06/01/24 石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会 第4回議事録 第4回石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会 1 開催日時及び場所  開催日時:平成18年1月24日(火) 午後3時30分から午後5時30分まで  開催場所:中央合同庁舎第5号館専用第18・19・20会議室 2 出席者  医学専門家:審良正則、井内康輝、岸本卓巳、        神山宣彦、三浦溥太郎、森永謙二  厚生労働省:森山寛、明治俊平、只野祐、天野敬他  環 境 省:滝澤秀次郎、寺田達志、森谷賢、俵木登美子、天本健司他 3 議事内容 ○職業病認定対策室長補佐(天野)  定刻になりましたので、第4回石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会 を開催します。本日、ご参集いただきました委員の皆様におかれましては、大変お忙し い中ありがとうございます。また、当検討会は原則として公開としていますが、傍聴さ れる方におかれましては別途配付してあります留意事項をよくお読みの上、会議の間は これらの事項を守って傍聴いただくよう、お願いを申し上げます。  それでは座長、よろしくお願い申し上げます。 ○森永座長   今回で第4回目になりますが、今回の配付資料の確認を事務局からお願いします。 ○職業病認定対策室長補佐  お手元の議事次第の4「提出資料」として掲げています。本日は、7つの資料を提出 しています。資料1は、第1回検討会から提出している検討事項です。資料2は、第2 回及び第3回検討会についてまとめたメモです。第3回の検討会で議論した部分は、下 線で引いてあるところです。資料3、資料4、資料5は、良性石綿胸水あるいはびまん 性胸膜肥厚などの胸膜疾患にかかる海外の文献です。資料6は、じん肺診査ハンドブッ クから本日の議論に関係する部分を抜粋したものです。資料7は、本検討会の報告書の 骨子(案)です。配付資料は以上です。 ○森永座長  皆さん、資料はお揃いですか。それでは、前回の検討会の議論のまとめを事務局から お願いします。前々回のものもありますが、前回のものを中心によろしくお願いします。 ○保健業務室長(俵木)  資料2の第2回、第3回検討会のメモに沿ってご報告いたします。第3回検討会では、 第2回検討会でご議論をいただきました肺がんについて、議論の経過を踏まえてもう一 度確認をいただきながら、再度ご検討いただいたものです。第3回検討会でご議論いた だいた点を踏まえて、下線の部分を追記していますので、そこを中心にご報告します。 肺がんの2つ目のポイントである、肺がん発症における喫煙と石綿の役割について、2 つ目の項目として中皮腫は石綿が原因といってよいが、肺がんについては喫煙が最も大 きなリスクファクターであり、石綿ばく露を受けた肺がんも、その多くは喫煙者でもあ ることから、中皮腫のように石綿と肺がんは特異的関係にあるということはできないと いう資料のご紹介がありました。また北欧では、男性の80%、女性の70%の肺がんは喫 煙が原因で発症しているというご紹介がありました。  3つ目の石綿ばく露による肺がんと判断するリスクの程度について、たばこによる肺 がんなど、石綿以外の原因による肺がんを鑑別できない以上、石綿を原因とする肺がん 発症の相対リスクが2以上となるばく露量を、石綿ばく露による肺がん発症であると見 なす目安として考えるべきであるという確認がありました。4つ目の肺がん発症リスク が2倍になるというばく露量と、その指標についてのご議論ですが、(4−1)が前回ご 議論いただいた部分です。画像所見による指標について、結論的には以下のいずれの要 件も満たす原発性肺がんは、発症リスクが2倍以上と見なされることから石綿による肺 がんと判断できるとされました。  その2つの条件ですが、胸部エックス線または胸部CTで明らかな胸膜プラークがあ ること。かつ、胸部エックス線写真の像で、じん肺法に定める第1型以上と同様の所見 があり、かつ、胸部CT上においても肺線維化所見を認めること。このご議論は、3つ 目の項目で、職業ばく露歴がはっきりしない者を含む住民健診受診者を対象とした信頼 できる疫学研究において、画像上の明確な胸膜プラークがある人の肺がんの発症リスク は1.4倍になるとしている。一方、画像上の明確な胸膜プラークがあり、かつ、じん肺 法に定める所見第1型以上の肺線維化所見がある人の肺がん発症リスクは2.3倍になる としている。ただし、これは線維化した肺から肺がんが発症したことを意味するもので はないことに留意する必要があるということです。  (4−2)は、職業歴による指標についてです。追加として石綿ばく露作業従事歴10 年以上であれば、石綿25本/ml×年のばく露量であり、肺がんの発症リスクが2倍にな るとみなされると確認がありました。1つ目の項目として、2倍の肺がん発症リスクに 相当するばく露としては石綿セメント製造業では21〜303本/ml×年、石綿紡織製造業で は24〜132本/ml×年、石綿断熱材製造業では22〜50本/ml×年と職業別にさまざまな報 告があるが、国際的には25本/ml×年として広く認められていることが報告されました。  なお、ここで言う「従事期間1年」とは、常時当該作業に従事した場合を指している として、しかし石綿作業の内容、作業時間、頻度によってもばく露の程度が異なるため、 発症リスクが2倍であると判断するために必要な従事期間は原則10年以上とし、それに 満たないものは作業内容等から個別に判断する必要があるとされました。  昭和46年から屋内における石綿取扱作業については、作業環境測定が義務づけられて おり、作業環境測定結果がきちんと保存されている場合は、その結果を参考とすること はよい。現在発生している肺がんは、作業環境管理が必ずしも良好でなかった30年〜40 年前に最初のばく露をしたものであることから、石綿ばく露作業歴10年以上であれば肺 がんの発症リスクが2倍になるとして良いが、1980年代以降、少なくとも屋内作業にお いては作業環境中の石綿濃度は低下しており、今後石綿25本/ml×年という累積ばく露 量での評価に向けて検討すべきであるというご意見がありました。  (4−3)は、組織所見及び気管支肺胞洗浄液所見による指標についてです。第2回 検討会で乾燥肺1g当たりの石綿繊維として200万本、または石綿小体として5,000本、 または気管支肺胞洗浄液1mlあたり5本以上の石綿小体が石綿25本/ml×年のばく露に 相当するということでご議論がありました。それの参考として2つ目の項目に、平成11 年度から平成13年度における石綿による肺がんの労災認定事例56例について分析した ところ、そのほとんどが石綿肺所見、胸膜プラーク所見という画像所見があることを根 拠に認定しており、これらの画像所見がなく、石綿小体の個数の計測データだけを根拠 に認定した例は一例だけであったということで、臨床の現場においては石綿ばく露につ いて医学的な証拠を得る場合、まずは画像所見を活用し、それでも得られない場合に侵 襲的な手技を要する石綿小体の数の測定を行っているのが現実である。  5つ目の石綿ばく露所見の測定方法です。2つ目の項目として、石綿小体の数の測定 よりは、電子顕微鏡による石綿繊維の測定を行う方が精度が高いが、この電子顕微鏡に よる石綿繊維の測定は高度な技術のため、測定者によって測定結果にばらつきがあるこ とが多く、また機器の数も少ないことから、測定方法の中心的なものとして位置づける のは困難であるというお話がありました。同じ項目の下から2つ目の項目に、石綿小体 は角閃石系石綿のばく露の良い指標であるが、白石綿は角閃石系の石綿繊維と比べ、肺 内に蓄積しにくいとされ、実際のばく露量とずれを生じる可能性があるが、現時点では 当該蓄積に係る差異を定量的に評価する科学的知見がないことから、石綿繊維の種類ご との判断基準を示すことはできないとされました。  6つ目の一般環境ばく露による肺がんの発症についてです。かつては、一般的に石綿 関連施設や石綿鉱山の周囲における空気中の石綿濃度は、現在よりも高かった可能性が あることから、周辺住民では胸膜プラーク有所見者や中皮腫患者が発生し得るが、現時 点の知見ではこのような周辺住民に2倍以上の肺がんの発症リスクが観察されたという 証拠はこれまでにはない。今後の動向を注視する必要がある。  7つ目は、潜伏期間についてです。石綿による肺がんは、その多くがばく露開始から 発症までが30〜40年程度といった、潜伏期間の長い疾患である。石綿による肺がんは、 ばく露開始から発症までが少なくとも10年以上、その多くは30〜40年程度の潜伏期間 の長い疾患である。  8つ目の予後について、一般に肺がんは非常に予後が悪い疾患であり、5年生存率は 13%以下の非常に予後の悪い疾患であるということでした。  また、石綿肺について一部ご議論がありまして、石綿肺を形成するに足る石綿ばく露 量について、石綿肺は高濃度ばく露によって発症することが知られており、一般環境に おける発症の報告例はなく、職業性のばく露によって発症している。職業性のばく露以 外で発症するとすれば、極めて特異なケースに限られるであろうと考えられるが、今後、 情報を収集する必要がある。  クボタの神崎工場周辺例で石綿肺が出たという症例が3例あったということでしたが、 それぞれ石灰化した胸膜プラークがあるだけで、肺線維化所見はなかったというご報告 がありまして、近隣ばく露では発症することは考えにくく、あったとしても重症の肺線 維症ではないだろうということでした。潜伏期間は、石綿肺特有の不整形陰影はばく露 後10年以上経過して所見が現れる。また、予後についてはじん肺法に定める第1型の石 綿肺は、それだけでは肺機能や生活の質が大きく低下し、援助が必要な状況になってい る状態ではないというお話がありました。以上です。 ○森永座長  委員の先生方、このまとめに対して補足やご修正の意見はありますか。前回は、肺が んのリスクについて議論し、石綿肺のリスクについて触れていなかったのですが、前回 の配付資料の5の536頁の左側から下のほうにRoggliとSandersの論文があります。こ れによると、彼らの調査した石綿肺所見のある70症例では、乾燥肺1gあたり2.5万本 以上のアスベストの繊維の濃度があったという記載があります。525頁の左のいちばん 上から2行目で、Wilkinsonの論文ではILOの基準でいうところの1/0以上の石綿肺 が認められる場合の肺がんの発症リスクは2.03倍で、0/1は1.56倍という報告があり ます。前回の検討会では石綿肺に合併した肺がんのところで議論に触れていませんでし たが、欧米では石綿肺の所見があればこれは肺がんのリスクは2倍以上と考えるのが妥 当であるから、これまでの石綿肺1型以上の石綿肺に合併した肺がんというのは、当然 2倍以上のリスクがあって補償の対象にすべきだというこれまでの認定基準がは妥当で あるということになると思います。肺がんの議論は、これで大体終わったと思いますの、 石綿肺の話がまだ途中だったのと、残る2つの疾患について議論を進めていきたいと思 います。  石綿肺は、通常は一般環境ばく露では起こり得ないということですが、石綿肺になっ たからといって、すべての石綿肺の患者が労災補償の対象となるわけではありませんそ こで、現在のじん肺法における石綿肺の取扱いについて、事務局から説明をお願いでき ますか。 ○職業病認定対策室長(只野)  資料6の109頁の真ん中に表があります。じん肺法では管理1、管理2、管理3のイ、 ロ、管理4に分けていまして、管理1はじん肺の所見がないと認められるもの。管理2 はエックス線写真の像が第1型で、じん肺による著しい肺機能障害がないと認められる もの。管理3のイは、第2型でじん肺による著しい肺機能障害がないと認められるもの。 管理3のロは、エックス線写真の像が第3型または第4型で、じん肺による著しい肺機 能障害がないと認められるもの。管理4は、エックス線写真の像が第4型と認められる もの。あるいは、エックス線写真の像が第1型、第2型、第3型、又は第4型で、じん 肺により著しい肺機能障害があると認められるものとなっていまして、労災保険では管 理4を療養補償給付の対象としています。  ここの部分は例えば119頁を見ていただければわかります。管理1はじん肺の所見が ないわけですから、就業上の特別の措置はないわけです。管理2あるいは管理3のイと 言われた人については、粉じんばく露の低減措置ということでじん肺の進展を防止する ための措置を取られていまして、管理3のイまたは管理3のロになった場合は作業転換 を勧奨される場合がある。3のロで少し進んだ方については、作業転換の義務がありま して、管理4になりまして療養を要するという構成になっています。  先ほど申し上げましたように、管理2はじん肺の写真の像が第1型ということですが、 これはどういう方かというと、36頁に12階尺度と書いてありますが、0/0から始まって 1/0になって、初めて第1型と判定することになります。この第1型になると管理2と いう形になって、ここで初めてじん肺所見ありという判断をして、先ほど申し上げまし たように症状が進めば粉じんの低減措置あるいは作業の転換、さらには療養を要すると いう段階を追っています。以上です。 ○森永座長  石綿肺についてこのように管理区分の2から4まで分かれており、それぞれ程度の差 があるわけですが、大体、管理2型、管理3型になるとかなり予後は悪いという経験は あるのですが、どうでしょうか。岸本委員、何かご意見はありますか。 ○岸本委員  1型では、ほとんど自覚症状もないですが、2型以上になると肺の容量が減ってきて 肺活量が減りますから、労作時の呼吸困難等の症状がでてくることが多くなるため、病 院に通院する方が多いと思います。 ○森永座長  どうでしょうか。一般に、肺機能障害を意識し始める2型から3型というのは、10年 ぐらいの経過で進んでいく可能性はありますが、軽い石綿肺は、すぐには悪くなるわけ ではないですよね。 ○岸本委員  そうですね。 ○森永座長  事務局に確認ですが、このじん肺法の施行は何年からでしたか。 ○職業病認定対策室長  昭和35年です。 ○森永座長  中小企業の事業主の方の特別加入制度というのはいつからですか。 ○職業病認定対策室長  昭和40年からです。 ○森永座長  この石綿肺の管理区分の決定は、どこで行いますか。 ○職業病認定対策室長  都道府県労働局長が管理区分を決定することになります。一般に、事業場で粉じん作 業に従事する人に対して、じん肺特殊健康診断というのを実施しまして、有所見という 場合にはその結果を添えて都道府県労働局長の所にじん肺管理区分の決定申請というの をしまして、その申請を受けた都道府県労働局長は、各都道府県に地方じん肺診査医と いう医師を置いていまして、その方が標準フィルムと見合わせて先ほどのPR区分が 1/0とか1/1という判断をして、この方のじん肺管理区分の決定をしていく仕組みにな っています。 ○森永座長  ありがとうございます。石綿肺の診断は、基本的には職歴を確認して、画像で特に胸 部エックス線で1/0以上の所見があるということで診断をしているということです。な お、実際に石綿肺というのは肺実質の変化を言う、英語ではプロモナリーアスベストで ありますが、プリューラルアスベストーシスということを言う研究者もおられますが、 胸膜のアスベストーシスという表現ですが、これは石綿肺とは違うということですよね。 三浦先生は、ご存じだと思います。 ○三浦委員  一時期、特にヨーロッパを中心にプリューラルアスベストーシス(pleural asbestosis)という言葉が使われたことがありますが、現在はアスベストーシスはパル モナリー(pulmonary)と断らなくても、すべて肺実質の病変を表わすことになりました ので、胸膜だけにアスベストが蓄積することはありません。いまプリューラルアスベス トーシス、つまり胸膜アスベストーシスという言葉は死語になっています。紛らわしい ので、もう使わないようにというのをアメリカから勧告が出されています。 ○森永座長  びまん性の胸膜肥厚や胸膜プラークも合わせて、プリューラルアスベストーシスとい うことを言ったグループもあるのですが、20年前当時はいろいろな石綿関連疾患の概念 がはっきりしていませんでしたが、現在では良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚、胸膜プ ラークがそれぞれ独立した疾患名として確立していますので、このようなプリューラル アスベストーシスというような表現で呼ぶのは間違いである。誤解を与えかねない。し かし、いまでもなおかつプラークを含めてプリューラルアスベストーシスと誤用をして いる人もおられるということで、プラークもアスベストーシスだと言う人もいますが、 それは現在ではそういう使い方は誤っているという考え方でよろしいですね。 ○三浦委員  そうですね。具体的には昔にプリューラルアスベストーシスと言われていたものが、 きれいに3つに分かれている。実際にはびまん性胸膜肥厚と重なるところがありますが、 いま森永座長が言われたような状態です。 ○岸本委員  いま三浦委員が言われましたように、プリューラルアスベストーシスは日本の先生方 もかなり間違っておられる方が多いと思います。アスベストーシスというのは胸膜プラ ークも含めて、そうだと考えていらっしゃる方が多いと思います。クボタの神崎工場の 周辺の近隣ばく露で病変が出た方も、アスベストーシスということで三例を見せていた だいたのですが、すべて石灰化胸膜プラークがあるだけ肺の実質病変はありませんでし た。プリューラルアスベストーシスがありということで石綿肺(プルモナリーアスベス トーシス)はなかったということです。我々に紹介される方も、アスベストーシスがあ るから見てほしいということで紹介をよくされますが、肺の実質に病変がなくて胸膜病 変だけということがありますので、これを機会に言葉をきちんと使うようにしたほうが いいのではないかと思います。 ○森永座長  ただ、プラークがあると肺実質の変化を見落としやすいことがありますね。審良先生、 そうですよね。 ○審良委員  プラークがあると、隠される可能性はあります。見にくいというか肺野の変化は、C Tなどできちんと確認しないと難しいかもしれないですね。 ○森永座長  そういう場合も、積極的にCTで確認するほうがいいということですね。石綿肺は、 職業歴がないと基本的には診断ができないような疾患ですから、よく似たような疾患は いくらでもあるわけですから、職業歴の確認が非常に大事になることと、もう1つはこ れも累積ばく露量が問題であって、ただの従事ばく露期間が問題ではないということで すね。それはよろしいですね。環境省・厚生労働省のウェブサイトの石綿Q&Aでは、 石綿肺はばく露期間が10年以上で起こると書いています。石綿肺は、ばく露期間ではな く、累積ばく露量が問題です。少なくとも7月のバージョンでは、ばく露期間が10年以 上発生すると書いてありますが、この検討会の意見を参考にして石綿Q&Aを直してい ただきたいと思います。石綿肺についての議論は、このぐらいでよろしいでしょうか。 ○職業病認定対策室長  私の先ほどの管理区分の説明で、じん肺という形でご説明をしたつもりですが、1型、 2型というのはじん肺として、じん肺の中の石綿肺だったりけい肺だったりいろいろな ものがあるわけですが、それをすべて合わせてじん肺という形にしていまして、石綿肺 の管理1型という決定をするわけではありません。座長は当然ご存じだと思いますが、 議事録の関係もありますので、じん肺ということでやっています。ですから、確かに陰 影の特徴などもあるようですが、厳密に区別は私どものほうでしていない。もちろん、 その中で石綿作業従事歴等を聞いて、その上で石綿ばく露作業をずいぶんやっておられ て、このじん肺管理区分が例えば管理2ということならば、これは石綿肺ですねという 形でやっていまして、その上で前回の議論に絡みますが、そういう方々に肺がんが発症 した場合は、石綿肺に発症した肺がんだということで決定しています。 ○森永座長  実際は、じん肺法の中でいろいろなじん肺があって、じん肺法ではじん肺の種類は問 わないことになっていますが、石綿肺の場合は石綿ばく露の職業歴があるということを もって、石綿肺という決定をするということですよね。 ○職業病認定対策室長  つまり、職業ばく露歴の情報がないと石綿肺ということが言えない。 ○森永座長  逆に、職業歴のあることをもって石綿肺としているということですね。 ○職業病認定対策室長  そういうことです。 ○森永座長  ほかに何かありますか。 ○神山委員  追加の質問です。岸本先生がいいかどうかはわかりませんが、クボタの周辺で石綿肺、 いわゆるプロモナリーアスベストーシスがプラークがある人に認められなかったという ことですが、中皮腫の患者は現実に出ていて、その中皮腫の患者にはプロモナリーアス ベストーシスは認められていないのですか。 ○岸本委員  私は、中皮腫の患者さんは診ていません。中皮腫が出ていない患者でアスベストーシ スだと診断をされている方が3人いらっしゃいまして、その方を診てほしいということ で紹介をされました。中皮腫の患者にアスベストーシスがあったかどうかはわかりませ ん。 ○井内委員  1つよろしいですか。従来のじん肺のレントゲン写真の判定基準をそのまま一般環境 ばく露の方のアスベストばく露状況の判断に用いると、ほとんど所見が出てこなくなる のではないかと思います。この前に申し上げたのは、石綿肺というのは呼吸細気管支レ ベルから起こってくる線維化の微弱な程度の段階で、何かCTあたりで特異な所見はな いのでしょうかと。もし、それを掴まえることができるならば、アスベストばく露の指 標として書き加えていくことも可能ではないかという提案をしたつもりだったのですが、 それは結局難しいということでしょうか。詳しい先生だったら診られるけれども、そう ではない先生では無理だとの議論がありましたが、結局一般化する基準としては大変難 しいということでしょうか。それに全例がCTを撮れるわけではありませんので、その 辺を見ていくことは不可能なのでしょうか。いまの神崎工場の例でも、プロマリアスベ ストーシスではないというのをどういうレベルで言っているかというあたりは、どうな のでしょうか。 ○森永座長  これは、いままでのじん肺法の並びでいきますと、胸部エックス線で1/0以上の所見 のある人を石綿肺と定義しているということですので、CTで何かの所見があった場合 でも、これは石綿肺とはしていないということです。 ○井内委員  じん肺法の基準でいえば、石綿肺にはならないわけですよね。 ○森永座長  そうですね。CTだけではならないです。 ○井内委員  アスベストによる線維化がないとは言えない。 ○森永座長  それは病理まで見ると、病理とレントゲンとではだいぶジスクレパンシーがあります よね。それこそCTは誰でも撮れるようになってきていますが、病理所見まではむしろ 取れないわけで、いまの国際的な基準でいう石綿肺というのは、やはり臨床的にレント ゲンで所見のある人を石綿肺と言うとの考えでいいと思います。 ○三浦委員  石綿肺には、病理学的な所見としてのグレードの段階がありますが、臨床的には最終 的に息切れを生じるのがいちばん大きなポイントです。HRCTでしかわからない程度 の所見で著しい息切れを生じるということは臨床的にはほとんど考えられないと私たち は思います。 ○森永座長  それは、臨床レベルの判断でいいのではないでしょうか。病理の立場からいうと、先 生の意見は理解できますが。 ○井内委員  もし、組織材料が出てくるようなチャンスがあった場合に、これは線維化があります よと判定できる方がいらっしゃるかもしれません。それは、臨床的に症状がないから駄 目だと言えるのかどうか。 ○三浦委員  疾患として考えた場合、それは対象外と考えていいと思います。将来、300年ぐらい 生きたら起きるかもしれませんよとは言えますが、私たちの経験ではエックス線写真で 1型程度ですと10年、20年待っても通常は著しい肺機能障害が起きるほどの進行はな いと考えています。先ほど森永座長が言いましたが、2型以上だと時間が経つと、10年 ぐらい経つと、もう1ランク上に行って著しい呼吸機能障害も生じる可能性があります よねというのは納得できますが、あるかないか程度の、しかも1型でもなおかつ低いレ ベルですと、まずない。もし起きてくれば、たばこの影響とかほかの影響がかなり生じ る。合併症は別です。それによって起きると私たちは考えています。臨床的にはです。 ○岸本委員  三浦委員のおっしゃられるとおりだと思います。先ほど申しましたように、1型の石 綿肺というのはほとんど自覚症状がないわけです。でも、1型のアスベスト肺(アスベ ストーシス)でもハニーカミングはHRCTで見るとあります。ですから、井内委員が おっしゃられた病理学的な変化はあると見ていいと思います。詳しい先生でしたら、も っとそれよりも線維化の弱いグレード1とか2とか、細気管支周囲の線維化だけの所見 をいまHRCTで見ることができると思いますが、それでは臨床的にはまず問題にはな ってこないので、我々もそういう患者をTBLBで検査をする機会がないというのが現 状ではないかと思います。 ○審良委員  胸部写真は病理に比べれば感度が低いので、胸部写真で映る程度というのは、実際の 肺病理の2割程度ぐらい落ちていると思います。それから、HRCTでは胸部写真より 感度が高いので、さらに病理の細かいところ、軽いのを拾うだけになると思います。む しろ、胸部写真でも1型で肺機能とのdiscrepancy(不一致)があるような人には、H RCTなどを撮ると逆に、その証拠がはっきりする可能性があります。 ○三浦委員  それは言えますね。胸部写真で1型だけれども、HRCTを撮ってみたらハニーカミ ングがあって、これは管理3であるというのはあります。 ○森永座長  病理とは確かに差がありますから。 ○井内委員  そういう埋め方をする例もあるかもしれないということは付記しておいて、これは全 く1型だからと切り捨てないで、もし症状があったり何かディスクロパンシーが肺機能 検査との間にあったりしたら、追加の検査をする判断材料としてそれを使うこともある ということで、納得いたします。 ○森永座長  1型でも、1/0と1/1と1/2はありますが、実際のところはだいぶ差があります。そ れをここで議論しても仕方がないので、一応石綿肺の話は終わりにしまして、良性石綿 胸水に話を移したいと思います。  良性石綿胸水については、資料3と資料5が用意されています。資料3の説明をして いただけますか。 ○三浦委員  資料3は、いまでも標準となっている良性石綿胸水の診断基準の基となったEplerの 最初のレポートです。良性石綿胸水というのは、良性というのはその逆に悪性胸水とい うのがありまして、中皮腫や肺がんによるがん性胸膜炎に対して、悪性でないという意 味の良性です。それが、まず一般的な説明としては大切なところです。  その次に、石綿胸水というものですから、原因がアスベストによるものである、石綿 によるものであることが大切です。ここがいちばん難しくて、胸水がたまる病気あるい は胸膜炎というのは、非常に多数あり、頻繁に生じます。今日も2人ほど診てきました が、そのくらいたくさんある。肺炎と同じ数か少し少ないかというぐらいの頻度で起き る病気です。ですから、それが石綿によって起きた胸水であると診断するというのは、 非常に難しいことです。資料3は1982年の文献ですが、これがいまだにそのまま残って いるのは、良性石綿胸水はすべて除外診断であるというのが基本にあります。一応ここ に診断基準が4項目ありまして、1つ目は胸水が確認されることです。これは、実際に 臨床的に胸水を確認するという方法と、健康診断等で経年的に見ていきますと、間で胸 水がたまった跡というのがわかりますから、自覚症状がないまま胸水が貯留し、自覚症 状がないまま消失したという跡を残している場合には、それが大体カウントされます。 ただ、そこの時点では臨床的な治療とかは全く不必要ですが、そういうものがとにかく 何らかの形で認められるというのが1つです。  2つ目は、その原因となる疾患がアスベスト以外に明らかなものが全部除外できる。 結核性胸膜炎であったりウイルス性の疾患に伴う胸水だったり、肺炎に伴う胸水だった り膠原病に伴う胸水だったりといろいろありますが、そういうものがすべて否定できる。 特にその中で悪性の胸水、つまりがん性胸膜炎がすべて否定できるというのが条件にな ります。4つ目は、明らかな石綿ばく露歴がある。この4つをもって診断基準とします が、除外診断ですので1982年の時点ですと悪性胸水、要するにがん性胸膜炎ですが、実 は、胆嚢がんとかどこかから大腸がんが飛んできて、がん性胸膜炎が起きて、それによ って細胞診は出ないけれども、遠々と胸水がたまっている。そういうのが3年経たない と区別できませんよというのが、1982年の時点のEplerの論文に書かれている原則です。 ですから、繰り返しになりますが、1982年に提唱された定義では、まず明らかな石綿ば く露歴があること。胸水がたまること。そして、胸水の原因が石綿以外に全部除外にで きること。なおかつその中でいちばん難しいのが悪性胸水ですので、悪性胸水を除外す るには3年待ちなさい。これが1982年の時点の良性石綿胸水についての結論です。 ○森永座長  除外診断ということが、傍聴されている方たちにはなかなかわかりにくいかと思いま す。 ○三浦委員  積極的に、この所見があったらアスベストによる胸水ですよ。ほかの結核性胸膜炎で はないですよ。あるいは、ほかの全く違う原因、例えばリウマチによる胸水ではないで すよ。そういう積極的な、これがあればアスベストによる胸水ですという診断できるも のが何もないということです。 ○森永座長  どうでしょうか。結核性のものとか心不全とか、そういうものとの鑑別は比較的容易 にできますが、中皮腫は難しいですよね。3年というのは、おそらく中皮腫のことも考 えて3年という話になったのだと思います。 ○三浦委員  現実には3年というのはあまりにも長いので、いまでは画像診断が進歩していますか ら、いまは中皮腫を除けば1年でほとんどすべての転移性胸膜炎、がん性胸膜炎を起こ すような悪性疾患は見付かるだろう。ただし、中皮腫だけは2年ぐらい経って、やっと 初めて中皮腫だと診断できるものがありますので、中皮腫だけは例外なのですが、ほか は1年せめて2年もすれば、3年待たなくても診断できるだろうというのが大方の意見 です。ただし、きちんと画像診断をやっているということです。ほかの臓器の悪性腫瘍 について全く調べていなければ、診断の対象外となってしまいます。 ○森永座長  中皮腫であっても、いちばん最初に胸水がたまった原因が中皮腫によるものなのか、 本当に石綿による良性石綿胸水によるものなのかは、鑑別するのは非常に難しいですよ ね。中皮腫の場合は、むしろいちばん最初の胸水を調べても、がん細胞が見つからない ほうが多いわけでしょう。 ○三浦委員  がん細胞が見つかる確率はちょうど半分です。胸水がたまった場合の細胞診陽性率が 大体50%ぐらいで、50%は細胞診陰性ですから。 ○岸本委員  胸水が最初にたまったときに細胞診をすれば、いま三浦委員が言ったように50%ぐら い陽性が出るのですが、少し経った段階で細胞診をやっても胸水中に悪性細胞が出てこ ないのが中皮腫の1つの特徴で、なおかつ肉腫型というタイプの中皮腫は、ほとんど胸 水中に悪性細胞が出てこないです。  私も、1998年に17例の良性石綿胸水をフォローアップして、平均石綿ばく露期間が 27年で潜伏期間が34.5年という論文を書きました。この時点では中皮腫が出てきたの が1例だけだったのですが、その後約7年フォローアップしていると5例が中皮腫だっ たという症例があります。1例は、肺がんと中皮腫が同時にありまして、肺がんを手術 して喜んでいたら、胸水の原因は良性石綿胸水だろうと思っていたのが実は中皮腫の胸 水でありまして、肺がん術後、短期間で患者が亡くなったりということもありまして、 良性石綿胸水か中皮腫かというのは非常に鑑別が難しいと思います。中皮腫でも、CT で胸膜が厚くなってきている例は診断がしやすいのですが、それがほとんどない段階の 中皮腫は非常に診断が難しいので、中皮腫の早期診断が事実上難しい現段階にあっては、 アスベストばく露歴のある方に胸水がたまった場合には早期に胸腔鏡検査を行って、き ちんと診断をすべきではないかと思います。良性石綿胸水というのは除外診断、すなわ ちウエストバスケット的な診断名ですので、これを確定する意味では胸腔鏡検査を行っ て悪性胸膜中皮腫ではないと明らかにすることが、いちばんの鑑別診断だと思います。  肺がん等によるがん性胸膜炎というのは、胸水細胞診で悪性腫瘍細胞が出てくる確率 が非常に高いです。がん性胸膜炎になっている肺がんは予後が非常に悪いので、診断は 自明なのですが、早期の中皮腫というのは予後が決して悪いとは言えない。どの段階で 中皮腫なのかがわからない例は私も何例も経験をしています。実際、臨床の先生方は診 断がつかないからということで少し様子を見ようかとか、根拠はないけれども日本人は 結核性胸膜炎が多いから、結核療法を三者でやって効いたとか効かないとかという場合 も少なくないようです。良性石綿胸水というのは、自然に良くなってくる確率の高い病 気なものですから、我々がまだ知り得ないところの多い病気であることは間違いないと 思います。 ○職業病認定対策室長  お話を伺っていますと、良性石綿胸水は除外診断でもって確定させていくということ で、そして最後まで区別がつかないのが中皮腫であるとのことですね。だから、時間を 要するのだということのようですが、労災補償の立場からしますと、この良性石綿胸水 も労災補償の対象疾患としているわけです。それを3年待ってください、3年待って良 性石綿胸水と診断されれば、そのときに労災補償を受けることができますというのは、 私どもとしてはなかなか言いにくいことです。いまのご議論では、除外診断をすべきも のとして、例えばリウマチ性の胸膜炎、結核性の胸膜炎、心不全、あるいはがん性の胸 水といろいろなことが出ましたが、つまりそういったいま挙げられたような疾病を除外 していけば、残るのは良性石綿胸水と中皮腫というころとになりますが、そうなると、 どちらも石綿ばく露労働者に発症したのだとすれば、そこに業務起因性を認めることが できるわけですから、初めは良性石綿胸水で補償していて、例えば3年後に運悪く中皮 腫になったときは、そのときにまた別な診断名を付けて、その補償を続けていく形のほ うが労働者のためにもよいのではないかと思いますが、どうでしょうか。ですから、除 外診断がきちんとできればという前提です。初めにがん性の胸水とか、除外するための 必要最低限の期間があれば、残るはいま言った2つということに詰めきっていける種類 のものなのかどうなのかを教えていただければと思います。 ○森永座長  もう少し良性石綿胸水についての議論が出尽くしていないので、いちばん最後にそれ は検討するとして、まずはこの資料3が出されてきた理由は、良性石綿胸水に関する疫 学調査に関する論文は、これしかないのですよね。ほかに疫学調査で、良性石綿胸水の ことを調べた報告例はないということで、これが唯一報告例である。この報告でいきま すと、いちばん高濃度ばく露では良性石綿胸水の頻度は7%、中程度は3.7%、軽いば く露は0.2%ということで、一応量−反応関係はあるという疾患だという論文になって います。これ以上に、ほかにそういう疫学調査の報告がないということなので、それで これが古い論文だけれども、検討するためにここで改めて出されているということです。 そういうことですよね。 ○三浦委員  そうです。 ○森永座長  もう1つは潜伏期間の話です。資料5の556頁の真ん中のEpidemiologyに書いてあり ますが、最初はEplerの成績をそのまま引用していまして、5年が経ってからでも出る こともあるけれども、大体20年以内に出る。しかし、いろいろな報告では潜伏期間は 12年というものもあれば、30年というものもあるということが書かれてあります。量− 反応関係がありますから、少なくともプラークと同じような低濃度ばく露でも起こるか については、そういう知見はないと言っていいと思います。だから低濃職業ばく露では、 普通は起こり得ない疾患だというのがいままでのコンセンサスであります。  いままでの良性石綿胸水については、平成15年度の報告書(「石綿ばく露労働者に発 生した疾病の認定基準に関する検討会報告書」(石綿ばく露労働者に発生した疾病の認定 基準に関する検討会))ではどういうことが書いてあるかといいますと、33頁のいちば ん下に、石綿への職業ばく露により生じた良性石綿胸水及びびまん性胸膜肥厚で、著し い肺機能障害等に対して適切な療養が必要な事例については、労災補償の対象として考 慮すべきであるという提言をして、これらの疾患も労災補償の対象とするというふうに なった経緯があるということです。良性石綿胸水の程度ですが、非常に軽いものから重 たいものまでばらつきがありますよね。その点はどうでしょうか。岸本先生。 ○岸本委員  私が1998年に4年間に3回再発を繰り返した中皮腫の若年齢という論文を日本職 業・災害医学会会誌に出しているのですが、その方の場合は初回の胸水は発熱とともに 発症しまして、右側が3分の2以上、胸水で埋めつくされまして、呼吸困難と発熱が強 くて1カ月以上の入院が必要でした。そのほかの2回は胸水はたまったのですが非常に 少なくて、2回目はステロイド剤を2週間、10mg経口投与で改善をしています。3回目 は、もう何もせずに左側の胸水は消失したということで、同じ方に3回起こっても、こ れぐらい程度が違います。重症な方は、非常に炎症症状も強くて胸水の貯留量も多いと 思います。重症なものから外来で様子を見ることができるものまであるというのが事実 です。 ○森永座長  三浦先生、つまり軽いものは見逃しますよね。 ○三浦委員  それは先ほど言いましたが、年2回の定期的なエックス線写真を調べていて、その間 に本人が気付かないまま起きているというのは結構あります。実際にもう少し胸水が貯 留している方で、無症状なのだけれど、写真を撮ったら見つかったから病院に行きなさ いと言われて外来においでになる方もおられます。必ずしも自覚症状と平行してのこと ではないのです。軽い人はいっぱいいると思います。 ○森永座長  良性石綿胸水というのは除外診断が必要であるし、自覚症状のない人のほうがどちら かといえば多いし、要療養の方はごく一部に限られるということだと思うのです。問題 は、これから将来は、中皮腫の発生が非常に懸念されている状況ですから、胸水がたま ったときに、岸本委員がおっしゃるように、このときに胸腔鏡検査で中皮腫であるかど うかの検査をしないと、中皮腫の早期発見はできないですね。ですから、これを労災保 険で補償できるかどうかは別ですが、何かそういう手立てを考えたほうがいいのではな いかと思います。でないと、中皮腫の早期診断はできないですね。 ○三浦委員  そう思います。例えば石綿健康管理手帳を持っている方は、気管支ファイバースコー プは対象になるのです。だから、もしそういうことが可能なら、石綿ばく露が明らかで あって、なおかつ胸水がたまってきたときには、中皮腫を鑑別するために、気管支ファ イバースコープと同じように胸腔鏡検査ができることになればやりやすくなりますね。 ○岸本委員  そうですね。中皮腫は、必ずしも呼吸困難や胸痛の自覚症状があって通院するわけで はなくて、健康診断で胸水がたまっているということで、精密検査をしたら中皮腫だっ たという例もあるのです。本当に良性石綿胸水と中皮腫はオーバーラップするところが 多いので、気管支ファイバースコープがやれるのだったら、胸腔鏡も同じ形でやれるよ うになれば、もっと早期病変が検出されるのではないかと思います。 ○井内委員  たとえ胸腔鏡検査ができたとしても、早期病変が見つけられるかという問題も、まだ 残りますね。正直なところ、全視野をカバーしても、異常所見をどうつかむかはいつも 研究会などで議論になるのですが、適切な診断をつけるために、適切な場所の生検が行 われる確立があまり高くないのが現状で、おそらく胸腔鏡をやってもわからないけれど、 あとで中皮腫だったという例は、臨床の先生はご経験があるのではないかと思います。 胸腔鏡をやって見つかればいいけれど、見つからなければ、先ほどご議論があったよう に、あとで診断が変わっても仕方がないという立場は残しておかなければいけないのか なと思っています。 ○岸本委員  井内委員のおっしゃるとおりで、確かに胸腔鏡がすべてではない。私が先ほど言った 肺がんと同時発生例も、結果的には中皮腫を見落としていた可能性が高いと思います。 ただ、CTで見る壁側胸膜の病変よりも、胸腔鏡の方が肉眼で見るほうがよりわかりや すいのでと、どこがおかしいのか、ちょっと色調が違うとか、隆起しているというとこ ろはわかりやすいと思います。最初は我々もわからなかったのですが、よく観察してい ればどこを採取すればいいのかだんだん分かってきたように思うのです。 ○三浦委員  中皮腫の診断を胸腔鏡でやって、診断が確定できるのは全体の大体80%です。5人に 1人は、胸腔鏡をやっても診断がつかないのです。注意深く検査をしないともう少し少 なくて、3分の2ぐらいに減ります。それと、井内委員がおっしゃったように、胸腔鏡 では見えない部分が生じますから、それがいちばん大きい問題です。  もう1つは、中皮腫の発育進展していくスタイル、どこに腫瘍細胞が存在するかとい うことで、表面に浮き出ているときには、割合簡単に胸腔鏡で眼下に見えますから、そ れを取れば一発で済む。ところが、何となく隆起しているだけのこともあり、表面だけ 取っただけでは全く腫瘍細胞がない。上皮型中皮腫でも約半数はそのタイプですが、胸 腔鏡の回数を重ねればわかるところで、確診率もあがります。だけれど、見えない所は いまの胸腔鏡だけでは駄目で、もう少し技術的な改良が加えられないと、胸腔鏡だけで はできないということですね。それでも、ブラインドで刺して3分の1ですから、30% しかわからないのが80%わかれば、かなりの進歩であることは間違いない。気管支ファ イバースコープでも、見れば100%わかるかというと、末梢の腫瘍にうまく当たるか当 たらないかは、いいところでも5分の4ぐらいですから、似たようなものかなと私たち は考えます。 ○森永座長  しかし、良性石綿胸水については、治療法が特に定まっているわけではないのです。 資料5の558頁のDのTreatmentのところに、治療法はないということが書いてありま す。三浦委員や岸本委員は症例をたくさんご経験でしょうから、コメントをいただきた いのですが、大体は知らない間に水が引いていくということですが、まれにそうでない のもありますね。その辺り、先生方のご経験をお話していただきたいのです。 ○岸本委員   胸水が引かない場合には、遷延化して4年も5年もずっと貯留し続け、被包化胸水と いう状況になります。そうすると肺は縮んだままで、たとえ胸水が引いても伸びてこな い。それが片肺の場合だけなら呼吸機能障害にならないのですが、両肺になると肺活量 が落ちてきますので、慢性呼吸不全状態になるということもあります。すなわち、著し い呼吸機能障害が起こってくる場合があります。平成15年のときにも、著しい肺機能障 害があった場合には労災補償の対象ということで、本省に協議となっていますので、是 非そのようにしたほうがいいと思います。  では、こういう症例が多いのかというと、決して多いわけではないと思います。通常 の症例は、自覚症状がそれほど強くなく、もしくは全くない状態できて、自然に治って くる例が多いと思います。2、3カ月待っても胸水が引かない例、もしくは1カ月でも 引かない例に対して、プレドニンというステロイドホルモンを20〜30mg、2週間ほど飲 ませる症例があります。特に好酸球が胸水中に多い例では、かなり効果があります。大 体半分ぐらいはこれで消失します。これでも消失しない例は、ずっと遷延化する例もあ ります。最近、これで呼吸不全になった症例を5年間外来で診ていて、右の胸水は増え たり減ったりであまり変わらなかったのですが、左側に胸水が出て、それが横隔膜の癒 着を起こして呼吸不全になって、在宅酸素療法をした例もあります。  そういうことで、4年間に3回起こした症例もそうですが、この中に入院等の要療養 をされる方も10〜20%あることは間違いないけれども、予後は悪くないということです。 けれども、先ほどから話題に出ていますように、胸膜中皮腫との鑑別が非常に難しいと なれば、定期的に患者さんを経過観察する必要はあると思います。胸膜プラークよりも、 より問題が大きいと思いますので、健康管理手帳がいいのかどうかわかりませんが、是 非フォローアップをしていただければと思います。あとは、先ほど話題になった胸腔鏡 がやれると、胸膜中皮腫の早期事例が何例かは発見できるのではないかと思います。 ○森永座長  平均的見ると、どれくらい胸水がたまっている事例が多いのですか。 ○岸本委員  胸郭の半分ぐらいまでたまる例が約30%、むしろ少ない例のほうが多くて、3分の1 ぐらいが60%でしょうか。 ○三浦委員  期間は、長いほうは10カ月ぐらいたまっていますね。 ○岸本委員  そうですね。1〜10カ月、平均3カ月と書いてありますが、長い例では1年ぐらいた まって、それでなくなる例もあります。もっと早いのは1カ月ぐらいで消えます。4年 間に3回たまった例というのは、最初のときは6カ月以上水がたまって、非常に困った のですが、3回目は1カ月で綺麗になくなった経験があります。 ○三浦委員  1つは、治るけれども、また起こしてくるケースが非常に多いということですね。左 に起きて、次は右で、また左にと、左右交互に起きるとか両方繰り返すとか、再発が反 対側に起きることも結構あります。1つは治ったけれど、また起こすというのが少なか らずあるということです。  それから、大体10カ月ぐらいまでで一旦は治るのですが、中には長いこと水がたまり っ放しで治らないことも、ごくたまにあります。それが1つの特徴かなと思います。そ ういう長期に貯留し続ける患者さんは、治療が必要ですから、原因が全くわかりません から、繰り返し調べていくことしかないので、それで反対側に来れば、今度は呼吸障害 が起きるということだと思います。でも、半分以上は癒着を残して、前と比べれば何か あったのはわかるけれど、肺機能障害もひどくなくて、そのままそっくり治っていくと いうのも結構あります。 ○岸本委員  もう1つ追加なのですが、胸水が全くなくなったので、これは良性石綿胸水だったと 安心していますと、1年、2年経って、胸水を伴わない胸膜中皮腫が出てきた例が3例 あります。ですから、胸水がなくなったあとも、Eplerらは3年と言っていますが、フ ォローアップしていると中皮腫が突然出てくる例も、我々は経験しています。そういう 面では、一度良性石綿胸水と診断された方は、胸水がなくなったらもう大丈夫かという と、そうでもない場合があるので、やはり長期にわたってフォローアップをしていった ほうがいいのではないかと思います。  2年以上胸水がたまっている方は、胸水がある日突然なくなるかというと、なくなり ません。胸水が2年以上貯留していると、胸水を取っても肺は広がってきませんので、 慢性呼吸不全に移行する可能性を秘めています。もちろん、片側だけがわずかであれば いいのですが、両側になると下肺に胸水がたまりますから、横隔膜の運動がどうしても 障害されるとなると、安静時には呼吸困難はないけれど、労作時の呼吸困難が特徴のび まん性胸膜肥厚と似た形の呼吸不全が生じることもあります。ただ、そういう例が多い とは申しません。 ○森永座長  大体、これで良性石綿胸水の疾病の概念が理解できたと思うのですが、これまでの労 災の認定基準については、良性石綿胸水は認定基準が示されておらず、すべて本省協議 となっておりましたが、平成15年度の報告書では、良性石綿胸水の場合は、胸水が消失 せず遷延する場合や、胸水が消退した後でもびまん性胸膜肥厚を残す場合には肺機能の 障害が改善しないため、こういう著しい肺機能障害がある事例については労災補償の対 象とすべきだという提案がなされており、現実的にはそのような形で、本省で協議して 対処されているところです。これを、もう少し概念を広げて、1つは良性石綿胸水で非 常にたくさん胸水がたまってくるような事例については、その期間は働くこともできな いわけだから、補償の対象とすべきではないかという意見もあると思います。  もう1つは、療養を要しない軽度の良性石綿胸水の方でも、将来中皮腫が発症する可 能性があり、あるいは中皮腫のいちばん早期の症状であるかもわからないので、こうい う方には健康管理手帳を配付するといった手立てを考えるほうがいいのではないか。た だし、これは労災補償の話ではないので、これ以上この検討会で議論することはいたし ませんが、何かそういうことを考えるべきではないかと思います。  いままでのところだと、じん肺による合併症のような扱いで、呼吸困難を伴う著しい 胸水貯留のある良性石綿胸水の事例については、労災補償の対象にする方向で考えても いいのではないかと思います。 ○職業病認定対策室長  先ほどの肥厚化するというのは、1年ぐらいですか。 ○森永座長  2年ぐらいですね。1年以上経ってもなかなか胸水が引かないけれど、私は14カ月で 引いた事例を経験しているのですが、1年半かもわかりません。胸水が引かない事例に ついては、肺機能の障害が残ることは間違いない。いままでの概念から言うと、症状が 固定(治癒)してから労災補償(障害補償給付)を行うということですね。 ○職業病認定対策室長  そのころまでには、除外診断はきちんとできるわけですか。 ○森永座長  中皮腫を除いてはできると思います。 ○森永座長  良性石綿胸水に関する労災認定基準については、そういう議論の取りまとめでよろし いでしょうか。  次に、びまん性胸膜肥厚について議論をしたいと思います。びまん性胸膜肥厚もあま り論文がないのですが、びまん性胸膜肥厚をすでに労災の対象としているイギリスの資 料があります。資料4ですが、これを三浦委員のほうからご説明をお願いします。 ○三浦委員  資料4はイギリスのアスベストに関する労災補償をまとめたもので、7頁です。「PART IV Bilateral diffuse pleural thickening(両側びまん性胸膜肥厚)」と上のタイトル ではなっていますが、実はこれは1996年版で、たしかこの前に1982年版というのがあ ったと思います。そこで初めて、両側びまん性胸膜肥厚が労災補償の対象になることが 決まったのです。その後、実は必ずしも両側ではなく、片側もあり得るのだということ がわかってきて、ここで初めて一側でもいいということが加わったものです。これはび まん性胸膜肥厚の診断基準で、職業的なアスベストばく露が基準にあるものなのですが、 それをベースとして、診断は単純エックス線写真で行っています。  まず胸膜肥厚からご説明しますと、いちばん厚い所が5mm以上、両側あった場合に、 一側でもいいから、とにかくいちばん厚い所が、単純写真で見て5mm以上厚くなってい ることが必要である。次にびまん性ですが、右側、左側それぞれ側胸壁の4分の1以上、 両方合わせると2分の1以上ですから、片側だけの場合には、側胸壁の2分の1以上の 範囲があれば、びまん性胸膜肥厚と認めるというのがここの基準です。  もう1つは、びまん性肥厚というのは、胸膜プラークと違って臓壁側、要するに肺の 表面の胸膜が必ずやられている。少なくとも、良性石綿胸水を背景に起きてきたとして も、その癒着によって臓側胸膜が影響を受けている。昔のクラシックな考え方ではじん 肺が進行して、肺の胸膜だけが厚くなったという概念が一時あったのですが、いまはほ とんどそういう概念はありません。それも含めて臓側胸膜がやられているというのが、 もう1つ加える条件になっています。 ○森永座長  イギリスの補償の場合は、障害の程度に応じて補償するという考え方で、いま言った ような肥厚の程度が進めば、ある程度何らかの肺機能障害を伴うということだろうと思 います。  まず、ばく露量との関係ですが、配付資料5の553頁のいちばん下で、びまん性胸膜 肥厚は、ばく露開始から経過年数につれて増えるとされており、ばく露量は、胸膜プラ ークと石綿肺の中間的なばく露と関係がある、という表現になっています。つまり、び まん性胸膜肥厚は、法規定内のばく露ではプラークほどは起こらないだろうと、しかし、 石綿肺を起こさない程度のばく露でも起こるのだという理解でいいと思います。  いままでのところは、一般環境ばく露でこういう事例が報告されたことは、欧米の文 献でも見つかってはいないという現状です。しかし、実際には良性石綿胸水が引いたあ とに出てくるというのは、一般的にはそうですね。まれにそうでもないものもあるぐら いです。これも良性石綿胸水と同じ概念で捉えていいですね。ほとんどは、胸水がたま ってあとに肥厚が残るという、石綿による疾患の概念としては同じで、病気の現れ方が 違うということです。これは良性石綿胸水と同じで、職業ばく露があって初めて診断が つくと、ほかの疾患も除外する必要があるということで、診断をつけるのはなかなか難 しい疾患であることは間違いありません。潜伏期間も、大体良性石綿胸水のあとに出ま すから、同じか、それより2、3年あとという理解でいいですね。  ただ、予後について言いますと、中にはどんどん進んでいく例はあります。したがっ て、著しい肺機能障害を伴う事例も出てくるということですね。ですから、一般環境で は起こりませんが、労災の認定基準として言えば、びまん性胸膜肥厚の1つの基準とし ては、イギリスでいう所見がないと肺機能障害を伴わないと理解して、最低それがあっ て、さらに著しい肺機能障害があれば労災補償の対象とすべきだと、これは平成15年度 の報告書でも提言しているとおりですので、これはそのままでいいのではないかと思う のですが、事務局はそれでよろしいですか。 ○職業病認定対策室長  はい。 ○森永座長  ただ、びまん性胸膜肥厚とはどのようなものかという所は、詳しくは話をしておりま せんでした。平成15年の報告書の中には書いてありますが、レントゲンで厚さが5mm以 上、びまん性の幅が4分の1以上という概念で考えていただければいいということにな ると思います。 ○三浦委員  単純レントゲン写真でびまん性胸膜肥厚と診断するのは難しいですね。ほかのものが、 例えば脂肪なども厚くなりますから。見かけ上厚くなっているだけなのですが、胸膜の 肥厚ではなくて脂肪だったとか、この間びっくりしたのは、トレーニングで筋肉がモコ モコとなっている人などがたまにいますから、単純写真だけでは診断はできない。CT などで肥厚を確認し、それをもう一回単純写真に戻して、診断基準に照らし合わせるこ とになると思います。 ○森永座長  昔、胸部エックス線だけで診断していたときは、肋横隔がつぶれているという条件が あったように思うのですが。 ○三浦委員  最近は問わないとなっていますが、昔はありましたね。 ○森永座長  CTがないころは、逆にそれを1つの根拠にしていたと思うのですが、いまはCTが 普及していますから、CTで確認できるということですね。最終的にはHOT療法、在 宅酸素療法が必要になる事例も、あることはあるということですので。 ○職業病認定対策室長  確認ですが、いまのびまん性胸膜肥厚の議論は、除外診断をして、さらにエックス線 写真で見たときに5mmの厚さと判断するけれど、ときにほかのものと見間違うことがあ るので、CT写真も確認の意味で撮ったほうがいいという議論でよろしいですか。 ○森永座長  はい。ただ、健康管理手帳ではこういうイギリスの基準を準用していません。いま言 った基準は、健康管理手帳に関する基準ではない、あくまでも労災の基準だということ で、間違わないようにしてほしいと思います。この場は健康管理手帳のことを検討する 場ではありませんので、これ以上の議論はいたしませんが、いま言った話は認定基準に 関する話だと理解をしていただければいいと思います。ばく露期間や潜伏期間は、大体 良性石綿胸水と同じと考えていいということです。  ここには円型無気肺のことが載っていないわけですが、これについてもびまん性胸膜 肥厚の一型とする考え方もありますし、最近では1つの独立した疾患として挙げる人も いるのですが、円型無気肺についても一言だけ議論をしておきたいと思います。岸本委 員からご説明をお願いします。 ○岸本委員  円型無気肺も、いまのびまん性胸膜肥厚と同じように、良性石綿胸水の胸水がたまっ たあとに肺の一部が取り込まれて、そこが無気肺になる状態です。これは、CTで見る と塊様に見えるので、肺がんとの鑑別が問題になる場合があります。気管支と血管束側 が無気肺に取り込まれるので、コメットテールサインがCTやMRIで検出される場合 には、診断的価値が高いと言われています。しかし、肺がんとの鑑別が難しい場合には 手術をされることもあります。ですから、これも定期的にフォローアップしていかなけ ればいけない疾患だと思います。  我々も、2002年に円型無気肺の15例、アスベストばく露によって起こった症例の検 討をしています。アスベストによって起こった症例が100%で、この中の5例は肺の中 のアスベスト小体を測っておりますが、石綿肺を起こすほどではないにしても、肺湿重 量でやっていた時代なのですが、1万個以上のアスベスト小体を検出しており、かなり の高濃度ばく露者によって起こってくることもわかっております。いちばん問題なのは、 円型無気肺のフォローアップ中に中皮腫が出たという報告があります。我々の検討症例 では、そういう例はまだないのですが、中皮腫と肺がんの発生を早期に診断するために、 もちろん円形無気肺に対する治療方法はありませんので、要療養とはいきませんが、中 等度以上の石綿ばく露者に起こってくる疾患ですので、何らかの形でフォローアップを していかなければいけないものではないかと思っております。  いまのところは、円形無気肺は健康管理手帳の対象にはなっていないと思うので、こ こは健康管理手帳の議論の場ではありませんが、健康管理手帳で見ていくのがいいのか どうか議論をしていただければと思います。これは補償対象となるとは思いませんが、 かなり大きくなるもの、肺機能障害を起こす場合もあると言っている論文もあります。 私は見たことがないのですが、そうなると本当に手術対象になるのかなと思っておりま す。 ○森永座長  資料5の560頁のいちばん下では、特に治療法はないということです。問題は、むし ろ肺がんと間違えて手術をしたという報告が日本であるくらい、臨床の先生にあまりな じみのない疾患で、手術する必要がないのに手術をしている事例があるわけで、そちら のほうが問題だろうと思います。これによって著しい肺機能障害を起こすことは、普通 ない。というのは、逆に言いますと、広範囲な肺葉まで影響を及ぼすものではないとい うのが円型無気肺の特徴ですので、普通は著しい肺機能障害は伴わない。したがって、 自覚症状もほとんどないので、これは特に労災での対象疾患に含めることはないだろう という岸本委員の意見に、私も賛成です。岸本委員がおっしゃったように、562頁の Referencesの下から6行目ぐらいにも、定期的にモニターすべきだということが書いて あります。この所見も、CTで認められれば健康管理手帳の配付にすべきであろうとは 思います。あまり他の検討会のことについて議論することはいたしませんが、三浦委員 もそういうことでよろしいですか。  良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚、円型無気肺は、1つは大体同じような臓側病変を 中心とした石綿による疾病ということで、大枠としては一括りにして考えたらいい疾患 だということです。潜伏期間も中皮腫や肺がんよりは短い期間で発症する。ばく露量は、 いままでの知見からまとめると、どちらかというと石綿肺とプラークの間のばく露量で 起こるようである。プラークを発症させる程度のばく露で、こういった臓側胸膜の疾患 が起きるという知見は、いまのところないということですので、普通の一般環境ばく露 下では起こり得ないことになります。ただ、前回から言っていますように、さっきのは 特別ですので、そこはよく調べてみないとわかりませんが、普通はそういう事例はない だろうというまとめでいいと思います。ほかの委員の方々、ご意見はございますか。 ○三浦委員  定まった治療法ではないのですが、かなり大きくなると肺機能障害が出る。ただ肺が つぶれているだけなので、うまいこと剥がしてやると肺機能が回復するという文献があ るのです。岸本委員もご経験があるということですね。 ○岸本委員  はい。 ○森永座長  普通、著しい肺機能障害は起こさない、そこまでいかないでしょう。 ○岸本委員  はい、そこまで大きな無気肺になりませんから。 ○森永座長  そうしますと、円型無気肺については、万が一著しい肺機能障害が出てくる可能性が あることを考えて、本省協議という形で考えたほうがいいですか。たぶん、あまりない とは思うのですが。 ○職業病認定対策室長  従来、5疾病以外につきましても、石綿関連が疑われるものについては本省協議する ことになっておりますので、そういった中身で扱われることになると思います。 ○森永座長  ご意見がなければ、最後の報告書について少し議論をして、今日は終わりたいと思い ます。  資料7です。いままで議論してきたことを、ばく露に関する医学的な所見として、平 成15年度の検討会報告書でも石綿肺、胸膜プラーク、石綿小体という形で出しておりま した。前回は、石綿ばく露の医学的所見が後ろのほうにきていましたが、今回はまずこ ちらを議論して、2番目に5疾患の石綿との関与についてですね。少しゴチャゴチャし すぎていますので、ここは今度の2月2日までに最終案を出し、若干ここの表題は検討 し直すこともあるということでご了解ください。一応、円型無気肺も入れますか。治療 に関しては、普通はほとんどないということなので、入れなくてもいいですか。折角検 討しましたから、入れる方向でよろしいでしょうか。 ○職業病認定対策室長  報告書にですね。 ○森永座長  この検討会の骨子について、何か議論はございますか。これについては、後日それぞ れの先生方に分担をお願いすることで対処したいと思います。非常に時間がなくて大変 な作業なのですが、何せ早く結論を示さなければならないものですから、委員の先生方 にはご無理をお願いしますが、よろしくお願いいたします。ほかに、今日の議論で何か 抜けていることはございますか。今日は、環境省サイドからの話は特にないですね。  それでは、今日の検討会はこれで終わりにして、事務局から次回のこと等をよろしく お願いします。 ○職業病認定対策室長補佐  ありがとうございました。次回の日程ですが、2月2日(木)17時30分から開催す る予定となっております。場所につきましては、追って連絡いたします。 ○森永座長  それでは、これで「第4回石綿による健康被害に係る医学的判断に関する検討会」を 終わります。委員の皆さんが揃う時間がなかなかないので、次回も夜遅く開催となりま すが、急いで取りまとめなければならないということでそのような時間になったことは ご了承ください。今日はご苦労さまでした。               【照会先】                労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室                職業病認定業務第二係                  TEL03−5253−1111(内線5571)