06/03/17 第32回労働政策審議会職業能力開発分科会 議事録について          第32回労働政策審議会職業能力開発分科会 日時 平成18年3月17日(金)17:00〜 場所 厚生労働省専用第7会議室 ○今野分科会長 ただいまより第32回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いたしま す。本日の出欠状況は黒澤委員、佐藤委員、中馬委員、中村紀子委員がご欠席です。それ では議題に移ります。本日の議題は「第8次職業能力開発基本計画の検討について」です。 まず事務局からお願いします。 ○杉浦総務課長 資料に基づきまして説明します。本日の資料1が第8次計画(案)です。 参考資料1として、この計画案に基づくデータ等を入れた関連資料として付けてあります。 参考資料2は昨年暮れに当分科会で議論し、建議いただいたものです。参考資料3は前回 の提出資料で素案です。変わっている部分もあるので、比較して参考にしていただければ と思います。  資料1ですが、前回は素案として提出しご議論いただきましたが、今回は(案)として 若干ボリュームも増し、内容も一部組み換えたりして作成しております。以下、内容を説 明します。前回もお話しましたが、副題の仮置きとして「職業キャリアの持続的発展の実 現と『人を育てる環境』の再構築」ということで書いていますので、この点についてもご 議論いただければと思います。  まず、前回から変わったところを中心に説明をします。1頁の「総説」です。ここは全 体の流れは変わっていませんが若干追加して書いているのは、第1段落の「我が国経済社 会のサービス経済化及び知識社会化等に対応した」というところで、「一人一人の能力を 高めることによって生産性を向上させていく」というようなところを、整理し表現振りを 若干変えています。  3つ目の段落の「こうした諸問題に対応し」というところの3行は、追加をしています。 「こうした諸問題に対応し、働く者の職業能力を高めるためには、単に教育訓練を実施す るだけではなく、働く者の職業キャリアが円滑に発展できるよう支援していく政策に踏み 込んでいく必要がある」ということです。  1つ飛んで「本計画は」というところの4行部分についても、ここも若干表現振りを変 えています。副題の記述と合わせる観点から、「職業キャリアの持続的な形成」というよ うなことを狙いの中に盛り込ませるような観点で、若干表現振りを変えています。第1部 については以上です。  第2部、3頁です。「職業能力開発をめぐる経済社会の変化」というところで、1の (1)人口減少社会の到来など労働力供給面の変化です。この辺はあまり変わっていませ んが、言葉の使い方として、4行目の「自然増加数」のところに括弧書きで定義というか、 説明を加えたりしています。下から3分の1ぐらいのところに「今後、労働力人口が趨勢 的に減少する中で、その減少を最小限に止めるためには、高齢者の継続雇用、若者の就業 促進、育児と仕事の両立などを含めた女性の就業促進等が課題である」というのを追加し ています。次の「このほか」の後、職業キャリアの後に括弧書きを、これも説明として追 加しており、「一定の職業に関する目標に沿って積み重ねられる職業経歴」というような 形で追加しています。  (2)3頁から4頁にかけてです。ここは段落を一部入れ換えています。(2)の一番 最後、「こうした中で」というところで、企業における訓練の実施率が停滞しているとい う記述は、一番前に書いてあったのですが、それを最後のほうに移動しています。上のほ うの「我が国全体としては企業収益が改善し、景気回復が続く中、2005年末において有効 求人倍率は13年3カ月ぶりに1倍を超えるとともに、2006年初頭において失業率は4.5%と なるなど、全体として緩やかであるが改善傾向にある」という、この3行は新しく追加し ています。  真ん中ほどに、「また、高付加価値製品の生産や」というところで、いわゆる現場力の 話が前回も少し議論になりましたが、現場力の説明として、3行目ぐらいのところから、 「我が国企業において、技術・技能及び経験に裏打ちされた問題解決能力や管理能力など、 いわゆる『現場力』を改めて強化することが求められている」というような書き方にして います。  (3)の労働市場の現状と見通しについては、特に変更はありません。5頁の2「職業 キャリアの各段階における状況」のところです。前回の議論の中で、今野分科会長から準 備期、発展期、円熟期というものの定義を書いたほうがいいのではないかというご意見を いただき、「各段階の位置づけについては、働く者一人一人の実情により様々であること から、各段階を一律の年齢で区分することは困難であるが、本計画においては、職業キャ リアについて、職業生活に入る前の『準備期』、職業生活に入っている、若しくは職業生 活を中断している『発展期』、職業生活の引退過程に入る『円熟期』の三段階に分けるこ ととする」というような形で入れています。  その下の段落、「まず」から始まるところですが、前回の記述に「中退者が年々増加す る」という書き振りがあったのですが、そこを入れ換えて「就職も進学もしない者の割合 が20%前後の水準で推移するとともに」というように記述を変えています。一番最後の行 の「また、2005年平均で」というところで、ニートとかフリーターの数をデータとして追 加しています。  6頁です。中程の「次に」という段落のところで、いろいろ枕言葉的な形容の表現が多 いというご指摘をいただき、「次に、職業キャリアの発展期においては」という中で、前 回のペーパーでは「企業間競争の激化や、成果主義的人事管理の広がりに伴い」という表 現が入っていましたが、そこを削っています。6頁は大体以上です。  一番下の3「地域や家庭における人材育成機能の変化」ですが、ここもデータとして 「1955年には雇用労働者が就業者全体の43.5%であったものが2005年時点では84.8%とな っている」というようなデータを入れています。7頁の5行目ぐらいのところに、前回ご 指摘がありましたが、「母子家庭や父子家庭が増加しており」ということで、「1975年時 点と比較して、それぞれ倍増している」というような数字を入れています。これはまた後 で参考資料で簡単に説明をします。第2部については以上です。  第3部は8頁からです。ここは相当数書き加えています。1の「職業キャリア形成支援 政策推進の視点」という項目を追加しています。前回はこの項目が全くなかったのですが、 実施目標の総論的な位置づけとして、3つの能力開発施策に向けた視点の記述をしていま す。ここに書いてあるのは、第1段落では職業能力開発施策は雇用対策の一環として労働 力需給の状況に応じた職業訓練や離職者の発生に対応した機動的な職業訓練の実施に置か れてきた。今日においてもその重要性には変わりはない。しかしながら、近年、働く者の 職業生活を見ると、それぞれ準備期、発展期、円熟期それぞれに課題を抱えているという 中で、働く者の職業能力を高めるためには、単に職業訓練を実施するだけではなく、一人 一人の働く者の職業キャリアが円滑に発展していくことを支援する施策に踏み込んでいく 必要が生じている、ということを書き、その中で次のような視点に立って、職業キャリア 形成支援施策を本格的に推進していくということで、3つほどの視点を書いています。  第一に、職業能力開発政策としての視点です。働く者の職業能力は上司、同僚、後輩と の切磋琢磨や仕事をこなすための知識、技術の吸収等仕事を通して習得されるものであり、 職業訓練はその補完としての役割を果たしている。こうした実態からすれば、働く者の職 業能力の開発及び向上を促進するためには、働く者が職業生活や仕事を通して順調に能力 を蓄積すること、すなわち職業キャリアが円滑に形成・発展するよう支援することを政策 の中心目標とすることが第1点です。  第二に、雇用対策の視点として、労働市場において就業形態の多様化に加え、働く者の ライフスタイルや就業意識の多様化、個別化が進む一方、技術革進の進展、商品サイクル の短縮により、働く者の職務や職業キャリアのみならず、企業の在り方や産業構造につい ても急激な変化が生じている。こういった中で、失業対策と企業が行う集団的な職業キャ リア形成・発展のシステムを前提とした雇用保障とを組み合わせたこれまでの政策のみに よる対応は万全なものではなくなっているということです。次に9頁です。「多様化」 「個別化」「変化」に着目して、働く者一人一人の職業キャリア形成を支援することによ って、雇用可能性を高めていくことが雇用対策としても重要である。  第三に、今後こうした職業キャリア形成政策を発展させるためには、法的・理論的な面 から政策を根拠付け、整理していくことが求められる。具体的には平成13年の雇用対策法 及び職業能力開発法の改正に当たっての指導理念である「キャリア権」(人が職業キャリ アを準備し、開始し、展開し、終了する一連の流れを総体的に把握し、これら全体が円滑 に進行するよう基礎づける権利)の考えを陶冶し、さらに精緻化していくことが重要であ る、ということを書き加えています。  2「職業キャリア形成支援政策の展開」というところは、ほとんど変わっていませんが、 ただ(1)と(2)を入れ換えています。前回は(2)にある労働市場を有効に機能させ る基盤整備の推進が前に出ていたのですが、働く者ということで雇用労働に限らず、広く 対象者を捉えてやっていくという部分を前に出して、職業キャリアの支援を推進していく ということを書いています。  10頁です。(2)についても表現振りはほとんど変わっていません。ただ第2段落の 「これらの労働市場のインフラの整備は」というところですが、次の行の「今後とも、働 く者の円滑なキャリア形成を進めるために官民協力によって継続して構築・整備を進めて いく必要がある」という部分を付け加えています。  (3)の職業生涯の全期間を通じた職業キャリア形成支援です。ここも10頁の部分につ いては内容的には変わっていませんが、第1段落と第2段落の表現を、先ほどの職業キャ リアの段階の部分の説明を一部付け加えています。内容的には変わっていません。  11頁です。3「労働力需給の動向に応じた職業能力開発の促進」ということで、ここの 部分は前回なかったところで、新しく付け加えた部分です。先ほども少し出てきましたが、 雇用対策の一環として、能力開発施策が位置づけられるということで、需給の動向に応じ て公共部門が主として求職者や中小企業労働者を対象に訓練を行ってきた。そして大量の 離職者が発生したときなどには、機動的に離職者訓練をすることとされています。こうし た取組については重要性には変わりないけれども、促進に当たっては民間教育訓練機関の 積極的、効果的な活用、企業における教育訓練ニーズの効果的把握、中小企業等の事業主 に対する能力開発ノウハウ、施設・設備面での支援に配慮していくことが重要である。ま た、近年は能力のミスマッチが大きくなっていることから、キャリア・コンサルティング を行いながら、成長分野へ向けて能力開発を実施することが重要な課題である、というこ とを書いています。  11頁の4「人を育てる環境の再構築」です。ここも11頁の部分は内容的には変わって いません。ただ第1段落、第2段落については若干表現振りを変えています。例えば第2 段落の「他方、生産現場における重大災害や欠陥製品問題等を契機として、『現場力』の 低下が問題となっている」というところについては、若干前回と表現振りを変えています が、内容的な部分はほとんど変わっていません。  12頁です。(2)の表題が前回は「地域社会等における人材育成環境の整備」でしたが、 ここを「地域社会等における人材を涵養する力の再構築」と表現を変えています。文章も 若干表現は変えていますが、地域のコミュニティの力が弱くなってきているということで、 それに向けて家族の在り方や教育力などを考えて支援していく、あるいは関係者の連携の 下に、身近な地域において多様な人材育成の場を再構築していくということで、内容的に は変わっていません。  5「官民協力による『公』の視点からの政策の推進」です。ここは表題も前回は「官民 協力による官民連携の一層の推進」という形でしたが、そこを「公」の視点からのという 部分に変えています。それに合わせて第2段落の「しかしながら」から、前述した、各世 代それぞれに生じている職業キャリア形成のための課題に対応して、働く者の生涯にわた る職業キャリアの持続的な発展を確保するためには、労働市場を機能させることと並行し て、1(○の中に1)労働市場のインフラづくり、2(○の中に2)若者の職業キャリア 形成支援、3(○の中に3)雇用者のワークライフバランス、4(○の中に4)地域貢献 分野の創出、など官民協力による「公」の視点に立った政策の推進が不可欠である。とり わけ、地域社会への貢献や若者の職業キャリア形成支援などの面で、企業の社会的責任 (CSR)の考え方を取り入れていくことや、社会的責任投資(SRI)などを媒介とし て企業を評価し、「公」の視点のもとに持続可能な社会の在り方を探っていくことが期待 される、というようなところを追加しています。  その下の「アメリカにおいては、寄付金をベースとした様々な財団やNPOの活動が盛 んであり、ヨーロッパにおいては、中小企業団体や組合などの役割が大きい」などという ところも追加しています。第3部については以上です。  14頁からは第4部で各論です。1「労働市場のインフラの充実」です。前回のペーパー では、ここの部分にキャリア・コンサルタント関係がかなり詳しく書いてあったのですが、 キャリア・コンサルタントの関係は後ほど出てくる17頁に移動し、その前に全体の労働市 場のインフラの話を書くこととしました。若干表現振りを変えたのは、最初の2行目辺り からです。「働く者の一人一人が自らの職業生活設計に即して教育訓練の受講や実務経験 等を重ね、効果的に職業能力を発揮できる環境を整備していくことが重要な課題である」 というような書き振りを加えています。  3つ目の段落、その現状を見ると、公共職業訓練における民間教育訓練機関への委託訓 練の活用、職業能力評価基準の整備やキャリア・コンサルタントの養成など一定の成果が 見られる。しかしながら、多様な職業訓練・教育訓練インフラの整備、企業や業界団体等 のニーズを踏まえた職業能力評価インフラの整備等の課題が残されるとともに、「働く者」 の職業キャリアの各段階における問題の深刻化への対応が急務となっている、が追加され ています。  次は(1)多様な職業訓練・教育訓練の機会の確保です。ここはいままでその中のイ、 ロ、ハという小項目立てがなかったのですが、そこを作り、全般的に膨らませて書いてい ます。イ「多様な教育訓練サービスを提供する主体の育成及び活用」というところは、全 面的に追加しています。この辺は企業のOJTやOFF−JTが引き続き人材育成に大き な役割を果たす一方、技術革新や求職者ニーズの多様化が進む中で、一人一人の職業能力 開発及び向上を図るためには、企業外におけるOFF−JTや自発的な職業能力の開発及 び向上が重要性を増してくる。企業外におけるOFF−JTや自発的な職業能力の開発及 び向上のための教育訓練サービスを提供する主体としては、民間企業や中小企業団体・業 種別団体等の事業主団体、大学・専修学校等の学校、公益法人等が存在する。  これらの本来的役割や提供する教育訓練サービスの水準や価格等は多様であり、そうし た個々のサービス提供主体の役割や性格に応じた育成を進めていく必要がある。特に、中 小企業労働者やいわゆる「非正社員」の職業キャリア形成支援における事業主団体や公益 法人等の役割や、職業キャリアの方向づけや転換等のための長期の能力開発に係る大学・ 専修学校等の役割は大きいということで、そうした観点から、1(○の中に1)として、 教育訓練給付の講座指定に当たって、講座修了者に対する能力評価の状況等を勘案し、民 間企業における教育訓練の質の向上を図ること、2(○の中に2)として、大学等を活用 した高度な教育訓練を含め、多様な民間教育訓練機関への委託訓練を積極的に実施すると ともに、訓練修了者の就職実績を反映した委託費の支給等を通じ、訓練の質の向上を図る こと。3(○の中に3)として、事業主団体や公益法人を教育訓練の受皿として活用して いくこと等を推進する、というところを書き加えています。  ロ「公共職業能力開発の充実」の部分については前回と表現振りも含めて内容は変わっ ていません。ハとして「『実践型人材養成システム』の普及・定着」というところです。 ここは文章は変わっていませんが、ハの小項目を立てたところが違っているところで、15 頁から16頁においての記述の変更はありません。  16頁の(2)の職業能力評価に係るインフラの充実です。ここについては下の2行から 始まる段落とその次を追加しています。「職業能力評価に用いられている制度の現状を見 ると」というところです。技能検定制度や職業能力習得制度(ビジネス・キャリア制度) 等の職業能力評価制度に加え、各種の資格制度、各民間企業における職能資格制度や社内 検定制度等が存在しているが、これらの諸制度に統一的な基準は存在していない。このた め、幅広い職種にわたって横断的な評価制度を整備する観点から、現在、国と業界団体等 が共同し、職業能力を評価する統一的な基準として策定を進めている職業能力評価基準に ついて、企業・業界団等のニーズを踏まえた一層の整備・充実を図り、様々な制度の位置 づけの明確化に活用することにより、働く者の職業キャリア形成の目標を立てやすくする、 という部分を追加しました。  (3)の職業キャリア形成に向けた情報提供体制の充実ということで、イとして「キャ リア・コンサルティング環境の整備」です。ここは先ほど言ったように冒頭から移動しま したが、文章についてはほとんど変わっておらず、キャリア・コンサルティングに関する 記述を17頁から18頁にわたって書いています。ロの「職業キャリア形成に関する情報イ ンフラの充実」も表現振りを含めて内容は変わっていません。「キャリア情報ナビ」等の 活用やその他、専修学校、職能団体等の関係者が相互に情報交換できるシステムづくりが 書いてあります。  19頁ですが、2「働く者の職業生涯を通じた持続的なキャリア形成への支援」です。 (1)の職業キャリアの段階に応じた支援の充実で、イとして「準備期における支援」で すが、この辺は前回と記述は変わっていません。小・中学時代からのいろいろな学校関係 の施策との連携や「実践型人材養成システム」の普及・定着、あるいはフリーター、ニー ト対策の「日本版デュアルシステム」「若者自立塾」、地域の若者の自立支援のための機 関をネットワーク化するといったような施策を書いています。  ロ「発展期における支援」です。ここから20頁ですが、若干追加して書いてある部分が あります。4行目の「このため、以下のような施策を講じていく」というところで、1 (○の中に1)として、「企業における労働者の職業キャリア形成支援に係る取組の推進」 というところですが、最初の3行を追加しています。「経済のサービス化や知識社会化等 の進展する中で、企業の競争力の源泉は、商品やサービスの付加価値を生み出す人材であ り、能力開発投資を行う企業ほど、企業業績がよいという傾向が現れている」というとこ ろ、2つほど飛んで「特に、近年20代後半から40代の事業の中核を担う労働者の労働時間 が長くなる傾向が顕著であり、能力開発を行う時間の確保という点だけでなく、メンタル ヘルス、家庭生活や地域生活と職業生活との両立を含め、キャリアの持続可能性や発展性 を確保する観点から、ワークライフバランスに係る政策やワークシェアリングに係る政策 を関連行政と連携して推進する」というところを追加しています。  次の2(○の中に2)の表題が、前回「職業キャリアの中断を余儀なくされた者等への 支援」という表題にしていましたが、それを「企業の枠を超えた職業キャリアの再構築や 新たな展開」とし、その部分は最初の4行を追加しています。「労働者の職業キャリアの 展開は、産業構造の変化や技術革新の急速な進展に加え、雇用慣行の変化や労働者の意識 の変化により、企業の中にとどまらず多様化する傾向にあり、それぞれに応じたキャリア 支援を行っていく必要がある」というところです。  21頁の2つ目の段落、「さらに、新たなビジネスチャンスを求めて積極的に転職や起業 を志す者に対して、『創業サポートセンター』を中心とした情報提供、相談・援助、講習 などを実施するほか、職業生活の中途から全く新たな職業キャリア形成に挑戦できる社会 を目指し、支援の仕組みづくりや環境整備の在り方を検討する」というところを追加しま した。ハの「円熟期における支援」の部分については変更はありません。  その下の(2)福祉から自立に向けたキャリア形成の支援等、のイとして「障害者への 支援」です。ここの部分についても表現も含めて変更はありません。障害者能力開発校や 一般の能力開発校における訓練コースの設定やeラーニングによる委託訓練の実施、ある いはアビリンピックに関係する記述です。ロとして「母子家庭の母及び生活保護受給者等 への支援」ですが、ここについても表現は変えていません。23頁のハも全く変わっていま せん。  (3)いわゆる「非正社員」の職業能力開発についての環境整備ですが、若干表現振り を変えているのは、中ほどの「さらに」という段落の2行目辺り、「キャリア・コンサル ティングを受けやすい体制の整備に努めるとともに、いわゆる『非正社員』を含めた労働 者の求職ニーズに配慮した訓練コースの設定、eラーニングを活用した教育訓練等につい ての情報提供」といったところを追加しました。前回の議論の中で派遣労働者に対する能 力開発の議論がありましたが、ここのところについては「派遣労働者については、その職 業キャリアの持続的な発展の観点に立って」という文言を入れ、「派遣元事業主による職 業能力開発の取組」に加え、「派遣先事業主による派遣元事業主の協力等」といったよう なところを若干加えています。  3「雇用失業情勢や産業分野の動向に応じた職業能力開発の促進」です。この3につい ては全く新しく書き下ろしています。最初のほうで説明したように、雇用対策との連動の 中での職業能力開発というところがありましたので、その部分の各論的な位置づけとして 書いています。(1)として、雇用失業情勢に対応した職業能力開発ということで、先ほ ども出てきましたが、労働力需給の変化に対応した離職者に対する公共職業訓練や公共安 定所等との一層の連携強化による訓練受講生に対する一貫した再就職の支援といったよう な事柄。24頁で地域の雇用失業情勢等に対応して機動的に実施するとともに、大量の離職 者が発生した場合には、迅速かつ適切な対応に努めるというところです。  (2)も全く新しく入れたところです。産業動向や技術革新、求職者のニーズの多様化 等に対応するため産業分野ごとの企業の人材ニーズの変化を踏まえた職業訓練のコースの 設定ということで、ものづくり分野については、中小企業を中心として、公共職業能力開 発施設において、この分野の現場を担う人材の育成支援をしていく。特に、訓練の展開に 当たってはということで、製造ラインや工作機械等の生産工程の自動化・効率化、製品の 高付加価値化、設計から加工、生産・品質管理など複数の工程に対応できる技能・技術の 要請。機械系、電子系、情報系等の技術分野の複合化といった近年の動向を踏まえた実践 力の付与や訓練内容の高度化・複合化等を図るということ。さらにということで、情報通 信分野やサービス分野等について、高度通信技術等の新技術の現場への応用への支援や新 技術に対応できる人材の育成ということを書いています。  大学、大学院を含めた幅広い民間教育訓練機関への委託訓練の積極的な活用や、企業実 習を取り入れた実践力の付与。就職実績を反映した委託費の支給等を通じた委託訓練の質 の向上。加えて、情報通信や介護分野における職業能力開発ということを書いています。  25頁に「なお」として、地域における人材ニーズの把握・分析を踏まえた柔軟な訓練コ ースの見直し、ということを書いています。  4「『現場力』の強化と技能の継承・振興」のところは変更はありません。(1)「現 場力」の強化に向けた能力開発、(2)技能の継承・発展のための施策、次頁の(3)技 能の振興のための施策として技能競技大会等とありますが、この辺についてはほとんど変 わっていませせん。  26頁の5「地域貢献分野の創出と教育力の強化」というところです。ここを新しく全部 追加しています。地域のコミュニティは、元来、異なる世代の者が地域に根ざしたいろい ろな活動を通じて、人的交流を図るということであったわけですが、今後、各地域におい て、そういった地域貢献活動を活発化することによって、同様の効果が期待される。その 分野に係る人材面の対策としては、これまでも1(○の中に1)勤労者が在職中から、関 心のある分野の社会活動に参加することにより、視野を広げるとともに、退職後の生きが い就労につなげることを目的として、地域貢献分野に係る情報の提供・相談、講習、トラ イアル等を内容とする勤労者マルチライフ支援事業。2(○の中に2)求職者に対し、N PO起業ないし雇用のために必要な知識・技能を習得するための訓練をNPOに委託して 実施する事業。3(○の中に3)中高年齢者、若者、専業主婦などがコミュニティ・ビジ ネスに係る起業・就労・社会参加を行うことを通して、これらの者の自己実現と地域の活 性化をめざすコミュニティ・ビジネス支援集中モデル事業というのがある。  今後、地域における事業について、1(○の中に1)団塊の世代等の人材を幅広く受け 入れる対策の強化。2(○の中に2)若者や障害者の訓練受け入れ体制の整備。3(○の 中に3)市町村等と連携した各種のサービスをワンストップで提供できる仕組みなどの観 点から、事業の総合化を検討して、段階的に地域貢献分野をつくり上げることが必要であ る。こうした事業の推進についてはその自治体、NPO等の関係者のほか、地域の企業が 果たす役割も大きいこと。そのほかにニートの対策として相談・指導・助言の強化、企業 におけるワークライフバランス対策の強化等により、健全な家庭環境づくりを進めていく というようなことを書いています。  6「国際化と職業能力開発」については、全部表現振りを含めて変更はありません。28 頁、(2)の外国人研修・技能実習制度についても前回と記述は変えていません。29頁の (3)企業活動のグローバル化に対する支援についても変更はありません。  7「職業能力開発施策の推進体制の整備」、ここから最後までが前回は項目だけしか出 していませんでしたので、今回中身を書き下ろしています。(1)として公共部門と民間 部門との役割分担及び連携についてということで、職業能力開発に関しては、企業が事業 運営上不可欠なものとして実施するということは当然ですが、しかし、近年、職業能力開 発の内容も多様化しており、教育訓練をアウトソーシングする動きが顕著になっている。 自発的な職業能力開発及び向上と相まって、企業外の教育訓練サービスを提供する主体の 役割が重要となっている。こういったような受皿となる主体として民間企業、中小企業団 体・業種別団体などの事業主団体や大学・専修学校等の学校、公益法人等がある。  これに対して公共部門としては、1(○の中に1)として中小企業等、自ら従業員に対 する職業能力開発を行うことが困難な分野に対する支援。30頁に2(○の中に2)として、 教育訓練サービスを提供する主体に対し、そのニーズに応じた教育訓練サービスを提供で きるよう、インフラとして育成を図るということ。3(○の中に3)として、ものづくり 分野などの実施経費が膨大なものについて、国家的見地から人材育成が必要な分野におけ る職業訓練を行うこと。4(○の中に4)として、離職者の早期再就職や障害者・生活保 護受給者等の職業的自立に向けた職業訓練ということが主な役割としてあります。  「とりわけ」ということで、雇用対策の一環としての離職者訓練について、委託訓練の 積極的な展開や就職率等による評価を進めるほか、事業主と求職者それぞれの選択を機能 させた職業訓練を推進し、効率化及び利用者サービスの向上を図ることが課題である。こ のほか、官民連携による多様な教育訓練機会の確保が必要であるということで、上のよう な役割分担を基本としつつ、公共部門が訓練コースの開発及び普及を行うとともに、民間 における教育訓練のコーディネート等を通じた教育訓練機会の確保を図っていくとしてい ます。  (2)が官民協力による「公」の視点に立った政策の推進ということで、先ほどの第3 部に出てきた、公的視点から人を育成する環境を再構築していく必要があるということで す。例えばということで、1(○の中に1)企業内において日本版デュアルシステムや実 践型人材養成システムのように、若者に対して幅広く教育訓練機会を提供する。2(○の 中に2)として働く者の育児と仕事の両立、ワークライフバランス、ワークシェアリング を進めていくことの部分について、企業が公的支援を受けつつ、積極的に取り組むことが 重要である。地域における人材育成力を再構築するために、地域行政と地域のNPOなど の公益団体や企業との連携、あるいは国等の支援が不可欠であるということで、具体的に は地域行政がイニシアティブを持ちつつ、地域貢献分野を担う人材の育成、情報の提供、 就労環境の整備等を図っていく。また、企業においても、ボランティア休暇の付与や時間 面での配慮、地域行政に対する協力を行っていくことが望まれるとしています。  (3)が国と地方公共団体との役割分担及び連携についてです。ここはこれまでも基本 的な役割分担について書いていて、基本的には変わっていません。国は雇用対策の一環と して、離職者の早期再就職を図るための職業訓練を行う、あるいは高度・先導的な教育訓 練を開発し普及させる。一方、地方公共団体のほうは、地域産業の人材のニーズや職業訓 練ニーズをきめ細かく把握し、これに対応した職業訓練を行うとなっています。ただこう いったことを踏まえながら、両者が密接に連携を取り、訓練コースの設定等について必要 な調整を図っていく。特に若者、障害者、母子家庭の生活保護受給者等に対する職業能力 開発施策については、都道府県のみならず市町村も含め連携を進めるということで進めて いく、ということが書いてあります。  (4)として、関連する諸施策との連携ということで、職業能力開発行政と他行政との 連携の話を載せています。第一に、職業安定行政と施策と相まった雇用対策の一環をなす ものであるということで、職業安定行政との連携を書いています。ハローワーク等との連 携です。  32頁です。第二として働く者全般を対象として行う施策で、関係行政との連携として、 1(○の中に1)として職業意識の啓発やインターンシップの実施等、ニート・フリータ ー対策、実践型人材養成システム等に対する教育施策や産業施策との連携。2(○の中に 2)として大学、大学院等における高度かつ実践的な教育の活用に向けた教育施策との連 携。3(○の中に3)は障害者や母子家庭の母等に対する教育、福祉、医療施策との連携。 4(○の中に4)として職業キャリアの展開において、雇用から自営への移行等を視野に 入れた、起業も含めたキャリア支援ということで、産業施策との連携を入れています。  第三として、青少年期における家庭や地域教育力の強化、高齢者の体力や能力に応じた 就業形態の普及等について、市町村行政との協力・連携を進めていく。「なお」というこ とで、官民協力による推進が前提であり、企業の枠を超えた、労使団体をはじめとする諸 団体の役割が重要であるとしています。  (5)は政策評価を通じた効率的な施策の推進です。政策評価については法律に基づき 現在も実施をして、個別の施策ごとに政策評価を実施しています。こういったことを踏ま えて、効率的かつ効果的な施策を実施するということで進めていくということが書いてあ ります。雇用保険三事業として実施している事業については、「PDCAサイクル」によ る目標管理ということを行っているので、その評価結果を踏まえ、より効率的・効果的な 事業の実施に努める。  最後が政策の周知・広報で、制度施策の情報として、いろいろ制度そのもの以外にも好 事例等、様々なものがあるので、こういったものを企業や働く者が利用しやすいものとな るよう提供する。そのためにいろいろな形を通じ、幅広く周知・広報を行っていく。その 際、国や地方公共団体等だけではなく、関係団体に協力を得つつ、周知・広報を行うこと に努めるということです。大変長くなりましたが資料1は以上です。  参考資料の1の1枚目に、前回玄田委員からお話があったかと思うのですが、いわゆる 「働く者」というものが何かのデータとしてあるかという話でしたが、労働力調査の中の 非労働力人口の中で、就業希望者というのがあり、「求職活動をしないで非労働力人口と なっている者のうち、就業を希望している者」ということで、総数として529万人という のがあります。2頁目は本文の中にも出てきましたが、雇用政策研究会で記述している部 分での労働力人口の減少についての表です。これから2015年に向かって施策を何も講じて いかないという場合には、約400万人の減少が見込まれる。いろいろ労働市場への参加を 促進する諸施策を講じた場合には、講じない場合と比べて300万人の増加が見込まれるわ けですが、それでも現在と比べて100万人の減少となってしまうというような推計値です。  3頁目が母子家庭、父子家庭の資料です。世帯数としては母子家庭が120万ぐらいに対 し父子世帯は17万ということで、10%強です。親の就業率は母子家庭、父子家庭になる前 が父子家庭のほうがもちろん高いわけですが、そういう世帯になった後でも母子家庭は上 がりますが、それでもやはり父子世帯のほうが9割を超えています。「ひとり親本人が困 っていることの内訳」の、母子家庭と父子家庭の比較です。母子家庭については仕事とい うのが2番目に高くなっているのに対して、父子家庭は家事が34.6%でいちばん高くなっ ています。以下は大体基本的な施策の概要や、これまで付けている部分ですので、説明は 省略します。 ○今野分科会長 ありがとうございました。それでは議論をしたいと思いますので、ご意 見なりご質問を頂戴いたします。いかがでしょうか。何でも結構です。 ○玄田委員 23頁。いわゆる派遣労働者の能力開発について。前回の資料と比べて見ま すと、「派遣先事業主による派遣元事業主への協力等とともに」という一文が加わってい ると理解しています。つまり、前後の話を思い出すと、派遣の場合には比較的汎用性の高 い技能を求められるために、経済理論的に考えても、派遣元企業が能力開発を負担すると いう合理性は、なかなか見出しにくいのではないかという中で、では派遣元ではなく派遣 先にだったら合理性があるというようなことを、何かお考えになって付けられたのか。も っとざっくばらんに紹介予定派遣のようなものを積極的に推し進めるための文言としてこ こが入ってきたのか。私自身がこう直すべきだとか、具体的なアイディアがないものです から捉えにくいのですが、まだこの部分はわからない部分が多くて、非正規労働者につい ては第7次職業能力開発基本計画ではないですが、主体的な能力開発は本人の能力開発を 進めるということについては何ら異論はないと思うのです。今回強調しているのは、現場 力や企業の育てる努力を非正規社員に求めるとすれば、一体どんな在り方があるのかとい うことは、まず検討段階だというのが現実的なところだと思うのです。そうだとすれば、 こういうことを基本計画に書くべきかどうかわかりませんが、やはりわからないので、き ちんと検討するということを加えたほうがいいのではないかという、非常に弱い提案なの ですが、それについては前回からの宿題だと思うので、一応伺いたいと思います。 ○ 杉浦総務課長 いま玄田委員からお話がありましたように、どこまで書けるかというこ とを事務局としても検討したのですが、前回も御議論頂きましたように基本的には派遣の システムということから考えて、第一義的には派遣元がやるべきということは法律の指針 などにもしっかり書いてありますし、そこは言えるのだと思うのです。前回、佐藤委員が 言われていたような派遣先の部分にどこまで協力させるかとか、そういう点については正 直言って我々も非常に難しいなという気がしています。  ただ、ここは派遣制度そのもの、あるいは請負などいろいろ出てきていますが、その中 で制度の根幹に関わる部分になってきてしまうので、職業安定局とも話をしてみますが、 どこまでそれができるか、非常に難しいというのが正直本音のところです。 ○草野審議官 少し付け加えますと、結局能力開発については基本的には派遣元従業員で すから派遣元が持つということです。しかしながら紹介予定派遣であるとか、請負の中で も正社員として登用するという事例があります。あるいはパートから正社員への切換えと いう事例もあります。そのような場合には、派遣先あるいは請負元が、それに向かって能 力開発の援助するという可能性はあるのではないかと思います。  ここの書き方も派遣先事業主が派遣元事業者と協力というのは、派遣元が派遣労働者 の能力開発を行うことを基本としつつ派遣先事業主にも様々な形で能力開発を実施しても らうことがあり得ることを念頭に置いています。 ○今野分科会長 いまの件は、玄田委員が言われたようによくわかっていないのですが、 前回佐藤委員が言われた登録型派遣では、派遣の人たちはあちこちに登録しているから、 派遣会社が投資してもリターンがあるかどうかわからないということなのです。しかし、 派遣だからといって職業能力が向上しないというわけではない。例えばフリーランサーの 方々がいるわけです。彼らは自営だけれども働き方は派遣みたいなものです。つまり、フ リーランスで事業主の所へ行っても別に教育してくれるわけでもない。でも、それで上手 にキャリアアップしている人もいるわけです。ですから、たぶん派遣でも成功した人がい るかもしれないのです。ですからまだよくわかっていないのです。 ○草野審議官 ずっとフリーランサーでいて、自分で能力開発、自己啓発する方もいるで しょうし、それから派遣元が行う場合もある。だからそこは一律ではないのだろうと思う のです。 ○今野分科会長 派遣、特に登録型の派遣の趣旨からすれば、自己責任で上手く能力開発 できるような仕組みがあるのかどうかを考えるのが、いちばん本筋かとは思うのです。 ○玄田委員 それが前段落の思いですね。 ○草野審議官 そうですね。 ○今野分科会長 まだよくわかっていないところですね。 ○江上委員 派遣労働者については法改正して対象が拡大されたのは本当に近年ですから、 いま急速に拡大しているところですね。そして職種も変わってきてMRといったところで 大規模に派遣を急激に使うようになってきて、相当これから構造的にもいろいろなものが 出てくると思うので、先ほど玄田委員が言われたように、少し検討するという言葉は、是 非入れておいたほうがいいと思います。  それと、紹介予定派遣の正社員化のシステムなども、景気が悪くなると、そういうよう な方法もあるのですが、景気が良くなると、逆にそういうシステムがなくなっていくとか。 あるいは、現実にいま長期化している派遣社員の場合には、同じ企業の中で技能・技術を 少し上昇していくような形での、職場の能力開発への協力ですね。今までランク1の仕事 をしていたら、熟練者にはランク2の職場を提供してあげると、具体的にはそういう職場 の移動とか、担当する職務を少しずつ高度化していく形での能力開発へのサポートが実際 には多いのではないかと思います。  派遣先で研修を具体的に展開するという事例は、極めて少ないと思います。ただ、そう いう中で派遣労働者が少し能力アップをして、そして、時間当たりの賃金が上昇していく 形で、労働者には効果が出ているのではないかなと思います。ですから、派遣先事業主へ の協力というのも、いきなり正社員化というところだけで、固定的に考えないほうがいい かなと思います。 ○今野分科会長 いずれにしても、何か検討みたいな感じですか。 ○玄田委員 まあ、実態把握を兼ねるということですかね。 ○今野分科会長 ほかにございますか。 ○玄田委員 たくさんあるうちのほんの1つですが、まず、副題でしょうか。私は気に入 っているという言い方は失礼かもしれませんが、大変いいのではないかと思っています。 今はこういう経済情勢で、労働環境に関しては、ある意味では楽観的な見通しが広がって いる中で、そういう一時的な就業環境の改善ではなくて、審議官もおっしゃっている持続 性というのでしょうか、持続的な改善のための道筋をキャリア形成という下にやっていく というのが、メッセージとしてわかります。また、2007年問題、高齢化の中でもう1回、 現場力、人を育てるということの見直しも、メッセージとしてよくわかって、今回の2つ の目玉だなと。  もう1個の目玉は、再三繰り返して、これも前回と同じことですが「働く者」という言 葉です。例えば30年、50年後を将来振り返った時、うまくこの少子化問題、労働力不足 の問題を乗り越えたとなっているといいと思うのです。そうなったとき、なぜそうなった のかというのが、技術革新が非常にうまく進んだというシナリオと同時に、就業者を増や すことができた。狭義の労働者の定義だけではなくて、もっと幅広に就業者を拡大する。 これまで非労働力と言われていた部分に対しても、積極的な労働政策の働き掛けをするこ とによって、労働力の減少を就業者の拡大の形でうまく克服したのだ、となればいいと思 うのです。  その時に振り返ると、第8次職業能力開発基本計画で「働く者」という、ワーキング・ パーソンみたいな新しい概念を出して、積極的な働きかけをしたとなればいいなと思うの です。そう考えると、もし今後、こういう計画で「働く者」というのが、どのぐらい労働 行政の公用語になるのかはよくわかりませんが、もし公用語になった場合には、再三こだ わりますが、一体誰のことを指しているのか。労働力や完全失業者にはちゃんとした定義 があって、それに準ずるぐらいの重要な概念にするのでしたら、やはり定義は必要だと思 うのです。  先ほどのお話だと、529万人という部分を参考資料に出されて、これはこれで私は1つ の解釈だと思うのです。ただ、それが9頁に書いてある「厳密な意味での労働者に限らず 潜在的に働く可能性を有する者を加えた『働く者』」というのが、労働力プラス529万人 というのは、正直言って理解しにくい。もし、ここを「529万人のことを言うのです」と いうのでしたら、厳密な意味では労働者に限らず、就業希望を表明している人まで含めた 「働く者」と言われるのだったら、私は529万人でも全く異論はありません。  なぜそういうことを言うかというと、では、この非労働力の529万人から排除された人 たち、いわゆる就業希望を表明していない人たちは、潜在的に働く可能性を有しないのか と言われれば、若干、ニートのことについて研究している立場からすると、それは違うだ ろう。それは私よりも半田室長のほうがずっとお詳しいと思うのです。確かに表面的には 就業希望を表明していない人はたくさんいるのですが、では、彼らが潜在的に働く可能性 を有していないかというと、絶対にそのようなことはありません。  かなり働く可能性を有している人はたくさんいるのは事実であって、ただ、いまはいろ いろな意味でダメージを受けていたり、自信を失っているから今は働けない。それも自立 塾であったり、ジョブカフェであるとか、いろいろな働き掛けによって、時間はかかるか もしれないけれども、潜在的に働く可能性を有する者になる可能性はとても大きい。ただ、 とても大きいと思うということしか言えなくて、絶対に大きいと言えないのは、そこは非 常に難しいからです。  昨日たまたま雇用統計研究会という、総務省の統計局の就業構造基本調査の見直しの検 討会に参加したのですが、わからないのです。就業希望を表明していないとか、なぜ表明 していないのか、どういうトラブルにあるのかということが、残念ながら政策的なデータ としてわからないものだから、私は就業希望を表明していなくとも潜在的な働く可能性を 有する、と断言出来ないので、遠慮がちに言っていますが、かなりの事例調査からして間 違いないと思うのです。ただ、実態としてわからない。  何が言いたいかというと、もし、この潜在的な働く可能性を有する者に加えたというこ とで、働く者を定義するのであれば、やはり就業希望を表明している非労働力者までしか 含まないでやると、いろいろな意味で誤解を招くのではないか。結局、悪く言えば就業希 望を表明していない人は潜在的に働く可能性を有しない人だと政策はとっているのか、と いう誤解が生じる可能性がある。それはたぶん避けたい事態だとすれば、その辺はあまり 実際の数にこだわらないという選択もあるのかもしれません。  前回お話したように潜在的に働く可能性を有する者とすれば、国民全員と言ってもいい のではないかというのが、私は1つの考え方でもあると思います。もし、それはあまりに も極端であろうと、働かなければいけないというわけでもないとすれば、国民全体を働く 可能性を有するというのはやや極端だとするならば、この表現を少なくとも「就業希望を 表明している人たち」とするとか。私は、この部分についてはとてもこだわったほうがい いのではないか、今回の基本計画の目玉だと私は思っているので、この部分についてはき ちんと議論をして、置くべき定義と、具体的な数字の部分については、もう少しディスカ ッションが必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○杉浦総務課長 529万人という数字は、施策の対象として出したというつもりでもなく て、例えば学生だとか、自営業をやっているような人たちと、9頁の1(○の中に1)〜 5(○の中に5)に書いてあるような人を含めれば、可能性としては相当膨らむ話になる わけなのです。そういった人も幅広く捉えていくというほうがメインだと思うのです。 529万人に絞るという趣旨で数字を出したつもりではないです。 ○玄田委員 それはわかっているつもりです。ご趣旨はよく理解するのですが、実際に聞 かれた場合にどうするのか。 ○杉浦総務課長 できるだけ集めてみたいとは思うのですが、数字はどのぐらいいるのだ という話になったときに、これはどこまで捉えるかというのが、捉え方としては非常に難 しいのです。 ○今野分科会長 数字の大小について言う前に、数字は出ないかもしれないけれども、こ の範囲と決めなければいけないと思うのです。 ○玄田委員 いまおっしゃったように、数字を集めることはできないのではないかと思い ます。 ○上村職業能力開発局長 玄田委員が言われるのは、休眠資源の活性化という意味であれ ば、働く気がない人でも病気でもない限りは働けとするかですね。極端なことを言えば休 眠資源、寝ている人材資源を活性化させるという意味であれば、チャンスがあれば働きた いと思っていない層についてまで広げることもあり得ますよね。ですから、政策として何 をやろうとするかですね。 ○草野審議官 そこは1(○の中に1)〜5(○の中に5)のことを指して、こう言って いるからなので、だから敢えて1(○の中に1)〜5(○の中に5)を項立てて書かない という手法もあるのです。厳密な意味での労働者に限らず、上記の1(○の中に1)〜5 (○の中に5)の者を加えたという方法もあるのです。 ○今野分科会長 1(○の中に1)が入っているから、すごく広いのですね。 ○草野審議官 そうなのです。1(○の中に1)が入ってしまうのです。だから一般的な 表現だと、なかなか難しくなってしまうのです。厳密な意味での労働者に限らず、上記の 1(○の中に1)〜5(○の中に5)の者を加えたという感じなのですが、そこを何か良 い表現があるかどうかということです。 ○玄田委員 私は表現としては「潜在的に働く可能性を有する者」でいいと思っているの です。そうすれば先ほど局長がおっしゃったこととほとんど変わりません。口では「働く 気がない」と言っていても、実は突き詰めていくと、かなり働く気がある人が特にニート の人たちにとても多いのです。だからこれでいいと思うのです。再三繰り返して恐縮です が、私は準備としてどの辺のことだと言う時に、ある程度イメージを共有していないと、 先ほど言われたように、寝た子を起こす、無理に働かせているという誤解を生みかねませ ん。 ○上村職業能力開発局長 少なくとも働きたいと思っている人は、働いてもらうようにし ようではないかと。 ○玄田委員 気持ちなのか、可能性なのかというのが違うと思うのです。 ○上村職業能力開発局長 全くそんなことを言わずに、国民全部に広げてしまうかですね。 だから、そこはどうしたらいいかというのを議論してもらえればいいと思います。 ○玄田委員 政策的には非常に狭い労働者からやや広げていくという意味では、現実的な 対応としては、この529万人というのは極めて現実的だと思うのです。狭義の労働者の概 念から広げる第一歩として、非労働力の中での就業希望を表明している人を、まず最初の ターゲットにするというのは、自立塾やジョブカフェのイメージと非常に近いですし、ま ずここが最初のアプローチだと言われるのであれば、とてもよくわかります。 ○今野分科会長 それを強調し過ぎると、1(○の中に1)が入らなくなってしまう。 ○玄田委員 ただ、打って出ようというのはいいですね。今まで狭い意味での労働力と比 較すれば。 ○草野審議官 実践的にいろいろやっている中で、例えば若者のキャリア支援とか、フリ ーターだとか、ニートだとかをやっていると、やはり中・高生段階まで遡ってとなってし まう。あるいは、雇用と自営の中間で、そこの境目がなくなっているから、雇用をやるの ならそこもやらなければいけないとか。実践的に雇用者を中心としつつも、やはりキャリ ア支援を現実にやっていくと、少し広がってくるわけです。  それが1(○の中に1)〜5(○の中に5)のような広がりとして出てくる。具体的に は1(○の中に1)〜5(○の中に5)までのことを申し上げているつもりで、哲学的に どこまでやるのだとか、そこまで議論をするつもりはないのです。繰り返しになってしま いますが、そこをまとめて、このようにしています。だから、言われるように、1(○の 中に1)〜5(○の中に5)までやりますよというだけではなくて、もっと一般的に労働 政策としてどうするのだということを議論して書ければ、それはいいと思いますが、今の 段階ではここまででというより、実践的に広げてきた中で、結果的にこういう段階は必要 だということで書いている感じなのです。 ○玄田委員 少し広げるというメッセージで十分なのですかね、どこまでというより。 ○草野審議官 大議論でここまでを対象者として決めます、というところまでやるわけで はないのです。 ○玄田委員 極端なことですが、1(○の中に1)だけ取りあげて考えると、高校生でも アルバイトを積極的にさせることがキャリア教育として必要ですと、高校生も大事な労働 力ですと。基本計画のご趣旨には賛同しますみたいな考え方に捉えられると、それはちょ っと困るような気もするのです。確かにあまり今の段階でここまで、そこは入らないとい うことは現実的にできないわけです。 ○上村職業能力開発局長 1(○の中に1)はそう受け取りますかね。 ○江上委員 初等・中等教育段階について、文章の中に置くことについては、いいような 気もします。これが具体的な対象として、項立てして1(○の中に1)と置くと、労働行 政の直接ターゲットになるという印象がありますので、何か具体的な就労経験を当てはめ るという計画を持っているのか、あるいはそういうふうにするのかなと解釈する向きもあ るかもしれません。 ○玄田委員 キャリア教育の側面支援を厚生労働省が行うというのはとても大事だと思い ます。 ○江上委員 それは今でもやっていることです。 ○今野分科会長 1つは草野審議官が言われたように、厳密にというより今回はこの1 (○の中に1)〜5(○の中に5)の人たちを合わせて働く者というふうに政策的には決 める。 ○草野審議官 書き方として、対象者というより政策としてこういう政策をやるのだとい う政策のほうで書いてしまい、あまり対象者ということを強く言わないという書き方もあ ると思います ○江上委員 そうしたら理解が成り立つ。 ○今野分科会長 でもこれは、キーワードとして「働く者」ということでしょう。 ○玄田委員 「働く者」というのは、ここに枕詞で書いてあることを一言で言えば、潜在 的就労可能者というのでいいのではないですか。そこにどういう人が入るかはこれから議 論をして詰めていくぐらいの問題で、少なくとも狭い意味での労働者だけではなくて、も っと幅広に考えていかないとこれからはいけないのだというメッセージとして捉えてほし い。だから数字をどこまで厳密化することが目的ではないのだということですから、私み たいにあまりこだわる必要はないのかもしれません。 ○草野審議官 「1(○の中に1)〜5(○の中に5)のような潜在的に働く可能性を有 する者など、厳密な意味での労働者に限らず、働く者という視点からとすると」とすると 限定が加わりますから、そういう書き方もあるかなと思います。 ○上村職業能力開発局長 でも、1(○の中に1)〜5(○の中に5)は「者」で受けて いないのです。政策で特定しているので、者で特定しているわけではないです。 ○今野分科会長 厳密にいうと、1(○の中に1)〜5(○の中に5)の政策の対象とし て考えているような人を「働く者」と言うのはどうか。 ○上村職業能力開発局長 基準法上の労働者だとか労働法では、厳密な意味での労働者と いうと「雇われて使われている人」という意味です。労働者と言うときに雇われて使われ ているというと、更にそれにプラスすれば失業者も入ります。それからもっと広げれば、 これからそれになろうとする者。もっと広げれば、自営業者になるというのも膨らむ。そ ういう意味で言われている働く者というのは、どんどん広げたイメージで玄田委員は言わ れているわけです。「働ける者」と言えば国民全員ですね。「働く者」というのか「働け る者」というのか。キャリア形成を支援するといえば、最後は全員になってしまいます。 当面どこまでやるか、とかいう議論です。 ○玄田委員 狭い意味ではというか、最初のステップとしては、これまで労働力として定 義されていなかったのだけれども、それに極めて近しい人から、広い意味では国民全般を 対象として。 ○上村職業能力開発局長 働くという言葉は政策でやろうとすると、すごく曖昧なのです。 山之内先生がハンナ・アーレントについて書いていましたが、「Work」と「Labor」と 「Action」、日本語で言うとみんな「働く」になる。「Labor」は奴隷労働みたいなもの、 「Action」が。 ○江上委員 「Action」というのは人間の「活動」です。 ○上村職業能力開発局長 日本語にするとみんな「働く」のような言葉に使っています。 ○江上委員 NPOの活動や、知識社会の仕事も「Action」の世界に含まれています。 ○上村職業能力開発局長 何か対策を労働基準法の中でやるときは、雇われて使われてい る者についてどうするかです。 ○江上委員 そこまでいってしまうと、ちょっとジャンプし過ぎかなと思います。 ○上村職業能力開発局長 我々が施策として何をやろうとするかによるのだろうと思うの です。 ○江上委員 いまの行政と法律と現実の枠組みからすると。 ○上村職業能力開発局長 本当にこだわりません。 ○草野審議官 書き方の問題ということもあります。例えば職業意識啓発、キャリア教育 の充実の対象となる、初等・中等教育段階の学生だとか、職業的自立へ向けた対応をしな ければならないニート状態にある者だとか、書き方を対象者として限定してやることはで きるのです。 ○玄田委員 厳密にいうと、なぜ労働者に限らず対象を広げる必要があるのか、というこ とさえしっかり説明できれば、本当は、後は些末なことだと思うのです。 ○草野審議官 そこはおっしゃる趣旨を踏まえて、表現の工夫をしてみたいと思います。 ○玄田委員 下手すると、すぐ「Labor」を強調されて、全ての国民に働けということが 今回の目標なのかみたいな誤解のほうが独り歩きをしやすいですよね、だからそれさえ注 意すれば良いことかもしれません。敢えて書き込む必要はないのかもしれませんが、ある 部分、怖さがある表現なのです。 ○今野分科会長 その点はその程度にしておいて、ほかにございますか。 ○鈴木委員 同じ頁なのですが、例の「キャリア権」という言葉が出てきていますが、こ の言葉自体が、まだ十分に本当に浸透して、皆が共通理解をしているものとは到底思えな いのです。それを更にここで陶冶し精緻化していくかということが、本当に可能なのかど うか。実際に権利というふうに個人が持っているものとはとても思えませんし、そういう 定義でもないと思うのですが、ややもすると、そういうふうに捉えられがちな面もあるの で、ここは十分吟味する必要があるのではないかと思います。 ○草野審議官 キャリア権という言葉は、確かに耳慣れない言葉で、平成14年7月に「キ ャリア形成を支援する労働市場政策研究会」というのがあって、そこで「キャリア権」と いうことを打ち出しました。  お配りした資料は平成14年7月の上記研究会の報告書の一部を抜粋したものです。 「キャリア形成に関する法的整理」ということで、まず最初に「労働者のキャリア形成を 促進していくために、法的な問題点を整理しておく必要がある。法的問題点としては、大 別すると、政策的な根拠として、雇用政策等において、どのように法的に位置づけるかと いう問題と、実際に労働者がキャリア形成を行っていく上で、どのような法的問題が生起 するかという問題がある。前者については、平成13年10月に雇用対策法及び職業能力開 発促進法が改正され、キャリア形成促進の考え方が取り入れられている。」と書かれてい ます。  ここで申し上げているのは、キャリア支援政策としてというので、2つある問題点のう ちの政策の根拠づけとして、キャリア権的な考え方を取り入れてはどうかという点です。  3枚目には「『キャリア権』とは何か」ということで、ある程度一般的なキャリア権の 内容を書いています。「キャリア権の議論は、働く人の一生に大きな位置を占める職業キ ャリアを法的に位置づけ、概念化しようとする試みであり、これを核に労働法全体の意義 を見直そうとする流れである。キャリア権は、人が職業キャリアを準備し、開始し、展開 し、終了する一連の流れを総体的に把握し、これら全体が円滑に進行するように基礎づけ る権利である。法的根拠としては、個人の主体性と幸福追求の権利(憲法13条)を規定と し、生存権(同25条)、労働権(同27条)、職業選択の自由(同22条)、教育権(同26条) など憲法上の規定を職業キャリアの視点から統合した権利概念である。  キャリア権は、性格的に、理念の側面と具体的な基準の側面とを合わせ持つ。理念の面 では雇用対策法や職業能力開発促進法等において、労働移動の活発化や求められる職業能 力の急激の変化等の新たな事態に対応したキャリア支援策の根拠づけとして議論を深めて いく必要がある。また基準の面では教育訓練、配置転換、出向等の場面での援用、パート タイマーのキャリアアップや、男女機会均等を進めていく論拠となることが考えられる。 もっとも現状では理念の域を出ていない。」と書かれています。  基本計画の中に「キャリア権」と書いたのは、いわゆるプログラム的な規定というか、 理念として、国が政策を打っていく場合に、こういうキャリアの積み重ねの一連の流れを 円滑にいくようにする政策をとっていくという意味づけとして、キャリア権という根拠を 明らかにして、少し政策を体系づけるという意味で申し上げています。  ですからその意味で「キャリア支援政策として」と書いたのです。これはある意味では 雇用対策法と職業能力開発促進法の平成13年の改正で、そういう考え方が背景にあるわけ です。ですからその考え方をもっと明確にしてキャリア支援政策としてどういうことを打 っていくか。第8次職業能力開発基本計画では施策として、4つのインフラ、団塊、世代 別の問題に対応した対策、更には地域の教育力等について触れているが、そういうものは キャリア支援政策をキャリア権の面から具体的に展開するものであると。そういう政策展 開をするに当たっての理念的な考え方としてキャリア権、ということを、ここで申し上げ ているわけです。  ですから、キャリア権というと、言葉が耳慣れませんし、何か企業に対して要求すると いう感じに受け止められる場合があるので、もし可能であれば、そこは限定して、文章上 もっとはっきりさせる工夫はしたいと思います。ただ、キャリア支援政策を根拠づけてい る理念的な考え方というか、法的な考え方を追求していくことは必要ですし、そういう考 え方の下に我々のキャリア支援政策は生存権だとか、労働権だとか、教育権、そういうも のに根差してやっているのですよという位置づけが必要だろうと思っているのです。  若干、問題提起的になるのですが、こういう基本計画にキャリア権という言葉を載せる のはいかがかということはあるとは思いますが、あえてご議論をいただきたいという気持 もあって、書いているわけです。 ○今野分科会長 鈴木委員、いかがでしょう。 ○鈴木委員 この説明を読んでも、今ひとつよくわからないと思います。まして一般的に この言葉が独り歩きしたときに、勝手にそれぞれの思いで解釈をしたときに、先程の草野 審議官のご指摘ではありませんが、例えば「キャリアを積み重ねた場合には、それを活か すような人事異動をさせる」というような権利として用いられることも考えられないわけ ではないです。ですから、この言葉がもう少し一般化して誰でも理解できるものとして、 コンセンサスが得られたものであればいいのですが、その辺の怖さを感じます。 ○草野審議官 「こうした職業キャリア支援政策を発展させるためには、法的・理論的な 面から政策を根拠づけ整理していく」こと。このこと自体はよろしいわけですね。御指摘 のような「キャリア権」という言葉がまだこなれていないし、非常に不安があるというこ とであれば、ここはそういう表現ではなく、「法的・理論的な面から政策を根拠づけ整理 していく」という趣旨で書かせていただきます。 ○鈴木委員 その趣旨はよくわかります。  ○草野審議官 わかりました。そういうご懸念を踏まえて考えたいと思います。 ○今野分科会長 ほかにございますか。 ○江上委員 今回、本文にも雇用者の割合が増加し、自営業主、家族従業者の割合が減少 するなかで、多様な自己雇用とか、起業等も配慮した計画についてかなり記述が強化され ており、とても良いと思うのです。最近、改めてデータを見ていますと、国民金融公庫な どの中小企業創業資金などの融資実態が急速に増えています。そういう意味では、先ほど の就業希望の働いていない人の割合でも、519万人の内の400万人近くが女性ということ もあって、かなり多様な働き方、つまり自己雇用とか、起業とか、そしてまた女性とか、 地域とか、この部分というのは政策として大きな固まりで、この政策の使い方によって非 常に効果が出るところだと思うのです。  そういう意味では、この9頁に職業キャリア形成支援政策の展開が(1)(2)(3) と書かれてあるのですが、(1)が対象者、(2)が労働市場を有効に機能させる基盤整 備の推進、(3)は職業生涯の全期間となっていますが、多様な分野における多様な方向 に対するキャリア形成支援の展開として(1)(2)(3)にもう1つ4つ目を付けると いうのはないのでしょうか。 ○草野審議官 もともとキャリアとは非常に個別な話で、個々人のキャリアを見て、キャ リア・コンサルタントを行う等、非常に多様だということを前提としているわけです。そ のキャリア支援の方法に分野によって違いがあるかというと、別にキャリア・コンサルテ ィングをしたり、能力開発の中身はその分野ごとに違いますし、人によっても違う。マク ロの雇用対策が、いわばマスで捉えて離職者が大量発生だとか、あるいは産業動向が変わ ったとかというときは、かなり大きなマスとしての雇用対策の一環として能力開発を行い ます。  それに対してはミクロの雇用対策は、雇用可能性を一人一人高めていくというのをキャ リア支援だとすると、その多様だということを前提としているという気持なのです。です から、キャリア支援ということは当然に多様だということを前提にしているものですから、 そこであえて多様だという場合には、どういう意味合いを付け加えるのかなと考えた場合、 恐縮ですが、かえって項立てするとわかりにくいという気がします。 ○今野分科会長 その頁のいちばん上では、職業キャリアの多様化、個別化、変化という キーワードでは言っているのです。 ○江上委員 10頁の(3)の中などにも、就業形態の多様性を含めての起業、等も含めて あるという解釈になるわけですね。 ○草野審議官 はい。ですから8頁中段で「職業キャリア形成支援政策を本格的に推進」 という中の「第二に、雇用対策としての視点」というところでは、ここは多様化というこ とでキャリア支援をしていくのだと、これは雇用可能性、働く者一人一人の職業キャリア を支援することによって、雇用可能性を高めていく雇用対策であるという趣旨を書いてい ます。 ○今野分科会長 個別の政策の中にはあるのですね。もう1段階下のカテゴリーかもしれ ません。 ○江上委員 例えばアメリカなどでは、大企業から雇用数が減って、中小企業も減って、 そして新規開業によって雇用が増えてきたという時代的な流れがあるわけです。かつて大 企業に雇用が集中していた時代は、地域の小規模、零細企業の生産性が低いということで、 評価されていなかった。それに今もう一度その地域を活性化するとか、地域の教育力を担 っているとか、介護、福祉等小回りのきいた生活寄りのワークライフバランスの実現をす るためにサポートを担っているとかいうことで、地域における小規模、零細企業の社会的・ 文化的意義というのは、90年代は再評価されてきているのです。そういう記述があるので すが、是非また更に深めていただくとありがたいかなと思います。  21頁に具体的に「創業サポートセンター」の所なども書いてあるので、具体的な計画を また期待したいと思います。新たなビジネスチャンスを求めてだけではなくて、起業の開 業動機は非常に多様です。特に能力発揮が男性も女性もともに一番の理由になっているの で、いわゆるそういった収益思考とか利益思考だけではなく、起業が能力開発の大きな自 己実現の方法論にも今なってきている実態があるし、開業年齢も若くなってきていますの で、そういうところも踏まえて少し考えていただければありがたいと思います。 ○今野分科会長 開業とか独立自営とか、自己雇用とか。従来の雇用者を考えた能力開発 政策からは少し外れるところなのですかね。結局起業も雇用者が辞めていってしまうわけ だから。そうすると周辺なのですね。 ○草野審議官 厳密に言うとそうですが、それによって雇用者になる場合もありますし、 自営でやる場合もある。その辺はかなり動いているわけです。現実的にはNPOへの委託 訓練のところ、サポートセンターということで、取り組み始めているわけです。要は自営 でも雇用でも、必要な技能とか技術は内容的には共通の部分がかなりあるのです。たまた まそれを勉強したので、起業したという人もいるでしょうし、雇用労働者になった人もい るでしょう。 ○今野分科会長 先ほどのキャリア権と同じで、何か理論的なバックグランドがないと出 にくいというところがあるのですか。 ○草野審議官 そうですね。ですから、ここのメッセージとしては、それぞれの人の能力・ 技能蓄積を高めていくことが、エンプロイアビリティであり、エンプロイアビリティは雇 用だけではなくて、就業も広く入る。雇用形態か起業か、その形態というのは、その時々 で変わるので、要はその人のキャリアを円滑に充実させていくことを政策ターゲットとす るという意味合いです。その結果として、雇用者になる場合もあれば、起業する場合もあ るだろうということなのです。形式にこだわって、雇用であるか否かと区別することに、 それほど意味がないという考え方です。 ○江上委員 今回はかなり就業支援というところに、大きく軸足を移しているので、その 辺が期待できるところかなと思います。NPOをやっている方たちも、ダブルで個人事業 主になっている実例は、現実に非常に多いです。 ○長谷川委員 この議論については、コミュニティ・ビジネスのところかどこかで1回や った気がするのです。個人が雇用されていて、だんだん自分一人で企業を起こしていく、 そういうのがあるのではないかと、前も議論したような気がします。そういうときは地域 の活性化のところでそういう話が出てくると、もう少しキャリア形成と一緒に繋がったの ではないかと思うのですが、ここはコミュニティ・ビジネスのところとは別な書かれ方を しています。私は、本当はそこのところで出てくるのかと思いましたが出てこなかったの で、今回のこの計画の中では、自営といいますか1人で企業を起こす、それに対するキャ リア支援みたいなものが射程に入らなかったのかなと思ったのです。  ただ、今回の計画ははじめにも書いてありますが「働く者」というところで、すごく大 きくとったのです。これは、大転換だと思うのです。働く者としたときの、キャリア形成 に対する支援をやるのだから、財源の取り方はすごく大変になる。対象がすごく広くなっ ていくので、皆さん大変だなと思ったのですが、こういうふうに決めたのだから頑張って もらうしかないのです。  「働く者」と玄田委員がこだわっていたわけですが、対象がすごく広がって、それで、 それはそうですねという合意形成ができて、9頁の1(○の中に1)で、結局「働く者」 というのを大きく捉えたから、小・中・高教育のところを、1(○の中に1)で拾ったの だと思うのです。  私もずっと前から気になっていたのは、ドイツは企業がなかなか雇用できないので、自 分1人で企業を起こす、1人で自立するようなことに対してかなり支援をしているが、あ まりうまくいっていないと聞いています。日本ではいま江上委員の言われるとおり、女性 たちが何かそういうことをやろうとすれば、そういう支援はどこでやるのかというと、キ ャリア支援でいえば、経産省などはやっているのだと思うのです。もっとこのキャリア支 援というところで組めないのかということであれば、もう少し議論の余地はあると思いま す。ただ、対象者は、もうすごく広がっています。そこまで広げるかどうかです。 ○草野審議官 繰り返しになってしまいますが、「働く者」というのは9頁の1(○の中 に1)〜5(○の中に5)ですが、これをちょっと具体的にいって、働く者と広げている。 この1(○の中に1)〜5(○の中に5)まではある程度、現実的に取り組みつつあるこ とでもあるのです。 ○長谷川委員 そうだと思います。あと、先ほど言ったキャリア権を少し法律的に、制度 的にどういう形で整理するかということが、次の課題なのかなとは思いました。法的・理 論的な面から政策を根拠づけ、整理していくことが求められているということは、まさに そういうことなのではないかと私は受け止めました。 ○今野分科会長 ほかにございますか。 ○小栗委員 今までずっと議論を聞かせていただいていて、副題の表現がどうもピタッと こない。先ほどの話に戻ってしまうような気がしますが「人を育てる環境の再構築」とい うと、職業能力開発との関わりでどの程度なのかと、やはりその議論の枠がどんどん広が っていて、どこまで自分たちが関わるのかというのが、非常に曖昧ではないかという気が してなりません。ただ、いま議論に参加していて、新しい分野に領域を拡大していくこと について否定しているわけではないのですが、この言葉はそれを的確に表しているとは言 い難いのかなという気がするのです。  例えば私の意見ですが、このテーマとしては人間の働く力というのが大事なわけで、 「働く力を育て、活かせる仕組みの再構築」ではないのか、別にそのことにこだわるわけ ではないのですが、要は職業能力開発というのは、人間の持っている働く能力、働く力を 高めていくためのものです。しかし、いまの時代は子どもの人間的な力も弱まっているし、 それからニート状態にある人たちはそういう場もなくなってきているという意味で、その 辺がポイントかなと。環境というと非常に漠然としてしまうので、それをどういう仕組み でやるのかをもう少し具体的に考える。ただ、これは職業能力開発という領域と、教育と いう領域と、あるいは経済の領域と予算の中でどうバランスをとるかというのがあるので、 そこはどうするかというのはあるのですが、ちょっとやはり「人を育てる環境」というの は率直にいってピンとこない。そんなにはこだわりませんが、私の意見です。 ○今野分科会長 今おっしゃられた「働く力を育て、活かせる仕組み」の「活かせる」の ほうは、ここからするとかなり広がってしまいますね。前半は能力開発にやや関連の深い ところです。 ○小栗委員 実際にそうした力が付いたとしても、それが社会がうまく取り上げられない というか、そういう意味で「活かせる」と使った。育てて活かせると両方あるのではない かと思います。 ○玄田委員 「活かせる」は安定行政のほうかなという気がします。 ○今野分科会長 そういう意味で広がってしまうかなと思ったのです。 ○小栗委員 そんなにこだわりませんが。今までの議論がどうしてもそこに戻ってしまい、 教育論に入ってしまうのです。教育学の話だとか、あるいは人間力の話でどんどん広がっ ていってしまうと、どこまでいくのだということになる。 ○今野分科会長 定義ははっきりしていないけれども、ここで言いたい「人」は本当は、 「働く『人』」なのです。 ○草野審議官 そういうことで11頁に書いてあります。そして、これは企業における現場 力とか、地域社会における人材を涵養する力、について少し言っているわけです。ただ、 インフラづくりとかそういうことも、広い意味では全部入る話ではあるのです。 ○今野分科会長 私などは違うことが気になっています。「人が育つ環境」ならいいけれ ども、「人を育てる環境」というのは、気になるなと思っています。 ○草野審議官 ここで申し上げたのも、要するに職業能力開発は能力を高めればいいと。 いわば「働く力」を育てるということではあるのですが、実際の世の中でそれをやるには、 例えば時間がなくて能力開発ができないだとか、そういうものを変えていかないといけな い。そこで「職業キャリア」という概念を出してきたわけです。いわば職業キャリア形成 支援政策をとることになると、キャリアを持続的発展させる環境が同時にセットであるわ けなので、そのことを含めて「人を育てる環境」と申し上げているのです。ですから、こ こは職業キャリア支援政策ということに踏み込んでいく、という意味の副題を、とご理解 をいただければと思います。  今までは能力開発ということでしたが、能力開発もよく見ると、単に能力を高めるとい うのではなくて、やはり職業キャリアということを見ていかないと、本当の意味での能力 を高めることにならないのではないかということなのです。恐縮ですが「働く力」という と、それは職業能力は広がりますが、要するに今までの能力開発とあまり変わらないのか なという気もしてしまいます。それを高めるにはむしろ職業キャリアまで見ていかないと いけないということで、広げているのです。そこが広がり過きだというご懸念はよくわか るのですが、気持としては職業キャリア支援政策に踏み込むということを書いていますの で、それを表に出したいということで、こういう表現になっているということです。 ○江上委員 今回、本当に勇気をもって軸足を変えた計画だと思って、大変期待している のです。今まではどちらかというと、文言も、ある意味「能力開発行政」というやはり 「業界」があって、企業の雇用主との関係といったところにある程度理解が成立すると非 常にうまく軌道に乗るというものだったと思うのです。今回は国民一人一人への対象がこ れだけ広がって、そして、今までの雇用者という枠組みから就業というところまで広げて、 計画を立てることを打ち出すに当たっては、本当にわかりやすい言葉で、メッセージが伝 わるタイトルにすることがすごく重要です。  そういう意味では、いろいろなことへの整合性とか、広げたことによる関係への何かデ メリットだとかいろいろあるのかもしれませんが、「働く力を育てる」とか、「活かせる」 というのがあって、人生と関わるのだったら、何か「引き出す仕組み」とか、「発揮する 仕組み」とか、非常にわかりやすい個人に届くタイトルを付けたほうが、今回は国民的に も支持を得られるのではないかという気がいたします。 ○今野分科会長 いいではないですか。今日はそういう意見がいろいろあっても、別に今 日決めなくてもいいわけです。最後でいいわけです。 ○玄田委員 これも積み残しで、4頁の「現場力」という言葉の定義が出たと思うのです が、私はこれでいいのではないかと思う一方で、どこかで「実践」という言葉を入れてお いていいのではないかと思います。今回は「実践型人材養成システム」というのも1つの 目玉でありますし、経験というのも抽象的な経験ではなくて具体的な経験、即ち実践的な 経験、ここで「現場力」というのは、実践なのだというメッセージの1つのステップとし て、これに「実践経験に裏打ちされた」ぐらいの言葉がどこかに入ったほうが、より現場 力に近いかなと思います。 ○今野分科会長 「技術・技能及び経験に裏打ちされた問題解決能能力や管理能力」とい う、この定義だと、例えば研究開発の技術者は入るのですか。 ○玄田委員 エンジニアでもいいですね。  ○今野分科会長 それでは、ここでイメージしている現場力とはちょっと離れているとこ ろまで入ってしまうのではないかというのが私の心配です。 ○玄田委員 エンジニアが入っては駄目なのですか。 ○今野分科会長 たぶん入っていないのではないかと思うのです。入っているというのな ら全然問題はない。ただ、そうなると、たぶん働いている人全員になりますよね。企画を している人たちでも、研究開発をしている人でも、営業やっている人でもいい。 ○玄田委員 ある意味では非正社員が入ってもいいわけですね。 ○今野分科会長 そうですね。 ○玄田委員 非正社員で働いた経験が1つのキャリアとして、次に繋がるようになってい るという幅広なのですね。 ○今野分科会長 たぶんここで「現場力」と言ったときに、狭く考えた場合には、結局製 品やサービスを生産したり、直接供給している職場とか現場をイメージして「現場力」と 言っていたのです。 ○草野審議官 「現場における」という言葉が頭に抜けていますね。 ○今野分科会長 現場というのがこの定義だと、すごく広いのです。ここで、そこまで広 げて考えるというのだったらこれでいい。そうではなくて、ものやサービスを直接作った り供給している場だけを考えるのだったら、少し定義を変えなければいけない。スタンス によって、この定義は変わる。 ○長谷川委員 それは議論のときに、最初事務局はものづくりを想定して書いたのでしょ う。でも、そうではなくて、ホワイト・カラーも含むという話になって、ここは事務局で 広げたのではないかと思うのです。 ○今野分科会長 その場合にホワイト・カラーと言っても、実際にサービスを生産し供給 しているぐらいしかイメージをしていなかったのかもしれない。つまり、そのバックにあ る企画をやっている人たちとか、研究開発をやっている人たちは想定していなかった可能 性があると、私は認識しているのです。あの時でも「営業は入るよね」と言ったら、「入 るよ、それはサービスを提供して、作っている現場だから」というか、直接作っている人 たちだからと。そのときに、総合企画の人は入るとか、社長室は入るとか、人事は入ると か、それも人事企画が入るとか、そこまではたぶん考えていなかったような気もするので、 もう一度整理しましょう。 ○玄田委員 今回はキーワードの「広い」ということです。 ○今野分科会長 それだったら、これでいいですよ。 ○玄田委員 今回の副題の副題は、広々とした能力開発。 ○今野分科会長 私の言いたいのは、それでしたらそういうふうにここで認識を一致しま しょうという話です。すると「現場力」という言葉が出てきたときには全部入る。 ○草野審議官 年末の建議をいただいた段階では「ものづくりの現場をはじめ、様々な現 場における」という審議会からの報告なのです。「現場における技術・技能、ノウハウや 管理能力、即ち現場力の強さ」という定義です。 ○今野分科会長 そのときの現場というのは、どういうことをイメージされているのです か。つまり、少し広めに、いわば研究開発の研究所でも現場だという話になるわけですね。 ○玄田委員 それを排除する理由はどこにあるのですか。 ○今野分科会長 もし、そうやって広めで定義をしてやっていったときには、その観点か らもう一度見直して問題がないかどうかをみる。たぶん最初に事務局が考えていた現場力 の定義よりはかなり広くなるということは事実です。  ○西原委員 それでもいいと思うのです。現実に職場の中でイメージしたときの、考えた ときに、必ずしも、ものづくり現場だけではない部分での現場へ広げてもらってもかまわ ない。それと、もう1つ、玄田委員が言われた「実践」という言葉が、やはりキーになる と思うのです。ただ、それに実践の積み重ねというか、その中で磨かれるものということ で、少し継続するようなイメージを、できれば出してもらえるとありがたいと思います。 ○今野分科会長 私が心配しているのは、そのように広げたときに、ここに書いてある 「現場力の強化」という教育訓練の文章の整合性がとれているかどうかですね。そこはも う一度チェックしていただきたいですね。 ○西原委員 この中でワークライフバランスという言葉がいくつか出てくるのですが、こ れは関係者の中ではかなり一般的な言葉になりつつあるのですが、では、社会的にどこま でこれが浸透しているのかというと、まだまだなところもあります。それともう1つは、 定義自身も場合によると女性に限って、育児と仕事の両立みたいなことに限っている場合 もある。本来は生活全般に関わる部分で定義を広げている部分だと思うのですが、かなり 狭い定義で理解されている向きもあるのです。ワークライフバランスはこの中で書かれて いる部分は的確だと思うので、言葉の意味の部分で、簡単なものを括弧づきで付け加えて もらったほうがわかりやすいかなと、これは是非検討をお願いしたいと思います。 ○上村職業能力開発局長 それは、ワークライフバランスを日本語で書くという意味では なくて、定義を書くということですか。 ○西原委員 日本語でワークライフバランスがこういうことですよと言うということです。 ○上村職業能力開発局長 私も気になっていたのですが、横文字を使うとペダンチックな (学者ぶっている)感じに使っているのではないかと、世の中の風潮はそう思うのですが、 この中でも「ワークライフバランス」というところと「仕事と生活の調和を図る観点に立 って」といっているところがある。だから、どちらがいいか決めてもらえればいいと思い ます。 ○審議官 ワークライフバランス、これは仕事と家庭と地域というこの3つのバランスと いうことを、勤労者福祉行政では使っています。我々はどちらかというとそれに近いと考 えて、仕事と地域と家庭というもののバランスをやはり考えて定義した方がよいと思いま す。 ○上村職業能力開発局長 横文字を使うと、みんな思っていることがばらばらになる可能 性があるから日本語にしたほうがいいのかなと思ったりもしますが。 ○玄田委員 先ほどの問題提起的に書かれた「キャリア権」ではありませんが、第7次職 業能力開発基本計画のときには、「キャリア」という言葉が知られているかどうかという 問題があって、このお蔭ではないと思いますが、「キャリア」という言葉を出す中でそう いう問題・関心を高めるという部分もありましたので、「ワークライフバランス」につい ても。 ○草野審議官 定義するときにはその概念を曖昧のままではなくて、はっきりしておかな ければまずいですね。 ○今野分科会長 いずれにしても、とりあえず「ワークライフバランス」にして括弧で定 義を書いてもらって、それでまた次回に全体を見直してもらって。英語を止めようという 話になるかもしれない。そうしたら、一括変換をしてもらえばいい。とりあえずはそうい う形で対応していただきます。 ○長谷川委員 ワークライフバランスは私が言ったのですが、ワークライフバランスは勤 労者生活部も使っていますし、これからワークライフバランスをもっと見積るという話も あります。そのときにワークライフバランスが何か女性だけに特化したように受け取られ るのはよくないと思います。 ○今野分科会長 それはないと思います。 ○長谷川委員 それをもっと、女性だけではないですよ、男性もですよということで取り 組んでいこうという話が出ているので、できたら何か解説付きでもいいから定義していた だいて、その言葉が流行語大賞になるような意気込みで書かれたら良いと思います。 ○今野分科会長 なんとなく委員は横文字派が多いということです。 ○草浦委員 いちばん最後なのですが、今までいろいろな意見が出て思ったのですが、こ の施策の周知・広報というところが非常にさらっと書いてあるのです。これは我々企業に いる者でも、私自身も10年以上人事をやっていますが、初めて聞く言葉がぼんぼん出てま いりまして、カルチャーショックを受けているのです。もう少し施策の周知・徹底、つま り今回大きく軸足を移し、人を育てる環境へシフトされたわけですから、その周知徹底の 広報のところを少し肉付けしていただいて、ここをさらっと流さないようにしていただき たいというのが意見です。 ○今野分科会長 そこはもう一度、次回までに考えて頂いて、我々も少ないアイディアを 出し合って、良いものでここを膨らませましょう。ほかにもご意見はあるかと思いますが、 時間ですので今日はこの辺で終わりにさせていただきます。事務局から次回の日程につい てお願いします。 ○杉浦総務課長 次は3月29日の10時から、場所は6階の共用第8会議室でお願いをし たいと思います。議題については、引き続き第8次職業能力開発基本計画のご検討をいた だくことにしています。次回は年度末ということでこの計画以外にもご報告をしなければ いけないものが2、3あります。そういったことも議題に入れさせていただかなければい けないという話もありますので、是非よろしくお願いいたします。以上でございます。 ○今野分科会長 それでは今日は終わりたいと思います。ありがとうございます。 【照会先】厚生労働省職業能力開発局 総務課 企画係 (内5313)