【 | 職種の限定が問題となった例】
事務職として採用され、これに1年半にわたって従事していた労働者が、現場業務であって重労働である配架作業に異動とされたことについて、契約に反しているとして、事務業務担当への再異動を求めたもの。
会社側は、社内で事務職と現場職の区別はしておらず、適材適所に配置転換していると主張した。
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【 | 勤務地の限定が問題となった例】
親会社から子会社に転籍するに当たり、親の介護のため定年まで通勤時間約10分のA支店で勤務できるという約束で転籍した労働者が、通勤時間1時間程度のB支店への異動を通告された。労働者は、親及び本人の体調から配置転換は受け入れられないとして、A支店での定年までの勤務又は補償金の支払いを求めたもの。
会社側は支店の人心一新、取引業者との不明朗な関係の解消、顧客の信頼回復から転勤は絶対必要であると主張している。
会社側は、最初は通勤時間1時間半程度のC支店勤務を内示したが、本人と親の健康上の理由で転勤できないとの申し出を受け、医師の診断書を踏まえて主治医にも話を聞き、通勤1時間程度のB支店勤務を命じたものであり、十分な配慮をしていると主張した。また、就業規則に転勤の根拠規定があり、A支店から異動させない約束をした事実はないと主張した。
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【 | 労働者の家庭の事情・職業設計が背景にある例】 |
【 | 労働者が配置転換の理由の説明を求めた例】
総務部門に配属されたがほとんど仕事がなく、上司から専門知識を生かせる仕事を探すから配置転換に応じてもらいたいと言われ、同意した。しかし、その後、条件に合う配置転換先がないためパソコンの単純な入力業務を行う部署への異動を命じられた。同センターでの勤務は、子どもの保育園の送り迎えに支障を来たし、また、労働者の持つ専門知識を生かせる部署は他に多くあり業務の必要性や人選で正当性がないとして、専門知識を生かせる部署への再配置を求めたもの。
労働者は、再三文書で異動の理由説明や代替案の検討を求めたが、会社からは返事がなかったとしている。
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【 | 裁判例:配置転換命令権の濫用は許されないこと、濫用の判断基準が示された例】
労働者は、全国15か所に事務所・営業所を有する会社に入社した後、大阪、神戸の事務所に勤務していた。その後、広島営業所への転勤を内示されたが、母が高齢(71歳)であり、保母をしている妻も仕事を辞めることが難しく、子供も幼少である(2歳)という家庭の事情により転居を伴う転勤には応じられないとして、これを拒否した。会社側は他の労働者を広島に転勤させ、その後任として当該労働者に名古屋営業所への転勤を内示した。労働者がこれを同様の理由により拒否したところ、本人の同意が得られないままに転勤が発令された。労働者はこれに応じなかったため、就業規則所定の懲戒事由に該当するとして懲戒解雇された。
判決では、「転勤、特に転居を伴う転勤は、一般に労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えずにはおかないから、使用者の転勤命令権は無制約に行使することができるものではなく、これを濫用することは許されないが、当該転勤命令について業務上の必要性が存しない場合、または業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく越える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではない」とされた。(東亜ペイント事件 昭和61年最高裁判決) |