06/03/15 労働政策審議会労働条件分科会 第52回議事録            第52回労働政策審議会労働条件分科会          日時 平成18年3月15日(水)          10:10〜          場所 厚生労働省5階共用第7会議室 ○西村分科会長 ただいまから、労働条件分科会を開催します。本日は、久野委員、石 塚委員、八野委員、奥谷委員、谷川委員、平山委員が御欠席です。また、山下委員の代 理として君嶋さんが出席されています。渡邊佳英委員が来られるまでは、定足数の関係 でまだ成立をしていませんが、来られたら成立します。それまでに、事務局で資料を用 意してもらっていますので、その説明をお願いします。 ○大西監督課長 お手元の資料に従いまして説明をします。資料No.1の参考資料「労働 時間に関する現状」は、これから説明をします。資料No.2は、平成17年度労働時間等総 合実態調査結果ということで、調査結果をまとめたものですが、この中から関係部分に ついては資料No.1の参考資料に入っていますので、資料No.2は後ほど御参照いただく形 でやらせていただきます。 ○西村分科会長 いま渡邊委員が見えましたので、いまから分科会が成立したというこ とで、従来どおりよろしくお願いします。 ○大西監督課長 いま、お手元にお配りしている資料は、資料No.1と資料No.1の参考資 料と資料No.2です。資料No.1の参考資料の「労働時間に関する現状」から説明を始めま す。  1頁は、年次有給休暇の取得率の状況です。これについては、平成11年度まで取得率 が50%を超えていたが、以降、低下し続け、平成16年度には46.6%になっている。付 与日数は、平成5年度の16.3日から平成16年度の18日に増加した。取得日数は、平成 16年度で8.4日という結果になっています。2頁は、「年次有給休暇の取得へのためら い」の調査です。「ややためらいを感じる」「ためらいを感じる」を合わせて68.6%です。 ためらいを感じる理由は、「みんなに迷惑がかかると感じる」「後で多忙になる」「職場の 雰囲気で取得しづらい」というのが左下の棒グラフにあります。MAと書いてあるのは、 マルチアンサーです。  3頁です。年次有給休暇の取得を「積極的」または「ある程度」推進している企業が 44.1%で、推進策を取った理由は右下の棒グラフにあるように、「労働者の健康、安全確 保」「創造的な能力の発揮」が多くなっています。また、推進していない企業が54.0% で、推進しない理由は左下の棒グラフで、「労働者個人の問題であるので」が多くなって います。  4頁は、年次有給休暇の推進策を取った企業に対して、どういう取組をしたのかを聞 きました。マルチアンサーですが、棒グラフにありますとおり、「有給休暇の計画的付与」 「休暇取得時季の調整」「休暇残日数の通知制度」が多くなっています。  5頁の上の表です。計画的付与制度については、平成16年度で14.8%の企業が導入 しています。5頁の下は意識を聞きました。労働者が「一斉年休」についてどう考えて いるかですが、2つの箱の上のほうですが、「全員が一斉に休むので気兼ねなく休めるの がよい」が40.3%。一方、「希望しない日に取得することもあるのでよくない」が19.7% です。「年休の計画表などによる個別取得方式」についてどう考えるかについては、「業 務を考慮してあるので気兼ねなく休めるのがよい」が35.9%、「希望する時期に取得で きないこともあるのでよくない」が12.8%という結果が出ています。  6頁は、どのぐらいの長さの年休を取って何に使ったかという話を聞いています。こ のグラフは2段に分かれていますが、つながっています。年休1日単位の単独取得の場 合は、「病気の療養・体調不良」「家事・育児・子供の行事」の割合が多くなっていると いう調査結果です。  7頁は、年次有給休暇の望ましい取得方法です。「1日単位での取得」が最も多く、 「なるべくまとめて取得」が次に続いています。下の箱の表の中を見ると、年齢別、性別 で取ったものですが、女性の場合は時間単位での取得に対するニーズが多少多くなってい て、30〜49歳のところで2桁のパーセンテージが出ています。  8頁は、年次有給休暇を残した理由です。最も多かったのは、「病気など何かあった際 に使いたいから」という理由が6割(61.2%)です。8頁の下は、労働組合に対して法 定の年次有給休暇を除く休暇部分の買上げ制度の有無を尋ねたところ、「導入している」 が3.9%、「導入していない」が93.1%という結果です。9頁は、労働基準監督署におけ る指導例をいくつかピックアップしたものです。  10、11頁です。ここからは、時間外労働あるいは休日労働といったものの統計的なデ ータです。10頁のグラフは、週の労働時間について問うたもので、60時間以上のものは 横ばいか少し増えている。週35時間から60時間未満のものは、少し減ってきている。 週35時間未満のものは少し増えてきている感じです。11頁は、30代男性で区切ってみ たところ、週60時間以上の者の割合は23.4%という結果になって、平均値に比べて長 くなっているのではないかということです。  12頁は、36協定の締結状況です。37.4%の事業場で締結していまして、301人以上の 企業になると93.6%という結果になっています。この資料出所の「労働時間等総合実態 調査結果」(平成17年度)と書いてあるのは今日、机上にお配りしている資料No.2のこ とです。  13頁です。特別条項付き36協定は、27.7%の事業場が締結していまして、規模が大 きくなると締結の比率が高くなっているということです。対象業務は下の表ですが、 「一般事務」で43.1%、「販売・営業」で46.5%となっています。  14頁です。36協定において1週の延長時間の定めがある事業場の1週の延長時間につ いては、限度基準の「15時間」以下の割合は92.2%です。1箇月の延長時間については、 限度基準の「45時間」以下が99.1%、1年の延長時間の場合は、限度基準の「360時間」 以下が99.0%という調査結果が出ています。  15頁からは、1週の法定時間外労働の実績で、その事業場の平均的な者です。15時間 以下の方は96.4%、平均が5時間28分です。棒グラフが各時間ごとの割合を示してい まして、大体「10時間超え12時間以下」から左がなだらかに下がってきている。そこ から右側は、あまりないという結果ではないかと思います。  16頁です。1箇月の法定時間外労働の実績で平均的な者ですが、45時間以下が95.8%、 平均が15時間13分です。こちらは10時間以下のところがいちばん多くて、そのあとは ガクンと減って、さらにそのあとはなだらかに減っている感じです。1年の法定時間外 労働の実績の平均的な者は17頁ですが、平均136時間33分で、360時間以下が92.7% です。こちらは「100時間以下」が半分で、その後「100時間超え」から「300時間以下」 がだんだん減ってきて、そこから右側はまた数が減っている状況ではないかと考えてい ます。  18頁は、1週の法定時間外労働の実績で、最長の者の場合は15時間以下のものが企 業規模計で85.9%、平均8時間21分です。ただ、企業規模別に見ますと18頁の下の表 ですが、事業場規模で1〜9人だと15時間以下が88.8%ですが、301人以上になると 48.2%で、企業規模別で少し差が出てきています。18頁の上の棒グラフを見ましても、 山のピークが少し右に移ってきている状況ではないかと思います。  19頁は、1箇月の法定時間外労働の実績ということで、これも最長の者について調べ ましたが、45時間以下は85.2%で、これも企業規模が大きいと減ってきています。棒グ ラフを見ますと、減り方が少し平均的なものですので、例えば16頁のグラフと比較する と少しなだらかになってきている感じではないかと思います。20頁は、1年間の法定時 間外労働についての最長の者ですが、360時間以下については82.6%です。グラフは上 のような形で、平均は210時間57分です。  21頁は、年間の法定休日労働ですが、平均的な者は3.8日で最長は5.4日です。  22頁です。法定時間外労働に対する割増賃金の割増率については、ほとんどが25%、 35%にあるという結果が出ています。23頁は、指導例をいくつか挙げています。  24頁は、変形労働時間制などです。変形労働時間制を採用している企業は24頁の上 の表ですが、平成16年度が全体で55.7%で、1年単位が36.4%、1カ月単位が15.3%、 フレックスタイム制が6.8%になっています。フレックスタイム制を導入している事業 場では、「十分活用」「まあまあ活用」を合わせると8割ぐらいが活用されています。 導入していない理由は下の表ですが、「取引先・顧客に迷惑がかかる」「労務管理が煩 雑になる」といった理由が多くなっているのではないかと思います。  26頁です。みなし労働時間制のうち、「事業場外労働のみなし労働時間制」について は、上の表で9.3%の企業で活用されています。専門業務型裁量労働制は3.4%、企画業 務型裁量労働制は0.6%という結果になっています。27頁は裁量労働制についての説明 が書いてありますが、表自体は26頁のものと同じですので、先ほどの説明のとおりとさ せていただきます。  28頁です。専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制について、1日のみなし労 働時間はそれぞれ平均8時間29分、8時間7分という結果が出ていまして、実労働時間 はそれよりも多少多い結果が出ているということです。企画業務型裁量労働制の導入状 況は下のグラフにありますとおり、平成17年12月31日現在で1,730の事業場で40,734 人という結果が出ています。  29頁は、裁量労働制を導入したきっかけについて聞いています。専門業務型裁量労働 制では「労働者の創造的能力を高め、発揮を促す」、あるいは「成果主義型人事労務管 理の導入の一環」となっています。29頁の棒グラフに、白い棒と点々の入った棒があり ます。白い棒が専門業務型のアンサーで、点々の入った棒が企画業務型のアンサーです。 企画業務型の導入のきっかけについては、先ほどの専門業務型と同じように「労働者の 創造的能力を高め、発揮を促す」、あるいは「成果主義型人事労務管理の導入の一環」 がもちろん高いわけですが、企画業務型としては「仕事と生活とのバランスを保ちやす くする」が42%、「成果で評価して欲しいという労働者からの要望」が36.1%となって います。  30、31頁は、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制についてどうですかとい うのを労働者に対して聞いたものです。いずれも棒グラフのいちばん上ですが、「自ら の能力の有効発揮に役立つと思った」とか、3つ目の「仕事の裁量が与えられることに より仕事がやりやすくなると思った」について、比較的期待どおりであるというお答え が特に多くなっていると思います。  32頁も、労働者に聞いたアンケートです。専門業務型裁量労働制について、不満があ る方が4割弱というのが左の円グラフにありまして、その不満の内容は「業務量が過大」 「労働時間(在社時間)が長い」といったところが伸びています。一方、企画業務型裁 量労働制については、不満がある方は2割強ということで、専門業務型に比べると労働 者の不満は少なく、「普通」「満足」が多いとなっています。  33頁です。裁量労働制適用労働者に「一律の出退勤時刻がある」とか「決められた時 間帯にいれば出退勤時刻は自由」という企業が一定割合見られるわけで、そうした方々 に対して「遅刻した場合はどうするのですか」という質問を事業場に対して行ったとこ ろ、33頁の上の右側の棒グラフで「注意をする」がいちばん多い結果です。33頁の下は、 裁量労働制の適用労働者に対する上司の業務の指示の状況ですが、これについては「業 務の目的、目標や期限等基本的事項についてのみ指示がある」という割合が非常に高く なっています。  34頁は、裁量労働制の適用労働者に対する健康・福祉確保措置として実施することと なっているものです。専門業務型裁量労働制では、「産業医等による助言・指導又は保健 指導を受けさせる」「休日労働が行われた時に代償休日を付与する」「心とからだの健康 相談窓口を設置する」といったものが多いです。企画業務型裁量労働制についても同様 ですが、少し順番が入れ替わっている結果になっています。  35頁は、実際に健康確保措置として実施されたものです。専門業務型では、「休日労 働が行われた時に代償休日を付与する」が多い。企画業務型裁量労働制では、「心とから だの健康相談窓口を設置する」等々が多くなっているという結果が出ています。  36頁は、健康確保措置についての要望を労働者に対して聞いたものです。専門業務型 の裁量労働制では「休日・休暇を組み合わせた連続休暇制度の導入」という要望が多か った。企画業務型裁量労働制では「年次有給休暇の連続取得を含む取得促進措置」がい ちばん多かったという結果が出ています。  37頁は苦情処理です。上のほうは事業場に聞いた質問ですが、どういう苦情処理をや っているのですかということで、専門業務型では「人事担当部署等に独自の相談窓口を 設置」しているのが52.1%と多くなっています。企画業務型裁量労働制では、「労働組 合に相談窓口を設置」しているのが多くなっているということです。苦情の有無につい ては、「あり」のほうが少ないという結果です。苦情に対する会社の対応について、「不 十分」もしくは「やや不十分」というお答えをした方が、専門業務型では35.7%、企画 業務型では少し減って21.6%です。具体的に何が不十分かを見ますと、「どこの誰に相 談すればよいのかが明確でない」ということが、専門業務型が56.7%、企画業務型が 41.0%です。  38頁、専門業務型裁量労働制導入事業場において、事業場に対して対象業務の範囲を 聞いたところ、「現行制度でよい」が57.1%、「狭すぎる」が40.9%になっています。同 じ質問を企画業務型裁量労働制導入事業場に聞いたところ、「狭すぎる」が67.9%、「現 行制度でよい」が30.2%になりました。それぞれの理由は、専門業務型では「対象業務 の範囲は労使にゆだねるべき」とか、「具体的な指示をすることが困難なものかで判断す べき」という御意見。企画業務型は、「対象業務の範囲は労使にゆだねるべき」「事業の 運営に関する事項についての業務という限定は不要」「一定以上の年収があることで足り る」「企画・立案・調査・分析の業務という限定は不要」といった御意見が、アンケート の結果です。  39頁は、労働者についてどうですかということです。専門業務型の対象範囲について は、「現行制度でよい」と考えている方が71.4%です。「狭すぎる」「広すぎる」も一定 数があるわけですが、狭すぎると考える場合は棒グラフでいきますと、「対象業務の範囲 は労使にゆだねるべき」「具体的な指示をすることが困難なものかどうかで判断すべき」 といったところが多い。広すぎる場合は、「一定以上の年収を要件とすべき」「特別な処 遇、雇用管理を要件とすべき」というものがあるわけです。  40頁は、企画業務型裁量労働制の対象業務の範囲について労働者に聞きました。「現 行制度でよい」が多いですが、「狭すぎる」が27.1%います。狭すぎる場合に、具体的 にどうするべきかを見ますと、「対象業務の範囲は労使にゆだねるべき」「企画・立案・ 調査・分析の業務という限定は不要である」という結果が出ています。広すぎると考え る場合、具体的にどうするべきかについては、「一定以上の年収を要件とすべき」、ある いは「特別の処遇、雇用管理を要件とすべき」というものが挙げられています。あとは、 「コンピテンシーなどの職務遂行能力を要件とすべき」というものも、かなり多くなっ ていると思います。  41頁は、法的効果について事業場に聞いたものです。専門業務型のみを導入している 企業においては「現行制度でよい」が52.9%、「変更すべき」が41.4%、企画業務型の み導入している企業は「現行どおり」が20%、「変更すべき」が78.9%という結果です。 具体的にどうするべきかをお尋ねしたところ、いろいろな回答があります。「1日ではな く、1週や1月のみなし労働時間を認めるべき」「深夜に関する規制を適用除外すべき」 「休日に関する規制を適用除外すべき」「一定以上の高い水準の年収が確保されるならば 労働時間に関する規制を適用除外すべき」「労働時間、深夜、休日及び年次有給休暇に関 する規制をすべて適用除外すべき」という意見があります。  42頁です。現行の裁量労働制の法的効果について労働者に聞いています。「現行制度 でよい」というのが多くなっていますが、「変更してもよい」というのも一定数あります。 具体的な中身は、「1日ではなく1月のみなし労働時間制を認めてもよい」「一定日数の 休日・休暇が確保されるならば労働時間に関する規制を適用除外をしてもよい」などと いった御意見がありました。43頁は、裁量労働制についての指導例を御紹介させていた だきました。  44、45頁は管理監督者です。現行の管理監督者の職位については、どこまでが入って いますかと聞いたところ、円グラフですが、工場長クラスまで、部長クラス、部次長ク ラス、課長クラス、課長代理クラスでは、課長クラスの例が多くなっています。45頁は、 ライン管理職かスタッフ職かを尋ねたところ、スタッフ職の割合が多くなっているとい う結果が出てきています。46頁は、監督署の指導例を一つ御紹介させていただいていま す。以上が、資料No.1の参考資料の説明です。  資料No.1の労働時間法制について、少し研究会の報告書をベースに事務局で整理させ ていただいたものですが、簡単に説明します。1頁です。(1)年次有給休暇取得のイニシ アティブを労働者にゆだねてきたが、取得率は50%以下の水準で推移しており、労働者 の時季指定だけに任せるシステムが限界に来ていることから、年次有給休暇のうち一定 日数につき、使用者が労働者の希望を踏まえてあらかじめ具体的な取得日を決定するこ とにより、確実に取得させることが考えられるのではないかということです。(2)は、計 画的付与制度について、活用促進を図ることが考えられるのではないか。(3)は、連続休 暇の計画的取得や計画の作成なども考えられるのではないか。(4)は、通院や急に子ども の送り迎え、親の介護などが必要になった場合について病気休暇制度の整備により対処 すべきであるが、現実には導入が急速に進むことが考えにくいことから、過渡期的な措 置として年次有給休暇の時間単位による取得を認めることも考えられるのではないかと、 1)2)3)に留意ということで書かれています。(5)は、未消化年休に係る年休手当に ついて、退職時に何か精算できる制度設定が考えられるのではないかということです。  2、3頁は、時間外・休日労働です。(1)は、実態として時間外労働が長くなっている ことから、法定労働時間を超えて労働する時間数が一定の時間数を超えた場合などにつ いて、割増賃金の支払いに加え、時間外労働の時間数に相応する日数の休日(代償休日) など、労働義務を一定時間免除することを義務付ける制度が考えられないかということ です。(2)は、時間外労働のルールを徹底するため、例えば限度基準など一定の時間数を 超えて時間外労働をさせた場合に、使用者に対して通常より高い割増率による割増賃金 の支払いを義務付けることが考えられるのではないか。また、代償休日との組み合わせ で時間外労働を削減する方策について考えられるのではないかということです。(3)は、 労働基準法の違反の罰則を少し引き上げることも考えられるのではないか。(4)は、所定 労働時間を超えて労働した場合、法定労働時間内であっても超えた部分について、割増 賃金の支払いを義務付けるという考え方は、所定外労働の抑制につながる効果が考えら れる一方、所定外労働を法定労働時間まで延長するという対応を考えるなど、その影響 は広範であるので、今後とも検討を継続する必要があるのではないかということです。  4頁は、フレックスタイム制・事業場外みなし労働時間制ですが、それぞれ実態に即 した見直しを行うことが考えられないかということが述べられています。  5頁からは自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価 されることがふさわしい労働者のための制度ということです。(1)は考え方で、こういっ た仕事を通じた一層の自己実現や能力発揮を望む労働者で、自律的に働き、労働時間の 長短でなく、成果や能力などにより評価されることがふさわしい者が存在している。こ ういった方々については、より自由で弾力的に働くことができ、自らの能力をより発揮 できると納得する場合に、安心してそのような選択ができるような制度が考えられない かということです。(2)の1)は勤務態様要件です。@)職務遂行の手法や労働時間の配 分について、使用者から具体的な指示を受けず、かつ自己の業務量について裁量がある ことということで、出勤日数の枠内で出勤日と休日の設定をすることを含めて労働時間 の配分に裁量があること。あるいは、上司から過重な業務指示があった場合に、一定程 度、自己の業務量をコントロールできることが必要ではないかということです。A)は、 労働時間の長短が直接的に賃金に反映されるのではなく、成果や能力に応じて賃金が決 定されているということで、こういった賃金制度というのは他の通常の労働者の賃金制 度とは区別されているものになっていることが通常であると考えられるのではないかと いうことです。  6頁は、本人要件です。一定水準以上の額の年収が確保されているということで、労 働時間規制による保護を与えなくても自律的な働き方を決定できるということの重要な 要素として、一定水準以上の額の年収が必要ではないかということです。なお、これは 通常の労働者の年間の給与総額を下回らないのが通常であると考えられるのではないか ということも述べられています。労働者本人の同意ですが、同意が適正に行われている ことを担保するために同意しなかった場合の不利益取扱いの禁止が必要ではないかとい うこと。あるいは使用者と労働者の間で合意書を作成して、そういった合意書の保管を 義務付け、事後的に適正な同意があったことのチェックも必要ではないかということで す。  健康確保措置については、健康確保のためのセーフティネットとして、しっかりした 適切かつ実効性のある健康確保のための措置が講じられていることが必要不可欠であり、 こういった健康確保措置は労使協定とか就業規則ということで担保されることに加えて、 個別の労働契約で定めることも工夫する必要があるのではないかということです。  具体的な中身は、対象労働者全員に対して定期的に健康状態をチェックし、必要に応 じて適切な措置を講ずることを義務付け、そういった記録を保管するとか報告する。あ るいは、実施していない場合の罰則等についても触れられています。こういった健康確 保のための措置を恒常的にチェックすることができる仕組みとして、衛生委員会の活用 その他があるのではないかということです。  休日を実際に取得することが心身の健康確保のため、より一層重要であることから、 労働基準法第35条の法定休日に加え、一定日数以上の休日を取得させる。あるいは、さ らに連続して取得させること。また、休日の日数についてあらかじめ個々の労働契約で 定めることを、履行確保を図る手段として考えられないかということが述べられていま す。休日については、休日の日数が総労働時間の代用指標にもなることから、出勤の有 無を把握できる仕組みが一つ考えられるのではないかということです。  次のポツから話が変わります。労働者が制度の適用を望まなくなった場合は、通常の 労働時間管理に戻す仕組みを検討する必要があるのではないかということや、健康確保 措置として健康状況のチェックとか、休日の確保が適切に実施されていない場合は、対 象労働者をこの制度から通常の労働時間管理に戻していくとか、あるいは年収額の一定 割合を支払うといったことも含めて、仕組みについて検討する必要があるのではないか ということです。  4)は、導入における労使の協議に基づく合意です。労働者の意見を適正に集約する とともに、労働者の交渉力を補完することにより、労使が実質的に対等な立場で協議を 行う仕組みを担保することが重要ではないか。行政による事後的なチェックを適時適切 に行うことができるようにするため、労使の協議に係る合意書等その他のものを事業場 に保管させるとともに、行政官庁に届け出ることも考えられるのではないかということ です。こういったことに加えて8頁ですが、企業ごとに実態に応じた対象労働者の範囲 の画定を可能とするために、法令に基本的な要件を定めた上で具体的な対象労働者の範 囲について、労使の実態に即した協議に基づく合意により決定することを認めることも 考えられるのではないか。この場合に、管理監督者と新しい対象労働者の数の合計数、 企業ごとの労働者に対する割合の上限を設けることも必要ではないかということです。 また、極めて高い年収が保証されている労働者に対しては、使用者に対して相当の交渉 力を持ち、また働き方の決定について高い自律性を有することも考えられるので、導入 における労使の協議に基づく合意は不要とすることも考えられないかということです。  具体的な運用に当たっては、事務系職種と技術系職種の違いなども考慮に入れていく 必要があるのではないかということです。こうしたことで、例えばどういう方がイメー ジされているかといいますと、企業における中堅の幹部候補者で、管理監督者の手前に 位置する者とか、企業における企画開発部門のプロジェクトチームのリーダーではない かと思います。一方、要件をすべて満たす場合でも時間の長短と成果の大小の相関が強 い業務など、ふさわしくない業務についてはネガティブリスト化も併せて考える必要が あるのではないかということです。  9頁です。(3)新制度の法的効果については、労働時間及び休憩に関する規定が適用さ れない。深夜業に関する規定は、適切な健康確保措置が担保されることを前提に、適用 除外することも考えられる。一方、労働基準法第35条の法定休日は、休日取得の実効性 を図るという観点から適用するのが適当ではないかということです。  9頁の(4)は、新制度の適正な運用を確保する措置として、以下のことが考えられない かということです。1つ目は、苦情に対応するための措置について書かれています。2 つ目は、要件の違背があった場合ですが、労働基準法第32条等違反の問題が考えられる ことと、割増賃金の取扱いについての検討が必要になるのではないかということです。 3つ目は、行政官庁として導入手続が適正に行われているかどうかという側面から、適 切に確認することが適当ではないかということで、その際に賃金台帳等により対象労働 者が誰であるか明らかにされているとか、実際に健康確保措置が実施されているか、あ るいは休日が確保されているかについても、何か書面で確認を行うこともできないか。 こうした手続が適切に行われなかった場合には改善を求め、改善されないときは制度を 廃止させることができることも含めた仕組みについて、検討が必要ではないかというこ とが述べられています。  10、11頁は、現行の裁量労働制・管理監督者の改善についてです。(1)現行の企画業務 型裁量労働制については、新制度の創設に伴い、廃止することも考えられるが、実態を 踏まえつつ現行制度を維持することも適当ではないか。その際、中小企業において労働 者が少数で、全員から意見を聞くことにより、合意の形成が図れる場合には労使委員会 の設置を求めないとすることも考えられないか。また、苦情処理をより有効、実効ある ものとするため、苦情処理の運用改善の具体的方法の指針を例示できないかということ が述べられています。  専門業務型裁量労働制については、新制度と対象労働者は重なるのですが、具体的な ニーズもあることから維持することが適当であると考えられる。その際、過重労働に陥 ることを防ぐため、業務量の適正化を図るための所要の運用改善を行うことが必要では ないかということです。(2)の管理監督者についてはスタッフ職のうち、処遇の程度等に かんがみ管理監督者として取り扱うべきものが出てくるなど、現行の要件ではその適正 な運用を図ることが困難となっているので、制度の趣旨に照らして要件の明確化あるい は適正化を図る必要があるのではないか。また、その範囲について賃金台帳等により明 らかにする。そういった工夫も必要ではないかということです。  11頁は、深夜業に関する規定についても適用除外とすることが考えられないかという ことです。この場合、健康確保措置の在り方について検討することになりますが、そう いった場合に管理監督者の意向が反映される仕組みについても検討する必要があるので はないかということです。以上、駆け足ですが資料の説明を終わります。 ○西村分科会長 いま、事務局から労働時間に関する現状と労働時間法制について、資 料No.1で説明をしていただきました。できれば、労働時間法制について、前の方からそ れぞれ議論をしていただきたいと思います。最初に年次有給休暇からお願いしたいと思 いますが、いかがでしょうか。 ○長谷川委員 今日事務局から、労働時間に関する現状の調査結果についてポイントの 御報告がありました。そのあと、資料No.1で労働時間法制について御説明があり、分科 会長から年次有給休暇から御議論したいとありましたが、この分科会はどのように労働 時間の問題を審議していこうとするのか、私には全体像が見えないのです。労働時間に ついて、現状が問題であり、労側はそれについてどのような見直し・改善が必要なのか という意見を述べ、事務局は5点にわたってこれらについての改善・見直しが必要なの ではないかと出されました。しかし今回の労働時間に関する現状の分析だけで、果たし ていいのかどうか。なぜなら、私どもが認識している労働時間に対する問題というのは、 こういうきれいなものではなくて、地方連合会や連合本部で行っている労働相談では、 過労死とか過労自殺とかメンタルヘルスとかが職場ではたくさん起きています。それら の問題については全然触れられておらず、企画業務型裁量労働とか専門業務型裁量労働 に対して労働者と使用者がどう考えているかとか、年次有給休暇についてどう考えてい るかということだけが問われているわけですが、労働時間全体の問題についてどのよう に議論していくのかを事務局から御説明願いたいと思います。 ○大西監督課長 いま、御指摘のありました労働時間については、基本的に私どもは研 究会で、いろいろな労働時間のデータを踏まえて御議論させていただきましたが、お手 元にある研究会の報告書の中でも一つ非常に大きな点として、いま委員から御指摘のあ りました長時間労働の問題が触れられていまして、そういうところに対して適切な対処 策にどういうものがあるのかが大きなポイントかと思います。その点については、いま 御説明しました資料の順番においては2になっていますが、時間外・休日労働の有効な 削減策としてどういったものがあるのかについて、大きく3つのポイントを挙げて御指 摘をいただいていて、そういった長時間の労働時間をどうするかも御議論いただくテー マであると考えています。また、自律的に働き、労働時間の長短ではなく成果や能力な どにより評価されることがふさわしい労働者のための制度については、こういう方がも し増えてきているのであれば、こういう方々に対する新しい労働時間制度はどういうこ とが考えられるかといった視点で御議論いただくことと整理させていただいたわけです。 ○小山委員 すると、この労働時間法制についてという資料No.1は、先ほどの説明を伺 うと研究会報告がほぼそのまま確立されているようなものなのですが、これは厚生労働 省の事務局の一つの考え方として、今日示しているということですか。この文章はどう いうものなのかをもう少し確認したいと思います。 ○大西監督課長 私どもとしましては、専門的な見地から学識のある方に現状の分析と、 それに対する解決の処方として一つ示されているものという具合に理解しまして、こう いったものについてさらに労使の皆様方の御意見を踏まえて、適正なものにしていく観 点から整理して、出させていただいた形のものと理解しています。 ○小山委員 研究会の設置のときの御説明では、研究会報告というのはあくまでも参考 の資料だという御説明をいただいたと記憶しています。ところが、これはたたき台にな っているということだとすると、参考資料ということとはまたこの文章の性格が違って くるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○大西監督課長 一応、この資料については研究会報告で指摘された内容を整理してま とめたものということで、委員御指摘の必ずしもこれはたたき台であるというところま ではいっていないわけですが、一定の研究の成果ですので、こういったところの切り口 は非常に重大であるという認識をしています。 ○小山委員 この文章の性格は、研究会報告を整理したものか、それとも厚生労働省の 事務局として、考え方を提示したもののどちらでしょうか。 ○大西監督課長 内容は研究会報告に沿ったものですので、基本的には研究会報告に沿 って整理したものです。 ○小山委員 事務局の考え方ではないと。 ○大西監督課長 事務局としても、こういった視点で議論をしていただくのは有意義で あるとは考えています。 ○田島委員 課長のいくつかの答弁を聞いていて、少し疑問に思ったのが、研究会報告 が出されて労使の意見をいただいて出すものだと言ったのですが、まだそれはこれから ですよね。 ○大西監督課長 はい。 ○田島委員 ということは、これはあくまでもたたき台ではなくて、参考資料だと。い わゆる研究会報告をシンプルに整理したものだという理解でよろしいわけですね。 ○大西監督課長 そういう理解で結構だと思います。いわゆるたたき台というものでは ないということです。 ○田島委員 もう一点は、先ほどの長谷川委員の意見に対して、この現状の資料No.1の 参考資料は極めて不十分だろうと思います。いま問題になっているのは、労働時間の二 極化や長時間労働、しかも不払残業が大変多いことです。その不払残業のデータも出て いないし、紀陸委員が強調されるワークライフバランス、仕事と生活の調和を考えた場 合に、健康の問題がどうなっているのかは全く資料として出されていない。したがって、 資料の足りない部分をきちんと補充して、いま労働時間問題については何が問題なのか をしっかりと議論することが必要であると思いますが、いかがですか。 ○大西監督課長 もちろんそれは大切なことだと思いますので、必要な資料については 適宜補充をしたいと思いますし、賃金不払残業については私どもとしても毎年、月間を 設けて非常に厳正に頑張ってやらせていただいているという具合に考えていますので、 そういった内容の御紹介も逐次やらせていただきたいと考えています。 ○長谷川委員 今日、松井審議官もいるからちょうどよかったのですが、ずっと以前に この労働契約法と、労働時間の前は時短促進法の議論をしました。そのときに労働時間 というものについて、仕事と健康、仕事と家庭生活、仕事と能力開発、仕事と地域活動 という形で、これから労使で労働時間の設定改善を行っていく。指針も出て、おそらく 4月からそういう労使の職場での取組になるでしょう。いま田島委員が言ったように、 最近はワークライフバランスという言い方がありますが、今回、労働時間法制について 見直しを検討する視点はワークライフバランスだと思います。前回4つの切り口で見て いったわけですが、それ以上もあると思いますが、いま労働時間の中で、仕事とそうい うもののバランスを取って労働者が暮らしていく、生活していく、働いていく場合にど ういう問題が起きているのかをもう少しきちんと議論をしながら、では、こういう検討 項目がありますねとあげていくべきではないか。この間、有識者の皆さんで時間をかけ ていろいろ御議論をなさったことがありますが、その中で出てきた項目はこういうこと ですねと。それ以外にも、おそらくこの審議会で委員からは、もっと項目があるのでは ないかということもあると思います。  例えば私どもでいうと、最近過労死とか過労自殺が起きているけれども、そういう問 題に対してもう少し労働時間法制というところから取り組むことが必要ではないかと言 われていますし、あるところでは最近の非常に特徴的な働き方だと思いますが、みんな が携帯電話を持っているから待機していて、日曜日に家族で夕飯を食べているところに 携帯電話で呼び出しをかけられて、すぐに来いと言われる。家族で夕飯を食べるところ も自分の職場に行く4km圏内にする。そういう働き方に対して、どういう労働時間法制 がいいのかも議論してほしいとも言われています。今日は事務局としては研究会報告か ら持ってきた検討項目を出されたのだと思いますが、それ以外にも例えばこういう項目 があるのではないかということについては、その都度随時検討していくということでよ ろしいのでしょうか。 ○大西監督課長 私どもとしては、いま御指摘の内容についても例えば時間外労働とい う切り口で入る部分もあると考えていますので、具体的な御指摘とかを踏まえまして、 ただ基本的な考え方としてワークライフバランスと、こういう時間外労働を効果的に削 減していくためにどういう手法が必要かについても非常に重要だと思いますので、そう いう視点から是非御議論をいただきたいと考えています。 ○小山委員 実態についての本日の資料は、いわゆるアンケート等を通じた統計資料ば かりで、本当にいまの実態を表わすようなものになっていないのではないかと感じまし た。実態は先ほど他の委員からもあったとおり、そこで自らの命を断たざるを得なくな った人たちとか、もう職場に行けなくなってしまった人たちなど、非常に苛酷な現実が あるわけです。  やはりこの分科会は労働基準法という、日本の最低の労働条件を規制していく法律に 関わる分科会ですから、そういう本当の職場の現実をきちんと議論していかないと。平 均値をいくら言っても何の意味もないのです。ですからこれから議論していくにあたっ て、もっとさまざまな資料、データ、実態の報告なり、あるいは裁判資料なども含めて ここで開示をして、それを基にして議論させていただきたいと思うのです。そのことを 約束していただけるかどうか確認をしておきたいと思います。 ○大西監督課長 議論に必要な資料につきましては当然、私どもで、できる限りという か、用意させていただきたいと思います。  いま、アンケート調査が主体であったというような御指摘がありました。これは私の 説明がちょっと具合悪かったのかなと思いますが、資料No.2「労働時間等総合実態調査 結果」はアンケートではなくて監督署でやった調査で、私どもが見にいってきた結果で す。それをグラフ化して16、17、18頁で「平均的な者」ということで取ってあるわけで す。そこのグラフを詳細には御説明しませんでしたが、それぞれのデータはあるという ことを一つ御理解いただきたいことと、資料の説明は、ちょっと省略させていただいた 部分もありますが、一応、監督署における指導事例等も、必要に応じて紹介させていた だいております。今後ともそういったことでいろいろなデータを提供していきたいと考 えております。 ○西村分科会長 進め方について使用者側の委員の方はいかがですか。 ○紀陸委員 現状を踏まえてというお話ですが、いわば論点整理が資料No.1で出されて いますので、この論議をしながら、その中でいまのような労働側の現状認識を述べてい ただければよろしいのではないでしょうか。基本的に、これだけ世の中が大きく変わっ てきている中で、これからこの労働時間の制度を、どのように時代に合わせるように変 えていくかということが大きな問題だと思うのです。それに合わせて現状ある問題を、 この中に織り込んで解決していく仕掛けをどうやって入れるか、これからの議論だと思 いますので。その場合に抽象的に議論していても進まないですから、この資料No.1のよ うな論点整理の仕方でよろしいのではないかと思っております。 ○小山委員 前回、研究会報告についての説明をいただいたときに、この報告の例えば 5頁の4「自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価さ れることがふさわしい労働者のための制度」という表題で記載されている部分。これは 現実をあまりにも知らなすぎる表現ではないか。前回も申し上げましたが、労働時間の 長短で評価されている労働者は一体どこにいるのですか、どういう人たちですか。私ど も労働組合の組合員で、労働時間の長短で評価されて賃金が決まっている人などいませ んよ。所定労働時間の範囲内でどういう能力で働くのかということでの評価はあります が、労働時間の長短で評価されている人なんてどこにもいません。こんな表題をつけて いる文章を基にして議論をしろと言われても議論できないですよ。それを含めて議論す るというのは結構ですよ。いろいろな形で、紀陸委員がおっしゃるとおりに議論するの はいいのだけれども、これを基にしながら議論をするなどと言われたら。実態と違って いるではないですか。  今日はなにしろ、春闘の集中回答日の午前10時からの会議なものですから、昨夜から 徹夜でテンションが高いまま来ていますのでね。団体交渉のようになっても困るのです が、これでは、実態と違いすぎる。立派な先生たちがいろいろ議論されているのはわか ります。だから、それを参考にするのは決して否定しませんが、それを基にして議論し たら、こんな間違ったことを書かれて、ここで議論していいのですかということです。 ○大西監督課長 実態と異なるということについては、後ほど議論していただくことに なろうかと思います。この研究会報告の中では、やはり一定の労働者について、労働時 間の長短というよりは、もう少し違った指標として挙げられているのが、成果や能力と いうことです。基本的には労働時間の長短というのは、残業を何時間したら割増賃金を いくら払うというような仕組みが一つあって、それに対して成果や能力などで評価され ているということで成果主義の賃金とか、そういったものがあるというような視点の切 口から、具体的なイメージの労働者として、管理監督者の手前に位置する者とか、プロ ジェクトチームのリーダーという、8頁に書いてありますような具体例を示しながら、 こういう方を表現する場合に、どういうようなグループの人なのだろうかといったアプ ローチで議論をしていただいたわけです。ですから必ずしも委員御指摘のように、こう いったカテゴリーがはじめにありきとか。そういうような話ではなかったとは考えられ ますが、そういうようなことで、そういう方々というのはまさに労働時間の長短ではな く、成果、能力などによって評価されるというのがふさわしいということで、客観的に そういうことが見えるような人々がいるのかどうか、というような議論になるのではな いのかなと思っております。 ○小山委員 申し訳ないですが、「労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価さ れることがふさわしい労働者の制度」というように厚生労働省の事務局が文章を書いて 出したら、世の中を惑わすことになりますよ。だって、例えば私どもの労働組合の組合 員は、みんなこれに当てはまりますよ。みんな、労働時間の長短でなく、成果や能力に よって評価される労働者です、普通の現場で働いている人も技術者も。いま成果型賃金 制度はあらゆる所に入ってきていますよ。それは労使で合意をしながらつくられてきて いる。それは労働時間の長短で評価しているわけではない。別に、裁量労働の人が対象 ではない。一般の所定労働時間の中で働く労働者について、そういう成果なり評価に応 じた賃金を決定していくというシステムを、労使で合意してつくり上げてきているわけ です。これが指しているのは、そういういまの現状と違うことを書いているのではない ですか、この表現は違うのですか。 ○松井審議官 いま小山委員から言われているような御意見も含めて労働時間制度につ いて、今後を展望してどんな手直しをするところがあるかとか、あるいは、現状をもっ と補強してやるべきところがあるかとか、そういう議論をやりたいと思っていますし、 小山委員もそういう気持だと思うのです。ですから、ただ言葉だけで議論するというの は避けたいと思います。この文章だけで言うと、その前に「自律的に働き」ということ も絡めて、たぶん頭ではご存じだと思うのですが、労働時間の規制をかぶさないような 対象者はいないのだろうか、それを捜すための道具としてこういう概念を使って、研究 会では議論していただいたということだと思うのです。ただ、言われるように、そうい った道具で捜そうとすると、現場感覚からして無理があるのではないかという御指摘と いうことで受け止められます。しかしながら、今回のここに関しての議論から言うと、 企画業務型裁量労働といった働き方をしている方の中でも、これをもう少し弾力的にと か、時間規制をしないでもいい、年収さえ高ければというような御意見もあるので、じ ゃあそういった方々は本当に大丈夫だろうかということを検証する意味で、何か切り口 を設けて議論しようということでこういう道具をつくっているわけです。いま言ったよ うに現状分析を踏まえながら、しかし、その道具立てでは不完全だし。いまの御主張で すと、ありもしないことを、何やるんだという展開なのですが、そういうことも含めて、 例えばそれを、使用者側のほうはどう考えられるかといったような、掘り下げた議論に もっていきたいと思っています。  そういう意味では今日お出しした資料No.1は、いわば、議論していただくための触媒 であって、これでその議論の射程距離を決めて、何が何でもこの中に押し込めなければ いけないなどということは到底考えていません。しかもその論点提示も、ここで議論し ていただくためのいわば必要最小限、いま手持ちの資料を整理してお出ししております。 最初に長谷川委員から言われたように、私がほかの所でいろいろ関わった制度もありま すので、大きな目標意識とそれを踏まえた次の目標、そういうことも頭に置きながら、 どんな資料を揃えて議論するかということは、この提示した論点を逐次やっていく中で、 補強・補完しながら議論を深めるというやり方でやっていただけないですか。はじめに 完璧な資料や完璧な論点を揃えて議論していただくというのは、すごく立派なことだし 良いことだと思うのですが、事務局がまだそこまで、ある意味では力が回っていないと いうことで御了解いただいて、少しずつ議論を始めていただけないか。そういう意味で この資料No.1からとりあえず入りながら、逐次足りないところを補完する、補強すると いう進め方でやっていただけないかなと思います。 ○渡辺章委員 小山委員の御意見、大変興味深くお聞きしているのですが、例えば労働 基準法では年休を取ると、一日当たりの平均賃金か通常の労働の賃金か、その労働日の 賃金を払わなければいけない。それから、残業をすると通常の労働時間または労働日の 賃金を基礎にして、その2割5分なり3割5分を払わなければいけない。ですから制度 上は、実際に企業が賃金をどのように決めているかということと、時間外労働や休日労 働あるいは年休があったとき、あるいは休業手当は平均賃金の6割だと、こういうとき には労働日なり労働時間の賃金を算定して、一定の法律上の手当をしなければいけない わけです。そうなってくると賃金の決定計算や評価方式を、企業が独自に考えて打ち立 てようと、労働時間や労働日の賃金というのは、平均賃金制度との関連においても、算 出しなければならない現実的な、法制度上の必要があるわけです。そういう意味で言え ば労働時間と賃金はつながっている。どのような賃金形態、評価制度を持とうとですね。 その点は当然よろしいわけですね。 ○小山委員 そうですね。けれど、所定労働時間を定めて、その中でその人が働くこと についての賃金を決めているわけですね。ですから時間外労働となる予定外に働いた分 について、ペナルティの効果も含めて、割増率を設定して払われています。労働者のこ の成果や能力などによる評価というのは、基本的には所定労働時間の中で働くことにつ いて、それぞれの労使の中で定めているわけです。労働時間の長短で定めているわけで はなくて、所定労働時間の中で定めているわけです。そのときに一定の時間外労働が当 然あるというのも、もちろん加味されることです。ですからここで言うと「時間の長短 ではなく」という言い方そのものが、先ほど渡辺委員がおっしゃったように、賃金に反 映する部分としては、いわゆる成果や能力として反映しているわけではなくて、所定を オーバーしたものに対して反映しているだけであって、ここで「成果や能力」だとか、 「時間に関係ない」というように言うからおかしいと言っているのです。それがあたか も特別な労働者のことのように言って一定の要件を定めてこういうようにしているけれ ども、大半の労働者がそういう意味では労働時間の長短ではなく、成果や能力によって 評価されることがふさわしい労働者なのです。私はそう思います。 ○紀陸委員 要するに世の中、成果主義の流れだから、成果の評価によって賃金を決め るという傾向が多いし、従業員の方々もそれを望んでいるわけです。例えば一つの仕事 を、ある人は6時間でやる、ある人は8時間かかる。その場合にどちらの人が賃金が高 いか。6時間でやった人のほうが能率が良いから、この人の賃金のほうが高いだろうと いうことになりますよね。出たものの評価によってその賃金の高低が決まる、というこ とを前提にすればそういうことになるわけです。それをここで言っているだけの話で、 全く時間を無視してということではないわけです。この後半のほうに意味があるのであ って、同時に、全く同じ仕事を、いまは6時間と8時間と言いましたが、AさんもBさ んも同じ8時間かけていても出る量、成果物が違う場合がありますね。その場合は成果 が多いほうの人に賃金を高く払いましょうと、そのようなことを言っているだけの話だ と我々は理解していまして、あとのほうに意味がある。6とか8とかということではな くてね。 ○田島委員 いま紀陸委員が言われたことは、人事評価とか賃金できちんと反映させる ということで、労働時間管理とは全く違う問題だろうと思います。 ○紀陸委員 労働時間の管理はついて回るわけです。いま言ったように6時間とか8時 間とか、あるいは同じ8時間でも。だから要するに、時間の長短だけではなくて、その 個々人の評価をする場合に、同じ時間の枠の中で出るものが違った場合には、当然成果 物で見るだろう。いま、どの企業でも、定期昇給と言いながらもいわゆる査定の昇給が 多くなっていますよね。メルクマールをやった人の出たもの、あるいはパフォーマンス を言っている話であって、決して、その時間がノーだということではない。もちろんそ の要素が入っていますが、私どもは軸はそちらにあるという表現だと思っておりまして、 そこの評価軸が高いほうのところにという意識です。 ○渡邊佳英委員 例えば8時間でやれる仕事、経営者としては所定内でやれると考えて 設定したものが、ある労働者の場合だと、残業をして休日出勤をしてもまだできないな んていうのがある。そうするとその人たちのほうが給料が高い。これがいいのかどうか というのが、我々の一つの問題点ではないかと思うのです。 ○新田委員 その場合に、昇進とか昇格とか、そのほかの要素でなんの考慮もしない企 業はないのではないですか。だから今回この提起で言えば、実はそういうことを言いな がら、労働時間の適用除外を広げたいということを言っているので、違うでしょうと言 っているのです。こんな言い方はおかしいのですがおっしゃるとおり、人によって8時 間でできる者もいれば、そうでない者もいますよ。うちで言えば、ロケに行くときから きちんと段取りをつけて、見通しを立てて番組を作るのもいれば、もう、いろいろなこ とができて与えられた番組の、こんな量を撮って四苦八苦する者もいるわけです。だけ どもやはり、できたものがどうかということも含めて、全体の評価をしていて、人を育 てることも含めてそれをやっていくわけであって、ここで言う、今回の提起は、私達か ら言わせれば、違うのではないかということなのです。 ○松井審議官 いま、新しい労働時間制度のいわば本質的な議論に入っていると思って いまして、我々とすればまさにそういう点を議論していただきたいという気があります。 5頁の書きぶりで小山委員の指摘は、こういった問題提起の仕方だと必ずしもねらいと か、本当にやろうとすることとの関係で適切ではないのではないか、このことを書くの は単に適用除外したいだけであって、多くの方との、関係との実態分析は十分ではない のではないか。こんな指摘につながっていると思うのです。おっしゃるとおりでここで、 研究会で書いたのは実態分析をしながら、報告書ですから、きれいにタイトルをまとめ なければいけないから、どういう書きぶりがいいかなということで、最後書き上げたよ うな表現でありまして、本当に議論していただきたいのは5頁の中でも、順は逆転して いますが、「自律的に働き」というようなことをもう少し掘り下げて、本当にそういうこ とがあるのだろうかと、そういう議論だと思うのです。  この要件を見ていただいてわかりますように、(2)の勤務態様要件の中で、いわゆる成 果賃金のほうはA)のほうに書いてありまして、これは形式的な要件かなというぐらい の位置づけになっていると思うのです。実態は、この職務の遂行の手段とか時間配分、 使用者からの具体的な指示、あるいは自己の業務量についての裁量。こんなものが本当 に労働者自身にしっかりあるような勤務実態があれば、これについての時間制度をどう しましょうかということを議論していただく。そしてその、いわゆる仕事の仕方とか具 体的指示、業務の裁量がないような働き方は、むしろいままで時間の規制の中で働いて いるわけですから、そういった方については、その時間外労働をするところについてサ ービス残業のないように、年休も権利があるのにそれが取得できない状態をどう解消す るか、そういった問題も必ずやるということで、トータル、現状におけるわが国の労働 時間規制を、現状との乖離をなくし、あるべき姿にするにはどうするか、そういう視点 でやっていただきたいと思っているのは間違いないわけです。  ただ、その議論の仕方で、我々の提示する資料が十分でないという点は受け取れます ので、それはお出ししますし、もし労使それぞれに問題意識、現状分析があればこの場 で出していただいて、こういった現状を踏まえてどうすべきかということを積極的に提 案いただきたい。そのためにあえて、出来は悪いかもしれませんが、こういう論点を出 したという御理解で議論を進めていただきたいと思います。いまやっていただいている ような議論は、本当にこういった時間外というか、時間を適用しないような世界が、現 在本当にいるかどうかという本質的な議論ですので、それこそしっかり議論していただ きたい。それに必要な資料ということであればいくらでもお出ししますので、是非とも 深めていただきたい。こう思っております。 ○島田委員 一つちょっとわからないのですが、ここは昔で言う中基審で、労基法の関 係、要するに労働時間の関係の法律を議論する場だと思うのです。しかし、議論のスタ ートが、いろいろな働き方がある、要するに賃金制度が変わってきたという話で、年俸 制が全員に行きわたったら、それに関する状態での労働時間制度をつくれという話にな るのですか。労働基準法はそもそも、労働者を守るための最低基準をつくろうという法 律ですね。だから、賃金制度と切り離して考えないとおかしくなるわけですね。先ほど の6時間、8時間で業務量がどうだということは賃金制度で対応すればいいわけです。 だから、賃金制度とリンクして話をしだすと、これはもうどうしようもないわけですね。  残業をした分は賃金を払って、その成果に見合うだけ払えばいいわけです。要するに 法定労働時間は週40時間でこれ以上働いてはいけない、でも超えた分について、成果が 上がるのだということなら、その分だけ残業で払う、何時間でもいいから払ってやれば いいわけです。それなのにいまは逆の方法で、賃金論と労働時間と両方を見ながら話を するからおかしくなるのですね。基本的には労働基準法の中の労働時間というのは、守 らなければいけないものはちゃんと守って、本来はこれで企業が成り立つようにしても らうのが経営の責任ではないですかというためにあるはずです。だから適用除外という 話をここでするのか。確かに働き方はたくさんあり、みんなが求めている。その部分で どうしてもお金というのが関わってくるので、その議論はしなければいけないかもしれ ないけれども、本来の目的は、賃金制度が変わったからとか、働き方が変わったからで はなくて、労働時間はどうあるべきか、ということが最初に議論されないとおかしいの ではないかと思うのです。しかし、今回書いてあるのはそうではなくて、現状がこうだ から、みんなが納得できる状態、みんなが満足する状態をつくるにはどうするのかとい うことです。これは労基法の精神ではないわけです。そこのところがどうも違うような 感じがするのです。 ○紀陸委員 いや、そういうことではなくて、先ほど申し上げたように、ある仕事をや るのに8時間かかる人もいる、6時間でやる人もいる。短く6時間でやった人には6時 間分の賃金しか払わないのか。そういうことではないですね。自分の仕事を自分で裁量 するという点に意味があるわけです。いろいろな働き方があると自分で考えて、どのく らいのスケジュールで、どういう段取りのもとに一定のアウトプットを出すか、そうい うことを自己裁量するような働き方を求めている人がたくさん出てきている。あるいは そういうことを望む人が出てきている。そういう状況においてどう対応しようかという 話なのです、いちばんの問題はそこなのです。 ○島田委員 残業をせずに、所定内でやればいいのではないですか。 ○紀陸委員 働き方が、それにリンクしていない法律ではないですか。いま言ったよう に、ある仕事を短時間でやった人はどうなりますか。賃金が低くなってしまう。時間に リンクしているだけで考えればね。 ○島田委員 それは時間当たりの賃金をやるからと。6時間で一日分だと見て、その人 を見直すとやればいいわけでしょう。逆に言えば、少なくてもいいでしょう。 ○紀陸委員 働き方というのは賃金も労働時間もみんなセットになっているわけですよ。 片方だけ考えるのではなくて、短時間で高い成果を出した人には高い賃金を払いましょ う。これはみんなセットですよね。処遇というのはそういうものですよ。ここだけの視 点ではなくて。みんな、いろいろな要素が絡んでいるわけです。そういう働き方が現に あるし、また、そういう働き方をしなければ成果を高められないというような領分、仕 事が多くなりますよ。すさまじい競争でしょう、各企業もね。なんのためにこれだけい ろいろな競争力強化で頑張らなければいけないのか。うかうかしていたら今日潰れてし まうわけですよ。雇用もなくなってしまうという局面が現にありますよね、いろいろな 領域で。それを考えながら労働時間なり働き方なり、賃金決定の仕方を考えて実際は回 っているわけで、いま言ったように時間のリンクだけで基準法があるという考え方では 済まなくなっているというところが、私ども今日の認識です。そこを越えないと法改正 はできませんよ。極端に言うと、良い労働者をどんどん近隣国に取られてしまうという 流れが現に起きていますからね。そういうのを放っておいていいのか。大げさに言うと 人の空洞化とか産業の空洞化になりかねないわけで、その辺を見据えて論議するという 姿勢がどうしても必要ではないでしょうか。 ○小山委員 先ほどから紀陸委員や渡邊委員がおっしゃるのは、例えば8時間のところ を6時間であげる能力の高い人がいる、その人は6時間で仕事をやったら家に帰るので はなくて、あと2時間仕事をするわけです。そういう8時間の中でほかの方よりも1.3 倍の仕事をする人は、所定の賃金の中で評価されるわけですね。そういう人は、能力の 高い人なのだから、高いランクの賃金評価になっていくわけです。だからその人たちは 決して、いつも残業をたくさんやっている人よりも賃金が低いということにはならない わけです。それだけ職階の高い能力給がついたり、さまざまな手当がついたりというこ とになっていくわけです。ですから労働時間だけではないわけです  それから、例えば、技能労働者で言ったら、ある物をつくれる人とつくれない人がい ます。これは労働時間の問題ではなくて能力、技能の評価で賃金も決まっていくわけで す。そこをあたかも先ほどから、労働時間と賃金がイコールで結びついているかのよう に言われるけれども、実態はそうではないでしょうと言っているわけです。 ○紀陸委員 小山委員が言われているのがまさにこの時間にかかわりなく、その能力な り成果で評価されるという働き方ですよね、まさにそれです。それを言っているだけの 話です。 ○小山委員 それは今みんなやっていると言っているのです。 ○紀陸委員 そこのアウトプット評価の程度が、実際は高まっている、多くなっている。 そこを見据えて労働時間の管理の在り方を見直そうではないですかという話をしている のです。そんなに差はないと思うのですけどね。 ○長谷川委員 いま島田委員がおっしゃったように労働基準法というのは、労働時間な ど労働条件の最低基準を決めているわけですね。労働時間で言えば、日本国で企業が企 業活動をする限りにおいては、週40時間、1日8時間以上労働者を働かせてはならない。 それは、わが国の国民の命と健康を守るために法律はそういうように決めているのだと 思うのです。労働者、人材はやはりわが国の財産ですよね。それ以上働かせたら労働者 の健康や家族的生活、国民的幸せなどが達成できないので、一応週40時間、1日8時間 と決めている。したがってそれ以上働かせるときは割増賃金を払いなさいというのが、 労働基準法の労働時間の精神だと私は思うのです。賃金で言えば、最低賃金を下回って 働かせてはいけない。それ以上のことについては企業労使でやってくださいというのが 労働基準法の精神。したがってその法定労働時間をどのように決めるかというのはシン プルであっていいはずなのです。週40時間1日8時間が原則であとは割増賃金を払うだ けで、それ以上つくることはなかったわけですが、この間にやはり企業の方々のいろい ろな御意見の中で、弾力化や柔軟化とかいろいろなことが行われてきたわけですよね。  そうやってこの何年間やってきたのだけれど、労働時間というのはどうなっているの かということを、もう一回労使で振り返ってみて、週40時間1日8時間というのが大変 なのかどうなのか。その議論をすればいいのではないですか。私はずっと働く側からし かものを言わないから、使用者になったことがないから働く側からのもの言いをすれば、 日本国民は疲れていますよ。労働時間制度の弾力化もしてきたけれども、その結果疲れ たのかどうなのか、ちょっと検証してみてはどうでしょうか。それと、少子化で子ども を産まない。どうしてこんなに産まないのか。労働時間とそのことは関係があるのかど うか検証してみるべきです。その上でそのことに対して何も問題ないとなったときに次 の課題の検討ができるでしょう。しかし、紀陸委員が言っているような成果主義賃金に ついては、私は、賃金と労働時間はそういう関連ではないと思っているのです。例えば 6時間で終わった人はもう2時間分仕事をやればいい話だし、短時間でできない人には もっと頑張るように何か指導をすればいい。それは管理者の仕事の与え方の問題で、そ れは無能な管理者ではないかと思うのです。そういう意味ではそれはちょっと違う。先 ほどから言っているように違う問題だと思うのです。だから労働時間について、いま何 が起きているのかということをしっかりと、労使共通認識を持たないと。いまの議論の 仕方というのはちょっと、少し食い違っているのではないかと思います。  もう一つ言えば、今日どうしてこの5頁の所に議論がいくかというと、私がこれを見 たときはやはり、「なんだ、時間外労働をしても割増賃金を払いたくない、払わない労働 者層をつくりたいのか」と、率直に言ってそう思いました。だから私はこの研究会報告 が出たときには、説明するときなんて言うかというと、「いや、時間外労働をいくらやっ ても割増賃金を払わない労働者をつくりたいのではないか、それしか考えられない」と 言っています。いくら、どんな説明をしても私にはそのようにしか見えない。だから今 日、最初からここの所が話題になっているのだと思うのです。だからこれは、やはりじ っくり議論をすればいい。何回も言いますが、どうして過労死とか過労自殺があるのか、 うつ病がどうしてこんなに起きているのか。それと労働時間はどう関係があるのか。な んで女の人たちが子どもを産まないのか。労働時間とどう関係があるのか。そのことに ついて、納得できる資料を是非事務局から出してください、お願いします。 ○西村分科会長 いろいろな御意見が出ましたが、参考資料といい、たたき台といい、 あるいはその議論の素材といい、その区別はなかなか難しいですよね。いまの場合だと、 資料No.1の1、2、3を飛んで4の所に話がいっているわけですね。やはり長時間労働 とか、過労死、過労自殺の話が出てくる。「労働時間に関する現状」の1頁を見ると、年 休はやはり50%を割って、どんどん減ってきている。こういう現状というのがやはりあ るわけで、そうしますと、なんで年休が取れないのか。年休が取れないことも、いま長 谷川委員のおっしゃったことが大きな原因の一つになっていると思うのです。そうして みると、そのたたき台とか参考資料ということでこだわる、こだわるというとちょっと 語弊があるかもしれませんが、ともかく何か議論の素材がないと、やはり議論が進まな いのではないかと思うのです。この年休・時間外・休日労働の問題は非常に大事な問題 で、今さまざま御意見が出たとおりだと思うのです。そういったことで議論を進めて、 ここで漏れていることがたくさんある、必要な資料が足りない、不十分であるというこ とであればどんどん出していって、また、4つの柱が立っておりますが、これでは不十 分だということであれば、まだまだ議論をしていけばいいと思うのです。何か、これで 全部議論を縛るという話ではないと思うのです。現在の労働時間にさまざま問題がある ということは、この労働時間に関する現状でも示されていると思うのです。不十分かも しれない。その不十分なところをあとで補充していただければいいと思うのです。  いまのような形で、要するに何かのテーマを立てずに議論をしていって、それでいい のかというのが事務局の考え方ではないかなと思います。こういう柱を立てること自体 については、それはそのとおりだなと。1頁を見たら、年休はものすごく減っている。 こういったことはやはり問題ではないか、年休がちゃんと取れるようにするためにはど うしたらいいかということなのです。最初から4番のほうに飛んでいますが、それはま たそれでそのときに議論をすればいいと思いますよ。決して、そういったことは全然議 論する必要がないということではないと思います。そのときにやればいいわけで、柱と して、こういったことをまず議論する。年次有給休暇はどうしてこんなに、50%を割る のだろうかと。やはり研究者のほうがさまざま、要するに、取りにくい制度になってい るということを発言しているわけですから。それが間違いであるというのであれば、そ のときに議論をすればいいわけですし、いや、これでは足りないということであればそ のときに議論をすればいい。やはり柱そのものは立てた上でないと、議論が拡散してし まってまとまりようがないのではないか。具体的な、例えば提言。現在の労働基準法に 一体どういう問題があるのかということを考えていく上で、議論を拡散せずに集約させ るためにはやはり必要なのではないかと思うのです。  いま思いの丈を聞きまして、それはそうだろうなあと思います。それはそのとおりだ と思うのです。だけどそれだけでは、そうしたらどうするのか、年休はどうなるのかと いう話になりますからね。やはりこういう柱に沿って、ここで落ちている部分について はあとでどんどん言ってもらったらいいのではないですか。こういうところに導くとい うつもりは全然ない。柱なのです。 ○小山委員 もちろん年次有給休暇の議論もこれから始まるわけですから、いろいろ議 論していくのは当然だろうと思っています。ただ、これが柱ですと出されてしまったか ら、そうではないでしょうと言っているのですよ。柱の立て方もおかしい。たとえば4 番はそもそも言葉が間違っているという、そんな指摘をさせていただいているわけです。 柱の立て方も含めて少し整理をしていただきたい。別に議論することを否定しているわ けではありませんし、大いに議論をして、より良い労働基準法をつくらなければいけな いと思っています。 ○荒木委員 文章表現についていろいろ御議論があって、若干関与しましたので、少し 私の考えを述べたいと思います。5頁の「労働時間の長短ではなく」というのは、最初 御指摘があったように労働時間の長短だけで報酬が決まっている労働者がいるというこ とは書いていないつもりです。また、所定時間内の働き方の評価が、労働時間の長さだ けで決まっているか、そういうことも書いてありません。もちろん、所定内の働き方が その人の成果や能力に従って決まっている、日本国中ほとんどそういう労働者だと思っ ております。しかしそういう方が、法定時間外労働を行ったときにどうなるか。現行法 では、そういう方が時間外労働を行ったときには成果や能力ではなくて、労働時間の長 さにしたがって割増賃金を支払いなさいという制度になっている。そのことを捉えてそ ういう現行の労働時間制度で適切であろうか、適切でない場合があるのではないか。そ ういう問題提起をしているのです。  今日も、それはよく御承知の上で議論されていると思いますが、そういう趣旨で書い てあるということを踏まえていただければ、誤った表現というのは、必ずしもそうでは ないのかな、違う解釈もあるのではないかというように私は聞いておりました。 ○廣見委員 いまそれぞれ議論を拝聴させていただきましたが、やはり、いま会長がお っしゃったように、現実に議論を進めていくためには何かがなければいけない。これは 当然で、これからそういう形でやっていくことが必要だろうと思っています。いま労使 それぞれからお話がありましたのは基本的には、いま労働時間規制、労働時間の在り方 を考えるにあたって何が重要なのかということだろうと思うのです。私はこう思いまし た。それは2つあって、1つは、今日も議論になったようなことで、働き方の柔軟性で あったり、フレキシビリティをどう高めていくかというような観点、労働時間の弾力化、 管理の弾力化みたいな観点もあるのかもしれませんが、そういった流れの中で、もう少 し現実に対応していく必要があるのではないか。そういう流れが一つ出てきている。そ れに応えるための一つの在り方として新しい制度を考えれば、この研究会が提言したよ うな考え方をどのように受け止めていくか。これは労使で、いま議論がそれぞれなされ ていまして、今日もそういう意味では本質的なところの議論もされているのではないか と思いますが、そういうような労働時間の柔軟性を、現状に合わせてどのように考えて いくのかという方向が一つ大きくある。  もう1つは、確かにこれは、先程来出ているようにいまの労働時間の関係で問題は何 かと言えば、私はやはり非常に長い労働時間、長時間労働が現実にある。これをどのよ うに受け止めて考えていったらいいのかということが、もう一方に非常に大きな問題と してあるのではないかという気がするのです。  そういう意味では、この中で言えば例えば時間外・休日労働、これはどのように考え たらいいのか。現実にこの時間外の問題についても、ここでは何らかの、上限の規制と いうのも考え方として打ち出されているわけですし、そういうものをどのように捉え考 えていくか。要するにその時間外労働、残業の実態を、先程来出ているような話の中で、 どのように捉えて考えていくか、対応策を練っていくかということがもう1つの大きな 問題だろう。そういう意味では2つの大きな柱があるのではないか、2つの大きな問題 があるのではないかと、こんな感じで受け止めていたわけです。  そういう意味では、ここでは有給休暇から順番に書かれていますが、やや問題点の捉 え方が違う、非常に大きな意味では違う視点が2つ入っている。それはたぶん、労側委 員の方が非常に強く指摘された問題状況。それに対して我々はどう認識してどのように 対応していくかということも、非常に重要な問題だと私は思います。そういうものをま た資料で提示していただきながらこの場で議論をする。併せて柔軟化への対応というこ とで、こういうものが必要なのではないかということをもう少し。これは労使が中心に なろうかと思いますが、議論を深めていっていただくということが必要なのかなと、こ んな感じがしております。  そういう意味では、これを議論していけば自らそういうことになるのかもしれません が、そういう大きな視点で整理をしながら資料も出していただく、議論もしていただく というのがいいのかなと、私なりに思っております。 ○今田委員 私もこの労働時間の研究会に参加した者ですから一言。この4番の表現は、 荒木委員から御説明があって御理解いただいているのではないかと思うのですが、こう いう言葉が、ある誤解をされたまま独り歩きして、あとの議論にいろいろと差し障りが 出てくるということもあるので、あえて申し上げたい。小山委員がおっしゃったように、 たいがいの労働者は自律的に自分で自分の仕事を決めているし、自分の能力や成果のよ うなものをきちんと発揮して、会社側との関係で働いている。労働者、労働というのは 本来そういうものだ、そうでない労働者なんていないという、そういうお考えというの は、まさにおっしゃるとおりで、これは決してそれを否定しているわけではないという ことを、少なくともこの分科会では、委員の間で了解するということから議論していく ことが必要だろうと思うのです。ここで言っているのは、そういう意味から言えば、自 分で労働時間というようなルールの範囲で働く、働き方とか時間とかを自分で決める。 そういう自己決定性の高いような人や働き方が、いま増えているかもしれない、そうい う働き方があるとしたら、そういう働き方にふさわしいような、そういう労働時間規制 というようなものが考えられるのではないかという、そういうことがこの言葉の真意で あって、特定の層が非常に自律的で、ほかの人は自律的でないとか、片方の層は労働時 間に縛られてほとんど発揮はしていないとか、決してそういう意味ではないということ。 もちろんわかっていただけるとは思いますが、小山委員の最初の発言が非常に強烈だっ たので。そういう理解が走ってしまって誤解を招いて、今後の議論の邪魔になるという ことは、決して我々にとって生産的ではないので、あえてそういうことを申し上げまし た。 ○岩出委員 労基法の趣旨が労働者の保護ということは間違いないと思うのですが、現 行の労基法自体が、さまざまな労働態様を前提としているわけです。具体的に言うと有 期雇用のときの5年の専門職も、交渉能力を持っている人を前提としていますし、今回 の提案もそういうことを踏まえていると思います。あるいは専門業務型も企画業務型裁 量労働の方もそうですし、いろいろな態様がもうすでに起こっている。逆にそういう方 の自律的な労働の足かせになってはいけないと思うのです。保護すべきは保護すべき、 自由に解放すべきは解放すべきと、切り分けなければいけないと思っています。それは 期間もそうだし、はっきり申し上げると契約もそうだと思っていますが、この時間も同 様だと思っています。  すでに裁判例でも、最近のモルガン・スタンレー事件という東京地裁の平成17年10 月19日だと、月額183万円の給料をもらっているのだからいいではないかという感じで、 この新しい、提言されている制度を先取りしたような形も、下級審ですが出ているケー スもありますし、そういう意味で実態を踏まえた議論を展開すべきだと思います。です からあまり散漫にならないで、いろいろなものがあることを踏まえて、一つの提言とし てこれを踏まえた議論をこれからしていきたい。時間も限られていると思うのです。そ ういうことを一言だけ。 ○西村分科会長 時間がきてしまいました。次回の予定をお願いできますか。 ○大西監督課長 次回の労働条件分科会は3月29日(水)の17時から19時まで、厚生 労働省17階の専用第21会議室で開催する予定ですのでよろしくお願いいたします。 ○西村分科会長 本日の分科会はこれで終了したいと思います。本日の議事録の署名は 新田委員と原川委員にお願いいたします。本日はお忙しい中どうもありがとうございま した。                    (照会先)                     労働基準局監督課企画係(内線5423)