06/03/29 看護基礎教育の充実に関する検討会第1回議事録 照会先:厚生労働省医政局看護課       岩澤(2599) 柴田(2599)     代表 03−5253−1111     直通 03−3595−2206            第1回 看護基礎教育の充実に関する検討会                     日時 平成18年3月29日(水)                         14:00〜16:00                     場所 経済産業省別館1012会議室                      ○事務局(柴田) ただいまから、第1回看護基礎教育の充実に関する検討会を開催し ます。委員の皆様におかれましては、ご多忙にもかかわらず当検討会にご出席いただき、 誠にありがとうございます。本日、医政局長が国会用務のため欠席となっていますので、 医政担当審議官の岡島より、ご挨拶申し上げます。 ○医政担当審議官(岡島) 医政担当審議官の岡島でございます。ただいまお話がござ いましたように、医政局長が国会用務のために出席することができません。私のほうか ら代わりにご挨拶申し上げます。  本日はご多忙のところ、「看護基礎教育の充実に関する検討会」にご出席いただきまし て、ありがとうございます。また委員の皆様には、平素から厚生労働行政につきまして ご尽力を賜り厚く御礼申し上げます。ご承知のとおり、医療を取り巻く環境が大きく変 化するなか、医療制度は大きな転換期に直面しております。現在、開かれております通 常国会には良質な医療を提供する体制の確立を図るための、医療法等の一部を改正する 法律案を提出しているところでございます。その中で保健師助産師看護師法につきまし ても改正を行っていて、行政処分を受けた保健師・助産師・看護師・准看護師に対する 再教育の義務付け、助産師・看護師・准看護師の名称独占規定、さらには新たな保健師 及び助産師の免許付与について、看護師国家試験合格を条件とするといったことが盛り 込まれているところでございます。  さて、看護基礎教育の指定規則の改正につきましては、前回の改正から10年経過いた しております。この間、看護を取り巻く状況も大きく変化してきております。急性期医 療の充実や在宅医療の推進はもとより、これまで以上に生活習慣病対策や介護予防の推 進が重視され、看護職員にはさまざまな場での役割が期待されています。  しかし、一方では、看護基礎教育終了時の能力と看護現場で求められる能力とに大き なギャップがあり、新人看護職員の多くが医療事故などへの不安を抱えているといった 現状もございます。  このような状況も踏まえながら、委員の皆様におかれましては、本検討会の趣旨をご 理解いただきまして、高い見地から広範なご議論を賜りますよう、お願いしたいと思い ます。この検討会をどうぞよろしくお願いいたします。 ○事務局(柴田) 続きまして看護課長の田村から、委員の皆様及び事務局の紹介をさ せていただきます。 ○田村看護課長 看護課長の田村でございます。よろしくお願いします。委員の皆様に はこのたび、この検討会の開始にあたりまして委員のご依頼をしましたところ、快くお 引き受けいただきまして本当にありがとうございました。私より委員の皆様のご紹介を させていただきます。あいうえお順でさせていただきます。  早稲田大学人間科学学術院助教授の浅田匡委員です。本日は15分ほど遅れていらっし ゃいますが、東札幌病院副院長の石垣靖子委員です。東京大学医学部附属病院看護部長 の榮木実枝委員です。学習院大学経済学部教授の遠藤久夫委員です。佼成看護専門学校 副校長の太田博子委員です。大分県立看護科学大学学長の草間朋子委員です。社団法人 日本看護協会常任理事の菊池令子委員です。NTT東日本関東病院看護部長の坂本すが 委員です。消費生活アドバイザーの坂本憲枝委員です。全国病院事業管理者等協議会会 長、川崎市病院事業管理者の武弘道委員です。社団法人日本病院協会副会長の西澤寛俊 委員です。東京大学大学院医学系研究科教授の村嶋幸代委員です。ジャーナリストの村 田幸子委員です。名古屋大学医学部保健学科教授の山内豊明委員です。  なお、本日お集まりの委員の方々のほかに、社団法人日本医師会常任理事の青木重孝 委員、神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科長の小山眞理子委員、聖路加看護 大学看護学部長の堀内成子委員、国際看護師協会会長、日本学術会議会員の南裕子委員、 この4名の方が本日はご都合がつかずにご欠席となっています。  事務局のご紹介をさせていただきます。先ほどご挨拶を申し上げました医政局審議官 の岡島です。私の左隣は看護課看護職員確保対策官の鎌田です。またこの会議にオブザ ーバーとして、文部科学省医学教育課長にもご出席いただいています。  本検討会の座長について、お諮りしたいと思います。私どもとしまして遠藤久夫委員 にお願いしたいと存じますが、いかがですか。                   (拍手) ○田村看護課長 それでは委員の皆様のご賛同をいただきましたので、遠藤委員に座長 席のほうにお移りいただきたいと思います。一言、ご挨拶いただきまして、以後の議事 進行をよろしくお願いします。 ○座長(遠藤) このたび、本検討会の座長を仰せつかりました学習院大学の遠藤でご ざいます。私は医療経済学を専攻しておりまして、看護教育を必ずしも専門としている わけではございません。しかし、ここの委員の皆様方は、まさに医療、看護のさまざま なエキスパートの方々でいらっしゃいますので、是非、皆様方のご協力を賜りながら、 この検討会を実りあるものにしていきたいと、精いっぱいの努力をするつもりでござい ますので、よろしくお願いします。  早速ですが、会議に先立ちまして、当検討会の議事運営についての若干の約束事を確 認させていただきたいと存じます。まず本検討会は、ご覧になっておわかりになります ように公開で行われています。また発言内容につきましても議事録が公開されるという ことでございます。議事録につきましては事務局でまとめていただいたものを各委員に お目通しいただきまして、その上で配布された資料も含めて、厚生労働省のホームペー ジ上で公表するという形になっています。厚生労働省の他の審議会、委員会は大体この ような形になっていますので、それと同じような形で対応させていただくということを、 ご承知おき いただきたいと思います。  議事に移りたいと思います。資料が配布されていますので、事務局より資料の確認を お願いします。 ○事務局(柴田) お手元に配布させていただいている資料の確認をお願いします。議 事次第、検討会メンバー、座席表、資料1、資料2とあります。資料1は「看護基礎教 育の充実に関する検討会」についてで2頁あります。資料2は看護教育制度等に関する もので35頁あります。そのほか委員のほうには参考資料として、検討会等の概要等につ いて 17頁の資料を配布しています。本日、青木委員から資料が提出されています。乱丁、落 丁がある場合には事務局までお知らせください。 ○座長 ありがとうございます。いかがですか。特に欠落しているものはありませんか。 よろしいですか。  資料1ですが、検討会開催の趣旨について、事務局から説明いただきたいと思います。 ○鎌田看護職員確保対策官 私から資料1のご説明を申し上げます。「看護基礎教育の 充実に関する検討会」について、設置の趣旨等を書いている資料です。                 (資料読み上げ) ○座長 ありがとうございました。いまのご説明につきまして、何かご意見、ご感想が あれば、あるいはご質問があればご自由にどうぞ。よろしいですか。この後に資料の説 明がありますので、その中でご質問いただいても結構ですので先に進ませていただきま す。基本的には、このような趣旨及びスケジュールで進めることにご賛同いただいたと いうことを前提にしまして、それに従って効率よく検討を行っていきたいと思います。 皆様方のご協力のほど、よろしくお願いします。  本日は第1回ということですので、看護教育制度をはじめとした看護基礎教育や新卒 看護職員の現状、それらを取り巻く保健・医療・福祉が、現在、どのようになっている のかということを、事務局から説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○鎌田看護職員確保対策官 引き続き私のほうから資料2を使って、ご説明申し上げま す。いま資料1でご説明した内容についても、この資料で詳しくご説明してまいりたい と思います。  表紙にありますように、看護教育制度の概要、法・制度、現行の教育内容、基礎教育 に関する提言、看護職員の現状などについて順にご説明申し上げます。  1頁ですが、保健師助産師看護師法において、いわゆる看護職員の業務がどうなり、 それを教育するための国家試験がどうなっているかの説明です。ご存知の方も多いかと 思いますが、確認の意味も込めて改めてご説明申し上げます。第二条、第三条、第五条、 第六条においては、それぞれ保健師・助産師・看護師・准看護師について、その業務内 容を規定しています。  第二条で「保健師」においては、2行目の後半ですが、保健指導に従事することを業 とする者となっています。「助産師」については第三条で、2行目ですが、助産又は妊婦 褥婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子と書かれています。「看護師」 については第五条で、2行目、傷病者若しくは褥婦に対する療養上の世話又は診療の補 助を行うことを業とする者をいうとされています。第六条は「准看護師」で、2行目で すが、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業 とする者としています。  第十九条以下は、それぞれ国家試験がありますので、国家試験の資格についての規定 です。それぞれの国家試験に合格した者が、その者の申請により、それぞれの看護師籍 等に登録したことをもって免許を付与する規定になっています。  第十九条は保健師の国家試験について規定しています。保健師の国家試験は、1行目 にあるとおり、看護師国家試験に合格した者又は第二十一条各号のいずれかに該当する 者であって、かつ、次の各号のいずれかに該当するものでなければ、これを受けること ができないとされています。ここに、看護師の国家試験を受験する資格の者であって、 かつ、この各号に列記するものに該当する者が、保健師の国家試験を受けるとなってい ます。それは第一号にありますように、文部科学省令・厚生労働省令に定める基準に適 合するもので、文部科学大臣の指定した学校において六月以上、保健師になるのに必要 な学科を修めた者とあります。わかりやすく申し上げれば、看護師に必要な勉強をした 後に6カ月以上、実際には1年ですけれども、1年程度勉強した方ということになって います。第一号は文部大臣の指定した学校です。第二号において、同じく文部科学省令・ 厚生労働省令に定める基準に適合するものとあって、厚生労働大臣の指定した保健師養 成所を卒業した者となっています。2頁の冒頭ですが、これは外国で勉強された方、あ るいは外国の保健師免許を受けた方などの受験の規定です。   第二十条は助産師です。これは保健師と同じ構造ですので説明は省略します。第二十 一条の看護師試験ですが、看護師試験は次の各号のいずれかに該当する者としています。 第一号は文部科学省令・厚生労働省令で定める基準に適合するものとして、文部科学大 臣の指定した学校において三年以上、看護師に必要な学科を修めた者です。第二号は、 同じような構造で厚生労働大臣の指定した看護師養成所を卒業した者となっています。 第三号は、次の二十二条で説明しますが、准看護師の方の規定です。准看護師で免許を 受けた後、三年以上業務に従事した者、または略して言えば、高校を卒業した准看護師 で二年以上勉強した者も看護師の試験を受けられるとなっています。  3頁で第二十二条が准看護師の試験です。第一号が、基準に適合した学校で、文部大 臣の指定した学校において二年の看護に関する学科を修めた者です。第二号は、准看護 師は都道府県の免許ですので、都道府県知事の指定した准看護師養成所を卒業した者と なっています。  4頁をご覧ください。いま法律でご説明したことが実際にどんな感じになっているか ということで、いちばん左ですが、看護師については高校を卒業した方が看護師学校又 は養成所で3年勉強して国家試験を受けられます。助産師や保健師になる場合には、法 律上は先ほど申し上げたように6カ月以上ですが、実際上は1年養成所などに行きます。 最近は大学も増えていますので、大学の場合は4年間在籍して看護師の国家試験を受け たり、助産師や保健師の国家試験を受ける形になっています。  右側が准看護師の場合です。中学校卒業の方で、2年課程の准看護師養成所に行き、 都道府県知事の試験を受けて准看護師になり、先ほど申し上げたように、また看護師の 学校・養成所で2年教育を受ければ、看護師への道が開けることとなっています。  中ほどで、高校・高校専攻科・一貫教育校5年ですが、下の注4にありますように、 これは平成14年4月に始まったものです。中学校を卒業した方がこの一貫校で5年の教 育を受ければ、看護師の国家試験を受けられるという形になっています。  5頁をご覧ください。そうした看護師学校養成所の施設なり定員がどうなっているか 数字でご説明します。グラフはまた後で出てきます。平成17年をご覧いただきたいので すが、保健師の大学なり養成所が173あり、1学年定員が11,000人強あります。助産師 については次の頁で説明します。看護師については3年課程と2年課程で、先ほど申し 上げた一貫教育も含めてですが、合計の欄で学校数では1,093校あり、定員で52,471 人となっています。准看護師については295校あり、14,000人となっています。  6頁をご覧ください。これは助産師です。前の頁は定員数についてですが、助産師の 受験者数を示しています。その理由は、この表の真ん中の欄に大学助産師選択とありま す。大学については保健師のコースは必修ですが、助産師については選択ですので、必 ずしも定員と選択している方が一致しませんので、わかりやすく受験者数で表わしてい るために、助産師について別にしました。助産師については平成18年の直近で120校あ り、今年の受験者数が1,590人いました。  こうした推移をグラフで見たのが7頁、8頁で、7頁が養成所施設数の推移です。基 本的に看護師、保健師、助産師ともに養成所施設数が増えています。緑が看護師ですが、 特に平成4年に「看護師等の人材確保の促進に関する法律」、いわゆる我々の間で人確法 と申し上げていますが、そういったことで看護師の養成をすることに力を入れたことも あって伸びています。下の保健師、助産師も増えていますが、特に近年は大学が増加し ています。一方、准看護師については昭和40年以降、長期的な減少傾向にあり、特に近 年はその減少の度合いが大きくなっているのが特徴です。  7頁が学校養成所の数でしたが、8頁で定員をご覧いただくと基本的には同じ傾向で、 看護師、保健師、助産師は増えているところです。准看護師については近年、減り方の 度合いが大きくなっているところです。これが今の看護職の教育制度の現状です。  9頁は、先ほど検討会設置の趣旨で申し上げた看護を取り巻く状況について、わかり やすくまとめたものです。平成9年以降の大きな法律や制度の改正について名前をピッ クアップしていますが、直近のカリキュラムの改正が平成8年でしたので、その後、こ ういった状況の変化があるということで書いているところです。  例えば、平成9年に臓器移植に関する法律が出たり、感染症法が平成10年に改正され、 さらに平成15年には感染症法及び検疫法が改正されて、新しい疾病なり新しい医療への 展開が進んでいます。平成9年に介護保険法があり、平成17年には介護保険法が改正さ れて予防重視型へ進んでいくなど、そういった分野での看護の仕事の広がりもあります。 さらにエンゼルプランなり健やか親子21という形で、周産期医療あるいは母子保健と いうのも進んでいますし、特に平成12年における健康日本21、平成14年の健康増進 法、健康フロンティア戦略など、健康づくり、生活習慣病対策ということも大きく制度 的には進んでいることが、この表からもうかがえるかと思います。  10頁をご覧ください。最近の制度改正なりがどういった内容かを申し上げると、保健 の分野では、(1)の健康フロンティア戦略などで生活習慣病対策が言われていますし、 (2)の健やか親子21の政策では母子保健の国民運動として、妊娠・出産に関する安 全の確保なども言われています。(3)は今回、法律として出している健康保険法改正で すが、生活習慣病対策として保険者による保健指導の義務づけに力を入れているところ です。  医療の分野では、同じく今国会に医療法の改正を出していますが、患者の視点に立っ た安全・安心の医療ということで、急性期医療の整備充実として(1)にある医療の選 択として情報を提供するとか、(2)の医療機能の分化・連携の推進、(3)の医療安全 対策等の推進、(4)の平均在院日数の短縮など、これらも大きく看護の業務に影響して いくのではないかと考えられます。  11頁で、さらに在宅医療の推進ということも言われていて、いわば働く場が広がるだ けでなく、(4)にあるような重度の在宅療養者を支援するための体制もあるでしょうし、 (5)の終末期ケアというのもある。さらに3.にあるように今回、療養病床の再編成 も言われていますので、大きくまた働く場所が変わっていくことも想像されるところで す。  福祉の分野では、先ほどもあったような介護保険制度の改正にあるような予防重視型 システムへの転換、さらに障害者自立支援法などでの地域での障害者の支援、児童虐待 への対応、精神障害者への在宅での対応も増えているところです。こうしたことが最近 の状況です。  12頁で、先ほど来説明しているカリキュラム改正が平成8年にありましたが、それ以 外にも若干改正しています。先ほどの法律のところで文部科学省令・厚生労働省令で定 めるというのがありますが、指定規則とあり、平成8年には保健師・助産師・看護師3 年課程の教育課程について、いちばん最初の*にあるように、「在宅看護論」「精神看護 学」を新設しましたし、「時間数」から「単位制」規定に変更して、進学への対応という こともなされています。さらに大綱化ということで「教育科目」を「教育内容」に表記 を改めたり、下から2番目の*にあるとおり、「臨床実習」から「臨地実習」に改めて、 病院以外でのあらゆる場での実習を推進ということで、看護を取り巻く状況の変化への 対応を進めているところです。  その後、平成10年には看護師の2年課程についても、3年課程の教育課程に合わせる 形の改正を行い、平成11年には准看護師の養成所についても教育内容の充実なり、教育 体制の充実を行いました。平成11年には先ほど申し上げた5年一貫校を実施して、平成 14年4月から施行され、直近の平成15年3月、通信制の2年課程を創設したところで す。  13頁をご覧ください。この養成所指定規則というのは、上にありますように昭和26 年にできたもので、文部省・厚生省令となっていますが、先ほど法律のところで申し上 げた文部科学省令、厚生労働省令の定める基準となっているところで、これは何を定め るかというと、保健師・助産師・看護師などの学校について、入学又は入試の資格、修 業年限、教育内容などを定めるところです。保健師について第2条にありますように、 入学又は入試の資格は先ほど申し上げた法第21条に該当するものとして、修業年限は6 月以上であることとし、教育内容というのが別表1で後で説明します。第4項にあるよ うに、別表1に掲げる教育内容を教授する適当な教員を有することが定められています。 助産師が 第3条で、第4条が看護師です。看護師は第4条第2項にあるとおり修業年 限が3年以上となっています。  飛ばして16頁をご覧ください。これが別表1で保健師の教育内容です。先ほど「教育 科目」から「教育内容」に変更したと説明しましたが、わかりやすく言えば、例えば地 域看護学に関する教育について12単位となっていて、備考1にありますが、その単位に ついては大学設置基準の規定によるということで、大体1単位45時間が標準となってい ます。  17頁が同じく助産師の教育内容です。18頁の別表3が看護師です。看護師になると教 育内容として単なる項目だけでなく、基礎分野、専門基礎分野、専門分野という分類が あって、それぞれの教育内容が定められています。20頁が准看護師です。私からは以上 です。 ○岩澤補佐 続きまして21頁をお開きください。今年の2月に行われた国家試験の合 格発表が昨日ございました。保健師国家試験第92回分につきましては、10,395人が受 験し、合格率が78.7%でした。大学、短期大学専攻科、養成所別の新卒、既卒別合格率 は表のとおりです。助産師国家試験第89回は1,600人が受験し、合格率98.1%でした。 養成課程は区分のところにありますように、大学院、大学専攻科から今年初めての受験 者が出ています。看護師国家試験第95回は48,914人が受験し、合格率は88.3%でした。 3年課程、2年課程、それぞれ新卒、既卒者の合格率は表のとおりです。いずれの国家 試験も既卒者は合格率が5割程度の結果になっています。  22頁をお開きください。最近の主な検討会等で看護基礎教育に関して提言がありまし た。その抜粋をご紹介したいと思います。平成15年3月にまとめられた「新たな看護の あり方に関する検討会報告書」では、患者の生活の質の向上のための専門性の高い看護 判断と、看護技術の提供に向けた看護を提供するために、看護師等の判断力や責任能力 を向上するとともに、豊かな人間性や人権を尊重する意識の涵養(かんよう)、コミュニケーション 能力の向上が求められており、看護師等の養成のあり方についての様々な課題に取り組 んでいく必要がある。また、看護師等として学ぶべき知識・技術の増大とあわせて、資 質の向上が求められていることから、看護基礎教育の内容を充実するとともに、大学教 育の拡大など、看護基礎教育の期間を延長していくことも検討していく必要がある、と されました。  平成15年3月には、「看護基礎教育における技術教育のあり方に関する検討会の報告 書」がまとめられています。ここでは技術教育の現状と課題についてまとめられ、最近、 看護師になるための学習途上にある学生が行う看護技術実習の範囲や機会が、臨床看護 の場で限定されてきているという状況があります。そのような中で看護師学校養成所で は、技術に関する教育の内容や卒業時点での到達目標が、個々の学校・養成所ごとにか なり異なってきており、卒業直後の技術能力にも格差が生じているという実情がありま す。  また、卒業直後の看護師の技術能力と臨床現場が期待している能力との間の乖離が大 きくなっており、安全で適切な看護・医療の提供への影響も懸念されてきているという 現状があります。  そのような中で、臨地実習において学生が行う基本的な看護技術の考え方として、委 員の皆様には参考資料をお渡ししています。参考資料の6頁、7頁に、臨地実習におい て看護学生が行う基本的な看護技術の3つの水準を挙げています。1つ目の水準は、教 員や看護師の助言・指導によって学生が単独で実施できるもの、2つ目の水準は、教員 や看護師の指導・監視のもとで学生が実施できるもの、3つ目の水準は、学生は原則と して看護師・医師の実習を見学するということで、13の技術項目について、その水準ご とに細かく示しているのがこの報告書です。  平成15年8月には、「医療提供体制の改革のビジョン」が発表されました。その中の 医療を担う人材の確保と資質の向上の項目の中で、看護師について述べています。看護 師等の卒前の技術教育が適切に推進できるよう、臨地実習の実施のための条件整備を行 い、その定着を図る。さらに、看護基礎教育の内容を充実するとともに、大学教育の拡 大など、看護基礎教育の期間の延長や卒後の臨床研修のあり方について制度化を含めた 検討を行う、とまとめています。  24頁をお開きください。平成16年3月には、「新人看護職員の臨床実践能力の向上に 関する検討会報告書」がまとめられました。この中で看護基礎教育の課題とこれまでの 取組みということで、指導要領、これは局長通知ですけれども、ここでは細部まで規定 しておらず、看護基礎教育卒業時の看護実践能力の具体的な到達目標は、各学校養成所 が設定しているため、看護技術の到達度には差異が生じていると指摘されています。  また、基礎教育では医療機関における医療安全管理体制の強化や、患者及び家族の意 識の変化等により、従来、患者を対象として実施されてきた看護技術の訓練の範囲や機 会が限定される傾向にある、という現状があります。  また、基礎教育での臨地実習の現状としては、多くの学校・養成所で臨地実習でとら れている教育方法は、学生が一人の患者を受け持ち、患者及び家族と関わりながら、看 護ニーズを判断し、看護ケアを計画、実践し、評価するものです。そのため、チームメ ンバーの一員として、臨床現場の多重課題の優先度を考えながら時間内に業務を実施す るなどの能力を、基礎教育の中で身につけることは極めて困難な現状があります。  そのような中で、基礎教育で今後、臨床実践能力の向上に向けた教育の強化と教育期 間の延長などの課題が指摘されています。  25頁ですが、平成17年11月、「医療安全の確保に向けた保健師助産師看護師法等の あり方に関する検討会まとめ」の中において、個別の論点の1つである新人看護職員研 修の論点の中で言われていることですが、新人看護職員の能力や技術は、現在の学校・ 養成所のあり方やカリキュラムと大きく関係している。技術教育の強化、臨床実習の条 件整備だけでなく、医療安全の観点から、併行して基礎教育を充実させることも課題で ある、としています。  昨年12月、「第六次看護職員需給見通しに関する検討会報告書」がまとめられました。 この中で看護職員確保対策について、需給見通しでは新卒就業者数は微増となっている が、今後、少子社会が続くことをふまえると、看護師学校養成所における学生を確保す ることが重要であり、啓発・普及などにより看護の魅力や重要性を積極的に若年層に伝 える必要がある。また、新人看護職員の離職が多いことが指摘されており、離職を防止 し定着を図る観点から、基礎教育の充実及び新人看護職員研修のあり方について検討す る必要が  ある、としています。  26頁ですが、養成所を卒業した新卒看護職員の進路で、昨年春のデータです。卒業生 を出した学校は1,439校で、60,553人が卒業しました。そのうち看護職員として就職し たのは、合計欄にあるように49,331人です。その92%が病院に、5%が診療所に就職し ています。看護職員以外の進路として欄外に書いていますが、進学が6,605人で、これ は准看護師学校養成所を卒業して、看護師2年課程に進学する方がほとんどです。新卒 看護職員の多くは病院に看護職員として就職している現状にあります。  27頁は、その方たちが病院に就職したときの状況についての説明で、就職時の「看護 基本技術」の習得状況を、日本看護協会において調査した結果です。調査結果は134施 設の新卒看護師2,110人が回答しています。表1では、新卒看護師が入職した4月時点 で一人でできる項目として、全部で103項目を問うたのですが、入職時に70%以上の看 護師が一人でできるとした項目は103項目中4項目でした。基本的なベッドメーキング、 基本的なリネン交換、呼吸、脈拍、体温、血圧の測定、身長・体重の測定です。  28頁は、新卒看護職員に期待する「看護基本技術」として103項目ありますが、看護 基礎教育でどのような経験をしているかを、一部抜粋したものです。28頁、29頁に103 項目並んでいますが、基礎教育での臨地実習で、「実施見学をしたことがない」と答えた 者が50%以上いた項目を挙げています。ストーマケア、松葉杖歩行についての指導、次 の頁にある与薬の技術、救命救急処置技術、症状・生体機能管理技術、検査に関する項 目については、50%以上の新卒者が、基礎教育では実施も見学もしたことがない項目と して挙げていました。  このような状況の中で、30頁は新卒看護職員の早期離職を調べた結果です。これも日 本看護協会で実施した調査ですが、200床以上の病院に調査して、1,219施設から回答を いただいています。2003年度に新卒採用者が離職した数ですが、1年以内に離職した離 職率を右下の全体のところに書いていて8.8%でした。12人に1人です。この1年以内 の離職が増えているかどうかについては、「増加する傾向にある」とした施設が18.7%、 「特に変わらない」とした施設が67.6%でした。  新卒者の職場定着を困難にしている要因が表3です。病院と学校に聞いていて、いず れも最も多い要因として挙げたのが、「基礎教育終了時点の能力と看護現場で求める能力 とのギャップ」でした。2つ目は「現代の若者の精神的な未熟さや弱さ」、3つ目は「従 来より高い能力が求められるようになってきている」で、これらが職場定着を困難にし ている要因として挙げられていました。  31頁をお開きください。これは新卒看護師1,002名の回答ですが、看護職になって仕 事を続ける上で悩みとなったことを複数回答で多い順に並べています。一番の悩みは「配 属部署の専門的な知識・技術が不足している」で77%、「医療事故を起こさないか不安 である」が69.4%、「基本的な看護技術が身についていない」が67.1%等でした。  また、辞めないで継続している人たちで、仕事を辞めたいと思った理由の1番目は、 「看護職に向いていないのではないかと思う」、2番目に「医療事故を起こさないか不安 である」、「ヒヤリ・ハットレポートを書いた」ことも辞めたいと思った理由として挙げ ています。  32頁の表6は、新卒看護職員がもっと受けたかった教育・研修で、65.3%の人が「薬 に関する知識教育」を挙げ、2つ目に「専門的に必要とされる技術等」、3つ目に「医行 為の実技教育」を挙げていました。  33頁で、この調査で出てきた医療事故やヒヤリ・ハットの調査について、次に説明し ます。1つ目は医療事故情報についてです。283施設で得られた結果ですが、医療事故 が平成17年の1年間に1,114件報告されています。当事者の職種としては、看護職の助 産師、看護師、准看護師が関係しているのが40.37%を占めていました。そのうち看護 師の経験年数が3年未満の者が38.5%ありました。この当事者の職種、看護師の経験年 数は、3カ月間に報告された事故275件の内訳です。これが医療事故です。  34頁はヒヤリ・ハット事例です。これは平成17年1月から6月末までの6カ月間で 報告された90,990件の分析です。ヒヤリ・ハットが発生した場面として最も多かったの が「処方・与薬」の場面です。次に多いのが「ドレーン・チューブ類の使用・管理」で す。このヒヤリ・ハット事例を書いた当事者の職種ですが、看護職の助産師、看護師、 准看護師が書いたものが83.0%を占めていました。また当事者の経験ですが、これは表 5にある全職種の経験年数で、3年未満の者が約30%を占めています。  35頁に示している表は、医療過誤による行政処分のうち経験3年未満の事例について 10事例挙げています。看護師経験2カ月で塩化カリウムの注射液の注入ミスなど、患者 が傷害あるいは致死に至った事故で、看護師経験が短い人たちも行政処分を受けている と  いう実態です。説明は以上です。 ○座長 長い内容、ありがとうございました。いま、資料を説明していただいたわけで すが、この資料の内容についてご質問、あるいは資料の内容に関連する事項でご意見等 が  ありましたら承りたいと思います。どなたでも結構ですので、挙手をお願いした いと思います。 ○菊池委員 今回の資料に対する質問ということではないのですが、これから看護基礎  教育の充実に関する検討をするというところで、今回のいろいろな資料の中にはまだ入 ってきていませんけれども、FTAなどの関係で国際的な看護師の移動ということもあ ります。そういう観点から参考にするということで、アジアなどのFTAの対象となっ ている、インドネシア、フィリピンの看護の基礎教育はどういう状況になっているかの 資料も、次回にでも少し準備していただけるとありがたいと思います。 ○座長 そのようなご要望ですが、事務局は対応をご検討いただけますか。 ○鎌田看護職員確保対策官 対応はいたします。ご存じの方もいらっしゃると思います が、ほかの先生方のために状況を申し上げますと、いま菊池委員からありましたように、 FTA(自由貿易協定)や、EPA(経済連携協定)という形で、二国間の経済協力に 関する話合いができているわけです。その中で人の移動ということも国際協力、あるい は我が国の経済発展に寄与するのではないかということで、議論に上がっています。  具体的には、フィリピン、インドネシアの両国から、フィリピンの看護師あるいはイ ンドネシアの看護師について、日本で働けるようにしてくれないかというお話がありま す。それについては次回、資料等で詳しくご説明します。そのときに、先ほどの法律の ところにもありましたように、いまでも外国で教育を受けた方、あるいは外国の看護師 免許を持った方について、我が国の国家試験の受験を認めているわけです。そのときに 大切なのは、医療の質あるいは医療安全の確保ですので、我が国と同等の教育水準と認 められる場合に受験を認めるということもあります。そういう中で、いま菊池委員は、 それでは今後、議論となっているフィリピン、インドネシアについて、どういった教育 状況にあるのかというご指摘かと思いますので、そういったことについて次回ご説明し たいと思います。 ○座長 ありがとうございます。それでは、そのようによろしくお願いします。 ○武委員 資料の中で新卒看護職員の早期離脱の状況というのがありますが、200床以 上ということでひとまとめにして、看護協会は統計を出されていますけれども、これを 200床から400床、400床以上とか、もっと分けると実態が浮き出てくると思います。私 は大きいほうに早期離脱が多く、この数よりずっと多いと判断しているのですが、もし それがありましたら教えてください。 ○鎌田看護職員確保対策官 詳しい資料がありますので、改めてお示しします。 ○武委員 次回でもいいです。ひとまとめでなくて、病床の大きさごとに事情が違うと 思います。 ○座長 それは次回にご提出いただくということで、よろしくお願いします。ほかにご 質問はございますか。 ○村田委員 いまのと関連するのですが、新人看護職員の離職が多いことが指摘されて いると検討会報告にもあります。なぜ新人さんがそんなにいっぱい離職してしまうのか、 そのあたりの理由をお聞かせいただけたらと思います。 ○座長 これは事務局に対する質問ということですね。事務局、わかっている範囲、推 測の範囲で結構ですが、どのようなことが考えられますか。 ○鎌田看護職員確保対策官 我々もいろいろ推測はできるのですが、あまり推測が過ぎ るとかえって変な議論を巻き起こしますので、確たるご説明できるものとしては30頁の 表です。表3にある理由で、基礎教育終了時点の能力と看護現場の求める能力のギャッ プ、つまり、その前の資料でもご説明しましたが、例えば28頁とか29頁にありますよ うに、看護基礎教育の中の臨地実習で、例えば29頁に与薬の技術があります。ほとんど の項目において半数以上の学生が、実施したこともないし見学したこともない。基礎教 育の中でそういうことがされていないが故に、現場で実際に与薬の場面に入ると、何を したらいいのだろうかと非常に戸惑ってしまう。したがって、35頁の最後の医療事故の ところで、経験年数が2カ月しかない看護師が塩化カリウムの注射液を注入するように 指示されたのですが、それが原因で傷害あるいは致死に至ったという例があります。そ ういったことを身近に多く経験していることが、1つの大きな要因として挙げられると いうのが、この30頁から言えるのではないかと思っています。 ○座長 おそらく、いまの議論は事務局だけでなく、実際に看護領域でご活躍されてい る委員の方々からのご意見も聞くべきだと思いますので、それに関連してでしょうか。 菊池委員、どうぞ。 ○菊池委員 いまの質問に関連して、本会の調査した結果を準備していただいています ので、こちらがどう考えているかということを説明したいと思います。いまので説明と 重なるのですが、30頁の表3にありますように、新卒看護職員の職場定着を困難にして いる 要因として、基礎教育を終了した時点の本人が持っている看護実践能力と、現場 で求める能力とが非常に乖離してきている。ギャップが非常に大きくなっている現状が あります。  その1つの例としては、27頁の調査結果が示していますように、新卒看護師が入職時 に一人でできます、これは自信を持ってできますという看護基本技術が103項目のうち、 4項目しかないということです。新人というのはどの世界でも、最初から一人前にでき るわけではなくて、慣れていく中で獲得していくわけですが、新卒看護師の場合に、27 頁にはそこまでは出ておりませんが、この人たちが3カ月経ったときにも、103項目の うちの68項目は、まだ70%の看護師が1人ではできないという不十分な状態にありま す。  そういう中で3カ月経つと、新卒看護師が一人前の看護師として夜勤に入っていくわ けです。夜勤ですと、1つの勤務帯で2、3人で40〜50人の患者を看るという状態にな っていきますので、1人で動かなければならない、判断しなければならない場面が多く なるわけです。まだ自分の知識や技術に自信がない中で、対応を迫られるという状況が あります。  その結果、31頁にありますように、新卒の看護職員というのは、自分がこの仕事を続 けていくかどうかというときに、特に配属された場所で、今すぐ求められている専門的 な知識・技術が不足していることや、医療事故を起こさないか不安とか、基本的な看護 技術が身についていないとか、実際にヒヤリ・ハットを書いたとかで、本人たちが非常 に悩んでいます。  それが悩みを超えて、本当に辞めようかと思うようになる理由として絞った回答が表 5です。自分は看護職に向いていないのではないかと思うというのが、いちばん上に挙 がっていますが、その下にある医療事故を起こさないか不安とか、ヒヤリ・ハットレポ ートを書いた、勤務時間内に仕事が終わらない、知識・技術が不足しているという不安 を抱えながら仕事をする中で、一人前にできない自分は向いていないのではないか、と 自分を責めて結論づけて辞めようと思っていくという状況があります。そういうことが 新人の早期の離職とも関係していると思います。 ○坂本(す)委員 27頁の看護基本技術の習得状況ですが、例えば病院を急性期病院と して捉えれば、ここに挙がっているものは、これをやれたからどうだということではな く、新人が求められているのは、例えばシリンジポンプの調整や心電図を読める、人工 呼吸器の管理をするなどというところまでを現場は求めるわけです。3カ月ぐらいして 夜勤に 入るときには、こういうことを徹底して教えますので、ここに挙がっている基 本技術は、彼女たちがこれをできてきたとしても、大変現場とは乖離しているところが あります。それが事実なのです。  そうすると、彼女たちがいくら学んできたとしても、入って3カ月経った5月、6月 ぐらいの夜勤に入るまでに、何を学ばなければいけないかと考えたら、高いレベルを求 められるのが現場です。そういう中でギャップで戸惑うのは当然で、大変悩んでいるこ とが多いわけです。研修医のようにローテーションをしながら、ゆっくり学んでいくも のではなくて、一気に彼女たちがリアリティーショックもなく、それを学んでいけるこ と自体が大変不思議な状況に現場はあるわけです。  私どもの病院は600床ぐらいですから、40人ぐらい辞めたとしたら、1つの病棟に2、 3人が入っていき、4月1日には辞めた人の穴埋めとして見習いではなく、1人として やっていきますので、看護技術云々などというレベルではないと思います。大変乖離し ているということを言いたいわけです。  もう1つは、この検討会の到達目標というか、私たちアウトカムを何をするのかとい うことです。看護基礎教育のあり方を、ある意味ではグランドデザイン的にこういうよ うなものがあるのではないかということで、一気に何かはできないとしても、何らかの 形を描けるのか。ここでの意見は、それが一体どうなるのかははっきりさせたいと思い ます。もう少し具体的にアウトカムを、はっきりさせていただかなければいけない、具 体的に何らかの形を出していきたいと思いますので、そこをお聞きしたいと思います。 ○座長 さまざまな方からご意見がありましたが、その件についてはよろしいでしょう か。 ○村田委員 まだまだあると思います。ある程度は理解できますが、基礎教育のあり方 を考えるときに、なぜそんなに皆さんやめてしまうのかをクリアにさせないと、なかな か次のステップに進めないような気がしたので、ここはきちんと洗い出してやる必要が あるのではないかと思います。 ○座長 第1回目から、非常に重要な本質的なところに議論がいき、その議論は毎回絡 んでくる話だと思いますので、そういう視点で議論を進めていきたいと思います。  坂本委員からのは事務局に対するご質問と見てよろしいかと思いますが、アウトプッ トをどのように考えるかということです。これは考えられる範囲で結構ですのでよろし く お願いいたします。 ○田村看護課長 看護教育のグランドデザインという言葉からはかなり大きくイメー ジをするのですが、そういうところまでいかないまでも、現状のさまざまな問題を洗い 出すことによって、今後の看護教育のあるべき姿は、少なくとも現状、国民が看護職に 何を求めているか、その求めているものを満たすために、どのような看護教育が提供さ れなければならないかをクリアにしていく中で、どのような看護教育が提供されるべき かということが言えるのだろうと思います。  もう1つは、対策官からの説明にもありましたが、平成8年以来の看護の基礎教育の 標準になる指定規則の内容については、少なくとも見直しをしていただきたいと考えて います。 ○浅田委員 いまのことですが、最終的なアウトプットとして、いま言われた指定規則 というか、具体的にどの程度までのものを出すのかということだと思います。現実に基 礎教育を受けても役に立たないという言い方は失礼ですが、実際にはそこで病院に入っ てからトレーニングが必要なのだということは、基礎教育がなっていないということを おっしゃっていると思います。そうすると、いまの指定規則で教育をしても、現実には 役に立たない人を大量に輩出しているということをおっしゃっているわけですから、そ こを直さざるを得ないということを言われているのだと思います。  私は教育が専門ですので、学校教育で言うと指導要領というのがありますが、例えば、 あそこは何年生では何ができないといけないのかというスタンダートを作ろうとしてい ます。同じように3年間の課程で何ができなければいけないのかを、きちんとここで提 案できるのかどうかというのが1つです。アウトプットとしてそこまでやるのかどうか があるのだと思います。実際には役に立っていないと言われたわけですから、これは変 えざるを得ないのだろうと思います。逆に言うと、どこをどう直せばいいのかというこ とを、例えば、現行のものの中で、直すべき点をきちんと指摘していただいて、出して いただきたいというのが1つの要望です。  もう1つは、離職者の数で言われるのですが、現在の看護をめぐる状況を、いまさま ざまおっしゃったのですが、ここに出ている表では十分にはわかりません。例えば、病 院の規模によって違うのだというのなら、規模ごとにクロスをかけて表を出していただ かないと議論にならないのです。私は病院におりませんが、ほかの先生方で病院におら れれば、自分の病院の現状でものを言われるのですが、それは全部事情が違うわけで、 それを全部包括したものは作れないわけですから、それはきちんとデータとして出して いただきたい。例えば、病院が評価をしている中でギャップがあると言っている病院の 中で、実際に新任の看護師はどう感じているかというようなことを、ちゃんと出してい ただきたい。教育の問題ではなくて、勤務する病院側の構造的な問題であれば、それは 基礎教育の問題ではなく、病院側そのものの問題なのです。例えば、出てきた新人を3 カ月間で教育しなければいけない、あるいはその人たちが辞めた場合に、すぐに実践的 な人を求めなければいけないということは、病院の経営はおいて、現実問題として、そ れを動かすためには、その人手がいないことが実は問題であって、それは教育の問題で はありません。  それから3カ月でやらなければいけないというのも、入った人たちに対して、3カ月 以上の教育期間をちゃんと設けられる。もっと言うと、新任で入ってきた人に対しては 3カ月間教育するのだということを前提でものを言っているわけですから、そうではな くて新任で来た人たちが、いきなりある程度の実践として、つまり、学校教育で言うと、 4月から担当になって授業をやるわけで、本来は訓練期間は何もないわけです、実際に はやっていますが。ということは、そういうことを前提としたカリキュラムでいいので すかと。あるいは、出てきてすぐ国家試験を受けて資格を持った場合に、何ができれば、 どういう仕事をさせられるのかを、きちんと分けていただかないと。すべてが平等では ないとおっしゃるのなら、そこはきちんと分けなければいけないはずです。それも議論 がごっちゃになっていて、こういうことはできなければいけないとか、先ほどの救命何 とかというのは、いきなりそこへ行って、やれと言われても、なかなかできないだろう。 そういうのは経験がない。当たり前といえば当たり前かもしれない。その辺りをきちん と整理して、何を論点としてやるかを分けていただかないと、これでは議論が、それぞ れが言ってということで、アウトプットが出ないような気がしました。その辺りをきち んと整理をしていただけないでしょうか。 ○座長 いまのお話は非常に重要なことを指摘されていると思います。今回はあくまで も既存の資料を出したということで、そのようなお話を引き出すための材料だと理解し ていだいて、今後の方針というか運営のやり方に、いまの発言の内容を十分反映してい きたいと考えております。 ○村嶋委員 浅田委員から、3年間の課程が終わったときに、何をアウトプットとすべ きかというご発言がありました。折角こういう検討会が開かれておりますので、グラン ドデザインを考えていただきたくて、3年間の課程を前提にするかどうかも含めてご検 討いただきたいと思います。  と言いますのは、今日、文科省からのデータが出ておりませんが、看護学の大学が急 速に増えております。そこでは保健師と看護師を、ほぼ100%取得させておりますが、 そのことの是非も保健師の側からは大変問題になっております。今日の資料の21頁の第 92回の保健師の国家試験の合格状況があります。ここで養成所が一括して83.3%と、一 見して大学よりも高いような書き方をしていますが、実は裏があって、2つに分けるべ きで、保健師だけに特化した1年課程の養成所と、近年は4年課程の保健師と看護師を 一緒に育てる養成所があります。私は第91回国家試験の分析をしましたが、4年課程の 養成所は66%の合格率でした。新卒でも3人に2人しか通らず、3人に1人は落ちてい るという状況があります。4年間で看護師と保健師を与えることの是非も含めてグラン ドデザインを作っていただきたいと思います。 ○座長 今後の検討の中で重要なご指摘をいただきましたので、そういうことを盛り込 んでいきたいと思います。 ○西澤委員 この資料の見方ですが、いま離職率が問題になっていますが、30頁の離職 率というのは看護職を辞めたという意味か、その病院を辞めて再就職している人も含ま れるのかを教えていただきたいと思います。 ○菊池委員 最初に勤めた病院を辞めたという退職率のことです。退職したあと、どこ かに就業したかどうかまでは追いかけておりませんので、そこまではわからない数字と いうことになっています。一人前になって結婚、出産したあとに転職していくのとは、 また様相が違うのかなと考えます。 ○西澤委員 ということは、看護職をやめたわけではないという方が混じっているとい うことは、その職場に対して何らかの不満なりがあった人もかなり混じっているという ことだと思います。  もう1つは、31頁の表5ですが、辞めたいと思った理由で、辞めた理由ではなく、現 在勤めている方が思った理由ですね。 ○菊池委員 はい。 ○武委員 こういう検討会を始めるからには、何か問題があるからこういう会議が開か れるわけです。いま共通の問題は何かと言ったら、看護学校を卒業した人たちが医療の 現場についていけないという現実があるわけです。だから、どんどん辞めていく。特に 高度医療第一線の病院からどんどん辞めていく。私はいまの日本の病院の看護師の3つ のテロと言っているわけですが、そういう現実があるからこそ、看護教育を何とかしな いといけないという声が出て、こういうことになっているわけです。ここにいみじくも 配属部署の専門的な知識・技術が不足しているというのがトップに出ていますが、そう いう知識を持たずに、ボンと医療現場に来ているから、できずに辞めていく。これはこ こ2、3年からどんどん激しくなった現象です。いい病院、高度な病院ほどたくさん辞 めており、楽な病院に移っていっています。  もう1つは、看護師が訴えられるようになった。7年前までは訴えられることはあり ませんでしたが、医療は司法的にも民事的にも訴えられるようになったわけです。そう すると、訴えられることに耐え得る技術・知識を持たねばならなくなったということで す。ですから、訴えられたときに、それはそこまでのものは求められなかったという線 が、この検討会で示されなければいけない。それは看護師が訴えられるようなものでは ないとか。逆に言えば、この10年で日本の医療は大きく変わり、医療技術もものすごく 変わっているのに対して、看護教育があまり変わっていない。そのことをみんなの共通 認識として、この検討会に臨まないと、大した結論は出ないのではないかと思います。 ○浅田委員 看護の専門性というのをどのように捉えるのか教えていただきたいので す。つまり、どういうものをもって専門性があると言うのか。高度医療というのは、例 えば、テクニカルな問題とか、医療機器など高度な技術があって、そういうものは日々 変わっていくわけですから、教育を変えたからといって、器械が変われば当然やってい かなければいけない。いわゆるキャリア教育的なものが必要ですが。 ○武委員 たくさん症例があって、それは一言では言えませんが、看護師が訴えられた のを全部拾って、判決などを読んでください。そうすればどこまで求められているとい うのが浮き出てきます。 ○浅田委員 申し上げたいのは、3年にするか、それ以上にするかは別問題として、看 護というものを専門家と考えたときに、基礎教育ですから養成を考えるわけです。その ときにどこまでを教育として専門性を保証するのかという問題だと思います。訴えられ たと いうのは、ある勤務をしていて、当然その領域の中の専門性があって、例えば非 常に簡単な例は、器械を誤操作したということも専門性の1つに入ると思いますが、そ れ以上にもっと違った専門性があるのかどうかということで。看護というのを専門家と 捉えた場合に、基礎教育で言う専門性は何を保証するのかということだと思います。そ れを出たから、すべてのことができなければいけないと私には思えないのです。つまり、 それは3年間の間に器械もどんどん変わるでしょうから、当然そのことを教育しても、 出れば器械が変わりましたでは同じことなのです。  むしろそれは学び続けるということであって、看護でいう専門性をどのように考えて、 ではそれで基礎教育、いわゆる養成段階で言うと、何を保証するのかということのよう な気がするのです。確かに変わってきているのですが、それに対応していけるような看 護師、つまり、そういう専門家を育てたいとすれば、という意味の専門性と、いまの技 術とか、いろいろなものに対応するという意味の専門性は区別すべきだと思っています。 そこの ところをきちんとというか、逆に言うと、教えていただきたいというか、その 専門性に  ついてもう少し何らかを示していただけないかと思います。 ○草間委員 専門性ということを先にお答えいただいたほうがいいのかもしれません が、私どもは大学で看護教育をしておりますと、まさに看護学を教育していて、看護の 専門  教育をしていると考えております。その専門性について議論し出すと長くなり ます。  先ほどからこの検討会のアウトカムをどうするかという辺りは大変重要だと思います。 まさにさまざまな委員会があった、例えば、厚生労働省の「新たな看護のあり方に関す る検討会」とか、それぞれの検討会から基礎教育でどこまでという話が出てきているわ けですが、先ほどNTTの坂本委員が現場との乖離が大変大きいと言われました。これ は急性期の病院から療養型の病院までさまざまな病院があるわけで、すべての状況に大 学あるいは養成機関で教育を受けた看護師が対応しなさいというのは無理な話で、学校 教育、養成課程の教育ですべきことと、医師に関しては研修制度があるわけですので、 オン・ザ・ジョブでやるべきことはよく区別して考えなければいけないのです。看護師 に対してもオン・ザ・ジョブというのはあるべきだろうと思います。そうしないと現場 と学校教育の乖離が全く一致するのは難しい話で、ギャップがあることを前提としてい ただきたいと思います。  今日は文科省からもご出席いただいていますが、文科省でも、いま大学が125校あっ て、それぞれ看護系の大学の学生の到達目標を検討会を作って2回報告書を出していま す。 それぞれ見ますと内容はそう大きく変わるわけではないと思います。そういうこ とを考えますと、同じ議論をここでやったのではなかなか進まないと思います。すでに ここにありますように、それぞれの報告書が看護基礎教育の期間を延長することが必要 である、あるいは教育内容を充実することが大変重要であると。その辺の、すでに議論 してあることをしたのでは、この検討会として全く新しいことが出てこないで繰り返し になってしまうと思いますので、期間を延長していくことが重要であるということが、 いくつかの報告書で出されており、これを実現する方向に行くのか行かないのかといっ た、この検討会でも焦点を絞って議論していただかないと、12月までに10回の会議と いうことですので、また同じ報告書が出てくる形だと、看護教育というのはいつも同じ ことをしていて進歩しないのではないかということになってしまうと思います。そうい う意味ではアウトカムをきっちりして、期間を延長していくことを検討すべきであると したら、こういうことを本当にどうするべきかというかなり具体的なところに焦点を当 ててご検討いただくことを希望します。 ○坂本(す)委員 国家試験に受かって、22歳で入ってきた人が蘇生術をできるかとか、 そういうことは一切求めていません。ただ、ここにある基本的な技術を見ていると、こ れは一体何年前の話でやっているのかということが気になります。やっていない経験が いっぱいあって、やっていない経験について基本的な知識があるのかないのか。例えば、 大学や学校がその方法がすぐできるように教えていないと言ったとしても、それを基本 的に理解できる能力があるのかどうかにおいては、私どもの病院の経験でしか言えまん が、テストをしてみた結果、成績は大変悪いです。そういう意味では、乖離があるとい うことのどこが悪いとか、そういう問題ではなくて、ちょうどいい時期ですので、きち んと基礎教育を見直すということにおいては大賛成で、どこが悪いということを言って いるわけではありませんので、是非ご理解いただきたいと思います。  何回も草間委員から言われたように、ずっと検討しているわけですから、大きなグラ ンドデザインとは言いませんが、何らかの形で成果があるようなものにしていただきた いと思います。 ○山内委員 先ほど草間委員からあったことと同じことですが、この検討会が何を検討  するかの範疇をはっきり決めないと、生涯にわたって研鑽するべき専門職の生涯教育ま でを全部含めてグランドデザインを決めるのか、それともここで言う基礎教育というの はどこまでのことかを、初めに確認しておかないと、ずっとずれたままになるような気 がします。本当のグランドデザインまで踏み込めるかどうかは微妙なところだというご 発言がありましたが、本会が範疇とする範囲を、まず合意したほうがいいのではないか と思います。 ○座長 いまはフリーディスカッションですので、とりあえずご意見を賜るということ で、できるだけ多くの方々のご意見を頂戴したいと思います。 ○村嶋委員 検討していただく範囲に、グランドデザイン、期間延長の話、卒業直後に もっている能力と実質的に働くときに求められる能力のギャップがすごく大きいという ことが出ておりますので、看護師が病院やクリニックで働くときの臨床研修も、是非含 めて検討していただきたいと思います。 ○太田委員 私も実際に現場で教育している者として、具体的に、例えば3年間の中で もこれ以上の工夫の余地、内容を変えてということのある程度の限界性、技術的なもの ですと、身体侵襲を伴うような技術に関しては、どうしても無資格の学生が実施できる 範囲等が限られているのが現実です。草間委員からも言われましたように、3年間でど うのこうのというレベルではなく、実際に教育期間や、卒後臨床研修が可能かどうか、 どのぐらいのものができるのかによっては、基礎教育での到達レベルも当然変化してき ますので、そういうものも含めて検討していただければと思います。 ○榮木委員 話が大きくなっているのですが、資料の5頁の看護師の養成数が52,471 人で、第95回の国家試験の受験者数が48,914人で、3,500人、約4,000人弱が受験し ていません。この数の乖離はどうなっているのでしょうか。 ○田村看護課長 これは平成17年4月の学校数、入学定員数ですので、国家試験の受 験者数はその3年ないしは4年前の入学者です。当然、学年進行中に退学をする、ある いは休学、留年といった学生たちも現実にはあって、数としてはこのようになっていま す。 ○榮木委員 大体2,000人ぐらいずつ毎年増えているのでしょうか。 ○田村看護課長 そんなには増えていないと思います。 ○榮木委員 養成数は52,000人ぐらいとずっと認識していたのですが、受験者数が減 っているのではないかと思うのですが、 ○田村看護課長 受験者数はここ数年5万人を切っておりますし、国家試験の受験者は  既卒者も入っております。例えば、前年あるいは前々年の合格率が低い年などでは、翌 年等に受験者数が増えます。 ○榮木委員 そうであれば受験者数は増えていいはずですね。 ○田村看護課長 はい、そのようになりますが。 ○榮木委員 でも減っているということは、養成施設に入っても看護師になろうと思う 人が減ってきているのかなと。 ○田村看護課長 そういうことではないのではないかと思います。これは推測ですが、  看護師の受験者数をこの数年のデータで見ますと、平成13年は48,300人、平成14年は 53,200人、平成15年は53,700人、平成16年は49,000人、平成17年は48,000人とい う状態ですから、少し減りつつあります。平成13年、平成14年は合格率が84%程度で したから、平成15年、あるいは平成14年に翌年の既卒者の受験者が増えているという 状況になっています。 ○石垣委員 現場は先ほどの坂本委員に集約されるような現状であります。これまで、  看護基礎教育のカリキュラムの改定は、大きく3回行われました。その度ごとに総時間 数が少なくなっていることと、最も顕著なのは隣地実習の時間が少なくなっていること です。現在は1,035時間ですが、特に最後の改定では、時間数が同じままにさらに在宅、 地域実習、精神の実習が入りましたので、実質的に学生が患者さんの所で実習する時間 が極めて少なくなっている現状があります。  先ほど村嶋委員が言われたように、教育期間の延長ということも含めて、カリキュラ ム全体の中で臨地実習の占める位置づけをもう一度考え直す必要があると思います。こ れだけ知識が増え、学ばなければならないことが増えている中で、例えば、よく言われ ることですが、子供が1人で山を登るときに何を持たせるか、何かあったら困ると言っ て、あれもこれもと持たせて、結局は頂上まで行かずに途中で挫折してしまうというこ とがあります。基本的に何を学ばせれば現場に行って応用できるか。そういう応用でき る力、例えば時代が変わっても働く場所が違っても変わらないものがあります。人間の 生理、病理、解剖、薬理に関することなど、そういう基本的なフィジカル・アセスメン トができる力。そして、人間とはどういう存在なのかなどを考える基本的な力を付ける ために、カリキュラムの内容をどのように構成したらいいか焦点を絞った基礎教育のあ り方を考えていく必要があります。また、看護というのはナイチンゲールが言うように、 患者の傍でしか、病棟でしか学べないというある意味での限界をもっと真剣に考えてい くことが大切です。  しかも看護だけではなく医療というのは、知識と技術と心(態度)からなる正三角形 でなければならないはずなのに、いまは著しく技術の部分が少なくなっていて、歪んだ 三角形のまま臨床で受けざるを得ない。それは新人にとっては本当に大変なことです。 この機会に基礎教育と現場の教育が連携しあったよりよい制度を考えていかなければな らないと思います。  もう1つ申し上げたいのは、医療を行うパートナーとしての医師の教育にしても薬剤 師、歯科医師など、教育年限とともに臨床研修制度が制度化されたり、あるいは教育年 限が延長されております。これから重要になると思われる看護についてもその方向で考 えていく必要があると思います。  私が申し上げたいのは、知識と技術と心という正三角形になるようなカリキュラムを、 特に技術のところで臨地実習の充実をもっと真剣に考えていくことをこの検討会に強く  望むところです。 ○草間委員 もう1つきっちりさせておきたいのですが、今日たまたまお出しいただい た資料等が看護協会が病院あるいは診療所を対象にしたものですので、臨床の看護師に 焦点があたっているわけですが、厚労省が考えているのは看護基礎教育といった場合に、 保健師、助産師も入っているわけです。そういう意味では保健師、助産師についてもバ ランスよくお考えいただきたいと思います。  そのときに例えば、アメリカや韓国、あるいは看護の先進国等では、助産師あるいは 保健師という制度がある所とない所がありますが、どちらかというとアドバンスコース に置いているわけですので、日本が保助看ということで、保健師、助産師、看護師の3 師とも基礎教育、ジェネラルな教育という形で置いていいのかどうか。あるいはアメリ カ、韓国のように、助産師、保健師はアドバンスコースと位置づけるべきかどうかとい う辺りも、議論の中で是非していただきたいと思いますので、お願いしたいと思います。 ○坂本(憲)委員 私は皆さんのお話を聞いていて、私たちは看護を受ける立場ですか ら、いろいろな問題が現実にあるのだなということを改めて実感しています。看護師の 離職率という表がありますが、いま私たちを取り巻く時代は、何年も前から変わってお ります。携帯機器の発達、コンピューターの発達、いろいろな意味で家庭教育からすべ ての部分で問題があるわけです。  看護師だけが離職率が高いということではなくて、ほかの分野でもそういう実態があ ります。今の子どもたちの状況をきちんと把握した上で、それでは次に求められる対応 をどうしたらいいかという議論に持っていかないといけないのではないかと思います。 人数が足りないと聞いていますが、私たちにとってみれば人数が足りないのかどうかも わからないのです。私が耳にするのは、医療機関が看護師を見つけるのが非常に難しい、 看護師は売手市場だから、サンダルで面談に来るという話も聞いたりします。そのぐら いに看護師が、「私の条件を呑んでくれるのなら勤めますよ」という話を聞くわけです。 看護師もお子さんがいたり、自分の家族の関係などから仕事を続けることにもすごく大 きな問題があるわけです。  この表から見ますと、国家試験で88%ぐらいの看護師が合格しています。つまり、88% の合格率というのは、私から見るとかなり高い率だと思うのですが、そのようにきちん と勉強してきた人が、現場ではあまり役に立たないということは、やはり教育の仕方と いうか、そこの部分に何か問題があるから、いまの医療技術の進展、求められているニ ーズでギャップが出てきているのではないでしょうか。能力にギャップがあるのなら、 何の能力が基本的に求められているかは、今までの検討会でいくつも出てきているわけ ですから、そこの中から、きちんと求められることを明らかにし、そのためにはどうし たらいいのかという議論に持っていき、その結果初めて充実ということが具体化するの ではないかと思いました。  私たち患者にとっては、看護師の能力がどうなのかなどというのは全くわかりません し、私が出産したときは、どの方が保健師で、どの方が助産師なのかわからなかったの ですが、そのような情報も全然わからないわけで、患者が困らないような状況、本当に 人間の生命が大事にされるような状況で看護がされてほしいと思います。 ○菊池委員 この検討会でどこまで議論するかについての意見ですが、いまの問題とし て、卒業時点の能力と現場の求める能力に非常にギャップがあるということで、基礎教 育の 何を充実する必要があるかというのは、これからこの検討会でも詰めたほうがい いと思います。  それを考える上で、先ほど石垣委員からもお話がありましたように、例えば、経年的 に見たときに、看護師に求められるものがどんどん高く、多くなっています。分野で言 いますと、平成8年に在宅看護、精神看護が追加になったということで、その時点では 2科目追加になっています。ところが、総教育時間は「3年間」で変わっておらず、期 待される役割や学ぶべき知識・技術が増えているにもかかわらず、教育時間という観点 から見ると変わっていないということで、かなりそこに無理があるかと思います。  必要なことを学ぶ、いま期待されていることを学ぶ上では、本当にこの年限では足り ないのではないかと私どもは思っています。そういう意味でどこまで議論するかは、単 にカリキュラムの改正という範囲にとどめるのではなく、年限延長というのは法律の改 正で、指定規則のレベルではないと思うのですが、そこまでもきちんと視野に入れて結 論を出すような議論を、ここでしていただきたいと思っています。  基礎教育について、看護師の国家試験を受けられるだけの教育と、保健師や助産師の 国家試験を受けるための教育、先ほど離職率が基礎教育だけの問題ではないのではない かというお話がありましたが、それとの関連で、免許を取ったあとに、受け入れた所で の臨床研修の体制が、その後に看護職員が力を付けていく、あるいは定着していくとい うことで非常に重要になりますから、そういうことも視野に入れて、アウトプットを出 すような議論をここでしていただきたいと思います。 ○村田委員 私は医療現場、看護現場の人間ではなく、単なる取材者という立場ですし、 同時に長期入院も含めて3回看護師さんにはお世話になりましたが、そういう身で発言  させていただきます。今はどのような看護基礎教育のあり方が望ましいかというのは、 医療現場のことで議論されていると思いますが、患者側がどういう看護師であってほし いか、あるいは患者と家族たちが求める看護師像みたいなものもあると思います。そう いうことも同時に議論が必要ではないかという感じがします。 ○座長 それでは、最後に太田委員お願いいたします。 ○太田委員 いま患者の立場というお話がありましたが、学んでいく学生の立場にも、  もう少し視点を当てていただければと思います。実際に看護の基礎教育に入ってくる学 生というのは、高校を卒業して入ってくるのですが、その質もかなり変わってきている というのが、実際の教育現場では課題になっています。従来でしたら、高校までの教育 の中で常識なり学力として培われてきた部分も変化してきています。そうすると、スタ ートラインも変化しているという部分も見ていかなければ、従来のスタートラインと同 じレベルからどう積み上げていくかというだけでは解決できない問題も含まれています。 学生たちも学ぶべきことはすごくたくさんあって、しかも実習になると、記録したり、 予習や復習をしたりというところで、睡眠時間もなかなか取れない。看護師になりたい という希望を持って、他人のお世話をしたいという希望を持って入ってくる学生ですら、 教育の中でかなり疲弊していることも、少しご理解いただいて、スタートラインという ことも加味していただければと思っています。 ○座長 貴重なご意見をありがとうございました。まだまだご意見がおありになるかと  思いますが、予定しておりましたフリーディスカッションの終わりの時間になりました ので、本日のディスカッションはこのぐらいにさせていただきたいと思います。しかし、 非常にさまざまなご意見が出ました。しかも本質的な議論が出たわけです。その中で、 どの程度現実性のあることをやるのだという質問と、どのぐらい幅の広いことをやるの かという議論が出ました。実はこの2つは矛盾するわけで、ここの検討会で現在、日本 の看護問題を解決することは当然できないわけですので、あくまでも看護基礎教育、あ るいはその周辺について、どうするのがいいのかということが、この検討会のミッショ ンではないかと考えております。  とは言いながらも、非常に多様な目配せは必要ですし、さまざまな視点からの先生方 のご意見を頂戴いたしましたので、今後のこの議論は、それらをできるだけ含めてやっ ていきたいと思っております。  そこで、またさまざまな宿題と言いましょうか、データの問題など、いくつか事務局 に宿題が出たものがありますので、次回までに間に合うかどうかは別として、可能なも のについては対応していきたいと思います。  第1回ということで、さまざまなご議論が出ましたので、意見を少しまとめたような、 集約したようなものを作っていただいて、次回あるいは次々回に配布できるようにして  いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。 ○田村看護課長 承知いたしました。対応させていただきたいと思っております。 ○座長 よろしくお願いいたします。それでは、今後の予定について、事務局から説明 をお願いいたします。 ○事務局(柴田) 次回2回目は5月12日金曜日の15時から、第3回目は6月29日 木曜日の15時から開催する予定です。場所等は決まり次第、別途正式なご案内をお送り いたしますので、よろしくお願いいたします。  本日は、お忙しいところをご出席いただきましてありがとうございました。 ○座長 それでは、第1回の検討会は、これをもちまして終了したいと思います。どう もありがとうございました。                               1