05/11/25 社会保障審議会介護給付費分科会第35回議事録 社会保障審議会 第35回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所 : 平成17年11月25日(金) 午前9時から12時           霞ヶ関東京會舘ゴールドスタールーム 2 出席委員:井形、池田、石井、井部、漆原、大森、沖藤、喜多、木下、木 村、見坊、田中(滋)、田中(雅)、対馬(代理:椎名参考人)、永島、 野中、花井、村川、矢野、横山の各委員 3 議題  (1)介護保険施設の報酬・基準について  (2)その他 ○渡辺認知症対策推進室長より資料に沿って説明。 ○横山委員より「介護報酬・基準の見直しに関する意見」について説明。 ○漆原委員より「平成18年介護報酬改定に関する意見書」について説明。 ○木下委員より「介護報酬改定に関する要望」について説明。 (田中(滋)委員) それぞれの施設がよいケアのための提案をしていることについては理解す るが、漆原委員の説明するキャッシュフロー会計とは、内部の管理目的を別に すれば、外部の投資家が個別企業に対して投資すべきか否かを判断するときに 用いるものである。老健施設に対して外部投資家が投資することはあり得ない。 キャッシュフローと費用とは違っており、費用は類似のサービスを行っていれ ば、分布しても大体同じ幅に収まるものだが、キャッシュフローは経営の意思 決定によって全然違う値になる。全額自己資本で建てればキャッシュフローは 発生しないし、またリースをすれば一定の幅になるというように、経営の意思 決定によってキャッシュフローは違ってくる。 一般に法律で定められている減価償却の期間よりも元本の返済期間の方が 短いから、キャッシュフローに合わせて報酬を決めると、報酬は固定資産償却 額以上になり、そのずれのせいで開設者の資産に対する補助金と同じ効果を生 んでしまう。 したがって、公的報酬からの支払いはやはり平均費用ベースで行う一方、よ いケアを行っていながら、キャッシュフローが苦しい施設は助けなければいけ ないとすれば、この人たちに対しては特別融資のような形で、キャッシュフロ ーについてはキャッシュフローで対応することが理論的に正しくて、キャッシ ュフローを費用収益の側で助ける形は次元がずれた話になる。 (漆原委員) いろいろな経営主体が参画して事業を行っている場合に、それが経常利益だ けで判断されてよいのかどうか、課税の有無とか補助金の有無等も比較する必 要があると思っている。 (田中(滋)委員) 漆原委員指摘の通り、いろいろな主体があるので、利益を見るときには、課 税や補助金などに注意することについては賛成する。 また、統計を取るときに、同じ老健施設でも母体によって統計を取ることが できないために共通の指標を使ってしまっているが、これで判断しないように という指摘についても正しいと思っている。 (木下委員) 資料3の1ページのところの収益率について、介護療養型医療施設、介護保 険適用病床に限って見ると3.4%という数字が出ているので、介護保険の方で はその数字を重視するべきではないか。医療度別の分類の導入ということで、 かなり大幅な改定が行われようとしているので、3.4%という数字を重視して もらいたい。 (矢野委員) この場は介護保険の報酬を決める場であり、医療保険については別の場で議 論していただくしかないのであるが、医療保険の制度を介護保険の中に適用す る、また介護保険の制度を医療保険の中に適用するという考え方を徹底してい く必要がある。 前回改定から引き続き、施設から在宅へという流れをつくる報酬改定を今回 も続けるべきである。 報酬は人の配置に対して払うのではなくて、ファンクションに対して払うと いう考え方を徹底していくべきである。  多床室におけるケアがユニット型個室におけるケアよりも高く評価されて いるという歪みは是正する必要がある。施設収益が10%を超えている状況を考 えれば、多床室ケアの評価を引き下げる方向で見直すべきである。 介護報酬点数の基本的な考え方としてアウトカムを積極的に評価するとい う視点は重要である。各施設の将来像を踏まえる形で、在宅復帰支援の強化、 サービスの質の向上という観点から、アウトカムを適切に評価する必要がある と思う。 老健施設については、在宅復帰を目指したサービス提供を前提としているの であるから、入所期間が一定期間を超えた場合には介護報酬の逓減を検討して もよいのではないかと思う。 介護療養型医療施設については、容体急変の可能性が少なく、医学的管理を さほど必要としない、いわば社会的入院といわれるものもあると思われるので、 診療報酬側に180日を超えると入院基本料の減算を行うという制度があるが、 同様な仕組みを導入してはどうかと思う。 22ページ上の表は、老健施設では短期退所と在宅復帰率の相関関係が高いと いうことを示している資料だが、介護療養型医療施設についても同様のデータ があれば示してほしいし、なければ調べてほしい。 (三浦老人保健課長) 介護療養型でそのようなデータがあるか調査して、あれば示していきたい。 (野中委員) やはり在宅と施設との関係は、その施設に入っている人にペナルティー的に 何かしたからと言って容易に在宅に戻れるわけではない。 在宅復帰促進の重要性ということに関して、一番の問題は家族の動機づけと いうことだと思う。そうした中で本当に在宅を選択できる状況にあるのかが問 題と思っている。  資料2の調査について、第4段階の比率は予想した段階だったのか教えてほ しい。 (三浦老人保健課長) 資料2の2ページでは介護老人福祉施設の例があるが、負担段階別の割合と して、第4段階がおよそ20%となっていて、この調査結果と全体の傾向が一致 していると考えると、およそ8割の者が低所得者層に該当するというデータは 基本的に予想したものとほぼ一致していると考えている。 (野中委員) 老人保健施設や介護療養型医療施設はどうか。 (三浦老人保健課長) いずれについても同様の傾向であると考えている。 (野中委員) 実際には介護保険部会でも、居住費と食費の件に関してはほとんど議論され ていない。 老人保健施設や介護療養型医療施設がこんな比率で厚生労働省のパンフレ ットには出ていなかったと思う。第4段階の比率が乖離していることはおかし いし、世帯分離によって、今まで第4段階にいた人が第3段階になることはど う考えているのか。 現状の国民の認識を見たときに、患者は在宅を望むが、家族は施設を希望し ており、この乖離をどう克服するのか。その努力こそ本来の目的であって、そ れを居住費とか食費というペナルティー的なものでやることがいいのかどう か。 簡単に在宅復帰と言うが、家族の問題を真剣に考えなければいけない。その 中にこれから討論する施設の在り方があり、それはよいケアをどう評価するの かをきちんと考えるべきで、在宅に対する支援という中で施設を考えるべきと 思う。 現場で一番問題なのは、在宅でも施設でも病状が急変したときに受け入れる 一般病床が、高齢者に対してはほとんどなく、施設職員が努力しているところ であり、介護、医療の双方がその急変に対して協力すべきだと思う。  居住費と食費に関する現状に対して厚労省はどう考えているのか。   (三浦老人保健課長) 低所得者の比率は、今回の食費・居住費の見直しに関わる制度施行前に予想 したものとほぼ一致しているということは説明したとおりだが、一方で世帯分 離などの進捗があるということも現場から聞いている。この問題については非 常に悩ましい問題であると考えているが、一方で今回、第3段階については従 前より負担を高くしており、一定の利用者負担ということについての対応を行 っていると考えている。 (野中委員) 一定の利用をしてもらうのが目的だったのか。それは在宅とのバランスを取 るためにしたわけで、利用者にとってどうだったかということをもっと真摯に 受け止めなければ、居住費と食費を保険外にした意味が理解されていないこと にならないか。 (山崎総務課長) 確かに今回の施設給付の見直しは、施設と在宅の負担のバランスが主眼にあ る。 その上で実際に在宅の食費と居住費負担を考えると、平均で約10万円かか っているが、低所得者に対してそのまま負担をお願いするわけにもいかないの で、在宅と施設のバランスという原則の下で、補足給付という制度がある。 本当に所得の問題を考えた場合にどういう方の所得が低いか、高いかという 議論は、実務的にも一番大変な問題で、例えば資産を持っていて、所得だけは 低いがお金はたくさんあるという指摘も受けている。 日本の税関係が全部ガラス張りでわかればいいが、残念ながら今わかってい るのは、市町村民税非課税等の部分で、それを使わざるを得ないためにこうい う仕組みになっている。問題がないとは思っていないが、これは全体の税の仕 組みを含め、その中でどう考えていくかという大きな課題であると考えている。 (野中委員) 聞きたいのはこの居住費と食費を保険外にする意味は何だったのか。低所得 者に対する配慮というのは当然であるが、本当の目的は何だったのか。 その意味をきちんと説明しないと、その施設に影響を与えることだけが目的 だったのでは、と思えてくる。最初は在宅と施設のバランスという話だったの ではないか。 (山崎総務課長) この制度が結果として利用者側にとってどうかという指摘については、まだ そのデータは十分取れていないので、施設の待機者の状況等も含めて確認して いきたいと考えている。 (喜多委員) 世帯分離について、介護保険制度では保険料の仕組みで世帯計算と個人計算 が混じっていて、国民健康保険と同じ状態になっているということを理解して ほしい。 先ほどの施設から在宅への流れを止めるなという意見については同感であ り、介護保険は在宅介護が主眼だと思う。資料1の24ページに「医療保険と 介護保険との機能分担の明確化」について出ているが、これは以前、医療と介 護を明確に分けられるかという質問に対して、できると答えがあり、療養病床 の在り方を暫定的に見ようという議論もあったが、それが整理されていないか ら今問題になっている。前回、末期がんは報告だけで済むのか、保険料がかさ むのに、その保険料は大丈夫かと意見したが、こうしたすき間にあるものをど うするかということは給付費分科会や医療部会で議論してもだめで、厚生労働 省がどういう体系の中で国民のコンセンサスを得るかということを決めない と解決しないと思う。 低所得者の規定で非課税世帯という話は、税金は納める人が申告するだけで、 申告しなければ払いたくない人も含めて非課税になってしまうわけで、これは 個人情報の関係もあってなかなか難しい。低所得者とは何かということが明確 にされていない。私の市でも非課税世帯が6割ぐらいになっており、保険とし て成り立たなくなる。当時、厚生省は大蔵省を呼ばないといけないと言ったが、 同じ国の機関として協議をして、問題になることは早く整理をしないとこの議 論は空回りすると思う。 資料1で医療と介護の分離を明確にしながら、介護保険施設が大きくなって いくのは、保険料にはね返り、結果として保険が崩壊することになるというこ とを理解してほしい。 最後に、療養型医療施設の年限を定めての経過措置廃止については、施設整 備の点からも賛成である。 (大森分科会長) 今日の資料でも、介護保険施設の将来像をどう考えるか、特に今回は診療報 酬と同時改定になっていて、特に24ページの介護療養型医療施設については、 医療と介護の関係で大事なことを含んでいるので積極的に、意見を出していた だききたい。 (横山委員) 資料13ページ「介護保険施設の将来像について」の(1)で、生活視点という 居住環境としてはユニット型個室が基本ということになっている。資料2の3 ページについて、負担段階別の割合は想定内ということだが、実際第3段階と 第4段階、ユニット型あるいは多床室にはほとんど差がないことになっている し、第2段階が53.6%となっていると、これからユニット型だけを整備してい ったのでは、低所得者の利用ができないことになってしまうのではないか。 また、個別の医療ニーズは原則として外部サービスを活用とあり、施設から 居宅へという流れがあると思うが、これは施設のサービスが悪くて居宅がいい という認識の上で議論が進んでいるように思われる。13ページの下の表を見る と、特別養護老人ホームは平均入所日数が1,400日を超えるついの住みかとな っているわけであり、これだけ長い日数の医療ニーズを外部サービスでできる のか疑問である。果たして介護保険施設はどういう役割これから果たしていこ うと考えられているのか。 現状、特別養護老人ホーム入居者の平均年齢は85歳を過ぎており、生活重 視型の施設といっても多くの者が疾病を抱えているし、またターミナルケアに も積極的に取り組んでいくことを考えれば、外部サービスの活用よりも施設の 中での常時の医療体制、先ほど看護士の体制について意見しているが、そのよ うな充実を図るべきではないかと思う。 (椎名参考人) 資料24ページの下の表については、中医協の調査専門組織で今年度やった 調査で同じ結果が出ている。結局医療の必要度、ADLの自立度を指標として 見た場合、大差がない。実は本日、中医協において調査専門組織から医療の必 要度とADLの自立度を勘案した新たな慢性期入院医療の患者分類案が提案 されていて、今後それを活用して支払方式を策定していくという段取りになる と思う。 医療と介護の機能分担とか連携について、タイムスケジュール的にうまくい くのかどうか。個人的には、やはり医療の必要度、あるいはADLの自立度が 同じような人たちが介護の方にも、医療の方にも入っているという現状を踏ま えたら、基本的に同じ報酬体系で適用していくべきと考えている。 (漆原委員) 平成17年度介護経営実態調査の概要で、介護保険施設は10%以上の損益が 出ているが、ほかのサービス事業所と比べると、初期投資額がかなりあるとい うことと、償却期間に見合った減価償却というのは困難であるし、実際には、 減価償却に相当する部分は10月から居住費として利用者負担になっており、 なかなか取れない状況になっている。税金についても、介護老人保健施設につ いては、約75〜80%が医療法人であることを考えた上で配慮してもらいたい。 中重度者への重点化という観点について、介護老人保健施設については、例 えば家庭では医療管理等が困難な事例が25%いて、ターミナルケアに対応した いという思いもある。そういう意味では、重度化へどう対応していくかという ことは、非常に私たちに課せられた1つの課題だというふうには思っておりま すが、ただ、在宅ケアとか在宅支援機能、リハビリテーション機能を充実させ て、在宅復帰を達成するという目的からすると、施設の機能だけでは困難では ないかと思っている。在宅復帰については、私たちの調査では通所あるいは訪 問のリハビリテーション機能の充実が在宅復帰率に大きく関与することが分 かっている。 老人保健施設には、本当にいろいろな利用者が入所していることを考えると、 単純に平均在所日数等で評価されるのはいかがなものか。在宅サービスの中に、 目標指向型サービスという論点があったが、介護保険施設においても利用目的 別の入所について報酬の中で評価してもらいたいと考えている。 (沖藤委員) 施設の将来像をどう考えたらいいのか、不安である。先ほど、特養入所者の 平均年齢が85歳という数字が出たが、その約8割は女性だろうと思う。ある 老人保健施設で取材したときに、男性入所者は、妻がいるから自宅へ帰り、女 性入所者は、元気な夫がいても介護してもらえないから特養に行くという衝撃 的な経験をした。つまり、ほとんどの妻は、夫がいても重度になれば介護でき ないと言われて特養に行かざるを得ない。それで、特養である年数が経ったら、 夫の介護ではもとのもくあみということで、女性は他の施設へ放浪することに なるのか。自己決定してここにいたいという、人間の幸福感というものも検討 されなければならないと思う。 また施設を移ることによっていろいろな介護保険財源を節約していきたい という気持ちはわかるが、それによって受ける本人の肉体的、精神的打撃も考 えなければいけないのではないか、場合によっては逆効果になる可能性だって あると思う。 (野中委員) 在宅志向が安易に語られる一方で、利用者の気持ちが理解されていないこと を言われたと思う。男性が介護できないということは決してないと思っている。 在宅と施設はどちらかではなくて、人が幸せを求めるために在宅に戻りたい のであれば在宅でどうすべきかということをもっと議論すべきで、大事なのは ケアマネジメントだと思っている。施設においても、ケアマネジメントがどう やって適切に評価できているかどうか、そのことをきちんと確認して、それに 対する費用が適切かどうか判断すべきで、在宅に関しては日本医師会も大きな 責任を持っていると思うが、やはりケアマネジメントを適切にしてさまざまな サービスが介入することによって、本人の家族関係がよくなるという観点が不 足していると思っている。 資料13ページの介護保険3施設の人員配置があるが、この人員配置で本当 にケアマネジメントがつくれるのかどうか。今回提案の中で評価したいのは、 21ページの老人保健施設における「試行的退所」であり、退所の為に何が必要 かということを判断してこそ、妻が病気になって施設に入っても放浪しなくて もよい状況になると思う。医療保険とか介護保険の目的とは、病気や障害を持 っても再生できるということを実現する事であり、国民みんなの連帯の保険で ある。その目的を見て、そしてそのお金がきちんと使われているかどうかを判 断もせずに、そのお金が少ないという話ばかりしているということでは、本当 に在宅に向けた取組みはできないと思っている。 (沖藤委員) 特養などの場合は、入所したことによって家族関係が修復する場合があり、 状態がよくなったからといっても帰れば身体症状の問題だけではなくて、人間 関係もまたそこで崩れていくということがある。そうすると、結局他の施設へ 移ることになり、そちらのケアマネジメントもきちんと行わないと、先々の不 安は消えないと思う。 (村川委員) 沖藤委員の発言には賛成で、施設で長く生活せざるを得ない女性の高齢者を 中心とした生活の在り方については中長期的に、介護保険の運営も含めて、別 途研究班等を継続的に起こすなどして検討すべきではないかと思う。 報酬体系の関係は、介護保険の根幹に関わる問題なので、現実には在宅の利 用が多いという中で、施設の位置づけを判断すべきではないかと思う。 介護保険施設の将来像について、横山委員から幾つか問題提起があったが、 特に特別養護老人ホームの将来に向けた事項として、長期滞在だけでなく、ミ ドルステイ、ホームシェアリングについては評価していいのではないか。また 漆原委員の老人保健施設の意見について、多職種協働による地域リハビリテー ションが施設として自立支援に向けて評価がどういう形でできるのかという ことは知恵を出すべきと思う。また、木下委員の介護療養型医療施設の意見の 中にあった、メディカル・ソーシャル・ワーカーの配置について、言わば退院、 退所支援という成果を上げる方向でのスタッフ配置ということは評価してい いと思う。 その上で、この施設等の報酬において検討すべきは、質向上ということであ り、サービスの質向上につながる事項についてはプラスカウントとすべきであ り、重度化対応やリスクマネジメントの評価はあってよいと思うが、基準を割 るもの、あるいは現状程度ということについては、マイナスカウントになると 思う。 最後に、資料の20ページに社会福祉施設職員の退職手当共済制度の見直し があり、これは時代の流れということでやむを得ない面もあるが、介護やリハ ビリテーションの仕事に携わる若い世代が、この分野の仕事に希望が持てる方 向ということから報酬体系も考えられるべきなので、介護保険財政が7兆円規 模に達する中で、例えばその1%は職員研修に、他の1%は福利厚生に使われ る措置等を、中長期的に考えてほしいと思う。 (花井委員) 介護保険施設の将来像について、基本的には施設の在り方は、1つ目の「生 活重視型」と2つ目「在宅復帰」、この2つが基本になると考えている。3つ 目の「医学的管理」については、医療を提供しなければならない利用者は、医 療機関が対応するものと考えている。介護と医療を明確に区分する必要がある が、どうしても必要という場合は、相当質の高いものに限定するとか、何らか の制約が必要ではないかと思う。 サービスの質の向上に関わる課題について、昨年介護保険3施設を対象に、 施設とそこで働く従事者らの両方から回答をえた。施設で働く従事者の健康問 題や感染症の罹患状況の様々な問題が明らかになってきているので、そういう ことがきちんと反映されるようお願いしたい。 そして、賃金の割合が非常に低下している実態があり、最近大阪で特養ホー ムが新設されたが、従事者が集まらず開設できないという話を聞いている。施 設サービスの質を向上しようとするのであれば、やはり資格を持った方、訓練 を受けた方、経験を積んだ方が施設にいることが家族や利用者にとっても非常 に安全と思っている。しかし実態は、最近少し雇用状況も回復してきたことも あり、介護の現場に人が集まらず、このままでは質の高い従事者が確保できな いという懸念を聞いている。是非とも質を上げていく、例えば一定割合以上の 介護福祉士の配置とか、介護職員の研修の確保、あるいは感染症対策がきちん と行われている施設に対して評価されるようにしてほしい。 資料27ページの療養環境減算の経過措置については、介護保険部会のとき から廃止すべきということを主張している。日本人はお風呂が好きな国民だと 思うが、お風呂のない施設に平均約1年も入っているというのは、一体どうい う生活をしているのか疑問である。介護保険施行直前にこの経過措置が設けら れた経緯からしたら、やはり直ちに廃止してほしい。できれば、来年の4月と 言いたいが、現在入院している者のことがあるので、例えば1年と期限を設け て改善に向けた対応をお願いしたい。 (池田委員) この施設給付の関係はマクロで見てもかなり大きな問題があるということ は共通認識できると思うが、これを更に地域ごとに見ると、もっと大きな問題 が見えてくる。介護保険給付の地域格差はかなり大きいが、それを分析するた めに給付が高い10県の分析してみたところ、そのうち7県は療養病床の給付 が突出している。最も典型的なのは高知県で、その給付額は全国平均の3倍と なっている。あとの2県は、老人保健施設と通所系サービスが非常に突出して いるところと、残りの1県はグループホームが大きな影響を与えているという ことが判明している。給付の大きな格差をつくっているのは施設と言われるが、 医療系施設が一番大きな格差をもたらしているということが現実だと思う。ち なみに、特別養護老人ホームは、最大の給付と最小の給付の差は、1.9 倍、老 人保健施設は2.8 倍、療養病床は13倍もあり、地域によっては極めて深刻な 状況になっているという認識が必要である。 日本で一番保険料の高いのは北海道鶴居村で、その給付を分析すると、通所 は全国平均に近いが、それ以外は全国平均の半分ぐらいである。ところが、老 人保健施設の給付は全国平均の3.6倍、療養病床は4.9倍であり、これでは保 険者はもたない。全体としての介護保険が崩壊するということはあり得ないに しても、個別の自治体を見た場合、この問題に早急に解決策を与えないとかな り深刻な事態になると思っている。しかも、療養病床について何ら規制の権限 も無く、保険者に基本的に責任はないと思っている。 施設については供給が需要を規定しているという構造になっているが、その 最大の原因は在宅サービスが役に立っていないからであり、本当に在宅サービ スで支えられるといった実態が見えないし、信頼も置けないということである。 その中で最も重要なことはケアマネジメントがうまく機能していないことだ と思っている。 そこで、今回のこの考え方について資料13ページに在宅生活支援重視とあ るが、これは重要と思っている。 例えば、在宅で生活を回復するためにはどうすればいいかというアセスメン トを徹底的に3か月ぐらいやって、その間にサービスというものを用意すれば、 これはかなり効果を示すことはモデル事業でもわかっていて、それを老健や特 養の入所者だけに限ってやるのではなくて、地域全体の在宅支援、ケアマネジ メントの充実、発展という拠点にしていってもいいのではないか。また、そこ には政策誘導的な介護報酬を付けていいのではないか。 また施設給付をこのままにしておくと、一部の保険者で財政破綻的な要素が 起きてきて、一般財源の投入等という形で、介護保険にひびが入る可能性があ る。施設給付を減らすというのは、高齢者1人当たりで見ればさほど難しいこ とではなく、定数を凍結すれば、1号被保険者というのは増えて分母は増えて いくから給付は落ちていくということであり、かなり危機的な保険者について は幾つかの対策を持たなければならないのではないか。本来保険者は市町村な ので、市町村の責任でやるのが当たり前だが、施設について小規模、多機能以 外は権限を持っていないので、それをどうつくっていくかというのが緊急の問 題と思っている。ちなみに、沖縄県は給付が全国トップであったが、徹底した 施設に対する対策を講じたことにより、かなり効果をあげているので、そうし た対策を考えてほしい。 それから食費、居住費が分離されたから、残りはケア費用というのが施設の 介護報酬になり、ケア費用は3施設のみならず、グループホームにしても有料 老人ホームにしても基本的には同じものであるはずだが、人員配置やサービス の中身の問題は、上乗せ評価の構造でやるという提案だが、それを明確にして ほしい。 例えば、24ページにあるが療養病床の半分以上は、ほとんど在宅可能な者で、 医学的管理はほとんど行われていないと思うが、ここに医師が3人必要なのか ということがある。医師を1人にすれば介護報酬というのは大きく下げること ができるので、そのためには、本当に医療を要する療養病床と第3特別養護老 人ホーム的な療養病床に分けなくてはいけないと思っている。 いずれにしても、介護保険と医療の問題は、改めてきちんと整理した議論を する場をつくることが必要なのではないかと思っている。 (木村委員) ケアマネジメントの質の問題については、資料13ページに介護保険3施設 の人員基準があり、入所者100 人当たり1人の介護支援専門員の配置が定めら れているが、実態として兼任であるために本来のケアマネジメントの仕事がき ちんとできないので、やはり介護支援専門員は専任であるべきだし、100人に 対して1人という人数で本当にケアマネジメントプロセスがこなせるかどう かという問題も真剣に考えてほしい。 例えば、資料23ページの「リハビリテーション機能強化加算」についてプ ロセスが記載されているが、これはリハビリテーションに限定せず、施設にお けるケアマネジメントでも必要な観点で、それを在宅のケアマネジメントとど うつないでいくかということを考える必要がある。 施設の中での介護支援専門員の役割をきちんと決めて、施設から在宅へ復帰 させるところの機能をはっきりさせるようにしてほしい。 (石井委員) 先ほど花井委員から施設スタッフの感染症対策について指摘があったが、そ れに関して新予防給付の通所サービスで口腔機能向上が初めて入ったが、むし ろ中重度者以上の方が口腔機能の低下は非常に著明に出ていて、そこに対する 摂食嚥下訓練は効果があるということはエビデンスもあるので、新予防給付だ けでなく介護給付でも対応してほしい。 また、施設のスタッフに対して専門家がきちんと指導できるような仕組みが 必要だろうと思っている。そういうことをしている施設に対して報酬上評価す る、あるいは基準をきちんと見直してほしいと思っている。 (木下委員) 介護保険施設の将来像の「医学的管理重視型の施設」が介護療養型医療施設 に当たると思う。医療側の議論で医療度別分類が導入されようとしているので、 何らかの住み分けができてくることを期待しているが、その議論を検証して介 護における医療をどうするかという議論に入るのがいいし、介護と医療の区別 ははっきりしてもらいたいと考えている。 矢野委員から指摘のあった人員配置よりもプロセス、アウトカム、サービス の質等で評価したらどうかということは、まさにそのとおりだと思うが、まだ 評価方法が確立していないので、現段階では人員配置も重要な評価の基準では ないかと思っている。 資料15ページにサービスの質の向上で3点あるが、これだけで本当にサー ビスの質がいいか悪いかという判断ができるか疑問であるし、木村委員が指摘 したように、ケアカンファレンスの実施についてもここに入るのではないかと 思う。 17ページにターミナルのことが書いてあるが、亡くなるまでにどう価値ある 人生を送っていけるかということを重点に置かないと、ただ亡くなることだけ をサポートするというのでは、本当のターミナルケアではないと思うので、そ の観点が少し抜けているのではないかという気がしている。 資料24ページに療養病床入院患者の30%弱が「容態急変の可能性は低く福 祉施設や住宅によって対応できる」者とあるが、在宅や他の施設に行けないと いう様々な問題があり、これは病院だけの問題ではなくて、そういう患者をど うしていくかという議論をする必要があると思う。 「容態急変の可能性は低いが一定の医学的管理を要する」者も、在宅で対応 できると解釈できるが、それをサポートするシステムをつくっていかなければ いけないと思う。在宅支援という点では、長期入院ではなくて、必要な時に入 院できる施設であるべきであり、村川委員にMSWを評価してもらったが、こ ういう機能を持って在宅との関連を深めていき、機能特化ということが重要だ と思う。 花井委員が指摘されたお風呂のない施設については、経過措置に期限がなか ったので、どこも努力してこなかったと思うので、これは転換方法等を提示す るべきで、その期限については、地域差等を踏まえて決めてもらいたい。 (見坊委員) 10月からの食費と居住費の負担増について、まだ把握ができていないが、入 所者にとって退所させられたら大変なので、負担増に我慢して耐える傾向は非 常に強いと思っている。 喜多委員が指摘した低所得者の範囲の問題は制度発足当初の議論であり、こ こは何かはっきりさせないといけない。厚生労働省はこれだけの保険制度をや っているのだから、是非早急に検討をお願いしたい。 今日出された資料の将来像、あるいは基本的な方向が出ていて、大体こうい う方向だと認識している。この方向として、15ページにサービスの質的向上と いうことが出ているので、追求してほしいと思う。せっかく介護保険制度が始 まって、若い人が勉強して生きがいのある職場をと意気込んでいても、資格を 取ってもケアマネジャーになれない、あるいはホームヘルパーにも入れないと いう実態があって、現場では将来性がないと言っている。 将来性がないと感じられる実態が長い間続いてはいけないので、介護保険制 度を何とか明るいものにしたいと思っている。また介護保険は強制的に加入さ せられる保険なので、先ほどのサービスの質の向上は非常に重要と考えている。 あと経営実態調査の見方について、利用者にはわかりにくいものだと思う。 前回改定の段階でもあったが、収益率が高いから報酬を下げるという理由にな ってしまっていいのか疑問に思っている。措置制度の時代と違い、施設がそれ ぞれの責任において運営していくので、やはりある程度の余裕を持って経営し なければ不安になるだろう。 そこで施設は苦心して、結局短期契約の職員を入れてつじつまを合わせてい るが、これではいけないと考えている。少なくとも経営実態調査の収益率につ いては、どの辺が適正か、ルールがあってしかるべきで、収益が上がっている から報酬を下げるのでは結局しわ寄せがいくので、施設の経営については慎重 に検討して適正な見方をしてほしい。職員が意欲を高められる方向で、経営実 態調査の結果が介護保険制度の報酬の見直しに生きるようにお願いしたいと 思っている。 最後に、沖藤委員から男性の介護の問題があったが、男性も妻の老後につい ては心配しており、万一先に介護を要する状況になったら全力を挙げて介護を したいという男性も私を含め多くいることを理解いただきたい。 (永島委員) 資料22ページの「在宅復帰促進策の重要性」について、「家族の意識づけ」 が92.6%とあるがこれは何を意味しているのか教えてほしい。 そもそも社会的な介護というのが介護保険ということでスタートして、これ は今まで介護地獄と言われていた家族介護から楽になるだろうという希望を 持って介護保険を迎え入れた。確かに私は、母が最後に10か月入院したとき に、夜続けて3日間安眠できたことが本当にうれしかったという過酷な状態の 介護をしていたのに比べれば、今は大分楽にはなっていると思う。介護保険の 中で家族の介護力というのはよく含み資産と言われるが、それについては何の データも表れていない。介護保険の中で、家族の介護力の位置づけが抜けてい ることを前から疑問に思っている。 東京の認知症介護センター方式というケアマネジメントのシートがあるが、 それによると施設と職員と家族と同じように1つのシートを記入していくこ とによって、協同関係ができているという話も聞いている。例えば、ホームシ ェアリングや地域密着型サービス等を機能させて、そして在宅介護がどうなの かという検討をしてほしい。 あと家族介護は、ケアに関する研修等を受けていないので、そういう技術的 指導とともに、家族への心情的な支援をしなければ、在宅介護がまた介護地獄 に戻ってしまう可能性があると思っている。 (田中(雅)委員) 資料15ページに「在宅復帰支援機能の強化」があるが、実際には21ページ の老人保健施設にそのことが述べてある。この在宅復帰支援機能というのは、 3施設共通にあるべきことではないかと思っている。 実際に考えてみると、施設のケアマネジャーはかなり在宅復帰のためにサー ビス調整をするということもあるのだが、利用者側にしてみると、実際に施設 でどんなサービスが届くかが見えない。あるいはどんなサービスが得られてい るかわからないという不安を持っている。そういう意味では、このような試行 的退所について報酬上の評価をしてほしいと思う。施設サービスを利用して いたら、在宅サービスが使えないというのが今の状況なので、それに対する配 慮が必要であり、それは老人保健施設だけではなくて、他の施設においても同 じように考えるべきではないかと思っている。 それから今の介護の現場での介護職員というのは、使い捨ての状況にあると 思っている。介護職員は大体3年で辞める場合が非常に多い。三年未満の離職 者は80%近い割合でいるという実態の中で介護の質を維持するためには、技術 の蓄積がとても大事であり、そのためには将来にわたって働き続けられる労働 環境をつくることが必要である。そのために今、努力してサービスの質をよく し、利用者に満足されている施設とそうではない施設が一様に扱われているこ とは、おかしいのではないかと思っている。 先ほど訪問介護の議論のときに、スーパー事業所という、介護福祉士の割合 が一定以上であるとか、サービス向上のための対策をとっていることを要件と した事業所に対する何らかの評価をしない以上、このまま介護労働者は使い捨 てのまま終わっていき、人材も育たない状況になるのではないかと思っている。 もう一点は、従来型特養におけるサービスの在り方について、これまでは個 室ユニットに対する報酬上の考え方はあるが、ケアの小規模化というか、ユニ ットではなくてもさまざまな工夫をしている従来型特養もたくさんあるので、 そういった努力に対しても何らかの評価があるべきではないかと思っている。 (三浦老人保健課長) 「在宅復帰支援機能の強化」は3施設共通の考え方であり、具体的にどうい う形でそれぞれの3施設に報酬上の評価をしていくかということについては、 この場での議論ということになると考えている。 (田中(滋)委員) 「在宅復帰支援機能の強化」はすばらしいことだが、その中に「在宅復帰者 の割合が一定以上の施設について評価を行うことが考えられるがどうか」と事 業者評価が出てきているのは疑問である。新予防給付はプロセスがよくわから ないけれども、アウトカムを測る。要介護度認定というアウトカムは比較的は っきりしていて、プロセスがわからないからアウトカム指標をとる。在宅復帰 に関する事業者評価についての退所はアウトカムとしてははっきりしていな い。これはサービスからの離脱で、極端なことを言えば追い出したケースも含 まれ、新予防給付の方では離脱を指標にしないことにしたのに、離脱が指標に なり得る。 逆に言えば、プロセスがいろいろとわかっていて、MSWの配置、地域や主 治医、在宅主治医や在宅ケアマネジャーとの連携とか、試行的退所とかプロセ スがはっきりしているが、アウトカムがよくわからない。両者は実は違う構造 なのに、こちらにすぐ事業者評価があるのは疑問である。 (井部委員) 資料13ページの「介護保険施設の将来像について」であるが、介護保険3 施設がこのような生活重視型で、在宅生活支援重視で、医学的管理もすると思 ったが、議論を聞いていると、生活重視型の施設は特別養護老人ホームで、在 宅生活支援重視型は3施設に関わるという説明だったが、特別養護老人ホーム の中にも生活重視で、かつ在宅に向けて支援すべきであることや、医療的ケア もできるようにするといったことが入りつつあるように思うので、そうすると 介護保険施設の将来像は3施設が独自の機能を持つのか、3施設が各機能を併 せ持つように考えるのか混乱してきたので教えてほしい。 (三浦老人保健課長) ここの記載内容は介護保険施設であるかどうかということだけではなく、高 齢者が慢性期においてどのようなサービスが必要なのか、その基本的な機能か ら見て3つの類型があるのではないかということである。ただし、医学的管理 を徹底して行うことになると、どうしても医療施設としての体系が必要になっ てくるので、医学的管理重視型の施設というのは今の類型でいえば療養型に比 重があるだろうと考えている。 今回は介護報酬と診療報酬の同時改定ということで、医学的管理重視型の施 設という部分についてどのように考えるべきかという議論が出てきている。 (井部委員) 医学的管理重視型の施設が介護療養型医療施設になるということは、その施 設に限定して介護保険と医療保険の機能分担をどうするか考えていくという ことか。 (三浦老人保健課長) このような機能を持っている施設としては、介護保険施設としては介護療養 型医療施設があり、医療保険でも医療保険適用の療養病床があるので、そこと の整理も含めて議論が必要ではないかと考えている。また単に介護療養型医療 施設を医療保険と介護保険でどう考えるかということだけではないと考えて いる。 (大森分科会長) 既存のサービスについては本日の議論を踏まえて、次回は既存サービスの報 酬・基準の体系に関するより具体的な議論を行い、全体としてまとめていきた い。 (池田委員) 療養病床に関しては診療報酬の動向も見て議論をする必要が残っていると 思う。今日でこの問題を打ち切らず、この療養病床の問題については診療報酬 の動向も見て、次回ももう一回議論の場をつくってほしいと思う。 ○大森分科会長より閉会の宣言 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係 TEL03(5253)1111(内3948 3949)