(第6回協議会における厚生労働大臣発言要旨)

生活保護及び児童扶養手当の見直し案について


 はじめに
 生活保護及び児童扶養手当の見直し案について
 生活保護について
(1) 見直しの考え方
(2) 見直しの基本方向
(3) 具体的な見直し案
 児童扶養手当について
(1) 見直しの考え方
(2) 見直しの基本方向
(3) 具体的な見直し案


 はじめに
 生活保護費及び児童扶養手当に関する関係者協議会は、三位一体改革に関する昨年11月の政府・与党合意において、「生活保護費負担金及び児童扶養手当の補助率の見直しについては、地方団体関係者が参加する協議機関を設置して検討を行い、平成17年秋までに結論を得て、平成18年度から実施する」とされたことを踏まえて本年4月に設置されました。
 協議会は4月からこれまでに5回開催され、第3回協議会までに、地方団体、厚生労働省それぞれから生活保護制度及び児童扶養手当制度について問題提起が行われ、論点が整理されました。問題提起に際し、地方団体からは、生活保護制度等は国の責任において行われるべきものであるという考えに立った問題認識が示された一方、厚生労働省からは生活保護等の業務の性格を踏まえた国と地方の役割の在り方についての問題提起を行いました。
 その後、論点に沿って、まず保護率の上昇、児童扶養手当の増加及び地域間格差の原因に関する共通認識の形成のための共同作業が実施され、とりまとめが行われました。
 また、第4回及び第5回協議会においては、生活保護制度における最低生活の保障に関する課題、生活保護制度を取り巻く他制度との関係、生活保護業務の実施に当たっての問題、自立支援に関する課題、児童扶養手当の課題などの幅広い論点に関して協議が行われました。
 厚生労働省からは、生活扶助等のそれぞれの扶助の在り方などの議論に際し、基準の設定権限や地方の役割・責任等についての論点を提示しましたが、地方団体からは、生活保護・児童扶養手当行政は、国の責任において実施すべきであり、地方の裁量に委ねるべきでない、社会保障制度全体を見通した議論が必要である、制度の運用面の改善を図るべきといった御意見をいただいたと承知しております。


 生活保護及び児童扶養手当の見直し案について
 厚生労働省としては、これまでの協議会における分析結果や御指摘・御議論について真摯に受け止めた上で、生活保護制度及び児童扶養手当の現在の課題に対応するための国と地方の役割分担やそれに合わせた費用負担の在り方について総合的・全般的に検討を行い、昨年のように国庫負担率の一律の見直しを行うのではない形で「生活保護及び児童扶養手当の見直し案」をとりまとめました。
 厚生労働省としては、それぞれの扶助等の性格に応じて、国と地方自治体が手を携え、一体となって、生活保護の適正な実施や母子家庭の自立支援を進めていきたいと考え、この見直し案を地方団体に対して提案するものであります。
 なお、昨年においても、厚生労働省は三位一体改革に関する地方との議論の中で、生活保護等の費用負担の見直しを提案しましたが、これは、国庫負担率を引き下げることが自動的に保護率の低下等の適正化に結びつくといった単純な理由ではなく、自立支援プログラム導入といった自立支援等に関する自治体の役割と裁量の拡大に伴い、費用負担の見直しをするというものでありました。今回の提案は、それに加えて、地方への権限委譲も含めた内容とし、生活扶助、住宅扶助、医療扶助など生活保護のそれぞれの扶助ごとに在り方を見直しており、「地方にできることは地方に」という考え方の下で地方の裁量拡大と補助金・負担金の改革を行う三位一体改革の趣旨にも合致するものと考えております。


 生活保護について
(1) 見直しの考え方
 生活保護は、我が国の社会保障制度の中で、年金、医療、介護、福祉等の施策(他法他施策)などを適用してもその最低限度の生活が出来ない場合に、最低生活を保障する「最後のセーフティネット」としての機能を果たす制度であります。
 我が国の社会保障制度は、国、都道府県、市町村が重層的に役割、責任を分担し、国民一人一人の需要に応じた所得保障や医療・福祉サービスの提供に務めていますが、生活保護制度もその例外ではありません。
 現行制度では、国が生活保護基準を設定するとともに、4分の3の費用負担を行う一方、地方自治体が保護の支給決定や被保護者の自立助長を行うとともに、4分の1の費用負担を行っています。
 しかし、現行の保護基準は、国が、消費水準や家賃等の地域差を勘案して定めていますが、消費水準や家賃等は地域により格差が大きく、より適正な生活保護の実施のためには、保護基準の設定を地方に担っていただくことが不可欠であります。
 また、生活保護制度は、最低生活の保障のために保護費を支給するだけでなく、高齢者や精神障害者などが入院するのではなく地域で生活できるようにすることを含めて、他法他施策を積極的に活用して被保護者の自立を助長することが求められています。
 自立を促すためには、他法他施策を積極的に活用しなければなりませんが、他法他施策を活用して広範な対象者に対して自立を促進することを目的として、昨年提案し、本年度から導入した自立支援プログラムがさらに効果を上げるためにも、これらの他法他施策と生活保護制度との国庫負担率等との整合をとる必要があります。さらに、被保護者の実情把握や評価、自立のための支援・指導の方法は自治体毎に工夫を凝らし得るものであり、また、自立助長に活用できる社会資源やネットワークも地域ごとに様々であることから、自治体の役割が極めて大きいものと認識しています。

(2) 見直しの基本方向
 これらの観点から、今回の見直しにおいては、
 ○  都道府県や保護の実施自治体への権限委譲や役割・責任の拡大
 ○  このような権限や役割・責任に応じ、また、他法他施策の国庫負担率・補助率とも整合のとれた地方の財政負担の拡大
の2つを基本的な方向と考えています。

(3) 具体的な見直し案
 今回の見直しは、生活保護については、生活扶助等の扶助の種類ごとに、現状の課題を踏まえ、国と地方の役割・責任の在り方を検討し、それに伴い、財政負担を見直しています。

(生活扶助)
 生活扶助については、現在、6段階の保護基準を設定し、全国の地域を6段階のいずれかに当てはめる方式を採っていますが、地域事情をより的確に反映させるため、国が定める指針のもとで、生活扶助基準の設定権限を都道府県に委譲することとします。さらに、基準設定に関する都道府県の役割・責任の拡大や、自立助長に関する地方の役割・責任を重視するとともに、他法他施策の国庫負担率等との整合をとるために財政負担を見直すこととし、都道府県が4分の1の費用負担を行い、国の費用負担を2分の1とすることとします。

(住宅扶助)
 住宅扶助については、現在、家賃等の地域差を勘案して、都道府県、政令指定都市、中核市ごとに、住宅扶助基準を設定しているため、408通りの基準が設定されていますが、地域事情を的確に反映させるため、住宅扶助基準の設定権限を保護の実施自治体に委譲することとします。さらに、これに伴う役割・責任の拡大と、住宅扶助費を金銭で支給することに加えて、自立支援・就労促進のための機能を備え、地域資源を活用した住まいを現物のサービスとして提供できるよう道を開くことに伴って、財政負担を見直し、住宅扶助を一般財源化します。

(医療扶助)
 被保護者は、国民健康保険の適用除外となっていることから、多くの被保護者の医療費は全て生活保護制度によって賄われているため、医療扶助の費用は生活保護費の過半を占めています。
 医療扶助については、病床数等の医療提供体制と相関があることから、平均在院日数の短縮、病院から在宅への復帰促進等を図るために、医療計画や介護保険事業支援計画を策定する都道府県の役割・責任は大きいと考えられます。また、国民健康保険や老人医療、介護保険でも都道府県が費用を負担しており、それとの財政負担の整合を図ることも必要です。これらにかんがみ、都道府県の負担を導入し、都道府県が4分の1の費用負担を行い、国の費用負担を2分の1とすることとします。


 児童扶養手当について
(1) 見直しの考え方
 児童扶養手当についても、母子家庭の生活の安定と自立の促進に寄与する制度であり、他の就業・自立支援策とあいまってその目的を果たしていくべきものであることから、他法他施策における国庫負担率等との整合をとることが適当であります。
 加えて、母子家庭対策においては、近年、「就業・自立に向けた総合的な支援」へと政策の転換を図ってきており、この中で地域の様々な社会資源やネットワークを活用しつつ、個々の母子家庭の状況に応じ、経済的支援と子育て・就業支援を有機的に組み合わせて提供することが重要であることから、自治体の役割はやはり極めて大きいものと認識しています。

(2) 見直しの基本方向
 児童扶養手当についても、国と地方の役割・責任の在り方の検討に伴って、財政負担を見直します。

(3) 具体的な見直し案
 児童扶養手当については、就業・自立に向けた総合的な支援に関する手当の実施自治体の役割・責任を拡大するとともに、他法他施策の国庫負担率等との整合をとるために財政負担を見直し、手当の実施自治体が2分の1の費用負担を行い、国の費用負担を2分の1とすることとします。

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