労働関係の実態について


〈産業構造の変化等〉
産業構造の変化
職業別雇用者構成の推移
職業別雇用者数
就業形態の多様化
有期契約労働者数の割合
労働者との間の個別の労働条件設定の有無

〈集団的労働条件決定システムが機能する領域の縮小〉
労働組合の推定組織率の推移
民営企業の労働者の推定組織率の推移
パートタイム労働者の推定組織率の推移
労働組合の有無
企業における過半数労働組合の状況
労使協議機関の有無
苦情処理機関・手続の社内設置とその内容
集団的労働紛争件数の推移

〈個別労働関係紛争の増加〉
労働関係民事事件の概況
個別労働紛争に係る相談の件数及び内容
助言・指導申出及びあっせん申請に係る件数
助言・指導申出に係る内容
あっせん申請に係る内容
個別労働紛争解決制度の運用状況(平成16年4月〜平成17年3月)
募集・採用の段階に関する民事上の個別労働紛争
労働条件の引下げに関する民事上の個別労働紛争
配置転換、出向等に関する民事上の個別労働紛争
人事に関する民事上の個別労働紛争
解雇・退職に関する民事上の個別労働紛争
有期労働契約に関する民事上の個別労働紛争
その他の民事上の個別労働紛争
東京都の労働相談情報センターにおける労働相談件数の推移



 産業構造の変化

 我が国の産業構造は、戦前から現在に至るまで第一次産業から第二次さらに第三次産業へと、重点を移してきている。特に第三次産業の就業人口は、戦後から近年に至るまで上昇を続けており、1990年代には60%を超えている。

産業別就業人口の推移グラフ

資料出所 総務省統計局「国勢調査」(厚生労働省政策統括官付政策評価官室作成)



 職業別雇用者構成の推移

 いわゆる「ホワイトカラー」に区分される、専門的・技術的職業従事者、管理的職業従事者、事務従事者、販売従事者の割合は、概ね増加傾向をたどっており、平成16年現在、あわせて2954万人、全体の55.2%を占める。

職業別雇用者構成の推移のグラフ

 「保安職業、サービス職業従事者」は、昭和50年以前は「サービス職業」である。
 「採掘作業者」は、昭和54年以前は「採鉱・採石作業者」である。
 「製造・制作・機械運転及び建設作業者」は、平成12年以前は「技能工、製造・建設作業者」、平成2年以前は「技能工、生産工程作業者」、昭和50年以前は「技能工生産工程従事者」である。また、昭和35年(36年以前)は「単純作業者」を含む。
 「労務作業者」は、昭和54年以前は「単純作業者」である。

資料出所 総務省統計局「労働力調査」



職業別雇用者数  
職業別雇用者数の表

資料出所 総務省統計局「労働力調査」(平成16年)
職業別雇用者数の表



 就業形態の多様化

 雇用者に占めるパート・アルバイト、派遣等の比率は増加傾向がみられる。
〈パート・アルバイト、派遣等の雇用者に占める比率の推移〉
パート・アルバイト、派遣等の雇用者に占める比率の推移グラフ

(資料出所)  総務省統計局「労働力調査特別調査」(平成13年まで)
 総務省統計局「労働力調査詳細集計」(平成14年から平成17年まで)
(注)
 1.  平成13年までは各年2月。平成14年から平成17年までは1〜3月期平均。
 2.  役員を除く雇用者を100としたときの比率。
 3.  平成14年1月から労働力調査と労働力調査特別調査が統合され、新たに労働力調査(詳細集計)として実施されており、それ以前の調査とは調査方法、調査月が相違するため、時系列比較には注意を要する。
 4.  平成13年までは、「正規の職員・従業員」、「パート」、「アルバイト」、「労働者派遣事業所の派遣職員」「その他(嘱託など)」で分類され、平成14年からは、「正規の職員・従業員」、「パート」、「アルバイト」、「労働者派遣事業所の派遣社員」、「契約社員・嘱託」、「その他」で分類されている。



 有期契約労働者数の割合

 ・  わが国の雇用者数はほぼ横ばいで推移しているのに対し、臨時雇・日雇労働者は増加傾向にあり、その結果、これらの者が雇用者数に占める割合は年々増加している。

雇用者数に占める「臨時雇」及び「日雇労働者」の割合の推移(%)

雇用者数に占める「臨時雇」及び「日雇労働者」の割合の推移(%)グラフ

  6年 7年 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年 16年
A 5236 5263 5322 5391 5368 5331 5356 5369 5331 5335 5355
B 546 553 568 600 619 641 671 692 727 737 746
B/A 10.4 10.5 10.7 11.1 11.5 12.0 12.5 12.9 13.6 13.8 13.9
A…  雇用者数(単位:万人)
B…  臨時雇+日雇(単位:万人)
B/A  (単位:%)

 資料出所 総務省「労働力調査」
 「臨時雇」とは、1ヶ月以上1年以内の期間を定めて雇われている者を、「日雇」とは、日々又は1ヶ月未満の契約で雇われている者をそれぞれ指す。



 労働者との間の個別の労働条件設定の有無

 就業規則とは別に労働者との間で個別に労働条件を設定することがあるとする企業は、全体では32.1%であり、1000人以上の規模の企業では55.9%であった。

労働者との間の個別の労働条件設定の有無のグラフ

 就業規則を作成している企業(「企業全体として共通で作成している」「個々の事業所ごとに作成している」)を対象に集計

資料出所 労働政策研究・研修機構「労働条件の設定・変更と人事処遇に関する実態調査」(平成16年)



 労働組合の推定組織率の推移

 労働組合の推定組織率は昭和51年以降減少を続けており、平成15年以後は20%を割り込んでいる。

労働組合の推定組織率の推移のグラフ

 資料出所 「労使関係総合調査労働組合基礎調査報告」(厚生労働省)
 推定組織率は、労働組合員数を雇用者数(総務省「労働力調査」による)で除して算出したもの。
 昭和48年以前は沖縄県を含まない。



 民営企業の労働者の推定組織率の推移

 民営企業の労働者の推定組織率は、減少傾向にあり、平成16年の民営企業の労働組合員数は約800万人、推定組織率は16.8%となっている。

民営企業の労働者の推定組織率の推移のグラフ

資料出所 厚生労働省「労働組合基礎調査」



 パートタイム労働者の推定組織率の推移

 パートタイム労働者の推定組織率は増加傾向にあり、平成16年の推定組織率は3.3%、労働組合員数は約36万人となっている。

パートタイム労働者の推定組織率の推移のグラフ

 「パートタイム労働者」とは、その事業所の一般労働者より1日の所定労働時間が短い者、1日の所定労働時間が同じであっても1週の所定労働日数が少ないもの及び事業所においてパートタイマー、パート等と呼ばれている労働者をいう。
 推定組織率は、パートタイム労働者の労働組合員を短時間雇用者数(総務省統計局「労働力調査」各年6月の雇用者数のうち就業時間が週35時間未満の雇用者の数値)で除して得られた数値である。

資料出所 厚生労働省「労働組合基礎調査」



 労働組合の有無

 ・  労働組合のある事業所の割合は、平成16年では34.0%であり、平成11年に比べて2.4ポイント減少している。

労働組合の有無のグラフ
(単位:%)

 平成6年調査については、調査対象事業場の規模が異なることに留意する必要がある。
(調査対象)
 平成6年調査・・・ 9大産業(下記注)に属する常用労働者50人以上を雇用する民営事業所
 平成11年、16年調査・・・ 9大産業に属する常用労働者30人以上を雇用する民営事業所

(注)9大産業
 (1)  鉱業  (6)  卸売・小売業、飲食店
 (2)  建設業  (7)  金融・保険業
 (3)  製造業  (8)  不動産業
 (4)  電気・ガス・熱供給・水道業  (9)  サービス業
 (5)  運輸・通信業

資料出所  厚生労働省(労働省)「労使関係総合調査労使コミュニケーション調査報告」



 企業における過半数労働組合の状況

 調査対象企業のうち、過半数労働組合があると回答した企業は、全体の6.6%となっている。企業規模が小さくなるほどその割合は低く、従業員1,000人以上の規模の企業では61.6%である一方で、従業員50人未満の企業では3.7%となっている。

企業における過半数労働組合の状況のグラフ

(注) 労働組合があると回答したが、過半数組合の有無について無回答であった企業を含む。

従業員規模10人以上の企業が調査対象である。
資料出所 労働政策・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)



 労使協議機関の有無

 ・  労働組合との団体交渉以外で、経営者側と従業員の代表者とが協議・意見交換する常設の場(労使協議機関)を設置している企業は全体の29.3%であり、企業規模が大きくなるほど設置されている割合は高くなっている。

労使協議機関の有無のグラフ

資料出所 労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)



 苦情処理機関・手続の社内設置とその内容

 ・  個々の労働者の不満を扱う苦情処理機関・手続を社内に設けている企業は全体の18.6%であるが、企業規模が大きくなるほど、その設置割合は高くなる。また、労働組合がある企業はない企業に比べて、苦情処理機関・手続を設けている割合は高い。
 ・  苦情処理機関・手続の内容としては、相談窓口を設置するものが最も多く(65.1%)、従業員の代表を加えた苦情処理委員会などを設置する企業(15.8%)もある。

苦情処理機関・手続の社内設置のグラフ

 調査対象企業全数に尋ねたもの。


苦情処理機関・手続の内容のグラフ
(複数回答、単位:%)

 上記問で苦情処理機関・手続を社内に「設けている」と回答した企業を対象に、その内容を尋ねたもの。

資料出所 労働政策研究・研修機構「従業員関係の枠組みと採用・退職に関する実態調査」(平成16年)



集団的労働紛争件数の推移

 近年、不当労働行為事件新規申立件数には大きな増減は見られないが、争議行為を伴う労働争議の件数は減少傾向にある。

 争議行為を伴う労働争議の件数
争議行為を伴う労働争議の件数のグラフ

資料出所 厚生労働省大臣官房統計情報部「平成15年労働争議統計調査年報告」


 不当労働行為事件新規申立件数(初審)
不当労働行為事件新規申立件数(初審)のグラフ

資料出所 中央労働委員会「労働委員会年報」



 労働関係民事事件の概況

 労働関係民事事件は増加を続けており、平成16年の通常訴訟事件・仮処分事件の新受件数の合計は、平成3年に比べて約3倍となっている。

労働関係民事通常訴訟事件・仮処分事件の新受件数(全国地裁)
労働関係民事通常訴訟事件・仮処分事件の新受件数(全国地裁)のグラフ

資料出所 最高裁判所行政局調べ



個別労働紛争に係る相談の件数及び内容

 都道府県労働局等に設置された総合労働相談コーナーに寄せられた総合労働相談件数及び民事上の個別労働紛争相談件数は増加傾向にある。 民事上の個別労働紛争相談の内容は多岐にわたるが、最も多い相談は解雇に関するものである。

 民事上の個別労働紛争相談件数及び総合労働相談件数の推移

民事上の個別労働紛争相談件数及び総合労働相談件数の推移のグラフ

(注) 「平成13年度」は平成13年10月から平成14年3月までの数値である。

 民事上の個別労働紛争に係る相談内容の内訳

民事上の個別労働紛争に係る相談内容の内訳のグラフ

 厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ



 助言・指導申出及びあっせん申請に係る件数

 平成16年度の個別労働紛争解決制度のあっせん申請受理件数は6,014件で、平成15年度比12.4%の増加となっている。助言・指導申出受付件数は5,287件で、同じく20.8%の増加となっている。

 助言・指導申出受付件数及びあっせん申請受理件数の推移

助言・指導申出受付件数及びあっせん申請受理件数の推移のグラフ

(注) 「平成13年度」は平成13年10月から平成14年3月までの数値である。

厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ



 助言・指導申出に係る内容

 助言・指導申出の内容は、解雇に関するものが最も多く、労働条件の引下げに関するものがこれに続く。
 平成16年度において手続を終了した5,279件のうち、助言・指導を実施したものは94.7%、申出が取り下げられたものは3.1%、処理を打ち切ったものは1.8%となっている。

 助言・指導申出内容の内訳

助言・指導申出内容の内訳のグラフ

 処理状況

処理状況のグラフ

 助言・指導を実施したもの(=100)のうち、解決したものは61.2%(3,059件)。
 助言・指導の手続を終了したもののうち、あっせんへ移行したものは29.7%(1,514件)。

 労働者の就労状況

労働者の就労状況のグラフ

 事業所の規模

事業所の規模のグラフ

 厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ

 助言・指導の事例

【労働条件引下げに関する事案】
(事案の概要)
 申出人は、35年間勤めていた会社を定年退職したが、退職の直前に会社より、経営状況が厳しいため退職金を2割減額して支給する旨の説明があり、退職後減額した退職金が支給された。
 申出人は、退職金の減額に同意しておらず、減額分の支給を求め、労働局長の助言・指導を求めたもの。
(助言・指導の内容)
 労働者にとって、不利益な変更内容と判断される労働条件の変更については、基本的には労使の合意が必要となることから、当事者間でよく話し合うこと。
(結果)
 労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社側とで話し合った結果、減額分についても支給されることとなった。

【整理解雇に関する事案】
(事案の概要)
 申出人は、食品会社の営業部門に勤務する者であるが、営業部門が廃止されることに伴い他工場への配置転換を内示され、通勤困難であるため別の事業所への変更を申し入れたところ解雇予告をされたため、解雇の撤回と通勤可能な事業所へ配属を求め、労働局長の助言・指導を求めたもの。
(助言・指導の内容)
 判例上、整理解雇については使用者による十分な解雇回避努力など四つの要件が求められること、また、配置転換については労働契約等における勤務地・職種の限定や労働者の不利益の程度等により制限を受けることから、当事者間でよく話し合うこと。
(結果)
 労働局長の助言・指導を踏まえ、申出人と会社側とで話し合った結果、解雇が撤回され、通勤可能な別の工場で勤務することとなった。

【総合職から専門職への職務コース変更に関する事案】
(事案の概要)
 入社3年目に新たに導入された総合職、専門職のコース別雇用管理制度により、総合職として勤務していた労働者が、専門職に一方的にコース変更され、月額賃金及び一時金総額36万円が減額となった。
 コース変更の撤回及び減額分の支払いを求めて助言・指導を申し出た。
(助言・指導の内容)
 コース別管理制度は、労働協約や就業規則に明文の規定がなく、給与規程により勤務給に格差があるのみで、人事権限によりコース変更できる就業規則等の根拠が認められないこと、所属や職務内容に変更はなく賃金のみ減額されていることから、賃金の一方的不利益変更は許されず、コース変更は人事権の濫用により無効と判断される可能性が高く、コース変更の撤回について検討すること。
(結果)
 助言・指導により事業主はコース変更を撤回、賃金差額が支払われることとなった。

【1年契約のパート社員の雇止めに関する事案】
(事案の概要)
 1年契約を更新して5年余り継続勤務していた71歳のパート労働者が、70歳定年制を理由に、次期の契約更新を行わない旨通告された。雇い止めの撤回を求めて助言・指導を申し出た。
(助言・指導の内容)
 就業規則に定年制の定めはなく、70歳で定年扱いとしてきたものの、慣行により70歳以降も1年契約を更新してきた事例があり、労働条件として期待したことは無理からぬことであり、事前の十分な事情説明、段階的経過措置など慎重な対応もなく一方的に行う雇い止めは権利濫用と評価される可能性が高いことから、雇用延長について話し合いを行うこと。
(結果)
 助言・指導の結果、1年間の雇用契約更新に応じた。

【家族看護のため転勤命令の解除を求めた事案】
(事案の概要)
 事前の説明のないまま遠隔地への転勤命令を受け1ヶ月あまり勤務していた準社員の労働者が、実母の看護のため前勤務地への復帰を求めたところ、退職勧奨を受けた。前勤務地への復帰を求めて助言・指導を申し出た。
(助言・指導の内容)
 準社員就業規則に異動を命じる根拠条文があり、本人の希望や欠員状況を考慮し異動を決定していたこと、雇用契約で勤務地を限定しているとは認められず、転勤命令は直ちに権利濫用と判断することはできないが、勤務態度改善のための教育目的では業務上の必要性について疑義があることから、看護の具体的な内容、勤務時間の配慮等を検討の上、話し合いを行うこと。
(結果)
 助言・指導の結果、異動は撤回されなかったものの、本人と話合い、始業時刻を繰り下げて勤務を継続することで解決した。



 あっせん申請に係る内容

 あっせん申請の内容は、解雇に関するものが最も多く、労働条件の引下げに関するものがこれに続く。
 平成16年度において手続を終了した5,878件のうち、合意が成立したものは44.9%、申請者の都合により申請が取り下げられたものは8.2%、紛争当事者の一方が手続に参加しない等の理由によりあっせんを打ち切ったものは45.9%となっている。

あっせん申請内容の内訳

あっせん申請内容の内訳のグラフ

処理状況

処理状況のグラフ

 労働者の就労状況

労働者の就労状況のグラフ

 事業所の規模

事業所の規模のグラフ

 厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ



個別労働紛争解決制度の運用状況(平成16年4月〜平成17年3月)

局名 総合労働相談件数 民事上の
個別労働紛争
相談件数
労働局長の
助言・指導制度
申出受付件数
紛争調整委員会の
あっせん制度
申請受理件数
1 北海道 28,842 5,972 303 144
2 青森 8,237 2,507 177 36
3 岩手 8,369 1,360 43 57
4 宮城 14,910 1,925 44 84
5 秋田 5,611 1,853 33 37
6 山形 7,602 1,348 50 90
7 福島 9,956 2,861 77 69
8 茨城 19,175 3,450 138 173
9 栃木 10,972 2,441 135 62
10 群馬 9,717 2,257 62 68
11 埼玉 48,546 10,127 146 187
12 千葉 27,621 7,050 116 157
13 東京 116,231 14,070 342 891
14 神奈川 43,639 11,370 137 221
15 新潟 15,227 2,328 51 127
16 富山 6,666 1,107 92 63
17 石川 7,125 1,621 18 47
18 福井 4,598 1,494 82 77
19 山梨 3,612 850 37 55
20 長野 8,585 1,534 74 91
21 岐阜 14,369 1,430 59 67
22 静岡 21,073 4,394 88 77
23 愛知 41,163 6,290 120 306
24 三重 6,738 2,401 50 112
25 滋賀 4,648 1,418 76 102
26 京都 25,476 4,289 154 173
27 大阪 86,840 16,510 277 406
28 兵庫 56,372 9,441 208 156
29 奈良 6,725 1,210 43 115
30 和歌山 4,988 840 29 26
31 鳥取 5,584 1,218 24 37
32 島根 2,341 1,059 62 35
33 岡山 11,370 1,949 87 150
34 広島 22,617 4,472 110 180
35 山口 4,488 1,275 188 56
36 徳島 4,143 1,675 58 66
37 香川 7,441 1,696 53 35
38 愛媛 6,726 1,301 56 71
39 高知 3,835 799 29 45
40 福岡 30,092 5,569 245 229
41 佐賀 5,611 2,222 243 159
42 長崎 5,576 1,496 89 38
43 熊本 7,434 3,322 250 180
44 大分 9,948 1,374 66 80
45 宮崎 5,450 1,550 192 180
46 鹿児島 10,797 2,351 170 112
47 沖縄 6,778 1,090 104 85
823,864 160,166 5,287 6,014
 厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ



 募集・採用の段階に関する民事上の個別労働紛争

 平成16年度における採用に関する民事上の個別労働紛争に関する相談件数は1,882件、募集に関する相談件数は1,163件に上る。

 募集・採用に関する民事上の個別労働紛争の相談件数

募集・採用に関する民事上の個別労働紛争の相談件数のグラフ

 募集・採用に関する助言・指導申出受付件数

募集・採用に関する助言・指導申出受付件数のグラフ
(単位:件)
(注) いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。
労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争は、あっせんの対象とはならない。
厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 採用内定取消に関する民事上の個別労働紛争相談件数は、増加傾向にあり、平成16年度においては、1,233件に上る。

 採用内定取消に関する民事上の個別労働紛争に関する相談件数

採用内定取消に関する民事上の個別労働紛争に関する相談件数のグラフ

 採用内定取消に関する助言・指導申出受付件数

採用内定取消に関する助言・指導申出受付件数のグラフ

 採用内定取消に関するあっせん申請受理件数

採用内定取消に関するあっせん申請受理件数のグラフ
(単位:件)

(注) いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。
厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 募集・採用の段階に関するあっせん事例としては、例えば、次のようなものがある。

【労働条件の明示に関する事例】
 賞与について、求人票には「前年度3ヶ月分」と示されていたが、実績評価の結果、実際の夏季賞与は9万円であった。労働者は、求人票等では実績評価をすることが示されていなかったことを理由に、求人票に示された3ヶ月分(のうち夏季賞与分1か月分)と9万円との差額を求めたもの。
 会社側は、求人票で示したのはあくまで前年度の実績であり、支給額を保証したものではないと主張した。

【募集、採用に関する事例】
 2ヶ月間に8回の面接を繰り返した後に不採用とされたことについて、応募者が、面接打ち合わせ時間に対する補償や慰謝料を求めたもの。
 会社側は、当初の応募者の説明(自己アピール)に事実と相違があったことから最終的に不採用となったものであり、当初から採用しないつもりであったわけではないと説明していた。

【採用内定に関する事例】
 前職在職中に採用確定との連絡を受け、雇用契約書(仮)を交わしたところ、約2週間後に経験不足を理由として社長の意向により採用が取り消された。しかし、採用内定取消時には既に前職の退職を決めていたことを理由に、採用内定者が経済的・精神的な損害に対する補償金を求めたもの。
 会社側は、雇用契約書(仮)を交わした段階ではまだ採用内定を行ったものではなく、その後の社長面接により採用を決定することを知らせていたと主張した。

【採用内定に関する事例】
 3月上旬の採用面接で採用の意思表示を受け、同月、4月中旬に勤務を開始する旨の雇用契約を締結して社会保険や賃金の支払いについて質問していたところ、勤務開始日前日に勤務開始を保留とされ、4月末に「資格不適当」、「職務に対する姿勢に積極性が不足」との理由で採用内定が取り消された。
 採用内定者は、学歴、職歴などは面接時に明らかにしており、契約を交わしてから1ヶ月以上経過してから問題があるとされることや、全く勤務していないのに能力不足であるとされることに納得できないため、経済的・精神的な損害に対する補償を求めたもの。

【試用期間に関する事例】
 期間の定めのない契約で雇い入れられた労働者が、入社して3ヶ月が経過した時点で、「1ヶ月試用期間を延長し、この間の勤務状況が不良であれば解雇を受け入れる」旨の誓約書への署名を求められた。就業規則には3ヶ月間を試用期間とする旨の規定があるが、それまで労働者は、試用期間が設定されていることを知らなかった。
 労働者は、上記の誓約書には署名をしたが、さらに1ヵ月後、再度同様の書類に署名を求められた。労働者が納得いかずにこれを拒否したところ、合意退職扱いとされ、これにより経済的な損害を受けたとして補償金を求めたもの。
 会社側は、労働者本人が就業規則に記載されている試用期間の定めをおそらく知らなかったということを認めた上で、改善の兆しはあるものの能力不足であるので試用期間の延長を申し入れたところ、労働者がこれを拒否したのであるから解雇ではないと主張した。



労働条件の引下げに関する民事上の個別労働紛争

 労働条件の引下げに関する民事上の個別労働紛争相談件数は増加傾向にあり、平成16年度では28,887件に上る。また、民事上の個別労働紛争に関する相談内容全体の16.0%を占めている。

 労働条件の引下げに関する民事上の個別労働紛争相談件数

労働条件の引下げに関する民事上の個別労働紛争相談件数のグラフ
(単位:件)
(注) 「平成13年度」は平成13年10月から平成14年3月までの数値である。

 民事上の個別労働紛争相談内容全体のうち、労働条件の引下げに関するものの割合

民事上の個別労働紛争相談内容全体のうち、労働条件の引下げに関するものの割合のグラフ

 厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 労働条件の引下げに関する助言・指導申出受付件数は増加傾向にあり、平成16年度では817件に上る。また、助言・指導申出内容全体の14.7%を占めている。

 労働条件の引下げに関する助言・指導申出受付件数

労働条件の引下げに関する助言・指導申出受付件数のグラフ
(単位:件)
(注) 「平成13年度」は平成13年10月から平成14年3月までの数値である。

 助言・指導申出内容全体のうち、労働条件の引下げに関するものの割合

助言・指導申出内容全体のうち、労働条件の引下げに関するものの割合のグラフ

 厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 労働条件の引下げに関するあっせん申請受理件数は増加傾向にあり、平成16年度では807件に上る。また、あっせん申請内容全体の12.9%を占めている。

 労働条件の引下げに関するあっせん申請受理件数

労働条件の引下げに関するあっせん申請受理件数のグラフ
(単位:件)
(注) 「平成13年度」は平成13年10月から平成14年3月までの数値である。

 あっせん申請内容全体のうち、労働条件の引下げに関するものの割合

あっせん申請内容全体のうち、労働条件の引下げに関するものの割合のグラフ

 端数処理の関係で、一部の比率が23頁と異なる。
 厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 労働条件の引下げに関するあっせん事例としては、例えば、次のようなものがある。

【就業規則の適用に関する事例】
 管理職について、内規によって55歳到達時以降賃金が減額となる制度があるが、労働者は、その制度の存在は知っていたが詳細は知らなかった。55歳になって賃金が減額されたことからその制度制定の理由を会社に尋ねたところ、「高齢になると能力が落ちるから」と回答があったが、この理由にも納得がいかない。このため、当該減額制度が無効なものであるとして、賃金減額分の返還を求めたもの。
 会社側は、この制度は約20年前に55歳定年を60歳定年に延長した際に制定したものであり、約10年前にも説明を行っており、内規もあると主張した。

【就業規則の不利益変更に関する事例】
 約10年前にA社の子会社としてB社が分離独立した際に、A社からB社に転籍した労働者が、B社の倒産によって解雇された。
 B社では、もともとA社と同一であった退職金制度を、3年前に変更(退職金を減額)し、その際、当該変更について各労働者と覚書を交わしたが、就業規則の退職金規定は変更しなかった。
 労働者は、(1)退職金制度の変更について会社側から十分な説明がなく、また、説明があれば覚書を受諾しなかったこと、(2)覚書に基づく支払いは退職金規程所定の退職金の内払いとも取れ、現にA社ではそのように取り扱っていることから、覚書による退職金制度の変更は無効であって当時の退職金規程は現在でも有効であることを主張し、これに基づいて退職金を支払うよう求めたもの。
 会社側は、覚書を各個人別に記名捺印の上で交わしていることから、退職金制度は有効に変更されており、変更後の制度に基づく退職金の支払いで足りると主張した。

【就業規則の不利益変更に関する事例】
 労働者が退職したところ、会社側は4ヶ月前に退職金規程を変更したとして、労働者が想定していた退職金の約7分の1の退職金しか支給されなかった。このため、労働者は、そのような退職金規程の変更については一切告げられておらず納得がいかないとして、旧退職金規程に基づく退職金の支払いを求めたもの。
 会社側は、就業規則の退職金規程は、変更時点で労働者代表に事情を説明し改定を行い、労働基準監督署にも届け出ているもので、規定に基づき処理を行っていることから、問題はないと主張した。

【賃金制度の改定に関する事例】
 パートタイマーである労働者について、賃金制度の改正により、1ヶ月の稼働日数が16日未満の者については、それ以外の者と比較して1日あたりの日給が引き下げられ、また、諸手当が支給されないこととなり、前月の稼働日数が15日であった労働者にとっては、大きな賃金の減額となった(就業規則が改正されたかどうかは不明。)。
 このため、労働者は、事前に何の話もなしにこのような一方的な賃金の減額は認められないとして、実際に支払われた賃金と制度改正前の基準で算出された賃金との差額の支払いを求めたもの。
 会社側は、通常の月16日以上の勤務であれば労働者にとって有利な改正であったこと、また、会社としては当該労働者の担当部署の管理職に、各労働者に対して改正内容を説明するよう指示したことから、労働者も承知のことであると判断していたことを主張した。

【個別の労働契約の変更に関する事例】
 インストラクターとして週3日勤務の条件で5年間勤務してきた労働者に対して、会社側が、経営難を理由に週1日勤務への変更を求めた。労働者がこれを断ったところ、5日後に、経営難及びインストラクターとしての指導方針等が会社の方針に合わないことを理由として解雇された。
 労働者は、解雇理由に納得できないとして、復職又は経済的・精神的損害に対する補償金の支払いを求めたもの。
 会社側は、不当解雇ではないし、誠意として最終月の賃金を上乗せして支払っており、問題はないと考えていると主張した。



配置転換、出向等に関する民事上の個別労働紛争

 配置転換に関する民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導申出受付件数、あっせん申請受理件数は増加傾向にあり、平成16年度の相談件数は5,393件に上る。

 配置転換に関する民事上の個別労働紛争相談件数

配置転換に関する民事上の個別労働紛争相談件数のグラフ

 配置転換に関する助言・指導申出受付件数

配置転換に関する助言・指導申出受付件数のグラフ

 配置転換に関するあっせん申請受理件数

配置転換に関するあっせん申請受理件数のグラフ
(単位:件)
(注) いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。

厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 平成16年度における出向に関する民事上の個別労働紛争相談件数は、604件となっている。助言・指導申出受付件数及びあっせん申請受理件数は増加傾向にある。

 出向に関する民事上の個別労働紛争相談件数

出向に関する民事上の個別労働紛争相談件数のグラフ

 出向に関する助言・指導申出受付件数

出向に関する助言・指導申出受付件数のグラフ

 出向に関するあっせん申請受理件数

出向に関するあっせん申請受理件数のグラフ
(単位:件)
(注) いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。
厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 配置転換、出向等に関するあっせん事例としては、例えば、次のようなものがある。

【配置転換に関する事例】
 事務職として採用され、これに1年半にわたって従事していた労働者が、現場業務であって重労働である配架作業に異動とされたことについて、契約に反しているとして、事務業務担当への再異動を求めたもの。
 会社側は、社内で事務職と現場職の区別はしておらず、適材適所に配置転換していると主張した。

【配置転換に関する事例】
 総務部門に配属されたがほとんど仕事がなく、上司から専門知識を生かせる仕事を探すから配置転換に応じてもらいたいと言われ、同意した。しかし、その後、条件に合う配置転換先がないためパソコンの単純な入力業務を行う部署への異動を命じられた。同センターでの勤務は、子どもの保育園の送り迎えに支障を来たし、また、労働者の持つ専門知識を生かせる部署は他に多くあり業務の必要性や人選で正当性がないとして、専門知識を生かせる部署への再配置を求めたもの。
 労働者は、再三文書で異動の理由説明や代替案の検討を求めたが、会社からは返事がなかったとしている。

【出向に関する事例】
 関東のA社で勤務していた労働者が、就業規則には出向規定はないにもかかわらず、1週間後から中部地方のB社に出向することを命じられた。労働者がこれを拒否したところ退職を強要され、その後懲戒解雇されたが、労働者は当該解雇を不当であるとして補償金を求めたもの。
 会社側は、労働者が、プライベートな理由で拒否したものと考え、業務を優先してほしかったと主張した。

【転籍に関する事例】
 A社との雇用契約で就労していたところ、突然B社からの給与通知書に署名押印を強要され、その後、何の説明もなくA社よりA社本部勤務の辞令が送付された。さらに、A社本部に出勤したところ、C社本店での勤務を命じられた(A、B、C社はすべて関連会社。)。
 労働者は、自分の就業場所や職務内容についていずれが正しいのか判断できない状況であり、会社が労働者を自己都合退職に追い込んでいるものと思わざるを得ず、業務を継続する気持ちにはなれないとして、精神的・経済的な損害に対する補償を求めたもの。



 人事に関する民事上の個別労働紛争

 昇給・昇格、人事評価に関する民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導申出受付件数、あっせん申請受理件数は概ね増加傾向にあり、平成16年度の相談件数は、昇給・昇格に関するものが778件、人事評価に関するものが725件となっている。

 昇給・昇格、人事評価に関する民事上の個別労働紛争相談件数

昇給・昇格、人事評価に関する民事上の個別労働紛争相談件数のグラフ

 昇給・昇格、人事評価に関する助言・指導申出受付件数

昇給・昇格、人事評価に関する助言・指導申出受付件数のグラフ

 昇給・昇格、人事評価に関するあっせん申請受理件数

昇給・昇格、人事評価に関するあっせん申請受理件数のグラフ
(単位:件)
(注) いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。
厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 平成16年度における懲戒解雇、懲戒処分についての民事上の個別労働紛争相談件数は、それぞれ4,711件、2,068件に上る。

懲戒解雇、懲戒処分に関する民事上の個別労働紛争相談件数

懲戒解雇、懲戒処分に関する民事上の個別労働紛争相談件数のグラフ

 懲戒解雇、懲戒処分に関する助言・指導申出受付件数

懲戒解雇、懲戒処分に関する助言・指導申出受付件数のグラフ

 懲戒解雇、懲戒処分に関するあっせん申請受理件数

懲戒解雇、懲戒処分に関するあっせん申請受理件数のグラフ
(単位:件)
(注) いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。
「懲戒処分」に「懲戒解雇」は含まれない。
厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 人事に関するあっせん事例としては、例えば、次のようなものがある。

【人事評価に関する事例】
 事前の説明なく経営不振及び業績評価を理由に給与及び賞与が減額されたとして、労働者が、減額分の支払い、正当な業績評価及び評価の具体的内容の説明を求めたもの。
 会社側は、給与及び賞与の減額は、業績評価の結果と、前年度の業績不振による一律1〜2割カットによるものであり、2割カット分は既に元に戻していると主張した。

【懲戒に関する事例】
 労働者が、同僚に対して交友関係に関する中傷をしたとして、これを理由とする懲戒処分通知書が交付され、降格がなされたが、この懲戒処分が不当であるとして、降格に伴って減額された賃金の補償を求めたもの。
 会社側は、中傷について労働者は始末書も提出しており、事実であって懲戒は正当であると主張したが、労働者は、確かに始末書は提出したが、定年を控えてトラブルを起こしたくなかったからであり、始末書の提出自体も不本意であったと主張した。

【懲戒に関する事例】
 前社長の死亡後、不正な経理が判明したことからこれを理由に経理担当の労働者が懲戒解雇されたことについて、労働者が、自分は社長の指示に従って職務を行っていたに過ぎないとして、懲戒解雇の撤回を求めたもの。
 会社側は、本人から事情を聴取して労働者が他の役員に報告すべき義務を怠っていたと判断し、懲戒解雇理由を説明した際に「わかりました」との回答があったことから、本人が懲戒に値する行為を行ったことを認めたとして懲戒解雇を通知したとする。
 一方、労働者は、会社側三人に対して自分一人で説明を聞かされ、理由も分からないまま「わかりました」と言ってしまったと主張した。

【休職に関する事例】
 私病により5ヶ月間休職している労働者が、医師から「このままなら翌月より就労可能」と言われたため会社側にその旨連絡したところ、会社が「医師が就労可能と判断しても適切な職場がなければ復職させない」としたとして、就労可能の判断が出れば復職できることの確約を求めたもの。
 同時期に会社側は希望退職の募集を行っていたことから、労働者は、会社側が、労働者を希望退職させるよう圧力をかけてきたものと考えた。



 解雇・退職に関する民事上の個別労働紛争

 解雇に関する民事上の個別労働紛争相談件数は増加傾向にあり、平成16年度では49,031件に上る。また、民事上の個別労働紛争に関する相談内容全体の27.1%を占めている。

 解雇に関する民事上の個別労働紛争相談件数

解雇に関する民事上の個別労働紛争相談件数のグラフ
(単位:件)
(注) 「平成13年度」は平成13年10月から平成14年3月までの数値である。

 民事上の個別労働紛争相談内容全体のうち、解雇に関するものの割合

民事上の個別労働紛争相談内容全体のうち、解雇に関するものの割合のグラフ

 厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 解雇に関する助言・指導申出受付件数は増加傾向にあり、平成16年度では1,736件に上る。また、助言・指導申出内容全体の31.4%を占めている。

 解雇に関する助言・指導申出受付件数

解雇に関する助言・指導申出受付件数のグラフ
(単位:件)
(注) 「平成13年度」は平成13年10月から平成14年3月までの数値である。

 助言・指導申出内容全体のうち、解雇に関するものの割合

助言・指導申出内容全体のうち、解雇に関するものの割合のグラフ

 端数処理の関係で、一部の比率が19頁、31頁と異なる。
 厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 解雇に関するあっせん申請受理件数は増加傾向にあり、平成16年度では2,519件に上る。また、あっせん申請内容全体の40.5%を占めている。

 解雇に関するあっせん申請受理件数

解雇に関するあっせん申請受理件数のグラフ
(単位:件)
(注) 「平成13年度」は平成13年10月から平成14年3月までの数値である。

 あっせん申請内容全体のうち、解雇に関するものの割合

あっせん申請内容全体のうち、解雇に関するものの割合のグラフ

 端数処理の関係で、一部の比率が32頁と異なる。
 厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 退職勧奨、自己都合退職に関する民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導申出受付件数、あっせん申請受理件数は増加傾向にあり、平成16年度における退職勧奨に関する相談件数は12,614件、自己都合退職に関する相談件数は9,378件に上る。

 退職勧奨、自己都合退職に関する民事上の個別労働紛争相談件数

退職勧奨、自己都合退職に関する民事上の個別労働紛争相談件数のグラフ

 退職勧奨、自己都合退職に関する助言・指導申出受付件数

退職勧奨、自己都合退職に関する助言・指導申出受付件数のグラフ

 退職勧奨、自己都合退職に関するあっせん申請受理件数

退職勧奨、自己都合退職に関するあっせん申請受理件数のグラフ
(単位:件)
(注) いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。
「自己都合退職」については、平成15年度から集計対象項目となった。
厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 解雇・退職に関するあっせん事例としては、例えば、次のようなものがある。

【普通解雇に関する事例】
 顧客からのクレームを理由に解雇通告を受けた労働者が、解雇撤回か配置転換(担当顧客換え)を求めたところ、会社側は、配置転換をする慣習がないため解雇せざるを得ないとしたため、労働者は納得がいかないとして復職(解雇の撤回)又は補償金の支払いを求めたもの。
 会社側は、配置転換に関する規定はあるが、配置転換を行った事例はなく、同じ職種の他の労働者はそれぞれの顧客と良好な関係を築いているため、配置転換はできないと主張した。

【普通解雇に関する事例】
 労働者が、勤務成績不良を理由として解雇されたが納得がいかないとして、復職(解雇の撤回)又は精神的・経済的損害に対する補償を求めたもの。
 会社側は、当該労働者は管理職として採用されたものであって、管理職として期待される勤務ぶりではなく、仕事の改善に向けて話合いを続けてきたが効果がなかったと主張した。

【整理解雇に関する事例】
 会社が新たな機械を導入した後に解雇され、解雇理由について説明を求めたところ「ただのリストラ」との回答であった。
 労働者は、新機械の導入によって直接不要となる人員は外注先の人員であって、会社の真意は副業のため週一回定時退社している自分を狙った解雇であると考えられ納得がいかないとして、復職は求めないが、経済的・精神的損害に対する補償金の支払いを求めるとしたもの。

【整理解雇に関する事例】
 工場の閉鎖を理由に解雇されたが、同部門の他の労働者は別の部門に異動したにもかかわらず、自分だけが何の説明もなく一方的に解雇となったことには納得がいかないとして、復職は求めないが、精神的・経済的損害に対する補償金を求めるとしたもの。
 会社側は、当該労働者は日ごろ腰痛を訴えており、本人が以前から希望していた部署はより腰に負担をかける業務であるので、異動は無理と判断して解雇せざるを得なかったと主張した。

【退職に関する事例】
 労働者が、退職を申し出るメールを社長に送ったが、専務等から慰留を受けこれを撤回しその旨を再度社長にメールした。社長及び専務からは退職意思撤回を聞いた旨の連絡があり、労働者としては今後も業務を継続する意思であった。
 ところが、その約4ヶ月後である決算終了時に、他の取締役より「退職を希望する旨のメールを辞表として受理したので翌月をもって退職とする」とされ、退職希望は撤回した旨を言ってもメールは法的に通用するとして聞き入れられなかったとして、精神的損害に対する補償金を求めたもの。
 会社側は、労働者が退職を決算業務終了まで延期したものと受け止めたと主張した。

【退職に関する事例】
 1年契約、勤続3年目の有期契約労働者が、同僚社員が仕事をしていないことについて社内監査室と同僚本人に匿名の指摘メールを送信したことを理由に、「本来であれば解雇であるが、一身上の都合により退職するよう」通告され、退職する意思はなかったが選択の余地がなく退職届を提出せざるを得なかったとして、残契約期間の賃金相当額を求めたもの。
 会社側はあくまで自己都合退職であると主張した。



有期労働契約に関する民事上の個別労働紛争

 雇止めに関する民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導申出受付件数、あっせん申請受理件数は増加傾向にあり、平成16年度における相談件数は5,242件に上る。

 雇止めに関する民事上の個別労働紛争相談件数

雇止めに関する民事上の個別労働紛争相談件数のグラフ

 雇止めに関する助言・指導申出受付件数

雇止めに関する助言・指導申出受付件数のグラフ

 雇止めに関するあっせん申請受理件数

雇止めに関するあっせん申請受理件数のグラフ
(単位:件)
(注) いずれも「平成13年度」は平成13年10月から同14年3月までの数値である。
厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 有期労働契約に関するあっせん事例としては、例えば、次のようなものがある。

【雇止めに関する事例】
 定年後1年契約で再雇用された労働者について、若返りのため次回の契約は更新しないとの通告を受けたが、就業規則には65歳までの再雇用が規定されており、他に62歳以上の労働者も多くいるにもかかわらず、自分のみ1年で契約が更新されないことは納得がいかないとして、残り4年分の賃金相当額の補償金の支払いを求めたもの。
 会社側は、当該労働者について指導しても業務の改善が見込めないことから退職してもらうこととし、本人も了解したものと考えていたと主張した。

【雇止めに関する事例】
 契約社員として2年間勤務していた労働者が、理由は特にないにもかかわらず契約期間満了時に雇用を終了するとだけ通告されたとして、復職又は経済的・精神的損害に対する補償金の支払いを求めたもの。

【試行雇用契約に関する事例】
 新たに採用された労働者が、入社直後に2ヶ月間は試用期間であることを告げられ、また、就労開始後約1ヶ月を経過した時点で、就労開始日から2ヶ月の有期労働契約であることを内容とする契約書に署名、押印を求められ、労働者はこれに署名した。当該契約期間満了の5日前に、労働者は、会社側から翌月以降の雇用継続はできない旨を通告された。
 労働者は、(1)面接時にも、入社後も長期間の継続勤務を希望していることを上司に伝えていること、応募のきっかけとなったハローワークの求人票には期間の定めのある契約であることが記載されていなかったことから、自らが署名した契約書はあくまで試用期間中の臨時的な契約であって、試用期間中に重大な失敗がない限り、雇用は当然継続し、本採用されるものと考えていたこと、また、(2)雇用継続ができない理由は、「言い訳が多い」等と聞いており、納得がいかないことを挙げ、雇用継続を求めた。
 会社側は、(1)あくまで契約期間2ヶ月の有期労働契約であり、採用を決める各支店の店長にも長期雇用を期待させる言動は取らないよう十分注意している、(2)契約期間の満了による当然の雇用関係の終了であって、労働者が主張しているような理由ではないと主張した。



その他の民事上の個別労働紛争

 平成15年度と平成16年度を比較すると、賠償に関する民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導申出受付件数、あっせん申請受理件数は、ともに増加している。

 賠償に関する民事上の個別労働紛争相談件数

賠償に関する民事上の個別労働紛争相談件数のグラフ

 賠償に関する助言・指導申出受付件数

賠償に関する助言・指導申出受付件数のグラフ

 賠償に関するあっせん申請受理件数

賠償に関するあっせん申請受理件数のグラフ
(単位:件)
 「賠償」については、平成15年度から集計対象項目となった。
 厚生労働省大臣官房地方課労働紛争処理業務室調べ


 その他の民事上の個別労働紛争に関するあっせん事例としては、例えば、次のようなものがある。

【労働者の兼業に関する事例】
 アルバイトとして、2ヶ月契約を更新して約7ヶ月勤務していた労働者が、契約期間中に解雇(会社側は雇止めを主張)された。
 会社側は(1)経歴詐称、(2)労働者の兼業(昼間は別の企業で働き、深夜に当該会社で働いているため過重労働となること)、(3)勤務態度等を解雇理由としたが、労働者は(1)経歴詐称については以前の話合いで問題にしないとされており、(2)兼業も入社当時から了承を得ていたものであり、(3)有給休暇の申請をしたことが理由としか考えられないとして、復職や有給休暇の付与等を求めたもの。

【労働者の秘密保持義務に関する事例】
 会社から、機密情報の保持や著作物の取扱いについての同意書に署名を求められ、労働者がこれを拒否したところ、退職を勧奨され、また、社内ネットワークやメールの使用を停止された。このため、労働者が、「同意書に署名しなかったことを理由に解雇等の不当な取扱いを行わないこと」の確認を求めたもの。

【労働者の競業避止義務に関する事例】
 A社を自己都合退職した労働者が、A社の下請であったB社に再就職した。A社は、労働者の退職から約1ヶ月後に、労働者に対して、(1)A社在籍中に得た情報・ノウハウを漏洩・使用しないこと、(2)A社の取引先であるC社に対して営業行為を行わないこと等を内容とするに誓約書に署名を求めた。労働者が既にB社でC社の業務を受注・実施していることから署名を拒否したところ、A社は、労働者が署名をしないことを理由に退職金を支払わなかった。
 このため、労働者が退職金規程に基づく退職金の支払いを求めたもの。
 会社側は、在職中から会社のデータの持ち出しがあり、また、得意先であるC社を持っていく形となっていることから、退職金を満額支給することはできないと主張した。

【いじめ・嫌がらせに関する事例】
 労働者が、職場責任者から無視をされ続ける等のいじめを受け、事業主にも相談したものの有効な措置が取られないため退職せざるを得ないとして、会社都合退職としての退職金の支払いを求めたもの。
 会社側は、労働者の申出を受けて調査をしたがいじめの事実は認められなかった、労働者と職場責任者を交えての話合いの場を設け、その場で職場責任者が謝罪したことから、和解したものと考えていたと主張した。

【労働者の個人情報の保護に関する事例】
 労働者が病気休職中に、上司が労働者に無断で労働者が通院する病院に症状を確認するための電話をした(病院は守秘義務を理由に回答しなかった)等として、精神的苦痛に対する補償金を求めたもの。
 会社側は、病院と接触を取ったのは、(医師の就労可能との診断書を受けて、)業務について医師に理解を求めるためであったと主張した。

【労働者に対する損害賠償請求に関する事例】
 総務担当者が退職したところ、在職中に会社会計に不足を生じさせたとして損害賠償を請求され、いったんは全額を支払った。しかし、そのうちの一部(約15万円分)については自分だけの責任ではなく総務部門全体の管理体制の問題であり、自分のみが負担することには納得いかないとして、当該部分の返還を求めたもの。



 東京都の労働相談情報センターにおける労働相談件数の推移

 東京都の労働相談情報センターにおける労働相談件数は、平成16年度では44,737件となっている。

東京都の労働相談情報センターにおける労働相談件数の推移のグラフ

 東京都産業労働局雇用就業部労働環境課調べ

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