裁量労働制、管理監督者等の適用除外制度
【現状】

 裁量労働制
 1) 専門業務型裁量労働制は全企業の3.4%で活用されており、企画業務型裁量労働制は全企業の0.6%で活用されている。
専門業務型裁量労働制は全労働者の1.1%、企画業務型裁量労働制は全労働者の0.2%に適用されている。

 ※ 裁量労働制採用企業数割合、適用労働者数割合については前ページの表を参照


 2) 1日のみなし労働時間の平均は、専門業務型裁量労働制が8時間29分、企画業務型裁量労働制が8時間7分となっている。
実労働時間の平均は、専門業務型裁量労働制の事業場で平均的な者が9時間19分、企画業務型裁量労働制の事業場で平均的な者が9時間24分となっており、事業場で最長の者は専門業務型裁量労働制で12時間38分、企画業務型裁量労働制で12時間16分となっている。
年間実労働日数の平均は、専門業務型裁量労働制の事業場で平均的な者が240.7日、企画業務型裁量労働制の事業場で平均的な者が234.0日となっており、事業場で最多の者は専門業務型裁量労働制で254.2日、企画業務型裁量労働制で243.9日となっている。
平成17年12月31日現在、企画業務型裁量労働制は、1,730事業場に導入されており、40,734人の労働者に適用されている。

表
資料出所 : 厚生労働省「労働時間等総合実態調査結果」(平成17年度)


企画業務型裁量労働制の導入状況
企画業務型裁量労働制の導入状況のグラフ


 3) 裁量労働制を導入したきっかけは、専門業務型裁量労働制では「労働者の創造的能力を高め、発揮を促す」(79.7%)、「成果主義型人事労務管理の導入の一環」(61.4%)、「仕事と生活とのバランスを保ちやすくする」(22.1%)の順になっている。
企画業務型裁量労働制では「労働者の創造的能力を高め、発揮を促す」(89.5%)、「成果主義型人事労務管理の導入の一環」(86.0%)、「仕事と生活とのバランスを保ちやすくする」(42.0%)の順になっている。

裁量労働制を導入したきっかけ(導入事業場)

裁量労働制を導入したきっかけ(導入事業場)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 4) 専門業務型裁量労働制について、「自らの能力の有効発揮に役立つと思った」、「仕事の裁量が与えられることにより仕事がやりやすくなると思った」という点について、「概ね期待どおり」、「一部期待どおり」とする労働者が多くみられる。

専門業務型裁量労働制に対する評価(適用労働者)

専門業務型裁量労働制に対する評価(適用労働者)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 5) 企画業務型裁量労働制について、「自らの能力の有効発揮に役立つと思った」、「仕事の裁量が与えられることにより仕事がやりやすくなると思った」という点について、「概ね期待どおり」、「一部期待どおり」とする労働者が多くみられる。

企画業務型裁量労働制に対する評価(適用労働者)

企画業務型裁量労働制に対する評価(適用労働者)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 6) 専門業務型裁量労働制について「大いに不満」、「一部不満がある」労働者は、4割弱となっている。その不満の内容としては、「業務量が過大」、「労働時間(在社時間)が長い」が多くなっている。

専門業務型裁量労働制の適用を受けていることに満足か

専門業務型裁量労働制の適用を受けていることに満足かのグラフ
専門業務型裁量労働制の不満な点

専門業務型裁量労働制の不満な点のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 7) 企画業務型裁量労働制について「大いに不満」、「一部不満がある」労働者は、2割強となっている。その不満の内容としては、「業務量が過大」、「労働時間(在社時間)が長い」が多くなっている。

企画業務型裁量労働制の適用について不満な点(適用労働者)

企画業務型裁量労働制の適用を受けていることに満足か

企画業務型裁量労働制の適用を受けていることに満足かのグラフ
企画業務型裁量労働制の不満な点

企画業務型裁量労働制の不満な点のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 8) 裁量労働制適用労働者に「一律の出退勤時刻がある」または「決められた時間帯にいれば出退勤時刻は自由」とする事業場が一定割合みられる。その場合に遅刻したときの対応としては「注意をする」といったものが最も多いが、「賃金をカットする」、「勤務評定に反映する」事業場もみられる。

裁量労働制適用労働者に対する出退勤時刻の設定の有無(導入事業場)

出勤・退勤時刻を適用するとの定めがあるのか

出勤・退勤時刻を適用するとの定めがあるのか

出勤・退勤時刻を適用するとの定めがあるのかのグラフ
遅刻したときの対応

遅刻したときの対応のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 9) 裁量労働制適用労働者に対する上司の業務の指示については、「業務の目的、目標や期限等基本的事項についてのみ指示がある」とする割合が最も多い。

上司の業務の指示の方法(適用労働者)

上司の業務の指示の方法(適用労働者)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 10) 裁量労働制適用労働者に対する健康・福祉確保措置として実施することとなっているものとしては、専門業務型裁量労働制では「産業医等による助言・指導又は保健指導を受けさせる」(67.7%)、「休日労働が行われた時に代償休日を付与する」(61.9%)、「心とからだの健康相談窓口を設置する」(56.2%)の順になっている。
企画業務型裁量労働制では「産業医等による助言・指導又は保健指導を受けさせる」(84.9%)、「心とからだの健康相談窓口を設置する」(77.9%)、「一定時間数以上の勤務や休日労働が行われた時に健康診断を実施する」(69.8%)の順になっている。

健康・福祉確保措置として実施することとなっているもの(M.A)(導入事業場)

健康・福祉確保措置として実施することとなっているもの(M.A)(導入事業場)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 11) 実際に健康・福祉確保措置として実施されたものをみると、専門業務型裁量労働制では「休日労働が行われた時に代償休日を付与する」(24.0%)、「心とからだの健康相談窓口を設置する」(18.6%)、「産業医等による助言・指導又は保健指導を受けさせる」(18.6%)の順になっている。
また、企画業務型裁量労働制では「心とからだの健康相談窓口を設置する」(38.8%)、「年次有給休暇の連続取得を含む取得促進措置を講じる」(36.9%)、「産業医等による助言・指導又は保健指導を受けさせる」(36.1%)の順になっている。

健康・福祉確保措置として実際に実施したもの(M.A)(導入事業場)

健康・福祉確保措置として実際に実施したもの(M.A)(導入事業場)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 12) 専門業務型裁量労働制適用労働者の81.5%、企画業務型裁量労働制適用労働者の75.4%は健康・福祉確保措置に要望があるとしている。
その具体的な要望としては、専門業務型裁量労働制では「休日・休暇を組み合わせた連続休暇制度の挿入」(37.1%)、「年次有給休暇の連続取得を含む取得促進措置」(34.9%)、「一定時間以上の勤務が行われた場合の特別休暇付与」(31.2%)の順になっている。
企画業務型裁量労働制では「年次有給休暇の連続取得を含む取得促進措置」(31.5%)、「休日・休暇を組み合わせた連続休暇制度の導入」(29.2%)、「定期的な特別休暇の付与」(22.5%)、「一定時間以上の勤務が行われた場合の特別休暇付与」(22.5%)の順になっている。

健康・福祉確保措置についての要望(M.A)(適用労働者)

健康・福祉確保措置についての要望(M.A)(適用労働者)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 13) 裁量労働制適用労働者に対する苦情処理措置については、専門業務型裁量労働制では「人事担当部署等に独自の相談窓口を設置」(52.1%)、企画業務型裁量労働制では「労働組合に相談窓口を設置」(43.9%)というものが最も多いが、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制ともに実際に苦情があった事業場は少ない。

裁量労働制適用労働者に対する苦情処理措置の実施状況(導入事業場)

苦情処理の内容(M.A)

苦情処理の内容(M.A)のグラフ


苦情の有無

苦情の有無のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 14) 苦情処理体制や対応について、専門業務型裁量労働制適用労働者では35.7%、企画業務型裁量労働制適用労働者では21.6%が「不十分」もしくは「やや不十分」としている。具体的には、「どこの誰に相談すればいいのか明確ではない」というものが最も多い。

苦情に対する会社の対応について(適用労働者)

苦情処理体制や対応
苦情処理体制や対応のグラフ
具体的にどの点が不十分か
具体的にどの点が不十分かのグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 15) 専門業務型裁量労働制導入事業場において、専門業務型裁量労働制の対象業務の範囲については、「現行制度でよい」が57.1%と、「狭すぎる」というものよりも割合が高くなっている。
企画業務型裁量労働制導入事業場において、企画業務型裁量労働制の対象業務の範囲については、「狭すぎる」が67.9%と、「現行制度でよい」というものよりも割合が高くなっている。
専門業務型、企画業務型裁量労働制の導入事業場ともに、対象業務の範囲が狭すぎると回答した場合に、具体的にどうすべきかについては、「専門業務型か企画業務型かにかかわりなく対象業務の範囲は労使にゆだねるべき」が一番高い割合になっている。

専門業務型裁量労働制の対象業務の範囲について(導入事業場)

専門業務型裁量労働制の対象業務の範囲について(導入事業場)のグラフ 専門業務型裁量労働制の対象業務の範囲について(導入事業場)のグラ


企画業務型裁量労働制の対象業務の範囲について(導入事業場)

企画業務型裁量労働制の対象業務の範囲について(導入事業場)のグラフ 企画業務型裁量労働制の対象業務の範囲について(導入事業場)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 16) 労働者は、専門業務型裁量労働制の範囲については「現行制度でよい」と考えている者の割合が高い。対象業務が狭すぎると考える場合、「具体的な指示をすることが困難なものかどうかで判断すべき」、「専門業務型か企画業務型かにかかわりなく対象業務の範囲は労使にゆだねるべき」とする者が多い。また、対象業務が広すぎると考える場合、「一定以上の年収を要件とすべき」、「特別の処遇、雇用管理を要件とすべき」とする者が多い。

専門業務型裁量労働制の対象業務の範囲(労働者)

専門業務型裁量労働制の対象業務の範囲(労働者)のグラフ
狭すぎると考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)

狭すぎると考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)のグラフ
広すぎると考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)

広すぎると考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 17) 労働者は、企画業務型裁量労働制の範囲については「現行制度でよい」と考えている者の割合が高い。対象業務が狭すぎると考える場合、「専門業務型か企画業務型かにかかわりなく対象業務の範囲は労使にゆだねるべき」とする者が最も多い。
対象業務が広すぎると考える場合、「一定以上の年収を要件とすべき」、「特別の処遇、雇用管理を要件とすべき」、「コンピテンシーなどの職務遂行能力を要件とすべき」とする者が多い。

企画業務型裁量労働制の対象業務の範囲(労働者)

企画業務型裁量労働制の対象業務の範囲(労働者)のグラフ
狭すぎると考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)

狭すぎると考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)のグラフ
広すぎると考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)

広すぎると考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 18) 法的効果について、専門業務型裁量労働制のみを導入している事業場では「現行制度でよい」が52.9%であるが、企画業務型裁量労働制のみを導入している事業場では「変更すべき」が78.9%となっている。また、専門・企画業務型裁量労働制の両方を導入している事業場では「変更すべき」が66.9%となっている。
「変更すべき」とした場合、「1日ではなく、1週や1月のみなし労働時間を認めるべき」や「現在のみなし労働時間制に代えて、一定以上の高い水準の年収が確保されるならば労働時間に関する規制を適用除外すべき」をはじめ、労働時間に関する各種の規制を適用除外すべきといったものが多く見られる。

法的効果について(導入事業場)

法的効果について(導入事業場)のグラフ


変更すべきと考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)

変更すべきと考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 19) 法的効果について、労働者は「現行制度でよい」と考えている者が多いが、「変更してもよい」と考えている者もある程度見られる。
変更してもよいと考える場合、「1日ではなく1週や1月のみなし労働時間を認めてもよい」や「一定日数の休日・休暇が確保されるならば労働時間に関する規制を適用除外してもよい」をはじめ、労働時間に関する各種の規制を適用除外してもよいといったものが多く見られる。

法的効果について(労働者)

法的効果について(労働者)のグラフ

変更してもよいと考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)

変更してもよいと考える場合、具体的にどうすべきか(M.A)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


 20) 裁量労働制についての労働基準監督署における指導例

   ・ 専門業務型裁量労働制に係る労使協定及び企画業務型裁量労働制に係る労使委員会の決議の有効期間が経過した後においても、裁量労働制の運用を継続していたことから、適切な手続を行った上で裁量労働制を行うよう指導した例

   ・ 企画業務型裁量労働制について、総務部の労働者をその対象としているが、運用状況を見ると会計経理業務のみを行う者が含まれていることから、対象者の労働実態を確認し、法第38条の4に基づき対象者範囲について検討を行うよう指導した例


 管理監督者等の適用除外制度
 1) 現行の管理監督者の職位については、課長クラスを管理監督者として扱っている事業場が6割(63.5%)を超えている

管理監督者の職位(裁量労働制導入事業場)

管理監督者の職位(裁量労働制導入事業場)のグラフ
資料出所 : 厚生労働省「裁量労働制の施行状況等に関する調査」(平成17年)


(参考)職階別労働者数(企業規模:100人以上)(平成16年)

(参考)職階別労働者数(企業規模:100人以上)(平成16年)の表
資料出所 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」

1) 全労働者は部長、課長、係長、非職階の合計である。
2) 「部長」とは、事業所で通常「部長」又は「局長」と呼ばれている者であって、その組織が2課以上からなり、又は、その構成員が20人以上(部(局)長を含む。)のものの長をいう。同一事業所において、部長のほかに、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容及び責任の程度が「部長」に相当する者がいる場合には、これらの者は、「部長」に含む。ただし、通常「部長代理」、「課長」、「係長」等と呼ばれている者は、「部長」としない。取締役、理事等であっても、一定の仕事に従事し、一般の職員と同じような給与を受けている者であって、かつ、部(局)長を兼ねている場合には、「部長」に含め、部(局)長を兼ねていない場合には「部長」としない。
3) 「課長」とは、事業所で通常「課長」と呼ばれている者であって、その組織が2係以上からなり、又は、その構成員が10人以上(課長を含む。)のものの長をいう。同一事業所において、課長のほかに、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容及び責任の程度が「課長」に相当する者がいる場合には、これらの者は、「課長」に含む。ただし、通常「課長代理」、「係長」等と呼ばれている者は「課長」としない。
4) 「係長」とは、構成員の人数にかかわらず通常「係長」と呼ばれている者をいう。同一事業所において、係長のほかに、呼称、構成員に関係なく、その職務の内容及び責任の程度が「係長」に相当する者がいる場合には、これらの者は、「係長」に含む。鉱業、建設業、製造業において「係長」と呼ばれている者であって、その職務の内容及び責任の程度から、「職長」に該当するものとみられる者は、「係長」としない。
5) 非職階とは、職階(部長、課長、係長、職長など)者以外の者をいう。
6) 年間給与合計はきまって支給する現金給与額を12倍し、年間賞与その他特別給与額を加えたものである。


 2) 管理監督者とされている者に、いわゆる「ライン管理職」か「スタッフ職」のいずれに該当するかを尋ねたところ、53.0%が「スタッフ管理職」であった。

表
資料出所 : 日本労務研究会「管理監督者の実態に関する調査研究報告書」(平成17年)


 3) 管理監督者についての労働基準監督署における指導例

  ・ 一定以上の職制について、一律に法第41条第2号に該当する管理監督者として取り扱っているが、該当者が事業場の労働者の約70%を占める状況にあったことから、これら職制毎にその労働実態を確認し、同条の趣旨に鑑み検討を加えた上で改善するよう指導した例

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