2006/2/8 第11回医薬品・医療機器等対策部会議事録 第11回 医薬品・医療機器等対策部会             日時 平成18年2月8日(水)             14:00〜16:00             場所 東海大学校友会館「阿蘇の間」 ○事務局  開会に先立ちまして傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配 りしております注意事項をお守りくださいますようお願いいたします。  定刻になりましたので、ただいまから「第11回医薬品・医療機器等対策部会」を開会 いたします。委員の方々におかれましては、ご多忙のところご出席いただき誠にありが とうございます。本日は本部会委員13名の出席をもちまして開催させていただきます。 なお、若干遅れている委員等ございますが出席の予定です。前回の部会以降、部会委員 の変更がありましたのでご紹介いたします。日本医療器材工業会の山本委員に代わりま して、日本医療機器産業連合会PMS委員長の石川委員です。また、事務局に人事異動 がございましたため、こちらもご紹介させていただきます。医薬食品局安全対策課の中 垣課長です。医政局総務課医療安全推進室の田原室長です。 ○桜井部会長   最初に配付資料の確認からお願いいたします。 ○事務局  資料11−1は「第14回ヒヤリ・ハット事例収集結果−医薬品・医療機器情報について −」、資料11−2は「医療事故情報収集等事業報告書」の第2回報告書と第3回報告書、 資料11−3は「集中治療室(ICU)における安全管理指針検討作業部会」で、開催要綱 と委員一覧がございます。これには参考資料1として「厚生労働省医療安全対策検討会 議(組織図)」を添付しております。資料11−4−(1)は「二槽バッグ製剤の未開通投与 防止対策(報告)」です。これには参考資料2として「平成16年6月2日付け薬食発第 0602009号」を添付しております。  資料11−4−(2)は「輸液ポンプ及び輸液セット等の滴数規格の統一(報告)」で、こ れには参考資料3から参考資料6まで添付しております。資料11−4−(3)は「点滴用キ シロカイン10%の供給停止について」です。以上が本日の資料となります。 ○桜井部会長   議事次第に則り、最初に第14回のヒヤリ・ハット事例収集結果について事務局から説 明をお願いいたします。 ○事務局  第14回医薬品・医療機器情報について、概要を説明いたします。本日の報告資料です が、「医療安全対策ネットワーク事業」の下、平成16年11月24日から平成17年2月 28日までの収集した事例を集計、分析したものです。なお、事例件数は「306」、その うち医薬品件数は「249」、医療機器情報は「57」です。各要因別の分類ですが、医薬品 では、「規格違い」、「名称類似」、「数量違い」等、多いものは前回とほとんど同じ です。全体的な事例の数は、数的には50数例減っていますが、明確に減っているという 話ではなく、収集期間が年末等をまたいでいるので、毎年この時期は若干減るという傾 向があるためです。医療機器では、毎回同じで、「管理が不十分」が50%以上を占めて おります。1年間との比較資料ですが、その要因と報告されている要因の比率について は、過去1年間と大きく変わるところはありません。  医薬品と医療機器の事例については、土屋委員と目黒委員の方からご説明をお願いい たします。 ○土屋委員  医薬品の方について、ご説明します。先ほどもお話があったように、今回「249」の件 数があり、傾向としては特に大きく変わったところはありません。やはり、記号違い、 規格違い、同一ブランド内で起きているものが全体的に見ると3分の1近くあることか ら言えば、これは医療機関が複数規格を採用しているなどといった場合のやり方をいろ いろ工夫するということを少し考えないといけないわけで、今回起きた中でも、複数規 格があることを知らなかったとか、自分のところで採用しているのに、そのようなこと があることを知らなかったなどといったことも書いてありますので、いつもどおりのも のについては表示その他、コンピュータで選ぶときもそうですが、そのようなことを含 めた医療機関での対応が必要ではないかということが全般としてあります。  個々の事例を少し見ていきたいと思うのですが、5頁の2番、ケタラールの静注用を 出すところを、ケタラールの筋注用を出してしまったという事例です。これは情報伝達 の問題で、同一販売名で複数の剤形がある、あるいは複数の規格があるといったときに、 ただ「ケタラール6cc」と口頭指示をしたときにそのようなエラーが起きるということ です。当時は違いますが、この薬は麻薬にもなり、特別な管理が必要な薬になっていま すので、特にそのようなことをきちんと注意しながら情報伝達、口頭でするにせよ、剤 形の違いや規格の違いをきちんと示して行うことが必要だろうということです。  次に7頁の29番の事例です。これは深夜の時間帯に起きたものではありますが、朝食 後服用する薬のうち「ペルマックス」が4錠入っていなかったので、準夜の勤務者に相 談すると、別の患者も服用しているということで、その患者のものを借りることにした。 いわゆる病棟にある他の患者で、同じ名前の薬を使っている人のものを借りたのだが、 それは50μgだった、しかし、もう1人の患者は250μgを使っていた。これも同一ブラ ンド名の中での複数規格ということですが、ブランドが一緒であっても規格が違うとい うことはあるし、そもそもある人に対して処方調剤された薬を他の人に使うということ は、現実に現場ではあり得ることですが、そこは十分な注意をすることが必要である。  一般的に言えば、検討要因の中で管理が問題だと書いたのは、どの薬にしても管理が 問題ですが、特に管理をきちんとしなくてはいけない薬においてこのようなことが行わ れたときには、管理をきちんとしてくださいという意味で「管理の問題」ということを 特出ししておりますので、右にコメントもしていますが、やはり基本的なことをやる。 深夜帯で処方箋が出せなかったなどのことがあるのかもしれませんが、同一ブランド名 の中でのエラーというものがかなりあるのでご注意いただきたい。ちなみに、現在、ブ ランド名、規格、剤形の3要素を含めて販売名は付けるように、ということが製薬会社 に対して言われているわけです。それは医療機関でも全く同じであり、3要素を必ず確 実に言うことがこのようなエラーを防止していくことになるので、そのような意味での 注意喚起が必要だと思います。  13頁の104番の事例は、「プレドニン1mg」の処方に対して、5mgのものを出してし まったというものです。これもDAで言えば規格違いですが、プレドニンは薬効上、こ の規格を間違えると5倍ということもありますし、その影響が極めて大きいことから言 うと、複数規格の中でも特に注意すべきものだろうということです。したがって、オー ダーエラー、過去、プレドニンにおいて1mgと5mgのエラーというものがいくつかあ りますので、この両者についてはオーダリングの方法も含めて対応策、医療機関の中で 複数規格のあるものについてのきちんとした対応策が必要ではないかということです。  24頁の228番の事例は「シプロキサン」が原因になっていますが、それは何かと言い ますと、「本日、抗生剤の変更あり。申し送りを受けるも、皮内テストを行わずに患者 に施行した。朝、夕1日2回の指示で、朝の分は終了。夕の分を施行する前のダブルチ ェック時に皮内テストをしていないことがわかり、主治医へ報告。患者のバイタルサイ ンの変化や湿疹等の副作用はなかった」。これの対策として医療機関は、「当事者が、 皮内テスト後の処理の方法をきちんと理解する」と書いております。しかし、抗菌薬の 注射剤についての皮内反応テストについては、一昨年の8月に添付文書が大きく変わり、 従来は皮内反応テストをすることが望ましいと書いてあったものが、予測することは不 可能なので、以下のことを守ることとして、十分な問診を行うこと、ショックが発生し たときに対応する緊急薬を準備しておくこと、事後、特に直後の観察を十分に行うこと としており、皮内反応テストを行うことは事実上やめろということに添付文書上改訂が されました。  どうしても皮内反応テストをするときには、本剤そのものを使ってやりなさいという ことまで書かれてあるのですが、結局この医療機関では、皮内反応テストはやるものだ と考えていることが窺えますので、添付文書が変わった、やり方が変わったという情報 をきちんと徹底させることが必要だと思います。そのようなものの徹底と同時に、これ は行政当局に対してのお願いですが、つい最近発売になった抗菌薬において、相変わら ず皮内反応テスト液が承認されている。皮内反応テストはやめるという話で、現場は一 生懸命徹底しようとはしているのですが、それと相反するようなものが出てくるという ことは、結局あれはやっぱりいるのかという話にもなりかねず、現場が混乱することか ら、今後承認に当たっては、医療安全の面や、特に添付文書が変わったことについての 承認について、現場が混乱しないような承認をしていただきたいと思います。  25頁の241番は、「デュロテップパッチ」という麻薬の貼付剤の事例です。外来患者 がデュロテップパッチ2.5mgを処方され、薬剤師から説明を受けた。その後も外来を定 期的に受診していたが、疼痛が緩和されず、デュロテップパッチを徐々に5mg、7.5mg と増量していった。患者は2カ月後に入院となり、入院2日後の担当看護師がデュロテ ップパッチ定期交換のために貼付部位を見ると、パッチの台紙が付いたまま貼付され、 絆創膏でパッチのへりを固定してあった。シートを剥がさなければ、当然薬液は皮膚か ら吸収されないわけで、詳しいことはわかりませんが、おそらく、患者はシートが付い たままのものを2カ月以上使っていて、それでも効かなかったということで増量したと。 これは効く以前の話であり、そもそも薬物がいっていない可能性の方が高いわけです。  このようなことが起きた一つの原因としては、これが剥がれてきたときに絆創膏でと めなさいという注意はしてあったが、それは剥がした後の話で、ひょっとするとそれを 誤解したのではないか。このようなことが起きることはあまり想定していなかったので すが、貼付剤においてこのようなことが起きること、増量する際には本当に貼っていた かどうかを少し考えて、やっていかないといけないのかなという意味で、教訓的なヒヤ リ・ハット事例というか、そこまでは現場ではあまり考えなかったということもあると 思いますので、今後気を付けなくてはいけないと思いました。  細かい話は以上ですが、やはり「アルマール」、「アマリール」といった昔から言わ れているような名称類似の問題は、調剤の方法を薬歴を取りながらやることで防げるわ けですが、そういったことを含めた基本的なことを一方ではもう少しやる。あるいは、 同一ブランド名のときの注意点をきちんと徹底していくということで、やはり注意が必 要ではないかと思いながら、新しいものが出てきたときには、そういったことを含めて 注意喚起をしていく必要があると思っています。 ○目黒委員   医療機器については27頁の2番から説明いたします。全体的には呼吸器と輸液ポンプ、 それと管理が不十分だったということで確認することができていない部分があったり等 のことが多かったように思います。どうしても人工呼吸器は重要なものですし、機械で は非常に典型的な部分ですのでお話したいと思います。「サーボベンチレータ」という 人工呼吸器ですが、一度電源に不具合があったので交換をし、改修を行ったのですが、 その後、機械に同様の症状で不具合が起きてしまった。これは2004年購入の機械ですが、 最近の人工呼吸器にはきちんとバッテリーが載っており、電源がこない場合、必ずバッ テリーでバックアップするというシステムができ上がっているのですが、AC電源、要 するに普通にコンセントにつないでいたが、バッテリーに切り替わってしまうという不 具合が発生していたわけです。一応改修したのですが、同様の事象が起きてしまったと。 それを調べてみると、やはり同じ電源の方で、バッテリーの充電機構がおかしい、充電 するところと内部の細かい部分だったのかもしれませんが、その辺のところがおかしか った。メーカーが調べたところ、単発故障と判断されて、改修しても、なおかつ起きた 事例ということで報告されています。  前回は透析関係の報告が少なかったので、今回は透析の報告をしたいと思います。3 番と4番の場合は、製造段階のメーカーの責任だと思うのですが、パワーユニットとい うのは機械の電源で、右欄の「検討結果」に「エポキシ樹脂の配合ミスに気づき」とあ ります。私も機械からは随分離れてしまっているのですが、絶縁とかいろいろな部品を 固定するために、エポキシ系の樹脂を使ったりすることがあると思います。その混ぜ方 の割合が違っていたということで、非常に柔かくて、電流が流れやすいような状況が起 きてしまい、電源が不安定になっていたという事例です。機械ですので、このようなこ とは製造工程の中でもあり得るということです。2例ありますが、これだけで済んでい ていいのか、また他に報告があれば、もっと大きな問題かもしれませんが、一応報告が 2例出ておりました。  次頁の7番も、一般的に典型的なミス、誤った操作です。輸液ポンプについて、トー タルで入れる量が、この場合は全部で210ml入れる予定だったのです。210mlを1時間 当たり60mlで入れようとしたのですが、逆に、1時間当たり210ml、要するに、トータ ル量を60mlとしてしまったわけです。透析時間は3時間半から4時間ですから、その 時間でトータル量を入れようとしたのですが、短い時間で、つまり210ml、これは50% のブドウ糖液ですから血糖が大変はね上がるわけです。3時間半で入れる予定が、この 210の速度でいくと、10何分で入っていくことになります。ここに「開始後20分、警報 ブザー」とありますが、この警報ブザーというのは、たぶん、もう入り切ったというこ とだったと思います。「検討結果」に、「平成15年3月18日厚生労働省」云々と書い てあり、私も対象となっている輸液ポンプを扱っていたことがありますが、平成15年以 降の安全対策がされた機械では、そのようなミスがあった場合には、機械側の方でミス を知らせるという対策がとられているものがあります。そのような方向にできるだけ移 行できれば、このようなミスも機械側から知らせることで防げるかもしれないというこ とが言えると思います。  次の8番も人工呼吸器です。アラームが鳴っているという家族からの連絡があり、人 工呼吸器を見て、至急他の機械に換えてもらった。右に書いてあるように、人工呼吸器 の場合、あるいは一部他の機械でもそうですが、電源を入れたときに、一般的にはその 機械のいろいろな機械が電気的に動いているかどうかということを必ずセルフチェック する機構があるのですが、その機構の中で、どこかがおかしいと異常を知らせる内容が 起こると、機械側はもう一度最初に戻ってセルフチェックを始めるわけです。それを繰 り返し始めていたという事例です。これをメーカーに戻し、機械の動作などをいろいろ 調べてみたが、その後特に部品等にはトラブルはなかった事例として報告されています。  このように原因がわからないのが医療現場においてもときどきありますが、何が原因 かがわからないと、ある意味気持が悪いという症例でもあります。下の方には書いてあ るのですが、「MRI」、強い磁場とか「電気手術器(電気メス)」等は非常に大きな 外来ノイズの発生器ですから、そのような機械が影響しているのではないか。あるいは、 最近では「携帯電話」等の影響もあるのではないかといった書き方をしていますが、こ れはちょっとよくわからないです。昔の経験から言うと、北欧の機械では、人工呼吸器 ではありませんが、そのようなノイズに意外に弱いというか、電源系統ノイズに弱いと いう機械が、私はガス分析で経験したのですが、そのような機械もときどきありますの で、静電対策等がどれだけきちんとなされているかどうかは、今後、他の機械で事例が 出たら注意しなければいけないかもしれないと思っています。  12番は臨床工学技士が関わった人為的なものですが、やはり透析室の事例です。簡単 に説明すると、血液が流れる回路がいろいろあり、その回路に対して透析中に、また別 の回路で点滴など薬液を注入する回路が接続されています。薬液を注入する接続回路と 同時に、本来閉じてはいけない血液が流れる流路の部分も一緒に閉じてしまった、クラ ンプしてしまったという人為的なミスがあったということです。このような事例が起こ った場合には、基本的に機械が「異常」として感知するので、それを解除する方法はあ るのですが、きちんと周知徹底されていなかったという部分がありますので、臨床工学 技士としても気を付けなければいけない部分だと思います。  25番も人工呼吸器ですが、私も経験がありましたし、このようなこともあるというこ とで気を付けなければいけないという事例です。人工呼吸器の場合には酸素と空気の2 本、中央配管と言って、壁側から取り出さなくてはいけない、配管をつながなくてはい けないのですが、すぐに使わないからということで、看護師が空気はつないでいたが、 酸素配管をつないでいなかったのです。要するに、看護師はつながなかったが、患者が 帰ってきたときにはつながっているもの、あるいは、ここに書いてあるように、「未接 続がわかりにくかった」ということもあって、つないでもきちんと酸素が供給されてい ないため、アラームが発生して動かないような状況が出てきたということです。つなが ないときはつながないなりに、きちんとわかるような形にしなければいけないというこ とです。入っているがきちんと入っておらず、緩んでいたため、酸素濃度の変更ができ ないということで呼び出されたことが私もありましたので、このような事例もときどき 起こり得るということで、気を付けなければいけない部分だと思っています。  33頁の40番、去年私もちょっと経験したのですが、最近はこの機械が非常に多く使 われるのですが、パルスオキシオメータ、患者の動脈血の酸素化の状態。もう一つは、 パルス(拍動)を見ているわけですから、心拍数が非常によくわかるので、臨床や麻酔 の現場でも看護師たちに多用されるのです。赤外光を使うのですが、指の先に赤い光を 当て、測定します。あまり長時間付けると、そこが熱くなり、1、2度高くなることから、 低温熱傷を起こしたという事例です。右側の方には、ある一定時間、8時間ぐらいでな るべく指を変える、長時間やらないで指を変える、別の手に変えるなどのやり方をして くださいと書いてあるのですが、それ以内でも、熱傷にはいかないまでも、赤く発赤に なることもあるので、皮膚の弱い方、小児などでは、もう少し間隔を短くして注意する 必要があるのではないかという事例です。  52番は本当に単純な故障ですが、我々臨床工学技士から言わせていただくと、どこか にぶつけたか、落としたのではないか。輸液ポンプのチューブを閉めるドアも破損して いて、きちんとドアが閉まらないような状況になっていたが、その状態で輸液が入って しまい、入りっぱなしであるフリーフローの状態になったという事例です。ぶつけるな と言っても臨床ではしようがない部分が多々あるのですが、あまり強くぶつかったり、 落としたりといった場合には、技士がいるときは臨床工学の方に見てもらうとか、メー カーにきちんと対応してもらうことをしないと、実際に使うときに大変なことが起きて しまうこともあるので、注意喚起のため覚えておかなければいけない事例ではないかと 思っています。以上です。 ○桜井部会長   ただいまの説明について、ご意見、ご質問があればお願いいたします。 ○外委員   このようにヒヤリ・ハット事例がだいぶ集まってきているわけですが、今日見せてい ただいた中からどのようなことを汲み取って対策を立てていくかを検討するのだと思い ます。薬剤で言えば、規格が違うことによって投与量が変わってくる、これは相変わら ず起きているわけです。最初に言われた2番目の「ケタラール1cc」が、10mgと50mg では5倍の違いがあるのに間違って投与してしまうといったことが相変わらずあり得る し、そのような薬剤が存在する以上、どこかで起きてしまうということはあると思いま す。ただ、この場合は、例えば「キシロカイン」のように死に至るかといったリスクの 大きさも考えなければいけないと思います。ケタラールはすぐに心停止になるわけでは ないので、その危険度はそう大きくないと思います。  今日の中でいちばん気になったのは、「デュロテップパッチ」の話です。貼り薬の裏 側を取らずにそのまま貼って、上からテープで止めていた、だから薬の効果は何もない。 それは一見笑い話のように取られますが、もし、この患者がこの状態で次に来たとき、 どんどん量を増やしても効かない、効かないで、あるとききちんと貼ったとしたら、こ の患者は呼吸停止してしまう可能性があったわけです。最初は少量から始めますからい いのですが、非常に高濃度、量の多い状態でちゃんと貼られると、それは非常に怖い状 況がある。最近、デュロテップパッチが、がん性疼痛にかなり広く使われるようになっ て、しかも在宅でも使いやすいから使われるわけです。ここに挙がっている事例はそう 多くはないですが、これからの危険性ということを考えると、販売している会社にも是 非情報を集めてほしいし、厚生労働省(厚労省)の方でも、この薬の危険性というのを 一般の人に周知させる必要があるのではないか。もちろん、これはアメリカ、欧米では 死亡例も出ているわけです。子どもが舐めると呼吸が停止する、非常に生命に危険を及 ぼしかねない薬です。  前もってこのような事例が出て、今日のは逆の方向で示していますが、ある意味でそ のような怖さを持っている事例だろうと。たぶん、使い方に対して、ただ貼ればいい、 貼ればいい、痛いときはおっしゃってくださいと言うだけで、いろいろな説明が不十分 だと思うのです。ここでは薬剤師が外来にいて、その薬剤師が患者に説明しているにも かかわらず、きちんとした貼り方は説明されていなかった、それが外来で2カ月も続い ていた。これが一般的な病院での実状で、それが別の病院でも起こり得るとしたら、や はり非常に怖いことではないかと思いました。この薬については少し監視なり、すぐに どうするというわけではないが、かなり重点的にフォローアップする必要があるのでは ないかと思います。 ○吉澤委員  土屋委員から説明があったとおり、全体的に規格違いが多く、相変わらず減っていな いというのが非常に気になります。ワーキングの方で、この対策については検討途中に なっていると思いますが、処方棚に規格違いがあるものはマーキングしようということ で検討が進められていると思います。いま医療関係者も含めて、全体に施設を移動する ケースも多いかと思いますので、統一したマークを作り、処方棚にきっちりマーキング しておくことが早急に必要ではないかということをこのことからも感じました。1番や 139番は、複数の規格があることを知らない、新人の薬剤師等はそのようなこともあり 得るので、複数あるということをマーキングしてあると、これは気を付けなければいけ ないということになると思います。危険性が高いものについては、やはり統一されたマ ーキングをしていく方向で検討が必要ではないかという感じがしますが、これもワーキ ングで検討すべき課題かなと感じました。  件数は少ないのですが、8頁の45番は錠剤の形と色が類似していたために、思い込み で間違って取ったケースが出ています。いまやPTPシートのアルミ面には、名称と規 格がほぼ100%入っています。錠剤の形と色が類似していたためと書かれているという ことは、むしろ感覚的に取られているのかなと。払出しのときに、感覚的に払出しする というのはちょっと問題ではないかと思います。私の方からよく提案しているのですが、 PTPシートはアルミ面を上にして置いてください、そうすると感覚的に取ることがで きなくなって、そこには必ずブランド名と規格が入っているので、それを確実にチェッ クせざるを得なくなる。その辺はもう一度検討する必要があるのではないかという感じ がします。 ○井上委員  「デュロテップパッチ」のことですが、いま在宅の医療が進んでいて、院外処方箋が 出ますので、麻薬製剤を緩和ケアとして在宅で使用することから、町の薬局に麻薬処方 箋がきて、患者を指導するという機会が増えてきております。例えばインシュリン製剤 については現在日本薬剤師会で取り組んでおり、全国の開局薬剤師と、インシュリンを 製造しているメーカー3社と共同で、事故防止に向けた取組みを行っております。全国 で100カ所以上で勉強会を開催しておりまして、1万人を超える薬剤師がインシュリン 製剤の使用についての研修を受けているという現状です。麻薬についても、これから在 宅はどんどん進んでいきますので、委員が指摘されたような麻薬に関する取扱い、これ から事故防止について研修会をやっていこうと思っております。製薬メーカー等関係団 体、関係の医療職種が協力して、これから事故防止に取り組んでいく必要があるのでは ないかという気がします。これまでは医療施設単位で勉強会や研修会を開催し、事故防 止に取り組んできているのですが、これから職種横断的、職能団体などが互いに連携し、 メーカーと協力して事故防止研修に取り組んでいくということは大事かなという気がし ております。  規格の取り間違いですが、私どもは日本病院薬剤師会も含め会員に、規格の取り間違 いについて「他規格あり」ということで、例えば50mgと100mgがあれば、50mgの規 格のシールを貼り、錠剤や注射等の棚が100mgを入れるものであれば、100mgのほうに 大きなラベルを貼るという指導をしていまして、現在かなり浸透しております。このケ ースを見ると、病棟の錠剤や注射等の管理が、病院の薬剤部や町の薬局ほど浸透してい ないようですので、その辺の対策が今後必要になってくるのかなという気がします。  先ほど指摘があった錠剤ですが、ヒートシール面を引っくり返しておくということで したが、圧力がかかるとヒートシールなので裏のラミネートが切れて、保存状態が悪く なる場合もあるので、そのような保存方法かいいかどうかというのは、一概に言えない ような気もいたします。圧力がかかると、後ろがピッと切れてしまって中の錠剤が出た りするので、それもこれから製薬メーカーと話し合いながら検討していく必要があるの かなという気がしております。 ○土屋委員  先ほどの複数規格の件ですが、いま井上委員からお話があったように、薬剤部レベル ですと、棚の表示など対応はかなり進んでいると思います。ただ、例えば病棟へ払い出 したときに、薬袋に薬品の名前はわりと書いてあるのですが、そこに複数規格があるな どといった表示はなかなかされていないというのが現実だろうと思います。そのような ことも含めて今後やるのですが、文字数の問題などもあってなかなか進まないというの が現実としてあります。  シートが例えば遮光のものだと、赤いシート同士ということもあるのですが、必ずし もアルミ面が上にということにはならないのが現実かなという気がします。これは製薬 会社しかできないことですが、名前などを入れるときは、2錠に1錠などとケチなこと を言わずに、ピッチ印刷をきちんとやっていただきたい。既にやっているメーカーもあ りますが、技術としてはピッチ印刷はできるのです。生産量が落ちるとか、少し無駄に なるといったことがあるのかもしれませんが、1錠ずつに切ったときにも入れることが できるのであれば、たとえそのような指示がなくても、是非進めていただきたいと思い ます。 ○寺井委員  規格違いの話が出ていましたが、ご指摘のとおり、病棟の薬剤に関しては、注射も薬 も経口薬もなかなかその管理がうまくいっていないということが多いのではないかと思 います。以前、ここでも病棟薬剤師の必要性ということが出ていましたが、そこまでい かずとも、薬剤師の方々に病棟に出向いていただき、保管状況等を見ていただきたいと 思います。24時間あるいは当直体制で薬剤師を置いている施設はまだ少ないと思います ので、その辺のご協力をお願いできればと思います。 ○石川委員  ずっと薬の話が出ていたので、私からは機械の話についていくつか述べたいと思いま す。確かに、薬と機械を見たら、全体の2割が機械の報告で、少ないかもしれませんが、 まず気が付いたことは、右側のコメントを見ていて、業者側の報告はないがというのが 半分以上あることです。そのような状況の中で一生懸命やっているということ、一方で メーカー側は不具合報告書を出したりなどという仕組みがあるわけですが、そこでの情 報がうまくいかないと解決法は出ないのではないかとちょっと危惧しました。  8番でノイズのことを言われていましたが、以前別のワーキングで静電気によって機 械が止まるという事例がありました。20番の事例に似ているのですが、使用環境、要す るに、病棟内での物を置いているところの環境によって変わるというのがあるのです。 特に冬の場合、病棟の中のカーテンなど諸物によって静電気が起きていて、飛んで止ま るという事例がありました。物の方は承認基準、認証基準と言われる中、JIS化とか IECなどいろいろなことを縛ってやっているわけですが、そこの見直しも長い時間を かけてやらなければいけないかもしれません。しかし一方で、使うところの環境を何ら かの形で見ていかないと、やはり物が悪かったのかと単純になってしまってもいけない かなと感じております。  別の会でも申し上げているのは、どうしても「管理不足」という言葉で括られている ということです。しかし、よくよく見ると、管理不足という中において、「物の管理」 というものができていなかったということが一つの要因としてあること。もう一つは「人 の管理」、つまり、人と人の間の管理ができていなかったということが全部混在されて いるということです。保守がされていなかったということは分けてもらったのですが、 人と人の間の管理という問題は、まだ抜けているような気がします。特に、添付文書に 書いてあるのにこのようなミスをしている、院内の教育がこうだった、アラームが鳴っ ているのにそのままほっておいたなどといったことは、人の管理のところに入ってくる と思うのです。管理不足という言葉で単純に括ってしまうのではなくて、その中の要因 をもう少し分けていただけるとありがたいと思います。報告の内容をもう少し見ていき ながら、実際の環境を見ながらやらないと、正確な結果のコメントはできないかもしれ ません。  先ほど50%は業者に報告していないということでしたが、よく見ると、約30%は完全 に使用者側の問題だと明確に言えるものです。確かに、先ほど目黒委員が言われたいく つかのアンプの問題、電源の問題など、15%は確率とか製造工程の問題ということで、 これは機械側の問題だと明確にわかります。残り5%はちょっとグレーで、どちらとも 言えない。例えば機械側が少し改良したら、認知的というか、ものの見方をうまく変え ていけば、ひょっとしたら防げるのではないかという目で見ることができるものもあり ます。このような情報を見ながら業界としてというか、企業側はどうしたら解決できる のかということを一生懸命見ておりますので、是非もう少し背景がわかるような状況説 明があると、双方にとっていいのではないかと思いました。 ○桜井部会長  次の医療事故の収集にも関係するので、そのときに議論していただきたいと思います。 土屋委員、医療機器の方ではリスクに応じた分類が「I〜IV」まであるのですが、薬に はそのようなものはないのですか。これは危ないというのと、どうでもいいというのと 分類はないのですか。 ○土屋委員  いわゆる法的分類の劇薬、毒薬、麻薬というもののほかに、現在は医療安全上、管理 が必要な医薬品というのを出しています。例えば「KCL」などは普通薬ですが、間違 えれば極めて危険ですので、必ずしも法的分類とは合わないものですから、そういった ところをいま位置づけて、注意を喚起しています。 ○桜井部会長  先ほど吉澤委員がおっしゃった、まずいものには印を付けておくということと引っか かってくるかと思ったのです。  それでは議題2に移ります。事務局から説明をお願いいたします。 ○医療安全推進室長  資料11−2により、「医療事故情報収集等事業」についてご説明いたします。報告書 として第2回、第3回、それから関係の通知があります。直近の第3回の報告書に沿っ てご説明したいと思います。4頁をご覧ください。  この医療事故情報収集等事業の目的は、報告の義務の対象となる医療機関、任意の参 加登録医療機関から、医療事故情報を収集して分析し、その対策等の情報を国民に対し て提供していくということです。平成16年10月から実施しており、第3回の報告書は、 ちょうど1年経ったという形です。報告義務医療機関は4頁の2の(1)にありますよう に、国立高度専門医療センター等、あるいは特定機能病院、大学病院の本院等です。医 療事故として報告していただく情報は(1)、(2)、(3)とあり、誤った医療または管理を行っ たことが明らかかどうかにかかわらず、報告していただきます。そのほかに再発の防止 に資する事案についても、ご報告いただくという形にしております。  集計は、日本医療機能評価機構で実施して、そこで分析した結果を報告書としてまと めたものです。この報告書は参加している医療機関、都道府県を通じて医療機関全部、 医療機能評価機構のホームページに掲載をして、周知を図っております。  6頁に登録の医療機関の概要があり、設置・開設者の主体別に報告義務対象医療機関 と、任意の医療機関が整理されております。報告義務の対象医療機関は「272」となって おります。  8頁は、この医療事故事例の報告状況です。(1)では設置主体別に報告数を整理して おります。272の登録されている報告義務の医療機関のうち、平成16年10月から平成 17年9月までの1年間に、「175」の医療機関が報告をし、その報告件数は総数「1,063 件」でした。  次に、その報告の内容です。いろいろな分析がなされておりますが、1点だけ申し上 げます。14頁は事故の概要として、どういう事故が発生しているかというのを分類した ものです。それぞれの機関ごとに件数の割合をお示ししておりますが、最も多いのが治 療処置の事故です。1年間では「309件」、「29.1%」です。次に療養上の世話が「257 件」、「24.2%」、そして医療用具等が「10.8%」という割合になっております。機関 ごとに見ますと、若干数字は揺れていますが、おおよそ傾向は変わらないのではないか という印象があります。また事故の程度については12)にありますように、1,063件の うち死亡された方が「149件」ということで、全体の「14%」に相当しております。こ のような分析を医療機能評価機構の方で実施しております。  詳細については省略させていただきますが、個別テーマについて検討を行っているも のがあります。それが32頁からです。個別のテーマの検討状況としては、まず手術にお ける異物残存が多いと分析しております。33頁ではその報告の内訳や概要をお示しして おります。  薬剤に関連した医療事故については、34頁にありまして、どういう段階で医療事故が 起きたのか、その内容はどういうものなのかということを分析したものです。  39頁は医療機器の使用に関連した医療事故です。人工呼吸器に関連する事例が多いと いうことで分析を行っています。医療事故事例については「12件」あり、そのうち「回 路」が「7件」であること等々が整理されております。  41頁には今後の検討課題として、人工呼吸器の適切な設定、操作、適切な対処を行う ことが必要であるということ、すでに出されている関係の通知等について記載されてお ります。42頁、43頁はそのさらに具体的な内容です。  45頁には「共有すべき医療事故情報」として、平成16年10月から平成17年9月ま での1年間で、広く共有すべき事例についてお示ししております。すでにご案内のとお り、「タキソテール」と「タキソール」との違い、「メシル酸ガベキサート」を中心静 脈から投与する濃度を、末梢静脈から投与しているような事例。「メトトレキセート」 の投与中に白血球減少で感染症で亡くなられた事例。連日投与して過剰投与になった事 例。「止血用デバイス」に空気を注入するところを、動脈に挿入したシースに誤まって 注入し空気塞栓を生じた事例。「グリセリン浣腸」を立位で行って、直腸に穿孔をきた した事例。これらが共有すべき医療事故として挙げられております。  我々はこのような報告書をいただき、厚労省から各都道府県の医政主管部局に宛てて、 この報告書をお知らせすると共に、共有すべき事例について注意喚起をしているところ です。以上、医療事故情報収集等事業の報告書についてご説明いたしました。 ○桜井部会長  何かご質問、ご意見はありますか。先ほどのヒヤリ・ハットとも関係するのですが、 だんだん微に入り細をうがつような報告が増えてきたわけです。大変結構なことだとは 思うのですが、そろそろ出口側からの整理というか、解決策の引出しをちゃんとこしら えておいて、これはこの解決策に入る、これはこの解決策に入るというような整理をし ないと、骨折り損とは言わないけれども、骨折りが大変で、果たして効果があるのかな と思います。  実はこの間、「医療安全対策検討会議」というこの部会の親検討会に当たるところで、 黒田先生という航空事故のご専門の方から、「これだけやっていても一向に医療事故が 減らない。やっぱり何かやり方を変えないといけないんじゃないか」というご発言があ りました。私もそのとおりだと思いました。大体、安全対策や事故の防止というのは、 安全にはつながりますが、患者の治療にはちっともつながらないわけです。要するにい くら安全をやっても、病気は治らないのです。したがって、安全対策や事故調査という のは、なるべく効率よく手間をかけないで、水の如く、空気の如くやるというのが必要 だと私は思うのですが、どうもだんだん力が入り込んで、一向に解決しない。  例えば「今後の検討課題」を見ますと、「適切な対処を行うことが必要である」とあ りますが、これは当たり前です。ちっとも解決には役立たないようなコメントです。大 体こういうものが多いと私は思うのです。この対策部会でも、もうちょっと解決の引出 しをいくつかつくる。例えばの話ですが、物の問題というのが一つあります。これはい ろいろ議論されていますね。それから、先ほどのノイズのこともそれに入ると思うので すが、環境の問題やシステムの問題。またスタッフなり、マンパワーの問題。これは非 常に多いと思うのです。  先ほど目黒委員がおっしゃったように、例えばクリニカル・エンジニアがいれば、ち ゃんと管理ができただろうにということもありますし、看護師の数が足りないというこ ともあるかもしれません。あとは教育の問題や情報伝達の問題など、いろいろあると思 うのです。そういう引出しをそろそろつくって、そこへ放り込んで、具体的に行政なり 医師会なりがそれを有効に活かしていくということをしないと、いくらデータばかり集 まってもどうでしょうか。これはこれで注意喚起ということで大事ではあると思います が、即、速効にはつながらないし、効果にはつながらない。  たしか検討会議ができて、もう5年以上経つのではないかと思います。本当ならヒヤ リ・ハットにしても、医療事故はどんどん減っていって然るべきはずですよね。それが 増えていて、これは大変いいことだというのはおかしいのではないかと、私は個人的に 思うのです。もし先生方のご意見を承れればと思います。 ○石川委員  私もずっと、こういうことをやってきたのです。いま桜井部会長がおっしゃるように、 物を扱うのはやはり人なので、その人をどうするかということをしていかなければいけ ないので、先ほどおっしゃった最後の箱というのを考えなければいけません。いま私の 方でも、いろいろなことを考えていました。やはり情報の伝達の仕方ということで、確 かに物を作っている方は、いま「薬事法」で規制をされて、規格をつくりながらいろい ろなことをやっています。では使用者の方々の方はどうなのかというと、「医療法」と いう形がある。しかし、もうそろそろそこの大きな柱を両方で見るようなことをしてい かないと。片方は片方で一生懸命やっても、片方が抜けているのでは何もならないので す。そういうことを一応頭に入れながら、いつかは一緒にしてほしいなという気持ちが 今はあります。  例えば、私は「物」をやっていますが、物の場合は特に人との関係というのがいちば ん大事です。患者に直接投与するわけではない。薬もそうかもしれませんが、それ以上 に人が関与するわけですから、先ほどおっしゃった教育や情報の伝達。いま添付文書も 電子化しようとしていますが、それが業界の方でも、なかなかできない状況にあります。 仮にそれができたとしても、今度は使用者側の方にどれだけその情報が伝達されるのか、 院内でどれだけの情報教育がされるのかということを見ていくと、キーワードは、先ほ どの機器のヒヤリ・ハットだけ見てもわかると思いますが、やはり物を使うところの教 育、添付文書等の情報が実際に使う人にどこまで伝達されているのかというのが、一つ の要因になっていると思うのです。  またヒヤリ・ハットの事象でもわかるように、仕事の環境として、深夜に起きている ことが多いとか、看護師の数が少ないときに発生しているというように明確です。臨床 工学技士の発表で、どこかの学会であったと思いますが、臨床工学技士がおられるとこ ろとおられないところで、どれだけヒヤリ・ハットが減ったかという事例もあるわけで す。臨床工学技士たちの仕事の効果というのも出てきています。そのようなことも含め ると、人の要素のところを少し考えないといけないのかなと思います。そういう意味で は、ここに出てきている中から、さらに分析をしていって、箱がどういうところにある のかということを分析していかないと、先は見えてこないのかという気が私もしており ます。 ○外委員  こういう形でヒヤリ・ハットなどの事故例を挙げていくと、医療現場にいる者として ここ数年の動きというのは、確かに増えているのだと私は思います。そのことはたぶん 今まで現場で隠されていた部分が浮かび上がって、そのことによって少しずつ医療関係 者の認識が深まって、事故防止へ力が向きつつあると思います。  と言うよりも、むしろ医療機能評価機構への事故報告というのが義務づけられました ので、懸念する方向として、そのことがかなりの足枷になっていると言いましょうか、 医療現場での医療行為そのものも、逆の意味で制限しつつあるということもあり得ると 思っています。リスクマネジメントという点については、もう病院の最優先課題にされ ているわけですから、いろいろな医療行為の中でそれを最優先するということは、非常 に大事なことではあるけれど、逆に言うといろいろな意味でも束縛と言っては言いすぎ ですが、制限を受けているというのも事実です。  今回私が言いたかったのは、医療機能評価機構から出された医療事故情報というのは、 先ほどまでやっていたヒヤリ・ハットに比べると、はるかに重要な情報が含まれている と思います。患者が死亡された、あるいは障害が残ったという事例ですので、このこと はかなり検討が必要なのだろうと私は思います。ただ、その検討がどういうようになさ れたかというのは、私たちはよく知りません。ここにこういう形で全体のまとめと、「共 有すべき医療事故情報」として、ほんの何例かが挙がっているけれども、それだけでい いのか、もしかしたらもっと。「5%」が薬剤、医療用具では「10%」がその事故の中身 を含んでいます。見えてこないだけに、医療用具や薬剤についてはもっと深く掘り下げ てみると、改善すべき点があるのではないかという気が私はします。  医療機能評価機構が囲んでいる医療事故情報というのは、公表するには非常にいろい ろなことがあって出来ないのです。いろいろな情報を広げていくには問題があるけれど も、解析なり検討なりをするには、非常に大事な情報が含まれているのだろうと思いま す。医療機能評価機構でも十分練って、ここに出されているとは思いますが、それが共 有すべき事故情報としてこれぐらいなのか、本当なのかという懸念を覚えるわけです。  例えば45頁の「医療機器等」で2件、心臓カテーテル検査の際に、誤って別の動脈に 挿入しているシースの方に空気を入れたというのがあります。止血用デバイスに空気を 入れるという行為があったら、そのすぐ横にある別のチューブに空気を入れるというの は、非常に起こりやすいことなわけです。ですから必ずデバイスを替えて、空気が入ら ないようにしなければいけない。これはもう当然だと思います。以前、胃管に挿入すべ きものは、決して点滴なりには誤接続できないようにしましたが、こういうことが医療 現場では起こっているのです。  実を言うと私たちのところでも似たようなことがあって、すぐに業者を呼んでその器 具を改善してもらい、誤接続防止の工夫をしてもらいました。しかし、こうして見ると まだこれが使われているような気がします。ということは、情報がここで止まっている のではないかと思うのです。このことについては、たぶんこれからはもうなくなるよう な方策が出てくるのだろうと思いますが、こういう非常に重篤な障害を残した、死亡さ れた方については、もっといろいろな情報が。これだけでは何となく寂しいかなと思い ます。もちろん別のところでそういう検討がなされたのであれば別ですが、私が関与す るところでは、今日こういう形でしか見せてもらっていないので残念に思いました。  桜井部会長が言われることも本当にそのとおりですが、こういう取組みは、私は少し ずつ成果を上げているのだろうと思います。ヒューマンのことに関しては、やはり医療 現場での意識づけ、みんなの注意力をどういうように持っていくか、そのことが非常に 重要な課題として、私たちの病院でも全員が取り組んでいるし、多くの病院がそうだと 思っています。ですから箱というのは、そう簡単にはできないけれども、やはりだんだ ん出来つつあるのではないかと私は思います。 ○北澤委員  私は医療従事者ではありません。本当に素人なのですが、「共有すべき医療事故情報」 の最初のところで、「タキソール」と「タキソテール」を間違えていたというのが2例 ありました。タキソールとタキソテールの名前が似ているというのは、たぶん誰でも、 素人でも似ているなとわかると思うし、この二つが似ているということは、何年も前か らみんなが言っていたことではないかと思います。この取違いについてはヒヤリ・ハッ トの方でも報告されていて、薬剤師が2回ぐらい確認をして、ようやく医師が間違えて いたということがわかったと。昔から言われていることなのに、なぜ今も同じような事 例が報告されているのか、素人的に考えても非常に不思議ですし、なぜ対策をやってい ないのかと思います。特にこれは抗がん剤で、間違えるといけない薬だと思うのです。 ただ、ここにこういう事例がありましたと報告するだけでいいのか、本当に疑問に思い ます。  もう一つは別の話です。ヒヤリ・ハット報告をずっと読ませていただくと、やはり多 忙であったとか、午前のことがまだできていなかったとか、要するに忙しいということ が何度も繰り返し出てきました。やはり医療現場というのは忙しいのだろうと思います。 ここの部会は「物」について考えるところですが、先ほどもいろいろな方が意見を言わ れていたとおり、もう少し忙しくない職場をつくることが、事故を減らすためには是非 とも必要なことではないかと改めて感じました。 ○土屋委員  「タキソール」、「タキソテール」については薬剤の表示その他で、もちろん検討は されております。今回の「医療安全対策検討ワーキンググループ」でも出たのは、レジ ュメというものを使って、そもそも処方の段階での間違いがないようにということを含 めて、そういうものに従ってやっていこうということでした。その場その場で薬を選ぶ のではなく、決まったやり方をきちんとやっていくというのが、今だんだん普及しつつ あるというのも現実です。まだ全部に広がっているということではありませんが、そう いったこともこういうことを防いでいく一つのやり方だと思います。  それから、どうしても「IT」をうまく使えるということが極めて重要ですが、そこ のところがまだ研究段階のものもあって、有効な手立てになっていません。あるいは病 院情報システムというものにも、まだ改革の余地があるということもあります。本来な らば人が多くいないところをITが助けなくてはいけないのですが、そこがまだうまく 機能していないということも現実ですので、ここら辺も今後、十分検討していかないと いけないのではないでしょうか。そういうものが大きな課題としてあります。ここはど うしても「物」ということで、情報システムの話の検討をする場がないというのも、少 し問題なのかという気がいたします。そういったことを含めて総合的にみんなで前へ進 んでいかないと、なかなか進まないというところがありますから、そういうことが絶対 に必要だろうと思っています。 ○野中委員  部会長が言われたことに対して、私はまだ明確な答えを持っていないのですが、先ほ ど透析の機器のことをだいぶレポートされました。透析に携わってこの30年間、機器は もう複雑になる一方で、カタログは厚くなってきました。そうすると、機械に起きたこ とに対して、様々な解決する方法を頭に入れていないと、本当は使いこなすことにはな らない。しかし現場では適切に使いこなすことが、そういう視点ではとらえられていな いのではないだろうか。  多数のいわゆるMEの人や機械を使う人たちがいなければいけない。しかし多くなれ ば多くなるほど、意思の疎通ができなくなる。ここはどうしても矛盾がします。しかし、 事故は起きるものであって、それに対してどう対処していくかということが、本当は機 械をうまく使いこなすという視点が必要と思います。防御する機器が付いていれば付い ているほど、例えば、空気が入るということを機械が止めてくれると思ってしまう人に とっては、それは自分のミスではないと思ってしまうこともあると思います。  それから、先ほどの「ノイキノン」と8頁の45番の取違いのこともありますが、確か に薬剤というのは、似ていることがあるわけです。例えば患者が服用しようとすると色 が違うので、服用を中止していたことを、よく経験するのです。問題は、それが2週後 に外来診察のときに発覚したということです。患者が2週間後に来て、「実はこの間も らった薬が、どうもいつも違うと思うんです」と言われて、調べてみると、うちの処方 は同じだったのですが、薬局で間違えていたのか。それは定かではありませんが、本人 は「違う」と言い張るし、しかもそれを持って来ない。薬局も馴染みの薬局なので、違 うと思ったときに、なぜ薬局に相談しなかったのか。ですから、いくら現場の人たちが いろいろ注意をしても、片方でもお互いに注意していくということもなければいけない。  どうやって注意をしていくかという作業が、どうもミスを起こさないようにというと らえ方ではなくて、ミスをどう発見しようかとなっているような気がしてならない、こ れが私の感想です。 ○桜井部会長  この間、日本経済新聞の夕刊に、「おじさんは怒っている」という特集が、ずっと1 面に載っていましたね。その中の一つに、パソコンの取扱い説明書が、馬鹿に簡単だと 思って見たら、「ホームページで見なさい」と書いてあって、そこをアクセスするとま た複雑なものが出てくるという話がありました。誠にごもっともです。取説というのも、 ちょっとけしからんところがありますよね。それを渡せばいいというように渡される。 ほかにありますか。 ○医療安全推進室長  いくつかのご指摘がありました。これらについて、状況をご説明したいと思います。 まず外委員からのご指摘です。医療事故情報については重要な事例がありますので、で きるだけこの情報提供を進めていかなければならないのだろう、といったご趣旨だった ように思います。事故情報というのは、現在の制度では匿名ということで、医療機関の 方から医療機能評価機構に上がってきております。そして医療機能評価機構の方で検討 するメンバーが限定されて、そこで検討を進めるという状況になっております。したが って、そのまま公表することはもちろん出来ないのですが、情報提供のあり方について は、我々としてはできるだけ多くのものを出していただいて、それが医療現場に還元で きるようにと考えております。そういう情報提供のあり方については、今後の課題では ないかと思います。土屋委員はたしか委員の中に入っていらっしゃったかと思いますの で、具体的な事例というか、雰囲気を後ほどお話いただければ助かります。  もう1点、石川委員からお話のあった、特に教育研修について具体的な対策を進めて いくべきではないかという点については、今度、「医療法」や「医師法」の改正法案を 提出する予定にしております。これは「医療安全対策検討会議」とワーキンググループ でご検討いただいた内容を踏まえて内容を固めたものです。医療安全の確保については、 医療機関の管理者に義務づけをするということを、きちんと法律に明記することになり ます。そして医薬品や医療機器の安全使用や管理体制の整備についても、この法律に沿 って管理者に義務づけていこうという考え方を持っております。そういう方たちが医療 機関の中に出てくれば、そういう方たちが中心となって教育を受け、医療機関の中の職 員に対して教育をしていくということを考えております。  では今度教育をするに当たっては、どういった教材でやるのかということが問題にな ってきます。いまご説明しているヒヤリ・ハットの情報や医療事故の情報等を、その都 度その都度研修をしていただく、学習をしていただくということも必要ですが、例えば 特定のテーマについてガイドライン的なものを作って、それを医療機関の方で適用して いただく、そういうことも考えられるかと思います。  いろいろなハイリスク分野における安全管理体制については、厚生労働科学研究の方 で個別に検討しているところです。いちばん早いもので、「ICU(集中治療室)の安全 管理体制」については、後ほどご説明する検討会で検討するという段取りになっており ます。そのほかのものについては、まだ具体的にご説明できておりませんが、研究段階 で進めているところです。  そのほか、医療機関の安全管理者というのは、特定機能病院や臨床研修病院に配置を 義務づけられておりますが、こういう方たちの業務や研修のガイドラインといったもの が必要ではないか、ある程度やってみて、少し質を高める底上げの方法が必要ではない かということで、平成18年度の予算案に計上して、いま国会でご審議いただいていると いう状況です。こういったことを踏まえ、我々としては医療安全の確保を進めたいと考 えておりますので、個別にはまた先生方のご指導をいただきながら進めてまいりたいと 思います。 ○桜井部会長  それではいまお話に出ましたので、議題3の「ICUにおける安全管理」をご説明願い ます。 ○医療安全推進室長  それでは資料11−3により、「集中治療室(ICU)における安全管理指針検討作業部 会」についてご説明します。開催目的は、集中治療室はハイリスク分野だということで、 医療安全管理指針を作るべきではないかというご議論がこれまでもあり、「ヒューマン エラー部会」と「医薬品・医療機器等対策部会」の下に、作業部会を開催するものです。 参考資料1に絵がありますように、この「医療安全対策検討会議」のチャートの右下が、 各種作業部会となっており、ここに位置づけられます。ICUにおける安全管理指針につ いては、平成15年12月の「厚生労働大臣医療事故対策緊急アピール」において、こう いうハイリスク部署における安全ガイドラインの作成を進める旨の対策が盛り込まれて おり、平成16年度、17年度の研究を踏まえ、今回、具体的に検討会で検討を行うもの です。  最後の頁には、作業部会の委員を掲載しております。当部会の北澤委員も委員に入っ ていただいております。この報告書は概ね今年の秋ぐらいを目途に、取りまとめたいと 考えており、現在第1回を開催したところです。4月上旬には第2回を開催したいと考 えており、秋ごろには報告書をまとめたいと考えております。 ○桜井部会長  何かご質問はありますか。よろしいでしょうか。ないようですので、それではその他 の議題として、資料11−4−(1)をご説明願います。 ○事務局  まず11−4−(1)「二槽バッグ製剤の未開通投与防止対策」についてです。こちらは「医 薬品類似性検討ワーキンググループ」の検討等を踏まえ、平成16年6月2日に一度通知 を発出したものを変更したものです。当初の通知では下の参考にありますように、但し 書きとして下線部の部分が入っていたのですが、こちらで除外した製剤においても、未 開通の事例が報告されたことにより、この下線部を削除いたしました。それに伴って、 同じように現在、輸液バッグにビタミン剤が一体化しているような二槽バッグがありま す。これについても投与忘れ等がありましたので、同様の対策を講ずることといたしま した。  続いて11−4−(2)「輸液ポンプ及び輸液セット等の滴数規格の統一」についてです。 輸液ポンプ及び輸液セットに関しては、薬事法に基づいて基準が定められており、この たびこの基準が制定されております。具体的にどういう基準かと申しますと、滴数の1ml の規格が、いままでは「15滴」、「19滴」、「20滴」、「60滴」と4種類あったもの が、この基準により「20滴」と「60滴」の2規格に統一されることになりました。なお、 医療機関等にあります既存の15滴、19滴が使える機器について、もし設定を変更でき るものは、平成21年3月31日までの一定期間に企業が変更することになっております。 その段取りは、添付している参考資料5に、輸液セットの移行期間ということで表にし ております。単独業者の精製品、輸液ポンプと輸液セットが同じメーカーのものは、す でに切替えが開始されているものもあります。ただ複数の業者の製品の場合は、平成19 年4月から平成21年3月31日までの作業となっております。  次の参考資料6では、現在市場にある滴下制御方式の輸液ポンプの機種一覧を付けて おります。こちらの表の右側に、「A」、「B」、「C」と3項目あります。こちらの AかBのいずれかに「○」のあるものは、20滴が使える、もしくは20滴に変更できる 機種です。両方に「×」が付いているものは、輸液セットの供給がなくなれば、平成21 年4月以降使うことができなくなる機種です。Cについては、変更した設定を機械的に 前の15滴、19滴にセットできなくするような作業ができるものに「○」が付いており ます。「×」のものは変更はできますが、中の設定の変更はできないので、間違ってセ ットされる可能性が若干残される機種です。 ○野中委員  これはたぶん「JIS規格」というか、規格にするためにこれを変更するのですね。 ○事務局  はい、そうです。 ○野中委員  規格に対してこうするというのはよくわかったのですが、医療機器で輸血ポンプの事 故が多いことが、先ほどからだいぶ報告されています。「JIS規格」にして事故が減 るわけでは、必ずしもないと思うのです。今日言われたことは、ある面では理解するの ですが、統一規格をされるのであれば、輸血ポンプに最低限こういう機能を持たせてと いう話でないと。  メーカーは様々な機能がありますと言うのですが、多く機能があること自体、かえっ て今日報告されていたような事故につながっているのではないかと思うのです。こうや って点滴の滴数の規格を統一されるのもその一つと思うのですが、機器をある程度統一 していかないと、現場の人間が大変です。  例えば、病院で同じ規格の輸液ポンプを500台一緒に買って、それを全部の看護師や スタッフに教えていけば、たぶん事故は減ると思うのです。ところが現場に行けば、輸 血ポンプ1台1台の機能も違えば、注意することも違う。現場の看護師やMEなどが慣 れたといっても、事故が起きると思う。慣れるまでの時間がかかる。この中に現場の看 護師とか、いろいろ書いてありますが、人の目だけではなく、使い勝手とか、その辺の 基準と。こうやって滴数の規格を考えるのであれば、何かその辺でまとめていかないと、 機能の使い勝手のいい部分はあるけれど、それに戸惑わされてしまって、現場の人たち が気の毒とつくづく感じます。そういう部分に関してはどういう動きがあるのか、それ を教えていただけたらと思います。 ○安全対策課長  いま野中委員ご指摘の点というのは、我々も心にとめていかなければいけないだろう と思っています。確かにヒヤリ・ハットの事例を見ても、輸液ポンプにかかわる部分は、 かなり多く報告されておりますので、この点については目黒委員のご指導も得ながら、 輸液ポンプの中でどういうヒヤリ・ハットが報告されているのかというのを整理した上 で、考えていかなければならないと考えています。  さらに、今日は用意しておりませんが、JISの中でどのようなことを定めているの かというのも、併せて検討する必要があると考えています。確かにご指摘のとおり、輸 液ポンプについては多くの事例が報告されておりますから、その中身を精査し、その際 にはまた目黒委員を中心に、何人かの委員にご指導願うという形で進めさせていただけ ればと思います。 ○目黒委員  たぶん事務局も言いたかったのではないかと思います。平成15年の3月に、いままで の輸液ポンプの事故事例や取扱いの問題点などを集めて、どういうところに注意して物 を作ったらいいかということで、安全対策の施された機械が2年前から出ています。そ の機械は、流量と予定量の間違いを教えてくれるとか、予定量とトータルの量が見やす くなるといった安全対策を施しています。当センターの場合、ちょうど予算が付いたの で、全部切り替えました。それまで私のところにはいろいろなクレームがあったのです が、ほとんどなくなってきました。もうほとんど減ってきました。ですから野中委員の 言われるように、施設全体で同じような規格を作っていくと、やはり非常に安全性が高 くなるのではないでしょうか。  各安全対策については医師会をはじめ、医療機器工業会等の団体等もいろいろ検討を して、安全対策を施した機械がいまは出てきています。実はその機械というのは、機械 側から人間のミスを教えてあげようというアプローチもできる形になっておりますの で、それに関しては少し成果が上がっているのではないかという気が、いま私はしてい ます。 ○原田委員  関連するのですが、輸液ポンプについては、やはり事故やヒヤリ・ハット事例が多か ったせいか、それなりの対応がなされ、それなりに成果も上がってきていると思います。 それに比べてと言うと失礼かもしれませんが、私自身、ごく最近人工透析器を見せてい ただいたときに、非常に異なるインターフェイス、非常に異なる機能が付いているバラ バラのものが、1部屋の中に何十台と使われている現場を見て、これは本当に危ないな と思いました。ただ、それがなぜ今までヒヤリ・ハットとか、こういう事故事例が出て こなかったかと言いますと、人工透析という医療行為はわりと時間のかかるものなので、 その間に発見されてその中で処理されている、対応されているから、表に出てきていな いのだと思うのです。しかし医療機関の従事者の負担というのは、ものすごく大きいと 思います。  そういう意味では、まずは事故が多く、実際に生死にかかわる部分から対応していた だきたいと思いますが、それだけでなくさまざまな機器の統一については、対策部会の 方から、あるいは厚労省の方からどのように働きかけていける可能性があるのか、規格 統一についての全体的なやり方について、ご検討いただければと思います。 ○奥村委員  一言お願いしたいのですが。先ほど石川委員や土屋委員からお話がありましたように、 設備あるいは環境が原因のヒヤリ・ハット、医療事故というのは報告されていないので す。これからは特に我々の診療室や病院でも、無線LANと電磁波を使うことが多くな ってくるのではないかと思います。ヒューマンエラーではありませんので、この辺のこ とはこの部会で取り上げるのが筋ではないかと思いますから、できれば課長の方から医 療機能評価機構に、設備や環境に起因すると思われる事例を集めていただいたり、分析 していただいたりということも、一つ考えていただきたいということを希望しておきま す。 ○望月委員  私も最後に一言。先ほどの医療事故の情報収集等事業での報告書のときにお話すれば よかったのですが、「物」に対する対策というのは、この何年かでいろいろな形で講じ られてきています。それでもなおかつ昔からあるような事故が、非常に重要な事故とし て、いくつか上がってきているわけです。先ほど北澤委員が言われたように、相変わら ずこういうものが残っているというのは、一体何なのでしょう。  「医療事故情報収集等事業」というのが、折角ここまで分析をして、こういう形で各 都道府県の医政の主管部長殿宛に、公表資料として出されているわけです。主管部長は これを受け取った後、医療機関に流すわけです。私は情報の専門家ですが、情報という のは結局、受け手がそれをどう受けとめるかというのが、非常に大事です。ここは物の 部会なので、あまり人の話にはならないのかもしれませんが、折角こういう重要な事故 に関する情報があって、ここは特に気を付けてくださいというものを、いくつか挙げて 流しているのに、その先がどうなっているかというのが、これだけだと見えないのです。  先ほど医療安全推進室長がお話に出されていた中で、特に特定機能病院、臨床研修指 定病院などの各医療機関には、安全管理者が置かれていて、その人たちに対する研修や いろいろなことを、今年の企画の中で挙げていらっしゃいました。せめて安全管理者の 研修の中では、こうした情報をきちんと受けとめて、この薬について自分の機関ではち ゃんと対策を講じているだろうかということ、その方が責任を持って最後まで確認をし ていくということを、ご指導いただくことが大事なことではないかと思います。 ○土屋委員  事故事例の件でお話がありましたので、意見を申します。確かに私もこの事故事例の 報告書を作るときの委員でした。ただ、詳細な事例の分析をしている委員ではありませ ん。この公表の仕方というのも、やはり一つ考えなければいけないのかというところは あります。例えば薬の副作用の場合、どういうことが何件起きているかというリストの ほかに、重要事例については、その詳細な症例が付くという形で、ある程度情報が公開 されています。あれと同じような仕組みが、こういったものについても必要なのかなと いう気もいたします。  正直申し上げて、いままではこの報告書を作るのに四苦八苦と言いますか、そこで精 一杯だったというところがあります。おそらく、これを作るということが、ある意味で やっとルーチン化してきたわけですから、そういった中での公表の仕方というのが、今 度は受け手にとって魅力あるものと言いますか。表題しか出ていないと、実際はなかな か役に立たないようなものに、もう少し詳しい話が出てくれば、これが受け手にとって、 見るというインセンティブを働かせることにもなるかと思います。次回、委員会があっ たときには、是非そのことを伝えたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたしま す。 ○安全対策課長  宿題をたくさんいただいたと思っています。輸液ポンプについては、先ほど目黒委員 や他からもまたご説明がありましたが、現状をいま一度整理をしたいと思っております。  また、販売名についてのご指摘もいただきました。すでにご承知だろうと思いますが、 新医薬品についてはブランドネームをチェックするというシステムをすでに導入し、稼 働しています。いわゆる後発品については、「成分名プラス剤形名プラス含量」という ことで、ブランドネームは認めないという方向で手を打ったところですが、これについ てもまた次回、状況をご説明したいと思います。  3番目に透析を例に挙げて、規格の統一のお話がありました。これはいくつかのもの について、水面下でやっています。ただ、なかなか難しいのは、例えば「桜井先生開発 回路」とか、「石川先生開発回路」ということで、桜井先生はもちろん自分のものが絶 対だと、石川先生はそれが絶対だと、井上先生はこれが絶対だというところがあり、な かなかうまくいかない点もあるわけで、一度整理をして、必要に応じ、報告させていた だければと思っております。  また、環境に起因する医療事故に着目すべきだというご発言もありました。例えばペ ースメーカーと電磁波の影響などは、いままでもやってきましたし、世の中の進歩に合 わせて、いわゆる「スマートキーシステム」と言われるような、自動車の電磁波とペー スメーカーとの関係など、いろいろ手を打ってきております。おそらくは医療事故につ いても、環境に起因するような事故も入っているのだろうとは思いますが、その点はい ま一度確認をさせていただきたいと思います。たくさん宿題をいただいておりますが、 よろしくお願い申し上げます。 ○桜井部会長  先ほどの望月委員のフィードバッグの問題というのは、非常に大事です。だいぶ古い のですが、たしか東郷平八郎の歌だったかと思います。「やって見せ、言って聞かせて、 繰り返し、褒めてやらねば人は動かぬ」というものです。全くそのとおりです。そこま でやらないとなかなか実効のあることはできないのではないかと思います。ほかに何か ご発言はありますか。 ○事務局  11−4−(3)だけ、ご紹介がまだでしたので、簡単に終わらせます。これは「点滴用キシ ロカイン10%の供給停止のお知らせ」です。前回の会議ではホスピス協会の要望により、 特定の疼痛管理に使用する医療機関にだけ、継続して供給をということになっていたと 思います。その供給が10月末日をもって止めるという通知です。現在ホスピス協会や加 盟施設で持っているキシロカインの数については、毎月アストラゼネカ社の方から報告 を受けておりますので、一応数的には把握しております。必要があればご用意できると 思います。もし具体的な数がということであれば、申し出ていただければご用意いたし ますので、その点、お願いいたします。 ○桜井部会長  キシロカインについて、外委員はよろしいですか。 ○外委員  はい。これでやっと市場から消えるということで喜んでいます。 ○桜井部会長  それでは、ありがとうございました。 照会先 医薬食品局安全対策課安全使用推進室 電話 03-5253-1111(内線2751)