06/01/18 第27回労働政策審議会職業能力開発分科会 議事録について           第27回労働政策審議会 職業能力開発分科会 日時 平成18年1月18日(水)10:00〜 場所 厚生労働省5号館9階省議室 ○今野分科会長 第27回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催します。本日の出欠 状況ですが、所用により、玄田委員と中馬委員がご欠席です。  まず、厚生労働省における人事異動がありましたので、一言ご挨拶をお願いします。 ○亀島基盤整備室長 1月1日付で、基盤整備室長に配属されました亀島です。どうぞ、 よろしくお願いします。 ○今野分科会長 それでは議題に移ります。本日の議題はお手元の議事次第にあります ように、平成18年度職業能力開発局の重点施策及び予算案の概要についてと、第8次職 業能力開発基本計画の検討についての2点です。今日の主要な議題は第2点目ですが、 その前に議題1として、昨年の9月27日の第20回分科会開催時に概算要求の状況につい て事務局から説明していただきましたが、その後予算案が決定しましたので、事務局か ら簡単にご説明いただきたいと思います。 ○杉浦総務課長 いまお話にありましたように、昨年末に政府の予算案が決定をしまし た。昨年の9月の分科会の時点で要求段階のご説明をさせていただいていましたが、額 が多少変わっていますので、それを中心に説明をします。資料1です。  大きく変わっているところはなく、基本的な重点施策の柱立て及びその内容について は従前説明したこととほとんど同じですので、詳細は省略をさせていただきます。全体 の予算額は、右上にありますように1,598億円です。括弧書きが昨年9月の要求段階の 額で、1,662億円に対して1,598億円となっています。それから、能開局の大きな予算 の重点施策の柱立てとしまして、3つに分かれていることを以前もお話申し上げました が、第1の柱、「各世代に必要とされる職業能力の開発・向上の推進〜2007年問題への 対応〜」は460億円です。ここの中におきましては、1の成長過程における若者の職業 人としての自立の推進のうち、(1)のいわゆる日本版デュアルシステムの推進関係が 87億円。(2)のニートの自立を支援するための地域における体制の構築は新規の施策 です。「地域若者サポートステーション(仮称)」を設置しまして、ニート等の若者に 対する支援を行っていくというものが3.2億円です。25カ所に設置をする予定です。 (3)は「若者自立塾」事業の推進で、これは今年度から実施をしていますが、今年度 は20カ所のものを25カ所に増やすこととしています。以下、学卒若者向けの能力評価・ 公証の仕組みの整備、民間におけるeラーニングの活用等におきまして、若干減少して いますが、ほぼ予定どおりの額で付いています。  2は、社会の中核である壮年層の能力開発の推進ということで、個人のニーズを踏ま えた能力開発に取り組む企業への支援あるいはその事業主の人材育成能力の強化、キャ リア・コンサルティング等々が入っています。ほとんど、これは要求と変わっていませ ん。  3は、職業生活の転換期における高齢者のキャリア形成の支援で、これについてもほ ぼ要求どおりに入っています。4は、キャリア形成支援のための基盤開発、5は団塊の 世代の高齢化に伴う技能継承で、2007年問題に直面する中小企業等への技能継承支援の 創設、ものづくり立国の推進です。若干この辺も減っていますが、ほぼ要求どおりにい っています。  3頁の大きな2つ目の柱、「フリーター・ニート等若者の人間力の強化の推進」とい うことで、117億円です。この辺は第1の柱とかなり重複していますが、3つ目の学生 から職業人への円滑な移行の実現ということで、若者向けのキャリア・コンサルタント の育成といったようなところが入っています。  3つ目の柱は「障害者等の自立に向けた支援」で、72億円です。障害者に対する能力 開発としては、1つ目は公共職業能力開発施設においてのもので、障害者の能力開発校 以外の一般の能力開発校についても、障害者向けのコースを設定していくということで 45億円。それから、事業主や社会福祉法人等による実践的な職業訓練で、委託訓練を行 っていくものですが、6,300人に対象者を増加するということで15億円。それから、新 規施策として障害者職業能力開発プロモート事業。福祉施設や養護学校等の関係機関と 連携を取りまして、能力開発を推進する事業を政令指定都市において試行的に実施しま す。最後に、生活保護受給者や児童扶養手当受給者に対する就労支援で、自立支援に向 けたプログラムに基づいて職業訓練を行うということで12億円です。以上、来年度の職 業能力開発局の重点施策と予算の概要についてご説明しました。 ○今野分科会長 ありがとうございました。ご質問、ご意見はありますか。 ○佐藤委員 2つあります。1つ目は、1頁の1の(2)のニートの自立を支援する 「地域若者サポートステーション」ですが、これと都道府県がやっているジョブカフェ とはどうなるのか。また別に作って、これが総合的なサポートステーションということ だと思いますが、向こうもワンストップサービスと言っているわけです。ですから、そ の辺の関係をどうされるのかということを教えていただきたいです。  2つ目は、2頁の上の(3)のキャリア・コンサルティングの推進は前から進められ ていることで大事だと思いますが、キャリア・コンサルティングの中身はコンサルタン トを育成しているわけです。既にそうなっていればいいのですが、キャリア・コンサル ティングには、これからはライフデザイン・コンサルティングという考え方が非常に大 事だろうと私は思っています。例えば、仕事と生活の関係をどうするかがとても大事で す。あとにデータが出ていますが、女性の場合ですと第一児出産で7割が辞めてしまう。 そのときはそう思っていたが、後で働きたいと思うと非常に働きにくい。ですから、辞 める前に、辞めた後に例えばどういうキャリア選択があるのかについての情報提供がで きているのかとか、あるいは勤め続ける場合でも両立支援がいいとか、育児休業の後は 短時間勤務がいいとか、育児休業の期間はどのぐらいか。あるいは結婚もそうだと思い ます。子供を持つと、仕事のほうとどういう関係があるのかという生活との関係をアド バイスしてあげないと、仕事でのキャリア形成ができないと思いますが、そういう内容 を含めたカリキュラムの内容になっているのかということを伺いたい。ですから、内容 的には既にライフデザインという考え方が入っているのでいいのですが、生活との関係 についてのアドバイスはとても大事。女性だけではないですが、キャリア形成というこ とが大事だと思いますので、その辺を教えていただければと思います。 ○半田キャリア形成支援室長 最初に、ジョブカフェの問題からお話します。ジョブカ フェとサポートステーションの関係については、昨年の早い時期の会議だったと思いま すが一度ご説明申し上げましたように、ジョブカフェはどちらかというとフリーターを 対象としています、今回はニートを対象とした事業として考えています。その際に申し 上げましたように、ジョブカフェはフリーターですので、基本的にやって来てくださる が、ニートの場合には、彼らが自らやって来ることはなかなか考えにくいということで、 1つ目はサポートステーションの核としたネットワークを作って、そのネットワークの 中で支援対象者を把握し、かつ個人個人の状況に応じて必要な支援サービスを、そのネ ットワークの中で実施していこうというものです。すべてをワンストップでやることは 極めて困難であろうと考えていますので、こういう構想を持ち出したわけです。その中 で、ジョブカフェというものは当然このネットワークの中の1つとして入ってくること はあり得ると思います。  さらに申し上げれば、地方公共団体の計画に委ねていこうとしていますので、実質的 にはサポートとしての物理的な設置箇所はジョブカフェの一角になることもあり得ると 思いますし、それを排除しようというつもりはありません。  キャリア・コンサルティングですが、私どもとしてはお話にありましたようにライフ デザインと申していませんが、ライフキャリアの観点から幅広い支援をやっていくのだ と考えています。能開局がやっているから、厚生労働省がやっているから、労働者ある いは労働者に近いところだけを限るのだということは申し上げていませんで、そのよう なカリキュラムに限定しているつもりはありませんが、ライフデザイン全体になるとか なり大きなものになってまいります。ご案内のように、標準カリキュラムは120時間程 度ですので、どの程度どこに重点を置いて養成をやっていただくかは、各養成機関の考 え方に委ねられているということです。ご参考までに申し上げますと、たしか平成15年 からだったと思いますが、雇児局でも、女性の支援のためにキャリア・コンサルタント を配置する事業をごく僅かですが始めていただいていまして、そういったことに対応し ていけるようなキャリア・コンサルタントであってほしいと思います。まだ十分な養成 ができているとは申し上げられませんが、考え方としてはライフデザイン、ライフキャ リアを念頭に置いたキャリア・コンサルティングができるようなキャリア・コンサルタ ントを養成していただくように要請しています。以上です。 ○今野分科会長 よろしいですか。ほかにありますか。 ○江上委員 2頁の3の(2)起業等を支援するための多様な職業訓練機会の確保は 7.1億円なのですが、これはどういう委託訓練先を考えておられるのか。それから、他 の省庁がやっている起業支援策とどういった相違があるのかを教えていただければと思 います。 ○久保村能力開発課長 2頁の3に書いてあるのは2つの柱を考えています。1は地域 における創業を支援する能力開発で、創業サポートセンターの関係の予算及び今度、新 規で要求をした創業支援スポット、創業サポートセンターの箱物型ではないもので、サ ービス内容は同様なものを考えていますが、そういうものを実施する内容の予算です。 (2)の起業等を支援するための多様な職業訓練機会の確保は、起業などを行うことの ノウハウ等をセミナー形式で能力開発として実施をするものと、NPOなどに委託をし てNPOの立ち上げ運営等についてのノウハウを勉強していただくという訓練を想定し ています。 ○江上委員 まだ、あまり具体的なイメージが湧かないのですが、分かりました。 ○黒澤委員 佐藤委員からのご質問に関連しますが、地域若者サポートステーションに 関連します。先ほどはニート対象というお話でしたが、例えば他省庁との関連、ヤング ジョブスポットとの関連はどうなっているのか。これも以前にお話は伺っていたとは思 いますが、もう一度ご説明いただければと思います。その際に、記憶が定かではないの ですが、たしかいわゆる既存のものは大都市が中心だったので、地方のほうを重点的に というお話があったような気がしまして、そうすると今回の25カ所というのは大体どう いった所に設置されるのか。結局、いろいろなサービスが増える、選択肢が増えるのは いいことだと思いますが、それがユーザーにとって分かりにくいものになってしまうと 困るなというのが懸念なものですから、その辺りについて教えていただければと思いま す。  もう1点は、次の若者自立塾が20カ所から25カ所と5カ所増えるということですが、 これについてはもう増やす所の目星がついていらっしゃるのかということと、これまで やっていらっしゃるところなりの評価といったものを踏まえた上での追加ということに なっているのかどうか。例えば、契約を打ち切って違う所に新たにお任せするようなこ とはあり得るのかどうかを教えていただければと思います。お願いします。 ○半田キャリア形成支援室長 まず、「地域若者サポートステーション」です。ヤング ジョブスポットに関しては先ほどのジョブカフェに関するご説明と似たようなお答えに なりますが、あそこもフリーターを中心としていますので、ニートの状態からある程度 高まってきて、ヤングジョブスポットなどでのサービスが適当であるということであれ ば、そこにリファーしてつないでいくことはあると思います。つまり、そのネットワー クの1つとしてヤングジョブスポットが入ってくることはあると思います。  このネットワークの中には、厚生労働省関係だけではありませんで、若者の状況に応 じて例えば精神保健関係の支援が必要な場合もあるでしょうし、障害者支援的な支援が 求められる場合もあるでしょう。あるいは、基礎学力の涵養が求められる場合もあると 思います。ですから、厚生労働省の内部の部局は当然ながら、そういったさまざまな支 援機関が省庁の壁を越えて入っていっていただきたいと思いまして、旧厚生系の部局や 他省庁とも既に一度意見交換会を持っていますが、今後ももう少し頻繁に持ちまして、 そういった要領を作っていきたいと思います。  もう1つのご質問の「地域若者サポートステーション」の設置箇所についてですが、 私は多分、こういうことを申し上げたと思います。ジョブカフェは大体基本的に県庁所 在地に設置されています。これはあくまでも一般論ですが、ニートの状況から考えると、 ニートの皆さんが電車に乗って何時間かかけて県庁所在地までわざわざ行くとはあまり 思えない。やはり、彼らの生活空間の近くで支援が受けられるようにしておいたほうが いいのではないかという点が1つです。もう1つは、中核市レベルになりますと、保健 所も含めてさまざまな支援機関があるでしょうということを申し上げました。そういっ たことでサポートステーションの対象地域としては大都市、県庁所在地ではなくて、中 核市ぐらいを念頭に置いて全国に何箇所か整備していきたい。その際に、例えば既に勤 労青少年ホームというのが全国に500カ所ありますが、こういったぐらいの密度で最終 的に整備できたらいいなということを考えています、といったことを申し上げたかと存 じます。  ただ、現実を見てみますと、正直を申し上げまして市のレベルではばらつきがありま して、こういった問題に熱心に取り組んでくださっている所もありますが、やはり雇用 問題だろう、雇用問題であれば、国と県の仕事だろうという市も実際にあります。そう いったことで、県が中心になって一部の圏域でやるのか、あるいは市が中核になりなが ら県がバックアップしていくのかといった実施体制は、各都道府県のご判断にお任せし ていこうかと考えています。  塾の問題です。5カ所増やしていますが、正直申し上げまして、まだ全塾生が300人 にも至っていない現状ですので、この事業を十分に評価できているとは言い難いですが、 その僅かな数の中でも、やればやっただけの成果は出てきているなと感じています。ま だ卒塾して半年というレベルに達していませんが、一部の塾では既に卒塾後2カ月、3 カ月でとりあえず半分程度は就職しているという報告もあります。やればやっただけの ものがあると思いますので、この塾の方向自体は間違っていないと考えています。5つ を追加するに当たりまして、基本的に平成17年度に認定を受けていただいている塾実施 者にそのままやっていただくことを原則と考えていますが、一部極めて塾生の集まりが 悪い所があります。そういった所については初めての試みですから、直ちに切るつもり はありませんが、その問題点をどう認識なさっているのか、それをどう改善していこう としているのかをきちんとご説明いただいて、そのご説明を評価委員会の先生方にも評 価していただきまして、その上で継続するか、場合によっては平成17年度限りというこ とも視野に入れながら判断していきたいと思います。基本的には20カ所そのまま継続で あろうと思います。  新しい5カ所に目星があるかというご質問ですが、いろいろご紹介はいただいていま すが、まだここは大丈夫だなと確信を持って言えるお話は、いまのところ伺っていませ ん。4月の初め、新年度に入りましたら直ちに公募を始めますので、その公募後に出し ていただく企画書を先ほどの評価委員会の先生方と共に見せていただいて、その上で選 定していきたいと考えています。以上です。 ○西原委員 今後の要望と意見です。1つはそういったいろいろな形での塾に取り組ん だ際の評価みたいなものが予算にどうつながっていて、かつ例えば1の(2)の地域若 者サポートステーションの関係でも当初11億円が3.2億円までの3分の1に予算が減っ たときに、本来意図した事業内容と、予算が変更された部分がどういう形で連動して、 それをどういう形でカバーして、どういったところに影響が出るのか。事業内容の運営 上の見直しである程度カバーできる部分ならばいいですが、例えば半分や3分の1に変 わった場合には当然、その中身がどういう形になるのかが少し特徴的に説明できるよう な資料にしていただけると、事業の中身とそういった部分での連動は非常にわかりやす いかと思います。  評価の部分で若者自立塾でも、もちろん評価があって拡大していくのはわかりますが、 一方で訓練期間をもう少し延ばすべきではないかと、いろいろな声があるようにも聞い ていまして、そういった部分が今後の中で予算上あるいは事業の形だけではなくて、中 身自身がどういう形で見直しがされているのかされていないのか、そういったところも 少しわかるような資料にしていただけると、この予算全体に関わる理解が進むのではな いかと思います。意見としてです。 ○杉浦総務課長 一言だけ。もちろん予算を要求するに当たりまして、あるいは財務当 局と説明、折衝する段階に当たりまして、実績を踏まえた評価をしながら話合いをして、 来年度の予算についてもこういった結果になっているということで、その辺はまた来々 年度の要求をするに当たりましても、そこは毎年実績を見ながらその評価をしながらや っていくことにしています。  「地域若者サポートステーション」の額が減っている部分については、64カ所という 要求を出したことに対して、全体の予算の枠の中で25カ所となったということですので、 これは当初、設置をしようとした目的からはもちろん不十分ではあろうかと思いますが、 それは今後推移を見ながら、来年度は増やす方向でということも含めて考えてまいりた いということです。もちろん、資料の作り方については今後、いまのご趣旨を踏まえて 検討したいと思います。 ○今野分科会長 ほかにありますか。よろしいですか。それでは、この議題はこの辺に させていただきまして、第8次職業能力開発基本計画の検討に入りたいと思います。ま ず、事務局からご説明をいただきたいと思います。 ○杉浦総務課長 第8次の職業能力開発基本計画の関係についてご説明をします。お陰 様で、昨年末に「今後の職業能力開発施策の在り方について」ということでご報告をい ただきまして、労働政策審議会として建議をいただいたところです。もちろん、これを 踏まえて今年度末を目途に第8次職業能力開発基本計画の策定をしていきたいと考えて いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。  資料2は、職業能力開発基本計画についてです。法律上、計画自体がどういう位置づ けになっているかということと、過去の策定状況について資料を出しています。全体を ご説明しますと、資料2−2は職業能力開発基本計画策定に当たっての論点等で、本日 この論点としてお出ししているものを中心にご意見を頂戴できればと考えています。参 考資料の1には、論点に触れられている事柄についての関連するデータ集を付けていま す。参考資料の2は、現在やっている第7次職業能力開発基本計画における職業能力開 発インフラの整備状況についてです。4つの大きなインフラの整備という項目に基づく 具体的施策の実施状況あるいは今後の課題の概略を表にまとめたものですので、説明と 併せてご覧いただければと思います。  まず、資料2についての概略に触れます。1頁は、職業能力開発促進法の中における 基本計画の位置づけがどうなっているかです。計画の根拠自体は法律の第5条の第1項 に掲げられていまして、厚生労働大臣がこの計画を策定をするということです。計画に 定めるべき事項が3つ記載されています。1つ目は、技能労働力等の労働力の需給の動 向に関する事項。2つ目は、職業能力の開発の実施目標に関する事項。3つ目は、職業 能力の開発について講じようとする施策の基本となるべき事項。こういったことを計画 の中に書くことになっています。第3項では、その計画の策定に当たり留意する事項と いうことで、経済の動向、労働市場の推移等についての長期的見通しに基づき、かつ、 労働力の産業別、職種別、企業規模別、年齢別等の需給状況、労働者の労働条件及び労 働能率の状態等を考慮して定めなければならないとなっています。以下、計画の手続と して審議会の意見を聞くほか、関係行政機関、都道府県知事の意見を聴く。第7条では 都道府県が国の計画に基づきまして、県ごとの基本計画を策定する形になっています。  2頁は、以前も一度お出ししているものです。法律改正とともに基本計画の策定をし ていくわけですが、その効果ということで簡単に触れています。左上の法律改正をやっ た場合に、右の事業主は、それの基本計画あるいは基本計画に基づく実際の事業等につ いての見直しをしていただくことになってまいります。法律改正を踏まえつつ基本計画 を策定しますが、各都道府県においては、先ほど申し上げましたように都道府県の能力 開発計画を策定しますが、県ごとの計画の中では必要に応じ、公共訓練のコースや施設 の見直しの実施をしていくことになります。ですから、法律改正及びこの基本計画を受 けまして、向こう5年間の職業能力開発の国及び都道府県、事業主の全体の推進方針を 見直して、あるいはそれに基づき推進をしていただく効果が生まれてくる流れです。  3、4頁は、これまでの第1次から第7次までの能力開発基本計画の策定状況で、第 1次の昭和46年から始まりまして、5年に1回ごとに基本計画を見直してきています。 最新のものはご案内のとおり、現在平成13年度から平成17年度までで動いている第7次 の基本計画です。それぞれ、その時々の概要をそこに載せています。  5〜7頁は、第7次能力開発基本計画の構成で、柱立てだけ載せています。先ほど法 律の中に記載すべき事項がありましたように、第1部は総説、第2部は労働力需給の動 向等で、各種指標を基にしたいろいろな状況の変化について触れることにしています。 第3部は、能力開発施策の実施目標で、今後5年間どういったことを目標に掲げていく べきかということです。本日は後ほどご説明しますが、この部分にどういった項目を書 いていくかについてご議論いただければと考えています。第4部は各論で、それぞれの 基本的施策について今後やっていくべき事項に触れることにしています。これは、これ までにも昨年秋の審議会でいくつかの部分をご議論いただきましたが、まだ議論いただ いていない部分もありますので、そういったものを踏まえてこの各論を記載しています。 詳細な中身は、省略をさせていただきます。  以上を踏まえまして、第3部に記載すべき実施目標をどういった方向で書いていくか で、その論点となるべき叩き台のペーパーが資料2−2です。2頁からです。第8次職 業能力開発基本計画における実施目標の検討に当たっては、以下の諸点に留意すること が必要ではないかということで、大きく5本の柱を付けています。第1は、「人口減少 社会における「働く者」を対象とした職業能力開発施策推進の必要性」です。これまで も縷々説明をしてまいりましたが、若者の能力開発がこれからなお一層必要となってく ることと、団塊の世代の段階的引退という状況の中で、経済社会の活力を維持していく ためには多様な人材一人一人の能力開発が必要だということです。現実には、新規学校 卒業者を含む求職者と雇用労働者を主たる対象として、これまで施策に取り組んできて いるわけですが、こういった方々以外の方も含めて考えていかないと、なかなか対応が 難しいのではないかという状況です。  そのいくつかの点を左の黒ポツごとに5つほど並べています。1つ目は初等・中等教 育段階からの職業意識啓発やキャリア教育といったことについて、教育行政のみならず、 労働、産業等の関連分野の行政からも積極的に参画をしていく必要があるのではないか。 2つ目は、就労せず教育訓練も受けていないニートの自立に向けた支援。3つ目は出産、 育児、親の介護等のために一度キャリアを中断した方の円滑な再就職・再就業に向けて の支援の在り方。4つ目は、働き方の多様化が進む中で、パートや派遣の方とともに近 年は在宅就業やSOHOといった雇用と自営の中間的な働き方をする人たちが増えてい ますが、そういった人たちのキャリア支援の在り方。5つ目は、キャリアの円熟段階に おいて、雇用労働者からボランティアなどの社会活動等へ移行する人たちに対する支援 の在り方といったようなことについて、より幅広く捉えていく必要があるのではないか ということです。  3頁の上にまとめて書いてありますが、いちばん上の段落で、第8次計画の策定に当 たっては、求職者及び雇用労働者にとどまることなく、広く「働く者」全般の職業能力 開発、職業キャリア支援という観点からの検討が必要なのではないかという点です。そ の際の視点としては、現行施策の運用改善による対応の可能性の検証はもとより、他の 行政分野における取組あるいは地方自治体における独自施策との連携、労使団体・職能 団体・NPO、その他の団体等との協働、税制等の政策手段の活用、インターネットを 活用したeラーニングの活用の可能性といったようなことを含めて、幅広く考えていく 必要があるのではないかということです。広く「働く者」という観点で対象を考えてい く必要があるのではないかという問題の提起です。  大きな2つ目の柱は、「労働市場を有効に機能させるための労働市場インフラの充実 の必要性」です。第7次の基本計画におきましては、この労働市場インフラを整備する ことをいちばんの柱に掲げまして、その段落の3行目に書いてある教育訓練インフラ、 能力評価インフラ、キャリア形成支援システム、情報システムといったようなところを 進めていくことを目標として掲げてきました。この部分について相当程度進んでいると ころもありますが、まだまだ企業・業界団体等のニーズを踏まえた能力評価やキャリ ア・コンサルタントの養成、あるいは大学・大学院などの高度かつ多様な教育訓練支援 の活用といったような事柄について、まださらに解決すべき課題が残されているという ことで、こういった課題に対応していくことと併せて前回、建議をいただきました「実 践型人材育成システム」などの今後必要とされるインフラ作りも含めて、その労働市場 のインフラの充実に取り組んでいく必要があるのではないか。  3つ目は、「様々な『市場の歪み』に伴う『人を育てる環境』の揺らぎ」という標題 にしています。「働くこと」をめぐるいろいろな問題が深刻化しているということで、 その人材育成やキャリア支援という観点からその政策の在り方を検討していくことが求 められるのではないか。事象として(1)は能力開発の在り方です。働き方には、1つ は企業から安定した雇用保障や手厚い能力開発支援を受ける一方で、強い拘束力も受け る働き方と、逆に拘束は強くないものの雇用保障が弱く、能力開発機会を求めにくい働 き方という二極化が進んでいるという指摘がある中で、現実に労働時間分布も二極化し ていますし、企業におけるOff−JT実施対象の重点化、異なる働き方への転換への 困難さといったような問題があるのではないか。特に子育て世代でもありますキャリア の発展期について、長時間労働者が増加しています。能力開発機会の制約の中で、キャ リアの将来に不安を抱く者が増加し、またメンタルヘルスをめぐる問題も深刻化してい ます。こういった状況ですと、働く人一人一人のライフキャリアや職業キャリアの持続 可能性だけではなくて、企業の長期的な発展にも重大な問題を投げかけているのではな いか。仕事とそれ以外のバランスを図る中での人間的なリズムを持ったキャリア展開に 対する支援の在り方が必要なのではないかということです。  5頁は、同時に「働くこと」を取り巻く社会の環境変化です。1つは自営業主・家族 従業者に支えられた地域のコミュニティが、これまで若い人たちに対する職業意識や人 間性の涵養に大きな役割を果たしてきたわけですが、そういったことが都市化や雇用労 働者の増加、あるいは中心商店街や中小企業の集積等の変化によって衰退をしているの ではないか。それから、地域社会の変化と合わせて高学歴化などの影響によりまして、 成績主義・成果主義といった価値観が広まり、人材を涵養する社会の教育力が衰退して いく中で、なかなか居場所の見付からないニートや引きこもりといったような問題も深 刻化しているのではないか。  それから、いわゆる「大学全入時代」の到来を控え、「知育」「観念」重視の価値観 が支配的になり、逆に「体」を動かし使うという実践教育とか、心身両面にわたる生活 面の指導が疎かになっているのではないか。そういった実践的な資質を持った人材の潜 在的能力を伸ばすのは難しくなっているのではないかということです。  4つ目に「『人を育てる環境』の構築」で、職業キャリアの持続可能性を確保すると いうことです。職業生涯を通じたキャリアの準備・発展が円滑になされて、そのキャリ アが蓄積されていくことが非常に重要なわけですが、いろいろな働き方が多様化する中 で、キャリアの段階により異なった様相を呈してきています。とりわけ準備・発展期に おいてニート・フリーター・若年失業者の増加や長時間労働といったような問題、持続 可能性に対して危うくなるような問題が生じているのではないかということです。  6頁は、今後5年間の目標です。働く人一人一人の職業キャリアの「持続可能性」を 確保していくことが必要で、若者が人間を磨きつつ職業的自立に向けて歩んでいけるよ うにする。若者に対するいろいろなカウンセリングやコンサルティングを含めて支援を 受ける環境を整備することが必要なのではないか。企業や社会の中でも労働時間と自己 啓発、子育てなどの生活時間とのバランスを確保する観点から、世代間の労働時間の配 分の見直しも必要なのではないか。特に長時間労働が増加しているキャリア発展期、通 常、壮年期と言っている人たちに対する自己啓発あるいは子育て等に対する取組の必要 性です。  (2)は「現場力」の強化のための施策の推進です。これまでも縷々説明をしてまい りましたが、現場における技術・技能あるいは管理能力といった「現場力」の在り方が 今後、なお一層重要となってまいりますし、それを支える人材の重要性が改めて見直さ れているところです。  7頁です。然るに、一方、若年のものづくり現場への入職というのが減少しているこ とと併せて、「2007年問題」も出てきておりまして、熟練した技術・技能への継承が大 きな課題になってきています。こういったものに対応する方策としまして、1つは公共 職業訓練、公共職業能力開発施設の在り方です。これまでも、ものづくり中心に公共職 業能力開発施設で取り組んできていますが、今後の方向性としてさらにニーズを踏まえ たカリキュラム等の見直しを随時行っていくとともに、地域の企業ニーズに即したオー ダーメード型の訓練とか「日本版デュアルシステム」の実施、あるいは地域の企業への 施設開放とか指導員の派遣、指導員と地元企業の技術・技能者との交流、地方自治体に おける産・官・学の連携等の取組に対する参画といった、地域レベルでの現場力の強化 に対する役割が重要であるということです。併せて、技能の振興に向けた各種事業をは じめとする取組を積極的にやるべきであろう。  8頁の(3)は、福祉から自立に向けた取組を支援するための能力開発で、障害者の 方々に対する取組です。第7次計画の中でも、障害者向け訓練あるいは民間の諸機関に 対する委託というような取組で進めてきています。先ほど少し予算の中でも説明しまし たが、政令市との連携強化を含めて、さらにその取組が必要であろう。母子家庭の母や 生活保護受給者等を対象とした準備講習付きの訓練の実施を含めて、自立に向けた支援 策の重要性が必要であろう。  (4)は、多様な地域貢献活動の創出です。福祉、教育、文化等のボランティア活動 など多様な地域貢献活動を作り出すことによって、若者や障害者を受け入れて、集団で の実践教育や生活指導ができる環境を整備していくことも重要なのではないかというこ とと、こういった分野におきまして団塊の世代の方々が長年のノウハウを活かして活躍 できるようにしていくことができると、キャリアの円熟期の人たちが自己喪失に陥るこ となく、充実したライフキャリアを築くことができるのではないか。それから、コミュ ニティの再生にもつながるのではないか。  5つ目は、「人を育てる環境」づくりに向けての官民協力による「公」の役割です。 3で見ましたいろいろな市場の歪みと言われる状況に対応するために、4で見たような 長期的視点に立った人材の育成の枠組みを構築していくことが必要なのであろうという ことです。そのために行政のみならず労使・学校・地域社会・家庭・NPOなどの様々 な主体がそれぞれの役割を果たしつつ、相互に連携をしていくことが必要だということ です。特に、企業が人材を育成することについては、その企業の発展基盤を強化するこ とは当然ですが、そこに働く者の能力を高め、活躍・貢献を導くとともに、実践教育を 具現することによって教育の在り方を見直し、さらにその経済社会の活性化に資すると いう点に目を向けていくことが、非常に重要なのではないか。  近年、経済界の中でもいろいろな点で社会的責任ということを言われています。法令 の遵守や個人情報の保護といったような事柄に加えまして、労働者のキャリア形成や能 力開発支援も企業の社会的責任の一環として意識をされつつあるところです。こういっ た状況を踏まえて、企業の社会的責任(CSR)という観点から、働く者の職業キャリ アの支援の取組を積極的に促していくべきではないかということです。例えば、自発的 な能力開発に対する環境整備や障害者などに対する実習機会の提供、インターンシップ やデュアルシステムの対象者の受入れ、工場の施設開放や見学機会の提供といったよう なことを一層推進していくべきではないか。こういった企業行動を社会全体として称揚 していくことにも意義があるのではないかということを挙げています。  10頁は、柱だけを書かせていただいていますが、いわゆる第4部の各論において基本 となるべき事項で、7つの柱を載せています。こんな柱立てで中身を今後議論していた だきながら、詰めてまいりたいと考えています。本日は特に、9頁までの大きな5つの テーマを中心に、もちろんそのほかの論点もあるかもしれませんが、その実施目標に記 載すべき事柄について幅広い観点からご議論をいただければ幸いだと思います。以上で す。 ○今野分科会長 参考資料は、あとから見ておいてくださいということですね。 ○杉浦総務課長 もし何かご質問があればお受けしますが、いま言葉で触れたことのバ ックデータとして付けているつもりですので、説明は省略させていただきます。 ○今野分科会長 ただいまの説明について、ご質問、ご意見をお願いします。どこから でも結構です。 ○小栗委員 いくつか細かいところもあるかと思いますが、意見なり質問を申し上げま す。1点目は、2頁のいちばん下の黒ポツで、「職業キャリアの円熟段階において、雇 用労働者からボランティアなどの社会活動等へ移行する者に対する支援が求められてい る」、これは確かにそうだと思いますが、この職業能力開発という分野とボランティア の社会活動参加というものをどこまで広げていくのか。職業能力開発という要素の中で 一定の限界もあると思いますが、その辺の領域が非常に難しいと思います。この辺はど うお考えになっておられるのか。  2点目は少し細かい話になりますが、子育て世代が長時間労働で非常に苦しんでいる、 あるいは最近の傾向としても、メンタルヘルスも含めて問題が起こっているのは事実だ と思います。しかし、6頁の黒ポツの2つ目にある「世代間の労働時間の配分を見直 す」という表現は初めて見るのですが、これは具体的にどういうことを指すのか。例え ば30代の世代が働きすぎだから、もう少し長い時間を40代とか50代に振り替えろと言う のか、もしくは20代にもう少し頑張れというのか。何か理解し難い。言葉も含めて説明 をしていただければありがたいと思います。  この資料では全体について、「日本版デュアルシステム」という表現を今回も使って おられますが、できる限り日本版デュアルシステムという表現をもう少し平易な言葉に しようではないかという動きもあったと思うので、この第8次計画は日本版デュアルシ ステムを日本語の平易な表現で統一されたほうがよろしいのではないか。これは意見で す。  9頁の後段に、企業の社会的な責任の範疇に労働者のキャリア形成・能力開発支援と いうものも一環として認識されつつあるという表現ですが、実際にはそうなのだろうか という感じがします。ごく一部であるのかもしれませんが、正直を言ってここまで私ど もは労使のキャリア形成・能力開発支援を、企業の社会的責任と位置づけられている実 例をあまり存じ上げていません。もしあれば、具体的に紹介していただきたいと思いま す。ただ、行政の立場から、こうしたものをこれからのニートやフリーター、あるいは 日本におけるものづくり基盤の発展などのためには、非常に重要な社会的責任分野です よとどんどん訴えていくにはいいと思いますが、こういうのが意識されているからどん どん進めましょうという言い方で本当に事実とうまくミートしているのだろうか。疑問 点として、意見として申し上げます。以上です。 ○草野審議官 最初の点ですが、今回、能力開発基本計画ではありますが、要するにキ ャリア支援という方向にかなり舵取りを行ってきている。今回の第8次計画はある意味 では少し踏み込んで、職業能力開発基本計画ではありますが、キャリア支援を柱にした 計画にしていく必要があるのではないか。こういう狭間の問題で、確かにボランティア ということになりますと雇用労働ではありませんから、厳密に言うと能力開発から外れ てくるわけです。  ただ、生涯キャリアという点から見ると範疇に入ってくるという狭間の問題で、いま は能力開発では例えばNPOなどに委託して、地域貢献活動分野での創業や雇用される 分野については実施しています。ボランティアまでは、まだやっていない。ただ、勤労 者生活部などではマルチライフ支援事業といいまして、在職中から働く者の福祉の向上 という観点から、同時にボランティア活動にも入っていただいて、加齢がするごとに軸 足を移して円滑にそちらに行くようなキャリアの在り方というものにも取り組んでいま す。今度の計画では、そういうことも含めて書いて、関係行政機関と協議しながらやっ ていく。能力開発をやるには、その分野だけを限って書くことでは、必ずしも能力開発 ができない時代になってきているということで、裾野をキャリア全体を見通すようなこ とまでに広げないと、きちんとした能力開発ができないというジレンマに陥っています。 そういうことで、裾野を広げる意味で書いていまして、正確にはおっしゃるように能力 開発の範疇には入らないわけですが、裾野分野としてそういうことまで見通していかな いと、逆に能力開発ができない。枠の中だけでやるとなるとできないということで、あ えて書かせていただいています。もちろん厳密に言うと外れるわけですが、そういうこ とは関係行政機関と協力しながら、計画には入れてはどうかという1つの提案と受け止 めていただければと思います。  6頁は、世代間の労働時間の配分です。これはおっしゃるように、初めての表現では ありますが、ワークシェアリングをやっていく中で新たな課題として、世代間のワーク シェアリングという問題が生じています。キャリアの持続性を考えた場合に、20代、30 代の方は非常に長時間労働になっている。逆に、それより若い方はニート・フリーター も多くて、高齢者になりますと、また労働時間が短くなるので、世代間のアンバランス というものもあります。例えば人を採るにも、若年をだいぶ抑制していることがありま すが、やはり持続的に企業を営んでいくことや、キャリアを考えた場合、バランスよく 雇用し、労働時間の配分も考えていくという大枠が必要ではないか。そういう観点から、 2年前からワークシェアリングの在り方も世代間ワークシェアリングみたいなことを言 い始めています。そのことを書かせていただいています。ちょっとおかしいということ があれば、どんどんご議論していただければと思いますが、キャリアの持続性という観 点から、世代間のワークシェアリングを書かせていただいています。  9頁の「意識されつつある」というご指摘でどうかというのがありますが、ただ経済 同友会でCSRについての報告書を書いていますが、この中ではキャリアや能力開発は 明白に言っていまして、それを受けての表現です。 ○上村職業能力開発局長 参考資料で、例えば労働時間の面でいえば7頁に、年齢別に 労働時間がどうなっているか、それが生活にどう影響しているかという資料があります。 そういったことを踏まえた頁です。9頁の関係は、いま草野審議官が言いましたが、18 頁に日本経団連と経済同友会の提言の抜粋を挙げていまして、こういったことを踏まえ た提案だということでご理解いただければと思います。 ○今野分科会長 よろしいですか。提言があったからといって、やっているかどうかは 本当は別なのですが、一応そういうのを踏まえたということになります。もう1つ、日 本版デュアルシステムの用語についてはご意見としてあったので、何かありますか。 ○上村職業能力開発局長 提案の方向でわかりやすい日本語で検討したいと思います。 ○草野審議官 今回ご報告しましたように新しい形のものは「実践型人材養成システ ム」としているところで、従来のデュアルシステムという表現をどうするか、いま考慮 中です。できるだけ日本語でわかりやすいようにするということはそのつもりで委員の 皆様からもご指導いただければと思います。 ○今野分科会長 それではほかに。 ○黒澤委員 3点ほどございます。最初の2頁にございます、先ほどボランティアとい ったものにも拡大するというような根拠についてのご質問がございましたが、私はこの 2頁目を拝見いたしまして、本当にすばらしいなと思いました。やはり能力開発施策と いうものの在り方といいますのは、大きく分けて2つあると思います。いままで、主に なされてきた直接的に能力開発を支援するというやり方と、それから大きく見て、人々 の能力開発という、もっと拡大して言うと、キャリア形成というか、そういったものの 活動が効率的に、つまり十分に行われるための環境整備をするというのも、能力開発政 策として、非常に重要な役割だと思います。  是非こういったいまのような混乱をもたらさないためにも、そういった能力開発政策 というのは、そもそもどういった根拠でなされなければいけないのかというような、理 論的な根拠もいちばん最初の所に触れた上で、こういった形で論点をまとめていただけ れば、読む側としても、非常にわかりやすくなるのではないかと思います。ですから、 後者の根拠という関連で広く言えば、能力を活かして働く、あるいは社会活動をすると いうようなことができるような環境整備も、やはり能力開発政策の中に含まれると考え られるのではないかと思います。その点、ご考慮いただければと思いました。  2点目はものづくりというところにちょっと私、気になってしまって、6頁以降のと ころなのですが、現場力強化ということでものづくり、製造業というのを非常に中心に 置かれている気がいたしまして、その辺り、もうちょっと拡大できないのかなというと ころです。特にものづくりの現場における熟練技能の継承が難しいということであれば、 それへの支援という観点と、それから7頁の後半にございます日本版デュアルシステム の話ですとか、ニーズを踏まえたカリキュラムの見直しというようなものが、なぜもの づくり分野を中心になされなければならないのか。日本版、あるいは実践型のデュアル システムにしろ、これは別にものづくり分野を中心にするわけではないのですが、ここ のほんの流れだけを拝見すると、そういうふうに見受けられるような印象もあるので、 その辺については、どうなっているのかなというところです。  最後の点なのですが、9頁の先ほどのCSRの話などもございまして、ここでは労働 者のキャリア形成や能力開発支援というものは、企業の社会的責任という意識が企業で も高まっているから、こういうことをやるというか、それを積極的に促進しなければい けないのではないかというような話なのですが、もう1つ重要な観点というのは、これ は実証分析的な事実として能力開発とか、労働者の生活とキャリアのバランス支援とい うか、両立支援を実施する企業の業績というのは、実は高いのだといった分析結果が 様々国内外ございますので、そういった事実を踏まえた上で、その点を情報としてアピ ールすべきなのではないかと思います。 ○草野審議官 確かにおっしゃるとおりで、これはものづくり中心に書きすぎています ので、その点は修正させていただきます。現場力といった場合、ものづくりに限りませ ん。それからバランスを取っている企業業績が高いというのは事実としてそうですので、 それは書かせていただきたいと思います。ただ、CSRをやっているところは余裕ある 大企業が中心で、大企業はこういう余裕があるからということも無きにしも非ずなので す。中小まで含めて、どう広めるかと考えた場合に、優良企業だからできるのだという 議論もありますので、広めていく際にどうなのかという難しい問題がありますが、統計 的にはおっしゃるとおりなので、是非書かせていただきたいと思います。 ○今野分科会長 要するに人材育成は儲かると書くわけですね。そうしないと、いい人 材は集まりませんよということだと思います。もう1つ、黒澤委員のおっしゃる第1点 目については、そういう整理をいただくということでお願いします。先ほどの指摘で書 いていただいたほうがわかりやすいと思います。 ○草野審議官 わかりました。 ○長谷川委員 私、やはり、まだ理解できないのは、小栗委員が質問した「円熟段階に おいて、雇用労働者からボランティアなどの社会活動等へ移行する者に対する支援が求 められていく」ということが例えば具体的な話になってくると、8頁の「多様な地域貢 献分野の創出」というところにきて、触れている話なのかなと自分で勝手に解釈しなが ら、「職業能力キャリアの円熟期の者が自己喪失に至ることなく充実したライフキャリ アを築くことが可能となる」、ここのところが私が理解不足なのでしょうが、イメージ できない。基本の2頁のところで、人口減少社会における働く者を対象とした職業能力 開発施策が必要ですねということで、ニート・フリーターに対して必要ですねというこ とと、団塊の世代が労働市場から撤退していくので、経済社会の活力を維持していくた めには、みんなが能力開発を向上しなければいけない、ここはそうだと思います。初 等・中等教育段階からの職業意識だとか、キャリア教育に関して、教育行政のみならず、 労働とか産業の関連分野の行政の積極的参加というのは何なのか。初等・中等教育での 職業意識のキャリア教育が必要だというのはわかったのですが、そこと労働、産業界の 行政の積極的参加というのが、ちょっとイメージできないので、教えてほしいのです。  あとの黒ポツはそうだなと思ったのですね。職業キャリアを中断している者に対する ものが必要ですねと。雇用就労形態の再評価に対するものも必要ですねと。いきなり 「円熟段階」なのですが、ボランティアって何ですかと聞きたいのですね。ボランティ アって、自律的にやりたい人がやる話であって、何かここに書かれてくると、私もあと 5年すると、定年退職を迎えるから、自分のことを厚生労働省から何でこんなことを言 われなければいけないのかなと思います。私が何をしようと私の勝手ではないかと思っ たのです。ボランティアまでこんなところで強制される。60歳で辞めて、自分の自由な 人生を送ろうと思っていたのに、何でボランティア活動をやりなさいとまで言われるの か。  公益の先生の意見のように、薔薇色ではないわけですね。ボランティアって、自分の 中から、こういうものをしたいと思って来るわけで、何でここでボランティアに対して 能力開発が必要なのか、ちょっと私はイメージできないので、私が常識から遅れている のなら、そこは教えていただきたいのです。ボランティアにどういう能力開発が必要な のかとイメージできません。ボランティアというのは自分の持っている能力ですよ。  例えば、私は60歳までずっと労働運動一筋にやってきたわけだから、そういう40年間 の職業生活で培った力を地域の活動、たとえば職場で悩んでいる女性に対して、「あな たね、子育てしながら、働くときはこうやってやるのよ」とか、そういうのを私は自分 のボランティアでやろうと思っているのですが、そことこの能力開発とどんなふうに結 び付くのかがよくわからないです。  要するに、これはお金が付くわけですから、これをやるということは国の一般予算と 税と使用者負担の福祉の3事業の金を使ってやるわけです。本当にそうなのと思ったの です。私にはこれはちょっと奇異です。私は自分の培ってきた人生の職業経験と60歳以 降出る自分の年金と合わせながら、地域の中でこれまでの自分の何かを貢献したいと思 っていますけど、それと職業能力開発がどういうふうに関連するのか、よくわからない です。  もう1つは、8頁の「円熟期の自己喪失に至ることなく」です。自己喪失に至ってい るというのは、どこの統計とか、どこの分析をもってきたのか。地域に入ってみてくだ さいよ。60歳の定年退職をした人たちの元気なこと。私は朝6時47分の八王子からのホ ームライナーに乗って来るのです。ホームライナーの隣のホームは中央線の高尾のほう に行くホームなのですが、そうすると男女60歳以上の人がリュックサックを背負って、 みんなグループを作っていますよ。地域で主催の活動などを見ると、全部そういう人た ちですよ。そういう人たちがあって、いろいろな所で高齢者の介護などをボランティア でやっている人が結構いて、自己喪失に陥っている人たちというのは、どういうところ を見て言っているのかと思いますが。 ○今野分科会長 よろしいですか。それではいま主に2点ございました。特に第1点は ボランティアですが。 ○草野審議官 体験でおっしゃるところはそのとおりだろうと思います。それは真摯に 受け止めて考えたいと思います。2頁で書いているのは、いままで労働行政として取り 組んでいなかった、要するにいままでは雇用労働者を対象としてきたのですが、雇用労 働者でない例として挙げているということです。ボランティアというのはあまり適切で はないかもしれませんが、要するに社会活動参加ということです。厳密に言うと、先ほ ど申し上げたように、要するに能力開発とキャリアの間の問題。能力開発からいくと、 ボランティアは外れるのです。キャリアということを考えた場合に、ある意味では高齢 期のキャリアとして社会参加というのは1つの重要な意味を持っているということで書 いているわけです。  ボランティアという表現が気に食わなかったら、社会参加ということでもよろしいの ですが。ただ広い意味で言うと、サラリーマン社会になってしまって、昔のような複線 的な価値観がなくなっている、コミュニティがなくなっているというときに、やはり一 種のコミュニティみたいなものを新しく作っていくということが複線的な価値観とか、 人を育てていく上で、地域の役割を考えれば、非常に重要だと思います。  実はボランティアをやりたい、社会参加したいという方は非常に多いわけですが、ど こへ行ったら相談できるのだろう、どういうことから始めたらいいのだろう、こういう 情報は非常に不足しているというのは事実です。これは能力開発のことを言っているわ けではなくて、情報提供とか、そういうことですね。これは連合さん自身もボランティ ア活動というのは、だいぶ支援しているはずです。  そういうことの必要性というのはおそらく高まっているし、そういう部門が出来るこ とによって、現役の労働というのは、長時間労働で、非常にハードですから、そことニ ートやフリーターの方がいきなり行くのではなくて、そういう分野でいろいろ経験を積 んでいただくとか、そういう若者の育成、障害者の活動する場としても非常に重要です し、そういう分野にこれから団塊の世代の方に入っていただいて、作り上げていく良い チャンスいうことでのキャリア支援策という認識がございます。そういう意味で書かせ ていただいているということです。  自己喪失というのは、これは表現が適切ではないので、おっしゃるとおりだと思いま す。そこはご指導いただきながら、表現は考えていきたいと思います。以上です。 ○江上委員 先ほど審議官が今回は一歩踏み込んで書いたというお話でして、4頁の3 番の「様々な市場の歪みに伴う人を育てる環境の揺らぎ」、ここは私も勇気をもってい ろいろな認識をご披露いただいたなという感じがして、大変賛同する部分が多いのです。 特に5頁の(3)の「多様な自営業主・家族従業者に支えられた地域のコミュニティ」 と、このことの価値について触れておられるのですが、やはりこれから多様な企業規模 や、多様な事業形態や多様な働き方、そういったことを是非進行していただきたいと思 います。ただこれを、これから追求していくとなると、今後5年間の開発計画を前提と した1つのコンセプトづくりなので、政策的にはどういうところにいくのかなというの が、これはかなり他の省庁とまたがる問題でもあるので、その辺の構想があれば、少し お聞かせいただきたいと思っております。 ○草野審議官 本当に政策的にどうやるかというのは、誠に難しい話でございまして、 最後に「公の役割」というのを書かせていただいているのですが、官と民の協力で社会 全体で考えていかなければいけない。福祉政策だけの問題ではないだろうと思います。 1つはワークライフバランスとか、ワークシェアリングとか、そういうバランスをどう 取っていくのかというのは非常に重要だと思います。これは官だけではなくて、民の企 業にもいろいろワークシェアリングとワークライフバランスで、モデル的な事業をいく つかやっていただいているのですが、そういうことを見ながら、どのようなバランスを 取っていくのがいいのか、そのことをまた企業で受け止めていただいて、CSR的なも のとして見ていっていただくとか、そういうことが必要だろうということがございます。  それから働き方にしても、非常に長時間労働で競争セクターでやっている部門とニー ト・フリーター問題が生じるような状況と、要するに極端になっていますが、やはりス ローライフ的な分野も作っていくということも重要だと思っています。それが先ほど言 った地域貢献分野ということなのですが、コミュニティの在り方とか、昔は自営業とか 家従など社会の中でも居場所があったわけで、そういうのがなくなってきてしまって、 サラリーマン社会になり、教育のほうもそれを前提に成績で切っていく。そうなります と、なかなか居場所がない。社会全体でそういう所を作っていって、そこが人を育てて いくというか、そういうことも1つです。  ですから、おそらく社会全体につながっていく話なので、どうやるかということは、 誠に難しいのですが、そういうことを念頭に置いて、訓練するとか、情報提供するとか、 官民協力でやっていく。官自体は直接需要は縮小するかもしれませんが、やはりその部 分、民(私)の部分が肥大してもいけないので、公の部分というのを官民協力で作って いって、そういう社会全体の仕組みを作り上げていく、そういうことを支援していくと いう方向ではないかと思います。具体的施策はまさにこれからで、ご指導をいただきな がら考えてはいきたいとは思うのですが、方向としては、ということで考えています。 ○佐藤委員 2つあるのですが、1つは先ほど黒澤委員が言われた、6頁の現場力のと ころです。ここも生産現場、製造業を考えられているのだと思いますが、ご存じのよう に、ここ5年、10年くらい生産現場のものづくりを考えると、製造業が直接雇用してい る人材以外、いわゆる派遣、請負で働いている人がすごく増えています。職場によって は6割、7割が請負なり派遣労働者という動きがあるわけです。  ですから、技能継承というと、メーカーが直接雇用している人だけの技能継承ではな くなってきているのですね。景気が回復すればなくなるという議論があるが、私はそう とは思わない。これは不確実性というのがなくならない以上、やはり請負なり派遣の人 材ビジネスが供給する労働力を活用していくということが、メーカーのものづくりに不 可欠です。  やはりどうもこの文章だけ見ると、製造企業が直接雇用する現場での技能継承という イメージが強いのだけれども、そうではなくて、実は人材ビジネスはサービス業なので すね。サービス業が雇用する、そこで働いている人たちを含めた技能の継承ということ が大事で、それは人材ビジネスだけど、実はこれからメーカーを定年退職する人たちが その人材ビジネスに移って、そこの若い人たちに技能継承をするということを考えない といけないと思いますので、その辺を含めて考えていただくと、ありがたいと思います。  もう1つはニート・フリーターと今回若者に少し重点を置くというふうに書かれてい るのですが。そのときに資料の3頁によく使われる失業者・フリーター・ニートの総数 のデータですが、最近ニート・フリーターという言葉だけが独り歩きして、たくさんい るではないか、たくさんいるから政府としても対策を打つということになっているので す。例えば今回、先ほど江上委員が言われたように自営業とか、家族従業員、多様な働 き方と言っているのですけれども、このデータはどれを使っているかはわかりませんが、 内閣府のニートの定義だと、家族従業員はここに入っているのです。要するに、データ によっては家族従業員はニートだと言っているのです。  ボランティア活動をやっている人はどこに入るのですか。例えばですよ、フリーター の中とか、ニートにデータとして入っているかもしれない。あるいはフリーターでも仕 事をしている人もいるし、そうではない人もいるというのです。いちばん最初に問題を とり上げた厚生労働省の労働経済白書では、例えば女性は未婚者だけなのですね。既婚 者になると外れるという定義なのです、フリーターは。そういう定義がありました。  結婚すると、フリーターではなくなる。フリーター・ニートという既存のデータを役 所が出しているから、それに乗っかるというのを少し見直した上で、政策を立てないと、 誰を対象にして、施策をやるのかというところを間違えてしまうのではないか、という 気がしますので、その辺を精査していただきたい。つまりどういう若者なのか。ニー ト・フリーターが若者というのはちょっと安易すぎるなという気がします。  3つ目、ボランティア活動は言うつもりはなかったのですが、先ほどスローライフと いうお話がありましたので。ボランティアはやはり、ボランティアをちゃんとやっても らわなくては困るのです。ほどほどでボランティアというのは、いちばんボランティア をやっている人は困るのです。もちろんメインはフルタイムの仕事をしているとか、こ この土曜をやるとか、でもそのときはちゃんとボランティア活動をやってもらわなくて は困るのです。そういう意味では、ほどほどでボランティア活動をやるというふうにな ってしまうと困るので、その辺、そうではないということをご理解しながらやっていた だければ、ありがたいと思います。 ○今野分科会長 いちばん最後の件はご意見だと思いますので、最初の2点について、 お願いいたします。 ○草野審議官 おっしゃるように、ものづくり分野というのは自分の所の企業の中の正 規従業員だけでなく、派遣、請負というのは非常に多いので、それ全体で見ていかない と、ものづくり分野の全体像が見えません。製造業派遣が解禁されましたから、これは かなり出てきているので、おっしゃるような視点で見ていくことが重要だというふうに 思っています。それはもうご指摘のとおりだと思います。  第2のニート・フリーターで、労働経済白書のほうはニートは64万人としていますが、 内閣府のほうでは85万人としています。この21万人の差がまさに家族従業者でござい まして、これは実態的には入れたほうが適切かなという感じも確かにいたします。です から、ニートの実態を捉えるには、そういうことで考えていくほうがいいかなという感 じも持っていまして、ここはむしろ先生方に教えていただきながら、考えていきたいと 思っています。  それから、ボランティアが非常に難しいのは、おっしゃるようにちゃんとやらなくて はいけないということなのです。ちゃんとやっていくと、指揮命令に従うような形に近 くなってきて、使用・従属との境目がわからなくなって、そうなりますと、急に最賃違 反になってしまう。ここら辺のあり様が誠に難しいのですね。無償ボランティアという のもありますが、やはり幅広くやっていただくためには、有償ということも考えていか なくてはいけない。有償にした途端にそういうことが出てきて、最賃違反ではないかと なる。ここは正直言って、働き方かキャリアか社会参加か知りませんが、どう認知して やっていくのかと誠に難しい問題です。なかなかぐるぐる回りするところです。ここら はむしろ先生方のお知恵を借りながら、広めていく場合の働き方、参画の仕方としてど う考えるかというのは教えていただきたい分野です。 ○佐藤委員 私はちゃんと活動をやる一定の職業能力が必要であると思うのですが、だ から、有償にしなければいけないとなると、それはまたちょっと問題だと思っています。 例えば、お子さんを預かったりするサービスをボランティアで受けたとき、誰でもやれ ますというのでは困るわけで、ですから、一定の訓練、もちろんそれは企業に対しての 責任は発生すると思うのです。だから、今度有償にしなくてはいけない、労働法制の枠 をはめなければいけないというのは、ちょっとまた問題だと思うので、私はそういう意 味で言ったのではないのです。 ○今野分科会長 いま江上委員と佐藤委員の発言との関係で、江上委員の発言は5頁目 で、要するに地域コミュニティが少し弱くなって、地域の教育力が落ちているから、対 応しろと、そういう話ですね。そのときの政策を作るときに、この文面では例えば商店 街が衰退しているという話が書いてあるのですが、いまのご説明の中では、サラリーマ ンが働きすぎということもあるのではないかとか、違うことをいろいろおっしゃってい るので、いずれにしても地域の教育力が落ちたのは何かということは、少し分析データ を整理をして政策を立てなくてはいけないと思います。それについてはもう少しデータ を整備していただきたいということです。  もう1つは佐藤委員との関係では、現場力の問題で派遣、請負の問題なのですが、こ れはおっしゃったとおりだと思いますが、では派遣、請負が本当に、ここにいう技能継 承に関係があるのかないのかというのは、またこれは別の問題なので、これもきちっと 確認する必要がある。この辺は佐藤委員は詳しいから、佐藤委員辺りからデータを提供 していただいて、こういうデータでこういう分析があるから重要なのだということで入 れていただかないと、少し説得力がないのでお願いをしたいと思います。ほかにござい ますでしょうか。 ○西原委員 4頁の(1)「企業から安定した雇用保障や手厚い能力開発支援を受ける 一方、強い拘束力も受ける」あるいは「拘束力は強くない」という表現があります。こ れだけざっと見ると、典型、非典型や、正規、非正規という形での区分みたいな形なの ですが、拘束という言葉が持っている意味を明確にしたほうがいいのではないかと思い ます。それと、認識として、いま能力開発機会ということでいくと、働いている人の中 での二極化というか、格差がどんどん広がっているなというような問題意識を強く持っ ておりますので、これはただ正規、非正規というだけではなく、例えば企業規模間なり、 業種間なり、企業間においても、かなりここの部分については、特に大きく格差が逆に 開き易いゾーンであるだけに、いわゆる二極化の中身をもうちょっと詳しく深掘りした ほうがいいのではないかと思います。  その中で、民間でやる部分、あるいは公的な部分で支援しなければならない部分とい う形の整理で、役割分担を明確にしていく必要があるのではないかというのが1点です。  もう1点は、先程から、ものづくり、現場力の所で、正規、請負云々という論議があ ったのですが、現場力といった場合にはサービスを含めて、ありとあらゆる分野におい て対象になるというのは当然だと思いますが、一方で特にものづくりのところが、最近 ちょっと見直しの傾向はありますが、ここ数年来かなり軽視されてきた経過があります ので、そこのバランスはちょっと認識した上での政策推進の検討をお願いできればと思 います。2点です。 ○今野分科会長 何かございますか。1点目は4頁の「拘束」という表現がわかりにく いということだと思います。 ○村山調査官 また表現ぶりは各側、特に公益の先生方のご指導をいただきながら、見 直すべきは見直したいと思いますが、書いている趣旨といたしましては、例えば働く時 間帯の変更ですとか、転勤命令がどれぐらい出されるかとか、仕事の種類について、ど れぐらい縛られるか、あるいは働き方の変えやすさがどれぐらいであるかというような ことを意識しています。それについて、雇用保障の強さと弱さ、長期的な雇用保障との カウンター・バランスで、逆になっている面もあるということで、それがどっちか。理 念型として言えばですが、どちらかの選択ということを迫るような流れが少し強まって いるのではないかという各方面からのご指摘を受けての表現というふうにご理解いただ ければと思います。表現ぶりは、また検討したいと考えています。以上です。 ○西原委員 いまのことでいくと、認識としては例えば企業からの拘束は強いけれども、 能力開発機会が弱い例ももちろんあるわけで、そういうことも含めて、ちょっとここは 整理されたほうがいいのではないかと思います。 ○今野分科会長 2点目の「二極化」の中身ですが、結局ここで書いている趣旨はほか との関係がありますが、企業が能力開発をたくさんする層としない層がありますね、と いうことですね。そうすると、先ほどのご質問では、こういう分け方の二極化もあるが、 違う分け方の二極化もある。いろんな二極化があるのではないかというお話でしたが、 この辺について、どうでしょうか。例として、大企業、中小企業というお話がございま した。 ○村山調査官 従来の職業能力開発基本計画との関係で言いますと、大企業と中小企業 との問題はむしろ伝統的に非常に意識されてきた問題で、当然具体的な個別論を書く中 では、中小企業に対する支援は1つの大きな各論の柱になっていくだろうと思います。 その上で、今回は第8次計画でとりわけ意識すべき点について、新しく出すという意味 においては、例えばここで書いているような問題もあるのではないかということで書い ております。  併せまして、能力開発の二極化のことについては、この分科会のご議論でも9月から 10月にかけて、かなりやっていただきまして、これは私どもとしても非常に難しい問題 でしたが、労使の間で意見が合わないということだけでなく、分科会としても、なかな かご意見がまとまりにくい部分だったのではないかと思っております。その中で、建議 の中で一応コンセンサスとしていただいたのは、能力開発基本調査に見られる訓練実施 率において重点化が進んでいるという点ぐらいだったのではないかと思います。確かに いま西原委員がおっしゃいましたような同じ雇用保障が強い中でも、いろいろな二極化 があるというような問題も含めて、更に精査すべき点が残っているかもしれませんが、 ベースとしましては従来から受け継いできています大企業、中小企業の問題と、ここに 書いているような問題と、そこら辺を基本に今後更にご指導いただきながら、深めてい ければと思っています。 ○今野分科会長 ここは言ってみれば、正社員、非正社員とか、典型、非典型ですが、 あと大企業、中小企業とありますが、ほかに何か重要な、我々が考えなければいけない ような二極化の現象があれば、ここから皆さんのご意見をいただけると大変助かるとい うことになりますね。何かありますかね。例えば、雇用労働者と非雇用労働者とは差が ないのですかねとか。ちょっと思いつきですが。例えば中小企業、零細企業の人たちは どうやって能力開発するのだろうかとか。そんなことをちょっと思ったりするのですが。 何かそのようなことがあったら、皆さんいいアイディアがあったら、お知らせいただけ ればと思います。 ○黒澤委員 ちょっとその観点から、非典型といわゆる典型の間、あるいは非正社員と 正社員の間、そういった格差が広がっているだろうというのは何となくわかるのですが、 それが統合された情報を得ることができる全国レベルでの統計というのは。 ○今野分科会長 ない。 ○黒澤委員 ないというのは非常に大きな問題だと思います。 ○長谷川委員 能力開発の実施を典型と非典型ですか、その調査はあまり数字はないの ですが、ヒアリングすると非常によく分かります。私どもはちょっといくつかの産業を ヒアリングしたのです。製造業とか、サービス業です。その企業の能力開発をどういう 形でやっているのかと見ると、よくわかります。やはりパートタイマーに対しても、基 幹的なパートタイマーとそうでないパートタイマーのどこの訓練計画に入れていくのか というのでですね。基幹的なパートタイマーなどは正規労働者と同じような研修コース のところに組み入れている。それはむしろ企業の人によく聞くと、はっきり出てくるの ではないかと思います。 ○今野分科会長 いま黒澤委員がおっしゃったような全国的な調査というのはないので すが、いまJIL−PTがやっている個人調査があって、何千人ぐらいでしたか。要す るに個人が能力開発に投資する時間とお金をはかっているのですが、正社員と非正社員 というのは、全然違います。ですから、そのようなデータも付けるといいですね。でも、 ほかにも本当は二極化があるのかもしれないと私は思っているのです。 ○上村職業能力開発局長 参考資料の10頁をご覧ください。これは能力開発については 平成15年ですが、調べたものです。先ほど、今野分科会長がおっしゃいましたが、非雇 用労働者というのは論理的に成立しないような気がします。非雇用の就業者か、働いて いる人というのか。 ○今野分科会長 はい。 ○村山調査官 補足ですが、10頁の資料は、以前もご指摘があったかもしれませんが、 派遣など元・先と労働者の三者間の話になりますと、いろいろな読み方ができる資料な ものですから、そういったことを含めて、黒澤委員のご指摘だったと思います。また幅 広く情報をいただいて、資料のほうは精査してまいりたいと考えています。 ○上村職業能力開発局長 いずれにしてもこれしかないのです。 ○黒澤委員 先ほどの貴重な情報ありがとうございます。それと、佐藤委員のところで 経産省の委託で、非正社員(無業の人も含めて)能力開発の実態調査を去年やりました。 それは一時点だけの、一発なものですから、やはり継続的に全国基模で、しかも国の名 前でやっていただかないと、回収率は落ちるし、継続的に政策立案に使えるような情報 がないというのが非常に問題だというのが1つあります。  それから、佐藤委員のところでやりました統計をちょっといじってみると、若年の非 正社員というのが自己啓発にものすごくお金を使っているのですね。しかしながら、そ れが必ずしも就業に結びついているかというと、そういう状態でもないようでして、過 去の自己啓発を見ていても、若年のときにやっている自己啓発は全くその後の将来的な 就業確率ですとか、賃金にあまり影響がないようなまま状況が見てとれるようなところ もあります。  ですから、そのような個人ベースでの能力開発の実態と、できれば雇用主情報も付け た形での非正社員も含めた調査が何らかの形で継続的にできると、非常に有益な情報が 得られるのではないかと重ねてお願いいたします。  総務省の労働力調査のほうにちょこっと能力開発についての項目が盛り込まれるよう な動きはございますが、是非厚労省のほうからもサポートをお願いいたします。 ○佐藤委員 前も少しお話しましたデータの件ですが、厚生労働省が行っている、いわ ゆる制度調査、例えば企業がどういう教育訓練とか、人事制度をやっているか、などは たぶん30人以上だろうと思います。この就業形態多様化は事業所規模5人とかに落ちて いるのです。いわゆる正規、典型、非典型に分けてもいいと思いますが、典型の人と非 典型の人とでは従業先の企業規模が、実を言うと全体的に違うのです。全体の分布でい うと、非典型の人が規模の小さな所でたくさん働いているのです。  非典型の人が働いている所は、実はデータがないのです。調査していない所に非常に たくさん働いている。特に個人、非典型をやる場合には、企業を通じてやると、規模が 小さい所が多いですから。そうしますと、地域でサンプルを取るしかないです。  そういう仕組み、特に個人を対象にした調査をやらないと、特に能力開発などは必要 な対象も捉えにくい。企業を通じて、一定規模以上のところで働いているというと、非 典型の人の一定層以上しか調査がいかないということになりがちですので、そういうこ とも含めて、少し中期的に考えていただいただくことが大事なのではないかと思います。 ○今野分科会長 いろいろ意見が出ました。完璧なデータはないけれど、今いろいろそ ういうデータが出てきていますので、少し参考にしていただきたいと思います。ほかに ございますか。 ○長谷川委員 佐藤委員に質問をいたします。例えば非典型の派遣労働者だと派遣元が 訓練するとなっているのですが、実際派遣元の能力開発がどれぐらいちゃんと行われて いるのかとか、パートだとか有期の人は、自分の能力をアップするときに、昼の時間帯 に自分で行っているのか、それとも、夜に行っているのか、またスキルアップするとき に何かやろうと思ったときにどういう所を見ながら、どういう動機で行くのか、そうい う調査はあるのですか。 ○佐藤委員 いくつか単発にあるかもわかりませんが、マクロでここにあるような、10 頁の中のものとか、あと個人調査のものだと思います。ただ、もう1つ難しいのは派遣 の場合、特にいわゆる有期、例えば登録型派遣の場合を考えれば、いわゆる経済学的に は一般的な熟練ですから、本来派遣元は訓練しないわけです。少ししないといけないと 言うと、ではお金はどうするのという話になると思うのです。ですから、一般的には機 会は提供して、かなりお金は取るというような所は、登録型の場合多いです。  ただし、技術系の派遣会社、又はいわゆる正社員雇用でやっている派遣会社は別だと 思います。ですから、派遣も2つに分けて考えないといけない。15万人くらいは、いわ ゆる常用型の派遣です。そこについて、登録型の派遣は能力開発の仕組みなり課題を分 けて考える必要があります。ちょっと話がそれました。 ○鈴木委員 ちょっと話ががらっと変わるのですが、参考資料の17頁に生活保護受給者 の数が出ております。論点のほうは8頁がかかわってくると思うのですが、ニートが最 近生活保護に寄生をしているという話を聞いたことがあります。その辺の実態がどうな っているのか、もし情報があれば。これは「福祉から自立に向けた能力開発」でそれを 自立させていくことにからんでくると思うのです。是非その辺のデータがあったら教え ていただきたいと思います。  それから、17頁の表の見方ですが、人数は上のほうでわかりますけれども、下のこの 枠組みの中で、ニートはどこに入ってくるのか。「被保護世帯数」が増えていますが、 この右側にある「母子世帯」から「その他」までを足せばこうなるのでもなさそうなの ですが。 ○村山調査官 まず、2つ目の質問からお答えします。「母子世帯」の世帯区分におけ る定義は、現に配偶者がいない65歳未満の女子と18歳未満の子供のみで構成されている 世帯です。この分類は生活保護制度上の措置との関係です。母子の世帯、高齢者の世帯、 傷病者の世帯、障害のある方の世帯以外の累計は、いまご指摘の点も含めて、「その 他」にかなり吸収されています。単身で、ニート状態ないし若い方で稼ぎながらという ような場合にはそこに入ってしまうことも多いかと思います。  「その他」の世帯の伸び方は、全体の平均よりもずっと多いと言えます。その上で1 つ目のご質問です。これも社会・援護局とよく相談して、精査したいと思いますが、社 会・援護局で最近の検討会や社会保障審議会に報告している内容を見ましても、やはり ニート等の若年者の問題、あるいはメンタルヘルス復帰者の問題などが非常に強く意識 されているところです。  あるいは社会保障関係の審議会のヒアリングで、市町村からもそのような声が上がっ ています。鈴木委員ご指摘のようなことは確かにあるのだろうと思います。明確にわか るように整理して提出いたします。いずれにしても、「その他」の世帯にかなりいろい ろなものが入っていて、その伸びは最近非常に高いということです。 ○谷川委員 過去の基本計画を拝見しますと、副題が付ているケースとないケースがあ るのですが、今回はどうされるのですか。副題はあったほうがいいように思います。こ の資料はよく出来ていまして、最後の10頁目に今後の課題が1から7まであり、ほとん どこれで網羅されていると思います。しかし、どこかめりはりという点と、いまの時代 背景を言いますと、過去の副題は非常によく出来ています。  経済動向や社会動静を睨みながら、ここがポイントだとわかりやすく表現されていま すので、ない場合はきっと難しいのだろうとわかるのですが、できればあったほうがわ かりやすいのかなと思います。 ○今野分科会長 私も同感です。やはり一種のメッセージですからね。是非とも考えて ください。ほかにございますか。 ○半田キャリア形成支援室長 先ほどのボランティアの問題からして、キャリア支援を 担っている立場から、一言だけよろしゅうございますか。私どもはキャリア・コンサル ティグを通じたキャリア形成支援に取り組んでおります。こういったものを進めていく 上でも、やはりボランティア問題とか、労働外の問題に関しまして様々なご指摘やご意 見をいただくことがあります。いちばん多いのは、旧労働省がやっているキャリア・コ ンサルティングだから労働問題だろうと。職業能力訓練は能開局がやっているのだから、 職業能力開発や求人・求職のマッチングが主であって、対象も労働者や求職者だという お話になりがちなのです。  そのときにいつも私が申し上げておりますのは、冒頭佐藤委員からもお話がありまし たように、キャリアの問題はライフキャリア全体も視野に入れていかねば、適切な相談 支援は困難です。その選択メニューにはボランティア活動もありますし、若い方であっ たら、ワーキングホリデーで外国に行ってみるなど、幅広い視野をもって、相談支援を 考えています。職業能力キャリアが8割は占めるかと思いますが、それだけに限っての キャリア支援はなかなか難しいものがあり、それ以外のところにも目を向けてやってい ただきたい。ここは多くの方になかなかご理解いただけない場合があるものですから、 一言申し上げたいと思います。  もう1点申し上げます。若者支援におきまして、実業界を引退なさった方々のボラン ティアの貢献には大変大きいものがございます。ヤングジョブスポットよこはまでも、 日軽金の社長までお務めになった方にボランティアでアドバイザーをやっていただいて おります。この方に対する若い人たちの信頼は非常に大きく、こういった方々にもっと ご活躍してほしいと思っております。そのようなことも少しご報告いたします。以上で す。 ○今野分科会長 ほかにございますか。それでは今日の署名委員は労働者側委員の西原 委員、使用者側委員は山野委員です。最後に事務局から今後の日程について説明があり ます。 ○村山調査官 今後のスケジュールは、2月までのご案内を差し上げております。次回 の1月30日と、1回飛ばして2月21日は労使各側から、もう少し個別のテーマとして公 共訓練や技能検定や海外協力などの議論を深めるべきとのご意見もいただいております ので、本日の総論のご議論も踏まえつつ、それらについてお願いしたいと思います。  一方、前回取りまとめていただきました建議の内容に即した法律案の策定作業に入っ ているところです。次々回の2月1日は、この法案要綱について調査・審議をお願いで きればと思います。3月以降は、改めて日程の調整をさせていただきます。  次回は1月30日(月)10時から12時で、場所は省議室です。 ○ 今野分科会長 それでは、終わります。ありがとうございました。 【照会先】厚生労働省職業能力開発局 総務課 企画係 (内5313)