参考資料1

今後のスケジュールについて


新しい医療計画のポイント(計画の立案(作成)から実施そして政策評価)

1.医療機能調査等を通じた都道府県内の医療サービスの供給と医療ニーズの把握
2.主要な事業ごとの医療連携体制の構築と医療計画への明示
3.将来の望ましい都道府県内の保健医療提供体制の実現に向けた数値目標の設定
4.数値目標の達成に向けた都道府県、医療関係者、医育機関等の役割と責任
5.数値目標の達成状況に係る政策評価と次期医療計画の見直し


1.医療機能調査等を通じた都道府県内の医療サービスの供給と医療ニーズの把握

 都道府県は既存の統計を活用するほか、医療機能調査及び患者の疾病動向調査を実施し、都道府県内の医療サービスの供給の状況と患者の医療ニーズを把握する。
 都道府県内の医療サービスの供給の状況と患者の医療ニーズについては医療計画に明示する<全国平均との比較もあわせて明示>。

(新しい医療計画に盛り込まれる指標)

病院・診療所数(所在地も含む) 対象患者当たりの診療科医師割合(主要な対策ごと)
種別ごとの病床数 在宅での看取り率(主要な疾病ごと)
医師数を含めた医療従事者数 地域連携クリティカルパスの普及状況(主要な疾病ごと)
健診・検診受診率
精密検査受診率
有病者の受診割合
主要な疾病ごと(がん、脳卒中、糖尿病、急性心筋梗塞)の総入院日数
など


地域連携クリティカルパスとは

クリティカルパスとは
  > クリティカルパスとは、良質な医療を効率的、かつ安全、適正に提供するための手段として開発された診療計画表である。
  > もともとは、1950年代に米国の工業界で導入されはじめ、1990年代に日本の医療機関においても一部導入された考え方である。
  > 診療の標準化、根拠に基づく医療の実施(EBM)、インフォームドコンセントの充実、業務の改善、チーム医療の向上などの効果が期待されている。
地域連携クリティカルパスとは
  > 急性期病院から回復期病院を経て早期に自宅に帰れるような診療計画を作成し、治療を受ける全ての医療機関で共有して用いるものである。
  > 診療にあたる複数の医療機関が、役割分担を含め、あらかじめ診療内容を患者に提示・説明することにより、患者が安心して医療を受けることができるようにするもの。
  > 内容としては、施設ごとの治療経過に従って、診療ガイドライン等に基づき診療内容や達成目標等を診療計画として明示する。
  > 回復期病院では、患者がどのような状態で転院してくるかをあらかじめ把握できるため、重複した検査をせずに済むなど転院早々から効果的なリハビリを開始できる。
  > これにより、医療連携体制に基づく地域完結型医療を具体的に実現するものである。


2.主要な事業ごとの医療連携体制の構築と医療計画への明示

 がん対策、脳卒中対策、急性心筋梗塞対策、糖尿病対策、小児救急医療対策、周産期医療対策、救急医療対策、災害医療対策、へき地医療対策といった主要な事業ごとの医療連携体制の状況(別途、都道府県で独自の事業を明示することも可能。)を医療計画に明示する。
 医療連携体制の状況は、特定の区域ごとではなく、主要な事業ごとに医療連携体制に関わる医療機関の所在地(地図等)と医療機能(医師の配置、保有する医療機器、社会保険事務局に届出された施設基準等、公費負担医療の実施、地域連携クリティカルパスの使用状況など)を医療計画上に明らかにする。
 主要な事業ごとの医療連携体制においては、患者の視点にたって、医療機関相互の協力と切磋琢磨による医療サービスの質の向上につなげるとともに、患者が安心して在宅で医療サービス・介護サービスを受けられるよう整備する。また、退院に際し、他の医療提供者あるいは介護提供者に円滑に引き継げるよう実施体制の整備を検討し、医療計画に明示する。
 あわせて、高度・専門的な医療など通常では継続的な対応が困難な医療を担い、都道府県全域をカバーして医療連携体制を支える医療機関についても明示する。(明示の方法として「医療機関リスト方式」「医療機関所在地方式」などが考えられる。)

(医療連携体制の構築に向けた留意点)
「医療連携体制の構築」自体は、構築に向けた地域の医療関係者での自主的な協議のもと、関係者間における役割分担や連携の手順等の合意を形成すること(※)を意味する。
  (※)治療開始から終了(在宅復帰)までの全体的な治療計画(地域連携クリティカルパス)の共有も求められる。
例えば、がんは特定の病院でしか診ない、というように、医療計画で患者の動きまでを統制するのではなく、患者が医療計画に明示された情報に接し、また、地域の医療機関(診療所含む)も、合意された医療連携体制を前提に、医療計画に明示されたそれぞれの医療機能情報をもとに、患者の症状に応じた紹介等の地域の医療連携を実施していくことになる。
今後、国としても、居宅系サービスの充実や、居住系サービスにおいて必要な医療を受けつつ生活を送るという選択が可能となるような体制を、介護保険制度とも連携を取りつつ推進する。


(参考:脳卒中の医療連携体制のイメージ(医療機関リスト方式))
地域の救急医療の機能を有する医療機関
回復期リハビリの機能を有する医療機関
療養医療を提供する機能を有する医療機関
○○病院
△△病院
□□病院
 

 
○○病院
◇◇病院
▲▲病院
□○診療所
 
 
◇◇病院
▲▲病院
□○診療所
□□診療所
 
<△△病院の医療機能>
医師数
保有する医療機器
社会保険事務局に届出された施設基準等
など
 
<▲▲病院の医療機能>
医師数
PT・OT数
平均治療日数
地域連携クリティカルパスの使用状況
など
 
<□○診療所の医療機能>
医師数
看護師数
平均治療日数
在宅医療の実施状況
など
脳卒中の医療連携体制に関わる医療機関をかかりつけ医等が選ぶと当該医療機関の状況が明示される。


(参考:脳卒中の医療連携体制のイメージ(医療機関所在地方式))
脳卒中の医療連携体制のイメージ(医療機関所在地方式)の図


3.将来の望ましい都道府県内の保健医療提供体制の実現に向けた数値目標の設定

 地域で適切な医療サービスが切れ目なく提供される体制となっているか等、望ましい医療提供体制の実現に関する分かりやすい数値目標を設定し、医療計画に明示する。
 具体的な数値目標は、政策的な意味合いを併せて表現することとし、例えば、
(1) 地域ごとの医療連携体制づくりが図られれば改善されることになる「脳卒中等に係る年間総入院日数の短縮(□□日から○○日へ)」「在宅復帰率の向上(○○%へ)」
(2) 地域での連携状況を直接示す「地域連携クリティカルパス利用状況の向上(○○%へ)」
(3) 在宅医療の体制が図られれば改善されることになる「在宅での看取り率・在宅復帰率の向上(○○%へ)」
(4) 住民、患者の、健康づくりを含む意識が高まれば改善されることになる「健診受診率の向上(○○%へ)」「年間外来受診回数の減少(□□回から○○回へ)」
といったものを設定する。


4.数値目標の達成に向けた都道府県、医療関係者、医育機関等の役割と責任

 具体的な数値目標については、
  (1)いつまでに達成させるのか(達成に要する期間)
  (2)誰がどのような役割で活動するのか(関係者の役割分担と責任)
  (3)どのような方策(費用など)で達成させるのか(達成までの方策)
を医療計画に明示する。


5.数値目標の達成状況に係る政策評価と次期医療計画の見直し

 計画の目標年において、達成状況を評価し、全国の状況も勘案しつつ新たな目標値を設定する。
 また、特に、未達成であった分野や全国平均を大きく下回る分野について、改善方策を検討する。



新しい医療計画の実施に至るまでの今後のスケジュール(全体)

平成17年末(国):新しい医療計画のモデルの作成と都道府県への周知
平成18年度(国):保健医療提供体制整備交付金の創設に伴う予算事業の実施
予算事業の実施に伴い、現状の把握、数値目標の設定、計画の立案、事業の実施そして政策の事後評価という一連の流れを確立する。
(国):医療に関する基本方針(全国共通で把握すべき指標や国としての数値目標など)の提示
全国規模の医療機能調査の実施・施行に向けた政令・省令・通知改正
(県):都道府県において医療機能調査(全国共通と都道府県独自の指標)を実施
平成19年度(県):医療機能調査の結果の公表・医療計画の立案作業の実施(数値目標の設定など)
(国):全国の医療機能調査の結果を公表(全国平均の状況も合わせて公表)
平成20年度(県):新しい医療計画の公表・実施(全国一斉施行(平成24年度に変更))
すべての都道府県において、9事業に関する現状の把握、数値目標の設定、計画の立案、事業の実施そして政策の事後評価という一連の流れを確立する。(※基準病床数制度など従来の医療計画の内容については一斉に見直すことはしない。)
地域の医療機能を随時更新し、住民・患者に最新の情報を提供できるようにするため、新しい医療計画制度では、都道府県が作成した医療計画を柔軟に見直すことができるものとする(医療法改正)。


各都道府県において新しい医療計画を作成する場合のスケジュール

【留意点】
 今般の医療計画の見直しに当たっては、基準病床数制度など従来の医療計画の内容について、平成20年度から一斉に見直すことは考えていない。
 一方で、9事業に関する現状の把握、数値目標の設定、計画の立案、事業の実施そして政策の事後評価という一連の流れについては、平成20年度にすべての都道府県において一斉に開始することとしている。

≪医療計画の見直し時期に応じた柔軟な対応(方針)≫
 平成18年度に医療計画の見直し時期を迎える都道府県については、現段階でスケジュールを見直すことを求めることはしない。(→平成20年度において新たな医療計画の部分について一部修正を行っていただく予定)
 平成19年度に医療計画の見直し時期を迎える都道府県については、「新しい医療計画の作成に向けた都道府県と国との懇談会」を通じ、平成20年度の新しい医療計画の一斉施行をにらんだ都道府県と国との積極的な意見交換を行う。(→平成19年度にこだわらず、1年遅らせて実施することも可能。一方で、既にスケジュールが固まっている場合は、平成19年度に見直し、平成20年度は一部修正によって対応することもできるものとする。)
 平成20年度以降に医療計画の見直し時期を迎えるすべての都道府県については、新たな医療計画の内容について、既存の医療計画の一部修正を行っていただく予定。


(注)あくまでも厚生労働省において考えた作業スケジュールの一例であり、都道府県の自主性・裁量性を縛るものではない。

平成20年度の新たな医療計画制度の施行に向けた国・都道府県・医療関係者のスケジュール案(作業工程表)

時期 都道府県 医療関係者
平成17年      
12月 モデル医療計画の公表
新しい医療計画作成ガイドラインの提示
医療機能調査に要する費用の検討  
平成18年      
4月〜 保健医療提供体制整備交付金の創設 交付金に基づく事業の実施  
初夏目途 医療機能調査のための指標の提示
全国的な数値目標の提示
全国規模の医療機能調査の実施
医療機能調査の開始(平成18年内) 医療機能調査への協力
事業ごとの医療連携体制の構築に向けて圏域ごとに医療関係者等による協議開始(※) 事業ごとの医療連携体制の構築に向けて、圏域ごとに議論
法改正後 施行に向けた政省令改正    
8〜9月 法律改正後直ちに医療計画など関連の計画について都道府県の計画作成担当者の養成研修を開始(保健医療科学院) 保健医療科学院の養成研修に参加  
平成19年      
初春目途 全国規模の医療機能調査結果とりまとめ 医療機能調査結果とりまとめ  
  過剰な医療機能や不足している医療機能の把握(医療機能の転換や不足している医療機能の充実などへの支援) 質の向上と効率的な医療提供体制に向けた検討
初夏目途 全国の医療機能調査結果の公表 事業ごとの医療連携体制についての協議終了(圏域ごと)  
初秋目途   医療計画に定める数値目標の設定及び達成方策の検討  
平成20年      
初春目途   医療計画の見直し手続き
 ・都道府県医療審議会の諮問・答申
 
4月   新たな医療計画制度の実施  
(※:従来の二次医療圏ごとの協議会の活用も視野に入れながら、事業ごとに望ましい圏域で検討。)

 今後、医療計画制度の見直しについては、国の改正作業や、都道府県の取組状況に関し、継続的な意見交換の場を設けることとする。


└→
(注) 事業ごとの医療連携体制の構築に関しては、従来の二次医療圏の範囲のみにこだわらずに弾力的に検討できるようにする。このため、現行の医療法第30条の3第3項「救急医療の確保や医療従事者の確保に関する事項については二次医療圏ごとの医療を提供する体制が明らかになるように定めなければならない」の規定を削除する予定(医療法改正)。なお、基準病床数を算定する区域としての二次医療圏の考え方は従来通り。



参考資料

新たな医療計画の作成に向けた国・都道府県・医療関係者と医療政策の学識経験者との共同作業

 社会の基盤として国民の生命と健康を支える医療提供体制については、今後とも、質の向上と効率化を図るべく、国・都道府県・医療関係者が医療計画制度を通じて以下のような役割のもと、共同作業を進めていくものとする。あわせて、大学等の医療政策の学識経験者がこの作業を支援する。

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