06/02/09 労働政策審議会労働条件分科会 第50回議事録 第50回労働政策審議会労働条件分科会          日時 平成18年2月9日(木)          10:00〜          場所 厚生労働省17階専用第21会議室 ○西村分科会長 ただいまから、第50回労働政策審議会労働条件分科会を開催いたしま す。本日は、岩出委員、石塚委員、島田委員、田島委員、奥谷委員、平山委員が欠席さ れております。  それでは、本日の議題に入ります。本日は、最初に、労働時間等設定改善指針案につ いて御議論をいただき、のちほど労働時間法制の関係について御議論をしていただきた いと思います。  それでは、諮問案件「労働時間等設定改善指針案」について、事務局から説明をお願 いします。 ○青木局長 おはようございます。本件につきましては、「労働時間の短縮の促進に関す る臨時措置法」が改正されまして、今年の4月1日から「労働時間等の設定の改善に関 する特別措置法」となりまして、それが施行されるということに伴って、事業主及びそ の団体が労働時間等の設定の改善について適切に対処するために必要な事項について定 めるものです。詳細は担当の方から説明させます。それでは、よろしく御審議をお願い 申し上げます。 ○坂本企画課長 資料No.1をお開きください。1枚目は諮問文です。この「労働時間等 設定改善指針(案)」につきましては、前回の分科会でも御審議いただいたところです。 前回の説明と若干重複する部分があるかと思いますが、改めて指針案の概要について簡 単に御説明します。  指針案の前文の部分、1頁から2頁にかけてですが、これまでの建議等に即して経緯 や取組、現状と問題点、今回の法改正の趣旨等を順次記載する内容となっております。  2頁の「1 労働時間等の設定の改善に関する基本的考え方」についてです。これも、 建議及び審議会等の御議論を踏まえて、「(1)労働時間等の設定の改善を図る趣旨」と して、労働時間等に関する事項について、労働者の健康と生活に配慮するとともに、多 様な働き方に対応したものへ改善することが重要であること、「(2)労働時間の短縮の 推進」の必要性、「(3)」として労働者の健康と生活に係る「多様な事情への配慮と自主 的な取組の推進」を基本的な考え方として記述しています。  3頁以下ですが、「2 事業主等が講ずべき労働時間等の設定の改善のための措置」に ついての部分です。これはすでに御説明したとおり、大きく4つに構成が分かれていま す。「(1)」として、「事業主が講ずべき一般的な措置」、「(2)特に配慮を必要とする労 働者について事業主が講ずべき措置」として、具体的な類型ごとに配慮が必要な事項を 順次記述しています。このほか、9頁に「(3)」として、「事業主の団体が行うべき援助」、 「(4)」として、「事業主が他の事業主との取引上配慮すべき事項」についても記述して います。  以上が指針案の概要ですが、前回1月17日の労働条件分科会で御審議をいただいたの ち、関係省庁との協議等、法定の手続を行うということを申し上げましたが、関係省庁、 都道府県等への意見聴取等において、具体的に修文すべきと思料される御意見はありま せんでした。その結果、指針案は、内容的には前回の分科会でお示ししたものと同様の ものとなっております。ただし、こうした手続を踏まえた後、省内の法令審査において、 若干技術的な修正がなされております。数字を漢数字から算用数字に直したり、指針案 の表題の位置を修正したり、若干の「てにをは」についての技術的な修正はなされてお りますが、内容に関わるものはありませんでした。したがって、前回と内容的には全く 同様という状況になっております。  また、この指針案について本日御議論いただくわけですが、当分科会において御答申 をいただければ、今後は告示の制定のための最終的な手続を進めることとしており、法 律と同様、本年4月1日の適用を予定しております。よろしくお願いします。 ○西村分科会長 この点につきまして、御質問、御意見をお願いします。  特に御発言がなければ、当分科会として、本指針案について妥当と認める旨の報告を、 私から労働政策審議会会長宛に行うことにしたいと思います。なお、報告文については 私に一任させていただくということでよろしいでしょうか。 (異議なし) ○西村分科会長 それでは、そのようにさせていただきます。労働基準局長の方から御 挨拶があります。 ○青木局長 ただいま、労働時間等設定改善指針案について妥当と認める旨の御報告を いただきまして、まことにありがとうございます。労働政策審議会の運営規程によりま して、本分科会の議決をもって審議会の議決とされますので、労働政策審議会として妥 当である旨御了承いただいたということになります。今後は、この指針に基づいて速や かに告示の制定作業を行い、円滑な施行に努めていきたいと思っております。今後とも 御協力よろしくお願いいたします。 ○西村分科会長 次の議題「今後の労働時間法制の在り方について」に移ります。これ については、2月8日付けで厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛に、今後の労働時 間法制の在り方について調査審議を求める内容の諮問が行われており、今後本分科会に おいて検討を行い、これに対する結論を出す必要があります。まずは、事務局から資料 の説明をお願いします。 ○大西監督課長 資料No.2ですが、今後の労働時間法制の在り方について、諮問という ことで、2月8日付けで厚生労働大臣川崎二郎から労働政策審議会会長菅野和夫宛に、 資料No.2のとおり諮問が行われました。  引き続き、資料No.3ですが、「今後の労働時間制度に関する研究会報告書」です。資料 No.3の参考資料3と4というものがあります。参考資料3が、今後の労働時間制度に関 する研究会開催要綱です。要綱と参集者のメンバーと開催の経緯で、平成17年4月28 日から始まり、平成18年1月25日に終了します。報告書は、1月27日に取りまとめら れたということです。  資料No.3の参考資料4は、平成14年以降の労働政策審議会の建議や、平成15年の労 働基準法の一部を改正する法律案に関する附帯決議、規制改革・民間開放推進3か年計 画、平成17年の閣議決定等々における労働時間制度に関する御指摘を参考のためにまと めたものです。以上のことを踏まえ、今後の労働時間制度に関する研究会の報告書が取 りまとめられましたので、その内容について御説明します。  資料No.3をご覧ください。今後の労働時間制度に関する研究会報告の中身ですが、「I  現状認識と今後の展望」が書かれています。現状認識としては、近年の技術革新やサー ビス産業の成長等による産業構造の変化により、ホワイトカラー労働者の比率が高まっ ているとともに、企業をとりまく経営環境の変化、勤労者の意識の変化等を背景として、 労働者の働き方も多様化してきているという現状認識があります。文章の中に*1、* 2とありますが、これは後ろに参考で統計データがついておりまして、それぞれ対応し ている部分がありますが、時間の都合がありますので、それぞれの対応について参照す ることについては審議会の報告の場では省略して、中身の説明をしたいと思います。  1頁の上から3分の1ぐらいですが、労働者の心身の健康を確保しつつ、家族と過ご す時間や地域活動、生涯学習などに充てる時間を確保し、労働者の仕事と生活の調和を 実現することが重要になっているという認識の下で最近の労働時間をめぐる現状を見て いきますと、所定外労働を中心とした労働時間の増加が見られ、特に30代の男性を中心 として、週60時間以上働く者の割合が増加している、あるいは年休取得率が低下してい るということが書かれております。  1頁の真ん中ですが、自律的に働き、労働時間の長短ではなく、その成果や能力など により評価されることがふさわしい労働者の増加ということです。これについては、経 済のグローバル化の進展や企業間競争の激化により、スピード感が従来より増している、 あるいは消費者のニーズに対応する必要があることから、企業において高付加価値かつ 創造的な仕事といったものの比重が高まっているのではないか。その結果、組織の階層 のフラット化やプロジェクトチーム方式、スタッフ職といったものの活用が進んできて いる。  1頁の一番下の行からですが、それに合わせて賃金制度についても、成果主義賃金や 年俸制といった制度の試行錯誤が広がってきている。このような状況の中で、高付加価 値かつ創造的な業務に従事する労働者を中心に、自律的に働き、労働時間の長短ではな く、成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者も増えてきているのでは ないか。こうした労働者については、このような評価がなされることにより労働者の労 働意欲が向上し、能力発揮が期待されるということで、労働者自身にとっても、より自 律的で満足度の高い働き方が可能になるということが触れられています。  労働時間制度については、現在までもすでにフレックスタイム制、企画業務型裁量労 働制、専門業務型裁量労働制と、いろいろな制度があるわけですが、これで十分対応で きているのかどうか、こうしたふさわしい労働者がより一層能力を発揮できて、自律的 で満足度の高い働き方が可能となるのかどうかといった観点から、従来の実労働時間の 把握を基本とした労働時間管理とは異なる新たな労働時間管理の在り方があるのかどう かについて検討を加え、労働時間制度の見直しを行うことが必要であるとされておりま す。  こうした検討を行うに当たっては、成果や能力などによる評価は労働意欲を向上させ る効果がある一方で、労働者のストレスを増加させることもあるのではないか、あるい は能力発揮の前提である心身の健康に影響を及ぼすおそれがあることについては、十分 留意する必要があると述べられております。  3頁ですが、「II 現行諸制度の現状と見直しの方向性」です。現行諸制度について、 それぞれ資料等の調査結果等が触れられています。「(1)年次有給休暇」については取 得率が低いということで、低下傾向にある、計画的付与制度についても導入状況があま り進んでいない。7割の労働者が年休取得にためらいを感じているということで、具体 的な理由として「周りに迷惑がかかる」、「職場の雰囲気が取得しづらい」ということが 挙がっています。  「(2)時間外・休日労働」については、平成16年4月1日から「特別な事情」とい うことで、臨時的なものに限るという告示改正が行われたわけですが、なお一層の抑制 が求められています。  「(3)フレックスタイム制」については、あまり導入は進んでいませんが、いったん 導入されると積極的に利用している傾向があります。「(4)事業場外みなし」制につい ては、運用の中で煩雑な部分があるという意見があります。  「(5)専門業務型裁量労働制」については、適用労働者数は着実に増加しており、ア ンケート調査の結果によると、その効果が「期待通り」とするものが多く、制度の趣旨 が一定程度実現されていると考えられるということです。他方で、業務遂行に当たって 裁量性が確保されていないケースや、追加の業務指示等により業務が過大になっている ケースが見られるということが触れられています。また、現行制度に対する要望として は、労使ともに対象業務や法的効果ともに現行で良いとする者が多いものの、対象業務 が狭すぎるという意見や、法的効果として労働時間規制の適用除外を求める意見も一定 数存在するというアンケートの調査結果が出ております。  4頁の「(6)企画業務型裁量労働制」ですが、これについては導入している企業や労 働者は少ないものの、効果は「期待通り」とする者が多く、制度の趣旨が一定程度実現 されているのではないか。他方で、業務遂行に当たって裁量制が確保されていないケー スや、追加の業務指示等により業務量が過大になっているケース、適切な対象労働者の 選定がされていないケースなどが見られているということです。現行制度に対する要望 としては、対象業務について、使用者側では狭すぎるという意見が多いのですが、労働 者側でも一定数は存在している。また、法的効果について、使用者側では変更すべきと いう意見が多く、労働者側でも一定数存在するというアンケート調査結果が出ておりま す。  「(7)管理監督者」については、従来型のいわゆるライン管理職のほかにスタッフ職 も多くなっており、スタッフ職についても一定範囲で管理監督者として取り扱われるよ うになってきています。ただ、こうした範囲は企業ごとに差が生じてきている現状があ るということが述べられております。  これらのことを踏まえての見直しの方向性ですが、5頁の2行目に、すべての労働者 が個人の選択によって生活時間を確保しつつ、仕事と生活を調和させて働くことを実現 するという観点からの検討を行うとともに、その中でも「自律的に働き、かつ、労働時 間の長短ではなく、成果や能力などにより評価されることがふさわしい労働者」につい て現行の労働時間制度では対応できていない部分を検証した上で、労働時間に関する諸 制度について運用や制度そのものの見直しを行う必要があるということが述べられてお ります。  そうした中で、上から3分の1のところですが、また、心身が健康であることは、す べての労働者にとってその能力発揮の前提であることから、時間外労働の削減、心身の 疲労回復のための年次有給休暇の取得促進といったことについて、十分留意する必要が あるということが述べられております。  下から3分の1の部分で、さらに、企業の実態に応じて制度を設計する必要がある場 合には、労使協議が行われることが必要であると述べられています。  6頁からは、「III 新たな労働時間制度の在り方」です。「1 生活時間を確保しつつ 仕事と生活を調和させて働くことを実現するための見直し」ということです。ここでは、 すべての労働者にとって家族と過ごす時間、地域活動、生涯学習に充てる時間といった 生活に充てる時間と仕事のための時間を調和させて働いていくということは非常に重要 な課題であるということで、労働者の仕事と生活双方が充実したものになるように、い ろいろ検討を重ねていく必要があるのではないか。健康確保の観点からも、実際に休み の時間を確保できるかが重要になってきている。こうしたことは、単に労働から離れる ということではなく、仕事面でより能力を発揮し、仕事面での充実感を得る観点からも、 休息の確保は重要であり、仕事偏重でもなく生活偏重でもなく、仕事と生活の調和が必 要ではないかということが述べられております。  続いて個別のテーマですが、「年次有給休暇」についての検討がなされています。6頁 の真ん中辺りですが、実際の年休取得率が50%以下の水準で推移していることは、労働 者の時季指定という従来型のシステムが本当に限界にきているのではないかと考えられ るということで、一つの考え方として、労働者の時季指定権という考え方を尊重しつつ、 実際の年休取得率を向上させるため、時季指定を補充する仕組みを考えていく必要があ る。例えば、諸外国の例を参考に、年次有給休暇のうち一定日数につき、使用者が労働 者の希望を踏まえて、あらかじめ具体的な取得日を決定するということです。年休のう ちどの日を休むか、カレンダーに○をつけることを使用者の方にやっていただくことに より、確実に取得させることを義務付けるという手法について検討を進める必要がある のではないかということが、一つ述べられております。  現行制度においても、年末年始やゴールデンウィーク、夏休みといった比較的長期の 休暇を取得する慣習がある時期を基本として、1年をいくつかの時期に分割した上で、 当該時期ごとに付与日を設定するといった計画年休制度についての活用促進の手法につ いても検討する必要があるのではないか。あるいは、下から2行目、1週間程度以上の 連続休暇を計画的に取得させることや、年休取得率が低い者に計画的に取得させるため の方策として、取得計画を作成させるといったことも検討する必要があるのではないか ということで、年休取得の向上についての一つのアイデアがここで示されているわけで す。  7頁の上から6行目ですが、労働者の仕事と生活の調和を図る観点からも、年次有給 休暇については多様な役割を果たすことが期待されており、そのため弾力的な取得方法 を認めることが必要ではないかと考えられる。例えば、通院や、急に子どもの送り迎え や親の介護が必要になった場合など、臨時的又は突発的な用務のために、1、2時間程 度の休暇が必要となる場合がある。現行制度では半日以上というものがありますが、原 則として労働日単位の取得ということなので、少し弾力化する必要があるのではないか という議論、そういう時間単位の取得を望む声が一方である。ただ、議論としては、こ ういった休暇は本来病気休暇制度など、それぞれ休暇制度を整備するのが本筋であると いう議論と、現実には休暇制度を作れといっても、すぐに導入されていくわけでもない ので、過渡期的な措置として、労使協議に基づく合意を前提として、年次有給休暇の時 間単位の活用も考えられないかということが議論されたわけです。  こうした場合には、利用方法が本来の年休制度の趣旨とは異なるという観点から、例 えば(1)、(2)、(3)にあるように、時間単位の上限の日数を決めておくとか、半日以上の単 位で年次有給休暇を労働者が申請した場合、事業主からの時間単位への時季変更はでき ないといった歯止めが必要ではないか、あるいは労使協定等により、何時間取得したら 1労働日分の休暇として扱うか。これは8時間だと8分割で1日分というのがわかりや すいのですが、所定労働時間が7時間45分と半端になっている場合はどうするのかとい った議論だと思います。そういったことをあらかじめ決めておくなど、労使で取決めを した上で、年次有給休暇の一部について時間単位の取得をできるようにするというアイ デアはいかがか、という提言がなされています。  7頁の下から3分の1のところですが、年次有給休暇がたくさん残って退職が近くな った場合です。あと1か月や2か月で退職するときに、年休が10日、20日残っている 場合、実際に時季指定すると言われても、業務の引継などでなかなか休む日が決められ ないケースがあります。そうした場合に、労働者の方はやむを得ず年休消化ができない まま退職するケースがあると、労働者に多少不利益ではないか。そうした場合に限って、 未消化年休に係る年休手当という形で、退職時に何らかの清算制度を設け、不都合を解 消するという手法はないのか、ということが述べられています。  7頁の下から2行目から、「時間外・休日労働」についてです。労働者を実際に労働か ら解放して健康確保を図るのが非常に重要になってきているということから見れば、法 定時間を超えて労働する時間数が一定の時間数を超えた場合には、割増賃金の支払いに 加えて、その時間外労働の時間数に相応する日数の休日、ここでは「代償休日」と書い てありますが、労働義務を一定時間免除することを義務付ける制度の検討も進める必要 がある。これは、従来労働者が使った時間に対して賃金で清算していただくシステムだ ったわけですが、それに加えて、時間を使ったら時間で返していただくという考え方も 一つある、実際に休んでいただいて健康を確保するという考え方もあるのではないか、 ということが述べられています。  また、時間外労働のルールの徹底ということで、時間外労働の限度基準で定める延長 時間の限度などの、一定時間数を超えて時間外労働をさせた場合には、使用者に通常の 割増率よりも高い割増賃金の支払いを義務付けるというのはどうかということです。こ れは、一定の限度を超えた場合に割増率を上げることで、長い時間外労働を抑制してい くことができないだろうかということが述べられています。  8頁の下から3分の1ぐらいの所に「なお」と書いてありますが、労働基準法第32 条の罰則の強化なども考えられるということが触れられております。さらに所定労働時 間について、所定労働時間はその事業場における事業の実態を踏まえて、法定労働時間 の範囲内で決められているわけですが、こういった所定労働時間が、その事業場におい ては本来その時間を労働者に仕事をしていただくという設計になっていることにかんが み、所定労働時間を超えて労働した場合は、法定労働時間の枠内であっても割増賃金の 支払いを義務付けるという考え方はどうかという議論です。そこについては、より所定 外労働の抑制につながるという効果が考えられる一方、所定労働時間を法定労働時間ま で延長するといったことを誘ってしまうのではないか、いろいろ影響が大きいというこ とで、引き続き検討していくということで、具体的な提言はいただいていません。  9頁は、フレックスタイム制、事業場外みなし等々について、活用促進、運用改善な どが必要な部分はそのようにしてはいかがでしょうか、ということが書かれています。 フレックスタイム制については、活用促進のために好事例の収集・提供等が必要ではな いか、フレックスタイム制の清算の運用について、実態に応じて見直しが必要であれば 検討してはいかがかということが書かれております。事業場外みなしについては、事業 場外で活動し、一部事業場内で業務に従事していたパターンで、時間の把握についてや や複雑な面があるのであれば、実態に応じて見直すことも検討してはいかがかというこ とが触れられております。  10頁から、「2 自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく成果や能力などによ り評価されることがふさわしい労働者のための制度」です。「(1)検討の視点」ですが、 労働者の中には、仕事を通じてより一層の自己実現や能力発揮を望む者があって、自律 的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価されることがふさ わしい方も存在しているのではないでしょうか。こういう方に対して、より自由で弾力 的に働くことができる、あるいは自分の能力をより発揮できることが納得できる場合に、 安心してそのような選択ができる制度を作ることが、こういった方々の能力発揮の促進 や日本経済の発展に資すると考えられるのではないかということが述べられております。  諸外国でいろいろな制度があります。一つはアメリカのホワイトカラー・エグゼンプ ションという制度です。アメリカでは、労働時間自体の上限を設定しない規制の仕組み になっていることや、労働事情、特に我が国と比べた場合、転職が容易であるとか、過 剰な労働時間を強いられることを自ら防ぐことができる状況が、我が国と大きく異なる ということで、こうした制度をそのまま我が国に導入することは適当ではないという指 摘がされております。ただ、これとは別に新たな制度を設計する場合に当たっては、や はり労働者の心身の健康が確保されることが、労働者が能力を発揮するための前提であ ることに留意し、新たな労働時間規制の適用の枠組み、「新しい自律的な労働時間制度」 が導入されたことにより、過重な労働が増加することが、起こらぬように、健康確保に ついても十分留意する必要があるということ。さらに、企画業務型裁量労働制、専門業 務型裁量労働制、管理監督者の適用除外といった現行制度との関係について、現場の労 働者が納得した上で、円滑にそれぞれの制度が活用できるように、諸制度との調和や対 象者の重なりについてもいろいろ議論を深めていく必要があるのではないか、という御 指摘がなされております。こういった御指摘の下で、新しい自律的な労働時間制度が検 討されたわけです。  10頁は、いきなり「要件」と書いてあるのですが、どういう人を対象にしているかと いうイメージが、13頁の一番下の行にあります。一つとしては、企業における中堅の幹 部候補者で、管理監督者の手前に位置する者です。これは労働基準法上の管理監督者で はありませんが、その手前に位置する方というイメージで、14頁のロで、企業における 研究開発部門のプロジェクトチームのリーダーといった方々がどういう働きをしている のかということを念頭に議論が行われました。  最初の管理監督者の手前に位置する労働者については、職務遂行の手法や労働時間の 配分につき使用者から具体的な指示を受けず、成果や能力に応じて賃金が決定されてい ること、事業の運営に関する企画業務などに従事していること、一定以上の職位・職階 にあること、経験年数なども勘案されるのではないか。年収や本人同意、週休2日制に 相当する日数の休日を実際に取得していること、適切な健康確保措置が講じられている ことなど、こういった方をイメージして考えています。  企業における研究開発部門のプロジェクトチームのリーダーについては、@)は、イ の方と同じですが、A)では一定以上の技能または技術を有しており、一定のまとまり を持った範囲の研究開発を任されている、B)年収、C)同意、D)ではプロジェクト 終了後の連続休暇などの特別な休暇が付与されていること、E)では適切な健康確保措 置が講じられていること。このような方を代表選手ということで念頭に置いて、どうい う制度があるのかを考えてみてはいかがかという提言がなされています。  11頁で、具体的な要件としては、「(1)勤務態様要件」ということで、@)では職務遂 行の手法や労働時間の配分について、使用者からの具体的な指示を受けず、かつ、自己 の業務量について裁量があること、ということが書かれております。具体的には、出退 勤時間が一律に設定されていないことに加え、あらかじめ決められた出勤日数の枠内で、 出勤日と休日の設定についても配分ができるという裁量もある、あるいは上司からの過 重な業務指示があった場合の対応について、自らの判断にゆだねられていることや、個々 の業務のうちどれを優先的に処理するかについて判断できるなど、業務量のコントロー ルができるといった裁量性も必要なのではないかということです。  本要件の外形的指標としては、例えば、一定以上の職位・職階にあることや職務内容 などが考えられるが、企業ごとに多種多様であることや、これらの指標がなじみにくい ケースもあることも考えられるのではないかということが触れられております。  A)では、労働時間の長短が直接的に賃金に反映されるのではなく、成果や能力など 労働時間以外のスケールで賃金が決定されていることが挙げられる。具体的には、対象 労働者の賃金制度は、他の通常の労働者の賃金制度とは区別されたものになっているこ とが通常であると考えられる、と述べられています。  「(2)本人要件」ですが、一定水準以上の年収が確保されていることです。個々の労働 者が対象労働者となるか否かについては、本人同意が要件とされるべきであるが、年収 額の水準が相当程度高いことは、本人の同意が真意によるものである、そして、労働時 間規制による保護を与えなくても自律的に働き方を決定できるといった判断をするため の重要な要素となると考えられる、ということが述べられています。年収額については、 通常の労働時間管理の下で働いている労働者の年間の給与総額を下回らないことが通常 であると考えられるとも述べられております。  A)は、労働者本人が同意しているということです。これは、労働者本人が自律的に 働くことを自ら望んでいる、それが実現可能であると納得していることが前提ではない か。そうしたことが、客観的にも主観的にもそうであることが重要であるということが 述べられています。  12頁の上から3分の1ですが、同意しなかった場合の不利益取扱いの禁止も考えなけ ればいけないのではないか。同意をした場合に合意書を作成して、きちんと合意してや っていることがあとからでもわかるように、書類の保管等も必要ではないか。また、合 意書に盛り込まれた内容が契約上の権利義務関係となり得るということで、あとで紛争 が起こった場合には、合意書を基に迅速に解決を図っていくことも必要なのではないか ということが述べられております。  「(3)健康確保措置」については、実効性のある健康確保措置が講じられていることと いうことで、過重労働の抑制について十分配慮しなければいけないことから、健康確保 のセーフティネットとして、具体的には職場内において健康状況をチェックし、その健 康チェックの中身に応じて適切な措置が講じられる体制が必要である、必要な休日が確 保されていることが非常に重要であるということが述べられています。これについては、 後ほど別の所で出てきておりますので、ここでは簡単に触れられています。  「(4)導入における労使の協議に基づく合意」ですが、各企業において新しい自律的な 労働時間制度を導入するに当たっては、現行の企画業務型裁量労働制や専門業務型裁量 労働制と同様に、各企業の実態を把握している労使が話し合った上で導入を決定し、合 意することを要件とすることが適当ではないかと述べられております。対象労働者の要 件については、13頁の上から3行目ぐらいで、法令にその要件の詳細を定め、一律に画 定するという考え方がある一方で、企業ごとに実態に応じた対象労働者の範囲の画定を 可能とするため、法令に基本的な要件を定めた上で、具体的な対象労働者の範囲につい ては、労使の実態に即した協議に基づく合意により決定するのがいいのではないかとい うことも、ここで述べられております。後者においては、労使協議にゆだねるとしても、 年収額の下限や、管理監督者を含めた対象労働者の合計数の企業ごとの上限の枠取りを 定めることにより、この制度の対象者としてふさわしくないものにまで新制度を適用す るといった不適切な運用がなされないような歯止めも必要なのではないかということが、 一つ述べられております。一方で、純粋持株会社のようにほとんどの労働者が新しい制 度の対象者となり得ると考えられる場合など、割合の上限を設けることがあまり適切で はないケースも考えられるのではないかとも述べられています。  また、13頁の真ん中辺りですが、年収要件について、極めて高い額の年収が保証され る労働者については、その方自身が使用者に対し相当の交渉力を有し、かつ働き方の決 定について高い自律性を有すると考えられることから、労使協議という要件を満たさな くても、新しい自律的な労働時間制度を受けられることも考えられるのではないかとい うことが述べられています。また、対象労働者を確定する上での基本的な要件について、 事務系職種と技術系職種で違いがある。職位、職階、賃金制度、職務内容といった違い があるので、考慮に入れることが必要であるということが述べられております。  さらに、上記の(1)〜(3)の要件を満たす場合であっても、労働時間の長短と成果の大小 との相関が強い業務など、こういう対象にすべきでない業務のネガティブリスト化を、 実態を踏まえて検討すべきであるということも述べられています。こういった要件で、 新しい制度の対象者のイメージを、先ほど申し述べたように、企業における中堅の幹部 候補者で管理監督者の手前に位置する者や、企業における研究開発部門のプロジェクト チームのリーダーがこういうものに当たるのではないかということが、14頁で書かれて おります。  この制度の法的効果については、14頁の下のほうの(3)ですが、労働基準法上の第 4章、第6章及び第6章の2の労働時間、休憩に関する規定が適用されないとすること が考えられるわけで、深夜業についても適切な健康確保の措置の担保を前提として適用 除外をすることが考えられるということが述べられています。15頁の上から3行目です が、労働基準法第35条の法定休日の規定については、管理監督者は適用除外されていま すが、新しい制度は、休日取得の実効性の確保を図る観点から、これについては適用除 外しないということが考えられると述べられております。  (4)では、健康確保措置について書かれております。健康状況のチェックについて は、具体的には、対象労働者全員に対して定期的に健康状況をチェックし、必要に応じ て適切な措置を講じる等、何らかの健康確保措置を講ずることを義務付け、その実施状 況について、事業場においてその記録等を保管するとともに、行政官庁への報告を義務 付けることが考えられる。また、適切な履行を担保するために、実施されていない場合 には罰則を科することも考えられるということが述べられております。  また、対象労働者が新しい制度の適用を望まなくなった場合には、本人の申出により 通常の労働時間管理に戻す仕組みを検討する必要があると述べられています。さらに、 以上に加え、健康確保措置が実際に実施されていることが、新しい自律的な労働時間制 度を導入する際の前提となることから、次から次へと違反が重なって健康確保措置をや っていただけない場合には、対象労働者全員を通常労働時間管理に戻す仕組みや、使用 者に対する制裁として、年収額の一定割合を支払うことを義務付けるといった履行確保 の措置も十分に検討していく必要があるということが、15〜16頁にかけて書かれていま す。  16頁は、休日の確保です。対象労働者については、通常の労働時間管理による過重労 働の防止ができないことから、通常の労働時間管理を受ける労働者に比べて、休日を実 際に取得することが心身の健康確保のためにより一層重要となるということで、その際、 労働基準法第35条の法定休日に加え、一定日数以上の休日を取得させることや、そのう ちの一定日数については連続して取得させるといったことを考えていく必要があるので はないか。さらに、休日の日数についてあらかじめ個々の労働契約で定めることにより、 いわゆる債権債務関係として履行確保を図ることも考えられるのではないかということ が述べられております。対象労働者については、使用者から出退勤時刻を含めた労働時 間管理を受けないということで、休日の日数がその労働者の総労働時間の代用指標と考 えられますので、使用者が出勤の有無について把握していくことが考えられるというこ とが述べられております。  さらに、労働時間の配分について具体的な指示を受けないこれらの労働者については、 使用者が年次有給休暇の時季変更権を行使し得る範囲は、おのずと限定的になると考え られる。休日の確保についても、休日の確保が健康確保に欠かせないものであることを 重視して、休日の取得が適切に行われていないことなどが次々と明らかになった場合に は、対象者全員を通常の労働時間管理に戻すとか、年収の一定額を支払うといった制度 等で、適正な運用の確保を十分に図っていかなければいけないということが述べられて います。  17頁では、労使の協議の役割です。現行の企画業務型裁量労働制においては労使委員 会制度が、また、専門業務型裁量労働制においては労使協定制度がとられており、制度 の対象者の具体的な範囲は、企業の実態に即して労使が対等な立場で協議して決めるこ とが必要であるという考え方で、現行制度が成り立っているということです。新しい制 度においても、対象労働者の具体的な範囲の画定なども企業の実態に応じて行うのであ れば、労働者の意見を適正に集約することにより、労働者の交渉力を補完するとともに、 労使が実質的に対等な立場で協議を行う仕組みを担保することが重要であると述べられ ております。また、こうした手続が確実に行われることを行政が事後的にチェックする 必要があるということで、労使の協議に係る合意書などの保管や行政官庁への届出など も考えられるのではないかということです。こうした労使の協議の具体的な在り方につ いては、現行制度の労使の協議の在り方、労働契約の関係で行われている協議の在り方 と、時期を同じくして検討を進めていくことが必要ではないかということが述べられて います。  (6)では、適正な運用の確保ということで、苦情処理措置について書かれておりま す。新制度の適正な運用を担保するため、対象労働者からの苦情に対応する措置を講じ ることが必要である。こうした場合、現行制度の実態なども踏まえて、苦情処理措置の 在り方についても検討を加えるべきであるということが書かれております。  17頁の下から4分の1は、要件・手続に違背があった場合の取扱いです。これについ て、労働基準法上の効果、民事上の効果についてそれぞれ考えられるわけですが、17頁 の最後から18頁にかけて、それぞれのパターンに応じて労働基準法第32条の違反など の問題として処理する場合等々について議論がなされております。18頁の下から2行目 ですが、不適正な取扱いがなされた場合に、その期間中に生じた法定時間外労働につい ての割増賃金をどうするかという議論があり、新しい制度の適用を受けることになれば、 使用者は労働者の労働時間を把握しないことになるわけで、そうした場合に労働者の賃 金の取扱いをどのようにするかです。(1)では、不適正な取扱いがなされた場合の労働者 への支払額を、あらかじめ労使で取り決めておく。(2)不適正な取扱いがなされた場合に おける労働に従事したと推定される時間を、あらかじめ労使で取り決めておく。こうい ったことにより、不適切な取扱いがなされた場合の救済措置についても、あらかじめ決 めておくことが適当ではないかということが述べられているわけです。  19頁の真ん中では、履行確保のための行政の役割ということで、新しい自律的な労働 時間制度においては、各企業の労使自治が大きな役割を果たすことを前提として、行政 官庁としては、実質的な労使の協議が担保されていることも含め、制度の導入手続が適 正に行われているかどうかという観点から確認していくことが適当である、ということ が述べられております。各事業場においては、賃金台帳で対象労働者が明らかにされて いる、あるいは実際に健康確保措置が実施されているか、実際に休日が確保されている かが書面で確認できるかなどについて検討していく必要があるということが述べられて おります。  以上が新しい制度についての検討、御提言で、20頁、21頁は現行制度との関係です。 現行の裁量労働制のうち、企画業務型裁量労働制については20頁の上から6行目ぐらい で、新制度の創設に伴い、廃止することも考えられるのではないかと述べられておりま す。しかしながら、現に企画業務型裁量労働制を導入している事業場において、こうい った制度を活用していることを考えると、実態を踏まえつつ当面、現行制度を維持する ことも考えられるのではないか。そうした場合に必要な制度改善について、続いて述べ られております。  20頁の真ん中で、他方、専門業務型裁量労働制については、新しい制度と対象者が一 部重なるものの、そうでない方もある、あるいはこういったニーズがあることから、制 度を維持することが適当ではないか。その際には、所要の制度改善について併せて検討 を行う必要があるとか、現行の企画業務型裁量労働制と専門業務型裁量労働制を整理・ 統合するということも考えられるのではないかということも述べられています。  21頁は、管理監督者との関係です。これについては、管理監督者の労働時間規制の適 用除外は引き続きするわけですが、スタッフ職についてはいろいろと制度が変化してき ているということで、現行の管理監督者の要件では、なかなか適正な運用が図られない のではないかということが一つ挙げられていまして、新しい労働時間制度とあわせて管 理監督者の要件の明確化、あるいは適正化を図っていくことが必要ではないかというこ とが述べられています。その場合、管理監督者は新しい労働時間制度に比べて、より経 営者に近い立場であることに留意しつつ、要件の明確化及び適正化を図るべきであると いう指摘がなされています。さらに、管理監督者についての深夜業に関する規定につい ては、健康に配慮することとあわせて、こういった適用除外についても検討していくこ とが考えられるのではないかと述べられています。以上でこの報告書について、こうい う形で研究会で議論がなされたということの御説明とさせていただきます。 ○西村分科会長 いま説明をしてもらいました研究会報告書について、御意見をお願い します。 ○小山委員 10頁の「自律的に働き、かつ、労働時間の長短ではなく成果や能力などに より評価されることがふさわしい労働者のための制度」という定義をされていますが、 労働時間の長短で評価されている労働者というのが一方にいるということかと思います が、それはどういう労働者を指しているのか。この表現で私が認識するところによれば、 労働時間の長短で評価されるということは時間給で労働契約を結んで、時間に応じて賃 金が支払われるということでしたら、労働時間の長短で賃金が決定していくことになる わけですが、いわゆる正規雇用の従業員の場合は、労働時間の長短によって賃金が評価 されて決定するという制度はないと思っていますが、その点についてどのように考えら れているのでしょうか。 ○大西監督課長 この研究会では、いま委員が御指摘の正規労働者も含めて所定労働時 間が何時間あって、それを超えた場合に時間外労働という形になるということで、労働 時間を軸に労働時間に基づく給与と、あるいはその時間外における割増賃金をいただい ている方を総体として、この労働時間をベースに割増賃金を含めた給与の設定がなされ ているという具合に広く捉えていまして、必ずしもより時間給という方だけではなく、 広く労働者を捉えているという考え方の下で研究会の議論は整理されているところです。 ○新田委員 それでは議論のときに、具体的に労働者をイメージして、例えばこういう 労働者はこっち、こういう労働者は新しい枠組みにすべきという議論はあったのですか。 もしあれば、お聞かせください。要するに現実には、経験とかさまざまなことを企業も 検証し、さまざまな能力アップを踏まえて、賃金は縦横合わせて決まっているわけでし ょう。しかし、この報告書で言われていることは、その現実とはそぐわず、いま小山委 員からも出たけれども、そこがどうしても掴めない。どんな具体的なイメージをされて 議論されたのかということを聞かせてください。 ○大西監督課長 もちろん、多種多様な労働者がいらっしゃるわけで、給与の制度も普 通の月給制、従来型の給与の体系と、あるいはここに多少触れられている年俸制とか成 果型賃金といろいろあるわけですが、一般的に幅広く、いま委員がおっしゃいました能 力とか、そういうものも加味しつつ働いている方も含めて、生活時間を確保しつつ、仕 事と生活を調和させて働くことを実現するといった方々の制度という形で、一つの大き な枠として捉えられて議論されたことが一つ。念頭に置いたということで申し上げます と、13頁の終わりから書いてあるイ、ロについて、例えばこういう方々について新しい 制度が考えられるのではないかというような形で議論されておりまして、多くの労働者 にやっていかなければいけないということでの制度の話と、そうした中で13頁にあるよ うな具体的なイメージということでいくつか挙げさせていただいて、こういう方々につ いてどうかということで議論が進められたということです。 ○八野委員 この辺は整理していかなければいけないところかと思います。しかし、そ れ以前に、10頁の2の(1)に、「労働者の中には、仕事を通じたより一層の自己実現 や能力発揮を望む者であって」と書いてあります。「労働者の中には」という表現が出て いますが、企業の労使で人事制度を構築していく上では、自己実現、能力発揮をしても らう、または、労働者もそういうものを行っていくということで、いま人事制度改革な どをやっていると思います。ですので、「労働者の中には」という一部に限定したような 表現については、なかなか納得し難いところがあります。そういう観点から、自律的に 働き、かつ労働時間の長短ではなく、新しい制度を作っていくという提案の中で、労働 者、企業労使の中でいえば従業員というものの捉え方が極端すぎるのではないかという のが一点です。  また、いま出てきました自律的な労働時間制度の対象者のイメージが書かれているわ けですが、企画業務型裁量労働制の労働者もいるわけで、企画業務型裁量労働制という ものは法的にも決まっているわけですが、もう一度ここで対象はどういう業務内容で、 どのような制度であるのか、どういうものが対象者であるのかについて確認をさせてい ただきたいと思います。 ○大西監督課長 業務内容ということですと労働基準法の第38条の4ということで、事 業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務であって、当該業務 の性質上これを適切に遂行するにはその遂行の方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必 要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な 指示をしないこととする業務ということで、対象業務が決められています。これについ ては、対象業務に従事する対象労働者の範囲に属する労働者の労働時間として算定され る時間を働いたものとみなすということで、現行制度はそのようになっています。 ○八野委員 ありがとうございました。続きまして、そこで業務をされている方たちは、 日本の企業の中でも数が少ないという調査結果で出ているかと思います。なぜそれを質 問したかといいますと、この新しい制度を考えてるときに、この制度で具体的な対象の イメージで書かれている人たちは、いまどういう働き方をされていると捉えられている のでしょうか。 ○大西監督課長 個々の対象労働者のイメージについては、14頁のイで書かれています ように、いまの第38条の4で読ませていただいたところと対照しますと、@)でも職務 遂行の手法や労働時間の配分につき、使用者から具体的な指示を受けず、というところ です。 ○八野委員 そういうことではなく、そういうイメージで書かれている人たちは現在、 どのような労働時間制度で働いていると捉えられているのですか。 ○大西監督課長 この研究会の議論の中では、企画業務型裁量労働制で働かれている方 も多いだろうし、裁量労働制でない時間管理で働かれている方も多いのではないかと書 かれています。もう一言補足させていただきますと、先ほど20頁の説明をしましたが、 20頁の最初の「現行の企画業務型裁量労働制は、そもそも、実際の労働時間の長短と賃 金との関係を切り離すことにより、労働者に自律的な働き方を促すための制度として創 設されたものであり、当然、その対象労働者には新しい自律的な労働時間制度の対象労 働者となるべき者も相当数含まれていると考えられる。したがって、その制度目的や対 象労働者が重なることから、新制度の創設に伴い、企画業務型裁量労働制を廃止するこ とも考えられる」と述べられていますので、委員の御質問の、現在どういう働き方をさ れているかというと、企画業務型になっている方か、通常の労働時間管理の方だと思わ れます。しかし、企画業務型になっている方は、新しい制度の対象者とかぶるのではな いかということで議論が整理されていますので、企画業務型裁量労働制で働いている方 も多いのではないかということを念頭に議論はされておりました。 ○八野委員 そうすると、いまの企画業務型裁量労働制にはかなり問題があると捉えら れているということでしょうか。 ○大西監督課長 問題があるというのは、一言でどういう問題なのか、何が問題なのか といろいろありますが、4頁の真ん中に、現行制度に対する要望としては、対象業務に ついて、使用者側では狭すぎるとの意見が多く、労働者側でも一定数存在する。また、 法的効果についても、使用者側で変更すべきものとするものが多く、労働者側でも一定 数存在する、といったアンケート調査が出てきています。こういった要望というものが 企画業務型については多いということで、現行制度についてそういった議論があるので はないか。  先ほど説明を省略させていただきましたが、分厚い参考資料というグラフがたくさん 載っている資料があります。52頁辺りで、企画業務型裁量労働制の対象業務の範囲につ いてということで、狭すぎるが27.1%いましたとか、そういったようなことで調査結果 に基づきまして、企画業務型裁量労働制については、いろいろ御要望が多かったという こともこの研究会では議論がなされました。なぜ企画業務型になったかというと、専門 業務型のほうが現行制度でよいという意見が割と多かったということです。  資料の56頁の法的効果については、現行制度でよいという割合が多いわけですが、変 更してもよいという労働者も存在するということで、こういったアンケート調査を参考 にしつつ、議論は進んでいたということでした。 ○八野委員 質問させていただいたのは、いま現在、企画業務型の労働のところにこれ から考えられる新しい制度の対象と想定される労働者が多く含まれるということが報告 書にも出ています。しかし裁量労働制については、一方では、業務量が過大であるとか 労働時間が非常に長いとか、在社の時間が長いというアンケート結果も出ていて、制度 自体にも一つ問題があるだろうと思います。それと、現行制度で良いと言っている人た ちも、狭すぎると言っている人をかなり上回る割合で出てきている。そういう観点から 見ていったときに、本当にいま見直しをする必要があるのかどうか。もう少し、この辺 については両論で議論をして見ていく必要があるのではないかと思います。すぐに変え ていくことを前提として、考えていくべきかどうかが疑問であると思いましたので、質 問させていただきました。 ○渡辺(章)委員 その御意見にも共通するかもしれませんが、いまここで前回までや っていた労働契約法制の報告の最後の第7に、仮に自律的な働き方をする労働者につい て現行の労働時間制の見直しをするにしても、労働契約法の制定が前提であると書かれ ている。それはそういうことであるとなっているわけですが、今日は研究会の報告で、 こういう議論が交わされたという御紹介と承ってはいますが、議論の順序というか、労 働契約法制ができることが前提であると言われていることと、これを同時並行的に議論 していくことをどのように整理してお考えになっているのか。非常に重要なことだと思 いますが、その点についてのお考えを聞かせていただきたいと思います。 ○松井審議官 労働契約というのは時間、賃金、諸々を含めてどうあるかという全体像 を議論する性格だと思いますので、いろいろなものの相関関係を見ながらやるという意 味では、議論を同時にすることは問題ないし、むしろそのほうが関係者の理解というも のが深まると思います。その議論した結果として、どういう段取り、どういう手順で物 事を整理していくかという考え方として、いま言われたように、まずは契約法という法 体系を作った上で、それを踏まえて処理することも出てまいりましょうし、いま言った ような議論をする中で、いや、同時決着がいいということもあるということであります。 いずれにしても、そういった処理の仕方をどうするかは、全体像を議論する中で関係者 の合意が得られていくものではないかと思います。 ○渡辺(章)委員 少なくとも、同時決着ということは、あの報告書からは出てこない はずではないでしょうか。例えば、就業規則の記載事項にしても、絶対的必要記載事項 にしても任意必要記載事項にしても、労働契約法制の中で必要と思われる改正が今後な されてくるだろうと思います。あるいは、労働条件の変更の方法についても、就業規則 法制を巡って大変な議論がある。この自律的働き方をする人たちについても、本人の同 意という契約上の枠組の中の要件が課されている。そうなってくると、同時というより も労働契約の基本に関して、いま提案されて議論しているところを先議して、先議する についてはこういう議論の背景を認識しながら議論する必要があると思いますが、報告 書自身が言っていることを守るべきではないかと思います。いまの御意見は違和感を感 じます。 ○松井審議官 報告書も、今回の報告書もいずれも学者先生にいただいた意見でありま して、それをどのようにするかということをまさに審議会でやっていただければと思い ますので、渡辺先生の意見も、意見だと思います。 ○渡辺(章)委員 私の意見ではなくて、労働契約法制部会の意見、報告としてそのこ とが書かれています。一つの意見ではないです。 ○松井審議官 その意見に沿うべきだという意見だということを承知しておりますとい うことです。こちらのほうは、研究会報告であわせてと出ていますので、そういう御意 見であるということも承知しておりますということで止めたいと思います。 ○渡辺(章)委員 この件については最後にしますが、今日は研究会でこういう報告が なされた。いずれ、労働契約法制の労働条件分科会でこのことについて論議の俎上に載 るであろう。そういうことであることは十分承知しています。そういうことを踏まえて、 今後の検討のプログラムを組んでいただきたい。労働契約法制部会の第7の末尾に書か れていることをきちんと守って、具体的な論議を進めていっていただきたい。これも意 見として申し上げておきます。 ○長谷川委員 議事録に載ると、このままだと労働側は「うん」と言ったのかと言われ るので一言申し上げます。先生と認識が少し違うのですが、労働契約部会というものは 存在していないのが第一点です。そういう部会は、厚生労働省の中には存在していませ ん。労働契約法制研究会はありまして、専門家の皆さんの研究会報告はこの分科会で報 告はされましたが、部会というのはなかったことは、きちんと確認しておいていただき たいと思います。 ○渡辺(章)委員 私の発言は間違ったのでしょうか。ここは、労働条件分科会ですね。 そこで、いま報告書をベースにした労働契約法の研究会の議論がなされているので、そ の報告書の中に書かれている検討の順序に従って検討していくべきことである。何かお かしなところはありますか。 ○廣見委員 いま渡辺先生のおっしゃったことは、労働契約法制に関し、研究会の報告 が出されました。その中には、いま渡辺先生がおっしゃったような趣旨のことが書かれ ていたと思いますが、先生はお忙しくて御欠席されたこともありまして、ここで議論を したときに、労働契約法制研究会の報告書をこの場ではどういうものとして捉えて議論 するかという議論があったわけです。結論とすれば、あれは一つの、そういう研究会と して出されたのだけれども、あの研究会そのものと労働条件分科会においては、ストレ ートに叩き台として議論することではなく、もう少しフリーに労働契約法制の必要性で あるとか現状はどうなっているとか、どういう問題点があるとか、そこから議論を進め ていきましょうという形になっているわけです。そういう意味では、必ずしもいま先生 がおっしゃったような進め方をこの場で合意しているということではないのではないか と私は理解しています。いま長谷川委員がおっしゃったのは、そういう趣旨だと思いま す。そこをどうしていくか、これからまたこういう議論もしながら、全体としてどうす るかはまたやらなければいけないことではありますが、必ずしも労働契約法制研究会の 書かれたその関係というか、それをここで前提にすることではない。これが大方の当分 科会の意見であると理解したほうが、議論の整理としてはいいのではなかろうかと思い ます。 ○渡辺(章)委員 よくわかりました。 ○紀陸委員 資料3の17頁の「(5)労使の協議の役割」ですが、労使協議の在り方と して「いずれにしても、これらについて、関係審議会において、労働契約法制の検討の 中で、労働時間制度の在り方の検討と時期を同じくして検討が進められることが必要で ある」となっています。これはこれとして契約法制と基準法の改正とは別なのだと。だ から、並行してこの協議の在り方、役割について別々に論議という理解でよろしいので すね。 ○松井審議官 この報告書の真意はということですか。 ○紀陸委員 これを見ると、労働契約法制の検討の中で、この問題を論議すると読み取 れますが。 ○松井審議官 そのとおり書いてあるのですが。 ○紀陸委員 これは、基準法の改正の論議ですよね。 ○松井審議官 基準法に関係する部分もあろうかと思います。だから、報告書としては ここにありますように、関係する審議会の中で契約法制というのが検討されているから、 その中で時期を合わせて検討を進める必要があると、この研究会は考えたということで あるし、先ほど言いましたように渡辺先生が指摘されたような指摘もありますから、当 関係審議会としてどうするかということを改めてやっていただくことも必要だと思いま す。その辺を整理しながらやっていただきたいと思います。 ○渡辺(章)委員 そうすると、労働契約法制研究会の報告書は、まだここの議論に載 っていないということですが、それは承知の上で、あの研究会は労働時間法制の見直し は、自律的な働き方をする労働者に関して行うときは、労働契約法の制定を前提として やるべきだというのと少し違うということですね。2つの研究会が、それぞれ審議の進 め方について違った見解を出したと。一方は、契約法制先行型で、こちらは同時進行型 だと。そういうことですね。 ○秋山調査官 補足させていただきます。労働契約法制の研究会は昨年9月に報告書を まとめていただきましたが、その中で最後に第7の労働時間法制の見直しとの関連では、 渡辺先生が言われたように、確かにおっしゃるとおり労働時間法制の検討に当たっては、 労働契約法の制定と書いてあったかどうかは直ちに浮かびませんが、前提という書き方 がされていましたが、必ずしもその順番として労働契約法というものを審議会で議論い ただいて、これが成立して契約法ができて、そのあとでないと労働時間法制を議論して 作ってはいけないということではなかったのだろう。先生方の議論の中では、労働時間 法制の見直しというのは規制改革のほうでも見直しを求められていまして、検討するこ とを求められていますが、それを検討するのであれば労働契約法制の整備と並行して、 契約法制より先に労働時間のことをやるのはおかしいのではないか。そういった趣旨で 議論があって、いまのような結論になったと理解しています。 ○長谷川委員 研究会報告ですから、研究会でどういうことを考えたのかをお聞きした いのですが、16頁の「休日の確保」のところで、「さらに、休日の日数についてあらか じめ個々の労働契約で定めることを義務付けることにより履行確保を図ることも考えら れる」というので、ここで労働契約が登場してきます。この労働時間研究会では、それ は労働時間の適用除外になる人々に対して最初の契約のところで、このようなことを確 認させる方法として、例えばイギリスのオプト・アウトなどがありますが、それを想像 して、これを書いたのかどうなのか。あえて、「イギリスで行っているような」と書くと、 また物議が起きるので、避けてこういう軟着陸のような表現で書いたのかなとも思いま した。私はついそのように見てしまうのですが、いかがでしょうか。また、17頁の「い ずれにしても」というところでは労働契約法と労働時間のセット論の議論の進め方が言 われています。振り返ってみれば、労働契約法の研究会で、なぜあそこで労働時間法制 が登場してきたのかなと当初から不思議で、私は「もしかしたら労働契約法の中で、イ ギリスのような制度を入れるのかな」とずっと気になっていたのですが、そのような関 係を意識してここが議論されたのかどうかだけを教えてください。 ○大西監督課長 どうかだけということですが、直接イギリスの制度を念頭に置いてい る議論ではなかったと思います。補足をさせていただきますと、結局、休日を確保する というのをどういう方法でやっていくのかということがあるわけですが、労働契約とし てその契約の中身に休日が入っていると、そこで債権債務関係が発生して、いわゆる裁 判で議論ができるのではないかという視点から、ここのところは議論されていたと記憶 していまして、その際にイギリスの制度については直接の議論にはなっていなかったと 記憶しています。 ○松井審議官 事実確認ということで、渡辺先生が言われました契約法制の在り方に関 する研究会報告書ですが、第7の労働時間法制の見直しとの関連という部分の書き振り を見てまいりますと、「労働契約に関する包括的なルールの整備を行う際には、併せて労 働者の働き方の多様化に応じた労働時間法制の在り方についても検討を行う必要がある。 また、仮に労働者の創造的・専門的能力を発揮できる自律的な働き方に対応した労働時 間法制の見直しを行うとすれば、労使当事者が業務内容や労働時間を含めた労働契約の 内容を実質的に対等な立場で自主的に決定できるようにする必要があり、これを担保す る労働契約法制を定めることは不可欠となるものである」と書いてありまして、その成 立の前後とかという書き方は、いま申し上げたようにされていません。そこを先生が解 釈されるように、先にすべきだという御意見もあるということは承知していますが、い ま言った以上のことは書かれていません。 ○新田委員 「不可欠だ」というわけでしょう。 ○松井審議官 「これを担保する労働契約を定めることは、不可欠となる」と書いてあ ります。労働時間法制の見直しを行うとすれば、自主的に決定できるようにすることが 必要であって、これを担保する労働契約法制を定めることは不可欠である。先に、とは 書いていない。担保する法律が要るとは書いてあります。それについて、先生のように 前後関係を解釈されるのは、御意見として承りますということを申し上げている。よろ しいですか。 ○新田委員 いまの話で引っかかるのは、御意見として承りますというのはどういう意 味ですか。これを土台にしないという話になっているわけでしょう。 ○松井審議官 御意見としていま聞いたということであって、ここの場で取り上げるか どうかではなくて、聞いていますということを申し上げて、事実としてということです から、誤解のないように。 ○新田委員 伝言があったという程度ですか。 ○松井審議官 いま、先生がおっしゃられていることはわかります。 ○新田委員 要するに、何の確認でも何でもないということですよね。 ○松井審議官 おっしゃられていることはわかりますと申し上げているだけです。 ○新田委員 そこは、何か思い込みの違いで議論が噛み合わない感じがしてしょうがな いのです。 ○長谷川委員 この労働時間研究会のときに、労働時間が非常に長い労働者がいること と、過労自殺だとか、健康障害が起きていることに対して、そういうものを是正する措 置として、労働時間の長さをどう測るか、また、最長労働時間のような議論はなかった のですか。報告書を見ていると、健康措置については定期健康診断だけは結構指摘され ていますが、それだけではなくて、例えばどういう長さを働いたのかという長さの問題 はどうでしょうか。結果的に、いま言われているのはメンタルヘルス、うつになる人た ちを職場でどうチェックするかというので、労働安全衛生法の中で所定外労働が月に 100時間を超える人は産業医との面接、80時間は努力義務という法改正を行ったわけで すが、やはり健康診断だけなのです。労働時間の長さと健康破壊は関係があるから、そ ういうことになっているのだと思いますが、労働時間の長さというのをどう測るのかに ついて、健康確保措置の観点からの議論があったのかなかったのかをお聞きしたいので す。 ○大西監督課長 健康確保措置をどうするかという観点からは、先ほど御指摘がありま した安全衛生法の制度についても多少の議論がありまして、この報告書ではそれが反映 されているところとしまして、15頁の健康確保措置のところの真ん中より少し下ですが、 衛生委員会の活用ということで安全衛生法とのリンク等についても触れられている形で、 御議論があったと記憶しています。  議論が前に戻りますが、先ほど八野委員から御指摘を受けたときに、現行の企画業務 型裁量労働制等々について、業務量が過大になっているという問題点がこのアンケート 調査で指摘されているのではないかという御指摘がありましたが、それについてはこの 研究会の報告の11頁の1行目で、いわゆる職務遂行の手法や労働時間の配分について、 使用者からの具体的な指示を受けず、かつ、自己の業務量について裁量があるというこ とで、6行ぐらいあとに上司から過重な業務指示があった場合の対応について、自らの 判断にゆだねられているとか、こういうようなものが必要ではないかという議論もあっ たことを御報告が遅れましたが、御説明させていただきます。 ○新田委員 1頁のIの1の最後に、このような状況に対処するため、長時間にわたる 恒常的な時間外労働の削減とか賃金不払残業の解消とか、有給休暇の取得促進を図るこ とに併せて、個々の労働者それぞれの事情に即した働き方の選択ができるようにという 観点から、労働時間の制度、運用の見直しを行う必要があるわけです。全体的な状況が 書いてあるわけですが、ここで一つまずお伺いしたいのは、こうした状況はいまの法律 でやれるのではないかと思います。そうすると、この報告書の意味は、要するに新しい 固まりというか、管理者の前とか研究のリーダーとか、そういうものを作るために議論 されたと受け取っていいですか。それだけに限定して議論されて、全体としての労働時 間の問題について、例えば休日を確保することを新たに義務づけるというようなことで はないと読み取るべきですか。どうですか。 ○松井審議官 前段の認識を踏まえて、構成からいきますと6頁で年次有給休暇の取得 を確実にさせるために、現行法に加えて何らかの新たな手段はないだろうかとか、7頁 の時間外・休日労働についても、これを徹底するために典型的には罰則強化といったこ とも含めてやる。こうやっています。これをやっていくべき対象者は、10頁の先ほど言 われたタイトルから裏読みしていただきますと、例えば自律的に働くと言えないような 働き方をしている方については、現行法をしっかりやらなければいけないでしょう。逆 に、労働時間の長短とか成果とか能力をごちゃまぜにして評価するようなシステムで働 いている方は、当然いまの年休とか残業をきちんとやる枠組で考えなければいけないと 捉えています。その中で自律的に働ける要素があり、かつ時間の長短ではなくて、単に 能力評価だけでやっていく、◎と書いたマルが重なった方々、それがふさわしいと考え る労働者については何か新しい制度を考えてみませんか。それを考えると、現行の裁量 労働制も見直さなければいけません。あるいは、管理監督者も見直さなければいけませ んという構成になっています。ですから、全般を見直したという位置付けは変わってい ません。 ○小山委員 今日のいちばん最初の議論で申し上げたことですが、労働時間の長短でと いうところは結局、先ほどからずっとつながった議論ですが、どこで線を引くかはわか らないわけです。実態として、そんな線はないと思うわけです。もともと、いま所定労 働時間を定めて、そこの中でいろいろな賃金制度の改革も進んでいますが、それはそれ ぞれの能力や成果について所定労働時間の中での評価制度があって、賃金が決定されて いく仕組みになっているわけです。製造現場においても、そうです。なぜ、ここで労働 時間の長短ではなくて成果や能力で、という違う基準を持ってきて、線を引いて分けよ うとするのかがよく分からないというのが、この研究会報告を読んでの私の考えるとこ ろです。ですから、この研究会報告の基本認識のところが、現場の感覚とずれていると 申し上げざるを得ないのです。  そこからいくと、例えばもう一例を言えば、管理監督者であっても大体労使で決めた 所定労働時間を基本として、みんな働いているわけです。所定労働時間に関係なく、今 日は来て明日は来ないとか、そんなことはないわけです。管理監督者であればあるほど、 所定労働時間の定時時間帯に出勤をして、部下が帰ったあとに帰る。管理監督者は、大 体そういう働き方です。ですから、定められた時間に影響されながらみんな働いている わけで、時間に関係なく働いている人はいないのです。そういう基本的な認識が、現場 の実態と違うと申し上げておきたいと思います。とすると、この報告を基にして労働時 間制度について、これを土台とした議論は成り立たないということになりますので、労 働時間の在り方について今後どういうふうに議論されていくのかはこれからのことでし ょうが、少なくとも基本的なところで実態と掛け離れていると申し上げておきたいと思 います。 ○松井審議官 御意見を尊重するというか受け止めた上で、報告書がどうなっているか の構成を説明することを聞いていただきたい。もう一度申しますが、20頁に書いてあり ますように、現行の企画業務型裁量労働制というものが、そもそも、実際の労働時間の 長短と賃金との関係を切り離す。皆さんは、労働時間というものに着目して働いておら れることは事実だと思いますが、評価して賃金を払うときに労働時間とも深く関係して、 お金を出すかどうかということを言っています。評価の問題だと書いてある。離すこと により、労働者に自律的な働き方を促す制度として、いまあるよという認識になってい ます。これが企画業務型裁量労働制です。使用者が賃金を払うときに、どう評価するか ということで相当遠くなっていると。 ○小山委員 みなし時間は、いったい何なのですか。 ○松井審議官 報告書の中身はなっています。そこで、それを踏まえながら今度の10 頁の提案は、この企画業務型裁量労働制の中で出てきた自律的に働くということをさら に押さえて、それプラス労働時間の長短ではなくて、成果とか出来具合、能力というも のを見て評価するやり方にふさわしい労働者がいるのではないだろうかと。その人たち をなんとか探し出して、それにふさわしい制度を議論しましょうと書いてあるというこ とを、まず理解してください。現場がそうなっているとは言っていません。そういう方々 がいて、評価ですから、労働時間を見ながら働いていても、使用者が賃金とかをいろい ろ払うときに労働時間ではなくて、その人の出来具合を見て賃金を払いたいという方が いるのではないか。かつ、その人は相当、自分で自律的に働けることを望み、やってい る人ではないかと書いてあるということですから、そういう方を見てその方にふさわし い制度を議論しませんかと書いてあるということで、まず読んでいただきたい。それに 対してどう考えるかは、いま言われたことについて別にこちらはコメントを加える余地 はありませんが、そこを理解した上でお願いします。 ○小山委員 そうすると、その研究会報告の議論の前提として、時間に関係なく働くと いう労働者は、労働者なのかどうなのか。 ○松井審議官 時間を切り離して、使用者が評価したいと言っている人がいるのではな いですか。ここの評価という意味は、主に賃金ですね。 ○小山委員 でしたら、請負契約にするのではないですか。 ○松井審議官 ところが、それはいま既に企画業務型裁量労働で、みなし労働というこ とで実態と違う、これだけ働いたということを犠牲にして出すということは、働く実際 の時間と切り離して評価する企画裁量労働制という認知した制度があるわけです。 ○渡辺(章)委員 労働時間を適用除外するのではなくて、みなし時間を定めるわけで しょう。そして、裁量労働者についても使用者の労働時間管理義務は、なくならないと いう解釈例規もあるではないですか。ですから、労働時間を全部切り離して、賃金評価 だけの問題で企画業務型裁量労働ができたというのはおかしい認識。みなし時間がもし 経験的な平均値に合わなければ、またそれは新しい労使委員会決議なり何なりで、その 時間を是正しなければいけないことにもなってくるものであって、労働時間と賃金との 関係を切り離すことに企画業務型裁量労働制の制度の趣旨があるというのは本当にわか らない。ここを質問しようと思ったけれども、先ほどの議論があって、入らないでいよ うかと思いましたが、その説明は大変おかしいのではないでしょうか。 ○松井審議官 研究者に言っておられるのだったらどうでしょうか。説明申し上げると 言っただけですから。 ○荒木委員 10頁の「労働時間の長短ではなく成果や能力などにより評価されることが ふさわしい」というこの書き振りについて、いろいろ御議論があるのだと思います。こ れを反対解釈すると、おかしくなってくると思います。では、ほかの人は成果、能力に よって評価されていないのかという問題かというと、そこからおかしくなるのです。も ちろん、新しい制度の適用ではない通常の労働時間制の方も、能力や成果が十分に反映 された評価をされていると思います。しかし、ここで言いたいのは現在第37条、つまり 割増賃金規制がありますから、能力や成果と関係なく8時間以上働いたら割増賃金を払 わなければいけないという制度になっているわけです。そうすると、能力も成果も上が っていないけれども、10時間働いた人には割増賃金を払う。ところが6時間とか8時間 で、それ以上の成果を上げた人には割増賃金規制は及ばない。そういうことの評価ある いは賃金の支払いの仕方が合理的でない。そういう人たちが増えてきているのではない か。そういうことを言いたいわけです。  先ほど、そうすると時間給の人なのかという御質問がありましたが、時間給ではなく て、払われている方でも、こういう長短というのは例えば8時間労働すると決まってい れば、その方は8時間働かないといけません。4時間働いて4時間仕事をやめて帰って しまえば債務不履行になって、契約違反ということになります。しかし、そういう評価 をしない。新しい制度の下では4時間働こうが10時間働こうが、その時間を評価に反映 させない。その成果に着目した賃金体系を取ることを可能にしたほうがいいだろう。そ ういうことが出発点だと思います。  企画業務型との関連で、現在は問題があるのかという御指摘もありましたが、問題か どうかは別にして、アンケートなどでも出てきましたが、一定の年収額があればもっと こういう制度を活用したほうがいいだろう。あるいは、年収の高い方で企画業務型裁量 労働制を適用されている方は、非常に満足度が高いのです。問題があると言っている方 は、それで処遇も低い方は制度の問題を感じている。そういうことも考えまして、現状 でいいのかどうかというと、現状でうまく制度が活用されていないとか、もっと改善し たほうがより制度の趣旨がより実現できるということはないのか。そういう観点から議 論したと理解しています。 ○長谷川委員 研究会の研究者の話ですから。どうもよくわからないのは、労働時間の みなし制と適用除外はそもそも違いますよね。これは、渡辺先生が先ほどおっしゃった ことで、先ほどの松井審議官のお話は、少しおかしいと思います。みなし時間というの は、みなし時間ということをしながらある意味では規制も掛けているわけです。だから、 労働時間はそこではきちんと規制がかかったわけです。しかし、適用除外というのは、 労働時間の規制を外しているわけですから、みなしとは違うのです。だから、みなしと 適用除外は基本的には違う枠組だということをきちんと確認すべきです。適用除外の対 象を増やすかどうかはもっと別な話で、研究会は何か新しいのを考えたようですが、ど うするかはこれ以降の審議会で議論すればいいことです。  また、どうして労働時間と賃金を強引に結び付けるのかがよくわからないのです。例 えば、どんな日本の使用者も、本来は絶対に8時間でこのぐらいの仕事をしてほしいと 思っています。仕事の与え方はそうです。私も管理者ですが、自分の職員に与えるとき には、これを8時間でできるだろうと思って与えます。だから、荒木先生の御説明はよ く分かりません。さらに、労働時間と成果主義賃金というのは、もっと違う次元の話だ と思います。なぜか今回も研究者の皆さんは、労働時間と成果主義賃金をある意味でい うと強引に結び付けているような気がしますが、私もよくわからないから研究者の皆さ んにその辺を聞いてみたいと思います。私は、その結び付け方についてよくわからない。 労働時間というのは、そもそも労働時間でしょう。労働時間をどうするかということの 話ですよね。それと、成果主義賃金はもう少し違う話だと思います。研究会報告は研究 会報告でしょうから、あとは分科会でどうやって議論するかの話になります。 ○小山委員 実態がないのに、無理矢理何か制度を作ろうとしているようにしか見えな いのです。 ○西村分科会長 時間がきました。労働時間法制に関する研究会報告書については、こ こまでとしたいと思います。今後、労働時間法制の在り方については事務局で議論のた めの叩き台を用意していただいて、検討を進めていきたいと思いますが、それでよろし いでしょうか。                 (異議なし) ○西村分科会長 それでは、そのようにさせていただきたいと思います。  次回は、労働契約法制の残りの部分、有期労働契約についての議論がまだなされてい ませんでしたので、その点の議論を深めていきたいと思います。次回の日程について、 事務局からお願いします。 ○大西監督課長 次回の労働条件分科会は、2月23日15時から17時まで、場所は厚生 労働省17階専用第21会議室で開催する予定ですので、よろしくお願いします。 ○西村分科会長 本日の分科会はこれで終了します。本日の議事録の署名は八野委員、 渡邊佳英委員にお願いします。  それでは、これで終わらせていただきます。                     (照会先)      労働基準局監督課企画係(内線5423)