06/01/20 社会保障審議会医療部会第22回議事録 第22回 社会保障審議会医療部会                  日時 平成18年1月20日(金)                     14:00〜                  場所 東京国際フォーラム5階会議室 ○企画官 ただいまから、第22回社会保障審議会医療部会を開会させていた だきます。皆様方におかれましては、お忙しい中をご出席くださいまして、 誠にありがとうございます。はじめに、本日の委員の出欠状況についてご報 告いたします。本日は大橋委員、尾形委員、小島委員、辻本委員、野呂委員、 箱崎委員、山本(文)委員、渡辺委員からご欠席の連絡をいただいておりま す。箱崎委員の代理で日本歯科医師会常務理事の高津参考人にご出席いただ いております。見城委員からは若干遅れるとのご連絡をいただいております。 ご出席いただいている委員の皆さん方で定足数を超えておりますので、会議 は成立をしています。  次に資料の確認です。座席表、議事次第のほか、資料1が縦長のもの、資 料2、3、4が横長のもの、資料4に関連して「介護保険三施設の比較」と いう2枚紙があります。参考資料1で村上・佐々・豊田・鮫島4委員連名の 提出資料をいただいております。乱丁、落丁、不足等がありましたら、随時 ご指摘いただければと思います。以降の進行については部会長、よろしくお 願いいたします。 ○部会長 本日は新年早々からお集まりいただきましてありがとうございま す。本年もどうぞよろしくお願いいたします。まず、議事に入ります前に、 日本歯科医師会の常務理事高津参考人のご出席をお認めいただきたいと思い ますが、よろしゅうございましょうか。 (賛同の声) ○部会長 ありがとうございます。それでは議事に入らせていただきますが、 本日は、昨年末に取りまとめました本医療部会の報告、意見書でしたが、こ れを厚生労働省として今国会に提出する予算案や法律案にどのような形で反 映させているかということを、事務局からご説明、報告いただくことにして おります。また、新たに2つの論点について、事務局から資料を提示してい ただいていますので、これについて議論をお願いしたいと思います。  最初に、議題1、2を一括して、平成18年度医政局関係予算等及び医療法 等の一部を改正する法律案の概要について、資料に基づいて、事務局のご説 明をお願いします。 ○総務課長 資料1の1頁です。平成18年度予算の概要で、医政局関係です。 総額で2,008億9,500万円対前年度95.8%の予算になっています。全体とし て裁量的経費がシーリングでは原則対前年度−3%という枠組み、また、三 位一体改革で約85億円ほど補助金を廃止しておりますので、そのような状況 を考えると必要な予算額は確保できているのではないかと考えています。  2頁が、三位一体改革関係です。これは昨年12月の部会でご説明を申し上 げたとおりです。3頁からは各主要施策の予算で、1.にあるように、三位一 体改革の趣旨を踏まえ都道府県、地方が使い勝手のいい補助金になるように 医療計画の見直しに即して、これを活用してもらう趣旨から補助金改革を行 うものです。医療提供体制推進事業(統合補助金)の創設と医療提供体制整 備交付金の創設を予定しております。  2.では医療計画制度の見直しに即して、(1)の医療機能調査事業、ある いは4頁目の(2)の医療連携体制推進事業等の必要な予算を計上していま す。  また3.ですが、救急医療、特に(1)の小児救急医療体制については、新 規の予算を含め、従来に増して予算の増に努めているところです。  5頁の(4)医療施設の耐震化の促進ということで、新潟地震を1つの契 機にして、私ども、医療施設の耐震の調査等を行い、その結果を踏まえなが ら耐震診断費用、あるいは施設整備の補助を行うこととしています。  6頁。医師確保対策です。これについても(1)で当部会でもまとめてい ただいたご意見の実現に向け、例えば女性医師バンクの創設等必要な予算に ついて計上させていただいています。また、(2)で歯科医師臨床研修制度 が平成18年度からいよいよスタートしますが、そのための予算を計上させて いただいています。  7頁です。質の高い看護ということで助産師、あるいは潜在看護職員対策 等のための予算を計上させていただいています。また、医療安全対策につい ても医療紛争における人材の養成研修事業、あるいは医療安全緊急情報提供 事業等の新規予算を計上させていただいています。  8頁です。医療のIT化の関係で、電子カルテシステムの普及ということ で2つほど新規予算があります。また、医薬品・医療機器産業の国際競争力 の強化のための必要な予算についても、研究費が中心ですが、計上させてい ただいています。  10頁です。ナショナルセンターの運営に必要な予算ですが、特にがん医療 の均霑化を図る観点から、国立がんセンターにがん対策情報センターを設置 したいと考えています。  11頁は税制改正です。税制改正については12頁に社会保険診療報酬に係る 事業税の非課税措置をはじめ、従来から講じられている特別措置は引き続き 継続できたのではないかと考えています。また、耐震関係では1の(3)にある ように、耐震改修促進税制というものが今回、新たに導入されています。  13頁、オーファンドラッグの試験研究費に係る特別措置については、今回 ワクチンもオーファンの対象にした上で、新しい税制措置が導入できたとこ ろです。  15頁、「その他」です。公益法人制度改革を踏まえた医療法人制度の見直 しに係る税制上の所要の措置ということで、当部会でもご意見をいただき、 医療法改正の中で新たな医療法人を創設することになっていますが、そのた めの税制上の優遇措置を私どもは要求していたところです。これについては 民法の公益法人改革が同時に進行しており、今度の国会に法案が出ますが、 こちらのほうの税制上の取扱いとの並びもあり、税制上の扱いについては18 年の年末の税制改正の審議の中で審議をするという整理になりましたので、 この件についても一応長期検討という扱いになったところです。私どもはこ れを踏まえ、今度の法律改正を踏まえて税制改正に向けて、しっかりと対応 していきたいと考えております。  22頁です。規制改革・民間開放推進会議第2次答申が昨年末に閣議決定さ れたところです。医療分野についてはこの24頁から具体的な施策ということ で答申があります。内容としては医療機関からの情報提供の推進が中心です が、ご覧いただくとわかるように、当部会で昨年いろいろご意見をいただい た意見書の内容に沿ったご意見と理解していますので、今回、新たに医療法 改正案を出し、この答申の実現に向けて努力をしていきたいと考えていると ころです。  資料2、法案です。1頁です。昨年12月1日の「医療制度改革大綱」及び 当医療部会の意見書の内容に沿い、現在政府部内で法案化の作業を進めてい るところです。まだ、内閣法制局の審査も終わっていないので、今日は要綱 等のご説明はできませんが、案がまとまりましたら委員の先生方には、お届 けしたいと考えていますのでよろしくお願いします。この資料は内容の概要 をまとめたものです。「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療 法等の一部を改正する法律案」という題名です。内容は、1、情報提供の推 進。2、医療計画制度の見直し等を通じた医療機能の分化・連携の推進。3、 地域や診療科による医師不足問題の対応、4、医療安全の確保、5、医療従 事者の資質の向上、6、医療法人制度改革ということで、昨年12月8日にま とめていただいた医療部会の意見書の内容に即していると理解しています。 細かい説明は省略します。  1点、2頁の5の医療従事者の資質の向上のところの3つ目の○、これは 医療部会の意見書の中にはなかった事項です。これは何かというと、外国人 看護師、救急救命士等について臨床修練制度の対象とすることで、外国医師 等の臨床修練法の改正を行うものです。これは外国人で日本で看護業務等の 研修を行う場合に、直接医療行為というか、診療の補助といった行為ができ ないので、研修のためには一定の範囲でそれを認めようという制度で、これ までは医師と歯科医師だけは制度がありましたが、看護師等コメディカルの 方々についても、その対象を拡大しようという法案です。  昨年3月の政府における閣議決定で、すでにこれは決まっていたものを、 今回法案化するもので、その点ご了解いただきたいと思います。 ○部会長 ありがとうございました。ただいまの説明についてご質問等があ りましたらどうぞお願いいたします。 ○松井委員 歯科医師の臨床研修が来年度から始まりますが、それに対して 国費で1人当たりどのくらい支援するのか、それがすでに始まっている医師 の臨床研修と大体同等のものなのかどうかを教えていただきたいことと、以 前にも指摘したのですが、女性医師バンクというか、本当に女性だけをター ゲットとした紹介が可能なのかどうか。さらに、もう少し一般的に公共職業 安定所、あるいは地方自治体がそういう支援をしている所がありますので、 共通するところはある程度乗って、もしどうしても再就職にあたっての医師 特有の教育訓練だけの支援をやるのは致し方ないと思うのですが、ほかで使 えるものは活用するという考え方がもっととれないのかと思います。という のは、私自身派遣や職業紹介の審議会委員もかつてやっておりまして、こう いう場合に本当に許可がなされるかどうかがまず疑問で、いま女性だけとい う形である程度認められているのは寡婦という形で、本当に支援をしないと 大変だという限定された形でしか認められていない状況にあります。  以前にも申し上げましたが、女性の医師だけがものすごく大変なのか、男 性の医師だって大変なのではないかということがあり、女性医師だけを限定 して本来支援すべき対象とされ得るのかどうかというのが私にはとても疑問 です。さらにマッチングというのは、意外とそう簡単ではないので、これだ けで別にやるという効率性の上からも問題もあるのではないかということが あります。  2番目のほうは、もし本当にそういう形でうまくできるのか、やるならば、 国費まで使ってやるわけですから、その評価も今後出していただく必要があ るかと思います。 ○医事課長 いまの松井委員のご質問ですが、昨年も同じようなことを言っ ておられると思います。今回の女性医師バンクは女性医師の再就業支援の中 の1つですが、いずれにしても女性医師の職場への復帰を支援するというこ とで、いまのご指摘の雇用均等法上の問題はないということは所管の部局か ら返答をいただいています。  国としてやるべきことはどうかというのがありますが、こういった事業は、 もちろん民間の方も含めていろいろなことをやっていますが、私どもとして はスキルの維持、あるいは向上といったことも含めてやろうと思っています し、いまおっしゃったように、こういった事業を未来永劫国の予算でやって いくというものではなくて、おそらくいろいろな形で出てくると思いますの で、その結果を踏まえて、やめるものはやめるという形でやっていけばいい かと思っております。 ○歯科保健課長 歯科医師の臨床研修については先行している医師の例を踏 まえて予算要求しました。その結果、医師と同様な形で指導歯科医等の確保 の経費、研修プログラムの企画立案や管理の経費、研修医受入れのための環 境設備費等を認めていただいたところです。 ○佐伯委員 素朴な疑問で恐縮なのですが医師、歯科医師と続いてきて、結 局医療の専門家が一応国家資格を持った。だけど、それについてもう少し臨 床研修が一定期間必要であるという考え方は、いろいろな職種にもこれから 適用していくというお考えがあるのでしょうか。薬剤師、看護師などいろい ろあります。それで結局学校時代に、要するに足りないので現場で一定期間 国費をかけて訓練をする。それがいい質の医療を確保するには欠かせないと いうことなのだろうけれども、何か無駄というと語弊があるかもしれません が、どうして学校時代にもっとやっていないのだろうかとか、要するに修学 年限が長くなるだけなのだろうか、ちょっとその辺りのお考えがあったら教 えていただきたいのです。 ○総務課長 医師と歯科医師については医療行為の中でまさに中心となる職 種ですから、特に卒後における臨床研修はとても大事であるということで制 度化が行われたと理解しています。もちろんそれ以外の職種の方々について も、卒後の国家資格取得後の研修、資質の向上という意味では、大変重要な 課題だとは思っておりますが、医師、歯科医師と同じような形がいいのかど うかということについては、行われる役割など違いますので、そこは個別の ニーズあるいは課題に応じた対応の仕方があるのではないかと思います。  例えば看護師でいえば新人看護師の資質の向上ということで、研修事業等 をやっていることは従前ご説明したところですが、そのように個々の状況に 応じて対応していくというのが、いまの私どもの考え方でして、医師、歯科 医師と同様にあらゆる職種について同じようにやっていくというような方針 を持っているわけではありません。 ○部会長 よろしいでしょうか。もしございませんでしたら、まだ重要な議 題が続きますので次へ進みたいと思います。議題3の「社会医療事業の診療 経験を病院・診療所の管理者の要件とすること」について、資料3に基づい て説明をお願いします。 ○企画官 資料3の「へき地医療・救急医療等の診療経験を病院・診療所の 管理者の要件とすることについて」のご説明をいたします。1頁です。検討 の趣旨ということが書いてありますが、1つ目の○、現在へき地医療や救急 医療等は、地域医療において特に必要性が高いにもかかわらず、医師の確保 に非常に困難が伴うという状況で、その医師の確保が医療提供体制の確保の 中でも、大変重要な課題であるということです。  5頁です。昨年12月1日の政府与党の医療制度改革大綱の中で、IIが「安 心・信頼の医療の確保と予防の重視」で、そのうちの1番が安心・信頼の医 療の確保という、まさにこの部会でご議論いただいてきた中身です。その1 番目の課題としても、まさに医師不足問題の対応ということが1番目に掲げ られたところです。  2で囲んでありますが、12月8日のこの部会の意見の中でも医師偏在問題 の対応ということで、喫緊の課題が1つ目の○。2つ目の○が各県の医療対 策協議会を制度化するということや、6頁のいちばん上のへき地・離島等に おける診療や救急医療など、その確保が特に求められている事業に従事する ことについて、関係者の責務規定を医療法に新設するというご意見。そして また医療計画制度の見直しの中で、医療連携体制の9つの事業、疾病関係が 4つと、小児救急を5つ挙げましたが、こういったものを医療計画に位置づ けていくということのご意見をいただいたところです。  1頁に戻り、いま申し上げたことと重複しますが、1頁の2つ目の○、今 回の医療法改正において、医療計画の中でへき地医療、あるいは救急医療等 の都道府県で医療を提供する体制の確保に当たり特に必要と認めるものとい うことで、へき地医療、救急医療、小児救急、周産期、災害時医療等、これ について医療連携体制を構築して、重点的にその確保に取り組むことを医療 計画の中に位置づけていくという考えです。個々の医療従事者に対しても、 へき地医療、救急医療等その他都道府県において必要とされる医療の確保の たの事業の実施に協力するよう努めなければならないという責務規定を医療 法に置くことにしたいと考えています。  こういった体制づくりを全体として進めていくことで、地域医療をしっか り確保していこうということですが、4つ目の○、翻って見ますと、病院・ 診療所の管理者は、現行の医療法の15条の1項で、従事する個々の医療従事 者を指導監督して、業務遂行の欠けるところのないように注意しなければな らないという条文になっています。  以上のように医療連携体制を構築していくということで、病院・診療所が 積極的に参画していただくということが必要なわけですが、それとともに、 また医療従事者にへき地医療、救急医療等に協力ということを適切に果たし ていくということを考えると、この管理者自らがへき地医療や救急医療等に 対する適切な知識や経験を持っているということが不可欠な資質として求め られるということから、見直し案のように、管理者の要件として、へき地医 療、救急医療等の経験を求めていくことが適当ではないかということを考え ている次第です。  次頁です。このような要件を求めていくということが、へき地医療、救急 医療等を地域において確保していく上で重要な課題となっている、医師の確 保のための施策としても意義があるということになるのではなかろうかとい うことです。  注が書いてあります。若干繰り返しになる部分がありますが、医師の地域 偏在、診療科偏在の問題の対応については、医療制度改革のいちばんにあり、 これまでもいろいろ言われています。2つ目の○は、こうした状況の中で全 国知事会からは昨年の12月12日付けで、「医師のへき地等勤務を促し、等し く受療機会を得ることができる方策を講じること」という要望が国に出され、 また、これを受けて各都道府県の衛生部長の集まりである全国衛生部長会か らは、「診療所の管理者となるような要件に医師不足地域における一定期間 の診療経験を付加するなど、医師のへき地等勤務を促進する具体的方策を検 討すること」との要望が出されています。これは7頁に具体的にその抜粋を 付けています。また、日本医師会においても、医師にへき地や離島での勤務 を求めるということで地域医療を実際に経験していただくということが重要 であるという指摘は、かねてよりいただいているところです。  こうしたことから、医師偏在の問題について、これまで打ち出しているも の以上に、さらに対策を検討していかなければならないと考えており、今回 その1つの案として検討したものについて、本日ご審議をいただいて、ご意 見をいただきたいと考えているところです。  3頁で、考えられる見直しの案としては、病院または診療所はへき地医療 や救急医療等、その他の病院または診療所を管理するために必要な一定期間 の経験を有すると都道府県知事が認める者に管理させなければならないとい うことにする。ただし、例外措置は要るだろうということで、やむを得ない 事情があるということで、その所在地の都道府県知事が認める場合には、こ の限りではないという形の見直し案ではどうだろうかということを検討して いるところです。  なお、4頁にあるのは、いま申し上げましたようなことを図にしたもので、 その考え方を1枚にまとめたものです。いちばん上の左右が巻いてある枠に 入っているのがその見直し案で、2つ目の箱にあるのが検討の趣旨、3つ目 の箱にあるのがこの関係で別の医療計画の話、従事者に責務を置くことがあ るということを考えて、いちばん下の二重線の四角にあるようなことで、管 理者自らがこういったへき地医療、救急医療等に対する適切な知識や経験を していくことが不可欠であるので、これを要件とするというようなことはど うだろうかというような話だということで、1枚にまとめたものです。ご意 見をいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○部会長 ただいまの説明に関する質問も含め意見交換をお願いします。 ○土屋委員 本題に入る前にお伺いしておきたいことがあります。1月18日 付夕刊の朝日新聞、あるいはメディファックスの記事等で、すでにいまご説 明いただいたようなことを基にしたような報道がなされています。皆さんご 覧になったのだろうと思うのですが、その中には医師開業の条件に、へき地 ・救急など2年経験をさせるのだと。これを管理者、将来開業するような場 合の資格要件にする方針を固めたという格好で報道されていますが、お伺い したいのは、これは何らかのルートを通ってリークされた情報なのか、それ とも正式に取材に応じたのか。そもそもいまご説明いただいたように、中身 的なことは全国知事会や衛生部長会議の要望書が昨年出されており、これに 沿ったような格好にはなっていますが、今日私どもがここで正式にご説明を いただいて、これから議論をするという段階にあるわけで、そこら辺の経緯 について、まずお伺いしておきたいと思います。 ○総務課長 この議題について、今日の医療部会でご審議に至った経緯につ いては、先ほど企画官からご説明を申し上げたとおりです。1つの発端とし ては先ほどありましたように、全国知事会からのご意見が文書で昨年12月中 旬に私ども宛にありました。当然それは公表もされているので、その後、マ スコミ数社がいろいろ取材を進められた模様です。いまお話がありました1 月18日の朝日新聞の夕刊の記事に関しては、少なくとも私が取材を受けたこ とは事実です。私としては医療部会でご議論いただきたいという気持もあり ましたし、医療部会まであまり日もなかったこともあり、私どもが予定して いることと違う報道がなされても、かえって混乱をきたすのではないかとい う気もしましたので、取材に応じ、そして、一応概要については私どもの考 え方ということでご説明をしました。  いま委員から厚生労働省として方針を固めたということについては問題が あるのではないかということについては、少なくとも取材を受けたのは私だ けかどうかというのがありまして、ほかの方からも取材が行われたかもしれ ませんので、私の取材に基づいて書かれたかどうかわかりませんが、少なく とも私は方針を固めたというようなことは申しておりません。この問題はい ろいろと法制上の問題もあります。また、何といっても医師の方々のご理解、 協力があって、はじめてうまく円滑にいく制度だと思っておりますので、そ ういう意味ではこうした医療部会を含めていろいろな方にご意見を聞いた上 で、理解と協力を得ながら進めていくものであると思っております。今日は まさにそういう趣旨で、委員の先生方に先ほどご説明しましたように、ご意 見を賜りたいということでありまして、省として方針を固めたということで はありませんので、その点はご理解いただきたいと思います。 ○堀田委員 方針がまだ固まっていないということで、中身について申し上 げたいと思います。発想というか仕組みとして私は賛成ですが、例外事由に ついて、もう少し理屈と中身を詰められる必要があると思います。こういう 措置というのは振りかぶっていえば、職業選択の自由を制限するものですか ら、当然合理的な理由がなければいけないわけで、1つはそういう医療体制、 へき地医療を含めたこういう医療体制が社会的に必要であるということが1 つの理由になります。もう1つはそこへ派遣する、あるいはそこでの診療要 件とするその人自身についてのその必要性というものがきちんとなければい けないだろう。このペーパーを見ますと、管理者はへき地医療や救急医療等 に対する適切な知識経験が必要だということを理由としていますが、もしこ れが、管理者になる以上はいろいろなことを知っていなければいけないとい うことであれば、へき地医療も経験しなければいけない、救急医療、小児医 療、そしてほかの自分の専門以外のあらゆる経験をしなければいけない。そ んなことになったらグルグル回ってキリがないことになるので、そういう経 験が必要だという理由がもう少し詰めなければいけないのではないだろうか。  そういう観点から考えると、ここで必要とされているへき地医療、救急医 療などはその地域的な特性、あるいは担当医、専門医が少ないという事情か ら、ともかく非常事態が起きたときに、とりあえずどんな状態であっても応 じなければいけない。そういう医師としての資質、そして心構え。だから個 々の医療についての臨床経験というよりは、緊急事態についてきちんと対応 できるという医師としての心構えをきちんと養成した上で管理者にならなけ ればいけない。そういう心構えがないと地域の医療体制は担えないだろう、 そういう考え方のほうが私は合理的ではなかろうかと思います。  そのような観点からいうと、大学におられた医師など、比較的こういう事 態の経験の少ない方などには、特に経験していただくことが地域の診療所等 を担っていくために必要ではなかろうか。そういう観点からすると、ただし 書きは、単に都道府県に任せてしまうのではなく、例えばすでにへき地医療、 あるいは救急医療等を経験して、そんな経験をする必要のない医師、これは もう法律で除外事項にするほうが相当ではなかろうか。そのほか、そういう 視点から除外事項を定めるという立法態度が要るのかと思います。 ○土屋委員 先ほど私が前置きをして申し上げようと思っていたのですが、 何か話の腰を折られてしまったのですが、先ほどの具体で大体の経緯は理解 できました。こういうものが十分に検討されないでまことしやかに報道され ますと、全国でそういうことになるのだということで、大変な混乱をきたし ています。今後、いままでもそういうことはたびたびありましたが、ご注意 いただくようにお願いしておきたいと思います。  本題に入りますが、私どもは機会あるごとにいままで申してきました。1 人の医師が誕生するには、ご本人の努力はいうまでもありませんが、そのた めに多くの人の善意と支援、さらには多額の国費がこれには投じられている わけで、社会資本の一面を持っているということを機会あるごとに申してき ました。この臨床研修といういまの制度の中で、似たようなことで将来管理 者になるにはこれを2年間の研修を受けなければならないという縛りがすで にあり、その上にもう1つ縛ろうかという話になっていますが、ただいま堀 田委員からもありましたように、個々の医師の職業選択の自由、あるいは居 住の自由というようなものを奪いかねないということがあります。これはこ れから十分に検討しなければいけないのだろうと思います。  平成16年度からスタートした新医師臨床研修制度の中で、地域医療の研修 をもう少し重点的に配分できるような研修プログラムの改善を日本医師会で は要求しており、この臨床研修の中でへき地医療や救急などの経験を高く評 価して、それをもって病院や診療所の管理者の要件にするということで、こ の中身を充実することは十分可能であろう。そのほうが自然であろうと考え ますので、またこれに関していろいろ申し上げたいことがありますが、いず れにしても本件に関しては十分な議論が必要であろう。拙速であってはなら ない。今回の医療法改正の中に盛り込むようなことは、時間的には無理なの ではないかというのが、日本医師会の見解です。まず、それを申し上げてお きたいと思います。 ○部会長 そちらから順番にいきましょう。 ○見城委員 私からですか、ありがとうございます。私も1月18日の朝日の 夕刊を拝見した1人なのですが、もう決まってしまったのかと思って、ちょ っと勘違いをして慌てた1人です。なぜかというと、堀田委員からも出てい ますが、職業選択の自由とか、いままで日本が目指してきた国家のあり方が あると思うのですが、そこに触れる問題だとまず思いました。本当に不足し ているという事態も、各地へ行きましていろいろな声を伺いますので、これ も現実であり、きれい事で済ますことはできないとも感じておりました。  ただ、こういったことを議論していく場合に、できたら自治医大などがあ りますが、私の知識ではそういう各地方で医師を育成して、その代わりその 地方に貢献してもらうという条件があって、そのための補助金というのも国 から出ていると思います。こういった全国の自治医大はどうなっているのか。 その医師に社会資本が投じられるわけですが、どのように予算を投じられて、 それでどのような現状になっているのか、そういう各地の差もあると思いま す。本当に1人や2人では足りない所と、へき地といってもへき地のない県 とか、いろいろ県によっても状況が疎らだと思います。  そういった中でこれを議論するにあたっては、私はデータを出していただ きたい。感情論とか憶測論ではなく、現状はどうなっているのか、へき地の 医師の状況と、例えば自治医大等で育成された医師がどのような配置になり、 どのような貢献をしているのか、そのようなデータをまず出していただいて、 その中からさらに現実をしっかり見極めた上での一つひとつの判断をしてい きたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○杉町委員 このへき地医療、あるいは救急医療というのは大変重要なこと だということはよく認識しています。特に最近は医学部、あるいは看護学生 の教育については救急医療はかなり教育の時間が増えているのですが、へき 地医療に関する教育の時間はほとんど医学部の学生、看護の学生になされて いないような気がします。これは文科省のことかもしれませんが、これに対 しても、少しこういう教育もしっかりしていただくようにお願いするとか、 そういうことも必要ではないかと感じています。  もう1つ、資料1の5頁とも関係してくるのですが、5頁の(5)に、へ き地医療の充実ということが書いてありますが、このへき地というのはもう 地域によって全く事情が異なっております。現在第2次医療圏に地域医療支 援病院があり、全国で百数十の病院が、この地域医療支援病院になっている と思います。今後、どんどんこの地域医療支援病院が増えてくると思います ので、地域医療支援病院に対してもへき地医療をサポートするようにとか、 何か地域医療支援病院とへき地医療と少し結び付けるような、そういうこと ができると大変助かると思います。特に24時間でいつでも電話の対応ができ るようにとか、あるいは場合によってはそこに医師を派遣するなど、こうい うことは地域医療支援病院がやれるというか、サポートできるような仕事で はないかと思っています。ご検討をお願いしたいと思います。 ○佐伯委員 先ほどの見城委員と私は全く逆と言いましょうか、患者の立場 としてこの記事をわりと歓迎して見た者です。といいますのは、かかりつけ 医を選ぼうというときにも、きちんといろいろな経験を積んでいらっしゃる ということが確実にわかる必要があると思いますし、一定の大学病院で教授 をなさっていた方が、あるいはそのように開業される、その分野では優れた 腕を持っていらっしゃるかもしれませんが、実際に地域の医療を連携してい くというところで、きちんと動いていただけるのかどうかということを考え ると、こういうことが要件として盛り込まれるというのは、今後本当に医療 の連携体制を作っていくのに欠かせないことではないかと思っています。  私がちょっと気になった言葉があるのですが、「縛り」という言葉がどう も気になって仕方がないのです。医療のために尽くしてくださる大変貴い人 材の方が、2年間の臨床研修を縛りと解釈していらっしゃるというのは、医 療の受け手としてとても残念に思います。むしろ高度なきちんとした医療を するその腕を磨いてくださる、自分の技量を上げるための必要な期間であっ て、もっと誇りを持って表現をしていただきたいし、要件としてもそれを縛 りと解釈するのは国民としては非常に残念に思っております。 ○村上委員 慎重に討議しろと、現在まだそういう状況ではないと言われま すが、現実に地域医療をやっている身で、私どもの病院は大きな病院ですが、 周りの小さな病院はどんどん医師がいなくなり、救急医療は破綻をきたして います。その影響がどのような状況になっているかと言いますと、私どもの 所に患者が集中して、どうしようもなくなる。全く早くいま手を打たないと、 各農村の地域医療は破綻をきたしています。それで、多分、今回知事が命令 権を出して公的病院からほかに行かせるという案が出ていたようですが、そ れに対する罰則規定がないという、この部分が罰則規定に当たるのかと解釈 しています。実際に日本の救急医療、特に地方の救急医療は大変危機に瀕し ている面から私はこの案に賛成します。 ○小山田委員 先ほど見城委員から出された自治医大の現状ですが、開設か ら私どもも関係し、また評議員もやっておりますので、実情をお話しますと、 開設して32年で卒業生が3,200人出ています。義務年限が卒後9年、その地 域での医療をやるわけですが、その義務年限を終えた方々は2,000人おりま す。その71%の方々が出身の県において医療を行っています。さらにその71 %の中の30%が、ここにも書いてあるようなへき地の医療に従事していると いうこと。私は大変ありがたいことだと思っております。  この件についてもう1つお話したいのは、実はこのへき地、特に民間病院 も診療所も少ないか、全くない地域で医師が不足して、地域の医療が崩壊し つつあるわけです。そうしたことで最終的にはこの責任は地方自治体の首長、 県知事がその必要な人数の医師を確保し、その方々に地域の医療をやってい ただくための見返り、生活を保障し、将来に向けての自治体病院長になる資 格の1つとして入れるという案を出してあります。これは知事、市町村長を 含めた私どもと自治体病院開設者協議会と一致して出してありますが、これ がなかなか進まないのです。今日こういう場でいろいろご説明がありました ように法制上などいろいろな問題があるかもしれません。しかし、こうした ことが公の場で論じられ、その方向性が出されるとしたら、私どもがいまや っている自治体の長が、その責任と権限をしっかりと自覚して、採用する医 師との契約の中で、へき地の医療を、質の高い医療を提供する後押しを、私 は今日ここに出ただけでも非常に大きな支援というか、力をいただいたと感 じています。その具体的な問題についてはいろいろあろうかと思いますが、 こうした方向性を是非出していただきたいと要望するものです。 ○鮫島委員 救急医療とへき地医療の現状の認識については、先ほどからお 話がありますように大変な状況にあることはわかるので、何とかしなければ いけないというのもよくわかります。しかし、いままでにこういったことに 対して何もしてこなかったわけではないと思います。自治医大の話も出まし たし、そのほかにも例えば公的病院の役割という問題もあると思います。公 的病院には病院によっていろいろな役割を目指した病院の設立、あるいは税 制上の優遇を受けるなど、いろいろな形の対策がとられてきたにもかかわら ず、あるいは地域支援病院を作ったりしたにもかかわらず、こういった状況 がずっと続いている。これを管理者の1つの要件としてあげるというのは当 面の対策としては、あえて反対しませんが、しかしそれで本当に根本的な解 決になるのだろうか。そこに行く人たちが、あくまでも腰かけでいくことに なれば、問題はやはり解決しないまま残っていくのではないかという感じは しています。  先ほどから話がありますように、「救急医療等」と書いてありますがその 範囲をどうするのか、あるいは例外をどう決めるのか、慎重にやっていただ きたいと思います。また、あまり早くこういったことが出てきて、例えば平 成20年からそれを実施することになりますと、駆け込みで開業する人が一気 に増えてくるという、かつて経験したような事態が起こらないとも限らない。 そういったことを十分に考えた上で検討していただきたいと思っております。 ○三上委員 非常にいろいろな意見が出て問題が多いというのがよくわかり ました。大きく分けて2つの面の意見が出たのではないかと思います。1つ は医師の偏在や地域における医師の不足を解消するためにこういうことをや ってはどうかという意見と、もう1つは民間の医療関係以外の方の意見から は、医師の資質の向上のためにこういうことがいいのではないかという意見 が出たのではないかと思います。  さまざまな問題があると思います。医師不足の解消、あるいは偏在の解消 云々については、もともとへき地、あるいは救急、周産期、小児といった部 分については政策医療であるとか、先ほど自治体病院の先生2人の意見が述 べられましたが、自治体病院においては地方公益業法の中の病院事業の中に 定められた、いわゆる地域に不足しているけれども必要な事業、それに対し て税を投入するのだといったことで補ってきた医療の部分を、何とか足らな いので強制的に知事に権限を与えて、どこそこの病院はこういった事業をや っているのでそこへ行きなさい、というようなことをやろうという話なので す。これも非常に大きな問題で、先ほど鮫島委員からもありましたが、駆け 込み開業だけではなく、そういった医療を提供している医療機関に、別の医 療機関から医師が勤務する、経験するためにそこに医師が集まってしまうと か、それをやっていない所から医師がいなくなってしまい、逆に偏在が起こ るなど、さまざまな問題があります。  これは今日はじめてここに出てきたわけですが、相当慎重に議論をしてか らでないと、なかなか法律に乗せるということは難しいのではないかと思い ますし、こういったことが軽々に新聞メディアに乗せられて、社会の不安を 煽るということがあっては非常に困るので、これからはご注意いただきたい と思います。 ○松井委員 私は鮫島委員がおっしゃられたように、例えばあまりやる気の ない人が、わざわざへき地にこのためにだけ行ってというような場合、そこ にいらっしゃる住民の方にとっては不幸なことだと思います。ここに書いて あるへき地というのは場所の問題と、救急、小児、産科など科別に足りない ものと、何か混在しているような気がします。ですから、それぞれの問題に 対してへき地の問題と、対策のやり方としては違うものがあり得るような気 がします。医師の立場からすると、子弟の教育の問題を考えるとなかなか行 けないということも事実だと思います。そうすると、へき地に行っても医師 自身が報われるし、仮に三上委員がおっしゃったように患者の立場からする と、そこに行って資質が向上して、ジェネラル・プラクティッショナーみた いな形にももっとなっていかれるとか、そういうメリットもついていくよう なものが合わさった形で、この仕組みが構築されていかないと、国民全体に とっていいものにならないのではないかと思います。ですから、もし仮にこ ういうことを進めるのであるならば、医師にとってもそういうことを担って くださる方々の資質がきちんと向上される。それとパッケージにした形でや っていただく必要があろうかと思います。  もう1つは事務局に質問なのですが、へき地医療とか救急医療などいろい ろ書いてありますが、仮にこういうことをやろうとしたときに、知事がその 範囲を決められるのかどうかということと、これはand条件ではなくor条件 という理解でよろしいのかどうか、その辺によっても仕組み方は違ってくる のではないかと思うのです。最後のは質問です。 ○総務課長 具体的な案を持っているわけではありませんが、中でこういう 方向について議論した際に1つの考え方としてあるのは、今回こういうこと について検討する価値があるのではないかと思ったのは、医療計画の改正で へき地、救急医療が社会医療事業という形で法律で位置付けられることを踏 まえて、それをうまく制度化できないだろうかということで検討してみまし た。  私どもとしては基本的にはそういう意味で法律において範囲は一応確定さ れると思っています。ただ、都道府県ごとに固有な必要な医療が別の事情と してある場合もありますから、それは多少オプションというか、自由な部分 はあってもいいと思いますが、全国共通なものとしては一応法律で範囲は決 めるべきではないかと思います。すべての分野をやれということはなかなか 難しいので、これを制度化するならば、orというか、いずれかを経験してい ただくということではないかと思っています。 ○三上委員 いま「社会医療事業」という言葉が出たので少しお伺いします。 以前は公益性の高い事業ということで医療計画の中に書き込まれるものであ って、都道府県知事等が責任を持ってそれをやっていくのだということでし た。今度の医療法の中に社会医療事業を書くと。また、資料2にも書いてい ましたが、公的病院が担ってきた分野を扱う医療法人制度を創設ということ で、「社会医療法人」という文言も出てきます。これは社会医療法人が社会 医療事業を担うのかということを連想させることもありますし、もともと国 立病院あるいは自治体病院、公的病院の役割を明確にすることもまだ十分さ れていない中で、こういったものが混在した形で法律の中に書き込まれてい くことは、将来的に非常に混乱するのではないかと思うのですが、この辺の ところも十分に検討していただきたいと思います。 ○古橋委員 こうした問題が出てきましたのは、特にへき地医療とか救急医 療の現実が破綻に近い状況になってきたと。こうしたものが起きてきた1つ の背景には、医師という専門職業の中での自由選択性、プロフェッショナル ・フリーダムがある意味で過度な状況で許されてきている。私は何度か発言 させていただきましたが、例えば小児救急をやっていた先生たちが非常に過 重な労働環境の中で疲弊なさり、開業医になって、昼間だけやって夜は応対 のないようなビルクリニックへ転換なさっていくような事実が起きた結果、 国民がへき地や救急の場面で受ける医療が破綻に近い状況になってきている 事実があると思うのです。  そういうことを考えたときに、私は医師としての、職業としての社会的責 任と任務を、もう一度原点的に考えることから、こうした経験も要るのでは ないかとは思います。  もう1つは、病院というものが地域に果たす役割。地域ですから、そこに 暮らす人たちへ果たす役割をもう1回原点的に考える時点で、ある意味で私 はこの案は苦肉の策だと思ってお聞きしたのですが、そうではなく、パッチ ワークのような対応術ではなくて、もう一度職業としての社会的責任と任務 ということから、疲弊している領域に、果たす役目を担うのだという辺りを 明快にしていくと。  もう1つは、先ほどご意見も出ましたが、全ての病院の管理者ということ では、果たしてそうかなとは思いながらも、国公立あるいは公的病院とか、 地域医療支援病院あたりは、その任務の優先度の高さを確認していくことが 必要ではないかと思っております。いずれにしても、破綻に近いこういう医 療の状況の解決策は具体的に何かを出していかねばいけませんし、職業のプ ロフェッショナル・フリーダムだけが独り歩きしていては国民が大変な状況 に陥るので、医師としての職業の社会的任務を原点的に捉えて、こうした仕 組みの中に寄り添っていらっしゃることが必要ではないかと考えます。 ○村上委員 いまの古橋委員もよくわかっていただいているなと思います。 へき地と救急医療とこんがらがってしまいますが、私どもは田舎ですから、 へき地でもあるという形で解釈していただきたいと思うのですが、周りの病 院でこのような例があります。私の隣の郡なのですが、ある地域で救急を3 つの病院で分担していまして、これはみんな公立病院です。しかし医者がい なくなって、ある病院に患者が集中してしまいました。そこが今度は医者が 一勢に辞めてしまいました。辞めてどのような形になったかというと、その 院長が私のところに「どうしましょう」と相談に来たのですが、辞るけれど も週4日だけパートで働きたいと。そういうことが現実に起こっています。 しわ寄せが確実に起こっているわけです。  病院長同士のいろいろな集まりがありますと必ずその問題が出ます。千葉 県では自治医大の卒業生の配分は、私がその委員長をして決めているわけで すが、すごい取り合いになります。そのぐらい、いま現実に地方の救急医療 はひどい目になっていて、このままですとそこの住民たちが「自治体病院だ から担え」と言ったって、医者がいなければ担えないのですから、これは知 事の権限でできるということ。  これは蛇足になるかもしれませんが、有名であった舞鶴市民病院が、内科 医がいなくなったため今度は指定管理者制度になって、急性期病院から療養 病床になります。これは舞鶴市民病院に対して京都の人から聞いたのですが、 知事が京都府立医大に舞鶴市民病院へ内科医を行かせろと命令を出したそう です。知事は命令しても府立医大ですから命令を出せるはずですが、それで も医者が出せないということになっていますので、何らかのこういう法律で 保障するものが必要だと思っています。 ○土屋委員 私ども日本医師会では、医の倫理綱領というのがありまして、 その中でははっきりと「医師は医療の公共性を重んじ、医療を通じて社会の 発展に尽くす」と謳っておりまして、これは最低限の我々の理念としてみん な心得ておかねばならないということになっています。先ほどから医師の偏 在とか不足とか混乱していますけれども、これは地域による偏在なり、時間 帯による偏在、あるいは診療科による医師不足に分けて考えなければならな いということです。  いずれにしましても、これは法律で決めて、嫌々そこに行くというような 話では、いま申し上げたような本来の、自ら発して、使命感を持って積極的 に取り組むということの動機づけにはならないだろうということを心配しま す。こういうことに従事するような仕組みをつくっていくことは、大いに奨 励されていいのだろうと思います。我々は今日提言されたものを否定するよ うな立場ではありませんが、モチベーションを高めるような制度でなければ なりません。  先ほどご発言で、誤解があるようですので訂正しておきますが、「縛り」 というのは研修医制度そのものを縛りと言ったわけではないのでありまして、 研修医制度を終えないと開業できない、管理者になれないのだという縛りが すでにあるわけです。それを縛りと言っているわけす。研修医の諸君たちは そのようなことを第1義的に頭に置いて研修しているわけではない、少しで も将来にかけて次代を担う医師としての使命感があればこそ、一生懸命頑張 っているのだと思います。  これは公的病院に限らず、民間病院も含めて、全ての医療機関がこのよう なことについての関心を持って、あるいはこういう所に勤務した者に対する 評価について、すでに実施している大学や民間医療機関等いろいろあるよう ですので、もっと頑張っていただけるように奨励していかなければいけない と思います。  しかし、今日提言されたお話をそのまま実施したらどうなるかを考えます と、先ほどからいろいろ危惧するお話がありましたが、いま勤務している医 師はどうなるのか。たまたまいま挙げたいくつかの事業に従事している者は いいのでしょう。社会医療事業などというあまり聞いていないこと、これは 医療計画の中の9つの事業の中からいくつかを取り出して、疾病対策を除い たものをそう言いたいようですが、それではいま糖尿病やがんに従事してい る、本当の専門的なことをやっているバリバリの30代、40代の、その医療機 関において、中心的な役割を果たしている人たちが、将来開業するとなった ら、そこを辞めて、いま挙げられたような救急ほかの事業を実施していると ころに転職しなければいけないのかという問題も起こってきます。  そうしますと、逆に大変な偏在をきたしてしまうかもしれないことが懸念 されるわけです。その辺りのところを考えると、研修制度をより充実する中 で、十分にこれは解決可能であろうと思います。足りないところは、2年の 研修が終わったところで、自ら発してさらに研修を補足するなり、大きな病 院の管理者に将来はなるという人もございましょうし、将来、開業するとい うときに備えて、プライマリーケアを含めて勉強しておこうという人たちが、 救急なり何なりに従事することが十分に可能な形の制度をつくっていくべき だろうと思います。  いずれにしても、いろいろな角度から検討をして、そういうものをつくり 上げていくには時間的にも無理でしょうし、決して拙速であってはならない ということを申し上げておきたいと思います。 ○部会長 お二人で最後にしたいと思います。 ○小方委員 私も基本的にはこの方向で検討すべきかと思います。いま各委 員の先生方からお話がありましたが、各地域で事情が違う中でこれまで医師 の方々を含めて、地域の方々でいろいろと検討をして、なかなかこの問題が 喫緊の課題であり、この問題が解決をしていないという実態の中から、全国 の市町村なり、衛生部長の方々、現地をよくわかっている方々の要望のわけ ですから、是非前向きに、いま各委員の方々が指摘された問題点は早急に詰 めていかなければいけないと思いますものの、あまり時間をかけてやるとい うよりは、そういう現地の方のお声に対応するのも部会の大きな役割だと思 っておりますので、ある程度時間も短縮して、いままで出てきている問題点 を十分に議論をしながら、早急にこの方向で現地の要望にお応えをする方向 でのご検討をしたらいかがかなと思います。 ○見城委員 いままでの資料を拝見させていただいたのですが、先ほど現状 がどうなっているかのデータがほしいと申し上げたのですが、それによって 本当に必要な対策を早急にすべきだという考えは同じなものですから、この 中にすでに「へき地保健医療対策検討会報告書概要」というのがありまして、 いまの間に読ませていだきましたが、ほとんどいまここで出ているような問 題点が去年1年間に指摘されているわけです。ですから、私はこれに対して どういう動きがあったのか、これはここで情報を提供してほしいと思います。 すでに問題はここでも出尽くしているということです。これが1つです。そ れに対してどういう対応が行われ、その結果として対策の方向はどうなのか ということを伺いたいと思います。  それから、この問題はいまそこに死にそうな人がいたら医師は行って診る べきだというのは誰もが考えることで、医療を受ける側としては、そうして ほしいというのは誰もが思うことなのです。ただ、医師になる側のことも考 えてみたら非常に重要なポイントがありまして、これからの日本の医師とい うのは、とにかくある制度によって必ずそこを通って、自分の志とか、向か う方向性は別として、とにかく通過したら医師になれると。通過しなかった ら、どんなに優秀であれ何であれ、なれないという、そういう1つの基本条 件として、このへき地での診療という体験を必ず入れていく、それが今後の 日本の医師なのだと、日本の医師とはそういうものだとこれで決定づけるの か、そのような重要なことがここにかかかっていると思うのです。  1つは、医は仁術と言いますが、例えばそういう制度の中で無理矢理そこ を通過させて、本当に開眼して、「自分は医師としてどのような所にも、苦 難のある所に行くんだ」とみんなが志を変えるものかどうか。単純に通過点 として通過するだけで、へき地では本当に待望していた医師が来たと迎えて も、嫌で嫌で仕方がない、でもここを通過しなければ医師になれないから来 たんだみたい人が来て、毎日、体を診てくれていたらどうなのだろうと考え ると、非常に重要なポイントがありまして、感情論ではいけない。国家がそ ういうことをするのだと決めることなのか、医師になる人たちが自分の志と してそういうものを持った人が医師になってほしいという方向からスタート するのか、重要なポイントだと思いますので、せっかく1年間検討してきた 問題点やデータが出ています。それに対してどうなのか、是非ここの場でも 提供していただきたいと思います。 ○部会長 おそらくまだご意見はあって、せっかくの議論ですからもう少し 続けたい気もするのですが、この辺で留めたいと思います。ただ、私はいつ もタイムキーパーで自分の意見を言うことが少ないものですから、独り言だ と思って聞いていただきたいのですが、今の問題は現在の医学教育、卒前教 育にもかなり関係があると思います。つまり、最近の医学生あるいは若い医 師には、医師としての使命感とか責任感、それが希薄になってきているので はないか。  へき地の医療、救急医療、小児医療、周産期医療、これはそれぞれ違うよ うですが問題の根はみんな同じで、みんな楽をして過ごしたいという医者が 増えてきている。自治医大の話が出ましたが、自治医大ができるときには、 ある高名な医事評論家が「学資を出して9年間もへき地に縛るのは憲法違反 だ。これはみんなが卒業したらそのお金を返して、誰もへき地には行かない だろう」と、そういう無責任なことを言った人がいたのです。しかしそれに 対して当時の学長でしょうか、学生をきちんと教育されて、先ほど小山田委 員がお話になったように、現在でもへき地に残って、それを生き甲斐として 働いている医師も多いわけです。ですから使命感や気概を失った医師の増加 は卒前教育に非常に問題があると捉えておりまして、それは多分厚労省だけ では片付かないことではないかと思います。これは個人的な感想です。  この他にも問題はまだいろいろとございますが、特に法制上のことはこれ から検討もいただかないとならないと思いますし、本日のいろいろなご意見 を整理していただいて、できればもう1回、次回にご議論いただければと思 います。  次に本日最後の議題になろうかと思いますが、「療養病床再編に伴う医療 法施行規則の見直しについて」で、資料4を事務局からご説明いただきたい と思います。 ○総務課長 この療養病床の問題につきましては、介護保険制度あるいは医 療保険制度に関係する問題でございます。本日は老健局、保険局からも担当 者が出席しております。説明はまず老健局総務課長から行わさせていただき、 その後私ども企画官のほうから説明をさせていただきたいと思います。 ○老健局総務課長 お手元の資料4が療養病床の関係ですが、その前に介護 施設の全体状況について簡単にご紹介したいと思います。資料番号はござい ませんが、「介護保険三施設の比較」という表のある資料がありますので、 ご覧いただきたいと思います。介護保険自体の利用者は、いま350万人です。 そのうち約80万人弱の方が施設に入っていらっしゃいます。これには3つの 類型がありまして、特養、老人保健施設、療養病床です。  それぞれに状況は異なっていまして、特養については35万人の方が入って おり、平均の在所日数が4年ぐらいになります。終の住み処というか、居住 的な要素を持っています。費用は大体月に30万円ぐらいです。いまは居住環 境もかなり整っており、大体4割が個室になっている状況です。人員は介護 職員を中心としています。  次は、老人保健施設です。入所している方々が27万人です。在宅復帰が中 心で、したがって平均在所日数も7カ月という状況です。特徴があるのは機 能訓練で、人員として作業療法士、理学療法士の方々が配置されている状況 です。  次が、今回の議題である療養病床です。介護保険関係は直近で13万人にな ります。費用については三施設の中でいちばん高くなっています。病院です ので、病室については6.4平米以上とあります。人員については医師3名、 看護、介護という体制です。  2頁目をご覧ください。実際の利用者が入って、どこに出て行かれるかと いう流れをご紹介したいと思います。いちばん上が特養で、いちばん多いの は家庭もしくは医療機関から入所されて、4年ぐらい在所されて、最終的に は7割の方が死亡となっています。23%は病院のほうにいくということで、 家庭に戻られる方は大変少ないという状況です。いわゆる終の住み処的な役 割です。  一方、老人保健施設ですが、家庭と医療機関からそれぞれから入ってきま して、7カ月ぐらい在所されて、39.2%の方は家庭に戻られ、もしくは他の 医療機関に回るという形で、まさに中間施設的な機能、在宅復帰機能を持っ ています。  一方、介護療養型ですが、71%が一般病院から入院する方です。そのうち 4割以上の方が最終的にはターミナルの段階で一般病院に行かれるという状 況です。在院日数は大体1年という状況です。  これを踏まえて、資料4の1頁をご覧になっていただきたいと思います。 制度上は介護保険適用と医療保険適用の2つありまして、1頁目の表にあり ますが、一部人員の看護・介護職員の配置が若干違いますが、基本的には同 じ内容です。病床数は直近でいくと介護は13万床、医療保険のほうは25万 床になっています。  2頁目です。ここに書いているのは、それぞれ介護療養、医療療養の病床 に入っている方々の状況です。真ん中の少し上に表がありますが、介護保険 適用と医療保険適用の病床では、患者の状態はそれほど変わらず、病状が不 安定で常時医学的管理が必要な方、もしくは病状は安定しているが容態の急 変が起きやすい方、この方々が大体3分の1ぐらいになります。容態の急変 の可能性は低いが一定の医学的管理を要するという方が大体3分の1です。 急変の可能性は低く、むしろ福祉施設、自宅によって対応ができるという方 が3分の1となっています。下にありますが、医師による直接の医療の提供 頻度ですが、ほとんど必要のない方が大体半分を占めている状況です。  そこで、この療養病床をどう考えるかという議論がそれぞれに行われてい ますが、5頁目に飛んで(3)です。介護保険のほうは社会保障審議会とし ては、介護給付費分科会がありますが、こちらでは介護報酬の議論を行って います。そして、昨年来、介護療養に関してどう考えるかという議論が進ん でいます。その中で、介護施設は、将来的には在宅復帰機能、もしくは生活 重視という形の施設を中心に考えていくべきではないか、そうなりますと、 療養病床を、もう一度基本的なところから検討し直すべきではないかという 議論が行われています。  一方、中医協においても医療療養についていろいろな議論があると聞いて います。これに関しては、医療の必要な方々に対する機能を明確に位置づけ るべきではないか、医療の必要度の高い患者についてはある程度体制を強化 しながら、評価すべきではないかという議論があると聞いています。そうな りますと、私ども担当の介護療養については、医療が必要な方については医 療のほうで対応していく一方、介護の必要な方については療養病床といった 病院よりはむしろ生活重視・在宅復帰に中心に置いた介護施設で受けとめる ことが適当ではないか、したがって、介護療養について将来的に転換してい くことが議論となっている状況です。  6頁の1番目に書いていますが、今回この療養病床の問題を医療保険と介 護保険の両面にわたって一体的に見直すことがテーマになっています。医療 保険は診療報酬改定が2年に1度ですし、介護保険が3年に1度です。今回 初めて6年に1度の同時改定ということで、両者の機能分担と連携という観 点から療養病床の在り方が大きな議論になっているという状況です。  9頁は、昨年私どもの医療制度改革本部で検討報告させていただいた療養 病床の将来像です。介護保険という面で申し上げると、在宅の利用者が当初 は100万人でしたが、いまは270万人まで伸びています。費用も3兆円ぐら いだったものが6兆円にまで伸びていて、かつてはサービスがないと言われ た状態でしたが、かなり介護基盤が充実してきています。そうした状況下で、 療養病床についても介護保険の中での在り方を見直していく必要があるので はないかと考えています。  ただ、これは病院のあり方や、各自治体、地域にも関係しますので、すぐ にはできませんので、いまから6年後の平成23年度を1つの目安において再 編を進めたらどうかということです。  具体的には1に書いていますが、平成24年度以降については、療養病床と いうのは医療の必要度の高い方に対応するというものとして、明確にしたら どうか。いまは両方にわたっていますが、それを医療という面に位置づけ直 すということです。  (2)ですが、介護保険に関しては平成24年度以降は、介護報酬という形 では廃止していくこととし、平成23年度までは経過措置をやっていくという ものです。  次の10頁です。いかに円滑な移行を確保するかですが、移行促進策が今年 度の介護報酬においても必要ではないかと考えておりまして、具体的には (1)です。すぐには転換できないケースがあるので、将来的に老人保健施 設とか、ケアハウス、有料老人ホーム等への転換をしやすいような、経過的 な類型として、医師の人数等を落としたような形の受け皿を用意させていた だいたらどうかと考えている次第です。  一方(2)ですが、医療保険においても医療必要度という要素を加えなが ら、診療報酬の改定を考えていくということです。  その上で(3)です。個別、具体的な病院等に関して、私どもとしての転 換支援、介護保険の受入れ等の対応についても検討させていただきたいと思 います。以上です。 ○企画官 続きましてこの資料3頁をご覧いただきたいと思います。3頁で 療養病床再編成の趣旨・必要性ということで、現在の医療提供体制の現状で よく使っている資料は最近のデータが出るので更新していますが、人口当た りの病床数が多く、在院日数が長くと。ここで1床当たりの医療従事者が少 ないということが見て取れるわけです。  次の頁のいちばん上にあるように、こういった状況ですが、限られた医療 資源を効率的に活用するためには医療病床の適正化を進めて、急性期病院へ の人材の再配置をして強化を図っていくことが必要だと考えています。また、 医療提供体制の改革においても、地域の医療機能の適切な分化・連携を図っ て、体制をつくっていくことが大きな課題となっているということです。昨 年末の「医療制度改革大綱」においても、その地域の体制をつくることと、 医療費適正化の総合的な推進の柱の中では、医療費適正化計画を通じて、そ の長期入院の是正を進めていくというのが4頁の下のほうです。  さらに5頁を見ていただくと、そのために診療報酬体系の見直しや病床転 換に関する医療保険財源を活用した支援措置ということ、在宅医療・介護の 連携強化といったことが記載されていて、この療養病床の再編成は、この大 綱で位置づけられた平均在院日数の短縮等のための具体的な取組み方策の1 つと位置づけられるものです。(3)については先ほど申し上げたとおりで す。   6頁の3.で「医療法施行規則の見直し案の内容」です。先ほどの説明で、 9頁のところで飛ばしたものです。療養病床の体系的な再編を行っていく中 で、医療法施行規則、人員配置標準についてはどのような取扱いを考えてい るかをご説明いたします。療養病床については、現在は(1)の*がありますが、 医療法上は療養病床の看護配置については、看護配置6:1以上、看護補助 の配置は6:1以上ということですが、今後、長期にわたり療養が必要な医 療必要度の高い患者を受け入れる病床という位置づけにしようということで、 これを看護4:1以上、看護補助4:1以上というのを本則にするというこ とです。ただし、現行の6:1、6:1というのは、平成23年度末までは経 過措置としてはどうかと考えています。  なお、この4:1と4:1という数字の理由として、診療報酬では、現在 療養病棟入院基本料は5:1以上、5:1以上となっていて、脊損等の特殊 疾患療養病棟入院料については、「4:1以上、4:1以上」が施設基準で あると。現状を見ると、実は特殊疾患療養病棟では98%が4:1、4:1を 満たしていて、その他の医療保険適用の療養病床の62%が「4:1、4:1」 を上回って配置されているのが現状の配置状況です。今回の療養病床の再編 成では、今後療養病床は医療必要度の高い方のみを受け入れるということで すので、配置を手厚くして4:1、4:1としてはどうかということです。  なお、この4:1という数字は、昭和58年に特例許可老人病院が創設され る以前の水準になるわけで、7頁に記載があるように、特例許可老人病院の 制度をつくって、それ以降は主に高齢者の長期療養の需要に対応する病床と して、看護職については6:1とした上で、補助者を適当数置くと。療養型 病床群の制度をつくって以降は看護師も適当数ではなく6:1と決めました。 そういった形で、そこで長期療養の需要に応えることをしてきましたが、今 回は医療必要度が必ずしも高くない要介護者の長期療養については、在宅医 療の充実、あるいは居宅ケアサービスの充実と併せて、在宅復帰、在宅生活 支援重視型の施設、在宅ということでやっていこうということですので、医 療必要度の高い方に対応しようとする療養病床については4:1でケアを行 う整理ではないかと考えています。  一方、いま介護保険のほうで、平成23年度末で評価を廃止するということ で、それに向けて転換なりをどうしていくかということです。これが(2) の1つ目の○です。2つ目の○で、それを踏まえて、今回の平成18年度の介 護報酬改定でも、その転換を念頭に置いた経過措置としての、新たな緩和さ れた類型をつくろうということですので、医療法の省令のほうでも、平成23 年度末までの経過措置ということで、附則で、新たに医師、看護職員等の配 置を現行よりも引き下げた類型を経過的なものとして設けて、円滑な転換が できるようにしてはどうかということです。その際の水準については、現行 の介護老人保健施設の水準との均衡も考慮して、医師については現行は最低 3人必要ということですが、老人保健施設の場合は1人ということで、それ を2人にしてはどうかというものです。看護職員の配置については、現行は 看護職6:1、看護補助6:1ということで、合わせて3:1で、そのうち 半分が看護職となっていますが、これを合わせて3:1で、3分の1以上は 看護職員としてはどうかということです。ちなみに介護老人保健施設の場合 は7分の2を看護職員という水準になっています。  この改正をどのタイミングで行うかについては、療養病床の再編成の一環 として、介護保険法の改正を行うことにしていますので、それの成立・公布、 介護報酬・診療報酬の見直しというタイミングで、この省令を改正してはど うかということです。  これをまとめて整理すると、11頁に図があります。いちばん左に「現行」 というのがあります。現行は6:1、6:1というのがありますが、それが 省令改正、法律の公布、報酬改定と合わせて、4:1、4:1を本則とする と。ただ、現行の6:1、6:1は維持されるということです。6:1、6: 1の現行のものは平成23年度末まで存在します。一方、緩和された類型も新 たにつくって、それも平成23年度末まであるという形になります。そういっ た形ではどうかといま検討しています。以上です。 ○部会長 重要な議題で、ご意見はいろいろとあろうと思いますが時間が限 られております。できるだけ簡潔に意見交換をお願いしたいと思います。 ○佐々委員 参考資料ということで、四病院団体協議会から提出した資料が 参考資料1で、これをまずご説明したいと思います。短い文章ですから読ま せていただきます。「療養病床の将来像について(案)に対する意見」とし ています。「平成17年12月21日に厚生労働省より発表された『療養病床の将 来像について(案)』には、介護療養型医療施設の廃止、医療保険療養病床 の体系的再編、さらに特定施設や老人保健施設への転換について述べられて いる。本件について、下記のとおり意見を述べる。記 1.介護保険制度が平 成12年に開始されて以来、介護保険3施設は各々の役割の基に整備されてき た。今回発表された介護療養型医療施設の廃止は、介護保険法改正を要する 介護保険制度そのものの改定であり、社会保障審議会介護保険部会で審議さ れなければならない。このような拙速や制度改定ではなく、十分な審議を行 う必要がある。  2.療養病床の建物はその基準に合わせて設計・建築されている。他の介 護施設や特定施設に転換するためには、隣地の獲得や多額の改築費用が必要 であり、無理に転換しても良好な療養環境を得ることは極めて困難である。 このことは要医療・要介護高齢者が増大する中、効率的な医療・介護の提供 をするという理念に反するものである」。以上です。  1つは、この将来像を決めるに当たって、社保審の介護保険部会で審議さ れなければならないものが、これをなされていないということで、そこでし っかりと審議をしてほしいということが1つであります。  2つ目は、今日事務局から、先ほどの介護3施設の施設設備基準という表 が出されていますが、いま説明のあった特定施設への移行に関しては、それ が資料にありません。ということで、私もあまり詳しくはないのですが、例 えば特定施設のケアハウスですと、1床当たり21平米必要で、さらにそこに 水回りが必要ということで、これに転換することは不可能であります。厚労 省から配られた施設にありますように、いま介護療養型医療施設は1人当た り6.4平米ということですから、これは転換は不可能であります。  有料老人ホームについても、有料老人ホーム協会というのがあるのですが、 そこでも1床当たり13平米となっていまして、そして個室であるということ です。ですから、いまある介護療養病棟、医療療養病棟でもそうですが、こ れを実際に改築してそういった施設に変えることは実際には不可能だという ことがあります。 ○部会長 他にございますか。 ○三上委員 介護療養病床、介護療養型医療施設が6年後に廃止される予定 だと老健局から発表されたときは非常に驚きました。今日のメディファック スにも、昨日の自民党の介護委員会、介護保険委員会、介護療養の話が出て いて、反対意見が多かったということと、厚労省内にもかなり反対があると いうことも書いています。これが十分に議論されて出てきたとは思えません。 いま佐々委員からお話がありましたように、確かにこれを転換していくこと は難しいことも1つありますが、最も大きく見落としているところは、要介 護4、要介護5、いわゆる介護療養型医療施設に多くおられる人たちの行き 場所がなくなると。医療保険のほうの療養病床についても、医療度2、医療 度3を中心にし、医療度1については、今日のメディファックスに出ていま すが、食費や居住費を自費化するというとんでもないことも書いていますし、 そういった人たちの行き場所をなくしてしまうことがあります。  今後は少子高齢化ということで高齢者が増えて、要介護者が増え、あるい は患者も増える中、また少子化の中で生産人口が低くなっていく中で、こう いった方を在宅にするなり、そういった方針が果たして正しいのかどうか。  以前に見城委員が言われましたが、こういった要介護4、要介護5の人た ちを家に帰すことがやむなく行われることになれば、本来生産人口である人 たちが家庭に縛り付けられることになりかねないということで、国全体の政 策として正しいのかどうかについても、十分に検討していただきたいと思い ます。 ○松井委員 医療提供者からの意見ですが、おっしゃられるところもある程 度理解できるところもあります。しかし、介護保険の導入に際しては、介護 保険は、いわゆる社会的入院といわれる方々が介護施設に移っていくという お話を聞いたように記憶していますが、今日示された資料を見ても、必ずし もそのような分化がなされていないことも明らかだと思います。  転換は難しいというお話が出ておりますが、それは本当に医療の必要度の 高い人はより手厚い配置で医療が受けられる施設に変わっていって、そうで ない人たちについては、生活環境が充実したものに変わっていくという話だ と私としては理解をいたしました。  そういうことを考えますと、要するに患者、国民の立場、あるいはこうい う施設に入居するような立場からすると、方向性としてはこれを進めていた だく必要があろうかと思います。少子高齢化で在宅を進めることは少子高齢 化で余計できないというお話がありましたが、少子高齢化の影響の1つとし て労働力人口も減っていきますので、支え手のほうも少なくなっていきます。 そうすると、財源的によりさまざまな仕組みをつくっていき、それを仮にこ ういう転換をしていって、居住施設としてはよりプライバシーが保たれる方 向性を推進していただく、それがいまよりは費用が全体的に安い可能性があ りますので、それは考えていただきたいと思います。  さらにここに書いてあることは、介護保険施行から合計12年間かけてやる という仕組みですので、さらに今後6年くらいかけるという仕組みになって います。本当にこれから6年もかけてやっていいのかと、国民の立場からは もっと早く実施していただきたいと思うところです。 ○部会長 お答えになりますか。 ○老健局総務課長 答えられる部分だけお答えさせていただきます。佐々委 員の意見書の関係ですが、1番目については、私どもの立場から申し上げま すと、この療養病床の在り方というのは、介護保険創設当初の段階から大き な課題でありました。医療保険と介護保険の区分けの問題でもありまして、 この問題は最終的には医療改革、もしくは診療報酬改定とどうしても関係し ますので、医療面と一緒に議論する必要があります。そういう面でいきます と、昨年末から、両方で議論できる環境ができたということで、今回のよう な1つの方向性を出させていただいたところです。  なお、社会保障審議会の介護保険部会というのは一昨年12月に終わってい まして、介護報酬に関する舞台としては分科会というものがございます。  2番目につきましては、どのように転換していくかというのはいろいろな ケースがあると思います。一方的にはできませんので、この受け皿について は個別のケースを見ながら、私どもなりに考えていかなければならないと思 います。この関係でいくといちばん重要な課題ではないかと思っています。 なお、与党のほうでもご議論いただいておりますが、少し誤解があるのは、 療養病床は全部なくなるのではないかということです。私どもが申し上げて いますのは介護型の療養病床の問題でして、そもそも療養病床が全部なくな るわけではありません。その辺は十分に保険局とも連携をとりながらやって いく形が必要ではないかと考えている次第です。  これはしっかりとした受け皿づくり等も含めて、先ほどの三上委員の重度 の方はどうするかという問題もございます。これに関しましても当然考えて いく必要がある課題だと考えている次第でございます。 ○三上委員 財源の問題からこのようなことが起こってきているのは十分理 解をしていますが、老健局と保険局と医政局の3つの部署が関係した問題で す。それぞれが別々の形で出てくると。例えば老健局は介護療養は介護保険 での療養としては無くするのだと。医療保険にやるのだという話ですが、保 険局のほうは医療保険のほうは医療度の高い人たちだけを見るのだから、そ のために看護体制を4:1の替勤にするのだと。医政局のほうは医療法の中 で4:1に変えるのだという話で、バラバラに出てきます。療養病床をどの ようにするかを総合的に検討した場がないということです。ですから、こう いう形で狭間になった人たちが出てくることが大きな問題です。  さらに言えば、今回は慢性期の部分で中医協の診療報酬改定の中でも非常 に大きな財源をそこから捻出するということで、類上げをするけれどもトー タルとしてはかなり財源を出すのだということですから、医療機関側にとっ ても非常にダメージが大きいということがありますので、相当な社会不安を 起こしているのではないかということで、今回これについては慎重に考えて いただきたいと申し上げたいと思います。 ○古橋委員 私は現場で病院の療養病床の中に、介護療養型医療施設と、医 療保険適用の病床を同時に持っている病院の業務を見ておりますと、非常に これがわかりにくくて、同じ病院に入っていながら、片や介護保険適用の方 はおむつも全部供給される、もっと極端に言えば医療廃棄物が、介護施設か ら出たものは市が持ってくれるけれども、医療から出たおむつは持っていか ないというような市まで出まして、末端の細かいところで混乱が起きたりし ていました。非常にわかりにくかったです。患者への説明も現場のナースは 苦慮しておりました。  もっと大きく見ますと、同じような介護を必要とする、あるいはADLが 落ちている高齢者が、病院の介護療養型医療施設に入っていらっしゃる場合 に受けるケアと、同等で老健施設にいらっしゃる方が受けていたり、その人 たちの暮らしを見ると、やはり違っていくわけでございまして、どうしても 医療というものの括りの中でやっていくサービスには、それがたとえ介護療 養型医療施設であっても、そこに主治医、担当医がおられると、水分補給、 検査、栄養という点で、診療と医療が手厚くなってまいります。これを否定 するわけではありませんが、私はこうした、先ほどグラフに出ました非常に 重い療養レベルではない方々は、むしろ老健なり、場合によっては特養にお 移りいただくことのほうが生活者としてのQOLというものが高い状態で人 生を送っていけるのではないかと常々見ておりました。  ですから、療養病床の中に入っておられる、あるいは介護療養型医療施設 に入っておられて、老健や特養がより適切な方に対しては、衣食住の保障と いうことを新たに考えて、全て医療で提供していく、医療で向かい合ってい く発想から脱脚していいのではないかという気がいたします。ただ、現実に 14万病床に近い病床のある介護療養型医療施設を持っておられる病院運営と か、病院経営に関しては、経営上の大きな転換が迫られたり、打撃もありま すから、その辺りは何らかの形の方法論が議論されないと、一刀両断という わけにはいかないと思います。  ただ、高齢者の側から見ると、私は介護療養型医療施設に入っておられる 多くの方々はナーシングケアという点からは、いわゆる介護保険施設のほう の老健とか、特養に移行ったほうが、どんなに介護度が高くても生活者とし てのQOLの維持はなされると。そういう点でここに出された議論は、困難 問題はありますが、検討していくことがあってもいいのではないかと思いま す。 ○豊田委員 この資料の2頁をご覧いただきたいのですが、私は療養病床が できるときに経過をよく見てきた人間の1人です。当時、一般病床、慢性期、 急性期を分けるという議論から始まって、こういう療養病床ができることに なったわけです。そもそも療養病床をつくって、介護保険の適用を受けるか、 医療保険で受けるかというのは、手挙げ方式でやったわけで、全く同じ基準 でつくったものを、どちらにいってもいいという形で。ただ、理念としては、 どちらかと言えば医療が必要、あるいは介護が必要というぐらいのことで、 特に強い縛りもなく始まったわけです。この表を見て大した差がないではな いかというのは当たり前の話です。こういうことは途中でチェックもされま せんでしたし、並行して進んできたらこういうことになったということです。  しかしながら、療養病床は慢性期の患者、より医療の必要な人は医療保険 で、介護に重点を置いている人は介護保険でという、最初にそういったこと があったわけで、結果がいまこうなっていると。したがって、これを今度は 廃止するのだという極端な形で方向転換を図るというところに問題があると 思います。  こういうふうになっていると、それならばこの患者たち、介護のほうにも 医療が必要な人たちはいるわけですから、これを入れ替えるような努力、手 当を講じた上で、廃止するのは最後のことであると思うのです。ですから、 まだ6年です。完全に定着、すべてがうまく回転しているわけではありませ ん。これが全国全部均一に三施設が配置されているわけでもありません。  そういったことで、まだ途上にあるわけですので、現状はこうなったと。 したがって、これを変えるのと本来の理念に基づいて、少し整理をしてみよ うかということがあって、私はその後に廃止という議論になると思うので、 私はそのことを非常に懸念していますので問題提起したいと思います。  それから、簡単に老健に移ったらどうだ、特養に移ったらどうだという意 見は、実際に現場を見た人からは言えない話なのです。老人ホームに入るの は2年、3年待ちは全国至るところにあります。老健にしても半年待ちは普 通です。したがって、この人たちがすぐに特養に入るべきだという話は、こ れは夢物語なのです。そういう現実を踏まえると、これを廃止というのはい かにも乱暴、机上の空論であると。その前に患者たちの入れ替えなりを含め た整理をやってみたらどうかと考えます。 ○松井委員 豊田委員のご意見はもっともだと思います。そこに入っている 方々がどういった形できちんと移っていかれるかということも見据えた上で やっていただきたいということも、あえて申し上げます。ただ、特養は2年 待ち、3年待ちだから変えられないということをずっと言い続けていると、 これは前から言われていることですので、ここは方向性としてどっちにいく のだということを決めた上で、それぞれの医療機関あるいはこういった施設 が準備をしてくださるように、是非お願いをしたいと思います。  その観点からすると、医療計画をつくったり、介護の計画なども、同時に 都道府県が責任をもって配置を考えてやっていただくことは非に重要だと思 います。 ○部会長 もう時間がまいりましたので、療養病床の再編についてもまだま だ議論が必要かと思います。いま何人かの委員の方からさまざまな意見を出 していただきましたが、当部会としては次回にもう一度議論をさせていただ きたいと思います。特に本件につきましては他の部会、審議会でも現在審議 が行われているようでございますので、もう1回事務局のほうで本日の部会 の意見を整理していただき、その上で、次回ご審議をいただきたいと思いま す。4時になりましたので本日はこれで終わりにいたしますが、次回の予定 等についてご説明をお願いします。 ○企画官 次回の日程でございますが、次回は2月1日(水)の午後1時か ら開催の予定です。開催場所と議題については追ってご連絡させていただき たいと思います。お忙しいところ恐縮でございますが、ご出席をよろしくお 願いいたします。 ○部会長 本日はこれで閉会にいたします。大変活発なご意見をいただきま してありがとうございました。 照会先 医政局総務課 山口、野崎 連絡先:03−5253−1111(内線2518)