第22回社会保障審議会医療保険部会 資料2−1
平成17年11月10日


平成18年度診療報酬改定の基本方針について


I 総論

論点(1)  今後の基本的な医療政策の方向性をどのように設定するか。

【考えられる視点】

 ○  医療を受ける主体である患者本人が、医療に積極的かつ主体的に参加し、必要な情報に基づき適切な選択を行うなど、患者本位の医療が提供される仕組みを構築していくこと

 ○  生活習慣病の予防に積極的に取り組むとともに、仮に入院加療が必要となった場合にあっても、早期に在宅に復帰し、生活の質(QOL)を高めながら、自らの生活の場において必要な医療を受けることができる体制を構築していくこと

 ○  人口構成等の構造変化に柔軟に対応するとともに、経済・財政とも均衡がとれ、国民の安心や制度の持続可能性を確保するといった観点から見直しを行い、過大・不必要な伸びを具体的に厳しく抑制することを通じて、将来にわたり国民皆保険制度を堅持していくこと

論点(2)  平成18年度診療報酬改定の基本方針については、いくつかの視点に沿って整理することとしてはどうか。

【考えられる視点】

 (1)  患者から見て分かりやすく、患者の生活の質(QOL)を高める医療を実現する視点

 (2)  質の高い医療を効率的に提供するために医療機能の分化・連携を推進する視点

 (3)  我が国の医療の中で今後重点的に対応していくべきと思われる領域の評価の在り方について検討する視点

 (4)  医療費の配分の中で効率化余地があると思われる領域の評価の在り方について検討する視点

論点(3)  基本的な医療政策の方向性と具体的な診療報酬点数との関係についてどのように整理するか。

【考えられる視点】

 ○  具体的な診療報酬点数の設定に当たっては、基本的な医療政策の方向性を明確にしないまま診療報酬施策によって医療機関の診療行動や患者の受療行動を誘導しようとするのではなく、基本的な医療政策の方向性に沿って個別の診療報酬点数を設定していく中で対応していくことを基本とするべきではないか。

 ○  一方、基本的な医療政策の方向性に必ずしも沿ったものではない医療については、単に診療報酬点数上の評価の適正化を行うだけでなく、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」という国民皆保険制度の理念を基本に据えつつ、特に患者の選択に係るようなものについては、保険診療と保険外診療との併用を認める制度の活用により、応分の負担をしていただくことも含め、検討していくこととしてはどうか。


II 各論

論点(4)  患者から見て分かりやすく、患者の生活の質(QOL)を高める医療を実現する視点についてどのように考えるか。

【考えられる基本的視点】

 ○  患者本位の医療を実現するためには、まず患者から見て分かりやすい医療としていくことが前提であり、患者に対し医療に関する積極的な情報提供を推進していくことが必要であるとともに、患者の生活の質(QOL)を高める医療を提供していくことが必要ではないか。

【考えられる具体的視点】

 ○  診療報酬体系の見直しに当たっては、そもそも診療報酬体系自体を患者にとって分かりやすい体系とする視点に立って、見直しを推進することとしてはどうか。
 とりわけ、診療報酬上評価されている医療のうちには、提供されていることを患者が明確に分からないままに費用だけ負担しているものもあるとの指摘もあり、現行の診療報酬の名称等の位置付けも含め、点検を行っていくこととしてはどうか。(参考資料11ページ)。

 ○  患者への情報提供の推進の観点から、患者が保険医療機関を受診等した場合に医療費の内容の分かる領収書の発行を受けることができるよう、診療報酬体系を患者にとって分かりやすいものとする取組と併せ、保険医療機関等に領収書の発行を義務付けることを含め、これを強力に推進するための方策について検討することとしてはどうか(参考資料11ページ)。

 ○  患者の生活の質(QOL)を高める医療を提供する観点からは、不適切な食生活、運動不足、喫煙等の生活習慣に起因した生活習慣病等の重症化予防を推進するための方策について検討することとしてはどうか(参考資料3ページ)。

論点(5)  質の高い医療を効率的に提供するために医療機能の分化・連携を推進する視点についてどのように考えるか。

【考えられる基本的視点(1)】

 ○  質の高い医療を効率的に提供するため、地域の医療機能の適切な分化・連携を進め、急性期から回復期、慢性期を経て在宅療養への切れ目のない医療の流れを作り、患者が早く自宅に戻れるようにすることで、患者の生活の質(QOL)を高め、また、必要かつ十分な医療を受けつつトータルな治療期間(在院日数を含む。)が短くなる仕組みを作ることが必要ではないか。

【考えられる具体的視点(1)】

 ○  地域における疾患ごとの医療機能の連携体制に係る評価の在り方について検討することとしてはどうか(参考資料8ページ)。

【考えられる基本的視点(2)】

 ○  高齢者ができる限り住み慣れた家庭や地域で療養しながら生活を送れるよう、また、身近な人に囲まれて在宅での最期を迎えることも選択できるよう、支援していく体制を構築することが必要ではないか。

【考えられる具体的視点(2)】

 ○  入院から在宅への円滑な移行を図りつつ、介護保険との適切な役割分担の下、24時間診療ができる在宅医療や終末期医療への対応に係る評価の在り方について検討することとしてはどうか(参考資料8ページ)。

【考えられる基本的視点(3)】

 ○  我が国の医療については、諸外国と比べ平均在院日数が長いという指摘があり、医療資源を集中的に投入することにより、必要かつ十分な医療を確保しつつ、平均在院日数の短縮を図っていくことが必要ではないか。

【考えられる具体的視点(3)】

 ○  平均在院日数の短縮の促進に資するような入院医療の評価の在り方や、急性期入院医療における診断群分類別包括評価(DPC)の支払い対象病院の拡大等について検討することとしてはどうか(参考資料6ページ・9ページ)。

【考えられる基本的視点(4)】

 ○  病院・診療所の機能分化・連携を推進することが必要ではないか。

【考えられる具体的視点(4)】

 ○  病院・診療所の機能分化・連携を推進する観点から、病院と診療所の初再診料など、外来医療に対する評価の在り方について検討することとしてはどうか(参考資料10ページ)。

論点(6)  我が国の医療の中で今後重点的に対応していくべきと思われる領域の評価の在り方について検討する視点についてどのように考えるか。

【考えられる基本的視点】

 ○  我が国の医療の中で今後重点的に対応していくべきと思われる領域については、経済・財政とも均衡がとれ、国民の安心や制度の持続可能性を確保するといった観点も踏まえつつ、その評価の在り方について検討していくことが必要ではないか。

【考えられる具体的視点】

 ○  例えば、産科や小児科、救急医療等については、診療科・部門による医師の偏在により地域において必要な医療が確保されていないとの指摘があることも踏まえ、これらの領域に対する診療報酬上の適切な評価について検討することとしてはどうか(参考資料8ページ)

 ○  医療分野においてはIT化が遅れているが、IT化を推進していくことは、被保険者、医療機関、保険者、審査支払機関等のそれぞれにとってメリットのあることであり、解決すべき課題を整理しつつ、これを集中的に推進していくための方策についても検討することとしてはどうか(参考資料5ページ)。

 ○  新しい医療技術については、有効性、安全性等を十分に確認した上で、適切に保険導入を図っていくことが必要であるが、その際には、保険導入手続の透明化・明確化の視点に十分配慮していくこととしてはどうか(参考資料4ページ)。

論点(7)  医療費の配分の中で効率化余地があると思われる領域の評価の在り方について検討する視点についてどのように考えるか。

【考えられる基本的視点】

 ○  経済・財政とも均衡がとれ、国民の安心や制度の持続可能性を確保するといった観点を踏まえつつ、今後重点的に対応していくべきと思われる領域の適切な評価を行っていくためには、医療費の配分の中で効率化余地があると思われる領域について、その適正化を図る方向で、評価の在り方について検討していくことが必要ではないか。

【考えられる具体的視点】

 ○  患者の状態像に応じた慢性期入院医療の評価の在り方、入院時の食事に係る評価の在り方、外来医療における不適切な頻回受診の抑制のための評価の在り方、コンタクトレンズ診療等における不適切な検査の適正化のための評価の在り方、かかりつけ歯科医・かかりつけ薬局の本来の趣旨に即した適正な評価の在り方等について検討することとしてはどうか(参考資料5ページ・7ページ・12ページ・13ページ・14ページ)

 ○  良質かつ廉価な後発医薬品の使用を促進することは、医療保険制度の持続可能性の維持に資するものであることから、後発医薬品の使用促進のための環境整備の方策について検討することとしてはどうか(参考資料14ページ)。

 ○  医薬品、医療材料、検査等のいわゆる「もの代」については、市場実勢価格等を踏まえた適正な評価を進めることとしてはどうか(参考資料14ページ)。

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