第29回科学技術部会 資料3
平成18年3月8日


厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(案)について


 策定経緯及び概要
 厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(素案)

(参考資料)
 文部科学省の基本指針案
 実験動物の飼養保管基準素案



「厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(素案)」
の策定経緯及び概要

1. 策定経緯
(1) 動物の愛護及び管理に関する法律の改正
平成17年6月に一部改正法公布。
平成18年6月1日より施行。
実験動物に関しては、国際的に普及・定着している「3R(Refinement、Reduction、Replacement)の原則」が整備された。
第41条(動物を科学上の利用に供する場合の方法、事後措置等)
 動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供する場合には、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用すること、できる限りその利用に供される動物の数を少なくすること等により動物を適切に利用することに配慮するものとする。
 動物を科学上の利用に供する場合には、その利用に必要な限度において、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によつてしなければならない。
 動物が科学上の利用に供された後において回復の見込みのない状態に陥つている場合には、その科学上の利用に供した者は、直ちに、できる限り苦痛を与えない方法によつてその動物を処分しなければならない。
 環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、第二項の方法及び前項の措置に関しよるべき基準を定めることができる。

(2) 動物の愛護及び管理に関する法律の改正等に伴う関係省の動き
環境省
 「実験動物の飼養及び保管等に関する基準」(昭和55年総理府告示第6号)の改定について、中央環境審議会動物愛護部会実験動物小委員会において検討を行っているところ。
文部科学省
 科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会ライフサイエンス委員会動物実験指針検討作業部会において、適正な動物実験等のあり方について検討を行い、「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(案)」をとりまとめ、2月末までパブリック・コメントの募集を行ったところ。

(3) 厚生労働省における基本指針の策定
 文部科学省がとりまとめた「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(案)」は、文部科学省所管機関を適用の対象としていることから、文部科学省の基本指針を踏まえ、厚生労働省の関係機関においても適正な動物実験が実施されるよう、基本指針を策定するものである。


2. 厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(素案)の概要

目的
 科学的根拠に基づき且つ動物愛護に配慮した動物実験等が実施されるよう、動物実験等に携わる者が遵守すべき事項を定め、適正な動物実験等の実施の推進が図られることを目的とする。

適用範囲
  厚生労働省の施設等機関
厚生労働省所管の独立行政法人、公益法人、特別の法令に基づき設置された民間法人
厚生労働省が所管する事業を行う営利法人

実施機関の長の責務
  基本指針を踏まえた機関内規程の策定
 * 各機関が機関内規程を策定する際に参考となるガイドラインの検討について、文部科学省が日本学術会議に依頼しており、厚生労働省からも同様に依頼する予定。
動物実験委員会の設置
動物実験計画の承認
動物実験計画の履行結果の把握
教育訓練等の実施
基本指針及び機関内規程の適合性に関する自己点検及び評価
情報公開

動物実験責任者の責務
  動物実験計画の策定
実施機関の長への動物実験計画の履行結果の報告

動物実験委員会の役割等
  動物実験計画の審査、動物実験計画の履行結果に対する助言

動物実験等の実施上の配慮
  代替法の利用
利用動物数の削減
苦痛の軽減
人、動物、環境への影響に対する安全管理措置
適切に維持管理された施設及び設備における実験等の実施
実験動物の適切な飼養及び保管


3. 今後の予定
  3月中・下旬〜4月中・下旬 パブリック・コメントの募集
その後、科学技術部会において、パブリック・コメントを踏まえた見直し案の検討。
6月1日 施行予定



厚生労働省における動物実験等の実施に関する基本指針(素案)

前文
   生命科学の探究、人及び動物の健康安全並びに環境保全などの課題解決にあたって、動物実験等が必要かつ唯一の手段である場合があり、動物実験等により得られる成果は、人及び動物の健康の保持増進等に多大な貢献をもたらしてきた。しかし、一方で動物実験等は、動物の生命又は身体の犠牲を強いる手段であり、動物実験等を実施する者はこのことを念頭におき、適正な動物実験等の実施に努めなければならない。
 また、平成17年6月に公布された、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号。以下「動物愛護管理法」という。)の一部を改正する法律(平成17年法律第68号)において、これまで規定されていた苦痛の軽減に加え、代替法の利用及び動物利用数の削減が盛り込まれ、わが国においても、国際的に普及・定着している動物実験及び実験動物の福祉の理念である「3R(Refinement、Reduction、Replacement)の原則」が整備されたことにより、より一層「3Rの原則」に配慮した動物実験等の実施が求められることとなった。
 このような状況を踏まえ、厚生労働省所管の機関等において、動物愛護の観点の他、科学的観点に基づく適正な動物実験等が実施されるよう、ここに指針を定めるものである。

第1  総則
 目的
 この指針は、人の健康の保持増進及び医学の進展等のために動物実験等が必要不可欠な手段であるものの、命ある動物を用いることを踏まえ、科学的根拠に基づき且つ動物愛護に配慮した動物実験等が実施されるよう、動物実験等に携わる者が遵守すべき事項を定め、適正な動物実験等の実施の推進が図られることを目的とする。

 適用範囲
 この指針は、動物実験等を行う厚生労働省の施設等機関並びに厚生労働省が所管する独立行政法人、公益法人及び特別の法令に基づき設置された民間法人その他厚生労働省が所管する事業を行う営利法人に適用する。

 用語の定義
(1) 動物実験等
 動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供することをいう。
(2) 実験動物
 動物実験等のため、施設で飼養し、又は保管している哺(ほ)乳類、鳥類及び爬(は)虫類に属する動物をいう。
(3) 実施機関
 動物実験等を実施する機関をいう。附属の研究所など、動物実験等の実施ついて一定の権限を有する組織もこれに該当する。
(4) 動物実験計画
 動物実験等を実施するために事前に立案する計画をいう。
(5) 動物実験実施者
 動物実験等を実施する者をいう。
(6) 動物実験責任者
 動物実験実施者のうち、個々の動物実験計画に係る業務を統括する者をいう。

第2  実施機関の長の責務
 機関内規程の策定
 実施機関の長は、動物愛護管理法、実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(平成18年環境省告示第○号。以下「飼養保管基準」という。)、この指針及びその他の動物実験等に係る関係法令等の規定を踏まえ、動物実験等に係る施設及び設備の整備並びに管理の方法、動物実験等の具体的な実施方法等を定めた規程(以下「機関内規程」という。)を策定すること。

 動物実験委員会の設置
 実施機関の長は、動物実験計画がこの指針及び機関内規程に適合しているか否かの審査を行う他、適正な動物実験等の実施を図るために必要な事項の検討を行わせるため、動物実験委員会を設置すること。

 動物実験計画の承認
 実施機関の長は、動物実験計画について、動物実験委員会の意見を聴いた上で、当該計画の承認又は不承認を決定すること。

 動物実験計画の履行結果の把握
 実施機関の長は、動物実験等の終了後、動物実験責任者から動物実験計画の履行結果について報告を受け、必要に応じ適正な動物実験等の実施のための改善措置を講ずること。

 教育訓練等の実施
 実施機関の長は、動物実験実施者その他実験動物の飼養及び保管など動物実験等に携わる者(以下「動物実験実施者等」という。)に対し、適正な動物実験等の実施並びに実験動物の適切な飼養及び保管を行うために必要な知識の修得を目的とした教育訓練の実施その他動物実験実施者等の資質の向上を図るために必要な措置を講じること。

 自己点検及び評価
 実施機関の長は、実施された動物実験等のこの指針及び機関内規程の適合性について、自ら点検及び評価を行うこと。

 動物実験等に関する情報の公開
 実施機関の長は、機関内規程や5の規定に基づく点検及び評価の結果などについて、適切な手段により公開すること。

第3  動物実験責任者の責務
 動物実験計画の策定
 動物実験責任者は、動物実験等の実施に当たって、あらかじめ動物実験計画を策定し、実施機関の長の承認を得ること。

 動物実験計画の履行結果の報告
 動物実験責任者は、動物実験等の終了後、実施機関の長に動物実験計画の履行結果について報告すること。

第4 動物実験委員会
 動物実験委員会の役割
 動物実験委員会は、実施機関の長の諮問を受けて、動物実験計画がこの指針及び機関内規程等に適合しているか審査を行い、審査結果を実施機関の長に報告すること。また、動物実験計画の履行結果について、実施機関の長より報告を受け、必要に応じ助言を行うこと。

 動物実験委員会の構成
 動物実験委員会は、実施機関の長が任命した動物実験等又は実験動物に関して優れた識見を有する者その他の学識経験を有する者により構成すること。なお、その構成は、動物実験委員会の役割にふさわしいものとなるよう配慮すること。

第5  動物実験等の実施上の配慮
 代替法の利用
 科学上の利用の目的を達することができる範囲において、実験動物を供しない方法が利用できる場合は当該方法によるなど、できる限り実験動物を供する方法に代わり得るものを利用すること。

 実験動物の選択
 実験等の成績の精度及び再現性等を考慮の上、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限りその利用に供される実験動物の数を少なくすること。また、実験等の目的に適した動物種、遺伝学的及び微生物学的品質、飼養条件を考慮すること。

 苦痛の軽減
 動物実験等は、飼養保管基準における苦痛の軽減に係る規定を踏まえ、できる限り実験動物に苦痛を与えない方法によること。

 安全管理
 物理的、化学的な材料、病原体又は遺伝子組換え生物等を用いる動物実験等の人や実験動物の安全及び健康、周辺環境並びに生態系に影響及ぼす可能性のある動物実験等を実施する場合は、これらの取扱いに係る関係法令等の規定の他、実施機関の施設及び設備の状況を踏まえ、公衆衛生、生活環境及び生態系保全上の支障を防止するために必要な措置並びに動物実験実施者等の安全確保を図るために必要な措置を講じること。また、飼育環境の汚染により実験動物が障害を受けることがないよう十分に配慮すること。

 施設及び設備
 適切に維持管理された施設及び設備において動物実験等を実施すること。

 実験動物の飼養及び保管
 実験動物の飼養及び保管は、飼養保管基準に従う他、飼育環境の微生物制御など科学的観点から実験等に必要な飼養及び保管方法を踏まえ適切に行うこと。

第6  準用
 地方公共団体の衛生に関する試験検査研究施設及び地方公共団体の設置する病院等において動物実験等を実施する場合は、この指針に準ずることが望ましいこと。

 この指針が適用される実施機関が、他省庁の定める動物実験等に関する指針であって、この指針と同等以上の基準を定めたものの適用を受け、当該他省庁の定める指針に従って動物実験等を実施している場合は、この指針に準じて実施されているものとみなすものとすること。

 この指針が適用される実施機関において、動物実験等を別の機関に委託する場合は、委託先においても、当該指針又は2に規定する他省庁の定める指針に基づき適正に動物実験等が実施されるようにすること。

 この指針が適用されない実施機関において、2に規定する他省庁の定める指針も適用されない場合であって、厚生労働省の所掌する事務に係る動物実験等を実施する場合はこの指針に準ずることが望ましいこと。

附則
 この指針は、平成18年○月○日から適用する。



参考資料1
文部科学省の基本指針案

 (本案によりパブリック・コメントを実施)


研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針(案)

前文
 地球上の生物の生命活動を科学的に理解することは、人類の福祉及び動物の愛護はもちろん、環境の保全と再生などの多くの課題の解決にとって極めて重要であり、動物実験等はそのために必要であり、やむを得ない手段である。
 このため、研究機関等においては、これまでも大学等における動物実験について(昭和62年5月文部省学術国際局長通知)等に基づき、動物実験委員会を設けるなどして、動物実験指針の整備及びその適正な運用に努めてきたところであるが、今後も生命科学の進展、医療技術等の開発等に資するため、動物実験等が実施されていくものと考えられる。
 一方、平成17年6月に動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律(平成17年法律第68号)が公布され、動物実験等に関する理念である「3R(Replacement(代替法の利用)、Reduction(必要最小数の数の利用)、Refinement(苦痛の軽減))」に関する規定のうち、代替法の利用及び必要最小数の数の利用に関する規定が新たに盛り込まれた。
 このような動物実験等を取り巻く環境の変化を受け、研究機関等においては、科学上の必要性のみならず、動物の愛護及び管理に関する法律(昭和48年法律第105号。以下「動物愛護法」という。)及び実験動物の飼養及び保管等に関する基準(昭和55年総理府告示第6号。以下「基準」という。)の規定も踏まえ、科学的観点と動物の愛護の観点を両立させつつ、動物実験等を適正に実施することがより一層重要となってきている。
 このような現状を踏まえ、動物実験等を適正に実施するために遵守すべき基本的事項を示す指針(以下「基本指針」という。)をここに定めることとした。これにより、各研究機関等における、適正な動物実験等の実施の推進を図ることとする。

第1  定義
 この指針において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
(1) 動物実験等 動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供することをいう。
(2) 実験動物 動物実験等のため、施設で飼養し、又は保管している哺(ほ)乳類、鳥類及び爬(は)虫類に属する動物をいう。
(3) 研究機関等 科学技術に関する試験、研究若しくは開発又は学術研究を行う機関であって、次の各号に掲げるものをいう。
(1) 大学
(2) 大学共同利用機関法人
(3) 高等専門学校
(4) 文部科学省の施設等機関
(5) 独立行政法人(文部科学省が所管するものに限る。)
(6) 民法(明治29年法律第89号)第34条の規定により設立された法人(文部科学省が所管するものに限る。)
(4) 研究機関等の長 次の各号に掲げる研究機関等の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める者をいう。
(1) 大学 学長
(2) 大学共同利用機関法人 機構長
(3) 高等専門学校 校長
(4) 文部科学省の施設等機関 所長
(5) 独立行政法人 理事長
(6) 民法第34条の規定により設立された法人 理事長
(5) 動物実験計画 動物実験等を実施するために事前に立案する計画をいう。
(6) 動物実験実施者 動物実験等を実施する者をいう。
(7) 動物実験責任者 動物実験実施者のうち、個々の動物実験計画に係る業務を統括する者をいう。

第2  研究機関等の長の責務
 研究機関等の長の責務
 研究機関等の長は、研究機関等における動物実験等の実施に関する最終的な責任を有し、動物実験委員会の設置、機関内規程(次項に規定するものをいう。)の策定その他動物実験等の適正な実施のために必要な措置を講じること。

 機関内規程の策定
 研究機関等の長は、動物愛護法、基準その他の動物実験等に関する法令(告示を含む。)の規定を踏まえ、動物実験施設の整備及び管理の方法並びに動物実験等の具体的な実施方法等を定めた規程(以下「機関内規程」という。)を策定すること。

 動物実験計画の承認
 研究機関等の長は、動物実験責任者から提出された動物実験計画について、動物実験委員会の審査を経て承認を与え、又は与えないこと。

 動物実験計画の履行結果の把握
 研究機関等の長は、動物実験等の終了の後、動物実験計画の履行結果について報告を受け、必要に応じ適正な動物実験等の実施のための改善措置を執ること。

第3  動物実験委員会
 動物実験委員会の設置
 研究機関等の長は、動物実験委員会を設置すること。

 動物実験委員会の役割
 動物実験委員会は、次に掲げる業務を行うこと。
(1) 研究機関等の長の諮問を受け、動物実験責任者から提出された動物実験計画が基本指針及び機関内規程等に適合しているかどうかの審査を行い、審査結果を研究機関等の長に報告すること。
(2) 動物実験計画の履行結果について、研究機関等の長より報告を受け、必要に応じ助言を行うこと。

 動物実験委員会の構成
 動物実験委員会は、研究機関等の長が任命した委員により構成すること。その構成は、動物実験等又は実験動物に関して優れた識見を有する者その他の学識経験を有する者のうちから任命することとし、その役割を全うするのに適切なものとなるよう配慮すること。

第4  動物実験等の実施
 科学的合理性の確保
 動物実験責任者は、動物実験等により取得されるデータの信頼性を確保する観点から、次に掲げる事項を踏まえて動物実験計画を立案し、動物実験等を適正に実施すること。

(1) 適正な動物実験等の方法の選択
 次に掲げる事項に配慮し、適正な動物実験等の方法を選択して実施すること。
(1) 代替法の利用
 科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り実験動物を供する方法に代わり得るものを利用すること等により実験動物を適切に利用することに配慮すること。
(2) 実験動物の選択
 実験動物の選択に当たっては、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限りその利用に供される実験動物の数を少なくすること等により実験動物を適切に利用することに配慮すること。この場合において、動物実験等の目的に適した実験動物種の選定、動物実験成績の精度や再現性を左右する実験動物の数、遺伝学的及び微生物学的品質、飼養条件を考慮する必要があること(P)。
(3) 苦痛の軽減
 科学上の利用に必要な限度において、できる限りその実験動物に苦痛を与えない方法によってすること。

(2) 動物実験等の施設及び設備
 適切に維持管理された施設及び設備を用いて実施すること。

 安全管理に特に注意を払う必要がある動物実験等
 安全管理に特に注意を払う必要がある動物実験等を実施する際には、次に掲げる事項に配慮すること。
(1)   物理的、化学的な材料又は病原体を取り扱う動物実験等、人や実験動物の安全や健康及び周辺環境に影響を及ぼす可能性のある動物実験等を行う際には、研究機関等における施設及び設備の状況を踏まえつつ、動物実験実施者等の安全確保、健康保持に特段の注意を払うこと。
(2) 飼育環境の汚染により実験動物が傷害を受けることのないよう施設及び設備を保持するとともに、必要に応じ、検疫を行うなどして、健康保持に配慮すること。
(3) 遺伝子組換え動物を用いる動物実験等、生態系に影響を及ぼす可能性のある動物実験等を実施する際には、研究機関等における施設及び設備の状況を踏まえつつ、遺伝子組換え動物の逸走防止等に特段の注意を払うこと。

第5  実験動物の飼養及び保管
 実験動物の飼養及び保管は、基準を踏まえ、科学的観点及び動物の愛護の観点から適切に実施すること。

第6  その他
 教育訓練等の実施
 研究機関等の長は、動物実験実施者等に対し、適正な動物実験等の実施並びに実験動物の適切な飼養及び保管を行うために必要な基礎知識の修得を目的とした教育訓練の実施その他動物実験実施者の資質向上を図るために必要な措置を講じること。

 基本指針への適合性に関する自己点検・評価及び検証
 研究機関等の長は、動物実験等の実施に関する透明性を確保するため、定期的に、研究機関等において実施された動物実験等の基本指針への適合性に関し、自ら点検及び評価を行うとともに、当該点検及び評価の結果について、当該研究機関等以外の者による検証を行うことに努めること。

 情報公開
 研究機関等の長は、研究機関等における動物実験等に関する情報(例:機関内規程や動物実験等に関する点検及び評価、当該研究機関等以外の者による検証の結果、実験動物の飼養及び保管の状況等)について、年1回程度公開をすること。この場合において、ホームページ、年報又は閲覧による公開など適切な手段により行うこと。

附則
 この指針は、平成18年 月 日から適用する。



参考資料2
実験動物の飼養保管基準素案(環境省)

(本案によりパブリック・コメントを実施)


実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準(素案)

第1  一般原則
 基本的な考え方
 動物を科学上の利用に供することは、生命科学の進展、医療技術等の開発等のために必要不可欠なものであるが、その利用に当たっては、動物が命あるものであることにかんがみ、科学上の利用の目的を達することができる範囲において、できる限り動物を供する方法に代わり得るものを利用すること、できる限りその利用に供される動物の数を少なくすること等により動物を適切に利用することに配慮すること、及びその利用に必要な限度において、できる限りその動物に苦痛を与えない方法によって行うことを徹底するために、動物の生態及び習性に配慮し、動物に対する感謝の念及び責任をもった適正な飼養及び保管並びに科学上の利用に努めること。また、実験動物による人の生命、身体又は財産に対する侵害の防止及び周辺の生活環境の保全に努めること。

 動物の選定
 管理者は、施設の立地及び整備の状況、飼養者の飼養能力等の条件を考慮して飼養及び保管する実験動物の種類等が計画的に選定されるように努めること。

 周知
 動物の飼養及び保管並びに科学上の利用が、客観性及び必要に応じた透明性を確保しつつ、動物の愛護及び管理の観点から適切な方法で行われるように、管理者は、本基準の遵守指導を行う委員会の設置又はそれと同等の機能の確保、本基準に即した指針の策定等の措置を講じる等により、施設内における本基準の適正な周知に努めること。
 また、管理者は、関係団体、他の機関等と相互に連携を図る等により当該周知が効果的かつ効率的に行われる体制の整備に努めること。

第2  定義
 この基準において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1) 実験動物 実験等の利用に供するため、施設で飼養し、又は保管している哺(ほ)乳類、鳥類及び爬(は)虫類に属する動物(施設に導入するため輸送中のものを含む。)をいう。
(2) 実験等 動物を教育、試験研究又は生物学的製剤の製造の用その他の科学上の利用に供することをいう。
(3) 施設 実験動物の飼養若しくは保管又は実験等を行う施設をいう。
(4) 管理者 実験動物及び施設を管理する者(研究機関の長等の実験動物の飼養及び保管に関して責任を有する者を含む。)をいう。
(5) 実験動物管理者 管理者を補佐し、実験動物の管理を担当する者をいう。
(6) 実験実施者 実験等を行う者をいう。
(7) 飼養者 実験動物管理者又は実験実施者の下で実験動物の飼養又は保管に従事する者をいう。
(8) 管理者等 管理者、実験動物管理者、実験実施者及び飼養者をいう。

第3  共通基準
 動物の健康及び安全の保持
(1) 飼養及び保管の方法 実験動物管理者、実験実施者及び飼養者は、次の事項に留意し、実験動物の健康及び安全の保持に努めること。
ア. 実験動物の生理、生態、習性等に応じ、かつ、実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適正に給餌及び給水を行うこと。
イ. 実験動物が実験等の目的に係る傷害以外の傷害を負い、又は実験等の目的に係る疾病以外の疾病にかかることを予防する等必要な健康管理を行うこと。また、実験等の目的に係る傷害以外の傷害を負い、又は実験等の目的に係る疾病以外の疾病にかかった場合にあっては、実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な治療等を行うこと。
ウ. 実験動物管理者は、施設への実験動物の導入に当たっては、必要に応じて適切な検疫、隔離飼育等を行うことにより、実験実施者、飼養者及び他の実験動物の健康を損ねることのないようにするとともに、必要に応じて飼養環境への順化・順応を図るための措置を講じること。
エ. 異種又は複数の実験動物を同一施設内で飼養及び保管する場合には、実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、その組合せを考慮した収容を行うこと。

(2) 施設の構造等 管理者は、実験動物の飼養又は保管については、次の事項に留意し、その生理、生態、習性等に応じた適切な施設の整備に努めること。
ア. 実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、個々の動物が、自然な姿勢で立ち上がり、横たわり、羽ばたき、泳ぐ等日常的な動作を容易に行うための広さ及び空間を備えること。
イ. 実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、実験動物に過度なストレスがかからないように、適切な温度、湿度、換気、明るさ等を保つこと。
ウ. 床、内壁、天井及び附属設備は、清掃が容易である等衛生状態の維持及び管理が容易な構造とするとともに、実験動物が、突起物、穴、くぼみ、斜面等により傷害等を受けるおそれがない構造とすること。

(3) 教育訓練等
 管理者は、実験動物に関する知識及び経験を有する者を実験動物管理者に充てるようにすること。また、実験動物管理者、実験実施者及び飼養者の別に応じて必要な教育訓練が確保されるよう努めること。

 生活環境の保全
 管理者等は、実験動物の汚物等の適切な処理を行うとともに、施設を常に清潔にして、微生物等による環境の汚染及び悪臭、害虫等の発生の防止を図ることによって、また、施設の整備等により騒音の防止を図ることによって、生活環境の保全に努めること。

 危害等の防止
(1) 施設の構造並びに飼養及び保管の方法
 実験動物の飼養及び保管に当たり、次に掲げる措置を講じることにより、実験動物による人への危害及び環境保全上の問題等の発生の防止に努めること。
ア. 管理者は、動物が逸走しない構造及び強度の施設を確保すること。
イ. 管理者は、実験動物管理者及び飼養者が実験動物に由来する疾病にかかることを予防するため、必要な健康管理を行うこと。
ウ. 管理者及び実験動物管理者は、実験実施者及び飼養者が危険を伴うことなく作業ができる施設の構造並びに飼養及び保管の方法を確保すること。
エ. 実験動物管理者は、施設の日常的な管理及び保守点検並びに定期的な巡回等による飼養及び保管する実験動物の数及び状態の確認が行われるようにすること。
オ. 実験動物管理者、実験実施者及び飼養者は、次により、相互に実験動物による危害の発生の防止に必要な情報の提供等を行うよう努めること。
(@) 実験動物管理者は、実験実施者に対して実験動物の取扱方法についての情報を提供するとともに、飼養者に対し、その飼養又は保管について必要な指導を行うこと。
(A) 実験実施者は、実験動物管理者に対して実験等に利用している実験動物についての情報を提供するとともに、飼養者に対し、その飼養又は保管について必要な指導を行うこと。
(B) 飼養者は、実験動物管理者及び実験実施者に対して実験動物についての状況を報告すること。
カ. 管理者等は、実験動物の飼養及び保管並びに実験等に関係のない者が実験動物に接することのないよう必要な措置を講じること。

(2) 有毒動物の飼養及び保管
 毒へび等の有毒動物を飼養及び保管する場合には、抗毒素血清等の救急医薬品を備えるとともに、事故発生時に医師による迅速な救急処置が行える体制を整備し、実験動物による人への危害の発生の防止に努めること。

(3) 逸走時の対応
 管理者等は、実験動物が保管設備等から逸走しないよう必要な措置を講じること。また、管理者は、逸走した実験動物の捕獲等を行う等の実験動物が逸走した場合の措置についてあらかじめ定め、逸走時の人への危害及び環境保全上の問題等の発生の防止に努めるとともに、人に危害を加える等のおそれのある実験動物が施設外に逸走した場合には、速やかに関係機関への連絡を行うこと。

(4) 緊急時の対応
 管理者は、関係行政機関との連携の下、地域防災計画等との整合を図りつつ、地震、火災等の緊急時に採るべき措置に関する計画をあらかじめ作成するものとし、管理者等は、緊急事態が発生したときは、速やかに、実験動物の保護並びに実験動物の逸走による人への危害等及び環境保全上の問題等の発生の防止に努めること。

 人と動物の共通感染症に係る知識の習得等
 実験動物管理者、実験実施者及び飼養者は、人と動物の共通感染症に関する十分な知識の習得及び情報の収集に努めること。また、管理者、実験動物管理者及び実験実施者は、人と動物の共通感染症の発生時において必要な対策が迅速に行えるよう、公衆衛生機関等との連絡体制の整備に努めること。

 動物の記録管理の適正化
 管理者等は、実験動物の飼養及び保管の適正化を図るため、動物の入手先、飼育履歴、病歴等に関する記録台帳を整備する等、動物の記録管理を適正に行うよう努めること。また、人に危害を加える等のおそれのある実験動物については、名札、脚環、マイクロチップ等の装着等の識別措置を技術的に可能な範囲で講ずるよう努めること。

 輸送時の取扱い
 実験動物の輸送に当たる者は、その輸送に当たっては、次の事項に留意し、実験動物の健康及び安全の確保並びに実験動物による人への危害等の発生の防止に努めること。
ア. なるべく短い時間による輸送方法を採る等により、実験動物の疲労及び苦痛をできるだけ小さくすること。
イ. 輸送中の実験動物には必要に応じて適切な給餌及び給水を行うとともに、換気等により適切な温度を維持すること。
ウ. 実験動物の生理、生態、習性等を考慮の上、適切に区分して輸送するとともに、輸送に用いる車両、容器等は、実験動物の健康及び安全を確保し、並びに実験動物の逸走を防止するために必要な規模、構造等のものを選定すること。
エ. 実験動物が保有する微生物及び実験動物の汚物等により環境が汚染されることを防止するために必要な措置を講じること。

 施設廃止時の取扱い
 管理者は、施設の廃止に当たっては、実験動物が命あるものであることにかんがみ、その有効利用を図るために、飼養及び保管している実験動物を他の施設へ譲り渡すよう努めること。やむを得ず実験動物を殺処分しなければならない場合にあっては、動物の処分方法に関する指針(平成7年総理府告示第40号。以下「指針」という。)に基づき行うよう努めること。

第4  個別基準
 実験等を行う施設
(1) 実験等の実施上の配慮
 実験実施者は、実験等の目的を達成するために必要な範囲で実験動物を適切に利用するように努めること。また、実験等の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、麻酔薬、鎮痛薬等を投与すること、実験等に供する期間をできるだけ短くする等実験終了の時期に配慮すること等によりできる限り実験動物に苦痛を与えないようにするとともに、保温等適切な処置を採ること。

(2) 事後措置
 実験動物管理者、実験実施者及び飼養者は、実験等を終了し、若しくは中断した実験動物又は疾病等により回復の見込みのない障害を受けた実験動物を処分する場合にあっては、速やかに、致死量以上の麻酔薬の投与、頸椎脱臼等の化学的又は物理的方法による等指針に基づき行うこと。また、実験動物の死体については、適切な処理を行い、人の健康及び生活環境を損なうことのないようにすること。

 実験動物を生産する施設
 幼齢な動物又は高齢な動物を繁殖の用に供さないとともに、みだりに繁殖させることによる動物への過度の負担を避けるため、その回数を適切なものとすること。ただし、系統の維持の目的等特別な事情がある場合についてはこの限りでない。また、動物の譲渡しに当たっては、その生理、生態、習性、適正な飼養及び保管の方法、感染性の疾病等に関する情報を提供し、譲り受ける者に対する説明責任を果たすこと。

第5  準用及び適用除外
 管理者等は、哺乳類、鳥類及び爬虫類に属する動物以外の動物を実験等の利用に供する場合においてもこの基準の趣旨に沿って措置するよう努めること。また、この基準は、畜産に関する飼養管理の教育若しくは試験研究又は畜産に関する育種改良を行うことを目的として飼養し、又は保管する実験動物の管理者等及び生態の観察を行うことを目的として飼養し、又は保管する実験動物の管理者等には適用しない。なお、生態の観察を行うことを目的として飼養し、又は保管する実験動物に係る飼養及び保管に関する基準については、家庭動物等の飼養及び保管に関する基準を準用する。

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