05/11/18 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 平成17年11月18日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成17年11月18日 14:00〜   厚生労働省共用第7会議室 2.出席委員(14名)五十音順   ◎池 田 康 夫、 上 原 至 雅、 折 笠 秀 樹、 守 殿 貞 夫、    神 谷   齊、 川 嵜 敏 祐、 後 藤   元、 土 屋 文 人、    早 川 堯 夫、○堀 内 龍 也、 三 瀬 勝 利、 溝 口 昌 子、     山 口 一 成、 吉 田 茂 昭 (注) ◎部会長 ○部会長代理   欠席委員(2名)   岡   慎 一、 田 島 知 行  3.行政機関出席者   川 原   章(審査管理課長)、   豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、   浦 山 隆 雄(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、   森   和 彦(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第一部長)、   坂 本   純(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第二部長)、   牧 野 ゆり子(独立行政法人医薬品医療機器総合機構新薬審査第三部長)、   田 中 克 平(独立行政法人医薬品医療機器総合機構生物系審査部長) 他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 それでは定刻になりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部 会を開催させていただきます。本日もお忙しい中、お集まりいただきましてありがとう ございます。  当部会委員数16名のうち、現在12名の委員の御出席を頂いております。溝口先生と 吉田先生は遅れてお見えになるということで、14名の御出席予定でございます。定足数 の方は問題ございません。欠席は岡委員と田島委員の予定でございます。それでは池田 先生、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。 ○池田部会長 それでは早速議事に入りたいと思いますけれども、その前にまず事務局 の方から配付資料の確認と資料作成に関与された委員の報告をお願いしたいと思いま す。○事務局 それではまず資料の確認をさせていただきます。本日先生方の机の上に 議事次第、座席表、名簿を配らせていただいております。議事次第に記載のございます 資料1〜5までをあらかじめお送りさせていただいておりまして、本日席上の配付資料 といたしまして資料6の優先対面助言品目の指定についてという紙と資料7、審議品目 の薬事分科会における取扱いの横の表でございます。それから資料8として専門委員の リストを配付しております。また、申し訳ございませんが、資料1-2といたしましてフ ェマーラ錠の添付文書の差し替え版を配付させていただいております。もし過不足等が ございましたらおっしゃっていただきたいと思います。  関与委員の件でございますけれども、平成13年1月23日の薬事分科会の申合せに基 づきます資料作成に関係された委員の確認でございますが、本日の審議品目につきまし て関与された先生はいらっしゃいません。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。先生方、資料の方はよろしゅうございますで しょうか。もし不足している資料がございましたら、どうぞ御遠慮なく申しつけていた だきたいと思います。よろしいですか。本日はお手元の議事次第にありますように審議 事項が2議題、報告事項が4議題でございますので、迅速に進めたいと思います。  早速議題1の審議に入りたいと思いますけれども、医薬品フェマーラ錠でございます。 この議題については先生方御記憶だと思いますけれども、平成14年11月と平成15年2 月のこの部会で御審議いただきまして、追加の臨床試験が必要だという判断を頂いたも のでございます。今回この追加試験の結果が出てまいりましたので、本日はその追加デ ータも含めまして改めて御審議いただきたいということでございます。それでは総合機 構から審査の概要を説明していただけますでしょうか。 ○機構 それではよろしくお願いいたします。議題1、資料1、フェマーラ錠1mg、同 2.5mgの輸入承認の可否等について、医薬品医療機器総合機構より説明させていただき ます。 本剤の有効成分であるレトロゾールは、エストロゲンの産生を促すアロマター ゼを阻害することによって抗腫瘍効果を発揮するアロマターゼ阻害剤であり、閉経後乳 癌に対して効果を示すものとして申請されたものです。  本剤は閉経後乳癌を効能・効果とし、平成12年7月11日に1mg製剤が申請され、そ の後平成14年5月28日に2.5mg製剤が追加申請されました。旧審査センターは承認し て差し支えないと判断し、平成14年11月22日及び平成15年2月19日に開催された本 第二部会において御審議いただきましたが、1mgと2.5mgの使い分けが明確でないこと、 本剤の主要な代謝酵素であるCYP2A6の変異を有する患者が日本人で多いことから本剤 の安全性が論点の一つとなり、臨床試験の追加提出を含めて用法・用量を再検討する必 要があるとして、本部会の継続審議となりました。  旧審査センターは申請者と相談を行い、申請者は新たな臨床試験を実施しまして、今 般追加臨床試験が提出されました。医薬品医療機器総合機構は追加提出資料について審 査を行いました。なお、これまでの審議の指摘等を踏まえ、申請者は本剤1mg錠の申請 を取り下げ、2.5mg錠のみを本剤の申請品目とすると判断しております。追加提出され た資料は、本剤2.5mgの追加臨床試験並びにCYP2A6の遺伝子多型と、薬物動態及び安全 性との関係を検討する試験を国内で実施したものです。  追加臨床試験の結果、本剤2.5mgの用法・用量については海外データと同様の有効性 であり、安全性についても海外同様、特に懸念される問題はありませんでした。また本 剤の患者における薬物動態はCYP2A6*4アリルを有する群、並びにslow metabolizerで は比較的血中濃度が高く、CYP2A6の変異は本剤の代謝へ影響することが示唆されたもの の、副作用の発現頻度や副作用プロファイルには当該SNPを有さない例との間に差異 は認められておりませんでした。また、現時点において海外で得られている複数の臨床 第III相試験においては2.5mgの用量が用いられ、本剤の有効性が示されており、海外に おける承認用量は本剤を承認しているすべての国において2.5mgの用量でありました。  以上の追加臨床試験等から、機構は本剤を閉経後乳癌に対し1日1回2.5mgで使用し た場合の有用性は認められ、承認して差し支えないと判断いたしました。なお、本剤は 新有効成分含有医薬品であることから再審査期間を6年とし、原体及び製剤は劇薬に該 当すると判断しました。また、生物由来製品及び特定生物由来製品には該当しないと判 断しました。なお、本日差し替え資料としてお手元にお配りした資料1-2の添付文書で すが、薬物相互作用の表と、薬効薬理の項の閉経後乳癌患者におけるアロマターゼ阻害 作用並びに血漿中エストロゲン濃度抑制作用についての記載を追加したものでございま す。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。ただいま総合機構の方から御説明がありまし たように、用法・用量の点で前回2回にわたって審議をして、宿題という格好で承認に 至らなかったわけですけれども、今回は1日1回2.5mgということで臨床試験が追加さ れ、更にCYP2A6の患者さんたちの代謝、あるいは副作用、その他の点について検討がさ れたということでございますが、先生方からの御意見、御質問を頂きたいと思います。 いかがでしょうか。堀内委員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 主要な代謝酵素であるCYP2A6の人種差が大変大きく、白人では1% ぐらいで日本人では20%ぐらいの全欠損の変異があるということが、体内動態及び副作 用や有効性にどのように関連するかが大きな問題点だったと思うのです。今のお話です と、安全性についても副作用の現れ方等についても海外と変わりはないということ、そ れから審査報告書のデータによると、poor metabolizerでは血中濃度のトラフ値が2倍 弱ぐらい高いが、そのくらいでは許容範囲であるととらえてよろしいですね。このこと をまず第一点に確認したいのですが。 ○池田部会長 それではCYP2A6、slow metabolizerのその点について御返答いただけま すか。 ○機構 今堀内先生がおっしゃったとおりで、*4アリルを有する例と有さない例、ま たslow metabolizerとそうでない例を比較しましても、特に安全性の点について差が認 められなかったというふうに機構は解釈しております。 ○堀内部会長代理 そうしますと副作用の発現等については倍量程度になったとしても 余り問題がなかったということですから、その点は結構だと思います。このように遺伝 子変異がかなりの頻度であり、トラフ値なども倍ぐらいに上がっているということです ので、有効濃度と副作用発現濃度との差が小さい薬ではきちんと検討しておかなければ 大きな問題になることがあることをある面でははっきりさせた例であると思ったのです が、そうとらえてよろしいでしょうか。 ○新薬審査第一部長 堀内先生が御指摘の点は、やはりこういった明確な遺伝的背景に よって有効性、安全性が変わってくる可能性があるものに対する正しく最新のアプロー チという点では、私どもも考え方として大変重要だと思っております。キーとなる代謝 酵素に関する知見が近年非常に集積されておりますので、今回もこういった観点に関し ては企業との協議の中でも必要性がはっきりと認識され、こうした形でデータが出てき たということも、要するに審査側も企業側も関心を強く持っているということの表れで あると思います。最近では、いわゆるファーマコジェノミクス(PGX)のアプローチと いうのを新薬開発の過程の中に組み込んでいくという考え方が明瞭に打ち出されており ますし、総合機構の私どもが審査をやっているところからも開発中の企業に対してでき るだけそういうアプローチを必要に応じてやっていくようにということで、治験相談の 機会もとらえて必要性のあるものについて個別に指導しております。  こういうことでございますので、今回のものは遺伝子多型によって薬物動態の差がや はりあるということが分かったとともに、実はこれは海外で10mgまでの高い用量の検討 がなされていて、その場合のPKの値と副作用がどうであるかということの検討も一緒 にやってあるのです。そのことによって本剤2.5mgを日本人に投与して、暴露が倍ぐら いになる、つまり5mg相当になるというところまでだということがはっきり分かりまし たので、一応忍容可能な範囲に入っているという考察ができました。こういうことをき ちんと積み重ねて、海外で使われている有用な薬を日本人においても安全にきちんと有 効性を発揮して使えるようになるということが正しい道ではないかと考えております。 ○池田部会長 ありがとうございました。幸いなことに、これはslow metabolizerで血 中濃度がトラフ値で大体倍ぐらいに一応上がるわけです。ですから、有効濃度と副作用 の発現濃度の幅が広いからよかったということになるのだろうと思うので、これは非常 に大事なアプローチだろうというふうに思います。これが一つのモデルケースになって、 代謝酵素の遺伝子多型を考慮に入れながらこれからの臨床試験の開発が進むことになれ ばいいと。機構の方もこれからはそういうふうに指導していくということでございます ね。いかがでしょうか。土屋委員、何か御意見はございますか。よろしいですか。その 他いかがでしょうか。これは平成12年と15年の2回ほど議論させていただいて、基本 的には有効性についてはお認めいただいていたわけですけれども、用法・用量のところ の1〜2.5mgという使い方、その用量の幅と、それからそういう代謝酵素の問題につい てやはり答えを出さないとなかなか安全に使えないのではないかということでその先に 行かなかったわけです。今回それに対して答えを出してきたということでございますけ れども。どうぞ。 ○堀内部会長代理 今の点については添付文書の3ページに「7.CYP2A6遺伝子多型の 薬物動態に及ぼす影響」という項目がありますが、ここの表現は臨床医には分かりにく いのではないかと思います。日本人ではCYP2A6の変異が20%ぐらいいるということと、 「高いものの、ほぼ一定の推移を示し、定常状態に達した」となっているのですけれど も、これはただ高くなったということしか書いていないですよね。表現の仕方はいろい ろあると思いますが、副作用等について同等であることなど、もう少し説明を加えたら いかがかと思いますが。 ○池田部会長 どうぞ。 ○機構 ありがとうございます。先生の御指摘を踏まえて適切に対処させていただきま す。 ○審査管理課長 記載充実をさせるということで検討したいと思います。 ○池田部会長 山口委員、どうぞ。 ○山口委員 素人の質問で申し訳ないのですけれども、用量で成人には1日1回2.5mg と。これは体重差やいろいろなことを一切無視してよろしいのでしょうか。 ○池田部会長 いかがでしょうか。 ○機構 国内外を含めまして用量を増減したような検討はございませんので、調節の必 要性は現在ないというふうに機構は判断しております。 ○池田部会長 山口委員、いかがですか。 ○新薬審査第一部長 ちょっと補足しますけれども、この薬の作用はアロマターゼの阻 害によってエストロゲンの合成を抑えて思い切り下げてしまうという目的で使いますの で、要するにある程度以上使いますと効果はサチュレートする格好になるのですが、病 気が病気ですので、効果不十分の方が具合が悪いということで十分量を投与し続けるこ とが基本の考え方になっています。そういう意味では欧米でこの薬は2.5mgで十分効果 が出ておりますので、日本人に対してはもうちょっと少なくてもいいのではないかとい うことがもともとございまして、それがせんだっての御議論でも1〜2.5mgという用量 を日本で考えた背景にございます。ただ、やはり2.5mgという用量で使ったときに、こ の部会での御審議の後も海外で更に非常にすばらしい有効性のデータが蓄積されており まして、確実な効果を期待するところは全部2.5mgのデータで出そろっているという状 況です。それよりも下の用量を探るという可能性はなくはないのですが、むしろ安全性 がそこまで担保されているのであれば、十分量をきっちり使って確実な再発防止効果を 期待するということで考えてまいったという経緯でございます。したがいまして、比較 的低体重の日本人の患者さん方に使ったときに懸念すべき点として安全性の問題を主に 見てまいりまして、この薬のいわゆるtherapeutic rangeが非常に広いということで大 丈夫そうだということになっております。 ── 吉田委員着席 ── ○池田部会長 よろしいでしょうか。そのほかに委員の先生方から何かございますでし ょうか。吉田委員、おいでになって早速ですが、実は今フェマーラの2.5mg錠について の議論をしているのですけれども、閉経後乳癌の治療薬ということで特別にコメントか 何かございますれば…。特にございませんか。 ○吉田委員 特にございません。 ○池田部会長 そのほかの委員の先生方はいかがでしょう。よろしゅうございますか。 ありがとうございました。それでは承認を可としまして、薬事分科会に報告とさせてい ただきたいと思います。  続きまして議題2でございますけれども、オゼックス点眼液、トスフロ点眼液の製造 承認の可否についてでございます。それではこの議題について総合機構から審査の概要 を説明していただきたいと思います。 ○機構 議題2、資料2、医薬品オゼックス点眼液0.3%、トスフロ点眼液0.3%の生物 由来製品又は特定生物由来製品の指定の要否、製造承認の可否、再審査期間の指定、並 びに毒薬及び劇薬の指定の要否について医薬品医療機器総合機構より御説明申し上げま す。  本剤の有効成分であるトシル酸トスフロキサシンは、富山化学工業株式会社において 開発されたニューキノロン系抗菌薬でございます。1990年に眼科領域感染症を含む各科 感染症を効能・効果とする経口剤が承認されております。  トスフロキサシンはグラム陰性菌に対する抗菌力に加え、キノロン系抗菌薬の抗菌力 が弱いとされておりましたグラム陽性菌に対する抗菌力が本剤以前のキノロン系薬に比 べますと改善されているということから、グラム陽性菌が起因菌となることも多い眼科 領域感染症に対する有効性が期待されると考えられまして、□年より点眼薬の開発が開 始されました。なお、2005年7月現在、トスフロキサシン点眼液が承認されている国は ございません。  本剤の専門委員といたしましては、資料8にございますとおり久保田委員、澤委員、 田中委員、藤田委員、吉岡委員の計5名を指名し、御意見を賜りました。  臨床試験でございますが、今回の申請に際しては第I相試験1試験、第II相試験2試 験、第III相試験5試験の計8試験の成績が提出されております。  第III相試験としては、レボフロキサシンを対象とした比較臨床試験、細菌性外眼部感 染症患者を対象としたオープン試験、クラミジア結膜炎を対象とした試験、術前無菌化 療法試験、小児対象試験が実施されました。その結果、レボフロキサシンを対象とした 比較臨床試験において非劣性が検証されております。クラミジア結膜炎を対象とした試 験においては、有効性評価対象症例5例中4例が再燃と判断されていたことから、本剤 の有効性が検証されているとは言い難く、承認する効能・効果より削除することが適切 であると機構は判断いたしました。また、術前無菌化療法試験、小児対象試験、外眼部 感染症を対象とした臨床試験においても細菌学的効果などその有効性は確認されている と判断いたしました。安全性について提出された臨床試験成績から特段の問題は検出さ れていないことから、本剤の安全性・有効性については特段の問題はないものと機構は 判断しております。  本申請は新投与経路医薬品であることから、再審査期間は6年とすることが適当であ ると判断しております。なお、原体、製剤とも毒薬・劇薬に該当せず、また生物由来製 品又は特定生物由来製品に該当しないと判断いたしております。薬事分科会には報告を 予定しております。御審議のほどよろしくお願い申し上げます。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは委員の先生方からの御質問、御意見 を頂きたいと思います。ただいま御説明がありましたように、幾つかやられた第III相試 験の中からクラミジアの試験においてはその有効性が認められなかったということでご ざいますが、比較試験においては非劣性、そのほかの術前無菌試験あるいは小児試験で も有効性が判断されたということでございますけれども、いかがでしょうか。神谷委員、 どうぞ。 ○神谷委員 余り点眼薬のことがよく分かりませんので教えていただきたいのですが、 この審査報告書をずっと通して読ませていただきますと、特に小児のことなのですが、 小児の投与量についてクラミジアを外してしまったので、最終的には子供のことは余り 問題にならなかったのではないかなと思いましたけれども、新生児の症例が11例しかな いとか、その中でもはっきりしたものは1例しかないようなことが書いてあります。そ れまでは用法・用量のところに「小児(新生児、乳児、幼児を含む)」と書いてあったの が、最後の審査報告(2)のところでは最終的には小児だけに指定されてしまっているわ けですけれども、こうやって「成人及び小児」としますと、小児という意味はもう0歳 から上まで全部入ってくるということになると思います。一方では審査報告書の中に子 供の用量のことについては十分なデータがないとか、あるいはもう1か所に幼若ウサギ の眼内濃度は成熟ウサギの約2倍ぐらいになって、幼若ウサギとは少し動態が違うのだ というようなこともお書きになっているので、最終的に小児という形でまとめてしまっ ていいのかどうかということで、ここにもう少し何か追加の記載が必要ではないかと思 うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。 ○池田部会長 それについていかがでしょうか。 ○機構 ただいま神谷先生から御指摘いただきました点は、審査チームにおきましても 問題と考えましてディスカッションを重ねております。最終的に用法・用量のところか ら括弧書きの部分を削除いたしましたのは、今先生からも御指摘がございましたとおり、 特に新生児のところが本当に太鼓判が押せる用法・用量として適切かどうかという点に ついて疑問を抱いております。おっしゃいましたとおり、暴露量が大きいということに ついてやはり適切に情報提供する必要があるだろうということから、現在どういう形で 情報提供するのがいいかということで、薬物動態のところに動物でこういうデータが得 られていて幼若だと暴露量が多くなるという話、それから、今回最終的にクラミジア試 験が効能から削られるという形になったのですが、小児については増量投与の経験が臨 床成績においてないものですから、その部分については用法・用量のすぐ下に「用法及 び用量に関連する使用上の注意」として増量の経験がない旨を明記しております。機構 でも今ある情報では決して十分とは言えないと考えておりまして、市販後調査等におい て小児等のデータもこれから蓄積していく必要があると考えております。 ○池田部会長 いかがでしょうか。どうぞ。 ○神谷委員 ということは、添付文書には何も追加しないのですか。小児についてはも う少し、例えばデータが不十分な点があるので注意して使いなさいとか、そういう記載 が要るのではないかと思うのです。眼科の先生が新生児にどういうふうに指示されるか というのは私も余り知りませんので、こういう例もそれほど多くはないですし、いいよ うな気もしますが、大人と生まれたばかりの赤ちゃんの投与量が全く一緒であって、し かも経口ではないけれども、実際途中で幼若ウサギの眼内組織が成熟ウサギとは違うと いうようなことが研究の中で分かっているわけですから、もう一つ何か記載が要るので はないかと思うのですけれども。 ○池田部会長 いかがですか。どうぞ。 ○新薬審査第一部長 先生が御指摘の点については更に検討を加えたいと思いますが、 本剤はそもそも開発の過程で小児での開発をむしろ積極的にやったという製剤でござい まして、従来のキノロンの点眼の製剤は幾つもあるのですが、小児に使うことを想定し てデータ取りをしたのは実はこれが初めてといったところでございます。そういった点 は十分考慮して、分かっていることは今までの薬に比べるともうちょっと検討してある という点ではその分がましなわけで、むしろその点を反映させていくようにしたいとい う考えでおります。クラミジアの話だけではなくて、いわゆる母子垂直感染の予防とい った観点で新生児に点眼剤が使われることはかなりあるというふうに聞いておりました ので、そういう使われ方が避けられないのであればきちんとデータを取るべきだという ことからこういう幼若動物での検討がなされたという経緯でございますので、その点を もう少しデータとして現場に提供するように考えたいというふうに思います。 ○神谷委員 分かりました。 ○池田部会長 よろしいでしょうか。本当に小児の用法・用量というのはいつも話題に なるわけですけれども、委員の先生方、そのほかに何か御意見はございますでしょうか。 守殿委員、どうぞ。 ○守殿委員 単純な質問なのですけれども、これは海外で開発されていないということ は、開発されたにもかかわらず中止になったとか問題があったということではなしに、 ただ単に日本の製品だから日本のメーカーしかやっていないという理解でよろしいです ね。 ○池田部会長 そういうことですね。 ○機構 さようでございます。 ○池田部会長 どうぞ。 ○後藤委員 適応菌種で確認させていただきたいのですが、実際に臨床検討の際に分離 されなかった菌種が腸球菌以下幾つかあるわけですけれども、これらに関しては経口薬、 あるいはin vitroのこれまでの成績を考えれば十分に有効性が確認できるということは それでよろしいと思うのですが、確認として、ここに記載されている実際に使用例のな い菌種に対して申請時あるいはその後の使用実態下の調査で、これらの菌種に対してど の程度の有効性が出ているか教えていただけますか。 ○池田部会長 いかがでしょうか。非常に大事な点だと思いますけれども。 ○機構 審査報告書の薬理の9ページのところでございますが、細菌の臨床分離株に対 する抗菌力としてこちらに上がっているような菌種につきまして、近年の株のデータを 取っております。ここに上げられております本剤のMICと感染創における濃度から有 効性が期待できるというふうに判断いたしました。 ○後藤委員 これは全部in vitroのデータですので、実際にこれらの菌種が臨床例に関 してどのぐらいの有効率があるか教えていただけますか。 ○機構 経口剤投与例のということでございますか。経口剤投与例の最近のデータは本 日の資料には添付されておりませんので、後日御連絡させていただきたく存じます。 ○池田部会長 後藤委員、よろしゅうございますか。 ○後藤委員 報告書の34ページの方に「同一有効成分である経口剤においてもその有効 性が確認されている」ということは、恐らくデータがきちんとおありだと思いますので、 データがきちんとあればそういうことでよろしいと思います。 ○池田部会長 それでは、また後ほどそのデータを後藤委員の方にフィードバックして いただけますでしょうか。そのほかいかがでしょうか。土屋委員、どうぞ。 ○土屋委員 ちょっと基本的なルールのことでお伺いしたいのですが、オゼックスの方 はいいのですけれども、たしか前にサンシクロのときに一般名を使っているから駄目と いうことで機構の方で指導してパピロックか何かに変わったという事例があったように 思うのですが、トスフロ点眼液という名前はもろに一般名というか、成分名の途中で止 まっている感じなのです。これについてはそれでよろしいのでしょうか。 ○池田部会長 機構の方から何か意見はございますか。 ○審査管理課長 経口剤の販売名は何と何でしたか。オゼックス錠と…。 ○機構 トスキサシンです。 ○審査管理課長 これは富山化学工業株式会社と株式会社ニデックですけれども、ニデ ックの方がトスフロなのですね。恐らく経口剤を開発している会社と異なる会社、新た に出てきたのがニデックという眼科領域のエキシマレーザーなどを作っている会社です けれども、そこが出てきてブランド名トスフロというふうに考えて申請してきたのだと 思いますが、御指摘の点を踏まえて販売名につきましても少し検討してみます。 ○土屋委員 前回サンシクロでああいうことをおっしゃっているとすると、やはり統一 感はとっておかないと恐らく今後のこともありますので、それをよろしくお願いします。 ○審査管理課長 御指摘の点は理解いたしました。 ○池田部会長 ではその点についてはまたよろしくお願いいたします。神谷委員、どう ぞ。 ○神谷委員 ちょっとしつこくて申し訳ありませんけれども、添付文書の「使用上の注 意案及びその設定根拠」というところに書いてあります「1.副作用」のところで、全体 で副作用が非常に少ないということは分かりましたけれども、例えば眼刺激ということ が一つ問題になっておりますが、新生児とか小児でも小さいところの眼刺激がなかった ということは本当に言って大丈夫なのですか。新生児が眼刺激があった、なかったとい うのはなかなか分からないという気がするのですけれども。 ○池田部会長 いかがでしょう。 ○機構 確かに先生がおっしゃるとおり、自己主張ができない年齢においては眼刺激と いうのはなかなか見知しにくい副作用かと思いますので、その辺についてはディテクト できていない可能性は否定できないと思います。 ○神谷委員 それはそうだろうと思います。添付文書なり注意書きの中でこの辺のこと がよく分かっていないので。ただ大人ではこういう副作用があるから、そういうことに ついては注意して使用するというような記載があってもいいのではないかなと。先ほど 部長も言われましたように、子供のことがこれだけ検討してある薬というのは私もほと んどないと思っていたので、それは非常にうれしいことだと思ったのですけれども、た だそうであるからまた、やはりきちんとしておかなければいけないということもあると 思いますので、よろしくお願いします。 ○新薬審査第一部長 御指摘の点については、市販後の調査の中で更に収集をしていく ということになろうかと思います。今のところ幼若動物で眼刺激のデータも一応あるの ですが、刺激性がないという結果になっております。動物実験で多少なりとも刺激性が 出ているようですとやはり気にはなるのですが、これだけ基礎試験のところでの刺激性 が低いものですから、分からないとはいうものの、それほど心配はしていないというの が実情でございます。 ○池田部会長 折笠委員、何かございますか。よろしいですか。そのほかいかがでしょ うか。よろしゅうございますでしょうか。今委員の先生から幾つかの点を御指摘されま したので、一応機構の方でその点についてメーカーの方と相談をしていただいて、もし 差し支えなければ承認を可ということにして、薬事分科会に報告させていただきたいと 思いますけれども、よろしいでしょうか。ありがとうございました。本日の審議事項は その2議題でございますけれども、報告事項が4議題ございますので、報告事項に移り たいと思います。資料3と資料4の2品目は当初10月の部会で報告いただく予定でした けれども、10月の部会が休会となりましたので、本日報告していただくものでございま す。それでは事務局からまとめて説明をお願いできますでしょうか。 ○機構 それでは御報告させていただきます。まず、議題1、シナジス筋注用50mg、同 100mgの輸入承認事項一部変更承認について御報告いたします。資料3を御覧ください。 本剤は、免疫グロブリンに属する抗RSウイルスヒト型化モノクローナル抗体であり、 現在、早産児や気管支肺異形成症を有する乳幼児に対するRSウイルス感染による重篤 な下気道疾患の発症抑制の効能・効果で承認されております。今般、アボット ジャパン 株式会社から、24か月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、 乳児及び幼児を適応患者に追加するための輸入承認事項一部変更承認申請がなされ、優 先審査の対象とされたものです。総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支 えないと判断いたしました。なお、本申請は10月14日付けで承認済みであり、今回新 たに承認された効能・効果に係る再審査期間は、本剤の再審査期間の残余期間である平 成20年1月26日までといたしました。  続きまして議題2、ティーエスワン カプセル20、同25の製造承認事項一部変更承認 について報告いたします。資料4を御覧ください。本剤は、フルオロウラシルのプロド ラッグであるテガフール、フルオロウラシルの分解酵素を阻害するギメラシル及びフル オロウラシルのリン酸化酵素を阻害するオテラシルカリウムを含有する配合剤であり、 現在、胃癌、結腸・直腸癌、頭頸部癌、非小細胞肺癌の効能・効果で承認されておりま す。今般、大鵬薬品工業株式会社から手術不能又は再発乳癌に関する効能・効果の追加 及び本剤を増量する際の用法の整備について、製造承認事項一部変更承認申請がなされ たものです。総合機構における再審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いた しました。なお、本申請は11月14日付けで承認済みでございます。以上でございます。 ── 説明中、溝口委員着席 ── ○池田部会長 ありがとうございました。ただいまの二つの報告事項について先生方の 御質問、御意見を伺いたいと思いますけれども、いかがでしょうか。堀内委員、どうぞ。 ○堀内部会長代理 資料3は迅速審査というお話でしたけれども、14日に承認というこ とですが、申請からどのくらいで承認されているのでしょう。 ○審査管理課長 報告書の3ページを見ますと、申請年月日は平成16年10月28日でご ざいますので、約1年というところでしょうか。審査報告書にございますようにやり取 りをやってということでございまして、審査側が1年間抱えていたというわけではござ いませんので、そこは御理解をお願いしたいと思います。 ○池田部会長 よろしゅうございますか。ティーエスワン カプセルについてはただいま の御説明で何か御意見はございますでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。そ れではこのシナジス筋注用50mg、同100mgの輸入承認事項一部変更承認について、そし てティーエスワン カプセル20、同25の製造承認事項一部変更承認について御承認いた だいたということで進めさせていただきたいと思います。ありがとうございました。そ れでは続いて議題3、4についてお願いします。 ○事務局 それでは報告事項の議題3、4につきまして続けて御報告を申し上げます。 まず議題3の資料5でございます。優先審査品目の指定につきまして御報告を申し上げ ます。優先審査の取扱いにつきましては、2ページにその概要を示しております。指定 に当たりましては「(1)適応疾病の重篤性」、「(2)医療上の有用性」を総合的に評価 して判断するという取扱いになっております。  1ページに戻っていただきますと、本日報告いたしますのはテモダールカプセル、成 分名がテモゾロミドでございます。悪性神経膠腫を申請効能として承認申請がなされた ものでございます。本剤はアルキル化剤の一種でございまして、脳脊髄液への良好な移 行を特徴とする経口剤でございます。悪性神経膠腫に対する効能・効果を有する医薬品 は既に幾つかございますけれども、既存の化学療法ですとこれまで臨床的に期待される エビデンスが極めて少なかった一方で、本剤につきましては放射線療法と併用すること で、放射線療法単独に比べまして有意な生存期間の延長という成績が海外で得られてお りますことなど、本剤の医療上の有用性を評価いたしまして、今般優先審査に指定させ ていただいたということでございます。 ○機構 続きまして医薬品優先対面助言品目指定の結果について、資料6により報告さ せていただきます。優先対面助言品目指定制度は、治験品目の中でも医療上の有用性が 特に高いと期待される品目について優先的に対面助言、いわゆる治験相談を行うという ものでございます。優先審査品目の選定の考え方に準じまして、指定時までのデータに 基づき、適応疾患の重篤性と医療上の有用性を総合的に評価することにより選定してお ります。今回、当部会の関連品目として1品目を指定しております。  今回の指定品目はファイザー株式会社のsunitinib malateというものでございまし て、マルチターゲット型チロシンキナーゼインヒビターでございます。このものは海外 でもまだ承認は取得しておりませんけれども、米国では「イマチニブ耐性悪性消化管間 質腫瘍」及び「サイトカイン抵抗性腎細胞癌」の適応について、本年8月に承認申請が なされておりまして、現在審査が行われている状況ということでございます。今回の優 先対面助言品目としての指定も、この消化管間質腫瘍と腎癌に対するものでございます。 消化管間質腫瘍につきましては、既存薬としてメシル酸イマチニブ(グリベック)がござ いますし、腎癌につきましてはインターフェロンですとかインターロイキンが主な治療 薬として使用されているところでございます。欧米で実施された臨床試験では、本剤投 与によりこれらの既存薬に抵抗を示した患者においても高い有効性を示すということが 報告されているところでございますので、本剤は既存薬よりも有用性が優れる可能性が 高いと判断いたしまして、優先対面助言品目として指定したものでございます。以上で ございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。優先審査の品目指定と優先対面助言品目につ いて御報告いただきましたけれども。どうぞ。 ○堀内部会長代理 これはマルチターゲット型チロシンキナーゼ阻害剤ということです けれども、レセプター型のチロシンキナーゼに対する阻害となっていますが、主として レセプター型だけが阻害されるのですか。それとも細胞内にたくさんあるチロシンキナ ーゼ活性を持つたんぱくもかなり阻害されるのでしょうか。マルチターゲット型という のはこれまでの抗がん薬等の概念から見ると新しい考え方だろうと思いますけれども、 どうなのでしょう。 ○池田部会長 どうぞ。 ○機構 資料の方から判断いたしますと、主として受容体型のチロシンキナーゼに対し て作用するということになるかと思います。 ○堀内部会長代理 何を言いたいかといいますと、有効性も確かに高いだろうと思いま すけれども、情報伝達系のいろいろなたんぱくが阻害されるとなると、かなり重篤な副 作用が起こる可能性も否定はできないだろうと思いますので、助言をする場合にその点 についても十分配慮していただければというふうに思います。 ○池田部会長 余りにも広いから分子標的というにはちょっと言いづらいような品目の ような気がしますけれども。この優先審査品目あるいは優先対面助言品目について、何 かそのほかに御質問はございますでしょうか。上原委員、どうぞ。 ○上原委員 今の二つの違いがよく分からないのですけれども、優先審査品目と対面助 言品目の御説明があったと思いますが、もう一度お願いできますか。 ○新薬審査第一部長 簡単に言いますと、申請がされているものとされる前のものとい う違いでございます。優先審査はもう申請がされていますので、審査を優先的にやると いうことでございます。対面助言というのはまだ申請前の開発中の段階でございまして、 現在我々総合機構の方でいわゆる治験相談という枠組みで効率的な開発をし、いち早く 患者さんに物が届くようにということで、あるいは的を外さない適切な開発をやっても らうという観点から、相談も優先的に受け付けるという制度でございます。それに対す る品目の指定をしておりまして、その点を御報告しているものでございます。 ○上原委員 そういうものとしてはこれは初めてということでございますか。 ○新薬審査第一部長 これまで優先対面助言の指定をしたものはこれでもう二けたにな っております。 ○上原委員 そうですか。分かりました。 ○池田部会長 ちなみに対面助言の優先ということになるとどのぐらい早く…、ここで 指定されるともう来週ぐらいには…。 ○審査センター長 対面助言は申込みが殺到しまして本年初頭に受付を止めました。対 面助言自体をやめたわけではないのですが、止めました。今は3か月後の枠を決めまし て、申し込みを受け付けて優先順位を決めて対面助言をやっております。ただ、優先対 面助言についてはその企業が対面助言を受けたいときにこちらは合わせるということに なっています。 ○池田部会長 非常に優先ですね。折笠委員、どうぞ。 ○折笠委員 通常抗がん剤だとエンドポイントは奏効率ですよね。この薬剤になると、 例えばそういう奏効率ではなくてレセプターの活性状態とかたんぱく発現度だとかをエ ンドポイントにして開発していいということですか。 ○新薬審査第一部長 今のsunitinibに関してはASCOで臨床成績が出ていまして、 これが非常に優れた成績だということが分かっておりますので、奏効率も見ていますし、 サバイバルベースの評価もやってきています。何しろどちらも非常に悪性度の高い腫瘍 で生命予後はそれほど長くないので、早めに結果が出ております。一応いわゆるTTP などのベースでの評価がもう出ておりますので、単純な奏効率ベースよりはエビデンス 的にはもっと確たるものになっているという状況でございます。したがいまして、基礎 的なデータだけで判断するということではなくて、臨床的に十分インパクトのあるデー タが出ている状況でございます。 ○池田部会長 上原委員、どうぞ。 ○上原委員 このファイザーの製品についてはアメリカで申請が始まったという御説明 がございましたけれども、その前の品目でシェリングの方の欧米の状況はどうなのでし ょうか。 ○事務局 テモゾロミドでございますが、こちらの方はアメリカでは既に1999年に承認 されております。 ○池田部会長 よろしゅうございますでしょうか。ありがとうございました。今配られ た「『抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン』の改訂について」も事務局 の方からお願いします。 ○審査管理課長 それでは私の方から御説明させていただきます。今年、11月1日付け でこのような通知を出させていただきました。抗がん剤の臨床評価のガイドラインにつ きましては、平成3年にここにございますような「現行ガイドライン」が出ていたわけ でございます。今回10年以上たちまして、これの見直しをしたということでございます。  まず一番後ろのページをちょっと御覧いただきたいと思うのでございますけれども、 このガイドラインは私どもの方から日本癌治療学会北島理事長に改訂のお願いをいたし まして、癌治学会の方ではガイドラインの改訂委員会ということで、実際には加藤先生 他のメンバーで改訂案を検討いただいたということでございます。これにつきましては、 昨年の11月に癌治学会の方から私どもの方に報告を受けまして、その後パブリックコメ ントなどの手続を経て今年の11月1日に通知という形で出させていただいたというこ とでございます。このガイドラインの適用時期は平成18年の4月1日でございます。  粗々の内容でございますけれども、一部新聞報道等もされましたのでお読みいただい ていると思いますが、先程来ちょっと議論がございましたように、10年以上前には分子 標的薬などの概念がなかったわけですけれども、そのほかに抗体治療薬といったような ものも出てきたと。それから、先程来御議論になっておりますエンドポイントとしても 腫瘍の縮小効果か延命効果かといったような議論も出てきたということでございまし て、ここに背景、その他概要がいろいろと書いてございます。申し忘れましたが、その ほかにICHを中心としました国際的な動きといいますのも前のガイドライン、通知以 降にかなり大きく変わってきたということ。ICHで海外のデータの受入れのいろいろ な条件整備なども整ってきたと。それからこれも大きなことでございますけれども、前 のガイドラインの時代にはGCPというのは法令上の規定ではなかったわけでございま すが、そちらの法制化が進んだということでございます。ただ一方、先ほど上原先生の 方から御質問がございましたように、実はこのテモダールカプセルという薬は欧米では 既承認でございますけれども、日本でまだ承認されていないということで、患者さん方 からやはり日本でも早く使えるようにしてほしいという要望もございました。そういう 全体的なことを勘案した上で、なおかつ評価はきちんとめり張りを付けてやるというこ とになりまして、そういう意味でこういうガイドラインを出させていただいているとい うことでございます。  ポイントの部分は承認申請時の第III相試験成績の提出でございまして、患者数が多い 癌腫を対象とした抗がん剤の場合には延命効果等の明確な臨床的有用性の検証が必須だ ということで、非小細胞肺癌、胃癌、大腸癌、乳癌といったようなところについては、 基本的に第III相試験の成績を承認申請時に提出することを必須とすると。ただ、もちろ ん癌腫で縛りが付く場合には例外が書いてございます。ということになりまして、癌腫 によりましてはサバイバルのデータが出ないと申請できないのかということになります と、今度はまた別の新しい抗がん剤への患者さん方のアクセスの問題等も出てまいりま すので、第II相試験終了時において高い臨床的有用性を推測させる相当の理由が認めら れる場合には、第III相試験の結果を得る前に承認申請し、承認を得ることができると。 その際は第III相試験の結果をより速やかに有用性などを検証しなければいけないという ことになっています。それからこの第III相試験のデータでございますけれども、これの 実施場所については国内外を問わないということです。そういう意味では国内ではまだ II相試験段階であっても、海外で延命効果等のデータが入手可能であればそれを基に申 請することもできるということで、承認申請前に国内で実施する臨床試験数を物により ましては最小限として、効率よくかつ迅速に当該薬剤の導入が図れるように臨床開発計 画を立案すべきだということが書いてございます。もちろん実際に治験のデータが出ま して、ある程度のデータが出ておりますれば先ほどのように優先審査をし、できるだけ 早く医療の現場で使えるようにしていくということでございます。あとICHの関係の GCPや統計原則のことがございます。  それから3ページの上から3行目でございますけれども、先ほど豊島センター長の方 からもコメントを頂きましたが、いずれにしましても抗がん剤の場合には患者さん方等 からの切実な要望もございますし、企業としても適切な臨床開発を促進するといったよ うなことで、開発方針に関する規制当局との相談も積極的に利用することが望ましいと いうことから、もちろん物にもよりますけれども、良いものであれば優先的な治験相談 も行うといったような形になっております。そのほかI相、II相、III相等についてのデ ザインの主な記述を記載している形になっております。これにつきましては冒頭に申し 上げましたように、日本癌治療学会の先生方の御協力や多くの方々のいろいろなコメン ト等を頂いて11月1日付けで出させていただいたということでございます。私どものホ ームページでも一応この通知、それから300を超えるパブリックコメントがまいりまし て、それに対する考え方等もウェブサイトの方で公開しているという形になっておりま す。以上でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。何かこの点について委員の先生方…、どうぞ。 ○折笠委員 ちょっと確認させていただきたいのですけれども、適応追加の場合も第III 相試験が必要ということですか。先ほどの再発乳癌のような…。 ○新薬審査第一部長 一応癌腫別にそれぞれという考え方になっておりますので、例え ば胃癌を持っているところに乳癌を付けるという効能追加であれば、それは乳癌の患者 数が多いのでそれについてIII相試験のサバイバルの評価は要るだろうという考え方で す。ただし、先生が今おっしゃった再発というのはいわゆるセカンドライン、サードラ インといって非常に限定されてくることになりますと、そこはなかなか難しいだろうな と。ということで、患者数が多いことを一応前提にしているということでございます。 ○池田部会長 そのほかはよろしゅうございますでしょうか。どうぞ。 ○堀内部会長代理 確認したいのですが、抗がん薬の場合、同時開発にしろブリッジン グスタディーをやるとするとどこでやるべきだというように考えていらっしゃいます か。 ○新薬審査第一部長 堀内委員が御質問の件では、まず抗がん剤の場合のブリッジング というのが事実上なかなか難しくて、例えば実際に海外で既に承認されていて、サバイ バルのデータが出ている状態のものを日本に持ってくるというようなケースを想定しま すと、日本でサバイバルの比較をもう一回やれるかというとなかなか難しくて、そうい うスタイルでのブリッジングはまず考えられることはありません。一番問題になります のは、いわゆる細胞毒性の強い化学療法剤の場合ですと民族によって毒性の発現域の限 界値が微妙に違うというようなケースが非常に危険だということで、その観点から通常 日本国に持ってくる場合、日本の患者さんでのフェーズIの試験をやって、MTDをき ちんと見て評価してくださいということを従来やってきております。この辺りも最近は 海外であろうがどこであろうが、フェーズIをやっていく段階のデータのとり方がかな り精緻になっておりますので、もちろん代謝の問題など違いがありそうだという場合は そうはいかないのですが、非常に単純な代謝経路の場合ですと、別に日本人でわざわざ もう一遍やらないと絶対分からないということでもないのだろうと。こういう理解にな ってきておりまして、がんの領域は民族差の問題を考える必要性の比較的少ない領域で はないかというふうに全般としては考えております。  ただ、例えばイレッサのようないわゆる遺伝子変異やあるいはターゲット分子の発現 の多寡によって、臨床効果が大きく変わってしまうようなもの、あるいはまだ原因が分 かっていませんが、特定の重篤な副作用が特定地域でどうも多いのではないかとか、そ ういった心配のある点は警戒しなければいけないということではあります。これは例え ばブリッジング試験のような限られた規模の試験でそれを検出し切ることがなかなか難 しいというのも実情でございますので、最近の傾向としては抗がん剤領域でブリッジン グ試験といった形で開発を考えることが少なくなっております。むしろできるだけ綿密 なデータ収集の仕組みを考えて、国内における臨床開発は欧米に比べて開発が大幅に遅 れている場合は、日本国内における臨床試験は最小限にして、市販後の体制でカバーし ていこうというふうなやり方になっています。それの一番極端なものが、先立って御評 価いただきました併用療法検討会の多数の品目の取扱いになると思います。 ○堀内部会長代理 ある面ではフェーズIをきちんとやり、海外と余りデータが違わな いということが明確になっていることが重要ではないかと思いますが、基本的にはそこ をきちんとやるという発想はないのですか。 ○新薬審査第一部長 ここはまだまだ方法論としてどれがいいかを断定できるだけの経 験を系統的に分析できるほど持っているわけではないので、今これがいいとだれも言え ない世界ではありますが、今回このガイドラインを作成している過程で、現下における 日本の臨床開発のおかれている情勢は、欧米に比べて開発が大幅に遅れている抗がん剤 を多数持っているということからしますと、全く新しい薬剤を開発するというケース以 外にそういった開発の大幅な立ち後れのある、いわゆるドラッグラグと言われる状況の ものについても指針を与えなければならないのではないかという議論がございました。  したがいまして、かつての旧ガイドラインですが、そちらは全く新しいものを一から開 発するという前提で、フェーズI、II、IIIと順番にやっていくという書き方になってい たのを、今回は同じようにI、II、IIIと書いてありますが、どこからでも開発に入るこ とがあり得るというふうな考え方にしてございます。そういう意味では現在全く新しい ものを取り扱ってやる場合も想定しておりますし、海外で既に承認されて日本の開発が 何年か遅れてしまっている場合に、どうやって効率的に早くキャッチアップするかとい う考え方にも対応できるように書いたものでございます。  そういう点では、新しいものを開発していく場合は日本国内の開発も海外の開発も並 行に進めていくような形が一番望ましいと私どもは思っておりますので、なるべく海外 に遅れることなく早く日本でも開発に入って、欧米と日本が並行して共にデータを取っ ていくという形によって、例えば民族間での違いといったことについても光を当てるこ とが望ましいと思っております。ですから私ども機構で、例えば治験相談のような形で 企業の相談に乗る場合に、新しいものはなるべく世界と共に並行して、国内でもデータ を取りながら進めてくれというふうに指導しているところでございます。 ○池田部会長 どうぞ、吉田委員。 ○吉田委員 今の森部長のお話はそのとおりでいいのですけれども、日本人と外国人が どのくらい違うかと。racial difference、ethnic differenceがどれくらいあるかとい うことをまじめにやろうとすると、フェーズIとかフェーズIIの数では絶対分からない のです。これは薬剤疫学のような形で相当多数を持ってこないときちんとしたracial differenceは出ないのではないかというふうな指摘もあって、基本的には抗がん剤の領 域ではそういうethnic differenceというのはそれほどないという前提で、むしろグロ ーバルに一気に進めていこうという方向にあります。ですからこのガイドラインも、例 えばブリッジングというのではなくて、一斉に始めるようなスタディーがこれから出て くると思うので、そういったものにきちんと標準を合わせていただければというふうに 思います。今までもあった例というのは対応はそれなりにできるのですけれども、これ から開発のこういう形もあり得るということを一応考えておいていただければ、いろい ろ助言が頂けるのではないかと思います。 ○池田部会長 ありがとうございます。確かに今吉田委員が言われたように、もう実際 に同時にスタートするということをプロポーズしているような企業は非常に増えてきて いると。日本の中にグローバルな臨床試験に加わって、きちんとしたデータが出せるよ うなそういう仕組みをむしろ作ろうというような動きも相当はっきり出てきているとい うふうに思うので、やはりそこのところは一番これから大事かなというふうに私は個人 的には思っています。よろしいでしょうか。抗がん剤の臨床開発あるいは臨床評価とい うのは、国民全体が非常に注目しているところですし、大きなテーマでございますので よろしくお願いしたいと思います。そのほか特に先生方、御意見はございますか。もし なければ、一応こちらで本日用意した議題は以上でございますけれども、事務局の方か ら何か付け加えることはございますでしょうか。 ○事務局 次回の第二部会の御予定でございますけれども、既に先生方に御案内を差し 上げておりますが、来年の1月27日の金曜日、午後2時から開催させていただきますの で、よろしくお願いいたします。以上です。 ○池田部会長 それでは今年はこれで第二部会はないということでございますので、早 いですけれども、先生方、どうぞ良いお年を。来年1月27日にまたお目に掛かりたいと 思います。本日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。                                    ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734)