06/03/07 第31回労働政策審議会職業能力開発分科会 議事録について 第31回労働政策審議会職業能力開発分科会 日時 平成18年3月7日(火)16:30〜 場所 厚生労働省17階専用21会議室 ○今野分科会長 第31回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いたします。本日の出 席状況は中馬委員、黒澤委員、小栗委員、西原委員、中村紀子委員がご欠席でございます。 谷川委員の代理として、鈴木さんにご出席いただいております。それでは議題に入ります。 本日の議題は、「第8次職業能力開発基本計画の検討について」です。まず、事務局より 説明をお願いします。 ○杉浦総務課長 それでは説明をさせていただきますが、その前にご報告いたします。こ れまで分科会でご議論をいただいた職業能力開発促進法等の法改正の関係ですが、お蔭を もちまして、本日閣議決定をされまして、早ければ本日中には国会に提出される運びにな っております。先生方には誠にありがとうございました。ご報告を兼ねてお礼を申し上げ ます。  お手元に本日の資料と併せて、法律の概要と関係資料を配付しておりますのでご参考に していただければと思います。それでは説明に入ります。  本日は、第8次能力開発基本計画の素案ということで、全体像をお示ししております。 大変申し訳ないのですが、「第4部」の一番最後についてはまだ全部書き上がっておりま せんので、その部分については項目だけに止めています。あくまでも素案ですので、本日 は幅広くご議論、ご意見を頂戴しまして、それを踏まえた形で次回に書き込んでいきたい と思います。  お配りしている資料は、資料1として、基本計画の(素案)と、参考資料1として、こ れは昨年の暮れに出していただいた、特に法改正関係の内容を含んだ「今後の職業能力開 発施策の在り方について」の建議の資料です。  参考2は、これからご説明する部分と関連すると思われる部分について、データやグラ フ等を付けてあります。こちらは説明を省略させていただきますが、ご参考にしていただ ければと思います。  それでは資料1の説明に入ります。表紙に、これも(仮)ですが、「職業キャリアの持 続的発展の実現と『人を育てる環境』の再構築」ということで、副題を付けてあります。 これも全体を議論する中で、またご意見を頂戴したいと思います。  目次をお開きください。これまでご説明をさせていただいたように4部構成になってお り、第1部が「総説」で計画のねらい等、第2部が「職業能力開発をめぐる経済社会の変 化」ということで、労働力の需給構造、ならびに関連部分の状況の変化等についての記述 を載せています。第3部が「職業能力開発施策の実施目標」ということで、計画の期間に おける総論的な実施目標を5つの節に分けて書き込んでいます。第4部が、「職業能力開 発の基本的施策」ということで、いわゆる各論的なこと、それぞれの施策ごとに現状を踏 まえた今後の施策の展開の在り方等について書いてあります。  1頁、「総説」、1の計画のねらいについては、これまでこの分科会で何度もご議論を いただいている社会情勢等、能力開発を踏まえた環境について概略的に書いてあります。 経済社会のサービス経済化、知識社会化が進むといったような中で、様々な能力を持った 人材の育成が重要な課題となっていること。それから少子化の進行による人口減少社会の 中で経済社会の活力の維持のために一人ひとりの「働く者」を人材として育て、能力を高 めることによる生産性の向上が不可欠であるということ。  「しかしながら」ということで、準備期にある若者等について失業者、フリーター、ニ ート状態にある人たちが増加していること。発展期において、企業の能力開発の対象が重 点化されるとともに、自発的な能力開発についての時間的な制約が強まっている。円熟期 においては、意欲や希望に応じた形での能力を発揮できる環境の整備が求められている。 同時に、いわゆる「現場力」の低下が顕在化してきている。このような状況の説明です。  こうした諸問題に対応するために、今回法律を提出して、実践型人材養成システムの創 設、自発的な職業能力開発のための諸規定、熟練技能の習得を促進するための規定等を盛 り込みました。  この計画では、法律改正案の趣旨を踏まえるとともに、「働く者」の職業キャリアをめ ぐる問題の背景にあるグローバル経済下での企業間の競争の激化に伴う企業の人材投資の 在り方の変化、雇用者中心の社会への移行に伴う地域や家庭の教育力の低下等の構造的な 変化に対応することを目指す。具体的には、人口減少社会の中にあって、「働く者」一人 ひとりの職業キャリアの持続的な発展のために、企業内外における能力開発やキャリア支 援を促進する。これとともに生活と調和の取れた働き方の実現、地域や家庭における教育 力の再構築など幅広い取組を進める。  これまでの計画においても「なお書き」は書いてありますが、色々な経済情勢等の変化 により、適宜、計画は必要に応じて見直す、改正することもあり得るということです。計 画の期間は、平成18年度から平成22年度までの5年間にしております。  3頁が第2部で、「職業能力開発をめぐる経済社会の変化」です。1点目が労働力需給 構造の変化、(1)人口減少社会の到来など労働力供給面の変化です。色々な統計等によ る状況については、出生率等による数字でわかるとおり、人口、あるいは労働力人口につ いて減少傾向に入ってきているということ。団塊の世代が現在700万人で、我が国総人口 の5.4%を占めているが、段階的にこれから引退過程を迎えることに伴い「2007年問題」 が懸念されている。労働者の就業意識については、多様化が進む中で、職業意識の形成に 課題を抱える若者が増加している。それから、育児など仕事以外の生活の充実を希望する 人の増加。あるいは自発的な職業能力の開発や向上、社会貢献活動に取り組むことができ る働き方を求める者の増加が見られる。高齢者の就業意識については、引き続き高い水準 で推移しているとともに、障害者の職業意欲も高まりがみられる。さらに、職業キャリア や能力開発について、自ら考えようとする者が増加しているということです。  (2)企業等における労働力需要面の変化。企業間競争の激化や短期的利益の重視等に 伴い、我が国の企業の中でいわゆる「正社員」以外の労働者の活用や業務の外部化が進む とともに、計画的OJTやOFF−JTの実施率が停滞している。あるいは訓練対象者を 重点化する傾向がみられる。同時に、大企業と中小企業の労働者の間に、依然として能力 開発をめぐる格差がみられる。  国際分業や経済連携が進む中で、「現場力」、すなわち技術・技能や経験に裏打ちされ た問題解決能力や管理能力を改めて強化することが求められている。こういう中で、技能 や知識のみならず、仕事を遂行する過程で問題を発見し解決する能力や、創造力を含めた 実践的な職業能力が重要性を増している。  さらに、サービス経済化や情報通信技術の革新等に伴い、異なる産業分野も含めた産業 構造の変化が進んで、第2次産業と第3次産業の垣根が低くなっている。このようなこと から能力開発の面からも企業の現場の実態に即した職業訓練、あるいは基本的な情報通信 技術を習得できる環境の整備が重要性を増している。  就業者の職業別の推移を見ますと、生産工程や労務作業者や販売従事者の比率は低下す る一方で、専門的・技術的職業従事者の比率が上昇している。全体としては景気回復は進 んでいるということですが、地域的に見ますと、自動車やデジタル家電等といったような 製造業や情報関連産業が集積している大都市圏の改善が進んでいる一方、地域、地場産業 の衰退等による改善が遅れている地域も見られる。  (3)労働市場の現状と見通し。景気の回復や雇用対策の効果もあり、第7次の計画期 間中には、雇用情勢は改善してきましたが、若年者の失業率が依然として高いことや一部 の地域における改善の遅れという厳しさもある。いわゆる「正社員」以外の多様な働き方 の人たちが増加して、2004年には31.5%に達したということです。  5頁、いわゆる「正社員」については、収入はあっても長時間労働の割合が増加してい る。次は、昨年に出ました雇用政策研究会の報告書です。これから人口減少社会、少子高 齢化の中で、若者の雇用に関するミスマッチの解消、女性の意欲と能力の一層の活用、高 齢者の就業機会の確保という対策を講じた場合、講じられなかった場合と比べて、300万 人の労働力人口の増加が生ずる見通しだが、講じた場合でも、100万人減少するという推 計がされています。  2の職業キャリアの各段階における状況についてです。まず、準備期にある若者につい ては、大学等進学率が50%を超えるという傾向の中で、中退者も増加している。早期離職 率は依然として高水準で推移し、失業率も高い水準である。フリーターやニート状態にあ る人も高水準で推移しておりますが、要因としては、新卒の採用が厳しい時期に「正社員」 として就職できなかった者が、そのまま「正社員」になれないということ。人材ニーズが 高度化する中で、いわゆる「正社員」の雇用機会が減少している。本人の仕事に対する意 識や受けてきた教育の問題など色々あり、そういった多様性に対応した施策が求められる。 特にニート状態にある人については、収入別の世帯の割合を見ますと、相対的に低い世帯 に属する割合が増えてきていると指摘されています。また、生活保護の受給状況をみても、 近年、高齢者や母子家庭、障害者、傷病者のいずれでもない「その他世帯」というのが増 加傾向にある。そういった中にニート状態の者が少なからず含まれていると考えられる。  6頁、職業生活の発展期にある者についてです。特に壮年期と言われている人ですが、 企業間競争の激化、成果主義等により、週60時間以上働く者が増加しており、仕事と生活 の両立やメンタルヘルスを含めた心身の健康保持の観点からの影響が懸念される。同時に、 自発的な職業能力開発の面においては、今申し上げた状況の中で、時間面での制約が隘路 になっているということです。  円熟期、高齢者の方々については、一昨年、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」 が改正され、定年の引き上げや継続雇用制度の導入等の措置が位置づけられたところであ る。また、多様な就業へのニーズということで、シルバー人材センターにおいて短期的な 就業機会の提供も行われております。  こういった中で、一定年齢以上の高齢者層については、雇用・就業に限らず、教育・文 化・環境等の分野で地域に密着した活動を通じた意欲や能力を発揮する、といったような 活動の場の拡大が期待される。  3の地域や家庭における人材育成機能の変化についてです。地域のコミュニティにつき ましては、長年、子ども達の職業意識や人間性の涵養に大きな役割を果たしてきたが、そ れが都市化や色々な経済環境の変化の中で、その地域のコミュニティが持ってきた人材育 成機能が低下しているのではないか。関係者の連携の下、そういった場での人材育成の場 を再構築していくことが求められている。  また、核家族化や少子化が進行する中で、家庭における日常的なコミュニケーションの 場が少なくなっていることも、職業意識やコミュニケーション能力の隘路にもなっている 可能性があるため、子どもの家庭における人材育成機能も課題になっているということが 書いてあります。以上、第2部の能力開発をめぐる環境の変化です。  8頁からが、第3部、「職業能力開発施策の実施目標」ということで、総論的なことが 書いてあります。1点目は、労働市場を有効に機能させる基盤整備の推進です。これは第 7次職業能力開発基本計画の中にも書いてあることですが、職業能力開発をめぐる労働市 場を有効に機能させるためのインフラとして、教育訓練、能力評価、キャリア形成支援、 労働市場情報の分野での整備を進めてきたわけです。今次、計画を見据えても、こういっ た事柄についての一層の整備が求められています。具体的には、これまで整備した制度を 適切に運用していくとともに、高度なものも含め多様な能力開発が求められることに対応 した大学や大学院等の教育訓練資源としての一層の活用、あるいは企業や業界団体のニー ズを踏まえた能力評価制度づくり、キャリア・コンサルタントの養成や資質の涵養という ことで、インフラの充実に一層取り組んでいくということです。  2点目は、「働く者」を対象とした能力開発施策の推進です。これについては、いわゆ る雇用労働者を主たる対象としてこれまでやってきた職業能力開発施策を今後とも推進す るとともに、例えば、1(○の中に1)初等・中等教育段階からの意識啓発やキャリア教 育、2(○の中に2)ニート状態にある者の職業的自立に向けた対応、3(○の中に3) 出産・育児・介護等により、職業キャリアを中断している者の取組、4(○の中に4) 「雇用と自営の中間的な働き方をする者」の能力開発、5(○の中に5)引退過程にある 高齢者に対する色々な活動に対する仕組みづくりなどを進めることにより、こういったよ うなことで、現在就業していなくとも、潜在的に働く可能性を有する「働く者」全般を対 象とするキャリア支援を推進していく。  具体的には、現行施策の運用改善による対応はもとより、他の行政分野における取組や 自治体等との連携、それから関係団体等との協働。税制等の政策手段の活用の可能性の検 討、インターネット等による「eラーニング」の活用といった様々な対応を図っていくこ とが必要である。  3番目、職業キャリアの持続的な発展に向けた取組の促進については、いわゆる「非正 社員」の増加、いわゆる「正社員」においても対象者が重点化しているということです。 ですから、十分な能力開発機会が得られない者が増えている。特に長時間労働者が増加す る中で、時間的制約とともに職業キャリアの円滑な展開の前提となる心身の健康問題もあ ります。こういった状況の中で、仕事の分かち合い(ワークシェアリング)や仕事と生活 の調和(ワークライフバランス)といった理念を踏まえて、企業における多様な働き方相 互間でバランスの取れた能力開発やキャリア支援の実施ということで考えていくというこ と。  4番目は、「人を育てる環境」の再構築に向けた取組です。(1)「現場力」強化のた めの施策については、いわゆる高付加価値製品や質の高いサービスを生み出すために不可 欠な「現場力」、あるいはそれを支える人材の重要性ということで、特にものづくりの基 盤を担っている中小企業の技術・技能水準を維持するための観点です。一方、2007年問題、 バブル崩壊後の採用抑制に伴う企業内での人員構成の偏りとか、高学歴化が進む中で若者 のものづくり現場への入職の減少ということで、技能の継承がなされないことのおそれが 生じている。  こういった円滑な熟練技能の継承の取組に向けての支援、企業ニーズに即した職業訓練 の施策について、事業主支援の観点に立って推進する。中小企業に対しても、そのニーズ を踏まえた支援策を講じていく。  (2)福祉から自立に向けた取組への支援です。障害者の就業意欲の高まり、あるいは 障害の重度化、多様化といった現状の中で、地域レベルにおいて関係行政との連携の強化 により、障害者の自立に資する能力開発を推進する。また、母子家庭の母、生活保護受給 者等の自立に向けた支援策も積極的に推進する。  (3)地域における人材育成環境の整備です。これはNPO等との連携により、職業的 自立に課題を抱えた若者や障害者等を生活に近い場で受け入れて、集団形式による実践教 育や生活指導ができる環境を整備する。職業キャリア形成や就職、職場定着に向けた継続 的な支援を行う。  同時に、団塊の世代の者が、長年培ってきたノウハウを活かすことができるように、そ の人生キャリア、職業キャリアの充実を図っていく。  11頁、5番、職業能力開発施策の推進に当たっての官民連携の一層の推進等です。これ までも官民連携により、諸施策を講じてきたわけですが、必ずしも十分な状況ではないと いうことで、官民連携のもとに一層の取組を進めていく必要がある。さらに、若者のキャ リアをめぐる諸問題、働き方の多様化に伴う課題、「現場力」の低下と人材育成をめぐる 問題など、単に労働市場の機能だけでは解決できない諸問題についても積極的に取り組ん でいく。  このように、「働く者」全般を視野に入れた対策や、地域や家庭など人を育む環境につ いての配慮といったことを考えていくということです。  第4部については、各論的なそれぞれの施策です。  12頁、1の労働市場のインフラストラクチャーの充実です。  (1)キャリア形成支援システムの充実ということで、キャリア・コンサルティングの 重要性が、社会状況の変化を伴う労働市場のインフラストラクチャーの整備の中で一層高 まっている。これまでも行って参りましたキャリア・コンサルタントの養成を進めるとと もに、その資質の向上や能力発揮の場の拡大を図っていく。同時に、「働く者」の人生キ ャリア全体の設計やメンタルヘルス等への問題の対応も視野に入れたキャリア・コンサル ティングの在り方の確立や、企業におけるキャリア・コンサルティングの普及・浸透。こ のために、キャリア形成促進助成金や教育訓練給付制度の活用により、そういったキャリ ア・コンサルタントの養成や資質の確保・向上の取組を進めていく。併せて、人生キャリ アやメンタルヘルスの取組についても、体制の整備に努めていく。  なお、こうした取組については、今回改正予定の、能開法等において、キャリア・コン サルティングの機会を確保するといったことでの事業主の支援措置を追加しております。 また国による援助としてキャリア・コンサルタントに対する講習の実施が明記されたこと も踏まえて推進していく。特に中小企業の事業主に対しては、公共職業安定所等の公的機 関に配置されたキャリア・コンサルタントを積極的に活用する。キャリア・コンサルティ ングに関する好事例の労使への情報の提供ということです。  (2)多様な職業訓練・教育訓練の機会の確保については、公共職業訓練の関係になり ますが、これまでやってきたことも併せて、企業の人材ニーズの変化を踏まえた職業訓練 コースの設定や、求職者自身のニーズを踏まえた選択を可能とする公共訓練の充実に取り 組んでいく。  その中で、情報通信に関する分野や介護の分野については需要が高まっている為積極的 に進めていくが、その際、民間の活力やノウハウを最大限活用するということで、民間機 関への委託訓練の積極的な活用。就職実績を反映した委託費の支給等を通じた委託訓練の 質の向上を促進する。  創業を目指す者については、引き続き「創業サポートセンター」による相談援助、情報 提供を行う。さらに、教育訓練給付の講座指定に当たっては、能力評価の状況を勘案して、 質の向上を図っていく。eラーニングの手法を活用した能力開発、情報提供等の支援を行 うということです。  改正能開法等による「実践型人材養成システム」の普及・定着を図っていく。このシス テムの関係については14頁の「具体的には」で、指針を作成することにしており、訓練内 容や労働条件についての周知方法について分かりやすいモデル契約書を作成する等により、 活用を促進していく。  「実践型人材養成システム」の中で、法律の中に認定制度、事業主の表示制度について 規定しておりますので、それらについて周知を図っていきます。訓練生の募集を支援する とともに、能力評価の方法については、相談援助その他の支援を進めていく。  同時に、改正中小企業労働力確保法に基づく支援措置の効果的な活用、あるいは業界団 体と教育訓練機関とのコーディネートの推進についてふれております。 (3)職業能力評価に係る部分です。これまでの取組も含めて専門的・技術的職業の割合 の増加や、職務内容の高度化・多様化といった中で、能力の適正な評価を進めて、職業能 力のミスマッチを抑制し、雇用に関する労使双方のリスクを軽減させる。この能力評価制 度については、企業内外を通じた職業キャリアの円滑な展開を図るための指針としての役 割を効果的に果たしていくということで、制度の整備・充実に努めていく。あるいは利用 の促進をしていく。  具体策として、現在策定を進めている能力評価基準について、さらに普及・定着を図る ために、企業等のニーズを踏まえた整備・充実、あるいは普及促進を図っていく。技能検 定制度については、やはり業界等のニーズを踏まえた検定職種の見直し、民間機関の活力 やネットワークの活用等により、受検機会の拡大に努める。  ビジネス・キャリア制度についても、ニーズを踏まえた見直しに努めて、試験制度の整 備による能力評価機能の強化を図る。加えて、若者の就職基礎能力の向上を図るためのY ES-プログラムの普及促進を図る。 (4)職業キャリアに関する情報インフラストラクチャーについてです。情報提供の関係 で、「キャリア情報ナビ」を今年度から作っており、ホームページ上で情報提供をやって おりますが、その内容や質について利用者の立場に立った充実を図る。専修学校や職能団 体等の能力開発関係者が相互に情報交換できるシステムづくりも併せて検討していくとい うことです。  2の「働く者」の職業生涯を通じた持続的なキャリア形成支援です。段階に応じた支援 の充実ということで、準備期における支援ということで若者については、関係の機関と連 携のもとに、職業意識の涵養や職業に必要な基本的な能力をはじめとする職業能力を習得 できるように支援する。このために学校と連携しながら、初等・中等教育段階からのキャ リア教育の充実、あるいは職業と触れ合う機会づくり。インターンシップや職業ガイダン スの実施。今回の法改正による「実践型人材養成システム」の普及・定着等を盛り込んで おります。  併せて、若者の特性に応じたキャリア・コンサルティング技法の一層の向上。フリータ ーや若年失業者等について、「日本版デュアルシステム」をはじめとする効果的な職業訓 練の実施等による就職の支援。ニート状態にある者については、「若者自立塾」の支援や、 来年度から実施する地域の若者の自立支援のための機関をネットワーク化することによる 支援を行っていく。これらの事業についてはNPO等と連携を通じて事業の展開を図って いく。  ロの発展期における支援については、転職や配置転換等の職業生活の節目だけではなく、 日頃から労働者が自らの職業生活設計に即した職業能力の開発・向上に取り組む環境が求 められます。このため、1(○の中に1)企業における労働者の職業キャリア形成に向け た取組の推進については、これは企業の中で取り組んでいただいていることですが、職業 能力開発推進者の一層の活用やキャリア形成促進助成金等の支援策、認定職業訓練制度の 活用等です。同時に、自発的な能力開発ということで、有給教育訓練休暇制度の導入の促 進に加え、今回の法改正の中に盛り込んでいますが、自発的職業能力開発のための勤務時 間の短縮措置の導入の支援策を行っていく。  2(○の中に2)職業キャリアの中断を余儀なくされた者等への支援について、離職者 等に対しては公共職業訓練の充実、職業安定機関等との一層の連携による再就職の実現を 図る。地域の雇用失業情勢に対応した機動的な訓練の実施。特に大量の離職者が発生した 場合の迅速・適切な対応を図る。職業キャリアを中断した方が再就職を希望する場合のキ ャリア・コンサルティング体制の整備。こうした事情を抱えた方々に対して支援を行う機 関や団体との連携といったことが書いてあります。  ハの円熟期における支援については、高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用確保措 置の円滑な実施やシルバー人材センターによる多様な就業機会の提供とともに、能力開発 施策としても、多様な経験と熟練した技術・技能を十分発揮できる環境づくりに努めてい く。  このため、こういった方々に対して、人生キャリア全般を見据えたキャリア・コンサル ティング機会の提供、退職後の再就職・就業等に向けた準備を行うための休暇制度の導入 の促進、NPOへの委託訓練の活用といったことを進めるとともに、教育・文化・環境等 の分野における地域貢献活動等への希望者に対する関連施策、マルチライフ支援事業等、 関係施策等との連携を図る。  (2)福祉から自立に向けたキャリア形成の支援です。障害者自立支援法が成立し、福 祉から雇用へという流れができたことにより、就職を希望する重度障害者が増加すること が予想されておりますので、これらの方々に対してよりきめ細かな支援を行っていく。  具体策としては、障害者職業能力開発校において、日常生活に介助を要する重度障害者、 知的障害者、精神障害者、発達障害者など、特別の配慮が必要とされる方々に対して訓練 の重点的な実施を行っていく。特に精神障害者の方々は実雇用率に算定されることになり ますので、そういった方々に対するノウハウの蓄積と普及を図りつつ訓練を拡充していく。 発達障害者については、試行的な取組により、訓練技法の確立に努める。  一般の職業能力開発校についても、一般の訓練コースで受講が可能な方々については引 き続き積極的に受け入れる。併せて、知的障害者等を対象とする障害者の専門訓練コース の設定を促進していく。障害者の方々に対しても、多様な委託訓練を一層促進していく。 さらに障害者雇用促進法の改正により、在宅就労が法的に位置づけられたことを踏まえて eラーニングによるIT技能を習得するための委託訓練を実施するということです。  アビリンピックについては、2007年に静岡で開催される「2007年ユニバーサル技能五輪 国際大会」に向けた対応を図っていく。  ロの母子家庭の母、生活保護受給者への支援については、こういった方々に対して自立 が図られるよう、職業訓練等の機会を提供していく。  (3)いわゆる「非正社員」の能力開発についての環境整備です。こういった方々が増 加しているということで、企業内においてバランスの取れた能力開発機会が提供されるよ う、例えば、事業内能力開発計画におけるパートタイム労働者等の位置づけの明確化。企 業内外のキャリア・コンサルタントによる、いわゆる「非正社員」を含めた相談、援助等 を個々の企業の実情に応じて促すとともに、いわゆる「非正社員」の希望やニーズに即し た支援を行っていく。  具体的には、訓練期間や訓練時間に配慮した訓練コースの設定、情報通信技術を活用し た訓練等についての情報提供、好事例の収集といったことです。また派遣労働者について は、派遣元事業主による能力開発とともに、業界団体等における能力評価に関する自主的 な取組の促進をしていく。  3の「現場力」の強化と技能の継承・振興です。「現場力」についてはこれまでも出て まいりましたが、対応として法改正に基づく「実践型人材養成システム」を推進する。併 せて、公共職業訓練の中で、中堅技能者層を主たる対象として、生産管理や安全管理など 能力の幅を広げるためのオーダーメード訓練の実施や指導員の派遣、施設・設備の開放等 の支援を行っていく。ものづくり分野を中心に、自ら教育訓練を行うことが困難な中小企 業等に対して、公共訓練の中で提供を図っていく。  特に、訓練の展開に当たっては、生産工程の自動化・効率化、製品の高付加価値化、技 術の複合化といったものづくり分野の動向を踏まえて、「現場力」の向上に一層資するよ う、基礎的技術・技能の鍛練を含めた実践力の付与、訓練内容の高度化・複合化を図って いく。  認定職業訓練についても、必要に応じた制度の見直しを行いつつ、現場を担う中核とな る人材の育成・確保に資する制度として普及を図っていく。さらに魅力ある職場、現場づ くりによる人材獲得のために、中小企業に対する資金や人材募集の面での支援制度の活用。 パートタイム労働者、派遣労働者などの業務に応じた技能評価や能力開発の促進について の配慮を進める。  (2)技能の継承・発展のための施策です。引き継ぐべき技術・技能を明らかにして、 団塊の世代等の定年延長、継続雇用により、中堅技能者にその技術・技能を引き継ぐとと もに、若者の現場への誘導と育成を図っていく。今回の改正法案の中で、熟練技能の体系 的な管理、提供を促すための指針を策定することにしています。併せて、情報提供や相談 を行う窓口を開設したり、技能継承のためのノウハウや資金面での支援施策の強化に取り 組んでいきます。  近年、中小企業同士や産学共同の集積形成の動向が進んでいることを踏まえて、能力開 発行政と関係の行政、団体との連携に積極的に取り組んでいく。  (3)技能の振興のための施策については、技能競技大会等があり、若者に対する技能、 あるいはものづくりの振興を図るという観点から、ものづくりの魅力に触れる機会を早い うちからつくる。若者が目標をもって技能を競い合う機会を増やすということで、技能競 技大会のPR、あるいはそれを観戦することで技能振興を行っていきたい。2007年に実施 される「ユニバーサル技能五輪国際大会」と「国際アビリンピック」を契機として、大会 後も含め積極的な技能振興とPRを進める。その他、各種行事等の取組を進めていくとい うことです。  4の国際化と職業能力開発です。(1)質の高い労働力育成に向けた国際協力。グロー バル化に対応した国際競争力の強化ということで、発展途上国において人づくりを重視す る機運が一層高まっている。国際協力の観点で、各国における経済の発展段階に応じた協 力を効率的・効果的に行っていく。  具体策として、1(○の中に1)東アジアを中心として、「技能評価システム移転促進 事業」ということで、日系企業と連携して技能評価システムの構築・改善のための協力を 行っていく。2(○の中に2)能力開発分野の技術協力については、協力終了後の自立発 展性を高めるために、その協力過程において相手国の業界団体との連携を積極的に図ると ともに、職業能力開発や職業能力評価制度に関する政策助言、現地政府の人材育成を重視 する。開発途上国における指導員の育成のために、総合大学校における留学生の受入れを 積極的に推進する。ILO、APEC等の国際機関を通じた国際協力についても、引き続 き実施していく。  (2)外国人研修・技能実習制度については、制度の適正な運用と見直しの検討を行っ ていく。具体的には、1(○の中に1)実務研修期間における研修手当の不払いや不適正 な時間外研修等、技能実習になってからの賃金不払いや失踪等があることから、巡回指導 を展開することにより、不適正な事案等の発生防止を図っていく。実習生を送り出してい る国からの技術移転ニーズなどから、職種の拡大が要望されていること等を踏まえて、そ の移行対象職種の見直しを行っていく。  3(○の中に3)技能実習による技能の習得の検証が不十分であるということで、技能 検定の受検の促進、帰国後の状況についても可能な限りフォローしていく。  (3)企業活動のグローバル化に対する支援です。国際化の進展を背景として、日本国 内の企業が、海外への事業展開が活発になると見込まれています。特に、中小企業におい てそういった労働者の育成が課題となっている。海外に展開している中小企業等を対象と した「グローバル人材育成支援事業」の一層の効果的な実施を図っていく。  5の能力開発施策の推進体制については、まだ項目に止めていますので、次回に文章を お示しし、ご議論をいただきたいと思います。以上です。 ○今野分科会長 いまのご説明について、ご意見、ご質問をお願いします。こういう文面 が出てきたのは初めてですので、今日は、少し自由に議論していただければと思います。 ○玄田委員 9頁の「働く者」という概念が、今回は非常にユニークなことではないかと 理解しています。「潜在的に働く可能性を有する者」ということは、これまで見てきた狭 義の労働力、労働者とは違う概念、もう少し幅広な概念です。そうすると、今までの用語 でいくと、就業者、失業者プラス非労働力人口の中の一部になると思うのです。  例えば、「『働く者』というのは何万人ぐらいいるのですか」と言われたときに、どう いうふうに回答するのか。これは質問ではなくて、考えておかないと。言葉としてはよく わかるのですが、ニートもフリーターもそうですが。一体どのぐらいいるのか必ず問われ ると思うのです。これについては少し議論が必要だと思いました。  ネーミングについては、「働く者」というのは、就業可能者なのかという気もしなくも なかったのですが、そういう言葉もありますが、一体、潜在的にどのぐらいの人たちを対 象にしているのか、という議論は必要だと思います。  2つ目は、私の認識が違うのかもしれませんが、5頁の「中退者数が年々増加する傾向 がうかがわれ」という文言で、文部科学省の統計を見る限り、高校中退者数が直近でも減 少しているのではないかという記憶があります。ただ、これがもう少し幅広に、大学の中 退者や専門学校も含めて言っているのかどうか。場合によっては混乱があるかもしれない ので、少し統計の確認、もしくは定義を正確にした方がいいのではないかと思います。  3つ目は、19頁の母子家庭に対して、積極的に能力開発の支援をしていこうというのは 非常に良いと思います。近年は、シングルマザーだけではなく、シングルファーザーの問 題が取り沙汰されている。場合によっては、いわゆる片親状態になって、父親も十分な能 力開発や就業機会が確保されにくくなっているのではないかという指摘が出てきていると きに、果たして父子家庭の問題について全く言及しておかなくても大丈夫なのか。つまり、 男女共同参画、ワークライフバランス、ホジティブ・アクションと色々なことを考えても、 なぜ母子家庭だけと。父子家庭は十分に行政的な対応があるのかと聞かれた時に、果たし てどう考えるのか。母子家庭の場合は、もちろん労働力状態にないことが多いので問題に なっているのでしょうが、シングルファーザーは多くの場合就業中ではあるが、能力開発 等に困難を抱えている可能性があるならば、当然支援の対象になる。ただ、そういうこと に対してどのぐらい研究、事実の基づき、裏付けがあるのかわからないものですから、そ の点については佐藤委員が詳しいのかもしれませんが、どう考えるのか少し議論した方が いいのではないかと思います。 ○杉浦総務課長 最初の2つについては、数字がどのぐらいあるのかはこういった記述を するからには考えておいた方がいいということですので、申し訳ございませんが、いま手 元にお出しするものがございませんので、調べてみます。最初の「働く者」の部分につい ては、取り方によってはかなり幅が出てしまうかもしれませんが、考え方の整理として、 例えば、というものでも出せるのかどうかも含めて検討させていただきたいと思います。 中退者については、もう一度確認をさせていただきます。  母子家庭の母等については、これまで私どもの用語として「母子家庭の母」という言い 方を、色々な所で統一的にやってきている経緯があるので、確かにおっしゃる傾向につい てもあろうかと思います。もしそういうことが必要ならば、具体的に少し書き込む等工夫 したいと思います。そこは実態も含めて考えたいと思います。 ○今野分科会長 最後の点については、佐藤委員が詳しいのではないかという話があった のですが。 ○佐藤委員 詳しくないです。 ○今野分科会長 コメントなしですか。 ○玄田委員 シングルファーザーの就業状態というのは、実態としてどれくらいわかって いるのですかね。 ○佐藤委員 実際は就業率が高いから、それほど施策は必要ないという整理だと思うので す。 ○玄田委員 ただ、概念としては、マザーズハローワークを始めるわけですから、当然フ ァーザーの問題もあるのではないかと。 ○佐藤委員 おそらく父子家庭の方は、就業の問題よりも子育ての問題の方が大きくて、 母子家庭の方は就業の問題も大きいから、就業対策の中でやるということだと思うのです。 しかし、ゼロではないと思いますが、メインは母子家庭の方が就業で、父子家庭の方は子 育てが大きいと思うのです。 ○今野分科会長 いずれにしても検討してください。 ○杉浦総務課長 検討いたします。 ○佐藤委員 細かいことを2つです。1つは、「現場力」が色々なところで出てきますが、 これは何なのだろうと。つまり、「現場力」が失われて、それを強化しなければいけない というと、中身がわからないと強化のしようがないのです。1頁にも出てきますし、19頁 にも出てきますが。例えば、ものづくりの生産現場で言うと、「現場力」は従来であれば、 生産現場の技能工の人も単に標準作業量に合わせて仕事をするだけではなく、良品か不良 品か区別できて、問題があればそれを改善していく。品質を工程で作り込むのはただの 「現場力」とか言ったりするのですが、何のことを言っているのか。  団塊の世代が大量にリタイアしていくので、技能継承が問題だということとリンクして 言っているだけなのか、「現場力」というのは特別なものをイメージしているのか。営業 でも会社によっては、大卒を採ったら全員に営業を経験させて、それから企画に回す。こ れを「現場を知っている社員を育てる」という使い方をすることもある。「現場力」とは 何なのだろうか。何かあるのだと思うのです。何となくわかるのですが、それがないと何 を教育訓練しているのかわからない、というのがいちばん大きな質問です。  細かな点で言葉の使い方だけですが、6頁の1行目、「企業間競争の激化や、成果主義 的人事管理の広がりに伴い週60時間以上働く者が増しており」、の部分は本当なのかと。 これがなくなれば長く働く人はいなくなるのかという気もしないでもない。この枕詞はい らないのではないか。非常に細かいことですが、なくても十分に話は通じると思うのです。 「職業生活の発展期にある者については、週60時間以上働く」でいいような気がします。 こういう箇所がいくつかあるのです。それが長時間労働の原因でないとは言いませんが、 これだけなくせばなくなるような話なのかという気もしないでもない。  もう1つは19頁のいわゆる非正規のところ、2の(3)の最後で「派遣労働者」のとこ ろです。派遣元事業主が職業能力開発をやれというのはよくわかるのですが、よく言われ るように派遣元が教育訓練しても派遣労働者は複数の会社に登録しているのです。派遣先 で仕事がなくなれば、ほかの派遣会社に登録してそこで見つかれば行ってしまうわけです。 そういう仕組みの中で、何故派遣元が教育訓練を自主的にやるのかという気がするのです。 だから、やれと言っても、やるインセンティブはないのではないか。実際上、教育訓練し ても派遣スタッフが派遣元を選べるわけですから、そう簡単ではないので、それをどうし て自主的にやるのか。言うことは簡単ですが、機会を提供しても、派遣の場合、ある程度 派遣スタッフが負担しないと実際上なかなか難しいのかという気がします。 ○杉浦総務課長 「現場力」に関しては確かに、別に定義をしたところがあるわけではな いので難しいのですが、取りあえず4頁の「また」という段落のところに、私どもなりに 「『現場力』、すなわち技術・技能や経験に裏打ちされた問題解決能力や管理能力」とい う言い方で書いてあります。これがいいか悪いかは別にご意見を頂戴しますが、色々なこ とが言われている背景があることはもちろんで、一方で必ずしもものづくりだけを睨んで いるわけではありません。いま、佐藤委員がおっしゃったように、サービス部門について も、やはり現場の力ということは当然考え得るだろうと思われます。何らかの形でそれは 書いておかないと、いまおっしゃったように混乱を招くというか、色々な意味に取られて しまうことがあります。これは一定の解説がいるのかとは思いますが、ここにこういう書 き方で書いておくのでは不十分ならば、またその辺は色々ご意見を頂戴できればと思って います。  6頁の記述については、確かにおっしゃるとおりで、飾り言葉はいらないのではないか と言われると、そのとおりかもしれません。  派遣は現在記述している内容だけで問題解決しないことは、私どもも思っています。派 遣元以外に例えば本人の自発的な部分などを書き加えることがあれば書き加えます。ほか のやり方で有効な手だて、アイデアを教えていただければありがたいと思います。 ○今野分科会長 最後の点いかがですか。何か、いいアイデアがあればどうでしょうか。 佐藤委員が言われたとおりだとは思いますが。 ○佐藤委員 もちろん、今みたいに派遣スタッフが足りない状況だと、教育訓練機会を提 供することが派遣会社の差別化になることは事実です。やはり、ある程度派遣元が教育訓 練機会を提供するだけではなくて、負担も見てくれる派遣会社に登録して働こうというこ とになる。それは事実だと思う。 ○今野分科会長 人材確保策ですか。 ○佐藤委員 そうです。それはあると思う。 ○玄田委員 請負元だと人材育成にかなりのインセンティブがある。 ○今野分科会長 いやいや、それもどうでしょうか。 ○長谷川委員 佐藤委員にお聞きしますが、例えば派遣と請負の能力開発をどうしていく のかとなると、ある意味では派遣元や請負会社はやはり能力開発が必要である、としない と、請負や派遣の人たちは、どこで能力開発するのですかということになる。ここの議論 はそうだったと思うのです。要するに、まだパートは長期雇用している会社ができると思 うのですが、では派遣と請負は、どこで能力開発をするのかと問われたときに、そこを書 かないと、ここだけがまた。 ○今野分科会長 佐藤委員の意見は、どこがするのかは書いた方がいい。しかし、派遣元 がすると書くのはいいが実効性が全くないのではないかという話だと思うのです。 ○佐藤委員 派遣先からすれば、当然派遣会社を選ぶ時に、単にお願いしたらすぐ来ると いうだけでなく、どういう質のスタッフを派遣してくれるかを見ることが非常に大事だと 思う。もう1つは、派遣スタッフ側にとってどういう派遣会社がいい会社なのかというこ とです。それは賃金だけではなく、もちろんすぐ派遣先を紹介してくれることは大事です が、派遣でも、もう少し中期的にキャリアを考えて、能力開発機会を提供したり、派遣先 を紹介したりしてくれる会社が、いい派遣会社だと認識することが必要です。それは請負 もそうなのですが、単に入口の初任賃金だけではなく、その先も使い捨てではなくて、教 育の機会もあるようなところがいい会社だと。派遣先や請負会社を選ばなければいけない し、選べるような情報を出してもらうことが非常に大事だと思う。 ○江上委員 今の件で言うと、派遣業界は、非常に短期間ではありますが、実際にかなり 実態的に派遣スタッフに無料で研修を提供しているところもありますし、安価で研修料を 取って行っているところもあります。そういう意味では、派遣会社同士の競争でかなり差 別化は進んできています。実態としてはそういうこともすでに進行していると言えるので はないでしょうか。派遣元が研修機会を提供することが、効果的であるということは、少 し言及してもいいのかと思います。 ○今野分科会長 佐藤委員が言われたように、ただ乗りされるのは解決できないのです。 また、佐藤委員が最後に言われたことは、結局、派遣労働者でも、あっちこっちいきなが ら長期に働いた場合には、結果的にOJTが機能して、キャリアが形成されるように派遣 先が決まっていくといいという話だと思う。いいアイデアはないですか。これはこれでい いのかもしれない。 ○杉浦総務課長 行政としてどういう取り組み方が必要なのかというと、法律上も派遣元 事業主に対しては、教育訓練の機会の確保等についての努力義務が書いてある訳です。そ こは最低限抑えなければいけないと思うのです。あとはスタッフ自身が自発的にやる部分 について、どのくらい行政としてアプローチできるかということかもしれません。 ○今野分科会長 佐藤委員のいちばん最後の点を、政策までいかないとしても少し方向を 示すとしたら、次の派遣先を示したときに、自分のキャリアが伸びるような派遣先に行け ることがわかる仕掛けを作ったらどうかという話だと思う。いまのままだと、2年行って、 その間でOJTをやって伸びても、また次に行くと元に戻るのです。だから職業能力が積 み上がらない。 ○長谷川委員 これから良質な人たちを確保しなければ、派遣会社は企業として成り立っ ていかない。おそらく熾烈な競争が始まると思うし、すでに始まっている。そうすると、 そういう人たちを必ず確保すると思う。少し出来たのにまた1に戻すようなことをやった ら、そこは魅力のない会社だから、必ずそういうところは捨てられる。自分のところでA さんはいまここだとすると、しかしここへ行ってこうなったから、では次はこうと、自ず と会社の企業経営の中で、そういう手法を取らないと生き残れないのではないか。そうい う意味でも、やはり派遣元は派遣労働者に対する能力開発が必要です、と、こういう計画 の中で示すのは私は必要ではないかと思いました。 ○今野分科会長 いや、佐藤委員の意見はこれを削れというのではなくて、これプラス何 かないかという話だと思う。 ○玄田委員 詳しくはわからないのですが、経済理論的に考えると、派遣サービスのスキ ルが一般的などの会社でも通用するのか、派遣の中でもその会社固有のサービスを有する ものなのかに決定的な違いがあって、どの会社でも通用するサービスしかないのであれば、 それは当然経済理論的には労働者本人が負担するしかなく、企業が負担するインセンティ ブはないと思う。ただ、今おっしゃった差別化という中で、例えばある派遣会社が固有の サービスを提供する時、つまり、その会社を辞めた場合には通用しないようなスキルを組 み入れるときには、先程佐藤委員がおっしゃったような企業自体が研修することはあり得 る。固有性があった場合には当然労働者と企業の間のバーゲニングパワー(取引における 交渉力)の問題が出てきますから、ポイントはその派遣の中身がどのくらい汎用性がある ものなのかということ。もし、特殊性がある場合にはそこでコストについての適切な分配 が、労働者と企業との間でなされているかが議論になる。しかし、派遣サービスというの は、どうなのですか。固有性があるものなのか伺いたいのですが。 ○佐藤委員 スキル自体は汎用的であり、他業者との差別化は、スキルではなくて会社と しての差別化です。つまり、会社が働く人に提供する労働条件の差別化みたいなもので、 私のところは教育訓練を提供します、というのはあり得るかもわかりませんが、一応派遣 というビジネスで考えれば、スキル自体はある程度汎用的です。そうすると、事業主が労 働条件の差別化以外で教育訓練を提供するかどうかは、玄田委員が言われたように経済理 論的にはあり得ないのです。 ○今野分科会長 では、この件については一応そういう課題が残ったことにしておきます。 まだ、ほかにも色々ご意見があると思います。 ○長谷川委員 22頁の「外国人研修・技能実習制度について」は、書いてあることではな くて、中身の話で、例えば「制度の適正な運用と見直しの検討を行う」や「実務研修に係 る法的保護の在り方等を検討する」、「実施職種の拡大が要望されていること等を踏まえ、 見直しを行う」などと書いてあるのですが、この「検討する」や「見直しを行う」などは、 要するに今後具体的に何かスケジュール等があって、こういう書き方をしたのでしょうか。 駄目だと言っているのではないのです。 ○田中外国人研修推進室長 技能実習移行対象職種の見直しを例に取りますと、これは規 制改革3か年計画でも指摘されていまして、逐次見直して進めていくということですが、 外国人研修推進室では国際研修協力機構を中心として、見直しや認定の仕組み等について 勉強しています。今後、結果を受けて、認定の仕組み等も考えていこうとしております。  そのほか、実務研修に係る法的保護の在り方につきましては、これも平成18年度中に結 論は出すことになっています。これも規制改革3か年計画で指摘されておりまして、この 計画のスケジュールに沿って、見直しについては法務省等と検討しながら進めていきます。 実務研修に係る法的保護の在り方につきましては、中身はまだ検討段階で、具体的にお示 し出来るものはありません。 ○今野分科会長 長谷川委員、よろしいですか。 ○長谷川委員 はい。 ○鈴木委員 先程玄田委員が指摘されたのですが、5頁に「中退者が年々増加する傾向が うかがわれ」とあります。しかし、むしろ問題は大学進学率が50%を超えているうえで、 卒業時に無業者であるものが2割前後いるというのが、ここのところでは問題になるので はないかと思います。  いちばん最後の23頁に、中小企業に対する支援として、「グローバル人材育成支援事業」 とあります。これはこの文脈からいくと既に行っていると思うのですが、確かにこれは大 事なことだとしても、実態として中小企業にこのようなことが浸透して、実績が挙がって いるのかどうか。現在の実情と、もし行っているのであれば、その実施の成果も教えてい ただければと思います。 ○杉浦総務課長 第1点につきましては、状況を踏まえまして、記述、表現について検討 いたします。 ○奈良海外協力課長 2点目の「グローバル人材育成支援事業」は、平成17年度、本年度 から実施しています。中身的には海外に事業展開をしている中小企業を中心とする企業に 対して、セミナー、個別の相談援助事業等をやっています。また、実際に外国で操業され ている会社に対しては、要望に応じて現時点で起きている色々な諸問題を解決するための コンサルティング事業をやっています。そのほか、必要な情報提供等を行っているのです が、例えば国内セミナーを見ますと、1月末現在の数字で17回、約800名の方の参加をい ただいています。また、相談援助事業につきましては、同じく1月末現在で、相談件数、 出張、窓口相談を併せて約2,300件です。海外コンサルティング事業につきましても、1 月末現在で53件が派遣済みで、これも申請が続いている状態ですので、3月いっぱいまで には100件くらいまでいくのではないかという実績が出ています。 ○今野分科会長 よろしいですか。ほかにありますでしょうか。 ○玄田委員 最初の質問の9頁ですが、やはり文言から見ると、「現在就業していなくても 潜在的に働く可能性を有する者、すなわち『働く者』」というのは少し矛盾を感じます。現 在の就業状態に関わらず、潜在的に働く可能性を有する者というのであれば、すんなり「働 く者」だと思います。  また、最初に申しました人数ですが、イメージとしては大きく2タイプがあり得ると思 います。1つは15歳以上の人口全般を「働く者」と呼んでしまう。障害があったり、高齢 であっても、潜在的には色々な形で就業に関わる可能性があるというので、これを1つの 大きなターゲットとするのだという大きな見方と、もう一方は前回も指摘しましたが、雇 用政策研究会で政策的に対応することによって、増加が見込まれる労働力人口です。この 部分をやはりターゲットとして狭い意味での労働力ではなくて、政策的な対応によって拡 大し得る部分を「働く者」としてカウントしていくのだという、どちらかがあり得るとい う感じがしました。あとは全般的な政策の対応によって、狭義の部分、広義の部分をどう 取るかが考えるヒントかということです。 ○杉浦総務課長 少し表現については研究をしてみます。 ○今野分科会長 読み方ですが、9頁の6行目、「など」で始まっていることは、この上は 全部想定されているのですね。1,2,3,4,5(それぞれ○の中に1,2,3,4, 5)などが「働く者」に入るのですね。 ○杉浦総務課長 そうです。 ○今野分科会長 読み方としてはそうですね。そうすると、1(○の中に1)があるから、 玄田委員が言った前者に近いです。いずれにしても、検討してください。 ○杉浦総務課長 はい。 ○今野分科会長 ほかにありますでしょうか。 ○山野委員 19頁の「非正社員」のところは、「いわゆる『非正社員』の希望やニーズに 即した支援を行う」と書いてあるのですが、この中で中小企業としましては非常に負担な 部分が出てくるのでしょうか。何かそういうものがぞろぞろと出てきそうな気がします。 教えていただきたいと思います。 ○杉浦総務課長 ここも、少しそういうことも色々考えまして、表現を苦労したのです。 いわゆる企業内において、バランスの取れた能力機会の提供というような書き方で書いて あるのですが、前もご議論がありましたけれども、例えばパートの人たちに対して、どこ まで職業訓練を事業主がやるべきかという議論もあろうかと思います。それについて私ど もとしましても、やっていただくことは大いに結構ですが、それをやりなさいとまでは必 ずしも言えるところではない。もちろん、企業にとっては必要な人たちに必要な能力開発 をするということでしょうから。  ひいては企業・業界・国全体の労働者のために有効になるのであるならば、どんどんや っていただくのは非常に結構なことでしょうが。そこで一律に負担をかけるようにやりな さいとまでは、私どもとしてはなかなか言いにくいものですから、そういう意味で表現を こういう書き方にしてあるつもりです。不十分ならば、またご意見をいただきます。 ○今野分科会長 ほかにありますか。言葉の問題ですが、キャリアの段階を準備期、発展 期、円熟期と書いてあるのですが、これは一般化した言葉ですか。どこにも定義がないの で、説明してあげてから入るのがいいのではないか。多分、場所としては、5頁の2、 「職業キャリアの各段階における状況」という所の2行目の後ろ辺りに定義を入れないと いけないかと思います。 ○上村職業能力開発局長 わかりました。役所の文書ですから、本当はきっちり書かなく てはいけないのですが、大胆な書き振りになっていますので、現物にするときには少しそ こは考えます。大いに議論してもらって、この前の研究会の提言からきているものですか ら、提言のときに割とフランクな議論をしていただき、盛り込んでいます。例えば、「現 場力」にしても何にしても、そこら辺は、そういう意味では人口に膾炙しているかなど、 そういうことを十分踏まえたうえで恥ずかしくない文章にはしたいと思います。  玄田委員、中退が増えていると言い切れるのかどうかという質問でしたか。 ○玄田委員 たしか文科省の統計によると、高校中退者は減少していたと思います。 ○上村職業能力開発局長 前のときに出させていただいた資料の中で、大学(学部)につ いては、4年前に入学した者が4年後の卒業の人数はどうなっているか。その差が増えて きているのです。例えば、ある年が4年前に100人入って、4年後に卒業したのが80人だ とすると、次は70人、60人になる。そこは中退に限らず、留年もいる。6年制の学部、 医学部などが増えていれば、そうなりますが、学部構成として医学部がそんなに増えてい るということはない。6年制が増えていることはないから、少なくとも留年か、中退は傾 向的には増えているという数字になっている。学校基本調査によるデータであると思いま す。 ○玄田委員 そうですか。 ○上村職業能力開発局長 全部中退とは言えないと思いますが。微妙みたいですね。全日 制をやめて、定時制にそのまま移行すると、たぶん取り扱い上は中退にならないとか。先 程、鈴木委員が言われたことの方が問題かもしれないという気がします。大学を出ても無 業者が2割という。雇用情勢が厳しかったこともあるのですが。 ○今野分科会長 それでは、いずれにしてもその点については確認していただきます。ほ かにありますでしょうか。よろしければ今日初めて、私たちは文書をいただいて、読み上 げられて、目で追って疲れました。今日は持ち帰って、もう一度改めて読んでいただいて から議論していただくのがいいかと思います。 ○石坂特別訓練対策室長 玄田委員からシングルファーザーの件についてお問合せがあり ました。資料が出なくて恐縮でしたが、今出ました。これは5年に1回児童家庭局でやっ ている母子家庭の調査結果がありまして、これを見ますと、平成15年の例ですが、母子世 帯になる前は、66.9%の方が就労しています。父子家庭については、98.4%の方が就労し ている。こういう実態になっていまして、特に問題なのは母子家庭の収入面でして、これ は平成14年度で見ますと、一般世帯の平均所得が100に対しまして、平成14年では36.0 という結果になっています。そういう観点から19頁の記述に対しましては、母子家庭につ いて自立ができるような対策をやっていきたいということで、こういう記述をさせていた だいています。 ○玄田委員 その辺りについては私も良く分かっているつもりです。喫緊の課題としては、 シングルマザーが大きいと思いますが、シングルファーザーも家庭的な制約によって、キ ャリア形成等に非常に不都合があるのだとすれば、当然それも含めて考えることが必要で す。母だから問題なのではなくて、家庭環境が非常にワークライフバランスから遠いから こそというのが、どこかで一文あった方がいいと思う。なぜ母親ばかりなのかという声が どこかで聞こえてきそうな気がしませんか。実態についてはよくわかりました。 ○今野分科会長 それでは、今日はこれで終了といたします。今日、一応原案を出してい ただきましたので、副題は皆さんまた考えてきてください。今日の議事録の署名ですが、 労働者側委員は大江委員に、使用者側委員は草浦委員にお願いいたします。最後に事務局 から次回の日程についてお願いします。 ○杉浦総務課長 次回は3月17日金曜日の17時から開催することにしています。場所は この建物の5階共用第7会議室です。議題は引き続き、第8次職業能力開発基本計画とさ せていただきます。よろしくお願いします。 ○今野分科会長 それでは、今日はこれで終わります。ありがとうございました。 【照会先】厚生労働省職業能力開発局 総務課 企画係 (内5313)