05/10/28 第9回医師の需給に関する検討会議事録             第9回 医師の需給に関する検討会 日時 平成17年10月28日(金)            10:00〜 場所 経済産業省別館1014号会議室 ○矢崎座長 ただいまから「第9回医師の需給に関する検討会」を開催いたします。各 委員の皆様方には、大変ご多様のところをお集まりいただきましてありがとうございま す。初めに、事務局から異動がございましたので、その紹介をよろしくお願いします。 ○宮本補佐 皆様、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。8 月26日付けで、事務局に異動がありましたので紹介させていただきます。厚生労働省 医政局長の松谷有希雄でございます。 ○医政局長 松谷でございます。よろしくお願い申し上げます。前任の岩尾が8月末で 異動になりましたので、私が後任で参りました。一部の先生には前からお付き合いいた だいていますが、初めての方もおられますのでよろしくお願いします。少し遅れて参り まして、失礼をいたしました。ご存じのとおり、先週医療制度の改革の試案を厚生労働 省の試案として出しまして、本日のご検討もそれに大いに関係するわけですが、その関 係でいろいろ検討するというか、問合せがございまして、ギリギリまでかかりまして失 礼いたしました。 ○宮本補佐 宮本と申します。中村の後任で参りました。どうぞよろしくお願いいたし ます。 ○矢崎座長 それでは本日の委員の出欠の状況をお願いします。 ○宮本補佐 本日は池田委員と山本委員が、ご都合によりご欠席の連絡をいただいてい ます。江上委員と水田委員は連絡をいただいておりませんが、後ほどお見えになるもの と思います。 ○矢崎座長 初めに事務局から資料の確認をお願いします。 ○宮本補佐 資料1から資料4、参考資料1、参考資料2、以上が配付している資料で す。その他に、次第、座席表、メンバー表をお配りしております。 ○矢崎座長 これから検討を始めたいと思います。前回検討会の中間報告を出させてい ただきました。その後、いろいろ行政においても動きがありますし、委員から医師の需 給に関しては、しっかりしたエビデンスに基づいた議論を踏まえた上で、結論を出した いというご要望もございましたので、いくつかの資料を事務局に用意していただきまし たので、その説明をお願いします。 ○宮本補佐 行政に関連した動向を手短にお話したいと思います。参考資料1「医師確 保総合対策」ということで、今年の8月11日に、地域医療に関する関係省庁連絡会議 を、厚生労働省、総務省、文部科学省、オブザーバーとして防衛庁に参加いただきまし て取りまとめたものです。  こちらは皆様方に取りまとめていただいた当検討会の中間報告、へき地に関する検討 会での報告に基づきまして、各省庁で取り組む方向性をまとめたものです。この場でご 議論をいただいた内容を、基本的にはそのまま受けてまとめたものです。今後、この内 容に従って、行政としても取り組んでいきたいという内容になっています。  参考資料2については、当事務局としての医政局医事課で、概算要求中の事業の1つ です。女性医師の再就職支援といったことが課題になっています。対応する事業として、 女性医師バンク事業を全国に2箇所、再就業を希望する女性医師に対して、職業斡旋、 採用に至るまでのフォローなどを行っている事業です。それから「再就業講習会経費」 ということで、現場への就業を希望する、一旦退職された女性医師に対して講習会等を 開催すること。就職斡旋を行っている主体は医師会、地域医療振興協会、自治体病院協 議会といった所と連携して取り組むための運営協議会経費を要求しているところです。 こちらは内容を精査して、また財務当局との相談もした上で、年度末の確定に向けて精 査を続けていきたいという状況です。以上が、行政としての動きです。  資料1と資料2については、統計資料といいますか、これまで話題になっていた基礎 的なデータについていろいろご要望がありましたので、そういったものに対応するもの として紹介いたします。  資料1は、10月6日に公表された医療施設調査・病院報告のまとめで、毎年作成して いる資料です。当検討会に直接関係するところを抜き出して紹介いたします。5頁目、 6頁目では、病院、診療所の年次推移をまとめてあります。診療所は、1,000ばかり前 年よりも増えて、97,051施設ある状況を示しています。病院は少しずつ減っている状況 で、全体で9,077です。これを年次推移で表したものが6頁目で、いま申し上げたこと が長期的にも傾向としてあるということです。  さらに関連したものが、統計表11です。医療施設調査は、毎年病院や診療所の設置 や廃止について、そのたびに報告をいただくことになっています。ですから、増減とし ては、例えば診療所としては1,000ずつ増えているということですが、その中には開設、 廃止・休止があり、その差引きの差が1,000であるということです。  真ん中の欄が一般診療所です。平成16年では、4,984施設の開設及び再開があった一 方、廃止と休止が3,983施設で、この差が1,000施設です。経年的に見ていくと、平成 14年が5,636で、最大の数値になっています。少しずつ増えている印象は確かにありま すが、全体としては4,000〜5,000の間に納まっています。皆様方からのご意見の中で、 大量の医師が病院から診療所に移っているという話がありましたが、確かに5,000人の 数字は少ない数字ではないですが、急に始まった傾向ではなくて、ドクターのこれまで のライフコースといいますか、就業の形態の変化と一致するもの、これまでもそうであ った、というものがここしばらくの間も同様に続いているということです。  資料2については、これまで説明してきた内容の見方を変えて、資料を焼き直したも のです。3師調査のうち、医師調査の平成12年と平成14年に行った集計の方法を少し 変えて、5歳きざみのスケールを、平成12年においては2歳若返ったスケールを取っ て、5歳ずつまとめています。右と左のそれぞれの欄は、同じ世代の人たちを見ている ことになり、例えば平成12年末で33〜37歳の人たちは、2年後の平成14年末では、 35〜39歳の枠に一致していますので、同じ世代の人たちが病院と診療所の関係でどうい う関係になったか、世代全体としては増減がどのような関係になっているかがわかりま す。  トータルとしては、平成12年末で23〜27歳、平成14年末で25〜29歳でのところ で世代としては増減がいちばん大きく、12,211人が増加しています。、おそらくほとん どの方は学校を卒業して新規にドクターになられた方々と想定されます。ほとんどの方 は、病院の従事者です。まずはドクターのコースとして、大学と市中の病院と含めてで すが、病院の従事者になられることがドクターのキャリアのスタートであるということ です。  そのあと年齢階級の増減は小さくなり、退職と就職の差が、全体としてはあまり変わ らない。その後、病院の従事者の数が少しずつ減っています。そのことは診療所の従事 者が増えている傾向と同時に各年代の中の増減で見えると思います。  平成14年末で40〜44歳のグループでは、病院と診療所の増減が最大で、1,731人が 病院から減って、診療所の従事者が1,733人増えています。年齢が上がるに従いまして、 病院から診療所に移る数は徐々に減っています。一方で、年齢階級増減として、マイナ スの幅がだんだん大きくなっています。平成14年末で75〜79歳のグループでは、世代 として△1,700人です。年齢のグループとしていなくなった世代というのは、年齢によ り退職されているのではないか。  医師がどこへ行ったのかという話がありましたが、全体としては新規に卒業された方 は病院に就職されて、徐々に診療所に移られているということにあります。  近年、医師数の増加が少しとどまってるということは、皆様もご承知だとおもいます。 年齢が高い世代に、ひと塊でたくさんの先生がいらっしゃる世代の先生方がいま退職期 を迎えて、人数として減っていることが、寄与しています。これは当検討会でも、いろ いろな形で説明させていただいてきましたが、本日は少し見方を変えて紹介いたしまし た。以上です。 ○矢崎座長 ただいまの参考資料については、私どもの検討会の中間報告などに基づい た関係省庁の連絡会議での具体的な総合対策と、医療再就業支援事業の具体的な概算要 求を伴った内容についての資料です。いま事務局からのご説明は、主に医師不足で、病 院から医師がいなくなってしまったと。その医師がどこに行ったかということで、いま まで診療所を開業される先生が大量に多くなったのではないか、ということを実際に検 討したデータが、いまのご説明の主なところです。  そのほかの病院の病床数の規模の変動などは、資料1、資料2です。膨大な資料でご 質問を受けると言ってもなかなか無理かと思いますが、追い追い、資料の中身も検討を いただいて、ここで何かご質問がありましたらお受けしたいと思います。 ○泉委員 確認の質問です。医療施設調査の統計表11ですが、診療所の開設には全く 新規の開設と、医療法人になるときの形式的な廃止と開設があると思いますが、その両 方、つまりダブルカウントされているのでしょうか。 ○宮本補佐 わからない点がございましたら、また確認させていただきます。 ○矢崎座長 そのほかにございますか。 ○小山田委員 病院の勤務医、開業をしている方の動向はわかりましたが、特に地理的 条件の悪い私ども自治体病院での調査では、この2年の間に約30%の病院が、実際の人 数が減っている。ですから、地域、あるいはその病院の有り様によって、かなり違うと 思うのです。そんな感覚を持っています。 ○矢崎座長 病院側の感覚と、このデータは必ずしも一致していないのではないかとい うことです。事実はこういう事実だということです。その他にいかがですか。それでは、 今日は前回の検討会でも長谷川委員から、国際的なデータを含めてお話をいただきまし たので、もう1つおさらいの意味で、長谷川委員から説明を再度いただきたいと思いま す。  ご提出いただいた資料3を参照しながら、パワーポイントの図を見てお話を伺います。 どうぞよろしくお願いします。 (パワーポイント開始) ○長谷川委員 前回は国際的な比較でしたが、今回は日本国内の分析についてお話いた します。資料3、レジュメは2種類あり、35頁の部分で切り離したらわかりやすいと思 いますが、パワーポイントの説明ということで作りました。この分析は基本的には前年 度の特研で行った研究と、今年度に入って少し新しく作り替えた部分を含めて、ここに お持ちいたしました。  基本的には現実の動向、数回の検討委員会でも、医師は将来過剰なんだというご議論 があって、それに関する大まかな動向の分析です。それから、実際の不足感に関するい くつかのデータです。現状を分析して、何が不足なのか、そのポイント、さらにはその 背景、最後にそれらを取りまとめて政策課題としてどういうものが求められるかをまと めて出したので、ご参考にしていただければと思います。国立医療・病院管理研究所と 国立公衆衛生院が3年前にできたものです。なかなか訳がわからないという方もおられ ます。  1986年の佐々木委員会、1994年の前川委員会、1998年の井形委員会ともに、将来は 医師過剰である。したがって、10%の削減が必要だと繰り返し確認してきた経緯があり ます。それに関連して、供給の変化を見ますと、最近は少し病院から診療所に増えが移 っていますが、極めて着実に医師数は増えています。さらに無医地区も着実に減少して います。  需要の変化を見ますと、まず外来ですが、全数として病院ならびに診療所の外来患者 は、1980年ごろまでは、比較的着実に増えてきました。さらに10年間ぐらい増えまし たが、実は診療所の患者数は減って、両方を合わせて過去20年間横這いです。私もこ のデータを見るまではよく理解していなかったのですが、少し驚いていますが事実そう なっています。さらに診療所は診療所の医者、病院は病院の医者で割り返しますと、こ のようなデータになります。病院の外来もわずかに減って、最近は急激に減っています。 診療所の場合も患者は急激に減っています。  原因はいろいろ考えられますが、例えば処方せんが1週間から1カ月に延びたとか、 医療費の自己負担増等で、外来の受診が抑制されることがあるのか。事実、人口当たり で見ても、年齢階級別に、小児を除いて特に高齢者は減っています。ちょうど自己負担 増の導入を期に一致して減少しています。  入院を見ると、コンスタントに取りまして、一般診療、有床診療所の入院は一定にな っていますが、両方を合わせると増加しています。ところが医師1人当たりに換算する と、病院医師数は増えていますので、1970年ごろまでは増加しましたが、それ以降は減 少して、1985年以降横這いになっていたところが、過去10年間ぐらい少し増加して、 ここ数年間は減っています。急激にここ5年間ぐらいの間に、入院患者数が増えた傾向 がないことがわかります。  地域と診療科に関しては、残念ながら関連調査の2002年の診療科データがありませ んので、1999年までのデータですが、主要な診療科を合わせて医師1人当たりの入院患 者数は減少しています。地域も、47都道府県の変動係数、標準偏差を平均値で割り返し た数はコンスタントに低下しています。  結論としては、医師数は全国で捉えると順調に増加して、無医地区は県別ばらつきも 減少し、需要に対して供給が足りないという証拠は認められない。ただ、病院医の負担 は少し増えているのではないか。  いろいろなアンケートを取りますと、1990年代の後半から不足感が広がっています。 人材派遣の会社が1980年代よりアンケートしたものを見ると、図にあるように、だん だん「医師過剰ではない」という答え方が増えてきています。特に1990年代の後半か らは著しいです。また、私どもの研究で、学会と大学にアンケートを出しましたら、も ちろん過剰と答えた学会もありましたが、不足と言っている学会も多数ありました。ま とめますと、医師数は着実に増えているにもかかわらず、不足感、あるいは不足論があ る。  次に不足の実態を調べてみました。どうも診療所、外来に関してはあまり不足という ことはないようですので、入院を中心に見ていきます。現在いろいろ探しましたが、勤 務医全体に満遍なくアンケートしたものはなくて、大阪府の医師会でかなりランダムで やった結果がありましたので、それを見ますと、高齢者を除いて約90%以上の方が、か なりの超過勤務です。特に若年層は40時間に及ぶ長時間勤務の方もおります。小児の データもありますが、やはりこれ以上に超過勤務の方は多いのですが、それは1つの診 療科に過ぎませんので、全般的に言うとこうなっています。  退院患者を見ると、絶対数は増えていますが、さらに高齢者が増えています。患者数 の中に占める高齢者、すなわち合併症が多く、重症患者が多いことが示唆されます。高 齢者の手術は、随分増えております。1980年代半ばは40万人ぐらいでしたが、180万 人で約4倍に増えています。手術死亡率は減っていますので、おそらく技術が普及して、 安全になったのでやっているということがあると思いますが、適用が増えています。全 身麻酔は15年間で増えていますが、増えているのは主として300床以上の病院で増え ていることがわかってきました。  そこで病院の規模ごとにどうなっているかを分析してみました。あらかじめ病床当た りの医師数の変化と、1人当たりの医師が取り扱う年間の退院患者を見ると、次の図に なります。コンスタントに増えてきましたが興味深いのは、2000年以降は少し増えてい ますが、あまり変化はないということです。大体、全国平均で、1人の医者が診る退院 患者は80人前後になっています。それを病床規模ごとに見ると、病床当たり投入され ている医師数は、小病院ではオーバーヘッドに医者が必要ということで、比較的投入医 は多いのですが、100床、200床ぐらいの中規模病院では、むしろ非常に低くなり、300 床、400床、500床となって逆にまた増えてくるという傾向になって、しかも近年、特 に大規模病院で着実に増えています。  医者たちの退院患者を見ますと、小規模病院の場合、平均退院数が多い、あるいは医 師数が少ないこともあり、全国平均の80に比べるとかつては多かった。最近は中小病 院、80ぐらいに収斂してきている。むしろ減ってきている。ところが大規模病院を見る と、1996年ごろまでは少し減り気味でしたが、ここ6年間、1996年〜2002年にかけて、 大規模病院にはコンスタントに取り扱っている患者が増えている。どうも大規模病院に 患者が集中し、重傷患者が集中しているという印象があります。  ちょっと込み入った分析をしてみました。X軸に病床当たりの医師の投入数をとり、 縦軸に医師当たりの退院患者数をプロットすると、300床以上の一般病院ではこのよう な形になっています。これは医師の生産曲線で、両方対数でやっていますが、たくさん 投入して、医者1人がどれぐらいこなせるのかというと、大体80人前後が全国平均で す。医師の投入が少ない所は、1人当たり、こなせる量も少ない傾向になっています。 大体、100床当たり10人、医師当たり0.1名から2名の間ぐらいにピークがあり下がっ てきています。なお、赤は、臨床研修指定病院です。  24床から99床の小さな病院では、先ほど見た明らかな形では見られず、小病院では いろいろな病院があるのではないか。100床〜300床までの間では低投入で、退院患者 数も少ない病院が多い。ケアミックスの病院が多い。300床になってきますと、高機能 病院は投入医が多く、0.1〜0.2ということは、100床当たり10人〜20名、300床の病 院は50〜60名の医師がいる所が多く、全国平均では年間80人ぐらいの患者を診ている ということです。ところが500床を超すと、同じような傾向ですが、さらに多数の医師 が存在する所では、むしろ退院患者が減ってきています。こんなふうな医師の生産曲線 を描くことができます。  これを解釈すると、あまり数が少ない投入をすると、うまく医者を使われず不効率に なります。ですから規模の経済、100床当たり10人〜20人ぐらいの投入をすることが 機能が高いことが示唆されます。結論づけるには、もっと詳しい分析が必要だと思いま す。大変興味深いのは、右側にかなりきれいに落ちていく部分です。これは高機能病院、 臨床研修指定病院が多いのですが、重傷患者を扱っているので、なかなかたくさんの退 院患者を1人の医師が診れないと考えるのか、それとも研修医の生産性が低い。その辺 の細かい分析は必要かと思います。  同じようなことを国際比較していきたいのですがデータがありませんので、日本は一 般病床を使っていますが、全病床と医師数があり計算は可能です。これは意味するとこ ろが難しく、診療所も病院も両方の医師を含めた数を病床では理解していますので、ど ういう意味があるのかはちょっとわかりませんが、日本は世界最低。日本は世界で最高 の病床数ですので、こういう現象が起こるのだと思います。  もう少し意味があるのは、退院回数を医師数で割り返す。これも実は病院医師数だけ を取ったものはなく、全医師で割ると、このような形になります。先ほどの病床当たり の実数よりもばらつきが少ない。日本は割と平均的になっています。少し下めですが、 まあまあいい所に位置しています。専門医が主として病院で働いていると考えた場合に は、右側の図になります。大体同じような位置に日本は存在しています。これをどう考 えるのか、日本は生産性が低いと考えるのかどうなのか。外来になると、日本は圧倒的 に多い。全医師数当たりの外来院回数は、日本は全世界平均の数倍になります。医師数 当たりの外来患者数も大変多い。日本は世界一になっています。  そこで手を尽くしまして、医師数がわかっている国の日本、ドイツ、アメリカ、イギ リスのデータがありましたので並べてみました。アメリカと日本はほぼ一緒で、ドイツ とイギリスはほぼ一緒で、100床当たり10名ないし20名になっています。アメリカの 場合の病院の医師というのは、実はレージェント、病理医とか放射線医のようなことが ありますので、開業している医者が外部から来て、患者を診る診療形態になっています ので、それを勘案するとアメリカは、ドイツ、イギリスなみの形になってくるのではな いか。  医師1人当たりの退院患者数を見ると、右側の図になります。日本は平均80人です が、イギリスは240名ですから約3倍ですので、これをどう捉えるのか。1つの考えは、 日本の病院の投入医は少ない。どうも生産性が低い、病院経営の問題なのか、病院機能 の分化の課題を持っているのか。高齢者の数、患者の重傷度は4カ国ともあまり変わる とは思いませんので、何かそのようなことが示唆されます。  全体としては何とか充足の方向に向かっているにもかかわらず、不足感があり、一部 では実際に不足であることがわかりました。なぜこのようなことになっているのか、4 つほど分析してみました。第1番目に大学院生は増加しています。この14年間で、約 7,000人の増加がありました。この部分があまり臨床では働いていない。2番目は、高 齢者、退職。宮本補佐からすでに話がありましたので飛ばします。戦争中に、軍医とし て教育を受けたグループが3万〜5万人いたと言われていますが、このグループがいま リタイアしています。1972年には診療所のお医者さんとして活躍し、日本の医療を支え ていたのが、いまはほぼリタイアしてきた。したがって、1980年後は登録数と増加数は あまり変わらなかったのですが、おそらくそのグループがリタイアしてきたので、近年 では卒業しても3,000人ぐらいしか増加しない。  3番目に女性医師の問題があります。黄色が実数、人口当たりで働いている女性医師 です。赤が、その年に登録された医師、ブルーが入学定員です。当然、入学定員と登録 数がほぼ6年間ずれているはずですが、実際に働いている女性医師は、大きなプールの 中で薄められてきますので、ゆっくり増えています。実際増えているのは若い層の医者 です。  気になるのは、入学定員がここ数年間減ってきつつある。つい最近このデータを入手 して、それまではフラットのような感じでしたが、最近は減ってきていることがわかり ました。これがどう影響するのか。選抜者に意図的な意図があるのかどうなのか、大変 興味いところです。  スライドを見ていただくと、女性医師と男性医師の間では、実際に働いている方と医 師登録等を割り返して見ると、こんな感じです。卒後、5、6年までは男性も一遍減る のです。女性ですと、ここが育児、ないしは他の理由で働いていない。回復して、女性 は長生きで、男性のほうが早く死にますので、こういう構造になります。  勤務医の状況はだんだん減っていきまして、診療所の医者が増えています。ところが 女性の場合は、病院勤務が男性に比べて早く減り、診療所勤務に移行する傾向がありま す。一部、早く減っているのは、働かない方もおられるのではないかと思います。これ は男女の差を数で計算しましたら、大したことはなく数千人でした。  診療科的には、眼科のように50%に近いところから、泌尿器科のようにほとんどいな いというところまでばらつきがあります。大体、上位5位というのが、眼科、小児科、 麻酔科、婦人科、皮膚科という、比較的女性に人気の多い診療科だと見ています。した がって、これを見ると、おそらく眼科のインパクトというのは、かなり特定の診療科に 影響があるのだと思います。分析途中ですから、全体としての量は、思っているよりも ないという感じがしています。  診療科のばらつきに関しては、お手元の表等を含めて、あまり的確なエビデンスがあ りませんでした。したがって、いま口頭で仮説を申し上げます。一部の診療科では、医 師が減るということよりも、患者が増える。端的には小児科の場合、個人的な1サンプ ルで恐縮ですが、小児科の先生とお話したら、コンビニが広がっていくのと比例して、 夜忙しくなっている。若いご夫婦が、社会全体で夜型になってきたのに対応して、夜間 の診療に移行されてきた、あるいは数自身も増えている。一方、麻酔科は麻酔が増えて いって、総体的に減ってきている。したがって、需要と供給を丁寧に見る必要がある。 もちろん足りない所もあるのでしょうが、必ずしも供給が減っているということではな いと思います。  全体的な傾向として、機能分化と集約の問題があるのではないか。実は1993年に平 均在院日数と病床数、有床診療所も入れて、こういう分析をしたことがあります。これ を見ると、小さな病院では平均在院日数が短く、外来、入院費が多い。大きな病院では、 平均在院日数が短い。そして50床〜300床ぐらいの所に平均在院日数が長い病院があ る。これらをそれぞれ当時の総合病院、老人病院、入院がない3.1の病院を赤、ブルー、 グリーンで見るときれいに分かれて、どれにも属さない黒い病院が真ん中に存在するケ アミックスの病院なのでしょうか。  これも図はなく、パワーポイントに付け加えたのですが、歴史的に平均在院日数がど の病院ともはっきり分かれていなかったのが、1970年代後半以降、大型病院の平均在院 日数は低下し、中型病院は増加し、つまり、50床〜300床までの病院は、このように増 加して、2つに分かれてきて、小型病院は割とずっと少ない。つまり、日本の病院はこ の間小型病院がだんだん大きくなって、高機能病院に変わってきたのですが、どうも一 部の病院はなかなか急性期になれず、特に1970年代以降、技術革新に伴って人事や設 備投資を要したので、未分化の段階にとどまっている。一方、高齢化によって、社会的 要請で老人ホーム的な機能を果たすに至っている、という仮説が出来上がるのです。そ れが現在進行中であると。  特にこの10年間は、行政的な政策でそれが強化されてきています。例えば地域医療 支援病院で、急性期病院加算や、手術施設基準です。また療養病床型の転換期です。こ の10年間で矢継ぎ早にさまざまな政策を採られてきています。また、医療事故や名義 貸事件というのがあって、一般に病院の機能が強化、分化されてきたという歴史があり ます。最後に、病院の独法化や卒後研修が、昨年開始されました。特に中小病院から大 病院に人が移行してきたところに、最後にドンと臨床研修の形があったということで、 不足感がここ数年間で強調されているのではないか、というのが私が分析したようなこ とです。  そういたしますと、これからの需給をどう考えていくか。念頭に置いておかなければ ならないことは、長期的展望、短期の課題、中長期の課題です。長期的には、医学部の 入学定員はこのままですと、どんどん少子化になって、来年から日本国全体の人口は減 り出すのですが、24歳のときの医学生の数、もし7,000人が卒業すると、130〜140人 ぐらいに1人が医者になる。これを多いとするか、少ないとするか。これを引っくり返 すと、実は人口10万人に対して600人です。直感的には多いのだと思われます。  もちろん人口全体としては薄まりますので、もう少しその倍の200人前後に1人とい うことになるわけです。実は医学部定員をシミュレーションしてみたのですが、定員を 増やしても約10年経たないと、卒業しても使いものにならない。一旦増やすとずっと 続くのです。かなりきれいに出てきました。  そのことを念頭に置いて考えてみると、諸外国で前回見た論調。需要では、高齢化が 進み、疾病が増えてきている。これは日本にも当てはまる。女医の増加は、日本にも当 てはまりますが、諸外国ほどでもないかもしれません。若年医師の増加は当てはまりま す。高齢者医師の退職も当てはまりますが、これはここ数年間でなくなっていく可能性 もあります。労働基準法をどう考えるかというのは?です。諸外国でも問題になってい る外国人医師の流入というのは、突然意思決定をして、日本が近隣の外国人の医師を流 入しない限りは批判はないのではないかと思います。  前回の検討委員会で基本的な方針をまとめたわけですが、中長期的には医療システム の効率化、医師以外の職種の参加協力を得て、うまいミックス、Skill Mix、技能ミック ス、そういったことを考えていくことが大変重要です。実はOECD各国では、そのよ うな研究が大々的に行われています。その一端をご披露します。特定集団における機能 強化ということで、看護師のトレーニングをして、慢性疾患の患者を管理すると、医師 よりも丁寧に診て時間が長くなって、管理の結果もよかったと。ただ、丁寧にやったの で少しコストがかかったという研究も進んでいます。  こういうものを見ていくとつくづく思うのですが、やはり医療システム全体として、 総合的に制度を変える、Skill Mixというものを想定する。なるべく外来は病院から診療 所に移し、入院になるべく医師を引っ張ってきて、病院の機能を強化していく。そうい った総合的なシステム設計の中に医師事業を位置づけないと、なかなか解決できないと いう印象です。  機能分化、集約化は大変重要な課題で、今後、高機能を要するような疾患、特にがん、 心臓手術等は高度センターで、長期の継続的なケアの糖尿病、高血圧等は自宅まで宅配 するぐらいの利便性を追求する。この2つの分化というのは重要で、特に高機能の病院 については、医療の技術集積、施設基準等で話題になりましたが、もう1つは規模の経 済で、やはり年に10回しか開心手術をしないのに、人工心肺を持っているのは大変不 経済ですから、効率という観点からも、高度センターに患者を集めることが重要ではな いか。そうしますと、質と効率はこのように上がってきますが、数が減るとどうしても アクセスが減ってくる。公平さ、アクセスの矛盾が起こると思っています。  まとめますと、総体として医師は充足傾向、ただここ10年ぐらいで病院や診療所、 地域、診療科等でギュッと寄せてあげるような偏在が起こっている。おそらく政策的誘 導もあったのではないか。そんな中で特に目立つのは、大病院への重傷患者が集中して、 病院への負担が増えているということです。その背景には、病院機能の強化、分化の誘 導が存在しており、さらにその背景には、大学院や高齢者医師の退職、若年医師の選択 の志向、女性医師の増といったものがあるのではないか。  そこで政策課題としては、病院医の問題を少し考えていく必要があるのではないか。 病院の機能分化が低いので、マネジメント等でも非効率の部分があるのではないか。生 産性が少し低いのではないか。これは仮説です。医学部定員増による解決というのは、 大変ゆっくりしたものです。即効がある解決には、就業場所の移動、他職種の協力によ るSkill Mixという考えが大変重要です。いずれにしても、システム全体で不足に対応す る必要がある。そのときに考えなければいけないことは、アクセスと質のバランスとい ったことです。以上です。 (パワーポイント終了) ○矢崎座長 どうもありがとうございました。長谷川委員には、医師の需給を考える基 礎となるデータを、できるだけ集めて網羅してほしいというお願いで、以上のようなデ ータをいただきました。もちろん、長谷川委員の考え方もその中に入っていますので、 すべて客観的というわけではございません。いまのご意見に対してご質問を受けたいと 思います。 ○吉村委員 ただいまのは総体的には大変時宜を得たご報告で同感いたします。1つは、 大学院生が非常に増えているということですが、おそらく医師はあまり変わらないので はないか。むしろ、医師以外のいろいろなph.D.とか、他学部の出身者が増えている ような印象があるのですが、その辺はいかがですか。 ○長谷川委員 その辺はもう少し細かく分析すればあるかと思います。先ほどお見せし たように、男性、女性含めて、卒後6、7年間ぐらいは低下しています。これが大学院 と関係があるのか心配しています。男性も女性も、卒業してから5年か6年間ぐらいは 下がってきています。直接のことは分析しておりません。 ○古橋委員 6頁の「需要推移」という中で、医師1人当たりの患者数が出されていま すが、患者数対医師1人との関係だけで、1人当たりの患者の医療需要と言っても、医 療の濃さ、高レベル化、あとは患者1人にかかる医師の業務の時間、わかりやすい例で 言えば、インフォームドコンセントもあれば、高齢化によるかかわりの時間の多さもあ ります。そういうものとの相関がないと、単に頭数だけの考え方では、この時代の医師 不足の問題に切り込めないのではないかという気がします。  もう1つは、厚生労働省から出された医師の年齢階級別の医師数の変動という中で、 25歳〜29歳のところがいちばん増えて、数割合は3番目ぐらいですが、この年代はあ る意味で医師としての修練中と言いますか、長谷川委員は「使いものにならない」とい う表現をなさいましたが、修練中の階層の方の増加が平成14年度でもっとも多く、こ の層にかかる育成のためのエネルギーも、指導量も多いと思うのです。  昨日から日本病院管理学会が行われ、そこの発表ですと医療現場で医師の指示変更の 多発が、看護業務量を増加させている切り口で報告がなされておりました。この年齢階 級医師数の多いことが負担になっているのではないかと思うのです。その辺りはどのよ うに分析をしておられるか、人にあったら教えていただきたいと思います。  もう1つ、日本における外来受診回数の圧倒的な高さが出されました。社会経済生産 性本部が出した「国民の豊かさの国際比較」で、健康指標を見ますと、日本はトータル では8番目、9番目がドイツです。ドイツは外来受診でいきますと、日本の3分の1の 頻度と、いまの発表で知りましたが、外来受診回数と国民の健康指標や有病率の辺りの 相関はないのかどうか。暴言になるかもしれませんが、日本の国民は、外来をオーバー に受診しているか、していないかという辺りを考える点でも、1つの要因になるのでは ないかと思います。3点ご質問させていただきます。 ○長谷川委員 医療政策上、大変重要な課題を3つ並べられて、そのためにはそれぞれ 大きな研究が要るのだと思います。私がやってきた研究をつなぎ合わせて簡単にお答え したいと思います。  外来の件数が多すぎるか少なすぎるかです。なかなか難しいもので、実は日本の人口 当たりの入院回数は世界で最も低く、その原因は何だろうかという大議論がありました。 私は47都道府県のデータを用いて、医師数、外来回数、処方せんの発行数などの分析 をいたしました。  と申しますのも、たくさん、外来をきちんと診るから入院が少ないというご議論もあ ろうかと思います。そうしますと、あまり相関はありません。非常にラフな分析なので 結論ではありませんが、外来患者数と入院回数は相関がなかったと。したがって、これ をどう捉えるか。不必要かどうかということよりも、診療の仕方によって工夫をすれば、 例えば高血圧等、もう少し診療間隔を延ばすなどということをやるだけでも、結構外来 患者は減ってくる、適正されるのかなという印象は持っております。結論はなかなか難 しいようです。  2番目に、時間ですが、あとでこの検討委員会の先生方に是非お願いしたいと思って いるのは、病院内の医師の勤務時間調査です。医師需給を考える場合に、これがいちば んクルーシャルなことです。事程左様にほとんど研究はなく、しかもきめ細かなところ まで行っていないと思います。仮説としては大いにあり得ることです。  先ほど私は「使いものにならない」という表現をしましたっけ。そういう意味で申し たのではありませんが、特に卒業してすぐというのは、現場に慣れる時間がかかります。 しかし、一方、卒後数年以降は最も重要な戦力になっていて、そういう方が前面に出ら れて、あとは少しシニアな方がアドバイスをして診療行為を行う。医師のチームとして やっているのが日本の現状だと思います。ですから、若い人が増えるということは、ど ちらとも言える。つまり、負担が多くなって生産性が下がる可能性、逆に第一線の方が 増えたので、病院としては生産性が上がる。その辺はさらに検討が必要かと思います。 ○古橋委員 もう一点は、1人の患者にかかる業務時間が随分増えているから、単純に 頭数の対比だけでは医師の多忙性を。 ○長谷川委員 おっしゃるとおりです。ただ、外来のほうは医療施設調査の診療所の外 来のオープンの時間と、そこに訪れた患者の数が把握できますので、それを分析した結 果は、むしろ時間は少し減っている、ほぼ変わらないというか、1999年と2002年の分 析では、そんなに大きな変化はなかったと記憶しています。  病院のほうは先ほど申し上げた理由で把握をしておりません。その代わりに手術が増 えているとか、高齢者が増えているなどということをお示しして、間接的に多忙さは増 えていることを示しました。 ○矢崎座長 そのほか、いかがでしょうか。 ○小山田委員 1つ意見を申し上げたいと思います。いま指摘された労働時間ですが、 これはやはり必要な情報です。実は私の所で1,000病院について平成15年度に勤務時 間の調査を行いました。私はそれを正しいものだと思って、いろいろそれを引用してい たのですが、最近、内部から、この情報は当てにならないから使うなということでした。  と言いますのは、正確な情報を私どもに提供しているのか。情報が正確ではないとい う指摘がかなりあったものです。病院の思惑、ドクターの思惑などいろいろな思惑が入 らないような調査の仕方を何とか考えていただきたいし、私どもも今後はそういうこと を是非やっていきたいと思います。 ○長谷川委員 おっしゃるとおり、方法論的な課題があります。自筆の場合はどうして もバイヤスがかかる。したがって、タイムスタディを観察手法によって行うことが望ま しいと言われていますが、すごくお金がかかります。1,000万円単位のお金になってき ますので、残念ながらアンケートをやらざるを得ない。調査の設定によって、例えば、 労働時間を管理職のほうから調べたいというときには、少なめの報告も出ましょうし、 院長に対する報告では多めのほうが出てくるというバイヤスがかかってくると思いま す。今回はこういう会のために必要だということでやりますと、比較的客観的ではない かと楽しみにしており、それを先生方が経営上、お使いになったりするのにもいいのか と思ったりしております。 ○矢崎座長 医師の需給で、小山田委員が言われたような医師のタイムスタディの正確 なのが、今まで行われていなかったということで、この会として委員の皆様方にご協力 いただいて、できるだけ正確な、実際にベンチマークで観察することはできないので、 アンケート調査になるかもしれませんが、あとで長谷川委員のほうから詳しくお願いし たいと思います。 ○江上委員 30頁の「論調変化の理由」の、供給側の変化のところで、女医の増加の影 響に△を付けているのですが、なぜ△なのかを、もう一度ご説明していただきたいと思 います。 ○長谷川委員 比べますと、数が少ないので、少し時間もかかりますし、それほど大き くないのかなと思ったのです。それは判断ですので、影響がないということは全くあり ません。 ○江上委員 非常にいまは加速度的に増えているということと、育児休業を1年半に法 制上改正して延ばしたとか、いろいろの要因があって、今後かなり変化は大きいかなと 思います。 ○長谷川委員 医療規定が最近減っておりますので、どうなるかなと思っています。 ○矢崎座長 女性の国家試験の合格者は30%を超えていますので、そのことは考慮に入 れないといけないのではないかと思います。特に診療科によってばらつきがありますの で、そのことも考えなければいけないと思います。 ○水田委員 Skill Mixの問題ですが、どこまで誰が行うかと言うことが問題ではないで しょうか。現在自然にこのような問題が燃え上がってきているという感じがあるのです が、どのように分別していくかということ、また、それぞれの分野での教育も必要です し、それをきちんとやらないと患者満足度は上がりませんので、また問題が出てくると 思います。そこの所を検討しないとSkill Mixは進まないと思いますし、大切なことだと 思います。 ○長谷川委員 まさしくこの検討委員での課題なのだろうと理解しております。直感的 に申しますと、外来に関しては高血圧、糖尿病、メタボリックシンドロームが大量に増 えてきておりますし、2000年の高血圧の定義の変更によって1,000万人とか、去年で正 常高値が1,000万人と増えてきました。そうすると、いわゆる生活習慣の指導というの が決まります。例えば、保健師やその他の職種の方のチームと開業医がうまく組んだ Skill Mixにしていくとかしないと、現在の診療所の医師のマンパワーではとても無理と いうことになります。  院内的には手術がどんどん増えて、しかもかなりリスクの高いのもあるし、そうでは ないものもあると思いますので、看護師にお手伝いいただくというのが、1つテーマと して浮かび上がるのかなということで、すでに検討委員会では議論になっています。例 えば、そういうことがあるのかと思います。 ○吉新委員 長谷川委員のスライドの最後の「政策課題」の3番目の「医療システム全 体で不足に対応する必要有」というのは、具体的にはどんな内容ですか。昨日、実は自 治体の市長と病院の院長が見えて、近いうちに内科の医師がほとんどいなくなって、引 き揚げられてしまうそうです。そういうときに駆込み寺的に大学へ行ったり、いろいろ な所に行くのだと思います。  先ほどの二分化ではありませんが、病院が集約されて捨てられてしまうというか、置 いてきぼりを食って、次のステップへのチャンスを逃がしてしまう病院がどんどん増え ています。そのときに地域の住民に相当な皺寄せが行くと思います。激減を緩和するよ うな処置、場合によっては集約を図ったりする場合、地域のきちんとした合意形成など が非常に大事ではないかと思います。  需給を検討する委員会としては、総論的な話も大事ですが、もし数のコントロールを マクロにするとなると、ミクロの混乱を吸収する仕組みを作らなければいけないと思い ますが、そういうのは3番目と捉えてよろしいのでしょうか。 ○長谷川委員 お答えになったことか答えではないかと思います。 ○吉新委員 具体的にはどんなことをお考えですか。 ○長谷川委員 課題としては、緊急・超急性期の課題があります。それから中長期の課 題があり、超長期の課題もあろうかと思うので、それを解決するのに、それぞれ違うシ ステムを使わないと。例えば、全体の医師をどうするかというのは、基本的には医学部 をどうするかと。しかし、それは10年後ぐらいにしか始まらないということがありま すから、それを想定して考えなければいけませんが、その中で今度は中長期、さらには 超短期と。例えば、超短期ならびに中長期の場合には、地域全体のシステムで、どこに、 どのように機能を配分し、人を配分するかみたいなことがあると思いますので、まさし く地域医療計画や地域医療の協議会などを通して、役割分担や、効率を高める方法、I Tによる情報の共有化で、医師の労働力を下げるとか、いろいろなパーツが全部組み合 わさって不足をなくすことが必要という意味です。 ○吉新委員 私は文部科学省の地域医療に関係する協力会議のメンバーに入れさせてい だたいていますが、家庭医なりジェネラルプラクショナーを国として検討すべきではな いかという話も出ており、先ほどの左側の超専門性の反対側のコモンディジーズを扱う 部分は、教育という意味では相当曖昧になっているのではないか。そういうセクション がきちんと担保されると、へき地医療の問題や夜間の問題など、いわゆるコモンディジ ーズの対応が安定してきて、急に医療供給で大穴が開くというようなことはないと思い ます。いまのような専門医を中心としたドクターの構成をして医療の獲得を行っていま すと、突然地域にアンバランスというか、そういうのが起きやすいということがあって、 その辺のシステムも非常に重要で、この検討会として提案すべき重要なことではないか と思います。 ○長谷川委員 今回分析して、そのことを私自身も感じました。まず超急性期的には、 現在目の前で消えていく重要な、例えば、小児の救急や産科、麻酔科などはどうするか という目の前の課題があって、それは必須医療機能みたいなものを想定して、これだけ は確保していこうと。極論を言うと、中央に医師をプールしていたものをばら撒くとい うのは、強制的なものも含めて対応しないと急性期の必須医療機能を逸脱するのではな いかと。中長期的には大変おそれているのはプライマリケアの課題で、小児や産科は目 の前が大変重要とは言いながらも、数的には少ないでしょう。30万人医師がいたとして、 1万人とか5,000人の話なので、全体の中で泳げるわけです。ただ目の前にいる患者か らすれば大変だということなので、きちんとやらなければいけないのは間違いないので す。でも中期的に言うと、何とか診療サイドの誘導などでやれる。  ところが大きな塊、例えば病院の専門医の塊や、いちばん大きな問題点はプライマリ ーケアの地域のファーストコンタクトを医師の団塊の方が担っておられたので、この方 がリタイアしていくと、そのあとはボコッと穴が開くのではないか。したがって、プラ イマリーケアの医師をどう確保するかというのが、中長期のすごく大きな課題で、量的 にも非常に多いのです。 ○矢崎座長 そのほか、いかがでしょうか。 ○泉委員 個別の診療科についての分析はまだされていないということでしたが、産科 問題は、医療が崩壊しつつある地域がいくつか出ており、私どもの県でも一部で非常に 深刻になっております。  県内の産婦人科の先生方に調査したところ、産婦人科の先生でもすでに分娩を取り扱 っていない方が3分の1ぐらい、また、分娩を取り扱っている方と、扱っていない方で 労働時間が週当たり倍ぐらい違う。分娩を取り扱っている方では、将来も分娩を取り扱 いたい方が3分の1、条件によるという方が3分の1、やりたくないが2割弱です。単 に診療科別の医師の数だけでは出てこない危機感が目の前にありますので、将来的、中 長期的な需給の話とは少し別の観点ですが、必須医療機能のところを分析を深めていた だいて、地域でまさに困っている課題についても、ご検討いただきたいと思います。 ○長谷川委員 そういう超急性期の課題も、同時に中長期的な課題と併せて解決してい く必要があるのではないかと思います。1人で開業しておられるという形態を何人かの グループでやっていくということとか、病院との関係を変えていくとか、長年の課題か もしれませんが、いよいよそこに踏み込んだような提案をしていかなければいけないの かと感じております。 ○医学教育課長 1点だけ長谷川委員にお願いですが、いまの状況からすると、喫緊の 医師不足の課題の話は大変大事だと思いますし、医学部の入学定員は喫緊の課題の即効 薬にならないのも事実です。従来から需給の検討会の場合、入学定員に関係している省 庁からしますと、中長期的に見て、需要と供給をどう考えるかという点について先ほど 若干触れられましたが、こういう需要があれば供給について問題があるのか、ないのか という点についても、ある程度数字を出していただいて、それを踏まえて私どものほう の大学の関係で議論することが多いものですから、その点についてもう少しデータ的に 最終的には明らかにしていただけると、私どもとしては適切に対応できますので、その 点だけは是非お願いしたいと思います。 ○長谷川委員 厚生労働省のほうからも明瞭記を取って、本日一部お話申し上げると思 います。大変必要な情報があって、それがまだ足りないという状況ではあります。 ○矢崎座長 いまのご質問は、医師の需給の全体的にどうなのかというマクロと、地域 の偏在、診療科の偏在、あるいは病院から大学病院も含めて、医師がいなくなってくる という状況を、どのように捉えて解決できるかというケーススタディ的な議論と2つに 分かれると思います。  先ほど小山田委員が言われたように、病院での医師がいまは特定の診療科だけではな く、昔はグロスファッハと言った内科、外科の医師も、私ども国立病院機構の病院はそ ういう困難を抱えているのです。大学にお願いに伺うと、病院から大学の医局に人を引 き上げたという話なのですが、大学もそんなに人がいないのです。  先ほど長谷川委員からご報告いただいたのですが、まだ判然としないところがあるの です。大学の先生方のご意見もあると思いますが、この点についてはどうなのでしょう か。 ○宮本補佐 そういうことにも、できるだけ早く答えたいと思っています。最後に今後 の検討のスケジュールを相談させていただこうと思いますが、平成14年末に行った医 師調査の結果が11月末には出るのではないかと言われており、私たちもそれを早く知 りたいと思っています。それを開けてみれば、総論的に日本全体の姿ではありますが、 大学と病院と診療所のそれぞれの人数、異動が明らかになりまので、ご疑問の点のいち ばん新しい部分は、もうしばらくお待ちいただきたいと思います。 ○水田委員 それは平成14年の分ですか。 ○宮本補佐 平成16年の分です。 ○水田委員 平成16年ならいいのですが、14年だと全然話にならないと思います。平 成14年がいちばん大事で、16年からの部分ですから。 ○長谷川委員 今日のデータと先生の直感で、少しだけまだずれがあるというご指摘で しょうか、大学に関して。1つは、医事課長補佐からご指摘があったデータの問題の話 で、大きなイベントが2004年に起こっていますので、2004年から現在までのデータは いちばん欲しいのですが、全国的に見ても難しい。局所的には取れるのですが、公的デ ータは約2年後に発表することになっていますので、2004年がやっとこの秋に開禁とい う形でギリギリで入ります。普段ですと、来年の3月ごろに発表するのを、少し前倒し でいただけることになりタイムラグがあります。どうするかは私も大変苦労しています ので、先ほどのような調査には是非ご協力いただきたいと思います。  確かに大型病院、公共の病院と言ってもいろいろな種類があるので。特に大学病院の 場合に、いろいろな機能を担っているということで、今回は少し大ざっぱな分析をやり ましたので、個別の病院の先生方には、少し実感と合わないところがあったかもしれま せん。逆に何が合わないかをご指摘いただきましたら、それに合わせた分析もしたいと 思っています。 ○吉村委員 いま入学定員のことでご指摘があましたが、大学としては医師の幹細胞の ような卵を作っているわけです。今度はそれを卒業した方々が、家庭医を含めてどのよ うに分化していくかという問題と、さらにそれをどのように分布するかという3つの問 題があると思います。しかも分化の中で、開業の先生方が日本ではプライマリーケアを 担っておられると思います。その部分では非常に足りないのか、足りているのかです。 実際に勤務医については、いま非常に少ないという不足感がありますが、その中で特に 話題になっている内科も外科も、昨日耳鼻科の学会があったのですが、耳鼻科は新たに 入る人はほとんどいないという非常に危機感があります。  そういうことで医師の分化というか養成を。開業の先生がプライマリーケアを担って いるとしたら、それが専門医が開業しているから、プライマリーケアはあまり担ってい ないというのだったら、開業の先生方のプライマリーケアの能力を上げるとか、そうい うことも必要でしょう。逆に専門医が足りないのなら、むしろ専門医を養成する方法も 考えなければいけないと思います。  先日、日英医学協会があったのですが、イギリスではプライマリーケアをされる方は、 全部整っています。しかし、専門医が非常に足りないので医療がスタックしている。外 人の専門医をどんどん流入させているのだということで、いま専門医をつくろうという ことで、入学定員を増やしたということです。  イギリスの先生が、日本でも専門医でいろいろ問題が出ている、だから2年間のプラ イマリーケアの研修を入れたのだと言ったら、「なぜ専門医のところでいろいろ問題が 起こっているのだったら、専門医制度をもって充実させたらどうか。なぜ今さら日本で プライマリーケアをやるのですか」という質問を受けたぐらいです。ですから、家庭医 を含めた専門医と、さらに産科や、特に耳鼻科などマイナーなものも含めて、全科の医 師をいかに分化させて、バランスよくさせるかという問題は、いくら入学定員を増やし ても、どこかにどんどん行ってしまうようでは問題ではないかと思いました。 ○長谷川委員 おっしゃるとおりだと思います。全体モデルのところでお話しようと思 っていたのですが、日本全体の医師をどのように養成するかという意思決定のレベルと プロセスと、各診療科や地域のどこで働こうかという意思決定はレベルが違うのです。 端的に申しまして、前者は、まさしく国全体で予算を付けたり、こういう委員会の合意 を得て何人ぐらいにしようかということで、文部科学省のほうでの予算の要求等で決ま ってくるのでしょうが、どこで開業し、どのような診療科をするかというのは個人が決 めることです。しかも5、6カ所あるのです。  今日はモデルを作ってきましたので、ご披露しますが、卒後すぐ専門科を選ぶとき、 開業をするとき、定年を迎えるときに1個1個要件があります。社会全体に影響を及ぼ すことは不可能ではありませんが、最終的には個人個人の意思決定で決まるという、2 つの特性を考えなければいけないというところが、重要かなと思っています。 ○矢崎座長 まあ、吉村委員が言われた幹細胞から分化する。いま進路は個人の選択に 任されていますが、分化誘導するときには、いろいろなイニシエーターとか、そういう ものを加えないと、なかなか細胞は分化してくれませんので、そういう手立てが今後考 えられるのかなという気もします。  もう1つは、初期臨床研修の2年間はプライマリーケアですが、そのあとの専門性を 持った研修制度を、大学あるいは研修病院を含めて考えて、卒後の臨床研修と同じよう にプログラムを作って、そこに定員を決めることによって、ある程度医師の動向が把握 できますし、分化誘導の1つのファクターになり得るかもしれません。 ○本田委員 医師需給の検討会というとても専門的な内容のことが多くて、なるほどと 聞いていることが多いのですが、ずっと思っていたのは、実際に医療を受けに行く患者 側からの視点から考えたときに、例えば、先ほど長谷川委員のこちらには入っていなか った図で、高機能などんどん集約されていく病院と、糖尿病などの生活の中での医療と いうことに、これからはどんどん分かれていくのだろうというのは、確かにその方向な のかなと。医療も技術が上がって、そうなっていくのだろう、そうあったほうが効率的 なのだろうとも思います。  私は新聞記者をしているので、いろいろな読者や患者の話を聞いていると、どこに行 ったらいいのか、かかり方が全くわからないのです。このようになっていくのだと言わ れても、「でも、私はちゃんとした人に診てほしいの」というのがまず第一義にあって、 どこに行ったらちゃんとした人がいるのかも分からないし、患者のほうで大混乱を起こ していると思うのです。  そういう大きな政策の流れの中で、効率化とか必要な中で、例えば、地方で激変が起 こっている所が出てきて、そこでまだ患者たちは混乱してということが起きている。そ ういう流れの中で患者はどうやって医療にかかっていったらいいのかということも、医 師需給検討会という意味では、ちょっと観点が違うかもしれませんが、本来の医師もし くは医療者が、きちんとその仕事をするためには、かかり方もこちらがある程度こうい う仕組みになっているのだということを分からないと、その仕事を発揮できないと思い ます。  そういう意味では、こういうすごい専門的な検討会だからだと思うのですが、患者不 在の部分をなくして、一緒にそういうシステムに変えていくのだというような。先ほど 吉新委員がおっしゃったような、家庭医への対応が必要な提案というのもしてみたらど うかというのも、一般の人への呼び掛けとか、かかり方を考えていく何か、例えば、地 域の保健師運動の中に入れてもらえないかなどということも、この問題にかかわった形 で何かできないのだろうかと痛感して聞いておりました。 ○矢崎座長 そういうシステムも大切ですよね。 ○事務局 一部指導課で医療計画を担当して、入ったところですが、いまのお話は非常 に大事なことと思います。私どもの医療計画の検討会において、住民・患者にわかりや すいシステムを作らなければいけない。それには情報をどう活用していくのか。患者の 地域で考えていかなければいけないことで、地域で協議会などで検討する。まさに今ご 指摘のとおりの検討をしております。医療提供体制全体は非常に幅広い問題があります。 大きいのは審議会の部会もありますが、それぞれのテーマごとに絞ってディスカッショ ンしておりますので、その関係については、私どもの検討会のほうで検討させていただ いております。 ○矢崎座長 そういうことですので。 ○土屋委員 いまの本田委員のご発言と関連したことですが、我々の立場から申します と、医療連携体制が大事であるということで、それをキーワードにして、いまそれ向き のものを、それぞれの地域で作っていこうということでやっています。医師不足という ことが基になりますと、とりあえず地域の医療資源の必要なものはどこかに重点化、集 約化するという話になっています。それはそこだけを見ると、いいように思えますが、 全国では相当広い地域もあって、1ヶ所に集約されてしまったために、その他の地域は 切り捨てられてしまっているということが現実に起こっています。みんな知恵を出して 考えるのですが、実際に実施している所ではそういう状況になっているところがあるの です。  我々は、かかりつけ医を持ちましょう、と国民の皆さんにお勧めしています。ほとん どの医師はしっかりしています。「しっかりしたお医者さんはどこにいるかしら」とい う言い方でしたが、大丈夫ですから、ご安心なさっていただいて、まずかかりつけ医に ご相談いただくことが必要です。我々の側も、そういう意味での専門性を持った医療機 関、これは最限なく行くと問題かと思いますが、機能の分化と連携ということは、絶え ず考えています。指導課で出した図がありますが、その真ん中は国民と我々かかりつけ 医なのです。そこから必要なものを適宜、適切にそういう格好でご紹介するなり、受け ていただこうということで、考え方としては大変いい形にはなっていますが、それをそ れぞれの地域の実情に合わせて、どのようにこれを構築していくかが、今後の問題かと 思います。 ○本田委員 きちんとしたかかりつけ医とか、そういう連携のことが理解していければ いいと思いますが、先ほどのケースミックスの話でもそうでしたが、いまの、特にこれ からの若い患者は専門医にかかりたいとか、そういうものでしか指標がないので、そう いうものに頼りたいマニュアル世代かもしれませんが、そのように思ってしまうのです。 例えば、ゼネラルで診られる家庭医という専門医をきっちり確立していただいたり、ケ ースミックスをしていくのなら、こういう指導は看護師に受けるものなのだということ ができるというのを、ちゃんとやっているのだとか、そういうものが見えていければ「あ あ、そうなのか」というのが分かると思うのですが、漠然と「あなたはここに行きなさ い」「あなたはここに来なさい」と言われると、「この先生は私のことを診たくないか ら、あっちに行けと言っているのか」というのが、普通の患者の心理なので、そういう のが分かるようにしてほしいと思って、是非そうあればと思います。 ○土屋委員 これは本田委員のお仕事だと思いますが、我々の側は一生懸命そう思って いるのです。国民の皆さんが誤解をしているのか、専門医、専門医とおっしゃるのです が、本当に専門医が必要な方というのは、ごくごく少ないのです。ドクターもみんな専 門医志向なのですが、実際にはほとんどその地域で必要とされる医療の9割方は、そこ でできるというか、よほどのへき地でもない限り、十分対応できるように少なくとも日 本の医療のレベルはなっているわけです。国民の皆さんを本田委員辺りが教育すると言 っては失礼なのでしょうが、啓発していただくことも大事ではないかとお願いしておき ます。 ○水田委員 医学教育に関係する者としましては、私はコモンデイジーズの専門医やゼ ネラルの専門医というのは可笑しい言葉遣いではないかと思います。医学教育はこのよ うな領域の総論は全部教えておりますし、その後の研修制度でさらに学ぶということで す。 ○矢崎座長 この議論は尽きないと思いますので、この辺で一区切りさせていただいて、 先ほど長谷川委員からお話のあった、医師の需給を推計するためのもう少しマクロ的な 意味でのモデルの考え方と、先ほどから議論のあった勤務医の近々のデータか是非必要 で、従来のデータは激変していますので、新たにデータを作りたいということで委員の 方々にもお願いがあります。まず長谷川委員から概要をお願いします。 ○長谷川委員 ちょうど先ほどご議論が出たので、目の前にスライドを出しております が、36頁と37頁をご参照ください。37頁には需給モデルの考え方について書いており ますが、38頁に個人の選択のモデルを書きました。上の部分は泉委員のお考えも少し拝 借して書いております。  医師の需給を考える場合に、数のプールを作るネジは国家予算や医学部の定員等で決 まってきます。しかし、その中でどこに、どのように分布するかは、卒業時、卒後2年 後、専門の研修が終了したとき、病院勤務を前提したら開業を決定した場合、そして定 年退職後の5段階で意思決定をして分布が決まっています。その5段階それぞれ決定の 内容も違えば動機も違う。政策的には矢崎座長からお話がありましたように、その動機 をきちんと分析して、それにインセンティブをかけていけば、一定の誘導は可能かと思 います。  まず、このモデルをご参考いただきたいと思います。なぜこういうことを申し上げた かと言いますと、今後の必要医師数を考える場合に、結果として出てきた診療科の数や 地域の数から積み上げて、国全体で何人必要かという議論はなかなか理論的に難しい。 事実アメリカのGEMNACがそれを1度やっていますが、失敗しました。大変予測が 外れて、現在は批判の矢面に立っています。もちろんその数がニーズにどのぐらい必要 かを検証することは必要なのかもしれません。  今回私が提案したいと思っているモデルは、国全体の需給、特に診療所、病院あるい は外来、入院の需給の動向をベースにしたモデルです。供給側は割合簡単で、何人生産 して、何人働いていて、労働強度は何かを予測すればいいと思いますが、幸いデータベ ースにもあって、唯一ないのは労働時間です。需要のほうは外来や入院、入院回数に重 み付けをして計算してもらえる。  国際的に見ますと、いくつかの考え方があって、アメリカの厚生省がやってきて、ア メリカではよく似たこのような委員会を作って、予算を付けて予測をしてきたのですが、 それをコグメとかGEMNACと訳しており、数回やってきました。これはニーズベー スで積み上げていくという方式でした。その背景にはWHO等が推薦しているモデルが あって、その辺の流れの中で計算されたものだと思っています。  ところが近年、それがうまく予想されなかったものですから、ウィスコンシン医科大 学の学長で、当時の全米の医学界協会の会長をしておられたクーパー教授が、そういう 積上げモデルというのは間違っているのだ。ものの考え方は基本的には社会全体がどの ぐらいの医師を欲し、どのぐらいの医師に金が払えるのかということで決まってくるの だという、大変過激な需要モデルをご提案され、そこで旧来の考え方と、新しいクーパ ー教授の考えが衝突していると理解し、真実はその中間ぐらいにあるのではないかと思 っています。  国内を見ますと、前川モデル、井形モデルの2回についても、やはり積上方式で需要 を考え、供給は人口のモデルを使ってやられたようです。基本的には日本の場合、前川 ・井形の委員会で作られたモデルから外れない形でやっていくのがいいのかと思ってい ます。それをした上で、診療科や地域の偏在を考えていく。  レジュメが手違いで古いバージョンのものになってしまいました。供給のほうのモデ ルは現在の収容状態を基本にして、性、年齢階級、1歳階級、男女別、病院・診療所別 に推計をしていく。そして、性、年齢階級別の労働時間を加味することを想定しており ます。  需要モデルは、入院と外来、特に退院患者の推計と外来患者の推計を予測して、それ に重み付けをする。先ほど内容が違うのではないかと。いろいろなやり方があります。 例えば、アンケートを取って、どのぐらいの重み付けをするだとか。私が興味を持って いるのは医療費を、一種の重みのサドゲートにして重み付けるという考え方ですが、そ ういうもので需要を推計する。そして疾病構造の変化を考慮する。メタボリックシンド ロームが、まだ診療にかかっていない方が大量におられるという点をどのように考える のか。  需給については、疾病構造や労働時間等を動かしてみて、感度分析をして、どうなる のだと考えていく。これは多いから、少ないからという医師の緩衝地帯のようなもの、 つまり、数パーセント以内の差はSkill Mixで何とかできるではないか。あるいは今回分 析した生産性等を使って向上すれば、一定吸収かなということを含めて、医師の緩衝モ デルのようなもの、つまり数千人足りないから、多いのだ、少ないのだという議論では なく、きちんとした数で考えていく。そのためには医師の緩衝地帯を考えたらどうかと 思っています。  前モデルとどう違うかということですが、基本的な考え方は変わりませんが、例えば 入院患者に関して前回は在院患者で考えていましたが、退院患者、しかも退院患者を年 齢階級で重みを付けようと思っておりますので、だいぶ違います。  供給のほうは、1歳、1歳でコフォートを作って計算して、かなりきめ細かく男女別、 診療所別にシミュレーシヨンができますので、1歳階級のコフォートで分析をしていこ うと思っております。そうすることで医師のゲームソフトではありませんが、シムドッ ク、例えば、就労を変えたらどのぐらいの人が働いているとか、女性の労働時間をこの ように変えたらどのぐらいの数になる、というソフトを先生方に提供して、実際に数を 書いていただいて、これは重要だ、これあまり重要ではないということを実感していた だくといいのかと思っております。そのようにシミュレーションができるようなことを 考えております。  そう考えてまいりますと、需要と供給の基本的なデータは揃っているのですが、いち ばん重要な各病院での勤務時間のデータはありません。できる限り多くの数で正確な調 査が必要とされますので、検討委員会の先生方から、まずご協力をお願いしたいと思っ ております。それについては39頁、40頁、50頁に参考書があります。たまたま大学の 病院長や学長、理事長がおられますので、そこの病院や国立とか自治体とか地域医療振 興会、全日病等病院グループで、どのような病院を選ぶかはご相談したいと思いますが、 なるべく日本国全体を表すような病院を10程度選んでいただいて、それらの病院にア ンケートを行う。診療所も最低1,000ぐらい必要かと思います。これは回答率もありま すので、少し多めのアンケート調査になるかと思います。  次の頁に実際のものを用意しております。これもたたき台で、中身を見て、こういう のを入れたほうがいい、あるいはこんなのは必要ないのではないかというご意見があり ましたら、是非いただきたいと思います。1頁がご本人に対する属性、多忙観等をお聞 きし、2頁が月曜日から日曜日までの1週間の実際のタイムスタディになっています。 何時間働いて、それを何に使ったか。外来、入院、自己研修、教育。その間に何人の患 者を診たかをお聞きすることになっています。女性医師の労働実態を把握する必要があ って、パートタイムで来ておられる方もやっていただく。そのことによって全体像を把 握したいと思っております。  調査期間は、できましたら1カ月後から1週間。実際にやっていただくとなると、1 日5〜10分ぐらいかかると思いますが、ほとんど実質的な負担はないかと思いますが。 具体的には調査事務局から各病院の責任者を決めていただいてお願いをし、回収してい ただき、こちらで入力をして、入力したものはお返しします。病院がやる場合には、ど うしてもバイヤスのかかるデータがあると思いますので、これを一種の大義名分にして いただくと、若干は客観的なデータが出るのではないかと思います。そうすれば経営に も資するのかと思っております。 ○矢崎座長 何かご意見ございますか。 ○水田委員 この紙自体に所属の病院などを書く所がなくていいのですか。 ○長谷川委員 これは各病院にお願いをして、事務局で集めて送り返していただきます。 ○水田委員 それはわかるのですが、一緒になったときにそちらでお分かりになります か。 ○長谷川委員 こちらで括りますので大丈夫だと思います。 ○水田委員 大学病院か普通の病院か診療所かというのは、ここに書いておかなくても わかるのですか。 ○長谷川委員 はい。グループごとにお願いする場合にそうなると思いますので。各病 院からいただきますので大丈夫だと思います。 ○吉新委員 グループごとのデータですよね。ベッド数、機能、番号などを。調査票1 枚1枚に必要ではないかということですね。 ○水田委員 大学病院なのか、どうなのかというのが全部分かるのかということです。 ○長谷川委員 各病院で集めていただこうと思っているのですが、難しいですか。 ○水田委員 それは簡単ですが、一緒になったときにお宅がわかりますかということで す。 ○長谷川委員 送り返されたときに、それぞれ封筒に入ってきますので。 ○医事課長 欄を作って「勤務はどこですか」として、大学病院、市中病院、診療所と いう欄を作っておけばという話だと思うのです。それはそのほうが後々便利ではないで しょうか。 ○矢崎座長 長谷川委員は、自分でそれをやるというおつもりでしょうが、それはあっ たほうがいいですよ。 ○吉新委員 私どもの協会には100床以下の病院がたくさんあるのですが、そういう所 ではオンコールで長時間拘束されていて、ここに反映しにくいと思うのですが、どうし たらいいですか。中小病院はオンコールで圧倒的に多いのです。大学病院を想定された 調査票ではタイムスタディがわからないのではないかと思います。 ○矢崎座長 今日はあまり時間がありませんので、早急にお持ち帰りいただいて、いま みたいな適切なご指摘をいただいて、改善しようと思います。 ○吉村委員 特定の週をとるのですか、それとも平均的な週をとるのですか。 ○長谷川委員 実際の1週間です。 ○吉村委員 そこに学会があったりした、それは仕方がないということで。 ○長谷川委員 しようがないですね、11月28日を想定しております。この検討委員会 のスケジュール等から考えますと、そのころがいいのかと思います。学会等はしようが ないにしても休日等を挟みますと、イレギュラーになるので、ない日を選んでおります。 ○水田委員 それと大学の場合は、病院所属と研究所属で、全部臨床している人がいる のですが、それは全部でしょうか。 ○長谷川委員 病院に診療しておられる方、パートもフルタイムも両方お願いしたいの です。 ○水田委員 所属とは関係なくですね。 ○長谷川委員 そうですね。働いていることが重要です。 ○水田委員 研究院所属もみんな働いていますからね。 ○長谷川委員 パートタイムとフルタイムということで。 ○水田委員 教育のほうが多くなっていますから、どちらがいいですかね。 ○矢崎座長 教育の時間や研究の時間も入れていただくという形式に大学病院ではなる と思います。今後のスケジュール(案)が書いてありますが、今年度というか来年3月 までにまとめたいと思いますので、非常にタイムスケジューが密です。タイムスタディ の実施などについて事務局からお願いします。 ○宮本補佐 資料4です。内容といたしましては3月末には終えたいという気持がある ということで、進行は適宜状況を見ながら相談させていただきたいと思います。当面は 長谷川委員より紹介いただきました、需要と供給に関する対応の関係をできるだけ詰め ていきたいということです。調査も非常にタイトですが、急いでまとめて、その検討材 料に使っていきたいと思います。  特に次回ですが、平成16年医師調査の結果が近いうちにまとまることを見込んでい ますので、そちらもご披露させていただきたいと思います。繰り返しになりますが、な にぶんにタイトですが、是非よろしくお願いしたいと思います。 ○矢崎座長 いま長谷川委員から医師需給に関する検討モデルというお話をいただきま したが、委員の方々から3つの点のご指摘がありました。それは平成16年から医師育 成制度が大きく変わったというファクターと、高齢化による疾病構造の変化だけではな く、診療内容も随分患者の高齢化によって変わっているということ。もう1つは、古橋 委員から言われたように、医療評価のパラダイムシフトというか、今までは血糖値が下 がった、血圧が下がったという医学的尺度で評価が得られたのですが、これからは患者 の目線に立った、患者の価値観を入れた医療評価も加えなければいけないということで、 従来のパターナリズムから、診療の現場では大きな変化が起こっている。そういう点は 実際に数字に現れないところもあるので、それを十分考慮してモデルを構築してほしい という委員の方々のご指摘があったと思いますので、今後ともよろしくお願いいたしま す。 ○宮本補佐 次回の日程ですが、11月末からひょっとすると12月にかかってしまうか もしれませんが、皆様方のご予定を確認させていただきまして、日程が決まり次第お知 らせいたします。  また先ほどご相談させていただきました調査の件ですが、実施をどのように進めるか、 またご意見等がありますので、関係する委員には連絡をさせていただきたいと思います。 ○矢崎座長 実施は次回の検討のあとになるのですか。 ○宮本補佐 ちょっと微妙なところがございます。できれば調査のほうを先に進めてい きたいと思います。 ○矢崎座長 11月下旬から調査では間に合わないのではないでしょうか。ですから、来 月早々にでも始められるように、事務局で各委員の方々と、個別に調査の内容を具体的 に詰めていただければ大変有難いのですが。  それでは、今日の検討会はこれで終わりにいたします。どうもありがとうございまし た。よろしくお願いいたします。                                     −了−                         ┌─────────────┐                         │照会先          │                         │厚生労働省医政局医事課  │                         │課長補佐 宮本(内線2563)│                         │指導係長 双川(内線2568)│                         │代表 03-5253-1111    │                         └─────────────┘