06/03/10 第10回治験のあり方に関する検討会議事録 第10回治験のあり方に関する検討会議事録 厚生労働省医薬食品局審査管理課          平成18年3月10日(金)          10:00〜12:00 於:はあといん乃木坂「フルール」 ○ 事務局  それでは、定刻になりましたので、ただいまより治験のあり方に関する検討会を開催 させていただきます。  本日は、木村委員が御欠席でございます。また、事務局では当初の予定から福井局長 ほかが所用のため欠席をさせていただきます。  本日の大まかな議事の内容でございますが、前回CRO、SMOにおける職員教育に ついての説明をという御意見が委員からございましたので、今回も日本CRO協会副会 長の植松尚氏、同協会理事の一木龍彦氏、日本SMO協会会長の尾芝一郎氏、同協会理 事の飯島肇氏に参考委員としてお越しいただいております。そのCRO、SMOにおけ る職員教育の後に、国際共同治験をテーマとしましてプレゼンテーション等をお願いい たしております。この国際共同治験につきましては、これを議論することによりまして、 治験全体についての議論もできるものと考えられますことから、今回議題として取り上 げたものでございまして、このプレゼンテーションの関係で、日本製薬工業協会臨床評 価部会副部会長の岩崎利信氏、それから承認審査に携わっている立場から、独立行政法 人医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長の森和彦氏に参考委員としてお越しいただ いております。第1回の検討会におきまして、治験依頼者の立場から、当委員会の生駒 委員にプレゼンテーションをしていただきましたが、改めまして国際共同治験の実施と いう観点に絞りまして、治験依頼者の製薬企業側と審査側というところから、プレゼン テーションをしていただくということでございます。  以上が概要でございますが、特に国際共同治験の関係では、欧米と共同歩調で治験を 行うことになりまして、薬の開発のおくれとか、そういったようなところへの影響が少 なくなるといった側面もございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  それでは、池田先生、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。 ○ 池田座長  おはようございます。委員の先生方には、本当にお忙しいところをお集まりいただき ましてありがとうございます。それでは、本日の検討会を始めさせていただきますが、 まず事務局から資料の説明をお願いできますでしょうか。 ○ 事務局  それでは、事務局から配付資料の確認をさせていただきます。本日お配りをした資料 でございますが、まず本検討会の議事次第、これは1枚紙でございます。それから、配 付資料一覧及び座席表でございます。それから後が資料になりますが、配付資料一覧を ごらんください。資料1が「「治験のあり方に関する検討会」開催要綱」、いつもお配り しておるものでございます。資料2が検討会の委員名簿、これもいつもお配りしておる ものでございます。資料3が「日本CRO協会 モニターの教育研修制度について」と いうことで、こちらが日本CRO協会関係の説明に関する資料でございます。資料4− 1が、「SMOの職員教育について」、4−2が「日本SMO協会CRC教育・認定要綱」、 4−3が「日本SMO協会CRC教育・認定要綱細則」ということで、こちらの資料4 の関係が日本SMO協会関連の説明に関する資料でございます。資料5が、製薬協の岩 崎参考委員にプレゼンテーションをいただきます、「国際共同試験参画の現状と課題」と いうものでございます。資料6が「国際共同治験について」ということで、医薬品機構 の森参考委員からプレゼンテーションをいただく関係の資料でございます。  そのほか参考資料としまして、いつもお配りしている資料と、参考資料4−1、4− 2につきましては、前回この会でおまとめいただきました中間まとめにつきまして、「案」 という文字を削ったものを正式に御報告させていただいております。  配付資料の関係につきましては以上でございます。 ○ 池田座長  ありがとうございました。よろしいでしょうか。委員の先生方、配付資料に何か不足 はございませんでしょうか。もしございましたら、こちらの方までお知らせいただきた いと思いますが、よろしいですか。  それでは始めたいと思いますが、先ほど課長もお話ししましたとおり、本日はCRO 協会の植松氏、SMO協会の飯島氏に、CROとSMOにおける職員教育について、簡 単に御説明いただくということにしたいと思います。前回はCRO、SMO、それぞれ の内容についていろいろ説明をしていただいて御議論いただいたのですが、今回は職員 教育というものに焦点を置いて説明をいただきたいと思います。お2人の方に御説明い ただいた後に、先生方から質疑をしていただきたいと思っておりますので、よろしくお 願いいたします。  その後には、製薬協の岩崎氏と医薬品機構の森部長の方から、国際共同治験の実施に おける課題という非常に重要な観点ですが、この観点からプレゼンテーションをいただ いて議論をするということですので、2つとも非常に重い課題だと思いますが、この2 時間で実りのある議論をしたいと思っております。  一応そういうことで、こちらの方で用意しておりますが、よろしいでしょうか。その ように進めさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  それでは早速、CRO、SMOの職員教育の議題に入りたいと思います。初めに植松 参考委員からお願いできますでしょうか。 ○ 植松参考委員  日本CRO協会の植松でございます。それでは早速、CRO協会の職員の教育につい てお話をさせていただきます。きょうはたくさんありますので、紙ベースで御説明させ ていただきますことをお許しください。  現在日本CRO協会の加盟会社の従業員数は約7,000名になっております。その中で モニターについている方が2,300名ほどおります。そのほかDM統計が1,500名、あと 薬事コンサルティングや管理部門というようないろいろな方がいるということです。  そういうことで、きょうは治験の最前線、モニターにつきまして、CROの現状、C RO協会の教育についてお話をさせていただきたいと思います。  実はモニターの方ですが、そのモニタリングを実施するモニターの選定及び要件とい うことに関しましては、平成9年の答申GCPで、「治験依頼者は、適切な訓練を受け、 治験を十分にモニタリングするのに必要な科学的及び臨床的知識を有するモニターを指 名しなければならない」、このように記載されております。また、モニターの要件を文書 に記載しなければならない、このように記載されております。CRO協会は平成9年の 新GCPの公布を受けまして、受託業務の適正な実施に関する日本CRO協会の自主ガ イドラインを制定してきました。そして、その中でモニターの役割、あるいはSOPに 基づくモニター担当者に対してのモニタリング業務を十分に遂行し得る教育研修を行う こと、というようなことを規定してまいりました。  平成10年には協会として、会員向けのモニターの教育マニュアルを資料として作成 いたしました。これに従いまして、現在まではCRO各社がそれぞれ独自で教育研修制 度とその教育計画を立てて、教育を行ってまいりました。特にモニターの指名を受けよ うとする者のために、社内で独自にモニター認定制度というものを実施しております。  昨年、CRO協会各社の教育研修内容の現状を調査いたしましたが、未経験者の方た ちに対しまして各社は現在約2〜3カ月の座学の後に、先輩社員の補助として社内業務、 あるいは実地の方でOJTを行って、さらに試験をして社内の認定をしているというこ とでございます。  さらにCROは受託業務を行うときに、各製薬会社様から事前調査ということで、そ のCROがSOPの中でどのように教育を位置づけてやって、また実施しているか、あ るいは教育履歴がどうなっているか、そういうものを調査されております。  それから、協会に関しましては、協会に加わるときに、我々も新しい会社に対しては 監査を実施しまして、教育に関しましても教育制度がどうなっているかを監査して、適 切と認められれば協会員として認めるというようなことも行っております。さらに、モ ニターは受託業務を行うときに、今製薬会社は一人一人面接を行うというようなことも ありまして、かなりモニターとしての資質を要求されております。  一昨年、昨年ですか、CRCの認定制度を、日本臨床薬理学会、あるいは日本SMO 協会で設立されましたが、CRO協会の方としましてもモニターの認定制度、あるいは 研修制度、こういうものを検討していこうと。といいますのは、やはりモニターの質の 確保、あるいはまた協会各社のモニターの知識や能力を最低限一様にしていきたいとい うようなことで、1年半ほど前から教育研修の担当者を集めていろいろと検討をしてま いりました。認定制度を設定するかどうかというのは、まだ最終的に結論を出しており ませんが、各社が遵守して行う教育研修に関する基準を定めていこうということにして おります。  こういうことでございまして、本日配付させていただいたものは、現在協会内で研修 制度としてまとめたものを提示させていただいております。これはこの後見ていただく とわかりますが、制度はまだ「案」になっております。また、「抜粋」になっております が、これは協会として試験制度をどういうふうにしていくのかということが、まだ最終 的に決定しておりませんので、きょうはその「案」と「抜粋」ということで御提示をさ せていただきました。  現在私どもが考えている研修制度、各社それぞれもう行っているわけですが、協会と してこういう基準をつくっていこうということで、2ページ目でございますが、総則と いうような形でここにお配りさせていただきました。まずは、モニター候補者に対して のモニタリング業務を行うことの必要な知識の充実というようなこと、そういうことを 習得させることを目的として、さらに研修修了後も継続教育を通して、モニターの知識・ 能力の維持・向上に対する推進を行う、こういう育成制度を協会としてつくっていこう ということでございます。  もう皆様御存じだと思いますが、第2条はそのモニターとしての要件ということで、 ここに7点列記してございます。まず、医薬品・CRO企業の社会的使命を理解してい る。ヘルシンキ宣言の趣旨など被験者の保護に対する倫理観を有している。医学的、薬 学的基礎知識を有している。治験に係わる一般的知識を有している。GCP及び関連薬 事法規を熟知している。治験のデータや被験者のプライバシーに関する機密を保持でき る。治験モニタリングに関する標準業務手順書を遵守できる。このようなことでモニタ ーの要件を記載してあります。この研修の制度の中では、未経験の者に対して行うこと を導入研修、そしてさらにその後、継続研修ということで続けてしていこうという形に なっております。  3ページには対象者、教育研修の内容、知識・能力、教育研修の開始ということが書 いてございます。  4ページ目をごらんいただきますと、もう現在各社に置いておりますが、教育研修の 責任者を置いて、協会に登録して、その各社の責任者が教育研修方針や計画の立案、実 施及び評価に関する業務の責任を負うということにしております。  次の5ページですが、教育研修制度細則というところで、研修プログラムということ がございます。まず導入研修の教育研修科目及びその教育研修時間ということで、これ は後から説明しますが、1番の一般知識から8番の医学・薬学の基礎というところまで を研修するということで、最低240時間を定めていこうということでございます。その ほか、継続研修に関しましては、医学薬学基礎知識、その他の臨床試験に関する知識を 研修していくということであります。  実際の研修内容を次の6ページから書いてございます。これは各社の教育担当者から 教育内容を出させまして、大体この方向で行われているということですが、まとめたも のでございます。まず一般知識として、医薬品産業と医薬品開発概論ということで、こ のような細目は最低限やってもらうということでございますが、歴史なども入って、こ こでは薬害のことなども触れられているということでございます。そのほか、やはり社 会人としてビジネスマナー、コミュニケーションスキル、守秘義務、ビジネス文書、こ ういうようなものについて、一般知識の中では教育をしていくということにしておりま す。  7ページですが、治験に関する倫理ということで、ヘルシンキ宣言、インフォームド コンセント、被験者に対する補償、公務員の倫理規程、プライバシー保護、このような ものを教育しております。その後、GCP及びモニターとして必要な規制要件として、 GCPの条文解説ということです。  8ページに移りますが、薬事法関連の項目の研修ということです。その後、医薬品開 発の流れということで、製剤からいろいろと必要な基礎的な試験の講義、それから9ペ ージ、非臨床試験から臨床試験への移行、あるいは臨床開発における相の勉強というこ とです。そして最後は申請〜承認までと、このように医薬品の開発の流れを研修させる ということです。  それから、実際の臨床試験の流れということで、10ページになりますが、治験の計画、 概要書、実施計画書、症例報告書、同意文書・説明文書、治験者に対する補償の処置、 治験計画の届け出、治験薬、このようなことでございます。  11ページは、ではモニタリング業務をどうしていくかということで、実際に模擬的な 場面をつくりまして、モニターが必要とする業務について習得をさせるということでご ざいます。これは治験責任医師及び実施医療機関の調査、それから12ページが依頼及 び契約の締結、そして13ページが実施計画書等の社内勉強会の実施、そのほか治験開 始時の医局への説明会というようなことで、実際に模擬的な場面をつくりましてそのよ うな研修をしております。  それは今、治験開始準備のところでございますが、治験中には実際にどのようなこと が必要かということで、14ページに書いてございます。継続的なモニタリングや症例登 録、それからGCP不遵守事項に対する判断、あるいは重篤な有害事象発現時の措置。 15ページですが、このようなこと。下の方に特にSDVの実施というようなことで、模 擬的なことをやっております。  16ページは安全性情報の取り扱い、そして実際にSDVの模擬的なものの実習をさせ ております。  17ページはCROとSMO〜総括報告書ということで、一般的なところの教育という ようなことを研修させることになります。  ここは最後になりますが、18ページは医学・薬学の基礎の例ということで、CROに 関しましてはいろいろ受託している分野が違う、あるいはプロトコールが違うというこ とで、まず基礎的にはこのようなことを勉強させて、それぞれ受けるプロトコールに従 ってさらに深く勉強をしていただくという研修をしていただくことになっております。  19ページは参考資料として、GCPの関連書籍を少しここに記載したものです。  それから、CRO協会としましては毎年3〜4回、専門の先生方をお呼びして勉強会 をするというようなことで、現在までの研修会の開催実績をここに添付させていただき ました。参加人数は全員が出てこられないということで、ここに関しましては毎回ビデ オを撮らせていただきまして、さらに各会社にそのものをお配りして社内で研修をして いただく、このような形をとっております。  あと継続研修につきましては、各会社様がそれぞれ研修制度を持ちまして、最低40 時間とかそのようなものを設けて、それぞれに合った継続研修をしているのが現状かと 思います。  以上、私の発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。 ○ 池田座長  ありがとうございました。それでは、植松参考委員からの御説明に対する御質問は、 SMO協会の説明の後にまとめて行いたいと思いますので、引き続きまして尾芝参考委 員と飯島参考委員からお願いいたします。 ○ 尾芝参考委員  SMO協会の尾芝でございます。きょうは教育のことということで、教育を担当して おります飯島理事から発表してもらうことになっております。SMO協会は発足してま だ時間は新しゅうございますが、発足当時から教育の専門委員会を設定いたしまして、 これに取り組んで、一定の教育を各加盟会社にお願いするという姿勢をとっておりまし た。これは、SMOは会員企業の規模や成り立ちの背景等、かなりバリエーションに富 んでおりますので、そういった中で一定の基準を先に示して、またそれを必ず受けたこ とを示すようなシステムというか仕組みが必要だと思って、これに取り組んでまいりま した。きょうはその詳細や現状につきまして、飯島から御紹介させていただきますので、 よろしくお願いしたいと思います。 ○ 池田座長  ありがとうございます。それではよろしくお願いします。 ○ 飯島参考委員  スライドの方で御説明させていただきます。「SMOの職員教育について」ということ で、次をお願いいたします。  SMO協会の所属の中の業務を見てみますと、CRCとSMA、いわゆるサイトマネ ジメントをする業務ということで、その割合でございますが、これも協会で統計をとり ましたけれども、CRCが約66%、SMAが約27%、そのほかはいわゆる会社として の企業の業務をしている者がおられます。この2点につきまして、ある一定線までの教 育をしなければならないということで取り組んでまいりました。次をお願いいたします。  CRCへの教育ということで、一定線の基準をつくるまでに、今協会ではどのように 教育をされているか。それから実態でございますが、ごらんになっていただきますと、 医療経験年数とCRC経験年数でございますが、医療の経験年数は5〜10年というのが 一番多いのでございます。それから、CRCの経験年数は、まだSMOができ上がって 若いということもあるからと思いますが、1〜3年ないしはその辺の年数が、非常に多 いパーセントを占めているということがございました。したがいましてはこちらに書い てありますが、医療経験の豊富な人が担当しておりますが、CRCの経験年数がまだ浅 いということでございます。  それから、下に書いてございますが、現状での導入教育ないしは継続教育というのが、 どのくらい行われているのかということを調べてみますと、導入教育ですとほぼ100%、 いわゆる新人教育をしているということと、継続教育も現状ではまだ基準がない状態で もほとんどされているということがわかっております。ただ、日本SMO協会としては、 統一的な教育と研修システムを構築する必要があるということから、次をお願いいたし ます。  教育・認定システムをつくらせていただきました。これは教育に関して必ず実施すべ き基準を定めまして、これを実施させることにより、CRCの業務に必要な能力の向上 を図ることを目的ということで、CRC教育・認定要綱というのをつくっておりますが、 その第1条に目的として掲げております。システムとしては導入教育と継続教育がござ います。導入教育もお配りしております認定要綱をごらんになっていただければ、最低 ラインのカリキュラムというのも御提示させていただいております。後でスライドで出 ますのでごらんになっていただければと思います。導入教育が終わりますと修了証とい うことで、導入が修了しましたということで、初級CRCという名前は一般には使って おりませんが、ほぼ初級ということです。それから2年以上の継続教育をしていただき まして、その後に認定試験ということで、年1回実施しております。昨年第1回を実施 させていただきました。認定証の発行がございますが、有効期間は5年ということで、 現状では5年後にはもう一度試験を受けていただきます。どの程度の継続教育がやられ ているかということもありますし、さまざまな諸事情もあると思いますので、もう一度 新たに5年で受けていただくという形をとっております。次をお願いいたします。  今御説明させていただきました教育カリキュラムでございます。教育カリキュラムは、 導入教育としましては、基礎教育と実務教育というような2つに分けさせていただいて おります。継続教育の方も教育項目の方は、そちらに書いてあります臨床薬理学からそ の他の臨床試験に関する知識までということで、6ポイントの項目をしていただくとい うふうになっております。この下の方に、導入教育の研修期間は基礎教育が最低40時 間、実務教育が最低16時間以上、継続教育の方は年24時間以上というふうにさせてい ただいております。これは余りにも時間が少ないようにお思いだと思いますが、さまざ ま仕事の関係上とか、いろいろなSMOのCRCの忙しさということを加味しまして、 最低限のラインでございます。ですから、これ以上に対しまして各社で対応していただ くことは自由であるというふうにさせていただいております。次をお願いいたします。  これはどちらでもやると思いますが、SMO協会のこの要綱のもう一つの目玉としま しては、教育研修責任者を設けております。教育研修責任者は、各企業の代表者または 代表者が指名したものということで、この方が責任を持ってきちっと導入教育をしまし た、継続教育をしました、ということを事務局の方に証明していただく。それによって 認定証の発行、受験の資格を与えていくというふうになっておりまして、これも認定要 綱の細則の第2条に掲げているものでございます。このような状況で、背景でございま すが、昨年の8月28日に、第1回の日本SMO協会のCRC認定試験を実施させてい ただきました。試験の内容は、時間は150分で、83問、105の解答数で、マークシート でやらせていただきました。SMOは日本全国に散らばっているということもあります ので、会場も北から南まで6会場でやらせていただきまして、受験者数は662名、合格 者数は597名ということでございます。かなりの高率で合格しておるということも確認 できました。合格通知は必ず研修責任者に渡しております。そこで一括してその責任者 に、今回受験したCRCがどの程度受かったかということを把握していただくというこ とで、そのような形をとらせています。それから、第2回は今年でございますが、7月 23日に予定しているということでございます。次をお願いいたします。  もう一つでございますが、CRCのほかにSMAというサイトマネージをしている者、 いわゆるCRCとはちょっと違う仕事をしているという方がおります。その部門を持っ ている会社もありますし、部門を持っていない会社もあります。専任のSMAというサ イトマネージをしている人たちも多いところは多いですが、少ないところもあるという ことで、1〜5名ぐらいの専任を置いている会社が多いということでございます。経験 年数も、まだ若いということから、2年ぐらいまでの方がおられるということで、業務 内容は一応事務的な、いわゆる必須文書の整理や被験者の募集、IRBの関連、CRC をどこのサイトに送るかとか、そういうことのスケジュール管理をしているというよう なことです。次をお願いいたします。  これに関しましてはまだフィックスはしておりませんが、近々この教育システムをフ ィックスさせていただこうということで、こちらには「案」という字を書かせていただ いておりますが、SMAの教育要綱の案というものがございます。これに対しまして導 入教育、導入教育が終わりましたら修了証、そして継続教育をしていただくということ で考えております。この人たちに認定ということは今のところは考えておりません。仕 事の分野が非常にばらけているということがありますので、この先はどのような形とい うことは協会の内部でまた検討いたしますが、今のところは導入教育の修了が終わった 後は、各社で継続教育をしていただくというような形にしたいと考えております。その 中身でございますが、こちらに書かせていただいておりますような導入教育のカリキュ ラムと継続教育のカリキュラムです。若干CRCとは異なったところの教育というのを 掲げさせていただいているということでございます。  雑駁でありますが以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○ 池田座長  ありがとうございました。それでは、ただいまCRO、SMOの教育について御説明 いただいたわけですが、委員の先生方から御質問をお願いしたいと思います。どうぞ、 生駒委員。 ○ 生駒委員  ただいまのお話をお伺いしまして、製薬メーカーの方でも新入社員が入りましたら、 いわゆるOJTでもう少しゆっくり時間をかけて教育、人材の育成というのを図ってお りますが、今のお話を伺ってかなり短期間で内容を濃く教育されており、非常に感心し ております。私どもはいろいろ治験をお願いする立場の方からしますと、やはり質の確 保ということで、質をどれだけ担保いただけるかということが非常に重要でございます ので、そういう意味での教育というのをぜひともよろしくお願いしたいと思っておりま す。  1点お伺いしたいのは、やはり質の問題という意味では、プロトコールバイオレーシ ョンがありますと、どんなに結果がよくても将来申請した後、審査がとまってしまうこ とも内容によってはございますので、この質については私どもは十分に気をつけている ところですが、長期的な治験をお願いしたときに、モニターの方、あるいはSMOに関 係する方の定着率については、要するにその方々がしょっちゅう変わりますと私どもは 非常に不安になりますので、現在SMO、あるいはCROの方々の定着率というのは大 体どんな感じなのでしょうか。 ○ 池田座長  それでは最初に植松参考委員から。 ○ 植松参考委員  私どもは定着率について調査をしたことがないので、はっきりとわかりませんが、現 実としてモニターが魅力のある仕事であるのかどうか、あるいは社内体制というような ところもあるかと思いますが、そういうところをどういうふうにして魅力のあるものに するかどうかというのが協会の仕事だと思っております。現在数字的にはいろいろと悪 いという会社もあるというようなお話も時々聞きますが、残念ながらちょっとそこにつ いては数字としては持っておりません。  もう1点、先ほどのところですが、短期間に教育はしますが、モニターの場合は教育 をしてその後また継続研修をします。実務につけるのはもう1年後ぐらいで、製薬会社 さんは、1年目のこの新卒で入ってきた方がモニターの業務につくようなことは認めて おりません。そういう意味で1年ぐらいはほとんど教育期間というような形に、モニタ ーの場合にはなっております。 ○ 尾芝参考委員  SMOサイドのお話ですが、定着率はCRO協会と同じようにとりたてて調査はして おりません。定着率ということは非常に難しゅうございまして、どの時点での数を母数 にして、どの時点での人の減少を離脱というふうにするかという難しい問題がございま して、これはなかなか正確な数字がとれないところではございますが、簡単に言ってし まいますと、この定着率はやはり企業間で非常にばらついているということでございま す。当然その仕事の内容、あるいは教育はこのような基準にしておりますが、そういっ たところが十分にケアできていないところは、魅力のない職場として定着率が悪くなっ てくるでしょうし、そうでなくて安定的にいい、興味深い仕事が提供できるSMO会社 ですと、当然定着率はよくなるだろうということはありますが、一般的に製薬企業の人 材の流動性からすると、やはり活発に業界内でも、あるいは業界内外でも流動があると いう漠然とした印象はございます。ただ、やはり企業間でかなり差があるということで ございます。 ○ 池田座長  よろしいですか。どうぞ、桐野委員。 ○ 桐野委員  SMO協会傘下のCRCというのは、現在何人ぐらいいるのでしょうか。 ○ 飯島参考委員  約2,000名でございます。 ○ 池田座長  認定試験を受けて合格した人は昨年が約600名ですか。それももちろん含んでですね。 ○ 飯島参考委員  もちろん含んでおります。 ○ 池田座長  それ以外の方たちはこの試験は受けていないのですか。 ○ 飯島参考委員  受けていない方もいますし、まだ年限がたっていない、それから各社の研修責任者が、 今年はまだ、来年勉強して受けた方がいいよ、ということがありますので、その年限を 通じた者が各社全員受けてくるということはまずちょっとないと思いますが。 ○ 池田座長  それは協会としてはこういう制度をつくったわけですが、その協会に属している 2,300……。 ○ 飯島参考委員  大体2,000名ですね。 ○ 池田座長  その方たちにこの試験を受けるようにというような。 ○ 飯島参考委員  それは奨励しております。 ○ 池田座長  奨励はして、結果としてこのぐらい受験したという、そういう理解でよろしいですか。 ○ 尾芝参考委員  まさにそのとおりでございまして、一つは受験資格の問題が一番多ございます。やは り導入研修の修了証だけではなくて、CRCの経験が2年以上という受験資格項目がご ざいます。それと、先ほど飯島が言いましたように、医療職としては経験が長いけれど も、CRCとしてはまだ長くない人も結構な数いらっしゃいますので、その方々はやは り受けられませんので、どうしてもおくれてしまう。2,000名はCRCとしての経験が まだ十分でない人も含めての数となってしまいますので、そういうふうに御理解いただ きたいと思います。 ○ 池田座長  そのほか、いかがでしょうか。どうぞ、加藤委員。 ○ 加藤委員  CROのこの研修の案というのは、いつできたのですか。 ○ 植松参考委員  案は、昨年の秋にはもうまとめておりました。最終的に制度としてどうするかという のはまだ協会として決定しておりませんが、この案は昨年できておりました。 ○ 加藤委員  それで、SMOにしてもCROにしても協会に所属していない企業体もあるというこ とがあったと思いますが、そういうところは研修の中身はほとんど把握できないという、 そのことについて協会の側からどんな思いをお持ちでしょうか。 ○ 植松参考委員  確かに小さいところでモニタリングをしている会社はあるかと思います。私どもはぜ ひ私どもの協会に入っていただくように、そういう勧誘をしていきたいと思っておりま して、そういうところは各社の事情によるところもちょっとあると思いますが、その方 向でやっていきたいなとは思っております。 ○ 加藤委員  何らかの認定的なものといいましょうか、認可とか、そういうものを絡ませるべきで はないかという気がするのですが、その点についてはどんなお感じでしょうか。 ○ 植松参考委員  私どもはこの認定制度をどうするかということを考えたのですが、認定しても知識レ ベルではいろいろできますが、一人前のモニターとして本当に4施設とか5施設とか持 てるのには2〜3年かかるというのが現状でございまして、では、認定というのが本当 に何を意味するのかというのをいろいろ議論しているところでございます。またあと製 薬会社さん側にもモニターがいらっしゃいます。モニター認定という場合に、そういう ところと今後どういうふうにしていくのか。ちょっとその辺のところもいろいろ検討し ていかなければいけないかなと思っております。 ○ 加藤委員  特に時間の問題で言いますと、例えば大学ですと90分の授業を15回ぐらいやって、 そうしますと1,350時間ぐらい。それで例えば2単位という科目でいくわけですが、圧 倒的に時間的に少ないというのが印象なんですね。  もう一つは内容ですが、例えば薬害の歴史だとか、被験者の人権の関係でいいますと 治験にかかわる事故、そうした裁判例とか、そういう過去の過ちに学ぶという部分の教 育プログラムが、少しずつちりばめてはあるのかもしれないけれども、体系立てて教え られていないのではないかなと。やはりそういう視点というのは、こうした治験にかか わるときの基本中の基本になるべき教育の中身ではないかという気がしますので、ぜひ それは取り入れてもらいたいということ。  それと、それぞれの教育にかかわる人たちは、スポット的な研修講演の顔ぶれから見 ると、若干薬の開発とかいろいろな方向の人たちが中心かなと思いますが、やはり治験 の被験者の視点といいましょうか、そういう人の立場からの研修の講師や、あるいは教 育の場にある程度ふさわしい教育担当者というのはどういうふうに選ばれるべきなのか という視点も、これはむしろ行政の方の課題なのかもしれませんが、どういう人がどう いう内容で教育するのかということを、今お聞きしていると必ずしも十分ではないよう な気がしますので、一つの検討すべき課題のような気がします。 ○ 池田座長  ありがとうございました。非常に重要な視点かと思いますが、ではお答えいただけま すか。 ○ 飯島参考委員  SMO協会でございますが、SMO協会の方の教育研修責任者というのがどういう人 かと、100%わかっておりませんが、やはり製薬メーカーさんにおられまして教育をや られていた方というのが多いようでございます。それからあと、今先生がおっしゃいま したいわゆる被験者に対応すると。座学だけで被験者にはこうです、こうです、という ことではだめなものですから、先ほどお話しさせていただいておりませんが、継続教育 のカリキュラムというのも我々の方で今考えております。その中には、やはり被験者に 対するインフォームドコンセントのとり方とか、そういうような今話が出ておりますS Pですね。いわゆる模擬患者、模擬被験者というようなもののロールプレイを入れて、 実務を入れた継続教育のカリキュラムと。ある一定線のところまでのレベルアップとい うことで、継続教育のカリキュラムというのを今作成しているところでございます。ど うもありがとうございます。 ○ 池田座長  藤原委員、どうぞ。 ○ 藤原委員  がんセンターの藤原です。SMO協会のCRC研修に関してちょっと御質問ですが、 多分今CRCの研修というのは、看護協会とか薬剤師研修センターとか日本臨床薬理学 会とかSoCRAとか、さまざまなところでいろいろなことがやられているとは思います が、その辺とのすり合わせというようなことは考えられているのか。それと、行政の方 に聞くとすれば、そのようにいろいろな各種CRCの研修がされているけれども、何千 人養成とか言っていますが、実態としてその研修を終わった人たちで、臨床現場で医者 などのチームに入って、リサーチナースなどとして本当に臨床試験を助けている人はご くわずかしかいなくて、余り実効性がないような研修もなされているような気もするの ですが。2点ですね。SMO協会さんとしては、いろいろな研修制度との兼ね合いをど う考えているのかというのと、行政的にこれまでいろいろなCRC養成と言っています が、その人たちが本当にCRCとして働いているのかということを検証されたことがあ るのかという2点をお聞きしたい。 ○ 尾芝参考委員  SMO協会の方のほかの教育研修プログラムとのすり合わせということでございます が、常時リアルタイムですり合わせが行われているわけではございませんが、逆に言え ば我々の教育システムや内容というのは一番新しいというか、後追いの形になっており まして、当然それをつくるときには先行しているものを参考にさせていただいて、セン スをとっているということが、わかる範囲ではございますが、一つあります。  それと、当然協会として協会員に限りますが、例えば薬剤師研修センターのCRCの 講演会、研修がございますと、それは皆さんに御案内して、興味のある方はできるだけ、 全員というわけにはいきませんけれども、参加をして、ほかのところの研修も受けるよ うにという奨励策はしております。今のところ積極的に御案内しているのは、薬剤師研 修センターの部分だけでございますが、それは全社に、こういったプログラムでいつか らやるから申し込み方法はこうですよ、というような御案内をして、要は社内の研修だ けではなくてほかの機会もつくるようにしてはおります。ただ、それがすり合わせと呼 べるかどうかというのは、違う視点だとは思いますが。  以上でございます。 ○ 池田座長  どうぞ、課長。 ○ 鈴木研究開発振興課長  医政局の研発課長の鈴木でございます。藤原委員から御指摘がありましたように、平 成15年から3カ年計画で文部科学省さんと一緒に治験活性化3カ年計画ということで、 CRCの人数5,000名養成ということを目途にやっております。平成16年度末で3,900 名、ことし約1,100名ですので、ほぼ人数の5,000名は達成できると考えております。 恐らく議論の中で、CRCには医療機関の中で働かれる方と、製薬企業の中におられる 方と、SMOの中におられる方ということで、今日は最後の感じの方々が多かったと思 いますが、我々の3カ年計画は、一番初めの医療機関の中で働かれるタイプについて 5,000名ということで今考えています。  御指摘がありましたように、実際に5,000名養成をしたとしても、どの程度医療機関 で定着しているのかということがやはり問題でして、異動があったり離職があったりす るとなかなか定着しないというその数の問題が一つと、それからもう一つ、最終的に医 療機関の中だけではなくて、製薬企業なりCRO、SMOの方々と連携をとりながら、 質的にどう担保していくかというところが大事だろうと思っておりますので、次年度、 平成18年度にかけてはどの程度定着しているのかということと、質の向上に向けては どういう努力をしていけばいいかということを、ほかの団体とも協力をしながらやって いきたいと思っております。 ○ 池田座長  ありがとうございます。藤原委員、とりあえずよろしいですか。そのほか委員の方々 で御意見は。どうぞ。 ○ 望月委員  3つほどあります。まず1点目ですが、CRO協会の方にお聞きしたいのですが、研 修の成果の確認方法ですね。SMOの方は一応試験を最終的におやりになって確認され ているという形になっていますが、CRO協会の方ではそういう説明がなかったのです が、いかがされているのでしょうか。 ○ 植松参考委員  今、各CROは各社内でそれぞれ認定制度を持っていまして、それぞれ試験を実施し てやっております。その上に、今度CRO協会としてもう一度試験の制度をつくるかと、 今そこについては検討中ということでございます。 ○ 望月委員  ありがとうございます。あと、各製薬企業もモニターを持っていらっしゃると思いま すが、当然、多分製薬企業も企業内で研修と試験というような形で行っていらっしゃっ て、最終的にモニターという仕事そのものは、CROであれ製薬企業であれかなり共通 になると思いますが、その辺はどうすり合わせをしていくというか、そういう何か将来 構想みたいなものがあるのかどうかというのをちょっとお聞きしたいのですが。 ○ 池田座長  非常に重要な点だと思いますが、いかがですか。協会の方と、あと企業の方も御意見 をいただきましょうか。協会の方はどうでしょうか。それぞれ発言しにくいところだと 思いますが、国全体としてみて非常に重要な問題だと思いますので。 ○ 植松参考委員  私の聞いているところでは、製薬協さんの方は、モニターの認定制度というのは今つ くっていく方向ではないと、前からそういう方向であるという話を聞いております。製 薬企業のモニターとCROのモニターが少し違いますのは、製薬企業はやはり一番ベー スから、開発の段階の非臨床試験からずっとこういう形でいろいろなデータが集まって おりまして、その中でどうプロトコールがつくられていくかとか、そういうところを知 識としてずっとモニターとしては持っている部分もあると。CROの方はどちらかとい うとプロジェクトごと、あるいはプロトコールごとの委受託ということで、そういうと ころでそこでの知識の差というようなものが、現実としては少しあるのではないかと思 っています。  ただ、製薬会社さんのモニターと私どものモニターのすり合わせについては、今私ど もとして特に何かアイデアを持っているという段階ではありません。 ○ 池田座長  生駒委員、どうぞ。 ○ 生駒委員  今お話が出ましたように、製薬メーカーの方はやはり一番初めの例えばフェーズ1か らスタートして、最終目的であります承認までということになりますので、単なるモニ ターだけを育てるのではなくて、一つの品目を成し遂げるための先見性といいますか、 将来どういう問題が起き得るかどうかも含めて、将来のプロマネ、あるいはその上に管 理者になるような場合を想定して、そういう立場でそれなりに教育してまいります。そ ういう意味では、申請した後に当局から何を言われるかどうかなどある程度考えてもら えるような教育をしながらやっております。そういう意味では、多少CROさんとは違 うのかもしれません。  ただ、一つの試験ごとにCROさんにお願いする場合には、それぞれの会社のSOP のすり合わせなど最初に意見交換しながら進めますので、一つの治験を行うにあたり同 じ土俵の中で行われているという感じはいたします。 ○ 池田座長  これは治験のあり方に関する検討会で、きょうは協会の方たちから御意見を伺ったわ けでして、CRCにしてもモニターにしてもそれぞれ育成されている場所が違い、ある いは多少方法論が違うわけですが、この検討会としては日本の治験を考えた場合に、ど ういうふうな方向に行ったらいいかというような少し大きな視点を考えて、何か委員の 先生方から御意見をいただけますでしょうか。いかがでしょうか。この人材育成という ようなこと。景山委員、どうぞ。 ○ 景山委員  現在CRCの認定は米国のSoCRA、日本臨床薬理学会、日本SMO協会、そして確 かな情報ではありませんが、アメリカの最大の団体であるACRP(Association of Clinical Research Professionals)が日本でも認定を始めたい意向を持っているやに聞 いております。それぞれ目的、分野が違えば複数のものがあっていけないということは ありませんが、団体の認定のレベルに大きな差があるということは、決して好ましいこ とではないと思いますので、発展段階としては幾つかの団体が認定するということは避 けられないかもしれませんが、適当な時期にそれぞれの団体の方が話し合って、レベル を一定にする、あるいは統一するというようなことを考えていった方が、日本のCRC のレベルの維持のためにはよいのではないかと思います。 ○ 池田座長  ありがとうございました。恐らく景山委員がおっしゃったように今は初期の段階で、 様々なところで人材が育成されつつあるということですが、やはりそれぞれのところで 同じ言葉の中で違ったニュアンスを持っているというのは、決して理想的な像ではない だろうということの御意見だったと思います。そのほか委員の先生方、いかがでしょう か。どうぞ、藤原委員。 ○ 藤原委員  恐らく教育の段階で非常にまじめにというか、細かいところを、例えばモニターの件 に関していえば、モニタリングの要件、私どもの病院でもSDVとか来られたときに、 非常に小さなところから細かいところに皆さん注意していただいているのですが、実際 に治験として世の中に薬を出していく過程で、どこまで小さなところを追求するかとい うのが非常に問題だと思います。教育の中で最初から新人さんに細かいことを大切です、 大切ですと教え続けると、その人が育ったときに追求するのは細かい要件で、もっと大 きなところには余り細かく対応できないというような人が育ってしまうとまずいので、 やはり行政側として、新薬の承認審査に必要なデータの信頼性というのはこのぐらいで すから、それを満たすようなモニタリングの要件としてはここまでやれば十分です、と いうのを提示してあげないと、企業の方だけ、あるいはCRO協会さんだけでモニタリ ングの要件や教育だけを考えていると、恐らく非常に厳しい方向、小さなところばかり に行きそうな気がします。  前も申し上げているような、例えばリスク・ベースド・モニタリングといって、臨床 試験の相に応じて、モニタリングの内容の要件はこういうふうに進化させていけばいい んですよというところを、むしろ行政側から業界側に提示される、あるいは総合機構の 方から提示されるような要件を考えておかれた方が、教育する方の人たちが非常に助か るのではないかと思います。 ○ 池田座長  恐らくこの治験のあり方に関する検討会でも、そういうことも考えながら進めていく ということも大事なのかなと思います。望月委員、どうぞ。 ○ 望月委員  ちょっと視点が変わってしまいますが、きょうのお話をお聞きしていまして、モニタ ーですとかCRCですとか、そういったある種治験のサポーターの部分というのでしょ うか、そういったところの教育研修というのはかなりきちんとなされつつあるのだなと いう印象があったのですが、私は大学の教員でもありまして、薬学教育もそうですが、 恐らく医学、看護を含めて大学単位でのもう少しきちんとした教育をしていく必要があ るのではないかというのを感じました。周辺の人たちが頑張っている割に、そういう人 材育成のところに着目した講座がかなり少ないなという気がしまして、そちらもきちん と検討事項の中に入っていかなければ、いけないのではないかと思います。 ○ 池田座長  ありがとうございました。本日協会の方々から職員教育のお話をしていただいて、そ してまた委員の先生方からも非常に有益な御意見をいただいたと思います。認定の仕組 みをどういうふうにつくっていくかというようなこと。あるいは教育の問題でも内容に ついて加藤委員から、もう少し被験者の視点から見るということ。あるいは藤原委員か ら、全体の大きな流れをしっかりつかんで、本質をきちんとつかんだ教育というのも大 事ではないかということ。あるいは認定の要件にやはりもう少し大きな枠で考え方をま とめるというようなこと。そんなことも含めて今後もぜひよりよいモニター、あるいは CRCを人材育成していただいて、こういう人材がいなければ治験は十分に回っていか ないわけですから、よろしくお願いしたいと思います。本日の議論は一応このぐらいで とめておきたいと思いますので、今後とも委員の先生方、あるいは協会の方々、あるい は企業の方も行政と一体となって、ぜひいい方向に議論を進めていっていただきたいと 思います。協会の方々、お忙しいところをありがとうございました。  それでは、本日の次の議題に移りたいと思います。これも非常に重要な議題でござい ます。国際共同治験の実施における課題ということで、冒頭に課長も言われたように、 こういう議論を通じて全体の治験のあり方についても、また考え直してみたいというこ とでございますので、まず岩崎参考委員から、国際共同治験における課題について御説 明をお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。 ○ 岩崎参考委員  製薬協の岩崎でございます。「国際共同試験参画の現状と課題」ということでお話しさ せていただきます。次をお願いいたします。  日本における開発の現状ということで、これはよく言われていることですが、開発ス ピードが遅いと。その理由としてはさまざまございますが、手続が煩雑である、あるい は症例のエントリーが遅い、こういったことで結果として開発費用が増大していると。 またこの開発費用につきましては、こういった手順だけではなく、医薬品創製そのもの が高度化、あるいは煩雑化、多角化しておりますので、その開発費用が増大していると。 米国でもここに写真でお示ししていますように、1品目当たり大体8億ドル、1,000億 円弱、これが開発費用にかかっているというようなことも言われております。日本の場 合におきましては、この開発費用の増大に伴いまして、治験を海外で行うというような 開発戦略をとる企業が多くなっております。これが国内治験の空洞化と言われるもので ございます。次のスライドをお願いいたします。  実際にその治験の空洞化がどれだけ進んだのかを見たのがこのグラフでございますが、 これは治験の実施場所をそれぞれ3つのパターンに分けております。ブルーでございま すが、これは海外で先行する、あるいは海外だけで開発するというもので、1993年には 全体の18.3%であったのが、2000年になりますと43.2%と、倍以上にふえてございま す。また、このグリーンの国内だけというものが、1993年は35.7%というものが、2000 年には20.4%と、3分の2に減っています。こういうふうに日本の企業というのは、海 外で先に開発するというような開発戦略をとってございます。次をお願いいたします。  そういうことで、海外の開発というのが非常にふえてきたわけですが、この治験の国 際化に対応した開発手法というものがさまざまございまして、大きく4つに分けて考え ております。まずStand Alone Studyで、これは従来どおり日本でフェーズ1〜3まで 完遂する方法が一つございます。それから、1998年にICHというところで、いわゆる 海外データを利用して、それを日本の申請につなげるというようなストラテジーがガイ ドライン化されました。これはBridging Studyと言われております。こういうものも ございます。それから、今盛んに言われております国際共同治験、これは同時開発、同 時申請、同時承認ということで、日米欧あるいは他の地域を交えたこういった同時開発 というものが最近言われておりますし、実際行われつつございます。また、その中の一 つと言ってもいいかもしれませんが、先ほど申しましたように日本の開発はやはりコス ト高で、また進捗が悪いということですから、日本の申請を見据えてアジア地域にも治 験地域を拡大し、そういったところから患者を組み込むことで開発の効率化を図るとい うような、Asia Studyというものもやられております。ただ、こういった大きく分けま して4つあるわけですが、どの開発戦略が最適かといいますのは、新薬の特徴、あるい は疾患領域、あるいはそのマーケティングを見据えた企業の経営戦略等によって異なり まして、柔軟に選択されるべきであろうと考えてございます。次のスライドをお願いい たします。  これは図式化したものですが、従来はこういうふうに海外は海外で、あるいは日本は 日本でというような、大きく2つに分けた開発戦略がとられていました。次をお願いい たします。  それがグローバルスタディーと呼ばれるものですが、一つは欧米を中心に海外開発が やられながら、その中の一部の海外データを利用して日本の申請に用いるという Bridging Study、それから今最終的に言いましたように同時開発戦略と、こういうよう なパターンがあるというのを模式化させていただきました。次をお願いいたします。  国際共同試験についてですが、ではこの国際共同試験の意義は何であろうかというこ とを考えた際、大きく3つあるのではないかなと思っております。一つは、確実な有効 性と十分な安全性を開発段階で担保できる、そういった医薬品を市場に提供することが 可能になる。それからもう一つは、新薬をより早く市場に提供できる。特に海外先行型 開発という、先ほど御紹介しましたがこういうパターンが多い場合は、日本オリジンの 新薬であっても、やはり日本の患者さんへ新薬を提供する時期が海外よりおくれます。 こういうのは日本企業として避けるべきではないかと考えております。もう一つは、そ の開発力の促進というのがございます。これはそれぞれについて今からもう少し詳しく お話しさせていただきます。次をお願いいたします。  まず確実な有効性と十分な安全性ということですが、これは横軸に時間的開発のステ ップを、そして縦軸にはその時点で開発時に集まるデータ量を示しております。この黒 字のところですが、通常フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3と開発が進むにつれデー タ量がふえていくわけですが、下のグラフは日本単独での開発です。それが同時開発を 行いますと、この日本のデータに加えまして海外データもふえてまいります。結果とし てどういうメリットがあるかというふうになりますが、このブルーのシャドーのところ ですけれども、結局日本の開発だけではわからなかったのが、データ量が多くなること で、未知の副作用というのが把握できる可能性もある。また、人種差あるいは地域差に よってこの薬物特性というのが明らかにされる。また、データ量がふえますので、その 副作用の発現頻度もより正確な数値を把握できる。さらには、同じような試験がやられ るということで、試験結果の再現性も見ることができる。すなわち有効性に関しては、 強固なエビデンスが開発終了時点で得られる。また、安全性につきましても、こういっ た未知の副作用も把握できますし、あるいはどういうところにこの薬剤の問題点がある のか、限界点があるのか、そういったことを踏まえて、市販後どういう安全対策をとる べきなのか、あるいは販売体制をとるべきなのかというような、適切なリスクマネジメ ントも可能になる。グローバル開発をやることによって、こういった有効性や安全性と いうものがよりクリアになるということが言えると思われます。次のスライドをお願い いたします。  また2点目のメリットですが、新薬をより早く市場へ提供できるということでござい ます。これは開発プロセスを単純化したものですが、従来の開発というものは、これは 1998年までというふうに書いておりますが、海外で承認されたものをインライセンスと して日本の企業は持ってきている。そこで日本で新たにフェーズ1から始めるというこ とで、海外にかなりおくれての承認となっておりました。それが先ほど申しましたよう に、Bridgingという概念が導入されました。その場合、例えばこの海外データが日本人 でも同じように再現できるということが証明できれば、日本においてはフェーズ1、2、 3とすべてをやることなく、例えばもうフェーズ3は海外データを利用するということ で、このフェーズ1、2だけで承認申請が可能であるということで、従来の開発戦略に 比べて数年開発期間が短縮できます。言いかえれば、早く患者さんのところに新薬を届 けることができるようになったということでございます。こういう場合であっても、明 らかに海外よりも日本の承認というのはおくれてまいりますので、ここを同時にそろえ るためには一番下のパターンであります、いわゆる国際共同試験同時開発というものが 今後大事になってくるであろう。こういうことが可能になれば、一番下に書いておりま すが、自社開発の新薬を海外と同時に日本国内の患者さんに届けることができます。こ れが非常に大きなメリットではないかなと考えております。こういった海外で先に承認 され、日本にはおくれて入ってくるものは、ドラッグラグというふうに呼ばれておりま す。次のスライドをお願いいたします。  これは幾つかのコンパウンドを見たものですが、コンパウンドAではこれだけのドラ ッグラグがあります。これが同時開発という戦略をとることで、一番下のコンパウンド Iのように、ほぼ同時期に患者さんが薬にアクセスできるような状況になります。こう いったコンパウンドH、Iというのを目指して、今後我々も努力しなければならないだ ろうと考えております。次のスライドをお願いいたします。  3番目のメリットとしましては、開発費用の効率化ということでございます。これは 製薬協の2004年のデータブックでございます。ピンクの棒グラフは、海外の大手8社 の年間の開発費用にしております。2003年でいいますと、これは大体4,000億円になる かと思います。ブルーが日本の大手10社で500億円ということで、ごらんのとおり年々 開発費用というのは増加しております。こういったことがありますので、やはり非常に 効率のいい開発を行って、また次の新薬開発につなげなければならないというのが、今 企業が直面している問題でございます。次のスライドをお願いいたします。  そういう面で非常に開発の効率化というのが重要になるわけですが、今言われていま すように日本は非常にコスト高であるということです。これは一つの医薬品開発の事例 を、各国別に大体1症例どのくらいかかるかというのを相対比較したものでございます。 日本は真ん中にございますように黄色で示しておりますが、米国に比べて大体2.5倍、 韓国に比べて5倍というような状況になってございます。次のスライドをお願いいたし ます。  これは製薬協が毎年、年度ごとに治験ごとに医薬品の開発コストというものを定点調 査しております。このデータは2005年の資料ということで、ことしの月刊薬事にも公 表されておりますが、主に医療機関への支払いに焦点を絞った1症例当たりのコストと いうものを見ております。対象は62治験、今度は国内外の比較をするために同一プロ トコールで行われた試験ということで、フェーズ2、3、6プロトコールを対象にした データでございます。医療機関への支払いというのを見たものでございます。海外は1 症例当たりの医療機関への支払いが91.4万円に対しまして、国内では160万円弱とな っております。一方、実施率ですが、海外は98.9%、依頼した症例はほぼすべて試験が 完了したというのに対しまして、国内では69.4%ということで、やはり日本の開発とい うのはまだまだ非効率であるということが読み取れます。次のスライドをお願いいたし ます。  次からは国際共同試験の戦略的なことについて、あるいは問題点についてお話しさせ ていただきます。このスライドは公表資料から、現在国際共同試験というものがどの程 度行われているかということです。ただ、これに限らず、現在もっと開発早期、あるい は計画中というのは各社ともふえておりますので、ちょっとその数は把握しておりませ んが、ますます増加傾向にあると言われております。次をお願いいたします  ただ、国際共同試験といいますと、どうしても大規模でフェーズ3などをやるという ようなことが想定されるわけですが、この検証試験というものを国際共同試験でやる場 合、やはり前提条件というものが必要であろうと考えます。特にこの地域間比較がない ということ、あるいはその差が小さいということを確認するべきではないだろうとかと。 よくE5というガイドラインで言われていますが、薬剤が地域によって、あるいは人種 によって違うのか、同じなのかということは、外的環境による差、特に医療環境など、 あるいは人のそのものに対する差、これは薬物代謝、こういったことで人種間、地域間 差を評価しなければならない。そのためにはやはりPK試験を各地域でやる。あるいは 用量反応試験を各地域でやりまして、こういった地域間比較を行う。個々でその地域は 地域差がない、あるいは人は人として扱うことができる、大ざっぱに言いますとそうい うふうな判断ができた上でなければ、この国際共同試験というのは非常に難しいもので あろうと。言いかえますと、開発早期からやはり参画していく必要があるというのが、 前提条件になろうかと思います。次をお願いいたします。  詳細に言いますと、今人種差ということを言いましたが、こういった内因性、外因性 に対することを評価する。そのためには、一番下に書いてございますが、慣行の最小化、 あるいは治療環境の差を把握して、よく似たプロトコールというものをつくって治験を 実施しなければならないということです。次のスライドをお願いいたします。  それを模式したものがここに書いてあるわけですが、あくまでもこれは一つのサンプ ルですから、これが絶対的ではないですが、一つのコンセプトとして提示しております。 地域A、B、Cがあった場合、それぞれでフェーズ1を行う。フェーズ2も一つやる。 そして重要なものは、こういった用量反応というところをA、B、Cの地域間差が比較 できるように、同じプロトコールで実施する。ここでその地域間差がないというふうな ことができれば、次のフェーズ3としましていわゆる同時開発試験、あるいはA、Bだ けでやるブリッジング試験というような、さまざまな開発戦略をとることができるとい うことになろうかと思います。次をお願いいたします。  このようにビジーなスライドですが、いろいろな開発パターンがありますので、冒頭 に申しましたようにその医薬品の特性、あるいは医療環境、あるいは企業の考えによっ て、幾つかのオプションの中から最適なものを選ぶということになろうかと思います。 次をお願いいたします。  今もう一つの話題としてAsia Studyというのが言われております。このAsia Study というメリットを考えてみました。メリットとしましては、言語、文化の違いはありま すが、同じAsianということで民族差は小さいであろう。それからコストが約10分の 1と言われております。さらにエンロールが非常に早い。1施設当たり40〜50例とい うことも言われております。また、治験担当医師は治験に前向きでありますし、オペレ ーション上、時差がほとんどないということは、同時間帯でのコミュニケーションが可 能になります。ただ、課題としましては、やはりまだまだこれからで、こういった試験 というのは始まったばかりですので、よくわからないところが多い。特に日本とは有効 性や安全性に対する考え方が異なるかもしれない。こういったことから、多国間、ある いは施設間、治験担当医師間の調整を精密に行う必要があります。特にプロトコールで の規定とか、あるいはInvestigatorやCRC、モニターに対する教育訓練ということで、 一貫性を保持するというのが非常に重要になってくると思われます。また、データの質 の確保への十分な留意というものも、非常に重要なものです。次をお願いいたします。  国際共同試験というものをもし考えた場合には、どういうふうな試験がこの国際共同 試験として適切であろうかということを考えてみましたが、一つは症例数を確保するた めと。例えばPrevention study、Outcome Research studyのような大規模試験が必要 となる疾患というのは、この国際共同試験が適切であろう。また、日本では比較的患者 数が集まりにくい疾患、オーファンドラッグ、あるいは抗がん剤のフェーズ3というも のも、こういった試験にふさわしいかもしれません。もう一つは開発スピードを加速す る。できるだけ早く上市するという観点からしますと、地域間差、あるいは人種差が薬 効評価に大きな影響を与えない、こういうことが言えるような薬剤は、この国際共同試 験をやってもうまくいくのではないかなと考えております。次をお願いいたします。  こういうふうに国際共同試験をやるといってもいろいろな問題がございますので、 個々にそれを挙げさせていただきました。まず治験環境の整備、これは臨床評価ガイド ラインの共通化です。共通化というのはガイドラインをつくろうということではなくて、 例えばプロトコールを作成する中でエンドポイント、あるいは選択・除外基準、あるい は評価基準というものの一貫性を担保できるような体制でやりましょうということでご ざいます。そのためにはInvestigator、CRCへの教育、トレーニングというのが非常 に重要になりますし、また使用言語もそろえなければならない。例えば疾患名はICD 10を使うとか、副作用名はMedDRAでちゃんと統一して、使用言語が違ってもそこが アイデンティファイできるようなシステムを整えておかなければならない。それから、 インフラ整備に関しましても、特に同時に進めるわけですから、やはりスピードの進捗 状況というのが非常に重要になっております。欧米並み、あるいは中国と同じというの は難しいかもしれませんが、少なくとも日本が足かせにならないような、そういったス ピードアップできるような体制というのが必要であろう。さらには治験費用の適正化と いうものも再度検討しなければなりませんし、将来的にはGCPの相互承認というもの も治験の効率化になるかと思います。  こういったことで治験環境の整備ですが、もう一つ、同時開発、同時申請、同時承認 ということまで目指すとなれば、やはり審査体制というものもそこに大きなファクター となって入ってまいります。例えば日米欧ということを考えた場合は、日米欧の規制当 局間の承認基準の標準化。これは標準化というよりも、各規制当局間のコミュニケーシ ョンをより密にしていただく必要があるであろう。その一つとしましては、今ICHと いうことで日米欧の産官6パーティーでやりますが、日米欧の規制当局間でのこういっ た定期的な会合によって、審査の基準を確認し合う、あるいは情報を共有し合うという ようなこともお願いしたいと考えております。  最後になりますが、国際共同試験参画のための治験環境の改善ということで、特に我々 も関与するのはこのスピードに関する問題、あるいはコストにかかわる問題というもの を、より適正化に向けて検討していかなければならないと考えております。  以上です。 ○ 池田座長  ありがとうございました。それでは、続きまして医薬品機構の森部長のプレゼンテー ションもお願いして、その後でまた先生方から御質問をいただきたいと思いますので、 森部長、よろしくお願いします。 ○ 森参考委員  ありがとうございます。それでは、時間も押しておりますので、早速始めたいと思い ます。私ども審査側の立場としましては、少し理念的なことを御紹介しておく必要があ ろうかと思いまして、少し趣の違うプレゼンテーションにしてございます。  まず、国際共同とかそういったお話の前提になるのが、グローバルな医薬品市場、あ るいはグローバルなニーズということを考えての視点ということになります。私どもは やはりこういう仕事をしていますと、新薬というのはすべて人類のために必要なもので あるということで考えております。いまだに人類全体にとって薬が必要な病気や障害と いうのが非常にたくさんあります。これは「Unmet medical needs」というふうに呼ば れておりますが、こうしたニーズに対して新しいお薬というのは可能な限り速やかに、 かつ効率的に開発されることが必要で、これが「創薬」の理念でしょう。それから私ど もが担っております、開発された新薬について、速やかに真の臨床的有効性や安全性を 正しく評価するという、間違いのない「審査」といったところでしょうか、これも重要 です。それから、その審査をしても、その後、医療の現場に出たそのお薬が世界中の患 者さんに正しく使われるように、情報が集められ提供されるという「育薬」という過程、 これもまた非常に重要なわけでございます。  そうした中で、臨床開発というのはどのような課題を持っているかということ、これ は種々さまざまございます。全部挙げることは到底できませんが、現在私どもが審査の 仕事、あるいは治験相談という、企業の皆様、あるいは医師の皆様との相談をしていく 中で感じている課題でございますが、一つは市販後に判明してくる問題というのを、臨 床開発の過程でどうやって対処するか。それから実際の医療の現場におきましては、マ スで考えることだけではとても足りない。個々の患者さんのさまざまな事情に合わせた 医療、「個の医療」といった言葉もございますが、これに対する対応も求められておりま す。それから、科学の進歩は非常に速いものでございますから、最新の科学技術、ヒト ゲノムプロジェクトの成果等も含めて、いろいろな技術が導入されております。これに 対してもうまく取り込んでいかなければならない。その上で、コストが非常に増大して いるということは岩崎さんのプレゼンの中にもございましたが、これが余りにも肥大し てしまいますと現実的にできなくなってしまう、こういう問題もございます。  こういうことですので、まとめますと開発期間を短縮していくということが課題にな っておりますし、それを妥当な開発コスト、これはお金だけではございません。人も時 間も、そういったものも全部含めてのコストということですが、その上ですぐれた効果、 そして確実な安全性というものを三拍子そろえるのが理想だということになっていると 思います。  こうしたことを前提として考えているわけですが、残念ながらいまだに、これは例に 挙げたドクターレターですが、発売されてから1〜2年以内にこうした対応が必要にな る薬がどうしてもあります。ところがこれらのレターが出たケースをよく見てみますと、 実際に問題になっている副作用は1万例に1人とか、もっと数万例に1人といったよう な、非常にまれなものでございます。これを開発の過程で確実につかまえるということ は、現実的には困難というのが事情でございます。  これは日本だけの問題ではなくて、これは2004年の話ですが、FDAが出したノー ティスというか御案内で、いわゆるCOX−2の選択的阻害薬と言われるお薬につきま して、回収をするようなお話になったということが紹介されております。  これは承認から5年もたって判明した危険性でございます。これはニューイングラン ドジャーナルの記事を抜いておりますが、使い始めて1年半以上たってから、初めてそ のリスクが判明してくるような、そういう非常にわかりにくい、しかも非常に大規模に 使った中でわかってくる、そういう問題というのがあるわけです。  したがいまして、治験には限界があります。未知のリスクには、もうどうにもこうに も対応できないというところがあるのですが、それはなぜ限界があるのかということを 少し挙げております。これはもともと治験の中で、参加される被験者の方々に対して、 健康被害を最小限にとどめるということ。それから当然薬として期待しているわけです から、最大限の効果を発揮して、それを検出できるように条件設定をしているというの が治験の特性でございます。言いかえれば、オリンピック選手のような理想的な患者さ んを選んできて、条件の設定、それから万全な体制をとるということ、これが治験には 求められているわけです。したがいまして、投与期間や症例数は、開発する企業のリソ ースやそれを受ける治験実施医療機関のキャパシティーによって制限をされているとい うのが現状であります。これはいつまでたっても恐らく変わらない制限だと思います。 そういう意味からしますと、実際に患者さんがお薬をお使いになる臨床現場のさまざま な条件を、治験の中ですべて反映することは不可能であります。さらに、治験の質とい うのは、実際にはそんな理想的なものばかりではなくて、それに比べるとさらに下がっ てしまうということは往々にしてございます。したがいまして、限界はもっともっと低 くなってくるということが起きるわけであります。  これはちょっと模式的なものでございますが、薬の開発に伴ってデータがどのように 膨らんでいくのかということを、下側は非臨床のデータ、上側は臨床のデータというふ うにしてあらわしたものであります。通常はこのようにしてデータがどんどんふえてい くということですが、我々が遭遇している市販後の問題というのは、例えばこのように 急速に臨床現場で使用対象が膨らむと。こうした中で未知の副作用に遭遇する、あるい はそれが急速にあらわれるというようなことではないかと思います。これをどのように して回避するのかということが課題になるわけです。  これは一つは治験から市販後まで切れ目なく情報を集積し、系統的に分析をするとい った視点が必要であるということでもありますし、物によっては治験の段階、臨床開発 の過程でも、危険な兆候がかすかにあらわれてきているということは当然あるわけです。 そういうことも含めてこのようないろいろな観点で治験を、臨床開発をしている段階か ら考えておくことが大事ではないかと思っているわけです。  大分前置きが長くなりましたが、国際共同治験というものは、理念的な話ではありま すが、データ量がとにかく多くなるということを基本として考えてはどうだろうと、我々 は思っております。一国・地域だけの開発は、先ほどの岩崎さんのプレゼンテーション にもございましたが、データ量が限られます。それに対して未知のリスクは、限られて いるためにわからないものがたくさんあるというのが左側でございます。これに対して データ量を単に量をふやすだけではなくて、質を保ちながら、なおかつ多様な臨床環境 のコンディションに合わせて拡大をする。こうしていくことによって、未知のリスクの 存在をできるだけつぶしていくという、そういう方向性で国際共同治験、あるいはグロ ーバル開発というのは行われるべきである。あるいはそういうメリットがあるんだとい うふうに私どもも考えております。  そうしたことのために、これによってリスクの回避や早期発見ができるという、我々 にとっては割と切実な話がありますので、こういったことを書いてございます。最近は、 臨床開発が非常に早い段階から、世界最前線で日本でも行えるようになってきています。 したがいまして、事前の情報が少ない段階で、日本のフィールドで開発しているという ものがふえております。かつては海外でずっと前に承認されたお薬が日本に入ってくる、 こういうことで事前の情報が山ほどあって、わからないことはほとんどないというよう な開発があった時代が長かったわけですが、近年ではおくればせながらかもしれません が、世界に先駆けてというものも出てきておりますし、世界とそれほど時間がずれずに 開発しているものがどんどんふえてきています。そういうことによって、リスクもある 面ふえているということがあると思います。予見可能な副作用だけではなくて、未知の 副作用に対処するためのツール、あるいは体制というのが非常に重要になってきている ということは、肌身に感じているということでございます。  こうした中でグローバルな開発、あるいは国際共同治験というものについては、先ほ どの岩崎さんのプレゼンテーションにもございましたように、さまざまなアイデアがあ って、画一的な、あるいは万能な戦略というのは存在しません。これは近年日本におい て非常にたくさん行われましたブリッジングを利用した臨床開発で、欧米の開発がかな り先行している中で、国内での開発をいかにして早くキャッチアップするかというシチ ュエーションでよく使われた開発デザインです。その場合も画一的、万能な戦略という のは実はなかったのですが、その上でさらに世界同時で行っていく開発というものにつ いては、ますますいろいろなアイデアも出ます。そうした中で幾つか考えられる国際共 同治験の候補というのを、こういう全体の開発ストラテジーの中でこれはどうか、あれ はどうかというふうに皆さん検討なさっているところであります。  ただし、真っさらの段階で一から世界規模で開発を行っていくという視点に立ってい るのであれば、これはできるだけ初期段階は日本も参加するべきでありますし、それか らその薬が本当に何か役に立ちそうなものかどうかという最初の手ごたえのものとして、 Proof of Concept Study、POC試験とよく呼ばれておりますが、これをできたら世界 に先駆けて日本でやって行けないかなと我々は思っております。それを見ることによっ て、そのお薬が本当に見どころがあるかどうかということについて、最初のインパクト が得られる。それとともに、日本のフィールドで日本の患者さんに対して、本当にその 薬を有効かつ安全に使うという視点からしますと、市販後に日本の医療現場で起きる事 態、これはどのような事態かということについて例を挙げますと、日本は世界に例を見 ないほど高齢化が進んでいて、しかも体格的にいうと非常にやせで小さい。例えていう ならそういう方々がたくさんいるという事情がございます。そうしますと、80歳以上の 体重40キログラム未満の女性のそういった患者さんがたくさんいるというような、例 えばそういう特徴がございます。これを市販後に我々は見るわけですが、臨床開発の過 程でそういう対象集団に対する試験は、なかなか余りやられていないことが具体的には あります。例えばそういったものに対して、どのようなことが起きそうなのか、これを 事前に検討していく視点も必要ではないかという、例を挙げていいますとそういったこ とがございます。海外データのうち、これはいろいろな海外データがございますが、日 本の患者さんにも当てはまるような部分というのが必ずあります。よく見ていけば、例 えばアジア人でのデータ、あるいは日本の患者さんの体質、体格によく似ているような ポピュレーション、こういったものが含まれているものもあります。例えばそういうも のをよく利用するということで、むだな繰り返しはやらなくたっていいだろうというよ うな、こういう観点も大事だと思っております。  これで日本の例というのはまだ審査中のものが大半で、実例として挙げられるものが 余り多くないので、海外の例をちょっと挙げております。これは国際共同治験として行 われたものが、FDAの審査報告書の中に挙げられている例でございます。ここに挙げ ましたように、国によって薬の効き目の出方が大分違っているという例であります。結 構難しいところがあるんだというふうにも見えますが、日本や香港といったアジアの地 域では、これはグラフの下側の方が薬としてよく効いたという方向の位置づけになりま すので、そこではよく効いているように見えるのですが、一番たくさん症例をこなして いる米国では、その利益というのが極めて悪かった。無益というか、プラセボとの差が ないというようなところにかなり接近しているのが、米国のデータであったと。こうい ったデータとしてなかなか難しい部分も実際にやってみると出てきます。これが現実で あるということです。難しいばかりではないですが。  それから、これは2005年の話ですが、FDAが黒人の方専用のお薬を認めたという ことでニュースになったケースです。これはデータとしてニューイングランドジャーナ ルにもそのデータが載っていますが、黒人の方に限っていうと物すごくよく効くという ような結果があるので、やはりそこには黒人の方向けにこの薬を承認するという、そう いう判断がなされているということであります。これは世界全体に対象範囲を広めて開 発をしていくのはいいけれども、その中でデータによってはごく一部の集団にだけ専用 のという承認の仕方をしなければならなくなる。でも、これは「個の医療」に向けての 判断としては当然妥当なわけです。  そういう多様な集団というのを我々は相手にしていくことになってくる。人種差、あ るいは性差、あるいは遺伝子の変異等、さまざまな個体差の要因というのが今どんどん 蓄積されております。その結果として、特定のグループだけに有用な薬剤というのが承 認されることもある、こういう時代になっております。そういう時代なので、臨床開発 の段階から市販後のところまでずっと継続して、対象とする集団というのは勢いよく多 様性が拡大している。その中で特定の集団だけに使われるようになるものもあれば、そ うでなくてどのような人に対しても使われるようになる薬もある。さまざまなわけです。 そういう薬剤反応の多様性についてきちんと把握できるように、計画的・効率的な開発 戦略、理念と具体的方法論が今必要とされているという状況であります。私も一つ一つ のケースについて今それを学んでいる、あるいは考えているという段階におります。  ただし、本当に欲しいのは何時でも、何処でも、誰にでも有効で安全な薬であるとい うこと、これはもうどなたも多分疑問はない点だと思います。こういった話に対して、 今科学の進歩がかえって新しい問題や課題を生み出しているというところもございます。 ただし、それはやはり科学の進歩によって解決されるべきだと考えて、信じているとい うことです。  その中で最近では、PGxを組み込んだ臨床開発も極めて重要になっています。国際 共同治験をやっていくときに、こういう新しいテクノロジー、イノベーションを組み込 んでいくということも、とても重要だと考えています。薬物動態のいわゆる暴露の問題 と、臨床効果・副作用、そしてそれに対応する遺伝子の情報、これを同時一体的に収集・ 評価・分析するというアプローチが極めて有効ではないか。ただし、これは開発の早い 段階から組み込んでおかないと、重要な情報に早いうちにたどり着くことはできません。 こういった視点はとても重要だということです。しかもこの上で、内因性の要因という ものだけではなくて、医療環境や生活環境といった外的要因の影響も一緒に分析してい くことも大事だということを添えています。  それとアジア地域の話。これは世界の中でアジアという地域に、我々審査側も極めて 注目をしております。実際にアジア地域における治験の状況というのは、極めて急速に 変化というよりは進歩している状態でございまして、世界水準のICH−GCPへの適 合はすごく急速に進んでいると思います。それから、低コストで極めて迅速に多数の症 例を収集可能です。その一つの要因は、医療機関のベッド数が大変多い。日本ではまず 見たことがないベッド数4,000とか7,000とか、そういう極めて大きなホスピタルが例 えば韓国にはあります。こうしたところで急速に大量の患者さんを集めて試験を行うと いうようなことも行われている。そういう非常に大がかりなものが、本当にデータの質 が保たれているのかということに対して、当然懸念を持つわけで、それについてもこの 数年の間に物すごい勢いで質は向上しているように見受けられます。ただし油断は禁物 ということもあります。そういう中で、日本以外のアジア地域での国際共同試験の実施 例が急増しているということを、我々はキャッチしております。こうしたところを見ま すと、アジア地域を考えないで国際共同治験をやるというのは、もうあり得なくなって きている現状にあります。  注意すべき点はいろいろございますが、これは受け入れられるかどうかを議論する段 階はもうとっくに過ぎ去っていて、いかにしてそこで行われた質の高い有用なデータを 審査の中に持ち込んで、きちんと活用していくか。その経験を蓄積し始める段階に今来 ております。何しろアジアの地域のメリットは様々ありますし、我々がそれを審査の中 で利用できることはお互いにメリットがある、というふうに考えているということを申 し上げておきます。  結局、より有効で安全な新薬が欲しいということのために、我々はこういう仕事をや っているわけでございまして、イノベーションによって創製される新薬というのは、ま だまだ必要であります。海外で開発が先行してきた、そういう新薬を導入する方法とし て、ここ数年間我々はブリッジングの開発戦略というのを、現実に個々のケースに当て はめていろいろ知恵を出し合ってやってきておりますが、しかしそれはあくまで海外に 対して日本の開発がおくれているという状態での工夫であります。ですから、世界にお くれずに新薬を開発していくということが、本来の望むところではないかと思っており ます。したがって、グローバル開発戦略というのを当然考えて、その中での国際共同治 験をやっていくということがどうしても必要になっていますし、その国際共同治験はア ジア地域を含めて考える。十分な症例数を日本でもやるということ。これは単に日本の 症例数を節約するためにこういうものを考えるというのは、本末転倒だというふうに私 どもは思っています。日本の医療環境で起きることを、どうやって治験の臨床開発の過 程できちんとつかまえるか。それをやっていくためにそのデータをよりよく解釈するた めに、海外のデータをうまく使っていくという視点で、国際共同治験というのは計画さ れるべきだというふうに考えておりますので、それが臨床試験の結果を日本の医療環境 に当てはめて分析して、市販後の安全対策も含めて十分検討する戦略ということになる わけで、これが必要不可欠だと思っております。  まとめてというのも変ですが、私たちが目指しておりますのは、世界じゅうで開発さ れる新しい医薬品や医療機器を、できるだけ早く世界中の患者さんに、もちろんこれは 日本の患者さんにということを我々は一番願っているわけですが、しかし世界中の患者 さんに利用できるようにするというのが本当の目指すべきゴールであると。開発から市 販後まで次々に遭遇する未知のリスクの早期発見、迅速な対処によって、患者さんが受 ける被害を最小限にとどめること、これも我々の目標です。もう一つ大事なことですが、 むだのない効率的な開発が望ましいのです。それから安全対策も膨大なコストがかかる と、これも大変であります。したがいまして、むだのない効率的な仕事というのが大事 であって、そのことによって医療分野でのイノベーションの発展を促進して、その成果 が早く患者さんに還元される、これを目指しているということでございます。  ちょっと理念的な話が多くなりましたが、これでプレゼンテーションを終わりたいと 思います。 ○ 池田座長  ありがとうございました。お2人の参考委員の方から、国際共同治験の実施について の方向性、留意点などをお話しいただきました。残った時間で委員の先生方から御意見 を伺いたいと思いますが、何か御発言はありますでしょうか。どうぞ、藤原委員。 ○ 藤原委員  国際共同治験がこれから重要になるというのはよく理解できましたが、実際に進めて いく上で、私どもがんの領域は非常に国際共同治験が多い領域で、それを進捗する上で 非常に多々行政上のハードルが高くて、なかなか国際共同治験に入れないという現状が ありますので、それを踏まえて、もう少し具体的に本当に困っているところというのは、 製薬協さんはどういうふうに考えているかというところをお聞きしたいです。  例えば抗がん剤の場合だと、一番多いのは併用薬や治験薬というものが、国内の承認 用法用量を外れていたり国内の効能効果がなかったりという理由で、治験届け出が認め られませんから、そういう治験は日本ではできませんという指摘をされて、私どもが本 当はやりたいような治験に入れなかったりというのに非常に多く遭遇します。その辺に 関して例えば総合機構というのは今後治験でやる限りにおいては、余り国内、海外の用 法用量の相違や効能効果の違いというのに細かくこだわらずに、治験届けを認めるよう な方向があるのかどうかというのを明らかにしていかないと、きょうは内資の方しか来 ていないですが、先ほどの森さんのプレゼンテーションを見ていると、やった方がいい ですよというよりも、むしろ国内ではこういうことができるので、どうぞ、海外の製薬 企業さん、日本でいい臨床試験をやってくださいというような姿勢で多分アピールしな いと、薬は集まってこないような気もします。その辺もう少し理念的ではなくて具体的 に、どういうハードルがあってそれをどういうふうに解決されていくことを考えている かということで、コメントをいただきたいのですが。 ○ 池田座長  まず岩崎参考委員から、製薬協の方から国際共同治験を初めから計画しようといった ときに、この点とこの点とこの点は国際共同治験をやるのに少し問題があって、そこを どういうふうにオーバーカムしていくかということについて、何か御意見をいただけま すか。 ○ 岩崎参考委員  まだどの会社も初期の段階で、基本的に規制的に大きな問題というのはないのではな いかなと。逆に今後いろいろなものを、いわゆるケース・バイ・ケースですので、先ほ ど藤原先生がおっしゃったような併用薬というのも、基本的には併用薬がある程度海外 と類似していれば、受け入れられるのでないかなと考えております。  ですから、ちょっと具体的に今どこが問題というようなことは思い浮かびませんが、 あえてGCP等々でいえば、例えばICH−GCPとJ−GCPとの間で、或いは必須 文書等の表現が多少違うということで、日本が入ることで全体の進捗がおくれてしまう 懸念があるというところが、思い浮かぶ懸念材料の一つかなと考えております。  あともう一つは、先ほど森さんが言われましたが、やはりどれだけ日本の患者さんを 組み込むのとか、それもケース・バイ・ケースでしょうけれども、そういうところを治 験相談等で両者意見をぶつけて、より明確になっていくということが非常に大事ではな いかなと考えております。 ○ 池田座長  森部長、どうですか。特にエンロールする日本の患者さんのパーセンテージというの は、具体的にはなかなか難しいでしょうし、薬ごとには違うと思いますが、その辺も含 めて先ほどの藤原委員の御質問について。 ○ 森参考委員  藤原先生のおっしゃった、併用薬だ何だというところの制約でだめですということは、 今は言っていないつもりです。これはそれを確認するためにわざとおっしゃったのだと 思いますが、現実に我々が相談を受けている中で、併用薬の適用があるないとか、用量 が今の内容を超えているか超えていないとか、それだけが理由でだめですということは 言わないようにしています。ただし、そのために患者さんにリスクがありそうというこ とを一番気にしていて、そのリスクに対して実際のオペレーションの中でどうやって対 処できるか。その具体策を確認させていただくということでの議論をしています。これ は実際にやる方向で考えないと、「こんなんだからわかりません」と言っているといつま でたっても進まない、これはそのとおりです。ですから、そういう問題を全部治験とい う枠組みの中で厳重に監視をしながらやるからできるんですということを担保して、そ の上で併用薬剤も含めてきちんとやっていただくという、そういう方向で議論をしてい ます。現実に、それで国際共同治験の開始のタイミングに何とか間に合わせるような格 好でスタートを切っていただく、そういうお答えをしているものが幾つもございます。  それから、日本で組み込むべき症例のお話に関してですが、これは国際共同治験を考 える、あるいは持ちかけられるタイミング、シチュエーションによっても随分違います。 現状では日本での国際共同治験に「入りますか。やりませんか」と言われるタイミング は、やはり開発が日本では全然やられていないとか、すごくおくれているという状況で 話が入ってくる。しかも船はもうすぐ出てしまうので、「乗るんだったら今しかないよ」、 こういうふうに言われている状態になっています。この中で「日本でこれだけ欲しいで す」ということを言っても、「いや、日本向けにとってある予算はこれだけですよ」とい うふうに言われて、「でも」の余地がないなんていうことが、これが現実に起きている話 です。そういう話は結局日本の施設で一体何施設、あとどれくらいの期間で、どれくら い試験ができるかという現実のオペレーションの問題も考えますと、そんなにむちゃな ことは言えませんので、むしろそういう非常にプラクティカルな話でもって症例が決ま っていく、決まらざるを得ないというのが現実のディスカッションでの話です。  こういうことではなくて、最初から、早い段階から国際的な分業を考えた形で、症例 のアロケーションをしていくということになりますと、それは全然違った設計になると 思います。私どもはそれはやはり臨床試験の目的として見ようと思っている事柄に即し て、必要な症例数で設計するということを基本にしていくのは大事だと思っております し、何例あればいいですよというルールを画一的に立てるのは全然現実的ではないと考 えます。でも、個々のケースは具体的に議論すれば、必ず望ましい症例はこのぐらいと いうのが出てくるというのが、実際の経験から申し上げられることございます。 ○ 池田座長  ありがとうございます。どうぞ、加藤委員。 ○ 加藤委員  ちょっと別のことですが、きょうの岩崎さん、森さんの報告の中にも、このアジア地 域を含めた治験の問題が出てきていました。グローバルな視点で人権ということを考え ますと、アジアの人たちの被験者の人権状況ということも、一面私たちとしては考えな ければいけないのではないかなと。低コストということで、10分の1とかいろいろなこ とが指摘され、その開発コストではメリットが大きいということは理解ができますが、 例えばそれぞれの国におけるインフォームドコンセントを中心とした患者の人権の状況 や、あるいはモニターやCRC等のそうした活動等、随分それぞれの状況に違いがある のだろうなという気がするので、その辺を含めて例えば森さんはアジアという方向に目 を向けるときに、それぞれの被験者の人権状況というのを調査されたりしているのかど うかだけ、ちょっと確認をしておきたいと思います。 ○ 池田座長  いかがでしょうか。 ○ 森参考委員  事前に私どもが人権状況ということだけを念頭に置いて調査に行くということは、こ れは現実にやっておりません。ただ、実際にアジア地域で臨床試験をやりたいという事 前の相談を受けているケースが、治験相談の中にありますが、その際に当然調べるべき 事柄として、先生が御指摘のように、患者さんがそもそもちゃんとフェアな格好で臨床 試験に組み込まれるような環境にあるのかどうかということも含めて、よく下調べをし てやってくださいと。これは後々GCPのインスペクションに行きますということで、 行った際に被験者保護の観点のエラーがあれば、それはGCPに不適合ということにな りますので、それは十分に注意してくださいということを申し上げています。  それから、実際にそうやって行われた試験が申請資料として出てきた際に、私どもは 実地にインスペクションに行っております。行った中で同意の状況等を確認しておりま すが、その中では今まで余り大きな問題は見つかっておりません。これは実際にそうい う試験を行うところは、今ICHのGCPというふうに御紹介しましたが、一応世界的 なグローバルスタンダードと言っているレベルの文書による説明、文書による同意とい うのを前提にしているGCPを取り入れている、そのような国、地域、あるいは施設と いうところで試験が行われるというのが、アジア地域であっても大前提ですので、そう した施設が中心になって今アジア地域で試験が行われているというふうに我々は理解し ております。それが現状認識です。 ○ 池田座長  ありがとうございました。国際共同治験の実施というのは、我が国の今後の治験に非 常に大きな問題としてもう現実にあるわけですが、特に今アジアという視点が、図らず も岩崎参考委員あるいは森参考委員からも指摘されまして、その点も含めて今後とも考 えていかなければいけないのではないかと思います。国際共同治験を実施するに当たっ ては、今言われたような治験の環境、それぞれの国々の環境、それから日本の状況も含 めて、まだ幾つかの課題は確かに存在しますので、それについてそれぞれの関係者、機 構あるいは製薬業界がよく話し合って、そしてまた被験者、治験を受ける側とやはり相 談をしながら取り組んでいくことが必要だと思います。本日はその方向性が非常に重要 であるという点、それからどういう点を考慮していかなければいけないかという点が、 それぞれ恐らく確認できたのではないかと思いますので、この議論についてはこれで終 了させていただきたいと思います。  それで、本日のアジェンダに、今後の本検討会の取りまとめの方向性についてという 3番目の議題がありまして、これまで中間まとめ等を含めて論点整理をしてきたわけで すが、今後の方向性も含めて事務局より簡単に御説明をいただきたいと思います。 ○ 事務局  本日も時間が大変押してしまいまして、申しわけございませんでした。最後の方は特 に意見交換が十分行えたかどうか、ちょっとというところでございますが、事務局より 次回以降の予定ということで、あらあら御説明をさせていただきます。  本日も参考資料5ということで、いつもお配りしておりますこの検討会での検討テー マになる論点を以前整理したところですが、この治験制度の項目の中で、さらに本日の ように御議論いただきたいというものがございましたら、引き続き事務局にお伝えをい ただければと思っております。  それから、今ちょっと座長からお話がございましたが、次回以降の議論におきまして は、徐々に将来的な取りまとめの方向性につきましても、議論を進めさせていただきた いと思っております。本日ちょっと議題には上げたのですが、座長の方からとてもきょ うの時間割ではそこまでは難しいだろうということで、最終的に座長がおまとめになっ たとおりでございますが、次回以降、将来的な取りまとめの方向性についても、徐々に 議論ができればと考えております。  以上でございます。 ○ 池田座長  ありがとうございました。この検討会は委員の先生方に非常に熱心に毎回御討論いた だいていまして、やはりまとめというところを少しずつしていかなければいけないだろ うと思っておりますので、ぜひ次回以降はまとめの方向に入っていきたいと思います。  今後の予定について何か。 ○ 事務局  次回以降の議題につきましては、先ほど申し上げましたように、先生方から、もう少 しこの論点について議論ないしプレゼンテーションをという御要望がございましたら、 そちらの要望も踏まえまして、池田座長と御相談をして決めさせていただきたいと思い ます。また、次回の日程でございますが、すべての先生方の御都合に合わせることがで きませんで申しわけございませんが、5月25日(木)の10時からということで、開催 を予定させていただきたいと思います。  以上でございます。 ○ 池田座長  ありがとうございました。それでは少し時間が過ぎましたが、本日の検討会をこれで 終わらせていただきたいと思います。どうも先生方、御協力ありがとうございました。 参考委員の方々もありがとうございました。 ○ 事務局  どうもありがとうございました。 <了> 照会先: 医薬食品局審査管理課 近澤・関(内線2737、2741)