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見直しの考え方
生活保護は、我が国の社会保障制度の中で、年金、医療、介護、福祉等の施策(他法他施策)などを適用してもその最低限度の生活が出来ない場合に、最低生活を保障する「最後のセーフティネット」としての機能を果たす制度であります。
我が国の社会保障制度は、国、都道府県、市町村が重層的に役割、責任を分担し、国民一人一人の需要に応じた所得保障や医療・福祉サービスの提供に務めていますが、生活保護制度もその例外ではありません。
現行制度では、国が生活保護基準を設定するとともに、4分の3の費用負担を行う一方、地方自治体が保護の支給決定や被保護者の自立助長を行うとともに、4分の1の費用負担を行っています。
しかし、現行の保護基準は、国が、消費水準や家賃等の地域差を勘案して定めていますが、消費水準や家賃等は地域により格差が大きく、より適正な生活保護の実施のためには、保護基準の設定を地方に担っていただくことが不可欠であります。
また、生活保護制度は、最低生活の保障のために保護費を支給するだけでなく、高齢者や精神障害者などが入院するのではなく地域で生活できるようにすることを含めて、他法他施策を積極的に活用して被保護者の自立を助長することが求められています。
自立を促すためには、他法他施策を積極的に活用しなければなりませんが、他法他施策を活用して広範な対象者に対して自立を促進することを目的として、昨年提案し、本年度から導入した自立支援プログラムがさらに効果を上げるためにも、これらの他法他施策と生活保護制度との国庫負担率等との整合をとる必要があります。さらに、被保護者の実情把握や評価、自立のための支援・指導の方法は自治体毎に工夫を凝らし得るものであり、また、自立助長に活用できる社会資源やネットワークも地域ごとに様々であることから、自治体の役割が極めて大きいものと認識しています。
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見直しの基本方向
これらの観点から、今回の見直しにおいては、
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都道府県や保護の実施自治体への権限委譲や役割・責任の拡大 |
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このような権限や役割・責任に応じ、また、他法他施策の国庫負担率・補助率とも整合のとれた地方の財政負担の拡大 |
の2つを基本的な方向と考えています。
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具体的な見直し案
今回の見直しは、生活保護については、生活扶助等の扶助の種類ごとに、現状の課題を踏まえ、国と地方の役割・責任の在り方を検討し、それに伴い、財政負担を見直しています。
(生活扶助)
生活扶助については、現在、6段階の保護基準を設定し、全国の地域を6段階のいずれかに当てはめる方式を採っていますが、地域事情をより的確に反映させるため、国が定める指針のもとで、生活扶助基準の設定権限を都道府県に委譲することとします。さらに、基準設定に関する都道府県の役割・責任の拡大や、自立助長に関する地方の役割・責任を重視するとともに、他法他施策の国庫負担率等との整合をとるために財政負担を見直すこととし、都道府県が4分の1の費用負担を行い、国の費用負担を2分の1とすることとします。
(住宅扶助)
住宅扶助については、現在、家賃等の地域差を勘案して、都道府県、政令指定都市、中核市ごとに、住宅扶助基準を設定しているため、408通りの基準が設定されていますが、地域事情を的確に反映させるため、住宅扶助基準の設定権限を保護の実施自治体に委譲することとします。さらに、これに伴う役割・責任の拡大と、住宅扶助費を金銭で支給することに加えて、自立支援・就労促進のための機能を備え、地域資源を活用した住まいを現物のサービスとして提供できるよう道を開くことに伴って、財政負担を見直し、住宅扶助を一般財源化します。
(医療扶助)
被保護者は、国民健康保険の適用除外となっていることから、多くの被保護者の医療費は全て生活保護制度によって賄われているため、医療扶助の費用は生活保護費の過半を占めています。
医療扶助については、病床数等の医療提供体制と相関があることから、平均在院日数の短縮、病院から在宅への復帰促進等を図るために、医療計画や介護保険事業支援計画を策定する都道府県の役割・責任は大きいと考えられます。また、国民健康保険や老人医療、介護保険でも都道府県が費用を負担しており、それとの財政負担の整合を図ることも必要です。これらにかんがみ、都道府県の負担を導入し、都道府県が4分の1の費用負担を行い、国の費用負担を2分の1とすることとします。 |