第24回社会保障審議会医療保険部会 資料1
平成17年11月25日

平成18年度診療報酬改定の基本方針(案)





平成17年11月 日
社会保障審議会医療保険部会
社会保障審議会医療部会





 平成18年度診療報酬改定に係る基本的考え方

 ○  国民の健康・長寿という人間にとって一番大事な価値を実現するためには、国民の安心の基盤として、質の高い医療を効率的に提供する医療提供体制の構築と、将来にわたる国民皆保険制度の堅持とが不可欠である。

 ○  今後の基本的な医療政策の方向性としては、
 医療を受ける主体である患者本人が、医療に積極的かつ主体的に参加し、必要な情報に基づき患者自身が選択して、患者本人が求める医療を提供していく、という患者本位の医療が提供される仕組みを構築していくこと
 生活習慣病の予防に積極的に取り組むとともに、仮に入院加療が必要となった場合にあっても、早期に在宅に復帰し、生活の質(QOL)を高めながら、自らの生活の場において必要な医療を受けることができる体制を構築していくこと
 人口構成等の構造変化に柔軟に対応するとともに、国民の安心や制度の持続可能性を確保するといった観点から見直しを行い、経済・財政とも均衡がとれたものとするために過大・不必要な伸びを具体的に厳しく抑制することを通じて、将来にわたり国民皆保険制度を堅持していくこと
が求められていると言える。

 ○  平成18年度診療報酬改定は、保険財政の状況、物価・賃金等のマクロの経済指標の動向、全国の医療機関の収支状況等を踏まえつつ、今後の基本的な医療政策の方向性に係る上記のような認識に立って行われるべきであり、具体的には、以下の4つの視点から改定が行われるべきである。
(1)  患者から見て分かりやすく、患者の生活の質(QOL)を高める医療を実現する視点
(2)  質の高い医療を効率的に提供するために医療機能の分化・連携を推進する視点
(3)  我が国の医療の中で今後重点的に対応していくべきと思われる領域の評価の在り方について検討する視点
(4)  医療費の配分の中で効率化余地があると思われる領域の評価の在り方について検討する視点

 ○  具体的な診療報酬点数の設定に当たっては、基本的な医療政策の方向性を明確にしないまま診療報酬施策によって医療機関の診療行動や患者の受療行動を誘導しようとするのではなく、基本的な医療政策の方向性に沿って個別の診療報酬点数を設定していく中で対応していくことを基本とするべきである。

 ○  一方、基本的な医療政策の方向性に必ずしも沿ったものではない医療については、単に診療報酬点数上の評価の適正化を行うだけでなく、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」という国民皆保険制度の理念を基本に据えつつ、特に患者の選択に係るようなものについては、保険診療と保険外診療との併用を認める制度の活用により、応分の負担をしていただくことも含め、検討していくべきである。

 4つの視点から見た平成18年度改定の基本方針

(1)  患者から見て分かりやすく、患者の生活の質(QOL)を高める医療を実現する視点

 必要な情報に基づき患者自身が選択して、患者本人が求める医療を提供していく、という患者本位の医療を実現するためには、まず患者から見て分かりやすい医療としていくことが前提であり、患者に対し医療に関する積極的な情報提供を推進していくことが必要であるとともに、患者の生活の質(QOL)を高める医療を提供していくことが必要である。

 このため、診療報酬体系の見直しに当たっては、そもそも診療報酬体系自体を患者にとって分かりやすい体系とする視点に立って、見直しを推進するべきである。
 とりわけ、診療報酬上評価されている医療のうちには、実際に提供されているが、患者が明確に分からないままに費用を負担しているものもあるとの指摘もあり、現行の診療報酬の名称等の位置付けも含め、点検を行っていくべきである。

 患者への情報提供の推進の観点からは、患者が保険医療機関を受診等した場合に医療費の内容の分かる領収書の発行を受けることができるよう、診療報酬体系を患者にとって分かりやすいものとする取組と併せ、現状を考慮して所要の経過措置を講じた上で、保険医療機関や保険薬局に医療費の個別単価など詳細な内容の分かる領収書の発行を義務付けることを視野に入れて、情報提供を強力に推進するべきである。

 また、患者の生活の質(QOL)を高める医療を提供する観点からは、不適切な食生活、運動不足、喫煙等の生活習慣に起因した生活習慣病等の重症化予防を推進するための方策について検討するべきである。

(2)  質の高い医療を効率的に提供するために医療機能の分化・連携を推進する視点

 質の高い医療を効率的に提供するため、地域の医療機能の適切な分化・連携を進め、急性期から回復期、慢性期を経て在宅療養への切れ目のない医療の流れを作り、患者が早く自宅に戻れるようにすることで、患者の生活の質(QOL)を高め、また、必要かつ十分な医療を受けつつトータルな治療期間(在院日数を含む。)が短くなる仕組みを作ることが必要である。
 このため、地域における疾患ごとの医療機能の連携体制に係る評価の在り方について検討するべきである。

 また、高齢者ができる限り住み慣れた家庭や地域で療養しながら生活を送れるよう、また、身近な人に囲まれて在宅での最期を迎えることも選択できるよう、支援していく体制を構築することが必要である。
 このため、入院から在宅への円滑な移行を図りつつ、介護保険との適切な役割分担の下、24時間診療ができる在宅医療や終末期医療への対応に係る評価の在り方について検討するべきである。

 さらに、我が国の医療については、諸外国と比べ平均在院日数が長いという指摘があり、医療機能の分化・連携を図りつつ、医療資源を集中的に投入することにより、必要かつ十分な医療を確保しつつ、平均在院日数の短縮を図っていくことが必要である。
 このため、平均在院日数の短縮の促進に資するような入院医療の評価の在り方や、急性期入院医療における診断群分類別包括評価(DPC)の支払い対象病院の拡大等について検討するべきである。

 このほか、病院・診療所の機能分化・連携を推進する観点から、病院と診療所の初再診料の格差の問題など、外来医療に対する評価の在り方について検討するべきである。

(3)  我が国の医療の中で今後重点的に対応していくべきと思われる領域の評価の在り方について検討する視点

 我が国の医療の中で今後重点的に対応していくべきと思われる領域については、国民の安心や制度の持続可能性を確保し、経済・財政とも均衡がとれたものとするといった観点も踏まえつつ、その評価の在り方について検討していくことが必要である。

 例えば、産科や小児科、救急医療等については、診療科・部門による医師の偏在により地域において必要な医療が確保されていないとの指摘があることも踏まえ、特に休日、夜間等における医療機関の連携体制を確保していく観点からも、これらの領域に対する診療報酬上の適切な評価について検討するべきである。

 また、医療分野においてはIT化が遅れているが、IT化を推進していくことは、被保険者、医療機関、保険者、審査支払機関等のそれぞれにとってメリットのあることであり、解決すべき課題を整理しつつ、これを集中的に推進していくための方策についても検討するべきである。

 さらに、医療の安全性の更なる向上の観点から、医療安全に係るコストの実態を踏まえつつ、診療報酬上の更なる取組の可能性についても検討していくべきである。

 このほか、医療技術については、難易度、時間、技術力等を踏まえた適切な評価を進めるとともに、新しい医療技術については、有効性、安全性等のほか、その導入の効果についても十分に確認した上で、適切に保険導入を図っていくことが必要であるが、その際には、保険導入手続の透明化・明確化の視点に十分配慮していくべきである。

(4)  医療費の配分の中で効率化余地があると思われる領域の評価の在り方について検討する視点

 国民の安心や制度の持続可能性を確保し、経済・財政と均衡がとれたものとするといった観点を踏まえつつ、今後重点的に対応していくべきと思われる領域の適切な評価を行っていくためには、医療費の配分の中で効率化余地があると思われる領域について、その適正化を図る方向で、評価の在り方について検討していくことが必要である。

 このため、患者の状態像に応じた慢性期入院医療の評価の在り方、入院時の食事に係る評価の在り方、外来医療における不適切な頻回受診の抑制のための評価の在り方、コンタクトレンズ診療等における不適切な検査の適正化のための評価の在り方、かかりつけ歯科医・かかりつけ薬局の本来の趣旨に即した適正な評価の在り方等について検討するべきである。

 また、医薬品については、画期的新薬の開発を促進する薬価制度を構築していく一方で、良質かつ廉価な後発医薬品の使用を促進することは、医療保険制度の持続可能性の維持に資するものであることから、後発医薬品の使用促進のための環境整備の方策についても検討するべきである。

 このほか、医薬品、医療材料、検査等のいわゆる「もの代」については、市場実勢価格等を踏まえた適正な評価を進めるべきである。

 終わりに

 ○  中央社会保険医療協議会(以下「中医協」という。)におかれては、本基本方針の趣旨を十分に踏まえた上で、具体的な診療報酬の改定案の審議を進められることを希望する。

 ○  また、平成18年度診療報酬改定の結果については、本基本方針に即した改定であったかどうか、実際の改定の効果がどの程度あったのか等について、中医協において検証を行い、その結果を当部会に報告いただくことを希望する。

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