05/11/16 社会保障審議会介護給付費分科会第34回議事録 社会保障審議会 第34回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所 : 平成17年11月16日(水) 9時から12時           全社協 灘尾ホール 2 出席委員:池田、石井、井部、漆原、大森、沖藤、喜多、木下、木村、見 坊、田中(滋)、田中(雅)、対馬(代理:椎名参考人)、永島、野中、花井、 村川、矢野(代理:遠藤参考人)、横山の各委員 3 議題  (1)事業者団体ヒアリング  (2)構造改革特区における2階建ての介護保険施設等     の耐火要件緩和について(諮問)  (3)「がん末期」を特定疾病に追加すること等について(案)  (4)その他 ○特定施設事業者連絡協議会(以下、「特定協」という。)・武田、社団法人全 国有料老人ホーム協会(以下、「全有老協」という。)・宮澤、特定非営利活動 法人全国認知症グループホーム協会(以下、「GH協」という。)・木川田、日 本福祉用具生活支援用具協会(以下、「JASPA」という。)・生田、社団法 人日本福祉用具供給協会(以下、「日福用協」という。)・山下の各意見陳述人 より、意見陳述。 (井部委員)  日本福祉用具供給協会から介護従事者の腰痛の問題が出ているが、これは介 護従事者が一定以上の重量を持ち上げるときには特定の用具の活用を義務付 けるような基準が必要ではないかということか。介護従事者に基準を設定した らどうかということか。 (山下意見陳述人(日福用協))  従事者が事業者の指示に基づいて介護をするわけだが、例えば30キロとか、 それ以上重いものを持ってはいけないとの法律が諸外国ではあり、もしそうい う環境に従事者を放置した場合、その経営者が罰せられることになっており、 そういう介護従事者保護の法律を言っている。 (村川委員)   生田陳述人に聞くが、ワーキングチームが示した新しい判断基準の中で、個 別のケアマネジメントを経た上で必要と認められるものについて保険給付の 対象とするという考え方に対して、利用者にはわかりにくいとの意見だが、ケ アマネジメントは福祉用具にとって必要なしとする説明は問題ではないか。  次に、グループホーム協会に聞くが、訪問看護等の利用がターミナル段階に 入った方の中で増えてきているという状況は分かるが、看護師の常勤配置がよ いのか、あるいは近隣の訪問看護ステーションによる連携を取ることがよいの か。これは地域の社会資源によっても異なるのかとも思われるが。併せてグル ープホームにおける研修体制について詳細説明をしていただきたい。 (生田意見陳述人(JASPA))  ケアマネジメントが必要ないとは全く思っていない。むしろケアマネジメン トの重要性は、ますます増えてくると考えている。  ただ、問題は判断がどうしても業務的に入るので、その判断精度をどう上げ ていくかがこれからの課題ではないか。そういう意味では、やはり教育という 問題も含めて充実していくことが大きな課題かと思っている。 (木川田意見陳述人(GH協力))   グループホームは田舎にまで点在しているので、看護師の確保は非常に難し い。それ故、常勤配置は不可能だと思っている。  だから、常勤配置を義務付けるのでなく、もしターミナルケアであるとか重 度者を入居させ看護師を勤務させた場合、体制加算等を考えていただきたい。  また、訪問看護については私たちの団体が一番望んでいるところである。 (永島委員)  グループホームの夜勤体制について、1ユニットごとに1人の夜勤という意 見であるなら賛成である。  それから、「良質な認知症ケアに対する介護報酬上の評価」に部分で「研修 を促進し、スキル向上を促し」はその通りで、また報酬を、研修受講時の補充 人員の人件費や研修を受けたことについての評価も大切だと思っているが、夜 勤従事者の資格について、   研修を義務付けることも必要ではないか。そ の辺はどう考えているのか。 (木川田意見陳述人(GH協))   夜勤宿直体制について基本は1ユニットにつき1人だが、2ユニットに1人 でも許容範囲である。ただ、実際には夜勤体制の75%は宿直ではなく、ほとん ど夜勤がされているのが実情である。 (岩尾随行者(GH協))  研修について、グループホームが急激な数で増えているという事情もあり、 できるだけ良質なサービスにすることが必要で、開設前の開設者、それから管 理者の研修も含め、事前研修をできるだけ受けるようにお願いしている。  しかし、実践者に義務付けられている研修を見ると、基準が1,440分で約4 日間の研修になる。その上に管理者研修が約540分で1日半、およそ管理者は、 5日半くらい研修に出て行く。そうなると、グループホームの日常業務に与え る影響が非常に大きく、そういう面で研修時のマンパワーの確保には随分苦労 がある。なので、その間に臨時の者を配置しやすい報酬体系にしてほしいとい うのが協会の立場である。  それから夜勤者の資格の問題だが、相当の人数を配置しなければいけない。 夜勤者の1人を毎日確保するということになる、約2.8人を常時雇用しなけれ ばならず、有資格者となると運営そのものに相当大きな影響を及ぼすことにな る。  それから、夜が大変なホームと、静かなホームがある等事業差があるのも事 実で、できるだけ夜は寝ていただくということを原則にしているので、今の加 算制度で当方は十分ではないかと認識をしている。 (沖藤委員)  日本の介護環境は人的介護に少し偏っていて、もう少し福祉用具を活用する ことによって介護環境がよくなる部分はあるのではないかと思っており、積極 的に自立して生きていくための自助具、それから介護者が楽になるための介護 補助具というものを日常的に取り入れていく工夫が必要だと思っていた。  福祉用具専門相談員なるものがあるが、この方々の活躍が老後の自立や介護 労働力の軽減にかなり大きく資するものなのではないか。それで、連携を密に していく仕組みという要望が出されているが、具体的にどういうことか。利用 者と密になるのか、ケアマネージャーと密になるのか。 (山下意見陳述人(日福用協))  ケース・バイ・ケースだが、措置時代は割と行政からベッドや用具を運んで くださいと言われ、指定の用具を持っていって終わるケースが多かった。なの で、介護保険になり初めてそういう連携をとり、プランに基づくサービスをす るために事業者も少しずつ勉強し、そういう方向になってきたが、ケアマネー ジャーも忙しく、福祉用具の場合はヘルパーと違って結構広域でサービスエリ アを持っていて忙しい。といったことからケアマネージャーも最近は担当者会 議を開くが、用具業者は来なくても構わないといったところもある。  ただ、積極的な事業者も増えてきているので、できるだけ声をかけていただ き密に連携をとっていき、質の高いサービスをしていきたい。当然メンテナン ス等を含めて利用者宅にできるだけ頻繁に出向くようにしたい。そういったこ とを連携と言っている。 (沖藤委員)  福祉用具専門員に相談したいときは、どうすればいいのか。ケアマネージャ ーを通すのか。 (山下意見陳述人(日福用協))  基本的には用具は相対契約なので用具の事業者に来てもらうことになる。ケ アマネージャーは一番利用者の状況をわかっているので、こういう依頼があっ たこと旨は報告する。 (池田委員)  グループホーム協会の要望に「利用者個々の自立度の改善にインセンティブ が働くような認知症ケアに対する報酬上の評価を要望します」とあるが、要す るに極めて給与が低いからきちんと働けるような給料を払えるように報酬を 上げろという意味なのか、それとも介護予防の効果があったという場合に報酬 上の評価をすべきだということなのか。  グループホームでどのようなケアをした結果、どのような変化が現れたとい った調査はないのか。もし自立度が改善することを評価するとするなら、一体 どんな手法があるのか。  もう一つは、有料老人ホームに関することで、もともと有料老人ホームは介 護保険施行以前から民法上の契約で入所されていたので、既に契約を交わされ た者に対して、その契約履行義務が事業者にはある。したがって、それを勘案 しろというのは正しい意見だと思うが、新規契約者と既契約者はある意味で契 約の中身が違ってくることになるが、既契約者は最終的には何年後かにはいな くなる。ある程度経過措置の期間みたいなものが見えてくるのだが。 (岩尾随行者(GH協))  認知症の方に特化して取り組んでいるのがいわゆる認知症グループホーム である。その中心になるのは、生活を中心に支えることが可能であるというこ と、それから認知症の方の行動には意味があり、その意味を理解することによ ってケアは決して困難ではない。しかし、それには一定の知識や理解を得るた めの経験、研修が必要である。それが私共の認知症についての基本的な考え方 である。  そういう中で、ある一定の成果があるものについては、評価することを考え ていただきたい。認知症の方は介護度によって介護の大変さが決まるものでは ない。グループホームに第一線で実践している者に要介護1の方の介護と、要 介護5の方の介護とどちらが大変か聞くと、要介護1の方がはるかに大変だと 言う。なぜなら、要介護度5はADLが下がっているので、ある程度自分たち のペースで計画的に介護が行えるが、要介護1の方には、主に見守りが中心に なるので予測できない中で介護を行う。そういうことでストレストは随分大き い。  そういうところで、できるだけ自立した生活にどう近付けるかということで 介護を行っているので、それに対して何かやりがいを保証するといった仕組み ができないかという意味で要望している。 (大森分科会長)  それを何か具体的に調べたような結果はあるのか。 (岩尾随行者(GH協))  調査は、今年度実態調査を行うことで進めているところである。どう付き合 えるかをどれだけ出来るかによって、認知症の人たちがより自立した生活をど のように獲得できるかと非常に関係していて、その辺をより明確にするために 今年度実態調査に取り組んだ。   (池田委員)  研修体制やスタッフの資質を上げるためにそれなりの手当てが欲しいとい うことは分かるが、それは介護報酬ではなく政策誘導的な行政経費になるので はないか。  また、認知症の場合、何がどう改善されたかは非常に客観的かつ共通の項目 が立てにくいので、それを開発されるとある意味で非常に認知症への理解も高 まるし、事業者の努力も見えてくるので、それを期待したい。 (宮澤意見陳述人(全有老協))  何年後かには、今の入居者もいなくなるのではないかという意味で言うと確 かにそうだが、まず私共は終身利用ということで入居時に契約をする。その時 点で、例えば入居一時金の額であるとか、あるいは管理費、食費、それから介 護サービスのレベル、この辺もすべて約束をする。なので、その方に関してそ れをレベルダウンすることはまず契約上できない。  ただ、その方がいなくなった後、ほかの方にだったら別な契約ができるので はないかという趣旨の質問だと思うが、確かに理屈上はできるが、基本的に有 料老人ホームの中でのサービスについては最低限度というものは一律に提供 している。ダブルスタンダードはやはり中で生活される方にとってみれば大変 苦痛なもので、例えば入居一時金の額を今度下げたとか上げたとかは考えられ るが、サービスの中身、それに対する料金、こういったものをダブルスタンダ ードにするのは非常に難しいだろうと思っている。 (池田委員)  ということは、永遠に続くということか。 (宮澤意見陳述人(全有老協))  永遠というのはなかなかないだろうと思うが、難しいということを申し上げ た。多少の時間をかければ全くできないということではないとは思う。 (池田委員)  既契約者の権利を守るということは十分理解できる、しかしそれは制度が変 更になった場合、経過措置的にあり得るだろう。そうでないと、多分理解を得 られないのではないかという意味で質問をしたわけで、ずっと続くように受け 取られると支持が少なくなってしまうのではないかということを言いたかっ た。 (宮澤意見陳述人(全有老協))  確かに、介護保険制度が導入された平成12年にもそういう問題があったが、 それは何とか乗り切ってきた。制度そのものが変更されたのであれば、やはり 若干の時間は必要だが、全く変更できないということを申し上げたつもりでは ない。 (野中委員)  グループホームと特定施設で、健康管理をどういう形で実施されているのか お聞きしたい。現在協力病院がきちんとできているのか。医療の現場での関わ り方についてどう考えるか。  それから、これは厚労省に対してだが、人員配置3対1では、実態がどうな のかがわからない。中医協でも2対1看護というのが、本来は30床の病棟で は10対1だった。24時間で考えることが本来必要であり、見守りも含めて24 時間365日の体制が本当に確保できているのか。週40時間で年休が取れる体 制になっているのか。 (木川田意見陳述人(GH協))  グループホームにおいては、ほとんどの利用者にかかりつけ医がいて、何か あった場合はそこにお願いする。また、施設によっては協力病院を持っている ので、きちんとそういう体制は整えていると考えている。 (武田意見陳述人(特定協))  特定施設は施設内に看護師の配置が義務付けられているので、日常の健康管 理は看護師を中心に動いている。また、協力医療機関は義務付けられているの で、各ホームのナースと協力医療機関のドクターはかなり密な連携を取るのが 一般的な状況かと思う。当然、在総診の適用になるケースが多いので24時間 対応をとっているケースもかなりあると認識いただいてもよい。介護度の重い 方も多数おり、ターミナルまで入っているので医療との連携はきちんとされて いると思う。 (野中委員)  有料老人ホームにおいて、病院に入院する必要がある段階がでは、どうされ ているのか。病院が受けてくれるのか現状を教えていただきたい。 (木川田意見陳述人(GH協))  グループホームで入院できなかったといった事例の報告は余りない。大抵、 かかりつけ医あるいは大きな病院に通院している方々であるので。 (武田意見陳述人(特定協))  入居者の生活全般に責任を持たないといけないので、ターミナルで入院が必 要というときに入院できないのは非常に困る。なので、協力医療機関の選定を 行うときにきちんとバックアップを取れる入院施設のある病院であることが 非常に大きな選定基準になる。そういった体制の確保に努めている。 (野中委員)  土曜、日曜の急病に対する対応はどうされているか。 (武田意見陳述人(特定協))  在総診24時間365日というバックアップ体制の中で、基本的には提携医療 機関のドクターにまず連絡を取り、そうでなければバックアップのドクターか ら必要な地域の中核病院等々につないでいただくケースが多い。 (野中委員)  実態としてそれが可能なのか。例えば協力病院との関係がその場合には強い のか。あるいは、すべて在総診の先生が24時間365日対応してくれるのか。 印象でも結構なので答えていただきたい。 (武田意見陳述人(特定協))  やはり地域性が非常に強いと思っております。個人的関係でつないでいくよ うな地域もあれば、地域の中核病院がむしろ地域の中全般に対して割と受け入 れ体制をとっていただいているところとか、これは本当に事業者がどうこうと いうよりも地域性という方が強いかなと。これういった印象を持っております。 (木川田意見陳述人(GH協))  グループホームは医療職がいないので、救急センターに行くなどして、なる べく迅速に対応するよう指導している。 (野中委員)  看護基準や人員配置が現実では、どうなっているのか。24時間の中で表現し てもらうように要望する。 (遠藤参考人)  武田意見陳述人と宮澤意見陳述人にお聞きしたい。特定施設と介護老人福祉 施設において、要介護度別で改善度、自立度にどのような差が出てきているか といった実態の把握はされているのか。  また、武田意見陳述人から、特別養護老人ホームと特定施設との間で介護報 酬上の格差の具体的な例として数値も含めて示唆があったと思うが、これにつ いて宮澤意見陳述人はどのような考えなのか。さらに、特定施設とグループホ ームにおける格差是正について具体的な考えはお持ちか。 (武田意見陳述人(特定協))  在宅医療で対応できる範囲は必ずホームで対応することが原則になってい るかと思う。  有料老人ホーム協会が定めている標準契約書にもあるが、状態が悪化したか らといって同意なく勝手に移動したり退去願ったりといったケースは基本的 には特定施設については余り聞き及んでいない。  それから、要介護度別の改善割合で、1人の方を追って、例えばこの方に対 して何年後にどうなったというようなデータは残念ながら団体としては取れ ていない。  それから、ユニット型特別養護老人ホームとの格差について、平成14年の 介護事業経営実態調査で介護老人福祉施設の非常勤医師1人当たりの給与月 額は17万3,000円となっている。それから、同じ調査で平均定員数が67.4人 になっている。これは単純に割り戻すと2,500円程度になるが、当然法定福利 費等プラスアルファはあるので、それを入れてもまず3,000円を上回ることは ないといったところである。 (宮澤意見陳述人(全有老協))  介護度がどのように改善されているかというデータを取っているかという ことだが、まだ介護予防について確立された手法がないので、いろいろと試行 している。その例として栄養改善や口腔ケアを実験的に行い、個々のホームに ついてはそれぞれに検証データとして持っているものはある。ただ、協会とし てそれをまとめたものはない。なぜなら、具体的な手法が確立されていないの で協会の会員全体から検証データを取ることができない。ただ、こういった事 例でこういう改善が見られたといった事例研究、事例発表会を行っているので、 かなり効果が見られるものについては各事業者にも伝わっていると理解して いる。 (佐々木随行者(GH協))   報酬の差についてこの表の区分で言うと少々誤解がある。それから、グルー プホームの特性から考えたとき、1ユニットであれば最高9名、2ユニットで あれば18名、つまり規模が圧倒的に小さいので、人員特性として規模と人員 の配置が全く違う。3対1となっているが、特養等の場合だと入所者に対して 3対1だが、生活時間において3人を確保していくということなので、実際に は1ユニットである。  また、昨年度調査だと夜勤体制をとっているのが75%を超えている。1ユニ ットで夜勤を取ることは、最低7人から8人が勤務しなければならない。2ユ ニットであれば14人から15人がいなければならない。そうした場合、単純な 体制加算で3対1は全く当てはまらないことが前提にあるかと思う。その中で 介護報酬を考えなければならないことから、まずグループホームの特性から少 し考えていただきたい。  また、グループホームの約80%が単独型であるので、そうした場合、他の施 設との兼務というのは非常に考えにくい。そこで人員を貫徹しなければとの考 だと、今のグループホームの3対1と介護報酬との関係を考えた場合に、それ で高い低いという議論はむしろしていただきたくない。 (木村委員)  参考資料で立ち上がりが何かにつかまらなければできないという人が83%、 結局そこが特殊ベッドを使えなくなったら困るということなのか。ケアマネジ メント側から言うとその他の補助具等々できちんとやれる。今モデル事業をや っている要介護認定の新しい仕組みの中で、要支援1、2に該当する方にベッ ドが必要かということに対してもっと具体的な必要性を伺いたい。 (生田意見陳述人(JASPA))  この想定しづらい介護度をどう判断するかについて意見申し上げたい。何か 物につかまれば転倒しないとなどの問題の中で、どこでそれを判断するかが今 後非常に大きな問題になると思う。ケアマネジメントの能力は非常に大事にな ってくるかと思う。 (木村随行者(JASPA))  福祉用具としての特殊寝台の用途は、起き上がり等の動作を補助するもので あり、要支援でも80%以上の方がつかまらないとできないという結果が出てい るので、要支援でもベッドの使用が想定しにくい状態像ではない方が大半いる ことを申し上げた。  それから、判断基準に記載している使用が想定しにくい要介護度の中に要支 援と書いているが、これが現場で要支援イコールベッドはすべて使用が想定し にくい福祉用具であるという認識が広まることは非常に不本意である。やはり ケアマネージャーの適切な介護プランの作成と指導をお願いしたい。 (木村委員)  こちら側から考えると、立上がりができないのであればベッドでなくても全 く別なもので代替できるということを言いたいのだが、そちらはベッドでなけ ればだめだというところでかみ合わない。 (木村随行者(JASPA))  もちろんベッドでなくても立上がりに必要な福祉用具はほかにもあるとは 思う。ベッドはすべてダメということではないと申し上げたい。ベッドで背上 げを使うことによって起き上がりが意欲的にできるようになる。あるいは、ベ ッドの装置を使って立上がりが非常に意欲的にできるようになるという効果 があり、ベッドがすべて使用が想定しにくい福祉用具ではないということを申 し上げたい。 (木村委員)  今回の改正法の新予防給付の目的は、自分の体をできるだけ使って自立する 方向にいくことにあるが、今の説明を聞くと機械的に補助してもらって、運動 機能がだんだんだめになっていく使い方であるという説明があったように思 う。  なので、自分のことは自分でできる人たちが要支援1、要支援2になるので、 できるだけ自分の力でやるところの補助という意味ではこういう福祉用具は いいと思うが、何でも代替してしまうような福祉用具の使い方というのはケア マネジメントをする側でもきちんとチェックしていきたいと思う。 (木村随行者(JASPA))  ベッドの膝上げも床上げも無段階で調節できるようになっている。したがっ て背上げを20度、30度に上げて、そこで止めて自分の力で起き上がるといっ たリハビリに使うとか、そういう機能もあることを申し上げたい。使いように よっていろいろリハビリにも資する側面もあるということを申し上げている。 (井部委員)  看護職はベッドと非常になじみのある職種なので、木村随行者の説明はよく 分かる。私たちはギャッジベッドと言うが、背を少し上げると自分で起き上が れる人や、90度まで上げて、その上で多少麻痺はあっても自分で食事をしたり することができたりするので、ベッドの利用法というのはさまざまである。  単に特殊寝台を使うとそれは自立にはつながらないという固定的な考え方 は私は正しくないと思うので、やはりケアマネージャーがその利用者にとって、 どういうふうに特殊ベッドを採用したらいいのか、あるいは使用したらいいの かという適切な判断をしなければいけないと思う。自立支援にも非常に資する 部分でベッドの利用価値は高いと思っている。 (石井委員)  日本福祉用具生活支援用具協会から出された資料の「利用者の特性に応じた サービスの評価について」のところで非常に手すりの重要性を訴えておられる が、要支援か要介護1といった軽度者の場合、すべて手すりではなくて住宅内 でどういった動き方をしたらいいかとか、生活全般をきちんと判断して適切な 生活リハビリの視点でのアドバイスがあれば、手すりが必ずしも必要なもので はない。 (休憩) ○構造改革特区に関わる諮問について渡辺認知症対策推進室長より説明 (喜多委員)  この諮問には反対である。基本的には建築基準法で決められたことが原則で ある。それを構造改革特区で基準を緩和することについて責任を持てるか疑問 である。  建築基準法では耐火構造となっており、地域の事情に応じて創意工夫をした 施設の建設について準耐火に緩和することが地域の実情に応じたことになる のか疑問である。私も含めて防災体制の知識は余りない。なぜグレードの高い 防災設備から低いものにするのか。建築基準法の中で変えればよく、ここに諮 問すること自体、おかしいのではないか。   (野中委員)  施設の中の人の安全を守るということに対して介護給付費分科会でその諮 問を受けて承認していいのか判断できないので、同意はできない。 (石井委員)  私は防火管理士の資格を持っているが、問題になるのは、2階なので2方向 の避難経路が確保されていること、きちんと訓練ができていること、昼間では なく夜間を想定するとガスが問題となり、そこできちんとした避難ができるこ と。  問題なのは、建物ではなくソフトなので、そういう意味でこれは準と少しグ レードを下げることになるが、訓練などがきちんとできていれば、特区では価 値があるのではないか。 (大森分科会長)  これが2つだけ特例になっていた理由は何か。 (川尻計画課長)  まず建築基準法では、2階建ての病院や福祉施設について、300平方メート ルある程度以上の広さを2階に持っている場合には準耐火にしなければなら ないという規制がある。  それに対し、福祉施設一般については、300平方メートル以下でも2階に居 室などがある場合、避難のことを考えて準耐火にしなければならないという一 般的な規制がある上に、老人保健施設、特別養護老人ホームについては更に準 耐火ではなくて耐火にしなければならないという規制になっている。建築基準 法の規制よりも福祉施設一般に対する規制が厳しく、特養、老健が更に厳しい 規制になっており、一番厳しい特養などの規制を、今回愛媛県の提案により、 構造改革特区ではソフト面も踏まえ緩和をしてみようということである。  なぜ介護保険施設について規制が厳しくなっているかと言えば、かつて特別 養護老人ホームであった火災の関係でこういう厳しい規制がかかっているの だが、一方で木造のよさというものが最近高齢者のケアの中で見直されている ということもあり、まず構造改革特区で提案を受けて個別対応する形でやって いただき、その上で全体的な規制をどうするかが次の話になる。こういうこと で今回諮問させていただいている。 (野中委員)  愛媛県だけではいいが、夜間に職員が何人待機しているか分からなければ判 断できない。昼間に訓練をしているから安全だというのではなく、夜はどうな っているか知らなければ判断できない。  それから、2方向の階段と言っても、中の階段の幅、外の階段の幅がどれく らいかが分からないと判断できない。  また、2階用の階段ができればそれで全部解決なのか。 (池田委員)  これは、たしか秋田スギを使った特別養護老人ホームで、木の持っている生 活への刺激を取り入れることといったことから始まった。まず構造改革特区で 承認され、構造改革特区評価委員会で特区として認める例外的なものにするの か、普遍的なものにするのかの議論が積み重ねられてきている。  地域の事情は何かというと、都会部においてはかなり危険だが、田舎は広い ところにぽつんぽつんと建っており、ぱっと逃げることができる。そういう立 地条件も加味して考えるべきで、あまりにも強い規制で縛るのは、医学的な療 養のための場所ではなく生活のための場所であるという観点から出されたも のである。  しかし、何でこんなものをわざわざこんな審議会に持ってきて了承しなけれ ばいけないのか。それがわからない。   (喜多委員)  建築基準法を変えれば、個々に諮問する必要もない。専門家がいないのにな ぜ諮問するのかという理由で反対をしている。  それから、十分に訓練をすればいいということだったが、防火管理者を置い て消防法上決まっている訓練を的確にミスなくできる施設は余りない。社会的 弱者である高齢者を抱えてどうするのかを我々に相談しないで、分科会長の言 うように、別のところで責任を持ってやっていただきたい。 (大森分科会長)  構造改革特区の趣旨は一挙に一般法に入りにくいので、慎重を期して、それ がどういうふうになるかを確かめた上で一般法そのものに手を掛ける。厚労省 としては、この福祉施設について構造改革特区でも分科会にかけて慎重な手続 きをとりたいというのが私の理解であり、特段に反対がなければ承認すること の答申をするのが筋ではないかと思っている。何か事が起こったら愛媛県が責 任を取る話だろう。 (喜多委員)  責任がかからない答申の文書にしていただきたい。 (大森分科会長)  責任は挙げて厚労省が取る。この件は諮問どおり答申をするということでよ ろしいか。 (承 認) ○「「がん末期」を特定疾病に追加することについて」藤井企画官より説明 (喜多委員)  これは報告事項というだけでは済まないと思う。これをそのまま加えれば、 当然支出経費が要る。何か報告だけで一つずつなし崩しに入れられていつの間 にか入ってしまっていた。こんな審議の仕方はない。  この分科会は何なのか。報告だったら報告でいいかもしれないが、これで介 護報酬はどうなるのか。保険料は一体どう変わるのか。 (三浦老人保健課長)  この対応によってどういう方が対象になってくるかについては、現在在宅で がんのために亡くなっておられる方が介護保険の対象になってくるものと考 えている。医療となると医療サービスについては保険で行っているところであ り、主に介護保険の給付対象として想定されるものとしては福祉用具の貸与、 訪問介護であろうと考えている。  現在の推計で年間およそ全国300人から2,000人程度対象になってくると考 えており、年額の給付額はおよそ4億円から20億円強の給付増が見込まれる と考えている。 (喜多委員)  20億円もの支出を単に報告して、それで介護保険を地方でしろというのでい いのか。 (三浦老人保健課長)  今回の取扱いについては、介護保険の受給者あるいは被保険者の範囲につい ての議論を介護保険部会で議論いただいたときの延長の議論として出てきた ものであり、社会保障審議会の介護保険部会の中で拡大の具体化には時間を要 するとしても、この末期がんの方々について給付を受けられるようにすべきで あるという意見をいただき、これに基づいて検討してきたところであり、また 合わせて国会の方から強い要請があったことを踏まえて、今回対応したいとい うことである。 (喜多委員)  報告では、「給付を受けられるようにすべきであるという意見があった」で ある。皆がそうやれという議論ではなかった。  介護保険は皆さんから保険料をもらい、それで運営をする。人数が増えれば 当然保険料に跳ね返る。そういうことを考えずに検討されている。その姿勢が おかしいと言っているのである。  この人たちを見捨てろと言っているわけではない。こんな重要なものについ て、法律の谷間をどう救うかという議論がどこかでなされ、その結果、介護に 入れるならそれでいい。  介護保険制度は私は今でも高齢者の介護が基本であると思っている。それを 変えようとした動きは去年少しあったが、それはだめになったので、今なし崩 しで入れていくこと自体に問題があるのではないか。 (見坊委員)  分科会において、かつて議論していた基本的なことが、また蒸し返され、考 え方が混乱していくといったことでいいのかという疑問を持っている。  また、給付費分科会が施設の分類とか、事業者の内容にまで立ち入って、コ ントロールするようなことまで論じていいのだろうか。参考に意見を聞きたい と言うのならばそれでいいのではないか。 (池田委員)  まずこの問題はなぜ起きたかというと、介護保険は本来、介護を必要とする 被保険者すべてに提供されるべきであるという原則が制度創設の時点であっ たが、障害者はまだ都道府県の事務であり、市町村にまだ一元化されていない 部分があった。それで先で考えようということで延ばされた。そういう意味で は、年齢制限撤廃は介護保険が議論されたその始まりから議論されているわけ である。  2つ目に、老健審のときから議論されていて、それが前回の介護保険部会で 残念ながらうまくいかなかったが、末期がんについては、国権の最高機関であ る国会で議論されていた。それを社会保障審議会の一分科会が引っくり返すこ とはあり得ない。  最後に、お金がなければサービスが提供できない。そのお金は半分は税金で 賄う。残りの半分は1号被保険者と2号被保険者の保険料で賄う。その2号被 保険者が介護を必要としているときに、それを出さないという論理それ自身が 理解できない。お金が要るから、40億ならば保険料で幾らになるのか、ある意 味でそれほど大きな問題ではない。むしろ介護保険の給付をゆがんでふくらま せるものは何であるかを見抜き、それを是正することが一番重要である。それ は一体だれがやるのか。厚生労働省か指針を出すのは当たり前だが、それは保 険者たる市町村がやることである。そういった責任を取らないで、金をくれな い分権はおかしいという議論は私は全く納得できない。 (喜多委員)  今みたいなことを言われるのは、非常に心外である。走りながら考えるとい うことで介護保険は見切り発車された。末期がんを入れるなとは言っていない。 そういう重要なことをどうするかもっとしかるべきところでやるべきだとい うことである。介護保険は、やはり保険料と報酬とで成り立たないとおかしい。 しかし、初めに決めた公費と個人負担の50・50の割合もいつの間にかおかし くなっている。そういうことが国会で決められたからいいというなら、こんな 審議会をつくる必要はない。市町村が何もしなかったというのはおかしい。 (花井委員)  介護保険部会で年齢拡大を主張してきたし、それが不可能ならばせめて末期 がんについて適用できないかと強く願っていた。国会の審議の中でも、乳がん も含めてがんを入れるべきではないかという意見は出されていた。今回研究班 が出した報告については感謝を申し上げたい。 (漆原委員)  介護保険制度下で医療提供の在り方、利用者の重度化あるいはターミナルケ アの問題が議論されるに至って、医療と介護がどう連携していくかがますます 表に出てきた。  がん末期患者について、たとえターミナルの末期であっても本人の希望ある いは家族の希望で最期まで病気と闘いたいという方々の存在が多くあるのも 事実である。  在宅ケアでは、かかりつけ医等その疾患をコントロールしている医者が継続 的に関われるような仕組みが、医療保険と介護保険の間で何かうまく整理でき ないものか。  在宅の場合は医療保険が十分関われる余地があるが、特にがん末期患者、特 定疾患、難病患者に関して言えば、施設利用、ショートステイ、あるいはレス パイトのための施設利用でも何でも結構だが、その中であっても従来のかかり つけ医などとの関わりを継続できる仕組みができないものかと思っている。  例えば、療法型病床群あるいは介護老人保健施設には医師が配置されている。 しかし、例えば数週間、数か月の入所で、どれだけその人の病気、心身の状態 を把握した医療が提供できるかを考えると、なかなか対応が不可能な場合もあ る。  この際なので、がん末期患者に対する医療の対応の在り方をどう考えている のか。それから難病に関して継続的に従来からの医者が関われるような仕組み が医療保険と介護保険の間で整理できないものなのか。お尋ねしたい。 (三浦老人保健課長)  次回の給付費分科会で施設サービスに関する報酬あるいは基準についての 議論をいただく予定であり、その際に改めてそういう議論をいただければと思 っている。 (大森分科会長)  分科会は何をどこまで議論すればいいか。常に介護保険制度全体の中にある ので、いろいろ意見があることは私も承知している。  構造改革特区の場合もそうだが、事務局は何も言わないで決めて、それにつ いて批判が出ることもあり得ると考え、丹念に報告をして、もし意見があれば 伺いたいということだと理解している。  ただ、いろいろ出すときに、これはこういう趣旨で、こういうことについて 今日は聞いてください。特段に意見があれば寄せてくださいというふうに明確 にしていただければいい。 ○大森分科会長より閉会の宣言 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係 TEL03(5253)1111(内3948 3949)