05/12/26 第6回石綿に関する健康管理等専門家会議議事録 第6回石綿に関する健康管理等専門家会議 日時 平成17年12月16日(金) 13:00〜 場所 経済産業省別館827号会議室 照会先 厚生労働省労働基準局安全衛生部 労働衛生課じん肺班(5493) ○労働衛生課長 定刻になりましたので、ただいまから「第6回石綿に関する健康管理 等専門家会議」を開催します。いつものことですが、傍聴の皆様にお知らせいたします。 傍聴に当たりましては、既にお配りしています注意事項をお守りくださいますようにお 願いいたします。  本日は森永委員が欠席です。鏡森委員は本日出席というお知らせですが、大雪で遅れ ているという連絡です。追ってご出席になると思います。本田委員も少し遅れるようで すが、ご出席いただけると思います。  委員の先生方のお手元に報告書の素案が届いているかと思います。本日はこの案をも とに、議論を進めていただきたいと考えています。よろしくお願いします。カメラはこ こで退場をお願いします。  それでは土屋座長、議事の進行をお願いします。 ○土屋座長 早速、議事に入ります。最初に、資料の確認を事務局からお願いします。 ○労働衛生課長 皆様のお手元に「第6回石綿に関する健康管理等専門家会議」があり ます。資料1に委員名簿があります。そのあとに資料2、「未定稿」と書いてありますが、 「石綿に関する健康管理等専門家会議報告書(素案)」がありますので、本日はこれをも とにご議論いただきたいと考えているところです。その下に資料3、「石綿に関する健康 管理等専門家会議開催要綱」があり、ここの中にいろいろ資料が綴ってあります。通算 の頁が書いてありまして、「開催要綱」が16頁、その次の「臨時健康相談実施状況」が 17頁、「石綿自記式簡易調査票」があって、19頁に「胸部CT検査における放射線誘発 致死癌の発生確率」があります。それが20頁、21頁まであり、22頁が「二次問診票」 「石綿(アスベスト)ばく露歴調査票(案)」と書いてあります。最後が「二次問診票」 「資料・検査の流れ」という、フロー・チャートの付いたものであります。  各委員のお手元に、その下にさらに「石綿に関する健康管理等専門家会議報告書(素 案)」と書いた、コメント入りのものがあります。これはお配りして、各先生から寄せら れたコメントを事務局でどのようなコメントが入っているか、こちらに付けたものです。 頁数は資料2の「報告書 素案」と一致していますので、どちらをお使いになっても同じ ようにご議論いただけるかと思います。以上です。 ○土屋座長 どうもありがとうございます。本日はこの報告書に沿って順次、討論を進 めていきたいと思います。最初に、本報告書の概要について事務局からご説明をお願い します。 ○労働衛生課長 資料2で説明いたします。「素案」として、いちばん上に目次がありま す。I「序論」、II「石綿に関する情報の提供と相談体制の充実」、III「石綿ばく露に関 する健康管理の考え方と手法」、IV「今後更に進めていく対策」、V「おわりに」という 構成になっています。  Iの「序論」ですが、これは専門家チームによってリスク評価に基づく健診対象、ア スベストばく露者に対する健康管理の方法の検討を行う、ということで検討状況等を書 いています。IIですが「石綿に関する情報の提供と相談体制の充実」ということで1が 「国民に対する情報提供の推進」、2が「自記式簡易調査票の導入と活用」ということで あります。これは先ほどの資料3に自記式簡易調査票が添えてあります。  IIIで「石綿ばく露に関する健康管理の考え方と手法」、その中の1が「石綿ばく露の機 会の把握について」となります。その4頁、「ばく露形態」、ばく露機会についての表が 載っています。6頁の2が、「石綿関連疾患に関する診断方法について」で、(1)現状、 (2)胸部エックス線直接撮影とか放射線被曝のリスクです。7頁のロ)胸部CT、ハ) として放射線被曝のリスクについての議論の内容をここに掲載しています。  8頁の3、「石綿関連疾患に関する胸部エックス線撮影等検査の意義及び方法につい て」という項目があります。ここは結構大事なことが書いてあります。真ん中からやや 下あたり、「石綿関連疾患を発見するために、罹患率が相当に低いと考えられる一般住民 に胸部エックス線検査を実施した際の発見率のデータや、医療費抑制・死亡率抑制等に 関する効果についての知見の集積が無く、現時点で積極的に石綿検診を支持する理由は 見いだされない。しかしながら、問診によって過去に石綿にばく露したと判断される者 は、将来的に石綿関連疾患を発症する可能性の高いハイリスク者であることが予想され る。そのような者に限っては所見の有無にかかわらず胸部エックス線直接撮影による健 康管理を実施していくことが望ましいと考えられる」というように記載しています。  その次、9頁をご覧ください。9頁の(4)、この会議の検討目的の1つですが、「不 特定多数の住民に対する検査について」というところがあります。そこの真ん中から下、 「はじめから放射線被曝を伴う胸部エックス線検査を行い、異常なし、という所見を持 って不安の解消を行おうとすることは避けるべきだ。何故なら、マス・スクリーニング として住民に検査を実施した場合、ほとんどが所見を認めないと予想されるが、胸部エ ックス線検査で所見を認めないということは石綿ばく露のなかった証明にはならないか らである」。いちばん下のところに、「重要なのは問診上、石綿ばく露が疑われるか否か であり、疑われる場合には、所見が見られなくとも継続的に検査を行うことが望ましい」 という記載をしています。  10頁の5、「疫学的手法による健康影響調査の実施」があります。ここは前回の議論 を踏まえているところです。「石綿ばく露のリスクが高いと考えられる地域や集団に限っ ては、石綿ばく露の心当たりがあるなしにかかわらず広く検査を実施して、本当にその 地域・集団のリスクが高いのかどうか評価を実施するとともに、有所見率等のエビデン スの集積を行い今後の健康管理に資することが重要と考えられる」というものです。  11頁のIV、「今後更に進めていく対策」であります。1として「中皮腫登録」があり ます。この中で議論になりましたが、「診断パネルを開催することにより」ということも ありますし、がん登録とは異なりますが「どのような登録方法が望ましいのか、中皮腫 登録のあり方について検討を行う必要がある」という記載であります。  11頁の2で、「石綿含有建材等からの飛散状況の把握」。きちんと飛散状況を把握する 必要があることが書き込まれています。それから12頁、3として、石綿関連疾患を的確 に診断できる医療従事者の養成、研修が重要ということです。このような構成で作って います。  あとは【参考】として住民検診やいままでの情報収集、他の自治体・企業において実 施された検診について載せています。14頁からは用語集を付けようと考えています。ま だ並べているところで、用語集はお示ししておりません。最終的な報告書については用 語集も全部入れて、報告書として完成させたいと考えているところです。以上です。 ○土屋座長 どうもありがとうございました。逐一やっていきますが、全体として何か ご意見はありますでしょうか。よろしいですか。  それでは、各章立てごとに進めたいと思います。最初に具体的な検討で、委員から事 前にご意見を承っています。それ以外にも、時間に余裕があれば承りたいと思います。 事前に問題とされた点について、まず討議を進めていきたいと思います。最初に4頁、 「ばく露形態の分類」です。これについては、表としてはかなり古いものではないかと いうご意見をいただいています。何か、この点について追加のご発言はあるでしょうか。 ○名取委員 基本的な、大きい職業ばく露というもの、それから傍職業ばく露、近隣ば く露という形の分け方はこれでいいのかと思います。最近、建物からのばく露が知られ てきています。諸外国でも報告されていますし、日本でも報告されています。その記載 がここには出ていない。これは近隣というか、そこの部分に「近隣」というのは適当で ないのかもしれませんが、要するに建築物自体からによるばく露という記載を付け加え ていただきたいという意味です。「近隣ばく露」の下に「建物からのばく露」という項目 を付け加えていただいて、吹付けのある建築物からのばく露を言う、などの1行が入れ ばいいかと思います。 ○土屋座長 「上記以外の特定できない真の環境ばく露」ですか。この辺、建築資材、 と一言で終わってしまっていますが、いま言われたようなことを少し具体的に示したほ うがよろしいでしょうか。 ○名取委員 そうですね。吹付けの場合、特定ができている例が出始めていますので、 「上記以外の特定できない真の環境ばく露」と「近隣ばく露」の間に、「建物によるばく 露」と書いていただいて、「吹付け、石綿のある建物からのばく露を言う」としていただ いて、「Commission of the European Communitiesの一部改変」としていただければそ れで結構です。 ○土屋座長 よろしいですか。具体性を最近の生活状況に合わせて、言葉を変えたとい うことになります。ほかの先生方、いかがでしょうか。そのほうがわかりやすいでしょ うか。  続いて5頁です。報告書資料の21頁から23頁、先ほどご紹介があった二次問診票が あります。これは使用者向けのマニュアルがないと、なかなか正確な記載が難しいので はないかというご指摘を受けています。中身についても、もうちょっと議論を詰めたほ うがいいのではないかという意見があります。名取委員、これもご説明をお願いします。 ○名取委員 資料3の22頁、23頁ですが、これをチェックしようとすると、例えば一 般土木建築工事業と土木工事業、舗装工事業とか、それはどこまでを言うという表現を 入れておいていただかないと、かなりわかりにくいと思います。土木・建築業の中で挙 げられているものでも、例えば建築業の業種というと一応82職種あります。正式に分類 すると82職種に分類して、それぞれ胸膜肥厚斑が出るわけです。そこまで分けることに 意味があるかというと、あまりない気もします。ここの部分、大事なところには「これ これで大事である」と。列記しても、どれに○を付けるべきかが。専門医がやるのでし ょうけれども、ちょっと混乱し過ぎますので、これ自体よく書いているようなマニュア ルがあれば有用にも使えますので、できればこれを作成したもとの方からのご説明をプ ラスする。その辺の検討を1、2回、こことは別途でいいと思いますが、数名でできな いか。そうなれば私もご協力します。そうしないと、これ自体が非常に使いにくいなと 思います。 ○土屋座長 いままでのご議論で、二次問診票みたいなものが必要だということは皆さ んご承知かと思います。その内容、IIIの「次の産業で」というところ、私ども外科医に とっても頭が痛くなりそうな一覧表です。岸本委員、いかがですか。 ○岸本委員 職業別の項目で、明らかにアスベストが使われていることを確認した業種 がここに書いてあります。こういうところではアスベストが使われる可能性がある、と いうことで書き出したものが実はこういうところなのです。  我々臨床医は、職業というものをあまり知らないし、聞かないのです。ある意味では トレーニングをしなければいけないのですが、ならばどういう仕事をやっているのか。 例えば土木・建築業で、「この中にありますか」という形の聞き方でどうかと思って載せ ているわけです。職業分類なので固い表現になっているということなのですが、実際、 落としている職種が非常に多いのです。アスベストばく露の職種ということで、例えば 造船や吹付けというのはわかるのですが、紡績、紙類を扱う人にアスベストのばく露が あるかないかということになると、臨床医は「ほとんどない」というように答えている わけです。ですから、参考までに「この中にありますか」という形で問診をすれば、ア スベストばく露の可能性のある職業を漏れなく拾うことができるという意味でこの表が 出ています。これをもう少しわかりやすい形にする、ということで手直しは必要かと思 います。こういう職業であればアスベストばく露がある、ということを少しでも多くの 先生方に認識していただく。そういう面では、これを全部なくしてしまうと漏らしてし まうことになります。  結局、職業性アスベストばく露がいちばん問題がある。確かに近隣ばく露等も若干問 題があるのかもしれませんが、たとえ中皮腫であっても職業性ばく露がいちばん多いわ けですから、そういう面でこれを何らかの形で活用できればいいなということで、ここ へ出したわけです。これは名取委員が言われているように、ワーキング・グループ等で もう少し噛み砕いた形で、わかりやすいものにしていくという作業が必要だと思います。 そうでありながら、やはり、職業性アスベストばく露をする職業を、少しでも多くの先 生方に認識していただきたいという気持です。 ○鏡森委員 私も拝見しました。非常に専門的で、岸本委員のところはできるでしょう が、日本全体でどういう形でやっていくかを考えたときにはいかがでしょう。私は地域 産業保健推進センターにいますが、研究としてこういう職業が大事だということと勉強 していくという意味では極めて貴重なデ−タです。名取委員がおっしゃるように、一般 土木建築工事業と言ってもどこまで入るのか、おそらく、マニュアルでも対応できない のではないかという気がします。最初に、誰が使うのかという議論と合わせてこれを考 えないといけないと思います。岸本委員のところで専門的に日本のアスベストの研究を リードしていただくという話が1つある。もう1つは、専門家としてどういう集団に、 この検診を流していくかに深くかかわっているような気がしました。  例えば今後継続して検討していくこととか、中皮腫のパネルを作って全国登録をして いくとか、そういうことをどこに入れるか。例えば、我々の所属する法人である日本産 業衛生学会に委託をして、そこの産業医集団がやるとか、そういうところをもう少し押 さえていただいて、これは最高の製品ですから、これと使う人との間でどういう形のも のを使うかをもう1度議論していただきたい。極端な話、今日の社会においてはどこに おいてもアスベストは拒否、否定できないのです。 ○名取委員 これは日本の中皮腫で、労災認定されたものから拾ったのでしょうか。 ○岸本委員 いや、そうではありません。 ○名取委員 そうではないのですね、海外文献を含めた全網羅なのですね。 ○岸本委員 はい。ですから、アスベストばく露の可能性があるだろうということで、 実際に使っているというのをインターネットで調べて入れたということですから、もち ろんここにある職業の中で、いままで労災認定されていない職業もあります。 ○名取委員 基本的には大事なことで、この方向でやるのは私も全く異論がありません。 そうすると、わからない先生が見たときに、家具で出るのかわからないというときに、 家具製造だと2002年、“Scandinavian Journal”でこういうような報告が2例あるとか、 何か参考になるようなものを付けていただくなり、あるといいかと思います。もし可能 ならば、何年から何年ごろのという情報が付くとより使いやすくなると思います。その ようなことへ発展させていただければ非常に重要かなと思っています。 ○成田委員 確かにおっしゃるように、一般土木建築工事業、土木工事業とはどう違う のかということになって、全くわからなくなってしまうと思います。そういう意味で、 このような検診をするのは必ずしも専門医とは限っていませんので、誰が見てもわかる ものを作ってもらう。ワーキング・グループと言われましたけれども、結論だけ先に言 うと、岸本委員がお作りになったから岸本委員と名取委員、それともう1人、疫学の先 生に入っていただいて、3人ぐらいでやられるというのがいちばんいいと思います。た くさんの人間を集めると、船頭多くして船山へ登って大変だと思いますから、3人ぐら いで、鏡森委員に入ってもらうとか、やられるのがいちばんいいと思います。早過ぎる かもしれませんが、結論から言うとそう思っています。 ○土屋座長 ありがとうございます。次の作業までご発言いただきました。医療従事者 の教育をこうして行っているいまの時期ですと、ちょっと応用するのに現場との乖離が 出てしまうかもしれないので、さらに実施に当たってはワーキング・グループなどで、 実際の現状に合わせた改変が必要ではないかと思います。  23頁を見ると、例えばこのまま使うにしても、23頁のIV、Vを先にお聞きしてからこ ちらに戻ったほうがチェックしやすいかなという気もします。先ほどの鏡森委員のご指 摘も、V番あたりですとむしろ、石綿について専門家でなくてもある程度聞きやすいか なという気がします。その辺も含めて、今後検討が必要かと思います。二次問診票を使 うということ自体は、以前から皆さん賛成だったと思います。そのようなことでよろし いでしょうか。ほかに何かご意見はありますか。 ○労働衛生課長 これはまたあとでお話いただいて、岸本委員、名取委員、鏡森委員あ たりに換言ができるところはそうやっていただいて、あとなるべくならきちんとマニュ アルを付ける。これは簡単なものでないと、またマニュアルが膨大になると相当使いに くいという話が出るのではないかと思います。あとで出てくる研修、教育、普及啓発の ためには、というようなことを盛り込んでやるということでよろしいですか。 ○土屋座長 将来のためには、この22頁は大変大事だという認識は皆さん一致だと思い ます。現状に合わせてやっていく、ということでご了解いただければと思います。 ○労働衛生課長 もう1つ、私自身がざっと見ていて気になったのですが、石綿を取り 扱ったことを知っている人が書いたときに、知っていたということであれば、例えば種 類、青か茶か白かというのが全然ない。もし、ひょっとしてわかるのだったら、項目を 入れておいたほうがいいのかなという感じがします。いかがでしょうか。 ○土屋座長 わかっている方はもう。この項目に関してはよろしいでしょうか。  次に進みたいと思います。次は6頁の中段です。検査に伴う放射線被曝の問題につい て、石綿障害予防規則の第40条で規定される、労働者の健康診断についての問題提起が されています。この点について、ご意見を賜りたいと思います。これはどなたでしたか、 名取委員でしたか。 ○名取委員 これはこの場で話すことかよくわからないのですが、最近、石綿の障害予 防規則等の講習を受けられる建設業者の方が非常に増えていらっしゃる。そうすると、 建築業に就いて2年目ぐらいの方、20歳とか22歳ぐらいの方が「石綿則で決まってい るので健診してください」と言って私どものところに来て、結果を書いてくださいと言 われる方が非常に多いのです。法律的には守らなければいけないとなると、どうもそう なってしまうようなのですが、ばく露して2年目とか10年以下、20年以下の建築業の 若い方にレントゲンをやっていくということになってしまっているようです。少なくと も、今回の検討と合わないことが現実起きてきている。その辺、ここの委員会で検討す べきではないのでしょうけれども、どう検討されているのかなと思います。 ○岸本委員 名取委員のおっしゃられるとおりだと思います。私のところにも、実はそ ういう方が来られます。10年働いていない方々には「わかりませんよ」ということでお 答えして、通常の健康診断で異常なしと言われているのだったら、もう5年以上待ちま しょうという対応はしています。 ○名取委員 ただ、ゼネコンの方が検診の結果を持ってこないと現場に入ってはいけな いと言われている例がある。突然来て、今日入らなければいけないからやってください、 この書類に書いてくださいという方が現実にたくさん見えるのです。その辺、不要なレ ントゲンを撮るというのはやめたほうがいいのではないかと思うのですが、いかがでし ょうか。 ○労働衛生課長 法律で、年2回なのです。じん肺時代からの健康管理手法をずっと踏 襲していますので、このようになっています。基本的には、最近の考え方は徹底したば く露防止をするということでやっているわけです。特殊健診、これは石綿則でやってい るわけですが、このような労働者の健康管理方策について、来年、いまの森永先生の研 究班等の成果を踏まえて、専門的な見地からやり方については再検討を行うということ で国会でも明言しています。これはそのような状況である、ということをさらに記載し てもかまわないと思います。ただ、これでずっとやるつもりではありません。きちんと、 医学的な所見を踏まえた上で検討いたします。 ○名取委員 当然のことでよろしいと思います。ただ、潜伏期の範囲内のレントゲン検 診は外していただく方向での検討を是非お願いしたいと思います。 ○土屋座長 この石綿に関しては、潜伏期が以前よりはだいぶ明確になってきましたか ら、その辺を踏まえて見直しが必要だと思います。  これは別に課長をいじめるわけではなくて、我々、国民の健康を守る医師集団として も、最近CTとかいろいろ良い機械が出たものですから、割と医学被曝に無頓着で、そ こへの警鐘の意味も名取委員の発言にはあるのではないかと思います。従事するほうも ある程度考慮して、不必要なものは避けるという基本の姿勢に戻るという意味であろう かと思います。是非、お互い協力して、無駄な被曝は避けるという方向で行きたいと思 います。ほかの先生方もよろしいでしょうか。そういう解釈で行きたいと思います。関 係のところには是非いまの意が通じて、無用な被曝を避けるきっかけになっていただけ ればありがたいと思います。  次に進みます。次は6頁の下、エックス線検査についてです。これについては3つの ご意見が出されています。1つ目、検査を行う第1の目的は胸膜肥厚斑の存在を確認し て、アスベストばく露の評価をすることであって、疾患を発見することはその次である。 順次、分けていくべきだという意見です。2つ目、放射線ばく露のリスクは初回にアス ベストばく露を評価するための検査と、その後、疾患の発見のために継続的に行う検査 とは評価を分けて考えてはどうかということです。3つ目、年齢によってばく露リスク の評価を違えるべきである。この3つが指摘されていると思います。  まず1つ目、検査を行う第1の目的は胸膜肥厚斑の存在を確認して、アスベストばく 露の評価をする。この部分について異論はありますか。皆さん、この考え方でよろしい ですか。 ○成田委員 結構だと思います。疾患に対するものと別個だと思います。 ○土屋座長 2つ目はちょっとニュアンスが似ているのですが、アスベストばく露を評 価するための初回の検査とその後の疾患の発見のための検査と評価を分けるという考え 方です。これは評価の問題です。これもよろしいですか。もちろん、初回とその後の経 過を追ってというのは違う目的になりますので。 ○成田委員 そうすると、これは初回に胸部レントゲンとCTを並行してやることを前 提に置いた上でのお話ですか。 ○土屋座長 ちょっと、そこまではまだ触れてはいません。 ○成田委員 わかりました、結構です。 ○土屋座長 エックス線だけに限ったときにも評価を変えるべきであると。最後の3つ 目は年齢によるばく露、いまも出ましたが、ばく露リスクの評価についてはどうかとい うことです。いま、少し議論が出ましたが、ほかの先生方はいかがでしょうか。 ○祖父江委員 すみません。私が書いたのですが、「障害リスク」の「障害」が違います。 「生涯」です。 ○土屋座長 これは誤字ですね。年齢によるばく露リスクについての評価ですが、本田 委員、何かご意見はありませんか。 ○本田委員 もちろん、若年、どこから検診をしていくかということがあると思います。 先ほどから議論になっている、いわゆる20年以下はハイリスクに入れないと判断してし まうか。それ以上をハイリスクとして検診をするのか、そこの問題だと思います。 ○祖父江委員 これはテクニカルな問題かと思います。この記述では、30歳の男性で、 いちばん下のパラグラフ、0.1Svの被曝の場合、がんによる死亡率は30歳男性で0.9%、 女性で1.1%となっている。この値を単純に掛け算すると、ちょっと過大評価になるの ではないか。実際に被曝時年齢が50歳だと、この値が0.3、あるいは0.4がRERFか ら出ています。それを使ったほうが多少正確に、被曝時年齢のリスクを考慮できるので はないかと思いました。 ○土屋座長 それを指針として表すと、どのような形で書くといちばんわかりやすいで すか。 ○祖父江委員 単純に掛け算するのではなくて、それを考慮して加重平均を取ったよう な形でやればリスクの推定ができると思います。ちょっとテクニカルなことで、あまり 大きな問題ではないと思います。 ○土屋座長 先生のそれを踏まえると、例えば8頁の上から5行目、「そのため、例えば 50歳以上の高齢者や喫煙者などといった限定をすべき」という考えが記載されています。 年齢でやるか、ばく露歴の年数でやるか、大まかな線を引くとすると2通りあると思い ます。それについてご意見はありますか。肺がん検診だと以前から50という暦年齢で、 これはたばこのばく露その他、大体20歳ぐらいからだろうということで切ってしまうわ けですが。この場合、いかがですか。周辺住民も、ということになるとばく露歴がはっ きりわからないということもありますので、年齢的なことのほうが一般的かなという気 もします。何か、この点についてご意見はありますか。若年で、あまりばく露歴の少な い方は避けよう、それは共通の思いだと思います。その辺、明確な線をお示しするかど うか。何か、ご意見はありますか。 ○労働衛生課長 事務局で考えたのですが、「限定すべきと考えられる」と言うと、考え られるのですが、エビデンスはあるのかと言われるとないのです。どの年代でアスベス トが最も使われるか。そのときに職業、もしくは職業関連でばく露した人たちがおそら く、いちばん多いであろうということなのですが、結局、現在進行中のいろいろな種類 の疫学的な調査やデータを見てみないとわからないことではなかろうかと思います。例 えば「限定をすべきと考えられるが、中皮腫発症や胸膜プラークなどの発生率等の疫学 調査の結果によって、さらに検討を要する」みたいな書き方しかできないのではないか と思います。 ○鏡森委員 最近の新しい論文は知りませんが、ボーリッヒの例の、ばく露量とばく露 からの年数からの推移で見て、今回のものは胸膜肥厚から入っていこうとすれば、大体 10数年ぐらいですね。 ○労働衛生課長 そうなのです。ただ、一応、中皮腫死亡という数字が毎年出てきてい ますので、やろうと思えば将来推計のデータも出すことができる。だけど、胸膜肥厚に ついては、いまどこで、どのぐらい出てくるのかさえわからないわけです。だから、現 在では限定も何も、考えられる材料がまずないと思います。 ○鏡森委員 そうすると、高危険度地域でこれから考えられているあのようなものを踏 まえて、それを決めていくという考え方ですか。 ○労働衛生課長 今後、そのようなものも加味して、きちんと再検討するなり、という ことになるのではないかと思いますし、しなければならないのだろうと思います。 ○土屋座長 出発したからその規則に固執するということではなくて、臨機応変に、出 たデータに基づいて改変していくということですね。 ○名取委員 教えていただきたいのですが、放射線被曝のリスクで、胸部CTの例が書 いてあると思います。いわゆる胸部単純レントゲンを、例えば年2回なり、40歳からし 続けるリスクとか、そこら辺の資料を出していただけるとありがたいと思います。 ○本田委員 あります。 ○名取委員 それをここにご記入いただけると、それを続けた場合といままでの疾患の 発症の比較がしやすいと思います。そういう資料を出すのは難しいでしょうか。 ○本田委員 お出しした資料の中で、資料3の19頁の表2、「英国におけるCTと通常 のX線検査とによる典型的な線量の比較」があります。上から3つ目に、胸部PA方向 の一回写真で0.02mSvというのがあります。これを基に計算することが可能ですので計 算してみます。年2回でよろしいでしょうか。 ○名取委員 どうでしょうか、そこは。 ○岸本委員 特別化学物質等予防規則で、発がん物質のフォローアップは1年に2回と いうことです。その辺のエビデンスは。 ○本田委員 単純に1回分を計算すれば、掛ける何回で出ますので。 ○岸本委員 そうですね。 ○土屋座長 よろしくお願いします。この点に関して、ほかにございますか。それでは、 いまの3つの意見については以上の議論を踏まえて、少し書き直すことにしたいと思い ます。  次に、9頁の下のほう、先ほどの概要の説明にもありましたが、不特定多数の人に放 射線をかけるのは良くないというお話と同時に、しかし石綿ばく露歴のある人について は、継続的な検査が必要ということで、このことについて検査を受ける人にどのように 説明するかということですね。その危険度、メリット、デメリット。それについて、い かがでしょうか。既に行われている自治体や企業での検診について、その辺の説明がど うかということ。検診の結果の通知書に説明を付けたほうがいいのではないかというご 意見もありますが、いかがでしょうか。数値については、本田委員からお話いただくと して。最近は、検査を進める医者のほうにも説明が必要かもしれませんが。  いかがでしょうか。必要最小限度に受けていただく必要はありますが、不安がって追 加に検査を受けたりすると、何のための検査かということになりますので。1回受けた 結果を受け取るときに、欄外なり、注意書きとして、そういうご注意を付記するという ようなことでよろしいでしょうか。 ○成田委員 その程度でいいと思います。あまり言い切ってしまうと、一般の方の理解 は得られないと思います。 ○土屋座長 かえって恐怖心を。 ○成田委員 はい、先生がおっしゃったように医者ですらそうなのですから。 ○土屋座長 そうです。 ○成田委員 本当に大丈夫かなという感じになってしまいますから。 ○土屋座長 その辺、一般的な知識としてメリット、デメリットがあるとお伝えすると いうことでよろしいですね。どうもありがとうございました。  9頁、疫学的手法による健康調査です。これは比較対照をどうするかということです。 10頁に「疫学的手法による健康影響調査の実施」とありますが、比較対照を事業場から 距離の遠い所にしてはいかがか、同心円上に行っていくつかの区域を分けるとすればい ちばん遠い所を対照症例としてはいかがか、というご提案がございます。この点につい てはいかがでしょうか。疫学的証明としては対照を置いて調べることが大変説得力があ る、皆さんが納得するエビデンスが出てくるということで、対照を置ければ置いたほう がよろしいということです。それこそ全く関係のない人にレントゲンをかけてやるとい うわけにはいきませんから、その心配はあるけれどもいちばん少ない方を対象として危 険度の高い方についてどうであるかという手法ではいかがかと思うのです。よろしいで しょうか。 ○鏡森委員 基本的にはいいと思うのですが、これを拝見して、今日の世の中で疫学調 査を現実にやる場合にいくつか問題が起きてくることがあるので、ちょっとコメントし たいと思います。  「全住民」「労働者の全家族」と現実的に今日の社会では適用できないような言葉が使 われています。ここは「全住民」ではなく、「住民あるいは石綿取扱い労働者の家族の現 状を把握する方法で検査を実施し」と。つまりランダムサンプルにして一定の、先ほど 言った50歳以上は順に、例えば2人に1人といったように抽出していく、相手の同意が 必要なので全員に膨大なエネルギーを費やして同意を取る必要があるどうかです。その ようにしていかなければ、地域によっては全住民の3割しか受けないという話になると、 全住民ではなくなってくるのが今日の社会なのです。ですから、ここの所は少し工夫さ れたほうがいいと思います。  「調査的な検査」は「疫学的な検査」にしていただきたいと思います。それとコメン トにもありましたが、住民にとって不安の解消になるという話でやるのではなく、「正確 な情報を提供する」にしていただきたいのです。疫学は不安解消の材料ではありません ので、誤解のないようにしていただきたいと思います。  いま問題に出ている対照です。我々は電磁波のことをいろいろなことでやってきまし たが、対照は、座長もおっしゃったようにその問題が起きている所の遠い所であること が現実的です。「全く関係ない」とここに書いてありますが、これはバイアスの基になり ますし、そのようなことは避けたほうがいいと思います。やるにしても、同じような一 次問診票ぐらいは、かけておかなければいけないので、これは現実的にはなかなか難し いですね。最後に書いてあるドックや肺がん検診、これそのものにセレクションバイア スがかかっています。  最後の所に「ばく露歴のある労働者は母集団から除くことが必要である」とあります。 それはこのとおりなのですが、普通は職業ばく露になるような問診票を入れておき、あ とで調整するのです。これが先に出るといろいろな人が抜けていくので、疫学調査とし てはまずいのです。 ○労働衛生課長 では、それは削除でいいですか。 ○鏡森委員 はい、お願いします。 ○土屋座長 学問的に解析するときにこういうことに注意しろということですね。 ○鏡森委員 そうです。 ○土屋座長 大変貴重なご指摘をありがとうございました。 ○祖父江委員 鏡森委員のおっしゃることはもっともなのですが、「全住民」、「全家族」 という所はちょっと、疫学をやっている立場でも主張したいのです。  同意をとってやることが今の疫学調査の大前提であるかのようにやっていますが、今 回のような後ろ向きのコホートスタディーのようなことをやる場合にその社会的問題が 非常に大きい場合に、同意をとらずにやるというやり方ももちろんあってですね、疫学 倫理指針の中でもその道は一応残されています。倫理審査を経てそのようなことを行う、 同意をとらずにやる、できるだけバイアスを防いでなかだちでやるということも、検討 の範囲内に入れておいたほうがいいと思うのです。その主張をするために「全住民」、「全 家族」も残しておいたほうがいいような気がしますが。 ○鏡森委員 ごもっともですが、さらにそれに経験を踏まえて言うと。私たちはそのよ うな調査を何回もやっているのですが、全住民が1回で来てくれればいいのですが、来 ない人に説得をしなければいけないのです。私たちは訪問して、来るように言うわけで す。昼間居ない人もいるので、そのような人の所へは何回も行かなければいけないので す。  私の言う意味は、インフォームド・コンセントをとってやれというのではなく、イン フォームド・コンセントをとるためにも、ある程度特定の人を決めておかなければなら ない。現場では、全員と言われたらつかめない人が出てくるのです。つかめない人には 非常にたくさんのエネルギーを消費しなければいけないので、そのような人がたくさん 出てくると非常に困るのです。ですから、そこのところはきちんと考えてやっていただ きたいのです。結果として全住民を把握するに近い調査法です、もちろん。そのとおり です。ですから、同意がなければできないということではないのです。同意を得るよう にやってほしいのです。 ○祖父江委員 住民の方と直接コンタクトを取ることを必要とするような調査の場合は おっしゃるとおりなのですが、そうでない、住民基本台帳に基づく居住歴だけで調査を するということも可能なのです。要するに本人にコンタクトを取らない形の調査もあり 得るのです。その場合は全住民あるいは全家族というようなことが、できるのではない かと。 ○土屋座長 今回の場合には、接触しなければデータが得られないのではないですか。 ○祖父江委員 居住地だけであれば、本人にコンタクトしなくてもでき得ることはある のです。それだけでばく露を定義するといったことであれば。 ○土屋座長 先ほどの二次問診票にあるような内容が網羅されなければ、ばく露歴云々 が細かく議論できないのでは。 ○鏡森委員 わかりました。いろいろな形があると思うので。祖父江先生の意見も尊重 すれば、「全住民」は抽出率が100%なのです。ですから、私の文言を使っておけば「全 住民」にも対応できます。 ○土屋座長 努力目標としてはもちろんわかるのです。それに鏡森委員が言われるよう に、現実論として鏡森委員の表現のほうが適当かなという気がします。もちろん全部網 羅できて、鏡森委員の表現で問題ないと思うのです。 ○土屋座長 ほかにございますか。では、この点はそれで打ち切らせていただきます。  11頁の「今後更に進めていく対策」の中に「中皮腫の登録」があります。この点につ いて何かご意見はありますか。 ○鏡森委員 これは是非この機会にお願いしたいのです。私たちも富山でがん登録をや っていますが、登録の決め手は登録をしてくれることなのです。ところが、がん登録は 日本の一部の地域を除いて制度はあるのです。私の県は、恥ずかしながら30%位の登録 率です。ですから、今回の問題が死亡率が高いこと、1人の人が見つかるとその周辺に も危険があること、本人の自己責任だけではないこと、この3つぐらいの理由を挙げて 中皮腫を診断した人は、少なくともどこかの法的な流れの中で届け出るようなシステム をつくっていただきたい、あるいはそれを書いていただきたいのです。  どこに届け出るかという話は、先ほど言ったようにそのためにまた新しく機関をつく るのは大変ですから、産業衛生学会は法人なので、例えばそのような学会に専門集団を つくっていただき、そこに先ほどのパネルも全部やって、そこが責任を持ってその登録 をやっていく。例えば小児白血病などは、そのような形で学会が責任を持ってやってい るわけです。日本の学会もそのような社会貢献をしなければいけないので、この問題は まさに、例えば産業衛生学会にとっては大変社会貢献をしやすい部分なのです。そのよ うな形で是非、パネルにしても公的に任命し、どこかに学術集団がきちんとあってとい うことでお願いしたいです。阿部さんのように熱心な課長のときはできたけれども、職 員が燃えているときはできたけれどもそのあとはできないということがないように、学 会ならば営々とやっていきますので、そういうところに是非繋げていただきたいのです。 ○労働衛生課長 現在、国立がんセンターが中心になって、科学技術振興調整費で患者 データ収集の基盤整備をしていると聞いています。イメージとしては、協力学会などに 広くアナウンスして協力の体制を固めるということになろうかなと思います。  もう1つ。今日環境省の俵木室長が来られていますからお話していただければいいか もしれませんが、救済の新法がございますね。中皮腫は全部、労災でなければ救済対象 となるのですね。ということは、中皮腫であるという診断がなされた時点で、どこに連 絡してどうこうという行政ルートが必ず出来るはずです。ですから、そのときの医療費 の負担なども全部盛り込まれているはずです。ただ、中皮腫の診断という、そのこと自 体がこの行政行為の一部になってくるということになろうかと思いますので、それとの 関連としてもパネルやその信頼性の向上とも結びつける方策を岸本委員の研究班の中で 専門的な部分をまた検討していただき、がんセンター、学会ともさらに詰めてまいりた いと思っています。 ○環境省保健業務室長 いまのことに関連して。新法における疾病の認定ですが、医学 的な判断をどのようにやっていくかということです。  先般検討会を発足させ、岸本先生にもご参加いただき、検討を始めているところです。 中皮腫については、石綿にきわめて特有な疾患であり、中皮腫の診断をきちんとやる、 診断がついたものについては石綿によるものと見なすことが可能ではないか。そのよう なご議論を第1回目の検討会でしていただいたところです。その検討会においても、中 皮腫の登録制度、中皮腫の診断に当たって、確定診断に当たってのパネルの設置といっ たことがご意見としても強くお聞きしております。そのようなことで、中皮腫であれば 行政的な手続として労災なのか新法の救済対象者なのかということになっていきますの で、どこの時点でどこがどのように情報を集めていくかということは、きちんと考えな ければいけないと思っております。その検討会でもそのようなご議論が行われていると ころです。 ○土屋座長 いま課長からもお話が出たようにがんセンターでもそのようなことが求め られるのであれば、いまから基盤的な整備を始めておく必要があるだろうということで、 いわゆる研究レベルで始めたところです。実際、日本肺がん学会が呼吸器系学会と協力 し、5年に1回肺がんの切除例の登録をやっていますが、1994年は約2万5,000件の手 術例が予想された中で、学会ベースで7,000例登録されているのです。現在進行してい るのは1999年の切除例で、約3万件と推測される中の1万件を超える登録があるという ことです。  いま産業衛生学会あるいは肺がん学会のお話が出ましたが、そういった学会をベース にしてどこかへ集約する。そこがディストリビューションセンターになって臨床情報あ るいは検体を1カ所で検査をし、研究ベースに持っていく。そういったことで新しい知 見を得ていくといった構図をいま描いているところです。いままで各施設は非常に少な い症例で結論を出し、このような場でエビデンスとして使えるような資料がなかなかな いということを皆さんは痛切に感じられていたと思いますので、その辺、オールジャパ ンでそのようなことができるような体制をと思って、縁の下の力持ちをやらせていただ こうかと思っております。 ○成田委員 ちょっとよろしいですか。 ○土屋座長 はい。 ○成田委員 室長に質問したいのです。要するに、中皮腫という診断が下った場合にま ず労災と環境によるものとに振り分けられますよね、新法の場合は環境によるものが対 象になりますから。それの診断は誰がどこでするのですか。環境省としては、医者がや ったものをそのままお受けになるおつもりなのですか。それとも、別の診断機関をおつ くりになるつもりなのですか。 ○環境省保健業務室長 検討会は医学的にその中皮腫をどう診断するか。 ○成田委員 いやいや。どうするのかをおっしゃってください。 ○環境省保健業務室長 といったことをご議論いただいているので、それを実際にどの ようにやるのか、その診断をする機関を特定するのかなどについてはまだ。 ○成田委員 はい、結構です。 ○名取委員 新法で見ると、環境再生機構ですか、そこへ基本的な業務のかなりが行く ことになっています。要するに、保健所で受けたあと、環境再生機構へほとんどの資料 が行ってしまうという形が考えられているわけですね。中皮腫登録なども大事ですし、 登録パネルも大事なのですが、いま言われた学会ベースで考えていこうとしているもの とその環境再生機構との関係がいまの法的なところでは全く書かれていないのです。で すから、そこの整理をきちんとしておかないと、ちょっと混乱した法体系になってしま うような気がするのです。その辺、何かご検討はされているのでしょうか。 ○環境省保健業務室長 救済をするというその行政的枠組としては、機構が申請書類と して情報をいただくしかないのですが。 ○名取委員 それは集まるわけですよね。 ○環境省保健業務室長 はい、集まるわけです。中皮腫パネルまたは中皮腫の登録制度 はもちろん機構のやる新法の対象者だけで出来上がるわけではないのです、もう片方で 労災の対象者もいらっしゃるので。機構は新法の救済システムの1つに過ぎないので、 どこにパネルを噛ませるかといいますか、置くのか、またはどこにすべての情報を集め ておくのがいいのかというのは、機構がやる業務とは全く別に考えられると考えており ます。結果的には同じ情報を持つことになるかもしれませんが、ただ、労災対象者も含 めた全体の登録制度が出来ることが必要なのだろうとは思っております。そこは機構が 救済制度の事務を取り扱うことと中皮腫の登録制度をどこに置くか、誰がやるかといっ たことについては全く関係がないというか、関係がなく検討ができると認識しています。 ○岸本委員 中皮腫の診断という観点からいきますと、いま私の所では平成15年の症例 をレビューしていますが、中皮腫という病気が非常に少ないがために、臨床の先生が中 皮腫の適切な診断方法をご存じでないというのが現実的に現れています。ですから、い まおっしゃったように隙間のない補償という形で、中皮腫と診断されると労災もしくは 新法で補償するということになると、適切な診断をした症例に限って補償するという形 をとっていかなければいけないということになります。いまオールジャパンという話も 出ましたが、是非その辺りは国の専門家を結集したものを、全日本として確固たるもの を1つつくっていく、そのような枠組をつくっていただければと思います。 ○鏡森委員 それに関連して。新法のことはよくわからないのですが、診断が確定した 人がずっと補償に乗っていくというのはよくわかります。診断が難しい、誤診もあるか もしれない、迷っている、そういう人たちの、私はこれをイタイイタイ病のことを思い ながら言っているのですが、ややこしい問題。労災でも肺がんかもしれないと。それに 緩解。決まったものはそれでいいのですが、グレーゾーンの人たちにとって、例えば調 べてほしいと言うようなときは、新法では費用はどうなっているのですか。 ○環境省保健業務室長 新法は、その対象疾患かどうかの検査費用は含まれておりませ ん。 ○鏡森委員 せん。 ○環境省保健業務室長 はい、それはイタイイタイ病も含んでそうですが。 ○鏡森委員 しかし、イタイイタイ病の場合はあとでそういうことも振り分けて上がっ ていくではないですか。上がってきて最後に判定するではないですか。それも上がって いくわけですね、疑わしいものも。そういうルートはあるのですか。 ○環境省保健業務室長 上がってくるというか、申請があって、それを審査して、認定 していくという仕組になります。 ○鏡森委員 そうすると例えば。 ○労働衛生課長 鏡森委員がおっしゃったのは、中皮腫疑いで上げられるかという話で すね。 ○鏡森委員 そうそう。 ○環境省保健業務室長 申請ができるかということですか。 ○鏡森委員 そういうケースは扱ってもらえるのですか。 ○環境省保健業務室長 どこで診断をするかというか、診断をするレベルというか、ど うするかはまだ議論をいただいていないので、非常に難しいとお聞きしているので、そ こをどのように組んでいくかはこれから考えなければいけないと思います。 ○岸本委員 私は診断が難しいということを申しましたが、中皮腫の診断に対して、こ れとこれとこれはやるべきだということを決定する。いま私が言った診断基準は、これ とこれとこれをやって診断するのですよという項目を明らかにし、皆さんに周知徹底を することがいちばんだろうと思います。細胞診だけにたよって診断をされている機関が 多いようです。年寄りの方は胸腔鏡や組織診などはもう必要ないだろうと、細胞診だけ あるいは画像だけで診断をなさっているという例もあります。ですから、その辺りは診 断をきちんとやり、たとえ年寄りであっても死亡診断書に「中皮腫」と書くと補償の対 象になるのだから最低限の検査をして診断を確定する、そのような方針を打ち出してい けば、診断材料が残っていれば専門家にレビューしてもらえますから、いわゆるグレー ゾーンがだんだん狭まってくる。いまの人口動態統計によると、「中皮腫疑い」もすべて 中皮腫として扱われているという現実もわかってまいりました。ですからその辺りを今 後詰めていくということにすればよいと思います。 ○土屋座長 その辺の診断基準の策定がいちばん大変だと思います。 ○岸本委員 そうですね。 ○土屋座長 ですから、おそらく新法にしろ従来の公害、職業にしろ、そこから上がっ てきたものをまた中皮腫の登録あるいはパネルをやると、落ちる症例は当然出てくると 思うのです。組織でもまだ難しい点がありますので。ですから、それはそれでエビデン スとして残していけばいいので、だからそれを救済から除くという必要はもうないだろ うと思います。認定は認定でやったあとで今度は学問的な問題になりますので、それは それで新しいエビデンスを築いていく。登録の目的はむしろそちらにあるだろうと思い ます。  この点に関してよろしいでしょうか。では、次にまいります。  11頁の下段、「石綿含有建材等からの飛散状況の把握」についてです。石綿濃度の管 理指針が定まることを期待したいというご意見が強く出ていますが、この点についてご 意見はございますか。いまはなかなか印象的なことが強いと思いますが。 ○労働衛生課長 いま科学技術振興調整費で、国土交通省が旧建設を持っておりますの で中心になって、建築物関係の石綿含有建材の飛散状況を把握した上で基準設定を目指 してやっていくと聞いております。それに厚生労働省の生活衛生部門が関与しているや に聞いております。 ○土屋座長 ご意見はございますか。よろしいですか。  次は以前から話題になっていた「医療従事者の養成あるいは研修」についてです。こ れについてご意見はございますか。いまこの実態はどうなっていますか。 ○労働衛生課長 これは、労災病院のアスベストセンターが中心になって講習会を実施 しております。私どもの手元にある数字は9月と10月のものだけですが、ここで医療従 事者が約1,100人、この講習会に参加してアスベスト関連疾患の研修をお受けになって いるということです。  今後のアスベストによる健康被害やその可能性を考えると、今後、ここに書いてある ように各自治体、特に医師会、医療機関全体に呼び掛けをいたし、学会等の機会を通じ てこのような講習、特にチェストXP、CT等の部分について読み方等の機会をつくっ ていかなければいけないのではないかと思います。ですから、これは事務局でも考えて、 私どもは労働部門ですので、基本的にレントゲン写真を見たならば、その中できちんと チェックのポイントにアスベスト、そのアスベストのプラーク、その他のじん肺所見も 含めて見ていただきたい。 ○土屋座長 この辺の行き渡りを先ほどの二次問診票の内容にかかってくると思います ので是非精力的に。 ○労働衛生課長 そうですね、これはセットにしてやっていかなければいけないと思い ます。いま産業医学財団も医師向けのテキストを作られていて、岸本委員にご覧いただ いているのではないかと思いますが。 ○岸本委員 労働者健康福祉機構で胸膜プラークの診断が非常に微妙であるということ から、実地医家の先生方に向けて文字は少なく、画像等の絵の多いものを作っており、 いま最終段階になっています。来月の中旬までには発刊できるようになると思います。 CD−ROMも付けて矢印も付けて工夫をしてはいるのですが、鑑別診断をしなければ いけない病変とアスベストによって起こってくる疾患という形で、もう1カ月あれば出 ると思いますので、是非参考にしていただければと思っております。 ○土屋座長 よろしくお願いいたします。以上、皆様から事前にお寄せいただいたもの は、事務局が大変精力的に整理していただいたので順調に討論ができましたが、文書で ご指摘いただいていなかった点でこの報告書全般にわたって何かご指摘がありましたら、 ご意見をいただきたいと思います。 ○岸本委員 胸膜プラークのフォローアップの件です。元労働者の場合は健康管理手帳 をお渡しして、年に2度公費で健康診断を受けていただくということですが、私の所に クボタの神崎工場の近くで近隣ばく露を受けた方が2人いらっしゃいます。特に1人の 方は病院のすぐ近くにお住まいになっているのです。フォローアップはしなければいけ ないのですが、今後来るのは自費で来るのですかと言われました。おそらく兵庫でも問 題になっているのではないかと思いますが、従業員は企業責任、元労働者は健康管理手 帳なのですが、一人親方と近隣ばく露をされた方に関して年に2度フォローアップをし たほうがいいとは思うのです。それはどのような形で、自費なのか、どこかから健康管 理手帳のようなものが出るのか、その辺りをご議論いただければと思っております。 ○成田委員 私は月に1回尼崎へ行っていますが、尼崎で聞いたところでは、6カ月後 の検診は保健所の値段ははっきりしていませんが、やっていくとは聞きました。 ○岸本委員 尼崎市に住んでいらっしゃればいいのですが。 ○成田委員 住んでいない人も来ているのですよ。 ○岸本委員 ですね。私が診た人は彦根市と岡山市の2人でした。岡山市の人はそのた めに尼崎へ行くのかということになると少し問題がありまして、私の病院の近くで検診 ができればよいと思います。 ○成田委員 かなり遠い所から来られていますよ。滋賀県から来られた人もいます。 ○土屋座長 検診代より電車代のほうが高い。 ○名取委員 その件について言うと。私どもの所は5、6人、東京に在住している方が 受診されていて、6人中2人は、胸部CT写真を撮ると胸膜肥厚斑がはっきりと出てい ます。費用負担はどうなるのですかと聞かれたので、私は、それはよくわからないとお 答えしてしまいました。いまのところは健康保険でしておりますが、実際に受診された 方からその辺はどうなるのかと聞かれているのが1つです。  もう1つ。岸本委員もたぶん同じ方を診られたのかと思うのですが。私もいままでは 石綿肺は環境ばく露では出ないだろうと思ってそう言ってきたのですが、診た方の1人 には、0/1程度ですが、胸膜肥厚斑だけでなく不整形陰影がありました。CTで見ても、 点状影というごく初期の所見ですが、そこら辺が見られるのです。普通の呼吸音を聞く と、別に捻髪音は聞こえないのですが、誘発するとわずかに聞こえるかなという、いわ ゆる0/1石綿肺が環境でも出てきそうだなという印象は持っております。この方は72 歳なのでまだどうなるかわかりませんが、将来的には、1/0程度の石綿肺に進行するよ うな可能性が出てきていると思っております。したがって、可能であれば職業と同等の 疾患、肺がん、中皮腫だけでなく、石綿肺や良性石綿胸水についてもその職業同等の方 は救済するということをしておいたほうがいいのかなと思います。お一人だけですが、 そのような方を診させていただいております。 ○労働衛生課長 基本的には現在の報告書の中で、所見あるいは問診の中で石綿ばく露 が明らかな人たちは、所見がなくても定期的にフォローすべきであるといったことを書 いています。ですから、所見があれば、私どもの所掌範囲であれば健康管理手帳という 制度でやっているわけですが、確かにそれが漏れている項もあります。  片や、年に2回やっていく意義があるのかということと、所見が出るまでの期間は全 く自費で自分でやるしかないではないかといったこともあります。このやり方に関して は、先ほど申し上げたように森永先生の研究班の成果を基にし、専門家の先生方にお願 いし、方法、CTをいつ入れるべきか、どのようにフォローするかなどを徹底的に検討 していくことをお話申し上げているわけです。そういうところを踏まえ、そのような人 たちに対するフォローの方法を知見の集積を踏まえて、もう少し医学的にやるといった ことを書き込むという形でよろしいでしょうか。いま、どのようにやる、どこを誰が費 用負担するということをこの委員会でやるのは不可能だと思いますので。 ○土屋座長 やる方向は決めてよろしいですね。 ○労働衛生課長 はい、これはやりますと私も申し上げているわけでして。 ○土屋座長 是非、そのように決められたら居住地で受けられるということで、電車賃 は要らないと。 ○労働衛生課長 それは利便性の問題ですね。 ○名取委員 居住地の出身の方が遠方にいる場合にその方法を考えておいていただかな いと、東京に来ている方がだいぶいらっしゃるようなので。 ○土屋座長 原爆ですと、被爆者手帳を持っていれば東京でもどこでも受けられますよ ね。うちでもフォローしているのは随分あるのです。そのような形であればいちいち広 島へ帰らなければいけないとか、これは大変無駄なことだと思いますので、その辺も是 非考慮してあげていただきたいと思います。ほかにございますか。  事務局のご努力は大変なものだったと思いますが、おかげさまで順調に経過しました。 事務局にお返ししますので、次回以降の対応についてお願いいたします。 ○労働衛生課長 熱心にご議論をいただきまして、どうもありがとうございました。議 論半ばと言っても、報告書の体裁をなしてきました。コメントについても、積極的にご 議論いただきました。たぶん次回には最終版として先生方にお認めいただくバージョン をお出しした上、当専門家会議としての結論の報告書を取りまとめられるかなと考えて おります。  次回の会議は、来年2月3日までほとんどの先生方がお集まりになる機会がありませ んので、2月3日(金)に開催させていただきます。時間は、いろいろ調整をいたしま すと、13時〜15時でお願いしたいと思います。  今日の議論を踏まえ、この内容等でさらに書き加え、改訂等がありましたら、私ども にお寄せいただきたいと思います。先ほどの本田先生の放射線の部分など、またこれは 事務局からご相談をさせていただき、次回の前に最終版をお示しした上でご了承いただ きたいと思います。どうもありがとうございました。 ○土屋座長 では、閉会いたします。どうもありがとうございました。 1