3 | 児童相談所と関係機関・専門職種との連携強化 |
○ | 児童虐待事例を始めとする複雑な問題を抱える事例に適切に対応していくためには、関係機関・専門職種との連携強化が不可欠である。しかしながら様々な形でネットワ−クは形成されているものの、援助の基本方針の違いなど、必ずしも相互理解に基づく有機的な連携が十分に図られているとは言いがたい状況にある。今後、相互理解に基づく実質的な連携確保をいかに形成していくかが課題である。 |
○ | 地域における関係機関の有機的な連携を促進するため、平成16年改正児童福祉法により、要保護児童対策地域協議会が設けられたところである。今後、市町村において、この要保護児童対策地域協議会の設置促進、及びその活用が図られる必要がある。 |
○ | 以下の関係機関・専門職種との連携については、児童相談所との直接的な連携とともに、市町村を中核とした同協議会を通じた連携強化が図られることも期待されている。児童相談所はそうした市町村を中核とした関係機関の協議会の構築に向けた環境づくりについて積極的に支援していくことが求められる。 |
(1) | 医療機関 |
○ | 医療機関は、産科においては妊娠産褥期におけるハイリスク者の発見、産科・小児科においては親への養育支援、診療を通じて虐待が疑われる事例の発見など、その役割はきわめて大きい。 |
○ | 例えば、虐待が疑われる事例の判断において、医学的診断は極めて重要であるが、虐待の確定診断を下すためには、家族背景なども含めた総合的判断が不可欠である。こうした点からも、しっかりとした連携体制を構築することが必要である。 |
<実践例>
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○ | 医療機関からの虐待の通告については、ためらいが見受けられる事例も報告されている。特に、開業医などの場合、通告者が特定されてしまうことなどの問題が指摘されている。こうした課題に対し、例えば、広島県の「子ども虐待等の相談・診療に関する協力基幹病院」などの先進的な取組も参考にしながら、それぞれの地域において医療機関とのスム−ズな連携を可能にするようなシステムづくりが期待される。 |
<実践例>
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○ | 先駆的な医療機関においては、様々な診療科や多様な専門職種による児童虐待予防と治療のための院内チームを構築し、協議とアセスメントの手順を定めて対応しているところもある。現時点ではこうした体制を構築している医療機関は数少ないが、養育支援や虐待対応には複眼的な視点での判断を要し、地域の関係機関とのつながりを確保しながら対応していく必要性があることを考慮すると、こうした取組をさらに進める必要がある。 |
○ | これらの業務には多くの時間と人手を要することも事実であり、これを支援するため、診療報酬上の評価などについて検討すべきである。 |
<実践例>
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○ | 国においては、医療機関における虐待事例の具体的取り扱いについての詳細なマニュアルをつくり、示していくことも必要である。 |
(2) | 弁護士、弁護士会 |
○ | 弁護士、弁護士会は法的な観点からの判断をバックアップする存在として、少なくともサポ−トを得られる体制を構築する必要がある。弁護士、弁護士会との連携は、進みつつある。とりわけ一部の地域では相当程度連携が図られてきているが、地域によっては児童家庭福祉に関心のある弁護士が限られているなど、全国的な協力システムづくりが課題である。 |
<実践例>
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(3) | 保健所、市町村保健センタ− |
○ | 市町村保健センター等の保健師は、母子健康手帳交付時、新生児訪問、乳幼児健康診査等母子保健事業の場で周産期・出生時から親子に向き合う機会も多い。これを活かし、児童虐待のリスクの高い家庭への支援などを行う過程で児童相談所や保健所等の保健師と連携を深めることにより、児童虐待の発生予防、早期発見が期待される。 |
<実践例>
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○ | 保健所等の保健師は精神保健相談に応じるとともに、精神科等の医療機関との日常的な連携体制を構築していることから、児童相談所との連携を深めることにより、虐待を行った家族等への支援の一端を担うことが期待される。さらに、市町村保健師への情報提供等を含めた、指導、支援も期待されるところである。なお、こうした精神保健分野の問題については、各都道府県におかれた精神保健福祉センターの活用も期待される。 |
(4) | 児童家庭支援センタ− |
○ | 児童家庭支援センタ−は、児童相談所からの指導委託を受けて、事例に対応することができる機関である。しかしながら現状では、全国51か所と絶対数が少ないこともあり、活動が地域に限定されがちであるなど、十分な活用が図られているとは必ずしも言いがたい状況にある。 |
○ | 市町村が児童家庭相談の第一義的な相談機能を担うこととなったことも踏まえ、今後は、センターの相談・支援機能の一層の充実を図るべく、夜間対応など24時間相談体制を強化するとともに、心理療法担当職員等による個別心理療法・グループワークや子育て支援セミナー等の地域支援事業をさらに充実していくことが期待される。また、本体施設のトワイライトステイ・一時保護・ショートステイ等を積極的に活用するなど、児童福祉施設に付置される機関としての特性を十分に活かした包括的で継続的な相談・支援活動の展開が期待される。児童家庭相談に関する市町村との役割・位置付け等については、さらに検討を深めることが必要である。 |
<実践例>
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(5) | 里親、児童福祉施設 |
○ | 里親委託や施設への入所措置を行った子どもについての自立支援計画の見直しについては、多くの児童相談所では、年1〜2回程度の訪問、相談といった対応にとどまっているのが現状である。今後は、子どもの自立支援や家庭復帰支援に向け、児童相談所が積極的に里親や児童福祉施設と連携を図り、本人の意向も踏まえつつ、自立支援計画を適時見直し、自立支援計画に基づく支援を行っていくことが必要である。 |
○ | 特に、里親については、児童相談所から指導担当者を定期的かつ継続的に訪問させることなどにより、委託した子どもの養育について必要な助言・指導を行う機能を強化することはもとより、里親が困難に直面した場合の養育相談や里親養育をサポートする者の派遣、レスパイト・ケアなど里親自身への支援の充実が望まれる。 |
(6) | 学校、教育委員会 |
○ | 学校の教職員には、虐待の早期発見に努めることが特に期待されており、児童相談所等への通告についての意識を高めることが必要である。また、学校の教職員においては、虐待の通告にとどまらず、他機関とともに、虐待を受けた子ども等への支援を連携して行うことが必要である。 |
<実践例>
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(7) | 警察 |
○ | 立入調査や緊急対応を要する事例などについては、警察との積極的な連携が重要であることはいうまでもない。しかしながら、福祉と警察では、事例のとらえ方や視点が異なる面があることから、例えば、非行事例の調査などにおいて、どこまでを警察が対応し、どこまでを児童相談所が対応するのか、といったガイドライン的なものを検討するなど、その線引きについては、十分に議論を深めることが必要である。 |
(8) | 家庭裁判所 |
○ | 家庭裁判所は、児童相談所と家族を平等に扱い、公平な判断を下す機関であるが、家庭裁判所及び児童相談所における一般的な児童虐待事例の取扱いの実情について定期的かつ積極的に情報交換するほか、児童福祉法第28条第1項、第2項の申立について、必要であれば、申立の前後を問わず積極的に意見交換を行うことが重要である。 |
(9) | 児童委員・主任児童委員 |
○ | 児童委員・主任児童委員については、虐待の通告事例における周辺調査や在宅支援事例における見守りなどで一定の役割を担っている。しかしながら、近年、家族をめぐる問題の複雑化や地域のつながりの希薄化などに伴い、地域でもっとも身近な関係者としての、期待と役割はますます大きくなってきており、研修の充実等を通じた積極的な連携・活用が望まれる。 |
○ | 児童相談所の地域担当と児童委員・主任児童委員が日常的な情報交換を行うことのできる関係になることにより、地域の関係機関や住民から相談される存在になることも重要である。 |
(10) | 民間(NPO)団体 |
○ | 各地において、民間(NPO)団体のそれぞれの特性を活かした様々な連携の取組が進められている。今後とも、より一層の連携の強化が望まれるが、虐待防止のための電話相談などを行っている、いわゆる児童虐待防止の民間ネットワークのほか、つどいの広場事業など親子や親同士の交流、一時預かりなどの子育て支援事業を実施しているNPO団体なども含めた幅広い団体との効果的・具体的な連携が期待される。 |
<実践例>
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(11) | 都道府県児童福祉審議会 |
○ | 平成9年改正児童福祉法により、児童相談所における子どもの権利擁護機能を強化し、援助決定の客観性の確保と専門性の向上を図るため、都道府県児童福祉審議会の意見聴取規定が盛り込まれており、援助決定の客観性・透明性の確保には一定程度、効果を発揮している。 |
○ | 都道府県児童福祉審議会は児童家庭相談に関心・見識を持つ委員から構成されていることが通例であることから、委員に医師や弁護士を含めて構成し、定例的に開催するなど、児童福祉法第28条措置に関する意見等を聞くだけにとどまらず児童相談所をバックアップする機関として活用することも各都道府県において検討すべきである。 |
<実践例>
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