05/12/27 第57回労働政策審議会雇用均等分科会議事録 第57回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録 日時:2005年12月27日(火)  14:00〜15:00 場所:厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階) 出席者:    労側委員:吉宮委員、岡本委員、片岡委員、篠原委員    使側委員:川本委員、吉川委員、前田委員、山崎委員、渡邊委員  公益委員:横溝分科会長、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員、林委員、樋口委 員 ○横溝分科会長  ただ今から第57回労働政策審議会雇用均等分科会を開催いたします。本日は佐藤孝 司委員が欠席されています。それでは早速議事に入ります。  本日の議題は男女雇用機会均等対策についてです。本日も雇用均等分科会報告(案)に ついてご議論をいただきたいと思います。  まずは労働者側委員にお聞きしたいと思います。前回の分科会におきまして、一部の 項目についてなお反対の意見を表明されていらっしゃいましたが、今回報告を取りまと めるためには労働者側としてこの案で了解いただけないかと考えています。いかがでし ょうか。どうぞ。 ○吉宮委員  それでは私の方から意見を申し上げます。男女間の格差解消と実質的な男女平等を実 現するための方策について、昨年9月から審議を行ってきました。今年の7月には法的 整備が必要な時期に来ている旨の三者合意の中間取りまとめとそれに対するパブリッ ク・コメントを行い、それらを踏まえて改正事項についてその後審議をしてきたと思い ます。本日は建議という最終場面を迎えていますので、重要な項目に絞って意見を申し 上げたいと思います。意見を述べるに当たって私たち労働者代表委員は、均等法改正の 内容について社会に提言・発信している諸団体の皆さん、連合はじめ労働組合の皆さん の意見・要望を踏まえたものであることを受け止めていただきたいと思います。  第1点は仕事と生活の調和を図ることを均等法の理念に盛り込むことが見送られたこ とは極めて残念であり、ぜひ盛り込んでいただきたいことを表明したいと思います。こ こ数年間の世論動向を見ますと、少子化が一段と進行する旨の推測に対して、この流れ を止める一つとして働き方の改善が指摘され、有識者からは仕事と生活の調和の重要性 が指摘されています。また財界の一部からも「個人的意見として」という断わりはあり ますが、勤務時間短縮の措置の義務付け等も提言されています。男女の平等は男性の多 くに見られる個人や家庭の生活を犠牲にした働き方に女性の働き方を合わせることでは ないはずです。平等のあり方を審議している当分科会が、このことについて方策を提起 しないということは、社会が要請している課題から逃げたという非難を受けてもいたし かたないと思います。  第2点は、ポジティブ・アクションについて事業主への義務付けを避けたことであり、 これまた私どもとしてはぜひ義務付けをお願いしたいと思います。実質的な男女平等を 実現するためには、性別を理由とした直接差別の禁止と間接差別の禁止とポジティブ・ アクションの行動計画義務付けの三つの道具が揃ってこそ道が開かれると思います。そ の観点から見ると、事業主の自主的取組を国が支援する仕組みは、あまりにも不十分で あります。  第3点は最も重要な点である間接差別であります。これには冒頭申し上げた諸団体か らも意見が寄せられています。フォーラム「女性と労働21」代表山野和子さんの団体か らは、私どもに対して「省令による列挙事由に限定して行政指導等に対処することは、 到底容認できないものである」と意見が寄せられていますし、均等待遇キャンペーンの 皆さんからは、「限定列挙ではなくて指針による例示列挙を行うべきだ。限定列挙には反 対である」というご意見が寄せられています。女性ユニオン東京の皆さんからは「均等 法には間接差別の定義を明記し、指針などで例示していき理解を深めるようにすべきで ある」というご意見があります。全国フェミニスト議員連盟からも同様な意見が寄せら れていますし、他にも住友裁判を戦った皆さんからも同様のご意見があります。  これらの意見を踏まえて、私たち労働者代表委員としては間接差別禁止が盛り込まれ ることは評価しますが、間接差別の対象基準・規定等を限定列挙する方法は多くの問題 があり反対です。その理由は三つあります。  一つ目に、間接差別は変化するものであり、対象を限定列挙することはそもそもなじ まないからです。二つ目に、対象を限定列挙すると、あげられた三つの例以外は差別で はないとされ、コース別雇用管理制度や手当等の要件の見直しなど、職場での取り組み にマイナスの影響を及ぼすからです。三つ目に、対象を限定列挙すると、あげられた三 つ以外は違法でないと裁判で判断する恐れが強いからです。従って、私たちは労働者側 委員として、建議に間接差別基準は限定列挙ではなく例示列挙にすべきであるという旨 の意見を付けることを表明します。  最後に少子化の進行。まさにこれは仕事と生活の調和というバランスの問題がありま すし、雇用が不安定で不公正な待遇を受ける非正規労働者には、パート法は何の役にも 立たず、この間接差別法理がかなり期待されていました。また国連等からも日本政府に は間接差別の定義がない、差別の定義が狭いという指摘を受けています。そして最近の メディアの主張、例えば朝日新聞は定義付けを法律に明記することは評価していますが、 限定列挙については中途半端な規定に終わると国際社会と実効性ある均等を待ち望む多 くの人たちを落胆させるというメディアの主張がございます。  使用者側委員がどのようなご意見をお持ちか私にはわかりませんけれども、仮に間接 差別について限定列挙は反対ということに関して、使用者側も別の意味で反対というこ とですと、多分行政の選択肢として法改正を見送るということもあるかもしれません。 私どもはやむを得ないと思います。しかし、先程申した少子化の進行、増加する非正規 雇用者の問題、国連の指摘等々考えますと、今一度この政府案がどのような問題を抱え ているのかという意味で、国民的討論ができることを私は期待しています。そのことを 期待し私どもの意見を受け止めていただきたいと思います。  以上でございます。 ○横溝分科会長  それでは続きまして、使用者側委員にお伺いいたします。使用者側委員におきまして は、前回報告(案)の一部の項目について検討中とのことでしたが、その検討結果につい てご発言をお願いいたします。 ○川本委員  私どもは報告書(案)につきまして、検討を重ねて参ったわけでございます。今、労側 の委員からもご意見がございました。私どもとしましてもいろいろと申し上げたい部分 はあるわけですけれども、この報告書(案)につきまして受け入れたいと存じます。ただ し、先程吉宮委員の方から間接差別のところで記載していただきたいとご発言がござい ましたので、この間接差別につきましては使用者側委員といたしましては間接差別概念 の導入について懸念があるという意見が示された旨はぜひ記載していただきたいと思い ます。今までの議論の過程で何度か申し上げた部分でございますのでお願いしたいと思 います。 ○横溝分科会長  それではただ今、労使それぞれご発言がありました事項につきましては、雇用均等分 科会から労働政策審議会に対する報告文におきまして、「なお、労働者側委員から、間接 差別基準は限定列挙ではなく例示列挙にすべきとの意見が示された。一方、使用者側委 員から、間接差別概念の導入について懸念があるとの意見が示された」との記載をする ことといたしたいと思いますが、これでいかがでしょうか。よろしゅうございますか。 使側もよろしゅうございますか。 (異議なし) ○横溝分科会長  それではそのようにすることとした上で、均等分科会報告についてはこの案の通り取 りまとめさせていただきます。  また、労働政策審議会令第6条第9項に基づきまして本分科会の議決をもって審議会 の議決とすることができるとされています。この報告により労働政策審議会から厚生労 働大臣に建議することとしたいと存じます。それでは事務局から案文を配布させていた だきます。 (建議文配布) ○横溝分科会長  お手元に届きましたでしょうか。では建議・報告いずれも黙読ということでご了解い ただきたいと思います。それでは今後の男女雇用機会均等対策についてということでお 手元に今お示ししました報告および建議を取りまとめることにいたしたいと存じます。 異議ございませんか。                    (異議なし)   ○横溝分科会長  では全員一致でご賛同いただいたということで。それでは大変長期間にわたり男女雇 用機会均等対策について熱心に精力的にご議論いただき、労使各側および公益委員のご 協力により、このような形でまとめることができたことにつきまして、心から感謝申し 上げます。ありがとうございました。  それでは審議会長に代わりまして、建議を提出したいと思います。本日は厚生労働大 臣の代理として、北井雇用均等・児童家庭局長がご出席くださっていますので、お渡し したいと思います。いつもご出席いただいているのですけれども、今日は大臣代理とい うことで、よろしくお願いいたします。        (分科会長:北井雇用均等・児童家庭局長に建議を手交) ○横溝分科会長  では、北井雇用均等・児童家庭局長よりごあいさついただきたいと思います。よろし くお願いいたします。 ○北井雇用均等・児童家庭局長  雇用均等・児童家庭局長でございます。ただ今、建議を頂戴いたしました。本分科会 におきましては今後の男女雇用機会均等対策につきまして昨年9月から20回にわたり 熱心に、かつ厳しいご審議をいただきました。そして本日このように報告を取りまとめ ていただきましたことに心より感謝申し上げたいと思います。今後はこの建議を基に早 急に男女雇用機会均等法および労働基準法の改正法案要綱を取りまとめ、改めてこの分 科会にお諮りした上で、次期通常国会に提出していきたいと考えています。  委員の皆さま方におかれましては、本当にこれまでのご協力に重ねてお礼を申し上げ ますとともに、今後とも雇用均等行政をはじめとする厚生労働行政に対する一層のご支 援、ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。 ○横溝分科会長  それでは本日の審議はこれまでといたします。なおこの建議に基づきまして事務局に おいて法案作成作業を速やかに進めていただき、法案要綱を諮問していただくよう、よ ろしくお願いいたします。 ○片岡委員  審議の終わりに一言意見を申し上げたいのですが、その議題と言いますか、扱いはし ていただけますでしょうか。 ○横溝分科会長  今ですか。 ○片岡委員  この審議に関わって。 ○横溝分科会長  この審議に関わってですか。 ○片岡委員  はい。 ○横溝分科会長  締める前にですか。終わってからではなくて。 ○片岡委員  関連がありますので。 ○横溝分科会長  予定演説時間はどれくらいですか。 ○片岡委員  一言です。 ○横溝分科会長  労側それぞれ一言ずつですか。皆さんそうですか。では順次どうぞ。感想ですか、ご 意見ですか。 ○片岡委員  要望です。 ○横溝分科会長  では、お伺いいたしましょう。 ○片岡委員  私は要望です。審議会で均等法の改正に前回と今回かかわってきましたので、まず私 が一言。これは私の言い方になりますのでそのまま言います。  どうしてもこの審議会は労使の攻防で差別解消に向けてどう進めていくかというこ とが大変難しい。局面、局面で審議会が展開されるということに常々大変な思いはある が、やはり現場の声を受けて差別解消につながる議論をしたいと思って関わってきまし た。現在、職場は正社員の女性、非正社員の女性という言い方で分けると、正社員女性 が少数、非正社員女性が多数という職場が多く、お互いが意欲・能力を発揮したくても 非常に分断されている状況に置かれているということがあります。  今回の均等法はぜひこの現場の状況を変える、そういう使える法律改正になってほし いという思いが強くありましたし、幾つかの点でこれは現場で使えるという部分がある とも思っています。  その上で私はぜひ公益委員の皆さんに期待を込めて一言申し上げたいと思います。今 申し上げたように労使のさまざまな攻防と言いますか、置かれている立場からなかなか 思うように差別解消ということに向けて進まない状況があります。公益委員の皆さんに は専門的な見地から関わっていただいているということを承知していますので、労使の 現状認識や実態を踏まえて、少しその状況がうまく進まない、社会的な声が必要だとい うことに対しては、さらに積極的にかかわっていただきたいと今回の審議会を通じて痛 感いたしました。特に間接差別の限定列挙を巡る中間の議論でも、その方法が本当に法 律の効力としてなじむ、なじまないという議論でご指摘いただいたことが、結果として はそういう形にはならず、妥協的なものになったということなどは非常に残念に思うわ けです。  期待と言いながら批判をしているように聞こえるかもしれませんが、ぜひもう一度そ ういう見地から社会的規制としての差別解消につながるよう、この審議会を引き続き積 極的に牽引いただきたいと申し上げたいと思います。 ○岡本委員  私の方からも一言。今日、建議がまとめられて、この後国会の審議の場に移ると思い ます。それで法改正になっていけば、その次はこの審議会でまた指針の議論が始まると いうふうに受け止めています。指針づくりについては本当にその現場、また職場で具体 的な事例を出し合いながら、いかにそれを問題解決していくのかということに、実効あ る指針づくりというのは本当に重要になってくると思っていますし、そのために私たち 労働側としてもまた多くの現場の皆さんの声を聞きながら意見を言っていきたいと思っ ています。その上で本当にこの場できちんとしたお互いの議論がし合えるような、そう したことを期待したいと思います。  もちろん経営者側の皆さんが後ろに組織を抱え、いろいろな反対があったと伺ってい ますし、その上で今日まとめをしていただいたということは十分に受け止めていますけ れども、その前の段階でもう少しいろいろな議論ができたのではないかということを私 は審議会を通して感じてきました。指針のところでは本当にこの場でいろいろな事が具 体的に詰めていけるように、そのことを私としてはぜひお願いしたいということで、一 言申し上げたいと思います。 ○篠原委員  まずはこのような発言の機会を与えていただいたことに感謝を申し上げたいと思いま す。今それぞれの労働側の委員の方からも意見がございましたように、7月から中間報 告という形で論議を進めて参りました。時間的な制約ということがありましたので本当 に十分な論議ができたかどうかということもありますが、これから指針を作るに当たっ てはいろいろな職場の意見が反映できるように、またいろいろな職場の意見を吸い上げ て、この場でまた発言できるように、これからも論議をしていきたいと思っています。 ○横溝分科会長  「期待」というご発言があったということは受け止めまして、本日の審議はこれまで といたします。繰り返しになりますが、念のために申し上げますと、なおこの建議に基 づきまして事務局において法案作成作業を速やかに進めていただき、法案要綱を諮問し ていただくよう、よろしくお願いいたします。なお今回の議事録の署名委員は吉宮委員 と前田委員によろしくお願いいたします。それでは最後に今後のスケジュールにつきま して、事務局より説明をお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  次回の開催につきましては、日時・場所ともに現在調整中でございますので、決まり 次第ご連絡をさせていただきます。 ○横溝分科会長  それでは本日の分科会はこれにて終了いたします。ありがとうございました。           照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)