的データを我が国では用 いております。  回収率でありますけれども、日本は血縁からの骨髄採取に限って調べたわけですが、 286施設のうち191施設からの回答がございまして、67.0%であります。末梢血は先ほ どお話ししました。欧州の方は同種骨髄採取ということで、どうも非血縁のものも含ま れているようなニュアンスでありましたが、624という欧州全体ですから非常に多くの 施設が移植をやっているのですが、そのうち自家移植しかやっていないというところが かなりありまして、同種移植をやっているのが338施設あるそうです。そのうち221施 設からの回答が得られておりまして、回答率が65%。同種骨髄採取が、ここに書いてあ るように2万8,000件、同種末梢血幹細胞採取が1万6,000件ということでありました。  結果でありますが、採取後30日以内の死亡。末梢血、骨髄の順に説明しますが、末梢 血採取は日本ではゼロ。欧州では3例ございまして、これはそれぞれ、採取後29日目、 17日目、15日目に起こったというふうに報告されていますが、こういった年齢の方で、 このような病気でなぜかお亡くなりになっている。それから骨髄採取は、我が国では今 から約15年前ですが1例ございまして、この方は実は30日以内の死亡ではなくて、採 取1年後に最終的にお亡くなりになっているのですが、そのイベントは採取中に起こっ ておりますので、一応Day0でこういった事例がある。欧州の方は1例、Day15で肺梗塞 を起こしたという報告がありました。  次に、提供後30日以内の重篤有害事象でありますが、我が国は先ほどお示ししました ように件数で3,262分の50。絶対的なものだけをとっても3,260分の7。欧州の方が1 万6,432分の16。骨髄採取の方は、日本がこういった数ということになっております。  次のページに行ってください。この重篤有害事象の内訳でありますけれども、末梢血 幹細胞の我が国のデータは先ほどお示ししました。欧州の方では心筋梗塞が2例。それ からPE/DVTというのは、心嚢水の貯留といったことだと思いますが、3例。これ は肺梗塞と静脈血栓症ですか。そうでしたね。それが3例。それから高血圧が1例、頻 脈が1例、感染2例、脾破裂が3例、その他が4例。骨髄採取の方が、日本が、ここに 書いてありますようにかなり多様になっております。それから欧州の方が、心停止が1 例、椎間板ヘルニアが1例。問題は、その他という表現で10例あったということであり ます。  血液系悪性腫瘍でありますが、これは中長期の有害事象に属するわけですけれども、 末梢血幹細胞採取が先ほどお示ししましたように白血病が1例。それから欧州の方では、 リンパ腫、その他が、2例、3例ということであります。骨髄採取の方では、日本が、 白血病が2例報告がありました。それから欧州の方は、白血病、骨髄腫、リンパ腫、そ の他ということで、こういった数になっております。  人口1万件あたりの数を末梢血と骨髄でそれぞれ日本と欧州で比較したのが、その次 のものであります。日本の方ですが、提供後30日以内の死亡が、抹消血、骨髄という順 番ですが、1万件当たり0対1.7。これは1例でございます。そして片方はゼロですか ら差は無限と言ってもいいのですが、一応ここではPBとBMはほぼ等しいという判定 にしておきました。提供後30日以内の重篤有害事象が、報告件数すべて、または絶対的 に重篤なものに限ってみてもこのように21.5対6.8ということで、PBの方が多い。そ れから、血液学的悪性腫瘍に関しましては、3.1対3.4。また、年次健診数だけを基準に してみましても7.3対3.4ということで、これはPBとBMは等しいだろうということ であります。  次に欧州の方でありますが、30日以内の死亡は我が国と違って末梢血の方が多いとい うことです。それから、提供後30日以内の重篤有害事象。これも末梢血の方が多い。今 日に至るまでの血液学的悪性腫瘍は、こういったことで末梢血と骨髄とはほぼ等しいの ではないかということになりました。  まとめでありますが、同種造血幹細胞ドナー事前登録システムは、こういったことで 正確な情報をもたらしつつあるというふうに思います。我が国で、少なくとも急性期の 有害事象が一定数発生するということが明らかになったわけでありますが、死亡もしく は後遺症を残すような事例というのは我が国では現在までのところ発生していないわけ でして、これは提供の事前登録制、要するに施設のドナー安全に対する自覚を新たにす るという役割を私は果たしていると思いますが、その成果の1つだろうと思います。  考案の2といたしまして、ドナーの適格基準というのは、特に急性期の有害事象率を 低減させる上で効果があったのではないかと思います。それから、末梢血幹細胞提供と 骨髄提供の安全性に関する日欧双方の検査でありますが、提供後30日以内の死亡事例に 関しては、日欧に乖離が見られる。日本より欧州の方が多いということと、30日以内の 有害事象は日欧ともに末梢血提供の方に多いということと、血液学的悪性腫瘍の発生率 は日欧とも末梢血、骨髄で差がないということが示されました。  すなわち、同種末梢血幹細胞採取に際して、当初の、健常ドナーに後年白血病等を発 症させるかもしれないという懸念は、本研究の結果ほぼ否定されたというふうに考えら れます。このことは採取に用いられるG−CSFの開発過程においても否定されており ますし、白血病以外の患者において化学療法後等にG−CSFを用いた場合でも、それ ら患者に白血病が有意差をもって多発しているという事実がないことによっても支持さ れるものではないかと思います。  これは追加ですが、文献学的に、幾例かはG−CSFが関与しているのではないか、 特にMDSとかANLの発症率を高めるのではないかというものもありますが、その論 文もよく読みますと、多くは化学療法剤とか免疫抑制剤といったものに一義的に問題が あるということが明らかになりつつありますので、このように考えます。  同種末梢血幹細胞採取の問題点はむしろもっと足元にあったわけでありまして、これ はこの事業を始める前にはわからなかったのですが、採取中または採取直後に存在して いたものであって、海外では恐らくそれに関連すると思われる死亡事例も出ているのが 現状でありますが、採取を全件事前登録制にし、ドナーの適格基準を設けてそれを遵守 することにより、これらは回避できるだろうと考えます。そんなことで、事前登録制と いうのが有用であるということで、現在学会では、これを血縁の骨髄ドナーにも広げた システムを昨年の4月から立ち上げております。  最後に、同種末梢血幹細胞採取、移植という新しい技術の評価でありますけれども、 3つ追加情報をお話ししておきたい。  1つは、特に高齢の方に対してミニ移植といったものが行われておりますが、そのミ ニ移植のベースはこの末梢血幹細胞移植にあるということであります。これはどこの国 においてどの成績を見ても、末梢血幹細胞移植をベースにして初めて可能であるという ことが言われておりまして、そういった意味で非常に重要な技術である。  もう一つは、海外の骨髄バンクにおいて、これは非血縁ドナーを対象とした採取作業 において、末梢血幹細胞採取を適応していないのはどうも我が国だけみたいだというこ とでございまして、米国、ドイツ、最近では中国といったところが末梢血の方に移行し、 多くが末梢血幹細胞採取になりつつあるというのが1つの事実としてあるということで す。  最後に、先ほどから問題になっておりました非血縁骨髄ドナーからの移植、採取とい ったようなことで、特に採取施設の問題が非常にクローズアップされておりますが、こ の末梢血幹細胞採取というのはもちろん手術室は要りませんし、幹細胞を凍結保存して おいて安全に移植ができるということが既に証明されておりますので、そういった意味 でこれが日本の骨髄バンクに導入された場合には、今までの問題点を劇的に変えるだろ うということが予想されるわけであります。以上で報告を終わらせていただきます。 ○齋藤委員長 ありがとうございました。御意見、御質問どうぞ。 ○青木委員 よく言われている骨痛とか倦怠感というのはここに出てこないのですが、 それは重篤とみないということでしょうか。それからもう一つは、ボンマローの場合、 非血縁者間もこの数字の中に入っているのでしょうか。それとも血縁間だけの骨髄移植 の数字でしょうか。 ○小寺委員 これは比較的重篤ということで、急性期の有害事象は施設の報告に主とし て基づいているんですね。骨痛そのほかというのは、施設からの報告としてはないとい うことでありまして、これは多かれ少なかれあるということで、重篤というふうにはみ なされていないということです。  それから骨髄に関して、我が国の骨髄の回答は皆、血縁です。 ○齋藤委員長 ほかにいかがでしょうか。 ○石井委員 難しいかもしれませんが、この有害事象と末梢血採取の因果関係があると 考えられているということでしょうか。 ○小寺委員 資料5ページの上の急性期について言いますと、このうち先ほど言いまし たグリーンのG−CSF関連とかアフェレーシス関連というのは、関連があるというふ うにみられるわけですが、明らかに重篤の7例というのは、どう因果関係があるのかは 今のところわからない。ただ、因果関係が否定できないということは言えるということ と、いずれもG−CSFというお薬の作用機序から見て、関連性はすべてではないにし てもかなり高いものもあるのではないかという判断です。  それから中長期に関しては、より解析は困難になってきまして、7ページの中長期の 比較的重篤だと思われる有害事象でありますが、特に問題になった急性骨髄性白血病と いうような問題については、先ほど考案のところで述べましたように、直接の因果関係 はないだろうというふうに我々は考えております。 ○石井委員 くも膜下出血は、死亡例ではないようですが、どの程度の障害になってい るのですか。 ○小寺委員 これは、我が国では、少なくとも末梢血幹細胞採取は骨髄採取の場合より も今のところ長く入院させて前後の経過を見るということをやっておりますが、その採 取後の入院中にわかった感じだと思います。場合によっては、一度退院されて採取直後 の健康診断でわかったことだと思いますが、くも膜下出血としての症状が出て、緊急手 術に入って後遺症をとどめることなく治ったというふうに報告されております。  これは非常にラッキーでありまして、下手をすれば、くも膜下出血で死亡したという 事例が欧州側の30日以内の報告にありましたけれども、そこに入ってしまう。じゃあG −CSFの投与がそれを促進したかというと、これは私が採取施設から言葉で聞いたこ とでありますけれども、手術によってやはり複数の非常に大きな動脈瘤が存在していた というふうに報告を受けております。そのことは、まさかG−CSFで数日の間にそう いう大きな動脈瘤が複数できるということはないと思いますので、恐らくはそういうリ スクがあった方にこういったストレスが加わってたまたま起こったのかなという気はし ております。 ○中林委員 ここの10ページ目と11ページ目ですけれども、やはり今後提供後30日以 内の重篤な有害事象というのは問題になろうかと思いますが、欧州でPEとDVTが出 ている。今後恐らく日本もこのような傾向が出るように思われるのですが、日本と欧州 を比べてみますと、30日以内の有害事象は絶対的なものが、これで見ますと1万件当た り日本が21.5で、欧州は9.7ですか。ということは、欧州の方が少ないというデータな のでしょうか。ちょっと私の感覚と違ったものですから。 ○小寺委員 結局私は、これは事前登録制と何年かたった後の後方視的なアンケート調 査の差だろうと思っています。 ○新美委員 全体に欧州の方が低い値になっていますね。 ○小寺委員 全部低いと思います。 ○齋藤委員長 ほかにいかがでしょうか。そうしますと、1カ月以内の急性期の副作用 については、ほぼデータが出たということですが、中長期的には徐々に集まっているわ けですよね。しかし、最初の方に説明がありましたように、全部終わるのは10年間のプ ロジェクトですからまだかかるのですが、果たしてそれまで待つのか、あるいは例えば 来年とか再来年ぐらいまでに、何例か中長期の例をもう一度報告していただいて検討す るということでしょうかね。 ○小寺委員 一応学会の方としては、この急性期5年間が終わり、中長期が4年目とい うところで、1つの報告にまとめるべきだろうということになっております。私として は、中長期をさらに5年間追加してどれくらいの情報が得られるかということは完成す る必要があると思いますが、この新技術というものをさらに対象拡大するという作業を 始めていただくのにそれなりに必要なデータは出そろいつつあるのではないかと思って おりますけれども。 ○齋藤委員長 ほかにいかがでしょうか。末梢血幹細胞移植が非血縁者に拡大した場合 は、恐らく今まで骨髄を提供していた方が徐々にそちらの方に置きかわっていくわけで、 さい帯血の適応とはまたちょっと違うかもしれませんね。骨髄提供もリスクがあるわけ ですからね。 ○小寺委員 さい帯血移植に影響を及ぼすといったものではないと思いますけれども。 ○青木委員 もう一つ教えていただきたいのですが、10ページの下のスライドですけれ ども、白血病が末梢血幹細胞3,200のうち1件、骨髄採取で5,921のうち2件。一般の 発症率と比べたら高いような気がしますね。一方、ヨーロッパは4万4,566人のうち白 血病が2人という、これも低過ぎるような気もするのですが、血縁者間であるから日本 の場合はこういう数字になっているのかというあたりはどうでしょうか。 ○小寺委員 採取1年後に白血病が発生したということは非常に社会問題化しかかった ことがありますが、そのときに学会のドナー委員会としましても、そういったことは考 えました。ただ、血縁だからというような結論はもちろん安易に出せませんし、そのた めに必要な調査、そのほかも技術的には可能であるにしても、少なくともこの事業とし てやるべきではないだろうということで、今の御質問の件については一応ピリオドとい うことにしておりますけれども。 ○坂本委員 13ページですけれども、考案(3)ですが、同種末梢血幹細胞採取の問題 点はむしろ足元にあるというのは、結局5ページの急性期有害事象のこういうものに関 しての原因ということでしょうか。 ○小寺委員 そのとおりです。5ページのむしろ急性期の方が、採取または採取直後に いろんなことが起こっているのだという方が、ドナーの安全という観点からは重要であ ろうということで、これは健康保険の適用を受けた2000年の4月には、まだ余りわかっ ていなかったことでありまして、この事業はむしろ中長期に先ほど来の懸念が実際にど うなのかということを知るために始めたわけです。結論はむしろその逆といいますか、 採取中、採取直後に気をつけるべきだろうということであります。 ○坂本委員 それを除いていくために最初の事前登録と適格基準が、この報告を受けて どういうふうに変わっていくのかということはあるのでしょうか。 ○小寺委員 こういう推計学的にはとても有意にはならないのでしょうが、適格基準を 満たさないものに急性期有害事象がちょっと多いということがありますので、少なくと も適格基準は遵守してもらうということが非常に大事だろうと思います。現在、昨年か ら骨髄、末梢血を含めて全件登録というシステムを学会はとっているわけですが、特に この3月から、学会に登録した症例の登録番号を有するものに、末梢血、骨髄双方の血 縁のドナーさんが傷害保険に御希望なら入っていただけるという仕組みをつくっており ます。そのことは、適格規準を遵守するというインセンティブになるだろうと思ってお りますけれども。 ○齋藤委員長 ただ、血縁ドナーの場合はやはり無理をしても提供したいという場合が ありますよね。 ○掛江委員 今の箇所に少し関連するのですが、適格基準を満たさなかった方で急性期 有害事象が出た方が3例で4.5%が若干多いという7ページの御報告があったと思いま すが、この3例というのは、4ページの適格基準の充足状況のところで最初に満たして いない、年齢条件を満たしていない方は小児ドナーがほとんどですという御説明があり ましたが、この3例の方の有害事象発症というのは、小児特有の何か理由があったとい う内訳ではないのかという確認。どの適格基準を満たさなかった方がこの3例に含まれ たかということを教えていただければと思います。 ○小寺委員 ちょっと書き方が足りなかったと思いますが、ここの適格基準を満たさな いというのは、身体条件の適格基準を満たさないということです。 ○掛江委員 具体的には、何かこの3例の方に共通のものは。 ○小寺委員 今そこのデータはすぐには出ないのですが、すぐ調査はできると思います。 ○石井委員 今の適格基準のところにかかわるのですが、ドナーの健康診断というのは どの程度ですか。この基準を満たすかどうかというのは、との程度行っているのですか。 ○小寺委員 基準というのはどういうことですか。 ○石井委員 事前にどの程度の健康診断を行ってドナーとなっているかということです。 ○小寺委員 採取前ですね。これは同じ3ページの適格基準を記載した、要するに血縁 ドナーからの同種末梢血幹細胞採取ガイドラインという日本造血細胞移植学会と日本輸 血学会で共同でつくったものがあります。その中に、ドナーはこういうものを持ってい てはいけないということで、あるわけです。ここに書いてありますように、3番目の血 圧の測定とか、心電図とか、糖尿病、高脂血症に関する検査とか、脾臓に対する腹部の エコーとか、血液検査とか、胸の写真とか、そのほか肝臓、自己免疫関係その他に関す る検査は受けた上で採取するということになっていますけれども。 ○新美委員 これはささいなことかもしれません。今の適格基準のうちの年齢基準です けれども、骨髄移植の場合は18から54ですから、これを19からとしたのは何か理由が あるのでしょうか。 ○小寺委員 これを定めたころは骨髄の方は20でしたので。これは、基本的には血液セ ンターにおける献血の基準を参考にさせていただいたんです。そこでさらに2つの学会 で絞ってこういう年齢にしたと思います。その背景は、そこら辺のところが基準になっ ていると思いますけれども。 ○新美委員 可能ならば同じようなところはそろえていただいた方が、説明もしやすい と思いますので。 ○柴田委員 この事前登録という意味ですけれども、これは有害事象があるかないかを やるときには事前登録をやるというのは、血縁者だから当然そうだというのはわかるの ですが、非血縁に広げるときにこの事前登録というのはどうなるのですか。 ○小寺委員 バンクドナーに関しては、今のバンクの仕組みがもう少しこれよりマンダ トリーですよね。もっと強いと思いますので問題ないと思いますけれども。ドナー選定 とか適格基準とかそういうのがありますので。 ○柴田委員 そうではなくて、選定された場合に、あなたはどっちを選びますかという のを先に決めるということになるのですか。 ○小寺委員 それはちょっとまだ検討していないです。どういうふうになるかは、まだ 全く検討しておりません。 ○齋藤委員長 それでは、ほぼ時間も来ましたけれども、何か全体を通じて御意見、御 質問はありますでしょうか。もしなければ、事務局の方から報告事項をお願いします。 ○矢野補佐 次回の日程につきましては、先生方の日程を調整させていただきまして決 まり次第文書で御連絡をさせていただきます。お忙しいところ恐縮ですけれども、日程 の御確保に御協力をお願いいたします。 ○齋藤委員長 それではありがとうございました。これで終わります。 (終了) 照会先:健康局臓器移植対策室  高岡  内線 :2362