都道府県(児童相談所等)と市町村との連携の推進、都道府県(児童相談所等)による市町村に対する支援

 平成16年改正児童福祉法を受け、各都道府県においては、地域の実情を踏まえた都道府県独自の市町村向け相談マニュアルの作成や市町村向けの研修などの市町村支援に取り組んでいる状況にある。

<実践例>
 滋賀県では、市町村のケース検討会議において専門的な助言を受けられるようケース・マネジメント・アドバイザーとして、滋賀県弁護士会から弁護士14名、滋賀県臨床心理士会から臨床心理士8名、その他学識経験者などを登録し、市町村支援のための独自の制度を設けている。

 大阪府では、国版市町村児童家庭相談援助指針の中から必要な事項を抽出するとともに、大阪府子ども家庭センターにおける実際の相談援助のノウハウを詳細に記載し、市町村の相談担当者が日常的に参考にしやすい内容で編集した「大阪府市町村児童家庭相談援助指針〜相談担当者のためのガイドライン」(平成17年6月)を発行している。内容は、市町村における児童家庭相談体制や組織のあり方、児童家庭相談の種類・内容・具体的相談内容とそれぞれに応じた援助方法や留意点及び記録方法や統計、虐待通告・相談への具体的な対応方法(調査・安全確認手法・進行管理等)、市町村と子ども家庭センター(児童相談所)の連携方法、要保護児童対策地域協議会の設置・運営方法、関係機関一覧・児童記録や虐待通告受理票等の様式類)。また、ブロックごとに市町村の担当課長を対象とした説明会を開催するとともに、ガイドラインをテキストとして市町村相談担当者向け研修を行う(年10回開催)など、内容の定着にも寄与している。

 大阪府では、市町村における児童家庭相談体制確立を支援するため、市町村の児童家庭相談窓口に大阪府子ども家庭センターのソーシャルワーカーを2年間派遣するとともに、児童家庭相談体制整備に要する経費の一部を助成(年間上限400万円)する「市町村児童家庭相談体制強化モデル事業(平成18年度〜)」を実施することとしている。
 派遣市町村については、おおむね子ども家庭センター所管ごとに1市町村が想定され、平成18年度については、6市町村が予定されている。また、派遣職員の業務内容は、児童家庭相談体制の整備・総合調整、相談担当者の育成・実務指導、要保護児童対策地域協議会の設置・運営への支援、市町村と子ども家庭センターの連携モデルづくりを行うこととしている。

 北海道では、道内206市町村における相談体制の整備を図るために、平成17年度から3か年の予定で以下の研修事業(市町村児童相談体制整備支援事業)を計画している。

(職員育成研修)
   市町村の職員を対象に、8か所の児童相談所が研修プログラムを作成し、2日間にわたる相談の基本に関する集中研修を実施。
 1日目は、主に市町村児童家庭相談援助指針に基づく相談援助活動の実際、児童や保護者の理解、関係機関の役割や支援等に関する講義を中心に実施。
 2日目は、(1)虐待通告を受けた際の電話による対応方法、(2)子どもの保護後、保護者からの強引な引き取り要求に対する対応方法についてロールプレイを交えて具体的な対応を体験する機会を設定している。
 参加した市町村職員からは「顔が見えない一般住民から虐待の状況を聴取するむずかしさ」や「子どもの安全確保を最優先し保護したことを保護者に説明し理解を得ることの困難性」を演技の中で実体験し非常に有意義であったとの感想が寄せられたとのことである。
(移動総合相談)
   移動総合相談は、児童相談所が現地に出向き、主に市町村で抱える支援困難事例ケースについて相談・判定を行い、その際に市町村職員が同席し、実地に相談に参加してもらい、技術的対応のノウハウを伝えることで、職員の相談技術の向上に加え、関係機関の役割や相互の連携など要保護児童対策地域協議会の必要性や重要性の認識に役立っている。

 三重県では、市町村の保健師、保育士等を対象とした、児童福祉法施行令第6条に規定する「指定講習会」を開催し、7月から10月にかけて年8回、延べ60名が参加して、40名が児童福祉司任用資格を取得した。

 埼玉県では、平成16年改正児童福祉法を受け、市町村職員と県職員による「児童相談のあり方検討委員会」を設置し、「市町村児童相談対応の指針」(平成16年12月)を作成した。平成16年度末には、指針をテキストに市町村担当職員の研修を実施している。また平成17年度は児童相談所管内ごとに年間10回の研修会を開催し、事例検討や相談の実際について、ロールプレイ等を取り入れた研修を行っている。平成18年度は市町村から児童相談所に長期派遣研修(6ヶ月〜1年)を受け入れている。(18年度は3市から4名)

 市町村の取組や意識には相当のばらつきがあることから、個々の市町村の力量に応じ、当面は、市町村において対応が困難と判断した事例については、積極的に児童相談所が対応する姿勢が必要である。

 事例の当初の振り分けは、高い専門性を必要とし、その後の援助にも大きく関わることから非常に重要である。これについては、市町村における事例への主体的関わりを維持しつつ、児童相談所が積極的に事例の見立てや進行管理などの支援を行うことが必要である。

 児童相談所と市町村を始めとする関係機関との連携をうまく機能させるためには、共通のアセスメントシートを作成するなど各機関が同じような枠組みでアセスメントや援助方針の作成を行うことが必要である。

<実践例>
 千葉県では、平成17年3月に作成した「市町村子ども虐待防止ネットワーク対応マニュアル」の中で、市町村と関係機関が共通の認識の下で、子どもや家庭の見立てや必要な援助を具体的に検討する際に使用する「子ども虐待対応判断のフローチャート」及び「地域ネットワークにおける事例検討のためのアセスメントシート」を示し、各関係機関の対応に差が生じないよう、その活用を促している。

 市町村における相談体制の整備や要保護児童対策地域協議会(虐待防止ネットワ−ク)の設置について、児童相談所長など都道府県が中心となって、管内各市町村の首長に働きかけを行っている例もある。こうした働きかけ、特に自治体のトップに対し、理解を求めていくことも有効と考えられる。

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