05/12/09 労働政策審議会雇用均等分科会第55回議事録 第55回労働政策審議会雇用均等分科会 議事録 日時:2005年12月9日(金) 13:00〜14:20 場所:三田共用会議所 大会議室 出席者:  労側委員:吉宮委員、岡本委員、片岡委員、篠原委員  使側委員:川本委員、前田委員、山崎委員、吉川委員、渡邊委員  公益委員:横溝分科会長、今田委員、奥山委員、佐藤(博)委員、林委員、樋口委員 ○横溝分科会長  まだ渡邊委員と奥山委員がお見えになりませんけれども、時間になりましたので、た だ今から第55回労働政策審議会雇用均等分科会を開催いたします。本日は佐藤孝司委員 が欠席です。お二方は間もなくお見えになると思いますので、始めたいと思います。  それでは、早速議事に入ります。本日の議題は、「男女雇用機会均等対策について」 です。前回の分科会でご議論いただいた「取りまとめに向けた検討のためのたたき台」 について、事務局において公益委員と相談して作成した「雇用均等分科会報告」を素案 ですが用意しております。  それではまず事務局から説明をお願いします。 ○石井雇用均等政策課長  それでは説明をさせていただきます。今、分科会長から話がありましたように、11月 18日に「取りまとめに向けた検討のためのたたき台」をお示ししました。この議論も年 内に集約を図っていただきたいと思っていますので、公益委員の先生方と相談しなが ら、事務局としての素案を用意させていただいたところです。まず全文を朗読し、その 後、補足的に説明をさせていただきたいと思います。  雇用均等分科会報告(素案) ○ 「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女子労働者の福祉の増進  に関する法律」が施行されてから本年は20年目に当たり、平成9年に「雇用の分野に  おける男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「均等法」という。)  に改正されてからも10年近くが経過している。 ○ 労働政策審議会雇用均等分科会は、昨年9月以降、均等法の施行状況について議論  を行うとともに、男女雇用機会均等の更なる推進のための方策について審議を行って  きたところであり、本年7月には、それまでの審議状況について中間的な取りまとめ  を行った。この中で、平成9年改正以降の状況にかんがみ、男女雇用機会均等の確保  を徹底するため必要な法的整備を行うべき時期にきているとの基本的考え方を確認し  たところである。 ○ 我が国は、急速な少子化と高齢化の進行により人口減少社会の到来という事態に直  面している。そうした中にあって、以前にも増して、個々人が社会においてその持て  る力を存分に発揮できる環境の整備が求められている。とりわけ雇用の場において  は、「次世代育成支援対策推進法」、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行  う労働者の福祉に関する法律」、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」等  に基づき、仕事と育児・介護との両立や、長時間労働の是正など働き方の見直しを進  め、仕事と生活の調和を実現することとともに、労働者が性別により差別されること  なく、かつ、母性を尊重されつつ、その能力を十分発揮することができる雇用環境を  整備することが重要な課題となっている。 ○ この20年間で企業の雇用管理の見直しは進展し、雇用の場における均等確保の必要  性は今では広く社会一般に定着しつつあるが、近年においては、その改善のテンポは  全体的に緩やかなものとなっている。また、差別事案は複雑化の傾向にあり、妊娠出  産等を理由とする解雇や解雇以外の不利益取扱い事案も近年増加している。さらに  は、セクシュアルハラスメントの事案に係る相談の増加傾向が続き、中には、深刻な  事案も少なくないほか、母性健康管理措置に係る相談も多くなっているところであ  る。 ○ このような現状に加えて、現行均等法は、当初から「法のあるべき姿」とされてい  た男女双方に対する差別を禁止する法律ではないこと、平成9年改正に際して間接差  別などの問題について国会において決議がなされていること、男女均等取扱いの状況  について国際的な場で指摘がなされていることなど、従前からの課題が残されている  ことにも留意すべきである。 ○ 以上のような点を総合的に考慮すると、法的整備の具体的内容は概ね下記の事項と  することが適当であると考える。                     記 1 均等法において女性に対する差別を禁止している規定については、男女双方に対す  る差別を禁止する規定とすることが適当である。   また、均等法第9条(女性労働者に係る措置に関する特例)については、我が国の女  性の置かれた現状を踏まえ、当面、女性に対する特例という現行の枠組みを保持する  ことが適当である。 2  均等法において均等確保のための規定を設けている募集、採用、配置、昇進、教育  訓練、福利厚生、定年、退職、解雇の雇用ステージについて、配置において権限の付  与・業務の配分が含まれていることを明らかにするとともに、降格、雇用形態又は職  種の変更、退職勧奨及び雇止めを追加し、これらを差別的取扱いの禁止の対象とする  ことが適当である。   また、これらの項目については、「募集及び採用並びに配置、昇進及び教育訓練に  ついて事業主が適切に対処するための指針」を改正し、禁止の対象となる事例を明ら  かにすることが適当である。この場合、例えば配置における権限の付与・業務の配分  についての差別的取扱いの事例としては、事業所の方針として、(1)自己の責任で買  い付けできる金額の上限について男女で差を設けること、(2)営業部門において、男  性には外勤をさせるが女性は内勤のみで外勤をさせないこと等が含まれ、日常的な業  務指示は含まれないものである。   なお、上記指針上の「雇用管理区分」については、雇用管理区分が同一か否かの判  断は、単に形式のみならず、企業の雇用管理の実態に即して行う必要があるものであ  り、差別的取扱いであるか否かを判断するに当たり、誤解を生じず適切な比較が行わ  れるよう、規定振りを見直すことが適当である。 3  間接差別については、外見上は性中立的な基準等であって、他の性の構成員と比較  して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与える基準等として定めるもの(以下  「対象基準等」という。)について、職務との関連性がある等合理性・正当性が認め  られる場合でなければ、均等法が直接差別を禁止している各雇用ステージについて対  象基準等に基づく取扱いをしてはならない旨を法律の中に盛り込むことが適当であ  る。この場合、対象基準等としては、「募集・採用における身長・体重・体力要件  」、「コース別雇用管理制度における総合職の募集・採用における全国転勤要件」、  「昇進における転勤経験要件」を定めることとするとともに、今後、これ以外の基準  等に係る判例の動向等を見つつ、必要に応じて対象基準等の見直しができるような法  的仕組みとすることが適当である。   対象基準等が職務との関連性を有するか等の合理性・正当性の判断に当たっては、  予測可能性を高めるため、判断の参考となる考え方を指針で示すことが適当である。  この場合、例えば「コース別雇用管理制度における総合職の募集・採用における全国  転勤要件」については、支店、支社がない、又はその計画等もないにもかかわらず、  総合職の採用基準に全国転勤が可能なことを掲げることは合理的な基準とは考えられ  ないものである。 4  均等法において規定されている妊娠・出差・産前産後休業取得を理由とする解雇の  禁止に加え、雇用する労働者に対する解雇以外の不利益取扱いを禁止することが適当  である。   また、産前産後休業を取得しようとしたこと、労働基準法の産前産後休業以外の母  性保護措置及び均等法の母性健康管理措置を受けたこと又はこれらを受けようとした  こと並びに妊娠又は出産に起因する能率低下又は労働不能が生じたことを理由とする  解雇その他の不利益取扱いについても禁止することが適当である。   さらに、不利益取扱いの判断に当たっての考え方を指針で示すことが適当である。  この場合、例えば、休業期間を超えて働かなかったものと取り扱うこと、通常の人事  異動のルールから十分に説明ができない取扱いを行うこと、他の疾病の場合の休業等  と比較して不利に扱うこと等は不利益取扱いと判断されるものである。   妊娠中及び産後一年以内に行われた解雇は、事業主が妊娠・出産等を理由とする解  雇ではないことを証明しない限り、無効とすることが適当である。 5  ポジティブ・アクションに関する企業の自主的な取組を促進するため、率先してポ  ジティブ・アクションを行っている企業がその取組状況を外部に開示する際に、これ  を国が支援することとすることが適当である。 6  均等法のセクシュアルハラスメントに係る事業主の配慮義務規定については、男性  に対するセクシュアルハラスメントも対象とするとともに、事業主の措置義務規定と  することが適当である。この場合、セクシュアルハラスメントの事後の対応措置につ  いて、指針において、事実関係の確認をし、事実関係が確認できたときには予め定め  たルールにのっとり対応すべきこと、セクシュアルハラスメントに係る紛争を調停に  付すことも事後措置の一つとなること等を示すことが適当である。 7  均等法において調停の対象となっていないセクシュアルハラスメント及び母性健康  管理措置についても、紛争解決制度の選択肢の拡大という趣旨から、調停の対象とす  ることが適当である。   また、調停の当事者に対する出頭要請の規定を整備するとともに、セクシュアルハ  ラスメントの行為者とされる者に対して、当事者が合意した場合に出頭要請を行うこ  とができる旨の規定を整備することが適当である。   さらに、調停については、時効の中断、訴訟手続の中止についての規定を法律の中  に盛り込むことが適当である。   均等法における報告徴収の実効性を確保するため、報告をせず又は虚偽の報告をし  た者に対する過料の規定を整備するとともに、セクシュアルハラスメント及び母性健  康管理措置について、企業名公表制度の対象とすることが適当である。 8  女性の坑内労働について、女性技術者が坑内の管理・監督業務等に従事することが  できるよう、妊産婦が行う坑内業務及び一部の業務(作業員)を除き、規制緩和を行う  ことが適当である。   また、労働基準法上の母性保護規定については、「母性保護に係る専門家会合」の  報告にかんがみ、今後の課題として重量物を取り扱う業務や有害物を発散する場所に  おける業務について引き続き検討すべきである。  それでは、若干補足的な説明をさせていただきます。まず前文ですが、これは基本的 には夏に取りまとめいただいた「中間取りまとめ」を踏まえて書いているところです。 特に「中間取りまとめ」においては、均等法施行20年目となった現在、男女雇用機会均 等の確保を徹底するために必要な法的整備を行うべき時期にきていると考えるという記 述をしているところですが、そうした考え方に至る内容を集約して記載しています。  それから「記」以下についてです。「記」以下の1は、男女双方に対する差別の禁止 関係です。たたき台では、仕事と生活の調和を均等法の目的理念に規定するかどうかと いう問題について、どう考えるべきかとしていたところです。ここに関係して、前文に おいては仕事と生活の調和の重要性については記載しましたが、均等法の目的・理念に そのことを規定するのは、労使の意見が一致を見ていないということ以上に、法制上の 問題もありまして落としています。  それから2は差別禁止の内容等の関係です。ここでは雇用ステージの追加あるいは明 確化ということにまず触れておりますけれども、「降格、雇用形態又は職種の変更、退 職勧奨及び雇止め」の後に「等(など)」という文言を付けていたところですが、この素 案においてはそれを落としております。それから雇用ステージに追加するものの内容に ついては、指針で明確化を図ることが適当とした上で、特にご質問がありました配置に おける権限の付与・業務の配分について、その内容について考え方を示しております。 事業所の方針として、ここに記載しているような男女差が設けられている場合を指すも のであって、日常的な業務指示は含まれないものとしています。  なお、11月18日の分科会において、ここで言う「日常的な業務指示」と施行通達に記 載している「個々の業務遂行を命じる業務命令」との違いについてご質問をお受けした ところですが、これは同じ意味、同義ということでご理解を賜りたいと思います。  その次は、指針における雇用管理区分についての規定振りの見直しについて口頭で説 明したことを書き込んでおります。すなわち、雇用管理区分が同一かどうかの判断に当 たって、「単に形式のみならず、企業の雇用管理の実態に即して行う必要があるもの」 ですが、このことを指針において明らかにし、例えば名称さえ違っていれば雇用管理区 分は違っているのだから比較の対象とはならないというようなことがないようにしてい きたいということで記載しているものです。  それから3の間接差別の禁止関係です。間接差別の概念については、たたき台では注 書きで書き下ろしていたのを今回本文に書き込んでおります。この間接差別について、 法律に規定することについては使用者側委員からはずっと抵抗感が示されてきました が、たたき台に示した考え方で法律の中に盛り込むことが適当としているところです。 対象基準等としては三つを取り上げております。  その上で、これで未来永劫固定というつもりではないということであり、これは前回 説明した通りですが、判例が出てくるということもあるわけで、「今後、これ以外の基 準等に係る判例の動向等を見つつ、必要に応じて対象基準等の見直しができるような法 的仕組みとすることが適当である」としているところです。具体的には省令のスタイル を想定しているところです。そして、この場合としてということで、転勤要件について 典型的なケースを記載しております。  その次の4は妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止関係です。このパラグラ フの2行目に「雇用する労働者」と書いております。これは雇用関係に入る前の労働者 は除かれるという趣旨です。ご意見が分かれたところですが、たたき台の説明の際に 「育児・介護休業法における不利益取扱いの禁止」とされている内容を基本として考え れば、除外されてくると考えてこのようにしているものです。  次の「また、」以下は、たたき台においては、「労働基準法の産休以外の母性保護措 置や均等法の母性健康管理措置を受けたこと等を理由とする」としていた部分に対応し ております。その際に口頭で説明した内容を書き下ろしております。ここも意見が分か れていたところですが、「妊娠又は出産に起因する能率低下又は労働不能が生じたこと 」は加えた形にしているところです。  その次のパラグラフとして、不利益取扱いの判断の考えを指針で示すこととし、その 内容については、たたき台の段階では育児・介護休業法における不利益取扱いの禁止と されている内容を基本とする方向としていたところです。そのすべてを書き込むことは 難しいわけですが、特に議論となっていた考え方について取り上げて書いております。 特に妊娠・出産に起因する能率低下又は労働不能についての考え方として、他の疾病と の比較ということで整理することでどうかということで、この点についても書き込んで いるものです。  次の5は、ポジティブ・アクションの効果的推進方策の関係です。ここはたたき台で は雇用に関する状況の把握義務付けやポジティブ・アクションの行動計画の作成義務付 け等の手法についてはどう考えるべきかとしていたところです。そういうものも盛り込 んだところです。ポジティブ・アクションを普及促進していく上でポジティブ・アクシ ョンの計画の策定等の規制的なものとするかどうか、それとも自主的な取組でいくの か。ここも真っ向から意見が割れたところで、このような状況では義務化というのは極 めて困難と考え、お示しした案としています。  次の6は、セクシュアルハラスメントの対策の関係です。ここは現行規定を強化する ことを検討すべきではないかとしておりましたが、それをもっと具体的に、現行の配慮 義務規定を措置義務規定にしてはどうかとしているのに加えて、事後の対応措置とし て、具体的には指針になるわけですが、そこで示す内容として考えられるものを記載し ております。  次の7は、男女雇用機会均等の実効性の確保関係です。調停の対象の拡大と出頭の関 係について記載しています。それから調停の当事者に対する規定の整備と、行為者とさ れる者にも出頭の要請ができる旨の規定整備についても記載しております。この中で、 調停の当事者が合意した場合と入れているところです。それから7の項目の最後のとこ ろですが、「均等法における報告徴収の実効性を確保するため」のセンテンスです。た たき台においては、報告徴収の実効性を確保するための規定の整備としていたところで すが、その内容として具体的に過料の規定を整備すると書き込んでいるところです。  そして最後の8は、女性保護・母性保護についてですが、女性の坑内労働の規制緩和 として「一部の業務」としておりましたが、カッコ書きで作業員であることを明確化し ております。  説明は以上です。 ○横溝分科会長  何かご質問ありますか。この順番にでなくて結構ですから。吉川委員どうぞ。 ○吉川委員  3の間接差別のことについて少しお尋ねしたいのですけれども、「コース別雇用管理 制度における総合職の募集・採用における全国転勤要件」を定めることとするというこ とですが、この対象となるのはコース別の雇用管理制度を設けている企業で、かつ、総 合職の採用の際ということでよろしいのですか。その辺をお尋ねしたいと思います。結 局、中小企業などはコースが分かれておりませんので、そういう場合、採用のコースが 一つのみの企業は良いということですか。 ○石井雇用均等政策課長  ここに記載の通りです。 ○横溝分科会長  よろしいですね。渡邊委員どうぞ。 ○渡邊委員  蒸し返して申し訳ないのですが、その項のですね、3の下から2行目です。「又はその 計画等もないにもかかわらず」の「等」というのは、具体的には。 ○石井雇用均等政策課長  計画等として、例えば計画だとか方針だとか、常日頃会社としてそういうことをやっ ているのだというような考え方が明確になっている場合、それも含んで考えればよいの ではないか、何も、紙に書いた計画という形に限られるものではないのではないかとい う趣旨で「等」という文言を付しているところです。 ○渡邊委員  わかりました。 ○横溝分科会長  他に、いかがでしょうか。川本委員どうぞ。 ○川本委員  一つ質問です。4ページの7ですけれども、2段落目の「また、調停の当事者に対する 出頭要請の規定を整備するとともに」というのがありまして、「当事者が合意した場合 に出頭要請を行うことができる旨」というのがありますけれども、出頭要請があった場 合、出頭要請を受けた本人が承諾した場合は出頭するけれども、承諾しない場合は出頭 しなくても良いという意味合いでよろしいのでしょうか。 ○石井雇用均等政策課長  調停のそもそもの性格に立ち返るのだと思いますけれども、調停の申請があっても相 手方が受けてくれない、出頭してくれなかった場合はそれで終わってしまうのと全く同 じです。その行為者とされた方について、調停会議の中で、当事者同士が招いたほうが 良いのではないかということになっても、行為者とされた方が嫌だということで応じな かった場合は、それで終わるものだと考えております。 ○川本委員  わかりました。 ○横溝分科会長  ご意見・ご異論がないとこれでということになってしまいますけれども、よろしいで すか。  吉宮委員どうぞ。 ○吉宮委員  たたき台から事務局と公益の皆さんが相談された素案という形で出てきたのですが、 私の方から幾つか、検討する上で必要な点をお聞きしたいと思います。  この段に来て最大なのが間接差別のところだと思います。  一つは「各雇用ステージについて対象基準に基づく取扱い」という考え方と、それか ら三つについて限定列挙するということと、今後、判例等の動向を見て必要に応じて基 準を見直しをできる仕組みを作っていきますよという三つの提案でございますが、各雇 用ステージについて対象基準に絞っているということは、2ページの2の所で、もし、こ の分科会で合意すればということですが、対象が増え拡大する、というよりしたいと言 っていますから、当然これが対象になるというのです。私どもは賃金について、労働基 準法にはありますけれども均等法にも盛り込んだらどうかという提案をさせていただき ました。  男女間賃金格差の問題が大きな緊急課題でもありますし、賃金その他の労働条件とい うくくりの中で、差別対象というのを考えたらどうかということで、それは採用されま せんでしたけれども、雇用ステージに基づいてとなると賃金がはじかれる。ということ は、雇用ステージにしたという理由についてお聞きしたいのと、三つの限定列挙はこれ に限りますよと省令で措置するといったときに、職場のことを考えますと労働者からこ ういうのは女性に不利益、例えば女性という性に不利益がありますねという。その原因 はこういう基準ではないかと、基準がその原因ではないかということで訴えます。それ を訴えられた使用者側が、多分、均等法によりこの三つ以外はないのだから、それ以外 は俎上に上ることについてはしなくていいのだという対応をすると、私は思うのです。  そうすると、それ以外については俎上に上ってはいけないという法律を作るというこ とは、この間接差別の議論の、間接差別は何で法的な枠組みとして重要性を持っている かというのは、非常に時代とともに、差別の形態は変化すると。  従って、その変化に対応していくためにも間接差別法理が大事だというのが、多分こ の分科会の議論をするときの背景にあるのですが、そういうことからすると、限定列 挙、まず職場で三つに限定しますということは、差別を逆に拡大していくということに なりはしないかというのが一つです。  もう一つは、確かに限定列挙というのは、中間取りまとめの前に公益委員の一部から 限定列挙方式が提案されたことは記憶していますが、中間取りまとめ以降の議論、特に 10月に入ってから、この間接差別の予測可能性を高める方法についてという10月7日の 分科会で、事務局が特に明確化の方法の例について三つを提案されたのです。  そこで私は、この会議では、定義をきちんと書いた上で例示方法がいいのではないか と、そうすべきだと言ったのです。  それに対して幾つか議論がありまして、たぶんこのときの議論からすると限定列挙と いうのはなじむのかなじまないかという議論が一つあったし、議事録を見ますと、公益 の皆さんから「限定列挙した場合にはちょっと問題が残りますね」とあったように出て いまして、前半、中間取りまとめの段階以前に限定列挙方式は提案されたのですが、中 間取りまとめ以降はそんなに議論はもう強くなかった。それなのに、なぜ限定列挙とい うのが出てきたのかということをまずお聞きしたい。私どもも検討して、職場で限定列 挙した場合に非常に取り組みにくいということは生まれます。  さらに、ここには判例の動向を見てということで、今後、限定列挙の三つから拡大し ていきますということを法的枠組みとして、仮に均等法で三つに限定しますと。確かに 裁判ではいろんなことを訴えることは当然あるでしょう。  しかし、裁判所の判断として、均等法で三つを限定した場合に、それ以上のものが期 待できるのかということは、この間の均等法の20年の歴史を省みたときに、やっぱり均 等法が足かせになって、例えば努力義務規定があるが故に、それ以上の判決が出にくい ということもあったわけですから、この判例動向を見てというのは、逆に限定列挙は判 例が出にくいという機能を果たすのではないかということです。  職場での取組、それから裁判、いずれにしても非常にプラス面は考えられにくいので す。  そこのところ、なぜそういう選択を事務局と公益の皆さんが相談して出されたのか と。  それで、これもあまり言いたくないのですが、例えば11月28日の読売新聞にCEDA Wの副委員長のショップシリングさんが日本に見えて、大阪でシンポジウムをされた記 事が載っていました。  たぶん日本の政府の報告にも関与した方だと思うのですが、ここで日本の審議会の状 況についての情報が彼女に入ったのでしょう。  職場が混乱するということで間接差別を入れるべきではないとか、概念がはっきりし ないからというのは、理由にならないと言っているわけです。  そういう意味でも、私はやっぱり限定列挙という手法を取るべきではないという従来 の主張と変わらないのですが、そこに至った経緯を少しお聞きしたいということでござ います。 ○石井雇用均等政策課長  それでは順次お答え申し上げたいと思います。  まず1点目ですが、間接差別について均等法が禁止している雇用ステージごとに限っ た理由ということのお尋ねがあったと思います。  これは前回もお答えしたことと同じ答えになってしまうのですが、そもそも均等法で 性差別について規定をしているのが雇用ステージ別になっています。  直接差別について規定しているものを超えて間接差別だけが単独でそれ以外のものを カバーするというのは理屈の上で考えられにくいのではないか。合理的な整理といいま しょうか、理屈の上での整理ではそうなってくるものというふうに考えております。  それから二つ目、限定列挙することによって職場での取組がしにくくなるといった趣 旨のご質問があったと思います。  限定列挙という提案をさせていただいた理由については後ほどご説明申し上げるとい たしまして、今、間接差別概念を導入するかどうかについては現状、使用者側委員がこ れを限定列挙であるかどうか問わず、その概念についてそれなら入れましょうというこ とについて、イエスのサインを出してくださっている状態ではない、というのをまずご 認識いただいた上で申し上げたいと思います。  現状、間接差別概念というのを規定している法律はないわけです。また、雇用の分野 においてはそうした判断を下した裁判例も今はないという状況にあるわけです。  今回どのような概念であるかが規定されることになりますと、まずそのこと自体の意 義は大きいのではないかと思います。  仮に、ここで示している素案のような形で実施することとなった場合、職場でこれを どのように用いるかは職場によってさまざまなのではないか。職場の雇用管理を改善し ていく上で、これまで、例えばポジティブ・アクションとして進めていくと提案をして いたものの中に、やはりこれは今回の均等法の中で引っかかってくるから差別だという ことでやっていきましょうということになると思いますし、用いる手段が増えるという 捉え方が可能なのではないかと思うところです。  それから、限定列挙をすることによってその判例にどのような影響を与えるか、それ はむしろマイナスの影響を与えるのではないかという懸念が示されたところですが、ま ず素案の中にも示しておりますように、仮にこういう内容でまとまって法律に規定され たということを想定した上での話ですが、この素案の中では間接差別の判例が今後出て くることがあり得るということをこの中で明確に書いているわけですので、そういうこ とを阻害する意図があるのではない、これは明確であろうかと思います。  その上で、裁判所がどのように判断するかということですが、やはり個別ケースごと に裁判所が判断をされていくわけでございまして、あらかじめこちらが決めてかかると いうのはこれも適当ではないのかもしれませんが、ただ理屈の上では、均等法上現在禁 止をしていない、違法としていないという意味において、全く同じ事例としまして、例 えば均等法で現在産休を取得したことを理由とする解雇、これは禁止されておりますけ ども、産休を取得したこと理由とする不利益取扱いの規定はないわけでございます。 が、そういった不利益取扱いの事例について、民法90条を使って無効判決が出されてい る例はあるわけです。  それから先程、努力義務規定の話もされていたと思いますけども、例えば野村證券事 件、あるいは兼松事件の東京地裁判決などを想定されていらっしゃるとすれば、確かに これは均等法が施行された平成11年4月以降と以前とで違法かどうか判断を分けて下し ております。けれども、その一方で、昭和シェル事件というのがありまして、これは改 正前の均等法が配置、昇進に関する男女労働者の均等取扱いが努力義務規定であって、 原則として違法にならないという主張を退けた判決も現に存在をしているわけで、一方 的に今後の判決を阻害するということにはならないのではないかと思っています。  そして最後に、なぜこういう限定列挙の形で提案をしたのかということですが、これ も前回申し上げたかと思うのですが、この間接差別については今回の均等対策の議論の 中で最も難しく、また最も労使の意見の隔たりが大きい部分です。 またこの概念について、当初、中間取りまとめに至る前は、どういうものであるかとい う概念自体の一致も見てなかった。それがようやく今年の夏になって概念としてこうい うものですねという理解を得るに至った。どういうものかという理解が、現状では十分 至ってない、そういう状況にある。  これは先行して規定ができている、例えばアメリカなどですと、先に最高裁判決が出 て、それから20年後に法律の規定ができてと、その間にいろいろな判決例が累積されて いって、社会の中で自然にこういうものであるというものが行きわたった。そういう経 過があるのとは対照的であるということがあろうかと思います。  そのようにまず、間接差別概念というのがいささかわかりにくいというのがある一 方、特にこの概念につきましては、性中立的な基準ということがまずスタートになるわ けでして、ありとあらゆるものが想定され得る。  男女異なる取扱いであれば、まずそのことで対象が見えてきますが、性中立的といい ますと非常にいろんなものがある。  加えてそれがどのぐらいの格差があったときにまず俎上に載せるのか、さらにはどの 程度の合理性があったときにそれが違法であるか合法であるか、いろんな段階で予測可 能性がつきづらい。  そういった中でどういう形でこれを取り入れていくことが可能なのか。まさに予測可 能性をどのように整理をつけていくか。これが焦点であったのだろうと思います。  このわかりにくさということと、それから予測可能性がつきにくいという、この二つ をどのように整理するかということで、 10月に特にこの問題に絞ってご議論をいただ いた経過があるわけですが、やはりその一方で、この概念に対する理解というのがなか なか得にくい中で、どのような形でわが国にこの概念を導入していくのが最も受け入れ られやすく、また最も定着しやすいのかということを考えたときに、事例としまして、 問題としても共通のコンセンサスが得られうるものをまず取り上げて、取り入れていく ことが最も適切かつ近道かつ混乱がないのではないかと思い、このような提案をさせて いただいているところです。  以上です。 ○横溝分科会長  岡本委員どうぞ。 ○岡本委員  今の関連なのですが、調停とか裁判に訴えていく前に、まずは現場、各職場の段階で こういったことについて気づいていって、議論して改善をしていくということが第一な のだろうと思うのです。今回この間接差別の議論が起こったことによって、例えば労働 組合でも若い男性たちが、これまでごく当たり前だと思っていたような制度について、 これはどうなのだろかという議論をし始めて、ここは問題なのだということを気づき始 めたというようなことがあります。そうした取組がきちんとできるかできないか、推進 させていくかどうかということが大事だと思うのですが、やはり今回この限定列挙とな って、まず3点を均等法上は間接差別だということで考えていきましょうということに なりますと、使用者側の相当な反対があると。  だからここが合意点になるのかまだわかりませんが、裏を返せば経営者側はこの3点 以外のところは間接差別としての議論もしないのだということを表しているのではない かと、私たちは取り組んできた実感から、そこを強く危惧します。これまで、そういっ たものがない中では様々な制度についても多少議論を進めていくことがまだできた中 で、3点になっていけば、それ以外の部分で進めていくことが難しくなる。労使の議論 で取り組めばいいではないかという公益側の方の意見もありましたが、そう簡単ではな いということを申し上げたいと思いますし、この3点の限定列挙ということについては 職場の取組みということから言っても大きな問題があると思います。  それから、もう1度確認をしたいのですが、混乱が起こっていくということが大きな 理由としてありましたけれども、前文でも書いてありましたように、元々間接差別は前 回の均等法のところで付帯決議で出され、様々な国際的な機関からも指摘を受けてき て、10年経つのだろうと思います。私たちはその間、組合として間接差別ということに ついてどのように考えていくかということもいろいろと議論をしながら、まず労働組合 の中で改善をさせていくということも含めて取り組んできたわけです。そういった意味 では、この10年が経って今混乱をするということの言い方は、失礼な言い方かも知れま せんが、私は経営者側がこの10年間付帯決議までついた、それから前回の均等法の議論 の中でもこの議論があったことをどのように考えていたのだろうかと、全く取り組まれ ていなかったのか否かということで言えば非常にきつい言い方かも知れませんが、怠慢 だったのではないかと感じてなりません。  先程、使用者側の強い抵抗があるという話がありましたが、前回の審議会でたたき台 が出た時点で使用者側として持ち帰って検討しますというお話があったかと思います。  この段階で、先程のお話で12月末の時点で取りまとめるということから言えば、私た ちはこの素案を持ち帰って議論しますけれども、この間労働側としてはこだわりの点な どについて、それから問題点については申し上げてきましたし、ここはここでいいだろ うということも含めて、そこにはこだわらずに、言わなかったということも含めてわか っていただけていると思うのですが、使用者側のこだわりというのか、今の時点での判 断について、ちょっと私たちとしてはわからないというのが正直なところです。  そうなると、こちら側がまた検討していくということも齟齬が起きてしまうというの でしょうか、そういったことにもなりかねないので、もし良ければ全体的なところも含 めて、間接差別のところは反対というご意見を事務局からは聞いていますが、聞かせて いただきたいと思います。  無理であれば無理やりにとはいいませんが、判断としても私たちはぜひお考えをお聞 かせいただきたいと思います。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○吉宮委員  先程、限定列挙の理由についてお聞きしたときに、課長から使用者側はまだ結論を出 していないと言われました。  この提案を持ち帰って検討したいのですが、これも使用者側はまだ意見があるという ことで、持ち帰って検討するということでいいのですか。  それともこれで了解ということですか。 ○横溝分科会長  はい、どうぞ。 ○石井雇用均等政策課長  私が申し上げるのも何かと思いますが、また恐らく使用者側が正確なところをおっし ゃるかと思いますが、まだ、これはどの問題についてもお互いに合意を得られたものは ない段階のものと理解しています。  これは私どもが公益の先生と相談して作って示した素案でありまして、本日初めて示 したものですし、これについて、今、良いとか悪いとかあるいはどの問題についてどう だとかいうことはまだ結論的なものをお持ちの段階ではないと思っております。 ○横溝分科会長  はい、発言なさいますね。  どうぞ。 ○川本委員  いろいろとご意見をいただいているところですが、たたき台から今回素案ということ で、たたき台に比べますと、私どもが質問した内容等も含めてかなり具体的に書いてい ただいたところもあって、これを頂きましたので持ち帰って検討させていただくという ことは、申し上げたいと思います。  実は、たたき台を頂いたときから、私ども内部では当然検討してきているわけです が、それについて今、吉宮委員からイエスかノーかみたいなお話がございましたが、ど ういう結論を導き出すにしても、大変厳しい内容であり、取りまとめに苦労していると いう状況にあると申し上げざるを得ないということです。  従いまして、今日頂いたこの素案を検討させていただくに当たっては本当にぎりぎり のもので、これについてどう企業のメンバーのご理解なり、あるいはそうではないとい う形になるか、とにかく検討を重ねたいと思っています。また、検討を重ねていきます ということだけは申し上げておきたいと思います。  そのくらい、実は非常に厳しく重いということです。  申し訳ありません。以上です。 ○片岡委員  全体、順番なくよろしいですか。 ○横溝分科会長  はい、結構です。 ○片岡委員  1点、これは意見という形で申し上げたい点があります。  今回初めて前文が示されましたので、現状認識が明らかにされるということになると 思います。  マル四つ目にかかわっての意見になろうかと思います。  中間取りまとめを踏まえて前文を改めて出していただきましたので、追加的にマル四 つ目の所では、例えば中間取りまとめの内容で申し上げますと女性雇用者が4割を上回 るような状況、それは恐らく今後も成長すると思いますが、そのことに触れて雇用形態 の多様化の中で非正規雇用者が女性の場合、女性だけではないが女性が特に多くなって いることや、正規・非正規を問わずさまざまな問題が起きていることについて、現状認 識としては触れている点が、今回の前文では文章としては見えていないという点がある ように思います。  女性雇用者の増加や非正規雇用者の状況を踏まえて、非正規雇用者の問題も含めて相 談事例なども多いということについては、ここにそのことを書き入れることがより現状 認識としては必要ではないかと思いますので、意見として申し上げたいと思います。 ○横溝分科会長  はい、そういうふうにご意見として伺います。  篠原委員、どうぞ。 ○篠原委員  私のほうから2点、質問とご意見を言わせていただきたいと思います。  先程、合意を得たものではないとのご意見がございましたけれども、やはり今までず っと私たち労働側が主張してきた仕事と生活の調和という部分がこの「記」以降の部分 に抜けているという点です。  口頭補足ということで課長からもご説明があったように、この目的や理念の中にはや はり法的にはなじまないということですとか、法制度上のこともということでのご説明 もありましたが、できればもう少し具体的に、どのような形で公益側の方とお話をされ てこのようなことが、抜かれたかというところの説明を再度いただきたいという点で す。  それと、2点目ですが、ポジティブ・アクションのところになります。  たたき台の中では、こちらの労働側の方で、義務ということで主張してきたわけなの ですが、今回の素案の中では抜けています。  前回8月に示されました中間取りまとめの中では、前文で大企業は積極的に取り組ん で上昇はしているけれども、全体としては大きな広がりを持った形にはなっていないと いう表現もありました。  これをかんがみれば、やはり自主的な取組みということよりも、当初労働側の方で主 張しておりますような義務という部分は非常に必要になってくるのではないかなと思っ ているところです。  そこで質問なのですが、今回示された「これを国が支援することとすることが適当」 というようなところの文章が具体的にどのようなことを考えられているのかというとこ ろをご質問させていただきたいと思います。  その2点です。 ○横溝分科会長  関連ですか、はい。 ○吉宮委員  先程、課長から3ページの4の「雇用する労働者に対する解雇以外の不利益取扱い」と いう、雇用するということの抜けた理由を説明されましたが、均等法の募集採用の女性 であることの差別取扱い禁止というのは、雇用する前という、契約の前ということで理 解していいのですか。  第5条は募集採用における差別取扱いの禁止。先程、資料3ページの4の「雇用する」 というのは契約をお互いに締結した労働者についてのみ対象にする不利益取扱いなのだ から、募集採用段階での不利益取扱いは除外しましたと。間接差別は直接差別の禁止の ステージに絞りますよとおっしゃっていて、不利益取扱いはそうではない、というのは 矛盾にならないのですか。不利益取扱いと正確に言ってよいのかわかりませんけれど。 均等法のテーマによって違う、範囲やステージが違うというのは、ちょっとそこが理解 しにくいのですが、どう理解したら良いのでしょう。 ○横溝分科会長  はい。どうぞ。 ○石井雇用均等政策課長  まとめて3点お答えしたいと思います。  まず篠原委員からの、仕事と生活の調和について盛り込まなかった理由、これには二 つハードルがあったと思います。  一つは、この均等法の性差別を禁止する法律の中に、仕事と生活の調和を目的・理念 に書くことについて、賛成するか反対するかという事で二分すれば、この考え方自体に 対して反対という意見も根強く、考え方自体がコンセンサスを得られている状態ではな いというのがございます。  その上で申し上げておりますのが、法技術的な問題ということでございます。これも 何度かこの場で申し上げたと思っておりますが、法律に一定の目的や理念を規定すると いうことは、当然、法律を実施・施行することによってその目的・理念の実現を図ると いうことになるわけです。ですから、当然目的・理念の実現のために具体的な規定がな ければそういうことにはならないわけでして、目的や理念に掲げておきながらそれを実 現する手段を欠くというのは、本来あり得ないことであります。もともと均等法が生ま れた頃、勤労婦人福祉法を改正して第一次均等法と申しましょうか、その時代は育児休 業の努力義務規定などが均等法の中に具体的な措置として入っていました。それと仕事 と生活の調和というものは、これに符合していたわけです。現行均等法が性差別禁止と いうことにかなり集中・特化した形になり、法律の考え方、法律自体を整理いたしてお りまして、そういうものは現在は実施規定にない。そのような状態で均等法の目的・理 念として、仕事と生活の調和というのを書き込むのは困難です。条文の目的・理念を実 現するための具体的な実施規定がない場合には書けない、ということであります。  二つ目は、ポジティブ・アクションについて有効な方策として規制的な方法が提案し たのに入ってないのはなぜか。趣旨としてそういうご質問であったと思います。  これまでの議論を見ましてもポジティブ・アクションの推進の必要性については、当 分科会で意見の一致はあったのではないかと思っております。ただ、その方法論におい て非常に隔たりがあったということも事実であろうと思います。労働者側からポジティ ブ・アクションの計画策定について、「義務づけを行うべき」という強いご主張もござ いましたが、使用者側からは「ポジティブ・アクションはそもそも事業主が自主的に取 り組むのだからそれを促進すべき」というご主張でありまして、これは並行線であった わけです。  一方、ポジティブ・アクションについての各国の取組みというのも、研究会の報告を ご紹介したときにご覧いただいておりますけれども、かなり様々でございます。必ずし も規制的な方法によらなければ進展しない、というものではないと思っています。真に 有効な取組みにするためには、やはり企業トップの決断・意志が不可欠なのではないで しょうか。  例えばポジティブ・アクションについては、「女性の登用の促進を図る」という一つ をとってみても、恐らく企業ごとに有効な取組みの方策というのは異なってくるわけで して、具体的な取組み内容として「これをすればよい」という共通なものはありませ ん。やはり効果的で具体的な内容というのは、各企業が置かれた状況で考えて最も有効 なものを抽出していく、ということになるのではないかと思います。  それで確かに今、大企業を中心にして気運は高まってきているという状況にはあるわ けでして、その取組みを広げていき、その内容を濃い中身でより積極的に取り組んでも らうことが重要なわけです。そのためには、具体的な取組みの動きと内容がより見える 形にしていくことが有効な方策なのではないかと考えたものです  現にこの分科会でも、東京都でやっている方策、具体的な取組みをし、その内容を開 示しようと思っている企業に対して、東京都が援助し、ホームページ等で掲載し、積極 的に普及をしていく。そういうものがあるという具体的な取組み内容を見える形にして いくことが有効だ、というご発言もあったわけでございまして、今回そこで想定してい るのはそういったようなものでございます。  それから最後に、吉宮委員から、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの対象から 募集・採用というのを除外するのは矛盾ではないかというご指摘もございました。  実はこの妊娠・出産の関係では、取り組むべき事象として意見が分かれていたのが二 つありました。一つが募集・採用を含めるかという問題。もう一つは妊娠・出産等の中 での妊娠・出産起因の能率低下とか、あるいは就労不能をどうするかという問題。この 二つがあったと思います。  募集・採用というものを考えた場合の問題を含めることについては、確かに一方で使 用者の強い反対もあったわけでございますが、このことについて妊娠・出産をめぐる問 題が数多く、あるいは非常に問題になっているかというと、今はそれほどではなく、む しろそれよりは解雇・退職の勧奨・身分変更の強要などの方が、非常に切実かつ件数も 多い、という状況にございます。  そういうことに加えまして、仮にこの問題を規定したとしても、雇用を命ずることま ではできないので実際的な救済方法は限定的になってしまいます。  当分科会でも、「どういう場合合理的なのか」という議論もいたしましたが、業務の 主要な機能を遂行できるかどうかということを仮に判断のメルクマールで想定したとし て、実際に将来の予測ということがどこまで可能かといった議論もあったように記憶を いたしております。  そういうような状況から見ましても今回はその対象から除外をし、まずは問題が集中 している身分変更の強要や退職勧奨などをきちんと措置していくことを優先していくの が適切でないか、というように考えてこのように整理したものでございます。 ○横溝分科会長  はい、岡本委員。 ○岡本委員  仕事と生活の調和のところに関連してです。議論の中で均等法に目的・理念を書き込 むことについて、意見が二分したというようには記憶しておりますけれども、元々仕事 と生活の調和ということをどのように図っていくのかということについては、非常に重 要な課題だという認識が多かったと思うのです。  もちろん使用者側からは、「働き方が多様化している中で、そのことをきちんと仕事 と生活の調和ということで書いていく、ということはいかがなものか」という発言はあ ったようには記憶しておりますけれど、仕事と生活の調和をどのような形で労働法全般 の中で図っていくのかということは、かなり議論の中で合意をされてきたことなのか な、というように私は受け止めていました。  もちろんたたき台で使用者側から受け止めたということではないにしても、たたき台 の中でも仕事と生活の調和という重要課題、労働関係法令全体を通じて実現されるもの であるということが書かれてきたわけです。案文には少し書いてありますけれども、も し均等法で、テクニカルな部分も含めて書けないとしても、ではどこで仕事と生活の調 和というものを図っていくのか、担保していくのはどこの法律でやっていくのかという ことは、これまでこれだけ議論をしてきたわけですから、何らかの形で記述のところに 入れるべきではないのかなと思います。全く記述から落ちてしまうということは、やは りこれまでの議論を振り返ってみると、なかなか理解ができるものではございません。  例えば資料4・5ページの項目8の最後も、労働基準法上の母性保護に関する規定の所 で「引き続き検討すべきである」というように、ここだけそういう形のことを書いてあ るわけですね。ですから、均等法ということでないとしても、仕事と生活の調和という ことを、具体的にどのように担保して図っていくのかということは、この先に対する議 論としても、どこかに置いておく必要があるのではないかと思いました。そこはどこか で残すということを、ここでまとめてはいけないのでしょうけれども、個人的にはそこ を強く持ちました。  それから内閣法制局の方でこのことは、「具体的な措置規定がないから均等法の中で は書けないのだ」ということを何度か伺いました。けれども、もしできれば、内閣法制 局からの正式な見解というのでしょうか、そういったものを文書でいただくことはでき るのでしょうか。もし、そういうことができるのであれば、私たち労働者側としてもき ちんとそこのところを、もっていきたいというふうに思うのですけれども。 ○鈴木均等業務指導室長  後者の法制的な話といたしまして、通常は、内閣法制局といいますか、内閣全体の解 釈として目的と法律の中の条文の対応関係については判断される解釈でございます。で すから、このような解釈については通常、内閣の一員たる厚生労働省で出すという形で しかしておりません。これは、内閣の一員である厚生労働省として、審議会の中で事務 局からご答弁申し上げたと、いうことでご理解いただきたいと思います。 ○山崎委員  今、仕事と生活の調和を残したいというお話があったのですが、これはかなり広い概 念でして、パート法でも、均等法でも、育児・介護休業法でもある程度みんな共通して くるわけです。そうしますと、やはりその中で目的に入れるというのはなかなか難しい という議論でした。  しかし、逆に言うと、それぞれ三つのいろいろな法律の隙間を埋めるとか、整合性を 持たせるという観点からすると、別の総合調整法として、例えば仕事と生活の調和推進 法とかですね、高い視点の中で統括的な広い概念のものを一つ構築する、枠組みを作 る、というようなことであれば、全体を網羅するということなので残せるのではないで しょうか。これは別の議論かもしれませんが、そういう中であれば、残せると。残せる というよりもむしろそれによって全体的に各個別法が同化する、ということができるの ではないかと、そんな考えもするのですけれど。 ○横溝分科会長  それに対してですか。別にですね。はい。ではどうぞ。 ○片岡委員  先程、吉宮委員の、妊娠・出産に関わる不利益取扱いの雇用する労働者に対しての質 問のお答えをうかがったことに関連して、私は不利益取扱いがあった場合、それをなく す方法として、雇い入れということが現実的にはできないから入れることはできないと いうやり取りだったように理解しました。現に、あまり数多く例もない、ということも 加えてご説明があったのですが、例えば就職活動などをしている場面の中で、女性に対 して妊娠・出産の予定であるとか、条約でいうような検査などを行うということは、や はりどう考えても理不尽といいますか、問題だと思います。私はそこまでの事例はちょ っと知りませんが。そのような問題がないようにする方法というように考えたとき、何 らかの方法を考える、ということもここに入れる必要があるという意見なのですが、そ れは大きな問題としてやはり残ると思います。それを一つ意見として申し上げたいと思 いました。  妊娠・出産に係る不利益取扱いの所でこれまでご説明いただいたのですが、もう一度 教えていただきたいのです。吉宮委員の方から、該当する項目の中で原則原職復帰につ いて研究会でも例が出ていたと思いますが、不利益取扱いを禁止するという項目に入っ ているかどうかをもう一度教えていただきたいと思います。 ○横溝分科会長  どうぞ。 ○石井雇用均等政策課長  これは雇用均等分科会報告(素案)の中の資料3ページ4の項目に記載をいたしており ますけれども「通常の人事異動のルールから十分に説明ができない取扱いを行うこと」 の中で読み込めるものというように考えております。 ○横溝分科会長  他にいかがでしょうか。よろしいですか。使用者側もよろしいですか。公益委員もよ ろしいですか。  それではいろいろご議論をいただきましたが現段階ではこれでご意見は出していただ いたということで、本日はこれくらいにさせていただきたいと思います。  今回の議事録署名委員は片岡委員と吉川委員、お二方にお願いいたします。  最後に事務局より次回の予定についてご連絡をお願いいたします。 ○石井雇用均等政策課長  次回は12月16日の金曜日午後2時から、場所は厚生労働省の専用第21会議室において 開催いたします。 ○横溝分科会長  よろしいですか。それでは本日はこれで終了させていただきます。 照会先:雇用均等・児童家庭局雇用均等政策課法規係(7836)