臨床研究に関する倫理指針の
概要について


(平成18年4月)
厚生労働省



臨床研究に関する倫理指針(個人情報保護法に係る改正前)の概要

1.  目的
 医学系研究の推進を図る上での臨床研究の重要性を踏まえつつ、個人の尊厳並びに人権の尊重その他の倫理的及び科学的観点から、臨床研究に携わるすべての関係者が遵守すべき事項等を定めることにより、社会の理解と協力を得て、臨床研究の適正な推進が図られること。

2.  適用範囲
 疾病の予防、診断及び治療方法の改善、疾病原因及び病態の理解の向上並びに患者の生活の質の向上を目的として実施させる医学系研究であって、人を対象とするもの(個人を特定できる人由来の材料及び個人を特定できるデータに関する研究を含む。)
 患者本人の診断、治療のみを目的とした医療行為及び他指針等の適用範囲に含まれる研究は除く。

3.  内容
 実施研究者等が遵守すべき基本原則を規定
 被験者に対して説明し、同意を得ること。
 被験者の個人情報の保護に配慮すること。
 倫理審査委員会において、臨床研究の適否やその継続の審査を実施すること。
 臨床研究機関の長の責務等を規定
 倫理審査委員会を設置し、臨床研究計画の許可等の決定前にその意見を聴くこと。
 倫理審査委員会について、委員会の責務、委員構成、委員の守秘義務等を規定。
 インフォームド・コンセント等について
 被験者によるインフォームド・コンセントを文書で受けること。
 一定条件のもと、代諾者等からインフォームド・コンセントを受けることができること。
 インフォームド・コンセントにおける被験者への説明事項例
 臨床研究への参加は任意であること
 参加に同意しなくても不利益を受けないこと
 参加に同意してもいつでも不利益をうけず撤回できること
 臨床研究の意義、目的、方法及び期間
 参加することにより予測される利益や不利益・危険等
 一定の条件の元、希望により当該臨床研究の資料を入手・閲覧できること
 当該臨床研究に伴う補償の有無及び内容 等

4.  制定期日
 平成15年7月30日



個人情報保護法施行に伴う「臨床研究に関する倫理指針」の改正について

1. 改正経緯
 平成17年4月1日より施行された個人情報保護法において臨床研究など医学系研究は適用除外となっているが、同法律案の国会審議での付帯決議において当該研究における個人情報の取扱いについては、特に適切に取扱いを確保すべき分野とされた。
 これを受けて、平成16年6月から厚生科学審議会科学技術部会に「医学研究における個人情報の取扱いの在り方に関する専門委員会(以下「委員会」という。)」にて、見直しについて検討した。
 最終報告は、平成16年12月24日。これを受け指針を改正。

2. 基本的考え方
 臨床研究において取扱われる情報は、医療情報でもあり、国民から高いレベルでの個人情報の保護が求められている。そのため、個人情報保護法の適用除外分野ではあるが、同法との乖離がないように整理。
 「学問の自由」に配慮しつつ、個人情報保護関連3法及び「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」を踏まえて見直し。
 他の医学研究関連指針との整合性に配慮。
 見直しの対象は、個人情報保護に直接関連する部分のみ。

3. 主な改正点
 前文において個人情報保護法等との適用関係を記述
 研究者等が開示、訂正、削除等の権限を有するものを「保有する個人情報」と定義し、これらの公表、開示、訂正、利用停止等について、個人情報保護法と同等の責務を規定
 利用制限、適正取得、通知、正確性の確保、安全管理措置、第三者提供の制限、苦情処理等に係る研究責任者及び研究者等の責務等を詳細に規定
 安全管理措置、苦情処理等に係る法人の代表者又は行政機関の長の責務を規定

4. 臨床研究における個人情報保護に関する規定の法制化の議論について
 委員会において、医学研究に関するそれぞれの指針について、個人情報を保護するための個別法の必要性について検討。
 個別法の必要性については、指針の遵守に係る実効性や科学の進歩に柔軟に対応できる必要性など、様々な議論があった。
 当面、指針の実効性を確保するための各種の対策、改正後の指針の遵守状況のフォローアップ等を行い、適時、指針の見直しの場を設けることとした。

5. 告示及び通知
 臨床研究に関する倫理指針の全部改正
  平成16年12月28日 告示
  平成17年 4月 1日 施行

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