第21回厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会


日時:平成18年3月2日(木)9:30〜12:30
場所:厚生労働省専用第22会議室(18F)

出席委員
石井みどり委員、加賀谷淳子委員、加藤尚武委員、加藤陸美委員、菊田信子委員、
北村惣一郎委員、坂本雅子委員、笹月健彦委員、澁谷いづみ委員、高橋滋委員、
多田羅浩三委員、田中平三委員、土屋隆委員、富永民委員、中村丁次委員、
渡邊昌委員(16名)

参考人
佐藤誠記 氏(日本たばこ産業株式会社)
ピーター・ニクソン 氏(フィリップ モリス ジャパン株式会社)
深町秀都 氏(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン株式会社)
阿部裕司 氏(社団法人日本たばこ協会)

厚生労働省出席
(健康局)中島健康局長、岡島審議官、梅田参事官、石井総務課長
中島参事官、矢島生活習慣病対策室長


次第
I 開会
II 議題
1.たばこ対策について
(1)政府における主なたばこ対策について
(2)たばこ規制枠組条約締約国会議の報告について
(3)健康日本21中間評価作業チームにおける検討状況について
(4)たばこ業界からの意見陳述について
(1)日本たばこ産業株式会社
(2)フィリップ モリス ジャパン株式会社
(3)ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン株式会社
(4)社団法人日本たばこ協会
2.その他
III 閉会



矢島室長
 ただいまから、第21回厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会を開催させていただきます。
 まず、本日の出欠状況について御報告させていただきます。委員定数25名でございます。現在、16名の委員の先生方の御出席を得ておりまして、出席委員は過半数に達しておりますので、会議は成立しておりますことをまず報告させていただきます。
 次に配付資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、委員名簿のほかに、資料1−1−1といたしまして、たばこに関する現在の状況。
 資料1−1−2、政府における主なたばこ対策。
 資料1−2、厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会における最近のたばこ対策に関する検討状況。
 資料1−3、運動と喫煙について。これは加賀谷委員に御提出いただきました資料でございます。
 資料1−4−1、たばこ対策に関する日本たばこ産業株式会社の考え方等。
 資料1−4−2、フィリップモリスは包括的たばこ規制を支持します(II)。
 資料1−4−3、たばこを取り巻く諸問題とブリティッシュ・アメリカン・タバコの見解。
 資料1−4−4、日本たばこ協会の活動について。
 参考資料でございますが、中央合同庁舎第5号館、この庁舎のことでございますが、中央合同庁舎第5号館庁舎内の全面禁煙についてでございます。
 もし不足、落丁等がございましたら、事務局までお申しつけいただきますよう、お願い申し上げます。
 それでは審議に入りたいと思いますが、本日は久道部会長御欠席のため、まず本部会を進行していただく部会長代理についてでございます。厚生科学審議会令第6条5項におきまして、部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員または臨時委員のうちから、部会長があらかじめ指名する者がその職務を代理するとされております。久道部会長と事前に御相談いたしましたところ、昨年2月の改選以前には久道部会長から多田羅委員に部会長代理をお願いしておりました。このたびにおきましても引き続き多田羅委員に部会長代理をお願いしたいということでございますが、御了承いただけますか。

 (拍手)

 矢島室長
 どうもありがとうございます。それでは多田羅委員、恐縮でございますが、部会長代理をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。では部会長代理の方の席にお移りいただければと思います。
 では、以後の部会運営につきましては多田羅部会長代理にお願いいたします。よろしくお願いいたします。

 多田羅部会長代理
 ただいま部会長代理を御指名いただきました多田羅でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日は私の方で議事の進行役を務めさせていただきたいと思いますので、委員の皆様の御協力、よろしくお願い申し上げます。
 それでは議事を進めたいと思います。カメラの方は御退出いただけるでしょうか。
 前回の部会での議論の中で、たばこ対策について集中的に議論する機会を設けるべきであるという御意見が委員の皆様方から出され、合意が得られました。このことを踏まえまして、本日の部会はたばこ対策に関する集中審議として皆様にお集まりいただきました。また、たばこ対策に関するたばこ会社等の御意見を伺った上で議論を行うために、本日、日本たばこ産業株式会社、フィリップモリスジャパン株式会社、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン株式会社並びに社団法人日本たばこ協会の方々に意見を陳述していただくため、お越しいただいております。どうもありがとうございます。
 それでは、まず各議題についてそれぞれ説明していただいた後、一括して質疑をお願いしたいと思います。議題1でございます。政府における主なたばこ対策について、及び議題2のたばこ規制枠組条約締約国会議の報告について、矢島室長より御説明をお願いいたします。

 矢島室長
 それでは、お手元の資料1−1−1と資料1−1−2について説明させていただきます。
 まず資料1−1−1をお開きいただきたいと思います。1ページでございますが、これは健康日本21におけます目標値に対する暫定直近実績値等でございまして、たばこ分野のところを抜粋しております。分野としては4番、たばこのところを抜粋しているものでございまして、まず4の1のところでございますが、喫煙が及ぼす健康影響についての十分な知識の普及ということで、知っている人の割合、これにつきましては、ベースライン値は平成10年度の喫煙と健康問題に関する実態調査のデータを使っているわけでございますが、目標値100%に向けて、今、中間評価の中で、暫定直近実績値をここにありますような形で載せてございます。
 4の2でございますが、未成年者の喫煙をなくすということにつきまして、これは今、データを調査中でございます。4の3の公共の場及び職場における分煙の徹底及び効果の高い分煙に関する知識の普及。これにつきましても今、データを調査中でございます。4の4、禁煙プログラムの普及でございますが、これにつきましても調査中でございまして、これにつきましては鋭意、中間評価のデータの分析をしているところでございます。
 次の2ページでございますが、喫煙率の状況についてでございますが、我が国の喫煙率と、これは2002年、WHOのTobacco ATLASから用いました諸外国の喫煙率の比較のデータでございます。
 3ページ目でございますが、未成年者の喫煙ということで、中学生、高校生の喫煙の状況についてまとめた資料でございます。
 次の資料1−1−2でございますが、政府における主なたばこ対策ということでございまして、まず1ページをお開きいただきたいと思います。たばこに関する情報提供ということで、禁煙週間及び世界禁煙デー記念シンポジウムの開催ですとか、ホームページを活用した情報提供。たばこ白書、これは平成13年に出したものでございますが、そのようなもの。たばこパッケージへの新注意文言の表示ということで、たばこ包装の主要な面の面積の30%以上の表示を義務づけたものでございます。次がたばこ広告の規制についてでございますが、これについてはたばこ広告の規制を強化しております。たばこ事業法第40条に基づきます、たばこの規制を強化いたしております。
 2ページでございますが、未成年者の喫煙防止対策についてでございます。明治33年に未成年者禁止法というものが既にあるわけでございまして、これが一つございます。未成年者喫煙防止に関する指導啓発等ということで、実際に未成年者やその保護者に対する広報啓発活動を推進しております。また、喫煙防止教育の充実ということで、未成年者の段階から喫煙をしないようにということのいろいろな教育を保健体育ですとか、学校教育全体を通じまして指導を行っているところでございます。また、製造たばこ小売販売業許可等取扱要領の改正につきまして、自動販売機の設置場所、店舗併設の取り扱いを明確化いたしております。
 次、3ページでございますが、未成年者喫煙防止のための適切なたばこの販売方法の取り組みということでございまして、年齢確認の徹底ですとか、たばこ自動販売機の適正な管理の徹底等、未成年者喫煙防止のための適切な販売につきまして、警察庁、財務省及び厚生労働省より関係業界あてに通知を出しているところでございます。
 参考でございますが、成人識別機能付たばこ自動販売機の設置ということで、日本たばこ協会、日本自動販売機工業会及び全国たばこ販売協同組合連合会が平成20年から全国一斉稼働を目指し、現在、試験を実施しているところでございます。
 未成年者喫煙防止対策ワーキンググループの設置ということで、関係省庁、内閣府、警察庁、財務省、文部科学省、厚生労働省、本日も事務局の方に関係の省庁の方々にも御出席いただいておりますが、密接な連携のもと、未成年者の喫煙防止対策を促進するため、たばこ対策関係省庁連絡会議幹事会のもとに設置いたしまして、未成年者への喫煙防止教育、たばこの入手方法に応じた喫煙防止、喫煙習慣者への禁煙指導等について検討を行っているところでございます。
 次でございますが、たばこ対策緊急特別促進事業ということで、補助金等も用意させていただきまして、いろいろな支援をさせていただいております。
 4ページでございますが、受動喫煙からの非喫煙者の保護についてでございます。受動喫煙防止対策についてでございますが、これにつきましても健康増進法の施行にあわせまして都道府県に対して通知を発出させていただいているところでございます。また、関係省庁においても、職場や学校等において関係方面への周知徹底を図っているところでございます。
 職場における禁煙対策のためのガイドラインでございますが、これを策定いたしまして、事業場ですとか、個別支援、研修会、シンポジウム等で普及啓発を行っているところでございます。
 たばこ対策緊急特別促進事業ということで、これも補助金でございますので、都道府県におきましてこのような受動喫煙等に対する施策を行った場合、補助金で推進を図ることとしております。
 5ページでございますが、禁煙を希望する者に対する禁煙支援ということで、たばこ対策担当者講習会の開催ですとか、禁煙支援マニュアルの作成。18年度の診療報酬改定におきまして、ニコチン依存症管理料が新設されております。ニコチン依存症につきまして、疾病であるとの位置づけが確立されたことを踏まえまして、ニコチン依存症と診断された患者のうち、禁煙の希望がある者に対する一定期間の禁煙指導について、新たに診療報酬上の評価を行うものでございます。
 6ページでございます。たばこ対策に係る条約・研究等についてでございます。たばこの規制に関します世界保健機関枠組条約への取り組みということでございまして、このたばこの規制に関します世界保健機関枠組条約、参考のところに書いてございますが、たばこの使用及びたばこの煙にさらされることの広がりを継続的かつ実質的に減少させるため、締約国が自国において並びに地域的及び国際的に実施するたばこの規制のための措置についての枠組みを提供することにより、たばこの消費及びたばこの煙にさらされることが健康、社会、環境及び経済に及ぼす破壊的な影響から現在及び将来の世代を保護することを目的とするものでございます。
 次でございますが、厚生労働科学研究におきまして、たばこ対策の研究を実施しております。また、たばこ対策に係る組織の拡充ということで、厚生労働省でも昨年の10月からたばこ対策専門官を設置いたしましたほか、国立保健医療科学院の研究情報センターにたばこ政策情報室を設けまして、たばこに関します情報政策の収集に努めているところでございます。
 次はたばこ規制枠組条約の関係でございまして、今御説明をさせていただいたところですが、この2月6日から17日までジュネーブにおきまして、たばこ規制枠組条約の第1回締約国会議が開催されました。ここにつきましての議事録等を関係の省庁で今整理をしていまして、まだ文書としてでき上がっていませんので、お手元にお渡しすることができないので、概要につきまして口頭で御説明させていただきます。
 2月6日から17日までジュネーブで開催いたしまして、締約国110カ国が参加いたしました。そのほか、米国を含みます非締約国が49カ国、それから国際機関ですとかNGOがオブザーバーとして参加しております。
 決定事項といたしましては、第1回の締約国会議であることから、締約国会議手続規則、条約事務局の設置が合意されまして、予算案が採択されたところでございます。手続規則に関しましては、締約国会議の開催頻度は、第3回までは毎年開催し、その後は隔年の開催とすることとなっております。
 締約国1カ国1票の投票権を有しまして、採決方法は、予算、財政事情についてはコンセンサスとすることになっています。そのほかもコンセンサス形成に努めるが、不可能な場合は、実質的事項については4分の3以上、手続的事項については過半数の採決ということになっております。
 条約事務局の設置及び機能ということで、条約の事務局をWHO本部内に設置し、事務局は締約国会議に対して条約実施上の事項、技術的事項につき報告をすることとされました。
 予算案でございますが、2006年から2007年、2カ年間の事務局経費として801万ドルを承認いたしております。日本はこの22%の約176万ドルを負担することとなっております。
 第2回締約国会議に向けてでございますが、報告の頻度については各国における条約発行後、2年後ということで、これは来年になるわけですが、それからあと5年後、8年後に報告を提出することで合意がされているところでございます。
 第8条、これはたばこの煙にさらされることからの保護、及び第9条、これはたばこ製品の含有物に関する規制のガイドラインですとか、国境を越える広告規制措置及び密輸に関する議定書策定に向けて条約事務局を中心に作業を行い、この条規につき第2回締約国会議で報告されることとなっております。以上でございます。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございました。それでは続きまして、昨日、加賀谷委員より資料の提出がございました。資料1−3、運動と喫煙についてであります。資料1−3につきまして、加賀谷委員より御説明、お願いいたします。

 加賀谷委員
 前回の委員会のときに、生活習慣病予防のために運動を推進しているところですが、運動するなら禁煙をということで意見を申し上げましたので、その資料を本日出させていただきました。資料1−3をごらんいただきたいと思います。
 もう50年以上前から、競技選手の競技パフォーマンスに対して、喫煙するということはパフォーマンスを下げるのでスポーツをする人は禁煙をということは言われてきたわけですが、一般の人々について、では禁煙がどういう影響があるかということで、1ページ目のところからポイントだけ簡単に申し上げます。
 習慣的な喫煙をしていると、血管内皮細胞由来の血管拡張能が損なわれて、運動中の血液の増加が少なく、あるいは血管の抵抗が高くて血圧が上がるというようなことが指摘されています。それは一番最初の論文のところの下のところにありますが、血管を閉塞しましてどのくらい血管拡張が起こるかという、そういう血管機能を見るテストがあるのですが、それでも喫煙者は低下しているということで、運動中の血管の拡張が低いのはそういう血管内皮細胞の損傷があるのではないかという指摘です。
 その下のものもそうで、コントロールとスモーカーを比較しますと、スモーカーが喫煙をしますと、やはり血管拡張作用が損なわれるということで、これは先ほどと同じです。一番下のところは、今度は心臓の冠状動脈ですが、これも血流が喫煙者では有意に低いということがありまして、運動中の酸素運搬機能が低いのはもちろんですが、いろいろな影響が起こってくるだろうということです。
 2ページ目、習慣的な喫煙をしていると運動中の血流の自動調節も損なわれるのではないかというのがFigure1です。その下にありますのは、これは心拍数ですが、習慣的な喫煙者の運動中の心拍数は高くなることを示しています。これは血圧も同じような報告がなされております。これは習慣的な喫煙の場合です。
 次の3ページです。これは喫煙の一過性の影響ということですが、吸った後にすぐ運動した場合どうなるかということですが、それについて一番最初の論文は、これは安静時のものですが、喫煙を行いますと交感神経が亢進するということがわかっています。運動しますと一時的に交感神経の亢進は抑えられますが、運動が進んでいきますと、やはり交感神経の活動が亢進していきます。そうなりますと、血管を支配している筋交感神経とか、皮膚交感神経活動の亢進が起こりますと心臓への負担ということが起こってきますから、リスクは高くなるだろうと。これは循環器の委員の先生もいらっしゃいますので、また御意見がありましたらお願いいたします。
 その次のところ、喫煙は運動パフォーマンスを低下させる。これにつきましては全部拾っておりませんが、既に1951年、Karpovichという、これはアメリカの運動生理学でリーダーとなってしてきた運動生理の研究者ですが、そこでパフォーマンスに対して影響を与えていると。同じ習慣的喫煙者でも、喫煙した人、喫煙をしない人を比べますと、喫煙日より非喫煙日の方が成績が低下している、パフォーマンスは落ちるということです。
 その次は最近のもので、比較的若い子供たちで調べた結果ですが、これも呼吸循環器系と持久性パフォーマンスに影響を与えるというようなことが出ております。このようなことで、運動を進めるのであれば禁煙をということ、あるいは、少なくとも運動をするときにはたばこを吸わないというようなことを一緒にやっていく必要があるだろうと思います。
 では習慣的喫煙者の場合はどうかというと、習慣的喫煙者が運動した場合には、運動している方が習慣的喫煙者の血管への悪影響が抑制されるというようなことも出ておりますので、喫煙者であっても運動は効果があるというデータです。運動を推進するに当たって、効果的で安全に進めていくために、たばこのことも一緒に考えていく必要があるだろうと思いまして、データを提供いたしました。以上です。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございました。最後、パフォーマンスを低下させるの御説明で、喫煙日より非喫煙日の方が成績が低下したというのは、ちょっと日本語で見ると理解しにくいのですが、これでよかったですか。

 加賀谷委員
 やはり違いますね。反対です。

 多田羅部会長代理
 非喫煙日より喫煙日の方が、ですよね。

 加賀谷委員
 そうです。

 多田羅部会長代理
 では、そういう訂正でよろしいでしょうか。

 加賀谷委員
 すみません。お願いいたします。

 多田羅部会長代理
 3ページ、下から3つ目の説明ですね。

 加賀谷委員
 吸っている日の方が成績が悪いということです。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございました。それでは、本日は御欠席でございますが、河野委員からも御意見をちょうだいいたしております。河野委員の御意見につきましては矢島室長より御説明をお願いいたします。

 矢島室長
 昨日、河野委員からお電話をいただきまして、本日欠席ということで、河野委員の方にも、いろいろな御意見を承っているということで、ぜひメモを読み上げていただきたいということの御連絡をいただいております。読み上げさせていただきます。
 「たばこ対策について。健康づくりにとって、たばこ対策は避けて通れない、特に重要なことと受けとめていますので、健康日本21の今後の対策強化には重要と考えています。ただ、他の栄養、休養、運動などの対策とは異なり、だれもが皆で取り組む、あるいは取り組めるものと異なり、方法としては難しい面があります。たばこについての市民の認識は、たばこを吸う人、吸わない人で大きく異なります。愛煙家にとっては、たばこ対策は負担を強いられるものと受けとめられ、吸わない人にとっては、たばこは健康被害を受けるものという認識をもって受けとめられています。
 また、生産者、販売者、医療従事者、消費者、税収として受け取る立場など、たばこにかかわる立場によっても意識は異なります。意志を同じくして取り組んでいくには大きな壁があり、時間をかける必要があるように思います。
 健康日本21は健康づくりのための国民総ぐるみ運動です。国民の健康状態や医療費の高騰などから緊急性が高いことは十分認識していますが、国民が皆で気持ちを同じくして取り組んでいくことを打ち出している以上は、大きな対立は避ける必要があります。喫煙率がまだ高い状況にある現状では、禁煙を強いる、あるいは生産者等の生活を脅かすような取り組みを全面に打ち出すのは無用の反発を招く懸念があり、むしろ逆効果になるのではという危惧感さえあります。
 喫煙者の意見をお聞きすると、そんな悪いものをどうして生産し売っているのか。また、長くたばこ税を支払い市民生活の保障に貢献してきたとか、分煙に協力し肩身の狭い思いをしているとか、これ以上まだいじめるのかなどの声がたくさん聞かれます。
 このようなことから、現段階では分煙を強力に推進することと未成年者の喫煙をなくすことが現実的なように思います。そのことで全体の喫煙率を下げる方向に向かわせることが、まずこの時期には大切と考えます。
 分煙対策は、地域間、官民間の差はまだ大きく、家庭内の分煙はさらに進んでいない状況です。喫煙者からは、吸う場所を指定してくれなければマナーを守りたくても守れないとか、吸わない人の迷惑にならない吸い方をしたいとの声があります。一方では、妊婦や子供がいても、特別気にかけることもなく吸うという人もかなりいるように、分煙化に取り組む余地はまだまだあるように思います。
 未成年者がたばこを吸うきっかけのほとんどが大人へのあこがれと聞いています。たばこ会社も未成年の喫煙の害は認め、成人は自己決定の上での喫煙との姿勢ですが、たばこを吸う姿を子供たちがどのようなまなざしで見ているのか、どのような影響を与えているのかを十分自覚していただく取り組みも必要と思います。
 公共の場所及び家庭内の分煙化を推進することと、子供たちへのたばこの影響を防止する取り組みが、国民全体で取り組むことができるたばこ対策の総ぐるみ運動と考えます。」以上でございます。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございました。河野さんには北海道深川市長さんという立場で御意見をいただきました。ありがとうございます。
 それでは、続きまして議題3でございます。健康日本21中間評価作業チームにおける検討状況についてでございます。作業チームの座長の富永委員より御説明をお願いいたします。

 富永委員
 それでは、健康日本21中間評価作業チームにおける検討状況について、本日は中間報告をさせていただきます。お手元に資料はお配りしておりません。と申しますのは、まだ中間作業チームにおきましてもいろいろ検討中でございまして、大体案は固まりつつあるのですが、それをまとめてお配りしますと、また一人歩きしてしまってもいけませんので、本日は口頭で正直に、どこまで作業が進んでいるか、どういう見通しかということを御説明いたします。
 健康日本21の中間評価作業チームというのは元来、平成12年にスタートした健康日本21が、過去5年間、中間時点でどれくらい進捗したかということを評価するのが主な目的でした。それに加えて、この5年間のいろいろな社会情勢の変化なども加味しまして、さらに中間時点で、特に重要な項目は追加したらいいのではないかという意見が出まして、この部会でも何回か議論されておりますが、一つは喫煙率低下の目標値を設定すること。もう一つは、最近は介護予防が大変問題になっておりますが、転倒防止のために下肢の筋力をアップするための数値目標をいろいろなデータに基づいて検討しております。したがいまして、この作業チームは同時進行で、喫煙率の低下目標値の設定、運動身体活動の数値目標の設定をしておりますので、少し作業がおくれているのは事実です。
 しかし、これまで喫煙率の低下目標の設定のあり方についてどういう考え方があるか、まとめました。それを簡単に御紹介しますと、大まかに言って4つの案がございます。最初の案というのは、これまでの喫煙率の推移傾向を、将来どういうふうに変わるだろうかということを予測して、それに禁煙希望者の禁煙成功率を、最近はニコチンパッチ、あるいはニコチンガムのような補助剤が使われ始めておりますが、補助剤を使わない場合は何%ぐらい成功するか、補助剤を使えば何%ぐらいになるか、こういったことも配慮しまして実際のモデルを使って推計します。
 その結果、ここ十数年以上前から、特に男性の喫煙率はかなり低下してきておりますが、その低下傾向が少し強まるという程度にとどまります。
 2番目の案は、いろいろな調査から、今、喫煙をしている人でもかなりの割合の人、半分ぐらいの人が、できることなら禁煙したいと言っております。ですから、そういう禁煙希望者の禁煙支援に力を入れてやればどうなるかという考え方です。それもほとんど禁煙希望者全員が禁煙に成功する、それはちょっと無理かもしれないけれども、こういう考え方。
 3番目の考え方は、同じ禁煙希望者でもニコチン依存症以外の人、つまりニコチン依存が余りない人、やめやすい人を中心に禁煙を推進する。そういう考え方で、ニコチン依存の強い人はやはり完全にやめるのは無理だろうという、かなり現実的な見方をしたのが第3番目。
 第4番目の案は、そもそも平成12年の健康日本21の策定の前段階の委員会で成人の喫煙率半減というのを目標値に掲げておりましたが、いろいろな事情で、途中でこの喫煙率半減は撤回してしまいました。それに対して委員の一部の先生は大変がっかりというより、むしろ立腹されておりまして、以後、厚生労働省に協力しないとまで言っておられる先生もあるぐらいでございます。
 その後、平成12年から状況が変わりまして、この部会の先生は御承知のように、平成14年12月25日にこの部会が、我が国のたばこ消費の抑制、喫煙率の低下に向けて努力するべきであるという答申をしております。その後、昨年、たばこ規制枠組条約が2月に発効しまして、このたばこ規制枠組条約の中でも明確にたばこの消費量を減らすためのいろいろな策を講ずるべきである、禁煙支援だけでは不十分で、価格アップ、あるいは増税、このような措置、そのほかいろいろな措置を使って包括的に禁煙、たばこ消費の低下に向けて努力をするべきであるということがうたわれております。ですから4番目の案というのは当初に計画したものをもう一度、新規というよりも復活させるような形で行こうというのが4番目の考え方。
 今御紹介しました4つの案は、それぞれまだ完全にどうなるかということ、特に禁煙希望者の禁煙成功率の実際の数値、成功率に対しても、近い将来にニコチン依存症管理料が導入されますが、これで医師が医療機関で5回きちんと禁煙を指導、支援した場合にはどれぐらい成功するかという率なども加味して、あるいはその治療を何%ぐらいの人が受けるかということも加味しないといけませんので、大変複雑になります。ですから、特に2番目、3番目の案は実際の数値を、設定できないことはないのですが、大変難しいです。ですから、現在のところ、正直申しまして、4つの案に固まりつつありますが、まだ中間評価作業チームとしましては、この案が一番いいというふうな形では結論づけておりません。過去2回、会議をやっておりますので、また次回の会議でさらに議論を深めて、もう少し考え方あるいは案を整理したいと思っております。以上です。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございました。まだ中途ということでございますが、鋭意取り組んでいるということで、今後の御報告を待ちたいと思います。
 それでは、ただいまで御報告をいただきましたが、最初に申し上げましたように、御質疑は最後に一括してお願いするということにさせていただきたいと思いますので、続きまして、たばこ業界の皆さんからの意見陳述に移りたいと思います。
 まず、日本たばこ産業株式会社の佐藤誠記氏より、たばこ対策に関する考え方について述べていただきたいと思います。お願いします。

 日本たばこ産業株式会社
 日本たばこ産業株式会社の佐藤でございます。本日は当部会にお呼びいただきまして、発言の場を与えていただきましたことにお礼申し上げます。
 今回、このようなお時間をちょうだいいたしましたので、以下私から、弊社を代表いたしまして、JTのたばこ対策に対する考え方を御説明いたしますが、まず喫煙と健康に関しまして科学的エビデンスを御説明し、それを踏まえた上で、たばこ対策に関するJTの考え方を御説明いたします。
 まず喫煙に関しまして「喫煙者個人の責任ではおさまらない、社会に対して深刻な被害を及ぼすものであり、社会として抑制すべきである」という意見があることは存じ上げております。こうした意見の主たる根拠といたしまして、受動喫煙の問題、超過医療費、労働力損失といった、いわゆる社会コストの問題が挙げられております。
 たばこを吸われない方であっても、受動喫煙により、肺がん等、致命的な病気になるという知見を根拠に、厳しい規制を導入すべきであると主張される方がおられます。お手元の資料の1ページ目をごらんください。ごらんの資料が受動喫煙に関する疫学研究の結果ですが、誤差範囲を超えてリスクありとするものはわずか12%であるという結果が示されております。この部分に関しましてもう少し詳細に御説明いたします。
 資料の2ページ目をごらんください。厚生白書や喫煙と健康問題に関する検討会報告書等におきまして、受動喫煙の害の根拠の一つといたしまして、米国環境保護庁の報告が挙げられております。この米国環境保護庁の報告書に関しましては、その信頼性に疑問が提起され、まず米国議会の調査機関により調査が行われました。その調査の結果につきましてワシントン・タイムズは、「同庁にとって望ましい結果を出すために、主観的な評価となっている。悪質な科学かもしれないが、反たばこキャンペーンには効果的な宣伝である」というふうに報じております。
 資料の3ページ目をごらんください。またその後、この報告書の妥当性に関しまして訴訟が行われました。本訴訟の結果に関しニューヨーク・タイムズは、「米国環境保護庁の研究者がデータを恣意的に選定したことを認定した」と報じております。このように、信頼性に疑問のあります米国環境保護庁の報告を受動喫煙の害の根拠として挙げることにはいささか疑問がございます。
 次に資料の4ページ目でございます。WHOの関連機関である国際がん研究機関が行いました過去最大規模の症例対照研究の結果につきまして、イギリスのエレクトロニック・テレグラフの「研究者は、受動喫煙が肺がんの原因であることを示す統計的な証拠はないことを見出した」という報道がございます。
 さらについ数カ月前、昨年11月の末でございますが、英国のタイムズが受動喫煙に関する記事を掲載いたしました。資料の5ページ目にお示ししております。この要点は、「受動喫煙が死亡の原因になるという主張は、科学的根拠に基づかないでっち上げである。国際がん研究機関は、職場の受動喫煙に関する報告23本のうち、肺がんとの間に統計的関連があるとしているのは1本のみであるとしている。23件中1件というのは客観的な科学では例外と呼ばれる。受動喫煙を死亡の原因として装うのは科学を放棄することである。反たばこの研究責任者でさえ、受動喫煙が死亡原因となるという説得力のある根拠はないということを認めている」という報道でございます。
 JTは、受動喫煙が致命的な疾病の原因になるという考えに対しましては、科学的に説得力のある根拠は示されていないと考えております。ただ、一方で、たばこの煙や臭いが嫌いだとおっしゃる方、あるいは近くで吸っていただきたくないという方がおられることも認識しております。JTといたしましては、たばこを吸われる方、吸われない方の共存を目指しまして、分煙を進めるという活動を推進していることは前回御説明したとおりでございます。
 次に、いわゆる喫煙の社会コストに関しまして御説明いたします。社会コストにつきましては超過医療費と労働力損失の2つが大きなウエイトを占めております。超過医療費につきましては、疫学研究結果を用いて間接的に計算する方法と、たばこを吸われる方、吸われない方が実際の医療費を幾ら払っているかということを調査する直接的な方法との2つの方法がございます。
 疫学を用いた試算につきましては資料の6ページにございます。多いもので1兆3,000億円という超過医療費が生じているとの報告がなされております。一方で、後者の喫煙者、非喫煙者、おのおのの実支払額医療費調査、こちらが7ページにございます。資料上で薄緑色の網かけになっているもの、これは非喫煙者の医療費の方が高い結果を示した調査でございますが、ごらんいただけますとおり、これら非喫煙者の医療費の方がむしろ高いとする報告の方が数としては多くなっているといったことでございます。
 また、厚生労働省による研究事業の中で、喫煙率の高い地域と低い地域を比較した調査がございます。その結果といたしまして、喫煙率の高い地域の方がむしろ医療費が少なくなっているといった報告もございます。
 このように、喫煙の社会コストの一つの柱である超過医療費に関しまして、少なくともどちらが高いとか、安いとかいうことは明確には言えない状況にあるのではないかと考えております。
 次に、もう一つの大きな柱でございます労働力損失に関しまして御説明いたします。この労働力損失の額は、喫煙による超過死亡者数に平均損失年数を掛けまして、さらに年間平均所得を掛けた額を出すという考え方に基づいております。したがいまして、労働力損失額の算定に当たりましては、これら平均損失年数をどう見るか、平均所得の額をどう見るか、喫煙による超過死亡の数をどう見るか、こういう前提の置き方次第によりまして結果が大きく異なってまいります。
 資料の8ページをごらんください。これに基づきまして、喫煙による労働力損失の額が5兆円を超えるという主張もなされております。しかし、これは明らかに不合理な前提を置いた上での試算と考えております。例えば、本試算におきましては、平均損失年数は海外の研究報告を用い12年という前提を置いております。この12年の算出根拠というのは、私どもにはよくわかりませんが、日本の大規模疫学調査でございます平山先生の調査からは、喫煙者と非喫煙者の平均余命の差は3年程度とされているものと承知しております。損失年数として、もしこの平均余命の差を用いるということになれば、これだけで労働力損失の額は4倍も変わってくるといったことでございます。
 また、年間の平均所得につきましても過大な値が用いられていると考えております。本試算では一律に雇用者の年間平均報酬額である512万円という金額が用いられております。喫煙関連疾患で亡くなる方は一般的に高齢の方が多いと考えられますが、この論文に置かれた前提では、高齢者もすべて雇用されているという仮定をしていることになりまして、これは非現実的な試算であると考えざるを得ないと思っております。
 さらにこの論文では、喫煙しないことにより平均余命が延びた期間、いわば長生きする期間にも、当然病院にも行く、年金も使うということから、本来的には労働力損失から差し引くべきだと。こういう考えによるものと思いますが、これら費用を潜在的節約分と言っております。ただ、この潜在的節約分に関しましては「手法上の限界があり、算出は行っていない」ということを記載しております。もし、この潜在的節約分も含めて計算していくことになりますと、労働力損失の額というものが果たしてどの程度のものになるのか、あるいは本当に労働力損失が発生するのかということさえ疑問であると思います。
 ここで、そもそも疫学に基づく超過死亡者の数の試算に用いられます「喫煙による疾病で10万人が死亡する」と言われている仮説につきまして疑問があるということも御説明したいと思います。私たちの身の回りにはリスクファクターと言われるものが多数存在しております。例えば食道がんについて申し上げれば、飲酒、喫煙、生野菜の摂取不足、低収入、熱いものの飲食など、多くのものがリスクファクターであると言われております。これらそれぞれのリスクファクターが食道がんの罹患や死亡というリスクにどの程度関与しているのかという問題がございます。
 お手元の資料の9ページ目をごらんください。アメリカの国立がん研究所のブラウン博士、この方の論文によりますと、個々のリスクファクターが食道がんの発生にどの程度寄与しているのか。これを示します人口寄与危険度、飲酒が76.6%、喫煙が65%等、記載されております。これらの数値をもとに、例えば食道がんで100人の死亡が観察されました場合に、喫煙により食道がんで65人が死亡するというふうに計算されるものと理解しております。この考え方が正しいといたしますと、同じく飲酒で76.6人、生野菜、果物の摂取不足で43.9人等が亡くなったことになりますが、もともと食道がんによる死亡で合計100人だったにもかかわらず、この4つのリスクファクターだけで224人亡くなったという計算になります。日本のたばこ白書、アルコール白書、これを見ただけでも、例えば口頭がんとか、咽頭がんとかいうものになりますと、喫煙と飲酒という2つのリスクファクターだけで100%を超えるという計算になります。
 実際にはさまざまな疾病につきまして多数のリスクファクターがございます。また現実には、後ほど肺がんにつきまして御説明いたしますが、高齢化、加齢ということも大きな影響を与えていると考えております。これらを考えますと、喫煙につきまして真のリスクをどの程度と見積もるべきなのか、十分な検討がさらに必要であると考えております。
 これまで、たばこは合法であり、喫煙は選択の自由の問題であるという考え方を覆すために、喫煙による社会への害、これを主張するにはその根拠がまだ不十分ではないだろうかということを御説明してまいりました。次に「喫煙はいいところなど一つもない、悪しき習慣である。係る悪しき習慣、依存に身を染めている喫煙者自身を社会として救済すべきである」といった考え方につきまして御説明させていただきます。
 まず、たばこ喫煙の依存性について御説明いたします。「たばこの依存性は強い。喫煙者がみずからの意思で吸っているわけではなく、たばこがやめられない状態である」と主張する方々がいらっしゃいますが、こういう御主張をなさる方の中心は薬物依存を専門としていない研究者の方々が多いと理解しております。逆に、ニコチンの依存性が弱いということは、薬物依存の専門家の間では広く認められております。
 資料の10ページをごらんください。たばこの精神依存性はコーヒーより強いものの、酒よりはるかに弱く、また、身体依存は微弱であって、精神毒性はないということが示されております。また、アルコールや覚せい剤では、仕事をしなくなったり、手に入れるために犯罪に走ったりなど、社会的に問題を起こすことが多々生じますが、たばこでこのようなことは起こりません。
 それでは、喫煙は健康上のリスクファクターであるということは知っていながら、人はなぜたばこを吸うのかという疑問が生じます。これに対しましては、習慣になっていると答えられる方も多数いらっしゃいますが、同時に多くの喫煙者がリラックス、気分転換、ストレスの解消とお答えになっております。実際、年代別喫煙者率のグラフを見ますと、59歳までと60歳以上では喫煙率に大きな差が生じております。
 資料の11ページをごらんください。ごらんのとおり、20歳から59歳までは喫煙者率にさほど大きな差は生じておりません。これがなぜ60歳を境にして急に下がるのでしょうか。60歳を過ぎると突然ニコチンへの依存が弱まるということは考えにくいと思っております。やはり考えられる大きな理由といたしまして、多くの方が第一線を退き、ストレスが減少すると。そうなりますと、たばこをそれほど吸う必要もなくなり、やめやすくなるということではないかと考えております。
 次に、能動喫煙に関しまして、肺がんと種々の疾病との関連におきまして、疫学調査は一貫したリスクを示しております。JTもこれら疾病のリスクファクターに喫煙がなるということは認識しております。しかし、リスクファクターと言われるものは、先ほど述べましたとおり、私たちの身の回りにも多数存在しております。喫煙が疾病のリスクにどの程度寄与しているのか。これにつきましては、今後、さらなる解明が必要であると考えております。
 以下、その理由を御説明いたします。まず、喫煙による疾病で年間10万人もの方が亡くなるといった仮説につきましては、これが過度な見積もりではないだろうかということは先ほど御説明いたしました。これに加えまして、例えば肺がんにつきまして、厚生労働省発表の統計によりますと、喫煙者率が長年にわたり減少する一方で、肺がん死亡者の数は大幅に増加し続けております。たばこ規制の強化を主張する方の中には「今後も肺がん死亡者数は増加が見込まれている。これを減少に転ずるためには喫煙者を減少させることが必要である」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、この考え方は合理性に欠けているのではないだろうかと考えております。
 お手元の資料の12ページと13ページをごらんください。肺がんの死亡率と申し上げました場合に、実際に肺がんで死亡した人の割合であります粗死亡率と、社会全体の年齢構成が一定になるように補正することによりまして年齢構成の変動の影響を排除いたしました年齢調整死亡率とがございます。厚生労働省が発表されている我が国のデータを見ますと、年齢調整死亡率、これが近年横ばい、ないしは減少している中で、粗死亡率は一貫して大きく増加しております。この対比から見ますと、粗死亡率の増加というのは我が国の高齢化の進展に伴うものであろうと考えます。これを喫煙と関連づけるということは疑問があるということでございます。
 また、肺がんにつきまして、年齢調整死亡率と喫煙者率との関係を見てまいりますと、20年から30年程度のタイムラグを勘案したといたしましても、年齢調整死亡率と喫煙者率とは明確な相関を示していないと考えております。
 以上のとおり、大いに発展しました現時点における科学的知見を総合してみましても、喫煙に関しまして、その基本はあくまでリスク情報に基づき適度に喫煙されるか、あるいはしないかということに関しましては、個々の成人が判断されるべきものであろうとJTは考えております。喫煙に伴うリスクゆえに、JTとしてもたばこは適切に規制されるべきであると考えております。ただ、それはリスクの程度を勘案しました上で、また、たばこ以外で疾病のリスクファクターとされるさまざまな物質に対する規制との関係におきましても十分バランスのとれたものである必要があると考えております。
 本日はこれまで、たばこ対策はどうあるべきかの前段といたしまして、科学的にJTが考えていることを御説明してまいりました。これを踏まえまして、喫煙に対するJTの考え方を御説明いたします。
 まず、未成年者の喫煙防止についてでございます。JTは未成年者の喫煙につきましては個人の選択にゆだねるべき問題ではなく、あくまでも未成年者は決して喫煙すべきではないと考えております。その理由といたしまして、まず未成年者は心身の発達過程にございまして、それぞれの性格及び生活様式が未確立でございます。次の理由といたしまして、判断力が十分ではないという点でございます。JTは、たばこは喫煙のリスクを認識した上で判断すべきであると考えておりますが、未成年者につきましては適切な判断力がまだ十分に身についておりません。そして最後に改めて申し上げるまでもございませんが、未成年者の喫煙は法律によって禁止されております。JTは企業としての社会的責任を果たすという観点から、年齢識別自販機、店頭等での啓発、関係団体との連携をいたしながら、未成年者喫煙防止のための諸対策を実施してまいったということに関しましては前回述べさせていただいたとおりでございます。
 続きまして、喫煙者率削減に関する目標値の設定に対する考え方を御説明いたします。先ほどから申し上げてきましたとおり、たばこは適切なリスク情報を承知した成人が選択すべき合法な嗜好品でございます。こうした個人の嗜好の問題に対しまして国家が強制的に介入するということについては慎重であるべきであり、JTといたしましては喫煙者率の削減目標を設定するということには反対いたします。
 次に、たばこ税に関するJTの考え方を御説明いたします。たばこ税につきまして、JTといたしましては、まずたばこは法律で認められた合法な製品であり、また、財政物資として長年にわたり国の財政に貢献してきたということ。そして、税制というものは我が国の文化や歴史、経済的状況等を踏まえ、現在の制度が構築されてきたものであるということを申し上げたいと思います。
 個別の税のあり方につきましては、税制全体の中でさまざまな観点から検討され、政府において決定されるものであると理解しております。たばこ税につきましては、増税して税収分を生活習慣病対策の財源に充てるべきであるとの御意見もあろうかと思いますが、使途を特定した目的税的な制度を新たに導入するということにつきましては、高齢化社会を迎え、行財政改革が緊急の課題であるという現在の政府の方針からいたしますと、いささか疑問にも感じるところでございます。
 加えて、消費削減を目的とする増税は、JTを初め、たばこ耕作者の方々及び販売店も含めまして、たばこ産業全体に多大な影響を及ぼします。このようなことから、JTといたしましては、これらたばこ産業に従事する者を広く代表いたしまして、消費削減を目的とする増税、これには断固反対であると改めて申し上げます。以上、たばこ対策に対しますJTの考え方につきまして御説明を申し上げました。
 最後になりますが、この機会に、前回に引き続きお願いを申し上げます。当部会におきましては、今後も引き続きたばこを含め広範な御議論が進められるものと理解しております。受動喫煙に関し、米国環境保護庁の報告の正当性が裁判で否定されたという事実を御紹介いたしましたが、その理由といたしまして、先ほど御説明いたしました、データが恣意的であるということに加えまして、検討に当たり、たばこ会社が検討メンバーに入っていないということが挙げられております。JTといたしましては、前回参考人として参加させていただいた際にも述べさせていただきましたが、たばこ対策に関する議論が行われます際には、参考人としてだけではなく、より積極的な形で広く議論に参加させていただきたいと考えております。何とぞ前向きな御検討をよろしくお願い申し上げます。本日はこのような説明機会をいただきまして、まことにありがとうございました。重ねて御礼申し上げます。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございました。質疑ではないのですが、座長としてちょっと確認させていただきたいのですが、この対策の点で、WHOのたばこ規制条約等で示されている施策についてお尋ねしたいのですが、まず今の御説明で、受動喫煙の防止に関してはどのようなお考え、対策としてはいかがなのでしょうか。

 日本たばこ産業株式会社
 私どもは分煙を積極的に進めていきたいと思っております。

 多田羅部会長代理
 受動喫煙については、やや知見として疑問があるという御説明をいただきましたが、受動喫煙の防止そのものは進めるというお考えでよろしいでしょうか。

 日本たばこ産業株式会社
 はい。分煙という形をとりまして、積極的に進めてまいりたいと。

 多田羅部会長代理
 それは受動喫煙の影響を認めているという理解でよろしいのでしょうか。

 日本たばこ産業株式会社
 致命的な疾病をもたらすということでは、知見は十分ではないと思っておりますが、例えば、風邪を引いている方が近くで吸われるのは嫌だと思うのは当然でございますし、ぜんそくの方への影響等も当然あろうかと思います。そういう観点から分煙というものは積極的に進めていくべきであると考えております。

 多田羅部会長代理
 わかりました。それともう一つ、価格についてはいかがでしょうか。価格を上げることについて。これはWHOの方の措置として示されているものですが。

 日本たばこ産業株式会社
 WHOの考え方でございますが、価格に関しまして、基本的には各国の自主性、状況に任せているものと理解しております。その中で適切な、どの程度のことをしていくのか。これは各国の政府の主体性を重んじていると、

 多田羅部会長代理
 一応、価格の措置が効果を生む重要な手段であるという認識はされているのですが。

 日本たばこ産業株式会社
 WHOの認識としてそう思っておられることはそのとおりでございます。

 多田羅部会長代理
 たばこ会社では、価格については今のところどのようなお考えなのでしょうか。

 日本たばこ産業株式会社
 私ども、先ほど申し上げましたとおり、さまざまな税制の調和の中で現在の価格が出ていると思います。そのようなものをどういうふうに、今いきなり上げればいいかということを話すには十分な議論がなされていないのではないかと思っております。それと同時に、先ほど肺がんのところで申し上げましたが、喫煙率が大きく減少してきている中で、

 多田羅部会長代理
 大きく減少しているかどうかはちょっと議論があると思います。

 日本たばこ産業株式会社
 御議論はいろいろあろうかと思います。ただ、喫煙率が落ちてきている中で疾病が実際に減ってきているであろうかということに関しまして、私どもとしては疑問を持っているということを申し上げました。

 多田羅部会長代理
 わかりました。では価格についてはまだ結論を得ておられないということでよろしいのでしょうか。

 日本たばこ産業株式会社
 はい。

 多田羅部会長代理
 わかりました。それでは次の御説明を受けたいと思います。続きまして、フィリップモリスジャパン株式会社のピーター・ニクソン氏より、たばこ対策に関する考え方について述べていただきたいと思います。

 フィリップモリスジャパン株式会社
 おはようございます。再び私どもフィリップモリスジャパンの見解をお話しさせていただく機会をいただき、まことにありがとうございます。貴審議会の会議は、公衆衛生機関と私どもが対話を促進するための大切なステップであり、大切な機会であると考えております。
 さて、これから3つのトピックについて振り返らせていただきたいと思います。まず1番目が喫煙率の削減、2つ目が未成年の喫煙防止、そして3つ目がたばこ税についてです。
 昨年の貴審議会では、弊社が包括的たばこ規制の枠組みを支持すること、そして公衆衛生当局と共通の基盤を持つ多くの分野について御説明させていただきました。これらは本日お話しするトピック全般にわたる共通のテーマであります。
 まず、喫煙率を削減するために数値目標を設定するというトピックに関してお話ししたいと思います。弊社は、政府は喫煙者に禁煙を促し、そしてそれをサポートすることは適切なことであると考えております。しかし、特定の数値目標の設定に関しましては政府が決定されることであると考えます。弊社は、目標値についてではなく、規制によっていかにして喫煙率を減少させることができるかという点について焦点を当てて考えたいと思います。
 喫煙率削減という目標に向けてたばこ規制をどのように推進していくかを考慮する際、包括的なアプローチで取り組んでいただくことを審議会にお願いしたいと思います。このようなアプローチでは、たばこ使用による健康への影響に関する情報提供、未成年の喫煙防止、公共の場所での喫煙規制、製品規制、並びに租税政策など、さまざまな要素が考慮されるべきです。包括的な規制上の枠組みにより、たばこによる害を削減させるという公衆衛生上の目的を達成できると考えておりますし、また、弊社はその目的を支持しております。また、包括的規制の枠組みにおきまして、すべてのたばこ製品が同一に取り扱われ、事業の予測可能性がもたらされるものと考えております。
 たばこ製品の製造、販売、流通、そして包装上の要件、たばこ製品に関する情報の内容について、そして明確な指針を確立するために、政府が利用できる規制上の措置が多くあります。そのような措置に関する我々どもの考えの詳細につきましても、今後お話しできればと考えております。弊社は貴審議会と協力させていただき、このような分野での規制の可能性について話し合っていきたいと思っております。共に取り組むことにより、お互いの経験や知識を生かして、政府及び業界がたばこ製品の適切な規制上の枠組みを策定できると考えおります。
 さて次に、未成年の喫煙問題についてお話ししたいと思います。この問題について私どもフィリップモリスは皆様方と同じ懸念を持っております。私たちは子供に喫煙をしてほしくありません。また、病気を引き起こす製品を製造するものとして我々には子供の喫煙を防ぐために果たすべき役割があり、それに努める所存です。最も直接的で効果的な解決策の一つは、アクセス防止を強化して子供がたばこを購入できないようにすることであって、たばこ会社、販売店、ともに協力をして、アクセス防止に取り組んでいるところです。
 成人識別技術が自動販売機に導入されることによって、自販機でのアクセス防止という側面は2008年に改善されます。業界全体で多大な資金、資源を投入して、未成年者が自販機からたばこを購入できないよう、できる限りのことを行っています。未成年者が自販機でたばこを購入できなくなるにつれて、今度は店頭でのたばこ購入防止に引き続き注力していく必要があります。
 未成年者へのたばこ製品販売を禁止する法律がある場合に非常に重要なことは、その実効性、制裁措置です。それ相当の罰金が科せられ、たび重なる違反があった場合には、たばこ製品販売のライセンスを失うこともあるといったことを販売店が理解すれば、法令遵守は強化されるでしょう。政府には現行の未成年者喫煙禁止法の強化と、さらにさまざまな監視、そして法執行のメカニズムの実施を考慮されることを強く要望します。私どもの世界各国での経験から申し上げますと、強力な法執行、そして販売店の広範な参加が一体となることが未成年者の喫煙を減らす最も効果的な手段の一つなのです。
 しかし、アクセス防止のみがこの問題を解決できるとは考えておりません。未成年者の喫煙を減らすためには親、医療機関、法執行機関、教育者、販売店、政府、そしてたばこ会社など、多くの社会の参加者が共同の取り組みをすることが必要です。
 政府による未成年者喫煙防止策において中核となるべき要素は教育です。子供は喫煙のリスクを教育され、そして喫煙を始めないように促されるべきです。現在、喫煙防止のための教育が日本の学校で義務づけられていることは歓迎すべきことですし、子供たちのための他の組織、例えば塾ですとか、スポーツクラブなどでもこういった教育プログラムが広範に展開されることが望ましいと考えております。たばこ業界では未成年者にたばこを吸わないよう呼びかける、そのようなキャンペーンを実施し、このような取り組みに参画しています。
 また、子供たちにとって影響力のある人々、例えば親、教師、ロールモデルとなるような人たち、その人たちにも重要な役割があると考えます。このような役割を担う人たちは、子供が喫煙のような危険な行為を避ける、または行わないよう手助けできるように適切な訓練と援助を受けるべきです。
 最近の厚生労働省の調査によりますと、未成年者の喫煙率が過去4年間下がっているという心強い事実が示されています。しかしながら、未成年者に対し、たばこ問題への教育や認識を改善するために行えること、また行うべきことは、まだまだたくさんあります。この問題に取り組むため我々は貴審議会と協力してさらに適切な解決策を見出していくことを望んでおります。
 3つ目のトピックはたばこ税はについてです。あらゆるたばこ規制政策において重要となりますのは一貫性のある長期的な枠組みに基づいた租税政策です。長期的な枠組みは税収を確保するための政府戦略の基盤となると同時に、たばこ消費の削減という貴審議会の目標にも合致するものです。これは世界保健機関、WHOのたばこ規制枠組条約が掲げている目標の一つでもあり、この条約では、価格と租税政策はたばこの消費を削減するための効果的、かつ重要な手段であると述べています。
 租税政策はたばこを規制するための政府の包括的なプログラムにおける重要な要素の一つとなるべきであると弊社は考えています。そしてそのような政策では、増税、紙巻きたばこ以外のたばこ製品の税率、増税が密輸に及ぼす影響の可能性、租税政策が喫煙者に低価格の紙巻きたばこや、より安い形のたばこ製品への乗りかえを促してしまう可能性など、さまざまな面を考慮に入れ、総体的に見る必要があります。また、たばこ規制政策の目的を達成するためには、たばこ製品に課す税の仕組みや税率に加え、価格政策などの補完的な政策も考慮に入れることが必要です。弊社は今後、こうした点について政府と話し合っていければと考えています。
 税の引き上げ幅やその頻度を決めるのは政府の役割ではありますが、ぜひ貴審議会には意図しない結果を招くような急激な引き上げではなく、長期間にわたった緩やかな引き上げという考え方を御検討いただきたいと思います。こうした税の引き上げは理論的な算出方法に基づくとともに、インフレ率や可処分所得の増加に連動する必要があるでしょう。インフレや可処分所得の増加に伴い、たばこが割安とならないようにするためです。そうすることで、たばこに課せられる実質的な税負担を保持すると同時に、一回の大幅な増税が誘発しかねない安いたばこ、あるいは税不払いのたばこへの需要の移行を防ぐことができます。
 また、引き上がられたたばこ税の一部を、例えばたばこファンドに配分する仕組みを取り入れることもできるのではないかと考えます。このたばこファンドと言いますのは、未成年者の喫煙防止教育や喫煙防止の強化、あるいは喫煙が健康に及ぼす影響についての啓発キャンペーンなど、公衆衛生上の重要な取り組みの費用に充てることができます。
 明確に規定された緩やかで予測可能な増税を想定した長期的な租税政策をとることによって、政府はたばこの消費を削減するための長期戦略にたばこ税を組み込むことができます。また、たばこ業界には見通し可能な安定した事業環境がもたらされます。大事なのは、着実で緩やかなあらかじめ規定された増税は、急激な増税がもたらす想定外の影響を避けることができるということです。一回の大幅な増税は市場を混乱させ、競合や消費者の行動にゆがみを生じさせかねません。ほかの国々の経験から、意図に反した望ましくない結果を避ける方策についての重要な指針を得ることができます。
 例えば、EU諸国の幾つかでは、急激な増税が多くの喫煙者に、ただ高価格帯のたばこ製品から低価格帯のたばこ製品や代替品、偽装品などの非合法製品といった安い製品への乗りかえを促す結果となってしまいました。昨年11月に貴審議会でお話しさせていただいたとき、たばこの偽装品と密輸品が税関と法の強化という大きな問題へと発展したイギリスの例を挙げました。イギリス政府は2000年、市場に出回っている製品の20%以上が密輸製品であると推計しました。
 英語の原文のままで恐縮ですが、この報告書を参考資料としてお手元にお配りしております。イギリス政府はこの報告書で、「密輸は政府の税収に損失を与えるだけでなく、規制下にない供給元から安いたばこが提供されることで、健康政策における目標達成の進展をも台なしにする」と述べています。この結果、イギリスは2001年以降、増税率をインフレ率に沿ったものになるように引き下げました。また、WHOの報告書によりますと、2001年以来、たばこの密輸は一定水準にとどまり、10年ぶりに増加がとまった結果、政府の税収は増大しました。現在、日本ではたばこの偽造や密輸は大きな問題とはなっていませんが、こうした問題が将来的に起こらないよう、今後、増税を計画していく上で考慮していかなければならないと考えます。
 また、不法取引の影響に加え、急激な増税は小売業への打撃、業界での失業、たばこ農家への影響など、好ましくない結果を招く可能性もあります。弊社は、増税に応じて正規のたばこ製造業者が適切な価格政策によって事業を維持できるようにすることも重要であると考えます。弊社はこうした考えのもと、定期的で緩やかな増税を全面的に支持します。政府がたばこ消費の削減を望んでいることを理解しており、また、私どもも引き続き事業として存続していく必要があるためです。
 たばこ製品の製造、販売において適正なコンプライアンス基準に適合すべく投資し、また、製品の品質維持及び喫煙のリスクを低減する可能性のある革新的な製品の開発に必要な研究開発投資を行うことができ、また、進んでそれらを行おうとする責任あるたばこ業界を促進し維持することは政府及び社会の利益に即することになると考えます。研究開発は弊社にとって、また公衆衛生機関並びに消費者の方々にとって重要なことです。前回の審議会でお話ししましたが、私どもを含む多くの会社が病気のリスクを減らす可能性のあるたばこ製品の開発に取り組んでいます。
 たばこが引き起こす病気のリスクを減らす最善の方法は喫煙しないこと、喫煙者にとっては禁煙することであるという考えに同意いたしますし、改良された製品の販売は、たばこ消費を減らすという公衆衛生上の正当な目標を妨げるべきではないと考えています。しかしながら弊社は、他の機関なども述べているように、製品改良によってたばこ使用の害を低減していくことは重要な目標の一つであると信じていますし、またそれを追求しています。
 たばこ煙への暴露を減らす製品の開発、マーケティングには、客観的で厳格な科学的評価、成人喫煙者にコミュニケーションする際の責任ある方法、市場流通後の管理・監督が必要になります。これら要件のそれぞれに関して、公衆衛生機関及びステークホルダーからの意見やアドバイスに基づいて策定される政府規制がたばこ会社に対する指針、規則を規定できます。たばこ規制においても、この側面での規制の重要性が高まっていることから、さらに詳細について貴審議会と話し合う機会を設けさせていただければ幸いと思います。
 皆様の関心事項のすべてに適切にお答えできたかどうかわかりませんが、本日、このようなお時間をいただきましたことを重ねてお礼申し上げます。喫煙によって引き起こされる害の問題は、その低減という共通の目標に向かってすべての関係者が協調することにより最も効果的に取り組むことができると確信しています。私たち全員にとっての課題は、まず共通の基盤を見出し、これを認識することです。そうすることで皆様方の公衆衛生上の目的の達成をサポートし、また、私どものビジネスに予測可能性をもたらす包括的な規制の枠組みの策定に取り組んでいけるものと考えております。本日はまことにありがとうございました。

 多田羅部会長代理
 どうもありがとうございました。ただ、一つこちらから対策との関係で簡単にお答えいただきたいのですが、受動喫煙については触れられなかったのですが、いかがお考えか、簡単にお答えください。

 フィリップモリスジャパン株式会社
 世界じゅうの公衆衛生当局は非喫煙者に対して、心臓病ですとか、肺がんなどの疾病をこの受動喫煙が起こすという結論を既に出しております。したがって、政府当局、民間の企業側、両方ともこの事実をベースとして所々の公共の場における喫煙に関する政策、方針を決定していくべきだと思っております。その中には、公共の場における喫煙の規制ですとか、そのほかの対策が考えられるかと思います。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございました。それでは続きまして、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン株式会社の深町秀都氏より、たばこ対策に関する考え方について述べていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン株式会社
 ただいま御紹介いただきましたブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパンの深町でございます。本日は当部会にお招きいただきまして、たばこ対策全般についての弊社の見解を述べさせていただく機会をちょうだいいたしましたことに対して、まず厚く御礼を申し上げたいと思います。
 弊社はイギリスに本社を置くブリティッシュ・アメリカン・タバコ、通称BATと呼ばれておりますが、その日本における子会社でございます。BATグループにつきましては御存じのない方も多数おられるかと思いましたので、お手元の資料の2ページ目に簡単に要約を記しておきました。
 特にこの中で御留意いただきたいと思いますのは、BATグループというのは生まれたときから国際企業であったということでございまして、これが他のたばこメーカーの皆様とは大きく異なる点でございます。つまり、母体となる市場を持っていないということでございます。そのような企業が100年もの歴史を刻むことができましたのは、それぞれの国において、その社会環境や文化を最大限に尊重するという経営方針があったからでございまして、現在も多様性を尊重するということが企業としての大きな利点となっております。
 申し上げたいことは、いわゆるワン・サイズ・フィッツ・オールと言いますか、グローバルな何かが決められて、それをすべての国に一律的に適合するという考え方には立っていないということでございます。たばこ規制のあり方につきましても、日本の社会環境に合った形での取り組みが最も重要であって、他の国を模倣するという、そういう必要はないのであろうというのが弊社の基本的な姿勢でございます。
 弊社がBATジャパンとして本格的に活動を開始いたしましたのはわずか5年前でございます。その歴史においても、規模においても、まだまだ発展途上の段階にはございますので、いろいろな面で力不足であることは否定いたしません。しかしながら、たばこ産業に携わるものとして、いかにその責任を担っていくべきかを真剣に模索し試行錯誤を重ねながらも賢明に取り組んでまいりたいと存じておりますので、何とぞ格別の御指導、御助言を賜りますよう、お願い申し上げたいと思います。
 本論に入ります前にあらかじめお断りを申し上げたいと存じますが、たばこ規制のあり方や喫煙と健康にかかわる問題につきましては、弊社及びBAT本社のウェブサイトに詳しく掲載されております。必要に応じて御参照願えればと存じます。また、小生自身は科学的な専門家ではございませんので、特に科学的見地からBATグループのポジションについて御質問がある場合には、この場では残念ながらお答えすることができません。さらに詳細な御説明が必要となる場合には、本社の専門家のグループとの意見交換の場を別途持たせていただきたいと考えておりますので、あらかじめ御了解を賜りますよう、お願いしたいと思います。
 また、お配りいたしました資料の5ページ目の最下段に括弧書きで記しているところがあるのですが、タイプミスがございますので事前に修正をさせていただきたいと思います。5ページ目の一番下の括弧書きで、「英国財務省の2005年2月8日報告書」とございますが、正しくは「英国財務省に提出された報告書」ということでございますので、おわびをして訂正申し上げます。
 それでは、まず合理的規制とはいかがなものかという観点から意見を述べさせていただきたいと存じます。資料の3ページ目を御参照ください。そこに要約されておりますように、たばこという商品には政府による規制が不可欠であるということでありますが、それのみならず、当事者である我々自身が高いスタンダードを持って取り組む必要があると考えております。
 御高承のように、グローバルでは、日本たばこ産業様とフィリップモリス様及びBATグループでいわゆる国際マーケティング基準というものを定めて、節度を持った活動が展開されるように努めております。また、国内におきましても、各種法令はもとより、日本たばこ協会の自主基準をも的確に遵守するということに意を注いでおります。
 弊社内では、すべてのマーケティング活動が一定の事前スクリーニングを受ける体制となっております。また、それが実際にスクリーニングを受けたとおりに実施されているかどうか、これを監視する目的で社内監査の徹底のみならず、一般の皆様からのフィードバックをちょうだいする体制も整えています。
 合理的規制のあり方というのものを考える上でまず最優先で担保されなければいけないことは、このように当事者自身が高いスタンダードを持って取り組む意欲と体制を有していること、これが必要ではないかと考えております。
 3ページ目の中段に合理的規制のあり方についての意見を述べさせていただきましたが、これはOECDが各国政府の意見を取り入れながら発表した指針に基づいての弊社の見解でございます。一方的な規制は、仮にそれが正しい内容を含むものであるとしましても、しばしば求めるものとは逆の結果を生んでしまうということは皆様もよく御存じのとおりでございます。あらゆる角度からの検討が行われて、バランスのとれた規制を導入することが問題の解決につながる近道ではないかと考えております。
 喫煙率削減目標の設定というテーマをちょうだいしましたが、この観点から、今申し上げたような観点から申し上げて、残念ながら弊社としては具体的な数値目標の設定には同意いたしかねます。何らかの政策課題について取り組まれる場合に、達成目標を明確にされて、その実現に力を尽くすというのは極めて自然なことであって、一般論としては理解しております。また、納税者の立場から申し上げても、政府のすべての活動においてそのような取り組みがなされることについては大変有意義だろうと考えております。
 しかしながら、それは社会全体がその実現を支持し、積極的に受け入れるという状況が形成されて初めて意味のあるものになるのだろうと考えています。その点で、喫煙率削減というテーマは、現時点においては社会全体がそれを支持し、受け入れるという状況には至っていないのではないかと思っております。
 また、逆にそのような状況が形成されてゆけば、削減目標を設定しなくても喫煙率そのものは自然に下がっていくのだろうと考えられますので、喫煙率削減目標設定ということよりも、むしろそのような社会全体の支持をどのようにして形成していくのかというところに意が払われるべきではないかと考えております。
 この段で最後に申し上げたいことは、日本におけるたばこの流通販売が極めて整然とした規律正しい構造になっているということでございます。他の国が直面している密輸や模造品、あるいは不当なダンピングといったような問題が日本において発生していないのはこの整然とした環境のおかげであるということをぜひ皆様にも御理解いただきたいと存じます。これが一たび崩壊すれば、不適切な商品が流通し、ひいてはよりリスクの高い商品を消費者が手にする危険性も高まっていく恐れがございます。そのような状況が生じますと、それを監視し、摘発し、是正していくことに膨大なエネルギーが要求されて、健康問題に匹敵するような社会問題を誘発しかねないと考えております。
 これを避けるためにも、規制のあり方を御検討いただく場合においては、この整然とした規律正しい構造を維持することを絶対条件として、その分野で力を発揮しておられる業界内外の皆様の御意見も十分に聴取いただきました上で、現実的な策を御検討いただきたいと願っている次第でございます。
 次に資料の4ページ目にございます未成年者喫煙防止の取り組みでございます。BATグループは世界各国の政府やNGOと協力しまして、数々のプログラムを開発し、御提供申し上げております。日本においては目下のところ日本たばこ協会を通じての取り組みにとどまっておりますが、将来においては独自のプログラムを開発し、未成年者の喫煙防止にさらに積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
 昨今の社会状況を見ますと、未成年者にかかわる諸問題は日増しに大きくなっており、大人の責任というか、我々の世代の責任も極めて強く感じさせられます。喫煙問題の解決も焦眉の急務ではございますが、喫煙するなと言えばむしろ反発して喫煙しかねない現状を考えますと、未成年者の健全な育成という大きなくくりの中でいかに実行可能でバランスのとれた施策が打ち出せるかということが課題になろうかと思っております。
 弊社は業界の一員として今、日本たばこ協会で取り組んでやられている年齢識別自動販売機の導入、これを初めとして、可能な限りの努力をしていく所存でございますが、それだけでは、結局は対処療法にとどまってしまうのかもしれないという危惧を持っているということでございます。そういう意味で、より大きなくくりの中で未成年者問題に取り組んでいきたいと考えております。
 次に5ページ目のたばこ税制についてであります。健康増進の立場からたばこ消費量の削減を考えます場合、販売価格の引き上げが非常に有効な手段であろうということは弊社も同じ意見を持っております。また、消費量を削減するということが政府の目標として明確にされて、そのためにたばこ税も引き上げねばいかんということであれば、それに対して無条件で拒否するつもりはございません。
 ではどういう条件であれば拒否をしないのかということでございますが、そこにるる御説明申し上げておりますように、中立的であることとか、効率的であることとか、急激な変動を回避するものであることということでございます。少なくとも当事者の全員、すなわち財政収入の観点だけではなくて、それにかかわるメーカー、販売店様、そして特に消費者の皆さんが納得できるようなものでなければならないと。そのような変更であればよろしいのではないかと考えております。
 税率に関連しまして最近しばしば耳にする御意見に、イギリス並みの値段にすべきだというものがございます。これについては先ほどフィリップモリスさんの方で若干お話になっておられたと思いますが、改めて私の方から申し上げますと、5ページの一番下に触れているのですが、イギリスのたばこ協会が財務省に提出した報告書でございます。これはイギリスの税関当局と共同で出ているものでございますが、それによりますと、1994年以降、喫煙数量・喫煙率ともにおおむね横ばいと。税収は約8%減少という結果が出されております。
 その最大の原因は、先ほども御説明がございましたが、低価格品の商品が急成長したということと密輸品の急増。密輸品は、その時点では約20%と言われておりますが、最近の試算ではもう25%ぐらいに達しているという話がございます。また、低価格品、俗に言う手巻きが非常に多いのですが、中にはニコチン、タールが非常に高い粗悪のものもあるということで、そういうものに消費者が手を出してみているという意味で、健康リスクも増大しているのではないかという意見がございます。たばこ税見直しに際しましては、このような負の遺産が生じませんように、バランスのとれた策をとることが不可欠であると考えております。
 当初の御質問で、たばこ税及び価格についてということでございましたので、あえて5ページ目の下の方に弊社としての価格に対する見解を述べさせていただきました。そこに書かれておりますように、近々の値上げは避けがたいという状況でございます。ほかの国と違いまして、日本では歴史的にメーカーの自由意思による値上げというものが行われていないということがございます。そういう意味で、弊社では増税がありますと、すなわちそれがそのまま値上げと。その結果、数量減少と。こういうスパイラルになっておりまして、その影響を経費の節減によって何とか乗り切っていくという形で運営がされております。これは投資家の資金を預かって企業を経営し、一方で社会的責任も十分に果たしていきたいと考える者にとっては極めて大きな問題でございますので、何とか消費者の皆様にこのような現実を御理解いただくべく努力を重ねなければいけないと考えております。
 次に6ページ目でございます。喫煙と健康にかかわる弊社の見解。これは他のたばこメーカーの皆様とそれほど大きく違うものではないと理解しております。禁煙への取り組みにつきましても、それを手助けするための施策なり、援助なりがあってよろしいと考えております。しかし一方で、長期間の喫煙者であった方が自分の意思で禁煙に成功されている現実も数多く知っておりますので、しばしば耳にするニコチン依存症という病気が本当にあるのかどうか、広範囲にそれが存在するのかどうかにつきましては、残念ながら若干疑問を持っております。
 弊社といたしましては、喫煙と健康に関する消費者の理解をさらに高めていくための努力が不可欠であろうと考えています。弊社内には消費者からの御質問等を受け付ける窓口がございます。昨年から新しい健康注意文言表示をパックに掲載するようになりましてから、従来にはなかったような御質問が入ってくるようになりました。そのほとんどが非常に初歩的な御質問でございました。肺気腫とは一体何なんだとか、喫煙すると何%の確率で心筋梗塞になるんだといったような御質問でございます。
 このような御質問に対しましては、厚生労働省様のホームページをごらんいただくように御案内しておりますが、まだまだ消費者の大多数の方が健康リスクというものの本当の意味をよく御理解されていないのではないかという気がしております。
 私どもは、健康リスクを十分に理解された消費者の皆様に弊社の商品を選んでいただきたいと。そのためにビジネスをしているわけですから、その原点に立ち返って、消費者の皆様にできるだけ正確な情報をお伝えできるよう、そのためには何をしたらいいかということをあらゆる角度から検討していきたいと考えております。
 次に、公共の場における喫煙についての弊社の見解を述べさせていただきたいと思います。資料の7ページ目でございます。本件を考える場合の最大のテーマは、受動喫煙による健康リスクをどうとらえるかということであろうかと考えます。もしそこに明確な因果関係があるとすれば、公共の場における喫煙は厳しい規制を受ける必要があると考えておりますが、もし因果関係がないとすれば、これはどちらかというと道徳的な問題、モラルとか、そういう問題として、別の角度から取り組むべき課題になるのだろうと考えております。
 この点で、公衆衛生の観点から御判断をされます方々とたばこメーカーとの間では大きな意見の不一致があるというのは事実でございまして、何とか純粋に科学的見地からの議論が行われることを願っているところでもございますが、BATグループとしましては、先ほど日本たばこさんからも明確な御指摘がございましたが、WHOの方で指摘されているような因果関係が科学的には証明されていないと。これは米国で行われた大規模な調査によっても十分に立証されているという立場でございます。
 したがって、BATグループとしましては道徳的な見地から、道徳的という表現が正しいかどうかわかりませんが、そういう観点から、喫煙者と非喫煙者の双方が共存できるような環境をつくっていくということが最善の道であり、特に高いモラルを持っている日本社会においては必ずやそれが実現可能であろうと考えております。
 大変身近な話で恐縮ですが、BATジャパンの私どもの本社では喫煙率が約50%でございまして、平均よりもやや高い状況でございます。そういう状況ではございますが、指定した場所以外での喫煙は良識を持って差し控えることとなっております。また、社内会議においては禁煙を原則とすると。そのかわりに、1時間のうちに10分間の休憩を挟みましょうということで、フィフティー・テンと呼んでおりますが、フィフティー・テンというルールを導入して、喫煙者、非喫煙者の双方が、100%ではなくても、一定の満足を得られるように工夫をしております。
 たばこ会社がこのようなルールを導入するまでには社内でも大変な時間と労力がかかりましたが、幅広い議論を重ねることによって共存は実現しているということでございます。公共の場における喫煙につきましても、このような形で良識に基づいた幅広い議論が行われ、双方が共存できるような解決策が得られることを願っております。
 最後に8ページ目ですが、FCTCに関するBATグループの見解を申し上げたいと思います。BATグループとしては枠組条約を批准された各国において現実に即した検討が行われ、その検討過程にたばこ業界も参画させていただくことを強く求めております。これまでは、ともすると水と油の関係にございまして、意見を交換することすらできない状況にございましたが、このFCTCをよい機会ととらえて、たばこというリスクのある商品を現実的かつ効果的に規制していくためにはどうしたらよいかという観点から、前向きな意見交換ができるようになりますことを特に願い、申し上げているわけです。
 以上をもちましてブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパンとしての御説明を終わらせていただきたいと存じます。御清聴ありがとうございました。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございました。御報告の中で、最初の部分で、数値目標の設定には同意できないという話がございましたが、もしその根拠を簡単に御説明できれば、どういうことで同意できないのか。

 ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン株式会社
 先ほど、いみじくも河野市長の方から御指摘がございましたが、社会全体がそういうものをまだ完全に受け入れるというか、理解できる状況になっていないのではないかということでございます。科学的な話は全くできませんが、いわゆるマーケティングの観点で申し上げれば、御議論を伺っていると、どちらかというとサプライ側の御議論が非常に多くて、ディマンド側の御議論がないと。
 こういうものを思索される場合に、実際にはディマンドプルというか、需要者側がそれを求めるというものがなければ、なかなかビジネス上はうまくいかないというのがマーケティングの原則でございまして、御議論を拝見しておりますと、どちらかというとサプライサイド、サプライプッシュという感じになっておりまして、ディマンドプルが本当にあるんだろうかと。そこのところが、合理的規制という観点で申し上げたように、規制の費用対効果とかいうものを考えたときにいかがなものかなと。こういうことでございます。

 多田羅部会長代理
 喫煙者の意向が十分反映されているかどうかわからないということですか。

 ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン株式会社
 社会全体というふうに申し上げたいと存じます。

 多田羅部会長代理
 その合意をつくるために目標を設定したいという考えもありますので。

 ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン株式会社
 それも一般論としてはよく理解しているつもりでございますけれども。

 多田羅部会長代理
 わかりました。それでは最後になりますが、社団法人日本たばこ協会の阿部裕司氏より、たばこ対策に関する考え方について述べていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 社団法人日本たばこ協会
 日本たばこ協会の阿部でございます。本日は日本たばこ協会の活動について若干の御報告をさせていただく機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 初めに、私ども日本たばこ協会は国内外のたばこメーカーで構成される社団法人でございます。本日3社が意見陳述をいたしましたが、正会員メンバーはこの3社でございまして、ほぼ99%の規模を持ってございます。その他一部、輸入をしております中小の会社がございます。したがいまして、私どもの活動といたしましては、正会員3社を中心にいたしまして、たばこに関する社会の構成、客観的な理解を促進し、社会環境に適切に対応した諸活動を実施する、その項目を決めているところでございます。特に未成年者喫煙防止活動、広告・販売促進活動の自主規制、喫煙マナー向上活動の実施等、社会環境を踏まえた活動を展開しております。
 特に未成年者喫煙防止活動に最大の力点を置いているところでございまして、その施策の重要な一環として、当協会及びたばこ販売店の団体でございます全国たばこ販売協同組合連合会、日本自動販売機工業会の3団体で、御案内のとおり、2008年にすべての自動販売機を成人識別機能付とすることを決定して、実施の準備を進めているところでございます。
 協会の活動の一環でございますが、最近の法令改正を踏まえた対応、各メーカーが最終的には実施するわけでございますが、たばこ容器包装への新注意文言の表示、広告への新注意文言の表示等、細部の自主基準の策定をいたしまして、すべて新注意文言の表示が実施されているところでございます。
 その他、広告・販売活動に関しましても当協会は自主基準を策定しておりますが、平成16年3月10日にさらに自主基準を改正いたしまして、公共交通機関での広告は行わない、屋外看板広告は行わない等を定めているところでございます。
 次のページでございますが、未成年者喫煙防止活動につきましては、ここは協会として社会的使命を果たす観点から、未成年者の喫煙防止活動を関係団体の協力を得ながら継続して行ってきております。
 まず、先ほどのTIOJ自主基準でございますが、これは策定当初から、未成年者の喫煙防止の観点を大きな主眼としております。テレビ、ラジオを用いての製品広告は行わない、未成年に人気のあるタレント、モデル、キャラクターを製品広告に用いない、未成年者向けの新聞、雑誌等においては広告を行わない等でございます。
 さらに、未成年者の喫煙防止、これは販売店の活動も極めて重要でございます。販売店の活動を支援するために、ステッカー等の配布、各種啓発ツールの作成・配布等を行ってございます。
 さらに、その他啓発キャンペーン。青少年育成国民会議様、それから我々独自でございますが、中学校、高等学校向けの「未成年者喫煙防止啓発ポスターキャンペーン」を行っております。これには各省庁からも御後援をいただいているところでございます。
 さらに、地域における未成年者喫煙防止活動、これを草の根でやっていくために、各地域のたばこ販売組合、各地元自治体及び警察等、関係機関との未成年者喫煙防止協議会を策定いたしまして、これに参加してございます。
 さらに、屋外自動販売機への深夜稼働停止への協力。
 最後になりますが、成人識別機能付自動販売機について取り組んでおります。この成人識別機能付自動販売機については、11月にも若干、JTの方から触れられていると思いますが、最近の状況について少しお話を申し上げます。
 次の資料の5ページをごらんいただきたいと思います。4ページは歴史でございますので少し割愛させていただきますが、今後の取り組み部分からでございます。既に2006年に入ってございますので、既設自販機への成人識別機能部品の取りつけ、あるいは機能付自動販売機の置きかえということをスタートさせてまいります。今年2006年以降出荷される販売機はすべて成人識別機能を搭載することになります。並行いたしまして、識別カードの発行センター、データセンター、コールセンター等のインフラを構築するということで、まさに現在作業中でございます。
 2008年に全国に導入をいたしますが、まずパイロットエリアを選定し、先行導入を行います。これはシステムの安定性のため欠かせないものでございます。さらに、規模が大変大きいので、その後、全国を3ブロックに分けて段階的に導入。2008年上半期にはすべて全国導入を完了させる予定でございます。あと、瑣末でございますが、カードの発行時期につきましては2007年の末ぐらいからの予定でございます。
 特に最後に申し上げたいのは、未成年者喫煙防止の中で、この成人識別機の取り組みというのは業界で大変なお金と努力をかけてやるものでございますが、物理的に未成年者のアクセスを防止する効果があることはよくわかっておりますが、未成年喫煙全般の防止のためにはこの識別機で十分万全ということではございませんで、各方面と協力し、教育、あるいは警察の方々との連携もとりながら取り組んでいかねばならないと考えております。以上でございます。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございました。以上で御説明をいただきました。これから議事全般につきまして御質問、御意見をお願いしたいわけですが、私ばかり発言して申しわけないのですが、共通の理解を確認するために、日本たばこ株式会社にちょっと確認させていただきたいのですが、と言いますのは、前回の会議のときの御要望にこたえていただいて、たばこの健康被害に関する知見について御確認されている文献を御報告いただいております。その中で理解のために確認したいのですが、肺がんとの関係、虚血性心疾患との関係、COPDとの関係、低体重出産との関係において、たばことの関係が用量−反応関係を認めるというふうに御報告されておりますが、そういうふうにたばこ会社としても科学的知見を理解されているということでよろしいのでしょうか。

 日本たばこ産業株式会社
 そのとおりでございます。

 多田羅部会長代理
 ということは、たばこの喫煙は大なり小なり喫煙する以上、すべての人にそれなりの影響を残すという理解をされているということでよろしいのですね。

 日本たばこ産業株式会社
 そのとおりでございます。

 多田羅部会長代理
 そうしますと、科学的知見のところで意見がまだ一致していないのは、受動喫煙のところがまだ十分……。そこのところは、日本たばこ株式会社の方ではまだ科学的知見が不十分という御理解なんでしょうか。

 日本たばこ産業株式会社
 おっしゃるとおりでございます。

 多田羅部会長代理
 わかりました。それではそういうことで、きょう御意見いただきましたことを踏まえまして、あと1時間弱時間をいただいていると思いますので、御議論をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

 富永委員
 私の方から、4社の御発言に対して簡単にコメントをさせていただきます。
 まず、最初のJTさんの御説明でございますが、資料の1ページに受動喫煙に関する研究報告、特に肺がんとの関係のこれまでのデータのまとめを示されまして、これは49件の報告がございまして、そのうち統計学的に有意に受動喫煙による肺がんのリスクが上昇したのは6件の12.2%だとおっしゃいました。わずか12%という言い方かもしれませんが、これをよくごらんいただきますと、統計学的に有意でないけれども、相対危険度が1を上回っているものがさらに30件、61.2%ございまして、ですから統計学的に有意、有意でないにかかわらず、リスクが上昇しているのが36件の73.4%でございます。1のところに来ているのが6件12.2%、1を下回っているのが7件14.3%です。
 これを見ましてお気づきと思いますが、黒塗りのダイヤ、つまり統計学的に有意なものは、いずれもリスクが2ぐらいになっているものが多いですね。一番小さいので1.6、1.7、こんなところですが、これぐらいのリスクの場合に統計学的に有意になる場合には対象者の数が相当ないと、数百例、最低それぐらいないといけませんし、コホート研究だと相当の分母、観察期間がないと有意になりません。ですから、こういうふうにリスクが非常に低いもの、せいぜい1.3から1.5前後のものについては事前に統計学的な有意性を得るためのサンプルサイズを計算しておきまして、それを満たす症例を集めないと、統計学的に有意にならなかったからといって否定はできないのです。
 ここでは49件の研究、ばらばらに並べておられますが、我々疫学の専門家は、このようにそれぞれの研究ではっきりしないというのは、統計学的に有意にならないものも全部併合しまして集めると症例数がふえて、全体としての平均値的なリスクがわかります。これは専門学的にはメタアナリシス、イギリスではオーバービューという呼び方をしておりますが、そういうのから見ると、全般的に見るとやはり1.3前後で統計学的に有意になっております。ですから、そういうメタアナリシスの表もここに示さないといけないと思います。
 これを見まして、受動喫煙と肺がんの関係は余りないのではないかという見方は、端的な例えをしますと、ボトルに3分の1から半分、ワインが残っている場合、見方によっては「全部でないじゃないか」、「もう少ないじゃないか」と。「満杯じゃない」という見方もあり得ましょうし、見方によっては「ちゃんとワインは3分の1から半分ぐらい残っているから、空っぽじゃない。ある」という見方もありますので、データは変わらないのですが、見方が変わるということだと思います。
 後の2ページ、3ページ、4ページ、5ページ、これはほとんど新聞の記事ですよね。これはきちんとした研究報告に対してのコメント、批判は、きちんと原著論文のような形で専門家がやるべきでありまして、こういう研究報告と新聞の論調をかみ合わせること自体は間違っております。
 IARCの研究のときにも、確かにもうちょっとで有意だったのですが、それを「危険率が0.05以下でないから有意でない。よって否定された」というふうにして非常に曲解して、全世界にそういう情報を意図的に流した形跡がありますが、IARCのディレクターは記者会見で「統計学的に有意でないけれども、受動喫煙による肺がんを否定していないのだから、今後、その受動喫煙対策をやるべきである」と言っておりますが、そのコメントは省略されております。
 その次、6ページ、7ページ、8ページのところは、これはたばこによる超過医療費の算定方法でございます。超過医療費は、6ページから見ると、最近のものほど増加しておりますが、これは全般的な医療費の増にも比例しますので、これぐらいのばらつきは当然だと思います。最初の前田信雄先生のは非常にプリミティブな研究でございまして、特に初期の研究でもあり、これは比較の対象にならないと思います。2、3、4は大体比較できますが、これはこれぐらいで、現在2006年ですから、この1兆3,000億じゃなくて1兆5,000億とか、もっと増額している可能性があります。
 7ページ、ここで実際の喫煙者と非喫煙者の医療費を比べたので見ると、中には非喫煙者の医療費が高いから、余り関係ないのではないかという御指摘がありましたが、これはそんなことは全然ありませんで、幾つか問題がありまして、特に6番の辻先生らのは大崎コホートと言いまして、4万2,000人を対象にして、なお40歳から79歳、定年後の人たち、国保ですからこういう人たちも含めて、大変膨大な対象者をきちんとした方法で調査しておられまして、それで見ると2〜3万ぐらいの差はある。つまり、喫煙者の方が医療費は高くなっているのです。
 逆転しているもの、非喫煙者が高くなっているものでは、えてして現在働いている人、現職の人たちが多いのですが、これは我々専門家では、ヘルシー・ワーカーズ・エフェクト、健康な人が働けるというようなバイアスがかかりまして、より健康な人が働いて、なおかつたばこを吸っている。元気だからたばこを吸っている。そういったことも考えられるのです。たばこを吸っていない人には、健康を害して調子が悪いからたばこをやめたという人もございます。
 非喫煙者では、健康を憂慮してやめたということをさらにもう少し敷衍しまして、健康意識が非常に高いものですから、ちょっと異常があればすぐに医療機関にかかったりします。そうしますと、検査費とかいろいろかかりますので、結果的には、健康意識が高いことで医療費が高くなることもありますので、一概に非喫煙者の医療費が高いから、たばこは超過医療費はないということは言えないのであります。
 8番、これは特にコメントしません。
 9番、これは突如、食道がんを持ってこられて、複数のファクターとがんの関係を論じられましたが、こういう計算の仕方もありますが、我々疫学者は、例えばたばこと食道がんの関係を見る場合には、たばこと食道がんだけではなくて、ほかの飲酒、あるいは野菜の摂取不足なども考慮して、他の関連因子の影響を除いた上で、喫煙自身でどれだけ食道がんに影響があるかというような計算をします。
 これは食道がんですが、がん全体としては世界的に広く引用されている、「たばこはがんの原因の約30%を占める」という推計があります。日本でも少し低いと思います。肺がんに対するたばこの寄与度は、我が国では男子の場合、65%から70%ぐらいです。アメリカ、イギリスでは大体90%前後です。喉頭がんに至りましては95%ぐらいがたばこというふうになっておりまして、がんの種類によりましても寄与度は違います。ですから、何らかの死因全体、全死亡では大体1.3倍ぐらいになりますので、全死亡に対する影響も相当大きくて、その結果から約10万人はたばこにより過剰に死亡しているということが言えるわけです。
 10ページ、これは特に柳田先生の「たばこの依存性」の表を引用されているのですが、正直言いまして、柳田先生はJTと非常に深いかかわりを持っておられる先生です。柳田先生は、以前には実中研で猿を使った、たばこの依存性に関する研究などされておりまして、そのとき、まだ記憶に残っておりますが、NHKのテレビなどで、猿がたばこを吸うために必死になってキーをたたいて、一生懸命、人間と同じように必死の思いでたばこを吸っている像がありました。ですから、ああいうのを見ると、たばこ、あるいはニコチンは、中等度、あるいは微弱な依存性というのは到底考えられないことです。
 こういう「強い」「弱い」とか、「なし」「最適」という丸めたものでは非常に主観が入ります。ですから、この種の表をつくるなら数値をきちんと何倍とか、どれを1にすると何倍という数値を全部きちんと出すべきです。柳田先生の個人の御意見がかなり反映していると思いますので、この種の嗜好品・主要依存性薬物の依存性の比較をする場合には、薬理学者、あるいは薬理学会、あるいは精神神経学会など、中立的な立場の専門家がパネルをつくってこういうのを比較すれば、それは私は信用したいと思います。
 依存性については、やはりここでも中等度、あるいは微弱として認めておられまして、警告文書にもちゃんと「たばこは依存性があります」と書いておられますので、依存性があることは間違いないです。
 11ページ、これは60歳代、70歳代で喫煙率が低下していると。ストレスから解放されてという考え方もありますが、大体60歳を過ぎればいろいろ健康にがたがき始めます。急に健康状態が悪くなって、より健康意識が高くなって、健康に気をつけて、食べ物に気をつけて、散歩して、そういうことをやりますので、その一環で健康意識が高くなっている可能性もありますし、また、喫煙者では若死にをしますので、60歳以前にかなりの人が死んでいる可能性もございます。ですから、これはかなり慎重に考えないといけないと思います。
 その次の12、13ページです。これは特に12ページなどは、疫学の教科書で「いかに統計でうそをつくか」というのがあるぐらいなんですね。非常に誤解を招きます。例えば、喫煙率の左側の軸は、40のところが一番下になっていますね。これは当然、次のページの女性のように、0%からスタートしないといけないのです。特に勾配を強調しようと思うとこういうふうにすればいいわけですね。下がったところが右の肺がん死亡率の0に近いから、まさか0とは思いませんが、これは印象を著しくゆがめてしまいます。
 粗死亡率は年齢構成を考慮しない死亡率でありますから、高齢者がふえれば自動的に粗死亡率は上がります。これは肺がんだけではなくて、ほとんどすべてのがんが粗死亡率で上昇します。肺がん死亡数も、喫煙率が減っても死亡者がふえまして、これは当然のことながら肺がんにかかりやすい年齢の人が物すごくふえてきたからふえただけの話でありまして、ここで粗死亡率の線を置くべきではありません。
 イギリス、アメリカなどではこの喫煙率だけではなくて、一人当たりのたばこ消費量と肺がんの関係を示したものがありますが、それで見ると、この喫煙率よりもたばこ消費量の方がうんと肺がんとの相関関係がきれいに出ております。これは喫煙したからといって瞬間的に肺がんの死亡が下がっているわけではありませんね。イギリス、アメリカなどの研究の経験から見ると、喫煙率が下がって20〜30年たって肺がんの死亡率も下がってきますので、日本もやっと喫煙率が低下しまして、頭打ち、あるいはわずかながら欧米のように低下傾向を示しておりますので、非常に妥当な数値でありまして、ちょっと表現の仕方がまずいと思います。
 13ページの女性の粗死亡率も、これもまずいと思います。これでマクロに見ると、やはり女性も頭打ちから少しずつ下がってくるようになるのではないかと思いますが、全世界的に女性の肺がん死亡率の低下はまだ男性に比べて緩やかです。
 ほかの社も、健康日本21の中間評価に際して喫煙率の低下目標を示すべきでないという御意見がございましたが、それは後で一括して意見を述べます。
 2番目のフィリップモリスの御説明、これは前回も申し上げましたが、大変きちんと健康の害も認めておられまして、この資料のタイトルから見ましても、「フィリップモリスは包括的たばこ規制を支持します」ということで、前回とほぼ同じ御説明をされました。
 3番目のブリティッシュ・アメリカン・タバコさんは、BATの日本子会社であるせいか、どちらかというとJTさんに割に近いような、ちょうどフィリップモリスとJTの中間、ややJT寄りのような立場で話をされました。
 このBATのところで一括して御説明しますと、3ページのところですね。中段のちょっと下のところで、喫煙率削減目標の設定はということで、2〜3行書かれておりますが、口頭の御説明では設定には反対であるとはっきりと申されました。これは最近、自然にかなり減少傾向にあるから、それに任せてもいいのではないかというお話もございますが、やはり厚生労働省、あるいは医師、予防医学者のサイドから見ると、国民の健康の保持・増進は非常に重要でございまして、健康寿命を延ばす必要があります。ですから、そのためには悪い影響を与える喫煙率をできるだけ下げる必要があるのです。
 ですから、最終目標は健康寿命の延伸、健康増進でありまして、その手段として喫煙率の削減。それも喫煙率削減を、どういう数値になるかわかりませんが、目標が決まれば、それは目標が決まるだけではなくて、目標を達成するためにどうするかということで、逆に、さらにたばこ価格も上げないといけないだろうし、未成年者に対する喫煙防止、あるいは分煙対策等、包括的にたばこ対策を進める必要がありまして、それは数値が決定されてから、さらに具体的に決まってくると思います。
 私ばかり長くしゃべっていてもいけませんので、一応これぐらいでとめさせていただきます。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございました。基本的に本日御説明いただいた点について富永委員の方から御意見をいただきましたが、ほかに。

 渡邊委員
 前回もJTさんは佐藤さんに御説明いただいたのですが、今回も非常に恣意的で、富永先生のおっしゃったように、科学的でない資料をお出しいただいて、社としての判断はどちらにあるのか、多少あいまいなところがあったのは大変残念に思っております。ただし、多田羅先生の御質問で、表示されているリスク表示についてはJT社としてもお認めだということでありますので、その点についてはいいと思います。
 各社及びたばこ協会様ともに、未成年者については重点的な対策をやりたいということで、この調子でしたら10年後には未成年者は0になるかなと期待しているわけですが、現実には、前回お話ししてからもう数カ月たっておりますが、いまだにベンディングマシーンのたばこには健康表示が見えないような模造の箱がみんな置いてありますね。私は100カ所ぐらい見ましたが、そのまま入れていたのは唯一、渋谷のお酒を売っている店だけです。
 ですから、それプラス未成年者が喫煙してはいけないというポスターもベンディングマシーンに張ってあるというお話でしたが、ほとんどのところでありませんし、この2008年からの成人認識の案は非常いい案だと思いますが、この写真を見ても、ここに入れてあるたばこは警告表示が一つもないですね。これはどのような仕組みでそうなっているのか。それから、全国に今、50万台とか、60万台とかあるベンディングマシーンを何台入れかえるのか。2008年を目標に総入れかえなのか、今までのがそのまま残っての順次の入れかえなのかとか、その辺のお考えをお聞かせいただけますか。

 社団法人日本たばこ協会
 たばこ協会の方からお答えいたします。まず、自動販売機のダミーと申しますか、見本の部分が、規制表示がなかったり、隠されているのではないかという御指摘でございます。大変申しわけなく思うのですが、私ども協会の方でも気づいておりまして、先般、3社と協議をいたしました。すべて自動販売機の見本部分にも健康表示をきちんとやっていくということにいたしました。
 ただ、一つ御理解いただきたいのが、シガレットの場合は印刷してすぐにパッキングすれば自動的に市場へ出ていくわけですが、それだけでも大変な準備期間がいったのですが、一度自動販売機の中にセッティングされているものですので、現在、新しく注意表示をつくりかえて、相当な量を印刷しなければいけないものですから、少し時間がかかっておりますが、すべてやる方向で進めておりますので、御理解いただきたいと思います。
 第2点目の60万台の自動販売機についてどの程度新台にするのかということでございますが、2003年以降出荷しております自動販売機、既に市場についておりますもののかなりは識別用のユニットがございますが、これを後で入れることができるようにスペースをとってございます。正確な台数はわかりませんが、もう既にかなりの台数はユニットを入れるだけで済むような形にしておりますので、2006年度以降出荷いたしますものについては識別機能がついた台が出ていくということでございます。2008年にはすべて置きかえられると考えております。

 日本たばこ産業株式会社
 私どもの出しました資料に関しまして、富永先生からいろいろ御指摘をいただき、ありがとうございました。また、私どもの資料が恣意的ではないかという御指摘もいただいたわけですが、私ども今回、資料を作成したものに関しまして、外部の専門家の方にもごらんいただいております。同じデータを見ましても、意見の違いとかは多々出てくるものとは理解しております。ただ、そういう観点からも、前回もお願いしたわけですが、私どもと意見を同じにする立場の先生方も中にはいらっしゃいますので、そういう方にもお入りいただいて議論した方がむしろ冷静な、客観的な今後のあり方について決めていけるのではないだろうかと考えておりまして前回もお願いしたわけでございます。その点を御検討いただければ大変ありがたいと思っております。

 渡邊委員
 もしJTさんの方でそのような学者グループをお持ちなら、やはりそういう科学的なデータをお出しいただきたいと思うんですね。例えば、日本人で最近、循環器疾患に対するリスクが非常に明確に論文で示されておりますが、そのような国際誌に発表された論文は全く一つも引用されていなくて、あたかも非常にあいまいだというような恣意的な新聞記事だけ。しかも1990年代の新聞記事が出てきて、その後のフォローアップはどうなっているのかとか、むしろそういうことをきちんとお話しいただけた方がいいと思いました。

 日本たばこ産業株式会社
 御指摘は十分受けとめます。ただ、この新聞記事を載せました理由といたしまして、このEPA報告というものが日本でもいろいろ議論のときに用いられていると。それが裁判なりアメリカの議会調査の結果、どういう結果になっていたのかということを御存じない方も非常に多いということがございまして載せたというだけでございまして、それ以外の他意はございません。

 中島参事官
 一つ、今日の御議論を聞いていて、JTさん、それからブリティッシュ・アメリカン・タバコさんの方にお伺いしたいのですが、たばこ規制枠組条約がWHOによって批准されている。その中で第8条の第1項に、「締約国は、たばこの煙にさらされることが死亡、疾病及び障害を引き起こすことが科学的証拠により明白に証明されていることを認識する」という条項があるわけです。当然、我が国は批准しておりますし、発効しているということなのですが、WHOのこの条約第8条第1項、「明白に証明されていることを認識する」というこの事実に対して、きょうプレゼンテーションしていただいた中では、大いに疑義があるということを、既に批准した後なわけですが、改めておっしゃりたいと。こういう理解で2社よろしいのかどうかを確認させていただければと思います。

 多田羅部会長代理
 ではたばこ会社からお願いします。

 日本たばこ産業株式会社
 私どもとしては科学的に疑問に思っております。

 多田羅部会長代理
 それは根拠は出せるのでしょうか。先ほどの12しかないという、あの報告……。

 日本たばこ産業株式会社
 それももちろんございますし、先ほど富永先生の方からも御指摘がございまして、この表を見ても、これはリスクがあるんだという、1ページ目の表ですが、というお話でございました。ただ、受動喫煙に関しまして私どもが思っておりますのは、一般的にリスクと申しますのは、その関連の強さ、統計的に有意で十分なリスクがあること、一貫性があること、用量−反応関係があること、こういうことが、疫学データに基づいてリスクがあると判断するに当たっての通常の考え方だろうと思っております。そういう観点からいたしますと、これらデータというのがその条件を満たすものであろうかというところに疑問を持っているということが一つ。
 もう一つはメタアナリシスの話もございました。確かにメタアナリシスは非常に有益な手法であろうと思っております。ただ、メタアナリシスに関しましても、どういう論文をそもそも選択した上でメタアナリシスを行ったのか。受動喫煙の場合ですと、リスク比が小さくなっておりますので、そのバイアスなり、交絡因子、この辺の影響が非常に強く出てくると考えております。
 そういうものを考えた場合に、果たして受動喫煙について、致命的な疾病について大きな影響を与えているんだと。その原因になっているんだということが言えるという状況にあるか疑問に思っているということでございます。この辺は同じデータを見ながらも科学者によりまして御意見の差があろうということは十分私どもも理解しております。ただ、そういうものを純客観的と申しますか、純科学的に御論議なさるということは、これからのたばこ対策を決めていくに当たりましても有益ではないだろうかと思っている次第でございます。

 多田羅部会長代理
 ではBATさんの方、いかがでしょうか。

 ブリティッシュ・アメリカン・タバコ・ジャパン株式会社
 特にJTさんの方と打合せをしているわけではございませんが、今、日本たばこさんの方からお話があったのとおおむね同じような考えです。そういうことで、FCTCにおいては受動喫煙と害というものについて明確に言及されているわけでございますが、BATグループとしては科学的に根拠は十分ではないという理解を持っております。
 ただし、そうは言いながらも、お手元の資料にもそういうふうに書いてございますが、一定の環境下で、例えば両親がスモーカーであった場合に幼児に対する影響に何らかの関連性がありそうだとか、そういうふうなこともそれはそれで認めておりますので、そういう意味で、公共の場における喫煙というか、受動喫煙というものについて何らかのアクションが必要なのかもしれないとは考えているところでございます。
 ただし、WHOの方で御指摘されているように、非常に広範囲な形での健康の害というものについてはそれを立証するだけの科学的データがないのではないかと主張しているということでございます。

 多田羅部会長代理
 よろしいでしょうか。座長として思いますのは、この1ページ、非常に貴重な研究報告、このリスクの図を出していただいておりますが、今のところ、こういうもののまさにメタアナリシスなどをしていただくのが一番科学的根拠じゃないかと思いますが、それでは不十分ですか。日本たばこ産業の方は。

 日本たばこ産業株式会社
 メタアナリシスに関しましても、EPAの報告自体、メタアナリシスでございました。ただ、それも否定されました。後のメタアナリシス、まだあるのを存じ上げております。ただ、先ほど申し上げましたとおり、どういう、

 多田羅部会長代理
 メタアナリシスをやって否定されたエビデンスはあるのですか。

 日本たばこ産業株式会社
 そういうものは存じ上げておりません。ただ、メタアナリシスというもの自身にも一定の限界はあるということを、

 多田羅部会長代理
 それはどんな方法でも限界はあるけれども、そこで納得できるかどうかですよね。だから一応この1ページも、相当これはもう有意差の範囲も示しておりますので、メタアナリシスはできるデータだと思います。だからそういうものを出していくという努力ですね。ありがとうございます。

 富永委員
 この1ページのところで、最初にコメントするのを少し忘れておりましたので追加させてください。初期の研究では、特に夫婦間の喫煙状況、夫が吸っていて、奥さんが吸っていない場合のたばこを吸わない奥さんの肺がんのリスクを計算しているのがございました。1981年にトリコポロスと同時に世界で初めて発表された平山先生の研究も、夫がたばこを吸っている、奥さんはたばこを吸っていないという場合の奥さんの肺がんのリスクだけなのですが、あれは1965年、昭和40年ですから、当時ですとたばこを人の前で吸うのは当たり前の状況で、マナーも何もあったものじゃないんですね。ですから当然、あのころだと、受動喫煙の影響ははっきり出ると思いますが、その後、同じ夫婦であっても、欧米のように、夫が吸っていて奥さんは吸わない場合「あんた、ここで吸っちゃいけない」とか、「家の中で吸っちゃいけない」とかいうことで、日本でも最近は蛍族のような格好になっておりますが、そういう場合には、夫がたばこを吸っていたところでその奥さんは害を被らないんですね。ですから受動喫煙の影響は過小評価されます。
 最近の研究はそれなども加味されて、現に肺がんにかかった人が、配偶者、あるいは家族、職場などで本当に受動喫煙を受けたかどうかというのを、実際に客観的には証明できないのですが、申告なんですけどね。それを考慮したのもありますので、そういう観点で少し整理しないと、リスクが1より低くなっている研究はそういう目で見ないといけないと思います。

 多田羅部会長代理
 おっしゃるとおりと思います。疫学調査の御専門の立場で教えていただきましたが、そういう面があるということを含めてよろしくお願いします。

 笹月委員
 これまでの議論を伺っていますと、一つはサイエンティフィックにどれほど根拠があるかというのが一つの大きな柱だと思うんですね。これを議論するのは本当は容易なことで、これまでのデータをきちんと集めて、メタアナリシスも含めて解析するということをやれば、ここで余り異論が出るはずのものではないサイエンティフィックな話ですから。ところがそのデータ、その情報が、たばこ産業側からしか出ていないというところに、私、きょうの問題があると思うのです。
 ですから、どなたにお願いすればいいのか。富永先生、その他疫学の専門の方に、本当に疫学者から見たときのこれまでのすべてのデータの結論というものを示していただいて、そして議論の資料とすべきだと思うのですが、いかがでしょうか。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございます。その点で、せっかくそういう御意見を伺ったので私からも整理させていただきたいのですが、科学的データという点については大きく喫煙の影響と受動喫煙の影響という2種類あると思うんですね。きょう、たばこ産業の方に確認しましたところ、喫煙の影響については用量−反応関係を認められたということは、大なり小なりたばこの喫煙が健康影響を持つということをたばこ産業としては認められ、あるいはフィリップモリスにおかれてもその点については認められておられるし、BATもその点を認めておられるという点では、科学的データについて、喫煙の影響については、用量関係を幸いたばこ産業の方で詳細に文献も集めていただいていると思いますので、本日、その点については御確認いただけるのではないかと思うのですが、それでよろしいでしょうか。特にたばこ産業の方。

 日本たばこ産業株式会社
 JTとしては結構でございます。ただ、先ほどの話の中で、資料がたばこ産業側から出ているというお話がございましたが、ここに載せております資料は、ほとんどすべてがむしろ一般の独立した方のなされたものだと私は理解しております。

 多田羅部会長代理
 そうですね。こちらの喫煙の影響の方については相当詳細な、たばこ産業の恣意的というよりも、国際的に認められた雑誌について出していただいておりますので、我々から見ましても非常に十分なデータだと思いますし、結果としてたばこ産業の方でも用量−反応関係を認められましたので、その点を御理解いただいて、我々の審議会としても、部会としても一致した見解に達したということが言えるのではないかと思います。サイエンスの面ですね。対策の面については残っているかと思います。
 受動喫煙についてが、本日、たばこ産業及びBATさんの方で、若干まだサイエンティフィックなデータが不足しているのではないかということが指摘されました。しかし、これについてはWHOの枠組条約の方の第8条において明確に科学的な根拠があるということは国際的にそれなりに各国代表を含め了承した点であるので、相当コンセンサスを得られるのではないかという追加の発言もいただいたところであり、本日たばこ会社の方から出していただいた1ページの図についても、今後検討していく余地があるのではないかということになったと思います。
 そういう点で、科学的根拠の部分については本日相当いろいろ議論をいただいて、一致してきたのではないかなと私としては思うのですが。

 富永委員
 科学的根拠は厚生労働省でも委員会をつくって、あるいは研究班をつくって科学的知見をまとめておりまして、初版は昭和62年に「喫煙と健康問題に関する報告書」というのでまとめられております。これは俗称「たばこ白書」と申します。その後、2回改訂されておりまして、最新版が平成13年に出ております。その中にも、受動喫煙と肺がんも含めて、たばこの健康への影響が非常に詳しく、専門家約20名が分担執筆した形でレビューしておりますので、それをごらんいただきたい。
 その後もう4〜5年たっておりますので、現在また研究別のグループが構成されまして、研究班ベースで最近の知見もまとめて喫煙と健康問題に関する検討会報告書を改訂する作業をやっておりますので、いずれまた最新の報告書が出てくると思います。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございます。

 高橋(滋)委員
 私は全然たばこ問題の素人で、きょうは発言するつもりはなかったのですが、お聞きしていて少し思ったことは、こういう喫煙削減率目標みたいなものをお決めになるときの定め方について、今、影響ということが確認されたというお話でしたが、ではリスクとして、例えば先ほど富永先生、10万人過剰に死んでいるという話をされましたが、そうすると、例えば10の−3乗だという話になるのですが、いろいろな社会的なリスクとの比較で、どういうふうにいわゆる規制を考えていくのかという、そういう視点も必要なのではないかと思います。
 そういう意味では、影響が確認されたということだけではなくて、リスクの大きさとかその辺も少し含めて、もう少し科学的な根拠について詰めていく必要があるのではないかと思いました。
 規制を考える場合には、私がこういうことを言い出したのは、大気汚染物質の戦略目標であるとか、原子力の安全目標なんかの議論にもかかわった経緯があるのですが、やはり社会的公平性であるとか、規制の対象の特殊性であるとか、いろいろな比較をした上で社会的に合理的なリスクを、規制をどこに達成すべきなのかというところの比較が必要なのではないかと。
 そういう意味では、その辺の比較論を踏まえたこの分野での合理的な規制のあり方、目標達成のあり方ということも、少しそういった観点からの御検討もぜひしていただければなと思いました。その辺について少しつけ加えさせていただいたということでございます。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございます。座長ばかり申し上げて申しわけないのですが、おっしゃるとおりで、ただ、今まで影響の問題についてサイエンスの部分でも随分議論が分かれているような要素もございました。幸い、本日、関係の産業会社の方からも御出席いただいて、そのサイエンスの部分について、まず一致できるところがあるかということ。それが一致できれば、それではどのような対策を進めるのかということに順番としてなってくるような気がするんですね。その影響の重みについてはこれから問題になってくると思うんです。
 ですが、影響があるかどうかというところはなかなか今まで必ずしも一致されているとは言えない状況があったかと思うんです。幸い、この部会に御出席いただいて、科学的知見についての御議論をいただいたおかげで、考えてみるとそんなに違っていないじゃないかという、これは座長の独断かもわかりませんが、得られたような気がします。
 特に健康影響については用量−反応関係を認めていただいたことなどが大きいと思います。そういう意味では、たばこ産業も、フィリップモリスさんの方の包括的たばこ規制を支持しますというところまでは踏み込めないのでしょうか。気持ちとして。用量−反応が認められたら、そこまでもう……。

 日本たばこ産業株式会社
 私に対する御質問でしょうか。

 多田羅部会長代理
 そうです。答えにくいかもわかりませんけれども。

 日本たばこ産業株式会社
 私ども、本人にとってのリスクになる製品というのは、この世の中に多々あると思っております。

 多田羅部会長代理
 それはそれとしてください。まずたばこの問題について。それがあるからこれがいいとは言えないと思いますので。

 日本たばこ産業株式会社
 ただ、基本的に本人が判断すべき問題であろうかと思っております。

 多田羅部会長代理
 ですが、害があるものについては、社会からこのたばこ規制を支持しますという、そういうことにはならないのですか。

 日本たばこ産業株式会社
 私ども、合理的な規制に関しまして反対するなんていうことは全く申し上げておりません。ただ、いきなり「あなた、たばこをやめなさい」という形での話とか、

 多田羅部会長代理
 それは方法の問題ですね。

 日本たばこ産業株式会社
 いきなり入手も困難になるような増税を行うとか、そのようなことが論調で流れている部分もございますので、そのような合理性を欠いた規制には反対であると申し上げております。

 多田羅部会長代理
 そうすると、合理的な規制については反対ではないと。

 日本たばこ産業株式会社
 おっしゃるとおりでございます。何が合理的かということに関しましては、BAT様のお書きになった資料でもいろいろ書いてございましたが、そういう方向で規制していくことに関しましては私どもも積極的に協力申し上げたいと思っております。

 多田羅部会長代理
 わかりました。

 北村委員
 FCTCに加盟している我が国が、今、中島参事官が言われましたような、合意の内容の部分について、まだ日本の業者が異議があると。

 多田羅部会長代理
 受動喫煙ですね。

 北村委員
 受動喫煙の方ですね。一方、米国は合意していないと確認しましたが、していないフィリップモリスが、今度はむしろ日本向けに合うような意見を述べておられる。フィリップモリスは、これは日本向けの意見なのか。同じことをアメリカでやれば、なぜFCTCに参加しないで残っているのか。ですから、米国は米国で、今我々が日本の状況に合わせてやっているディスカッションが未解決で残っているのかなとも思いますが、なぜFCTCに加盟しない国がこういう包括に賛成だと。そして加盟した国がまだ異議があると。これは加盟しながらそんなことは許されるのかどうかということも厚生労働省に聞かせてもらいたいし、その辺齟齬を感じているのですが、御説明願いたいと思います。

 フィリップモリスジャパン株式会社
 まず、最初に申し上げなければならないのは、私が代表させていただいているのはフィリップモリスインターナショナルでありまして、これはスイス籍の企業であります。フィリップモリスUSAというのもありますが、これはまた別の会社です。なぜ枠組条約をまだアメリカが批准しないのかということに関して、アメリカ政府の意見を代弁することは、私にはできません。
 私、先ほどのスピーチのときにも申し上げさせていただきましたが、このたばこによる健康の害を削減するために、今我々にはコラボレーション、協力、共同をするという機会があるわけです。弊社としましては、この問題に関して問題点を話し合うというよりも、解決策に焦点を当てたいと思います。問題点を話し合うというのは、つまり科学的な根拠がどうかという、そういったところばかりを話すよりも、解決策を話したいと思っています。

 中島参事官
 条約の第8条1項についての北村先生からの御意見ですが、このたばこ枠組条約を、日本国政府として批准をしているわけです。その意味では、たばこ業界を所管しておられる関係省庁も合意をされていると私どもは当然のこととして認識している。
 また、条約でございますので、平成16年5月19日には国会での御審議もいただいて批准について御承認もいただいているということですので、私どもの認識としては、この枠組条約に則して、施策を関係省庁と一緒に取り組もうとしているつもりであります。第8条第1項にはたばこ業界としてなかなか納得できない点があるんだと言われるということについては、私どもの感想としては意外だなというのが正直なところでございます。

 多田羅部会長代理
 ありがとうございます。

 渋谷委員
 質問や、意見、御紹介で、少しお話をさせていただきたいと思います。まず質問ですが、事務局に、先ほども出ていたのですが、例えば税金を急に上げた場合と緩やかに上げた場合で、日本でのいろいろな影響について何かシミュレーションがあるのかどうかとかということ、税制の部分のそういったシミュレーションだとか、あるいは包括的にということになると、たばこ農家が転業して、例えばほかの農作物をつくるような、そういう支援策を、国としての対策をどこかで考えて、省庁が違うのでしょうけれども、そのような動きがあるのかとか、厚生労働省側だけの対応ということではなくて、全体的に、先ほどお示しいただいた施策以外にもまだ何かあるのではないかなという気がするのですが、そういうようなことがもしあればお聞かせいただきたい。
 先ほどの目標ということの考え方なんですが、規制をするのか、あるいは行動変容の目標としてモニターをするのかということで随分違うと思うんですね。健康日本21の考え方で言えば、規制ということではなくて、我々は行動変容をモニターしていく目標、地域で掲げていく目標、そういうふうに考えてきたのではないかなという気がするんですね。だから取り上げるという考え方ではなくて、いろいろな施策をして、国民の行動が変わっていく。その結果の指標して、モニターされる指標として、一つ喫煙率があるというふうに考えていたのではないかなと、これは以前のこの審議会の部会でも発言をしたように思います。
 実際、地域の中で21計画をそれぞれの自治体がつくっているところを見ますと、国が動かなくても、地域の住民はそういうものを取り入れて動いているところも当然あるわけですね。そういう動きもやはりあるということを知っていただきたいなと思うことがあります。
 喫煙対策というのは、一つは、21計画の中にもありますが、国民運動だということであるなら、いろいろなところが盛り上げをしていかないといけないということで、何回か前のこの審議会のときには、例えば日本医師会では禁煙対策をこうしていますというような、そういうアピールもありましたが、全国保健所長会でも、WHOあるいは健康増進法の動きを受けて、2003年10月の総会のときに「喫煙対策の推進に関する行動宣言」を出しております。ですから、日本公衆衛生学会も動きをしていますが、それらを考えますと、いろいろな団体が、そのように声を上げていくということが今後も大事ではないかと思っています。

 多田羅部会長代理
 最初に質問がありましたね。お願いします。

 矢島室長
 たばこ価格の引き上げに関するシミュレーションがあるのかという御指摘だったのですが、今、厚生労働省では、それは持ち合わせておりません。各省庁ともいろいろな意味で連携をする場面がございますので、私どもは、要するに転作というのでしょうか、そういうふうなものについては厚生労働省として考えを持っているわけではありませんが、たばこ規制枠組条約の中では、そういうふうな手法も条約の中ではいろいろと述べられておりますので、これはまた関係省庁ともいろいろとそこのところはよく相談をさせていただければと思います。

 多田羅部会長代理
 よろしくお願いします。ほかにどうでしょうか。

 石井委員
 私ども健康増進を考える立場の人間としては、まだ本日は資料としてお出しできなかったのですが、平成16年の国民健康・栄養調査の中でも、口腔に関する部分が、はっきりデータが出まして、歯の残存指数と喫煙率、それから歯周病の重症化と、歯周病と喫煙率というようなところが、はっきりデータが出ました。
 先ほど渋谷先生がおっしゃったように、生活習慣を改善していこうと。そしてそれは行動変容を促すためだというところで随分議論をして、そのときに、「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後に薬」というような標語が以前出たと思うんですね。この部会としての認識は、たばこ対策というか、禁煙に取り組む、喫煙率を下げるということは合意のもとで国民の方の健康増進ということを議論してきたはずなんですが、どうもたばこ産業の方々の認識と先ほどおっしゃったように齟齬があるというか、認識のずれが大きくあるという気がしてなりません。当然、株式会社でおやりになっているわけですから、製品を売って、利潤を上げて、株主、あるいはそれぞれ貢献をされるということだろうと思うと、おのずと立場が違ってきてしまっているんだなという気がします。
 私がはっきり申し上げたいのは、先ほどJTの方が、議論に参加する際、参考人という形ではなくて、委員として今後、意見を言っていきたいということをおっしゃったのですが、私はそれには反対です。健康増進する立場と、健康に被害があるものを売って売り上げを伸ばして利潤を得ようというところでは、全くかみ合わないとは言いませんが、そういう方を私は委員としてこの議論に加わっていただくというのは無理があるという気がしてなりませんが、いかがでしょうか。

 多田羅部会長代理
 今の御意見、ほかの方に先にお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 高橋(滋)委員
 2点、申し上げたいと思いますが、1つは渋谷先生のお話にありましたが、目標というのをどういうふうにとらえるのかというのが非常に重要で、例えば原子力の場合でも、規制の透明性で目標をつくるのか、それを規制に実際上結びつけて、実効性のある対策をとるための目標にするのかと。やはり目標の性格のとらえ方で随分目標値のあり方も変わってくるはずで、そういう意味で、実は健康日本21の目標値、100%というのはどういう意味なのかなと。一方で0%というのはどういう意味なのかなと考えていたのですが、それは行動変容を図るためだったら、こういう数字かなと。
 ですからそこは目標値のあり方を、私、ちゃんと参加していなかったのが多分悪いんだと思いますが、もしこれを制定する場合でも、国民にこういう目標値ですよというのをちゃんと明らかにした上で制定されるのが第2番目かなというふうに思いました。
 第2番目について、今、先生おっしゃった話ですが、最近、リスクコミュニケーションということが非常に言われていまして、委員として参加していただくのはどうかよくわかりませんが、対話をしていくというのは非常にこれからの施策を実施する上では重要なことで、規制される側の協力も得ながら、一つ一つステップアップしていくというのが最近の一つの重要な施策じゃないかと思います。
 そのときに科学的な根拠の違いについてもお互いに切磋琢磨しながら、不合理な認識は改めていくと。そういう精神が重要だということが最近の施策では非常に一般的に強調されているものでございますので、そこのところは少し考えていってもいいのではないかと思います。その辺をどういうふうにやるのかは実際上の施策を考えている方に少し考えていただきたいと思っております。

 多田羅部会長代理
 高橋委員のおっしゃった点のとおりだと思います。特に健康づくり、健康日本21と言われる中で、これは国民を挙げて取り組むということは、やはりお互いにいろいろな立場の人間が共通点をつくりながらみんなで歩んでいこうと、反対の人は仕方ないということではないと思うんです。やはり共通点を懸命に探していく。その場がこの審議会であり、部会ではないかなと、石井先生もわかっておられると思うのですが、そういう点、確認させていただいて、やはり共通点を見出していくという努力を今後とも続けさせていただくという点については御理解いただきたいと思います。
 その点、特に私の方で先ほどから強調させていただいておりますが、サイエンティフィックな喫煙の健康影響に関してはほぼ大きな点では一致が見られたのではないかと思います。受動喫煙については、本日のところまだサイエンス的なデータが不十分だという御指摘ではございましたが、幸い、分煙という格好で運動と言いますか、施策を進めることについては問題ない、賛成したいということもおっしゃっていただいております。その点も大きな共通点ではないか。
 また、今後のやり方についても、適切な規制と言いますか、取り組みを進めること、あるいはそれに対して共同し、協力する準備があるということをおっしゃっていただいておりますし、合理的な取り組みであれば進めることにやぶさかではないという御意見も本日いただいておりますので、これ以降、特に目標値の設定というのが当面大きな課題になるかと思いますが、そういう点を具体的にどのような方向でこれからの取り組みを進めていくかというところでこの部会の審議も一歩進めていただいたらどうかなと、座長としてはやや個人的、独断的な判断も入っておりますが、お願いできる状況はきょうはあったのではないかと思います。その点、非常に積極的に御審議に参加いただいた参考人の皆さんに感謝申し上げたいと思います。
 ということで、ちょっとまとめ風になってしまいましたが、ほぼ予定の時間なのですが、ほかに特段の御意見がありましたらお願いします。

 富永委員
 最後に一言だけ。参考資料として「中央合同庁舎第5号館庁舎内の全面禁煙」、先日も新聞に出ておりまして、これは前回の部会でも少し意見が出ておりましたが、大変画期的なことで、部会としても高く評価すべきではないかと思います。

 多田羅部会長代理
 局長、何かありますか。局長の御英断もあったのかと思いますが、全面禁煙ということでやっていただいていると。富永先生、御指摘ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 それでは、シナリオの方に戻らせていただいて、長時間にわたり貴重な御意見、ありがとうございました。今申し上げましたように、これから喫煙率の目標設定をどうするのかというのが具体的な一つの大きな課題になってくるかと思います。そういうことを、設定そのものが問題だという議論をいただきましたが、そこらあたりを含めて、これからの課題かと思います。その点については当面、引き続き、健康日本21中間評価作業チームは富永チームでございますが、そこで御議論いただいて、その方向で一定の成案ができましたらまたこの部会に出していただいて、参考人の方にも、私の御希望ですが、参加いただいて、議論していくという方向を進めていただければどうかと思います。
 それでは、今後のスケジュール等につきまして事務局からございましたらお願いいたします。

 矢島室長
 どうもありがとうございました。今後の日程につきましては、詳細が決まり次第、御連絡をいたしますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

 多田羅部会長代理
 それでは閉会といたします。ありがとうございました。
(了)


問合せ先
健康局総務課生活習慣病対策室
調査総務係 主藤・松浦
電話 03−5253−1111
 内線2346・2342

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