06/03/27 第12回医師の需給に関する検討会議事録 第12回 医師の需給に関する検討会議事録 日時 平成18年3月27日(月)                             15:00〜 場所 厚生労働省共用第7号会議室 ○矢崎座長 それでは、まだ委員でお見えになっていない方もおられますが、今日はた くさん議題が詰まっておりますので、始めさせていただきたいと思います。  12回目の「医師の需給に関する検討会」ですが、各委員の皆様には、大変ご多忙の ところをご出席いただきまして、ありがとうございます。それでは、まず本日の委員の 出席状況について、事務局からお願いします。 ○宮本補佐 本日の出欠ですが、池田委員と川ア委員がご都合により欠席という連絡を いただいております。そのほかの委員は、たぶん後ほどお見えになるものと思います。 ○矢崎座長 それでは、議事に入ります前に、事務局から本日の資料の確認をお願いし ます。 ○宮本補佐 資料は1から4までありまして、資料1が泉委員より提出いただいたもの。 資料2が古橋委員より提出いただきましたもの。資料3が「医師需給に係る医師の勤務 状況調査」の中間報告2。資料4が長谷川委員より提出していただいたもの。参考資料 として、「臨床研修に関する調査」の概要です。 ○矢崎座長 よろしいでしょうか。それでは、まず資料1の泉委員からいただきました 資料に沿って、泉委員からよろしくお願いいたします。 ○泉委員 今日は発表の機会をいただきまして、ありがとうございます。県の保健医療 行政の立場から、「地方における医師不足問題と取組み」というタイトルといたしまし て、大きく3点のご報告をしたいと思います。お手元の資料の1に私が用意したスライ ドの写しと、資料1の最後の3枚は、途中でご説明いたします全国衛生部長会が、昨年 12月に国などに出した要望書を付けてありますので、ご参照いただきたいと思います。 お話しますのは、全国衛生部長会の要望書について、茨城県における現状と取組み、 最後に本検討会への検討事項への意見ということで、私の考えを述べさせていただきた いと思います。  まず全国衛生部長会の要望書についてですが、全国衛生部長会というのは、各都道府 県、指定都市、中核市の衛生行政担当の部局長で構成している会議で、通常は意見交換、 国との情報交換などの活動をしています。医師不足問題については、各県とも非常に関 心が高く、特に昨年夏に、この検討会の中間報告も含めて対策が出たあとに、即効策が 見えないということでかなり危機感が高まったこともあって、自治体間で議論を深め、 きちんと要望を行おうという動きになってまいりました。  このため、衛生部長会の中でメンバーの有志参加を募りましたところ、37の道府県 市が参加希望をいたしまして、そのメンバーと昨年の10月から12月にかけて実態調 査とか勉強会を行い、国への要望をまとめました。12月に国へ、1月に学会などへの 要望を行いました。  その要望書の前提となる自治体の実情について、いくつかご説明したいと思います。  ハンドアウトの2頁に「医師不足問題の状況」です。まず各自治体の状況ですが、こ の数字は個人の資格で参加した各県の担当者が意見として出したものですので、自治体 の公式見解というわけではありません。まず県全体としては医師が不足している所ばか りではありませんが、地域あるいは診療科によって医師不足が顕著な所があるかと聞け ば、ほとんどの自治体が「ある」という答えです。ご承知のように、人口10万人対で 見た医師数は、都道府県間で最大2倍程度の格差があります。例えば、北海道や東北で は県全体として医師が足りず、なおかつ、地域や診療科によって非常に少ない。あるい は西日本では、県全体としては比較的医師の数はいるものの、過疎地・へき地・離島が ある所で、特に不足があるという傾向が見られます。地域によって状況は違いますが、 医師不足というのは、各県共通の課題となっています。  次のグラフが各自治体が独自対策として医師確保にどのぐらい、どんなことに取り組 んでいるかというものです。例えば、医学生向け対策としては奨学金提供などですし、 へき地対策として、医師バンクなどについては実施率が比較的高く、一方で女性医師の 支援対策は、まだ始まったばかりということで割合が低くなっております。  次のグラフは「自治体立病院での取組み」です。全国に約300の都道府県立の病院 があり、どこも医師確保は共通の課題となっております。しかし例えば院内保育で医師 の子供を預けられるかどうかについては、過半数の所ではそういう対象になる環境では ありません。柔軟な勤務時間の例として、例えば週40時間の勤務で、泊りはなしとい う条件で常勤化できるかと聞いたところ、「できない」という所が過半数。あるいは確 保が困難とか、勤務が過酷な診療科について特別の手当を出しているかと聞きましたと ころ、そういう所はありません。医師確保対策、就労環境整備という点で、自治体立病 院においても、まだ取り組むべきことがあるのではないかというデータでした。  次が「医療機関・診療機能の再編・集約化」の問題です。国においても再編・集約化 を推奨されていますし、各県でも医師不足だけではなく、財政的な問題もあって、都道 府県立や公的病院の再編・集約化は動いております。しかし、今度の医療法にもあるよ うな都道府県の医療対策協議会によって集約化の調整や医師の確保の調整ができるかど うかということを聞きますと、「困難」という所が3分の2ぐらいになっています。  この理由は、供給元である大学にそもそも医師がいない。派遣元の大学が県外になる ので、県内で会議を作っても調整ができない。出身医局の異なる医師が、いろいろな病 院にいるので、それをまとめたりすることはできない。集約化することに地元の住民や 自治体などの理解が得られにくい。さらに病院の経営戦略と相容れないというか、特定 の診療科を止めるということは、経営戦略とは矛盾することがあるということで、再編 ・集約化も実際にはなかなか簡単ではないという意見がありました。  こうしたことから、県の中だけでの議論は、なかなか難しくて県を越えた移動を促す 仕組み、あるいは何らかの規制、奨励的な措置がないと、なかなか動かないのではない かという意見が多くありました。  次は自治医科大学についてですが、自治医大の創立当初とは社会情勢が変わっており ますが、各県としては、自治医大にかなり大きな期待をしております。今後のへき地医 師確保対策の中心は、自治医大卒業生の活用であるというところが4分の3ですし、定 員を増やしてほしいという意見が非常に多く出ております。定員の規模としては120 人程度まで増やしていただけないだろうか。時限措置でも構わないから増やしてほしい という意見が非常に強く出ました。また一方で、自治医大卒業生の定着対策として、各 県としてもさらに努力をしようという意見が出ました。  以上のように、県としても当然やるべきことはやろうと。その上で国にしかできない ことは国に対してお願いしたいというスタンスで議論をしておりまして、その要望書が 資料1の後ろ3枚です。詳細はあとで見ていただくとして、概要を説明いたします。  ポイントは地域格差の是正、診療科偏在の是正、その他という3項目です。まず地域 格差の是正については、すでに医療部会で議論された話ですが、診療所の管理者となる 要件に医師不足地域における一定期間の診療経験を付加するなど、医師のへき地等勤務 を促進する具体的方策の検討を1番に挙げました。  2番目に学会の関係ですが、専門医の認定に当たって、研修施設以外の地域の病院で 研修をした場合についても、何らかの配慮がなされるようにしていただきたい。自治医 大の定員の増員、自治体独自の確保対策への支援などを地域格差の是正として要望いた しました。  診療科偏在については、診療報酬の問題と、専門医の数のバランスを考えていただき たいということです。  その他として、女性医師の就業支援対策。医師の正確なデータベースというか、医籍 をきちんと管理して、医師のキャリアや現状についてわかるようにデータベースを作っ ていただきたいという要望を行いました。  この要望の結果、最初の点については、私どもは医師不足地域という視点で要望した のですが、医療部会でへき地・救急等ということでご議論いただきました。今回、その 法制化が見送られたということですが、一応俎板に載せていただきました。  自治医大については作業部会が近々設置されることになっていますし、診療報酬につ いても一定の配慮をしていただいたと理解しております。このように各方面で真剣に取 り上げていただいたのですが、まだ十分な成果は出ていないと思っており、この検討会 でもこうした課題について、今後取りまとめに向けてご検討いただければ有難いと思っ ております。  次に「茨城県における現状と取組み」をいくつか事例をお示しして、地方の問題をお 話したいと思います。まず茨城県ですが、人口10万対の医師数が全国で下から2番目 ということで、医師不足の県であると私たちは認識しております。  左のほうに茨城県の地図がありますが、下から2番目というのは、つまり医師の10 万対の数が全国で211に対して150で、7割ぐらいのレベルということになります。 しかも全国を越えているのがつくば周辺だけで、残りの医療圏については、水戸も含め て全国平均以下です。特に全国の半分以下の100以下の医療圏が黄色の所ですが、こ れは山奥かというと、決してそうではなく、それぞれ20万人から30万人ぐらいの人 々が住んでいて大きな町がある医療圏が全国の半分以下というレベルになっています。 筑波大学は新設で、しかも300万県民に1つであったことが、こういった事情の背景 だろうと思っていますし、人口が集中しておらず、散在しているために、どうしても中 小の病院が多くなってしまうという問題があります。一方、へき地と言える地域はほと んどないというのが茨城県です。  筑波大学が新しいために、歴史的に他県から医師が送り込まれているわけですが、他 県の大学からすれば、いちばん遠くにある派遣先病院が茨城県ですので、真っ先に引揚 げになってしまうという問題もあります。現に公立・公的病院での引揚げ、開業による 退職ということで、非常に医師確保が深刻化しております。また開業の先生方も高齢化 しており、地域医療を支える上で、かなり難しい状況に至っております。  特に課題の多い周産期と小児科について示したいと思います。周産期については、こ こ2年ぐらいで大学からの引揚げ、医師の退職等によって、総合病院の産科の閉鎖が相 次いで、そこにA、B、C、D、E、Fとありますが、それなりの分娩を扱っていた病 院が、どんどんなくなっているという状況です。  日立という地域ですが、出生が2,500もあり中核的な都市がある所ですが、総合病 院が1カ所のみ、民間の単科の産婦人科診療所もほとんどないという状態です。  水戸地域についても、だいぶ減ってきており、いわゆる総合病院は2カ所のみです。 ここは比較的民間産婦人科が多いので、そこで吸収していただいていますが、そろそろ 限界です。いわゆる総合周産期センターと単科の産婦人科病院・診療所の二極化となっ ており、いわゆる二次医療ができる所が激減しています。1人以上で分娩を扱っている 所は本県にはないようです。  右のほうに産婦人科医師の勤務状況を県で独自に調査したものがありますが、非常に 過酷な状況で、今後も継続できるか、非常に不安があることがわかりました。  国においては集約化を進めるということが、現在の危機を乗り越える手法の1つとい うことで指導をしていただいていますが、我が県はこのように総合周産期を中心に集約 化と連携がかなり進んだ状態にあります。しかし、県民にとっては、もう選択の余地が なくなってしまった、あるいはハイリスクの妊婦では、遠距離の通院が必要だというこ とで不満も出てきております。  医師の絶対数が少ない中で集中化していますので、実際には総合周産期センターに負 担が集まるという構図になっていて、実際に医師が退職するという例も相次いでおりま す。また中核となる病院の産婦人科には分娩だけではなくがん等婦人科の手術も集中し ておりますので、この辺りも併せて考えなければいけません。いずれにしても分娩を扱 う医師が増えなければ、集約化してもいまの体制は維持できないという状況にあります。  次は小児救急です。こちらも同様で、拠点病院あるいは輪番制によって、一部の地域 を除いて県内全域をカバーする体制になっています。拠点病院では近隣の医師会の協力 も得る体制を採用していますので、拠点病院は小児科学会の提唱されている、いわゆる センターに近い形で運営しているのではないかと思います。ただし、小児科学会で言わ れているセンターが、医師20人ぐらいの規模を想定しているのに対して、こちらは10 名程度で行っています。しかし、たくさんの患者が訪れており、昼間、夜間の数を資料 に書いておりますが、ほとんど昼間と同じぐらいの密度で休日の昼間、夜間も診療を行 っています。交代制がとれているわけではないので、医師の負担は相当なものになって います。  また保護者のほうも休日・夜間診療所の一次の窓口があっても、そちらへ行かずに真 っ直ぐ小児科専門医のいる病院を目指してくることもあって、こうしたことも負担増の 原因になっています。ギリギリの医師数で動いていますので、1人でもドクターが退職 されたり、体調を崩されたりすると、地域の体制自体にすぐ影響が出るということで、 県の行政のほうもそういうことの調整に奔走しているという状況です。こちらも集約化 をしても、小児科医数自体が増えないと維持が難しい状況に至っていると思います。  このような中で、県の医師確保対策事業をご紹介しております。来年度から大幅に拡 充する予定で、ライフステージ別、つまり、進路選択から卒業後の定着までの各段階を 考えた対策をしております。特に特徴的なものとして、後期研修のための支援というこ とで、小児科、産婦人科、麻酔科の後期研修を行う病院への財政的支援、そういう診療 科を選んだ個人への財政的支援も行います。大学と医師会と県で協力して地域医療が学 べるような拠点的な施設を整備することもやっていきます。県として考え得ることは着 手していると思っています。  最後に、このような状況を踏まえて、この検討会で今後是非ご検討いただきたいこと を申し上げたいと思います。今の話をまとめますと、各県レベルで行っていることは、 進学者増加、医学生に対する働きかけ、研修医の確保対策諸々です。県内の関係者間の 調整であり、またへき地・離島などの少数の県の人事で動かせる医師の確保は、県レベ ルである程度できるかなと。しかし、県レベルの調整での限界もあって、医学部定員の 都道府県格差は解消できませんし、他県にある医学部との調整はできない。都道府県間 の競争の過熱の懸念という点もあります。これは質の競争ならいいのですが、待遇とい うか、お金の競争になることについては疑問を持たざるを得ないと思っています。  都道府県間の偏在の調整、診療科偏在の調整については県レベルの問題ではなく、国 レベルでしか抜本的にはできないのではないかと思っています。  最後ですが、いまの医師不足の問題の焦点は、地方都市の中核的な病院における医師 不足であることを、是非ご理解いただきたいと思います。何万人もの人が住んでいる地 域であって、必ずしもへき地ではありません。そういう所に医師が足りない。小児科、 産婦人科はもちろん、内科、外科すべての診療科の医師の確保が困難となっております。  これに対する対策として4つぐらいの視点で検討していただければと思っています。 1つ目は奨励的な手法で、病院から離れてしまう、ハードな診療科は選ばないという背 景には、診療の能力や負担、得られる評価に乖離があるのではないかと皆さんが感じて いると思いますので、こうしたことを制度的に改善する必要があるだろう。  ただ、地域の問題、勤務地はどこを選ぶかということは、実は医療制度以外の子供の 教育、生活環境などの要素が強いので、奨励的な手法だけでは地域偏在までの解決には 至らないのではないかと思っております。  2つ目が規制的な手法です。これは先ほどの部長会への要望にもありましたが、医師 の養成数は限定されており、また多額の国費が投入されています。一方、さまざまな進 路選択は個人の自由に委ねられているということが、いまの混乱の背景の1つではない かと思わざるを得ません。ですから、診療科、専門領域ごとの医師の数、あるいは開業、 勤務地選択について、何らかの規制的な措置を行わざるを得ないところにきているので はないかと思っております。  次に、医師の業務の見直しですが、これもさまざまな病院の先生方とお話しておりま すと、最近、管理的な業務が増えている。これは安全対策の問題もあるし、インフォー ムドコンセントの問題、オーダリングなど、さまざまな要素があるようですが、非常に 管理的な業務が増えており、これが医師の診療時間、ベッドサイドにいる時間が減って いること、それが嫌で医師が病院を離れていくということにつながっていて、すべての 権限が医師に集中する現行の体系に無理が生じているのではないかと思っております。  医学部への入学機会の格差という点です。これも何度か申し上げましたが、都道府県 別に定員の格差がありますし、また実際に入学する人の数も県によってかなり差が出て きているのではないかと思います。地域枠は必ずしも格差の改善にはつながらない。奨 学金セットで県で配置できるドクターを多少増やす効果はあっても、県の格差を抜本的 に改善するものではないと思っています。ですから、医師不足地域、自治医大の入学定 員については増やすこと。場合によっては全体の中でどこかを減らして増やすというこ とかもしれませんが、増やすことを考えていただく必要があるのではないか。このよう な4点について、今後の検討でお願いできればと思っております。 ○矢崎座長 少し時間がオーバーしておりますが、何かございますか。 ○小山田委員 ただいま泉委員が提言されたことについて、私は全面的に賛同と言いま すか、是非そのような方向でこの検討会も進めていただきたいとお願いする次第です。 その中で特に私がお願いしたい点が2つあります。私ども自治体病院の中でも、特に地 理的条件の悪い山間・へき地・離島の医師不足は大変な問題ですが、これについての解 決策と言いますと、これまでも審議された中で、合意の得られたものはないように思い ます。12月5日の社会保障審議会の医療部会に厚生労働省から提案された社会的な医 療に携わる管理者になるための要件として、山間・へき地、あるいは周産期・救急等々 にある期間勤務した者を開設者の、あるいは管理者の条件とするというものが出てきた のですが、いろいろな方向からの疑問、疑念等々を払拭できないまま、医療法改正につ ながらなかった、放任されたわけです。考えてみますと、そうした根底に医師あるいは 医師になる方々の職業選択の自由、住居地選択の自由が国を守り、あるいはを緑を守っ ている人々の生存権よりも重く考えられる世相かと大変悲しく思っております。  しかし、そうした観点から具体的に何をやったらいいのかというと、いま泉委員が言 われた中で、最も大事でお願いしたい無理のない主張ではないかと思いますのが、自治 医科大学の入学定員の増です。自治医大は9年間医務年限を与えられて、そこでしっか りと卒業生はやっているのですが、こうした恵まれない地域で勤務していただくために は、ある程度の義務化が必要です。そうすると、一般的な考え方として、先ほどのよう なことで具体策が出ないとすれば、最後に私どもがお願いしたいのは、自治医科大学の 入学定員枠を先ほど泉委員は20%と言いましたが、大学の実情などから考えますと、 私は少なくとも10%、10名増やしていただきたいと思います。  10名というのは、実効性から見ると、この方々が医師になって地域へ行くには最低 10年、あるいは20年かかるわけです。実効性から見ると、わずか10名を入れても 大した効果はないと思われますが、そうではありません。現在、へき地で働いており、 献身的にそうした所で地域医療を担っている方々に対する大きな支援軍となるわけで す。精神的にも後続部隊を10%増やしてもらったというだけで、その人たちの働く意 欲、日本の医療界において、へき地医療を重視するという観点からも、是非こうしたこ とが取り入れられるよう、この検討会としてサポートしていただければ、大きな励みに なると考えるからですし、衛生部長会議もそうですが、全国の知事会もこのことを強く 要望しております。  私どもは団体として、これから国に対していろいろな問題があることはよく存じてお りますが、最低、自治医大の入学定員を10名増やしていただくことを、この検討会と しても強く共通意見として出していただくようお願いする次第です。  もう1つは、医学部の入学定員の地域枠についてです。私どもはこれも今まで何年間 もかかって地域枠の設置と増大を要求してきましたが、実現はなかなか不可能です。よ く見ますと、平成17年度の文部科学省の高等教育局長から、入学定員についての通達 が出ております。地域において50%の範囲内ではよろしい。それを大学の判断でやっ てほしいということですが、できるだけ多く50%に近い地域定員枠を認めることも、 この検討会の共通意見として出していただくようお願いする次第です。 ○矢崎座長 そのほかいかがでしょうか。それでは、続きまして資料2として古橋委員 から1枚紙で資料が提出されています。簡潔にご説明をお願いいたします。 ○古橋委員 それでは「医師の需給問題」に対する意見を1枚で提出いたしました。意 見を述べる時間を頂戴いたしましたことを感謝申し上げます。まず、ここに書かれてい るのは縷々議論され、努力はしているのですが、医師の需給に関してなかなか妙案も出 てこない。一方で自由開業制等もあって、医師の偏在という辺りは、顕著になってきて いることを踏まえて、厚労省が平成17年8月11日に明らかにした「医師確保総合対 策」を受けて、より具体的に考える上で、医師に集中し過ぎているというか、医師にか なりの負担がかかっている業務をチームで担う視点から方策を考えてみたいという意見 です。  医師確保総合対策上は8番目の項目として、医師の業務の効率化ということが整理さ れております。その中の骨子は、チーム医療を推進し、医師の業務の効率化や医療の質 の向上を図るために、医療関係職種や事務職員との役割分担・連携を進めるということ が、最初に謳われております。  それを受けて、夜間小児救急電話相談等のトリアージを含めて、そういうことにチー ム医療としての看護師等が大いに参画できるのではないかと考えます。あとは麻酔科医 の業務の効率化という点では、麻酔科医不足への対応として、麻酔管理を行う看護師の 活用という点で、当然育成等の課題がありますが、現行法の保助看法の範囲内で、保助 看法では第37条に「医療行為の禁止」が明記されており、看護職が主治の医師又は歯 科医師の指示があった場合を除くほか、医療機械を使用し、医薬品を授与し、医薬品に ついて指示をし、その他医師又は歯科医師が行うのでなければ、危害を生ずる恐れのあ る行為をしてはならない、と明記されております。この規定の許容の範囲内でというこ とを前提としておりますが、麻酔科医の不足に対し、麻酔管理を行う看護師の活用があ ってもいいのではないかという考えに、看護協会でも縷々検討いたしました。さまざま な有識者、関係看護管理者もお招きして、意見交換の場などをもってみましたが、この ように考えております。  また産科医の不足に関しては、助産師の活用という点で、最近は病院の中に助産師外 来あるいは正常産に関しては、助産師の裁量をもって自立して助産ケアを行う体制など が、そこここで設けられております。そういう点でも緊急時の対応ができる医療施設、 そこはすなわち医師もおられますが、助産師が医師との役割分担をして連携の下に、正 常的な分娩あるいは産後の母子に対して判断及びケアを提供していける。すなわち産科 領域における産科という診療科と関連はしながらも助産師の正常分娩関係業務を、より 一層システム的に拡大できると思うわけです。  もう1つは、へき地における医師の不足も深刻ですが、これは住民の健康にかかわっ ております市町村保健師と、この人たちの情報収集能力や第一次的観察能力等を活かし て、医師との連携をより実効性あるものにして、看護職の業務をより構築してはどうか ということです。  もう1つがポツの5つ目に書きましたが、「在宅医療の領域では、在宅がん末期患者 の疼痛緩和のための麻薬製剤の与薬」や「終末期患者の死亡に際しての適切な対応」に ついては、新たな看護のあり方についても検討がなされ、報告も出ております。この辺 では少し検討を今後に委ねるというか、継続検討になった部分もありますが、今後在宅 医療が進められるという施策の中で、特にがんの看護における疼痛管理やターミナルを 担う看護師が、もちろん医師との連携、医師の指示を受けることを前提にしながらも、 看護職のケア・業務範囲がもっと拡大していけるはずだと思っております。  このように医師確保総合対策に盛り込まれたことを受けてチーム医療をより推進する ことが、具体的に検討されてもいいのではないかと思っております。この検討会でもス キルミックスという言葉をもって、世界の潮流になってきているという参考意見も出て おりますので、提案としては医師に集中し過ぎている業務を、チームで担うという点と、 2つ目では医師の業務の効率化という言葉が、医師確保総合対策で使われていますが、 そこに医療提供者の役割のあり方を、具体的に議論する検討会を厚生労働省なりに設け て、チーム医療をより具体的に実効性あるものに進めるということで、検討会を設けて いただく必要があるのではないかと思います。以上、意見を説明いたしました。 ○矢崎座長 大変貴重なご意見をいただきました。これについてご質問、コメントはご ざいますでしょうか。 ○江上委員 大変切実なご意見を拝聴させていただき、ありがとうございました。私は 医療は門外漢ですので、がん末期患者が在宅で死を迎える患者の増大数は、時系列的に どのぐらいの割合で増加しているのかを教えていただけたら有難いと思います。疼痛緩 和ケアの推進とか、患者への対応などの部分が、非常に必要性が高いということで、私 も身の回りで、あるいはよく知っている都立病院でもそういう傾向があるものですから、 全体的な定量的な時系列で教えていただければと思います。 ○古橋委員 正確なデータはありませんが、医療計画検討会の指導課の束ねておられる 会議等でも、在宅医療の推進、在宅ターミナルケアの辺りがテーマになりました。その ときは病院で亡くなる方が8割前後、在宅が2割弱ぐらいではないかと言われたように 記憶しております。もっと在宅医療を推進して、在宅ターミナルをより多くしていこう ではないか。それが国民のQOLも保証することになるという議論は出ておりますが、 国民が本当に在宅ターミナルを選択するかどうかは、ある意味で気運を盛り上げる、医 療提供体制として、これを推進していこうということが緒に就いたところではないかと 思います。  在宅ターミナルを国民が、家族が選択するかどうかは、それに関連する情報がどのよ うに正確で、困難もあるだろうが、選択してもいいと思えるような事例等に関する情報 が、どう提供されるかによるので、どの程度具体的にあるのかという数字は、私は持ち 合わせておりませんが、厚労省のほうからあればと思っております。 ○医事課長 ただいまの件ですが、昔は病院で亡くなる方が1、2割で、在宅で亡くな る方が8、9割でした。今はそれが逆転して病院あるいは診療所等で亡くなる方が8割 以上という実態です。  その一方、いろいろな意識調査をとりますと、できれば在宅でと言われる方が相当な 割合に上っていて、それがなぜ実現しないかについては、家族の負担が非常に大きくな るとか、いろいろなことが言われています。後ほど資料はお届けしたいと思います。  そういう中で、そういった患者の意思の尊重、あるいはQOLの重視から、今回の診 療報酬改定、あとは医療制度改革の中でも、そういうことを進めていこうということで やっています。具体的に末期のがん患者でどうという数字があるかどうかはわかりませ んが、全体的にどのような形で推移してきているかについては資料がありますので、お 届けしたいと思います。 ○江上委員 身の回りに末期のがん患者がかなりおりますが、大体は自宅で療養されて いる方が多いのです。いま古橋委員がおっしゃったことは、社会的に非常に大きな問題 で、看護の部分が家庭内労働力で代替されるという傾向にあって、いま女性の就労と家 庭の子育て、介護の両立という方向にあって、きちんとした専門の看護体制が十分バッ クアップができないと家庭内労働力に置き換わってしまう危険性があるので、この議論 というのは非常に大事な観点だと思います。 ○古橋委員 在宅という言葉になっていますが、私などは地域内でということが広がる ことも必要ではないかと思います。これはいろいろな所で取組みが始まっていると思い ますが、居住系サービスという形で、住宅が個人の負担で保証されながら、ターミナル のケアを非常に手近な廊下伝いで行けるような取組みも始まっております。それは小金 井市で始まりました例ですが、従来は医療施設内ホスピスケアをやっていたドクターが、 住まいを提供しながら、すぐに訪問診療、訪問看護、訪問介護、デイサービス等が行わ れるサービス体系が広がっております。  この度の診療報酬の改定を見ても、目論まれてはきたので、本当に家族だけの負担に なったのでは、国民は選択しないと思います。そこをさまざまな方法論で病院ではない 地域内で、あるいは在宅医療でターミナルケアが進むという形に、さまざまに取組みが 始まりつつありますので、それがわかりやすく国民に情報提供されることが、非常に重 要ではないかと思っております。おっしゃいますように、家族の負担だけになったので は広がらないのではないかという気がしております。 ○吉村委員 ただいまの古橋委員の1番、2番は大変結構な賛同するものでございます ので、是非進めていただきたいと思います。最近問題になっている医療事故とか、ミス に対して、マスコミはじめ、社会から大変厳しすぎるような目が出ております。特にナ ースがちょっとした判断ミスをしたり、処置を忘れた、あるいは何かあると、すぐナー ス自身が処分されたり、起訴されたりという状況があります。  実は、私どもの大学でもナースを募集するのですが、「大学のような厳しい、危険な 所はやめなさい」と親から言われて、ナースがなかなか集まらないという状況が出てお ります。本来ナースは非常に危険な業務、もともと医療というのは危険な業務ですので、 そういうものに携わるということで、しっかりとした処遇をするとともに、社会も危険 な業務をしているのだということを、是非理解していただいて、何かあったらすぐ処分 するなどというあまりにも厳しすぎる風潮を、是非理解を深めていただくような、両面 の処置が必要ではないかと思います。 ○土屋委員 在宅医療を推進するということで、さまざまな施策が講じられようとして いる。例を挙げますと、診療報酬の上でもそういう形になっておりまして、ターミナル を在宅で診た場合は1万点(10万円)を差し上げますということになっています。よ く考えてみますと、そういう形でのインセンティブを働かせるということが、本当はど ういうことを意味しているかを考えなければいけないだろうと思います。本当に在宅医 療を受けたいという患者の希望なりか、あるいはQOLを考えてのことなのか。それに ついてはさまざまな要件が整わないと在宅医療というのは難しいのです。  はっきり言いますと、現在進められているこの施策は、医療費削減策以外の何もので もないのだということを頭に置いて、本当の意味での在宅医療はどうあるべきかを、患 者を中心に考えていく必要があるのではないかと思っています。 ○矢崎座長 そのほかよろしいでしょうか。これは極めて大事な問題ですので、随分ご 議論いただいて、最初の事務局のスケジュールを渡されているのですが、1時間近くオ ーバーしています。次の報告を手短に述べていただきます。でも議論は大事ですので、 尊重していきたいと思います。次に勤務状況調査の中間報告について、種田先生からポ イントを絞ってお願いいたします。 ○種田先生 国立保健医療科学院政策科学部の種田です。お手元の資料3をご説明いた します。まずは、皆様からご協力いただきました調査の実施の全体像をお示しした表を ご紹介したいと思います。病院からは先生方のご協力のお蔭で、最終的に6,650名の 医師にご協力いただきました。  次の頁は、診療所のドクターの数をまとめたものですが、最終的に有床診療所、無床 診療所を合わせて650名のご協力を得ることができました。大変ありがとうございま した。  引き続いて病院の分の調査の集計をしましたのでご紹介したいと思います。前回、中 間報告でいたしましたものと大きくは変わりませんが、簡単にご紹介したいと思います。 まず回答数ですが、6,650名ということで、回収率は平均76%になっています。属性 等については年齢区分による分布は資料のとおりですが、平均年齢で男性が42歳、女 性が35歳となっております。診療科の内訳は内科、外科がそれぞれ3割で主な診療科 となっております。常勤、非常勤の割合は、常勤が7割、非常勤が3割弱となっていま す。  2頁です。調査の対象となったこの病院以外での1週間の勤務時間は、常勤の方が6 時間余り、非常勤の方が30時間余り、平均的に勤務されています。役職については、 研修医のデータが約6%入っており、あとは管理職(医長以上)の方、スタッフ医師が 4割前後という割合になっています。  家庭環境についても伺っており、独身が約4分の1、配偶者がある方が6割おりまし て、夫婦共働きという方も約4分の1おります。この方の中で、フルタイムで2人とも 働いている方が7割弱おられます。  この病院に3年以上勤務されたという方に対して病院の負担について伺いましたが、 3年前と比較して、病院での勤務の負担が増えていますかという質問に対して、「増え ている」という方が7割弱、「減っている」が5%、「変わらない」という方も3割弱 おられました。「増えている」もしくは「減っている」という方に理由を聞いたところ、 「外来患者の数そのものが増えている」が5割、「患者一人ひとりに費やす時間も増え ている」が3割弱。同様に入院患者の数について「増えている」が3割で、「入院患者 1人に費やす時間が増えている」が26%ということです。教育指導に関しても、3年 前と比較して「負担が増えている」が約半数。病院内の診療外の業務、医療安全の会議 等についての「負担が増えている」が6割おりました。  3頁です。1週間当たりの勤務時間は実際の始業時間と終業時間を伺って、それより 算出した1週間当たりの勤務時間は、約63時間ということで、分布に関してはお手元 のような、ほぼ正規分布になっています。男性と女性を分けてみますと、1週間で男性 が平均で63時間、女性が60時間働いています。  4頁です。勤務時間の内訳で、診療の勤務の開始、終了とは別に、外来診療に要した 時間、入院診療に要した時間、自己研修、教育、研究、休憩、その他それぞれに関して、 どのぐらいの時間をかけていますかということを曜日ごとに伺いました。曜日ごとの集 計が2段目の土曜日、日曜日のあとにまとめたものですが、外来診療で15時間、入院 診療で24時間、自己研修が4時間、教育が2時間、研究が3時間弱、休憩が5時間弱 で、その他が7時間弱、合計60時間となっています。診療そのものにかける時間は1 週間で、この結果を見ますと、ほぼ40時間という割合になっています。  診察した患者の数についても伺い、曜日ごとのデータがありますが、平均して外来に 関しては平日は17名前後、入院患者に関しては12名から13名です。  5頁です。On-callの有無についてです。これも曜日ごとに伺っていますが、最終的 に集計をとりますと、1週間のうちにOn-callが「なかった」が約半数で、1回が15 %程度、2回が8.9%という分布になっています。  6頁です。この病院のデータについて、非常勤の医師についての特徴を調べてほしい ということで、少し分析をしました。非常勤の医師は、先ほどのデータによりますと、 病院の中で約3割弱程度いるわけですが、その中で男性、女性の属性に関しての結果は、 平均年齢が男性で42歳、女性が34.5歳となっており、この方たちのそれぞれの勤務 時間は男性で25時間、女性が30時間です。この方たちは調査の対象となった病院以 外でも勤務をされており、その時間について伺ったところ、男性で35時間、女性で25 時間となっています。これらの方々の診療科は常勤とほぼ変わらない分布になっていま す。役職については、研修医の中に、自分は非常勤だと認識しておられる方がいて、1 割程度データの中に入っています。家庭環境についてですが、独身が35%、配偶者あ りが5割です。これに関しても分布としては常勤の方とあまり変わらないように思いま す。  7頁です。分析の2として、診療科別の1週間の勤務時間を分析しました。資料のよ うな形になっており、常勤の方で内科、外科、産婦人科、小児科が60時間余、精神科 で50時間、麻酔科で63時間、病理が55時間、放射線科が57時間です。  8頁です。常勤と非常勤の方の1週間の勤務時間の分布はどうなっているかというこ とで、参考程度にグラフを提示しました。  9頁です。勤務の負担と勤務時間ということで、3年前と比較しての勤務の負担つい て伺ったところ、「減っている」という方々の1週間の勤務時間は53時間、「増えて いる」という方の勤務時間が63.9時間、「変わらない」が56.5時間で、グラフにす るとお手元のような形になっています。以上が病院に勤務する医師の調査の結果です。  引き続いて有床診療所の医師の調査結果についてご報告いたします。177名にご協力 いただきました。属性として男性の平均年齢が57歳、女性が48歳です。年齢ごとの 分布は資料のような形になっています。診療科については、内科がほぼ5割、外科が4 割、産婦人科が14%、小児科が1割という分布になっています。診療所における病床 の数は平均して16床という回答でした。常勤、非常勤の割合は、ほとんどが常勤の方 で161名、9割が常勤で、非常勤が約1割おられました。それぞれの常勤、非常勤の 方にその診療所以外での勤務時間について伺ったところ、常勤が4時間ぐらいその診療 所以外で働いておられ、非常勤の方は30時間ぐらいということでした。  次の頁です。役職についてですが、診療所の所長が75%、所長以外の勤務医師が1 割程度です。家庭環境については、独身が7%程度、配偶者があるという方が圧倒的に 多くて8割です。夫婦共働きの方が4分の1ぐらいおられ、その中で両方ともフルタイ ムで働いている方が74%という割合でした。診療所に3年以上勤務されている方に関 して、3年前と比較して勤務の負担が増えていますかと伺ったところ、「変わらない」 が35%、「減っている」が3割程度、「増えている」が36%という結果でした。その 理由については、外来における患者の数が「増えている」が3割、1人ずつに費やす時 間も「増えている」が3割、入院患者の数について「増えている」が10%程度で、入 院患者の1人に費やす時間については15%、教育に関しては13%、診療所内の会議等 の業務についても負担が「増えている」が3割程度という結果でした。これらの方たち の1週間当たりの勤務問題、実際の始業時間と終業時間について伺って、その分析結果 から算出した勤務時間は、全体で1週間54時間余りです。男性で54時間、女性が57 時間という分布になっています。  4頁です。勤務時間の内訳を聞いており、外来、入院、自己研修、教育、研究、休憩、 その他を曜日ごとに伺いました。1週間の合計が2段目の土曜日、日曜日のあとにあり ますが、外来においては33時間、入院においては6時間弱、自己研修が2.3時間、教 育が0.5時間、研究が0.2時間、休憩が6.9時間、その他会議等が2.4時間で、内訳 ごとに伺った1週間の勤務時間は51時間となっています。やはり診療にかけておられ る1週間の時間は、外来診療、入院診療を合わせても40時間程度となっています。患 者の数についても伺いました。平均して平日の外来患者が70名前後となっています。 受持ちの入院患者については、診察した患者の数が30人前後です。  5頁です。On-callの有無についても伺いました。1週間当たりのOn-callの数は約 半分の方は、調査の対象となった週では1度も呼ばれなかった、担当ではなかったとい うことで、1回が5%程度、あとは4%、1%という形で続いています。7回という方 が35%いました。以上が有床の診療所についてのご報告です。  続いて無床の診療所についての集計の報告です。473名に回答をいただき、属性に関 しては平均年齢が男性が60歳、女性が約55歳となっています。診療科の内訳は、内 科がほぼ半数、外科が3割、あとは産婦人科、小児科、精神科と続いています。常勤、 非常勤の割合は、96%の方が常勤でした。これらの方々に診療所以外での勤務時間をお 伺いしましたところ、常勤の方が6時間、非常勤の方が大体30時間、ほかの場所で働 いておられるということでした。  2頁です。役職についてお伺いしましたところ、88%が診療所の所長でした。家庭環 境は、独身の方が7%で、配偶者のある方が8割、夫婦共働きという方が約3割いまし た。その中でフルタイムという方が70%いました。3年前と比較した診療所の勤務の 負担についてお伺いしたところ、「変わらない」が4割弱、「減っている」が3割、「増 えている」が3割でした。その理由は、「外来患者の数が増えている」が3割、「1人 のかかる時間が増えている」が24%、「教育・指導」も24%になっています。  3頁です。このような方たちに1週間当たりの勤務時間、実際の始業時間と終業時間 をお伺いしまして、それから得た分析結果の勤務時間ですが、全体で約50時間という ことです。性別で見てみますと男性がほぼ50時間で、女性が46時間余りになってい ます。  4頁です。勤務時間の内訳を外来、自己研修等内訳ごとにお伺いしたところ、2段目 の日曜日のあとにまとめた数字が1週間の合計です。外来診療が1週間で35時間、自 己研修が3時間、教育研究等が1時間弱、休憩が6時間、その他が3時間、1週間の合 計をしますと48時間というデータです。診察された患者の数は、平日ですと大体60 〜70名、土曜日でも50名余り、日曜日でも4名程度を平均して診察されておられま す。  5頁です。On-callの有無についてお伺いしましたところ、約9割の方はOn-call等 は0回という結果です。駆け足で誠に申し訳ありませんでしたが、以上が今回の勤務状 況の調査の結果です。 ○矢崎座長 どうもありがとうございました。実態調査で、だいぶ明確になってきたと 思いますが、いまの報告にコメントあるいはご意見はありませんか。 ○小山田委員 質問です。3頁の図で、平均で63時間ということですが、労働法が定 める40時間以上、あるいは労働法を守っている40時間以内の全体のパーセントを教 えていただきたいと思います。ついでに、もし40時間を守るとすると、どのぐらいの 医師の数が必要となるか。 ○種田先生 4頁を見ていただいたほうがよろしいかと思います。勤務時間の内訳ごと にお伺いしたデータがあります。2段目の日曜日のあとのデータを見ていただくとよろ しいのですが、外来診療にかけていらっしゃる時間が1週間で15時間、入院診療が24 時間。この診療にかけていらっしゃる時間そのものの合計は、ほぼ40時間ぐらいにな っています。そのほかに自己研修、教育、研究、救急、その他とありますが、これらの 内訳の時間のどの部分を勤務時間としてカウントすべきかというのは1つの課題である と思いますので、先ほどの始業時間と終業時間から出されました60時間余りという数 字そのものを、週40時間の労働基準法の適用という議論をする前に、この勤務時間の 内訳をどのように我々は考えるべきかといったことが、まず必要ではないかと思います。 ○水田委員 2頁で、この病院に3年以上勤務して、仕事量が増えたとおっしゃってい ますが、それはプロモーションしたことによって責任も重くなるから、仕事が増えたと 考えてはいけないのですか。いま突然、医師の仕事量が多くなっているとみんなは言っ ています。確かにそういう面もあると思いますが、それをどう感じているかということ と、ただの感じなのか、何かきちんと理由があるかの証明ができるかどうかです。 ○種田先生 その証明は非常に難しいと思いますが、3年いらっしゃれば、確かにプロ モーションされる方も、かなりいらっしゃるのではないかと思います。ただ、3年前と 比較して減っているという方は5%いらっしゃったり、変わらないという方は3割程度 いらっしゃいますので、確かに増えているという方は6割余りいらっしゃるのですが、 回答にはなっていないと思いますが、非常にいまご指摘いただいたことまで踏み込んだ 形の分析は、今回の調査からは少し難しいと思います。 ○山本委員 同じく2頁のいまの問題ですが、現場の医師が一般病院で基本的に増えて いると。これは感覚として確かにある。では、どこが増えているかといいますと、1つ は医療法や診療報酬の改定によって、1人を見て入院させるとなると書類を10枚書か なければいけない。こういうところが非常に煩雑になって大変だということがあります。  もう1つはここに書いてあるように、これはまさにいいデータだと思いますが、臨床 研修の必修化によって教育・指導が増えたことで大変だと。これは当たり前の話で、や らなければいけないと思います。もう1つは、病院内の診療外業務の委員活動や会議が、 いまは普通に忙しいですから、大体院内の会議は朝7時半に集まるとか8時に集まると か、あるいは夕方6時からやろうとなってきます。そういうことを含めて現場の人は、 かなり忙しいという感覚は持っていると思います。その中でこのデータは非常にいいと 思いますが、このデータをベースに考えると、病院として外来のあり方、外来の機能、 病院の外来をどうするのだろうということが大きな問題の1つだと思います。教育・指 導は当たり前だと思いますから、この時間は減らしてはいけないと思っています。ただ、 委員会活動とか会議とか、いちいち医療法の中でこういうメンバーを作らなければいけ ないという規制が非常に強いので、もう少し規制の緩和と本来専門的にマネジメントす る立場から会議をやれば、現場の医師をそんなに連れてこなくてもできる話ですから、 この辺の見直しは全体の中では是非必要だなと感じました。 ○矢崎座長 大概、委員会とか病院の運営に関する委員会は5時過ぎに行うから、どう してもこういう状況になりますね。 ○土屋委員 6頁の非常勤の先生が1週間27時間の仕事をして、「この病院」以外で の33.4時間を勤務しているということは、逆に言いますと33.4時間のほうが実は常 勤の換算になります。大体週4日32時間が1つのルールとしてはあればいいというこ とになっていますので、その先生方がそれ以外はよそへ行って27時間、合わせると、 大体60時間なのです。今日は、いろいろな数字をお示しいただいたけれども、どうも ドクターは平均、週60時間は働いているのだということが言えそうです。  もう1つは、週休2日制の病院と日曜日だけがお休みのところが一緒になっています が、これは分けないと、それで薄められている部分があります。ですから本来は、民間 病院で土曜日をお休みにできるようなところは少ないわけで、その辺りの区分をしてい ただくことも必要かなと思います。そうすると、個人当たりはどうかは別にしまして、 民間病院はもっと負担も相当に大きくなっているのではないかと思います。 ○種田先生 コメントをありがとうございました。非常勤で勤められている先生方に関 しては、その調査の対象となった病院以外での勤務時間の部分について、その病院で常 勤として勤められておられるのか非常勤として勤められているのかについてをお伺いし ていませんので、はっきりしたことは申し上げられませんが、中には非常勤という形で 複数の病院で働いてる方もかなりいらっしゃるとはお伺いしています。 ○矢崎座長 この件につきましては中間報告ということで、もう少し煮詰めたデータは あとで報告いただくということにしまして、だいぶ時間も過ぎていますのでご議論は尽 きないと思いますが、ここでこの問題に関しては一度終了させていただきます。どうも 種田先生、ありがとうございました。  それでは長谷川先生、毎度恐縮ですが、ごくごく簡略にお願いします。 ○長谷川委員 なるべく短くやりたいと思います。ボリュームが大きいので少し早い話 になりますが、ご勘弁ください。種田先生からのご発表と前回の医師需給のモデルプラ ンを併せて、この調査をどう考えればいいかについて私なりに分析しましたのでお話を 申し上げて、今後の議論に供したいと思います。スライドを使いながら説明します。  まず、医師労働の現状は1週間の平均、常勤を見ますと、こうなっています。実は、 すべての労働は病院では70.6時間という想像を絶する数字になっていますし、診療所 でも55.2時間です。しかし、内容を見てまいりますとかなり複雑でして、外来と入院 という診療行為だけを見ますと、病院でも平均39.6時間という法定の40時間以内の 労働になっています。平均ということは、あとでお見せしますが若人では40時間を越 していますが、高齢者では減っています。診療所においては35時間とありますが、果 たしてこの会議や研究等をどう捉えたらいいのか。我々が考えてみたのは、教育や会議 は業務の一環だろう。そう考えますと48.6時間になります。診療所におきましては平 均38.9時間で、約40時間以内に収まるということです。  ところが、ザーッと積み上げますと、そのほかの研究、自己研修、休憩は大体病院で 60時間、診療所で48時間ぐらいになってまいります。実は、労働開始時間と労働終 了時間の間と積上げ時間の間には数時間の乖離がありまして、病院の場合は4時間ぐら い、診療所の場合は数時間ぐらいになっています。それは何を意味するのか。私の解釈 では、労働開始、労働終了時間というのは病院から出てきた時間と病院に帰った時間と 捉えた方が多かったのではなかろうかと思いますので、その間は一種の待機ということ になるのではないでしょうか。そう考えますと、自宅におりましても外科医の場合は土 ・日でも待機をしているので、それも労働時間と言えば労働時間かなと思われてまいり ます。院外は結構多くて、病院の常勤医が7時間、診療所でも6時間働いている。次の スライドが年齢階級別ですが、かなり明確に若人のほうがたくさん働いている。90時 間に近い。  非常に興味深い特徴は、入院診療が年齢階級で異なっている。若人はたくさんの入院 を診ていて、高齢者になるにしたがって外来診療はあまり変わらないけれども、入院が 減っています。もっと興味深いのは、男女の常勤医に関してはあまり変わらないという ことで、両方を合わせますと女性は男性の95%で、5%しか少なくない。非常勤は常 勤と比べますと、病院内では42、43%の労働時間ですが、残りはほかの病院でも働い たりしていますので、全部合わせると常勤とあまり変わらない、つまり常勤の85%程 度まで働いているということです。非常勤だけを取って男女を比べましても、女性が95 %ということでそれほど差はない。  分布を見ますと、病院内の分布に関しては、常勤がきれいなベルカーブを示している のに対して、非常勤は左にスキューしています。ところが総時間を見ますと、ともに正 規分布を示して10時間ほど非常勤のほうが少なく、平均では85%です。そう考えま すと、配付資料には書いていませんが前を見ていただきますと、医師の勤務実態はかな り複雑で、常勤医プールからも結構たくさんの非常勤に行っている。事実、今回の調査 でも45%の方は何らかの院外活動をしているというお答えになっています。非常勤プ ールも診療所の常勤プールもあるのです。非常勤プールも、病院と診療所の両方に働い ている、あるいは病院だけに行っているというグループがあるように書かれていますが、 おそらく病院の非常勤のプールは15〜16万ぐらい、診療所の常勤のプールは10万前 後ぐらい、あと4〜5万ぐらいが非常勤のプールということになっているのでしょうけ れども、実態を把握するのはなかなか難しいです。  右側の数字は要請調査のフルタイム換算した医師の数になっていまして、病院の医師 は20%の非常勤によって支えられている、診療所は14%に支えられているとなってい ます。総括として言えることは、総労働時間で平均が70%を越えるといえば非常に厳 しい状況ですが、定義によって入院とかあれだけを診療時間と捉えれば、大体法定時間 と一緒だと。しかし、さまざまな形態を含めてここには書いていませんが、待機時間ま でを含めてあるのではないか。若人ほど働いていて、それは主として入院である。先ほ ど説明しました高齢になるにしたがって、会議の時間が増えてきます。  女性勤務は、パターンは男女ともほとんど変わらず、全体的に5%の圧縮。非常勤は 院内の勤務時間は少ないけれども、両方を合わせますと85%程度で、結構フルタイム 的に働いている。結論から申しますと、医師の労働はなかなか複雑で、これまでにあま り類似の調査や研究がなかったのはそのせいだと思われますが、定義がなかなか難しい。 拘束時間なのか総時間なのか、出勤帰宅時間なのか診療時間なのかによって、ずいぶん 変わってきます。そして、複数の施設に跨って働いている場合が多い。そう考えますと 非常勤の労働行動は、いわゆる一般的な労働のパートタイムで行って帰ってくるとか、 一部分だけキゾッてやるというのではなくて、かなり複雑な要素を呈している。病院勤 務医は、診療所に比べると時間が長くて、また労働密度も濃い。私の分析では女性医師 の勤務時間は、比較的にほぼ同等だと思われます。  国際比較をしますと、EUは規制で40時間以内に時間を圧縮しようということで、 夕方の5時になると部長が病棟に行って、若い医者に「早く帰れ」と言っているような 状況です。それはここ10数年間そうみたいで、これを見ていただくとわかりますが、 ほとんどの国が40時間前後で推移していますし、いくつかの例外的な国だけがそれで も45、46時間ということですので、日本よりはずっと短い。もっと興味深いのはフラ ンスとドイツで、若人の労働時間が少なく、中年の労働時間が若干多いパターンになっ ていまして、日本と違います。唯一、イギリスだけが日本と同じようなパターンですが、 同じスケールで書いています。つまり、日本のほうがイギリスよりもこんなにたくさん 働いているということです。したがって、労働時間は日本のほうが多いにもかかわらず、 どうも医者の労働生産性が低い。1人当たりの病院医が退院させている1年間の人数を 見ますと、日本は83、84ぐらいです。それに対してフランスは160、イギリスは140、 ドイツは130、オランダは100前後ということで、日本よりも86%、64%、40%、 18%多い。これはどういうことなのか。日本の医師は無能なのか。あるいはダラダラと 働いていて、さぼっているのか。とんでもないと思います。  まず第1には、外来の負担があると思います。日本は入院以外に外来を負担していま すので、イギリスもオランダも若干の負担はありますが、ドイツ、フランスに至っては ほとんどが外来を診ていない。そうすれば、こういう負の相関が出てきます。次のスラ イドにいきます。ほかの職種の投入は1病床当たりの投入を見ますと、ほかの国々では 日本よりずっと多い。看護師に関してはいちばん少ないし、ほかの従業者に関しても日 本がいちばん少なくて、イギリスが多いです。まとめますと、日本の医師の勤務時間は 欧州の医師に比して長い。日本の見かけの生産性、つまり年間退院患者を医師数で割り ますと、欧州に比べてかなり低い。その原因は3つ想定されて、外来負担が大きい。そ れから、医師の労働が未分化で、他の職種が実行可能な仕事を実施している。例えば書 類等。  横道に反れますが、私が国立病院の次長をしていた時代に、民間病院から国立病院に 外科医に来ていただきました。その方は、民間病院で働いていたときより手術の件数は 大幅に減ったのに、労働時間は忙しい。いまはそんなことはないと思いますが、国立病 院では当時書類を書かせて、労働単価の高い人間に労働単価の低い仕事をさせていると いうので、大変忙しいという苦情があったのを覚えています。  3つ目は、他職種の病床当たりの数が少ない。アンケートを見ますと、これは医局の 担当者全国約2,000人に聞きましたが、1988年から2001年の間に、次第に過剰感 が減ってきている。これは以前に一度お見せしました。この分水嶺は大体1999年から 2000年前後に、不足感がなくなってきていることをお示ししました。これは医療側の 受け止めです。  マスコミに現れたものを見ますと、かなり妙で、敬称を省略しましたが佐々木委員会 から矢崎委員会までの間、医師過剰というマスコミの記事の件数が次第に減少し、突然 医師不足という記事が増えています。ちなみに、過剰についてはそれほど数は多くあり ませんで、年間50前後だったのですが、不足については800で、今年も既にたった 3カ月で500〜600になっていますので、このままいくと今年は1,200ぐらいの記事 になるかと思いますが、2003年ごろから急激に増えているということです。だから、 医局の認識も少なくともマスコミは国民の意見を代表するというのは大いに疑問がある ところですが、国民の意見であるとするならば不足感が増強している。  過重労働に関する関連記事も、数は少ないですが2000年以前にはほとんどゼロであ ったものが2001年以降に増加していて、今年はこれだけ増えてきている。離職に関し ても同様に数は少ないですが、既に去年の数に達している。おそらく今年は3倍ぐらい になるのではないでしょうか。特定の新聞を出してきて恐縮ですが、出てきています。  さらに、私は指導課の命令で、医療連携のフィールド調査に出ています。北海道から 九州まで、全10数地域を訪れ、約20ぐらいの病院をインタビューしてまいりました。 院長先生にお話をお聞きしました。そうしますと、どこに行きましても共通して言われ る現象を発見しました。大変恐縮ですが、いまごろ気が付いたのかと怒られるのですが、 急性期病院におきまして40代前半の活動的な病院医師の開業が、いまはエピデミック みたいに広がっている。それも、大体内科、外科、比較的に病院の活動の中心を成す部 分がやめていっている。さらに突っ込んでお聞きしますと、ここ10年間ぐらいインフ ォームドコンセントなどの診療行為以外の必要な手続や、入院指導方針に関連する書類 が増えて負担感ならびに実際の負担が増えていく。そこに、5年前に横浜市立の事件が あって、さらに拍車がかかって、かつ精神的にも負担がかかっている。そして、診療報 酬制度で以降悪化して、最後に半年間でドミノ現象、この半年が厳しいのだというご指 摘でした。つまり、1人抜け、2人抜けする限りでは、なんとか持つ。しかし3人、4 人、その瞬間にもう全部持たなくなって、ドーンと診療科がなくなる。特に某名古屋地 域の病院では、呼吸内科がドーンとなくなってしまった。そうすると、今度は呼吸外科 の仕事がなくなってやめてしまうということで、救急病院の診療機能が歯抜けのように ポロポロ欠けていっている現象があり得るわけです。  なぜやめるのか。開業にも、将来展望があるように思われません。あとで申し上げま すが、将来は外来の件数が減ると思われますが、それも見越して病院の現状に嫌気が差 しているというのが答えになっています。私どもの主観的な分析ですが、どうも病院長 に権限がない病院に多く発生しているようで、郡部の中規模の公的病院に多発している。 郡部というのは大学の医局からすれば、引揚げ対象としてまず第1に想定するところで しょう。意外と私的病院や、公的病院でも権限がある病院にはわりあいと医師は残って いる。長期ケアの病院にはあまり認められない。開業を助けてアドバイスする事業者が いて、医局の教授にまでDMが来たと怒っておられる教授がいました。この現状は極め て由々しき事態と思いまして、後に述べますが日本の医師需給の病院におけるバランス は不足であるようですので、現在40代の方がやめていっているということは、今後の 日本の急性期病院の将来が非常に危ないのではないか。これまで、一定のバランスが取 れていた給与や労働時間、労働負担、名誉、やりがいといったもののバランスがいま崩 れていっているのかなと思われます。  麻酔科、産婦人科、小児科がどうでもいいという意味ではありませんが、病院の中で 4、4、5%ぐらいの数です。したがって、なんとかやり繰りができないことはないと 思いますが、内科系、外科系でそういうことが起こってくるとすると、3分の1という ことがありますので、病院全体に非常に大きな影響が出るというので、危機感を持って います。事実、年齢階級を見ますと、病院の医師は40代前半がかなり上のほうを占め ています。近年2002年を見ますと、結構高齢の医師も増えてきているとはいうものの、 特に内科、外科におきましては40代前半が軍隊でいうと小隊長みたいな、ハブみたい なもので、これが経験を積んでしっかりスーパーバイズして監督してくれて、そのあと でバッというところがポロポロと抜けてしまうと、病院としては大変パニックになると いうことです。  なぜかというのはいろいろと議論があるのでしょうけれども、40代前半というのは 管理職に移行するときで、上の世代が管理職の位置を占めていく。そうすると、長期的 には将来的には展望もない。先ほど申し上げた、自分の専門以外の事務みたいな仕事が 膨大に増えてくる。そして、医療事故が増えてくる。給与は上がらない。ハイリスク、 ローリターン。では、少し見通しはアンサートンでも開業しようかという選択というの が考えられるのかなと。こうなった背景というのは過去10年間ぐらいの病院全体の機 能分化の流れがあった上に、医療事故等があった。横浜市立をきっかけに医療事故の記 事が増えたと言われていますが、訴訟自体は増えていました。  次に、インフォームドコンセントの関連記事も大変興味深い。1999年をピークに次 第に増えていまして、1999年から減っている。アメリカのデータによりますと部位間 違い事故はとてもたくさん起こっていまして、日本でも3日に一遍ぐらい起こっている 計算になるのです。ひと間違い事故はそんなに起こっていませんが、なぜ横浜市立が注 目されたかというのは、背景に一般の国民の興味があったのではないか。これがインフ ォームドコンセント関連の記事に現れているというのもあります。ということは、つま り医療技術が発達してまいり標準化され、医療が複雑化していって機能分担が必要とさ れて、しかも国民側からは医療の質と安全の向上が求められている。国民や患者の側か らすれば、権利意識も向上し情報も発達してきて、情報提供が求められている。やはり インフォームドコンセントあるいは開示、あるいは公開といったものが求められてきて、 その間現場の医師は手続が増える、書類が増える、説明は当然に医療の一環ですから必 要だと思われますが、その不必要な防衛的診療、検査等が増えてくる。そういうことが 起こっているのではと。  病院の業務の過程というのは、これまでの昭和23年の医療法の世界で支えられてき たインフラが、一般の方からすれば高齢化、疾病の重篤化、医療の複雑化、期待の増大 がある。ある病院の先生に言わせると、国民は医療に関して、小型の自動車の値段でメ ルセデスベンツに乗りたい。診療報酬の体系も法律体系も、それに見合わない。国民や 医療の内容は欧米並み、世界標準が求められているけれども、病院のインフラが整って いない。これまでのように医師が中心で、特にオーダリングが済みますと医師の権限が 強化されて、その辺の役割分担の見直しを見なければいけないのではないか。もう一度、 院内の組織を考えていかないと。いわゆる、病院の業務過程のリエンジニアリングが必 要ではないか。つまり、これまでのインフラをどう捉え直していくかが課題。私はこの 10年、病院管理研究所におりますので、大変内心忸怩たるものがあります。  まとめますと、近年、急性期病院の医師に負担がかかっていて、しかも最近急増して いる若年医師の離職が加速している。そして、国民の期待や医療そのものの複雑化に、 病院の経営がうまく対応していない可能性がある。  今後の展望ですが、供給モデルというのは数量を増やすか生産性を向上させるかとい うことしかございません。供給に関しては前回、モデルのご提案をしました。  次の頁です。前回のモデルによりますと、今後増えてくるのは病院の医師よりも診療 所の医師が多い。理由は簡単で、医師は将来、高齢化してまいります。医師の定員数は 変わりませんから、高齢者が増えていく。医師は通常、高齢化すると病院から診療所に 移行しますので、全体的にはこれから診療所の医師のほうが増える。  未来予測の図が次の頁にあります。ところが現在、医学部定員を10%、20%と増や しましても、実質的な医師数増というのは2030年ごろしか期待できない。まず、トレ ーニングに10数年がかかる。それから増えても微々たるもの。したがって私が危惧す るのは、もし医学部定員を増やした場合に、それで現在の病院の医師の不足を解決する ことで安心してしまう副作用、誤解が誤解を生じて安心するのではないかという心配を しています。さらに、以前に申し上げましたように、日本の場合は少子化ということで、 各出生コホートに占める医師の割合が今後、極めて少なくなってくる。150を切るので はないかということもあります。  したがって、供給に関してのまとめとしては、今後増加するのは、若年に関しては女 性医師ですが、高齢医師、診療所医師が主で、医学部定員は来年から増やしても実質的 な増員は期待できない。例えば、来年から定員を50%を増やすとなると、また少し違 うかもしれないけれども、そういうのは非現実的な選択肢だろうと思います。次に少子 化の影響で、各世代出生率が低下していて、世代ごとの医師数は増加傾向なので、医学 部定員の増加には慎重であるべきだと。したがって、ここが重要な結論ですが、当面、 手持ちの総医師数の中で病院医師数を確保し、かつ生産性を向上することが急務である。  最後に、需要の動向です。外来は減ってきています。特に、医師数で割り出しますと 診療所も病院も低下していますが、1つは処方箋の長期化ならびに医療費自己負担増が 影響しているように思われます。事実、主要な慢性期疾患を見ましても次第に長期化し ていますし、しかし未だに高血圧、糖尿病は10数日前後ということで、私は試算しま したが、これを60日に延ばしますと日本の外来は大体20%が減るということになり ます。  入院に関しては当然、実数はコンスタントに増えています。しかし、ここまでは病院 医師が増えてきました。したがって割り出しますと、1970年代から比べて1980年 代の半ばに、病院医師1人当たりの退院患者数は低下しまして底落ちしました。しかし、 1995年、1996年ごろからまた増加しまして、現在少し減少の傾向があるかと思われ ますが、それほど増加しているようには見えない。しかし、患者の中身を見ますと高齢 者が増えています。そして、手術が増えている。大変驚くほどに、約40万しかなかっ た60歳以上の手術が現在180万まで増えている。しかも、85歳以上の手術が20万、 計算しますと80歳以上だけでも40万でした。  まとめとしましては、外来については近年、診療間隔の延長や自己負担の増加によっ て減少している。入院は増加しているけれども、医師も増加し、医師当たりの退院は僅 かに増加している。しかし、一人ひとりの扱っている患者は重症度が増加しているし、 先ほど申し上げましたように重症度以外に、インフォームドコンセントや医療事故に対 する危惧等で実際の仕事量は増えている。外来については柔軟に対応が考えられるが、 当然高齢化によって増加する部分や高血圧や糖尿病の未治療の部分で増加する部分があ るけれども、調整可能と。しかし、入院に関しては比較的かたい。ただ、厳密な入院の 適用や手術の適用、80歳以上の手術が本当にどれくらい必要なのかということが検討 される必要があるのではないか。まとめますと、当面、病院医師の確保は急務であると 思います。  提言。現在の外来の課題を見ますと、病院で6億回、診療所で10億回、合わせて16 億回の外来が日本にあります。ヨーロッパの場合は病院での外来はほぼゼロです。それ がトーンと診療所に移行すればいいということですが、それは過激と考えて、入院に付 随する外来が6〜12回発生すると考えますと、入院は1,500万回ですので日本の場合、 1〜2億回病院が受け持つ必要がある。そうしますと、4億回を診療所へ移行する。そ うすると、病院の外来の労働が大体4分の1に減る。それは4億回増えますので診療所 に負担がかかるわけですが、現在診療所への外来患者数は減っていますし、先ほど申し 上げた受診間隔の延長等によってさらに数十%の減は可能ということですので、現在の 労働とあまり変わらないのではないか。そうすると、医師労働時間は病院では約18% 減ということが可能になるのではないでしょうか、外来部分だけですが。これは先ほど 申し上げました院内の見直し等は入っていませんので、さらにいくらかの積み上げは可 能かなと。そう考えてまいりますと、これまで言われてきた医療の質を良くするために ケアの継続、紹介・逆紹介が重要というだけのみならず、病院内の医師の労働を軽減す るためにも逆紹介が常に重要となってまいります。  さらに人事も、例えば診療所の先生方が病院に来て外来を助ける。つまり、病院の医 師、診療所の医師と固定して考えるのではなく、お互いにオープンに交流していき、病 院と診療所をネットワーク化していくことが今後必要なのではないでしょうか。私は病 院のウォールレス化、壁がなくなるという表現を使っていますが、そう考えて提言とし てまとめますと、医療システム全体としては供給側では医師数を増やす。先ほどご議論 しました医学部定員の増というのは、最低10数年間、下手すると20年間は期待でき ませんので、手持ちのでやる必要がある。外国人医師についてはいまのところ期待でき ないとすれば、医師数の増は、休眠医師の発掘、女性医師の支援。女性医師の支援を算 定してみましたが、男性と同じように働いていただくとしても4,000人程度でした。 ですから、なかなか数は難しいのではないか。休眠医師はどこにいるのか。そうすると、 あとは本当に他職種への移行(スキルミックス)、病診連携でもう一遍役割分担を考え て、医療システム全体として効率を高める。この辺が大変重要になってきます。  需要に関しては、予防を強化して労働を減らす。医療の標準化を推進して、臨床の卒 後教育等を強化して入院や手術適応を厳密化して、なるべく入院回数や手術回数を減ら していく。外来は、受診間隔を延長していって減らす。入院は、入院の適応ならびに手 術適応を厳密化していくといったことが必要です。  その中でも特に病院医師・医療の確保が急務です。医療体制に関連しては、外来の診 療所への移行、逆紹介、病診連携の推進、病診での情報の共有等が必要で、おそらく医 療システム全体で取り組む必要があるかと存じます。病院経営の効率化が必要で、まず は医師間内部のチームやワークシェアリング、シフト。現在、看護師がやっておられる ようなシフト化。そうすると、主治医等の概念がずいぶん変わってくるのかなと考えら れますが、そういうことを大胆に考えていく必要があるのかなと。他職種への業務の移 行と、他職種とのチームの強化、診療所からの支援。日本型のオープンシステムのよう なものを考えていく必要があるのかなと。それから、高齢医師への勤務環境の改善。な るべく医師を病院につなげておく。これら全部を含めて、業務の過程の見直しと効率化。 前々回に、慶応大学の外科では、昼間でも病院当直を置いておられるとか、私が見まし た地方の市民病院では夕方の外来は比較的に高齢の医師が、夜は若年者ということでチ ームを組んでおられるとか、東京でも既に推進されていると聞いていますが、地域の小 児科の先生方に外来を手伝ってもらって、できればそのまま患者を診療所に持って帰っ ていただく。そういったようなことが必要なのかなと思われます。以上です。 ○矢崎座長 どうもありがとうございました。大変貴重な膨大なデータをお示しいただ きまして、ありがとうございました。いまのお話に、どなたかコメントあるいはご質問 はありますか。 ○古橋委員 最後の枠の医療体制の整備ですが、委員は日本の病床数をどうお考えにな るかです。医師確保という点では、今日ずっと出てきたのは病院医師の労働過重が、か なり根っこにあることも見えるわけですが、日本の病床数についての医療体制という点 では、お考えはいかがでしょうか。 ○長谷川委員 国際標準から考えると、外れ値ぐらい多いです。つまり、急性期以外の 病院も病院と定義されている傾向があります。長期ケアの病院を除くと、それでも日本 は病床数が多いですが、かなり世界標準に近付いてまいります。以前に某研究者が分析 されたことがありますが、アメリカの特別養護老人ホームと急性期病院の両方を合わせ て平均在院日数を計算しますと、約30日。日本の平均在院日数より少し……ですので、 日本は老人ホーム的な機能をしている病院が多いということになるのではないでしょう か。したがって、そこでの福祉的機能に特化をしていって、そこにおられるような看護 師や医師を病院のほうにお働きいただくとすれば、かなり楽なのかなと。といいますの は、日本の正看の人口に対する率は国際標準の平均です。ところが、病床数があまりに も多いので、病床数に対しての日本の看護師数が世界最低、例外的に低いです。ですの で、老床をやめて看護師を病院に移行すると、現在の数でもそこそこ世界標準の病床対 看護師数は確保できる計算になります。これは単純な計算上のお話ですが、お答えにな りましたでしょうか。 ○古橋委員 実は病床が多いという議論はずっと出ていますが、例えば病床の多いこと が本当に問題であり、解決しなければならないことなのかどうかという点では、日本の 平均寿命の非常な長さとか、そこで受けている医療が国民の健康を非常に保証している という議論もあるのではないかと思わないでもないのです。一方、看護師不足がいま、 診療報酬改定絡みでものすごく問題になってきました。その解決の1つは、病床数が全 体にもう少し減少することをもって、看護職の割合増が導けるという理屈はあるのです。 ただ、本当に病床数を減らすことが正しいのか正しくないのか、私は単純には多い。減 らす方向が必要だと思いますが、その辺りは長谷川委員のお立場で国立保健医療科学院 のご検討とか、理論的にはどんなご意見があるのかなと思って伺いました。 ○長谷川委員 国立保健医療科学院でも、また世界的に見ても病床数が寿命の延長に貢 献しているという研究も見たことがなければ、議論も聞いたことがありません。スウェ ーデンは日本に次ぐ世界第2の長寿国ですが、病床数は大変少ないです。 ○吉新委員 長谷川委員のレポートを興味深く見ましたが、結局我々がここで考えたこ とがダイレクトに医療のマーケットというか、そういう部分をコントロールできること であれば、この需要と供給の計算は非常に有効だと思いますが、実際はご存じのように 前にも何度も議論になっている偏在があるわけです。診療所でへき地であれば夜中でも 誰もいないですから、自分で起きるしかない。1人の医師のリソースというか資源とし ての医師をフルパワーで使われるわけです。ところが、都会では9時から5時でクリニ ック。それが終わるといなくなってしまうプライマリーケアの医師が多い、その偏在な り投下した資源がうまく有効に使われていない問題がある。そのために小児科の夜間に 大量に押し寄せるような、住民側に少し理解なり教育をしなければいけない部分がある と思いますが、偏在なり集中して病院に来てしまう現実を和らげるような、先ほどの医 師会の地域の協同で小児科診療所を私のところの病院でも始めるのですが、参加してく れるドクターは数名しかいらっしゃらなくて、これからどうしたものかと思っているの ですが、そういった医師同士でいろいろなものをシェアをする。病院と診療所といって も、結局5時過ぎてしまうと病院に集中してしまうのです。そういった偏在なり資源を さらに活用していく。ほかの商売のようにマーケティングに対して、どう供給していく かという議論をしていかないと、単に供給と需給の数字を合わせるだけではうまくいか ないのではないかと思いますが、どうでしょうか。 ○長谷川委員 伝聞ですので正確ではないですが、今回連携で調査したときにその話が 出まして、これまでは開業の先生方も結構夜間の診療をしていただいたのが、次第に病 院に移行していって、はっきり言うと近年では病院にほとんどしわ寄せが来てしまって いる。確かに休日の診療所等にもご参加していただいているようですが、それだったら 例えば診療所の先生方に病院に来ていただいて、外来を診てもらえばどうなのだろうと。 よく休日診療所から病院のほうに二度、三度紹介があったりするというのであれば、そ ういう形はあり得るのだろうかというご意見の病院長先生もおられました。 ○江上委員 グラフを教えていただきたいのですが、28頁のデータで手術入院数時系 列変化で、2002年の75歳以上の手術入院数が増えているということで、80歳以上 では40万人というお話がありましたが、この棒グラフを見ると75歳以上が過半数を 占めているのですが、右のグラフだと。 ○長谷川委員 右は、65歳以下も入っています。左側は高齢者の数字です。右側は全 手術です。どうもすみません。 ○江上委員 スウェーデンでは、過去に日本と同じような高齢化の段階に来たときに、 手術入院数というのはこのような状況を示していたのでしょうか。 ○長谷川委員 難しい質問で、知りません。このように高齢者の手術が増えてきたのは、 医療の発達だと思います。と申しますのは、各年齢階級別の手術死亡率は、非常にコン スタントに低下しています。したがって、病院は手術の技術が上がって安全になったの で適応が増えた部分があるのでしょうが、少しオーバー。つまり手術はやった、命は助 かった。しかし、寝たきりになったということが80歳以上で起こる可能性があると思 います。私が申し上げている適応の厳密化というのは、そういう意味です。本当に手術 は、その人にとって意味があったのかどうか。したがって、スウェーデンの場合は過去 になりますので、当時の麻酔や手術の技術が低かったから、こういうようなことが当時 に起こったかどうかは知りません。ただ察するに、現在、スウェーデンの手術の大半は 高齢者ではないでしょうか。もはや、日本の医療は老人医療になったのです。高齢医療 になってしまったのです。 ○江上委員 ありがとうございました。 ○吉村委員 長谷川先生の分析は、そのとおりだと思います。ただ、最後の31頁に医 療システム全体の休眠医師の発掘とか女性医師の労働支援ということが書いてあります が、毎年8,000人の新しい医師が出ているわけです。これをどう活用するかに焦点を 絞っていただきたいと思います。多分、医師の需給ですと議論されていますようにへき 地で何でも見てくださる、広く見てくださる医師が足りない。これは先ほど小山田委員 のお話にありました。それと同時に専門医、外科も内科も病院の医師が足りないわけで すから、しかも病院の医師の中でも分野と、その分野における量と質をしっかり確保す るような、8,000人をいかに育てるかに大事なところがあるのではないか。病院の医師 が足りないのだったら、折角の8,000人ずつ出ている医師を全国の基幹病院に強制的 にというかある程度配置をして、しっかりと専門医を育てるし、へき地の医師も一方で 育てることが必要で、休眠医師をいくら発掘しても所詮出てくるものが育っていかない と何か限度があるような気がするのです。 ○長谷川委員 もちろんやらなければいけないのでしょうけれども、期待できる数がか なり少ない。 ○吉村委員 毎年8,000人ずつ出るわけですから。 ○長谷川委員 休眠医師に関しての話です。 ○吉村委員 ですから、新しい方をもう少し強制力といいますか、いいシステムを作っ て、折角2年間の研修に入ったわけですから。 ○長谷川委員 それについて2点コメントをさせていただきますと、研修制度が導入さ れたことで、別に研修が悪いということではなくて、新しく導入されたものですから需 給にアンバランスが生じている部分があって、逆にここ数年が経ちますと落ち着いてき て、アンバランスが取れてくるのではないかと思われる部分があって、院長先生にイン タビューすると、おそらく半分ぐらいが元へ戻るのだと。しかし、少し郡部の公的病院 を中心とするような病院の医師の不足というのは、ここ数年間で風が吹き終わっても残 るのではないかというご心配をしておられます。  2点目は外科です。これが泣けてくるような状況だそうです。水田先生、間違ったら 教えてください。先週、九州に行ったのです。九大と久留米と佐賀医大の3つで、今年 度外科医に入学した人が3つ合わせて10名とかで。 ○水田委員 もう少しあります。産科が福岡県で4人です。4つ大学がありますが、た った4人です。 ○長谷川委員 私は元外科医なので非常に心が痛むのですが、内科と比べて、ものすご く忙しいですよね。給与は変わりませんので、外科に行く人はいないのではないですか。 特に自治体病院のように、給与が全部人員間で一定している構造では、選択化もハイリ スク、ローリターンですので選択しないでしょう。  実は、医師のリクルートの会社にインタビューに参ったのですが、なぜこうなってい るのかの1つの理由は価値観が変わっているのだと。家庭を大切にする、余暇を大切に する。自分のホビーを持って、土・日は自分の趣味を活かしたい。40代より若い方が そうなってきているのだと。いろいろなご相談に乗ると、そういう話がある。どこで開 業するかも全部奥様と相談するということで、したがって我々の時代とは違うようです。 ○吉村委員 そこに若い人が入ってこないと、結局ドミノ現象ではありませんが、いま いる人も駄目になってしまう。若い人が入ってくればまた希望が出て、さらに循環して いくと思いますが、是非そこの何かいい方法があればよろしいかと思います。 ○長谷川委員 個人的バイアスがかかっていますが、外科をなんとかしないと日本の医 療全体こけるんですね。すみません。 ○山本委員 私も外科ですが、本当にこのままいくと外科医は日本からいなくなるだろ う。というのは、いまのような情報開示の中でこれは大事なことですが、基本的に患者 に説明する。手術が必要で、「では、誰が手術をやるのですか」と。レジデントで1年 目、2年目の人がやりますと言ったら、患者はみんな拒否しますよね。「先生、やって ください」。そうすると、若い人たちはやる場がなくなってしまう。いまは非常にいろ いろな論調がありますが、誰が手術するということは外科医からいえばほとんど問題が なくて、手術はチームでやるのです。誰か、うまい人が1人でやって手術が終わるとい う手術はないわけです。基本的にはチームでやることなのに、どういうわけだか「こん な名人がいる、こんな名人がいる」ということばかりを言い合っていて、本来病院でこ れだけのレベルで、これだけのチームで手術をやっていますということが評価されない。 その中で、きちんとトレーニングを受ければ、きちんとした外科医が育っていきますが、 そういう環境を作らなければ日本からは外科医がなくなる。これは、たしかな話ですか ら、そこが非常に重要だと思います。ですから、誰が手術というのはやめてほしいので す。こういうチームでやるのだというのが重要な話だと思います。 ○水田委員 最近は手術成績の開示と言うことで、医師の個人個人の成績が開示される ことが求められますが、外科はやはりチーム医療ですから、特に手術成績などは、医師 個人個人の者ではなく、その病院全体の成績を出すべきであると思います。テレビなど で「神の手」等とやっておりますが、チーム医療では神の手などは存在しません。 また、私どもの病院での事例ですが、とてもきちんとしているある科での研修に耐えら れずに止めたいと行って来た研修医がいました。「今は大変かもしれないけど、2年間 頑張って研修を受けたら将来はバラ色ですよ」と言いましたが、「将来のバラ色よりも、 今、デートをしたりする時間が大切です」と止めていきました。これが現実です。 ○長谷川委員 もはやバラ色ではなかったのです。40歳前後の方は、灰色なのでやめ ていっているのです。 ○矢崎座長 どうもありがとうございました。定刻の時間を過ぎていますので、この議 論はこれで終了させていただきます。最後に、参考資料の臨床研修に関する調査につい てご説明をお願いします。 ○宮本補佐 参考資料1は、昨年も行っていたものですが、臨床研修制度の一期生が終 了することを受けまして、臨床研修病院、その研修プログラムに所属する研修医に対し て1年次、2年次とも現在調査を行っているものです。もともとの目的は、臨床研修制 度の評価にするということで、病院に対してはその処遇やプログラム内容の評価、なぜ その病院を選んだかなどを聞いていますが、私どもに関連する部分としては2年次の方 を中心に将来、どういった診療科に行くのかといったような部分を聞いています。ほか に、研修を始める前と進路が変わったかどうか。変わった場合には、なぜ変わったのか。 なぜ、その進路を選んだのかといったような内容も含めて調査していまして、今後の検 討に資するものと思っています。調査の実施は3月上旬に調査表を配付しまして、非常 にタイトなスケジュールですが、本日参加いただいている先生方も含めてご協力をいた だいているところです。現在、3月31日を目途に回収中ですが、なお一定の時間は必 要になるものと見込んでいます。簡単ですが、以上です。 ○矢崎座長 どうもありがとうございました。それでは定刻を過ぎていますので、この 検討会を終わりたいと思います。検討会を重ねるにしたがって、検討すべき内容が大変 複雑で、一筋縄ではアレキサンダー大王のこんがらがった結び目を一刀両断で解決する わけにいきそうもありませんし、これは医療関係者だけで議論しても限界があって、先 ほど議論がありましたように、そこにいらっしゃる方々を含めて国民の皆様に実際にど う医療が形成されているのか、成り立っているのかを十分にご理解いただいて、皆さん の協力をいただかないとこの問題に関しては抜本的な解決は難しいと思いますので、今 後できるだけ早い機会にある程度の方向性を打ち出したいと思います。とりあえず、次 回の予定を事務局からお願いします。 ○宮本補佐 次回の日程は、現在調整中で皆様方のご予定を伺っているところですので、 その調整がつき次第またご連絡させていただきます。 ○矢崎座長 いま、長谷川委員からいろいろと資料を出していただきましたので、議論 が多いとは思いますが、需給モデルの考え方をご提示いただいて、それでまた議論を。 ただ、数だけでは議論ができないので、内容もありますので、一応叩き台として需給モ デルを新しく提示していただいて、また議論を深めたいと思いますので、よろしくお願 いします。本日は、どうもありがとうございました。 −了−                       照会先                       厚生労働省医政局医事課                       課長補佐 井内(2563)                       指導係長 丸尾(2568)                       代表 03-5253-1111