05/12/01 労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会第17回議事録 第17回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会 1 日時 平成17年12月1日(木)16:00〜 2 場所 厚生労働省専用第18〜20会議室(17階) 3 出席者  〔委員〕    公益代表  西村委員(部会長)、石岡委員、稲葉委員、岩村委員、          金城委員、那須委員    労働者代表 佐藤委員、高松委員、内藤委員、真島委員、          中桐氏(須賀委員代理)、吉田氏(寺田委員代理)    使用者代表 泉川委員、紀陸委員、杏委員、下永吉委員 4 議題  (1)労働安全衛生法等の一部を改正する法律について (2)労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する 省令案要綱について(諮問) (3)労災保険率改定方針等について (4)石綿による健康被害の救済に関する法律(仮称)案大綱について 5 議事 ○部会長(西村)   ただいまから第17回労災保険部会を開催します。本日は早川委員、平山委員 が欠席です。岩村委員、内藤委員、下永吉委員は遅れます。須賀委員、寺田委員 から代理者の出席の申出がありましたので、本日は須賀委員の代理として中桐孝 郎氏、寺田委員の代理として吉田和道氏がそれぞれご出席です。事務局で人事異 動がありましたので、自己紹介させていただきます。 ○主任中央労災補償監察官(田村)   10月1日に主任中央労災補償監察官になりました田村でございます。よろし くお願いします。 ○部会長   議事に入る前に、労災補償部長よりご挨拶があるとのことですので、お願いし ます。 ○労災補償部長(森山)   皆様方にはお忙しいなか、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。 本日は4つの議題をお願いしています。その内容については後ほど担当のほうか ら説明させていただきます。それぞれの議題が労災補償行政にとって大変重要な ものですので、限られた時間ですけれども、皆様の忌憚のないご意見を賜りまし て、今後の労災補償行政に活かしていきたいと考えています。簡単ですがご挨拶 に代えさせていただきます。 ○部会長   議事に入ります。本日の議題は、「労働安全衛生法等の一部を改正する法律に ついて」「労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正 する省令案要綱について」「労災保険率改定方針等について」「石綿による健康被 害の救済に関する法律案大綱について」です。1つ目の議題、「労働安全衛生法 等の一部を改正する法律について」事務局からご報告をお願いします。 ○労災管理課長(中沖)  先の特別国会に提出した「労働安全衛生法等の一部を改正する法律」の成立及 び公布についてご報告します。資料1−1に今回の審議経過が書いてあります。 この法律の内容のうち、労災保険制度に関する部分はご存じのとおり、通勤災害 の保護対象の拡大及び有期事業のメリット増減幅の拡大です。  審議経過については、前回の労災保険部会でもご報告申し上げたわけですが、 この法案は今年の通常国会に提出したものの、8月8日、衆議院が解散になり廃 案となりました。政府として先の特別国会に再度法案を提出して、10月26日に 成立、11月2日に公布されたところです。具体的な内容については、資料1− 2、1−3にありますが、これは後ほどご参照いただきたいと思います。  次に資料1−4ですが、これは衆議院及び参議院での附帯決議です。両方とも ほぼ同じ内容のものです。労災に関するものとして、第1点目として複数就業者 に係る給付基礎日額の算定方法については、その賃金の実態を調査した上で早期 に結論を得ること。2つ目に、有期事業におけるメリット制の改正にあたっては、 いわゆる労災かくしの増加につながることがないよう、建設業関係者の方から意 見を聴く場を設けるなど、そういった措置を図るとともに、建設業の元請けの安 全管理体制の強化・徹底等の措置を図り、労災かくしを行った事業場に対しては 司法処分を含め厳正に対処すること。この2点です。  今後、こうした附帯決議等を踏まえ、できる限り速やかに対応を行ってまいり たいと思っていますので、よろしくお願いします。また次回の労災保険部会にお いては、この改正法の来年4月1日の施行のための省令改正案の要綱について、 ご審議いただきたいと考えていますので、引き続きよろしくお願いします。以上 です。 ○部会長   本件について何かご質問等ありましたら、お願いします。特になければ当部会 として「労働安全衛生法等の一部を改正する法律について」、報告を承ったこと にしたいと思います。  次に2つ目の議題ですが「労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行 規則の一部を改正する省令案要綱について」、事務局から説明をお願いします。 ○補償課長(明治)   省令改正案の要綱について、まず課長補佐から読み上げをさせていただきます。 ○補償課長補佐(渡辺)   読み上げさせていただきます。  労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改正する省 令案要綱  第一、障害補償並びに障害補償給付及び障害給付に係る身体障害の障害等級の 見直し  一、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)に基づく障害補償並びに労働 者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)に基づく障害補償給付及び障害 給付を行うべき身体障害の等級について、脾臓又は腎臓の喪失に係る等級の見直 し、胸腹部臓器の障害に係る等級の新設及び用語の整理を行うものとすること。  第二、施行期日等  一、この省令は、平成十八年四月一日から施行するものとすること。  二、この省令の施行に関し、必要な経過措置を定めるものとすること。  以上です。 ○補償課長   引き続き「労働基準法施行規則及び労働者災害補償保険法施行規則の一部を改 正する省令案」の概要について、ご説明を申し上げます。資料2の参考1をご覧 ください。労働者が業務上又は通勤により傷病を被った場合に、療養補償給付等 の必要な保険給付が支給されることになりますが、業務上又は通勤による傷病が 治ゆした後に身体に障害が残った場合には、障害(補償)給付が支給されること になっています。この障害補償給付は残存する障害の程度に応じ、1級から7級 までを年金として、また8級から14級までを一時金として保険給付を行うもの です。  その障害の程度及び給付内容については、労働基準法施行規則別表第二の身体 障害等級表、及び労働者災害補償保険法施行規則別表第一の障害等級表に定めら れているところです。本日、お諮り申し上げる身体障害等級表及び障害等級表の 一部改正の内容は、胸腹部臓器の障害に関するものです。  その内容としては、第8級の11に定めている「ひ臓又は一側のじん臓を失っ たもの」の定めを削除すること。11級の障害に達しない障害に当たる13級の定 めを新設すること。さらに第11級の9、胸腹部臓器に障害を残すものとされて いる用語を整理すること。以上3点です。  なお、施行日については、平成18年4月1日とすることにしています。施行 に伴う経過措置として、改正後の障害等級については施行日以後に傷病が治ゆし た者、すなわち障害補償給付の支給事由が発生した者に適用することとしていま す。したがって、施行日前に傷病が治ゆした方については、改正前の障害等級表 を適用するということにしています。  今回の身体障害等級表及び障害等級表の一部改正は、本年9月30日付で報告 された「胸腹部臓器の障害認定に関する専門検討会」の検討結果を踏まえたもの です。そこで改正に至る経緯等について引き続き説明させていただきます。  専門検討会報告書における障害等級に係る検討結果の概要等について、簡単に 説明します。前回の労災保険部会において、胸腹部臓器の障害認定に関する専門 検討会報告書案の概要等について、中間的な報告を申し上げました。そこで部会 長から、報告書案に基づいて取りまとめ作業を進めていただきたいというご意見 をいただいたところです。  このことを踏まえ、9月12日に開催した最終の専門検討会において、中間報 告を申し上げた報告書案における障害の評価のとおり、検討結果が取りまとめら れたところです。なお、専門検討会報告書における障害等級に係る検討結果の概 要については、資料として参考2に整理しています。また専門検討会報告書その ものについては、参考3としてお配りしています。これらについては、前回の労 災保険部会でお配りした資料と内容的に同一ですし、また時間の関係もあり説明 は省略させていただきます。後ほどご参照いただければと思います。  今回、お諮り申し上げる障害等級表の一部改正については、先ほど申し上げた とおり専門検討会における検討結果を踏まえたものですが、その内容は第8級の 11の規定の削除、あるいは13級の新設及び11級の用語の修正ということです が、胸腹部臓器の障害等級13級の新設ということについて説明を申し上げます。  資料2の参考4をご覧ください。ここにありますとおり現行の障害等級表上、 胸腹部臓器の障害については1級から11級までということで、第11級が最も下 位の等級となっています。したがって、これに満たない程度の障害については障 害補償給付の対象とはなっていません。  その理由ですが、これは障害等級表が定められた昭和22年当時の医学的な知 見、あるいは検査技術の水準等からして、11級に相当する程度の障害がなけれ ば障害として明確に評価することができなかったということによるものです。た だ、その後の医学的知見、あるいは検査手技の進展により、11級に相当する障 害よりも軽い障害についても客観的な指標により、評価することが可能となって きています。こうしたことから第11級よりも下位の障害等級として、新たに13 級を設けることにしたということです。このことにより、これまで障害補償給付 の対象とならなかった11級に満たない一定程度の障害を残す方についても、障 害補償の対象となるということです。  2点目に、胸腹部臓器の障害等級11級の用語の修正について説明します。現 行の胸腹部臓器の障害等級第11級の9に定めていますが、ここには「胸腹部臓 器に障害を残すもの」というふうに規定しています。これについては先ほど申し 上げた、新設する13級の規定の障害等級上の上位、下位の関係を明確にするた めに、用語を改めるということにしています。ただ、この障害11級については、 あくまでも現行規定の用語の整理に留まるということで、11級が対象としてい る障害の範囲等に変更を及ぼすというものではありません。  3点目ですが、ひ臓又は一側のじん臓を失ったものの規定の削除について説明 します。ひ臓を失ったものについてですが、ご案内のように、ひ臓は人体最大の リンパ器官ということで免疫機能に影響を与える臓器です。現在、ひ臓を失った ものを8級としていますが、これは障害等級表が制定された昭和22年当時、免 疫機能の異常等を客観的に評価できる指標がなかったということから、後遺症状 の有無あるいは後遺症状の程度にかかわらず、ひ臓の亡失をもって免疫機能の半 分を失ったというふうにみなして、評価したものと考えられるところです。  しかしながら、専門検討会における検討結果においては、ひ臓を失った場合の 後遺症状は現在の医学的知見からすると、肺炎やインフルエンザ等の感染症に罹 患しやすいという程度のもので、11級よりも下位の等級で認定することが適当 で、現在8級として規定していることは不適当であるとしています。  なお、現在の厚生年金保険法あるいは国民年金保険法の障害認定基準、及び身 体障害者福祉法の身体障害認定基準のいずれにおいても、ひ臓を亡失したものに ついて障害に該当するとはしていません。また諸外国の例を見ても、イギリス、 イタリアの評価は、労災保険の障害等級第14級に相当するもので、ひ臓の亡失 を現行の労災保険の障害等級表のように高く評価しているものは見当たりませ ん。  一側のじん臓を失ったものについて説明します。じん臓は異物や水分等を排泄 することにより、体内の体液の恒常性を保つ上で重要な働きをしている器官です。 現在、一側のじん臓を失ったものを8級としていますが、これは先ほどのひ臓と 同様に、障害等級表が制定された昭和22年当時、じん臓の機能の低下を客観的 に評価することができなかったということから、特段の症状がなくても、2つあ るじん臓のうち1つのじん臓を失ったことをもって、じん臓の機能である排泄機 能の半分を失ったとみなして評価したものと考えられるところです。  これについても専門検討会における検討結果では、一側のじん臓を失い、かつ じん機能の低下がない場合、その後遺症状は現在の医学的知見からすると疲れや すくなるという程度のものであり、11級よりも下位の等級で認定することが適 当である。8級として規定している現行の規定は不適当としているところです。  なお、一側のじん臓を失ったものは、ひ臓を失ったものと同様に現在の厚生年 金保険法、国民年金保険法、及び身体障害者福祉法のいずれの障害認定基準等に おいても、一側のじん臓の亡失のみをもって障害に該当するとはされていません。 さらに諸外国の例を見ても、イギリスの評価は労災保険の障害等級13級から14 級に相当するとしています。ドイツでの評価は労災保険の13級から11級に相当 するものとされていて、一側のじん臓の亡失を現行の労災保険の障害等級表のよ うに高く評価しているものはないところです。  このようなことから、8級の11の「ひ臓又は一側のじん臓を失ったもの」の 規定を削除するということにしています。なお8級から削除する、「ひ臓又は一 側のじん臓を失ったもの」については、新設する13級として認定することとな ります。  障害認定基準等の見直しについては、医学専門的事項に係るものですので、医 学専門家による検討が中心となります。今回の胸腹部臓器の障害認定基準等の見 直しにあたっては、以前、この労災保険部会からいただいた、今後の障害等級の 見直しにあたり被災労働者の就労実態の確認、あるいは患者団体からの意見聴取 を行うべきであるというご指摘を踏まえ、ひ臓又は一側のじん臓を失ったことに より障害等級の認定を受けられた方、及び関連する患者団体等からご意見をお聴 きしています。今回、ご意見を伺った患者団体の名称、意見の内容等については 資料2の参考5に示していますので、ご覧いただきたいと思います。  このうちじん臓については、2つの患者団体に対して意見を求めましたが、特 段の意見は表明されていません。また、ひ臓については意見を求める適当な患者 団体が見当たらなかったということから、ご意見はお聴きしていません。さらに、 ひ臓又は一側のじん臓を失ったことにより障害等級の認定を受けられた方から は、後遺障害による作業効率の低下等、労働への支障等についてお伺いしたとこ ろですが、「支障がない」のほかには「疲れやすくなった」という程度のご意見 でした。  労災保険法上の障害補償給付については、省令の別表である障害等級表と、労 働基準局長通達である障害認定基準に基づいているところです。胸腹部臓器の障 害等級については前回も説明したかと思いますが、昭和50年の改正以降、一部 を除いて見直しが行われていなかったという事情があります。したがって、今回 の胸腹部臓器の障害認定基準等の見直しにあたっては、資料2の参考2に記載さ れているとおり、胸腹部臓器全般にわたって多くの障害の評価見直しが検討され ています。  専門検討会報告書には、現在の医学的知見に適合した後遺障害の評価、あるい は各種検査結果や客観的な医学的所見に基づく障害等級の評価方法について示 されているところです。今後においては、これら専門検討会における検討結果を 踏まえ、障害等級認定基準の改正を予定しています。今回、お諮り申し上げる障 害等級表の一部改正と併せて施行したいと考えているところです。  なお、今回の専門検討会報告書においては、治ゆ後においても症状の動揺をき たす恐れのある傷病のうち、労働福祉事業として行われるアフターケア制度の対 象となっていないものについて、胸腹部臓器の障害に係るアフターケアの新設又 は拡充が望まれる旨の提言がなされています。これを受けて現在、アフターケア 制度の拡充についても、医学専門家による検討会を設けて検討しているところで す。これについても、今回の障害等級表及び障害等級認定基準の改正と併せて施 行できるように、手続を進めているところです。  今回の障害等級表及び障害認定基準の改正内容については、担当職員に対する 研修を十分に実施するとともに、パンフレットを作成して関連する医療機関等へ 周知を徹底することによって、円滑な施行に努めていこうと考えています。ご理 解を賜りますようお願いを申し上げます。私からの説明は以上です。 ○部会長   ありがとうございました。ただいまの説明について、ご意見あるいはご質問が ございましたら、承りたいと思います。 ○佐藤委員  非常に専門的なことで、なかなかわからないのが実態ですけれども、これは労 働災害を言っているわけですよね。いわゆる外傷性のものを言っている。外傷と いうか、災害性のものを言っているわけで、一般疾病における医学的知見と、い わゆる業務上の災害によって発生するものと同じように判断していいのかどう かというのが、はっきり言ってわからないのです。  要するに急激な刺激を受けるとか、あるいは物が突き刺さるとか打撲するとか、 そういうことによってその部位が損傷を受けるわけで、それは通常の一般疾病か らくるものとは若干、異にしていいのではないかと思うのですが、そこはどうな のでしょうか。 ○補償課長   胸腹部臓器についてですが、障害の等級の設定あるいはその認定については、 欠損等を除いて機能障害がどの程度かという尺度で測ることにしています。それ で相対的にどの程度、本来その臓器が持っている機能が低下しているかというこ とを、客観的な指標に基づいて評価をしていこうという考えです。したがって、 一般の疾病は労災とはなりませんが、ダメージの与えられ方によってではなくて、 残った障害が機能的にどの程度低下しているかを尺度に認定をしていこうとい う考え方です。 ○佐藤委員   おっしゃっていることはわかるのですが、現実にこういうケースに私は遭遇し たことがないから、よくわからないのです。いわゆる人間が生活していて、その 病気になってじん臓を1つ取らなければいけないというと、これは労働災害を言 っているのであって、その違いは相当にあるのではないかということを言ってい るわけです。いまの説明では、その後の機能がどうかということで説明されまし たけれども、そこが、ちょっと簡単にはわかりにくいのです。わかりやすく説明 してください。 ○補償課長   例えば報告書の中にもありますが、一側のじん臓の亡失という例を出していま す。その場合に、片方のじん臓は摘出されて亡失したけれども、残ったじん臓に 何ら機能低下が見られないというケースが1つあります。その場合は先ほど申し 上げたとおり、11級の下に設けた13級で評価しようということにしています。  そうは言いつつ、一側のじん臓を失って、かつ機能障害が残るケースが当然あ るわけです。それは残った機能障害の程度により、また11級、その上の9級、 あるいはその上の7級というふうに、残存障害の程度によって評価をしていくと いう考え方をとっているところです。 ○部会長   たぶん佐藤委員がおっしゃっているのは、何か悪い物を食べて健康上、一側の じん臓が亡失するという普通の場合でなくて、例えば墜落したり交通事故でガシ ャッとぶつかったりして、要するに外力で体の一部が損傷する。そういった場合 は少し違うのではないかと、そういう話ですよね。  ただ、労災保険というのはいろいろ治療して、一応、治ったというところから 出発するのでしょうね。要するに結果的に外力で傷ついた所は治ったと。しかし、 そのときに一側のじん臓が元の状態にならないで、取ってしまわなければいけな いという状態なので、起こったときは、ずいぶん違う状態なのでしょうが、障害 として評価するのはこういうことになるのかなと、そういう話でしょうか。 ○労災補償部長   参考4にありますように、労務に服するとか軽易な労務とか、要するに労務の 条件をどういうふうに含むかということを頭に置いて、もちろんこの程度を判断 しているわけですから、残った障害というか、そのことが労務に与える影響を含 めて障害がどの級に該当するのかという判断を、専門家の方にお集まりいただい てこういう報告書をまとめていただいたということです。この中でも随所に、そ ういう観点から判断しているというのは報告書の中にも書いています。 ○佐藤委員   これにあまりこだわるのはおかしいかもしれませんが、例えば83頁のところ に、これはすい臓の話ですけれども、「業務上の傷病による障害のみが障害補償 の対象になることを考えると」という書き方になっています。言われていること とは違うわけですが、結局、要するに外力によって、あるいは物理的な要素によ ってなることを基本的に全部審査したのか、という意味を聞いているわけです。 ○労災補償部長   障害補償の対象になるのは業務上の障害による補償ということです。そういう ことですから別に頭から障害を除外しているという趣旨ではありません。そうい うのを全部調べた上での対応をさせていただいたということです。 ○佐藤委員   それで結構です。 ○部会長   ほかに何かご意見、ございませんか。もしほかにご意見がないようでしたら、 諮問のあった件については、当部会としては妥当である旨、労働条件分科会に報 告したいと考えますが、いかがですか。                     (了承) ○部会長   それでは、そのようにさせていただきます。報告文については私に一任という ことでよろしいですか。                      (了承) ○部会長   それでは、そのようにさせていただきたいと思います。3つ目の議題ですが、 「労災保険率改定方針等について」です。資料3−1から3−6まで一括して事 務局から説明をお願いします。 ○労災保険財政数理室長(石原)   資料3−1から3−6まで、ご説明申し上げます。資料3−1ですが、これは 「労災保険率等に係る関係法令」です。労務費率や特別加入の料率に関する規定 も含めて1枚の紙に収めたものです。これについては後ほど参考にしていただけ ればと存じます。  資料3−2は「労災保険率表」で、現在の労災保険率の具体的な数字です。ご 覧のように51の業種に分けて設けていて、高いところでは、上から4分の1ぐ らいのところに建設事業の水力発電施設、ずい道等新設事業の1000分の129、 低いところでは、いちばん下にあるその他の各種事業をはじめ、いくつかの業種 で設定されている1000分の5となっているところです。  この労災保険率と申しますのは、いままで概ね3年ごとに審議会の審議を経た 上で改定されてきているわけです。ご覧の現在のものは平成15年4月に改定さ れたものです。この改定後、労災保険率が関係する閣議決定等があり、私どもは 「労災保険率の設定に関する基本方針」を定めたところですが、その基本方針が 資料3−3です。  この基本方針については、3月の部会でも案の段階のものをご説明申し上げ、 ご質問なりご意見をいただいているところです。ご覧のように最初にこのような 基本方針を制定した経緯が書かれています。かいつまんで申し上げると、平成 15年12月に当時の総合規制改革会議から、規制改革の推進に関する答申が出さ れ、それに伴って平成16年3月に「規制改革・民間開放推進3か年計画」が閣 議決定されたわけです。  その中で労災保険率について、業種別リスクに応じた適正な保険料率の設定と いうものを見出しにして、ここに書いてあるように「業種別の保険料率の設定に ついて、業種ごとに異なる災害リスクを踏まえ、専門的な見地から検討し、早急 に結論を得る」と閣議決定の中で書かれたわけです。  これを受けて、学識経験者による検討会を開催してご検討いただき、その検討 結果が今年1月に出されました。その検討結果を踏まえて、この労災保険率の設 定手続の透明化を図るべく定めたのが、この労災保険率の設定に関する基本方針 です。  1のところで業種別の設定、2のところで改定の頻度は原則として3年ごとに 改定するといったことを規定しています。3の(1)で算定の方法として、具体 的な料率の算定方法が書かれています。イの算定の基礎としては、「過去3年間 の保険給付実績等に基づいて算定する料率設定期間における保険給付等に要す る費用の予想額とする」とした上で、ロで業務災害分の料率というのは短期給付 分、長期給付分に分け、短期給付については3年間の収支が均衡する「純賦課方 式」によって定める。そして年金たる保険給付等の長期給付については、災害発 生時点の事業主集団から将来給付分も含めて、年金給付等に要する費用を全額徴 収する「充足賦課方式」により料率を算定するとしています。  ハの全業種一律賦課方式の項をご覧いただくと、業務災害分の料率のうち、短 期給付については災害発生から3年を経ている給付分、あるいは長期給付のうち、 災害発生から7年を超えて支給開始される年金給付については、業種別に料率を 定めるのではなく、全業種一律の率で負担するようにすると書かれています。  (イ)のcのところに「過去債務分」というのがあります。この過去債務分と いうのは先ほど長期給付について、充足賦課方式で料率を定めると申し上げたわ けですが、この方式にしたのが平成元年度からですので、昭和63年度以前に裁 定された年金受給者については、将来給付分として積み立ててある積立金の不足 があり、これを解消する分です。a、b、cこれらは全業種一律の賦課とすると いうことです。  通勤災害、二次健康診断等給付からなる非業務災害分、あるいは労働福祉事業 及び事務の執行に要する費用分も全業種一律で計算するというルールです。その 上でこの基本方針においては、(2)として激変緩和の措置等というものを規定 しているわけです。この規定については後ほど資料3−6でも説明しますので、 ここは飛ばします。  項目の4番として労災保険率改定の手続等としては、労災保険率の改定に係る 基礎資料はすべて公開するとともに、これに基づく審議会での検討を経て決定す るというルールを基本方針として、今年3月に定めたところです。  資料3−4は労災保険率算定の基礎となる統計、もしくは関連ないしは参考と なる統計です。今般、平成18年4月に料率改定をすべく準備しているところで すが、平成18年改定については平成14年度から16年度の実績を基に計算しま すので、この統計資料も平成14年度、15年度、16年度の数字を掲げたところで す。  業種については、左側に業種が縦に並んでいますが、労災保険率を現在定めて ある業種区分に加え、下のほうに特別集計分として4区分設けています。これは 後ほども説明しますが、今回の私どもの考えとしては、従来の「その他の各種事 業」を4つに分割する考えでいますので、統計のほうもこのような特別集計をし て、平成14年度まで遡って集計した結果をここに掲げたわけです。この統計資 料の最初の2枚は適用事業場数と適用労働者数です。  3頁、4頁、5頁は順に徴収決定額、収納額、収納率を並べています。6頁か ら支出に移ります。労災保険率の計算を短期給付と長期給付に分けて計算します ので、統計のほうも短期給付と長期給付に分けて、6頁は業務災害による短期給 付の統計を並べました。7頁は非業務災害分の短期給付ということで、通勤災害 に係る短期給付の額、8頁が二次健康診断等給付に係る短期給付の額を並べたも のです。9頁、10頁は長期給付の額の統計です。業務災害分、通勤災害分とあ ります。  11頁から3枚にわたり、ここには毎年発生する新規年金受給者数の統計を掲 げました。先ほども申し上げたように労災保険率の長期給付分というのは、毎年 の新規年金受給者について、将来給付分も含めた年金額の総額を徴収できるよう に料率を定めるわけです。14頁からの3枚が、各年度末における年金受給者数 です。業務災害分、通勤災害分を14頁から3枚にわたって掲げました。  資料3−5ですが、これは「事業の種類の見直しについて(案)」です。今度 の改定においては業種区分のうち、「その他の各種事業」について、ここには卸 売業・小売業やサービス業など適用事業場の約半分が属しているわけですが、先 ほど統計表の紹介のときに触れたように、ここを4つに分割することを考えてい ます。これは労災保険率の設定に関する基本方針の基になった、検討会の報告に おける提言に従ったものです。  資料3−5の「現状」のところにも書いていますが、サービス業を中心とする 第三次産業等については、比較的大括りの区分となっているわけです。しかしな がら産業構造の変化に伴って、第三次産業が中心となっている「その他の各種事 業」については、リスクが異なるさまざまな業種が含まれているとして、検討会 報告では業種の細分化を図ることが適当であるとされたわけです。  そこで、その他の各種事業については事務従事者の割合、あるいは災害率や保 険集団としての規模、あるいは日本標準産業分類との対応といったものを考慮し、 ここに書いてある3つの業種を分離独立させ、新たな業種区分を設定することが 適当と検討会報告でされたわけです。そこで今回の料率の改定においては、この 提言に従い、この3つの業種を分離独立させることを考えているわけです。  3つというのは資料に書いてあるとおり、(1)は通信業、放送業、新聞業又は出 版業、(2)は卸売業・小売業、飲食店又は宿泊業、(3)は金融業、保険業又は不動産 業です。これに属さない事業が新しいその他の各種事業となるわけで、従来のそ の他の各種事業を4つに分割することを考えている次第です。  資料3−6は、「平成18年度改定における激変緩和措置について(論点整理)」 です。この資料の下のほうに「『労災保険率の設定に関する基本方針』における 激変緩和措置」として、どのような規定がなされているかを抜粋して載せていま す。ここに書いてあるとおり、ここでは「一般的な激変緩和措置」と呼びますが、 算定された数値が増加した場合に、これに対応して労災保険率が一挙に引き上が る業種の労災保険率については、必要に応じて一定の激変緩和措置を講ずること が基本方針になっています。その必要に応じて講ずる一定の措置が1つの類型で す。また「特別な激変緩和措置」と呼ぶものがあり、ここに書いてあるとおり、 産業構造の変化に伴って事業場数、労働者数の激減が生じたため、保険の収支状 況が著しく悪化している業種の労災保険率については、必要に応じて一定の上限 を設けるという措置です。  そこで資料3−6においては、部会における議論に資するように、一般的な激 変緩和措置をどのようにするかとして、1つ目の○として「一挙に引き上げると、 対応困難となる企業があり得ることから、激変緩和措置を講ずるべきではない か」とし、2つ目の○として「講ずる場合、どのようにするか」としました。1 つ目の○のほうは先ほどから触れている検討会報告においては、算定された数値 が大幅に変動した場合に、これに対応して労災保険率を一挙に大幅に引き上げる ことについては、企業における対応が困難である場合も考えられることから、一 定の激変緩和措置を講ずることはやむを得ないものと考えられるとしています ので、これに合わせてみたものです。  2つ目の特別な激変緩和措置については、特別な激変緩和措置の対象と措置内 容をどのようにするかということで、対象については、「過去に発生した災害等 による給付が継続しているが、急激な産業構造の変化に伴って事業場数、労働者 数の激減が生じたため保険の収支状況が著しく悪化している業種を対象とした らどうか」としました。これは基本方針の基になった検討会報告において、検討 会報告の言いぶりを申し上げると繰り返しになりますが、過去に発生した災害等 による給付が継続しているが、急激な産業構造の変化に伴って、事業場数、労働 者数の激減が生じたため、保険の収支状況が著しく悪化している一部の業種にお いては、算定された数値が、現在の事業主の労働災害防止努力の結果として評価 される水準を超えて過大に算定されるとともに、その数値は今後も悪化していく ことが想定されるとしています。この部分から引用してみたものです。  また検討会報告では、係る業種の例として金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業 が掲げられています。私どもとしては金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業が、ま さに過去に発生した災害による給付が今も継続していて、また遅発性の疾病で新 規にも発生している。片や急激な産業構造の変化に伴い、事業場数、労働者数の 激減が生じている。そのため保険の収支状況が著しく悪化している業種として、 この金属鉱業、非金属鉱業又は石炭鉱業がまさに該当するものと考えているとこ ろです。  以上、私からの資料3−1から3−6の説明を終わります。 ○部会長   労災保険財政数理室長から、資料3−1から3−6まで一括して説明していた だきました。一応、この資料については3−1から3−4の基礎資料と、資料3 −5の事業の種類の見直し案、資料3−6の激変緩和措置の3つに分けることが できるだろうと思います。最初に資料3−1から3−4までの基礎資料について、 何か質問がございましたら伺います。いかがですか。特にないようでしたら、資 料3−5の事業の見直し案について何か質問かご意見はございませんか。 ○吉田氏(寺田委員代理)   事業の見直しと言いますか、その他の事業というので各事業を分けたのは、私 も連合で分けたらどうかという話を大分してきて、そういう意味では非常にいい ことだなと思います。ただ、この表を見ても、3−4のいちばん下を見ても、(新) その他の各種事業というのは75万6,000事業場とかあるわけです。平成16年度 で言えば77万4,400です。私が思っているのは、後のものも分けられるもので すかね。分けやすいものを分けたというのはわかりますけど、それでも各種の労 災統計を見てもその他はどんどん増えています。そういうものをどう考えるかと いうのはあるのではないか。その辺についてお考えがあるのかどうかをお聞きし たい。 ○労災保険財政数理室長   このように新しい業種を設けると、新しい料率なりが適用になって事務手続が いろいろと発生するわけです。新しいその他の各種事業はまだまだ大きい区分に なっていますが、その中でも医療保険や教育研究調査事業といったところについ ては、事業の種類の中でも更に細目というのがあります。こういう細目について 新たな適用事業細目の考え方として、例えば医療福祉と教育学習支援を分けます。 今までは1つの細目だったわけですが、これを分けて設けます。もちろん料率の 区分としては1つになっているわけですが、もう少し中長期的に収支状況といっ たものを見て把握した上で、また新しい業種区分のあり方としての可能性を考え ていきたいと思っています。 ○佐藤委員   分けるということになると、それぞれ料率にかなり差が出るという意味合いで すか。   ○労災保険財政数理室長   差が出るかどうかは、この場で申し上げることは控えさせていただきますが、 考え方としては業種別のリスクに応じた料率にするという観点で、130万事業場 という大括りのものについて、業種を分割していくという考え方で分けるもので す。   ○部会長   佐藤委員、それでよろしいですか。 ○佐藤委員   今日は言えないということだから、それ以上は聞けないですよね。 ○部会長   いくつかのご意見がありましたけれども、一応、この見直し案どおりで事業の 種類を見直すことでよろしいですか。それでは了承されたということで、次に資 料3−6の激変緩和措置について話を進めていきたいと思います。一般的な激変 緩和措置と、特別な激変緩和措置に分けて議論したいと思います。まず前者の一 般的な激変緩和措置を講ずるかどうか、講ずる場合の措置内容について、何かご 意見はございませんでしょうか。 ○佐藤委員   何かこれは蓋をしておいて、中身を見ろというような議論になってしまうので すね。一般的な激変緩和措置だって、特別な激変緩和措置だって、両方とも必要 な場合はありますね。だから、どうなのですか。次のこの部会が予定されている わけですが、そのときには各業種ごとの新しい料率が出るわけですか。そのため の議論を今日はしているのですか。そちらのほうが隠れていて、これを議論しろ と言っても、ちょっと私は難しいのではないかと思うのです。そういう議論のさ せ方が適当と判断されているのかどうか。 ○労災補償部長   これは従来から3年おきにいろいろな料率のご議論をいただいていますが、基 本的には今回この考え方を定めまして、新たな激変の料率の見直しをするわけで す。その中で激変緩和を一般的にどう考えるかという、そこがないと、まずその 基本的な考え方があって、私どもがその考え方に従って、いろいろな数値を判定 していくということなので、今日は基本的に激変緩和をとるべきなのか、あるい はとらずにリスクのままで判断をしていくのかという辺りのご意見を伺って、私 どもに次回における作業をさせていただきたいということで、この提案をさせて いただきました。 ○佐藤委員   ではもう1つ意見を言っておきますが、業種ごとによって料率が異なることを 基本的に否定はしていませんが、労働災害保険も社会保険の1つであるから、そ れとメリット制の問題も含めていうと、あまり細分化して、業種ごとに決めてい くという方向に進んでいるのですが、そうすると、最終的にはもう企業ごとに決 めていくということと同じことにまでいってしまうと、社会保険という意味合い での相互救済という問題は、どこかへ飛んでしまうのではないか。だから、そこ は前から思っているのですが、確かに危険な作業はどういう作業かというぐらい は、誰だってわかるわけです。いまダムを造るなどといったら、非常に危険な作 業です。そういうことを全体ではある程度カバーしていかなければいけないとい うのは、この法律の趣旨からいって当然なのではないかと思います。そこをどの 辺りまでするのかという議論をしろと言っているのだとすると、中身がないのに できないではないかという意味合いになってしまうのですが。 ○紀陸委員   いまの論議は、基本的に作業の基本方針の内容を確認しようという趣旨だと思 うのです。確かに具体的な数字の中身が明らかでない段階でということもありま すが、私どもは基本的に大筋の考え方として、特定の業界における企業が非常に 大きな料率変更によってダメージを受けるようなことを避けよう、というのがこ の趣旨だと思いますので、その範囲においては考え方としては当然だと思ってお ります。その場合に上限をどのように設定するか、これはそれこそデータを見な いとわかりませんので、一定のしかるべき範囲で書いておいていただくという、 そのようなことは私どももいまの段階では経過として申し上げることはできる と思っています。 ○部会長   かなり抽象的な話になるかと思いますが、一般的な激変緩和措置をとることに ついては特段の異論はないだろうと思うのですが、よろしいでしょうか。問題は その措置の内容ということになりますが、論点整理でも示されていますが、一般 的な激変緩和措置を講ずる場合に、どのようなものにするかということですが、 いま紀陸委員から、少しそれに関連することが述べられたと思います。 ○中桐氏(須賀委員代理)   先ほどの議論の前提も出しながら提案したいと思います。労災保険それ自体は 使用者の災害補償責任を保険で肩代わりするだけの保険ではないということで す。この制度の目的というのは労働者保護にあるということであり、そのための 社会保険というご指摘が先ほどもありました。そういった意味で、全体で資金も リスクもプールをして、いざというときに資金が少ない産業の労働者も同じ基準 で治療が受けられて、職場復帰を図る社会保険である。そういった意味ですべて の使用者に対しての加盟の義務が強制保険として成り立っているのだと思うの です。  では、どうやってやるかということですが、そのような制度と考えれば、今回 の業種区分でさまざまなプラスなりマイナスなりが出てくると思いますが、やは り広く薄く全業種を対象にした激変緩和措置を行って、長期的な安定を図るとい うのが、その方向での考え方ではないかと思います。 ○部会長   先ほど紀陸委員のほうから、できるだけ幅を狭く、あまり大きく上げるのは問 題があるのではないか。また、いま中桐氏から負担については広く薄く一般で負 担をすると、いうのが労災保険の趣旨ではないかということでしたが、それでよ ろしいでしょうか。 ○内藤委員   講ずる場合にどのようにするかということについて、3年ごとに見直しをして いるわけですから、過去にはどのようにしていたのかということを説明していた だけますか。 ○労災保険財政数理室長   従来の料率の設定の仕方は基本方針で言うと、3の(1)に相当する考え方で 計算を行った上、料率を設定していたわけです。必ずしも透明でない部分があっ たことから、基本方針を定めて設定手続の透明化を図ることになったわけですが、 こうした中であえて申し上げますと、例えば15年改定の際には、計算上の料率 が低下した場合にはその水準が設定料率よりも高かったとしても、計算料率の低 下幅の半分程度、設定料率を引き下げるということもしたわけです。  つまり、算定料率の変化、計算した料率の変化に基づいて設定している料率を 変えるとか、そういったことをやっていたわけです。その結果、算定料率の水準 で必ずしも料率が設定されていない場合もあるということがあったわけです。ま た、15年4月のときには引下幅について、4厘を超えないようにしていたとか、 そういった配慮もしていたようです。ちょっと曖昧なところがあるわけですが。 ○内藤委員   何が言いたくて質問をしたかというと、3−3の資料の、いわゆる「事業主の 労働災害防止へのインセンティブをより高める」ということからいえば、激変緩 和措置は必要だと思いますし、実施すべきだと思いますが、いまのお話ですと増 えた上の部分がカットされて、その分が不問にふされるという。言い方が少しお かしいのですが、3年ごとの見直しになりますよね。そしてボンと増えました。 そのときに、増えた上の部分はちょっとカットして、そんなに増えないようにし ましょうという、これはいいと思うのですが、カットされてなくなってしまうと いう発想なのか、言い方がうまく言えないのですが、例えば移動平均的な緩和措 置をするのか。つまり、ある増えた部分以上はもうカットされて、それは将来に わたってそのことが影響することはないという言い方をするのか、よくやるよう に移動平均的になだらかなカーブで変化するための激変緩和措置かによって、少 しインセンティブも違ってくるような気がするのですが。  そういう意味でどうするかということになりますと、いまご説明があったよう に、大きく増えたところについては上限をカットして、一定の幅に押さえる。こ のカットした分はいまの方式ですと、いわゆる次の改定では不問にふされるわけ です。そうなのか、移動平均的に将来的にもずっとそれが影響してくるほうがい いのかという、その辺はどうなのでしょうか。 ○労災補償部長   今回は基本的方針でも3−6の(参考)にあるように、一般的な激変緩和措置 を取る場合でも特別な激変緩和措置を取る場合でもその下に「激変緩和措置を講 じることにより生ずる財政的な影響については、その必要な所用額を全業種一律 に負担する」ということで、基本的にはいまおっしゃいました一定の激変緩和措 置を設ける、先ほどこれも設けたほうがいいのではないかというお話がありまし たが、設けた場合には、カットの部分についてはほかの産業にということになっ ています。  いま説明したように、過去は上下ともに一定の激変緩和をしていたのです。今 回は議論の中にあるように、基本的に下がるところについてはご努力いただいて 下がっているわけですから、それは激変緩和というか、下がる部分についてはも っと下げていくということを今回からは採用する。従来は一定の範囲で激変緩和 でしたが、今回は下がるところは下げる。ただ、そうすると一方において上がる ところも当然出てくるわけですが、それについて今回は、こういう基本的な激変 緩和を設けてはどうかという提案をさせていただいたということです。 ○内藤委員   私はそれは基本的に反対しているわけではないのです。要は何を考えているか というと、ある期間、3年が十分に長い期間だとは思いますが、例えばいまの論 理でいきますと、努力して1回ボンと下がってしまった、したがってボンと下げ ましょう、次にボンと上がっても、上がカットされて全業種で負担、ポンと上が っても全業種で負担ということになるのではないかということを懸念したので す。そのシステムですとそういうことになるわけですね。 ○労災補償部長   労災保険料率の設定に関する検討会でもご議論はありましたが、激変緩和を設 けても、設けたことによってほかの業種に、逆にそのカットの部分が大幅に偏在 するならば、これまた激変緩和の趣旨をある意味では超えることになりますので、 そこは当然激変緩和を設けるということになっても、十分に私どもも配慮しなけ ればいけないと思っています。それは議論としては前提ですね。そういう前提の 中での激変緩和をどう設けたらよろしいかというご提案です。 ○内藤委員   私も佐藤委員と同様ですが、具体的に見ないと、これがいいなどと言えない。 いまの質問はそういう方法をとるとそうなりますねという確認だけですから、意 見は差し控えさせていただきます。 ○労災補償部長   前提としてはそういうカットしたことによって、ほかのところにものすごく影 響を及ぼすことがない上での激変緩和というご趣旨だと思っています。 ○部会長   それでは一般的な激変緩和措置を講ずる内容については、先ほどご議論があり ましたが、対応困難となる企業があるということで、できるだけその幅を狭く、 小さくする。それによって生ずる負担は社会保険の趣旨に従って、一般に広く薄 く負担してもらうということでよろしいでしょうか。  それでは次の特別な激変緩和措置についてですが、この点については事務局か ら金属鉱業、非金属鉱業、および石炭鉱業が該当するとの説明があったところで す。対象について、あるいは措置の内容について何かご意見がございますでしょ うか。 ○紀陸委員   当然なのですが、やむを得ざる状況で、先ほどの一般的な激変緩和措置も必要 というのと同じように、私どもここも致し方ない措置かと理解しています。 ○部会長   そのほか、何かご意見はございますか。ございませんでしたら対象については 事務局からの説明があったとおりで、これらの事業については現在の料率をもは や引き上げることもないということだろうと思いますが、これでよろしいでしょ うか。 ○石岡委員   金属、非金属鉱業、または石炭鉱業ですが、部会長のご意見に賛成なのですが、 いま収支状況はどんな状況になっているのですか。 ○労災保険財政数理室長   金属鉱業、非金属鉱業、または石炭鉱業ですが、非常に粗々な試算ですが、料 率を計算しますと、もう1,000分の1,400を超えるような状況です。さらに、前 回よりもいよいよ計算料率が高くなっているという状況です。 ○石岡委員   そういうような状況であれば、現在の料率をこれ以上、上げるというのもいか がかと思います。もはや引き上げることもないのではないかと思います。 ○部会長   それでよろしいでしょうか。そういったことで了承していただいたということ にしたいと思います。それでは事務局においてはただいまの議論を踏まえ、労災 保険率等の改定作業を進めていただきたいと思います。 ○紀陸委員   私ども、前からこの料率改定の論議の中でお願いしてきましたが、労福事業、 1.5厘の話なのですが、全体的に料率が縮小してくると固定的な1.5が当然なが ら重みを増してくるわけです。これはまだ先の話であれなのでしょうけれども、 アスベストの問題でおそらく非常に負担がかかってくると、事業主としては全業 種一律の1.5というものの見直しを強くお願いしたいと思うのです。これは具体 的な作業に入って、ほかの数字をにらみながらということなのでしょうけれども、 従来から申し上げております労福事業の中身の見直しに合わせて、1.5という一 律的な負担の数字を、もっと大幅に引き下げていただきたい。改定が行われて3 年間ずっとあれで、その後もまたその都度やっていても、大きな方針がこの労福 事業については必要だと思うのです。その辺を私どももいろいろなデータを拝見 させていただいた上で、申し上げさせていただきますが、これだけはきちんと改 定の作業の中に据えてご検討いただきたいということです。 ○部会長   それでは最後の議題の「石綿による健康被害の救済に関する法律案大綱につい て」、事務局から説明をお願いします。 ○労災管理課長   お手元の資料、大綱に基づきご説明申し上げます。アスベストによる健康被害 者については新たな救済措置を講ずるわけですが、この救済措置に関する新法の 大綱が、去る11月29日(火)に行われた関係閣僚会議において、了承されまし たので、この場でご報告したいと思います。  今回の新法は第1の「目的」にあるように、潜伏期間が長い等といった石綿に 係る健康被害の特殊性に着目して、被害者の迅速な救済を図ることを目的として います。対象とする疾病は、ここで指定疾病となっていますが、具体的には中皮 腫、肺がんを考えております。具体的な給付内容ですが、第3の部分は周辺住民 に対するものです。医療費、療養手当、葬祭費用を支給することにしています。 なお、法施行前に亡くなった方の遺族に対しては、特別遺族弔慰金と葬祭費を支 給します。2頁です。これらの給付に関する申請期間を設ける予定にしています。 なお、給付に関する事務は、環境省関係の独立行政法人ですが、環境再生保全機 構に行わせることにしています。  次に第4、周辺住民に対する給付の費用です。石綿が産業社会、産業現場にお いてかなり幅広く使用されてきたという状況を踏まえ、およそあらゆる事業者が 石綿を飛散させる事業活動と関わりを持ってきたという、事業活動を行ってきた と考えられますので、今回の法案の中では、労働者を雇用する全事業主から費用 の拠出を求めるとしています。ただし、この4の1の(2)で書いてありますが、 石綿を直接的に大量に取り扱って石綿を飛散させる事業活動を行ってきた事業 者のうち、一定要件を設定し、重い負担を求めるところがある。いわば1階と2 階の部分があるという、2階立ての形を取っています。  この事業主からの拠出金の徴収ですが、労働保険の適用事業所の場合には、労 働保険徴収システムを活用することとし、それ以外については現在のところ機構 が直接徴収するという予定です。なお、機構は事業主から徴収した費用を基に、 3で書いてあるように「石綿健康被害救済基金」を創設することとしています。 その際、政府、地方公共団体から、いわば公費からも応分の負担を求めるという 形になっています。  また、死亡した労働者の遺族ですが、労災保険法の事項により、遺族補償給付 の支給を受ける権利が消滅した方に対しては、こうした給付に準じた遺族特別給 付金を支給することにしており、これに要する費用は労働保険特別会計の労災勘 定から負担することを考えています。  第6、不服申立てです。周辺住民等については公害健康被害補償の不服審査会 に対して、労働者の遺族については労働者災害補償保険審査会に対して行うもの としています。第7、その他、施行に必要な経過措置、あるいは5年後の見直し 規定といったものを設けることにしています。第8、施行の期日ですが、基金を 創設する部分についてはこの法案の成立した交付の日から、給付に関する規定は 交付の日から6カ月以内で、できるだけ早い時期、具体的にはやはり新年度、平 成18年4月1日を目指していきたいと思っています。  なお、事業主からの費用徴収についてはいろいろ準備等もあり、平成19年4 月1日から施行するということです。以上がこの大綱の概要です。この法案につ いては、来年の次期通常国会のできるだけ早い時期への提出を目指しています。 内閣官房、環境省など、関係省庁とともにさらなる検討を進めていきたいと考え ておりますので、ご理解、ご協力をお願いしたいということです。 ○部会長   ただいまの事務局の説明についてご意見、あるいはご質問がありましたらどう ぞ。 ○下永吉委員   与党のプロジェクトチームが政府に対して新法制定についての申入れを行っ ていますが、その中に中小企業に配慮するという1項目があるのですが、大綱の 中に中小企業が一字もないのですが、その精神というのはこの大綱の中に流れて いるのかどうか、ちょっと教えていただきたいのです。 ○労災管理課長   これは内閣官房を中心に関係省庁の会議で検討してきたもので、ここで私が本 当に正確に答えられるかどうか、自信のない部分もありますが、1つには労働保 険の徴収システムを使うということが、賃金総額に基づくことになりますので、 中小になればなるほど賃金総額が少ない。経済活動の規模に応じた、それをベー スにしたものの対応にするということですから、したがって、零細なところほど 拠出する金額は少なくなるという仕組みであると聞いています。 ○下永吉委員   そこで保険料の算定についてですが、請負による建設というような、特例とい うのはいま生きていますでしょうか。要するに賃金総額に労災保険率をかけて出 すわけですが、請負による建設というのは賃金総額の把握が難しいということで 請負金額によって出すようになっているのです。そうすると、この石綿のいまの 話によると、賃金総額から一定の率をかけて拠出金を出す。そうすると労災保険 法でいう法律の枠とこの石綿の関係とは全く徴収方法の算定方式が違ってくる ということになりますね。この辺はどのように理解したらよろしいのでしょうか。 ○労災管理課長   その点については、基本的には請負金額のうち労務費というものを考えながら いまの仕組みがあるわけです。ただ当然、技術的な問題点をご指摘ですので、こ ういった点については関係省庁会議に持ち返らせていただきたいと考えていま す。 ○佐藤委員   いま持ち返るということをおっしゃったのですが、この部会でかなり突っ込ん で議論していいのでしょうか。 ○労災管理課長   基本的に私どものほうで責任を持って、例えば労災の関係の部分についてはお 答えできる部分はあるかもしれませんが、ほかの部分についてはできる限りわか る範囲でお答えするということです。お答えできない部分については、関係省庁 が集まって議論して、検討する場がありますので、その場にお伝えしたいと考え ています。 ○佐藤委員   こういう法案ができることについて、全く反対をするわけではないのですが、 被害の救済という法律に限定すべきではない。アスベスト問題はいまや社会問題 になっているわけですから、新しく法律を作るのなら、かなり広い分野にわたっ て法律を作るべきではないかと思います。そこで、要するに石綿のアスベストの 全面使用禁止等は、他の法律でとおっしゃられるかもわかりませんが、できたら 民主党から前の国会にチラッと出ましたが、あそこにもあったと思うのですが、 いまのアスベスト問題をこれまでの経過を踏まえて、言いにくいことだけれども、 行政の不作為、あるいはそういう関係企業の利潤追求にあった。それから医学的 知見ということもあったかもわかりませんが、そういったものについて、歴史を 追ってみれば相当古くから通達も出ています。それなりの対応はできたはずだっ たので、クボタの例からいろいろと社会問題化してきたわけです。だから、この 法律はアスベストを規制する全面的な法律として、提出をしてほしいと思います。  それから指定疾病について、先ほど中皮腫と肺がんとおっしゃった。前の閣僚 会議のときにはそのように明確に書いてあったのですが、必ずしもアスベストに よって起こる病気は、そのばく露の状態にもよりますが、いわゆる石綿肺とか、 胸膜が肥厚した状態になるとか、あるいはその他の臓器にがんが発生するという ことも言われている。前のことから指定疾病にするという言葉に変えられたので、 範囲が広がったのだと思ったら、いまの課長の説明では中皮腫と肺がんと限定的 に言われた。これはもう少しよく医学的な知見というか、これに関してはかなり の研究論文が出ていますので、救済の範囲、指定疾病の範囲は、アスベストにか かわるものについて最大限、救い上げていくという姿勢に立っていただきたいと 思います。  いま下永吉委員がおっしゃったこととよく似ているのですが、労働者を雇用す る事業主ということになると、1人でも使っていれば労災保険の強制適用になる。 私たちの組合で盛んによく議論するのですが、かなり最近中皮腫の認定の人が出 る、あるいはもう亡くなった人でも出る。何百人と出ている状態です。わずかな 人数を使うような零細な事業者や、あるいはもう少し広めていまの法案でいう中 小企業、零細企業という言葉はないのかもわかりませんが、一定の配慮をする。 いまの言葉ですと、賃金額が低いのだから、それは下がるのだということですが、 そういうのは除外していいのではないか。  最も責任を負うべきはアスベスト製品を作り続けた事業主だと。名前も適当に 変えていまも存在していますが、そういった過去において日本に1,000万トンも 入ったそうですが、90%以上が建設資材に使われている、あるいは自動車や造船 にも使われているということがあるわけですが、この労働者を雇用する事業主の 定義というのをもう少し明確にして、まさに零細な事業主も含めて、加害者では なくて被害者だと私たちは認識していますので、それはそのようにやってもらい たいなと思っています。  言いたいことはたくさんあるのですが、ここが答えを出す場でもないような感 じがするので、なかなか難しいので、言いたいことだけは2つ言いましたので、 強力に伝えていただきたいと思います。 ○労災管理課長   お伝えいたします。ただ、この場でお答えできる点だけはお答えしたいと思い ます。まず、全面禁止の関係ですが、これについてはご存じのとおり労働安全衛 生法の中で、禁止するための規定があるわけで、その規定について現在猶予され ている部分を、できるだけ速やかに全面禁止にもっていこうということでいま検 討しています。具体的に詳しいことは安全衛生分科会のほうでお聞きいただきた いと思っていますが、検討会を開いて、できるだけ速やかにするというのが私ど もの方針ですので、ここはご理解いただきたいと思います。  なお、今回の新法と同時に国土交通省は建築基準法の改正により、建材の関係 から石綿のようなものをきちんと締め出すというような改正を考えているとこ ろです。したがって、法案の審議の仕方ははっきりわかりませんが、同時期に同 じような形で規制法も出てくるということです。また、環境省は廃棄物の関係等 もあるので、こういったものについても現在検討していると聞いています。  次に指定疾病の関係ですが、この辺については非常に多いのが中皮腫と肺がん ということで申し上げたわけですので、当然これからの検討の中で、石綿肺、び まん性の肥厚などいろいろありますが、こうしたものについても検討しなければ ならないと考えています。  最後に中小の事業主の話ですが、こちらに関しては関係各省にもお伝えをした いと考えています。ただ、非常に因果関係の強い企業があるではないかというご 指摘でしたが、これについては先ほどの大綱で説明しましたが、費用の徴収の部 分、2頁の第4の1の(2)ですが、政府は「一定の要件に該当する事業主から 追加費用を徴収する」と書いてありますが、この部分は先ほど申しましたが2階 立ての部分で、少なくともこういった石綿の被害についてかなり因果関係があり そうだという企業については、重く負担を取るという方向で法案を作る予定です。 ただ、どのような割合でどのような形にするかは現在検討中です。まだ方向しか ないということです。 ○内藤委員   いまの一定の要件に該当する事業主から追加費用を徴収するという考え方は、 ペナルティという考え方なのでしょうか、それとも相互扶助という考え方なので しょうか。というのは、この事業主はおそらく法律で許されている物質を、法律 で許されている範囲で使っていて、それが結果として誰もが知り得なかった理由 によって被害が発生した。そのことについて、なぜこの事業主から追加費用を徴 収するという考え方が生まれたのかというのを、ちょっとご説明していただけま すか。 ○労災管理課長   今回事業主からいろいろいただくということになりますのは、石綿による健康 被害は基本的に企業による事業活動に起因するものであることから、石綿を飛散 させる事業活動に関与してきた事業主が、その関与の程度に応じて費用を負担す るのが妥当だというのが基本的な考え方です。その際、石綿は例えば建材、自動 車、発電所、水道管など産業基盤となるあらゆる設備、施設、機械等で広く使用 されていますので、あらゆる事業主が少なくともその恩恵は受けているでしょう ということがあるので、まず、広く薄くご負担をいただく。ただし、直接に大量 に取り扱って石綿を飛散させる事業活動を行ってきた事業主には、そういった危 険な活動によって利益を受けてきた、あるいは報償責任のような考え方もありま すので、そうした観点から石綿の使用量等に応じて、この一定の要件はまだ固ま っていないと聞いていますが、そういったものに応じて、費用の負担を求める方 向だということです。 ○内藤委員   要はそういう事業主にペナルティを課すことが適切かどうかということは、私 はこの場で言ってもしようがないと思いますが、物事の考え方の根本に、法律で 許して、しかも誰もそれがそういう被害を生むかわからなかった、という物質を 過去に使っていたという実績で、結果責任を問うのかどうかということになると 思うのです。私はこれはおっしゃるように一般社会常識だと、多少のプラスで取 るのはみんな認めるのではないかと思うのですが、その量というか、認定の仕方 と合わせて、ペナルティ的に課す部分、負担増の部分がどのくらいになるのかに よって、例えばその企業が負担増の保険というか、この負担を求められて企業活 動に大きな影響を与えて、存続し得ないとか、そんなことをすると完全に死刑の 宣告と同じですから。その中身の問題とも絡むとは思うのですが、その辺はよく 配慮していただければと思います。 ○労災管理課長   関係各省が議論をした中でも、公平の観点は必要だという話がありました。そ の一方で、ある特定の企業が経営活動を継続できないほど影響を与えるというこ とは、逆に適当でないのではないかというご意見もありましたので、そうした議 論の中で今後、検討することになりますので、いまお聞きした意見もお伝えした いと思っております。 ○中桐氏(須賀委員代理)   このアスベスト問題に関して連合として労働者保護もありますし、また労働組 合の社会的な責任を果たしたいということも含めまして、アスベスト基本法の制 定やアスベスト基金の創設なども含めた政策要望を、明日厚生労働大臣宛てに提 出したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○杏委員   いままで出された質問や意見等とも関連するところなのですが、救済費用の何 がしかの負担というのは、事業主側としても避けられないと、このように考えて おりますが、ただ、どのような大きな額になるのかどうかというのが心配の基な のです。そこで、この資料4の第4「費用」のところで2、3点質問をさせてい ただきたいと思います。  先ほど申したとおり、費用の財源をどこに求めるかということになりますが、 第4の費用の項目の3「基金の創設等」というところですが、そこの(2)の「予 算の範囲内において、機構に対し云々」という文言があります。いま政府サイド として何かこの問題、救済費用を予算化するというような具体的な動きはあるの でしょうか、というのが第1の質問です。  2番目の質問は、(3)に「地方公共団体は、予算の範囲内において」と(2) と同じような文言がありますが、地方公共団体も何か予算化の動きというものは あるのでしょうか。もしおわかりになっているようでしたらお願いします。 ○労災管理課長   予算の問題については、そもそも給付がどのくらいになるかという点がまだ固 まっていませんので、したがって、どの程度予算が必要になるかというのが固ま っていないわけで、政府としてはできるだけ速やかにその辺は確定していきたい と考えているところです。なお、地方公共団体の関係については、総務省が地方 の代弁者という形になりますので、関係各省と総務省との間で話合いがあると聞 いています。 ○那須委員   いまの基金の創設のところなのですが、一応企業と政府と地方公共団体から集 めるということなのですが、いままでにこのようなことが行われたことはあるの でしょうか。 ○労災管理課長   全くこれと同じ仕組みというのはありません。ただし、公害の健康被害の補償 法の関係で、一定のNOx等を排出した企業から拠出いただいて、被害者に対し てそれをお配りする、あるいは医薬品の副作用の関係で、関係する業界のほうか ら一定額をいただいて、副作用が出た場合に給付をする仕組み等々、救済の仕組 みを一定の所から費用を徴収するという仕組みはありました。 ○稲葉委員   この新法は労災保険の枠組みの中では対応できない周辺住民や関連の家族の 健康被害を救済するということでは非常に意味のあるものだと思います。ただ問 題はこの費用徴収だと思います。広く薄くというお話ですが、世界でおそらくあ まり例がないと言われていますが、全部の企業からお金をいただくということの 法的な根拠はどこにあるのかというのが私はちょっとよくわからないので、説明 していただきたいと思います。それと2段階で徴収をするということですが、こ の2段階という大ざっぱなものでいいのかどうか、自動車のブレーキを作ってい る人たちと、クボタのような直接的な製造メーカーと、その差違があるのかどう か。  先ほど広く薄くという意味では環境省にも聞いたのですが、ここ数年できた新 しい企業からも取るのかという問題も出てきて、そういう意味で日本で起きるこ うした災害について、何が何でも全部の企業からお金を取るシステムを作ってい いのかどうかという問題提起にもなるのです。いずれにしても、これまでの枠組 みを大きく変えるものですから、全事業主から取ることになれば、相応の理解を 得なければいけないということだと思うのです。  おそらく環境省が中心になっておやりになるので、経済産業省などはこれにつ いては健康被害救済が第一だから何も言わないけれども、環境省さん、あなたは 経済界と調整してくださいねと、こう言ったと伝えられていますが、これは政府 をあげて、このような方式をとるならば説得しないと。先ほどの中小企業は大変 だと言われていましたが、2、3人の企業ですと1年間に数千円と言われている ので、そんなに大きな負担ではないと思います。いずれにしても金額の高ではな くて、考え方の問題ですので、慎重に対応していただきたいとご要望申し上げま す。 ○労災管理課長   わかりました。先ほど若干ご説明したわけですが、関係省庁、特に中心となる 省庁において内閣法制局とも十分に相談をしながら、法制的に成り立つものであ るかどうかを十分に検討しております。その際、やはり先ほど申しましたように 石綿による健康被害は基本的に事業活動に起因するものであることから、石綿を 飛散させる事業活動に関与してきた事業主が、その関与の程度に応じて費用を負 担するというのが基本的な考え方であるわけです。  一方、石綿については建材のかなりの部分が石綿に関与しているわけで、工場、 建築物の屋根、外壁等に非常に幅広く使われていますし、自動車のブレーキ、あ るいはクラッチについてもずっと使われてきた。さらには発電所のパッキングや 水道管など産業基盤となる施設設備についても広く使用されてきており、いわば 石綿を使った建築物を事務所としたり、石綿を使用した自動車を営業車としたり、 水道電気を使わずに事業活動をしている企業はないわけですので、そういう意味 では全業種の事業主について、報償責任、いわば一定の活動をして、そこから利 益を得て、利便を得ているという観点から、事業活動の規模に応じてご負担を求 めることは可能なのではないかというのが、現在の整理です。ただし、委員ご指 摘のとおり、当事者の納得というのが大変重要な点ですので、当然関係省庁にお いて、十分な説明をして、スムーズな形で法案を出したいと考えておりますので、 いまのご意見も関係省庁にもきちんと伝えたいと考えております。 ○稲葉委員   基本は先ほど佐藤委員もおっしゃいましたが、事業主がアスベストを使って被 害が出たというのではなくて、事業主は法律で認められているアスベストを使っ て被害が出たということですね。ですから、いちばんの大元は法律でこれを使用 禁止にしないで使わせてきたというところがあるわけで、この問題はそこをまず 押さえなければいけないと思うのです。ですから、初年度は国が全部負担すると いうことですから、次の年度から労災保険とセットになるのですが、そこで国の 責任の関与みたいなものが一定程度顕われるわけですが、基本的には先ほど不作 為のお話がありましたが、不作為の由来が色濃いわけですので、そのところを十 分に認識されて、関係企業に納得のいく説明をしていただきたいと思います。そ こが全くなくて、ただ広く薄くみんなで払うのだということでは、おそらく納得 がいかないのではないかと思います。 ○労災管理課長   全くおっしゃるとおりだと思います。この点、私から正確なお答えができるか どうかは自信がない部分がありますが、昭和47年にWHO、ILOが石綿につ いて発がん性があるということを国際的に認めたわけです。それ以前については 危険を予見する可能性が国にしろ、企業にしろなかった。どうしてもそれ以前に 使っていた分についてはやはり人間として英知の及ばなかった部分ではないか ということです。何カ月間かにわたり検証メモを作ったわけですが、その中でそ ういう表現もあったわけです。  ただ、現在出てきている被害、石綿は特に中皮腫などは潜伏期間が非常に長い わけですので、いわばそういった皆が危険性がわからなかった時代の被害が出て きているという、それについて放っておくわけにはいかない。因果関係か何かを きちんとやれば、それは補償なり完全な救済はできるわけですが、それをやって いますと何年かかるかわからないということもありますので、とりあえず、まず 気の毒な方を救済する必要があるということで、個別的な因果関係ではなくて、 もう少し疫学的な広い報償責任のような考え方で、まず救済をしようという点に あるわけです。この点についてはいろいろご批判もあると聞いておりますので、 関係各省にもお伝えしたいと考えています。 ○稲葉委員   究極の広く薄くは税金でやることなのです。だから、そこで、究極の広く薄く を選択されないで企業に負担を求める場合には、それなりにきちんとした説明が 要りますということを申し上げたいと思います。 ○下永吉委員   私どもの団体は参加企業は3万社あります。同じ業界は56万社あります。非 常に説明責任に苦慮しているところがありまして、関係省庁が連携されて産業界 にどう説明していくかというのを、早急に立ち上げてもらえないかと希望します。 ○労災管理課長   そういう説明は必要だと思っています。 ○佐藤委員   アスベスト問題については私自身がいろいろかかわってきてわかっているの ですが、日本石綿協会というのは、最盛時は80社ぐらいあったのです。いまは もう20社を切っています。うまく逃げ切った会社がいっぱいあるのです。それ と石綿スレート板などを作っている所は、地方の小さな企業であった場合がある。 これが大量に作って、いまはもう会社がなくなってしまっている。そういう問題 等から考えていくと、先ほどあったように広く薄くということになれば、もう税 金が第一でということになって。その当時大量に作って、そしていま逃げ切って いる企業というのを、正確に追ってもらわないと、なかなか納得しないと思うの です。つぶれた会社のことをどうするのかわかりませんが、そういうことから考 えると、この問題というのは一体どこできちんと議論されて、国民が意見を言う 場所が確保されるのか。もちろん国会に出るのでしょうけれども、どこの委員会 でこれを議論されるのですかね。 ○労災管理課長   私どもが法案をこの委員会で議論するというふうに、行政府として決めること はできません。立法府が、国会がこういう法案の内容であればこの委員会でやれ と決めますので、ここでお答えするのは大変難しいわけです。ただ、つぶれてし まった企業をどうするのかという問題、あるいは税で出すべきではないかという 問題については、当然問題意識があったわけです。公費でかなりの部分をお出し するというのも、そういったつぶれてしまった企業については、これはもう公費 でその分は見ざるを得ないではないかという考え方があり、そういうことも踏ま えて公費で、政府としてはかなりの金を出すという方向で進んでいます。それは 事実です。 ○吉田氏(寺田委員代理)   この問題は、おそらく石綿新法の問題は終わらないと思うのです。この後とい うのは、この部会のマターではないと思いますが、例えば解体に伴う問題だとか、 廃棄物処理の問題などをどうされるのかというのを、どのようにいま考えていら っしゃるのでしょうか。 ○労災管理課長   解体についてはご存じのとおり、今年の7月から石綿障害予防規則が施行され、 その中でかなり新しい規定も入ったわけです。この規定が守られているかどうか ということをきちんと見るために、3カ月間重点監督期間を設け、かなり解体に ついて現場を監督しています。また、すでに3万人以上の方の労働者について特 別教育も行っておりますし、建災防で講習会をやっています。 ○吉田氏(寺田委員代理)   費用負担とか、例えばマンションの問題とかいろいろ、一戸建てだってあるわ けでしょう。そういうものをどう考えるのかということを一緒に考えていかない と、そういうものがいちばん大きいわけでしょう。その問題も合わせて考えてい かないと、ただこれで終わりではないと思います。 ○労災管理課長   確かに関係省庁ではその辺の問題意識もあり、例えばそういった解体について の費用の問題等については、国土交通省なりがかなり問題意識を持っていると聞 いています。また、廃棄物についてもこれまでいろいろな方からご指摘を受けて いますので、環境省としても何がしかの対策が必要ではないかという問題意識が あると聞いていますので、この辺についてはまた情報が入りましたらお答えした いと思います。 ○部会長   たくさんのご意見が出たわけですが、厚生労働省にかかわる問題については、 ここでこの法案を検討する中で、参考にしていただきたいと思いますし、関係す る省庁が複数にまたがるものについては、事務局からそれぞれの省庁に伝えてい ただくことにしたいと思います。事務局はそれでよろしいでしょうか。 ○労災管理課長   はい。 ○部会長   それでは次回の労災保険部会について、日程等について説明をお願いします。 ○労災管理課長   次回の労災保険部会については12月22日(木)16時から厚生労働省5階共 用第7会議室にて開催したいと思っております。議題については本日の引き続き になる「労災保険料率等の改定について」と、本日部会の冒頭、私からご説明し た改正法の成立に伴う関係省令の改正案要綱の諮問を考えていますので、よろし くお願いします。 ○部会長   それでは本日の部会をこれで終了したいと思います。本日の議事録の署名委員 については労働者側委員としては高松委員、使用者側代表として紀陸委員にお願 いしたいと思います。お忙しい中をありがとうございました。          照会先:労働基準局労災補償部労災管理課企画調整係              電話03-5253-1111(内線5436)