平成18年3月31日
本件照会先
厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 保育課
課長 尾ア春樹
(担当:八神、永瀬、岡本)
電話 03-5253-1111 (内線 7925)
  (直通 03-3595-2542 )
文部科学省 初等中等教育局 幼児教育課
課長 蒲原(かもはら)基道
(担当:豊岡、矢澤、大杉)
電話 03-5253-4111 (内線3290)
  (直通 03-6734-2373 )


総合施設モデル事業評価委員会による「最終まとめ」について


 厚生労働省及び文部科学省では、「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」の平成18年度からの本格実施に向けて、総合施設に係る教育・保育内容や職員配置、施設設備の在り方などについて検討するため、昨年4月から総合施設モデル事業を実施してきたところです。
 昨年10月からは、学識経験者や有識者等による「総合施設モデル事業評価委員会」において、同モデル事業の実施状況等の評価・検証が進められておりましたが、これまでの検討を踏まえ、このたび、別添のとおり、「最終まとめ」がとりまとめられました。

(参考)
 総合施設モデル事業評価委員会委員(五十音順 敬称略)
小笠原 文孝  (よいこのもり第2保育園園長)
北條 泰雅  (学校法人みなと幼稚園理事長)
増田 まゆみ  (目白大学教授)
 ◎無藤  隆   (白梅学園大学長)
森上 史朗  (子どもと保育総合研究所代表)
吉田 正幸  (有限会社遊育代表取締役)
(注)◎は委員長

 総合施設モデル事業評価委員会の開催状況
 第1回 平成17年10月4日 第2回 10月24日 第3回 11月8日
 第4回 平成18年1月31日 第5回 2月20日



総合施設モデル事業の評価について(最終まとめ)

平成18年3月31日
総合施設モデル事業評価委員会

 「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設」については、中央教育審議会幼児教育部会と社会保障審議会児童部会の合同の検討会議において、平成16年12月にその基本的な在り方について審議のまとめ(以下「合同検討会議の審議のまとめ」という。)を行い、昨年4月からモデル事業を実施しているところである。
 本委員会においては、この総合施設の平成18年度からの本格実施に向けて、全国35か所で実施しているモデル事業について、その職員配置、施設設備等の状況を書面調査、実地調査等によって検証し、その評価を通じて、総合施設の在り方についての考えを以下のとおり整理した。


 総論

 総合施設については、乳幼児期が人間形成の基礎を培う重要な時期であることを踏まえ、合同検討会議の審議のまとめにおいて提言されたとおり、小学校就学前の子どもの育ちを一貫して支える観点から、子どもの視点に立ち、「子どもの最善の利益」を第一に考え、次代を担う子どもが人間として心豊かにたくましく生きる力を身に付けるための施設であるべきである。
 また、仕事と子育ての両立支援や働き方の見直しなど社会全体で子どもの育ちや子育てを支援する次世代育成支援の観点から、保護者や地域の子育て力を高めるために各種の支援を行う施設であるべきである。
 こうした理念を踏まえれば、総合施設は、親の就労の有無・形態等で区別することなく、就学前の子どもに適切な教育・保育の機会を提供する機能とともに、すべての子育て家庭に対する支援を行う機能を備えるものである。

 また、合同検討会議の審議のまとめにおいて提言されたとおり、総合施設は、こうした機能を備えたサービス提供の枠組みであり、積極的に施設の新設を意図するものではない。

 現在、モデル事業は以下の4類型で実施されている。
(1)幼保連携型(幼稚園と保育所が連携し一体的な運営を行うことで総合施設としての機能を果たすタイプ)
(2)幼稚園型(幼稚園が機能を拡充させることで総合施設としての機能を果たすタイプ)
(3)保育所型(保育所が機能を拡充させることで総合施設としての機能を果たすタイプ)
(4)地方裁量型(幼稚園・保育所のいずれの認可もないが、地域の教育・保育施設が総合施設としての機能を果たすタイプ)

 総合施設については、こうした多様な類型の施設があり得るので、地域の実情に応じて住民が選択して利用ができる施設となることが期待されるが、いずれの類型をとった場合でも子どもの健やかな育ちを中心におき、総合施設に求められる機能の質を確保する必要がある。
 このため、以下のような評価を踏まえつつ、地域の実情に応じた適切・柔軟な対応が可能となるよう、一定の指針を策定することが必要である。


 職員配置について

 0〜2歳児については、保育所と同様に8時間程度利用する子どもが典型的な利用者と考えられるところである。
 モデル事業実施施設からは、「保育所と同様の職員配置を現に行っている」、あるいは「こうした配置が本来望ましい」との回答がほぼすべてのモデル事業実施施設から得られている。これを踏まえれば、保育所と同様の職員配置とすることが望ましい。

 3〜5歳児については、0〜2歳児の場合とは異なり、幼稚園と同様に4時間程度利用する子どもと保育所と同様に8時間程度利用する子どもが同時に存在する。モデル事業実施施設では、長時間利用する子どもが多い施設においては保育所と同程度の手厚い配置が行われる傾向が見られた。
 また、すべてのモデル事業実施施設において学級が編制されているところである。子どもの発達段階上、3〜5歳児の場合は、子ども同士の集団による生活が中心となることを踏まえれば、総合施設における3〜5歳児の4時間程度の共通の時間については、学級を単位とし、学級ごとに職員を確保することが適当であるが、8時間程度利用する子どもの中には登降園時刻が異なることも想定されるので個別の対応も必要である。


 職員資格について

 0〜2歳児については、幼稚園にとっては、その受入れがほぼ未経験の分野であり、多くのモデル事業実施施設においても保育士資格を有する者が配置されている。
 こうした状況を踏まえれば、0〜2歳児については、保育士資格を有する者が従事することが望ましい。

 3〜5歳児については、モデル事業実施施設においては、教育・保育を担当する職員の7割が幼稚園教諭免許と保育士資格を併有している。特に学級担任は両資格の併有者がほとんどであるが、保育所型の施設を中心に保育士資格のみを有する者を充てている施設もある。一方、幼稚園教諭免許のみを有する者が長時間保育に従事している施設もある。
 こうした状況を踏まえると、3〜5歳児については、両資格を併有することがより望ましいことはもちろんであるが、常に両資格の併有を義務付けるのではなく、学級担任には幼稚園教諭免許を求め、8時間程度利用する子どもの保育を担当する者には保育士資格を求めることを原則としつつ、他方の資格のみを有する者を排除することのないよう配慮することが望ましい。

 モデル事業実施施設においては多様な機能を有する総合施設の一体的な運営に取り組んでいる例が多かった。総合施設の長については、教育・保育及び子育て支援について、一つの園として多様な機能を一体的に発揮させる能力を有することが求められる。


 施設設備について

 ほとんどのモデル事業実施施設では施設設備が一体的に配置されているが、一部の連携型施設では幼稚園と保育所との間に距離があり、幼児の移動の安全などに配慮している。
 こうした状況を踏まえれば、総合施設の機能を十分に発揮するためには、すべての施設設備が一体的に設置されていることが望ましいが、例えば幼稚園と保育所との間に一定の距離がある場合などに幼保連携型の形態で総合施設となるためには、幼児の移動時の安全の確保などの配慮が必要である。

 園舎、保育室、運動場の広さについては、ほぼすべてのモデル事業実施施設が幼稚園・保育所のいずれの基準も満たしているところである。
 こうした状況を踏まえれば、基本的にはこれら双方の基準を満たすべきと考えられるが、既存施設が総合施設になることが困難とならないような対応が必要である。

 給食についてはすべてのモデル事業実施施設が実施しているが、乳幼児の食事についてきめ細やかな対応を図り、食育を推進する観点から、調理室についてはその設置が望ましい。
 しかしながら、既存施設が総合施設になる場合、調理室を整備することは困難な場合もある。こうしたことから、モデル事業実施施設の中には外部搬入方式により給食を実施している施設もあるが、一部の施設については子どもの年齢に応じた給食の提供等の面できめ細やかな対応が行われていない状況も懸念されており、子どもの育ちに悪影響がないよう、十分な配慮が望まれる。したがって仮に外部搬入方式をとることを認める場合でも、調理機能、栄養面、衛生面、個々の子どもの年齢・発達や健康状態に応じた対応等につき、一定の条件を付けることが必要と考えられる。

 運動場についても施設の同一敷地内にあるか隣接しており、専ら施設による利用が可能なものであることが望ましいが、モデル事業実施施設の中には、近隣の公園などを活用することで遊び場を確保している施設もある。
 こうした近隣の公園などを運動場とすることを認める場合でも、幼児が安全に利用できるかどうか、利用時間と場所を日常的に確保できるかどうかなど、運動場としての機能を果たし得るかどうかという観点から一定の条件を付けることが必要と考えられる。


 教育・保育の内容について

 利用時間の相違や幼稚園児・保育所児の別にかかわらず一貫した教育・保育に関する計画等が必要であると考えられ、多くのモデル事業実施施設においても、こうした計画等の作成や統一的な運用、教育・保育内容の充実に向けた取組みやその改善への努力がなされている。
 具体的には、多くの施設で幼稚園教育要領及び保育所保育指針を踏まえながら、総合施設に固有の事情に配慮した対応を工夫している。
 例えば幼保連携型では、低年齢児を対象とする保育所から3〜5歳児を対象とする幼稚園への円滑な接続について配慮したり、また、3〜5歳の幼稚園児と3〜5歳の保育所児の混合のクラス編制を行ったり、職員間の意思疎通を円滑にするための会議や研修を開催するなど、一体性を確保するための工夫がなされている。
 幼稚園型では、低年齢児への対応や、0歳から5歳までの発達の連続性を踏まえた保育の実施について工夫している。
 保育所型では、短時間利用児を受け入れることに伴い、集団生活の経験の差、短時間児への保育内容、降園時間の違いなどの課題について工夫している。
 また、保護者との連携や小学校教育との接続に工夫している施設も見受けられる。
 こうした状況を踏まえれば、総合施設における教育・保育の内容については、以下のとおり、幼稚園教育要領及び保育所保育指針を踏まえながら、子どもの1日の生活のリズムや集団生活の経験年数が異なることなどの総合施設に固有の事情も盛り込んだものとしていくことが適当である。

 (1)総合施設における教育・保育の基本・目標

 総合施設における活動は、0歳から就学前までのすべての子どもを対象とし、一人一人の子どもの発達の過程に即した援助の一貫性や生活の連続性を重視しつつ、3〜5歳児についての学校教育法所定の教育の目標の達成と、家庭において養育されることが困難な子ども等に対する保育の機会の提供という双方の機能が一体となって展開していくべきである。

 したがって、いずれの施設においても、以下のような幼稚園教育要領と保育所保育指針の目標が達成されるよう教育・保育を提供する必要がある。
(1) 十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を適切に満たし、生命の保持及び情緒の安定を図る。
(2) 健康、安全で幸福な生活のための基本的な生活習慣や態度を育て、健全な心身の基礎を培う。
(3) 人とのかかわりの中で、人に対する愛情と信頼感、そして人権を大切にする心を育てるとともに、自立と協同の態度及び道徳性の芽生えを培う。
(4) 自然などの身近な事象への興味や関心を育て、それらに対する豊かな心情や思考力の芽生えを培う。
(5) 日常生活の中で、言葉への興味や関心を育て、喜んで話したり、聞いたりする態度や豊かな言葉の感覚を養う。
(6) 多様な体験を通して豊かな感性を育て、創造性を豊かにする。

 この教育・保育の目標を達成するためには、子どもの発達等に応じ、より具体化したねらい及び内容を定め、子どもの主体的な活動を促し乳幼児期にふさわしい生活が展開されるように環境を構成し、子どもが発達に必要な体験を得られるようにする必要がある。

 (2)総合施設に固有の事情として配慮すべき内容

 (1)に掲げた総合施設における教育・保育の基本・目標に加え、総合施設に固有の事情として配慮すべき内容としては、次に掲げるものなどが考えられる。
(1) 施設の利用開始年齢の違いにより集団生活の経験年数が異なる子どもがいることに配慮するなど、0歳から就学前までの一貫した教育・保育について子どもの発達の連続性を考慮して展開していくこと。
(2) 子どもの1日の生活の連続性及び生活リズムの多様性に配慮し、また、保護者の就労状況等の生活スタイルを反映した子どもの利用時間の長短の違いや、登園日数の違いを踏まえ、一人一人に応じた教育・保育の内容について工夫を行うこと。
(3) 3〜5歳児の4時間程度の共通の時間においては、幼児期の特性を生かした環境を通して行う教育活動の充実を図ること。
(4) 地域の子育て支援について、親(保護者)や地域の子育て力を高める観点に立って実施すること。

 (3)総合施設における教育・保育の計画等及び指導計画

 教育及び保育について、(2)に掲げた総合施設に固有の事情として配慮すべき内容を踏まえつつ、園として目指すべき目標・理念や運営の方針を明確にする必要がある。また、総合施設としての一体的運用の観点を踏まえた教育課程と保育計画の両方の性格を合わせもつような教育・保育の全体的な計画を編成するとともに、年間指導計画、月・週の指導計画、日々の指導計画等を作成し、教育・保育を適切に展開する必要がある。

 利用時間の短い子どもや長い子どもがいることから、指導計画の作成に当たっては、1日の生活時間の流れに配慮し、活動と休息、緊張感と解放感などの調和を図る必要がある。

 3〜5歳児の共通の時間における教育・保育内容については、幼稚園教育要領・保育所保育指針に基づき実施し、指導計画に定めたねらいや内容を達成する必要がある。

 異年齢児とかかわる機会が減少していることを踏まえ、3〜5歳児については、同一学年の幼児等での学級を単位とする集団活動とともに、低年齢児を含めた異年齢児による活動を施設それぞれの工夫で、発達の違いも配慮しつつ適切に組み合わせていくことが望ましい。

 受験などを目的とした単なる知識の早期獲得や、特別な技能の早期獲得のみを目指すような、いわゆる早期教育となることのないように配慮する必要がある。

 (4)環境の構成

 園舎、保育室、園庭、遊具、教材等の環境の構成に当たっては、幼稚園にとって未経験の分野である低年齢児を含め就学前までのさまざまな年齢の子どもが利用することから、発達の連続性の観点を踏まえ、心身の機能が未熟である低年齢児の場合には特に健康、安全や発達の確保を十分に図るとともに、3〜5歳児の場合には集団による活動の充実や、異年齢による交流等を図れるよう工夫する必要がある。

 利用時間が異なる多様な子どもが在園することから、生活の連続性の観点を踏まえ、園での生活が安定するよう1日の生活のリズムを整えることが大切であり、特に低年齢児については睡眠時間などの個人差に配慮し、また3〜5歳児については、集中して遊ぶ場と家庭的な雰囲気の中でくつろぐ場とが適切に調和するなど工夫することが必要である。

 3〜5歳児の共通の時間については、子ども一人一人の行動の理解と予測に基づき計画的に環境を構成するとともに、集団とのかかわりの中で、自己を発揮し、子ども同士の学びあいが深まり広がるように保育者のかかわりを工夫する必要がある。

 保育者が子どもにとって重要な環境となっていることを念頭に置き、子どもと保育者の信頼関係を十分に築き、子どもとともによりよい教育・保育環境を創造していく必要がある。

 (5)日々の教育・保育活動における留意点

 0歳児から就学前までの子どもの発達の連続性について十分理解した上で、生活や遊びを通して総合的な指導を行う必要がある。さらに、子どもの発達は個人差が大きいことや施設の利用開始年齢の違いなどによる集団生活の経験の差、家庭環境等を踏まえ、一人一人の子どもの発達の特性や課題に十分留意する必要がある。特に低年齢児は、大人への依存度が極めて高いなどの特性があることから個別的な対応を図る必要がある。また子どもの集団生活への円滑な接続については、家庭との連携協力を図るなど十分留意する必要がある。

 1日の生活リズムや利用時間が異なる子どもが一つの施設で過ごすことを踏まえ、子どもに不安や動揺を与えないようにするなどの配慮が必要である。

 3〜5歳児の4時間程度の共通の時間における教育・保育内容について、同年代の子どもとの集団生活の中で遊びを中心とする子どもの主体的な活動を通して発達を促す経験が得られるように、環境の構成や保育者の指導などを工夫する必要がある。

 乳幼児期の食事は、子どもの健やかな発育・発達に欠かせない重要なものであることから、食事に関する生活習慣の獲得を促すとともに、子ども一人一人の状態に応じた摂取法や摂取量のほか、食物アレルギーなどへの適切な対応に配慮し、また、楽しく食べる経験等を通して食を営む力の基礎を培う食育の取り組みを行う必要がある。
 加えて、利用時間の違いにより食事をとる子どもととらない子どもが存在することにも配慮することが必要である。

 午睡は生活リズムを構成する重要な要素であり、安心して眠ることのできる環境を確保するとともに、利用時間に違いがあることや、睡眠時間は発達や個人によって差があることから、一律とならないよう配慮する必要がある。

 健康や発達、家庭等の状況から特別に配慮を要する子どもについて、一人一人の状況を的確に把握し、専門機関との連携を図ることも含め、適切な環境の下で健やかな発達が図られるよう留意する必要がある。

 子どもの健全な心身の発達を図るためには、日々の子どもの状況を的確に把握するとともに、家庭と園とで日常の子どもの様子を適切に伝え合い、十分な説明に努めるなど、日常的な連携を図る必要がある。その際、職員間の連絡・協力体制を築き、家庭からの信頼を得られるようにすることが重要である。
 また、教育・保育活動に対する保護者の積極的な参加は、保護者の子育て力の向上に寄与するだけでなく、地域社会における家庭・地域住民の子育て力の向上にもつながり、子育て経験の継承につながるので、総合施設としても保護者の積極的な参加を促すようにすることが必要である。
 その際、保護者の生活スタイルが異なることを踏まえ、すべての保護者の相互理解が深まるように配慮することが必要である。

 (6)小学校教育との連携

 子どもの発達や学びの連続性を確保する観点から、小学校教育への円滑な接続に向けた教育・保育内容の工夫を図り、連携・接続を通じた質の向上を図る必要がある。

 地域の小学校等との交流活動や小学校教員等との合同研修などを通じた園児・児童及び職員同士の交流を積極的に進めるとともに、利用時間の長短にかかわらずすべての幼児について指導要録の抄本・写しなど子どもの育ちを支えるための資料の送付により連携するなど、教育委員会・小学校等との積極的な情報の共有と相互理解を深め、就学前の教育・保育から小学校教育への円滑な接続を図る必要がある。

 (7)その他

 総合施設の教育・保育内容の指針については、幼稚園教育要領又は保育所保育指針が改訂された際には、その改訂内容を踏まえ、適宜見直しを行うことが必要である。


 保育者の資質向上等

 保育者の資質は、教育・保育の要であり、自ら資質向上に努めることが重要である。

 また、教育・保育の質の確保・向上を図るためには日々の指導計画の作成や教材準備、研修等が重要であり、これらに必要な時間の確保については、午睡の時間や休業日の活用、非常勤職員の配置など、施設ごとに様々な工夫をし努力しているが、教育・保育の内容の充実のために幼稚園教諭と保育士の相互理解に基づきさらに充実していくことが必要である。

 さらに総合施設においては教育・保育に加え、親の子育て力向上につながるような子育て支援等、多様な業務が展開されるため、施設長も含め、施設職員に対する園内外の研修の幅を広げることが望ましい。

 その際、園内外での適切な研修計画を作成・実施するとともに、幼稚園教諭と保育士の相互理解につながる内容とすることが求められる。
 また、園内外での研修の機会を確保できるよう、勤務体制の組み立てなどに配慮する必要がある。

 総合施設の長には、一つの園として多様な機能を一体的に発揮させる能力や地域の人材や資源を活用していくコーディネーターとしての能力が求められるので、そうした資質を向上させることが必要である。


 子育て支援について

 ほぼすべてのモデル事業実施施設が何らかの子育て支援を実施している が、その利用者からは「親子とも友だちをつくることができた」「職員への相談や、母親同士の会話を通じて子育ての悩みが解消された」など肯定的な評価が極めて多い。
 このように、園児のみならず、在宅の子育て家庭を含めたすべての子育て家庭に対する支援の充実が求められており、子育て支援は、地域の様々な人々の参加も得つつ、総合施設が自ら取り組むべき必須の機能とすべきである。
 この際、合同検討会議の審議のまとめにおいて提言されたとおり、親(保護者)の育児をただ単に肩代わりするのではなく、教育・保育の専門性を十分に活用し、子育て相談や親子の集いの場など、親への支援を通して親自身の子育て力の向上を積極的に支援することが必要である。
 また、子育て世帯からの相談を待つだけでなく、園の方から地域の子育て世帯に働きかけていくような取組みも有意義である。

 モデル事業実施施設における子育て支援については、各施設で開催日数などにばらつきがあるが、例えば子育て相談や親子の集う場を週3日以上開設するなど、保護者が利用したいと思ったときに利用可能な体制の確保が必要である。
 その際、教育・保育に従事する職員が研修等により子育て支援に必要な能力を涵養し、その専門性と資質を向上させていくことが望まれるが、地域の子育てボランティア、子育て支援NPOや専門機関等と連携するなど、さまざまな地域の人材、社会資源を活かしていくことが期待される。


 管理運営等について

 総合施設は多様な機能を一体的に提供するため、1人の総合施設の長を置き、すべての職員の協力を得ながら一体的な管理運営を行うことが必要である。
 この場合、幼保連携型については、幼稚園や保育所の施設長とは別に総合施設の長を置く、あるいはこれらの施設長が総合施設の長を兼ねることが考えられる。

 総合施設では、自己評価・外部評価など子どもの視点に立った評価と改善を行い、その結果の公表を通じて教育・保育の質の向上に努めることが望ましい。

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