○ 有期労働契約等について

 我が国の雇用者数に占めるパート、アルバイト、契約社員・嘱託等の比率は増加傾向にあり、平成17年においては、正規の職員・従業員ではない者が計32.2%となっている。(総務省「労働力調査」)

 ・ パート、アルバイト、派遣等の雇用者に占める比率の推移(単位:%)
 平成13年までは各年2月、平成14年以降は1〜3月期平均の値。役員を除く雇用者を100としたときの比率。
 ここでは、勤め先での呼称によって雇用形態が分類されている。
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 有期契約労働者も増加傾向にあり、平成16年において有期契約労働者が雇用者数に占める割合は13.9%となっている。(総務省「労働力調査」)

 ・ 有期契約労働者の割合(単位:%)
 ここでの「有期契約労働者」は、「臨時雇」(1か月以上1年以内の期間を定めて雇われている者)と「日雇」(日々又は1か月未満の契約で雇われている者)の合計をいう。
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 ・ 雇用者数及び有期契約労働者数(単位:万人)

  6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年
雇用者 5236 5263 5322 5391 5368 5331 5356 5369 5331 5335 5355
有期契約
労働者
546 553 568 600 619 641 671 692 727 737 746


 使用者が有期契約労働者を雇用する理由は、「人件費節約のため」が多いが、雇用形態による違いも少なくなく、臨時雇では「臨時・季節的業務量の変化への対応」が57.8%と最も多くなっている一方、契約社員では「専門的な能力の活用」が49.6%と最も多くなっている。(三和総合研究所「有期契約労働者に関する調査」(平成11年))
 一方、労働者が有期労働契約で就業する理由についてみると、「期間中は雇用が保障されるから」が28.4%、「現在従事している仕事は有期契約が一般的だから」が28.3%となっている。(UFJ総合研究所「有期契約労働者の処遇に関する実態調査」(平成17年))また、平成11年の調査においては、有期契約労働者の就業理由として「勤務場所の都合がよかった」を挙げる労働者が39.7%と最も多いが、「正社員として働ける職場がない」という回答も26.7%あった。(三和総合研究所「有期契約労働者に関する調査」(平成11年))
 使用者がパートを雇用している理由は、「人件費が割安だから」が66.5%であった。一方、パート労働者がパートを選択した理由は、「自分の都合のよい時間(日)に働きたい」が42.7%、「勤務時間・日数が短い」が42.4%であり、「正社員として働ける会社がない」という回答は26.5%であった。(21世紀職業財団「パートタイム労働者実態調査」(平成17年))

 ・ 使用者が有期契約労働者を雇用する理由(複数回答 単位:%)(有期契約労働者を雇用している事業所を対象に調査)
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 ・ 有期契約労働者が期間を定めて就業している理由(複数回答 単位:%)(平成17年)
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 ・ 有期契約労働者が就業している理由(複数回答 単位:%)(平成11年)
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 ・ パートを雇用する理由(複数回答 単位:%)(パートを雇用している事業所を対象に集計)
 ここでの「パート」は、正社員以外の労働者で名称に関わらず1週間の所定労働時間が正社員よりも短い労働者。
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 ・ パートを選択した理由(複数回答 単位:%)(パートを対象に調査)
 ここでの「パート」は、正社員以外の労働者で名称に関わらず1週間の所定労働時間が正社員よりも短い労働者。
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 有期契約労働者の平均契約期間は13.3か月、平均契約更新回数は4.9回、通算勤続年数は平均で5.7年となっている。
 就業形態別にみると、現在結んでいる契約の契約期間は、いずれも6か月超〜1年以内が最も多いが、短時間のパートタイマーと長時間のパートタイマーでは、契約期間が6か月以内の者の合計も約4割となっている。また、平均契約更新回数は、長時間のパートタイマーで8.8回である一方、嘱託社員では2.5回となっている。(UFJ総合研究所「有期契約労働者の処遇に関する実態調査」(平成17年))

 ・ 現在結んでいる契約の契約期間(単位:%)(平成17年)
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 (参考)
  ※ 現在結んでいる契約の契約期間(単位:%)(三和総合研究所「有期労働契約に関する調査」(平成13年))
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 ・ 有期契約労働者の契約更新回数(単位:%)
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 ・ 有期契約労働者の通算勤続年数(単位:%)
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 契約期間を書面で有期契約労働者に通知している事業所は、契約社員について95.5%、長時間のパートタイマーについて87.6%となっている。(UFJ総合研究所「有期契約労働者の処遇に関する実態調査」(平成17年))

 ・ 有期契約労働者に対する契約期間の伝え方(単位:%)(有期契約労働者を雇用している事業所を対象に調査)
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 有期契約労働者の現在の契約期間満了後の希望としては、現在の契約を更新し、引き続き有期労働契約で働きたいとする者が50.1%、次いで、正社員として働きたいとする者が19.8%となっている。
 また、現在の契約期間満了後、会社が契約を更新するつもりだと思う者は、全体の87.0%である。(UFJ総合研究所「有期契約労働者の処遇に関する実態調査」(平成17年))

 ・ 現在の契約期間満了後の希望(単位:%)
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 ・ 現在の契約期間満了後の契約更新についての見通し(単位:%)
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 有期契約労働者の仕事の行い方についてみると、主に正社員の指示に従って仕事を行う者が26.9%である一方、主に自主的に判断し、本人の裁量で仕事を行っている者が30.6%である。
 有期契約労働者の役職についても、役職についていない者が61.5%であるが、部課長・部課長代理クラスの者も8.2%ある。(UFJ総合研究所「有期契約労働者の処遇に関する実態調査」(平成17年))

 ・ 有期契約労働者の仕事の行い方(単位:%)
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 ・ 有期契約労働者の役職(単位:%)
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 有期契約労働者の賃金についてみると、契約社員では正社員の8割以上とする事業所が最も多く、嘱託社員、短時間のパートタイマー、長時間のパートタイマーでは正社員の6割以上8割未満とする事業所が最も多いが、正社員よりも高いとする事業所も、契約社員について7.7%、嘱託社員について3.4%ある。(UFJ総合研究所「有期契約労働者の処遇に関する実態調査」(平成17年))
 また、パートタイム労働者と一般労働者との1時間当たりの賃金格差は、拡大傾向にある。(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」)

 ・ 有期契約労働者の賃金(単位:%)(有期契約労働者を雇用している事業所を対象に調査)
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 ・ パートタイム労働者と一般労働者の賃金格差
 ここでの「パートタイム労働者」は、1日又は1週間の所定労働時間が一般の労働者よりも短い労働者。
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 有期契約労働者が、その働き方について不満・不安を感じることがあるかどうかについてみると、感じることがあるとする者は48.6%、ないとする者は49.7%である。
 不満・不安を感じることがある者についてその具体的な内容をみると、「昇進・昇給がない」が38.2%、「賃金が低い」が37.4%、「退職金がない」が37.0%、「賞与がない」が35.2%、「契約が更新されるかどうかわからない」が30.9%、「正社員になれない」が28.5%となっている。(UFJ総合研究所「有期契約労働者の処遇に関する実態調査」(平成17年))

 ・ 不満・不安の具体的内容(複数回答 単位:%)(働き方について不満・不安を感じることがある有期契約労働者を対象に集計)
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10 平成15年の労働基準法改正による有期労働契約の契約期間の上限延長に伴う労使間のトラブル等について、平成16年度における状況をみると、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に対して、使用者が有期労働契約への契約変更を申し入れたことによるトラブルが57件となっている。(厚生労働省労働基準局監督課調べ)

 ・ 有期労働契約の契約期間の上限延長に伴う労使間のトラブル等(単位:件)(総合労働相談コーナー及び労働基準監督署の相談窓口において調査)
新たに有期契約労働者を採用することを理由として、期間の定めのない労働契約を締結している労働者が解雇されたことによるトラブル例 2件
期間の定めのない労働契約を締結している労働者に対して、使用者が有期労働契約への契約変更を申し入れたことによるトラブル例 57件
労働基準法附則第137条の規定が適用される有期契約労働者(※)が1年経過後に退職を申し出たことによるトラブル例 1件
5年特例対象者(高度の専門的知識等を有する労働者、満60歳以上の労働者)が3年経過後に退職を申し出たことによるトラブル例 0件
就業規則等において、新規採用者の労働契約につき、従前の期間の定めのない労働契約から有期労働契約に変更したことによるトラブル例 1件
その他 13件
合計 74件
 1年を超える期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除く)を締結した労働者であって、5年特例対象者を除く。


11 正規従業員を採用するに当たり、その能力等を判断するため有期労働契約を締結している事業場は全体の26.8%、企業規模50人未満の企業では28.4%となっている。また、現在行っていないが今後検討したいとする企業も全体の16.4%ある。(労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年))

 ・ 正規従業員採用の際の有期契約での雇入れの活用(単位:%)
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12 雇止めに関する民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導申出受付件数、あっせん申請受理件数は増加傾向にあり、平成16年度における相談件数は5,242件に上る。(厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ)

 ・ 雇止めに関する民事上の個別労働紛争相談件数(単位:件)
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 ・ 雇止めに関する助言・指導申出受付件数(単位:件)
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 ・ 雇止めに関するあっせん申請受理件数(単位:件)
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(注)いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。


13 有期労働契約に関する紛争の事例としては、例えば、次のようなものがある。

 【雇止めに関する事例】
 60歳の定年後1年契約で再雇用された労働者について、若返りのため次回の契約は更新しないとの通告を受けたが、就業規則には65歳までの再雇用が規定されており、他に62歳以上の労働者も多くいるにもかかわらず、自分のみ1年で契約が更新されないことは納得がいかないとして、残り4年分の賃金相当額の補償金の支払いを求めたもの。
 会社側は、当該労働者について指導しても業務の改善が見込めないことから退職してもらうこととし、本人も引継ぎを行っており退職に合意していたものと考えていたと主張した。

 【雇止めに関する事例】
 契約社員として1年契約を更新し3年間勤務していた労働者が、3年目の契約期間満了の約3か月前に、契約期間満了ということで雇止めの通告をされた。雇止めの理由は特に示されず、契約期間満了時に雇用を終了するとだけ通告されたものである。
 労働者は、営業成績もよく、残業も相当行ってきた中で雇止めとなることには納得がいかないとして、雇止めを受け入れず会社側との話合いを求めたが、話合いの機会は得られなかった。そこで、労働者は、会社側に対して、復職又は経済的・精神的損害に対する補償金の支払いを求めたもの。
 会社側は、理由がなくても、期間満了で終了と会社側が決定したのであるから、更新はないと主張した。

 【労働契約の終了が解雇であるか有期労働契約の契約期間の満了(雇止め)であるかが問題となった事例】
 勤続4年になる労働者が、会社側から1年契約の契約期間の満了による雇止めの通知を受けた。労働者は、会社を辞めさせられる理由の明示を求めたが、会社側は一方的に期間満了というのみで納得できず、これは解雇であるとして経済的な補償金の支払いを求めたもの。
 労働者に対して雇入れ通知書は年度ごとに交付されており、労働者は、初年度に交付された通知書については本人がサインしたが、それ以降の年度に交付されたものについては、当該年度が始まった後に渡されたものであり、サインをしていないと主張した。
 会社側は、労働者は1年契約のパートタイマーとして雇用されたものであり、就業規則にはパートタイマーの契約期間は1年以内の有期と定めていること、次年度以降はそれぞれ口頭で契約を更新したが、本件の契約期間満了時には契約の更新をしていないので、労働契約は終了したものであると主張した。

 【裁判例:雇止めについて、解雇に関する法理を類推すべきとした例】
 契約期間2か月と記載してある労働契約書を取り交わした上で基幹臨時工として雇い入れられた労働者について、会社側は、契約が5回ないし23回にわたって更新された後に、雇止めの意思表示をした。
 この会社における基幹臨時工は、採用基準、給与体系、労働時間、適用される就業規則等において本工と異なる取扱いをされ、本工の加入する労働組合にも加入できないが、その従事する仕事の種類、内容の点において本工と差異はなかった。これまで基幹臨時工が期間満了によって雇止めされた例はなく、自ら希望して退職する者のほか、そのほとんどが長期間にわたって継続雇用されていた。
 また、労働者の採用に際しては、会社側に長期継続雇用、本工への登用を期待させるような言動があり、この労働者も期間の定めにかかわらず継続雇用されるものと信じて契約書を取り交わしたのであって、本工に登用されることを強く希望していたという事情があった。さらに、契約更新に当たっては、必ずしも契約期間満了の都度直ちに新契約締結の手続がとられていたわけではなかった。
 判決では、「本件各労働契約は、当事者双方ともいずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当であり、したがって、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各雇止めの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから、実質において解雇の意思表示にあたる」とする原判決について、「そうである以上、本件各雇止めの効力の判断に当たっては、その実質にかんがみ、解雇に関する法理を類推すべきであることが明らか」であるとした。(東芝柳町工場事件 昭和49年最高裁判決)

 【裁判例:解雇に関する法理が類推適用された上で、雇止めが有効とされた例】
 工場に臨時員として雇用され、期間2か月の労働契約を5回更新した労働者について、会社側は不況に伴う業務上の都合を理由に契約の更新を拒絶した。
 この工場の臨時員制度は、景気変動に伴う受注の変動に応じて雇用量の調整を図る目的で設けられたものであり、採用も学科・技能試験等は行わない簡易な方法で決定されていた。工場は、一般的には単純な作業、精度がさほど重要視されていない作業に臨時員を従事させる方針をとっており、労働者も比較的簡易な作業に従事していた。
 会社側は、臨時員の契約更新に当たっては、契約期間満了の約1週間前に本人の意思を確認し、当初作成の労働契約書の「雇用期間」欄に順次雇用期間を記入し、臨時員の印を押捺させていたものであり、労働者と会社側との間の5回にわたる労働契約の更新は、いずれも期間満了の都度新たな契約を更新する旨を合意することによってされてきたものである。
 判決では、「5回にわたる契約の更新によって、本件労働契約が期間の定めのない契約に転化したり、あるいは上告人(労働者)と被上告人(会社側)との間に期間の定めのない労働契約が存在する場合と実質的に異ならない関係が生じたということもできない」としつつ、「工場の臨時員は、季節的労務や特定物の製作のような臨時的作業のために雇用されるものではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたものであり、上告人(労働者)との間においても5回にわたり契約が更新されているのであるから、このような労働者を契約期間満了によって雇止めするに当たっては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反または不当労働行為などに該当して解雇無効とされるような事実関係の下に使用者が新契約を締結しなかったとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。しかし、臨時員の雇用関係は比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、雇止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきである」として雇止めを有効とした原判決を認容した。(日立メディコ事件 昭和61年最高裁判決)

 【試行雇用契約に関する事例】
 新たに採用された労働者が、入社直後に2か月間は試用期間であることを告げられ、また、就労開始後約1か月を経過した時点で、就労開始日から2か月の有期労働契約であることを内容とする契約書に署名、押印を求められ、労働者はこれに署名した。当該契約期間満了の5日前に、労働者は、会社側から翌月以降の雇用継続はできない旨を通告された。
 労働者は、(1)面接時にも、入社後も長期間の継続勤務を希望していることを上司に伝えていること、応募のきっかけとなったハローワークの求人票には期間の定めのある契約であることが記載されていなかったことから、自らが署名した契約書はあくまで試用期間中の臨時的な契約であって、試用期間中に重大な失敗がない限り、雇用は当然継続し、本採用されるものと考えていたこと、また、(2)雇用継続ができない理由は、「言い訳が多い」等と聞いており、納得がいかないことを挙げ、雇用継続を求めた。
 会社側は、(1)あくまで契約期間2か月の有期労働契約であり、採用を決める各支店の店長にも長期雇用を期待させる言動は取らないよう十分注意している、(2)契約期間の満了による当然の雇用関係の終了であって、労働者が主張しているような理由ではないと主張した。

 【裁判例:雇用契約に期間を設けた趣旨が労働者の適性を判断するためのものであるときは、特段の事情が認められる場合を除き、その期間は試用期間であるとした例】
 労働者は、社会科担当の教員(常勤講師)として採用されその職務に従事していたが、会社側は翌年3月18日に労働者に対し、労働者と会社側との間の雇用契約は同月末をもって終了する旨の通知をした。
 採用面接の際、理事長は労働者に対し、採用後の身分は常勤講師とし、契約期間を一応4月1日から1年とすること及び1年間の勤務状態をみて再雇用するか否かの判定をすることなどにつき説明をした。
 また、同年5月中旬には、労働者は会社側から求められるままに、同年4月7日ころに予め会社側より交付されていた「労働者が3月31日までの1年の期限付の常勤講師として採用される旨の合意が労働者と会社側との間に成立したこと及び右期限が満了したときは解雇予告その他何らの通知を要せず期限満了の日に当然退職の効果を生ずること」などが記載されている期限付職員契約書に自ら署名捺印していた。
 判決では、「使用者が労働者を新規に採用するに当たり、その雇用契約に期間を設けた場合において、その設けた趣旨・目的が労働者の適性を評価・判断するためのものであるときは、右期間の満了により右雇用契約が当然に終了する旨の明確な合意が当事者間に成立しているなどの特段の事情が認められる場合を除き、右期間は契約の存続期間ではなく、試用期間であると解するのが相当である」とされた。(神戸弘陵学園事件 平成2年最高裁判決)

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