05/11/10 労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会 第4回議事録      第4回労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会                     日時  平成17年11月10日(木)                         13:00〜                     場所  経済産業省別館1014号会議室 ○工藤座長  定刻になりましたので、「第4回労働安全衛生法における胸部エックス線等のあり方 検討委員会」を開催します。本日は西村委員、矢野委員が所用によりご欠席されていま す。また、相澤委員は所用により遅刻します。事務局のほうからのご説明をお願いしま す。 ○労働衛生課長  議事に入る前に人事の異動があります。安全衛生部長が、小田部長から小野部長に替 わりましたので、小野部長から一言ご挨拶を申し上げます。 ○小野安全衛生部長  10月1日付で安全衛生部長に就任した小野です。どうぞよろしくお願いします。  皆様方には4月以来、精力的にこの会でご審議をいただいていることを聞いていま す。これからお忙しい中、引き続きいろいろとご苦労をおかけするとは思いますが、ど うぞよろしくお願いします。 ○工藤座長  事務局から資料の確認をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○労働衛生課長  本日は複数の方々がこの検討会のあとに予定が入っていますので、円滑な議事進行に ご協力をお願いします。資料1は、これまでの議論ということで事務局でとりまとめた ものです。資料2はじん肺対策に関する論点(案)が1枚あります。続いて資料3は、 「じん肺法に基づく健康診断」という題名のものです。資料4が結核罹患率の表が付い たものです。資料5は、現に非粉じん作業に従事している管理2の労働者の肺がんに関 する検査の流れ図です。  次に資料6ですが、労働安全衛生法に基づく健康診断という綴りがございます。資料 7は本日意見聴取ということでご意見を述べていただく北里大学名誉教授の冨田先生か ら提出していただいたもので、第4回検討会提出意見というものです。資料8として、 今日もう1度意見を申し上げたいということで、柚木委員のほうから提出された「第4 回検討会提出意見」です。 ○工藤座長  早速議事に入りたいと思います。前回の第3回の検討会からはだいぶ時間が経ってい ますので、事務局のほうでこれまでの議論の内容を整理していただいています。その資 料に基づいて、これまでの議論についての説明をしていただきます。 ○労働衛生課長  本日は、まず日本労働組合総連合会(連合)の総合労働局長須賀局長に意見陳述のお 願いをしていますので、さらに先ほどの北里大学名誉教授冨田先生の意見陳述もありま す。さらに、当検討会の柚木委員からも意見を述べたいということで、お三方のご意見 をお聞きしますので、事務局としていままでの議論を簡単に説明します。  資料1は、これまでの議論で合意がなされた部分があります。まず、安衛法上雇入時 の健康診断の安衛則第43条につきましては、背景の説明は省かせていただきますが、従 来どおり胸部エックス線検査は、雇入時の健康診断として一律に実施すべきであるとい うことで、この検討会で合意を得ました。  2の海外派遣労働者の健康診断は(則第45条の2)ですが、これも結論を申し上げま す。これはたしか2回目ぐらいだったと思いますが、海外に派遣する労働者及び帰国後 の労働者の健康管理等のために、事業者にその実施を義務づけているものであるため、 従来どおり胸部エックス線検査を一律に実施すべきであるという結論で、これは合意が なされました。  3は結核健康診断(則第46条)の部分ですが、これは現行安衛法で改正前の結核予防 法を踏まえて、定期健康診断等において結核発病の恐れがあるものと診断された者に対 する6カ月後の胸部エックス線検査の実施を事業者に義務づけているわけですが、結核 予防法において医療機関への受診を前提として、結核発病の恐れがあると診断された者 に対する6カ月後の胸部エックス線検査等の実施に係る規定が廃止されたため、安全衛 生法におきましても同趣旨の規定を廃止すべきである、という部分で合意がされまし た。健康診断の結果、結核の発病の恐れがある者については、確実に医療機関を受診す るよう、事業者は配慮すべきであるということです。  次に、検討中の部分です。定期健康診断(則第44条)は、特定業務従事者の健康診断 (則第45条)を含んでいます。まず(1)の結核対策を簡単に説明します。結核予防の 改正は、感染症分科会、結核部会で十分な審議がなされて、その結論に基づいて行われ ていますので、本検討会において結核対策については、基本的には結核予防法の改正内 容に基づいて対応する。結核対策以外を目的とする胸部エックス線検査等のあり方につ いて検討をすることでやってきました。結核予防法で胸部エックス線の実施を定めてい る学校、医療施設、福祉施設と、結核の発症によって二次感染を起こす危険が高い職場 以外の労働者の場合でも、医師の判断により胸部エックス線検査を実施できるようにし ておくことが必要ということが、議論としてありました。  肺がん対策としてですが、労働安全衛生法は、発がん性を有する有害物を取扱業務に 従事する労働者に対して、要するに特殊健康診断としてがん検診の実施を義務づけてい ます。当該労働者以外については、業務起因性が認められないことから、事業者に一般 健康診断において大腸がん検診、乳がん等のがん検診の実施を義務づけてはおりませ ん。主に結核対策として胸部エックス線検査を実施していく中で、たまたま肺がんが発 見されることもありますが、安衛法に基づく一般健康診断では、肺がん対策を目的とし てきたわけではないことを、事務局が申し上げています。業務起因性、作業関連性とは 認められない肺がんを対象疾病として、安衛法に基づく定期健康診断等において事業者 に胸部エックス線検査等の実施を義務づけることはできないのではないかと、事務局も このように申し上げまして、一部の委員からも、そのようなご意見がありました。  労働者に老人保健法に基づく健診を受ける権利があるからといって、かなりの部分職 域の健診で一般的な健康管理を期待しており、実態として肺がんについても実施してい る以上、一定の考慮をする必要はあるのではないか、というご意見がありました。  事業者や健康保険組合等が、保健事業として職域でがん検診を行っている場合もある というご指摘がありました。肺がん対策としての胸部エックス線検査の有効性について は、現在評価が分かれており、十分な有効性が確立しているわけではないというご意見 もありました。  (3)結核、肺がん以外の疾病の対策です。結核、肺がん以外の疾病については、業 務起因性・作業関連性は明確でないが、労働することによって増悪する可能性、健康診 断としての胸部エックス線検査等の有効性を考慮して、事業者に胸部エックス線検査等 の実施を義務づける必要性を検討する必要がある、というご意見がありました。  ある作業が一定確率である疾患を引き起こす業務起因性のある疾患については、特殊 健康診断で、ある作業がある疾患を引き起こすというわけではないが、作業に従事する ことによって増悪する可能性が強い疾患、いわゆる作業関連疾患については、定期健康 診断で事業者に義務づけるとの立場をとっているのではないか、というご指摘がありま す。一律に実施しない場合には、未規制の物質を取り扱う等の有害性がはっきりしない 業務に従事している労働者等については、業務歴、年齢、生活歴等を考慮して、医師の 判断によって胸部エックス線検査を実施できるようにしておくことが必要ではないかと いう意見です。  さらに、これまで一律に胸部エックス線検査を実施してきた結果、有所見率は高く様 々な所見と疾病が認められている。平成16年の健診結果による有所見率は3.6%である。 ただし、健診としてはまず見つけるべきものを確実に見つけるということが前提になり ますが、病気が見つかって良かったというメリットもありますが、病気が見逃されて発 見が遅れたというデメリットも考慮する必要があるという意見もありました。  結核と肺がんを除く胸部エックス線検査で発見される所見、疾病のほとんどが特異性 が高くない、かつ治療の必要性が乏しい、自覚症状の方が先に出現する等の理由によ り、発見する意義に乏しいものではないか、という意見がありました。胸部エックス線 検査が労働安全衛生法において呼吸器疾患を対象とする唯一の検査であることから、労 働者の呼吸器疾患の早期発見と予防のために、一定年齢以上及び喫煙者に限定した胸部 エックス線検査や時代に即した積極的な施策への転換などの検討が必要ではないか、こ れは前回もあったご意見かと思います。いままでの議論の内容は、以上です。 ○工藤座長  ただいまご説明いただいたように、雇入時の健康診断、海外派遣労働者の健康診断に おける胸部エックス線検査はこれまでどおり実施するというのが、共通した意見一致を 見た部分であったかと思います。また、安衛則の第46条の結核健康診断における結核発 病の恐れがあるものについての6カ月後の胸部エックス線検査の実施ということについ ては、結核予防法のほうで、改正を踏まえて必要はないと、これは医療のほうに委ねる ということになっていますので、前回の検討会で、これも必要ないという点については 意見がまとまっていた、というように理解をしています。これについては、特にご意見 ありませんね。  次に定期健康診断に関しては、議論がいろいろありまして、従来どおり実施すべきで あるというさまざまな立場からのご意見、労働安全衛生法の趣旨、健康診断としての胸 部エックス線検査の有用性を考慮すると、一律に実施するという意義は乏しいのではな いかという両方のご意見がこれまであったと理解しています。中身については、後ほど またご議論をいただきますが、両論あったということについての論点整理については、 特にご意見はございませんでしょうか。 ○労働衛生課長  いままでのご意見は、いろいろ並べさせていただいただけです。これからまた議論を お願いします。 ○工藤座長  資料2の検討中の部分、これはいままで出されていたご意見をまとめたというような 中身です。  議論はこれからまたさせていただくことにしまして、前回時間がなくなり積み残され たじん肺対策としての健診の問題について、事務局からご説明していただきたいと思い ます。 ○労働衛生課長  じん肺対策ですが、委員の方々も皆さんよくご承知のように、現在アスベストの問題 が相当出てきています。  アスベスト対策というのは、古くからじん肺対策の一端としてやってきたところがあ ります。いわゆるアスベスト肺、石綿肺ということで、昨今の問題は、アスベストによ る中皮腫、肺がんの発がん性に対する発がんが問題となっていまして、労働者を中心に 尼崎等一部報道された地域によりましては、住民にまでアスベストが原因と考えられる 中皮腫の発症が見られていることが大きな問題になっています。  説明をする前に、アスベストの関係について申し上げます。アスベストにばく露しま すと、いわゆる石綿肺若しくは胸膜肥厚(プラーク)と言われるような所見が出てきま すが、それらについてどのような健診体制をとっていくべきかということについて、現 在私どものほうで研究班を組織して、職業別や作業別等、どのような作業をしてどのよ うにアスベストを取り扱ってきた方々が、どのくらいアスベストの吸入による呼吸器の レントゲン所見等を出しているのかを、全部調査しています。労働者については、現在 健康管理手帳制度があり、健康管理手帳を交付すると、年2回の胸部エックス線検査を 国が行なうという制度になっていますので、この制度についてどのような医学的な管理 を行うことが最も適切であるかということを、研究班の成果を基にしてさらに検討する ことをやってきていますので、じん肺の中でもアスベストの部分については、おそらく 来年辺り早急に検討会を開催しまして、別の検討会になると思いますが、検討して制度 を必要に応じて適切に変えていきたいところです。  じん肺対策は資料2、3、4、5とあります。資料2は、論点を一応事務局でとりま とめてみましたが、先に資料3の2頁目のじん肺法令概略があります。じん肺法で、じ ん肺は別枠の法令で、古くからこれでやっています。この中にじん肺の合併症というの が一から六まであり、肺結核から原発性肺がんと分類されていまして、健康診断の項目 として、2の所に一から五までとなっています。基本的には、胸部エックス線直接撮影 と肺機能の検査です。この分類が、さらに1型から4型まであります。これにより3頁 で、管理区分が法律上決められています。管理1から4まであります。その管理区分と の関係で、定期じん肺の健康診断が5の表ですが、じん肺法第8条で、このようにでき ています。即ち、常時粉じん作業に従事している労働者については、じん肺管理区分で 頻度3年以内に1回、常時じん肺作業に従事している労働者で管理区分2、3の人たち は、1年以内に1回、つまり毎年やってくださいということです。かつて粉じん作業に 従事して、現在非粉じん作業に従事、要するに粉じん作業に従事してない労働者につい ては、管理区分2の人は3年以内で、管理区分3の人は1年以内ですが、じん肺法の中 では、3年以内の場合は残りの2年間は空くわけですが、空いた部分について安衛法の 胸部エックス線撮影によって管理するというようなところで乗入れをしています。  資料3の最初の所に戻りますが、じん肺健康診断、じん肺管理区分に応じて3年に1 回、又は年1回となります。これをどのように考えていくかですが、その論点を資料2 のいちばん最初の紙の所に整理をさせていただきました。じん肺管理区分2で、現に非 粉じん作業に従事している労働者は、3年に1回しか義務づけがありません。ただし、 じん肺法において肺結核や結核性胸膜炎、原発性肺がん等の、胸部疾患が合併症と認め られているわけです。じん肺有所見者は、一般公衆に比べて結核罹患率が高いことがわ かっています。  真ん中の所にありますが、3年に1回の定期じん肺健康診断が行われない「あいだの 2年間」につきましては、安衛法に基づく一般定期健康診断において、胸部エックス線 検査が一律に実施されていることを前提として実施されています。ですから、上記のこ とから考えていくと、じん肺管理区分2で、現に非粉じん作業に従事している労働者に つきましては、労働安全衛生法の定期健康診断において従来通り一律に、胸部エックス 線検査を義務づけるべきではないかと考えています。これは事務局の考えです。  じん肺管理区分1、じん肺の所見がない場合ですが、現に粉じん作業に従事している 労働ですが、所見がないがとにかく粉じん作業をやっている、これは先ほどと同じよう に、3年に1回しか義務づけがありません。もう1つ、ここで重要なのは、最近2、3 年間においても、じん肺の新規有所見者は毎年250名程度、毎年の発症数は確実に減少は していますが、それでも毎年250名程度出ています。  上記のことから考えますと、じん肺管理区分1で、現に粉じん作業に従事している労 働者につきましては、労働安全衛生法の定期健康診断において、従来通り一律に胸部エ ックス線検査を義務づけるべきではなかろうかと思っています。これも事務局の考え方 で、このように整理させていただきました。  アスベストの特殊な部分については、先ほど申し上げましたように現在研究班がデー タを集めていますので、その結果に基づいて来年早々にも専門家による検討会を開催し たいというところです。以上です。 ○工藤座長  現在じん肺法に基づく定期じん肺健康診断は、1年に1回定診をやる管理区分と、3 年に1回があるわけですが、その中で3年に1回で、あいだの2年がないということ が、いま問題として事務局から出されたわけです。2つの管理の区分の問題が指摘され ていますが、まず最初にじん肺の管理区分の2は、エックス線写真の像が第1型、仮の です。それで、じん肺によって著しく肺機能の障害はないと認められるのは管理2です が、その方で現在非粉じん作業に従事している方の場合は、3年に1回となっています が、これを1年に1回にすべきではないかということです。これについて何かご意見が ありましたら、ご意見をお出しいただきたいと思います。  これは、まとめて議論していただいたほうがいいかもしれませんが、もう1点は管理 区分1です。レントゲン上じん肺の所見がない方でありながら、現に粉じんの作業に従 事している方も3年に1回になっていますが、これも先ほどの理由によって1年に1回 義務づけたほうがいいということですが、この2つの管理区分についての3年に1回の 部分を、1年に1回に労働安全衛生法としてはしていきたいということです。これにつ いてご意見がありましたらいただきたいと思います。 ○堀江委員  いまの2つのケースですが、これを現行3年に1回やっているのを毎年1回やるよう にすることで、目的と言いますか、じん肺の進行をなるべく早く見つける、あるいは合 併症の発生を早く見つけるなど、そのようなことを目的に年に1回のメッシュで今後も 維持する、このような考え方でよろしいのでしょうか。 ○労働衛生課長  基本的にはそうです。つまり安衛法が現行では毎年ということで、私どもの考え方か らすると、結核予防法からは異論はあるところですが、結核予防法で胸部エックス線が 一律に必要なしというところで、もしそこがなくなってしまうと、3年に1回の部分に ついては、まる2年じん肺で穴が開くと。それは別としても、じん肺法でそこの部分は 安衛法をあてにしている以上、じん肺に対しては、現に粉じん作業をやって管理区分1 は所見がないわけですが、毎年きちんと撮らせるべきではないかということ。かつて管 理区分2で所見があって、いまやっていない方についても、やはり毎年きちんとフォロ ーしていったほうがいいのではないかということで、この論点(案)を出させていただ いています。 ○堀江委員  当然撮影は直接撮影で、じん肺法に則った形での撮影ということですね。 ○安全衛生課長  そういうことです。 ○工藤座長  安衛法というのは、じん肺法の施行のやり方、レントゲンを撮る回数の頻度を変える ということは、安衛法のほうですね。 ○労働衛生課長  両方考慮します。必要があればじん肺法も変えます。その必要もあろうかと思いま す。ここのところはアスベストの健診の関係も当然入ってくると思いますので、ちょっ と将来的にどのような形でこれを実現するかは、いま事務局としては見通しは申し上げ られませんが、基本的な考え方としては、ここでじん肺法についてはご議論をいただい て、施策的にどのような方法でやっていくのかというところは、事務局で検討をさせて いただきたいと思います。 ○工藤座長  基本的には3年に1回ということで、安衛法で毎年やることがあるので、それに乗っ て2回はじん肺法でやらなくていいだろうということもあるわけですが、それは両方の 縛りで、いずれにしても毎年やったほうがいいというご提案なのだと思います。これは じん肺そのものということもありますが、発がんなども考慮すると、職場から離れても ちゃんとフォローしたほうがいいという考え方も出てくるのではないかと思いますが、 何かご意見ございますか。 ○土肥委員  やはりじん肺に関する胸部エックス線撮影を行うのであれば、いままでのほかの特殊 健康診断は基本的に、すべて直接エックス線撮影をするという形で流れてきています し、合併症である原発性肺がんを付けるという観点からいきますと、途中で間接撮影を 行うよりは直接撮影が望ましいということですし、いままでの議論では、間接撮影では 肺がんの早期発見につながらないという議論をしてきたわけですから、当然ここで労安 法の定期健康診断がなくなるという前提で議論するのであれば、じん肺法に基づくエッ クス線の頻度は当然上げて、なおかつ直接であるべきだろうと考えます。ただ、その範 囲が、すべてのじん肺管理区分2、1の3年に1回になっている方のすべてがそうかと いうところが、議論が分かれるところかもしれませんが、頻度を上げるとすれば、当然 直接であるべきではないかと考えます。 ○村田委員  じん肺法の中に決められている3年に1回というのは、たぶん科学的な根拠はあまり ないのではないかと思います。つまりリスクがある方を3年でいいという根拠は、ない のではないかと思うのですが、毎年きちんとフォローすることで、たとえいまエックス 線写真に異常が出ていなくても、じん肺のリスクというか、曝露している方でしたら一 定の頻度であるわけですが、すでに影が見えている人だけが毎年でいいという根拠は何 もないと思いますので、私はじん肺法は3年に1回という理由は必要ないので、1年に 1回やる方向に私は賛成です。 ○相澤委員  3年に1回というのはじん肺の進展が遅くて、1型ですからそんなに早くならないと いうことでなったので、その後合併症に原発性肺がんが加えられたので、実質上は毎年 CTをやっているわけです。その辺はちょっと曖昧であります。ですから、じん肺法を 変えないとちょっと法がとれない。安全衛生法でやるとなると、一般の労働者全員に対 してやるということで、それを粉じん作業者、あるいはじん肺管理2の人だけに適用す るというのはおかしくなってしまうので、いまご意見がありましたが、もしこれを毎年 行うことを明文化するのであれば、じん肺法を変えないといけないと思います。 ○労働衛生課長  じん肺法の健診の中身については、要するに現に粉じん作業をしている人について は、毎年直接撮影で1回です。所見があって、現在非粉じん作業で粉じん作業をしてい ない方についても、毎年1回です。そこで引っかかった場合に、肺がんはフローチャー ト資料5の所にあるように、急げば定期以外のじん肺健康診断で胸部らせんCTがある わけですが、この考え方をお認めいただければ、それを実現する方法を、これはじん肺 法と安衛法の両方にかかってくるし、あとでアスベストをどうするのかという話もあり ますので、ここは行政当局で検討させていただきたいという話です。 ○工藤座長  わかりました。方向性についてお認めいただけるということだろうと思います。具体 的に法律をどのようにいじるかはまたやりたいと思います。 ○藤村委員  アスベスト等が社会問題化していることもありまして、じん肺の問題は特に慎重に討 議しなければならないことだと思うのです。じん肺の健診方法を変える、じん肺法を改 正して変えていくという議論が、まず安衛法の定期健診における胸部レントゲン撮影 と、それが縮小ないし廃止されることを前提にして議論してはいけない。本当はじん肺 法の問題を検討するのでしたらば、まず安衛法の胸部レントゲンの全廃について、まず しっかりとした議論をしたあとでやらなければおかしいです。じん肺だけ先に年に一遍 だけやる。だから定期健診の胸部レントゲン撮影は必要ないのだという結論に導かれる 可能性があります。ですから、このような議論の仕方は好ましくありません。  あとは直接法、間接法に関して、間接法もいろいろテクニカルに非常に向上していま して、そんなに直接法より劣るというエビデンスはあるのですか。そんなにはっきりし たエビデンスはいまやそうないと思うのです。いま直接法、間接法に議論をするより前 に、まず定期健診におけるレントゲンについての議論をした上でじん肺法を検討すべき であって、じん肺法がこう変わったからこれは要らないよという結論づけになるような 議事運営は、決して好ましくないと思います。 ○工藤座長  いま私座長の議事の運営の仕方としては、安衛法における定期健康診断をやめてしま うという前提でいまお話しているわけではないのです。これはまさにこれからご議論を いただくことであります。私が申し上げているのは、それがどういう方向に進むかは別 としても、この問題はこの問題として、いまはっきりさせておいたほうがいいのではな いかということで、むしろ前に置かせていただいたわけです。 ○坂谷委員  大変失礼ですが、今ずいぶん重い問題提起があったと。事務局からの5案の資料2の 2ですが、一方のアスベストのほうでは職業歴、曝露歴のある人には、離職後に保険が なくても手帳を持ってもらい健診の対象にするという方向で動いているように、私は理 解しているのですが、その辺を視野に入れて、同じような扱いにしようという考えが、 入っているのでしょうか。 ○労働衛生課長  石綿関連作業による健康管理手帳の導入ですが、これは所見がない方には、現在は交 付されません。所見ありで交付されます。  ところが、例えばずっとアスベスト曝露作業をしてから胸膜肥厚のような所見が出て くるまで、10年以上かかる例が相当あるので、その間に離職したときに所見がないので もらえない方がいらっしゃる。そういうことで持っていない方が、どれくらいいるの か、あるいはどんな作業で曝露の印であるプラークなどが出てくるのかを、現在研究班 にお願いして調べていますので、健康管理手帳の交付要件についての検討と、さらに現 在は交付すると年2回の直接法でエックス線撮影をフォローしますが、そのやり方でい いのか。  例えば、らせんCTを定期的に入れていったほうがいいのではないか、それらも含め て別枠で検討を始めなければならないということで、前回の国会のアスベスト集中審議 でも、その旨を答弁をしているところです。 ○坂谷委員  アスベストの方での議論の方向性と、また全然独立した話と考えて。 ○労働衛生課長  じん肺の基本的な考え方を、ここで委員の方々に大体定めていただければと思ってい るわけです。 ○工藤座長  ほかによろしいですか。 ○堀江委員  ちょっと関連する話題で、この議論が出たために指摘をさせていただきたいのです が、安衛則の45条の特定業務従事者の健診が、半年に1回行われています。これは安衛 則のたしか第13条第1項第2号に定めるさまざまな有害業務について、一般健診を年に 2回やるという仕組みなのですが、その中で土石、塵埃等の粉じんが著しい場合という のは、たぶんこれはじん肺法のほうに現在移行している話だと思うのですが、そこで定 期健診で年に1回レントゲンを撮っていれば、半年に1回はレントゲンはやらなくても いいという決まりも入っています。そこもここに関連してくる話になる気がしています ので、この話が出るのであれば安衛則の第45条にも影響があると思いましたので、ちょ っとご意見させていただきました。 ○労働衛生課長  ここのところをギチギチに詰めて議論すると、結構大変だろうと思います。じん肺法 は、これまたじん肺対策で古い法律です。これはそのまま残って、現在じん肺はじん肺 で独立してやっていると。一方、安衛法では特殊健診の項目対象を全部決めてやってい ますので、その枠組の中に入れるという整理の手が当然考えられますが、じん肺はさら にいま毎年250名の発症者がいて、この方々に対するフォローも、また重要になっている ところから見ると、じん肺はじん肺でアスベストもこれはあるので、きちんと整備して いく必要があるのではないかという意見もありますので、あとでまた議論されてもかま いませんが、一応現行でいけばじん肺のエックス線も関連してくるので、事務局として ここに案としてお出ししたのは、基本的には安衛法のほうで何があっても、じん肺の健 診の考え方で3年に1回、本当は毎年1回やっている所は後退してはならないというお 話をここでしていただけないか、ということでお出しした次第です。 ○工藤座長  大体よろしいでしょうか。これは先ほど来前回までの会議で、合意に達している雇入 者の健康診断、海外派遣労働者の健康診断といったようなものとの一連のつながりとし て、労働安全衛生法においてもじん肺管理区分の1で、現に粉じん作業に従事している 労働者、管理区分2で、現に粉じん作業に従事していない労働者について、従来の3年 に1回を1年に1回にするという方向について、ご承認いただけますでしょうか。よろ しいですか。                  (了承の声) ○工藤座長  続いて、前回議論が途中になっていた健康診断における胸部レントゲン検査、これは いちばん大きなポイントですので、この議論を行いたいと思います。  まず初めに、事務局のほうから宿題にしていた労働安全衛生法に基づく健康診断の目 的と、肺がんをはじめとするがん検診の位置づけ、この関連性についてご説明していた だきたいと思います。 ○労働衛生課長  これは資料6です。これは、おそらく柚木委員が前回まで、要するに安衛法における 定期健康診断は労働者の一般健康診断として健康の維持、向上のためにやっているのだ というお話をしました。柚木委員が、労働衛生課のほうが誤解しているのではないかと いう話がありましたので、なおもう1度念のためにと申しまして、事務局としては法律 の趣旨を資料6として提出させていただくわけです。  趣旨は、職場における健康診断は、職場において健康を阻害する諸因子による健康影 響を早期発見すること及び総合的な健康状況を把握することのみならず、労働者が当該 作業に従事してよいか、就業の可否、当該作業に引き続き従事してよいか、適正配置な どを判断するために実施するものです。さらに健康診断は、労働者の健康を経時的変化 を踏まえて総合的に把握した上で、保健指導、作業管理、あるいは作業環境管理にフィ ードバックすることが大切でありまして、労働者が常に健康で働けるよう努めなければ ならないということのために、労働安全衛生法第66条第1項の規定に基づきまして、事 業者は労働者に対し1年以内ごとに1回、定期に次の項目として医師による健康診断を 行わなければならないとされています。そのためにこの健康診断の費用は事業者の負担 となり、かつ健康診断を受ける労働者に受診の義務を課している次第になり、ここに概 要、その他が書いてあります。  作業関連疾患について申し上げます。作業関連疾患(work‐related diseases)です が、これは1976年にWHO総会で提唱されて、1982年に設置された専門委員会で採択さ れた国際用語です。一般住民にも広く存在する疾患ではありますが、作業条件や作業環 境の状態によって発症率が高まったり、悪化したりする疾患と定義されています。高血 圧、虚血性心疾患などの循環器疾患、腰痛などの筋骨格系疾患を初めとして、消化器系 や呼吸器系、さらには精神疾患を含むストレス関連疾患などが挙げられています。我が 国においては1990年より実施された旧労働省の作業関連疾患総合対策研究において高血 圧・動脈硬化・糖尿病・脳血管疾患・虚血性心疾患・ストレスと、作業との関連性を明 らかにしていたところです。  作業と疾患の関連性にありますように、次のような関係を認める場合に、通常健康障 害と作業には関連があると考えられるとされています。作業が発症の要因の一つにな る、作業が発症や再発の誘因になる、作業が健康障害の増悪因子となるということで す。作業関連疾患という考え方を提唱しているWHOでも、先ほどのように公衆衛生の 意義を持つものの例示として、後記疾患を挙げています。問題行動、心因性疾患は不定 愁訴や神経症、うつ病、うつ状態などです。高血圧、虚血性心疾患、慢性閉塞性肺疾 患、運動器系障害となっています。このために作業関連疾患等の意義の上から、安衛法 においての定期健康診断について、いわゆるメタボリックシンドロームのいろいろな健 康指標についても、健康診断の項目の中に入っている次第です。したがいまして、一般 的な健康管理上の問題として、安衛法上がん検診をやっているわけではないということ は、ここに明らかにしたいと思います。 ○工藤座長  いまの労働安全衛生法に基づく健康診断とはいかなるものかということと、がん検診 も含めた作業関連疾患という考え方のご説明をいただきましたが、これについてのご議 論はいろいろあろうかと思いますが、このあと3人の方々にご意見を伺うことになって いますので、議論は全体を通じてあとでまとめて行いたいと思います。  最初に、日本労働組合総連合会の須賀恭孝総合労働局長よりご意見をいただきたいと 思います。 ○須賀局長(連合)  いまご紹介いただきました連合の須賀です。発言の機会を与えていただき、ありがと うございました。連合としての意見を述べさせていただきたいと思いますが、その前に ご承知のように連合は、労働組合のナショナルセンターで、およそ670万人の組合員を 組織しています。その状況だけを先に報告をした上で、求められているエックス線検査 に対する意見を申し述べます。  あり方検討会につきましては、結核予防法並びに同法施行令の改正に伴い、これに基 づく労働安全衛生法における胸部エックス線検査等の今後のあり方について、検討する ことを目的に設置されたことについて、本年1月24日の労働政策審議会の安全衛生分科 会に報告があったところです。その検討結果については、労働者全体に極めて重大な影 響を及ぼすだけに、連合としても強い関心を持って注視をしてきましたし、これまでの 3回の審議内容については、公表されている議事録等を基に動向を把握させていただい てきています。  労働安全衛生法に基づく胸部エックス線検査等の実施の意義、あるいは対象、頻度等 について、専門家の方々による審議を通じて、特にこれまで胸部エックス線検査の主目 的である呼吸器疾患に関する検査項目等の内容が、労働者の健康保持、促進にとってよ り有効なものになるように改善されるような報告書が安全衛生分科会に示されますこと を期待していることを、まず申し上げたいと思います。その上でエックス線曝露と発が んの因果関係等を含めて、いまだに決着のついていない課題についても、検討すること が重要であることについては十分に承知しているつもりです。  また、エックス線検査により、諸外国と比較をして被ばくする機会が多いと言われて いる我が国において、毎年検査を義務づける必要があるのかという声があることも、ご 承知のとおりだと考えています。しかし、今後の検討に当たりましては、単に一般健診 における胸部エックス線の廃止か存続かという議論だけではなく、労働者の側から希望 がある場合の事業主負担による実施や、例えば40歳以上の一定年齢を超える労働者への 実施、あるいは喫煙経験者を対象とした実施、医師が必要でないと認めた場合の健康診 断項目の省略に包含する、こういったいろいろなことについて、本来の医学的見知を基 にしつつ、かつ労働者の健康保持促進に資する多様なプランの検討が必要ではないかと 考えていますし、こうした視点での議論がこれまでに成されていないと連合は判断して いまして、このことについては誠に残念と言わざるを得ません。  他方、昨今における特徴的な動向として、アスベスト問題への関心の高まりもありま すし、これへの政府、あるいは業界等の対応が不明瞭な中で、呼吸器系疾患を憂慮する 労働者も少なくないことは事実です。そこで、こうした労働者の不安に応えるために も、仮に胸部エックス線検査が縮小、または廃止される場合には、受診する労働者に負 担の少ない何らかの呼吸器系に対する検査を胸部エックス線検査の代替検査として導入 することが望ましいと考えています。  また、現在の11項目の検査内容が、各種疾患の早期発見のために本当に妥当なのか否 かについての議論は、この場にはなじまないことは承知しています。しかし、現実に胸 部エックス線検査という現在の検査項目を変更するのであれば、労働者の健康保持、促 進に不可欠なあるべき検査項目について、医学的見地から見解をとりまとめ、報告書に 示していただきたいと考えていることも申し添えます。さらに11項目については、労働 者の過重労働におけるストレスの増加による脳疾患、あるいは心疾患、あるいは心筋梗 塞等の梗塞、出血など、致死的かつ重症なものの危険要因を洗い出す機能と、産業医が 把握をしておくべき健康データ等の収集機能があると考えています。そのためにも是非 とも労働者が健康で、安心して働くために必要な検査についての議論をお願いしたいと 考えています。そして、その結果が5,000万労働者にとって有益な結論になることを強 く期待をしたいと考えています。  最後に、胸部エックス線検査については、仮に廃止または縮小ということになった場 合には、そこで働いている、あるいは当該業務に従事をしている労働者の雇用問題が生 じてくることについては、ご承知のとおりであろうと考えます。特にこうした国の政策 転換により生ずる雇用不安であることを十分に踏まえていただき、当該労働者の転職等 の斡旋などを含めて、行政の責任による特段の配慮が不可欠であることを最後に付け加 えまして、連合としての意見に代えさせていただきたいと思います。 ○工藤座長  引き続いて、全衛連の北里大学名誉教授の冨田友幸先生からご意見をいただきたいと 思います。 ○冨田先生(全衛連)  北里大学の冨田です。全衛連のエックス線対策委員会の委員長として始まりましたの で、この問題については初めからいろいろ関心を持っていました。資料7に私どもが今 回の私どもの意見で、大変厚いので時間がかかるかもしれませんが、申し述べてありま す。定期健康診断における胸部エックス線検査の意義と有用性ですが、今回私どもは有 識者1,000人のアンケート調査を行いましたので、それを基にお話したいと思います。  1頁で検討会の進め方について、ご意見を申し上げたいと思います。2番目に呼吸器 学会の意見等に多少食い違いがあるということですが、これについてはまたあとでお話 します。メインの所で、全国のアンケート調査の結果が2頁からありますが、今回1の 検討の進め方を見ていますと、各委員から非常に貴重な意見が出されていますが、議事 録を見ていると途中で中断したり取り上げられていないと。そして偏った少数意見ばか り重要視されているという点が、非常に目についています。  最近EBMというエビデンシスに基づいた判断をすることで、科学的根拠があるかな いかということが問題になるのだろうと思います。胸部レントゲンの集団健診について は、日本人の平均寿命がこれだけ世界一になっているということには、大変重要な役割 を果たしたというはっきりしたエビデンスがあるだろうと思います。そして、もしエビ デンスがないというのであれば、EBMのエビデンスがない場合の対処の仕方は、山田 委員はご存じだと思いますが、コンセンサスを得なければいけないわけですが、その方 法としてデルファイ法があります。ご存じの方もいるかと思いますが、これがいちばん です。デルファイ法というのは、アポロ計画のアポロは皆さんご存じだと思いますが、 ギリシャの神様で医術の神様でもあるわけですが、アポロの神殿があった所がデルファ イです。そこでそのような決め方をしているということで、それがEBMの決め方にも 出ています。それは偏った意見だけを取り上げないということが第1で、第2にはもっ と広く意見を求める。それをまたフィードバックしてさらに何遍も検討するという方法 をとるわけです。その場合に、意見を変えることは十分可能であるということで、そう いう方法をとってコンセンサスを得ることが大事なのです。  私はこの検討会でもっと広く意見を求めたほうがいいと思います。呼吸器学会が4月 と6月にありましたが、その総会でも会員に、そのことについてお話しました。そし て、第3回の6月の検討会があったあと、アンケート実施を全衛連にお願いして行いま した。それが資料の後ろから5枚目の別紙1の所にあります。これは全国の大学の医学 部の教授、教育担当者、あるいは診療担当者にアンケートをまずしました。その関連部 分として呼吸器内科学、呼吸器外科学、放射線、公衆衛生の教授にしました。全国の有 識者ということでよろしいと思います。  専属産業医の約600名に、同時に同じ内容でアンケートを取りました。それで得られ た結果が別紙の2枚目から3枚目にまとめて書いてあります。それに沿ってまたお話を したいと思いますが、この結果を見ますといままでの進め方と全く反対というか、有識 者の意見が非常に多いのです。各学会から推薦された専門の先生方がここの委員になっ ていらっしゃると思いますが、会員の意見とちょっと違うこともあり、それが非常によ くないことではないかと思います。  2頁は、全衛連のほうから何回も言っていますが、まず結核予防法の改正に伴ってこ の問題が起きてきたわけですが、そのときに法律の解釈に間違いがあるということを指 摘しています。時間がありませんので四角の所だけを申し上げます。  まず「『福祉の切り捨て』は労働者保護法である『労働安全衛生法』の精神に反する ことであり、安易に行うべきことではない」ということで、先ほどの連合の方からもあ りましたが、事業主には健康配慮義務があって、そして労働者には健康保持請求権があ るわけですから、この実施を除くことは権利を奪うことになりますので、福祉の切り捨 てになるのではないかと思います。  2番目、一般の健康診断の目的は、今日整理がされておりましたが、いままでは非常 に曖昧な使い方をしていたと思います。一般健康診断は、労働者の健康の保持増進のた めに行われるわけです。そして目的疾患とよく使われていますが、これは対象疾患なの です。目的は対象疾患は業務起因性ではない。これは第66条の第1項と第2項に分かれ ているので、第2項が特殊健康診断で業務起因性を扱うことになっています。根本的な 間違いで業務起因性がないからどうのこうのということになっていますが、全くそれは 議論になっていないと思います。  3頁からはアンケートの結果です。まず第1番目、胸部エックス線の目的です。これ は結核予防法が改正されて、どのような疾患が対象となるかと馬鹿げた議論をしていま すが、これはアンケートで見ているように、どのような目的で行うかということに結核 だけによるものだけではないというのが、90.5%で、医学部の教授、産業医もそのよう におっしゃっています。2番目の労働安全衛生法も先ほど申したように、目的は結核に 限らないのだということを言っています。3番目で問題にしているのは、厚生労働省の 労働衛生課が指導して作っている健康診断のハンドブックがあり、それに基づいて皆さ んは健康診断をしているわけですが、そのハンドブックに多種、胸部疾患を対象疾患と して検査するよう指導がされています。  4番目はそういう指導に基づいて行われ、どのような病気が発見されているかは、全 衛連の報告でしました。もう1つ、5番目で最後、検討の進め方で、村田先生が、どの ような疾患がどうだというのは、個別の疾患をターゲットにして検討することではな く、胸部レントゲンがどうだを検討しなければいけないと発言されていますが、これは 無視されています。こういう進め方がまずおかしいということです。  4頁は、役に立っているかということです。これについては有効性、有用性、有益性 などといろいろな言葉がありましたが、役立っているかどうかという質問を皆さんにア ンケートですると、設問2−2にあるように、「胸部エックス線は結核を含め、胸部疾 患の診断に役立つと思いますか」に対して、80.4%が役立っているということです。こ れは複数回答ですから、「異常なしの確認に役立っている」というのが23%ありまし た。要するに役立っていないというのが、「結核以外には役立たない」というのは僅か 1.4%で、「役立っていない」が5%で、併せて6.4%、残りの90%以上が「役立ってい る」ということになっています。「異常なしの確認に役立っている」ということは、3 にありますが、坂谷先生、藤村先生がご発言になっています。  呼吸器疾患以外の病気に役立つかどうかの2番目に、「循環器疾患に役立つと思いま すか」に対して、「役立っている」が60%です。例に挙げましたが、心肥大から貧血が 発見されるようなこともあり、これは活用の問題だろうと考えます。  5頁、肺結核対策についてです。これは非常に重要なことだと思います。いままでの 検討会を見ると結核については、「結核予防法の改正は厚生科学審議会感染症分科会結 核部会で十分審議がされているからもういいのだ」と言っておりますが、それが問題だ と思います。基本的には予防法の内容について対応すると第2回の資料にも載っていま す。工藤先生もそのように発言されておりますが、これは事務局に基づいてなさってい ることだと思います。審議会の報告はご覧になりましたでしょうか。「結核対策の包括 的見直しに関する提言」が出ております。ところがそれと改正されたものが合っていな いのです。ですから十分に検討されたとは言えないのではないでしょうか。そして医療 現場の多くの人が、私が行く度に、「結核は大丈夫なのですか」と言われるわけで、こ れはもう切り捨てたという形で進めるのは非常に問題だろうと思います。  設問、アンケートをしましたが、「特に差し障りない」というのは僅か5.9%です。 そしてもし除かれた場合には、「雇入後の発病もあり、雇入時の健診だけでは対応でき ない」というのが67.8%です。これは複数回答可ですから、「そのほかにもいろいろな 公衆衛生対策が必要である」が50.4%です。90%以上の人がこれは非常に問題だと言っ ているのですから、安易に決めることは非常に問題だと思います。「雇入時の健康診断 だけで対応できない」に移ると、これは肺結核はご存じのとおり慢性の感染症ですか ら、感染と発病が別なのです。ですから診断までの間に非常に長い時間がかかるものも 多いわけです。ですから雇入時だけで対応できないということは常識なのです。それを 雇入時だけでよい、定期健康診断はやめるというのは極めて問題ではないでしょうか。 多数の有識者が雇入時だけでは対応できないと言っております。  海外派遣労働者健康診断は、これをすることが認められましたが、これだけでは対応 できない。これは第1回のときに堀江先生が、実際には企業では複雑に人が仕事をして いる、労働の仕方が多様であることに注意する必要があると言っています。同じ職場で 正社員、出向社員、派遣社員、パートタイマー、外国人などいろいろな人が働いていま す。外国出張も当たり前で、月曜日に行って金曜日に帰ってくるというのを月に何回も するというのがよくあるわけです。そういうものに海外派遣者研修に全く役に立たない のです。実際に身近に聞いていますが、外国ではそういう健康管理は行われていない で、発病した人に指導に数日間いって、帰国してその次の健診で発見されている。しか もそれが野放し、本人は自覚がないのです。そういうことが現状だということを知って ほしいと思います。  雇入時健診と定期健康診断は昔から同じ労働基準法の時代から同じであり、これは別 にするということはおかしいということもすでに述べました。5番目は初めて出てきた ことだと思いますが、国会の厚生労働委員会をインターネットで調べましたが、附帯決 議というものがあります。これは平成16年4月22日に参議院の厚生労働委員会に出てい ましたが、6事項のうちの4番目に、「企業の健康診断の対象外とされがちな非正規労 働者が増加している状況に鑑み、これらの者への結核に関する知識の普及・啓発に努め るとともに、健康診断の実施等が図られるような方策を検討すること」が自民党から共 産党まで全会一致で出ております。厚生労働大臣が了承しています。これを考えると企 業の健康診断は行うということなのではないでしょうか。当てにして、結核予防法を大 胆に、審議会の報告と違うように決定しておりますから、この辺は非常に問題で十分に カバーしなければいけないのではないかと思います。  現実に仮に定期健康診断を制限したとすると、それでは結核予防法の文章では言葉で はきちんと示されて電磁波がどうだなど示されているけれども、具体的に現場でそれを 判別するかは非常に難しいと思います。堀江先生か加藤先生が確かそれを指摘されたと 思います。現実には産業医がどうしたらいいのだろうか。50人未満の所は産業医もいな いわけですから、極めて綿密な検討をしなければならないが、この会だけでは不可能で はないかと思います。そういう意味からその受け皿としても胸部健康診断は続ける必要 があるのではないかと考えます。  7番目、肺がん検診の有効性についてです。肺がん検診については誤った考え方でエ ビデンスがない、有効性が明らかでないと言われておりますが、肺がん検診の有効性に ついては、21世紀になってから有効であるという日本の研究が次々に欧米の医学誌に発 表されています。英文になるには1、2年遅れますが、それに対して外国も評価をすで にしています。これは江口先生が第3回で明快に説明されています。こういうことを知 っている方は役立っていると考えると思いますが、設問2−3で「肺がん検診は役立つ か」に対して、「役立っていない」の約4倍が「役立っている」となっています。全衛 連でもその報告はいたしています。その根拠となる資料は、2に厚生労働省研究班の研 究報告があります。これは有名なので皆さんはご存じだと思いますが、国立がんセンタ ーのホームページにも載っており、肺がんは検診による死亡率減少効果があると相応な 根拠があると科学的に評価されているとなっています。先ほど申し上げた世界で注目し ている研究は、厚生労働省の藤村班の研究で、岡山、群馬、新潟、宮城の4地区で行わ れており、毎年検診を受診することで肺がん死亡のリスクを30%から60%減少させるこ とが証明されている。このような研究成績は外国になかった。矢野先生のEBM検診で も、しないほうがいいという判定になっていましたが、これはもう古いという論文も同 時に載っておりましたように、これは2000年世界肺癌会議に発表されて、2001年以後 『Cancer』等非常にインパクトアートの高い雑誌に投稿され、国際的に注目されていま す。  見落としがあるという話がありますが、そもそも肺がん検診の胸部レントゲンとCT 検査とは自ずと発見率は違うわけで、これは集団検診の性格にもよるだろうと思いま す。ですからこれに対しては、受診者への十分な説明をする必要があるだろうとは思い ます。国立がんセンターのデータがあり、感度は64%〜75%特異度が95%〜97%ですか ら、非常に問題はないと考えています。  次に業務起因性疾患と未規制物質の対策です。これはアスベストの問題が社会問題に なっているように、我々は前から指摘していますが、それが今回表に出てきたというこ とで、そのような時期に健康診断の胸部エックス線を廃止、縮小することは極めて不適 切ではないかと思っております。未規制物質の対策については、相澤先生、村田先生か ら1回目、2回目の検討会でも指摘されております。そういうことに対する健康診断の 意義もあるのではないか、こういうことがすべていろいろ握りつぶされた進行になって いるのは非常におかしいのではないかと思っています。胸部エックス線の有益性と有害 性は、これは十分それは放射線の被ばくに関しては、注意しなくてはいけないことはわ かっていますが、これは胸部レントゲンの放射線被ばく量は自然放射線の10分の1から 50分の1程度です。医療の中では極めて少ないとされています。だからこそ安全だとい うことで行われているわけです。それについてはいろいろ意見がありますが、まずアン ケートをご覧になっていただくと、十分そういうことに考慮しなければいけないが、有 益性と有害性とどちらが大きいかと言うと、「有害性のほうが大きい」という人が8.7 %、「有益性のほうが大きい」という人が62.7%で7倍です。有益性のほうが優れてい るだろうという評価がされています。被ばくの問題は、確率的影響と確定的影響があ り、確率的影響はそういう可能性があるということで、証明されていないのです。確率 的にはそういうことがあるということです。ただ50シーベルト以下でがんが増加するこ とは確認されておりません。そして例えば自然放射線が日本では地方により違います が、非常に多い所と少ない所では胸部レントゲンを100枚撮るような差がありますが、 そこでがんの発生の差があるということは見つかっておりません。これはエビデントだ と思いますが。  10番目、胸部レントゲンの廃止によりいろいろなことが起こるということで、先ほど 連合から雇用の問題も考えてほしいということもありましたが、私は医学的に考えてど のようなことが起こるかと言うと、産業医の責任が重くなり過ぎる。何が必要だなとい うことは判定できないです。もちろん病気の早期発見ができなくなるという人が非常に 多かったです。事後措置、そういう経過の観察にも問題が起こってくるだろうというこ とです。  少し飛ばしますが、10頁の2番目に健康診断受診率の大幅な低下を書いておきまし た。いま職域で行っているのは時間内に行っているし、健康診断はその場所で行ってい るわけです。ですからそういう意味では受診率は高くなりやすくなっていますが、これ を仕事を休んでまで受診しないだろう。肺がん検診については住民検診では予算が少な いだろう、人間ドックだけでカバーはできないだろうという意見が非常に多かったこと をアンケートは示しています。  次に巡回検診システム、間接撮影は日本で発案され、日本で改良され使われたもの で、外国にないのは当たり前で、非常に優れたシステムなわけです。それを安易に崩壊 させていいかどうかは皆さん同じ意見でした。11頁の真ん中から下に、各団体の意見を 書きました。日本医師会は問題が多すぎるため反対である。全衛連、全国衛生連合会は 現場でいろいろ研修をやっている。いろいろなことを知っております。十分検討した結 果、反対である。日本呼吸器学会、日本肺癌学会は、私が会員ですので今年1月から会 員にいろいろ聞いてまいりました。理事長にも会い、会長ともお話をしましたが、その 結果両学会は本年2月に行われた理事会等で討議され、安易な胸部エックス線検査の廃 止には賛成できないという意見を得ております。これは海外学会などで決議されたとい うことで、文書でいただいております。それをそのまま第2回の検討会に報告したの で、工藤先生がそれは違うのではないかというのは、それこそ違うのではないかと私は 思います。  3の(2)に、両学会からの要望書があります。要望書も出したらどうかとアドバイス をしたのは私なので、肺癌学会と呼吸器学会から廃止や縮小が行われた場合には、呼吸 器疾患の早期発見と予防意識の後退を危惧しているという意見がありました。その後に さらに要望書に出ているようなことが書いてあるのですが、これは「限定的な」に変わ っているのです。「限定的な」に変わっているということは後でもう1つ問題にします から、後で述べます。結論を申すと、12頁です。胸部エックス線検査は現時点で、現行 どおり存続すべきかどうかとダイレクトに尋ねました。設問4です。「現行どおり存続 すべき」が47.3%、結論を先送りし、つまりここでは廃止はしないで現状どおりとして 「科学的根拠について更に検討すべき」が39.5%、つまり86.8%が現状どおりというの が皆さんのご意見でした。「廃止すべき」は10%でした。  こういうことを踏まえて、もう一度議論していただかないと工藤先生は呼吸器学会の 来年は会長をされ非常に忙しいときで申し訳ありませんが、この問題も非常に重要なこ とだと思います。別紙1にもいろいろ大学の教授の答え、産業医の答えを分けて書いて ありますが、さらに細かく分けると呼吸器内科の教授は98.何パーセントが存続賛成で す。全国の大学が80いくつかであれば、1人だけどなたが反対されているということ で、工藤先生が賛成されれば皆が支持しますから問題はないだろうと思います。  資料2を説明すると、これは第3回の6月のときに出した資料で、プリントが間に合 わなく、配付されていないとのことです。日付が6月20日になっています。ほとんど原 文どおりで、説明すると、先ほど申し上げましたが私がまとめた呼吸器学会、肺癌学会 の意見が違うということを第2回に工藤先生がおっしゃいましたが、それはもし6月の 時点でそうであれば、全衛連の委員会の報告は4月上旬までのデータをまとめたもので す。そうするとそれ以外に何か新しい科学的根拠が現われなければ、学会が意見を変え るはずがないのです。そうでなければもう1つは、何らかの誤った情報が伝えられたと いうことです。意見が食い違う原因は、この2つしかないと思います。そこで呼吸器学 会は4月14日、これは呼吸器学会の学術集会で、先ほど申したようにもっと広く意見を 聞くべきだと私は提案しました。そのときの新しい科学的根拠については説明がありま せんでした。私もよく調べましたが、新しい科学的根拠はないです。そうすると新しい 科学的根拠で意見が食い違ったのでないということになると思います。制度が変わった ので、今年は呼吸器学会の総会が2度あり、私は出席しました。これは6月20日の2日 前の6月18日です。工藤先生も江口先生も出席されていましたが、そこで厚生労働省か ら胸部エックス線検査の見直しが昨年末に提案され、厚生労働省内外からの意見で、本 年4月から実施するというのは中止になったと説明しました。6月の時点では見直しが 現在行われている検討会では、専門家の意見を聞いてするかどうするかを聞いているの だということを皆さんに説明しました。これは5,000万人の労働者、家族を含めてさら に多くの国民の健康に関係することだから、呼吸器の臨床にとって極めて重症な課題だ からもっと広く呼吸器学会に意見を求めるべきであるということをその場で言いまし た。そうすると理事長は大変正直な方ですから、こういう発言がありました。「本年5 月厚生労働省よりこの問題について、係官が説明にきて、安衛法における定期健康診断 の胸部エックス線検査を廃止または縮小すること、このことについては既に労使双方の 了解を得ており、実施することが決まっている等の説明があったため、厚生労働大臣宛 の要望書を書き直した」ということをおっしゃいました。これはテープを取り寄せれば 証拠はあると思います。そういうことで以上のことから、誤った情報によりこの食い違 いが起きたのだということがあり、呼吸器学会、肺癌学会の意見は胸部レントゲンの廃 止には反対であるということです。工藤先生は呼吸器学会の会長でもあるし、きっとい い方向に導いてくれると信じていると発言して、それ以上の追及をとりやめました。  以上のことからアンケートの最後の結論、『まとめ』です。12頁、以上のことから定 期健康診断の胸部エックス線検査は国民の健康に非常に重大な役割を果たしている。そ して全国の関連分野の教授、専属産業医、これは有識者の大多数だと思いますが、いま 述べたような意見でした。この結核予防法の大胆な改正は、影響を見定める必要があ る。先ほどあったように、じん肺法が決まらないのに、なぜ安衛法のあれをするのか。 何かみんな人任せになっていて、全体像が見えてこない。レントゲンはいろいろな所で やりますから、例えば住民検診ではどうするのか、安衛法ではどうするのか、じん肺法 ではどうするのか、そういうことすべてをひとまとめにして討論して、結論としての案 を出していただき、それから決める必要があるのではないかということを考えていま す。ですから現在この会では、結核予防法改正にともない直ちに廃止すべきでない。規 則の見直しは労働安全規則第46条の結核健康診断にとどめるべきであると考えます。呼 吸器学会についてはいろいろ申しましたが、1号は工藤先生と意見は同じだと思いま す。WHOの予測を見ると、10数年後は1位から5位の間に3つの呼吸器疾患が視野に 入ってくる。DALYの評価でも結核も含めて呼吸器疾患は非常に問題であるとされて おりますから、今後も胸部エックス線の役割は大きいと考えています。以上です。 ○工藤座長  どうもありがとうございました。冨田先生からは大変包括的なご意見をいただきまし た。私に対しても励ましのお言葉をいただきありがとうございました。次に柚木委員に ご発言をお願いします。残り時間が30分で、今日は3時に終了する約束になっているの で、討議が不十分になるかと思いますが、柚木委員よろしくお願いします。 ○柚木委員(全衛連)  では簡単にやらせていただきます。資料8をご参考にしてください。いろいろ書いて ありますが、後ほど熟読していただくとして、省略して肝心な所だけ申し上げます。私 自身第1回から第3回までを通じて、一貫して意見を述べてきましたが、2番目にある 労働安全衛生法に定める定期健康診断は、労働条件の一つとなっている側面があるわけ ですから、結核予防法が改正されたからといって、直ちに健康診断の胸部エックス線検 査を廃止する必要はないということを重ねて申し上げたわけです。3番目の意見は冨田 先生と重なるので省略します。5番目は、一般健康診断、雇入時の健康診断、定期健康 診断、特定業務従事者の健康診断及び海外派遣労働者の健康診断のうち、雇入時の健康 診断及び海外派遣労働者の健康診断の胸部エックス線検査には、結核を含めて胸部疾患 の診断に役立つと冒頭の説明にもありましたが、これはやはり定期健康診断、胸部エッ クス線検査を結核予防法を踏まえたものであるので、見直す必要があるので、工藤先生 の整理と進行は不適切ではないかと申し上げておきたいと思います。  次に連合の方のご説明がありましたが、胸部のレントゲンの被ばく線量の問題もいろ いろありましたが、やはり7番にありますが胸部エックス線検査で得られる利益より も、放射線被ばく線量の有害性が高い旨の発言が矢野先生からありましたが、これは次 のようなことから間違いではないかということを提起したいと思います。現行の胸部エ ックス線の間接撮影検査は、検査の有効性が低い場合が多く、肺がんなどの見落としが 多く、精度も低い旨の発言がやはり矢野先生からありましたが、これは極めて特異な机 上の意見であろうかと考えております。胸部エックス線検査の必要性は感度、特異度の みの面から、CTと対比すべきものではないと考えます。胸部エックス線検査は一つの 検査で、胸部全体の概要を知り得る簡便で安価なものとして定着している検査法であ り、有効性が低いとする根拠はないわけです。人間ドック等ではCTと共存して活用さ れており、その役割は非常に重大であり、失われていないと考えております。  4頁上から3行目、肺がんなどの重要疾患の見落としや誤診の防止に努めているの は、全衛連が過去17年間にわたり精度管理をやってきていますが、最近はダブルリーデ ィングをトリプルリーディングにして行っている検診機関がすべてであります。その中 にあって当てにならないというような矢野先生の発言が過去の検討会でありましたが、 それは全衛連の精度管理は非常に優れているということを改めて紹介したいと思います ので、敢えてこの場で出しました。10番目の日本呼吸器学会、肺癌学会で安易な胸部エ ックス線検査の廃止には、反対を表明していただいていますので、是非ご検討して、も う1回続くようであればやっていただきたいと思います。最後に新しく就任された小野 安全衛生部長におかれては、労働行政の責任者として問題の多い本検討会の進め方であ りましたが、是非、適正な行政判断を下していただくよう熱望いたします。以上です。 ○工藤座長  ありがとうございました。いま3人の方からご発言をいただきました。包括的に業務 をしたいと思いますが、全衛連の冨田先生と柚木委員については、基本的には同じ内 容、方向性を持ったご発言だったと思います。また連合の方も連合の立場から独自のご 見解を出されていたように思います。ご意見、ご質問等がありましたらどうぞ。 ○江口委員  先ほどの事務局のご説明で資料6、いままでこの会で事務局からのお話として、肺が んの発見自体、肺がんの疾患自体は労働環境のこととあまり関係ないと言われていて、 今日もこの資料のご説明の最後にがんとは無関係というようなことを少し言われたと思 います。この資料を拝見するとWHOも含めて、むしろがんを念頭に置いて例えば問題 行動の中に喫煙が入っていますが、喫煙はご承知のように、喫煙の先にはこういう呼吸 器疾患、虚血性心疾患などいろいろな疾患との関連がありますが、何よりもがんとの関 連がいちばん世界的にも言われていることだと思います。ですからこれを読み換えると やはり喫煙の問題を契機に、労働環境の中での喫煙について、こういうものはこの法律 の範囲内でも十分に健康診断の目的として合致しているのではないか。逆に私にとって はかなりそういう説得のある文書ではないかと感じました。冒頭にもじん肺の検診でじ ん肺にともなう肺がんということも言われていましたが、どこからどこまでが労働環境 の中でのがんの発生と関連があるのか、線引きが非常に医学的にも難しいと思います。 そういうことから考えると、やはり労働環境の中での喫煙の問題は非常に重要な問題な ので、それを含めて胸部写真のことについても肺がんも1つの喫煙の先にあるものとし て、十分考慮していかなければいけないものではないかと思いました。 ○工藤座長  ありがとうございました。いまのご意見は労働環境の中における喫煙というのは、本 人の問題行動としての労働との関連性という問題と受動喫煙的な問題も含めてですね。 ○江口委員  そうです。両方を含みます。 ○工藤座長  ひとつの労働環境との関連性を考慮すべきではないかと、そういうご意見でよろしい ですか。 ○江口委員  はい。 ○藤村委員  国民の健康に関して、職域保健と地域保健とが連携して、きっちりした体制を作らな ければいけない。「健康日本21」に基づく健康づくり事業においても、地域医療計画 の改正案などにおいても、さらにいま厚労省医政局が言っている長期的医療費適正化目 標の設定においても、健診の充実、健診率の向上などが最重要課題だとして取り上げら れています。つまり職域における健診項目を縮小したり、廃止したりすることは国民の 健康づくりの動き、いわば国民運動のようなものに逆行するものではなかろうかという ことをまず第1に申し上げたいと思います。健康というのは事業主を代表する経済界 が、健康な労働力を確保するために、健診の費用を担ったり、あらゆる努力をするのが 社会的責務であることをまず申し上げておきたいと思います。今回のこの検討会で提案 官庁である厚労省の労働基準局安全衛生部あるいは委員長の発言の仕方について、冨田 先生、全衛連の柚木委員などの印象だけでなく、実際におかしいと感じている者はいる のです。私も感じております。つまり何らかの圧力があり、予め結論を設定してこの検 討会の検討を意図的に進行させているとすれば、これは重大な問題があります。厚労省 の場合は資料の提示、表現方法にやや問題があります。これは今後気を付けていただき たいと思います。ですからこのような議事運営が今後も続いてされるようならば、やは りこれは座長の不信任も考えなければいけない、考慮しなければいけないと私は考えて おります。以上です。 ○工藤座長  ありがとうございました。それでは先ほどの問題で、江口委員から出されていた労働 環境とがんとの関係のお話で、これについては何かございますか。特に追加するような ご発言はございませんか。藤村委員からいま議事の進行の問題についてご意見がありま したが、私は別に意図的な運営をしているとは思ってはいないのですが、これは十分に 各委員の先生方のご意見をお伺いして、最終的な結論に持っていかなければならないと いうことで、現に本日も冨田先生は45分お話になられました。毎回柚木委員も含めて全 衛連の方には20分以上のお話をしていただいております。ですから十分に議論を尽し て、最終的な結論に達したいと考えております。 ○労働衛生課長  いま藤村先生が事務局の運営のこともお話になりました。資料の出し方が意図的では ないかというお話でしたが、どこの部分でしょうか。私どもはそういう所は一切ないつ もりでやっております。具体的にお教えいただきたいと思います。 ○藤村委員  具体的にもう一度見直さなければいけませんが、そういう印象は得られるのです。だ からないと言っても、言葉の底に潜む何かそういう意図が感じられると私は感じて発言 していることです。 ○労働衛生課長  それが委員方の少し考え過ぎではなかろうかと思います。 ○藤村委員  いや、そうですか。そうなら非常にいいのですけれど。いままでの説明の節々にそう いう点が感じられる。もう少し表現に気を付けてもらいたいというのが私の希望です。 ○労働衛生課長  1つはそれと直接関係ないと思いますが、今日の資料6ですが、先ほど冨田先生から のお話と柚木委員の資料の中に、法律解釈の誤りがあるという話で、前回もそういうお 話があり資料6を出させていただいたということです。いま江口委員からもお話もあり ましたが、私どもとしてはこれは労働者に受診義務をかけ、事業主に受診費用の負担を 全部併せて、実施義務を全部かけていく関係上、作業起因性の疾患は特殊健康診断に入 り、それを除いたものを一般健康診断、作業関連疾患と認識してこのようにやっていま すというお話を申し上げてきたわけです。ですから基本的に、医学的に関係のない疾患 をターゲットにして、安衛法上義務をかけて健診をするという説明はいままで一度もし たことがありません。もしそうであれば例えば子宮がんであれ、乳がんであれ医学的に 健診効果が明らかであるとされれば、安衛法上すべての労働者、国民の対象の相当数を 担当しますから、女性労働者の問題として事業主の金でやれという話になるわけです。 歯科健診も業務起因性のものでしかやっておりません。私どもはそのようにいままでず っと説明してきておりますので、これについておっしゃるような法律の誤りはないと思 っています。 ○工藤座長  いかがでしょうか、これは第1回からのいちばんの問題点は、いわゆる企業健診で、 健康診断の中でレントゲンがやられているということはもう大変な歴史があり、それは それとしての非常に重要な意味があるとは思っておるわけです。しかしこれは労働安全 衛生法という枠の中で行われているために、事業者にとっても労働者にとっても義務化 されているところにひとつの問題点があり、そこに結核予防法が改正されたということ で、従来の根拠になっていたひとつの重要な部分が損なわれたということがあります。 それに対してどのように対処していったらいいのかが、労働安全衛生法そのものと同時 に、国民の健康増進という立場とどのような整合性を持たせていったらいいか。その辺 の正確な落としどころはどのように持っていったらいいかの議論だろうと思います。率 直になくしてしまったほうがいい、結論が始めにありきではなく、あるいはこのまま続 ければいい、そういうようなこともこれもまた先ほど連合の方もおっしゃっていたと思 います。いろいろな対応があっていいのではないかということで、全体としての後退は やはり避けるべきです。しかし改良していくためにはどうしたらいいかということで議 論をいただきたいと思っております。  先ほどお話に出ていたもしこれが義務化が外れた場合には、自発受診が本来は望まし いと私は思うのです。何でもかんでも義務にすればいいというものではないとは思いま す。特に受診側です。しかし現実にそれを外した場合には、受診率は著しく落ちるだろ うということは冨田先生から言われている資料にあったと思います。これはおそらく現 実だろうと思いますが、江口委員の健診の推進の立場からはいかがでしょうか。 ○江口委員  やはりいま、おそらくこれが義務化されないと、受診する人はかなり減り、しかもい ちばん受診してほしい喫煙されている方、働き盛りの男性の方、そういう方々の受診率 が極端に落ちてしまうことが予測されると皆さんが考えていられることだと思います。 ですからそういう意味で何らかの対策をやはり立てる必要があるだろうと思っていま す。 ○村田委員  法律的な本当の原理、原則というか、厳密に言うと確かに作業起因性でないといけな いのかもしれないのですが、日本の現状の中で労働者の方の健康診断というのは、この 法律に基づいて先ほどから意見が出ているように、かなり大きなウェイトを占め、役割 を持っています。ですからいちばん考えなければいけないのは、座長委員がおっしゃっ たようにもし義務化を外してしまったときに、受けるべき人が受けなくなって、結果的 にはかなりの肺がんの早期発見が遅れてしまったり、そういう国民衛生等からもとても デメリットが出るのではないかを危惧するわけです。ですから法律では厳密にはおっし ゃるとおりだと思いますが、やはり日本はこれだけ良い制度を作ってきたわけですか ら、そこは代わるものがなければやはり安易に外すことはできないのではないかと思い ます。そんな印象を持ちました。 ○工藤座長  いままでご発言のない委員もいらっしゃいますが、いかがでしょうか。 ○坂谷委員  いまの村田委員のお話を敷衍すると、組織的な労働者はそれでいいのですが、いまで も例えば自営業者、家庭の主婦は受診の義務化などはされていないわけです。その人た ちも受診を義務化すべきであるという方向に話がいくはずです。先ほど座長がおっしゃ ったように、費用負担を含めて、経営者、使用者側の実施義務があって、労働者側には 受診義務がある方で縛る定期職権の範囲内として残すかどうかという議論が、まだ不十 分でなかろうかと思います。外すとすれば参考人のご意見にあったように、私も言った 覚えがあるので名前を挙げていただき光栄だったのですが、アンケートの結果にあるよ うな欠落感、不安感を何か裏打ちするような受皿を作ってあげる必要がないだろうか。 そこで妥協しようかと私は思うのですが。そっくりそのまま残すのではなく、この機会 に何かいい方向に、例えばそれが必ずしもいいとは思いませんが、両者側が費用負担を する、先ほど来話に出ているように任意制、有料化などです。行政も絡んで地方になる のか、国になるのかわかりませんが、行政側の負担も含め、やはり費用負担の部分も大 きいですから、そういうことでアンケートの結果に出たような不安感、欠落感を何か解 消するような受皿も用意した上でのご提言になれば、もう少しみんなが受けやすいなと 思いますが、いかがでしょうか。 ○江口委員  具体的なものになりますが、いまおっしゃられた例えば家庭の主婦、もう定年退職さ れた方、そういう方々はかなりいまは住民健診などで受けている方が非常に多いので す。逆に住民健診の全体のポピュレーションからいくと、いちばんがんが起こってき て、社会的にも影響のあるような勤務されている、いま仕事を持って働いている喫煙者 の方々、男性の人たち、そういう人たちは住民健診はあまり受けない。受ける時間もな いというようなことで、そういう人たちはいまはこういうことで毎年定期的にチェック されていることが多いと思います。  ですから具体的な何がどうという資料はありませんが、例えば対がん協会の年報など も見ても、住民健診での受診はかなり女性の割合が多くなっています。そういう意味で は先ほど言われた写真の健診を続けなければいけないということが、国民全体にかぶさ ってくるのではないかという議論は少し飛躍しているのではないかなという気がいたし ます。  それからやはり先ほどからお話しているように、労働環境の中での喫煙というのは、 いまはまだもう少し注目すべきところがたくさんあるのではないかと思うのです。つま り仕事場の環境の中での喫煙は、いまはまだまだ規制されている方向が緩いと思います ので、そういう意味では今後あと10年、20年ということを考えると、呼吸器の疾患、特 にがん、閉塞性の肺疾患の原因がいまは野放しになっていると思います。 ○工藤座長  いまのご意見は、特に喫煙との関係での肺がんに関して、乳がん、胃がんあるいは大 腸がんといったような他のがん腫とは、職業環境との絡みにおいては、差別化し得ると いうようなご意見ですか。 ○江口委員  そうですね、かなりストレスを受けると思います。強調できると思います。 ○工藤座長  ほかに何かご意見ございますか。 ○労働衛生課長  だいぶ時間が詰まってきましたが、先ほど藤村委員、柚木委員、冨田先生も事務局が 何かやめるという意図をもってやっているのではないかというお話が散々ございました が、実はそういうことは絶対ありません。千葉大の学会の学会長の所に行ったというこ とがここに書いてありましたが、これは5月18日に藤澤先生の所に私は行っています。 そのときは結核予防法が結局、健診を廃止したというので、であれば安衛法も規則の調 整をしては外れることになるのですが、癌学会でこのような意見は出たということです から、検討会を立ち上げてやりたいと思います、という話をしに行ったのです。それで 今回このような検討会をやっていますので、やめるという理由でやっているのではない のです。それは是非わかっていただきたいと思います。どのようにしたらよいのかとい うことで、検討をしていただいているわけでございます。ただ、調整するのであれば事 務的には結核予防法がこうですから、こちらもやめますねというのは事務的な処理の方 法ですが、それでは影響が大きいから、より良い方法を検討していただくということで ございます。ですから先生方はいろいろな条件その他ございますが、法律の枠内はもち ろんございます。しかしまだ何回でも十分検討していただきたいと思っています。 ○冨田先生  よろしいですか、いま、肺癌学会に5月18日に行かれて、日本呼吸器学会にはいつ行 かれたのですか。 ○労働衛生課長  呼吸器学会はどなたでしたか。私は千葉大のフジサワ教授の所に学会の、これは癌学 会のお話で、こういう意見が出ているというので、行きました。呼吸器学会は行ってな いのではなかろうかと思います。 ○冨田先生  呼吸器学会の総会で理事長が、そういう発言をされたので。 ○労働衛生課長  済みません、私は呼吸器学会の理事長はどなたか存じないのですが。 ○冨田先生  堀江先生です。 ○労働衛生課長  堀江先生の所へ行ったかな。 ○冨田先生  2人でいらしたというように聞いています。 ○工藤座長  この議論の目的は何ですか。これは呼吸器学会と肺癌学会は合同で要望書を出してい ました。これは冨田先生が書かれているとおりですから、いろいろな経緯があったとし ても、基本的にはそれが公式な見解だろうと思います。これに基づいての両学会は対応 が今後はあるのだろうと思います。ほかにございませんでしょうか。今日は大変重要、 いままでの確認事項をさせていただき、その後にじん肺関係の2つの管理区分の方々に 対する健診の3年を1年にするというそのことを合意をしていただいて、さらに3人の 方々からのお話を伺って、そしていま討議をさせていただきました。ご討議の中にもい ろいろ貴重なご意見もありましたので、これは次回までにさらに論点を再度整理をさせ ていただき、検討を進めてまいりたいと思います。本日はこれを結論とするということ ではないので、こういう重要な問題はあまり早く結論を急ぐことはできるだけ避けたい と思っておりますので、よろしくお願いいたします。では事務局から何かあればよろし くお願いします。 ○労働衛生課長  次回の開催は、大体12月中旬を目処に、もう一度先生方と日にちと時刻の調整をさせ ていただいた上で、ご案内をしたいと思います。以上です。 ○工藤座長  それではどうもありがとうございました。 労働基準局安全衛生部労働衛生課(内線5495、5493)