06/01/30 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会第19回議事録 第19回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 1 日時 平成18年1月30日(月)16:30〜 2 場所 経済産業省別館850号会議室(8階) 3 出席者  〔委員〕    公益代表  西村委員(部会長)、石岡委員 労働者代表 佐藤委員、須賀委員、内藤委員、真島委員、吉田氏(寺田委員代理)    使用者代表 紀陸委員、杏委員、下永吉委員、早川委員、平山委員、秋田氏(泉 川委員代理) 4 議題  (1) 労災保険率等の改定等について (2)労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱に ついて(諮問) 5 議事 ○部会長  それでは、ただいまから第19回労災保険部会を開催いたします。委員の出欠状況です が、本日は稲葉委員、岩村委員、金城委員、高松委員が欠席されております。また、寺 田委員、泉川委員より代理者の出席の申し出がありましたので、本日は寺田委員の代理 として、JEC総研労働政策局長の吉田氏、泉川委員の代理として、日本通運株式会社 総務・労働部の秋田氏がご出席であります。また本日4時30分から衆議院において、石 綿対策関連二法の質疑が行われ、森山労災補償部長が対応されておりますので、本部会 を欠席されております。  それでは議事に入ります。本日の議題は「労災保険料率等の改定等について」であり ます。この点について、事務局から説明をお願いします。 ○ 石原労災保険財政数理室長   労災保険財政数理室長の石原でございます。では資料No.1−1から1−6まで一括し てご説明いたします。労災保険率の算定に先立ちまして、建設事業については労務費率 という率を決めておく必要があります。そこで、労務費率の見直しについても検討した ところです。お手元の資料No.1−1はまず労務費率の仕組みについて、解説したもので す。概略ご説明しますと、労災保険の保険料は賃金総額に労災保険率を乗じて、得るも のですが、下請を伴って行われる建設の事業につきましては、元請負人が全体の事業に ついての事業主として、労災保険の適用を受け、元請事業主はその下請事業に使用する すべての労働者について、保険料納付の義務を負っているところでございます。  このような下請を伴って行われる建設事業につきまして、賃金総額の算定が困難な場 合には、別途定めてある労務費率という率を請負金額に乗じて得た額を賃金総額とする 仕組みがあります。資料No.1−1の2枚目には、この労務費率に関する労働保険の保険 料の徴収等に関する法律、あるいはその徴収法の施行規則の関係部分の抜粋がございま す。  具体的な労務費率の値につきましては資料No.1−1の2枚目下の部分、「徴収法施行規 則の別表第2」で規定されております。これは現行のもので、建設事業の事業の種類ご とに定められているわけです。この労務費率は従来から、請負金額と賃金総額の関係に ついて、実態調査を行い、その結果を見て見直してまいりました。前回は平成12年に調 査を行い、13年4月前々回の料率改定の際、一部の業種について、改定したしたところ です。今回も昨年8月、9月に調査を行ったところでして、約4,000事業場から回答が あり、所要の統計を得ることができました。  次ページの資料No.1−2がその調査結果をまとめた統計表です。統計表は横の方向に 労務費率を定めている業種区分を取っております。縦の方向は大きく3段に分かれてお りまして、上から保険料計算に労務費率を用いている事業場の統計、実際の賃金を用い て計算している実支払賃金の事業場の統計、そして両者全体の統計です。各段いちばん 上には調査の結果わかりました労務費率を用いている事業場の構成比、実支払賃金の事 業場の構成比、これが括弧の中に記されております。また各段は建設各事業における請 負金額と賃金総額の比率の分布を示す統計を載せております。上から第1・4分位、中 位数、第3・4分位、そして各事業の比率を事業の請負金額によって、加重平均した加 重平均値、あと単純に平均した単純平均値を並べております。  労務費率の改定に当たりましては、労務費率を用いて保険料を計算している事業場に おいて、請負金額と賃金総額の関係はどうなっているか、これが問題です。そこで、上 1/3の段、労務費率を用いて保険料を計算している事業場における賃金総額の比率の 分布、中でも特に中位数、これを従来から労務費率見直しの検討の参考としております。 お手元の資料では網かけをしている行でございます。  この中位数というのは請負金額と賃金総額の比率の分布の中央を示す値です。それ以 下の事業場数とそれ以上の事業場数が同じになるような、そのような値でして、中央値、 あるいはメディアンなどとも呼ばれます。お手元の統計表では、現在設定している業種 ごとの労務費率を統計表の下のほうに書いてあります。これと中位数を較べまして、水 力発電施設、ずい道等新設事業と、機械組立の労務費率をそれぞれ1ポイト下げるとい う案を考えております。  まず水力発電施設、ずい道等新設事業につきましては、概ねいままでも調査結果を見 ますと、19%未満の調査結果が続いておりまして、今回これを20%から19%に引き下げ るという案です。また機械組立につきましては、中位数が40%、前回の調査結果も39.8% でした。やはり、今回労務費率41%を1ポイント下げて、40%とすることを考えており ます。なお、左から2つ目の「道路新設事業」という所で中位数が22.2という調査結果 が出ております。ここは現行の労務費率を上回る結果となっておりますが、従来の調査 結果、これは時系列的には概ね21%弱でして、またこの調査は標本調査ですので、標本 調査に伴う誤差が、誤差率にして5%、ポイントの差にしますと、1ポイント程度はあ ると思われますので、22%を超えたのが標本調査に伴う誤差によるものである可能性も あります。そこで、今回は改定を見合わせると考えております。  次に労災保険率の改定に関する資料です。資料No.1−3は業種ごとに定める労災保険 率の平均がどうなるか、それを見たものです。労災保険率の改定案は、労災保険率の改 定に関する基本方針に従い、業種別に算定いたしました。この基本方針は昨年3月に定 めたものでして、前々回の部会でもご説明したところです。本日は資料の後ろのほうに 参考として添付いたしました。この基本方針に従いまして、算定したところ、今回の改 定案は平均で7.0/1,000となりまして、前回改定時の見込7.4/1,000から下がること となりました。内訳を見てみますと、業務災害分の平均が前回の4.9/1,000から4.7/ 1,000に下がる結果となっております。続く過去債務分、非業務災害分、労働福祉事業 費等は、各業種一律に賦課するものでございます。  ここで過去債務分というのは積立金の不足分解消に当てる分です。年金給付に当てる 分の料率の計算を充足賦課方式という方式に改めたのが平成元年度でして、そのため昭 和63年度以前に発生した年金受給者については、積立金が不足しているところです。元 年度以降、その不足解消のため、一律に負担していただいているところです。17年度末 時点におきましても、およそ1,800億円ほど、不足している状況です。それを平成35 年度までの期間をかけて解消すべく負担してもらう場合、率は0.1/1,000となりますの で、0.1/1,000といたしました。  また非業務災害分は通勤災害にかかる給付と二次健康診断等給付に関する費用に当て る分です。計算したところ、0.8/1,000となり、現行よりも0.1/1,000下げられる結 果となりました。  次の労働福祉事業費等の分につきましては、特別支給金の支給を除く労働福祉事業と 事務の執行に要する費用に当てる分です。労働福祉事業につきましては、目標設定、事 業の実施、評価、見直しのサイクルによる目標管理という継続的見直しの仕組みを今年 度から導入していることなど、より効果的、的確な実施に努めているところです。労働 福祉事業等分の料率について、前回の部会でご意見をいただいていることもあり、従来 の1.5/1,000を1.4/1,000に引き下げます。この労働福祉事業費につきましては、今 後も徹底的な見直しを行ってまいります。  お手元の資料の表の下のほうには、各業種の料率算定に当たり、計算しました年間の 賃金総額や給付所要額などの合計の数字を載せております。賃金総額は全業種合わせま すと、年間143兆1,432億円。業務災害にかかる短期給付と長期給付の年間所要額はそ れぞれ3,719億円、2,970億円となります。この長期給付の所要額というのは、年間の 新規受給者に対する充足賦課額、つまり将来給付分も含めた給付費用の総額です。  次の非業務災害分の所要額は、短期給付分479億円、長期給付分は524億円となりま す。制度改正分として掲げている4億円ほどの金額は、複数就業者及び単身赴任者にか かる通勤災害法制度の改正に伴うものです。資料No.1−3の最後にありますが、今回の 改正で、財政への影響は保険料収入の573億円の減、言い替えますと、保険料負担が573 億円ほど減少する見込でございます。  資料No.1−4、横長の表ですが、これは算定の基礎となる数字をまとめたものです。 資料No.1−4は業種ごとに左から保険料率の分母となる賃金総額、次に分子にくる業務 災害にかかる給付の所要額、激変緩和分などを並べまして、いちばん右に算定結果を載 せたものです。縦には事業の種類が並んでおりまして、前々回の部会でご議論いただい たところですが、「その他の各種事業」を4分割いたしました。お手元の資料では下から 9行目に、いままでとは範囲が異なるという意味で、(新)を付けて、「(新)その他の各 種事業」、そして下から6行目以下に「通信業、放送業、新聞業又は出版業」、「卸売業・ 小売業、飲食店、宿泊業」、「金融業、保険業又は不動産業」の欄がございます。いちば ん下の全業種計の上に特別な激変緩和措置対象業種として、石炭産業を含んでいる金属 または非金属鉱業のデータを並べております。  ご覧の表の頭の部分に戻りまして、業務災害に関する給付の所要額の欄ですが、ここ は基本方針の算定方法に沿いまして、大きく短期給付の分、長期給付の分を別々にいた しまして、更に短期給付分につきましては災害発生から3年以下の分、そして災害発生 から3年を超えて支給されている分で、また長期給付の分は災害発生から支給開始まで の間が7年以下の分、7年を超えている分にわけております。  短期給付の3年超の分、長期給付の7年超の分は、基本方針どおり全業種一律の率と しております。またその右の欄に、「激変緩和措置」の欄があります。ここは基本方針で いう激変緩和措置の分です。前回激変緩和措置についてご議論いただいたわけですが、 そのご議論も踏まえまして、私どもとしましては、過去の引き上げの実績などを見まし て、引き上げる場合には、引上幅が最大1/1,000となるように激変緩和を行うことと いたしました。激変緩和措置の欄にマイナスの数字が書かれている業種が、料率の引上 幅を1/1,000に抑えるべく激変緩和措置を講じたところでございます。そのマイナス の数字の大きさが激変緩和の大きさとなります。  また、この激変緩和措置を行うことに伴いまして、激変緩和を行わない業種に0.3/ 1,000の負担がかかっているところです。なお、この表の下のほうで先ほど申しました 金属鉱業、非金属鉱業につきましては、前回もご議論があったところですが、激変緩和 措置の欄にマイナス1,350を超えるような値があるように、激変緩和をしないと、1,400 /1,000を超えるような値となります。特別な激変緩和措置の対象として、料率を引き 上げることもないとの判断で、前々回の部会でもありましたが、87/1,000という現行 の料率を据え置くこととしております。  そして、いちばん右側の算定料率の欄はこの表の(1)の欄「短期給付の所要料率」、(2)の 欄の「長期給付の所要料率」、(3)の欄の「激変緩和措置の所要料率」そして*を付けた3 つの欄の全業種一律の率を加えたものです。このいちばん右側にある算定結果を改定案 としまして、現行と並べて見たものが次のページにある資料No.1−5、労災保険率表(案) です。改定案の欄が空欄になっている事業につきましては、これは改定を行わないもの、 据え置きになるものです。改定案では、業種の数が全部で54、現行と比べて、引き下げ となる業種が25、引き上げとなる業種が13でございます。  表の下のほうに先ほども触れました、従来の「その他の各種事業」から分離独立させ た3つの業種と範囲を新たにした「その他の各種事業」の欄があります。  最後は資料No.1−6の「第二種、第三種の特別加入の保険料率の改正案」です。第二 種、第三種特別加入は、特定の事業または作業等について設けた任意加入の制度です。 この特別加入は加入者数が区分によって様々です。数人程度のものから、20万人を超え るものまであります。年金受給者が3年間で1人発生しただけでも、計算上の保険料率 が大きく上昇するような区分も多くあるところでございます。  そのため、特別加入保険料率につきましては、本体の料率に比べまして、より長い期 間の実績を基にして、判断すべき区分も多くあるところでして、従来から長期間の給付 実績などを見まして、保険料率を設定してまいりました。こうしたことから、前回、平 成15年に多くの区分で引き下げの方向で改定したわけですが、それ以降、まだ期間が短 く、災害発生の増減の方向が必ずしも見極められませんので、今回はこの3年間で新規 年金受給者が2割以上も増加しまして、収支バランスが明らかに崩れたと考えられます 特定農作業従事者について、1/1,000引き上げるという改定を行いまして、そのほか につきましては、据え置くことにしたいと考えております。ここで特定農作業従事者と いいますのは、年間の農業生産物の総販売額が300万円以上、または経営耕地面積2ヘ クタール以上の規模で土地の耕作、植物の栽培もしくは採取、または家畜の飼育の作業 などを行う自営農業者などです。以上、資料No.1−1から1−6について、ご説明申し 上げました。 ○ 部会長   ありがとうございました。それではただいまの事務局の説明につきまして、ご意見、 ご質問があれば、承りたいと思いますが、最初に資料No.1−1から1−2の労務費率の 改定についてのご意見、ご質問を伺いたいと思います。何かございませんでしょうか。 特にご意見がございませんでしたら、改定案について準備していただくということでよ ろしいでしょうか。   (異議なし) ○部会長   次に労災保険率と特別加入保険料率について、資料では1−3から1−6までですが、 ご質問、ご意見はございませんでしょうか。 ○ 佐藤委員   基本的には賛成いたします。私この場でも申し上げておりますが、第一種の特別加入 をする事業というのがあるわけですが、例えば建築だと私たちは思っていても、加工場 を持っていることによって、製造業の部分も特別加入しなければならないと。何度も申 し上げていると思いますが、事業主が1人であった場合に、同じ人間が2つの事業にわ たって1年分の保険料を支払うというのは、つじつまが合わないじゃないかと。これに ついては、検討されるという課長の答弁が以前ありましたので、この際検討があったの かどうか、そのことをお聞きしたいと思います。  それから、全体的に今日諮られておりませんが、建設業のメリット率を決めるときに、 労災隠し問題をかなり大きく提起させてもらいました。そのための検討委員会を持つと 約束をし、国会決議においても、その旨書かれております。そういうことから考えまし て、だいぶ日も過ぎましたが、一向にそういう声が聞こえてこないので、どうしたもの かなと、そんなふうに思っています。  それと、よけいなことかもわかりませんが、いま部長は環境委員会に出ているかもわ かりませんが、まさにいまアスベストの新法が議論されている時期で、労災保険の徴収 システムに乗せるというふうに言われています。前回はそれなりのことがちょっと説明 があったのですが、今回ここでは全く話が出ません。  ところが、そのシステムを使うということになれば、主に事業主の皆さんが負担され るわけですから、それでいいのかもしれませんが、あまり先が見えてこないように思う わけです。そういった辺りについても、新法を全部ちゃんと読んだわけではありません が、政令以前の事項が非常に多いように聞いておりまして、そういったものについて、 今回の労災保険料率の改定の問題の議論と併せて、検討されているのかどうか。通常で 申し上げますと、1月30日に、この保険料率、あるいは労務費率が改定をされ、いくと いうことは、年度更新の作業をそれぞれやるわけでして、期間的に非常に間が少ないわ けです。  私は今日そういうことも含めて、説明があるのかなというふうに思っておりました。 以上の3点について、お考えを聞いておきたいと思います。 ○ 労災管理課長   2点目以下は私からまず先にお答えを申し上げます。2点目の労災隠しの問題は、い ま真剣にいろいろとどういうやり方をしようか悩んでいます。できるだけきちんとした 形で議論したいと考えています。ただ、保険料率の問題は非常に重要な問題もありまし たし、またアスベストの問題でいろいろ国会等がありまして、なかなかご相談ができな くて、大変恐縮でしたが、この辺につきましてはできるだけ早くどういう形で委員会を 持つのか、メンバーの話、あるいはどの時期からやるのかといったことも含めて、また ご相談を申し上げたいと考えています。これはできるだけ速やかにやります。  アスベストの法案については、今日は保険料率がメインでしたので、資料を出してい ませんでした。いまお時間があれば、この場で簡単な資料をお配りして、概要をご説明 しますが、よろしいでしょうか。 (資料配付) ○ 労災管理課長   お手元に2種類資料をお配りしています。カラーの1枚紙は、今回のアスベストに関 する法案全体像です。今回法案については2種類あり、いちばん上に書いてあるのが先 般からいろいろ審議会でもご指摘がありました救済に関する法律案です。これはこれと して1本の法律になっています。ただ、今回のアスベストにつきましては、やはり被害 を未然に防止するための対応も大変重要です。補正予算の中でかなりの額が組まれまし て、既存施設での除去あるいは解体時の飛散・ばく露防止、廃棄物の適正処理に関する 法律も出ています。例えば、既存施設への除去等の中に赤字で「地方財政法改正」とい うのがあります。アスベストを公共施設について除去する場合に地方債の特例を認める というものが入っています。また、吹付けアスベスト等の使用規制について、建築基準 法の改正なども、この赤字で書いてあるとおりに入っているわけです。さらに加えて、 飛散防止のための規制措置は工作物のようなものについても大気汚染防止法をかけてい く改正がありますし、またアスベスト廃棄物の無害化処理のための税制上の措置と併せ ての廃棄物処理法の改正があります。  こうした全体の中で、では救済法がどういう形になっているかを3枚紙でごく簡単に ご説明申し上げます。「法律案の概要」と書いてある制度の概要では、住民の関係につい ては救済給付の支給制度ということで、指定疾病がありまして、中皮腫もしくは肺癌、 これは石綿に起因するものです。なお、その他の疾病についても政令で定める余地を残 しています。救済給付の中身は住民の方につきましては、(独)環境再生保全機構が認定 を行いまして、認定を行った方について支給があります。現在、まだ生きていらっしゃ る方につきましては、医療費の自己負担分、療養手当は通院費を勘案して月10万と聞い ています。また、亡くなった場合には、葬祭料20万をお支払いするということです。な お、残念ながらすでに亡くなった方につきましては、特別遺族弔慰金280万円プラス特 別葬祭料20万ということで、約300万円をお支払いするというのが中身です。  認定につきましては機構が実施をします。なお、環境大臣が判定をする仕組みもあり ます。(3)のその他で書いてありますように、受付窓口につきましては、保健所等を活用 して、できるだけ幅広く便利なようにします。  (3)の佐藤委員からご質問のあった救済給付の費用の問題は、救済給付の費用に当 てるために機構に石綿健康被害救済基金を設置してまいります。政府・地方公共団体は 機構に対して救済給付の費用に当てるための資金を交付・拠出してまいります。その際、 労災保険適用事業主等から一般拠出金を徴収するということで、こちらは労災保険とは 全く別なものですが、労災保険のシステムなどを使って、こういうものを徴収すると聞 いています。したがって、労災保険法あるいは徴収法の改正ではなくて、準用という形 を取ると聞いています。徴収の仕方としては、当然クボタなど因果関係の濃い企業もあ るわけですので、そうしたところからは重く取るということで、ここに書いてある石綿 の使用量、指定疾病の発生状況を勘案して、政令で定めます一定の要件に該当する事業 主から毎年度、特別拠出金を徴収することにいたしています。なお、こうした事業主の 要件、特別拠出金の額の算定方法につきましては、環境省が環境関係の審議会の下に検 討会のようなものを設けて、平成18年度の前半のできるだけ早い時期にご検討いただい て、環境審議会なりに上げて政府として政令で決めていく形を考えていきます。  労災の関係は、時効によりまして、残念ながら遺族補償給付を受けられなかった方、 遺族補償給付の権利が消滅した方につきまして、特別遺族給付金を出すわけです。基本 的に年金が原則です。平成16年度にアスベストで亡くなった方につきまして、平均で 215万円出ています。それにある程度、医療費等かかったものも上乗せをして、原則240 万円の年金をお支払いしようと考えています。これはかなり昔の話ですので、賃金台帳 も残っていないことを考慮して、こういう定額の形を取っています。  なお、現在の労災では特別遺族年金を受ける遺族がいない方の場合、例えば生計維持 関係にない配遇者の場合には一時金が出ています。そうした方については一時金を出す ということで、1,200万円を予定いたしています。労働保険料として労災勘定でやらせ ていただくことになっています。また、法案全体については5年後の見直しという条文 が入っています。  現在、この法案につきましては、環境委員会でご審議をいただいています。   ○補償課長   佐藤委員からお話がありました中小事業主等特別加入の保険料負担は、労災保険法の 中で中小事業主等が当該事業について成立する保険関係に基づいて申請をするという法 的な建て前になっています。そういった法的な枠組、制約の関係もありまして検討に手 間取っていますが、然るべく検討してまいります。 ○佐藤委員   石綿はちょっとあとにさせてもらいます。然るべくというのは、私が言っているよう に仕事量なり、日数なりで案分するという方向で検討しているという理解でいいですか。 ○補償課長   そのことも含めて検討させていただきたいと思っています。 ○佐藤委員   それではあまり答えになっていないのです。もっと前を向いて。 ○労災管理課長   これはなかなか難しい。 ○佐藤委員   そんな難しくない。皆さんには悪いですが、この年度は4月3月で計算するのですが、 例えば2月に入っても、以前は第二種特別加入を1年分払っていたのです。そんなこと はおかしいのではないかとこの委員会の中で、もうだいぶ前ですが、盛んに主張されま して、その制度は改められたのです。どう考えてみても一人親方になったのが翌年の2 月だったら、2月と3月しか保険料は払わなくていいわけです。私が言っているのは、 1人の人間が同時に2つの保険を成立させなくてはいけないというのは納得できないと いうわけです。だから、前向きに検討していただいて、そんなに難しいことではないと 申し上げておきます。 ○補償課長   引き続き検討させていただきます。 ○佐藤委員   アスベストのことは、あまりここでやるべきではないと思いますが、全く単純なこと を私は聞きます。労災保険料徴収システムを活用することは、労災保険の手続が済んで いる事業所になりますね。未手続の事業所はどうするのですか。 ○労災管理課長   これは労災保険本体の費用徴収の問題と考え方は軌を一にするのだと思います。法律 ができますれば、我々としては行政ですので、法律に従って動いていくことになる。費 用徴収についても、従って未手続のところがないように、労災保険本体の話としても当 然そういう話があるわけですので、それと合わせてきちんとやっていきたいとは考えて います。 ○佐藤委員   模範的な答えですが、俗に280万事業所と言われていまして、ではそれは100%なの かというと、必ずしもそうではないのではないか。まだまだ何と言いますか、手続漏れ のところがあるということは、当局も認めておられるわけです。それで、こういう新法 ができて上乗せすると未手続のところは、それからも逃れるということが、来年度から 行われると、これはなかなか公平の問題から考えてもおかしいのではないかという問題 にまで発展しかねないと心配をいたします。 ○労災管理課長   労災保険そのものに対する不信感が増えないように、今回はきちんとやってまいりた いという考え方です。 ○佐藤委員   もう1つです。私はやはり広く浅くと、それから第2段階といいますか、上乗せとい われている言葉を使って盛んにいま国会でも言われていますが、検討委員会を作られる のはそれでいいと思うのです。しかし、環境委員会で決められていくと、それはそれで 権威のある委員会だろうと思うのですが、誰が見ても公平な負担を求めているのかなど について、チェックがなかなかかかりにくいのではないかと心配しているのです。その 辺はどうなのでしょうか。 ○労災管理課長   どう公平を考えるかという問題は大変重要です。したがって、実は政府の中でもまだ 十分方針を決めきれていない。非常に慎重に検討する必要がある。その際にはやはり有 識者の方あるいは関係団体の方にも入っていただいて、これは慎重に決める必要がある のだという方針で動いていると聞いています。そういう意味では、1つはやはり責任が 重い事業主から多くいただく。これは公平の観点からいって、当然だろうと思っていま す。ただ、その一方で、環境省は水俣病のときの非常に苦い教訓があります。チッソの ように企業そのものが倒れてしまう。チッソについてはいまでも熊本県がかなりの借金 を抱えている。要するに貸した金を取り返せないような状況になっています。その辺に ついても返済を猶予する形になっています。企業を倒してしまっては、十分な補償を取 れなくなってしまう。したがって、その辺の兼ね合いをどう考えるのか、非常に難しい 点もあるわけです。そこを十分考えながら、環境省でご検討いただいて、これは大変恐 縮ですが、やはり一般住民の関係ですので、環境省が主管の部分ですから、審議会なり にきちんとかけた上で決めていく方針だとは聞いています。私どもとしてもいまいろい ろなご意見がありましたが、そういったものは関係各省の会議がありますので、きちん とした意見としてお伝えはいたします。 ○佐藤委員   あまりお話をするとややこしくなりますが、何か国会のお話を聞いていますと、非常 に早いテンポで、補正予算も絡んでいますから、短時間の質疑で終わっていってしまう。 法案そのものも5年以内の見直しと非常に長期にわたっています。以内だから、2年も 3年もあるのかもしれませんが、少し拙速過ぎないかと思うところがあります。ここは そういうことを議論する場所ではないと、また言われることになりますが、しかし例え ば認定の問題などになると、厚生労働省の役割は大きいと思うのです。また、指定疾病 については政令で定めることになるのでしょうが、これは一体どこまで取ってくれるの かについて、かなり関係者の間では不安が広がっている。そういったことについて、適 切に環境省にお伝え願います。 ○労災管理課長   わかりました。一応昨日来審議がありまして、その中で小池環境大臣がこの政令につ いては今後きちんと検討したいと答弁をされています。少なくとも中皮腫、肺癌だけに いま限ってしまうとは決めていないという答弁をされています。お伺いしたご意見も含 めてお伝えします。 ○須賀委員   確認しますが、この政令は環境省の政令となるのですね。 ○労災管理課長   政府全体で決めるわけですが、主管は環境省です。環境省が中心になってお決めにな ると思います。その際には法案の中でも環境審議会で案はご議論いただくという仕組み にはなっています。 ○須賀委員   先ほどご説明のあった有識者等からなる検討会というのは、いまもう動いているので すか。 ○労災管理課長   いや、これはまだ動いていません。有識者についてはいろいろ推薦をいただいた上で やろうと聞いています。まだメンバーは全部確定していないと聞いています。また、確 定次第、情報が私どもに入ればお知らせをします。 ○佐藤委員   日本は税金は法定主義ということになっています。労災保険料もこのように決まって いくわけですが、この拠出金はいったい何に属するのですか。よくわからないのです。 いままでこういう例はあるのでしょうか。 ○労災管理課長   全くありません。全く新しくできて、まさにアスベストといういままでなかった健康 被害について、こういう形しかないと政府の中で智恵を絞って出てきたものです。した がって、これが何に属するのかと言われると、前例がありませんので、まさにこういう 拠出金というものだとしかお答えようはない。 ○佐藤委員   当然、これは罰則が付くのでしょうね。 ○労災管理課長   これは基本的には労災保険と同じように徴収システムでやりますので、払わなければ 強制徴収ということがありますが、できるだけ理解を得て、きちんと周知広報をして、 気持よく払っていただくように考えています。 ○佐藤委員   くどいようですが、平成18年度の労働保険料の第1期分を徴収するときから、徴収す るということはないのでしょうね。 ○労災管理課長   これは費用の徴収の施行期日が3枚目に、費用の徴収については平成19年4月1日か ら施行、になっています。企業からいただくのは平成19年度からです。したがって、先 ほど申しましたように、平成18年度前半のできるだけ早い時期にいろいろ検討した上で、 中身を詰めて、平成19年度からいただくことを考えています。 ○部会長   ほかにご意見はないでしょうか。 ○吉田氏(寺田委員代理)   複数事業場のベースたる賃金についての検討会などの話は、傍聴したときに話が出た のですが、それは4月1日には間に合うようにはされるのですか。 ○労災管理課長   こちらもできるだけ速やかにやりたいと思います。ただ、あちらはまず賃金の実態を 調査した上での運びになったと思いますが、したがってどういう形で調査をするかを私 どもで詰めた上で、また皆さん方にご説明をしてお諮りします。ただ、労災隠しなど、 重要な問題がありますので、何を先にやるか。そこはできるだけ早くやりたいと思って います。よろしくお願いいたします。 ○ 部会長   ほかにご意見ございませんでしたら、改定案について準備していただくことでよろし いでしょうか。   (異議なしの声) ○ 部会長   改定案について承認されましたので、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規 則の一部を改正する省令案要綱」についての諮問に移らせていただきます。事務局から 説明をお願いします。   (要綱配付) ○労災保険財政数理室長   いまお配りいたしました省令案要綱について、室長補佐より読み上げさせていただき ます。 ○ 室長補佐   それでは読み上げます。労働政策審議会会長管野和夫殿、別紙「労働保険の保険料の 徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」について、貴会の意見を求 める。平成18年1月30日、厚生労働大臣川崎二郎。  (別紙)労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要 綱。  第1、労災保険率の改正等。1、労災保険率を、別添1のとおり改正するものとする こと。2、非業務災害率を、1,000分の0.8(現行1,000分の0.9)とするものとするこ と。  第2、労務費率の改正。請負による建設の事業に係る賃金総額の算定に当たり請負金 額に乗ずる率(労務費率)を、別添2のとおり改正するものとすること。  第3、特別加入保険料率の改正。一人親方等の特別加入に係る第2種特別加入保険料 率を、別添3のとおり改正するものとすること。  第4、施行期日等。1、この省令は、平成18年4月1日から施行するものとすること。 2、この省令の施行に関し、必要な経過措置を定めるものとすること。  別添1以下につきましては、改正部分の現行と改正案ですので、読み上げを省略させ ていただきます。以上です。 ○部会長   ありがとうございました。ただいまの省令案要綱につきまして、ご意見、ご質問があ れば承ります。 ○須賀委員   いま読み上げられました第4の2のところの必要な経過措置というのは、どのような ことが想定できるのでしょうか。 ○労災保険財政数理室長   1つは例えば、有期事業につきまして、4月1日の時点でもうすでに保険関係が成立 している、逆に言えば、3月31日以前に事業が開始になっている事業については、従前 の料率を適用する、そういうような経過措置です。 ○平山委員   いまご説明のあった件そのものは、要綱案にされて先ほどご説明があったものですね。 こういう形になるのだと思いますが、先ほどの中で、労働福祉事業について、今回1.5 から1.4に料率を改定して、今後とも徹底して見直しをしていきますとありました。そ れはそれで重たく受け止めていますし、もちろんこれにそういうことが書かれ、表に出 ることはないと思いますが、福祉事業の効率化、削減については、先ほどの説明を是非 進めていただきたいという気持がありますことを、この分科会での発言として留めてお いていただきたいと思います。 ○紀陸委員   諮問の件に関しては、私どもは使用者側委員で事前にコンセンサスを取っていたので、 申し上げます。諮問の案の内容につきまして、使用者側委員としては了承するというこ とです。実際に13業種引き上げということであります。いろいろな個別な業界としては 意見があろうかと思いますが、一定の激変の緩和の措置が講じられていることも勘案し て、やむなくではありますが、諮問案全体として了承申し上げたいというのが使側の一 致した意見です。それだけまず冒頭に申し上げます。  ただし、いま平山委員からお話がありましたように、労働福祉事業費が平成元年から 17年間ずっと1.5厘で動かさずに設定されていました。今回全体的に7.4から7.0に下 がりますが、分母がどんどん減ってきているわけです。この1.5の重みが逆に肥大化し ているのだと思うのです。実は1.5厘というのは7.4の時代も7.0の時代も、丸めれば、 やはり20%なのです。いま申し上げた繰り返しになりますが、それだけ逆に労福事業の 重みというのですか、それは使側として年次を経過すればするほど重く感じることにな らざるを得ないと思います。もちろん落差はありますが、いろいろな事業で相当に事故 率の削減には取り組んできていますから、その点は使側としても重ねて主張をしてまい りたいと思います。  特に本来、事業の中身はいろいろな事業がありますが、必要なものを絞っていく。い ろいろな観点が必要かと思うのですが、事業内容をきちんと精査した上で、引き続き今 後も労福事業の見直しという点、特に本当の削減の意味も含めてと、ここを強く主張申 し上げたいと思います。そういう姿勢で引き続き検討を要望させていただきたいと存じ ます。以上です。 ○部会長   ほかにご意見はありませんでしょうか。 ○紀陸委員   もう1点ですが、これは規制改革会議などからも出ていますが、資料の問題、情報提 供なのです。前から比べると、出せるのは出していただいていると思うのですが、いろ いろな意味でPDCの問題がこの件に限らず、大きな流れになっています。いろいろな データをオープンにしていただきたいという点を最後にお願い申し上げます。 ○労災管理課長   その点は今後配慮していきます。 ○ 部会長   それでは諮問のあった件につきまして、当部会としては妥当である旨、労働条件分科 会に報告したいと考えますが、いかがでしょうか。   (異議なしの声) ○ 部会長   それでは、そのようにさせていただきます。報告文につきましては部会長にご一任い ただくということでよろしいでしょうか。   (異議なしの声) ○ 部会長   それでは、そのようにさせていただきたいと思います。では、本日の部会はこれで終 了させていただきますが、本日の議事録の署名委員につきましては労働者側代表として 須賀委員、使用者代表として下永吉委員にお願いします。本日はどうもお忙しい中あり がとうございました。     照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係 電話03-5253-1111(内線5436)