参考資料2

幼稚園教育要領と保育所保育指針の関係


 類似点

 幼稚園教育要領、保育所保育指針とも、(1)子どもと保育者との信頼関係を基盤とする。(2)子どもの主体的な活動を大切にし、適切な環境の構成を行う。(3)子ども一人一人の特性と発達の課題に即した指導を行うことなどを基本としており、幼児教育の指針として整合性が図られている。

 特に3歳以上児の教育的機能に関しては、保育所保育指針は、幼稚園教育要領との整合性を図りながら規定されている。

 地域社会における子育て支援については、幼稚園教育要領では、「第3章 指導計画作成上の留意事項」の「2 特に留意する事項」において、幼稚園が子育て支援のために施設や機能を開放して相談に応じるなど地域の幼児教育のセンターとしての役割を果たすよう努めることとしている。
 保育所保育指針においては、「第13章 保育所における子育て支援及び職員の研修など」の「2 地域における子育て支援」において、一時保育、地域活動事業、乳幼児保育に係る相談・助言などの努力規定を定めている。


 相違点

 幼稚園教育要領では、教育課程の編成基準を示し、幼稚園の1日の教育時間の標準を4時間と定め、各幼稚園において、創意工夫を生かし、幼児の心身の発達と幼稚園及び地域の実態に即応した適切な教育課程を編成し、3歳以上の幼児に対し保育(幼児教育)を行うものとしている。
 いわゆる「預かり保育」と称される長時間保育については、教育課程に係る教育時間の時間外に行う教育活動として位置付け、その配慮事項について示している。

 保育所は、保育に欠ける子について、乳児期から一日の大半の時間を生活する所であるため、養護と教育が一体となって豊かな人間性を持った子どもを育成するところに特色があり、保育指針においては、生命や健康の保持、情緒の安定、食事や排泄などの基本的生活習慣の確立など項目が詳細に記述されている。(保育所児にとって、保育士は親にかわる愛着・依存対象者でもあり、子どもと保育者との安定した情緒的な関係が非常に重視されている)

 子どもの人権・文化の違いへの配慮、性別による固定的な役割分業意識を植え付けないための配慮、身体的苦痛を与えないこと、守秘義務、虐待への対応などについては、保育所保育指針のみに記述されている。(ただし、幼稚園においては、学校教育体系の中で、同様の他法、他通知等により同様の趣旨で概ね実施されているところである。)


 その他

 幼稚園教育要領は法令という性格上、実際の指導の詳細についてまでは記載されていない。各幼稚園においては教育要領に合わせ「幼稚園教育要領解説」(文部科学省初等中等局長編集の資料集)を併用して、実際の教育課程の編成・実施を行っている。
 例えば、教員の園内研修の重要性などは幼稚園教育要領解説に記述されている。

 現在、幼稚園教育要領に関しては、文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会の初等中等教育分科会教育課程部会内に幼稚園教育専門部会が設置され、その改訂を含めた議論が行われているところである。



幼稚園教育要領と保育所保育指針の対比表

1 教育・保育内容の規定
  幼稚園教育要領 保育所保育指針
規定の根拠
学校教育法に規定する幼稚園教育の目的・目標の達成のために、学校教育法施行規則に基づき、文部科学大臣が公示。(文科省告示)
厚生労働省児童家庭局長通知
性格
3歳以上の幼稚園入園児に係る、幼稚園の教育課程の基準
(小・中学校等における学習指導要領と同等の扱い)
保育に欠ける乳幼児を対象とする、保育所保育のガイドライン
3歳以上の教育的機能については、幼稚園教育要領との整合性を図る。
構成
(1)総則
幼稚園教育の基本、目標、教育課程の編成(→後述)

(2)ねらい及び内容
(「健康」・「人間関係」・「環境」・「言葉」・「表現」に関する5つの「領域」ごとに示す。)


(3)指導計画作成上の留意事項
(子育て支援、預かり保育、安全、障害児の指導等の扱いを含む。)
(1)総則
保育の原理(目標、方法、環境)
(2)子どもの発達
(子どもの発達に係る全般的な留意事項)
(3)発達過程区分ごとの保育の内容
(6か月未満児、〜1歳3か月未満児、〜2歳未満児、2歳児、3歳児、4歳児、5歳児、6歳児の8区分ごとに、発達の特徴、保育士の関わり、ねらい、内容等を示す。)
(4)保育の計画作成上の留意事項
(5)健康・安全に関する留意事項
(6)保育所における子育て支援及び職員の研修など
基本
(原理)
(3歳以上の)幼児を保育し、適当な環境を与えて、心身の発達を助長するという目的(学校教育法77条)を達成するため、幼児期の特性を踏まえ、環境(教育環境)を通して行う。
教師は、次の事項を重視して教育を行う。
幼児の主体的な活動を促し、幼児期にふさわしい生活が展開されるようにする。
幼児の自発的な活動としての遊びを通しての総合的な指導を中心として生きる力の基礎となる心情、意欲、態度等を育む。
幼児一人一人の特性に応じ発達の課題に即した指導を行う。
その際、教師は、幼児の主体的な活動が確保されるよう計画的に環境(物的・空間的環境、人的環境を含む教育環境)を構成し、また、幼児の活動の場面に応じて様々な役割を果たし幼児の活動を豊かにしなければならない。
(保育に欠ける子に対し)家庭や地域社会と連携を図り、保護者の協力の下に家庭養育の補完を行う。
乳幼児の最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進する。
子どもが健康、安全で情緒の安定した生活ができるよう環境を用意し、自己を十分に発揮しながら活動できるようにする。
養護と教育が一体になって、豊かな人間性を持った子どもを育成する。

(○保育士による保育の在り方
「保育の方法」として記述。
下欄参照。)
目標  生きる力の基礎を育成するよう幼稚園教育の目標(学校教育法78条)の達成に努める。

(1)基本的な習慣や態度を育て健全な心身の基礎を培う。
(2)自立と協同の態度及び道徳性の芽生えを培う。
(3)自然などへの興味・関心を育て、豊かな心情や思考力の芽生えを培う。
(4)生活の中で言葉への興味・関心を
育て話し聞く態度や言葉の感覚を養う。
(5)多様な体験を通じて豊かな感性を育て創造性を豊かにする。
 子どもが現在を最もよく生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培う。

(1)生命の保持及び情緒の安定を図る。
(2)基本的な習慣や態度を養い心身の健康の基礎を培う。
(3)自主、協調の態度を養い道徳性の芽生えを培う。
(4)自然などへの興味・関心を育て、豊かな心情、思考力の基礎を培う。
(5)生活の中で言葉への興味・関心を育て話し聞く態度や豊かな言葉を養う。
(6)様々な体験を通じて豊かな感性を育て創造性の芽生えを培う。
方法
教師による教育の在り方については(幼稚園教育の)基本」として記述(上欄参照)しているほか、「指導計画作成上の留意事項」として示す。
幼児の発達の過程を見通し、興味や関心、発達の実情に応じて、ねらい及び内容を設定する。
具体的なねらいを達成するために適切なものとなるように環境を構成し必要な体験を得られるようにする。
幼児が望ましい方向に向かって自ら活動を展開していくことができるように必要な援助をする。等
「保育の方法」として留意点を示す。
家庭、地域の生活実態を把握し、適切な保護、世話を行う。
子どもの発達について理解し特性に応じ発達の課題に配慮した保育を行う。
子どもの生活リズムを大切にし、生活の流れを安定させる。
子どもが自発的・意欲的に関われる環境を構成し、子どもの主体的活動を重視し、遊びを通して総合的に保育を行う。
子ども相互の関係づくりや集団活動を効果あるよう援助する。
人権や文化の違い等に配慮する。等
ねらい・内容等
ねらいは、幼稚園修了までに育つことが期待される心情、意欲、態度であり、内容はねらいを達成するために教師が指導する事項。

次の「5領域」について、「領域の考え方」、指導上の「ねらい」、「内容」、「内容の取扱い」を示す。
健康
人間関係
環境
言葉
表現
ねらいは、発達過程区分ごとに、保育の目標をより具体化したもので、子どもが身につけることが望まれる心情、意欲、態度であり、内容はねらいを達成するために保育士が行うべき事項。
保育指針では、発達過程区分ごとに、「発達の特徴」、「保育士の姿勢と関わりの視点」、「ねらい」、「内容」、「配慮事項」を示す。また3歳児以上は、生命の保持等に関する「基礎的事項」を示すとともに、幼稚園教育要領と同じ「5領域」について、保育上の内容を示している。
計画
(1)教育課程
 幼稚園は意図的な教育を目的とする学校であり、幼稚園教育の目的・目標が達成されるよう教育課程を編成。
具体的なねらいと内容を組織し、入園から修了までの長期的な視野をもって配慮しなければならない。
教育週数、教育時間の定め
(2)指導計画
 一人一人の幼児に必要な体験が得られるよう具体的に作成。
(1)保育計画
 入所している子どもの生活全体を通じて保育の目標が達成されるよう、全体的な保育計画を作成。
ねらい・内容を基に、地域の実態、子どもの発達、家庭状況や保護者の意向、保育時間などを考慮して作成

(2)指導計画
 一人一人の子どもに必要な体験が得られる保育を行うよう具体的に作成。

2 モデル事業評価委員会でのこれまでの審議における論点に関して
  幼稚園教育要領 保育所保育指針
学級編制と
異年齢交流
学校としての性格上、同学年の学級編制を原則(幼稚園設置基準で規定)としている。このため教育要領そのものに異年齢についての記述はない。
幼稚園教育要領解説において、少子化状況を踏まえ、幼稚園において同年齢や異年齢の幼児同士の交流の意義を記述している。
「預かり保育」については教育課程外の教育活動として位置付け、家庭や地域の生活も考慮して異年齢による編制も有効であるとしている。
(「預かり保育の参考資料」)
(学校でないので学級編制の規定はなく、保育上の単位としての組やグループの考えを採っている。)
4歳以上児について保育のねらいにおいて異年齢交流を掲げている。
・4歳児…異年齢の子への関心・関わり
・5歳児…異年齢の子たちと遊ぶ楽しさ
・6歳児…異年齢の子たちへの積極的関わり、生活や遊びでの役割分担
保育の計画作成上の留意事項の中で異年齢編成の組やグループで保育を行う場合の留意事項を記述。
小学校教育との連携
「指導計画作成上の留意事項」の中で、幼稚園教育が小学校以降の生活・学習の基盤の育成につながることを配慮し、創造的な思考や主体的な生活態度などの基礎を培うようにすべきことを記述。
「保育の計画作成上の留意事項」の中で「小学校との関係」について、子どもの連続的な発達等に配慮して相互理解を深めること、指導計画作成に当たり小学校入学に向けた配慮を行うことを記述。
幼児教育は早期教育を推進するものではないこと
「幼稚園教育の基本」等において、幼児の自発的な活動としての遊びが心身の発達の基礎を培う重要な学習であることを考慮し、遊びを通しての指導を中心とするとしている。
「保育の方法」及び「子どもの発達」において、子どもの発達における遊び日の重要性について記述し、遊びを通しての総合的な保育を行うことが必要であるとしている。
子育て支援
「指導計画作成上の留意事項」の中で、幼稚園が子育て支援のために地域の人々に施設・機能を開放し、幼児教育に関する相談に応じるなど、地域の幼児教育センターとしての役割を果たすよう努めることを求めている。
「保育所における子育て支援」の中で、子育ての知識、経験、技術を蓄積している保育所が、通常業務に加えて、地域における子育て支援の役割を総合的かつ積極的に担うことを保育所の重要な役割としている。
一時保育、地域活動事業、乳幼児相談等について例示している。



◎ 関連法令

1 幼稚園教育要領関係

○ 学校教育法(抜粋)

77条 幼稚園は、幼児を保育し、適当な環境を与えて、その心身の発達を助長することを目的とする。
78条 幼稚園は、前条の目的を実現するために、次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
 健康、安全で幸福な生活のために必要な日常の習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
 園内において、集団生活を経験させ、喜んでこれに参加する態度と協同、自主及び自律の精神の芽生えを養うこと。
 身辺の社会生活及び事象に対する正しい理解と態度の芽生えを養うこと。
 言語の使い方を正しく導き、童話、絵本等に対する興味を養うこと。
 音楽、遊戯、絵画その他の方法により、創作的表現に対する興味を養うこと。
79条 幼稚園の保育内容に関する事項は、前2条の規定に従い、文部科学大臣が、これを定める。
80条 幼稚園に入園することのできる者は、満3歳から、小学校就学の始期に達するまでの幼児とする。

○ 学校教育法施行規則(抜粋)

75条 幼稚園の毎学年の教育週数は、特別の事情のある場合を除き、39週を下つてはならない。
76条 幼稚園の教育課程については、この章に定めるもののほか、教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する幼稚園教育要領によるものとする。


2 保育所保育指針関係

○ 児童福祉法(抜粋)

39条 保育所は、日日保護者の委託を受けて、保育に欠けるその乳児又は幼児を保育 することを目的とする施設とする。
 (略)

45条 厚生労働大臣は、児童福祉施設の設備及び運営並びに里親の行う養育について、最低基準を定めなければならない。
 この場合において、その最低基準は、児童の身体的、精神的及び社会的な発達のために必要な生活水準を確保するものでなければならない。
 児童福祉施設の設置者及び里親は、前項の最低基準を遵守しなければならない。
 児童福祉施設の設置者は、児童福祉施設の設備及び運営についての水準の向上を図ることに努めるものとする。

○ 児童福祉施設最低基準(抜粋)

34条 保育所における保育時間は、一日につき8時間を原則とし、その地方における 乳児又は幼児の保護者の労働時間その他家庭の状況等を考慮して、保育所の長がこれを定める。
35条 保育所における保育の内容は、健康状態の観察、服装等の異常の有無についての検査、自由遊び及び昼寝のほか、第12条第1項に規定する健康診断を含むものとする。

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