05/11/29 第24回労働政策審議会職業能力開発分科会 議事録について 第24回労働政策審議会職業能力開発分科会 日時:平成17年11月29日(火)10:00〜 場所:厚生労働省合同庁舎5号館17階 専用第21会議室 ○今野分科会長 ただいまから、第24回「労働政策審議会職業能力開発分科会」を開催いたします。 本日は、佐藤委員、中馬委員、中村紀子委員が所用によりご欠席です。  本日の議題は、これまでの議論を踏まえた総括的な議論です。まず、事務局から説明をお願いい たします。 ○杉浦総務課長 資料に基づいてご説明いたします。本日用意させていただきましたのは、資料1 で、職業能力開発促進法の概要その他、これまでの法律改正の経緯などの資料を付けております。 これは、これから総括的な議論をしていただくという前提で、全体の法律体系、あるいはこれまで の措置がどうなっているかをお示しさせていただくというものです。資料2は、論点の整理という ことで、これまでご議論いただきましたものをベースにし、論点を整理させていただきました。後 ほど、前回概要でご説明いたしましたデュアルシステムの研究会の報告書が出来上がっております ので、それについても併せてご説明いたします。  資料1は先生方ご承知のことかと思いますけれども、全体の「職業能力開発促進法」の体系がこ のような形になっているということです。第1章の総則で基本理念、関係者、事業主、国・都道府 県の責務等が規定してあります。第2章で、厚生労働大臣が作成する職業能力開発基本計画、ある いは都道府県が策定する都道府県計画について規定があります。第3章がいちばん中心的なところ ですけれども、職業能力開発の促進ということで、事業主が行う職業能力開発に関する措置、国・ 都道府県による職業能力開発促進の措置、それから国・都道府県が行う公共職業訓練といった規定 を載せております。第4章が、職業訓練法人、第5章が技能検定に関する事柄、第6章が職業能力 開発協会といった全体の体系立てになっております。  2頁は、これまでの主な職業能力開発促進法に関する基本理念と、事業主の講ずる措置に関する 改正経緯です。昭和60年に「職業訓練法」から「職業能力開発促進法」へ改正した際に、基本理念 として、労働者の職業生活の全期間を通じて、段階的かつ体系的に能力開発が行われるべきものと して規定されております。さらに、その労働者の自発的努力を助長するように配慮する、といった ような事柄も併せて盛り込まれております。  事業主の職業能力開発促進の措置として、他の施設により行われる教育訓練や有給教育訓練休暇 の付与、あるいは労働者自ら教育訓練を受ける機会を確保するための援助といったことを盛り込み ました。  以降3回ほど改正をしておりますけれども、それぞれ労働者の自発的な能力開発に関するいろい ろな配慮、例えば長期訓練休暇の追加や、自らの教育訓練を受ける機会の確保のための援助といっ たことを盛り込んできております。  平成13年の改正においては、職業生活設計という定義を盛り込んでおります。いわゆる労働者の キャリアを中心に考えていくということで、その職業生活設計といった形で盛り込んで、それに配 慮しつつ能力開発が行われることを基本理念に設け、併せてそれに関する情報提供、各種の援助と いった配慮規定を追加したという経緯でこれまで改正がなされてきております。  3頁では、ただいま申し上げたようなことをより視覚的に整理したものです。左側が事業主が主 体的に行う職業訓練等の実施、OJT、off-JTによる職業訓練に併せて、教育訓練や能力検定を受け させるといった措置を事業主主体で行う。  右側は労働者主導で行う能力開発への支援措置ということで、平成9年の青い部分ですが、休暇 や時間面での配慮といったことを盛り込んでおります。平成13年の改正においては、先ほど申し上 げました職業生活設計に即したものということで、自らの能力開発を行うための配慮規定を盛り込 んでおります。  下のほうにある※のように、このほか事業主が能力開発計画を策定するとか、事業内に能力開発 推進者を選任する、あるいは事業主等による認定訓練の実施といった規定が併せて従来からありま す。  4頁は法律改正、あるいは基本計画を策定することにより、どういう効果をもたらしているかと いうことを整理しております。左側に能開法改正とありますが、当審議会等による審議を経て法律 を制定した場合です。右側の事業主においては、企業内の能力開発計画を新たな法令に基づく見直 しをしていただくということです。それにより、見直しの具体化として事業内の職業訓練、あるい は能力評価制度を見直していただく。あるいは、キャリア形成助成金制度を活用した訓練機会の確 保ということで、助成金の要件等が変更になった場合に、そういうものの支給要件として、労働組 合等の意見を聞いて策定した、能力開発計画に基づく計画の策定が要件となっている場合が多いも のですから、そういうところでの見直しが必要になるということです。  それから、労働者の配置その他の雇用管理の見直しや、キャリア・コンサルティングの機会の確 保といったことを実施し、労働者のキャリア形成の支援を行っていただくことになります。  基本計画のほうでは、国が策定する計画と併せて、各都道府県においても都道府県の職業能力開 発計画を策定いたします。県においては、それに基づいた公共職業訓練のコースや、施設等の見直 しが行われるということです。それから、国や都道府県においては、その計画の内容を実現するた めの必要な職業訓練を実施したり、あるいは職業能力開発推進者への講習、あるいはキャリア形成 助成金による事業主への支援、それから情報提供、広報・啓発を行うといった政策を行っていくこ とになります。  5頁以降は、何回か前に一度ご説明しておりますけれども、労働者の職業生活設計に即した自発 的な能力開発の促進及び向上を促進するための、事業主が講ずる措置に関する指針です。これは、 平成13年の法改正の際に、労働省告示として出されたものです。内容は一度ご説明させていただい ておりますので、詳細は省略させていただきますけれども、第2の一番上の左端から、事業主が講 ずべき措置の内容として、情報の提供その他の援助ということで、キャリア・コンサルティング等 の実施、その他支援のやり方を第2のところに書いてあります。  下のほうの第3では、労働者の配置その他の雇用管理についての配慮ということで3項目載せて あります。第4は休暇の付与ということで、有給教育訓練休暇、長期教育訓練休暇、その他の休暇 の付与の項目です。6頁で第5は、教育訓練等を受ける時間の確保ということで、いろいろな時間 面での配慮についての記載があります。こういう措置を講じながら、労働者の自発的な能力開発に 対する支援の措置を定めているものです。以上が、現状のご説明の資料です。  次は、資料2「論点の整理(案)」です。これも、これまでに何回かこの場でご議論いただいたも のを、私どものほうで整理させていただきました。それから、今後の方向性についても併せて記載 しております。  1は、職業能力開発をめぐる課題として、若年を中心とする職業キャリア形成支援の必要性です。 これも、これまでに何度かご説明したことと重複する部分ですけれども、我が国経済社会が知識の 重要性、あるいはさまざまな能力を持った人材を育成していくことの重要性がより大きくなってき ているということの中で、一方で厳しい雇用情勢、あるいはいろいろな教育システム、就職に係る システムの変化の中で、ニートやフリーターなどの能力の蓄積が困難な若年者が増加している。  企業においては、中核的な人材に、教育訓練投資を集中する傾向がある一方で、それ以外の労働 者については希望に応じた能力開発の機会が得にくいという格差が顕在化している。  それから、職業生活設計について自ら考える志向が高まっているにもかかわらず、時間面、費用 面、情報面等の不足が隘路となって、なかなかそういう機会を得られない場合が存在する。  それから、職業生活が長期化しているにもかかわらず、学び直しの機会、あるいは失業だけでは なくて育児・介護などの理由等による職業経歴の中断後の再訓練の重要性が増加している。特に、 ニート、フリーター、失業者が400万人に上るといった状況の中で、それを放置すれば我が国の人 材の質的劣化ということで、今後の我が国経済社会の質的な破綻への危惧があるということを述べ ております。  (2)として、技能の振興、継承、現場力評価の必要性です。いろいろな事故等の発生を契機と して、企業への信頼が揺らぐ中で、現場力の在り方が問題となっている。それから、企業間競争が 非常に激化している中で、高付加価値の製品などを作る現場を支える人材の重要性が改めて見直さ れている。  一方で、2007年問題として団塊の世代がこれから引退過程に入るといったことでの、技能の円滑 な継承といったことが課題になってきているということ。そういう円滑な技能の継承の問題ととも に、若年者の意識啓発による現場への誘導、実践的な職業能力を育成する教育訓練の仕組みづくり、 効果的に技能継承を進めるための企業内の体制整備、技能の重要性に関する国民各層の意識の喚起 ということを総合的に進めていくべきであると述べております。  2番目として、制度見直しの方向性です。そういう状況を背景として、以下の方向で対応する必 要が考えられるということです。(1)職業キャリア形成の支援措置の充実です。1(丸の中に1) 職業キャリアの準備段階における支援措置です。これまで、若年、壮年、高齢者という分け方をし ておりましたが、必ずしもそういう世代ごとの分け方がはっきり分かれるものではないのではない かというご議論もありましたので、ここでは若者を中心としたところにおいては、職業キャリアの 準備段階における支援措置という書き方をしております。  そこで書いておりますのは、後ほどご説明いたしますデュアルシステムの在り方についてです。 現行の短期のものを中心とする教育訓練機関主導型のもののみならず、いわゆる座学と実習を効果 的に組み合わせ、現場力の中核となる人材を育成する実践型人材養成システム(仮称)といったも のを法律に位置づけて、就労と就学の要素を併せ持つ第三の選択肢として普及定着を図るというこ とが書いてあります。  併せてその他の政策として、これまでやってきております若者自立挑戦プラン等に基づく事業に ついてですが、小学校や中学校という早い段階から職業との触れ合い、あるいは職業意識の啓発が 重要である。  それから、ニートやフリーターなどの個々の要因の多様性により、カウンセリングやキャリア・ コンサルティングによるきめ細かな支援が必要であろう。併せて、NPO等のいろいろな団体を育 成し、その若者のボランティアや社会参加を受け入れる多様な分野をつくっていく必要があるので はないか。  こういう若者に対する就労への導きとしては、企業のみならず家庭、学校、地域、社会といった 所が、それぞれ適切な役割を果たして社会全体として支援すべきであろう。  2(丸の中に2)は、壮年とか中高年といっていた部分ですが、職業キャリアの発展段階及び円 熟段階における支援措置と書いております。ここでは、労働者の自発的な能力開発に向けた環境の 整備ということです。具体的には、例えば勤務をしながら社会人大学に通学をすることが可能とな るような時間面での配慮、といったものの見直しをする。こういう企業の取組みを後押しする助成 金制度の見直し。企業内外における、キャリア・コンサルティング体制の充実による情報提供、相 談面での配慮といったことを書いています。  併せて、職業キャリアの展開が円滑なものとなるように、いろいろな職業に関する情報などの提 供体制を整備すること。教育訓練給付に係る講座指定などにおいて、いろいろ高度なものも含めた 多様な教育訓練メニューを提供することが重要である。それから、失業とか技能が陳腐化すること によるキャリア・ブレイクと書いてありますが、職業経歴の中断があった場合における新たな技能 の蓄積に向けた再訓練の機会の確保や、大学・NPO等の多様な教育訓練の機会の確保が重要であ るということ。  (2)は、技能の振興、継承を通じた現場力強化のための措置の充実です。特にこの点において は、技能の継承が困難な状況にある中小企業への対策を重点的に講ずるために、中小企業労働力確 保法を改正し、改善計画の認定の枠組みを活用した、定年退職者を活用したOJTやコア技能のデジ タル化、マニュアル化を行う場合の訓練などの取組みを行う場合への支援を行っていくということ です。  同時に、そういう技能継承等に関する相談窓口の設置などにより、情報提供・相談援助体制の整 備を図る。事業所内における雇用管理面への配慮、ということを事業主の措置として明確にするこ とも検討するということです。  併せて、技能の継承・振興といった観点からは、児童・生徒の段階からものづくりに触れる機会 とか、そういう競技の機会を増やすとともに、高度熟練技能者を活用した政策を推進する。併せて、 2007年に実施されるユニバーサル技能五輪大会を契機とした、技能振興策を講じていくということ です。  3番の最後に、今後の検討課題です。第8次計画を策定するに当たり、いま申し上げたようなこ との具体化のほかに、これまで指摘のあった以下のような点に留意して進めていくべきであろうと いうことでいくつか書いてあります。1番目は、就業形態や企業規模による能力開発機会の確保が 見られる、あるいは労働者の意識が多様化しているということで、労働者一人ひとりの状況に応じ た多様な教育訓練機会の確保・整備を図る。特に障害者や母子家庭の母などの特別な配慮を必要と する方々の支援の在り方についてさらに検討を深めていく必要があろうということです。  2番目の職業能力評価制度の整備については、企業・団体による活用状況や評価制度の労働者へ の効果といったことを十分把握した上で、社会的ニーズを踏まえたものとなるよう留意する。  最後ですが、能力開発の諸政策が実際効果的に行われているかどうかということで、適切に目標 管理を行うとともに、こういう公的サービスの情報が対象者に行き渡るよう広報活動に取り組むこ とが重要であるということを述べております。以上が、これまでの議論を踏まえた論点を整理した ものです。  資料2−2としていろいろなグラフを付けております。これは、これまで提出させていただいた グラフや表と重複しておりまして、ご説明はそのときにさせていただいておりますので、本日はご 説明を省かせていただきます。ご参考にしていただければと思います。  資料3で、先ほど申しました日本版デュアルシステムの今後の在り方についての研究会の報告書 についてご説明いたします。2頁から実施状況です。これまで取り組んできております日本版デュ アルシステムということで、推進方針を定めて実施をしてきましたけれども、前回もご説明したか と思いますが、大きく分けて2類型に大別しておりました。教育訓練機関主導型と、企業主導型と いうものです。  教育訓練主導型というのは、教育訓練機関が若年者を受け入れて、そのコースの中で一部企業実 習を盛り込んでいくという形のものです。企業主導型と申しますのは、企業が最初から若年者を雇 用するということで、その中で教育訓練機関を選択し、一部そちらで研修していただくというもの です。当面は、教育訓練主導型を普及する方向で考えてきたものです。  平成16年度の実施状況としては、2のところで大きく分けて4つの類型に分かれます。1番目は、 公共の訓練施設から、専修学校などの民間の職業訓練機関へ委託して実施している、離職者を対象 に主にやっているものです。その中で、一部実習部分を設け、それを企業に再委託するというもの です。標準的な期間は5カ月ぐらいで、人数は平成16年度は2万3,000人程度の実績です。  2番目としては、公共職業訓練がやっている、1年とか2年のコースの中に、企業実習部分を盛 り込んで、それを企業に委託するもので、1,000人程度の規模です。3番目は、民間の教育訓練機 関が実施する訓練について、一定の実習部分を企業に委託するものですが、これについては期間が 1、2年で3,000人程度です。4番目は認定職業訓練です。これは、最初から企業が雇っている者 の中で、認定された訓練コースの中でやっていただくということで、5,000人程度です。  なお、3番目の民間教育訓練機関がやっている中で、航空関係やホテル関係といった業界の企業 と、専修学校とが提携をしてタイアップした形で訓練をやっていただきます。その上で、最終的に 専修学校の課程を修了した者については正社員として採用するといった慣行の下でやっている例も あると承知したところです。  それらの実施状況から見た課題が3頁から書いてあります。1番目の教育訓練機関主導型の(1)の 類型として、就職率は一般の委託訓練に比べて68.4%で上回っておりますが、ただ、その採用につ いては正社員として採用されるのが49.5%、その他派遣、パート・アルバイトが4割以上あります ので、必ずしも安定した就職につながっていないという課題があります。それから、一般の委託訓 練に比べて中退率も高いという状況です。  2(丸の中に2)の公共訓練の中で実施をしている類型としては、内定率は今年9月中旬時点で 81.3%という状況で、しかもほとんど正社員としての内定を得ているということです。ある意味で は好調な形になっています。雇用・能力開発機構が実施しているところですので、そこからヒアリ ングなどをした結果、評価できる面としては1,2(丸の中に1,2)にあるように、現場の実習 を通じて職業人としての行動規範を身に付けるといった実践的な職業能力の習得に効果的であると いうこと。  それから、企業の求める能力と求職者が持つ能力のミスマッチを縮小しながら就職につなげてい くということでのマッチング機能が果たされているのではないかということです。逆に課題として、 ヤングジョブスポットやジョブカフェといったところから訓練に入ってきている人たちについては、 必ずしも意欲や適性の見極めが十分なされていないということで、なかなか続かない人もいるとい うこと。あるいは、実習先の企業を開拓することはなかなか困難な面があるという課題の指摘があ りました。  行政のほうで、全国の公共職業能力開発施設を通じて実態調査を行った結果として、受入れの企 業側からは、訓練に伴う人的負担が大きい、訓練生の選択の幅が狭い、マナーや挨拶といった基本 的事項から教える必要があるといった意見が出ております。一方訓練生からは、座学と実習との関 連性が薄い、希望する企業での実習ができないなどの意見が出されています。  3(丸の中に3)の民間教育訓練機関が実施しているものについては、課題として訓練生を安定 的に確保できる見通しがなかなか立ちにくくてということ、訓練の実施に関する負担感が大きいと いった意見が出されております。このほか厚生労働省として、経済団体と各種民間教育訓練機関等 を、双方にコーディネーターを配置し、相互の掘り起こし、マッチング、相談援助等を行うコーデ ィネート事業を平成16年度からやっておりますけれども、この事業の結果平成18年4月時点で25コ ース程度をデュアルシステムの訓練コースの実施が見込まれるということで、そのほかにも前向き に検討していただいている所が相当数見られるわけです。  逆に企業としては、フリーター対策としてこのデュアルシステムが開始されたということで、訓 練生の意欲などに懐疑的な傾向もあり、有期労働契約を締結して訓練生を雇い入れるということに は慎重な向きも多いということで、実際に普及という面についてはまだ少数にとどまっているのが 実状です。  5頁は現行の支援策です。現在行っている政策としては、平成16年10月から就職困難度の高い 若年未就職者を雇い入れて、デュアルシステム訓練を実施した場合のキャリア形成助成金の高率助 成などをやっておりますけれども、まだ対象者の要件の限定が厳しい面もあり、ほとんど活用され ていないような実状です。なお、来年度においては、引き続きこのシステムの推進のための予算要 求を行っているほか、キャリア形成助成金については、一定の要件に合致するOJT部分も含めて助 成対象とするといったことや、コーディネート事業の拡大といったことをいま予算要求させていた だいております。  今年度から、このデュアルシステム導入促進事業として、業界団体のネットワークを活かしなが ら、参加企業のニーズに即した訓練コースの設定ということで取り組んでおり、現在8団体にお願 いしてやっていただいております。  このうちで情報サービス産業関係の団体にヒアリングを行った中では、専門教育を受けた人材の 不足感が強まっている中で、業務を遂行する上での必須の知識を習得させる基礎教育を共同で行う ために、民間の教育訓練機関と連携し、業界内で汎用性の高い教育訓練モデルを開発する方法で検 討したという意見もお聞きしております。  2番目は今後の方向性です。1(丸の中に1)で申し上げました教育訓練主導型の限界と書いて ありますが、6頁で先ほど申し上げましたように、就職率ではやや良い結果は出ておりますけれど も、必ずしも安定した雇用に結びついていないということ。まだまだ本来のデュアルシステムの仕 組みと異なっているということで、認知度も低いという結果につながっております。  現在は、大半が教育訓練主導型でやっておりますけれども、就労と就学に次ぐ第三の選択肢とし ての意義を持つものとはなっていないということです。特に、企業にとっては訓練コースの中の一 部を実習するということだけの、受動的な立場になっていて、企業が主体的に採用等の決定に関与 していくことはまだまだ困難であろうということです。学校側にとっても、まだ企業の接点が必ず しも確保されておりませんので、認識度が低いこともあり、普及に至っていないということです。  若年失業者やフリーターを対象とする就労支援策の性格が強いわけで、将来の中核的人材を期待 する企業にとっては魅力に乏しいということで、まだ進路の選択肢として位置づける段階にはなっ ていないということです。  2番目は、今後のデュアルシステムの在り方です。これまで申し上げましたように、教育訓練主 導型ということをやってきたわけですけれども、これにとどまらず企業が有期雇用の下で実習を行 いつつ、座学と実習を組み合わせた形で養成するデュアルシステムを推進する段階には来ているの ではないかということです。  7頁で、こういう訓練をやることにより、安定的な就労をなかなか見出せない若者が多い中で、 実践的な能力を身に付ける教育訓練の機会が非常に重要である。それから、求人企業と求職者のミ スマッチを縮小しながら、就職に結び付けていくというマッチング機能が期待される。大学生が、 これからは全入時代ということでニートやフリーターといった方々が多く出てくる懸念もあるわけ ですので、そういう中で若者の実践的能力を開発し、実践的人材を求める企業のニーズに応える教 育訓練が非常に重要であろうということ。  企業の高度化、高付加価値化といった中でも、そういう人材の養成は非常に重要ですので、それ を確保し得る新しい採用形態となり得るのではないか。企業にとっても、企業のニーズを汲み取っ た中で、こういうことをやっていけばよりオーダーメイド的な訓練を実施する道を開くことができ るのではないかということで、就職や進学に次ぐ実践力を養う第三の選択肢として、こういうシス テムを定着していく必要があるのではないかということです。  ただ、いま大半で行われている、短期委託訓練型の教育訓練機関主導型は、離職者に対する早期 の就職コースとしては、それなりに実績も上がってきておりますので、一方でこれらについてはフ リーター等の早期就職対策として引き続きやっていくことが妥当であろうと書いてあります。  8頁では、名称について書いてあります。これまで、日本版デュアルシステムという名前の下に 行ってきましたが、これまでご説明しましたとおり、いろいろな類型がその中に含まれてきていて、 関係者に混乱をもたらしかねないということです。厚生労働省のみならず、文部科学行政のほうで も、こういう言葉を使って実際にやっておりますので、そういうことについてなかなか統一性がな い。ドイツにおいても、デュアルシステムという名称で呼ばれているものの1割がその施設内訓練 だけでやっているということもあって、一般的な通称を用いるということがいろいろな混乱を招く のではないかということです。この辺の名称については、また後ほど出てきますけれども、他と紛 れることのない名称を考える必要があるのではないかということです。  従来の企業主導型との関係の整理ということで4番目ですが、従来の企業主導型というのは、当 初から企業が雇用し、off-JTの部分についても企業が負担するということでしたので、その実施は なかなか広まらないのではないかという懸念があります。この点を打開するために、訓練全体を通 じた企業の主導性を確保しつつ、off-JTによる基本的な知識の習得については、訓練希望者本人の 主体的な取組みによるべきではないかということです。  こういう企業主導での組合せ訓練の実施形態に明確な位置づけを与える観点から、能力開発促進 法における事業主が講ずる職業訓練の一形態として規定するということの検討が求められるという ことです。  その際の名称ですが、研究会の中でいろいろご意見をいただきまして、例えば実習併用職業訓練 とか、座学・職場実習結合型訓練といった名称も意見としてあったわけです。法律的な名称をどう するかということは、法制的な面からの検討が必要ですけれども、一般的な呼称としては「実践型 人材養成システム」を提唱しております。こういう形のものとして、教育訓練機関主導型とも、従 来からの企業主導型とも異なる形としてその制度を組み立てるべきではないかということです。  5番目で、実践型人材養成システムの流れです。いろいろなパターンが考えられると思いますが 1つのモデル例としては、1(丸の中に1)からずっと書いてありますが、最初から業界団体や事 業主団体と、それから民間の教育訓練機関、あるいは公共の職業能力開発施設が、そのモデルコー スを共同して開発する。  次に、その企業と教育訓練機関において、そのモデルコースを参考に実際の具体的なコースづく りといったことをあらかじめ行う。その上で、こういうシステムを活用してやろうという企業にお いては、導入的な座学の受講に合わせて、訓練生と有期の雇用契約を締結して、企業におけるOJT を中心とした実習を行って、現場における実践的能力の習得を図っていく。  最後に、訓練の成果の評価を行い、その上で企業と訓練生双方の希望が合致すれば、当該企業に 就職するといったことが考えられます。途中の段階で両方のニーズが合致すれば、期限の定めのな い雇用に移行することも考えられるのではないかということです。  大きな3番として、人材養成システムの制度設計です。訓練の目標及び期間の在り方として、到 達目標としてはより実践的な職業人を育成するということです。公共訓練でやっている高度職業訓 練の専門課程、あるいは認定職業訓練短大の到達目標を理想とし、今後その辺は専門家の意見や、 個々の業界の実情を踏まえながら検討していく必要があろうということです。  訓練の期間については、2年ぐらいを基本とすることがいいだろうということですけれども、こ れでは長すぎるという職種については、それより短いものも選択肢に入れて検討することも考えら れるということです。  こういう仕組みについては、以下のようなニーズにかなったものではないということです。1 (丸の中に1)は、ものづくり産業において団塊の世代が引退過程に入る時期を控えて、実践的な 能力を持った、現場のリーダー候補者の育成ということでの課題に応えるものになるのではないか ということです。  11頁で、サービス産業においても、今後必要となる業界団体においてヒアリングを行った結果と して、中盤から高めのレベルの人材、現場の基幹的業務を担う人材が必要であるという意見が多数 示されており、そういう人材の確保ということに応えるのではないかということです。  カリキュラム編成の留意点として、カリキュラムを編成するに当たっては、座学と実習の相互の 関連性をより強固なものとする必要があるということです。これについては、こういう訓練カリキ ュラムの編成を行うことにより、いままで意見として出されていた関連性が薄いという不満を解消 することができるだろうということです。  研究会の中で意見としてありましたのは、教育訓練機関の担当指導員が、実習先の企業を訪問す ることが非常に重要だという指摘があった一方で、そういうことを頻繁にやることになると、企業 側の手間も大きいのではないかといった指摘もあるわけです。その辺は両面を見ながら検討してい く必要があろうということです。  3番目の修了時の職業能力評価の在り方ですが、訓練が修了した後で評価することは非常に重要 で不可欠なものです。この評価のやり方については、いろいろ多様な職種のコースがありますので、 一律にやることはなかなか難しい面もあろうかと思います。技能検定がある職種については、そう いう制度を活用することも考えられますし、それ以外の分野については、職業能力評価基準を活用 して工夫する、あるいは他の省庁の所管している資格制度や民間の資格を含めて活用するというこ とで、いろいろな制度を組み合わせながら今後検討していく必要があるのではないかということで す。  4番目として、12頁で企業の普及方策です。今後、こういうシステムが普及していくためには、 その企業に理解をしていただいて進めていくことが必要ですので、こういう努力を行政としてもや っていかなければならないと思われます。いま現在やっているデュアルシステムの導入促進事業の 関係の業界などを対象にし、集中的に広報を行っていくことが大事だろうということです。  支援策の在り方ですが、先ほどから申し上げておりますように、教育訓練機関主導型と、企業主 導型と比べても、それぞれ訓練生と企業にコスト面でのバランスをもたらすということを認識して いただく必要があるということです。企業は、そのシステムの中で座学に要する授業料の負担は訓 練生が実施するということで、off-JTの部分の経費は企業にとっては軽減されることになりますし、 訓練生にとっては実習部分において有期の雇用契約を結ぶことになりますと、そこから賃金収入が 得られることになりますので、その分訓練生にとっても負担は軽減されることになろうということ です。  こういう特性をより効果的に進めていくためには、国が細かい技術的な支援をきめ細かくやって いく必要があるほか、公的支援政策の在り方についても検討していく必要があるだろうということ です。その公的な支援政策の在り方としては、企業に対する支援として、現在のキャリア形成促進 助成金制度を拡充し、一定の要件を満たした中で、助成の対象としていくことが考えられます。そ れから、業界団体の取組みによる奨励措置といったようなことを今後検討していく必要があろうと いうことです。  なお、訓練生に対する最低賃金の適用除外について、一部の経済団体から要望が出されておりま す。これについて私どもが研究会の過程で調査した結果によると、有期の労働契約期間中の賃金に ついては、地域別最賃がそのまま採用されているわけではなくて、800円を超えるものが約3分の 2以上を占めていました。最賃は、今一番高い東京都その他の所でもほぼ700円程度ですので、最 賃に張り付いているという状況では必ずしもないわけです。  それから、実習生を受け入れている企業からも、国の支援策として最賃の適用除外を求めている 意見は必ずしも多くないこともありますので、現時点では最賃の適用を除外することは適当ではな いのではないかということで、ここの意見として掲げております。  訓練生に対する支援策としては、金銭面の負担を軽減することとしては、公共の職業訓練機関で あると、技能者育成資金という貸付制度があります。専門学校であれば、元の育英会、いまの日本 学生支援機構の奨学金といった制度もありますので、そういうものの周知が求められるだろうとい うこと。キャリア・コンサルティングを実施するなどにより、意欲を高めて訓練効果が上がるよう にしていくことが重要であるということです。  民間教育訓練機関に対する支援としては今後の話ですが、座学部分を担う教育訓練機関に対する 支援策も今後は検討していく必要があるだろうということです。具体的に方向性としては、文部科 学行政との関係にも配慮しつつ、企業のニーズに合った訓練カリキュラムを作成する上で、負担軽 減のためのノウハウ提供について検討する必要があるだろうということです。  別紙の9、27頁に前回もご説明いたしましたけれども、今回のイメージとして、実践的人材養成 システムの全体の形を書かせていただいております。詳細は重複になりますので省略させていただ きます。以上が、今回出していただきました研究会の報告です。 ○今野分科会長 いま説明のありました事務局からの内容を踏まえて議論をしたいと思います。ど こからでも結構ですのでご意見をいただければと思います。いままでは、少しずつ話が出ていたの ですが、本日初めてデュアルシステムについて体系的な話がありましたので、それも踏まえてご意 見をいただければと思います。 ○長谷川委員 質問です。日本版デュアルシステムの名称も変えて、もう少し充実させようという ことですが、私が誤解しているのかイメージが掴めないのか分からないのです。日本版デュアルシ ステムを使うのは若者の労働者だと思うのです。出口は企業の中核的な労働者ということで、すご い重要なポジションに就く労働者をアウトプットするということはわかりました。  入口のところは若者を考えるときに、中学を卒業した人、高校を卒業した人、専門学校を卒業し た人、短大を卒業した人、4年制の大学を卒業した人、がいると思うのです。ここでいう入口とい うのはどういう人をイメージして、1年とか2年の訓練をして、出すときには企業の中核的な人材 にするということでした。  私は、日本版デュアルシステムが登場してきたときに、我が国の若年失業率が高いということと、 フリーターといわれている人たちがいる、ニートといわれている人たちがいて、そこに対して日本 版デュアルシステムが登場してきたと思っていたのです。そのイメージと、今回の改正のイメージ が自分でつくれないものですから、そのイメージを教えてほしいのです。 ○杉浦総務課長 いまおっしゃった認識が間違っているかということでは、確かにこれまでの日本 版デュアルシステムを推進方針の中で検討してやってきた最初の過程の中では、確かにそこは大量 の職に就けない若者をどうするかということで、フリーターの方々、あるいは離職者の方々をメイ ンに考えて、当面早く職に就かせるということにターゲットを置いてきたのは事実だと思います。 そこは、先ほどの研究会報告の中にありましたような、教育訓練機関主導型というものの中でも、 委託訓練の一部としてやってきている部分になっていようかと思います。  日本版デュアルシステムという名前の下に始めたものの大半がそういうことになってきてしまっ ていますので、そこは世間のイメージもそういうところに持っていってしまいがちになるわけです けれども、これからのことを考えた場合に、フリーターの方々だけをターゲットに置くということ ではなく、むしろこれからそういうことにならないように、これまでは高校を卒業して就職する人、 大学や短大に進学する人がいたわけです。そういう人だけではなくて、大学を出てから実際に自分 がどういう方向に進んでいいのかわからないということでフリーター化してしまうことをなくすた めにも、一定の企業と教育訓練機関がタイアップしたようなところで、高校なら高校を出た後で、 次に一定の期間訓練をするということで、できるだけ就職に結び付きやすい方向に訓練をしていた だくという新しい類型として考えている部分ですので、そこはこれまでの私どもの説明の方向とは 必ずしも同じではないわけですが、まさに新しい第3の選択肢として今回の新しい実践的人材養成 システムというのを捉えて、そういうのを作り出していきたいということで考えているものです。 ○長谷川委員 私、これを全然否定しているわけではないのです。第3の類型とか第3の何とかと いう言い方で「なるほど」と思い、ある意味では資料2の論点整理のところで若干関連させると、 資料2の論点整理の1の(1)の若者を中心とする職業キャリア支援の必要性の1つ目の○に、現 状がこういうところがあるというところでは、ここに対して次のデュアルシステムが、こういう形 で登場してくるのかなというので、現状と新しい政策というのは、なるほどマッチングするのだな と思ったのです。だからそのことは全然否定しなくて「なるほど」と思いました。  あとは次の議論ですが、このデュアルシステムは、これはこれでなるほどと思いましたけれども、 「しかしながら現実には」ということで○があって、下に・が4つあります。これは途中で入って きますけれども、この4つの・に必ずしも入っていない政策もあるわけで、それは次の段階で議論 していくという認識でいいのですか。 ○杉浦総務課長 もちろん、この後ろのほうで出てくる制度改正を念頭に置いたというか、そうい ったこと以外にも、もしそういったもので課題として出てくるならば、そこは基本計画を策定する 段階で、こういった政策としてより結び付けていくべきだという議論は、当然あって結構だと思っ ています。別にそれに限定する必要は必ずしもないと思います。 ○今野分科会長 ということは、いまの趣旨は、例えばこの・に対応している後ろ側の政策の方向 が不十分だったら、こういう政策はどうかというのを、長谷川委員が言っていただければいいとい うことですね。 ○長谷川委員 それは後で言います。現状があって、現状に対してどういう施策をするかというこ とですから、自分なりの理解の仕方ですけれども、1の(1)の○のところで、こういう現状があ りますねということに対して、今回の日本版デュアルシステム研究会報告は、ここに対してデュア ルシステムを充実させようということでできたのかなと、自分の勝手な理解ですけれども、そう理 解していいのかなと思いました。  デュアルシステムでは、前から言っていたように企業が訓練しない限りは無理だろうと思います。 いくら座学でやっても力が付いてこないところに対して、企業を受けられるはずがないわけですか ら、企業に軸足を移さないと、これは無理なのではないかと思っています。ただ、今回のこの報告 で企業のほうに確実にウエイトがかかるかどうかというのは、制度設計する段階ではすごく準備が 必要なのではないかと思います。  あと、どこが使うのかなということを少し議論しておいたほうがいいと思います。おそらく大企 業は自分のところでやると思いますから、中小などが産業別に受入れ態勢を作ることが重要なのか なと思います。 ○今野分科会長 最後の点はご意見ですか。 ○長谷川委員 そうです。 ○玄田委員 とてもいいのではないかと思いました。是非うまくいってほしいなと思います。「第3 のキャリア」というのはとてもいい表現だなと思いました。高校をやめた後に大学や専門学校に進 学するというひとつの道と、フリーターが就職するという第2の道に対して、第3のキャリアぐら いのほうが何となく格好よくないですかね。第3のキャリアと謳うとちょっと魅かれるかなと思い ます。ただ、是非これが成功するためには、私は結構大企業でもニーズはあるのではないかという 感覚はあります。いろいろな産業界、労働界、教育界の英知を結集して、第3のキャリアルートづ くりというのを作っていっていただきたいと思います。  その中で、第3のキャリアみたいな言い方が、ひとつここに書いてあることで特に賛成するのは、 ニート対策、フリーター対策みたいなことにならない。そうではないよということを繰り返し説明 されることのほうが、誤解が少なくてとてもいいだろうなと思います。高度化人材、日本の高付加 価値化という課題に対して、新しいルートを作って学びながら働くということを、より実践的に確 立していくという言い方は、とてもいいだろうと思いました。  その中でひとつ違和感のある表現があって、それは先ほどの長谷川委員の言われたのと共通する のですが、企業でやるのは実習、教育訓練機関でやるのは座学という、この座学というのはいかが なものかなと思います。off-JTをやるというのがイコール座学というのは、若干、本来求めている イメージと違うのではないかという気がします。  例えばそれはこういうことで、この間、あるエンジニアリング会社に行って、off-JTの研修施設 を見せていただいたのですが、そこは何をやっているかというと、off-JTで座学もしていますが、 これまでの実践現場で起こったいろいろな失敗事例というのを実際にそこに再現しているのです。 もちろん、こんなのは失敗事例のすごいドキュメントがあるわけですが、そんなものは現場では誰 も見る余裕もなくて、結局、いろいろな失敗事例で絶対起こしてはならないような事例というのを、 まさにそこにセンターを作って再現し、それを体験しながら、こういう事例というのは危険なんだ なという勘所を作るというので、別に教室に座ってやっているわけではないのです。  なぜそんなものを作ることが必要かというと、まさにここにご指摘のように、いま現場でそうい うことをやる余裕がないという現実的なニーズと、もう1つは、いろいろな変動期の中で実際、い ま現場が一時的にない職場というのがあるのです。例えば典型的なのが 原発です。いま原子力発電所というのは造られていないので、それを実践しようにもそういう現場 がないわけです。ただ、何年か経ったらまた原子力発電所の建設が進んだり、将来的な維持のため に、そういう人材をつくらなければいけないのですが、実はOJTでやる場所がないものですから、 そういうのを体験的に学習する機会というのを、off-JTでやっているわけです。  もちろん、別に座学ということでいいのかもしれませんが、「また座って勉強かよ」という感じで、 座学というのは何か楽しそうではない。本当はoff-JTというのは別に座学に限らずに、私は広い意 味で学習でいいのではないかと思います。実習と学習というのを兼ね備えるものというので、言葉 がいいかどうかわかりませんが、「実学習で人材養成するプログラム」ぐらいのほうが、本当はこの システムが目指しているものを表わしているような気がしますので、別に実践型人材養成システム に違和感はないですが、実学習ぐらいがどうでしょうか。 ○今野分科会長 この研究会でもちょっと問題になったのですが、実習という言葉はoff-JTでも実 習はあるのです。そこと紛らわしいという話はあったのです。 ○江上委員 いまの玄田委員のお話と長谷川委員のお話を伺っていると、おそらくイメージしてい る教育学習現場が相当乖離しているなという感じがするのです。例えば、いま玄田委員が言われた ようなリスクマネジメントなどについて実際に勉強するというと、大企業でそれだけ事例が豊富に あって、記録があって、そのケースをきちっと整理して、それをシミュレーションして、グループ でディスカッションするという形になると、いろいろな画像やシミュレーターなども必要になりま す。 ○玄田委員 そういうのは全然なかった。大企業にもなかった。 ○江上委員 どの辺を対象にして、これを実践型人材養成システムを適用していくのか、ある程度 イメージを絞っておかないと、大企業はかなり社内でその部分の蓄積は非常に高いですし、どんど んそこのところに注力していますし、系列会社とか取引先とかに出向の形で勉強させるという仕組 みが、いま陸続と進んでいますので、どうなのでしょうか。鈴木委員などはいろいろその辺をご存 じだと思いますが、いかがですか。 ○今野分科会長 私が司会者ですから、まず玄田委員が言われた言葉からいきましょうか。内容の 問題でなくて見せ方の問題というか、外に表現する場合にどちらが適切かということだと思います が、どうですか。厚労省としては実習という言葉は何か法律的な意味があるのですか。あるいは座 学というのは動かせない法律的な意味があるとか、そういうことはあるのですか。 ○草野審議官 例えて言うと、1つは座学といったような理論というか、そういうものを勉強して、 もちろんその中では研修という形で理論をやりながら、少し実習めいたこともやるというのは入っ てくるのですが、どちらかというと理論的なものです。実習というのは実際にやってみて、もちろ んその中に理論も入るわけですが、中心となるものが理論であるか、体を動かして実技を身に付け るような実習であるのか。そういうところで主体も教育訓練機関と企業というふうに分かれますの で、そこをうまくパラレルで表現できるものがないかということです。座学と言いましたけれども、 学習でもよろしいかと思います。  ただ、実技で体を動かして身に付けても広い意味では学習なので、学習というのは相当広いもの ですから、そこら辺、逆にどう整理したらいいか教えていただきたいと思います。別に座学という ことにこだわるわけではありません。むしろ理論的なものを中心に教育機関が教えて、実技で身に 付けていくというプロセスを実習ということで企業がやると、要はその組み合わせだということで すので、適切な表現があれば教えていただきたいと思います。 ○今野分科会長 外に向けて「実習・座学結合」と言うのと、「実習・学習結合」とか実習何とか結 合とか、そういう名称として何がいいかです。鈴木委員、いかがですか。 ○鈴木委員 一般的によく座学というのは、いまの草野審議官の説明のようなことでさらっと受け ていたので、特に違和感はなかったのですが、座学と現場での実習ということで、その両立なのだ ろうなという印象は持ったのです。関連して質問ですが、いいですか。 ○今野分科会長 先ほどの江上委員の質問がありましたので、それについていかがですか。 ○鈴木委員 それも企業によっていろいろだと思います。それは玄田委員が言われたとおりだと思 います。江上委員も関係されているJRなど立派なそういうのがあります。過去のいろいろな事故 などの集大成があって、それを今に学ぶようないろいろな仕組みができていると思うので、そうい うものも活用していくということはあるのでしょうし、それは企業によって導入の仕方もさまざま だと思います。必ずしも大企業がそれが充実しているかというと、そうも言い切れないです。中小 でも十分そういったところを活かしている所があるのではないでしょうか。  私の質問ですが、実践型人材養成システムを今までのデュアルシステムに切り換えていくという か、こういう方向で今後進めていくということで、これを職業能力開発促進法に位置付けるという のですが、どういうふうな形で位置付けるかというのが、是非聞きたいところです。  もう1つは、レポートのほうで取りまとめている7頁の下にあるのですが、この実践型人材養成 システムはこれから進めていくのと同時に、現行の日本版デュアルシステムは残すような書きぶり があります。そうすると日本版デュアルシステムというものと、ここの混乱があるのではないかと いうことです。  文科省でも、高等学校の勉強と企業の実習を組み合わせた、先方も日本版デュアルシステムと言 っている、ものづくり等の現場での活躍できる人材を養成しようという仕組みが一方でありますの で、その辺との整理というのはどういうふうに考えたらいいのか。この日本版デュアルシステムが、 こちらでまた残ってしまうと、その辺のいろいろな問題が引き続きあるのではないかと思ったので すが、その2点について質問させてください。 ○村山調査官 1点目の法律上の位置付けをどうするかということですが、職業能力開発促進法は いわば職業訓練に関する基本法としての性格を持っていて、特別な罰則とか義務付けということで なくても、基本的な訓練の類型をまず押さえるという機能を1つ持っています。今日の資料の1に 即して課長の杉浦から説明申し上げたように、別にこの法律に書いてあるから事業主は、OJTや off-JTをやるわけではありません。ただ、そういったものも事業主の行う職業能力開発の基本的な 方法として、現行ですと第9条に業務の遂行の過程内や過程外において、そういったことを事業主 がやるということも書いてあります。  そういったことと並んで、こうした場でコンセンサスが得られるとしたならば、先ほど来お話の ありますように、理論と体を動かしての実践を組み合わせた実践的な職業能力を開発するための訓 練のやり方として1つ掲げて、あるいはそれに対して法律上何か措置すべきところがあれば、例え ば事業主に参考としていただくべき指針の根拠規定を作るとか、あるいは特に就職困難な方につい て、こういったものを当てはめる場合のことについては、何か効果を持たせるとか、そういったこ とについては本日の議論を踏まえて、私どもからもいろいろご提案を申し上げていきたいと考えて います。基本的には1つの類型として、いまでもOJTとかoff-JTを位置付け、その上で認定訓練の ように何か効果を持たせるかどうかについては、またこういった場でのご審議あるいは研究会での 提言を踏まえて、いろいろ考えていきたいと思っています。  2点目の現行のものを残すことの整理についてですが、先ほど来、少しお話が出ていましたよう に、平成15年に「若者自立・挑戦プラン」という形で、当時大変に深刻な問題となっていた若年失 業者あるいはフリーター対策ということで、いま鈴木委員からご指摘があったように文部科学省が、 これはまさに専門高校等ですから雇用のつかない形ですので、日本版のデュアルシステムの文科省 版のものを実施しています。私どものほうでも既存の公共訓練の類型を総動員して、先ほどご説明 申し上げたようにやってきたわけです。  一方で、先ほど長谷川委員からもありましたように、その中で効果も上がっているけれども限界 というものも指摘がある中で、あるいは特に訓練生を選べないという問題について、先般からこの 場でもご指摘があるようなことについて、1つ乗り越えた類型として何か新しいことを作れないか ということで、今回のものを学識の先生方に取りまとめていただいたところです。これで従来のも のを少し乗り越えた新しいものとして位置付けることができればということで、従来のいわゆる日 本版デュアルシステムとは違う企業のイニシアチブのもとに、制度設計ということができないかと いうことが、本日、ご提案させていただいているレポートです。 ○今野分科会長 鈴木委員、よろしいですか。 ○鈴木委員 ええ。 ○谷川委員 25頁に表が出ていて、下に参考というのがあります。平成18年度における公共職業 訓練活用型デュアル訓練の実施計画ということで、この中に委託訓練活用型で3万人、専門課程活 用型で300人、普通課程活用型デュアルシステムで1,480人と数字が掲げられています。上の3万 人というのが従来型で、下のが新たなものというイメージではないのですか。 ○今野分科会長 この話はすごく混乱するのです。私もこの研究会をやっていて最初は混乱したも のですから、この報告書の28頁を見ていただけますか。これで全体のマッピングがしてあります。 これを見ると委託訓練活用型、民間教育訓練活用型、公共職業訓練活用型というのは従来やってき たタイプです。いちばん右側の企業主導型というのは、一応タイプは作ってありますけれども、実 施されていませんということ。今回やるのが実践型人材養成システムで、左側は訓練目的が書いて あり、右側に誰が、どのような人を対象に、そして訓練生はどういう位置付けになるのか、こうい うマッピングになっています。ですから、これ全体をデュアルシステムと言っています。こういう のをご覧になりながら、今回の提案しているシステムの位置付けをご理解していただくと、わかり やすいかなと思います。この図で間違いないですね。 ○久保村能力開発課長 数字の点について申し上げると、3万人とある委託訓練活用型デュアルシ ステムは、28頁の図でいちばん左側にある委託訓練活用型というもので、民間の教育訓練機関等に 委託して実施しているものです。その下の専門課程活用型デュアルシステムと普通課程活用型のデ ュアルシステムは、いわゆる能開校において施設内で行われる訓練という位置付けです。それは28 頁の図の真ん中のところにある公共職業訓練活用型というものに該当するわけで、これが両方合わ せて1,780人、全体で31,780人に行うことを来年度予定しているということです。 ○江上委員 いろいろな学習をしながら職業能力を付けていき、いろいろなチャンネルができると いうのは選択肢が増えてとてもいいと思います。ただ、こういう実践型人材養成システムという方 法論を、個人と企業が選択することが効果的かどうかという意味では、いろいろなチャンネルとの 今度は競争になっていくと思います。いまのように短時間労働者の有効求人倍率が非常に高く上が ってくると、企業のほうも積極的にどんどん雇用しますので、雇用してその中で勉強させて正社員 に登用するとか、あるいは契約社員に登用するという動きも働いてきます。人材派遣の紹介予定派 遣も、かなり具体的に動きつつありますので、そういったいろいろなほかの派遣とか実際に働くと いう中で、OJTで学んでいくという仕組みとの兼合いみたいなものを、どういうふうに考えておら れるのか。  もう1つは、専門高校が実践的な職業能力を身に付ける上では大変優れた教育能力を持っている わけです。あそこも社会人を受け入れたりという形でやっていますけれども、専門学校だけでなく 専門高校なども活用が十分考えられるのではないかと思います。文科省の専門高校に対する政策と のリンクなども考えないのかどうか。その辺をお聞かせいただきたいと思います。 ○草野審議官 兼合いという意味で紹介予定派遣とか、試しに雇用してみるトライアル雇用という 仕組みもあるわけです。ただ、これは実際に働いてみて、その能力とか雇用するに十分かどうかを 見ていく期間という性格が強く、教育訓練として体系立ってやるという仕組みになっていないので す。このデュアルシステムの場合には、そういう教育訓練をしっかりやって実践力を付けるという ことと、そのプロセスの中でその人の能力が分かりますので、それで本格雇用につなげていく。そ の両面を持っています。特に教育訓練の面をしっかりやるというところが、違いがあるというのが いちばん大きいところだろうと思います。  専門高校というのは、私どもも文科省のほうのを十分承知していないのですが、新しい仕組みで やっているわけです。「若者自立・挑戦プラン」というのは平成15年にでき、3年経ったところで 評価して次のステップを考えるということになります。ですから、これからそういう成果を見てい くという段階になってきますので、その中で文科省とも話し合わせていただいて、このデュアルシ ステムとどういうふうに組み合わせるか、それを研究してみたいと思います。 ○山野委員 2つほどあるのですが、今日の論点のところの3頁の2番の技能の振興・継承のとこ ろです。ここの最後の3行で「さらに企業内において」というところですが、技能や技術といった きちっとしたものだけではなく、もう少し柔らかいソフト面についても、その企業なり事業所なり によってそれぞれ違っているわけです。そういうものを一律に事業主に、こういうことをしなさい と書かれてしまうと、私どもの受け取り方としては、そういうことをしてくださいと規定する意味 合いに、どうしても受け取りやすくなってきてしまうのです。これは鈴木委員がいま言われたよう に、個々の企業によってやり方も全部違いますので、この3行は削除していただくことができるの かどうかということです。  もう1つは、企業調査のデュアルシステムのところで企業の調査になっていますけれども、これ は企業数60でデュアルシステムを取り入れた所だけの統計ですよね。そうすると基本的に本当に重 要なことは、いまここで皆さんがおっしゃっていますけれども、企業として受け入れなかった所が ほとんどなわけですから、そこはなぜ受け入れられなかったのか。受け入れを検討したけれども、 どうして見送った企業が多かったのか、そういったところの実態調査をされたと思いますけれども、 その辺のところを詳しく教えていただきたいのです。 ○今野分科会長 いま言われた第1点目ですが、論点の3頁目の2(丸の中に2)ですか。 ○山野委員 技能の振興・継承です。ここの最初の○のところの最後から3行です。「さらに企業内 において」とあり「検討する」とここに書いてあります。今までずっと我々企業はいろいろ協力し てきているのですが、ここでまた、なおかつ検討されるようなことがあります。その辺のところを お伺いしたい。 ○杉浦総務課長 書き方が、かなりきつく受け取られてしまっているのかもしれませんけれども、 現在の能力開発促進法の中でも、能力開発に係わるいろいろな雇用管理の在り方とか、労働者が自 発的に能力開発を行うための支援についてのいろいろな配慮規定みたいなのがあり、基本的には努 力義務というか、こういうふうにするように努めなければならないという形のものがほとんどとい うか、全部かもしれませんが、そうなっているわけです。  ですから、その辺を能力開発促進法の中に書くということになっても、その辺は雇用管理につい て配慮するように努めなければならないとか、そういった書き方ができるかどうかということにな ると思っています。それは今でも幾つかの場面で規定されているようなものの1類型ではないかと 思います。ですから、そこはまた法律を作る段階になって、もちろんご審議いただく話になろうか と思いますけれども、ここで改めて事業主にはっきり義務を課すということにはならないと思いま す。「明確化する」という書き方が、強い書き方になっているかもしれません。その辺の表現はまた 検討します。 ○山野委員 よろしくお願いします。 ○今野分科会長 第2点目は、要するにやっていない会社についても聞いたかというお話だと思い ます。 ○村山調査官 前回も少しご指摘がありましたが、全体の認知状況等については、本日の報告書の 最後の別紙12に付けているとおりです。前回もお答え申し上げたように、そもそもこの報告書に書 いてあるように教育訓練機関の1コースとしてやられているということから、認知が上がっていな いということですが、我々の力不足もいろいろあるだろうと思っています。  やっていない所の声という意味においては、各経済団体に春から夏にかけての要望とか、それに 基づく会員企業アンケートにおいていろいろ出された問題点も、学識の先生に集まっていただいた 研究会でご紹介申し上げ、その点である意味で認知度が上がらないところの要因としては、今まで 教育訓練機関主導型としてやってきたところの限界もあるのではないかというところから、今回の 提言にもつながっているということです。  また研究会の中で、業界団体からのヒアリングなどにおいて今までのやり方の隘路などについて も伺ったところです。そういった意味では、やっていない企業にいきなり無作為抽出してヒアリン グに行ったということまではやっていませんが、ただ、そういったいろいろなルートを通じての声 というのは伺って、その上で今までのやり方の限界もあったので、こうした新しい考え方もあるの ではないかということです。そうした経緯についてもご理解いただければと思います。さらに私ど もとして実施する点で不十分だという具体的なご指摘があれば、またいろいろ調査検討してまいり たいと思っています。よろしくお願いします。 ○黒澤委員 3点ほど質問します。先ほどから出ている企業での実習というか学びというか部分で すが、その中身については先ほど草野審議官からもお話がありましたように、より積極的にトライ アル雇用だけでなく、教育訓練という形での実習をなさるとか、あと11頁のカリキュラムの編成上 の留意点のところに、「座学と実習の相互の関連性を強固なものにする」という文言があります。こ の中身がいまいちぴんとこなくて、企業での実習というのは、例えば同一業界で異なる企業に有期 雇用された場合、その研修生たちがそれぞれの企業で受ける実習というものに、何らかの統一性を 持たせるような形にするのかどうか。  それとも企業での実習というのは自由で、どちらかというとマッチングというものの見極めとい うか、そういったことに重きを置いて、それこそ業界として共通の技能というのは、座学と言いま したけれども、教育機関での実習の中で行うような形にするのか。そのあたりが分からないもので すから教えていただければと思います。それによって最賃に引っかかるかどうかも、ずいぶん違っ てくると思います。  いわゆる経済学的に言うと、企業スペシフィックというか、仕事を行いながら職業能力を習得す るという形での訓練を行うのか。それとも、もう少し積極的に計画的な内容が、何らかの形で統一 された形での訓練を行うのかによっても、企業の負担のインセンティブが変わってきますので、そ のあたりはどういう形で捉えたらいいのかを教えていただきたいというのが1点です。  2点目はそれと少し関わるのですが、この実践型の人材養成システムというものが、それこそ第 3の道として、より積極的に若者に受け入れられるようになるためには、若者がそういった道を受 け入れるインセンティブを高める必要があると思います。それには評価とか資格化みたいなものは 非常に重要なのではないかと思います。  その評価についても、企業での有期雇用で受ける実習の部分についてその評価をするのかどうか。 それが企業によってまちまちであるというのであれば、その前段階の部分だけでも何らかの形で資 格化する。前段階というのは、つまり教育機関で受けている学びのほうですが、そちらの学習のほ うでも何らかの形で資格化する形に持っていかないと、なかなか難しいのではないか。そのあたり が市場ニーズにどれだけアップデイトされるかということで、ドイツのほうでもいろいろと問題が 生じているわけです。そのあたりについても、もう少し突っ込んだ説明いただければと思います。  最後の3つ目の部分ですが、27頁にイメージ図ということで、いちばん最初に企業と訓練生の面 接というのがあります。この入口の部分での研修生のセレクションについても教えていただければ と思います。  まさしく第3の道として失業者の救済だけでなく、若者にとって進学するのか就職してどこに行 くかを決める、そういった意味での本格的な1つの道として選ぶためには、例えば高校生だったら 高校生が進路を決定する時期に、こういったセレクションみたいなものが同時に行われるとか、そ ういったタイミング的なものは、誰に対してどこで行うのか。そういったことについても配慮が必 要なのではないかと思います。そのあたりについてどういうお考えなのか教えていただければと思 います。 ○草野審議官 第1点ですが、例として報告書の30頁が情報処理です。32頁に建築デュアルシス テム科ということで、実際にやっているところを抜き書きして挙げています。有期就労でも科目が あって、一定のものを教えるという形で情報処理をやっています。32頁の建築デュアルシステムで も、実技の部分ということで企業実務訓練の中でかなり細かく企業実習、総合演習をやることにな っています。企業の中で実習計画を立てていただき、それと教育訓練機関の行う学習のプログラム をある程度噛み合せて大枠は作るということです。  ただ、段階を追って企業に慣れていく段階とか、最後になると企業応用的なもの、企業固有なも のがかなり入ってくる形になると思います。ですから大まかに言うと3段階で、最初は基礎という ことで、これは理論面が中心になると思います。実は実習も含めた基礎実習みたいなところで、3 段階目が応用実習です。この2段階目まではカリキュラムと実習をしっかりやっていく。3段階目 になると、ある程度企業固有のものを入れていって柔軟性を付けるという形になると思います。  ただ、全体としては1年なり2年なり、しっかりしたものをカバーするという形でやり、したが って評価のところも短大の修了と同じ資格です。2年やればそういうものを与えるという形で考え ていきたい。おっしゃるとおり評価ということが非常に重要になりますので、2年やれば短大並み の資格を与えるということで考えていきたいというのが基本です。  入口のところもまさにお話がありましたように、今度新しくやるのは第3の道ですから、進路決 定のときに第3の道として選考していただく。したがって学生の中にこういう仕組みを広く広めて、 予め企業と教育機関がマッチングしておいて、それを登録し、それで生徒に説明して面接していく。 デュアルシステム就職というか、そういう道を選択していただく。まさにそういう形のものを考え ていきたいと思っています。 ○黒澤委員 1点だけ、そうすると例えば31頁の「企業実務訓練」の「社会人とは」とか、「ビジ ネスマナー」といったものも、派遣された企業一つひとつが、中小企業なり大企業なりいろいろあ ると思いますけれども、それぞれでこういったことをなさるということですか。 ○草野審議官 ビジネスマナーですか。 ○黒澤委員 ええ。31頁の「企業実務訓練」という、これは。 ○草野審議官 職種によって違うと思います。しかもモデルを作る中でこのビジネスマナー的なも のは、教育訓練機関でやっても構わないようなところもあると思いますが、企業によってはさらに 上乗せしてやるような所もあると思いますから、具体的なものはそれぞれの職種や教育訓練機関と 企業の組み合わせの中で、どういう分担でやっていくかを決めていくことになると思います。 ○黒澤委員 私の頭の中では、いわゆる業界単位での業界スペシフィックな部分は、教育訓練機関 を中心に、どこかの企業でもいいし業界団体の施設でもいいですが、そういった所で半ば実習的な ものをやる。あとはマッチングという意味で企業で実習させるというふうに考えるのであれば、例 えば必ずしも1つの企業に派遣というか、そこで受ける必要はなくて、いろいろな企業で1年とか 2年いて、その中で互いにいいと思われる所に就職するほうが、もしかしたら最終的なアウトプッ トとしては質の高いものが見込めるかもしれない。いろいろな考え方があると思いますが、どうも 学校でやるのと企業に送り出すことのメリットというか、何を企業でやらせるのか、それが何で企 業でやらなければいけないのか。そうでなくて業界として、同じ業界に派遣される人たちが一堂に 会して実施すればいい部分というのもあると思いますが、そのあたりが見えにくいのです。 ○草野審議官 そういう実習をどこでやるかというのは、確かにおっしゃるように仮に中小企業の ことを考えると、カリキュラムに沿ってきっちりやるのは難しい面が出てくるとすれば、業界の中 小企業団体が実習の第2段階まではやって、第3段階は個別企業の中小に行ってというやり方もあ ると思います。そこら辺は、これからの設計の中で柔軟に考えていきたいと思います。中小企業に 広めるということが1つの眼目ですので、おっしゃるようなことは非常に重要になってくると思い ます。 ○小栗委員 少しその点に関連してくるのですが、報告書の10頁のいちばん上のところで幾つか触 れている点ですけれども、この実践型人材養成システムそのものは私は評価しますし、是非うまく いってほしいと思っています。同時に、訓練生と企業・雇用者という2つの性格を有することの新 しいルールづくりとチャレンジづくりでもあると思います。非常に曖昧さも残していると思います。 その辺はこれから詰めていかれると思いますが、その点で少しお聞きしたいのは、有期の雇用契約 という概念が、従来の企業の試用期間とどういう性格の違いなのか、まだよくわからない。  実際に長いのは2年間です。2年間というのは前にも一度議論があったと思いますが、訓練生に とって採用されるかどうか不安な時期が長いという感じはするのです。この訓練システムに応じた 企業が、経済環境の変化で取りたくても取れなくなってしまうかもしれない。例えば1年後に変化 が起こったら、訓練は2年間だから2年間続けなければいけない。しかし本人は2年後に採用され る見通しは非常に薄くなってしまった。本人は能力があるかもしれないけれど、企業としてそれは できない環境になったという場合に、この人の権利というのは一体どうなるのか。企業の責任はど うなるのか。こういった問題について不安感があります。この辺をどうするのか。  場合によっては、本人は2年間の訓練を受けたけれども、いま自分が行きたい企業なり職業とマ ッチングしそうもないから、1年でやめたいといったら、この人は非常に不幸な結果になるかもし れない。この辺をどうしていくのかというのが1つです。  2つ目は評価というところです。いま発言がありましたように、訓練主体のほうの評価の問題も あるけれども、企業の側の評価というのはここには出てこない。希望が合致すればということなの で、企業がどういう評価を下すかについての不安も訓練生には出てくると思います。先ほど言った ように経済環境の変化等によって採用したくてもできなかった、ごめんなさいねといったようなこ とが出てしまったら、きっとその訓練生は非常に辛いでしょうし、そういうことが許されるのかど うか。許されないというのはおかしいでしょうが、そういう問題をどう調和させていくのかという ところです。  あるいは、悪い言い方をすれば、どんどん採用してあげたいという企業も出る反面、こういう訓 練生を使ってうまく安い労働力として利用して、適当なところで切ってしまってご苦労さんという ことが起こり得る可能性もある。それをどうケアするのかといった問題があります。この辺が新し い挑戦だけに、あまりマイナス面を言うのはどうかと思いますが、そうした点について訓練生の視 点から見て、この人の権利という視点から見て少し議論を深めていただきたいと思います。 ○今野分科会長 いまの点については、いかがですか。 ○杉浦総務課長 試用期間との比較の話がありましたが、これはまだいろいろなパターンが考えら れると思います。この研究会でも議論いただきましたけれども、イメージしている訓練の中での契 約というのは、あくまでも訓練期間中のものです。必ずしもその人たちが100%、実習をした企業 にそのまま採用されることが前提であるわけではないのです。もちろん、そういうことを思ってい る企業も当然相当数あるかもしれませんが、訓練は訓練だよということで割り切ってやる場合も当 然出てくるわけです。  このシステムの中で考えている有期雇用というのは、あくまでも訓練期間中の部分ですので、そ この部分については、まさに有期雇用者として訓練をしていただく。もちろんその人を正社員とし て引き続き採用する場合もあり得るでしょうし、当然そうでなくて、そこで採用することはあまり 考えていない場合も実際にはあるだろうと思います。そこら辺については訓練生が訓練コースを設 定する、あるいは入口の段階での面接も一応考えていますが、そういうので別にこれまでの実績、 あるいはそういった経緯から踏まえて、最初からAという企業に採用されることが前提になってい るのか、なっていないのか、その辺はいろいろなパターンが出てくるだろうと考えられます。  もちろん、いま言われたように途中で会社自体がなくなってしまった場合とか、そういったいろ いろなケースは考え得ると思いますが、そこはあくまで訓練期間中の2年間なら2年間の中の一定 期間、その企業で雇用された中での訓練を行うということで、割り切りを付けることでいいのでは ないかと思っています。  評価についても、実習中の訓練生の評価ということについては、事業主の側でも当然やっていた だかなければいけないと思っています。それは毎日になるか毎週になるかわかりませんが、実際に 実習をする中で、その訓練生がどのくらい一生懸命やって、どのくらいの能力が身に付いたかを、 報告書というかレポートを作っていただくとか、あるいは最後の段階でどのくらいのものができた かについて、評価はしていただかなければならないと思いますが、必ずしも先ほどと同じで、それ が即、そこの採用に結び付くかどうかということと必ずしも直結しているわけではないと考えてい くのが、いいのではないかと我々としては思っています。 ○小栗委員 それだとそうだと思いますが、そうなったら余計に入口の段階で訓練生と企業の間の 物の考え方がミートしていないと、こちらはこちら、こちらはこちらで始まっていて、すれ違って しまったということにならないように、類型がいくつかありますよとおっしゃっていますけれども、 その類型だけで集まってしまうというと、もし不幸な事態になった訓練生が多く出てきたら、これ はあまりいい制度でなくなってしまう、そこを少し心配しているのです。 ○今野分科会長 よろしいですか。いずれにしてもそういうことは検討しなければいけないという ことだと思います。五嶋委員、どうぞ。 ○五嶋委員 大変に議論が白熱で素晴らしいなと思っていますが、また皆さん方でずいぶん議論さ れていることもよくわかりました。実は資料2に基づいて発言させていただきたいと思いますが、 論点の整理の中の2の制度見直しの方向性です。職業キャリア形成の支えについて、今後、デュア ルシステムを現場力の中核となる人材を育成する、すなわち実践型人材養成システムとして職業能 力開発促進法の中に位置付けて、第3の選択肢としてその普及、定着を図っていただくということ で大賛成です。  前回の会議でも私が申し上げたように、私ども中小企業者としては、この制度をこれからの中小 企業の人材育成確保策としても、大変期待を持って見ているところです。また社会的にほとんど認 知されていないという現状があるわけですが、我が国に本格的に導入していくためには法律できち んと位置付けをしていただいて、導入を促進するための環境整備など、国の支援策を講じていただ くことが必要なのではないかと考えているところです。  国の支援策として、1つ目には企業や若者の関心・理解を高めるため導入の成功事例、ノウハウ などの情報提供を通じて、制度自体の普及、啓発を積極的に推進してほしいと思っているところで す。2つ目にはカリキュラムの編成など、実際の制度運用は中小企業に受け入れやすいような柔軟 な仕組みにしてもらえないかと思っています。3つ目にやる気のある企業で、若者を強力に支援す ることが大変重要であると思っているところです。  また企業に対する支援についてですが、経費や人員などの負担を軽減するための支援策を特に充 実強化してほしい。積極的に取組みを促すため、企業イメージの向上に資する顕彰制度あるいは認 定マークなども、どうかなと考えているところです。  もう1つは技能の継承についてです。事業環境の厳しい中小企業に対する技能継承への支援は、 中小企業の自主的な取組みを、より促進するための大変大きな力となりますので、中小企業労働力 確保法の改正は、是非実現をしていただければと思っていますので、よろしくお願いしたいと思い ます。大変よくやっていただいているので心強く思っています。今後ともよろしくお願いします。 ○今野分科会長 ご意見ということで、よろしいですね。 ○五嶋委員 はい。 ○西原委員 先ほど小栗委員から出ました意見との関連も含めてなのですが、この実践型人材養成 システムを考えると、たぶん企業のニーズとしてあるのは、1つは人材確保ということが前面に出 てくる場合と、もう1つは場合によると少し社会貢献的な観点も入るような、人材をトータルとし て育成していく仕組みの中で、企業がある程度果たす役割や責任みたいな観点と、かなり幅広いと 思うのです。  これは幅広くても構わないと思うし、現実としてかなりオーダーメイド型でやるという話になっ てくると、逆にかなり実践的な形でやらないと意味がないので、そうなると中の概念もかなり広が ってくる。そうなってくると先ほど小栗委員も言われたように、訓練生の人たちの目指していくと ころと、このシステム自体の性格付けみたいなところが、もう少し整理されていないと、ある程度 業種的なものも含めてやっていかないと、なかなか実践的な形で浸透していかないのではないかと いうのが非常に強くあります。  例えば大手企業でも活用できる可能性があると私は思いますが、その場合、これはかなり中核的 な人材です。端的に言うと派遣の方たちのあまり習熟度の高くない仕事であれば全く意味がない。 そうなるとかなり技能的な部分を養成することになる。その際の基礎的な技能を理論的にやってい く。従来、社内の養成学校等でやられた部分で、衰退した部分を置き換えていくような機能に発展 し得る可能性もある。  ただ、一方で中小の場合、私どもの傘下にも多くありますけれども、いろいろな話を聞いている とやはり人材確保です。その中でなかなか自社の中では、きちんと理論的な面も含めて十分し得な い能力開発を、もし行政なり大企業等が、ある面でそこをサポートするようなトータルの仕組みが あれば非常に助かる。現実、地方行政によっては大手企業に対して、例えば板金など基礎的な技術 の面で大手企業から講師を派遣して、その中で地域の中小企業の方たちに対して教育をやるような 取組みが一部出ています。そんなことも含めて発展し得る可能性がある。  ただ、そこの考え方や中身自体の性格付けみたいなものをある程度類型化した上で浸透していか ないと、かなり中身が混乱します。端的に言うと従来の企業主導型との差というのは、訓練生から 見たら訓練費を払うか払わないかというお金だけの話になってしまい、それだけではいけないし、 本当に人材確保ということでいけば逆にその分は当然企業として払うので、終わった後もしっかり 企業の中核社員として頑張ってくださいよといった形の選択もある。私はそちらが主流になるのか なという感じが逆にするのですが、そんなことで性格付けの部分をもう少し出してもらったほうが いいかなという意見です。 ○玄田委員 座学論争については、どこかできちんと1文を加える。いわゆる座学ということでな く、理論とか基礎とかシミュレーションとか資格ということを、訓練を受ける人、使用予定者側、 訓練機関側が、それぞれニーズに合わせてやっていくということを座学と考えるみたいなことを、 どこかできちんと書いておくことが誤解を避ける第一だろうと思います。  私、皆さんの話を聞いてよくわかったのは、確かに別紙資料10には「企業と教育訓練機関の協力」 と書いてありますけれども、報告書本文を読むと、「業界と教育訓練機関の協力」なのです。企業と 訓練機関なのか、業界と訓練機関なのかはずいぶん似て非なるものであって、本来ならば個別の使 用予定者側の企業と訓練者のニーズを合わせるべきだと思いますが、おっしゃるように、そうなる とかなりリスクが大きくなる。ただ、これは業界が主体になった場合には、業界の中でのいろいろ なニーズの違いが一般化している中で、果たしてどれだけ実効性があるものが作れるのか。主体者 として企業なのか業界なのかというのは、本当はもっと詰めるところだと思います。  実習のところも実習と労働との関係で、実習は労働ではないということはないと思うので、その 部分の関係を明確にしないと、さまざまな労働者側の権利の問題と抵触するだろうと思います。  たぶん現実的には、自治体や教育委員会にどこまで協力を求めるかということは、ある程度具体 化していかないと、自治体は知らないよ、教育委員会や学校機関は知らないよだと、たぶん実効性 のあるものにはならないから、その部分も主体者として協力体制側にどのくらいコミットを求める のかという議論が残されているだろうと思います。 ○今野分科会長 いまのご意見ですが、1点だけ、訓練生と業界団体、もう1つは訓練生と企業で したか。 ○玄田委員 訓練機関と使用予定者側と、訓練を受ける本人です。 ○今野分科会長 このデュアルシステムの基本は、訓練機関と企業だと私は思っています。それを サポートするのに業界団体が要るという位置付けだと思っています。 ○玄田委員 それは企業に就職するわけではないでしょう。 ○今野分科会長 違います。 ○玄田委員 その企業は雇われる可能性も全然ない。 ○今野分科会長 いや、あるかもしれないし、ないかもしれない、そういう意味です。 ○玄田委員 あるかもしれないし、ないかもしれない。だから何となく気になるのが会社である訳 です。 ○長谷川委員 外国人研修推進室長の田中さんがいるから、私、このデュアルシステムをずっと聞 いていて思ったのは、外国人の技能研修生・実習生に非常に似ているので、これはやはり国内版な のです。そうすると期間2年というのも1年目が研修生で2年目は実習生で、だからこれは非常に 中核的な労働者をつくるということと、もう1つは、仕組み方によっては外国人技能研修生・実習 生のようなものです。制度としてはよく似ているので、先ほど小栗委員たち労側が言ったのも、例 えば外国人技能研修生・実習生たちは、2年目になってくると労働者ということで労働基準法が適 用されたり、賃金が支払えないときは賃確法で賃金をもらっている。よく似ているので、ここのと ころはその制度をもう少しきちっと、どこまでが研修生でどこからが労働者なのかという線引きが 必要なのではないか。技能研修生・実習生でやると、それと同じような適用をさせるのではないか と思ったのですが、どうなのでしょうか。 ○今野分科会長 いずれにしても、いま皆さんが言われたように、実習と労働との関係とか、訓練 生なのか雇用者なのかというのは非常に大きな問題だと思います。今日のご意見は、このシステム は基本的に良いということ、でもいろいろな問題があるから検討してくれということで、いろいろ 論点が出されたと思います。今日はそういういろいろな問題点に関わる論点、あるいは良くするた めの論点をいろいろ出していただきましたので、それをまた整理していただき、次の段階でもう一 度議論する形にさせていただければと思います。  今日はこれで終わりにします。いつものことですが、議事録の署名をお願いします。今日は労働 者側小栗委員、使用者側草浦委員、よろしくお願いします。次回の分科会は今日と同じように総括 的な議論をしたいと思います。事務局には今日あった論点をもう一度整理していただくことにした いと思います。事務局から何か連絡がありますか。 ○杉浦総務課長 次回ですが、12月9日(金)の16時からです。場所は9階の省議室です。よろ しくお願いします。 ○今野分科会長 今日はこれで終わります。ありがとうございました。 【照会先】厚生労働省職業能力開発局 総務課 企画係 (内5313)