資料2

医療計画制度と都道府県の権限について


医療計画制度と都道府県の権限に関する意見

 本年9月から3回にわたって開催した「新しい医療計画の作成に向けた都道府県と国との懇談会」や経済財政諮問会議等において、都道府県よりいただいた医療計画制度に関する具体的な提案は次のとおり。

平成17年9月9日 新しい医療計画の作成に向けた都道府県と国との懇談会
・東京都 都道府県の責任で病院や病床を増やし、その分増加した医療費は各都道府県で賄うという考え方もあるのではないか。
・静岡県 使っていない病床を返してもらうのが喫緊の課題。是非検討していただきたい。

平成17年10月24日新しい医療計画の作成に向けた都道府県と国との懇談会
・熊本県 既存の病床の転換を図るための都道府県における権限、ツールを検討していただきたい。
・全国知事会 都道府県の指導等の権限がない。

平成17年10月27日 経済財政諮問会議
・総務大臣 都道府県は過剰病床を減らす権限を持っていない。

平成17年11月1日 関東地方知事会
・関東地方知事会 一定の条件の下に、病院間の病床移転を可能とするよう規制の緩和が必要。

平成17年11月17日新しい医療計画の作成に向けた都道府県と国との懇談会
・東京都 病床を減らすことや高額医療機器の導入を制限する権限がない。都道府県にもう少し強い権限が必要。
・静岡県 機能していない病床を回収し、必要なところに利用する枠組みが必要。 利用率の悪い病床を手放すことが医療機関のメリットになるインセンティブが必要。

 医療計画を作成する都道府県において、質の高い効率的な医療提供体制を構築するためのインセンティブとして、基準病床数制度について、当該都道府県において弾力的に運用できる権限を創設することを検討してはどうか。



医療サービスの質の向上・効率化と医療計画制度の関係について









 医療計画制度における基準病床数制度(いわゆる病床規制)については、地域で必要とされる病床数の基準を算定し、基準を超えた場合は、それ以上病院の開設や病床の増床を認めない仕組みである。
 昭和60年の医療計画制度の創設(昭和63年度にいわゆる病床規制が全国すべてに導入)により、地域での病院・病床の量的整備は進んできたところであるが、量的整備がある程度進んだ現在、以下のような問題が顕在化。









1.病床過剰地域では病院の新規参入が行われず、既存の病院の病床が既得権化。
 →病床過剰地域では病院の新規参入がないことから、医療サービスの質の競争が起こりにくい状況。

2.病床過剰地域では増床ができず、地域の医療ニーズに的確に対応することが不可能。
 →病床過剰地域では増床が簡単には認められないことから、質の高い医療サービスを提供している病院が地域の医療ニーズに的確に対応するための円滑な事業展開が阻害されている状況。

3.既存の公立病院の病床の既得権化に伴い、医療資源が官から民へ円滑に移行できないこと。
 →特に公立病院の病床が固定化してしまい、小児科・産科医療の集約化・重点化など医療資源の再構築が行われず、結果として官から民への円滑な移行が阻害されている状況。

質が高く効率的な医療サービスの提供には基準病床数制度の見直しが必要。



医療サービスの質の向上と効率化に向けた医療計画制度の弾力的運用方策(案)

(方策1)小児救急医療など地域で必要な医療を確保するための医療計画制度の弾力的運用措置
  →地域での医療ニーズと医療サービスの供給状況のギャップを踏まえ、都道府県で検討された今後の医療サービスの提供体制の再構築プランを支援するもの。

(方策2)地域で必要な医療を支援するための公立病院の病床の有効活用措置
  →病床の利用状況を加味した医療計画制度と病床許可制度の見直しを通じて、地域で必要な医療を担う提供主体を官から民へ加速するもの。

(方策3)医療機関における人員配置状況の情報開示と改善に向けた検討
  →小児科医療・産科医療などを提供する医療機関の人員配置状況を把握し、情報開示することを通じて、地域の医療サービスの質の向上に向けた医療機能の集約化・重点化を行うもの。



(方策1)地域で必要な医療を確保するための医療計画制度の弾力的運用(具体案)

 小児救急医療や周産期医療など地域で必要な医療を確保するため、都道府県医療審議会において今後の医療提供体制に関する再構築の方策を議論した結果、地域の既存病床数を全体として「減らす」場合は、当該医療の実施を条件として、都道府県知事において病院の増床又は新規参入を認めることを可能とする弾力化措置を検討。
地域で必要な医療を確保するための医療計画制度の弾力的運用(具体案)の図


(方策2)地域で必要な医療を支援するための公立病院の病床の有効活用措置(具体案)

 公立病院の年間平均病床利用率(一般病床・療養病床に限る。)が50%を下回る場合は、毎年、都道府県において、許可された病床数(A)の見直しを行う。
 見直しに当たっては、当該病院の病床数に年間平均病床利用率をかけた病床数を下限として、再度、都道府県において病床数(B)の許可を行う。
 上記によって削減された病床数を下回る病床数(C)に関しては、地域で必要とされる医療サービスを提供する病院の増床又は新規参入に充てることができるものとする。
 地域で必要とされる医療サービスについては、都道府県の医療計画に記載されたものとする。
 なお、これらの取扱いは都道府県医療審議会の意見を聴くものとする。

(具体案のイメージ)
具体案のイメージ図


病床の有効活用に向けた新たな措置に関する留意点

 地域で必要な医療を担う提供主体を官から民へ加速するため、今般の新たな措置の対象としては、公立病院を念頭に置いている。
年間平均病床利用率が50%を下回っている「公立病院」は、46市町村立病院(2,444床)、10都道府県立病院(1,109床)
「民間病院」全体の年間平均病床利用率は84.4%

 一方で、病床の利用状況に応じた基準病床数制度の運用を行う場合、各病院において「不必要な入院を助長させる」という問題が生じる可能性がある。

 このため、「不必要な入院を助長させる」問題に対しては、次の対応を図ることとする。
都道府県医療審議会において公立病院の平均在院日数の伸びなどを通じて「不必要な入院」をチェックする。
医療法第25条に基づく立入検査を通じて入院の状況と人員配置状況(※方策3参照)をチェックする。


(方策3)医療機関の人員配置状況の情報開示と医療機能の集約化・重点化について(具体案)

 地域で質の高い効率的な医療提供体制を確保するためには、薄い人員配置による状況を改善し、質の高い医療サービスを求める地域のニーズに応えていく必要がある。
 特に、医療安全の問題、小児科・産科医療の確保の問題、救急医療などの労働基準の問題などを考えていくと、地域で必要な医療サービスを提供しなければならない医療機関においては、当該医療サービスを安定的・継続的に提供するため、必要な人員配置を確保することが求められる。
 このため、当該医療機関においては、(1)現在の人員配置状況と(2)人員配置標準を下回る場合の改善計画(人員配置改善計画)を都道府県知事に提出するとともに、地域住民に情報開示しなければいけないものとする。
 また、特に、病床の利用状況に応じて基準病床数制度を運用していく(方策2)に当たり、上記計画を基に、対象となる公立病院に対し、医療機能の集約化・重点化の検討を都道府県医療審議会で行うよう指導していくこととする。



医療サービスの質の向上と効率化に向けた新たな都道府県の権限(創設)について

 医療計画制度における基準病床数については、高度ながん治療に係る特例病床の増加などの事情に関し、すべて厚生労働大臣の同意を要する協議が必要という取扱いでもって運用(医療法施行令第5条の2から第5条の4まで)することによって、病院の病床の適切な配置を国として統一的に実施しているところ。
 一方で、このような国の統一的な取扱いは都道府県の自主性・裁量性を阻害し、地域で必要な医療を迅速に確保することからも不都合が多いのではないか。
 こうしたことから、都道府県が新たに取り組む方策を実施する場合については、厚生労働大臣の同意を要する協議を不要とする措置を講ずることによって、医療サービスの質の向上と効率化に向けた国と都道府県の共同作業をより明確にすることとしてはどうか。

【新たな都道府県の権限(考え方)】
新たな都道府県の権限(考え方)の図

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