05/12/26 労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会第5回議事録 第5回労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会          日時 平成17年12月26日(月)          16:00〜          場所 厚生労働省専用18〜20号会議室 ○工藤座長 定刻になりましたので、「第5回労働安全衛生法における胸部エックス線 検査等のあり方検討会」を開催いたします。本日、坂谷委員はご欠席です。堀江委員は、 飛行機が遅延しており、少し遅れるという情報が入っております。  本日は日本経済団体連合会より意見陳述を予定しております。また、江口委員、矢野 委員から資料提出がありますので、のちほどよろしくお願いします。それでは、事務局 から資料の確認をお願いいたします。 ○労働衛生課長 本日は第5回目のあり方検討会ですが、表紙をめくると検討会の名簿、 座席表とあり、そのあとに資料1「これまでの議論の概要」があります。「合意がなさ れた部分」として、1、2、3、4、2頁の真ん中から「検討中の部分」という所があ ります。定期健診の胸部エックス線について、「結核対策として」「肺がん対策として」 「結核・肺がん以外の疾病の対策として」が7頁まで続いています。そのあとに、参考 資料1として、本日江口委員からご提出いただいた資料が2頁あります。参考資料2と して、矢野委員からご提出の資料が3頁まであります。以上です。 ○工藤座長 ありがとうございました。それでは議事に入ります。前回までの議論の概 要を整理していただいていますので、事務局から資料1に基づいて説明をお願いします。 ○労働衛生課長 資料1です。前回、前々回までに合意がなされた部分については、雇 入時の健康診断(則第43条)、海外派遣労働者の健康診断(則第45条の2)、結核健康 診断(則第46条)、じん肺法に基づくじん肺健康診断(じん肺法第8条等)の部分につ いては基本的に実施、結核健康診断だけ結核予防法等を受け、労安法による同趣旨の規 定廃止ということで合意を得ております。  2頁の真ん中の「検討中の部分」です。定期健康診断(則第44条)は「特定業務従事 者の健康診断を含む」ということで、結核対策としては、日本はまだ結核の先進国では ないというご意見と、結核予防法の改正について、厚生科学審議会感染症分科会結核部 会で十分な審議がなされている。それに従って、こちらもきちんとそれに合うように変 えるべきだ、というご意見がありました。  いろいろなご意見をいただいたのは、3頁の(2)肺がん対策についてです。「安衛 法として肺がん検診等のがん検診を実施することについて」ですが、事業者に特殊健康 診断としてはがん検診の実施を義務づけている。当該労働者以外について、業務起因性 が認められないことから、事業者に一般健診において大腸がんや乳がん検診のがん検診 を義務づけていない、という説明を事務局側からいたしました。  結核対策として胸部エックス線検査をやっておりますが、一般健康診断では肺がん対 策を目的としていままでやってきたわけではないという説明をしたわけです。ですので、 事業者に胸部エックス線検査等の肺がん対策としての実施を義務づけることはできない、 ということを事務局からご説明しました。  そうは言うけれど、実態としては安衛法の健康診断が制定されたときと変わっている 部分もあり、その中で悪性腫瘍もきちんと見てきたのだから、それも一定の考慮をすべ きであるということです。  4頁の4つ目の○は、前回江口委員から出たご意見です。労働環境における受動喫煙 については、呼吸器の疾患、特にがんや閉塞性の肺疾患の原因である喫煙への対策が十 分でないことから、安衛法に基づく健康診断の目的として合致していく部分があるので はないかというご意見がありました。特に喫煙との関係で肺がんに関しては、乳がん、 胃がん、大腸がんといったような他のがん腫とは、職業環境との絡みにおいて少し違う のではないか、差別化できるのではないかというご意見がありました。  4頁、「肺がん検診の有用性等について」の議論が、一般健診のところからありました。 1つ目の○、十分な有効性が確立しているわけではないというご意見がありました。そ れについて、2つ目の○、有効性が再評価されているのだというご意見もありました。  直接法・間接法ですが、間接法の技術も近年向上してきていて、直接法より劣るとい うエビデンスはないのではないかということです。CTとの比較検討もここで議論にな っております。  5頁のいちばん上の○ですが、胸部エックス線検査は一つの検査で、胸部全体の概要 を知り得る簡便で安価なものとして定着してきているというご意見もありました。胸部 エックス線、CTは人間ドック等でありますが、その役割は違うのではないかというご 意見です。  (3)以下は、結核、肺がん以外の疾病の対策として、胸部エックス線検査について、 有用性、有効性といった科学的な観点、国民の健康確保の観点から検討した上で、それ を労働安全衛生法として取り扱うことが妥当かを検討する必要があるというご意見です。 基本的に、安衛法の健診で結核、肺がん以外の疾病については、業務起因性・作業関連 性、業務起因性は明確でないけれど労働することによって増悪する可能性、さらには健 康診断としての胸部エックス線検査の有効性等を考慮して、事業者に胸部エックス線検 査等の実施を義務づける必要性を検討する必要があるというご意見がありました。  もし一律に実施しないのであれば、未規制の物質を取り扱う等の有害性がはっきりし ない業務に従事している者については、医師の判断により胸部エックス線検査を実施で きるようにしておくことが必要です、というご意見もいただきました。ある作業が一定 確率である疾患を引き起こす業務起因性のある疾患については、特殊健診でやっている ではないか。ある作業がある疾患を引き起こすわけではないけれど、作業に従事するこ とによって増悪する可能性の強い疾患については、定期健診できちんとチェックするこ とを事業者に義務づけるという立場をとっているのではないか。したがって、今日では 胸部エックス線検査によるスクリーニング対象疾患が非常に多種に及んでいるという議 論があったわけです。病気が見つかってよかったというメリットもあるけれども、見つ けられないというデメリットもきちんと考慮しなければならないという議論です。  6頁です。特殊健診における胸部エックス線検査においても、有用性に関する具体的 データがあって、検査をすればするほどいいわけではないという議論がありました。エ ックス線被ばくによるデメリットが強調される傾向がありますが、いまだに議論されて いる分野で、結論は出ていないではないか、というご意見もあります。さらに、一律に 胸部エックス線を実施すると、有所見率は3.6%と極めて高いというご意見があれば、 これに対するご意見として、これから2つ目の○で、発見される所見や疾病のほとんど は特異性は高くない、治療の必要性が乏しいもので、本当の疾病であれば自覚症状のほ うが先に出現する等の理由によって、発見する意義に乏しいのではないかというご意見 もありました。  下から3つ目の○ですが、労働者の呼吸器疾患の早期発見と予防のために、一定年齢 以上及び喫煙者に限定した胸部エックス線検査や時代に即した積極的な施策への転換な どの検討を行ってはどうか、というご意見もありました。健診項目を義務や罰則が付く ようなものとして採用するかどうかというところから、もう1回きちんと考えるべきだ、 省略できる健診項目として考えてもいいのではないかというご議論もありました。  7頁ですが、科学的論議でやってくると、かなりのものが有用性なしと判定されるお それもある。しかし、全体として、労働者をどうやって愛情を持って見るかという観点 から考えるべきだ、というご意見もありました。それから、費用についてもありました。  安衛法における定期健診ですが、これは労働条件の1つになっている側面がある。結 核予防法が改正されたからといって、直ちに健康診断の胸部エックス線検査を廃止する 必要はないのではないか、というご意見もありました。  エックス線検査の実施義務を除いてしまうと、今度は労働者側から、実態として受診 の権利を奪うことになるのではないかというご意見もありました。さらには、昨今、ア スベスト問題が社会問題化しておりますので、健康診断の胸部エックス線を廃止、縮小 することは不適切ではないかということです。  論点としては、胸部エックス線が、一般健康診断として全部に義務づける安衛法の中 での位置づけとして、その考え方は正しいのかどうか。肺がんやがん検診の延長として とらえて、それがよいのかどうかということです。医学的な有効性の評価とともに、法 律の中で健診を義務づける意味がそれできちんと通るかどうか等があり、これが主要な 論点になっているかと思います。大体以上ですが、前回までの詳しい議事録は、ホーム ページ等に整理した上で掲載しておりますので、そちらをご参照ください。以上です。 ○工藤座長 ありがとうございました。ただいま事務局からご説明いただいたとおり、 雇入時の健康診断、海外派遣労働者の健康診断の胸部エックス線検査は、これまでどお り実施することとして、安衛規則第46条の結核健康診断における『結核発病のおそれが ある者に対する6カ月後の胸部エックス線検査の実施』については、結核予防法の改正 を踏まえて必要ないということで、前々回までの検討会ですでに議論が取りまとまって いたと思います。  前回の検討会においては、じん肺法に基づく健康診断については、具体的な方法につ いては詳細を詰める必要がありますが、基本的にはいままでどおり実施していくという ことで議論が取りまとめられていたと思います。  最後に、焦点となっている定期健康診断については、この取りまとめの中にいままで の議論のまとめとして大変詳しく書かれておりますが、さまざまなご意見が出ておりま す。このことについては、引き続き本日の検討会で議論をしたいと考えております。以 上のような論点の整理、いままでのご議論の取りまとめについて、何かご意見はござい ますか。 ○労働衛生課長 先ほど申しましたように、これは議事録とは別に事務局が概要として まとめたものです。少しニュアンスが違うということがあれば、のちほど言っていただ ければ修正いたします。 ○工藤座長 このようなご議論が出ているということで、これは最終的にまとめていか なければならないのですが、とりあえずこのまとめでよろしいですか。  それでは、加藤隆康日本経団連産業保健問題小委員会座長からご意見を伺いたいと思 います。 ○加藤部長 本日は、この検討会で私どもの意見陳述の機会を与えていただきましたこ とを心から感謝申し上げます。日本経団連として、本検討会の議論の焦点は、改正され た結核予防法令において、定期結核健康診断を行わなければならない対象から、民間企 業の事業場が適用除外になったことに伴い、現行安全衛生法において、事業者に義務づ けられている胸部エックス線検査等の取扱いについてであると理解して、今日意見を述 べたいと思います。  日本経団連の基本的な考え方ですが、労働安全衛生法に基づく健康診断は、事業者の 責務として労働者を対象に行われており、実施しなければならない事業者に罰則が科せ られるものであると理解しておりますし、健診項目には、自ら一定の範囲で限界を設け るべきではないかと考えております。職場生活だけではなく、労働者個人の日常生活に も関わる疾病について、どこまで事業者が対応できるかも検討しなければならないと思 っております。こういったことも踏まえながら、慎重な検討をしていく必要があると考 えております。  日本経団連の意見集約ですが、今年の10月に経団連の労働安全衛生部会の委員と産業 保健問題小委員会の委員、これは各業種、企業の安全衛生の部課長クラス及び産業医の 先生で構成されている委員会ですが、そういった委員65名を対象に、本検討会において 論点の項目について意見集約を行ったものです。本委員の方々には文書を配っておりま せんが、企業の実務の観点から意見を述べたいと考えております。  まず、雇入時と海外派遣労働者の健康診断です。先ほどお聞きしておりましたが、実 は意見が全く同じで、現行どおり実施すべきであるという意見がほとんどでした。  2番目に結核健康診断についてですが、胸部エックス線検査は廃止すべきであるとい う意見が大半を占めております。  定期健康診断については、意見がいろいろと分かれてきております。結核対策として の胸部エックス線検査については、現行どおり実施すべきであるという意見が過半数を 占めました。その理由として、医師の判断によって、あるいは条件付きで胸部エックス 線検査を実施できるようにしておくことが必要であるという意見が多く出てきておりま す。  肺がん対策としての胸部エックス線については、廃止すべきである、条件付きで実施 すべきである、現行どおり実施すべきである、この3つにほぼ等分に意見が分かれてお ります。その理由として、業務起因性が認められない職種については、肺がん対策を目 的とした胸部エックス線検査を義務づける必要はないが、業務起因性が考えられるもの については毎年実施していくことが必要ではないか、という意見が数件出てきておりま す。  結核、肺がん以外の疾病対策としての胸部エックス線検査ですが、条件付きで実施す べきと、現行どおり実施すべきの2つに大きく意見が分かれております。その理由とし て、胸部エックス線を一律に実施しないとしても、例えば未規制の化学物質を取り扱う 等で有害性がはっきりしないような業務に従事している場合には、業務歴や年齢、生活 歴等を考慮しながら、医師の判断によって胸部エックス線検査を実施できるようにして おくことが必要であろうという意見がいくつか出てきております。  最後にじん肺対策ですが、じん肺管理区分2で現に非粉じん作業に従事している労働 者、じん肺管理区分1で現に粉じん作業に従事している労働者に対して、共に胸部エッ クス線検査を現行どおり実施すべきであるという意見が3分の2程度を占めております。 なお、じん肺法と労働安全衛生法の議論を一緒にせず、じん肺の健康診断に医学的な根 拠があり、毎年1回義務づけるならば、それをじん肺法で明記したほうがいいのではな いかということも意見としてあり、じん肺法の改正が必要なのではないかという意見も 出てきております。  胸部エックス線の存廃については、昨今のアスベスト等による健康被害の状況も踏ま えて、もう少し広く総合的に検討することが必要ではないかという意見も、いくつか寄 せられております。  以上のことをまとめて、日本経団連としては、特に定期健康診断における胸部エック ス線検査については、現行の一律的な義務づけではなく、医師の判断により胸部エック ス線検査を実施できることとする方向で見直しを行うのが、現時点では適当ではないか と考えております。私どもの関連企業、業種についてアンケート、意見等を伺った内容 をまとめて意見を述べさせていただきました。以上で私の意見陳述を終わります。どう もありがとうございました。 ○工藤座長 どうもありがとうございました。加藤部長の意見陳述については、前回の 経団連の意見陳述と同じように、意見陳述ということで議論はここではしないお約束に なっておりますが、ご説明の中身そのものについてのご質問はよろしいですか。内容に ついてわかりにくかった所があればどうぞ。 ○矢野委員 前回の同じような意見陳述についても、のちほど述べさせていただく予定 ですが、いま60人ほどの人の意見がこうであったと言っても、60人の構成によって全 く違ったことが起こると思うのです。ですから、その60人がどうやって選ばれたのか、 そのような資料を必ず付けていただきたいと思います。 ○工藤座長 ほかにご質問はありますか。  それでは、貴重なご意見をありがとうございました。                 (加藤部長退席) ○工藤座長 それでは、議事の4番目の討議に入ります。本日、お二人の委員から資料 をご提出いただいております。まず、そのご説明をお願いします。  最初に、江口委員が提出されている「参考資料1」について、ご説明をお願いします。 ○江口委員 お手元の参考資料1に、A4判の2枚の紙を付けてあります。1つは、年 齢階級ごとに呼吸器の疾患、特に肺がんや閉塞性肺疾患がどの程度起こっているか、見 られているかを調べたものを簡単にまとめてきました。2つ目は、間接喫煙(受動喫煙) についてのデータがどの程度あるのかまとめてみました。これもたくさんのペーパーが 出ておりますので、先生方もおそらくいろいろなことをご存じだと思いますが、話題提 供ということで出させていただきました。  まず最初に、年齢階級別です。肺がんに関しては、厚生労働省のがん研究助成金、津 熊班という班研究があります。その中で、これは平成14年度の報告書に出ていたもので すが、肺がん年齢階級が5歳刻みで、40歳から74歳まで書いてあります。参考までに、 全部位のがんでいきますと、人口10万対でこの程度の罹患率があることになります。肺 がんに関しては男女で分けてあり、大体45〜49歳までが20人、だんだんと年齢ととも にこの数が増えて、60〜64歳では男性で120人、女性では40人になっています。  閉塞性の肺障害、いわゆるCOPDといわれるもので、日本のデータがあまりないの ですが、これはフクチ先生らが「Nippon COPD Epidemiology Study」ということで、 NICEスタディを発表されています。日本文でも出ているのですが、Respirologyに英文で 出ています。どういうことをやったかというと、国内の地域人口構成をマッチさせた40 歳以上の男女1,300人ずつ、合計2,600人、平均年齢が大体58歳、スパイロメトリーで 1秒率が70%未満の人がどれくらいいるかということで、COPDの罹患率、患者さん がどの程度いるかを調べたものです。この集団では、4分の3は喫煙歴ありということ です。これは10歳ごとの刻みですが、そこに書いてあるように、50歳代が5.8%、60歳代 で15.7%、やはり年齢とともに増えてくるという数字になっています。これが年齢別、 階級別にどの程度の患者がいるかを出した資料です。  次は「間接喫煙(受動喫煙)による呼吸器疾患」ということで拾ってみました。ご承 知のように、肺がん発生のリスクですが、受動喫煙が肺がんのリスクを高めるというの は、国立がんセンターにおられた平山先生の有名な前向き調査があります。この頁の下 のほうに書いてありますが、1966年から日本人26万人の前向き調査を行い、喫煙して いる夫の奥さんの肺がんリスクは1.5倍から3倍になるということを、1981年の 「British Medical Journal」に発表されました。これが、世界でも、受動喫煙が肺がん のリスクを高めるということの、かなり先駆けとなった論文です。それ以降、副流煙の リスク、室内汚染とか、要するにタバコを吸った者よりも普段流れている副流煙のリス クが非常に高いということについては、その下の論文などでも触れています。これはた くさんのものがあります。  いちばん上に戻り、最近のペーパーです。「環境間接喫煙による肺癌発生リスク」は ハザード比で1.3と出ています。肺がんについては、間接喫煙(受動喫煙)がかなり影響 することがある程度コンセンサスが得られていますが、COPDの発生リスクに関して は、直接の喫煙者についてはたくさんのデータがあるのですが、間接喫煙(受動喫煙) については、過去の報告では結論がさまざまです。例えば、1994年のペーパーや2000年 のペーパーについて見ますと、結論が異なっており、直接的に受動喫煙がCOPDの発 生リスクを高めているという、直接的な関連を強く証明するまでには至っていないとい うことが、これらの論文に書かれております。以上です。 ○工藤座長 いま江口委員から肺がんとCOPD、この2つの喫煙関連疾患について、 特に職場環境、労働環境等の関わりが強い受動喫煙との関わりについてのデータの報告 をいただいたところですが、ただいまのご報告について何かご質問、ご意見等ございま すか。誠にごもっともということになってしまいますが、特に、完全分煙は職場でどの くらいやられているのかは、まだまだ始まったばかりですね。大体そういう喫煙の影響 は、およそどのくらいの期間影響してくるのですか。あるいは受動喫煙でもよろしいの ですが。 ○江口委員 直接喫煙の場合は、大体10年ぐらいと言われています。実際やめてから 10年ぐらいはその影響が残っているというのは、疫学的な調査でわかっていると思うの ですが、間接喫煙の場合はなかなか実際のデータが取りにくいということもあって、あ まりそういうことに関してのデータはまだないと思います。 ○工藤座長 直接喫煙のほうから類推する以外ないという、そういうことでよろしいで すか。 ○江口委員 はい。 ○工藤座長 何かほかにご質問、ご意見等ございますか。よろしければ、次のご意見で すが、引き続いて、矢野委員が提出されている「参考資料2」について、ご説明をいた だきたいと思います。 ○矢野委員 参考資料2、3頁あるこの資料でご説明いたします。前回、11月の第4回 検討会を欠席いたしまして、大変失礼いたしました。議事録が16日にホームページにア ップされましたのを拝見して、私のそれ以前の発言など何度か引用されていることもあ り、その議論を見ての意見を述べなくてはいけないと思いまして、述べさせていただく のがこの資料になります。大きく3点あります。  まず「直接撮影と間接撮影」についてですが、いちばん最後の表の1は具体的な数値 で示しています。ここも併せてご覧いただければと思います。議事録ですと、前回藤村 委員が、「直接撮影に比べて間接撮影が劣るというエビデンスはない」という趣旨の発 言をされています。このご発言は、本日阿部課長がまとめられた資料の4頁の下から2 番目にも再録されていることかと思います。しかし、その以前の議論の中で私が指摘を させていただいたのですが、柚木委員が第2回検討会に提出された資料の4がありまし て、これの後のほうに、柚木委員ご関係の団体が各地で検診をされたときの細かい数値 が入っています。それを再録したのが、今回の私の3頁目の表になるわけです。  この中の関係する部分だけを取り出して申しますと、2003年度に熊本の大森先生が取 り扱われた健診の範囲で、直接撮影を受けた男性1万682人の中から5人の肺がんを発 見しています。しかし同じ時期、間接撮影を受けた男性1万8,995人の中には1人も見 つかっておりません。もちろん肺がんというのは、ただいま江口委員からありましたよ うに、年齢によって非常に違いますので、年齢階級ということで分けて検討してみます と、間接撮影を受けた1万8,995人が直接撮影を受けていたらという計算が簡単にでき ますので、計算式は表のいちばん下に書いてありますが、4人肺がんがいたはずである ということになります。これは、たまたま1万、2万という数だけではなくて、人口動 態統計、たぶん同じソースからのデータを江口委員がお話になったであろうと思います が、そちらから考えてもほぼ妥当な数字ではないかというように考えます。  したがって、もし、この委員会が胸部エックス線を肺がんも含めて目的にするという 以上、間接撮影ではなく、直接撮影をやるという体制を前提に結論を出していかなくて はいけないということが明白かと思います。でないならば、例えば軽い咳が出たと言っ て、医者に行くほどでもないので健診を受けて、間接撮影で何もなかった。じゃ、大丈 夫だというと、症状がひどくなり、がんが進行してから医者に行くという、いわゆるネ ガティブラベリング効果が起こるわけです。健診は、見つければいいというだけではな く、適切な時期に見つけなければ、かえって健診をやることがマイナスの効果を及ぼす という例としてよく挙げられるわけですが、そういう具体的な例の基になるデータを柚 木委員が提出されていたので、改めて繰り返させていただいたわけです。これは1万人、 2万人という数字ですが、全国男性ということ、これに1,000が掛かって、2,000万人、 3,000万人といいますと、見落としの数も4,000人、5,000人という数になるわけで、肺 がんを健診で見つけている、そのためにやるということを言うのは、大変勇気のある危 険な発言ではないかと私は思います。  2番目は、「低線量放射線被曝の発がん性について」です。今日阿部課長にまとめて いただいた中では、例えば6頁の上から2番目に、エックス線の被ばくに関連しての議 論、これがまだ結論が出ていないのではないか。確かに、医学的に厳密なことは結論が 出ていない、あるいは出たと見えても、後で覆ることはよくあるわけです。しかし、い ま大きな方向性ということはやはり見ていかなくてはいけない。そして、最も妥当、あ るいは専門家が最善の努力をして集めた資料の結果というのは尊重しなくてはいけない と思います。  そういう意味で、まず昨年1月、イギリスのLancet誌上に、我が国の診断用放射線被 ばくが各国の中で最も多い。そのため英国に比べてがんが5倍ぐらい、3%以上が医療 診断用放射線被ばくに起因しているがんではないか、という論文が掲載されました。こ れは、我が国が名指しで、医療のあり方に問題があるということで指摘されているので、 私は放射線の専門家の方々から大量の私案が掲載されているかなと思って見たわけです。 Lancet誌はそういう意見はわりと簡単にすぐ載せるのですが、ナガタニ先生のものが1 本、リスクのほうについての議論だけ出ているが、ベネフィットも考えてほしいと。お っしゃるとおりだと思いますが、やはり基本的なリスクの部分、我が国が診断用の放射 線被ばくが非常に多いということについては、全く我が国から反論がないわけです。こ のままではそれを認めた格好になっているというのが、現状かと思います。  さらに追いかけるようにといいますか、第3回の検討会の直後に、アメリカのナショ ナルアカデミーサイエンスから、「電離放射線の生物学的影響に関する第7次報告書」 がすでにまとめられて、「どんなに低い線量の放射線でも発がんの危険性がある」。 「しきい値がない直線仮説」、リニア・ノン・スレッシュオールド仮説といいますが、 これが妥当であるという結論が報告されています。  さらに、7月9日の「British Medical Journal」に、WHOの下部機関の国際がん研 究機関から、15カ国の原子力発電所の作業者等の被ばくの健康影響についての疫学解析 結果が発表されました。この論文の中には我が国の委員が参加し、我が国のデータも入 っています。低線量でも、やはり発がんリスクは増加する、少ないから無視していいこ とにはならない、と結論づけられているわけです。  確かに、こういう報告で議論しているレベルもあり、100mSvのレベルであって、胸部 エックス線、この検討会で検討している胸部エックス線の検査はその100分の1以下の レベルですから、今回の議論にそのまま適用することは妥当なことではありません。私 も医療関係者として、無用の不安をあおって、一切の医療診断用放射線を否定するよう な議論になってしまってはいけないということで、前の場で一応計算上の数値を示した 上で、そのままひとり歩きをしないようにという条件を付けたつもりです。  ただ、世界的にこういう議論がなされていて、その中に日本が、広島・長崎あるいは それ以外を含めて、重要なデーターソースになっているその足元、あるいはいちばん問 題であると言われているその国において、議論が、自然放射線に比べて多いの、少ない のというレベルでの議論でしかないことは、非常に恥ずかしいことになってしまうので はないかと思います。  例えば、一次健診としての胸部レントゲン、先ほど3.2%が有所見ということでした が、その前の柚木委員のほうでは、0.8%から2.2%の人たちが有所見者となると、2頁 目で説明しています。有所見となれば、当然ながら精密検査として、いまの時代ですと CT検査をする、そのほかの検査をすることになり、かなり進む。何も精密検査をしな いのでは健診自身が無駄になるわけですから、そういう流れは当然なわけですが、そち らは明らかに桁が違った大きな被ばくが始まってくる。そうしますと、全国で何十万と いう人がそういう被ばくを受ける。その結果として、結核については3,500人が見つか る。しかも、その年齢は非常に偏っているわけです。そういうことを合理化されるのか ということは、もう一度考えてみる必要があります。アメリカのナショナルアカデミー あるいはイギリス、我が国にもいろいろな研究機関があるわけで、そういう議論をきち んと踏まえ、単にこういう利益があるという経験談だけで事を済ませてはいけないかと 思います。  と申しますのは、その当時その当時、きちんとした議論、その最先端の情報を集めて 議論しておかないと、例えば、現在の石綿で非常に大きな関心が集まっているわけです が、そのときにその当時の行政がどういう対応をしたのか、専門家がどういう対応をし たかということが、後から検討されるかと思います。そうしますと、放射線について、 このリニアでしきい値なしの仮説が妥当であるというような専門家のまとめがあり、そ れに対しての反論がない中で、ここでこのぐらい大丈夫だと言うだけの議論をしていた のでは、専門家として不十分ではないかと危惧するものであります。  3番目は、前回かなりの時間を取って、冨田先生がアンケート結果をご報告されまし た。私は、先ほど日経連の方のアンケートもちょっと申しましたが、アンケート結果で ものを言うのは、かなり危険があると思います。とりわけ冨田先生のアンケートについ ては、3つの大きな問題点を指摘したいと思います。  第1に、調査の主体が全国労働衛生団体連合会です。これまでのこの検討会の議論の 中でも、健診が義務づけされなくなると健診団体の経営上大変であること、あるいはそ れに従事する人たちの生活はどうなるかを出していらっしゃるぐらい、明確に利害団体 であるわけです。その利害団体が主体として、まいた調査である。誰が調査をするとい うことは、調査の結果に大きな影響を及ぼします。1つの例として、先ほど江口委員が 話題にされたタバコの例を挙げますと、日本たばこ産業の喫煙率のデータと、厚生労働 省のやる国民栄養調査での喫煙率のデータというのが差がありまして、奇妙なことに毎 年たばこ産業のデータのほうが喫煙率が高い。みんな吸っていれば怖くないという意味 かどうかは存じませんが、そういう差があるわけです。そういう意味において、調査の 主体が、健診を廃止しては困るという団体からなされたということ、これを明確に指摘 したいと思います。  第2に、1,000人の調査、1,000人の専門家に聞いたらこうであったということを、繰 り返し冨田先生はおっしゃっています。付属の資料を見ますと、回答されたのは約3分 の1である、300何十人の方が言ったということです。1,000人にアンケートをまいたの であれば、最大の数は600何十人が「答えたくない」「答えない」というのが意見だった というように取るべきだと思います。調査については、私は自分の専門領域ですのでい ろいろ関わるわけですが、質問紙調査というものは、その表現とか、調査の環境という ことが結果に大きな影響を及ぼします。実際に冨田先生の調査を見ても、回答率が、も との産業医、放射線医と呼吸器内科の専門医、それぞれでかなり差がある。そうします と、これは調査におけるバイアスを起こしている可能性が大いにあるかと思います。非 常に少ない回答率、回収率、その中の答だけを使ってやるというのは、結論を引き出す 基本的な調査のルールに則っていない。我々の意思決定の材料として使うことができな い資料ではないかと考えます。  第3に、先ほどの経営団体の方にも申しましたが、どういう方々を調査対象にしたか。 冨田先生は専門家を対象にということでしたが、我が国の健診の有効性について、専門 家ということで言うとどういうことか。と言いますのは、健診の有効性を正面に掲げた レポートがイギリス、カナダ、アメリカ等では時々出されており、ほとんど政府の機関 として常設的にたくさんの専門家を集めて、かなり大きな金額の国家予算を使ってこう いう検討がずっとなされているわけです。それに対して、我が国では、有効性について 十分な検討がなされていない、よく分からないと、この会ですら言われ続けている。す なわち、ちゃんとした意味での専門家というのは、果たして十分にいるのだろうか。そ ういう中で、専門家の調査をしたらこうであったと言うのであるならば、専門家はむし ろ我が国の中よりも、世界の中にいるのではないか。かなり多くのことが、医学的なこ とは日本という特殊性だけではなく、世界共通にあるわけです。世界共通の医学事項を 取り扱う以上、世界共通の専門家に一度調査をしていただきたいと、是非思うわけです。 そうしますと、イギリスではナショナルスクリーニングプログラム、アメリカやカナダ では、それぞれ政府の下にタスクフォースでプリベンティブサービスの検討をやってい ます。それらに加わった何百という専門家たちに調査をしていただければ、この日本の 現状というのはいかに少数派であるかが分かるのではないかと考えます。以上、前回欠 席したことのお詫びも兼ねて、私の意見を述べさせていただきました。 ○工藤座長 ただいま矢野委員から前回の議論に関する見解が出されたわけですが、何 かご質問、ご意見等ございますか。中身がいくつかに分かれていますが、1、2、3と なっていますので、1つずつについて分けて質疑をしていただければと思います。 ○柚木委員 第4回の検討会まではほとんど審議ですか、議論をきっちりと尽くせなか ったのですが、今回阿部課長から論点を整理していただいて、非常に進歩した検討会に なったということで、まず感謝いたします。  そして前回の冨田先生の意見は、参考意見として討議しない。先ほど日経連の加藤先 生が言われたのを討論しないということでしたが、何のために参考意見として出ている のか。やはり検討会として討論をすべきことではないかと思います。それと4回の検討 会でも冨田先生、それから私の意見書、いろいろ述べましたが、やはりこの場でひとつ 整理をしていただいて、また確認をしていただいてほしいことがいくつかあるのです。  その1つに、やはり我々は何回も見ていますが、「一般定期健康診断のハンドブック」、 これは労働衛生課でずっと出しているのですが、その中に、定期健康診断の胸部エック ス線検査の目的疾患は肺結核のみである。それ以外の胸部疾患は偶発的に発見されてい る、という矢野委員の意見もありましたが、どういうのですか、これは過去4回の意見 書を見ていただければ、もっとはっきりと分かるのではないかと思います。  もう1つ、一般健康診断における胸部エックス線検査はいずれも結核を含めて胸部疾 患の診断に役立つという、ハンドブックの評価の下に行政指導が行われて、ずっときて いるわけです。いろいろ時代は変わっても、やはりいろいろな胸部の疾患を見つけるこ とにきているわけです。その辺のことをもう一回きっちりと確認をしてほしいと思いま す。  また、これは私の意見書にもありましたし、冨田先生の意見の中にもあったのですが、 第159回の通常国会の参議院厚生労働委員会において決議された「結核予防法の一部を 改正する法律案に対する附帯決議」というのがあり、その中で。 ○工藤座長 柚木委員、ご発言中で大変申し訳ないのですが、総合的な議論は後にして、 矢野委員の出されたことについて、まず1番目の直接撮影と間接撮影の有効性の問題を ご指摘しているのですが、これについては全衛連がずっとデータを出されておられます ので、柚木委員から何かございますか。 ○柚木委員 いろいろ出ていますし、この一部だけを取り上げているのではなく、矢野 先生のほうにも、いろいろ他人の論点に対して謙虚に、また素直に耳を傾けてほしいと ころがあるということで、この辺のことはもう一遍、1番の問題に対しては資料を見直 してみます。 ○工藤座長 柚木委員の出された資料が、いちばん最後に付いてございます。これは、 間接撮影の検査受診者数と直接撮影の受診者数がございますね、約3万人と1万6,700 人。それでの肺がん発見数が、このような数字が出ていますが、これは事実ということ ですね。 ○柚木委員 そうですね。第1回のときに、当時全衛連でレントゲンの委員会を設けま して、急なことでしたので、きっちりとして、大きな数字を出してあるのですが、まと めるならば、もっと意見があるわけですが、一応第1回の検討会に出したものとしては、 間違いはありません。 ○工藤座長 大体間接撮影のほうが、直接撮影の倍ぐらいということで。 ○柚木委員 数字的にはそうなっていますが、一概にはそうは言えない。 ○工藤座長 それは全衛連の健診事業としては大体そういう比率ということで。 ○柚木委員 もう一度見直して、これも答えていきたいと思います。 ○工藤座長 健診事業というような形では、結核予防会もやっておられますが、加藤委 員のほうも大体このぐらいの比率ですか。 ○加藤委員 確認してからお答えします。 ○工藤座長 いま手元に資料はお持ちではないですね。いろいろな所で、これは受託し てやられていると思いますが、これについては江口委員、どうぞ。 ○江口委員 実際はどうかということはともかくとして、この表だけで考えてみると、 やはり間接で受けている対象集団と直接で受けている対象集団、これはかなり違います ね。年齢階級で見ても、20代、30代は間接のほうが多いし。 ○加藤委員 年齢は調整しております。 ○江口委員 いや、だけど厳密には先生がおっしゃるように、同じ集団で、例えば間接 と直接とを撮ってみて、それで直接のほうが多く見つけているというのであれば……違 う集団をやっているわけです。そうすると、矢野先生が自らおっしゃっているように、 そのバックグラウンドがかなり違う集団で、数字だけを比較してしまっているというこ とになりますから、間接と直接の有効性を直接的に調べているものではないと思います。 ○工藤座長 江口委員は、肺がん学会の委員長もやられているので、その直接と間接の 感度、特異度といったものの差は、はっきりしたデータがございますか。 ○江口委員 いま手持ちのものがないのですが、調べてみます。 ○工藤座長 大きくはある。 ○江口委員 これはまたちょっと文学的な表現になるかもしれないけれど、間接撮影で 健診をするということでも、実際にその間接撮影の精度をかなり改良しているグループ があります。そういう場合には、直接撮影とほとんど変わりないというようなことを言 っておられる所もあるので、やはり比べるとしたら、同一集団でどうかということが本 当は望ましいと思うのですが、実際そこまでのデータを取ってないと思います。 ○工藤座長 次回にでもそういうデータがあれば、またご議論の中で出していただけれ ばと思います。  2番目の低線量放射線被ばくの発がん性の問題について、何かご意見、ご見解ござい ますか。村田委員、どうぞ。 ○村田委員 アメリカの科学アカデミーの報告、私も、ものすごく分厚いので抄録しか 読んでないのですが、ポイントは直線的なリスクがあるというのと、それから100mSv の被ばくで1%肺がんのリスクが増えるということでしたね。やはり放射線によって、 そのリスクはあるという、それはそのとおりであると受け入れていいと思うのです。た だ、あのときのデータで書いてあったのは、100人の集団がいるとすると、医療被ばく でない者によって、42人のがんが一生涯のうちに発生すると書いてありました。それが、 その集団に100mSvが加わると43人になる。そういうことで1%増加するということで すね。これがバックグラウンドのそういうモデルなのです。  そうすると、医療被ばくでない42人のがんの患者さんにおいて、その医療によってそ のがんが適切にもし治療できて、より予後が良いという結果が得られるとしたら、それ はかなりメリットが出てきますね。ですから、そういう1%のリスクが出ると、それば かりを強調してもやはり問題があるので、その42人の中で、おそらく多くの方がその医 療によってメリットを受けると思うのです。あのデータというのは、やはりそのことを いつも並べて言ったほうが本当はいいのではないかという気がしているのですが、その ことに関していかがでしょう。 ○矢野委員 おっしゃるとおりですけれども、ご専門の先生方がそのレベルでいつも止 まっているのが、私は非常に不満なのです。具体的に、どういう人たちがとのくらいメ リットを受けたのか、それに対してどのくらいのリスクが増えたのか。これはもちろん いろいろな過程を置く必要がありますが、そういう感度分析そのほかの手法を使って、 こういう過程だったらこう、こういう過程だったらこうということを、その範囲をもっ てもこのくらいは許される、これはやり過ぎだというようなレベルが決まってくるわけ です。それはそれぞれの分野でそういう努力をしているし、とりわけ日本がいま放射線 についてこれだけ言われている中で、ある意味で両方あるといっておしまいにしている という、20年前、30年前ならいざ知らず、これだけ世界中に注目されている中で、いつ までもそういう定性的な議論のままで両方考えようといっておしまいにしているという ことに、私は非常に不満を持っています。 ○村田委員 医療被ばくによるリスクはあるということをもう認めてもいいと、皆さん わかっているんですよね。しかし、医療に関する放射線というのはもちろんそんな限界 があるわけではありませんが、それによって、みんなそのリスクをきちんと踏まえたう えで医療の検査をしていますし、定性的に何人の方がメリットを得ていたかというのは、 それは放射線学会でもモデルとしていろいろな計算などをされている論文も出ています。 リスクの論文そのものも、やはりいろいろな過程を積み重ねたうえでのモデルですので、 その集団の中でこれだけのメリットがあるというのは出せないですよね。 ○矢野委員 いま我々が議論しているのは、全国5,000万人労働者に、胸のレントゲン で被ばくをする、あるいはその中から0.8〜3.何%の有所見者が出て、二次健診で別な 比較をする。それとそれのベネフィット、これは比較的変動項の少ない比較ができるの ではないかと思います。そういうことがなされる必要があると申しています。 ○村田委員 ベネフィットのほう、例えば先ほどの肺がんにおいて、検診によってこれ ぐらいの広がりが出ているとか、そういうメリットと比較すればよろしいわけですよね。 リスクを否定しているわけではないと思いますし、みんなわかってやっていますが。 ○工藤座長 矢野委員がおっしゃるように、このレントゲンを使った健診というのは、 絶えずコストベネフィットだけではなくリスクとベネフィットの問題をきちんと明らか にしなければいけないというのは、そのとおりだろうとは思います。この辺の研究も随 分進んではきていますよね。いくつかの論文があると思いますので、もし必要であれば また村田委員のほうで出していただければと思います。 ○村田委員 経済的な面とそれから比較したものですよね。 ○工藤座長 法医研などでも結構やられていると思いますが。 ○村田委員 はい、インセンスなどが出されています。 ○工藤座長 よろしいですか。それでは、最後にアンケート調査についてです。これは、 アンケートのバイアスの問題を矢野委員のほうで指摘されています。前回冨田先生のほ うから述べられた意見陳述について、特にディスカッションなしで終わったわけです。 それまでの団体としてのご意見というのはみんなこういう形を取っていますので、柚木 委員から何かありますか。 ○柚木委員 まず、全国労働衛生団体連合会が実施したアンケートだから当てにならな いという言い方は、これはちょっとおかしいのではないかと思います。また、我々は働 く人の、例えばレントゲンがなくなれば、レントゲン技師の雇用の問題もありますので、 いろいろなことに波及していますよと言ったことがあるのですが、利害団体だとは思っ ていません。健全な健診機関の団体だと思っています。我々がそういう働く人、レント ゲン技師などの雇用のことを心配していろいろ話をしたことが利害団体というのであれ ば、日本医師会が先立って保険点数の切り下げを問題にしたときに、日本医師会を利害 団体とは言わないですね。やはり、日本医師会は健全な学術団体なのです。ですから、 そのような見方で我々は健診をして働く人によろこんでもらっていると解釈しています。  また、この中で1,000人の専門家を対象にしたと、世界を見なさいということである のですが、日本の産業医界を代表するドクターに対してアンケートを出したわけですか ら、その方を専門家と言わないのであればどういう方が専門家になるのか、これは日本 産業衛生学会の相澤先生がいらっしゃいますので聞いてみてもいいぐらいですね。それ は、やはり言い過ぎではないかと思います。世界を見るのではなく、日本できちんと、 日本の産業医界を取り巻くドクターの意見ですから、謙虚に受け止めるべきだと思いま す。  我々は学術団体の医師側としてやっているわけですから、真ん中でも述べられていま すが、NHKのアンケートなどでも、もっと少ない意見が十分報道されています。「1,000 人の少数意見」、日本の産業医界のほとんどの人に出しているアンケートです。それを少 数というのはちょっとおかしいと思いますね。 ○矢野委員 中の少数意見です。 ○柚木委員 「回答者だけの比率を使って結論を引き出すのは誤まりです」ということ は、断言できません。やはり謙虚にこのアンケート結果を見るべきだと思います。以上、 気のついたところだけ手短にお話しました。 ○工藤座長 ありがとうございました。 ○藤村委員 いまのアンケート調査のことですが、1,000人のうち3分の1しか返事を しないから3分の2はこんな問題には答えたくないんだと結論づけるのは、これは間違 いです。これは、多忙で煩雑であったのでアンケート調査に答えられないという人たち もかなりいるはずですし、それを分析しないで結論を出す。ですから、矢野委員の論調 が、初めの間接撮影、直接撮影でも、2つのグループを比較してこうだから4人が見落 とされていたのだという結論を出したり、論文を1つ、2つ持ってきて、こういう論文 があるからこうであるという結論を出そうとするのは、決して正しい検証の仕方ではな いと思うんですよ。それから、有所見率が0.8〜2.2%あると、5,000万人労働者では40 万〜110万人の精密検査が行われる。これだけの精密検査が行われていることがスクリ ーニングの意味であって、逆に非常に価値があると見ることができるわけです。そうで なければ、この人たちは症状が出てくるまで、つまり肺がんでもじん肺でも手遅れの状 態になるまで放置しておけばよろしいという結論と何ら変わらないと思うんです。結論 の出し方がやや偏っているのではないかと危惧するところです。 ○工藤座長 ありがとうございました。アンケート調査あるいは調査方法全体といって もいいと思うのですが、こういう調査というのは、それぞれの方法論によってあるいは 回収率などによって、それぞれまた評価があるということも事実だと思います。これは 矢野委員の1つのご見解というふうに受け止めていただいて、最終的にこれが正しいと いうことではなく取り扱っていきたいと思います。そういうことでよろしいでしょうか。 これは、回収率は大体30%ぐらいですね。 ○柚木委員 もう少しありましたね。前回の資料7にあるのですが、ちょっと数字は。 ○工藤座長 前回の記録を見ればよくわかりますので、また参照していただきたいと思 います。それでは、ただいまの矢野委員の見解に対する質疑は、これで終わりたいと思 います。その過程で全般に対する意見も既に出ていますので、全体を通しての討議に入 りたいと思います。  本日は経団連のご意見をいただいたあと、江口委員、矢野委員からご意見を出してい ただいたわけです。全体を通じて意見があれば出していただきたいと思います。矢野委 員、何かいまのことについて。 ○矢野委員 藤村委員が言われたことは大変気になっているのですが、学術論文を1つ 2つ持ってきて議論するのはいかんということ。私は、いくつかの学術団体の検討会に 出ているのですが、やはり学術論文を持ってきてそれで検討するという手法でやってき たものですから、そうでなくてやるというのがどういう方法なのかということは明確に しておかないと、ここはもう全部選挙任せとか、とりあえず何とかの学会員が人気投票 で決めるというのが良いのか。それとも、単に賛成多数ではなくて、学術的にどちらが 内容があるかということで決めるのか。私は、やはり学術的に内容のあるものを選んで クーパでやると理解しているのですが、その点、藤村委員のような考え方で進めていく ということですと、ちょっと違ってくるのではないかと思います。 ○藤村委員 いや、私は危険性を言ったんですよ。例えば、ある結論を出すために都合 のいいものを持ち出すこともできるわけです。したがって、それはこの2番、3番のと ころでは特に問題にはなりません。ただし、1番のような結論を出されるようですと、 ちょっと心配になるわけですよ。1番、つまり2つのグループが別々にやったものを比 較検討して、これは4、5人が見落とされていたのだと結論づけるような態度でこうい う論文を読まれると困る、ということを申し上げたのです。 ○工藤座長 ご意見はありますか。 ○矢野委員 私は、1万人、2万人レベルでのこういう調査というのは、非常に貴重だ と思います。もちろん、全国5,000万人でやれればいいわけですが、そういうことは不 可能です。我が国のデータとしてはかなり多いほうの数だと思います。常にこの種の研 究は、そういう偏りのないと考えられるサンプル集団でこうであったと。それが偏って いることがある場合には、その集団を使わないなり割り引いて考えるわけですが、一応 柚木委員が出されたということで、そういう偏りがないのではないかと私は考えてしま いました。最初から偏りがあるとおっしゃるのでしたら、やはりそのことを明記して提 出していただいたほうがよかったのではないかと思います。  それから、専門家集団という意味で、日本産業衛生学会は、一昨年でしたかその前で したか、現在の健康診断について、きちんとした根拠がないのでこれを検討していく必 要がある、と理事長名で出ています。これは、健康増進法の施行に伴っての健康手帳に 関連した理事長声明の中で出ています。 ○柚木委員 この問題は前回も出たのではないですかね。文書が出た、出ないというこ とは。もう一度読み直しをしてみます。それと、今日の論点の中ですが、雇入時と。 ○工藤座長 それは産業衛生学会の話ではないですね。 ○柚木委員 ではないですか。 ○工藤座長 ええ、あれは呼吸器学会、肺癌学会です。 ○柚木委員 勘違いしました。話が変わりますが、「合意がなされた部分」で雇入時の 健康診断、海外派遣労働者の健康診断の中で、胸部レントゲンは要ると。にもかかわら ず、定期健康診断では要らないという論点は出てこないと思いますので、その辺をもう 一度ゆっくりとやってほしいですね。ただ結核健診の改正法が出たから定期健診の胸部 レントゲンを。 ○工藤座長 どこの部分ですか。 ○柚木委員 「検討中の部分」として、1頁目では、雇入時と海外派遣労働者は胸部レ ントゲンを入れましょうと。定期健康診断では要らないのではないかということにはち ょっと結び付きようが、見直す必要があるのではないかと思いますので、ちょっとその 辺を議論していましたね。 ○工藤座長 この「検討中の部分」の中に書かれているご意見は。 ○中央労働衛生専門官 3頁の1つ目の○のことだと思います。これは、柚木委員の発 言を基に作ったものです。 ○労働衛生課長 「短期的には肺結核の罹患率が、ここ数年再び上昇してきており、結 核に関して日本は先進国ではない。特に職域においては外国人労働者の増加や、免疫力 の弱い若年の短期雇用労働者が増すなどの社会的背景があり、肺結核の感染源の存在が 無視できない。肺結核の潜伏期間も考慮すると、定期健康診断の胸部エックス線検査の 存続がますます重要ではないか」という意見です。これは、ほかの詳しいところではも う1つ、海外労働者が増えているという話もあったかと思います。 ○工藤座長 ここに出されている○で書かれているのは、それぞれの意見をまとめたも のです。ですから、相矛盾するものが入っています。それぞれのお立場でのご発言をこ こに書いておりますので、これがそのままこの委員会としての見解というわけではない ということです。 ○藤村委員 全く離れてちょっとトピック的なものなのですが、私は日本医師会で医療 安全、医療事故対策をやっています。いま医療事故として紛争になるものの非常に多く は、がんの発見遅延、診断遅延なのです。例えば、司法の場で肺がんの診断遅延で訴え られたとき、3カ月間胸のレントゲンを撮ってなかったら、これは全く有責になります。 そうすると、そういうことがないように、胸のレントゲンは意味がないんだ、大した診 断的価値がないんだということを、この委員会で大声で言えるかどうかという問題があ ります。これも大切なことですので、まず、一般臨床医は、例えば咳や痰が出るとまず 最初に検査をするファーストチョイスとしては胸部レントゲンということになると思う んですよ。それを根本から崩していいのかどうか、崩すような何らかの提言が出ていい のかどうか。ここを考えていただきたいと思います。 ○矢野委員 私も是非その辺のことをどこかの場で議論すべきだと思います。ただ、冨 田先生のお話の中にも、廃止した場合、医師の負担が増えるという話がありましたが、 レントゲンを撮ったうえで見つけなかった場合のほうが、撮らなかったときよりも責任 が大きくなるわけですね。ですから、症状と無関係に一律に間接を撮って、もし柚木委 員が提出されたようなことが起こってしまったら、それは大きな責任になってくると思 います。あるいは、では、疑わしいのはすべて二次検査をやろうということで皆CTを やるということになってくると、今度は被ばくが一次健診のときとは比べものにならな いレベルになりますので問題になってくると思います。そういう意味で、医師というの は非常に責任があって、どちらに向いても大変辛いわけですが、やはりそういう責任の ある中で、だから全部機械に任せるというようなことでは駄目ではないか。いずれにし ろ、応分の責任を負いながら合理的な判断をしたということを示さないと。ともかくや った。ともかくやるということでは済まないのではないか。そういう意味で、20代、30 代の妊娠の可能性のある若い女性と、60代、70代の結核なりいろいろな疾患の有病率や 罹患率が全然違う集団を同一にやるという制度から、そろそろ脱却すべきではないかと 考えています。 ○工藤座長 ありがとうございました。ほかにご意見はありますか。 ○土肥委員 いつも貴重な議論をお聞かせいただきありがとうございます。勉強になっ ていると思います。今回のこのままの議論を続けますと、実際には、胸部エックス線そ のものが一般大衆に与えるメリットがあるのかないのか、という議論を真剣に進めてい くのか。それはサイエンスとして議論がはっきり出ないから、まずはそれを置いておい てするのかということで大きく分かれ道が出てくるかなという気がします。逆に言いま すと、先ほどの数パーセント発がんするということと、発見するというメリットについ て、本当にサイエンスとしての検討を加えたうえで議論を進めていくというのであれば、 それが必要だと思います。現状では結論が明確に出し得ないというコンセンサスがある のであれば、それ以外の議論の方法があるかと思います。そういう点の考え方や今後の 進め方は全体としてどのように考えていかれるのか、ほかの方々のご意見、工藤座長や 行政の方のご意見もあるかなと思いますが、いかがでしょうか。 ○工藤座長 非常に大切なご意見だったと思います。まず行政側の考えを述べていただ きたいと思います。 ○労働衛生課長 いまの土肥先生のご意見は非常に大事だと思います。私ども行政側の 考え方は、安衛法に基づく一般健診としての胸部エックス線撮影は、現在やられている わけです。1年に1回、全員が直接であれ間接であれレントゲン写真を撮るという現実 が、いまも流れています。年末ですので、おそらく正月が明けますとまたたくさんの人 が健診をお受けになるという状態です。片や、結核予防法で結核健診というのは一切な くなってしまいましたので、こちらのほうは全然ありません。ですから、ある程度いろ いろな施設などは結核の予防の枠は残っていますが、残っていないところは大きく変わ っていったと。それを現在職場で担保しているのは、安衛法の胸部レントゲンだけです。  本当にこれが役に立っているのかいないのか、あるいはメリット・デメリットはもち ろんあります。そのメリット・デメリット論を最後までここでギチギチに詰めていくと いうのは、極めて大変なことであろうと思います。それを科学的にやるのであれば、半 年や1年かけてもできないのではないかと私は思います。であればどうするかという話 ですが、これは行政側は最後まで科学的に詰められなければ、現在専門家の先生方にお 集まりいただいてこれだけの議論をしていただいています。その中のわかっている部分、 わかっていない部分を最大限集約させていくことはできないか。ということで、わから ない部分はわからない部分として、今後、現在やっている胸部エックス線レントゲンの、 安衛法の規則に定めるこの撮り方について、より良い方法がもう少しあるのではないか というところに議論を持っていって、完全ではないにしろいまよりも良いシステムに変 えるものがあれば変えてもらいたい、というのが健全な私どもの考え方です。  そのためには、結構シビアな議論を一生懸命していただいていますが、できれば来年 あと2、3回議論をしていただいてもいいのかなと。つまりメリット論、デメリット論 がいろいろありますので、これだけやって、ここのところで最大公約数でこうしたら少 なくなくともいまよりは良いというところが見つかれば、そこで現在のシステムを変え るという、今度は行政上の我々の手段の検討に入っていきたいと思っています。 ○土肥委員 という議論でしたら、逆に言いますとメリット・デメリットがはっきりし ている部分はやめるなり残すなりという議論が成立するという考え方でよろしいわけで すよね。一方で、この胸部エックス線の検討会の議題として、間接エックス線だけを対 象とするのか、もしくは、労安法に定められるエックス線のあり方になりますと、間接 か直接かという議論も一方で存在します。つまり、特殊健康診断は直接を撮りなさいと しているわけですね。一般健康診断では間接ですという話が基本的にはあるわけです。 そのあり方という意味では、一般的健康診断において直接であるか間接であるかという 議論も存在するのだと。それを含めてメリット・デメリットを考えていく、という考え 方でよろしいのでしょうか。 ○労働衛生課長 はい、よろしいです。 ○工藤座長 その問題については、次回少しデータを出していただいて、またそこでご 議論いただきたいと考えています。いま事務局から説明があったように、そういう流れ の中でやっていかなければならないということがありましたので、まずははっきりして いるもの、例えば雇入時の者や海外派遣の結核健診などはっきりした部分をまず固定し ていって、いま残された部分について議論を集中させているわけです。そこで、いま労 働安全衛生法という非常に特殊な法でありながら、そこにも続いてやられているものが、 5,000万人という非常に大規模な国民の中核をなす人たちの胸部レントゲン写真ですの で、これは労働安全衛生法の特殊性と併せて国民の健康の部分とどのように整合をもた せるか、という非常に難しい議論です。それが一律で本当にいいのかという議論も先ほ どから出ていますし、また、乳がんや胃がんといったものを含めたすべてのがんの中で、 胸部エックス線で引っ掛かるものとしては肺がんということになりますが、これは一体 どのように労働安全衛生法の中で取り扱っていけるのかというような議論に本日は入っ てきたという理解を、私自身はしています。ほかに何かご意見はありますか。 ○藤村委員 話は別にしまして、じん肺の診断は、厚労省はどのようにすると考えてい ますか。まず、第一のじん肺です。じん肺有所見者はこれこれだということはあります が、最初にじん肺を診断するのはどういう切っ掛けで、どういう検査でするのでしょう か。 ○労働衛生課長 いや、これはじん肺法によりまして、じん肺作業をしていましたら、 これはじん肺法による特殊健診を定期的にきちんとすることになっていますので、その 直接レントゲン写真によってじん肺の。 ○藤村委員 直接レントゲン写真ですね。 ○労働衛生課長 はい。 ○藤村委員 もう1つは、参考資料の1について江口委員にお伺いします。これは、年 齢によって肺がんもCOPDもだんだん発症率が増えていくのはよくわかります。例え ば、このデータで30代のものはなかったのでしょうか、それとも切り取ってあるのでし ょうか。 ○江口委員 上の肺がんに関しては、もっと若いところからあります。それから、この COPDのフクチ先生のものは、たしか40歳からだったと思います。それ以前のものは なかったと思います。 ○藤村委員 わかりました。こういう肺がんは予防できるかどうかわかりませんが、C OPDに関しましては少なくとも予防できるんですよね。そういう観点も入れておかな ければいけない。それから、例えば肺がんも多少気管支への拡張がある、タバコはやめ なさいよというような指導が効果がないとはいえないわけです。そういう意味も考慮し てこの問題を考えていかなければいけないと思っています。 ○工藤座長 COPDに関しては私も専門だから申し上げるのですが、胸の写真ももち ろんありますが、これはかなり進行しないと出てきません。いちばん感度のいいものは、 やはりスパイロメトリーですね。残念ながら、これを一般の健康診断の中に入れている 所はまだ少ないと私は思っています。ほかに何かごく意見はありますか。 ○堀江委員 先ほど工藤座長がおっしゃいました、安衛法として肺がん検診をどう捉え るかという議論がそろそろ始まっているのではないかという発言に関連する意見です。 まさに今日、事務局が資料1の(2)肺がん対策ということで縷々おまとめいただいて いる中を拝見していまして、その議論がさまざま出ています。私はいままで労働安全衛 生法の一般健診というのは、やはり事業者に何らかの責任、あるいは結果に基づいて事 業者がすべきことがあるものを対象にしているのだと理解していました。実態として、 結核予防法が改正されたこと、肺がんがかなりいままで安衛法で見つかってきたこと、 という事実がある点において、ほかのがんと比べて肺がんが安衛法との関わりが深いと いう事実は持っておかなければならないのではないかと、いまは考えています。  それともう1つは、今日の議論の中で間接喫煙の問題が出ています。昨今の作業環境 の問題あるいは快適な職場の形成といったような旧労働省以来の施策の中でも、喫煙の 問題が取り上げられています。これは職域においてやるべきものも残っているというこ とからしますと、例えば乳がんや大腸がんなどほかのがんの検診はやっていないから、 安衛法で肺がんをやる必要はないんだというような議論には必ずしもならないのではな いかといまは考えています。当初私は、これは結核予防法の改正から流れてきたので、 結核対策をどのように残していくのかということに議論を集中させればいいのではない かと思っていました。しかし、やはり肺がんは他のがんに比べて安衛法との関わりが強 く、また、職域での対策があるということを少し皆さんがコンセンサスをそこに得てい ただけるのであれば、ほかのがんと比べて肺がん対策をこの場で論じるというのは一定 の意義があると考えますので、ちょっと意見をさせていただきました。  そうすると、先ほどのいまある科学的なデータで何をもってより良いことをやってい くかということなのですが、リスクもあるしメリットもあるという議論はきちんと科学 的に検証して、これがどのぐらいの数になっているかということを、矢野委員がおっし ゃったように定量的にシミュレーションしてみて、仮にやめたら、何人を見逃して、何 人が放射線によってがんにならなくなるという数字が出せるのではないかと思います。 これは、もし集団を一律に取り扱わずに、例えば喫煙者をどうするとか、40歳以上をど うするというように区切ってもまた率が変わってくると思います。その辺の数字を出せ ば、もう少し皆さんの議論が集約するのではないかと思います。 ○工藤座長 ありがとうございました。特に被ばくリスクとの関係については、次回村 田委員から少し出していただくことにしたいと思います。 ○江口委員 ちょっと重複するかもしれませんが、今日までの議論を私なりに考えてみ ますと、1つは、この労働安全衛生法で健診を続けるかということについては、先ほど 来言われている業務起因性がありましたので、それに関しては、私自身は受動喫煙の問 題はどうしても避けて通れないのだろうと思って、今日の資料を提出しました。やはり、 こういうことも考えて対象を絞り込むなり何なりということをやっていかなければいけ ないのではないか、ということを考えています。  もう1つは、今日出てきた胸部写真の有効性ですが、これもいままでの検討会で何回 かお話したように、いままで行われている健診のデータでも、胸部写真による肺がんの 検診が有効であるということは、日本からはエビデンスとして出ています。ただし、そ れがすべての健診団体に当てはまるかどうかは別問題です。胸部写真が役に立つか立た ないかといえば、一定の役に立つと思われる根拠はある、ということがいまの段階での 私たち専門家の考えです。それに対して、今日出た直接写真、間接写真は、これはどち らがどうかという話については、少なくとも最近はあまりデータが出ていません。以前 は間接写真をいかによくするかということがいろいろな健診団体で行われていましたの で、比較的古い論文ではかなり出ていたと思います。次回にでもそれをもう一度レビュ ーしてみたいと思います。実際の認識としては、間接写真でもかなり精度がよくなって きていて、直接写真とそれほど遜色はないだろうというのが私たちの印象です。あと、 被ばくの問題については、いろいろな議論があっていまだに結論は出ていないというと ころだと思います。 ○工藤座長 ありがとうございました。ほかに何かありますか。特にないようでしたら、 本日の討議はこのぐらいにしておきたいと思います。次回の検討会の日程あるいは内容 等について、事務局からお願いします。 ○労働衛生課長 次回の検討会ですが、1月16日(月)14〜16時まで、会場は7階の 専用第15会議室です。一応、現在こういう予定にしていますが、準備その他について間 に合わなければもう少し遅くなる可能性もあります。それから、本日ちょっと間に合わ なかったのですが、商工会議所から意見陳述の申し込みが前々回にありました。基本的 には、経団連と一緒にこの検討会の結果の影響を受ける団体ですので、一応受けており まして、間に合わないということで次回に回すということで連絡をしています。意見陳 述はこれによって最後にしたいと思いますので、その点も事務局からお知らせをしてお 断わりしておきたいと思います。以上です。 ○工藤座長 それでは、次回は商工会議所からの団体としてのご意見を伺ったあと、江 口委員、加藤委員、村田委員には、先ほど議論の中で出てきた問題点についてお話いた だいて議論をしたいと思います。意見陳述という長い意見を出していただくことに関し ては、次回ぐらいで大体出尽くしていただきたいと思います。  本日はお忙しいところ、ありがとうございました。これで終わりたいと思います。 労働基準局安全衛生部労働衛生課(内線5495、5181)