05/12/02 中央社会保健医療協議会医療技術評価分科会平成17年12月2日議事録 05/12/2    診療報酬調査専門組織            平成17年度第4回医療技術評価分科会              (1)日     時  平成17年12月2日(金)10:00〜11:35 (2)場     所  厚生労働省17階 専用第18〜20会議室 (3)出  席  者  吉田英機分科会長 大江和彦分科会長代理 河原和夫委員   熊本一朗委員 須田 英明委員 田所昌夫委員 茅野眞男委員 手島邦和委員 寺本明委員 中村丁次委員 野首孝祠委員   野末聖香委員 福原俊一委員 山口俊晴委員 山本義一委員            松原謙二中医協委員 松山裕氏           〈事務局〉            麦谷医療課長 佐原医療課課長補佐 他 (4)議     題  ○手術に係る施設基準について            ○医療技術の評価・再評価について (5)議 事 内 容 ○吉田分科会長  きょうは第4回になります。医療技術評価分科会をこれから開催いたします。大変お忙 しい中、集まっていただきまして、ありがとうございます。  まず委員の選任について、2名ほど交代しましたので、まず7月17日付で石原先生と安 川先生が任期満了で退任されました。その後任として、7月25日付で寺本先生と山本先生 が発令されております。ではお二方から簡単にごあいさつをお願いします。まず寺本先生、 よろしくお願いします。 ○寺本委員  日本医大の脳神経外科の寺本でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○吉田分科会長  続きまして山本先生、お願いします。 ○山本委員  JFE健康保険組合川鉄千葉病院の山本です。よろしくお願いします。 ○吉田分科会長  よろしくお願いいたします。委員の出欠状況ですけれども、本日は吉澤委員と渡邊委員 が御欠席でございます。また、オブザーバーとして中医協の松原委員があと10分ほどおく れるということで、松原委員に出席いただく予定でございます。また、本日御審議いただ きます手術に係る施設基準の関係で、統計学の第一人者であります東京大学の松山先生に きょうはお越しいただいておりますので、後で詳しく分析結果を御発表いただきます。  では、まず事務局から資料の確認をお願いします。 ○事務局(佐原医療課課長補佐)  資料の確認をさせていただきます。本日は議題が2つありますので、それぞれ番号がつ いております。まず診調組・技−1−1というものでございます。それから1−2、1− 3、1−4までが議題1に関するものでございます。診調組・技−2−1からが議題2に 関するものでございまして、2−1、2−2、2−3までございます。以上でございます。 御確認ください。 【議題1】 ○吉田分科会長  委員の方々、資料はございますか。大丈夫ですね。では早速議題に準じて、きょうは2 つございますので、始めたいと思います。まず、「手術に係る施設基準」について審議を お願いしたいと思いますが、これは10月に開催されました中医協基本問題小委員会からこ の委員会に付託を受けておりますので、経緯を含めて事務方から簡単に説明していただき ます。お願いいたします。 ○事務局(佐原医療課課長補佐)  では御説明させていただきます。資料の方は診調組・技−1−1をごらんください。こ ちらが中医協の基本問題小委員会に10月に提出させていただきました資料でございます。 これに沿って簡単に御説明させていただきます。  まず概要ですが、医療の質の向上及び効率的な医療提供の観点から、年間症例数等の施 設基準を設定し、これに該当する医療機関で実施された手術について評価を行うものであ り、平成14年度診療報酬改定において導入されたものということは既に先生方よく御存じ のところでございます。  1枚めくっていただきまして2ページ目の下の方ですが、平成16年4月以降というとこ ろで、本医療技術分科会におきまして手術件数と手術成績の関係に関する調査を実施して いただきました。そして17年8月31日、当該調査結果を中医協基本問題小委員会へ報告 したところであります。その報告については別紙4としてこの1−1の資料の中について おります。  10月の基本問題小委員会では以下のような論点を御議論いただきました。まず1点目、 年間手術症例数と手術成績についてというところがこの分科会に関係するところでありま すが、医療技術評価分科会の調査結果では、一部の手術を除き手術件数と手術成績が相関 するとはいえないとされているが、当該調査結果について、以下の観点から評価・検証を さらに行うこととしてはどうかと。評価の観点としまして、手術ごとの統計的解析手法の 統一、あるいは患者の重症度の考慮、調査結果を適切に把握する上で留意すべき点等につ いて留意した上でやってはどうかと。医療技術評価分科会において、当該調査結果に関す る評価・検証を行うほか、海外論文等についても評価・検証を行い、中医協に報告を受け ることとしてはどうかということで、こちらの分科会の方でさらにこの調査結果につきま して検証してほしいということで10月の基本問題小委員会は取りまとめられたところで ございます。以上でございます。 ○吉田分科会長  ただいま御報告がありましたように、この論点の点で中医協からこの分科会へ委託され ております。もうちょっと詳しい評価をしてはいかがかということを言われましたので、 私と事務局と相談しまして、特に外保連の山口先生に大変御苦労をかけました。山口先生 とも相談いたしまして、きょういらしていただいている東京大学の松山先生に専門的な検 証をいただこうということで、専門的な統計の立場から再度これを集計・検証していただ きました。これに関して、きょう詳しく説明していただきたいと思いますが、いかがです か。よろしゅうございますか。では松山先生、よろしくお願いします。 ○松山氏  東京大学生物統計学の松山と申します。このたびは厚生労働省の方から先ほどの「手術 件数とアウトカムの関係に係る調査」に関して、もう一度評価・検証をするようにという お願いをいただきました。資料といたしましては技−1−2と技−1−3でございます。 資料のうちの技−1−3というのが報告書になっております。そちらの報告書をまとめた 内容が技−1−2のスライドの形になっております。30分ほどで技−1−2のスライドの 形の方の資料で説明させていただきたいと思います。そちらに一応、パワーポイントのス ライドが出てまいりますが、同じものであります。それでは早速説明させていただきます。  まず目的といたしましては、今申し上げましたように、「手術件数とアウトカムに関す る調査」について評価・検証を行うと。各学会が独自に統計解析をして幾つかの結果を出 していますが、統一して同じ手法で、特に海外において行われている解析方法と同じもの を使って評価しようということであります。  対象といたしました学会は、外保連からいただいたデータのうち、提出していただいた のはこの6学会でございます。日本胸部外科学会、日本整形外科学会、耳鼻咽喉科学会、 呼吸器外科学会、産科婦人科学会、泌尿器科学会の6学会であります。  各学会におきます手術とアウトカムについてです。さまざまな手術とアウトカムがござ いますが、そこのスライド4枚目に示してありますような種類、アウトカムを採用いたし ました。まず胸部外科学会に関しましては冠動脈、大動脈バイパス移植術に関してです。 アウトカムは入院死亡と術後30日の生存率です。通常は入院死亡30日以内の死亡という のをアウトカムにいたしますが、他の学会とのアウトカムの整合性をとるために、つまり アウトカムと言われるものが、数値が大きくなればなるほどいいことを示すということに 統一するために、生存率というものを採用しております。死亡率に関しましては、パーセ ント表示の場合には100から生存率を引いてもらうと死亡率が出てくるという関係になっ ております。  整形外科学会に関しましては、そこにありますような人工関節置換術などの3つの手術 に関しまして、アウトカムは機能の改善割合といたしました。耳鼻咽喉科学会に関しまし ては鼓室形成術に関して、手術の成功割合というものをアウトカムにいたしました。  呼吸器外科学会は肺悪性腫瘍手術に関して、特に肺葉切除に関して、原発性のものです が、これも入院死亡と術後30日以内の生存になります。これも通常は死亡をアウトカムに するのがよく行われますが、他の学会との整合性のために生存をアウトカムにいたしまし た。  産科婦人科学会に関しましては子宮附属器悪性腫瘍手術、両側ですが、5年生存率がア ウトカムです。泌尿器科学会に関しましては前立腺がんと膀胱がんに関しまして3年の無 再発率をアウトカムにいたしました。  各学会の手術が実施された時期についてです。それぞれまちまちですが、胸部外科学会 は2003年、整形外科学会は2003年から1年間、耳鼻咽喉科は2000年、呼吸器外科学会は 2000年。ただし、この呼吸器外科学会に関しましては患者さんの個票データ、つまり性と か年齢とかステージなどのバックグラウンドのファクターもデータとしてとっておりま す。それについても解析をいたしましたので、その場合の個票データについては1989年か らの長いデータになります。産婦人科学会は1999年、泌尿器外科学会は、これは施設ごと に異なるのですが、84年からことしまで、あるいは82年からことしまでと、さまざまな 施設によってばらばらであります。  解析方法ですが、方法は2つあります。1つが、まずは年間手術件数とそれぞれのアウ トカムの関係を散布図で表現しております。そこに図が出てきますが、横軸が年間手術件 数です。これは10件間隔にグループ化いたしました。10件以下、11件から20件という形 であります。縦軸の方がアウトカムです。アウトカムは100%、1に近いほど結果が良好 なことを意味いたします。ここも10%間隔でグループ化いたしました。一番上の1.0とい うところだけは特別に取り出して100%の成功という意味でカテゴリーを設けておりま す。その升目に書いてあるのは一体何かと申しますと、各手術件数グループにおいてそれ ぞれのアウトカムを満たす割合になります。ですから、縦側に見ていただいて合計すれば 100%になると。例えば年間手術件数が10件以下の施設では、それぞれのアウトカムを満 たすのは何%あるかというのが棒グラフで表現されております。  次の2番目の解析方法といたしましては、先ほどのグラフで年間手術件数の増加ととも にアウトカムがどのように変化するかというのがわかるのですが、それをもう少し統計的 に、海外で行われている統計手法を用いて定量的に表現した方法であります。そこの7枚 目の図に書いてありますのが、先ほどの棒グラフを算出するための基礎データとなるもの ですが、方法といたしましては、回帰直線というものを当てはめるということになります。 つまり、この1つの点は何かというと、ある施設、1施設での結果であります。この回帰 直線の傾きがプラスに向いていると手術件数の増加とともにアウトカムもよくなるという ことを意味します。統計的にはその傾きが0、つまり横棒一線であれば、これは手術件数 の増加とアウトカムの間には関係がないんだということを意味します。つまりその傾きが 0かどうかを統計的に検証したということになります。  具体的には、回帰モデルの当てはめと書いたところで、アウトカムに対して年間手術件 数の間の関係を数式表現するわけですが、このβ1と書かれたところが手術件数の影響度、 効果をあらわすものになります。β1が0であれば無関係であるということになります。 β1の大きさ自体の意味は何かと申しますと、手術件数が1カテゴリー、つまり今の場合 では10件ですが、10件年間増加するとアウトカムが何%上昇するかということを意味し ます。  その他の解析といたしましては、先ほども申し上げましたが、呼吸器外科学会に関しま しては個票データがございます。他の学会のデータは、各施設で年間そのような手術が何 件あって、何%アウトカムがあったかというデータですが、呼吸器外科学会に関しまして は患者さん個人の個票データがありますので、それに基づいて性、年齢などの情報を調整 した上で手術件数の効果があるのかどうかというのを検証いたしました。具体的にはハザ ード比と言われる、手術の死亡に対する影響度合いをはかる指標を持ち出しました。  泌尿器科学会に関しましては3年無再発率というのをアウトカムにいたしておりますが、 そのデータの整合性がちょっととれていないのがある。つまり、2002年から2005年に行 われた手術なのに3年死亡率が定義してあるのがありましたので、それに関してはちょっ とおかしいので、2002年から2005年に行われた手術は除いて、2001年以前のデータに基 づいて同様の解析を行いました。  各学会の結果に移らせていただきます。最初がCABGに関するものです。これは全枝 を含むすべてのものです。調査施設数は556施設です。そのうち、実際に手術を実施した 施設は481施設。手術の総数は1万7,418。1施設当たりの手術件数が平均的には30件ぐ らいで、最大では244件、年間に手術している施設があったということになります。全体 で見ますと、周術期の生存率というのは平均値で99%という値になります。  これが先ほど解析方法の1で示しましたグラフです。横軸が年間手術件数で、縦軸が周 術期の生存率です。これを見ていただくと一目瞭然なのですが、手術件数が増加しても、 周術期生存率がほとんど100%のところで推移しているということがわかります。手術件 数が10件以下の施設でありましても、90%の生存率を95%の施設で埋めていると。ほと んどが周術期生存率が100%であることがわかります。  12枚目が、その上の棒グラフの各手術件数別の生存率の推移をあらわしております。こ れを見ますと、手術件数が増加いたしましても、生存率というのは98%前後をずっと推移 していると。先ほども申し上げましたが、全体では99%の平均値になっているということ になります。  次の13枚目のスライドが、先ほど申し上げました回帰モデルを用いて、手術件数増加に 伴ってどれぐらいの影響度、傾きの大きさがあるのかというのを推定した結果です。推定 値、傾きβ1と書いてあるところが結果でございます。0.09%というのが結果であります。 これは1カテゴリー増加ですから、CABGの手術が10件増加すると生存率がわずか 0.09%ふえるということをあらわします。これを100件の増加に換算しますと、10倍すれ ばいいのですが、わずか1%の増加になります。この傾きが0かどうかというのが統計的 に問題になるわけですが、その結果が95%信頼区間、あるいはP値と言われるところに出 ております。  95%信頼区間の解釈といたしましては、もう一度同じようなこれぐらいの規模の研究を やった場合に、傾きの推定値が0.09と、もう一回同じ値に出るという保証はございません ので、それが何%から何%の間に入っているのかというものをあらわす統計的な信頼度を あらわす指標であります。これが今の場合には0%というのを含んでおりませんので、も う一度研究した場合にでも傾きは0ではないと。つまり、手術件数の増加とともにわずか ながら、生存率が1%ですが、100件増加に対して上昇するんだと。P値というのが小さ いというのは統計的に有意であるということを意味します。  ただ、ここで注意していただきたいのは、統計学で統計的に有意であるという物の言い 方をいたしますが、それは対象者の人数に物すごく影響を受けます。一般的に人数が大き くなれば、この場合には施設数ですが、施設が500施設ぐらい超えていますから、かなり のデータのボリュームになります。人数が多いと、わずかな治療効果であっても、これは 必ず統計学的には有意になることが知られております。ですから、100件増加に対して生 存率が1%上昇するということに関しては、統計学的には意味があることですが、問題は、 後は臨床的な解釈というのが重要になってくると思います。  どれぐらいその1%というのが大きいものなのか、あるいは海外ではどの程度の大きさ を議論しているのかということを検討するために次のスライドをお願いいたします。海外 の文献と比較いたしました。米国政府の諮問機関でございますIOMというのがあります が、その機関が2000年にワークショップを開催して、手術件数とアウトカムに関係する既 存の文献の体系的なレビューを行っております。そこのワークショップサマリーというも のに結果が載っております。  IOMのワークショップに関しましては80個ぐらいの種類の手術について検討してお りますが、そのうちの4分の3ぐらいで手術件数とアウトカムには相関があるんだという 結論を出している報告書ですが、その中にCABGに関する手術件数とアウトカムを評価 した文献が9個記載されておりました。そのうち、調査の質が最も高いとその報告書で評 価されている論文、Hannanらの調査結果を紹介いたします。この調査は89年にニューヨ ーク州の病院のデータを患者ベースで前向きに、前向きにと申しますのは実際に手術をし てから死亡するかどうか、あるいは生存するかどうかを追っかけているということ、過去 のデータではなくて89年からスタートした調査という意味ですが、前向きに収集したデー タです。こちらは患者さん個人個人をフォローアップしますので、重症度などの各患者さ んのベースラインデータのリスク要因を調整した上での評価をしております。総患者数は 1万2,448人で、施設数は30です。  16枚目のスライドが結果でありまして、Hospital Volumeというところが各施設の年間 手術件数です。200件未満から200〜889、890以上となっております。一番右のTotalと いうところが米国のこの結果であります。例えば、どう見ますかというと、200件未満の 施設でのCABGの入院死亡率は7.25%であると。次の200〜889になると4.32%になる と。890以上であれば2.85%になるというように読みます。報告書では7.25%から2.85% のように、手術件数が増加すると死亡率が確かに減少していると。しかもそれは統計的に 有意であるという結果を出しております。  しかしながら、先ほども申し上げましたが、我が国のデータはこれに比べてどうかと申 しますと、次の17枚目でありますが、日本胸部外科学会の周術期の死亡率に直しますと、 まずポイントといたしましては、年間1施設当たりの手術件数が米国に比べて極端に少な いというのがまず見てとれます。つまり、米国では200件未満というのが一番小さなカテ ゴリーですが、日本では200件以上というのはごくまれにしか存在しないということです。 さらには、死亡率に関しましても、全施設平均で1%であったと。先ほど99%の生存率と 申し上げましたので、100から引いて1%であると。これは先ほどお見せしました海外の 7%ですとか、3%、2%に比べてかなり小さい、極めて小さいものであるということに なります。  実際、年間10件未満の胸部外科学会からのデータにいたしましても、死亡率が2.5%で す。日本のデータはリスクを調整しておりません。一般にはリスクを調整した死亡率の方 が小さな死亡率を示すことが知られております。ですから、海外の場合には調整済みで7%、 3%程度ですから、日本の場合には調整すると2.5%、1%より小さくなることが予想さ れます。これから考えますと、日本における死亡率というのは米国に比べて極端に低いと いうことが言えると思います。  さらに、18枚目ですが、CABGに関しましてはIOMのワークショップ以外にJAM Aに掲載された論文がございました。それは最近行われた調査で、これも年間手術件数と 周術期死亡率の関係を26万7,000件ぐらいの膨大なデータ、CABG手術のデータに基づ いて検討したものであります。その結果を次にお示しいたします。  19枚目ですが、これはその結果です。年間150件以下で、我が国の胸部外科学会と同じ でこれはリスクを未調整で、死亡率が3.5%になります。我が国は150件未満といいます と、これは2%前後、あるいは1%に近い値になりますので、ここから判断いたしまして も、手術件数とアウトカムの関係は、我が国では非常に小さい、ごくわずかであるという ことがいえると思います。全体では、アメリカは2.66%ですから、日本は1%ということ で、これに関しましても我が国の方が良好であるということがいえると思います。  次は学会が変わりまして人工関節置換術、膝関節に関する結果です。施設数は1,151で、 手術総数が1万9,870。1施設当たりの手術件数は、平均的には17件ぐらいになります。 改善割合の平均値は全体で98%になります。  21枚目が、先ほど申し上げました年間手術件数と機能の改善率の関係をプロットしたも のであります。これを見ていただいてもわかりますように、年間手術件数が少なくても、 改善割合は、100%の施設が95%あるわけですから、これに関しましても、手術件数とア ウトカムの間には、グラフで見てとれる限りにおいては関係がなさそうであるということ がわかります。  次のスライドですが、22枚目が手術件数、グループごとの施設数、改善率の推移になり ます。これを見てもわかりますが、手術件数が少なくても多くても、98%の値で大体平均 値が推移しております。  23枚目が回帰分析をした結果であります。こちらにおきましても、1カテゴリー増加す る、つまり10件手術件数が年間ふえると機能の改善割合が、わずかではありますが、0.09% 上昇すると。これは統計学的には人数が多いので有意にはなります。例えば50件ぐらいの 増加にいたしますと0.45%の増加であります。これに関しましても、先ほどの胸部外科学 会で申し上げたとおりで、統計学的には有意ですが、1年間50件増加させると改善割合が わずか0.5%上昇することの臨床的な意味を判断するということが重要になってくるかと 思います。  以下、人工関節置換術等の同様の手術、同様の結果が出てまいります。股関節に関しま しても、手術数等は24枚目に書いてある程度のものであります。  25枚目のところが股関節に関する結果で、26枚目が年間手術件数の増加とともに改善率 の平均値がどのように推移しているかというものであります。ずっと数値を見ていただく と、これも同じように、年間手術件数が少なくても、96%以上の施設が100%の成功率を 示しておりますし、ふえてももちろん90%以上の機能改善率をすべての施設が満たしてい るということになります。平均的には98%前後推移しているといえると思います。  次の27枚目が股関節に関しまして同様の回帰分析をした結果で、こちらも傾きと書いて ありますものが統計学的に有意になっております。つまり、これは手術件数50件増加に伴 いまして機能の改善率の上昇度合い、傾きが1%ぐらいふえるということになりますが、 同様に統計学的には有意なのですが、その1%というのが臨床的にどれぐらいの重さを持 っているのかというのが重要になると思われます。胸部外科学会のところで申し上げまし たが、これらはいずれもリスクの調整はしておりません。重症度等を考慮したものではな くて、単純な手術件数と改善率との関係を見ているだけであります。  続きまして膝前十字靱帯断裂形成術に関しましても約6,700件の手術で、平均値が98% ぐらいのデータであります。  29枚目、30枚目がこの手術に関します手術件数と改善率の間の関係ですが、これに関し ましてもほぼ同様の結果でありまして、手術件数がふえても改善率は100%ですし、少な くてもこれは98%ぐらいの成功率をほぼ示しているということになります。平均値の推移 に関しましても98%前後をずっと推移していますので良好な値であるといえると思いま す。  31枚目に移りますが、これに関しましては、手術件数増加に関しまして、1カテゴリー 増加に関して0.08%の改善率の上昇が見込まれると。統計学的には95%信頼区間というの がマイナス0.08からプラス0.24まで推移していますから、0となる可能性もあると。つ まりこの手術に関しましては、手術件数の増加とアウトカムの間は統計学的には横一線で あるといえるということになります。  同様に、次の観血的関節授動術に関しましても、2,338総数の手術件数に対しまして、 32枚目に書かれてありますような手術件数であります。それに関して次の33、34、35に 同様の結果があります。これはもう見ていただければわかるのですが、34枚目の数値でも、 33枚目のグラフでも結構ですが、手術件数がふえたとしてもアウトカムは余り変わってい ないと。92%、94%、92%であり、その統計学的な影響度、35枚目に回帰分析した結果は、 統計的には有意ではございません。以上が整形外科学会に関する報告になります。  続きまして、耳鼻咽喉科学会の鼓室形成術に関してです。この鼓室形成術に関しまして は、疾患はすべての疾患、手術の種類はI型からIV型までありますが、それをすべてあら わした混合のものです。残念ながら、ここの学会に関しては調査施設数が少なく、10施設 だけを調査して、そのうち7施設から回答を得ました。手術件数自体は1,961件と多いの ですが、回答施設数が少なくなっております。  結果は37枚目に示しましたが、こちらに関しましては先ほどのような棒グラフの表現、 あるいは回帰分析というのを実行いたしませんでした。これは施設数が非常に少ないので、 わずか10個のデータだけですので、グラフだけで表現させていただきました。37枚目の 黒丸1個は何を意味しますかというと、これが1施設の結果になります。横軸はその施設 の年間手術件数です。見ていただくと、手術件数が少ない100件未満であっても、極端に 多い500件、600件以上のところでありましても、80%弱、70%前後の成功割合を示して いるということになります。  同様に鼓室形成術に関しまして、耳疾患だけに限って、III型に限定した場合の結果もご ざいます。ここも調査施設数が5施設と非常に少ないので単純なグラフ表示だけにとめて おります。成功割合の平均値は74%であります。次のスライドがその結果であります。5 個の点がありますが、これが各施設の結果であります。これを見ていただいても、手術数 が少なくても多くても、成功割合は75%前後になっていることがわかると思います。  次の40枚目からが日本呼吸器外科学会に関する、肺葉切除、原発性のものに関する結果 です。こちらは調査施設数が577で、総手術件数が1万3,000件ぐらい。1施設当たりの 手術件数は平均値で22ぐらいであります。入院死亡、あるいは30日以内の生存の平均値 は、全体では99%であります。  次の41枚目、42枚目が結果であります。41枚目の棒グラフを見ていただくと、年間手 術件数が少なく、10件以下のところでありましても、周術期の生存率が100%の施設が 95.5%、ほとんどが成功している、死亡していないということになります。42枚目の平均 値の推移を見ていただいてもおわかりになりますが、こちらもやはり手術件数が少なくて も多くても、周術期の生存率は98%前後でずっと推移していると。良好な値を示している ことが見てとれるかと思います。  続きまして43枚目に傾きです。手術件数の増加の効果をあらわしたものになります。こ れも人数が非常に多い、施設数が多い結果ですので、1カテゴリー増加に対して傾きは、 統計学的には有意に上昇していると。手術件数50件の増加に対しては周術期の生存率が、 わずかですが、0.4%上昇すると。こちらもやはり同様に統計学的に有意ですが、0.4%の 増加というのが果たしてどれぐらいの臨床的な意味合いを持つのかということを議論する 方が重要だと思われます。  続きまして44枚目のところから、呼吸器外科学会に関しましては個票データもいただい ておりますので、それに基づいてリスク調整した結果をお示しいたします。調査施設数は 86施設で、対象者数、手術件数は3,220件のデータです。1施設当たりの手術件数は、平 均では40件前後であります。  調整いたしますリスク因子が45枚目の次のスライドになります。調整したリスク因子は、 性別、年齢、術式、手術位置、ステージ、組織型、郭清度、これらの要因を調整した上で 手術件数が10件増加するとどれくらいアウトカムがいいことがあるのかということを検 討いたしました。  46枚目、47枚目がその結果となります。46枚目の方にまず手術件数10件増加、ハザー ド比というのが書かれております。ここが結果ですが、性、年齢、術式等のリスク因子を 調整した上で、調整といいますのは仮に、仮想的にですが、性も年齢も術式も重症度、ス テージも同じ人がいたとして違いは何かというと、手術件数が10件増加するとという意味 です。どれくらい死亡率が変化するかと。こちらは死亡に対して見ておりますが、0.98と いうハザード比になります。これは1より小さい場合に手術件数の効果があると。いいこ とがふえるということを意味します。1より、わずかですが、0.98ですから、小さいので、 確かに10件増加すると死亡が減るという方向には向いておりますが、隣にありますP値、 統計学的な判断の材料となるものを見ますと0.23とありますので、一般に統計学的には 5%以下のものを有意と申しますので、22〜23%ですから、これは統計学的には有意では ないということになります。  そのほかの性、年齢、術式に関しまして見ますと、例えば性別で見ますと、女性に比べ て男性の方が約1.4倍死亡しやすいと。それは、統計学的にはP値が小さいので有意であ ると。意味のあるものであると。こういうことになります。年齢に関しましては10歳加齢 に伴いまして死亡リスクが1.25倍ふえると。これも統計学的には有意であるということに なります。  続いて47枚目に、さらにさまざまなリスク要因の結果がありますが、例えばここで注目 していただきたいのは、これは臨床的には当然の結果ではございますが、ステージのとこ ろを見ていただくと、ステージIよりもステージIIになると死亡リスクが2.13倍になると。 ステージIがステージIIIになると死亡リスクが3.8倍、ステージIVになればIに比べて 6.64倍も死亡リスクが高まるということになります。これは統計学的にも有意であるとい うことになります。  ここで注目していただきたいのは手術の効果ですが、悪性腫瘍と申しますと、当然この ステージとか、性、年齢といったものがリスク因子として働きます。その効果というのが 3倍、あるいはステージIVに関しては6倍と、かなりの大きさがあります。これは臨床的 には非常に問題となる重要なものなのですが、それに比べて手術件数というのは、今回の 場合、これは個票データでは統計学的には有意ではありませんが、0.98と、ほぼ1のとこ ろに来ているということが問題であります。つまり、死亡に関しましては、肺がんの肺葉 切除に関しましてですが、手術件数の影響度よりも病態の方が、ステージ、性、年齢とい ったバックグラウンドのファクターの方が圧倒的にリスクとして効いているんだと。やは りこの種の手術件数の効果を評価するときには、特に悪性腫瘍に関しては、ステージとか 性、年齢などの背景要因を調整して検討しないと、さらには詳細な結論はなかなか得られ ないのではないかということが推察されます。  続きまして48枚目ですが、48枚目に出ていますのが海外文献との比較です。先ほど申 し上げましたIOMのワークショップに関しまして、肺葉切除に関しましても3件報告が ありました。その中で最も質が高いものを1つ選んで、海外文献との比較をいたしました。 アウトカムは入院死亡です。7,000名ぐらいの患者さんのデータです。  49枚目のスライドを見ていただくと、その海外のデータの結果が出ております。 Hospital volumeというところが年間手術件数です。37件以下の施設では133件あって、 Observed Mortality Rateと書いてあるのがリスク未調整の死亡率です。3.05%と。その 手術件数が増加していくと、リスクを調整していない死亡率、入院死亡率が2.13%、1.44%、 0.87%と減少していると。全体では1.86%になっていると。この減少していく度合いが統 計学的には有意であるというふうに報告書には記載されております。  隣のRisk-adjusted relative to 4th groupと書いてあるところが、リスクを調整した 上で4番目のカテゴリー、手術件数が最も多い、169件以上の場合に比べてどれぐらい死 亡率がふえるかということを示したものです。例えば手術件数が最も少ない場合には最も 多い場合に比べて1.65%の死亡率の上昇があるんだと。これはリスクを調整した上だとい うことの結果が得られております。  50枚目のスライドが、我が国の呼吸器外科学会に関しまして、先ほど紹介したIOMの ワークショップと同じような解析を個票データに基づいてやった結果であります。調整し た因子は、もちろん海外のデータと我が国のデータでは違いますので、完全な比較にはな りませんが、リスク調整済みの我が国の結果ということになります。  その結果、50枚目を見ていただきますと、手術件数は、総数がそもそも違いますので、 日本の方が少ないですが、同様に4つのカテゴリーに分類いたしまして見ますと、未調整 死亡率というものが上のObserved Mortality Rateに対応しますが、2.10%から1.90、1.30、 0.90というふうに、わずかながらですが、手術件数の増加とともに死亡率が確かに減少し ております。ただ、手術件数が少ないところを見てもらうと、海外のデータに比べると1% ほど死亡率が小さいということになります。  隣のリスク調整済み死亡率の差というのが、49枚目のスライドの海外のデータと同じよ うな4番目のグループとの死亡率の差です。日本の場合には、最も手術件数が多い場合と 比べて、最も少ない25件以下のところでも死亡率は0.77%の上昇しかないと。これは統 計学的には有意ではございません。海外の場合には1.65%もふえていますから、半分以下 の影響度であることが見てとれると思います。  続きまして51枚目に移りますが、日本の呼吸器外科学会の個票データに関して、リスク 要因を調整した場合と調整しない場合でどれくらい手術の影響度が変わるのかというのを 検討した結果であります。51枚目の左側の未調整死亡率というところを見ますと、何も調 整しない場合ですが、最も手術件数が多い施設に比べて、25件以下の死亡率は1%ちょっ と上昇するということになります。統計学的にはP値が0.14なので差はありません。  右側が先ほど示したそのままですが、リスク調整済みの死亡率の差です。ここは0.77% と書いたものであります。これを見ていただきますと、やはりリスクを調整した方が手術 件数の効果は小さくなっていると。つまりリスク要因というものを調整しないと手術件数 の効果を大きく見積もられているということが予想されます。ですので、呼吸器外科以外 の学会のデータに関してはリスクを調整しておりませんので、その効果というのは、現実 には背景要因を調整してしまうともうちょっと小さいものであることが予想されます。  続きまして52枚目以降が子宮附属器悪性腫瘍手術、卵巣がんに関するデータになります。 これに関しましては施設数が474件、総手術数が3,500件で、1施設当たり平均的には9 件ぐらい。5年生存率をアウトカムにしましたが、平均値で64%になっております。  53枚目、54枚目が結果であります。53枚目、あるいは54枚目を見ていただきますと、 これまでの学会の手術と違いまして、かなりばらついております。つまり年間手術件数が 少なくても多くても、5年生存率というのが90%から50%前後までばらばらにばらついて おります。その平均値の推移はと申しますと、54枚目に書かれてありますように、手術件 数が少ない場合だと63%、多いと76%というふうに、若干上昇している傾向が見てとれる と思います。  その手術件数増加の効果は統計学的にどうかと申しますと、55枚目に移りますが、傾き は3.12%。つまり、これは年間手術件数が10件増加すると、5年生存率というのが3% 前後ふえると予想されます。統計学的にこの傾きは、P値が非常に小さいので、有意であ ります。ここの3%を議論するのは臨床的な解釈の問題になってきますが、先ほど申し上 げましたように、リスクは未調整であります。こちらも悪性腫瘍ですので、ステージ、年 齢等の背景要因というものが生存率に物すごく影響を受けるということが予想されます。 ですから、呼吸器外科学会で行ったようなリスク調整、ステージなどの影響を調整してし まうと、この3%というのはもっと小さくなることが予想されます。あくまでもリスクが 未調整であるということに注意していただければと思います。  続きまして、最後の学会の前立腺がんと膀胱がんの結果に移ります。前立腺がんに関し ましては手術件数が全体で5,000件ぐらいの大きなデータで、1施設当たり平均値で年間 10件ぐらいの手術を行っていると。アウトカムは3年無再発率ですが、平均値が75%であ ります。  57枚目、58枚目に書かれてありますのがその結果であります。グラフ、あるいは平均値 の推移を見ていただくとおわかりになると思いますが、これもかなりばらついているとい うことになります。年間手術件数が少ない場合で見ますと、82%の施設で3年無再発率が 100ということになります。多くてもこれは余り変わらないことになります。平均値では 77%、79%、82%、75%というふうに、70%前後、80%前後を推移しております。  その推移の度合い、手術件数の増加の効果を見たのが59枚目になります。傾きと書かれ てありますところが0.15%で、統計学的にはP値が0.85で、これはほとんど1に近いで すから、統計学的には全く有意ではなくて、手術件数が増加しても3年無再発率が上昇す るということは、統計学的には言えないだろうということになります。  同様の結果が膀胱悪性腫瘍手術に関しましても得られております。膀胱悪性腫瘍手術に 関しましては、60枚目から61、62、63枚目までが結果となっております。61枚目、62枚 目の手術結果を見ていただくと、手術件数が10件以下でも、10件以上であっても3年無 再発率は69%で同じですので、これは統計学的には全く変化しないと判断せざるを得ない ということになります。その結果が63枚目であります。  以上の結果をまとめさせていただきますと、64枚目、65枚目のまとめになります。まず 64枚目のまとめの1のところを読ませていただきますと、解析をいたしました散布図、棒 グラフの図と、その手術件数とアウトカムの間の定量的な関係を評価した回帰モデルによ る解析結果だけを純粋に統計学的に判断いたしますと、手術件数の増加に伴い、アウトカ ムというのがよくなる傾向が確かに幾つかの手術において見られたのは事実であります。 しかしながら、ここからが重要でありますが、その手術件数増加による効果の大きさ、影 響度というのは極めてわずかであると言えます。例えばCABG手術に関しましても、年 間100件増加すると死亡率が1%減る、生存率が1%ふえると。その1%というものが臨 床的にどれぐらいの意味を持つものなのかということが重要になってくると思います。  どの手術におきましても、アウトカムの平均値というものは、手術件数の増加に伴い 98%前後で生存率が推移したように、良好な値で推移しているということが言えます。し たがいまして、手術件数が少ないとアウトカムが悪いとか、あるいは手術件数の増加に伴 ってアウトカムがよくなるということを直接的、あるいは積極的に解釈できるだけの十分 な証拠はないと判断することが妥当であると考えます。  続きまして、まとめの2のところですが、本調査に関しましては、肺葉の切除手術を除 きまして、患者さん個人のリスクを調整した結果ではありません。諸外国の論文を見てみ ますと、患者さんの重症度等のリスク調整を必ず行っております。ですので、リスク調整 をすることが今後重要になってくると言えます。肺葉切除のみですが、その結果を見ます と、やはり手術件数よりも患者さんのバックグラウンドのファクターの方がアウトカムに 物すごい影響を及ぼしていることが示せましたし、そのバックグラウンドを調整してしま うと、手術件数の効果はわずか、非常に小さい値になっている。統計学的にも有意ではな いということが示されました。  海外での調査結果と比較いたしましたが、そもそも我が国と米国等では疾患の発生率で すとか、重症度の分布、手術件数などが物すごく違うということがわかりました。これは 当然のことであるかと思いますが、その結果から、手術件数がそもそも違いますし、アウ トカムに関しましても、CABGに関しまして、あるいは肺葉切除に関しましても、海外 のデータに比べて日本の方が、生存率が著しく高いと。アウトカムは良好であるというこ ともわかりました。したがいまして、海外における調査結果を直ちに我が国に適用するこ とはちょっと困難ではないかと。もう少しリスク調整した上での結果を検討して、我が国 独自のものを出す方が得策ではないかと考えました。以上でございます。 ○吉田分科会長  大変膨大な、しかも詳細な検討につきまして、ありがとうございます。ただいまの松山 先生の御説明につきまして、どなたか御意見、あるいは御質問はございますか。 ○須田委員  どうも御説明ありがとうございました。ちょっと教えていただきたいのですが、例えば 15ページのスライドの29が一番典型的な例だと思うのですが、手術件数が増加してもそ れほどアウトカムには影響ないということですが、やはり手術件数が少ないと機能改善率 が低くなる施設がばらつく傾向があると思うのですが、これはどういうふうに解釈すれば よろしいのでしょうか。ほかの、例えばスライド33も大体同じような傾向が出ているので すが、これはどのように解釈すればよろしいのでしょうか。 ○松山氏  29枚目のスライドで御説明させていただきますが、横軸の手術件数が少ない場合には、 例えば改善率が10%未満のものが出てくるじゃないかという御質問だと思いますが、これ は件数を分母に持ってきますから、要するに機能改善率は、手術件数が少ないと、1件の 失敗によって物すごく影響を受けるのです。100件以上やっていますと、例えば1件問題 があったとしても、それが数字上、統計学上にはあらわれてこないということです。その 影響を物すごく受けるのが、手術件数が少ないところなんです。ですから、どうしても手 術件数が少ない場合にはばらついたように見えるということなんです。 ○須田委員  リスク要因を考慮すればこんなにはということなんでしょうか。 ○松山氏  そうですね。リスク要因を考慮すると、外れ値といってはいけないかもしれませんが、 手術件数が少ないところでのばらつきによって結果が左右されるということはないと考え ております。 ○須田委員  見かけ上、ばらついているというふうに解釈してよろしいですか。 ○松山氏  そのように思います。 ○福原委員  膨大なお仕事、どうもお疲れ様でした。非常に限られた状況での解析だったと思います。 一番多くのデータが得られたのはこの肺悪性腫瘍手術、個票レベルでのデータが得られて、 しかも手術件数以外のほかのリスク要因で調整することもできたということで、かなりサ イエンティフィックな解析ができたと思います。ちょっと教えていただきたいのですが、 この解析をやったとしても、どの症例をどの手術の適応にするかという、適応のバイアス ですよね。例えば、優しい症例ばかり手術してしまうと成績はよくなって、難しい症例ば かりやると成績が悪くなるという、この適応バイアスに関してはどのように調整すればよ ろしいのでしょうか。 ○松山氏  非常に難しい問題ですね。患者さんのバックグラウンドのファクターで表現できないよ うなさまざまなバイアスに関しては、もちろんこれは調整できていないというところにな ります。一つ参考になるのは、例えば海外ですと、施設の要因ですね。施設側のスタッフ の数ですとか、あるいは極論をいいますと医師の年間の手術件数ですとか、そういった患 者さんの背景要因以外の施設要因といったものも調整する必要がある可能性はあるかと思 います。ただ、今回の結果はそこまでは検討していないということであります。 ○福原委員  あと、質問ではなくてコメントです。これは先生の責任でも何でもないのですが、整形 外科と耳鼻科に関してはアウトカム指標が「改善」と「成功」という非常にあいまいで主 観的なものを使っております。アウトカム指標そのものが適切かどうかというところに疑 問を持ちました。以上でございます。 ○手島委員  先ほどの質問と同じようなことになるのですが、先ほどのスライドの29枚目のところで、 平均値でいうと差がないということになるのですが、ばらつきでいうと、経験の少ないと ころは随分ばらついておりますので、これを逆に患者サイドの立場になってみると、一番 少ないところへ行くと、100%の値があるかもしれないけれども、10%というのに当たるか もしれない。それで考えますと、例えば21以上にすると、多少外れても8割以上になると いうような見方ができるのですが、このあたりについてはどのように解釈すればよろしい のでしょうか。 ○松山氏  これも非常に難しい問題です。29枚目のスライドでまた御説明いたしますが、確かに今 おっしゃられたように、今回のデータでは、21件以上にすると、きれいにどの施設にいっ ても8割以上の改善率が見込めるというのは事実です。ただ、では何件から何件にします かという議論になりますと、残念ながら統計学というのはそこが弱いところなんですね。 何件というのを決めろと言われると、21件というのに統計学的には確証を持つことができ なくなるということです。グラフの見方はまずそのとおりでございます。 ○山口委員  今のばらつきのことですが、症例が少ないほどばらつきが多いのではなく、このようなグ ラフを作れば必ずこのような形になります。たとえば10件以下の施設になりますと、たま たま合併症の出た施設では成績が極端に悪くなります。もし1件しかやっていないところ が1件失敗するたちまち100%だめ、という結果になります。実際には10件以内でまった く失敗がゼロのところがたくさんあるという事実にご注意ください。ですから、このよう なグラフの分布になるのはどんな統計をやっても当然なのです。さきほど松山先生がおっ しゃったように、症例数の少ない施設の施設ごとの成績に分布に幅があるかどうかではな く、10例以下の施設の全件数における全失敗例の比率が症例数の多い施設と差があるかに 一番大きな意味があると思います。ですから、大きな施設でも、病棟ごとに細かく分けて ゆくとそれぞれのばらつきが大きくなるのは当然で、このようなことが示されているだけ だと思います。 ○熊本委員  ちょっと教えていただきたいのですが、CABGの冠動脈の大動脈のバイパス手術につ いてですが、体外循環を使わないオフポンプとか、そういうのもあるかと思うのですが、 そういうのも入っているのかどうか。それは今、福原委員から御質問が出たように、術式 の選択とか、そういうものも関係しているかと思いますし、またリスク調整が必要なんで しょうが、重症度とか、そういったものにも関連するかと思うのですが。 ○松山氏  CABGに関してはすべて含まれております。オフポンプもオンポンプも全部含まれて おります。 ○吉田分科会長  そうすると、体外循環、やった、やらないの区別はしていないということですね。 ○松山氏  そのとおりです。 ○吉田分科会長  そのほかよろしいですか。あと松原先生、中医協で、差し戻しじゃないのですが、もう 一回きちんとしたデータを出せということで再検討したのですが、この程度でよろしゅう ございますか。 ○松原委員  きょうお聞きいたしまして一つ申し上げたいのは、よく1号側が、日本の医療レベルは 非常に低いとおっしゃるわけです。先日のフォーラムでも、日本の医師のレベルは低くて、 その証拠としてアラブからだれも患者さんとして来ないじゃないかと。そういう表現をさ れるのですが、私は医師の代表として、そんなことはないと。日本のレベルというのは世 界最高峰であると申し上げているのですが、なかなかそれを御理解いただけないのです。 きょう見ましたら、1−4のところで、冠動脈、大動脈のバイパス手術において日本は数 字的に極めていいデータを出しているわけです。そこのところで1号側の方々にも十分理 解していただきたいと思っております。これだけ乖離しているから、このようなことをし ても数字的に意味がないんだということも主張していかねばならないと思っております。 また小委員会で十分議論いたします。  ただ、肺がんは、御存じのように、非常に難しいのも事実です。なかなか手術をしても うまくいかない。例えば、早期発見してもなかなか思うような結果が出ないというのも事 実ですから、そういったものもよく考えながら判断しなければならないと思うのです。私 が主張していますのは、手術例だけで考えるのは間違っているから、もう一回やり直すべ きと。むしろ大きなファクターは、そこにいる医者がどれだけの手術例を経験したかとい うことが一番大きな要素ではないかと思っているわけでございます。以上です。 ○吉田分科会長  多分この分科会の先生方は、日本とアメリカを比べて、医療費が半分以下しかないのに これだけすばらしい手術技術を持っているんだということを言いたいんだろうと思うんで すね。 ○茅野委員  バイパス手術で、アメリカと日本で、日本はうんといいじゃないかという結果ですが、 これは日本が待機例でアメリカは連続例じゃないんですか。アメリカには緊急手術が入っ ているのではないですか。 ○松山氏  アメリカは入っております。 ○茅野委員  その差かもしれないですね。 ○松山委員  もちろんその辺の違いはあると思います。 ○松原委員  恐らく一番大きな違いというのは、日本は大きな病気になるまでにちゃんと処理できる んですね。アメリカというのは保険がないですから、本当に最終的に緊急で詰まってしま ってから病院に担ぎ込まれるという例が多いということが一番大きな要素で、ここは私ど も、1号側といつも議論しているのですが、日本というのはアクセスがよくて、それまで の予防をきちんとして対応しているから大きな病気にならなくて済むんだということを申 し上げているわけでございます。そこのところが今のお話しと合致するところでございま す。 ○吉田分科会長  確かにアメリカですとドクターヘリが相当たくさんありますので、重症化してすぐ運ぶ のでしょうが、日本はまだまだそこまで行っていませんから。  そのほかはよろしゅうございますか。この手術施設基準。松原先生、平成14年のとき にこの施設基準が突然170と言われて、外保連を中心に大変反論したのですが、なぜこう いうデータがなく、平成14年4月に突然あれは出たんですかね。 ○松原委員  恐らくそのときの医療課長の非常に大きな偏見ではないかと私は思っているのですが。 やはりそこのところは正しい形に直していただかないと。医学的な根拠に基づいて判断し ていただかないといけないのではないかと思います。ぜひ、これは一たん消しまして、そ してこの考え方自体は間違っておりませんので、そこのところに、手術件数だけではなく て、中にいる医者とか、その他の要素を十分に加味した上で、医学的な根拠のもとに分類 を行うべきだと思っております。 ○吉田分科会長  あと山口先生、こういうデータは初めてですか、外保連として。アウトカムの検証とい うのは。 ○山口委員  各学会では持っていたのですが、こういうふうにまとめたのは初めてだと思います。 ○茅野委員  考え方方向は間違っていないのでしょうが、2つ気になることがあります。統計で有意 差が出ないということは“わからない”ということであります。つまり、例えばスピード 違反で、「あなたは60キロオーバーですから罰金払ってください。ほら、この証拠」とい うのが通用しているのに、この理屈は、「60キロ以下で走っていた証拠がないから罰金を 払え」と言っているようなもので、おかしいじゃないかという根本的な話があったと思い ます。第2に、“下手だったらやめろと言え”、安いならやってもいいというのはおかし いじゃないかといつも山口先生はおっしゃっている。実施過程がどうかなと思うんですけ れども。 ○吉田分科会長  そのほかございますか。ちょっと時間がありますので。よろしければ、松山先生のこの 詳細なデータを中医協の基本問題小委員会に報告したいと思います。ただ、この分厚いデ ータですと時間がありませんので、技−1−4に事務局で簡単にまとめたものがあります ので、この資料について説明をお願いします。 ○事務局(佐原医療課課長補佐)  それでは診調組・技−1−4をおあけください。先ほどの松山先生からの報告をもとに 事務局の方で整理させていただきました。手短に読ませていただきます。技術評価分科会 の会長名で吉田先生の方から御報告いただく案文でございます。  今般、中医協基本問題小委員会からの付託を受け、「手術件数とアウトカムの関係に係 る調査」について、当分科会において詳細な評価・検証を行ったので、その結果を報告す る。  「手術件数とアウトカムの関係に係る調査」に係る評価・検証結果の詳細は別紙のとお りであるが、その概要は以下のとおりである。  本年8月31日の中医協基本問題小委員会への本調査結果の報告において、一部の手術 (人工股関節置換術)を除き手術件数と手術成績が相関するとはいえないとされたが、医 療技術評価分科会において統一的な統計的解析手法を用いてより詳細な分析を行った結果、 人工股関節置換術以外にも幾つかの手術において統計学的な有意差が認められた。  しかしながら、統計学的な有意差が認められた手術における手術件数の増加に伴う手術 成績の改善の程度はわずかであり、手術件数の増加により手術成績がよくなると積極的に 解釈することは困難であると考えられた。  当該調査においては、肺悪性腫瘍手術を除き、患者の重症度等についてはデータが得ら れていないことから、手術件数と手術成績の関係を明らかにするためには、患者の重症度 等を考慮した調査の実施が必要であると考えられた。  また、米国等では手術件数とアウトカムの関係について、一定の関係があるとのデータ も得られているが、我が国と米国等では、患者の疾病罹患率や重症度割合が異なり、年間 に実施される手術件数に格差があり、また手術成績の平均的な水準ついても乖離(冠動脈、 大動脈バイパス手術における周術期死亡率について、我が国は米国に比べ極端に低かった) が見られる等、状況が異なることから、米国等における調査結果を直ちに我が国に適用す ることは困難であると考えられた。  以上のことから、今後我が国において手術件数と手術成績の関係を明らかにするために は、手術件数と手術成績に関するさらなる調査を実施し、手術件数の増加に伴う手術成績 の改善の程度について定量的に把握することが必要であると考えられた。  以上でございます。 ○吉田分科会長  この技−1−4の文章の中で、どなたか、これはこうしろということはございますか。 ○大江分科会長代理  大筋では、先ほどの松山先生の報告を反映していると思いますが、一つ、場合によって はつけ加えるべきではないかと考えられることは、3つ目のポツの部分になりますが、「患 者の重症度等についてはデータが得られていないが、仮に重症度等を考慮したリスク調整 をすれば、前述の改善程度はさらに小さくなることが予想され」というようなことを入れ ていただくのが、統計学的には適切ではないかと思います。 ○吉田分科会長  先ほど松山先生、おっしゃいましたものね。いかがですか。 ○松山氏  そのとおりです。 ○吉田分科会長  事務局、わかりますね。ではこのポツの3番目についてはさらに文言を追加して強調す るということですね。そのほか、よろしゅうございますか。 ○山口委員  それと関連するのですが、最後のポツのところの、手術件数と手術成績の関連をさらに 調査ということをやっても、これだけではだめであるということが示されたと思います。 したがって、調整リスク因子などについてもさらに調査すべきであるという結論になると 思います。 たとえば、松山先生にお示しいただいたスライドの47、肺がんの死亡ハザード比をみ ても、症例数などは微々たる物ですが、ステージになるとそれが6.64などとべらぼう に大きな影響を成績に与えます。件数だけではだめで、そのような背景因子をきちん と一緒に調べなさいという結論にしていただくべきだと思います。 ○吉田分科会長  結論的には、手術件数と成績は関係ないんだということですので、むしろ調整したもの についてさらに検討するということですね。よろしいですか。 ○山口委員  つまり、松山先生にお示しいただいたスライドの47、肺がんのときの死亡ハザード比を 見ても、ステージなんていうのだとけた違いに、6.64とかべらぼうに、これがちょっと変 わるだけで変わってしまうわけで、そういう背景因子をきちんと一緒に調べないと、件数 だけではだめだということを明らかにして、それも調べなさいという形にしていただくと ありがたいと思います。 ○吉田分科会長  件数だけではなくて、さらに調査する場合には調整をしてさらに検討すべきだというこ とですね。そのほか、よろしゅうございますか。 ○福原委員  先ほども申し上げたのですが、さらなる研究をする場合には手術適応に関するバイアス に配慮すること。アウトカム指標を客観的なものにすること。それから、待機手術だけで はなくて、急性にあるような疾患も含めた検討が必要であることを加えていただきたいと 思います。 ○吉田分科会長  最後のポツですね。そのほか、よろしゅうございますか。御意見がなければ、きょう御 了解いただきまして、松山先生の膨大な資料の最後に要約案として中医協基本問題小委員 会に提出したいのですが、いかがですか。 ○松原委員  これを1号側が読みますと、やはり根拠があるんだというように一番上は読めるのです が、幾つかの手術というのは、実際上幾つだったんでしょうか。 ○松山氏  数でいえば、肺がん、肺がんはリスク調整するとないということになりますが、CAB G、産婦人科、整形外科、3つの学会では一応統計学的には有意差がついております。で すから6個学会があるうちの3つは、一応わずかながら統計学的には効果はあったと。 ○松原委員  術式が3つということですか。 ○松山氏  術式でいいますと、CABG、卵巣がん、整形外科が2つですね。ですから4つです。 ○松原委員  むしろそれはきちんと書いていただかないと、1号側がこれを見て、やはり根拠がある んだという主張をしてまいりますので、そこのところは具体的に数字を挙げていただいた 方がよろしいのではないかと思うのですが。全体で幾つだったんでしょうか。 ○松山氏  9個の術式があるうちの4つということになります。 ○松原委員  調べたのは9個ということですか。 ○松山氏  そうです。9手術だけです。 ○茅野委員  確かに、松原先生がおっしゃるように、これは誤解を招くと思います。統計的には、手 術死亡率を手術件数で説明するモデルはほとんど意味がないというのが皆さんの結論では ないかと思うので、そういう書き方の方がいいのではないかと思うのですが。 ○松山氏  アウトカムに対して手術件数というのはいい指標かどうかというのは、それはわからな いということがわかったのかもしれませんけれども。 ○茅野委員  説明力はほとんどないと。 ○松山氏  ないということなのかもしれません。 ○茅野委員  それを最初に書かないと、初めて読む人は……。 ○松原委員  むしろそう書いていただかないと、1号側の方々、皆さん医学的な素人ですので、我々 は統計学とか、医学とか、いろいろなことがわかって議論していますけれども、これだけ 読みますと、やはり根拠があったんだなという話になりますので、ぜひ結論のところはわ かりやすく、今回の手術件数では意味がなかったということが医学的な知識のない方にも よくわかるような文章にしていただきたいと思うのですが、それでよろしいでしょうか。 ○吉田分科会長  それでいいですか。では事務局、大分修正がありましたので、修正してお出しすると。 ですから、要するに1号側というのは素人ですので、わかりやすい数値を出すとか、そう いうデータを出して説明しなければわからないだろうと。ですから、統計学的な有意差が あったと言ってしまったら、確かにそう思いますものね。有意差があったのに何で相関が ないんだと言いますので。では後で事務局と相談して、今出ました意見を踏まえて提出し たいと思います。この件に関しては中医協基本問題小委員会に修正した技−1−4をつけ て提出します。 【議題2】 ○吉田分科会長  続きまして、大切な医療技術評価・再評価について、今回、希望書という書式を決めま して、各学会から約940の希望書が集まりまして、基本問題小委員会でも了解を得ました ように5つのグループに分けまして、諸種専門家を集めて検討しましたので、その資料に ついて事務局から御説明、お願いします。 ○事務局(佐原医療課課長補佐)  資料は診調組・技−2−1、2−2、2−3ということになります。まず2−1につい て御説明いたします。医療技術の評価、あるいは再評価、1次評価結果についてというこ とで、これまでの検討状況ですが、再度おさらいをいたしますと、昨年11月の基本問題小 委員会で診療報酬における医療技術の適正な評価の観点から、当分科会において学会等か ら提出される医療技術評価希望書に基づきまして、新規医療技術の評価及び既存医療技術 の再評価を行うこととされたところです。  これを受けまして、厚生労働省の方で昨年2月から本年6月にかけまして関係学会から 合計641件、これはダブりがありますので、ダブりを入れますと942件になりますが、641 件の医療技術の評価・再評価希望書が当省に提出されたところでございます。  さらに本年5月に当分科会におきまして、この評価につきましては1次評価及び2次評 価という形の2段階評価で評価を実施することというふうにされたところでございます。  次に2のところですが、1次評価の実施方法につきましては、既に5月の分科会のとき に御了解いただいておりますが、保険診療に精通した医学、歯学、薬学、看護学等の有識 者で構成される以下の5分野のワーキンググループを設置し、評価を行ったところでござ います。ワーキンググループの1から5の分野につきましてはそれぞれここに書いてある とおりでございます。  その結果でありますが、3に書いてありますとおり、医療技術評価希望書として提出さ れましたのは641件、重複分をカウントしますと942件ということでございました。ワー キンググループでの検討の結果、引き続き検討していくことが適当とされた技術として 271件。この内訳は新規技術が130件、既存記述が141件ということでございました。そ れ以外のものとしては280件ございました。なお、本医療技術評価分科会の評価の対象は 原則として検査、あるいはその手術料等に係る部分ということでございまして、以下、点 数表で行きますと、基本診療料、指導管理等、在宅医療に関する技術については原則とし て調査の対象外ということでお知らせをしておりましたが、90件ばかり各学会からそうい うものに該当するものも提出されましたので、参考までにこれはつけてございます。  1枚めくっていただきまして、注の1というのは、引き続き検討することが適当とされ た技術のうち、この中には既に高度先進医療に該当しているものが7件、中医協基本問題 小委員会において既に検討が行われているものもありますので、高度先進については高度 先進の専門家会議の方で御議論いただくということ、また中医協で既に御議論いただいて いる点も含めまして、今後、2次評価の対象とはしないというふうに考えております。注 の2は、先ほど申しました基本診療料、指導管理等、在宅医療に係る90件については、医 療技術評価分科会の対象とはなっておりませんので、除外としております。  参考までに、平成16年度の診療報酬改定における状況を書いております。御要望があり ました件数が580件。このうち保険導入された技術は31件、新規技術7件、既存技術24 件という状況でございました。  次ですが、診調組・技−2−2をおあけいただきたいと思います。このワーキンググル ープでいろいろ御議論をいただきました結果をまとめております。この資料はまず別紙1 −1というものが1ページ目から4ページ目になっております。これが引き続き検討する ことが適当とされた新規の技術というものでございます。5ページをおあけいただきまし て、別紙1−2と頭に書いてありますが、5ページから8ページまでが引き続き検討する ことが適当とされました既存技術というものでございます。  したがいまして、これらに漏れたものとして、9ページから別紙1−3とありますが、 その他の新規の技術、14ページからがその他の既存の技術ということでございます。17 ページが別紙1−5になりますが、これは本技術評価分科会の対象外となりますが、基本 診療料、指導管理等、在宅医療に関する要望項目として各学会の方からいただきましたも のを参考までにお示しをしております。  続きまして診調組・技−2−3をごらんいただきたいと思います。ワーキンググループ の方で引き続き検討することが適当と考えられた技術の例ということで幾つか御紹介をさ せていただきたいと思います。まずIですが、新規技術に関しましては、(1)医療機器 決定区分C2というのがありますが、新機能、新技術に関する技術というもので、本年11 月の中医協総会におきまして、決定区分C2として承認された医療機器を使用する医療技 術、具体的にはPET/CT、痙性麻痺治療薬のポンプ設置術、経皮的心房中隔欠損閉鎖 術等でございますが、これらについてが入っております。  また2つ目ですが、内視鏡下手術等ということで、ここに書いてありますようなもの。 そして3つ目、臓器移植ということで、これも別紙1−1の方に含まれてございます。な お、臓器移植については現在、角膜移植、腎移植、肝移植について保険適用とされている ところでありますが、死体肝移植、心移植、膵移植については、高度先進医療とされてい るところでございます。  したがいまして、この高度先進医療につきましては、次のページですが、高度先進医療 専門家会議におきまして特定承認保険医療機関からの実施報告に基づき、今後効果測定を 行い、その結果を中医協へ報告するということとされておりまして、保険導入に当たって の技術的問題等については、こちらの分科会ではなくて高度先進の専門家会議の方で御検 討いただくということになっております。  引き続き検討することが適当とされました、II既存技術でございますが、これらはすべ て例でございます。コンピューター断層診断装置の再評価。コンピューター断層診断撮影 については血管腔等を描出した場合に限り、現在はヘルカルCT、マルチスライスCT、 1.0テスラ以上のMRIなど、診断機器の性能を踏まえた評価が行われているところであ りますが、近年、この機能が飛躍的に向上していること等から、コンピューター診断につ いて、診断機器の機能を踏まえた再評価を行うべきではないかというような御要望でござ います。  内視鏡下手術の再評価につきましては、医療技術の進歩に伴い、従来は開腹や開胸で実 施されていた手術が患者への侵襲を軽減する観点から、内視鏡を用いて実施されるように なり、現在、さまざまな手術が保険適用されていると。しかし、これまで個々の技術が異 なる時期に保険導入されたことから、特定の技術については、内視鏡を使用しない手術と 同じ評価になっているなど、必ずしもその評価が統一的な体系となっていないという指摘 があると。こうしたことを踏まえて、内視鏡下手術について再評価を行うべきとの御要望 というものでございます。  3番目ですが、同一手術野等における手術の再評価ということで、同一手術野における 複数手術に関しましては、主たる手術の所定点数により算定することとされておりますが、 去る平成12年の診療報酬改定において、特例の手術が定められ、これら手術におきまして は、主たる手術及び従たる手術の50%の点数を合算し算定することとされております。し かし、医療技術の進歩に伴い手術の術式等が多様化する中で、同一手術野等において実施 される手術においてもさまざまなものが行われるようになってきておりまして、こうした ことを踏まえて、この評価のあり方について再評価を行うべきという御要望でございます。  IIIですが、診療報酬項目の削除を検討してはどうかという御要望もいただいております。 医療技術の陳腐化や新たな科学的知見により、医療現場においては既に実施されていない、 または臨床的な意義がほとんどなくなっていると考えられる項目については、その削除を 検討してはどうかということで、引き続きその削除について検討していってはどうかとい うことの項目は3ページにお示ししていますヘモグロビンA1測定以下の項目となってお ります。  とりあえず以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○吉田分科会長  膨大な資料を諸種検討しまして、このように分類いたしました。これはきょう、いかが かといってもなかなか膨大ですので、個々についてはまた改めて次回の分科会で御検討い ただきます。この資料を中間報告として基本問題小委員会に報告したいのですが、いかが ですか。これはワーキンググループで評価が高かったものが引き続き検討することが適当 といわれた新規技術です。再評価というか、点数の見直しをしてくれというのが5ページ の既存技術です。先ほど事務局から説明のありました指導料については、これはむしろ中 医協本体でもって検討する項目ではないかということで、この90件についてはこの分科会 では検討しないということにしたいのですが、いかがですか。松原先生、それでいいです か。 ○松原委員  指導料につきましては、そのまま資料を上げていただきました各学会の御意見として、 私ども、非常にそれを尊重しながら1号側と話をするつもりでございます。 ○吉田分科会長  ではこの資料全部上げてよろしいですか。 ○松原委員  ぜひ上げていただきたいと思います。 ○吉田分科会長  わかりました。そのほか、よろしゅうございますか。今、この640件全部確認しろとい っても無理ですので、さっと見ていただいて、よろしければこの資料すべて、これ全部、 希望書を集計したものでございます。どれも隠してございません。それを基本問題小委員 会に上げて、松原先生中心に御検討いただくと。その間に、次回の分科会でこの詳細につ いて再度先生方の御了解を得ますので、事務局でもっとわかりやすく区分したいと思いま す。  時間がありますので、私と事務局に分類区分の方法について1、2点いただけますか。 よろしければ次回の分科会に提出するように、もっとわかりやすく集計したものを事務局 と私で相談して御提出します。その間、臨床の先生方、7名おりますので、この先生方に 随時御相談すると思いますので、その節にはお逃げにならないで、ぜひ答えてください。 ワーキンググループの中にも50名の専門家がおりますので、細かい点についてはその50 名の方にも了解をとってございます。何かあったら事務局から問い合わせをするので、ぜ ひ答えていただきたいと言ってございます。  一応、きょう提出した議案、手術に係る施設基準についての調査結果と、今出ました医 療技術評価・再評価について。ここで、既存の技術で使わないというものを自主的に各学 会が出してくれたんですね。戦後50年たって、古い技術がいっぱいあったということで、 16項目について自主的に学会から、これはもう使っていませんという技術として提出され ております。 ○手島委員  取り扱いについては、異論はございませんが、ちょっと一言コメントだけさせていただ きたいのですが、技−2−2の資料の6ページでございますが、引き続き検討することが 適当とされた既存技術ということの73番に、投薬期間に上限が設けられている医薬品の規 制緩和というのがございます。技術評価とは関係ないのかもしれませんが、結局これは緩 和されますと、長期の向精神薬の処方せんが出るということになるのですが、最近、コピ ー技術が発達しておりますので、その種のものの偽造の処方箋が出て、かなり受け入れの 薬局の方で苦慮しているようでございますので、その辺、もし御勘案できましたら、お願 いしたいと思います。 ○吉田分科会長  わかりました。この期間限定については医師会の方からも調査しろと言われていまして、 資料を提出してございます。向精神薬については確かに、たくさんもらって売っちゃうや つがいるんですよね。そういう弊害があるので、多分前回のときには非常に厳しく14日と なったと思うのですが、中には1年分処方というのが結構あるんですよ。ほかの薬でです ね。抗生物質半年分とかですね。それは松原先生が指摘されまして、私の方から資料を提 出して中医協で検討してもらいます。また詳しいことは次回やりますので、お持ちいただ いて、ごらんいただいて、この辺特に強調したいというところを次回のときにまたお出し ください。次回のときにはわかりやすく事務局でまたこれをまとめますので、よろしくお 願いします。  時間がぎりぎりだと思ったら30分余っていますが、事務局から何か追加はありますか。 では確認で、先ほど、施設基準のやつはいろいろ意見のあったものをまた加えて、概要に 入れてくれますか。医療技術については、そっくりそのまま中間報告として中医協にお出 しいたします。中医協の基本問題小委員会でも諸種検討いただいて、指導料に関しては一 応学会で出たものはすべて載せてございますので、その判断については基本問題小委員会 で御説明いただくと。ここでは結論を出さないということでよろしゅうございますね。  もし御意見がなければこれで本日の会議を終了したいと思います。次回について、もう 一回やりまして、来年の保険改正に、これは大変重要な事項ですので、もう一回分科会を 開いて、また基本問題小委員会に上げて、最終的にはそちらで検討いただくと。  今後の予定について事務局からどうぞ。 ○事務局(佐原医療課課長補佐)  次回の日程につきましてはまだ決まっておりませんので、なるべく早く日程調整をさせ ていただきまして、また御連絡をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたし ます。 ○吉田分科会長  ですから、年内か、来年か、最終的な予算ができた時点でまたどうなるか決めますし、 これは例の医療経済はすべて無視してつくってございますので、これはいいよといっても、 医療費がかさむ場合にはなかなか通れませんので、その辺は随時、臨機応変に検討したい と思います。特に各学会から、マスコミが5%ダウンだとか、3%ダウンだとか騒ぐもの ですから、本当にこの技術が収載されるんですかという質問がいっぱい来るのですが、そ れに関してはわかりませんとしか答えてございません。財源がないのに全部出せというこ とは無理ですし、またこの271件あって、すべてそれでは収載するかというと、それは物 理的に無理ですので、その中から諸種絞っていって、先生方に意見を聞きながらまた絞っ ていきたいと思いますので、よろしく御協力をお願いします。 ○松原委員  一ついいですか。先生におまとめいただくということでよろしいかと思うのですが、ぜ ひ、選に漏れたものの中にも大事なものもございますので、内保連と外保連、そういった 専門的に議論しているグループの御意見も十分に踏まえた上で御判断いただきたいと思い ます。 ○吉田分科会長  わかりました。 ○野末委員  一点なんですが、手術件数のアウトカムの調査結果の出し方についていろいろ御意見が あって、松山先生が調査結果をこのようにまとめてくださったわけですが、その結果の出 し方について先ほど御意見がいろいろあったのですが、やはり調査結果は結果として出し ていただいて、その結果を踏まえてどのようにそれを読みとるかというのはその専門組織 の中で結論を出すというような形にするのが私は望ましいというふうに思っています。修 正の仕方なんですが、余り方向性を何か決定するようなことで調査結果自体の結果のまと め方をアレンジし過ぎるというのはやはり好ましくないと思いますので、先ほどのやり取 り、誤解を生じるような部分もあるかと思って、気になりましたので、そのあたりは、そ の調査結果を受けて、専門組織としての提案としてはそれをどう読みとったのかというふ うな形で出すのが妥当ではないかなというふうに思うのですが。 ○吉田分科会長  ですから先ほど、技−1−2に関してはいろいろ修正がございますので、できるだけこ の分科会として強調する部分を出しなさいということですし、将来の調査についても、手 術件数と成績は関係ありませんよと。だからむしろもっと詳しくやれという場合にはバッ クグラウンドをきちんと考えてやりましょうということですから、それで文章の中につけ 加えますので。よろしいですか。だから、これだけ出すというのは、確かに、相関あるん じゃないかと言われちゃいますので、こっちの技−1−4の文章の中に入れます。よろし いですか。 ○松原委員  素人の方にもわかる意見を専門家として述べねばならないということを申し上げたので、 そのような形にしていただきたく思います。 ○野末委員  それはよくわかっていて、そのように表現するのはよいというふうに思うのですが、こ ういった方向でという形のように先ほどちょっと聞き取れるような部分もあったかなとい うふうに感じましたので。結果は結果として出していくということですよね。それを踏ま えて委員会としてはこういうふうに考えると。そこの考えるところはいろいろな意見交換 をしたところで出していくのはもちろん必要なことだと思いますので。 ○吉田分科会長  ですから、1号側は理解できなくて、もう一回こういう調査をこの分科会でしろと言わ れる可能性もあります。そう言われた場合には、この分科会しかありませんので、またお 願いするかもわかりません。よろしいですか。 ○野末委員  結構です。 ○吉田分科会長  では、時間は早いですが、これで終了いたします。ありがとうございました。 【照会先】 厚生労働省保険局医療課企画法令第2係 代表 03−5253−1111(内線3276)