06/02/21 第30回労働政策審議会職業能力開発分科会 議事録について     第30回 労働政策審議会職業能力開発分科会 日時 平成18年2月21日(火)16:00〜 場所 厚生労働省9階省議室 ○今野分科会長 ただいまから第30回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いたし ます。出欠状況ですが、佐藤委員、中馬委員、小栗委員、草浦委員がご欠席でございます。  それでは議題に移ります。本日の議題は、お手元にありますように、「第8次職業能力 開発基本計画の検討について」です。まず事務局から資料のご説明をお願いします。 ○杉浦総務課長 本日お配りしてある資料をご紹介させていただきます。資料1が今日、 主にご議論いただくもので、前々回に引き続いて、第4部の施策の基本となるべき事項の 各論の部分の後半の案で、後ほど説明をいたします。資料2が、第8次職業能力開発基本 計画の構成(案)ということで、全体の目次構成を書いた表題だけ並べたものです。資料 3ですが、前々回の各論の前半をご議論いただいた時に、委員の方々からお出しいただい た意見の概要です。次回以降に基本計画の案文を提出して、ご議論いただきたいと思いま すが、出していただいた意見を反映させていきたいと思っています。参考資料の1は、前 回提出した資料で、前半部分のものです。特に修正を加えたものではありません。参考資 料2というのが横長のもので、基本計画策定に当たっての論点等ということで、これは3 回前の実施目標の部分の際にご議論いただいたものです。最後の参考資料3は、本日ご議 論いただきます部分に関する資料集ですので、併せてご覧いただきたいと思います。  それでは資料1について説明いたします。前回ご議論いただいた残りの部分ということ で、前回にご議論いただいた部分については、表題だけ並べております。1の(2)の能 力評価インフラの整備についてです。これについては、現行計画期間中の主な取組として、 技能検定職種の見直し、職業能力評価基準の整備、あるいはホワイトカラーの職業能力評 価の推進等といった取組を行っているところですが、課題の整理として、能力評価制度に ついて、労働者の能力を適正に評価するということによって、企業内外を通じた職業キャ リアの円滑な展開を図るためのインフラとしての役割を効果的に果たしていく必要がある。 このため、各評価制度について、色々なニーズや働き方の増大等を踏まえつつ、各職業キ ャリア形成の段階に応じて、活用促進が図られるよう、整備充実に努めるということを課 題として書いてあります。  今後の方向性として、まず職業能力評価基準については、企業等のニーズを踏まえた整 備・充実、あるいは業界団体も活用した普及促進等ということです。技能検定制度につい ては、企業・団体等のニーズを踏まえた検定職種の見直し、受検機会の拡大、民間活用の 促進等を挙げております。それから、ビジネス・キャリア制度については、ユニットの大 括り化、試験制度の整備等による能力評価機能の強化等です。若者の就職基礎能力(社会 人基礎力)の向上を図るためのYES‐プログラムの普及促進等というものを挙げており ます。  項目としては飛びますが、次に3頁の大きな4。「現場力」の強化と技能の継承・振興 という項目です。(1)として、「現場力」の強化に向けた能力開発です。現行期間中の 取組としましては、事業主や事業主団体が行う教育訓練に対して公共職業能力開発施設の 指導員の派遣や施設の貸与を行う等の支援を実施しております。公共職業能力開発施設等 において、若年技能労働者の養成や「日本版デュアルシステム」の実施をしております。 それから地域の企業の在職労働者に対する職業訓練を行っているところです。  課題として3つほど挙げています。1つは、いわゆる、色々な事故などの発生等によっ て、これまで産業を支えてきた現場における現場力というものが問われています。また、 製造業を中心に、色々な高付加価値製品や、戦略性の高い製品の製造、製品の開発・設計・ 試作などは国内で行うというようなことの中で、現場の技術・技能と、それを支える人材 の重要性が見直されている。こうした中で、現場を支える人材の不足、あるいは若手後継 者層の不足の問題を抱える一方で、いわゆる「2007年問題」により、技能の継承の問題が 課題となっているということが書いてあります。  今後の方向性としましては、これまでご議論いただきました、「実践型人材養成システ ム」を立上げ、就労・就学に次ぐ、双方の要素を兼ね備えた第三の選択肢として普及・定 着させるということ。また、大企業を中心とした認定職業訓練短期大学校制度や、中小企 業を対象とした認定職業訓練制度についても、必要に応じた制度の見直しを行いながら、 現場を担う中核となる人材の育成・確保に資する制度として、普及を図っていく。さらに、 中小企業事業主に対する資金、あるいは人材募集面での支援制度の活用などを進めるとと もに、派遣労働者、パートタイム労働者、契約労働者、請負従事者などの業務に応じた技 能評価や、能力開発の促進について政策面からの配慮を進めるということ。この他、公共 部門におきましても、「実践型人材養成システム」に係る支援のほか、中堅技能者層を主 たる対象として、生産管理や安全管理など、能力の幅を広げるためのオーダーメード訓練 の実施、指導員の派遣、施設・設備の開放等の事業主に対する支援を行っていくというこ とです。  (2)として技能の継承・発展のための施策です。現行の取組としまして、高度な熟練 技能を有する者の認定を行って、そうした人の情報収集を行うとともに、実技講習等の実 施のための認定職業訓練校への派遣等により、活用する事業を実施しております。  課題の整理として、「2007年問題」等により、熟練した技術・技能や管理能力が継承さ れずに失われてしまうという懸念があり、とりわけ中小企業においては、そういった人材 確保面、ノウハウ面、資金面での課題ということがありますので、若い人たちをそういう 現場へ持続的に確保するとともに、熟練技能を円滑に継承していくための支援措置を講じ ていく必要があります。また、中小企業の集積が存在して、そうした集積の中で、ネット ワークを形成し、技術を磨くというようなことが行われてきたわけですが、こうした集積 が衰退するということになれば、技術・技能というのは失われることになるのではないか ということです。  今後の方向性として、技能継承を円滑に進めるために、引き継ぐべき技術・技能を明ら かにして、定年延長や継続雇用によって、中堅技能者にそれを引き継いでいくとともに、 若年層の現場への誘導と育成、非正規従業員の多能工化などの能力開発の措置を一体とし て講じていく必要があります。このため、色々な措置を進めるための計画の策定、技術的 な問題点に係る情報提供、相談・援助などを行う窓口を開設する。技能継承のための色々 な取組に対するノウハウ・資金面での支援施策を強化し、「実践型人材養成システム」の 立上げと普及・定着を進めるとしております。また、企業内における場合以外にも、中小 企業同士がネットワークを形成する、産学共同のクラスターを形成するなどの動きがあり、 能力開発行政においても、関連の行政機関との連携の下に、交流の場の設定や公共の施設 と企業との産学連携、施設の開放、オーダーメード訓練の実施などによって、技術的援助 を積極的に行うということが書いてあります。  次は(3)技能の振興のための施策(技能競技大会等)です。5頁。現行の取組として は、各種競技大会(技能五輪全国大会、技能グランプリ等)といった競技大会を開催をし たり、顕彰制度として、卓越した技能者の表彰、厚生労働大臣表彰等を行っております。 課題の整理ですが、ものづくり分野をはじめとして、技能の重要性についての国民の理解 を進めていくということで、技能振興施策の積極的な推進を図る。とりわけ次の世代を担 う若者が技能の現場に対して興味を持ち、自ら進んで技能の習得に向かう環境を整備する ということが課題として書いてあります。  今後の方向性として、若者に対する技能やモノづくりの振興を図るために、教育機関等 の関係機関と連携をして、児童・生徒の段階から、そういった魅力に触れる機会をつくっ ていく。それから各種競技大会などのPRと、観戦を通じた技能の振興を並行して進めて いく。特に、2007年に「技能五輪国際大会」と「国際アビリンピック」を同時に開催する 「2007年ユニバーサル技能五輪国際大会」が開かれることになっていますので、これを契 機として、大会後も含め積極的な技能振興とPRに努めていく。さらには、技能競技大会 優勝者等のキャリアの紹介等を通じた高度技能者のキャリアモデルの提示と周知・啓発、 企業内における様々な高度技能者の顕彰制度の紹介と普及を進めていくということです。  次が大きな5の「国際化に対応した職業能力開発の推進」です。(1)が、外国人研修・ 技能実習制度についてです。現行の取組としては、外国人研修指導・援助事業というもの を実施しており、(財)国際研修協力機構(JITCO)を通じた制度の適正かつ円滑な 実施を図っているところです。課題の整理ですが、海外諸国から職種の拡大の要望が出て きております。国内におきましては、実務研修期間において、研修手当の不払いや不適正 な時間外実習など、技能実習期間において、賃金不払いや失踪等の事案も一部発生してい ます。技能実習修了時などの技能検定受検が、ほとんど行われないなどの、成果の検証が 不十分な点が課題として挙げてあります。  今後の方向性ですが、技能実習に移行する対象職種について、効果的かつ適切な技能移 転という観点から相手国の技能移転に関するニーズや国内の受入体制を踏まえ逐次見直し を図っていく。また、実務研修に係る法的な保護のあり方を検証するほか、制度の周知、 巡回指導の展開等により、賃金不払いや失踪等の不適正事案の根絶を目指す。さらに、成 果を検証して、政策評価に資するということで、修了時の技能実習生の技能検定の受検の 促進をする。送出国に対して、帰国後の状況についてのフォローを可能な限り行うとなっ ております。  (2)が質の高い労働力育成に向けた国際協力です。現行の取組として、開発途上国に おける能力開発施設の設置・運営、職業能力開発の施策の策定などに関する専門家の派遣、 研修員の受入れ等の技術協力。職業能力開発総合大学校におきまして、外国人留学生を受 け入れております。国際機関等を通じたアジア太平洋地域の人材養成分野の活動に対する 協力、我が国の技能評価システムの開発途上国への移転というような施策を講じておりま す。  課題の整理です。これまで海外での色々なプロジェクトを実施をしたり、研修員を国内 に受け入れたりということで技術協力を行ってきたところですが、今後の課題としては、 こういった技術協力を東アジアにおける経済発展の基盤となる労働力の育成・確保のため のシステムづくりに係る協力を中心にするという形で、戦略的に再構築することが求めら れております。  今後の方向性ですが、そういった東アジアを中心とした国々における質の高い労働力の 育成・確保という観点から、「技能評価システム移転促進事業」などを通じて、諸国に展 開する日系企業と連携しながら、システムの構築・改善のための協力を行うとともに、製 造現場における指導者層の育成・確保の推進をしていきたいということです。能力開発分 野の技術協力についても、協力過程において、相手国業界団体等との連携を積極的に図る とともに、能力開発や評価制度に関する政策助言、現地政府の人材育成といったものを重 視していくということです。さらにILOとかAPECなどの国際機関を通じた国際協力 においても、各国の能力開発システムが有効に機能するよう、我が国の長年の実績を有す るシステムの長所や運用のノウハウを紹介することなどにより、その貢献度を高めていく。 それから先ほども出てきましたが、職業能力開発総合大学校における留学生の受入れを積 極的に推進するといったことが書いてあります。   (3)が、企業活動のグローバル化に対する支援で、7頁からです。現在は、海外に展 開している中小企業を対象にして、情報提供やセミナーの開催等により、実践力のある国 際人材の育成を推進するグローバル人材育成支援事業を実施しております。今後とも、引 き続きこれをやっていくわけですが、中小企業を中心として国内外で国際業務を担うこと が出来る実践力のある労働者の育成ということが課題になっております。そういった企業 等に対する色々な情報提供とか、相談・指導を行うということを方向性に書いてあります。  次に大きな6「職業能力開発施策の推進体制の整備」です。(1)が、公共部門と民間 部門の役割分担及び連携についてということです。現行における考え方ですが、公共部門 は、民間の活力を最大限に活用するという原則の下に、能力開発の基本的な枠組みの設定 ・調整を行うほか、職業訓練については、事業主や民間教育訓練機関が行う職業訓練の促 進、民間部門では、なかなか実施が期待し難い、あるいは実施していない分野における訓 練を自ら公共部門として行うということを基本的な役割として考えております。  課題の整理ですが、「官から民へ」、「民にできることは民へ」という考え方に基づく 公共部門における事業の見直しを徹底する。他方、「民ではできない分野」あるいは「民 だけではできない分野」を具体的に考えていくことが必要であろうと。特に、近年、若年 者問題、現場力の衰退、低所得者層の問題、女性の能力発揮、地域や家族等の人を育てる という環境の問題などへの対応が重要ではないかということで、「官と民」という対立軸 に対して、官民協力による「公」という考え方を形成していく必要があるのではないかと いうことを書いてあります。  今後の方向性として、民間の教育訓練機関で実施可能な分野については、公共部門の削 減、効率化を行っていく。委託訓練などによる民間の機関の活用と就職率などにより、実 際の成果を評価する。それから求職者の選択を機能させた教育訓練の実施を図っていくと いうことです。「民ではできない」と「民だけではできない」というような分野として考 えられるものは、例えば、ものづくり分野等の民間教育訓練機関が少なかったり、あるい は存在しないといった分野における教育訓練の実施や事業主支援。それから労働市場のイ ンフラとして、職業に係る教育訓練の受け皿、能力評価制度、キャリア・コンサルティン グ制度等、官民連携による整備の問題、3(○の中に3)として、現場力の衰退に対応し た能力開発、若者のキャリア支援、母子家庭の母等低所得者層に対する能力開発機会の確 保というようなところに対しては、労働市場の補完ないし「歪み」の是正として公的な対 応が必要であろうと考えております。今後、労働市場を整備し、機能させることと並行し て、上記3(○の中に3)のような分野や地域における社会貢献分野の育成といったよう なこと、人を育てる環境づくりなど、先程も出てきましたけれども、「公」の形成を進め ていくことが重要ではないか、ということです。また「民」の方においても、人材育成の 面における企業の社会的責任等の公的な役割が期待されると書いております。  (2)としまして、国と地方公共団体との役割分担及び連携についてです。現行の計画 における考え方は、国は雇用対策の一環として離転職者の早期再就職を図るための職業訓 練を行う。あるいは、高度・先導的な教育訓練を開発普及させるということで、実施教育 訓練を自ら行うということにしています。地方公共団体は、地域における産業の人材ニー ズや職業訓練ニーズをきめ細かく把握しつつ、これに対応した職業訓練を行う等、地域の 実情に応じた職業能力開発を行うという考え方で整理をしております。  課題のところですが、こういった役割分担を踏まえつつ、地域の様々な能力開発ニーズ を踏まえた効果的な能力開発を推進していくために、地方の主体的な取組を促進するとい うこと、また、地方公共団体との連携をより緊密にしていく必要があるだろうということ です。  今後の方向性ですが、地域における産業界・企業の人材ニーズに対応するための能力開 発を促進することや、福祉から雇用へというようなことでの、能力開発面での主体的な取 組を推進していく。地域における能力開発を実施するにあたり、雇用対策の一環としての 行政が推進出来るよう、その訓練コースの設定等について、連携・調整を積極的に図って いくと。さらに、障害者あるいは母子家庭の母、生活保護受給者といったような方々の能 力開発対策に対しては、市のレベルを含めた連携を進めることにより、関係機関との連携 を密にしていくとなっています。  (3)が、関連する諸施策との連携です。現行の考え方ですが、ミスマッチの解消とい う観点からは、職業安定機関と、職業能力開発機関との連携です。人材の育成に当たり、 学校教育に関する施策を始め、関係省庁との連携を進めているところです。課題の整理で すが、職業訓練政策から職業能力開発政策へ、さらに、職業キャリア支援政策への転換を 視野に入れた関連施策との連携ということを課題として書いています。  今後の方向性としまして、職業能力開発政策は、職業安定行政と相俟って、広い意味で の雇用対策の一環をなすもので、職業安定行政と表裏一体の関係でございます。他方、職 業能力開発政策は、職業訓練や、技能検定にとどまるのではなくて、労働者の職業能力を 高めていくということで、働く者全般を対象とした生涯にわたる職業キャリアの支援政策 として展開をするということが、時代の要請ではなかろうかということで、こういった観 点から今後重要な政策分野としましては、まず、小中学校等における早い段階からの職業 意識の啓発といったような事柄や、あるいは、インターンシップの実施、ニート・フリー ター対策、今回作る実践型人材養成システム等、若年キャリア支援対策などの教育施策と 産業施策との連携の問題。それから、質の高い教育を受けることにより、より一層の能力 開発を図るために、大学、大学院等で行われている高度かつ実践的な教育の活用といった 面からの教育行政との連携。障害者、母子家庭の母、生活保護受給者等について、福祉か ら雇用への誘導というような能力開発施策についての福祉行政との連携。中小企業者等の 自営業者も視野に入れた、起業等も含めた能力開発の実施・キャリア支援を進めるという ことから、経済産業行政との連携ということが考えられると思われます。さらに、生涯に わたる持続可能な職業キャリアの発展という観点から、青少年期における家庭や地域の教 育力の強化、企業内におけるワークライフバランスや、ワークシェアリングへの配慮、高 齢者の体力・能力に応じた就業形態の普及や地域における活躍の場の創出といったような ことで、地域行政や関係行政との連携。なお、先程から出てまいりましたが、官民協力に よる「公」というものを形成するということで、企業の枠を超えた労使団体をはじめとす る諸団体の役割が大きいのではないかということです。  10頁で、(4)政策評価。政策評価につきましては、既に現在施行されておりますが、 「行政機関が行う政策の評価に関する法律」で定められております基本計画に基づきまし て、個別の施策ごとに評価を実施しております。課題としては、こういった評価を行うに あたり、事業の利用度などニーズを十分踏まえた上で、効率的かつ効果的な施策を講じる こと が出来るようにということです。今後の方向性として、検証に必要な情報収集体制の整備 に努めつつ、利用状況やニーズの状況を踏まえた上で、訓練コースの設定や見直しなど、 諸事業の見直しに努めていくことにしています。それから、雇用保険の問題が色々言われ ていますが、雇用保険三事業として行われている事業についても、能力開発事業も該当す るわけですが、いわゆる「PDCAサイクル」ということで、目標管理を行うということ になっておりまして、そういった評価も踏まえて、より効率的・効果的な事業を実施して いくということになっています。  最後は、(5)施策の周知・広報です。職業能力開発に係る施策について、これまでも 色々な形で周知・広報に努めてまいりましたが、職業能力開発施策に係る部分及びそれに 関する基本的な情報を整理して、窓口の利用も含めまして、対象者に幅広く行き渡るよう に対象者の属性に配慮しながら広報を行うというようにしています。その際、従来から実 施している国や都道府県だけではなく、労使団体等の関係団体にも協力を得ながら、周知 ・広報に努めていきたいということで書いております。 ○今野分科会長 ありがとうございました。広い範囲について、ご報告いただきましたの で、今日残った時間はすべての範囲について、どこでも結構ですので、自由にご意見をい ただければと思います。いかがですか。  では、最初に質問させていただきます。6頁目に今回はじめて出た国際化との関係なの ですが、(2)の質の高い労働力育成に向けた国際協力の課題の整理の2つ目の○の2行 目ですが、「労働力の育成・確保のためのシステムづくりに係る協力を中心にする形で、 戦略的に再構築する」と。これは基本的に少し方向を変えようということですか。 ○草野審議官 方向を変えようというか、職業訓練の協力や、能力評価の技術移転の協力 も行っているのですが、結局それが水を撒くような形で、バラバラやっているだけではい けないので、せっかくの協力であるので、ある程度そういうことがシステムとして根付く ような形のものにもっていくことが必要だろうと思います。日本における30年代、40年 代の技能の発展。職業訓練とか、技能検定を中心としてやってきたということは、まさに 今の東アジア地域でかなり活かしていただけることがあるのではないかと思います。  だとすれば、バラバラにやるのではなく、そういうものをもう少しシステマティックに やって、能力評価基準とか、職業訓練の基準のようなものをどんどん取り入れていただく。 そういうことは日系企業がやる場合にも、非常に良いですし、現地で労働者を育成する上 においてもプラスになり、各国において技能を高めていく、技術をつけていくという上で、 やはり少しシステム的な取組をやっていただくことが東アジア全体でも労働市場に共通の 基盤を作っていくことになるのではないかと思います。少し、そのような戦略的な目をも って、これまでの技術協力を見直して、組み立てていくということが求められてるのでは ないかということでございます。 ○今野分科会長 従来ですと、今の話と比較的に言えば、訓練コースそのものをつくると か、訓練校をつくるとか、そういうことに技術協力の中心があったのですが、もう少し仕 掛けということを前面に出して、協力の体制をつくっていこうということですか。 ○草野審議官 はい、そうです。 ○今野分科会長 ただ、東アジアといっても、シンガポールとか、マレーシアとか、「も う日本はいいや」と言うかもしれないですね。 ○草野審議官 そうでしょうね。確かにおっしゃるとおりです。ただ、色々ものづくり産 業がかなりおこってきて、そういう国に中産階級が出来て、中産階級は割に消費意識や志 向なども共通の部分があるというようなところが出てきているわけです。そういう部分は、 労働の面から見て、東アジアを考える上で、1つのポイントになるところだろうと思いま す。そこの部分は、割合ものづくりとか、経営の基盤のしっかりしたところの労働者だと いうところで、ポイントとして、少し焦点を当てて協力をやっていくということが、今E PAとかFTAと言われていますので、経済の方ではそういう東アジア地域共同体みたい な話ですが、ただ労働というのは非常に区々に分かれていますが、結節点があるとすれば、 そういうところを考えて、やはり支援していくということが筋道ではないかと思います。 ○今野分科会長 いかがですか。 ○西原委員 今の話と関連するのですが、いわゆる経済連携協定というか、EPAの交渉 の過程で、例えば相手国から何らかの産業振興上のニーズがあって、それに関わる人づく りということで、項目として挙げられている部分もいくつかあるような受け止め方をして います。そういう面でいくと、ここでのシステムづくりは、今ご説明があった中身だけで はなくて、国際貢献という観点の中で、特にEPAの推進の中で、能力開発の部分をもっ と積極的に位置づけるような姿勢があるのか、ないのか。  逆にそういった形で、日本としての国際貢献を今以上にもっと前向きにやる時代にきて いるのではないかという感じがするのですが。 ○草野審議官 今のところ、EPAの中では、具体的にそういう能力開発部分の技術協力 というご要望は出ておりません。ですから、その話とは別途、いままでやっているものを 先ほど申し上げたような形でやりつつ、色々な国からの要望などを踏まえて、考えていく と。当面は、EPAの中では、そういう技術協力という形での話は、今のところ出ていな いです。 ○西原委員 一部、国はタイでしたか、自動車産業分野の技術協力という観点の中で、人 にかかわる部分で、これは民間ベースで現地に人づくりの観点で協力しようという話が産 業界レベルであるものですから、ほかの観点ではあるのかどうか、お聞きしたのです。具 体的な項目ではないようですが、その中の、結果として産業振興を図る上での、人に関わ る部分での協力を、ある程度ボランティア的な観点が強いかもしれませんが、それを少し 積極的に捉えるような事も考えても良いのではないかという感じがするのですが。 ○草野審議官 これは相手国のご要望に応じて、問題点を整理し対応していくというスキ ームです。ですから、その中では、必ずしも明確な形での能力開発などの技術協力という 形では、今のところ出ていないということです。 ○今野分科会長 何か追加することはございますか。 ○鈴木委員 今のところと関係するのですが、職業能力開発総合大学校で外国人留学生の 受入れをやっているということですね。現行の所にもあるし、さらにそれを推進していく とありますが、留学生の受入れは実績として、結構あるのですか。 ○田中外国人研修推進室長  職業能力開発総合大学校の留学生の受入れですが、平成4 年から実績は合計で178名の受入れをしているということです。 ○鈴木委員 どんな分野でですか。 ○田中外国人研修推進室長 職業能力開発総合大学校の方にある色々な電気、機械、建築 など、工学系の学科に、ほぼ網羅的に入っているという状況です。これはあくまでも指導 員の養成ということでの受入れです。 ○鈴木委員 派遣される国については、何か特徴的なものはあるのですか。 ○田中外国人研修推進室長 一応、国は限定しておりまして、今9カ国を相手にしており ます。最近はCLMVということで、カンボジア、ラオスの援助ということが重点にあり ますので、直近ではカンボジア、ラオスの2カ国を追加したという実績がございます。 ○今野分科会長 よろしいですか。ただ、これはあくまでも、指導員対象です。今民間ベ ースで受け入れるとか、そういうこととは、かなり性格が違います。 ○田中外国人研修推進室長 指導員養成のためのものでございます。 ○今野分科会長 ただ、日本で訓練して、能力アップして帰ると、かなりの人が民間に移 ってしまうという話は聞いています。そちらの方が良い給料がもらえる。そういう点では、 民間ベースになっているのかもしれません。 ○田中外国人研修推進室長 基本的には、戻って国の訓練機関で働いていただくことを前 提として進めておりますが、確かに分科会長がおっしゃるような形での面はないとは言え ません。 ○長谷川委員 5頁の「国際化に対応した職業能力開発の推進」の外国人研修・技能実習 制度についての課題の整理で、「海外諸国等からのニーズに応じた職種拡大要望が出てい る」という現状と、今後の方向性で、「ニーズや国内の受入体制等を踏まえ逐次見直す」 となっているのですが、これはおそらく、今職種の拡大の要望がたくさん出されているの だと思うのです。いままで増やしてきたのだと思いますが、次の今後の方向性での見直す、 というところの視点は、どういう形で見直すのですか。 ○田中外国人研修推進室長 どういう視点で見直すかということですが、例えば特定の技 術、特定の地域に偏った技能がありまして、そういう部分について、技能実習移行対象職 種として認めるかという辺りを仕組みとして入れるかどうかを検討していきたいと考えて おります。現在の仕組みは、職種として全国的な広がりのあるものということを前提とし た職種を移行対象職種としておりますので、そういう特殊な技能におきます受入れが可能 かどうかを検討していきたいという予定でございます。 ○谷川委員 関連してですが、外国人の研修の受入れをされているということなのですが、 言葉は具体的にはどうされているのですか。 ○田中外国人研修推進室長 例えば、研修・技能実習ですと、言葉は基本的には日本に来 て、3カ月程度の座学の中で勉強してもらうということが1つありますが、望むべくは来 日する前に送り出す母国において事前に日本語を勉強していただくということで、実務研 修・技能実習は日本語により実施する、ということになっております。 ○今野分科会長 よろしいですか。私の知っている範囲内では中小企業が受け入れる場合 と大企業が子会社から受け入れる場合は、かなりタイプが違いますが、中小企業が受け入 れる場合は、大体真ん中に団体が入りますので、その団体が、全体の3分の1はOff-JT にしなければいけないというルールになっていますので、そのOff-JTの中で日本語教育を ずっとやるということで対応している、というのが私の印象です。 ○田中外国人研修推進室長 最初の3カ月はOff-JTの期間でして、その3カ月で日本語を 学んでもらうということです。 ○長谷川委員 技能研修実習制度のここの記載されている指摘事項は、そのとおりだと思 っております。6頁で、「さらに、技能実習の成果を検証し、制度の政策評価に資するた め」という文章があり、「可能な限りフォローを行う」と書いてありますが、私はこの項 は非常に重要だと思っております。技能研修実習生の実態は、企業が受け入れているのは 比較的本来の制度の趣旨に沿った形で運営されていると聞いておりますが、一部ではここ に記載されているような問題もあるので、やはり今回の計画の中で、フォローについても 具体的にしっかりと行うことが重要なのではないかと思います。 ○田中外国人研修推進室長 フォローにつきましては、若干遅きに失した部分もあるわけ ですが、例えば、帰国した技能実習生の同窓会等を組織しまして、その後のサポートをし ていくという形での支援の仕方を1つ考えております。それ以外にも、色々なヒアリング を行って、情報の収集等には努めております。 ○中村(紀)委員 7頁の(1)公共部門と民間部門との役割分担及び連携について、と いうところで、課題の整理の2つ目ですが、「『民でできない分野』、あるいは『民だけ ではできない分野』を具体的に考えていくことが必要」ということですが、この「民では できない分野」というのは具体的にもう既に何か存在しているのかどうか。それで、今後 の方向性ということで、下から2番目の1(○の中に1)ですが、「ものづくり分野など で、民間教育訓練機関が少なかったり、又は存在しない分野で支援をしていく」、これと 連携していると思うのですが、いわゆる民でできない分野というのが具体的にちょっとイ メージができないというのが1つです。  それから、既に民間の教育訓練の場がないということは、それだけ社会のニーズが少な い、もしくはもうそういう必要性がなくなったという分野にあえて支援をしていこうと思 っていらっしゃるということなのか、その辺の整理をしたいのですが。 ○杉浦総務課長 これは最近こういったことで、行政改革の一環の中で、色々言われてき ている話の中で、我々も民間で出来る部分は出来るだけ民間に実施していただくというス タンスで考えてきているところです。国が実施する公共職業訓練につきましても、ご案内 のとおり、今独立行政法人になりました雇用・能力開発機構という所が各地にポリテクセ ンターなどを作って、そこで実施しているのですが、実際にそこでやる訓練につきまして、 こういうように民間でできないとか、実施していない分野をやろうということで、整理を しております。  できないというのは色々な意味があると思いますが、物理的にできないということでは なくて、やはりその地域において企業側のニーズがありながら、そういった民間の専門学 校なりの教育訓練機関がないというような、地域における教育訓練機関の分布状況なども 見まして、あるいは都道府県との連携ももちろんありますが、そういうことを調べながら、 実際に訓練職種、訓練コースの設定を今やっているところです。  最近ではIT関係ですとか、事務系職種ですとか、サービス関係の職種が、地方の都市 になれば相当普及はしてきておりますが、まだまだ個々の地域で見ていきますと、地元の 色々な業界のニーズがあっても、そういったところでは民間ベースではなかなかないとい う所も相当あります。そういう所を中心に今やっているというのが現状です。それも民間 のベースで採算が取れるようなことで、どんどん普及してくれば、そこのところは出来る だけ民間に委ねていくというのは、我々の基本スタンスとして考えております。 ○山野委員 少し関係すると思いますが、1頁の技能検定職種の見直しで、今後の方向性 として、「技能検定制度について、企業・業界団体等のニーズを踏まえた検定職種の見直 し」というように書かれていますが、実際本当に、この見直しというのを抜本的におやり いただかないと、その検定自体が、お受けになる方が全くなかったり、その検定が実施で きなかったり、という業種がたくさんあるようです。平成16年度の調査では、113種ある 技能検定の2級受検者は東京都では平均34名ぐらいだというように聞いております。  これが東京商工会議所では、例えばビジネス・ニーズのあるものですと、3,600名です とか、カラー・コーディネーターが2,100名ですとか、環境に関するものでしたら、5,000 人ぐらいの方が検定を受けていらっしゃるわけです。ということは、この数字からすると、 非常にそこに差があって、そういうものは、やはりきちんと見直していく姿勢を持ってい ただきたい。もう少しこの辺をしっかり、どのように考えていらっしゃるのか、伺いたい と思います。 ○小林能力評価課長 技能検定職種の見直しにつきましては、現在137職種ありまして、 職種によってはご指摘のように受検者が少ないものもございます。非常に少ないものは、 例えば2年に1回という形で実施させていただくようなものもあり、いままで毎年度、数 十ずつ細かな見直しをやってきております。それにとどまっていたものですから、今回全 職種について見直そうということで、これから夏ぐらいまでに、全体の見直しの考え方の 整理をしてまいりたいと思っております。  そういう中で社会的に使命を終えたものについては、廃止、あるいは統合ということも 考えてやっていきたいと思っております。ただ、一方でこれが技能の水準を維持させるな どの上で機能している部分があると思うのです。ですから、受検者の人数だけで技能検定 の必要性を判断しきれない部分もあるのかなという気もいたしておりますが、そこら辺は、 色々な業界の方のご意見もよく聞いて、適切に対応していきたいと思っております。 ○今野分科会長 よろしいですか。どうぞ。 ○江上委員 確認も含めてなのですが、7頁の、先程中村(紀)委員がおっしゃったとこ ろですが、6の(1)の課題の整理、3つ目の○で、「女性の能力発揮」という語句を今 回置いているのですが、これは均等法20条を念頭に置いて、ボジティブ・アクションを配 慮して、こう書いてあるのでしょうか。それとも、母子家庭等というようなところでの女 性という意味なのでしょうか。どちらかなということが1つです。  もう1つは、先程中村(紀)委員がおっしゃったことで、「民ではできない分野、民だ けではできない分野」という表現が、やや誤解を生みがちなという気もします。おっしゃ りたいことは私も十分理解しているつもりなのですが、民の教育産業では設備投資が非常 にかかって、しかし授業料は低価格で収益性が成り立たないとか、色々なことがあると思 います。官民の能力開発分野のマップみたいなもので、少し理解が出来るような参考材料 があると、少し認識の共有が出来るのではないかという気もいたします。  もう1つ、9頁の機関との連携の所ですが、今後の能力開発政策が生涯にわたって、教 育や色々な分野との連携活動が非常に重要だということが書かれてあって、私もそのとお り同感だと思いますが、9頁のいちばん最後に「上記政策の展開に当たっては、労使団体 をはじめとする諸団体の役割が大きい」と書かれているのですが、既存の労使団体だけで は、なかなか十分には、これら広範囲な連携が可能かどうかという疑問があるのです。何 か新たなフレームとか、NPOの育成推進の強化をするとか、その辺のお考えがあるのか どうかお伺いしたいと思います。 ○草野審議官 最初の所は、広い意味で、人口減少社会に入っていく中で、女性の能力発 揮の場を作っていく。要するに、M字カーブをなだらかにしていくとか、母子家庭の母の 方で働く希望がある方には、能力開発をしやすくして、市場に参入していただくとか、そ ういうことを申し上げています。これは企業だけの問題ではなくて、やはり社会的な仕組 みとして、そういう能力開発が出来るような仕組みを、これは一般会計で今作り始めてい ますが、作って市場に参入できやすいようにするということが必要ですので、そういうこ とを申し上げています。  民でできないこと、これははっきり分けることはなかなか難しいとは思います。ですか ら、先ほど総務課長が申しましたように、現実に民でやっていないところ、しかし企業の ニーズがあるところを捉えてやっているということでして、ものづくり分野などは機械、 設備がかなりかかるということで、なかなか民では採算が合わない。しかも製造業はある 程度国の中でやっていく上では、支援ということが必要ですので、そういうところを代表 例として挙げて書かせていただいております。  ただ、いわゆる市場のインフラづくりでありますとか、今度の実践型人材養成システム でもそうですが、そういうところは民間でいう儲けという観点ではなかなかつながらない。 そういう公的な枠組をつくって、そのベースの上で事業をやっていくような、ベースをつ くるところは、やはり公的に組み立てないと、民だけではできないというところがあるの で、そこはまさにコーディネート能力とか、官の果たすべき役割です。ただ、それも官だ けで出来るわけではなく、民の協力がなければできないわけで、そういうことをここで申 し上げております。  9頁の「連携」ですが、ここは官民協力の「公」の形成という時に当然色々な中間団体、 つまり財団とか、社団、NPO等を含めまして、そういうものの役割が非常に大きくなっ てくるのではないか。ですから、営利セクターというだけでなく、公の部分で色々人を育 てる環境づくりを考えた場合、それを担っていくのが中間団体ですので、その役割が非常 に大きいだろうと。ただそういうことをやっていく上で、日本は企業社会ですので、企業 なり事業主団体、あるいは組合が協力して、要するに日本流の公かわかりませんが、枠組 づくりを考えていただき、その中で色々な中間団体などが具体的な担い手になるように、 少し社会全体を見て労使、官、その担い手である中間団体などが連携していくことが必要 であるという趣旨です。 ○今野分科会長 ほかにございますか。 ○黒澤委員 今の7頁目の6の公共部門と民間部門との役割分担及び連携について、お伺 いしたいというか、お願いです。  いつもしつこく言っていて恐縮ですが、公共部門と民間部門の部門同士の役割分担とい う言い方が、非常にわかりにくいという印象を受けています。私が、もしこの部分を書く としたら、もう少し公的介入の根拠をきちんと整理した上で書いた方が、よりスムーズに 議論が展開していくのではないかと思います。  例えば職業訓練の促進というのが1(○の中に1)にありますが、これの根拠は何かと 言いますと、大きく分けて2つあると思うのです。1つは、資本市場の不完全性。難しい 言葉ですが、もう少し具体的に言うならば、訓練を行うにはコストがかかる。しかしなが ら、訓練資金を調達することが非常に難しい。だからこそ資金を何らかの形で支援してあ げる必要が出てくるということが1点。  もう1つは、訓練に携わる外部効果が存在するということです。外部効果というのは、 訓練を行う企業、あるいは労働者、従業員だけではなく、それ以外の人々や企業が、便宜 を受ける要素があるということです。こういった2つの根拠があることによって、職業訓 練を促進するニーズがあるということになるのですが、促進するやり方にも色々な方法が あると。  例えば企業に直接助成したり、人材投資減税のような形で減税措置をするとか、教育訓 練給付制度のように個人にお金を与える。あるいは、直接的に公共職業訓練校をやるよう な形で教育サービスを官が提供する。あるいは、民間に委託する、今回の実践型人材養成 システムのように連携をして提供する、こういった色々なやり方がある。特に直接的に提 供するのか、それとも連携するのか委託するのかというところについては、先程からご議 論があるような、民間ではなかなかできないという内容的な区分もあるとは思うのですが、 それ以外の部分については、コストとベネフィットの比較費用論なのではないかと思うわ けです。そのために市場化テストという手段もあるわけです。それを考えますと、7頁の 今後の方向性の○の最初の方にあるように、民間教育訓練機関による実施可能な分野につ いては、民間に委ねると。だから公共部門により実施の削減と効率化を行う、これが時代 の流れといえば流れなのかもしれませんが、ここまで強く変えて良いのかというのは、ち ょっと疑問に感じます。特に都道府県などの専門技術校を視察させていただくと、そこは 非常に熱心なだけでなく、ノウハウを蓄積した貴重な訓練を行う人材がいるわけです。そ の人たちが民へ民へということで実施可能だと、そのような訓練コースが民間の専門学校 にあるというだけで、どんどんそのコースが削減されて、そういった人材が全く自分たち の能力を活かせないような仕事に異動させられているケースも拝見するわけです。そうい ったことを見ると、これで果たして公的分野での有効な人材の活用になっているのかと非 常に疑問に思うところもありまして、そういう観点からすると、ちょっと飛躍しているの ではないかと思われる節もあると考えますので、その辺りについてはどのようなお考えな のかを伺いたいということです。 ○杉浦総務課長 大変貴重なご意見をいただきまして、ありがたいと思っています。昨今 ご承知のとおり、政府全体でも一つのこういった流れがあるという前提の中で、私どもも 行政の効率的な運営という観点から、いかに行うべきかという観点での検討を迫られてい る部分と、もう1つは、やはり今黒澤委員がおっしゃったように、本質的にどの部分をど ういう形で公共の部分が直接、あるいは間接的にやるのかという手法の問題もあると思い ます。そういったものを本質的に基本に据えながら考えていかなければならないのは、お っしゃるとおりだと思います。ただ、今言われている財政的な問題は、もちろん背景にあ ることは事実ですが、そういった流れの中で、我々も無駄がある部分は出来るだけ排除し ていかなければならないことがあるのは事実ですので、そういった点は厳しく自己努力と いうか、見つめながらやっていく必要があるわけです。  ただ、おっしゃるとおり本質的にと言いますか、最後になっても私どもが直接、あるい は間接的かもしれませんが手を下してやらなければならない部分は必ずあると思っていま して、その部分については責任を持ってやるべき部分はあるだろうと思っています。ただ、 それを具体的に、先程のご意見にもありましたが、どこからどこまでというようにきれい な絵が描けるかどうかというのは非常に難しい部分があるかと思いますが、1つは時代の 流れにあまり流されることのないところで、やはり本質的にやらなければならない部分が あるかもしれません。もちろんその時代の流れによって変わっていく部分も相当数あるか もしれませんが、その辺を見据えながらやりたいとは思っています。確かにここはまだ課 題の整理や方向性ということで箇条書的に書いてある所ですので、その表現振りについて は、またよく吟味して文章を書かせていただきたいと思います。今言われた意見は大変貴 重だと思っていますので、よく踏まえて考えていきたいと思います。 ○草野審議官 あと、追加的に申し上げますと、おっしゃるようにいままでは中小企業の 集積が各地にあって、その中でお互いに支援し合ってものづくりなどをやってきています。 中小企業集積は一種の公共財のようなものであったと思うのですが、そういうものがだん だんなくなってきた時に、それに代わって公共訓練の担い手は、ものづくり集団であるの で支援していくと。その支援のやり方が色々多様化していくのだろうと思います。いまま ではレディメードの訓練カリキュラム、訓練校をつくってその中でやるという形だったの ですが、今後はそのノウハウを活かして、色々オーダーメードで少し訓練をやってあげる とか、指導員を派遣してカリキュラムの支援をする。場合によってはオーダーメードの中 からニーズがあるということで、レディメードへ持っていくということもあります。やり 方を多様化して、ノウハウの活かし方を1つでなく、直接実施するのは削減するが、その 代わりに事業主支援という形で手厚くするような発展の仕方かなと思っています。その中 で効率性や民間がやっている所をなくしていくことにしますが、中身は非常に多様化して 形を変えたりして、民の痒い所に手が届くようなサービスをしていくという官民連携の方 向に切り替えていくのかなという感じを持っています。 ○中村(正)委員 3頁の「現場力」の問題ですが、課題の2つ目の○の所を読みますと、 「開発・設計・試作は国内で行い、製造、製品の組立て等は、東アジア諸国で行うという 棲み分けの方向が明確になってきた」という表現になっているのですが、果たしてこの表 現は適切なのかどうか。表現を少し変えるべきではないか。というのは、第8次の基本計 画ですので、少しその辺を検討すべきではないかと思います。 ○草野審議官 この辺は我々も十分精査しなければいけない所で、まさにせっかくの場で すので労使の方から意見を出していただいて、こうした方が良いというようなご意見を、 賜りたいところです。 ○今野分科会長 いかがですか。こちらにボールが投げられましたが。それでは、この表 現についてはまた検討していただいて。 ○草野審議官 検討は、どういう視点から検討したらよろしいのか、それがわからないと 検討のしようがないのです。 ○西原委員 この点で、例えば自動車部品の関係で見ますと、確かにここで一部流れたと いうようになっていますが、結果的に汎用品も含めて出したが故に、トータルとしての企 業体力を落とすという事例があって、もう一度戻っている事例もあるのです。ですから、 結果的に開発と生産を分担したことが、トータルとしてものづくりの力を弱める。付加価 値という形で、設計や開発部門を例えば国内に、あるいは高度な部品だけをという形だけ で、果たしてうまくいくのかという疑問が一部出ていて、確かにそのような産業分野はあ るかもしれませんが、明確というのはちょっと一方的すぎるかなという感じがしています。 ここは出すとすれば、到達としての高付加価値製品などの戦略性の高い製品ということで の技術が高まっていて、そこへの流れがあることはあるのですが、一方でベーシックな技 術や技能を国内にきちんと持っておかなければいけないという議論も一方でありますので、 ちょっと「明確」という極端な表現の部分を外すことで、一つの事例で挙げるのであれば 結構ですが、そのような整理でどうかなと思います。 ○今野分科会長 ここでは棲み分けの方向が「明確」と書いてありますが、方向が進みつ つあるとか、そんな感じにしておきますか。 ○西原委員 あるいは、棲み分けを図る。 ○今野分科会長 一般論として日本の今現在の賃金水準を考えたら、汎用品でしたらペイ しないですね。全体的にはそういうことは言えると思います。  ですから、日本の製造業の中小企業でも生き残っているのは、国内市場で非常に多品種 で短納期でということで生き残るのが全体の筋だと思うのです。 ○西原委員 この「明確」という文字が強すぎて気になるので、ぼかした方が良いのでは ないかということです。 ○今野分科会長 検討の方向がはっきりしました。 ○井上委員 4頁の現場力の評価のいちばん最後、今後の方向性の最後の○の所の後半で すが、「能力開発行政においても、関係行政機関との連携の下に、技術・技能の交流の場 の設定や公共職業能力開発施設と企業との産学連携、施設の開放、オーダーメード訓練の 実施等技術的援助を積極的に行う必要がある」という所ですが、実際に訓練の担当現場で は、地域が求めるものとのタイムラグを感じているところがあるのは、私もちょっと耳に しているところはあります。そういう意味で、訓練を実施する公共の施設と、企業・団体 の人材のニーズの橋渡しを調整するような役割の専門スタッフ、(仮称)訓練コーディネ ーターというような役割と言うのか、そういうものを配置することにより、これがより効 果的な計画になるのではないかと思いましたので、意見として述べさせていただきます。 ○今野分科会長 新しいアイディアですが、いかがですか。 ○草野審議官 まさにおっしゃるとおりで、オーダーメード訓練の実施や事業主支援をや っていく上では、レディメードもそうなのですが、ニーズを吸いあげる上で企業とのコン タクトを取ってそことやり取りをしながらニーズを汲み上げていったり、訓練カリキュラ ムに組み込んだりというコーディネート役が非常に重要となっていまして、今訓練指導員 のカリキュラムの中でも、そういうコーディネート的なことが出来るように科目を入れつ つあるところです。  これからは訓練指導員は単に教えるというだけでなく、企業と接触してニーズを汲み上 げ、それをカリキュラムに編成することも含めた資質・能力を持つことが重要でして、ま さにおっしゃるとおりだと思います。 ○今野分科会長 それとの関連ですが、公共訓練で今回作った実践型人材養成システム、 つまりOff−JTとOJTを組み合わせましょうという話ですが、公共訓練の例えば2年間の 養成訓練や1年の訓練をそういう形で組み替えるとすると、結局今おっしゃられた訓練校 の先生は、企業と非常にリンクしなければいけなくなるのです。だから実質上あのような 形にすることは、公共訓練と民間企業との間のリンケージをものすごく高めると思います。 訓練する先生方がリンケージを考えないと、受入企業がありません。  ですから、何か従来の公共訓練の方も、いままではOff−JTというか、いわゆる研修一 本だったのですが、それも少し組み替えたらどうだろうかと何となく思っているのですが、 いかがですか。 ○草野審議官 そのとおりです。要するに訓練のやり方もレディメードでこうだからとい うのではなく、むしろオーダーメード型で、企業のニーズを吸い上げてきて、それをカリ キュラムに編成するという流れになると思います。ですから、まさにその典型が実践型で、 企業がまずこういう人を採りたい、実践力がある者とするには、こういう能力を身に付け させたいのだ、というものがあった上で、それを聞いてお手伝い出来るカリキュラムの部 分はやりましょう、ということで仕立てていくのだろうと思います。  方向はおっしゃられたように、レディメードから出来るだけオーダーメード的なものに して、ただ、そのオーダーメードが汎用性がなければ意味がないわけです。オーダーメー ドから入ってレディメード化していくようなニーズの把握の仕方に変えていかないといけ ない、流れが民中心ということで、まさにそれに応じられる指導員ということに変わって くると思います。 ○今野分科会長 その辺と関連して、私は公共訓練の指導体制というか、指導員の方たち の一つのアドバンテージでいつも思うのは、我々学校の場合は、専門学校でも良いのです が、入口で入ってくる人のスクリーニングをして、そこで平均化して、平均化した人たち を教育するというやり方をやっているわけです。ですから言ってみると、その枠に入らな い人は全部外すというやり方をやっているわけです。公共訓練の場合は、特に離転職の場 合は色々な人が入ってくるわけですので、それに全部対応しなければいけないわけです。 そうすると、Aというタイプの人にはAというタイプのカリキュラムをパッと作って、B というタイプにはBを作るという、何でもO.K.ということでやってきて、そのノウハウが 蓄積されてきたというのは、非常に強みではないかと思っています。そういうことをもう 少し、今言われた方向と組み合わせれば良いかなというように思うのですが、これは私の 感想です。 ○久保村能力開発課長 公共訓練の場合、特に離職者訓練は、今おっしゃいましたように 非常に多様な人たちが入ってくるわけでありまして、特にものづくり型の職業訓練の場合 は、課題を適宜与えながら実習をしていく形を取っております。そういう意味では全体的 な流れの中で、個別にその人の特徴をとらえながら別の課題を与えていく、あるいは進捗 状況に合った課題を与えていくことは今でも行っています。その中で企業や外部のニーズ を吸い上げながら実践的な訓練をやっていくことが要請されてくると思いますので、公共 訓練においてもそのような仕組みを導入しながらやっていかなければいけないと思ってい ます。 ○今野分科会長 ほかにございますでしょうか。 ○五嶋委員 お願いなのですが、今色々とお伺いして、本当によく考えてやっておられる なという思いを深くしているのですが、実践型人材養成システムの普及は、認定の要件な どがあまり厳しくならないようにしてほしいと思っています。どうしても中小企業では、 実践型人材養成システムを活用できないということになりかねませんので、出来るだけ全 国に定着を図ろうということであるならば、中小企業の実態を出来るだけ正確につかんで いただいて、受け入れやすいというか、柔軟な制度にしていただければ大変ありがたいと 思っていますので、どうぞその辺もよろしくご検討いただきたいと思います。 ○今野分科会長 ほかに何かありますか。 ○草野審議官 中小企業で使っていただくシステムとして考えているわけですから、そこ ら辺はお話を伺いながら、場合によっては中小企業だけではなく、業界団体も協力してい ただいてやるとか、そのような使いやすい仕組みを考えたいと思いますので、是非今後と もご意見を積極的にいただければと思っています。 ○五嶋委員 ありがとうございました。 ○今野分科会長 ほかにございますか。ないようでしたら私の方で質問させていただきま す。先ほどの技能実習の件の、6頁の上の方にフォローアップの件もあるのですが、もう 1つは技能実習が終わった出口で、もう一度能力評価をしたいというように、これは考え ていらっしゃるということですか。 ○田中外国人研修推進室長 すでに制度としては望ましいという形ではありますが、技能 実習1年目には基礎1級を、最終年には随時3級をという形で受検をしてくださいという ことにしていますので、受検を促進したいということで、色々な工夫をしていきたいと考 えているわけです。 ○今野分科会長 促進されて、技能実習生が受けて落ちたら、何か悪いことがあるのか、 良いことがあるのですか。受かったらでも良いのですが。 ○田中外国人研修推進室長 今のところは悪いことも良いことも、特にはございません。 持ち帰って母国に帰ってそれが評価されればということで、先程もありましたが、日本の 技能検定制度を移転し各国で確立されていれば、持ち帰った3級は母国において評価され るということにおいては、先ほどの戦略的に進めるという意味においても、その部分に繋 がっていくのかなという感じがしています。 ○今野分科会長 今は持って帰っても、役には立たないですよね。 ○田中外国人研修推進室長 全くないわけではありません。例えば日系企業でしたら、日 本の類似の検定制度というか評価制度を、開発途上国に雇用している事業場の中で持って いますから、それなりに評価されることはあり得ると思います。一般的に団体監理型にお ける実習生の場合は、なかなかその部分というのは難しいかなという気はしています。 ○今野分科会長 ほかにございませんでしょうか。 ○谷川委員 すみません、聞き漏らしたのかもしれませんが、2頁目に項目3が起こして あって、「雇用失業情勢や産業分野の動向に応じた職業能力開発の促進」、ここの所はど ういう感じになるのですか。 ○杉浦総務課長 これは前回ご議論いただいた中に入っていたのです。 ○谷川委員 論点というものですか。これですか。 ○杉浦総務課長 参考資料の1の9頁です。前回一応ご議論をいただいたということにな っていますので、もちろんまたこれから色々ご議論いただいても全くかまいません。  またここは次回以降に文書の形にしてお出ししたいと思いますので、またその段階で 色々ご意見をいただければと思います。もちろん今でも結構です。 ○中村(紀)委員 資料2「第8次職業能力開発基本計画の構成(案)」で、第3部の所 の職業能力開発施策の実施目標の1に「働く者」を対象とした職業能力開発施策の推進と ありますが、先ほどからずっとこの文言を見ていて、違和感を感じているのです。「働く 者」を対象とした職業能力開発とすると、働かない者は対象にならないのかということで、 こちらの論点の方を読んでみますと、職業能力開発というのは、いわゆる初等・中等教育 者に対してもものづくりをやっていこうとか、あるいは出産育児などで中断したものに対 してもやっていこう。あるいは、ニートのような今職業を持っていない人に対してもやっ ていこうということで、今後職業能力開発施策を推進していこうということが書かれて、 論点の中に入っているのです。ということは、いわゆる本当に幼い頃からの年齢別、ある いは個人のキャリア別などの多様な働き方に呼応して、非常にきめの細かい能力開発を推 進していこうというように私は理解をしているのですが、「働く者」を対象とした職業能 力開発施策の推進というタイトルになっているので、果たしてこれがいちばん素晴らしい、 妥当なタイトルの付け方であろうかという疑問が、ちょっとありました。 ○杉浦総務課長 確かに私どもがあえてカギカッコを付けて書いているのは、法律、ある いはこれまでの私どもがやってきた行政の対象者が、雇用関係のある労働者という人たち を対象にした能力開発施策としてやってきていますので、それにとどまらない、いわゆる 雇用関係のない人たちの周辺の部分、先ほどご指摘をいただいた人たちで多種多様な働き 方をされている方々も含めて、能力開発というのは幅広く大事だろうという観点で、いわ ゆる労働者よりも広い観点ということで、「働く者」という書き方をあえてさせていただ いているのです。それがまた違和感があるというご意見を頂戴すれば、またそこはよく検 討をさせていただきたいと思います。 ○中村(紀)委員 すみません。 ○杉浦総務課長 いえいえ。 ○今野分科会長 おっしゃられたのはもっともですから、何か良いコピーがありますか。 ○中村(紀)委員 何かあれば良いですね。 ○今野分科会長 この審議会の宿題ですね。そのうち何か良いコピーがありましたら。ほ かにございますでしょうか。また私が質問をします。  先ほど「公」の組織が重要だという話がありましたが、私もそう思いますのでそれとの 関係もあるのですが、3頁目の今後の方向性の中に認定訓練制度についての話が書いてあ る所の下から3つ目の○で例えば、「中小企業を対象とした認定職業訓練制度についても、 必要に応じた制度の見直しを」と書いてあるのですが、これは何かアイディアがあるので すか。こんな方向にするというのがあったら。 ○石田育成支援課長 これは現行の計画でも類似の表現をさせていただいていまして、そ れ自体は新しい日本版デュアルシステムを導入推進する時の認定の場合も、一定の要件を 少し緩めるといったような形の工夫を、現行計画の中でも対応させていただいています。 今回も表現的には同じような表現を取らせていただいておりますが、今すぐに具体的なア イディアがあるかというと、それ自体はすぐにはありません。ただ、認定自体が企業中心 のものを担う制度としてあるにもかかわらず、若干趨勢的には利用が落ちているといった ようなことを踏まえて、また今後も少し考えていきたいと思います。 ○今野分科会長 私は詳しいことはわからないのですが、これは中小企業を対象にした認 定職業訓練制度というのは、一種の業界、企業がいくつか集まって、あるいは業界で認定 訓練をするということですね。 ○石田育成支援課長 はい。 ○今野分科会長 先程言われた公の方の1類型に入るのかなと思いますが。 ○石田育成支援課長 民間主導で個別の企業がやるか、あるいは個別の企業ではなくても、 地域の企業がお集まりになる、あるいは業界としてやるものも、民間の延長として、認定 の制度として支援をするという形になっています。 ○今野分科会長 ほかにございますでしょうか。 ○玄田委員 特段どこの頁の何というのではないのですが、前回の主体的な能力開発の広 い意味では労働者にということを挙げられて、ある意味では大事な提案だと思うのですが、 たぶん今の時代的な状況としては、能力開発に主体的に取り組む意欲がなかなか持てない とか、そういう場に行くことに躊躇がある人に対して、一体どういう働きかけを行政がし てくれるのだろうという思いで読まれた場合に、果たしてどこまで応えられているのか。 もう自分で意欲を持ってやるのだという気持ちを持っている人には、色々な連携も含めて、 またキャリア段階に応じてきめ細かいものができている感触は伝わってくるのですが。意 欲という言い方が良いかはわかりませんが、その必要性をまだ十分に認識していない人た ちには、答をあえて見出すとすれば、学校段階から積極的にということになるのでしょう が、学卒者にどうするかとか、あと能力開発にしても所詮仕事がうちの地元にはないので はないかという人に対して、それでも能力開発がなぜ必要かをどのように訴えかけるのか。  あと、女性の母子家庭や低所得者という問題もあると思いますが、現状の雇用回復も大 部分は、もちろん正社員の雇用回復もあるのですが、非典型雇用が増えている時に、非典 型雇用に対する能力開発の機会により、仮にフリーターであってもある程度は安心した職 業人生が歩めるというようなメッセージをどこかに出さなくて良いのかなど、何かその辺 は漠然でしかないのですが、その辺も何か切り込めれば良いかなと思います。  別に時代のキーワードにストレートに対応しなければいけないとは思いませんが、意欲 や希望が持てないという非常に下流的な発想の中で、もう能力開発は私には関係ないとい う人たちにアウトリーチのような働きかけのようなことをするのではないか。  何で発言をしなかったかというと、とても難しいことなので、難しいことで「草野さん、 あなたはどう思うのですか」と何か聞けないのですね。自分の答えもないし、いちばん大 変なところなのです。ただ、そこを大事だという問題提起をすることも、もしかしたら基 本計画の中ではあり得るのかなと思いながらずっと話を聞いていましたので、質問ではな く独り言です。 ○草野審議官 そこら辺の気持ちというか、キャリアというように広げてきたのは、結局 求職活動からの能力開発というだけではなく、基盤となっている家庭や地域、学校の中で の教育力が弱まってきているわけで、そこに非常に本質的な問題があると感じていまして、 これは職業能力開発施策だけの問題ではないわけです。  ただ、そのようなことにまで広げて、人づくりをする社会的な基盤というか、そこに目 を向けて関係施策と連携を取りながら、少しずつ地域での教育力を回復していくことや、 教育との連携をするということで、すぐ即効性のある話ではなく、少し漢方的な施策にな るかもしれませんが、そのような環境づくりを始めていくということです。  個別の施策では、例えばニート対策では若者自立塾などをやっていますが、いわば手探 りでやっていく状況かなと思います。ただ、そういうところまで少し関連して施策をやっ ていかないと、労働市場施策としての能力開発施策というだけでは、やはり足らないと。 人を対象にしているだけに、人が育つ環境にまで少し目配りして、関係施策との連携を取 っていく必要性は痛感しているところで、それをようやく手探りでやり始めているのが、 正直な状況です。ですから、気持ちとしてはそこを書いているつもりですが、どうやれば まさにおっしゃるようにポイントになってうまくいくのか。それはこれから手探りでやっ ていかなければいけない部分で、ここの計画ではまだそこまで明確に書き切る力が、私ど もとしてもないというのが現状です。 ○玄田委員 何が今足りないのですか。例えば色々な仮説もあり得ると、今良いことをや っているのですが、再三言いますが、広報的なものが足りないのか、先ほど草野審議官が おっしゃったような、実際の企業ニーズと合っていないところが問題なのか。トレーナー の方に、まだ十分なトレーニングが足りていないのか、どうなのですか。 ○草野審議官 ここは色々な要因があると思うので一口に言うのは難しいのです。大きく 言うと例えば今はサラリーマン社会で、サラリーマンが非常に多い。昔は自営業者とか家 族従業者という方もいて、むしろ色々な複線的なものは昔の方があったのではないかと思 うのです。就業者のサラリーマン率が非常に高くなり、教育もサラリーマンになることを 前提として成績で見ていくことで、社会の涵養力が衰えたり、サラリーマンが多いので、 地域の色々な活動にコミュニティがなくなってきたり、そういう中で色々な資質を持って いる方が居場所がなくなってきている。  企業の方も、グローバル競争の中で週60時間以上勤務者比率が増えるなどと非常にハー ドになっていますので、これは若い人からすると質的に労働時間も長いので、ハードルが 高くなっているところがあると思います。そういう所と、片やそれ以外の仕事というのは パートや派遣になったりという二極の中で、ミスマッチが生じている面が、かなりあるの ではないかと思います。  知識偏重になっていて、実践型タイプの身体を使ったり機械をいじったりしながら考え るというような教育の場がないためにフリーターになってしまっているような、教育のミ スマッチ的なこともあると思います。どうもそういう根本的な社会の仕組みが背景にあっ て、色々な現象で出てくるのかなと思います。ですから、ここは対症療法的な施策だけで なく、我々でそれをどうこうすることではありませんが、そういう視点を持って関係施策 との連携を持っていくことが重要であろうと思います。そういうことからCSRへの取組 や地域づくりへの取組を、労働施策としても広げて目配りして、推進していくことが必要 ではないかと思っています。ちょっと要領を得ませんが。 ○今野分科会長 今の公共訓練のデュアルの場合もそうですが、公共訓練のデュアルの仕 掛けに乗って行けた人には就職があるのです。ということは、非常に就職率が高いし、乗 ってくることが出来れば行けるということですかね。  そうすると、考えられるのは、その仕掛けは問題はないが乗って来れないことに問題が あるのか、仕掛け自身が問題点のほんの一部にしか対応していないのかですが、その辺が よくわからないので難しいのです。  今日は議論にはなっていませんが、資料2の基本計画の構成案の第4部では、それが一 応、部分的には入っているので、考えているのです。 ○杉浦総務課長 (3)の所が。 ○今野分科会長 あるいは、(2)もそうかもしれません。ただ、前面に出した時に、政 策が留められないので。 ○久保村能力開発課長 色々なフリーター対策を考える時に、財務省との折衝などでもそ うですが、離職者訓練の場合前提として求職者であることが必要であって、ハローワーク に求職申込をしていることが要件になっています。そこで受講推薦や受講指示を受けて入 って来る仕組みになっていまして、本人に就労意欲があることが前提になっています。ジ ョブカフェでもそうですが、そういう窓口に行かれた人でないと網に引っかかってこない 仕組みになっていて、それ以上に政策を広げようとすると、そこまでやる必要性がどこに あるのかということが、常に議論になるわけです。  私どもの施策でも、例えばより簡易で短期間の講習的なものを考えようとすると、そう いうものがどうして就職という結果に結びつくのだということを常に言われるわけですし、 わざわざ引っ張ってこなければいけない人に対して、どうしてそういう施策をやらなけれ ばいけないのかということになる。こうした意味での施策展開の難しさがあるのだと思い ます。そこをどう考え、政策としてどう整理していくのかが非常に難しいし、色々議論が あるところではないかと思います。 ○玄田委員 せっかくおっしゃっていただいたので、本当はこういうことはあまり記録で 残すべきことではないかなという気がして、発言するのが憚られたのですが、勝負は再来 年度だと思うのです。来年度までは、特にこういう若者に対しての能力開発は非常に積極 的な予算化はある程度もうインプットされていたわけですが、再来年度から雇用回復等に よって、もう対策も必要ではないのではないかということで、一斉に幕引きに入る。  先ほど審議官がおっしゃったように、当然持続性というのがどこかに埋め込まれていか ないと、1年限りで解決する問題というのは、ほとんどないわけです。どうやってこれが 持続的なものになるのかということを、仕掛けとしてここで議論しておかないと。そうい う意欲のない人は、放っておいてもそれは本人の自由なのだから良いのではないですかと なると、そこで終わってしまうのです。だから一つは意欲があるのかないのかにかかわら ず、もし本当に能力開発をしない人、無業状態になる人が増えた場合の社会的なコストは 一体どのぐらいになるのかということを、ある種完全ではないにせよ、どこかできちんと 試算しておかなければ。就業面もそうですし、生活保護、福祉など、色々なことを合わせ た、少なくとも厚生労働関係の行政の中で、これらに対して対策をとらなかった場合にど のぐらいのコストになるのかということを、もうそろそろ早い段階で示していかないと。 今何百億かけているということは一見無駄遣いに見えますが、実はまだまだ足りないとい うことをどこかでやらないと。どうなのですか、持続性の担保ができない恐れというのは、 特に財務折衝などではあるのではないですか。  よくわかりませんが、問題意識自体は、たぶん最初におっしゃったことに全然違和感は ないですし、その証拠立てと言うのでしょうか、この問題意識を広く、国民も含めて予算 として取る前に、問題意識をどのように形にするかということが、二歩も三歩もないと、 再来年度以降はすごく恐怖の方が大きいです。 ○草野審議官 雇用失業情勢がよくなっていますので、確かに若年失業者や「止むを得ず 型」フリーターの部分で減っていることはあるわけですが、仮に雇用が進んだとしてもこ れまでと違うのは若年層が非常に少ないということで、120万と団塊の世代の半分ですか ら、その人たちがこれから10年、20年を背負うとすると、次の課題は単に雇うだけでな く、数の少ない若い人たちにどう頑張ってもらうかという能力開発になると考えています。  実践型もある意味では、雇用の回復の時に単に採るだけではなく基礎をみっちりやって いただいて、この10年、20年の経済を支えてもらうことを今度は引き続いてやる必要が あるということです。我々としては雇用がよくなったからこれまでということではなく、 むしろその時にこそきっちり能力開発をやることが必要だということで、実践型人材養成 システム等を柱として、持続的にやっていくことを是非考えたいと思います。  おっしゃったように、ニートの方はあまり雇用がよくなっても減らないという状況が続 いて、むしろ増えるかもしれないという部分があるわけで、低所得層の部分は、まさに社 会的コストになりかねない。イギリスでいうニートのような人も部分的に出てくると思い ます。そういう意味では、今のうちに市場に参入していただいて能力開発をしていくこと をしないと、あとで社会的コストが逆に増えてしまうという辺りは、おっしゃるように我々 も分析してやっていかなければいけないという意識は持っています。我々としては、いま までは雇用すれば良いというような自立支援プランでしたが、これからは能力開発して背 負ってもらうのだという部分で、開発的に言うと、これからがむしろ若年の本番という気 持でいるところです。 ○玄田委員 もう1言、例の雇用政策研究会で対策をとらなかった場合には、労働力人口 はこのぐらい減るとありますが、あれにもう少しオプションを付けて、つまり今何百億円 かをかけないことで働かない非労働力が増えた場合に、年齢や状況をシミュレーションす ると、どのくらい最大限コストがかかるかぐらいの計算というのは、まずやってみないと、 500億円とか数百億円という金額の意味が見えないと思うのです。それだけです。 ○草野審議官 はい、わかりました。それは大変貴重なご意見だと考えております。 ○長谷川委員 今玄田委員が言ったことは、そのとおりだと思います。もう1つは公共の 職業訓練が、例えば私たちがここで議論している時はそれなりの数があるのではないかと 思うのですが、実際街に出て行った時に、その数がちゃんとあるかといったらそうではな いのだと思います。だから若者がなかなかそこにたどり着けないでいるのだと思うのです。  例えば私たちは風邪をひくと、町の病院へ行きますね。診療所や小さな開業医の所、ひ どくなれば大きな病院に行きますが、ある意味ではこれ以降のフリーターやニートと言わ れている人もそうですし、今現在職場にいる人もそうですが、どうやってキャリア形成し ていくのかという時に、職場の中でも具合が悪くなったり自分がメンタルヘルスになった 時に、医務室へ行って相談します。本当は企業の中にも医務室のような形で自分のキャリ アについて相談したりする場所があるとか、町の中にもハローワークだけではなくて、も っとそういうことが相談出来る所があれば、フリーターやニートも、そういう所に当たっ てくるのだと思うのです。だからもう少し施策を広げる時に、これまでのような広げ方で はなくて、もう一工夫が必要なのではないかと思っています。  それと、この問題は特にフリーターのところに関して言えば、メッセージをやはり出し 続けるしかないのです。働くことが必要だとか大切だとか、自分たちはいつまでも20代で はなくて30代、40代になるというメッセージを、色々な所で出し続けていく。それで一 緒に地域の中で、それは大人も一緒にやっていけるということをどれくらい出すか。いま やっていることは見えていない。  例えば「就職相談しますよ、相談にいらっしゃい」という横断幕を、私はいつも八王子 駅を歩く時に見るのですが、では八王子駅から離れた所に行ったらあるかというと、ない わけです。だからまだまだ私たちの施策の打ち方を工夫することが必要ですし、もっと広 げることが必要なのではないかということで、特効薬はないのだと。 ○玄田委員 やっぱりこれをどうやってメッセージにするか、どうやって関わってもらう かというに、やはり自分に利益があると、この能力開発の取組に関わることが、関わる方 々、受ける人、する人の場を作るというメリットがあるということをどこかに出さないと、 連携しましょうと言っても連携しないです。どういう意味で具体的にメリットがあるのか という、もともと能力開発行政そのものは色々な人に当然メリットがあるはずなのですが、 そこをどう打ち出していくのか。能力開発を受けても就職はないのではないか、メリット はないのではないかということを思うでしょうし、これも何か施しとして、やる気のない 人に一生懸命やってやるのではなく、かかわることが公でも民でもどちらでも良いのです が、能力開発が少なくとも短期的にもかかわることでメリットがあるのだということを少 し具体的に出していかないと、「能力開発は大切です」、「人はみんな成長する権利があ ります」ではやはり動かないのではないですか。そこを何か上手く出せないから、ちょっ と自分でも悶々とするのですが、一応毎回受けないキャッチフレーズを私は考えておりま すので、能力開発にかかわる人全体にメリットがあることを、何とか考えられるようなこ とをしたいですね。 ○長谷川委員 玄田委員は言ったではないですか。公共職業訓練を受ければ就職出来ると、 それが最大のメリットなのではないですか。 ○玄田委員 実際はそうなっているのですか。 ○今野分科会長 先程ここでお話がありましたが、例えば従来の訓練コースもデュアルの ようにしましょうという話をちょっとしましたが、あれは言ってみると出口から入口とい うか、プロセスを考え直すということです。違う言い方でコーディネーターというお話も ありましたが、玄田委員が今言われたことの解決策の1つの方向は、出口からいつも見て みるということではないですか。それは、そういうことが何となく入っているのですが、 何となく我々はそういうような気持ちで、もう見るようになってきているのかなとは思い ますが。 ○草野審議官 おっしゃるように、今度の実践型人材養成システムの利点の1つは、雇用 の目標や目処がある程度あるという中で勉強をするということで、目の色が変わってくる 真剣勝負になりますので、漠然と勉強するのとは変わってくるところが、訓練効果を飛躍 的に高めて能力開発効果を高める1つのやり方ではあろうと思います。ですから、出来る だけ雇用の目処を持ちながらやっていくような能力開発を考えていくと。  離職者についても、例えばある程度企業と最初にお見合いをして、すぐに採ってくれれ ば良いですが、この人はこういう能力を身に付けてもらったら採りたいという希望があれ ば、それを色々な教育訓練機関のコースの中から事業主に選択してもらい、そこを受けて もらってから今度採ってもらうやり方も出てくると思うのです。是非その出口の方、雇用 の目処というところから逆算して能力開発することを進めていって、真剣に勉強して就職 するということで訓練効果を高めることは、色々の面で考えていきたいと思います。その 1つが今度は実践型人材養成システムですが、より広くこのような形のものを色々職業訓 練の隅々に入れていくことを、これからやっていきたいと思っています。 ○今野分科会長 一般論でいうと、入口から考えると大量生産が出来るのです。出口から 考えると、どうしても多品種少量になってしまうのです。製造業やものづくりも一緒です。 出口から考えるということは、プロセスの方がものすごく多様になってくるので、そのプ ロセスのところも少しまた仕掛けを考えなければいけないかもしれないですね。 ○草野審議官 まさにそのとおりですね。ですから、やはり民間の色々な教育訓練機関に 様々なものがあるのが望ましいので、その中からうまく企業に合ったものを選んで取れる ような形のものに徐々に民間の方も教育訓練給付などを使いながら、していただくことを 考えていくのだろうと思っています。 ○今野分科会長 それでは、そろそろ時間ですので、話としては何となく悶々として終わ ったという感じですが、終わりにさせていただきます。そういう悶々の中から良いアイデ ィアが、また生まれるのではないかと思っています。今日の議事録の署名ですが、労働者 側委員は中村正武委員、使用者側は山野委員にお願いします。  最後に事務局から、次回の日程についてお願いします。 ○杉浦総務課長 次回は3月7日(火)の16時30分から開催をします。場所は17階の専 用第21会議室ですので、よろしくお願いします。以上です。 ○ 今野分科会長 それでは、本日は終了いたします。ありがとうございました。 【照会先】厚生労働省職業能力開発局 総務課 企画係 (内5313)