05/10/26 労働政策審議会職業能力開発分科会第22回議事録           第22回労働政策審議会職業能力開発分科会 日時:平成17年10月26日(水)13:30〜 場所:厚生労働省合同庁舎5号館9階 省議室 ○今野分科会長  ただいまから、第22回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いたします。本日は 所用により、江上委員、玄田委員、佐藤委員、中馬委員、小栗委員、長谷川委員、西原 委員、谷川委員、鈴木委員がご欠席です。なお、長谷川委員の代理としては末永さん に、谷川委員の代理としては岩切さんに、鈴木委員の代理としては岩松さんにご出席を いただいております。  それでは、今日の議題に移りたいと思います。今日の議題は、「技能の継承・振興及 び職業能力評価」についてです。まず、事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○総務課長(杉浦)  資料1−1に基づき、本日の議題であります技能の継承・振興及び能力評価に関する データ及び行政の施策等についてご説明をいたします。  1頁は、技能や現場力をめぐる状況についてです。まずものづくりを取り巻く状況に ついては、2頁の企業の海外進出の推移、現地法人の従業員数、それから製造業の海外 生産比率の経年のグラフでは、ともに増加、上昇傾向で推移してきています。3頁は、 国内工場の立地の動向です。2003年の製造業の国内工場の立地件数は、前年比で24.8% 増となっています。加工組立型の製造業の増加が寄与しており、国内工場の立地の再開 の背景としては、海外設備投資が一巡したこと、国内景気が好調であること、国内外の 製造に関する棲み分けができていることなどではないかということです。  この点に関して、「モジュール化」ごとに研究開発が可能であった電気機械業などに おいては、アジアにそのモジュールを集めて組み立ててきていましたが、その過程で技 術が流出し、競争力が失われることがあり、こうした技能流出を防ぎつつ、拡大するア ジアの販売市場を開拓するという考え方の下に、製造過程の自動化とか、ブラックボッ クス化、企業提携などにより、国内外の棲み分けを行ってきています。こういった背景 による国内工場の立地再開は、日本の製造業の、日本を含めたアジア域内での経営資源 の最適配置の一環と位置付けられる、JETRO関係の資料からの引用ですが、こうし た視点から国内に工場を立地する企業は、今後増加すると見られるということです。  4頁は、経産省で行ったアンケート調査に基づく国内生産の回帰の事例です。A社は 電気メーカーで、国内に液晶パネルの工場を2003年から開始してきています。素材供給 メーカーとも連携して、技術の革新に努めつつ、内製化した生産設備など、生産技術の ブラックボックス化を図っているということです。B社は音響機器メーカーです。一 度、マレーシアに移管したMDプレーヤーの生産工場を、2003年9月から国内の山形工 場に移しています。これは日本人技術者の高い技術力とか、低い不良品率というメリッ トを生かすことができることで、品質の安定につながっているということです。  5頁は、高等学校の進路別の卒業者数の経年グラフです。平成17年3月の高等学校卒 業者の大学進学率は、一番右端ですが、47.3%に達しています。希望者全員が大学等に 入ることができる時期の到来を、目前に控えている状況にあります。6頁は、大学の進 路別の卒業者数です。卒業後、就職も進学もしない者の割合が、黄色の部分ですが、近 年ほぼ20%前後の水準で推移している状況にあります。7頁は、大学の入学者数と卒業 者数の差です。薄いブルーの棒グラフが入学者数で、黄色いほうが卒業者数です。その 差がだんだん広がっているということで、中退者や留年者が増加していることがうかが えます。  8頁は、中高生の職業に関する「イメージができる」職業と、「やってみたい」職業 の比較です。左側が、「イメージできる」職業ということで、上位5職業が上にあり、 その下に主なものづくり関連職業ということで、自動車組立工以下、載っています。 「イメージできる」という黄色いほうには、いわゆるものづくりの関係も、それなりに 7〜8割というところであるのですが、右側の「やってみたい」職業になりますと、そ のものづくり関係職種が数字的には非常に低いものになってしまっています。  9頁は、総人口及び生産年齢人口の動向です。これもご案内のとおり、生産年齢人口 は人数、総人口に占める割合ともに減少している一方で、65歳以上の人口は、両方とも 増加をしていく見込みとなっています。緑の所が、65歳以上の高齢者の見込みです。10 頁は、就業者に占める若年者、高齢者及び女性の割合です。若年者は赤の実線、高齢者 がブルーの実線のグラフです。右の方にいくにしたがって若年者の割合が減ってきて、 高齢者の割合が増加をしてきています。点線はそのうちの製造業で、全産業に比べてよ りその傾向が顕著なものとなっています。  11頁は、団塊の世代の動向です。団塊の世代は前後の年齢と比較して、大きな塊にな っているということで、赤のグラフが2000年、黄が2007年、緑が2012年で、いずれも団 塊の世代の塊が右のほうにずれていくということです。2007年からは、その塊が60歳に 達するということで、いわゆる「2007年問題」が懸念されているというグラフです。12 頁は、業種別の「2007年問題」に対する危機意識のグラフです。「2007年問題」に対す る危機意識を持っている企業は全体の2割強、いちばん上で、22.4%です。製造業では 30.5%で、3割を超えています。なお、このグラフは30人以上の企業を対象としていま すので、建設業などはやや低い数字になっているものですから、全部の企業を一律に比 較できるものではないですので、その辺を注意してご覧ください。13頁は、危機意識を 持つ要因です。それぞれ業種ごとに分かれていますが、左の2つ、黄色の部分で、「意 欲がある若手の中堅層の確保が難しい」、「技能等の伝承に時間がかかり、円滑に進ま ない」といった所が、大きな割合になっています。14頁は、従業員の規模別のものづく り労働者数と雇用者に占める割合です。ブルーの棒グラフがものづくり労働者の数で、 企業の規模別になっています。一方、赤のグラフは、ものづくり労働者が雇用者に占め る割合ということで、企業の従業員規模が小さくなるほど、ものづくり労働者が全体の 雇用者に占める割合が高くなっています。  15頁は、技能の伝承・継承の方法です。ものづくり技能の伝承・継承の方法として は、当然といえば当然ですが、ブルーの線、OJTによるマンツーマン指導が、それぞ れの職種等においては圧倒的に高い数字になっています。16頁は、ものづくり労働者の 過不足状況です。真ん中の下半分が「適当」で、過不足がない所で、それが約半数を占 めているのですが、右の赤い所の3つ、約4分の1ぐらいの所が「不足」で、25.6%で す。「余剰」は左側で、1.7%にとどまっています。17頁は、ものづくり労働者が一人 前になるのに要する平均的期間がどれくらいかという調査です。濃い青の所が3年未満 で、約4割、3年〜5年が35%、5年〜10年が18.4%です。3年から10年ぐらいが約半 数を占めている状況です。  18頁は、従業員の能力開発や人材育成に関しての問題点です。全般的に、右側の3番 目、4番目の「指導する人材が不足している」とか「人材育成を行う時間がない」とい う所が、高い数字になっています。企業規模が小さい所、赤の四角が途中に入っている 実線は企業規模30人未満の所ですが、いちばん左端の「人材を育成しても辞めてしまう 」が、若干高くなっている傾向があります。  19頁は、ものづくり人材の育成を進める上での問題です。これについては、一番上の 「人材育成に割く時間がない」がいちばん多い数字です。濃いブルーの大企業では、そ の4番目の「教える人材が不足している」とか「教え方がわからない」が次に高くなっ ています。中小企業、中堅企業では、上から2番目、3番目の「教育を受ける側の向上 することに対する意欲・熱意が乏しい」とか「人材育成の重要性に対するものづくり現 場の理解不足」が、次に高くなっています。20頁は、ものづくり人材の育成を進める上 で国に対し期待することです。いちばん多いのは、「人材育成のための資金援助」の52 %です。次に、「実践的な教育訓練制度の整備」、「ものづくり人材育成のための教え 方のノウハウなどの情報提供」が続いています。21頁、22頁はいま申し上げた調査の出 所、用語の定義とかものづくり労働者の範囲です。  23頁からは、技能の継承・振興等に関する現行の施策等です。24頁は、背景としては 先ほど申し上げた、団塊の世代が引退過程に入る2007年問題、若者のものづくり技能離 れといったことから、我が国の国際競争力を支える「ものづくり技能、現場力」の喪失 の危機があります。これに向けて、技能継承とか現場力の取組の必要性、若者を現場に 誘導・育成するための技能の振興が必要になってくるということです。  25頁は、平成17年度の能開行政における施策です。(1)技能の継承・現場力の強化の 取組に関する支援としては、高度熟練技能者の認定・活用をしています。技能の振興に ついては、ものづくり技能の重要性についての国民の意識喚起、それから若年者等に対 する工場、訓練施設等の開放促進、若者等によるものづくり技能競技大会の実施、顕彰 といった事業を行っているところです。26頁は、いま申し上げた「高度熟練技能者の認 定・活用」で、中央能力開発協会で1級技能士等の優れた技能を持った方々を「高度熟 練技能者」として認定し、こういった方々を技能指導のために派遣する事業を展開して います。認定の状況は真ん中の表に、右は実技指導の件数があります。  27頁は、技能の振興に関する施策です。まず、ものづくり技能の重要性についての国 民の意識喚起ということで、2007年にユニバーサル技能五輪国際大会が開かれますの で、これを効果的に活用していこうと考えているところです。それから、ものづくり技 能に親しむ機会の提供ということで、先ほど申しましたような工場とか民間、公共の訓 練施設への親子の開放を促進したり、あるいは高度熟練技能者の派遣をしたり、あるい は若年者のものづくり競技大会を実施したりといった施策を行っています。  28頁、29頁は2007年のユニバーサル技能五輪国際大会の概要です。大会概要とか、そ の規模、日程等が書いてあります。30頁は、技能競技大会や技能者顕彰の関係です。技 能競技大会としては、毎年実施している技能五輪の全国大会、国内での日本一を競う大 会で、23歳以下の青年技能者が対象です。それから2007年のユニバーサル技能五輪の国 際大会があります。また2年に1回開催している技能グランプリ、これは1級技能士等 の技能レベルを競う大会です。20歳以下の若年者の方々のものづくり技能競技大会、こ れは本年度から始めて、来年度以降毎年開催をしていくことになっています。技能者の 顕彰ですが、1つは「現代の名工」、卓越した技能者を毎年150人程度、厚生労働大臣 が表彰しています。今年度から創設された「ものづくり日本大賞」では、厚生労働省、 文化庁、経済産業省、国土交通省が共催となり、特に優秀な方に対して内閣総理大臣が 表彰するものです。それから「能力開発関係の厚生労働大臣表彰」、これは毎年行って います。  31頁は、国や各団体、自治体の取組事例です。事業主団体等がやっている例として は、「NPO地域基盤技術継承プラザ」を設立し、相談や情報の提供、講師派遣等を行 っています。自治体の取組例としては、優れた技能者を「テクノマイスター」として認 定し、講師としていろいろな所に派遣をするという事例があります。企業での取組例と しては、技能マップとか、技能者のデータベース化をしたり、あるいはOJT、Off −JTによる技能継承、技能のデジタル化・マニュアル化といったことがあります。そ の他の取組例では、「ものづくり大学」で、ものづくり人材として新しいタイプの人材 の育成をしています。  32頁以降は、技能の継承・振興に関して今後取り組む施策です。33頁の(1)技能の継 承・現場力強化の取組に対する支援としては、技能継承の取組に関する相談窓口の設置 等による総合的な情報提供とか、相談援助を、中小企業等の技能継承、人材確保の取組 に対する支援を行っていきたいと考えています。(2)技能の振興としては、2007年のユ ニバーサル技能五輪国際大会について、金メダル倍増計画といったことをしていきた い。これについて情報収集とか、指導者に対する指導、強化選手への訓練、各種大会へ の参加から、選手の強化を図っていきたいと考えています。34頁は、いま申し上げた事 柄にやや説明を加えたものです。上のほうの総合的な情報提供や相談援助の事柄に関し ては、技能継承とか「2007年問題」への対応といったことで、中小企業への相談窓口と して「技能継承等支援センター」を各県に設置していきたいと考えています。2つ目の 中小企業等の技能継承・人材確保の取組に対する支援としては、「中小企業労働力確保 法」に基づく助成金を活用して、新たにその技能継承の取組の事柄について助成金の対 象にすることを考えていきたい。  35頁は助成金の関係です。今の制度は、上の方にありますが、認定をされた中小企業 の企業者や、構成の中小企業者に対して訓練を行ったり、能力開発休暇を与えたりする 場合に助成金が出る仕組みになっていますが、右の下のように、技能の継承とか、定年 退職者等を活用したマンツーマンのOJTの実施経費、コア技能をデジタル化・マニュ アル化して行う訓練経費といった事柄についても、助成の対象としていきたいというも のです。  36頁は、能力評価制度の整備についてです。37頁には能力評価制度全体の概要があり ますが、大きく分けて3つあります。1つは、技能検定制度です。これは国家検定とし て、現在137職種の実施をしています。中央職業能力開発協会で試験問題の作成をした り、水準調整を行い、都道府県の職業能力開発協会で試験の実施をしています。平成16 年度から、3級検定の職種の計画的な拡充とか、受験資格の緩和の実施をしています。 平成13年度から、指定試験機関制度ということで、民間への開放を推進しています。現 在8職種について、民間の指定試験機関が実施しています。大きな2つ目は、「職業能 力習得支援制度」、いわゆるビジネスキャリア制度と言っていますが、ホワイトカラー の労働者に対する体系的な知識習得を支援するための制度です。職務分野ごとにいくつ かのユニットに分け、学習すべき範囲を「認定基準」として体系化し、それに基づいて 訓練を行い、試験の実施をするものです。3つ目は、職業能力評価基準の整備です。職 業能力というものを客観的に評価できる、いわば物差しとなるような能力、知識につい て、レベル・業界ごとにそうした基準を作っていきたいということで、現在事務系の職 種のほか、電気機械器具とか、自動車製造業など17業種について、評価基準の作成をし ています。順次また増やしていこうと考えています。38頁は技能検定制度です。いま申 し上げたので省略いたします。同じく39頁は、ビジネスキャリア制度、40頁が職業能力 評価基準制度です。  41頁は、職業能力評価基準の活用についての取組事例です。企業における活用の取組 の事例や、あるいは業界団体における活用の取組事例があります。以上が、データや行 政の施策の概要です。  42頁以降は、これらの状況を踏まえた論点の整理で、問題点というか、課題の整理を しています。まず1点目は43頁、現場力の強化と「2007年問題」です。まず、最近起こ っている重大災害とか、いろいろな事故の発生を契機として、我が国における安全や品 質に関する信認が揺らぐ中で、現場における技術・技能や管理能力、即ち「現場力」の 在り方が問題となっている。また一方、製造業を中心にグローバル経済化の中での競争 が激化する中で、高付加価値製品とか、戦略性の高い製品を国内で生産するといった棲 み分けの傾向も見られるようになってきており、それに必要な「現場力」ということ、 それを支える人材の重要性が、改めて見直されているのではないか。こうした中で就業 者の年齢構成の高齢化が進展している製造業等において、いわゆる団塊の世代が引退過 程に入ることに伴う熟練した技能・技術やノウハウの喪失の問題が、「2007年問題」と して重大な関心を呼ぶとともに、若者のものづくり離れや、90年代における厳しい人員 抑制に起因する、現場を支える人材層の先細りといったことも、大きな懸念材料となっ ている。以上のことから、熟練した技術・技能の円滑な継承と、現場力の強化というの が喫緊の課題であり、これに対応するために定年延長や継続雇用制度の導入による団塊 の世代からの技術・技能の移転の推進、若年層の意識啓発による現場への誘導と実践的 な能力の育成等が、特に急がれているのではないか。さらには、女性が活躍できる環境 の整備についても、現場力の強化の観点から考えていく必要があるのではないか。同時 に、こうした取組にとどまらず、国民各層の意識の喚起あるいは現場力を担う人材の育 成に向けた教育の在り方の検討といったことを、総合的な取組の推進が必要なのではな いかということを、書いています。  2つ目が44頁の現場力の強化に向けた対応策の在り方です。いま申しました現場力の 強化に向け、具体的には、まず個々の事業所において能力開発計画を策定したり、その 見直しを契機として現場における技能の状況の確認、分析をすること、熟練技能を有す る人材から技能を継承すべき人材へきちんと技能を移転できるような、雇用管理の在り 方を検討することなどが、課題となるのではないか。その際、ものづくり技能の継承の 方法としては、先ほどのようにOJTによるマンツーマン指導が最も多く、またものづ くり人材が一人前になるのには一定の時間がかかることをかんがみれば、技能を有する 人材と技能を承継すべき人材の双方に目を向けて、支援策を整備することが課題ではな いか。特に、多様な技能を有する人材に雇用の場を提供している中小企業においては、 企業間の競争が激化する中で納期の短縮傾向が強まるなど、厳しい経営環境におかれて いることから、技能の円滑な継承に向けた公的な支援が必要なのではないか。具体的に は、先ほど申し上げた、中小企業労働力確保法の枠組みを活用した助成制度などが考え られるのではないか。  また、製造業においては中小企業集積が衰退傾向にある一方で、新技術開発をめぐる 産学共同等の取組が進んでいること、技能継承に関しても、事業主団体や自治体の積極 的な取組が見られるようになっています。今後、公共職業能力開発施設もこうした取組 と連携をしつつ、地域の企業ニーズに応じたオーダーメード訓練の推進、地域の企業へ の施設開放や指導員の派遣等により、地域レベルの現場力強化の一層の役割を果たして いくことが必要ではないか。  45頁は、人材教育の在り方の見直しについてです。大学への進学率が47.3%に達し、 希望者全員が大学に行ける時期の到来を目前に控え、体を動かしながらものを考え、コ ツをつかんでいく実践的な資質を持った人材にとって、理論追求の傾向の強い大学教育 がふさわしいかどうかが問われているのではないか。こういった時代を迎えると、こう した若年人材をめぐるミスマッチが一層広がる恐れはないだろうか。特に、大学中退者 が徐々に増加する傾向がうかがわれ、また大学等卒業者の就職率が趨勢的に低下すると ともに、卒業後就職も進学もしない者の割合が近年20%前後で推移していることをどう 見るか。大学等においても、インターンシップの推進とか職業探索のセミナーなどの充 実の取組が見られますが、近年企業においては即戦力志向が一層強まり、結果的に理論 を中心とする大学教育と、実践的な即戦力志向の企業現場とのミスマッチが深刻化して いるのではなかろうか。今後こうしたミスマッチを埋め、実践的な資質を持った人材を 企業現場のニーズに即して育成していくためには、例えば、フリーター等の自立支援策 として現在やっている「日本版デュアルシステム」などの実績も踏まえながら、より実 践力を求める企業のニーズを踏まえながら、現場の中核を担う人材を育成するための、 そうした制度へこのデュアルシステムを見直していくことが必要ではなかろうか。  46頁は、技能の振興に向けた対応策の在り方です。これは若者のものづくり現場への 誘導、その育成を図っていくためにものづくりを大切にし、ものづくりに親しみ、もの づくりが評価される社会の形成に向けての技能の振興を積極的に図ることが必要なので はないか。具体的には、教育機関をはじめ、関係機関と連携の下、児童・生徒の段階か ら技能やものづくりの魅力に触れる機会や、目標を持って技能を競う機会を増やしてい くことが効果的ではないか。特に、2007年の「ユニバーサル技能五輪大会」が開催され ることを契機として、大会後を見据えた技能振興策を講じていくことが重要なのではな かろうか。  最後の47頁は、職業能力評価制度の見直しです。外部労働市場と内部労働市場を結 び、円滑な労働移動を可能とするための指針、社会的インフラとして能力評価制度の整 備充実を図る必要があるのではないか。また、現場力の強化、若手後継層の誘導・育成 を図る上で、ものづくり技能にかかる職業能力評価制度の重要性が見直されているので はないか。このため技能検定制度について、民間活力の活用や3級技能検定職種の拡大 等による普及促進・受験機会の拡大に努めるとともに、より効率的・効果的な能力習得 を可能にする観点からのビジネスキャリア制度の見直し、仕事力の物差しとして活用し やすい職業能力評価基準の整備等を進めるべきではないか。以上が、資料1のデータ及 び施策、それから論点といいますか、問題点です。資料として1−2に参考資料をつけ ています。説明は省きますが、本日の議題に関わる、その他の施策等やデータを載せて いますので、ご覧いただければと存じます。前回のご審議で委員からお話のありまし た、人材投資促進税制のリーフレットを最後にお配りしています。ご質問として、教育 訓練給付制度利用者の受講講座がどんな内容かを、資料2としてつけていますので、担 当課長から説明いたします。また資料3と4は、前回と同じで、能力開発基本計画の評 価と能力開発の現況等についてです。資料5は最後にまた説明いたします。続いて、資 料2について、担当課長から説明いたします。 ○育成支援課長  資料2ですが、前回の会議の中で教育訓練給付制度について、今日ご欠席ですが佐藤 委員から、どういう方が利用しているか、どういった講座を受けているのかといったご 質問がありました。この資料は2枚目の下に書いてありますが、平成15年度の受給者の うち受講開始時点で雇用保険の被保険者である者又は被保険者であった者、それぞれを 6,000名無作為抽出した調査です。1頁目に戻ります。受講開始時点で在職中であった 方について性別・年齢で見ていただきますと、男性が45.5%、女性が54.5%と、若干女 性の割合が高いです。右側のグラフで見ますと、20代が18%、30代が31%、40代・50代 が24%と、若年から壮年まで大体幅広く利用されているということです。  下の方は受講講座の内容です。いちばん大きな所は、39.4%、これは右の方に書いて ありますいちばん上の情報関係(情報処理技術者等)の講座です。あとそれに続きます のが反対側のほうにあります15.2%、これは下から4番目の社会福祉・保健衛生関係の 講座。さらに次は、上から5番目の専門的サービス関係の講座となります。  これと比較していただいて次の頁ですが、受講開始時点が離職中であった方について 性別・年齢を見ていただきますと、今度は少し男性の方が比率が多いということです。 これは離職の関係かと思いますが、さらに右側の年齢層を見ていただきますと50代・60 代と在職中の方に比べますと、若干、中高年齢層の利用の割合が高いことがうかがえる かと思います。  受講講座の内容ですが、順位的には最初の頁のものと同じですが、特徴的だと言える のが、左側の34.2%を占めています下から4番目の、社会福祉・保健衛生関係の講座で あり、中高年齢層の方の受講が多いことと関連してそういった方々が受講し、再就職し やすい、あるいはニーズが高いといったところの受講内容が増えていることがうかがえ るかと思います。 ○今野分科会長  あとはまた自由に議論したいと思いますので、ご意見なりご質問をお願いします。い かがですか。 ○黒澤委員  私の認識が間違っているのかもしれないのですが、最初にご提示いただいた資料の前 半の部分を拝見しますと、何となく今後の動向としては、国内製造業による生産労働者 の需要が増えるにもかかわらず、供給側の若者におけるものづくりのイメージが悪く て、その部分の啓発というものが必要なのだというメッセージがすごく前面に見えるわ けなのですが、そもそもバブルがはじけてからの若年労働市場における、特に大卒者よ りも高卒労働市場において非常に就職が困難化したことの大きな背景には、製造業の生 産労働者の職というものがなくなったことがいちばん大きいのではないかと思うので す。  それがなくなったことによって違う分野の、特に非正社員的な仕事があるとしても、 そういった非正社員的な仕事しかなくなってしまったということが問題だと思うので、 それを考えると、では需要がバックすればそれはそれで素晴らしいことというか、その ままその仕事に就かないと言いきれるのかというのが疑問に思っていたことです。  もう少し資料を読み込んでいくと、これはどちらかというと、いま製造業の事業所が 国内に回帰しているといっても、そこでの生産労働者への需要はいままでとは違って、 技術進歩によるスキル偏向型技術進歩的なものがあって、生産労働者といえどもより高 いスキルレベルを持つ労働者への需要が増えるということなのではないか。いくつかご 提示された資料の中にも、量的というよりも質的なところで不足しているというところ があって、量的と答えているのは8%だけです。そういうことを考えるともう少し踏み 込んで、質的な面での若者の意識の啓発だけではなくて、質的な面での若者の労働力と しての資質の向上が必要ではないか、ということを資料で分かるように持っていった方 が、結局は施策はそういうことが書いてあるものですから、そちらにつなぎやすいので はないかと思いました。  もちろん、もう1点、事実として若年の資質が低下していることも、いろいろな教育 学の実証研究などからも出てきていますので、それも併せてそのあたりをバックアップ させる必要があることがあるのではないか、ということが1点です。  もう1点は、中小企業に対して技能継承の支援を特に行うところで、もちろんいろい ろな意味で中小企業に対して能力開発という支援を行う根拠はあると思うのですが、こ れは雇用安定と関連してくるのでしょうが、高齢者を継続就業させることによっての技 能継承ということが、もしかしたらいちばん効率的なのかもしれない。そこにこういっ た能力開発ということでの支援を追加的に行うことの根拠についても、もう少しご説明 いただければと思います。 ○今野分科会長  いま2つありますが、どうしますか、どなたからお聞きすればいいですか。前半は労 働市場の変化の認識をどう持つかということですが。 ○総務課長  確かに委員のおっしゃっていることもあると思いますので、その辺の資料の整理の仕 方があまりはっきり、うまいストーリーで作られてなかったのかもしれませんが、1番 目の2つ目で言われた質的な面での向上は確かに非常に大事なことだと思うので、その 辺についてはまた論点というか、今後、施策を行う中で、あるいはその計画を書いてい く中でそういったことを踏み込んでと申しますか、書いていきたいと思っています。 ○今野分科会長  ここで生産が国内に戻ってきているという印象がすごく出ているデータがあるのです が、そうなのですが、でも出ている量もすごく多いということで、本当にそれで雇用が 回帰するとは思えないというのが私の認識です。その辺は企業の人などにお聞きした方 がいいかと思うのですが。  2点目はいかがですか。 ○能力評価課長  技能継承の関係ですが、今後、おそらく中小企業がまずすぐに採る対応としては、ご 指摘のような継続雇用という形が最も多いのだと思います。実際、企業規模別に技能継 承に対する危機意識を聞くと、むしろ中小企業の方が危機意識が低いということで、当 面、それは継続雇用のような形で乗り切るつもりだろうというのが背景にあるのではな かろうかと我々は分析しています。そういう継続雇用的な形で乗り切っていくとして も、では技能を継承していく上でどのようなことを行政に期待するのかという話になっ てまいりますと、中小企業の場合、1つは時間的余裕がないと、これはなかなか難しい 課題だと思うのです。  それから資金面での支援が欲しいというのがありまして、実際に技能継承をやってい く上で、まずどういう技能があって、どういうものを継承していくかというのをきちっ と固めた上で、それを具体的に継承していくためには、その技能の具体的な現場に即し たマニュアル化を図っていくとか、そういったところでその資金面での支援というニー ズは高いのではないかと考えまして、我々としてはいままでの能力開発ということ、言 わばその教材に対する支援があるのです。その枠組みを使い、技能のマニュアル化を図 るときの資金みたいなものを、その教材費支援というものの応用として支援していける のではないかと思っています。  一方でおそらく中小企業は非常に年齢構成が、しばらく採用してない中で高齢化が非 常に進んでいますので、当面はそういった継続雇用で乗り切ったとしても、いずれ技能 継承の問題は当面することは避けられないわけです。もう1つは、それに続くそのあと の若い人がそこの現場へ来てくれるかというのは非常に大きな問題だと思っていますの で、そういった取組みはいまの時期をとらえてやっていく必要があると思っています。 ○五嶋委員  中小企業の立場から意見を述べたいと思います。中小企業の人材育成への支援の強化 についてです。私ども中小企業は全国に約470万事業所あると言われています。雇用者 全体の7割が中小企業で働いていると言われているのですが、昨今の大変厳しい、激し い競争や事業変化の中では、活力の維持・発展を図るための大変な努力があっても、そ れはなかなか難しいわけです。しかし、そのような中でも創造性、小回りの利く機動性 などを活かして懸命の経営努力を続けている最中です。このため中小企業にとっては人 材が命ということは当然であるわけでして、本当にそれが大事だということはよくわか っているわけです。そのような中で企業を支える人材の育成が今後ますます重要になっ ていくことも、よく自覚をしているところです。  こうした中小企業のニーズを踏まえて中小企業の従業員の人材育成の支援をしていた だくことが必要です。国においても若年期から高齢期までの各世代を対象とした中小企 業の人材育成に向けての教育訓練の仕組みを体系的に整備・充実をしていただきたいと 思っているところです。  いまほどご意見もありました年配者の継続雇用ですが、能力評価課長が言われたよう に、それも限界に来ているのが現状かと思っていますが、こういった状況の中で支援を 得ながら若年者の育成に向けて努力をしたいと思っているところです。  論点の整理の中の現場力の強化に向けた対応策の在り方についてですが、「2007年問 題」を本当に目前に控え、また、熟練技術・技能者の高齢化が急速に進んでいる中で、 中小企業のものづくりの現場においても次世代を担う人材への技術、技能の継承に危機 感を持っているというのが現状です。こうした技術・技能の継承は本当に一朝一夕には できないものですから、マンツーマン方式ということもありますし、いろいろな意味で 高いハードルもあるのですが、その現場で技術・技能の内容にもよりますが、短いもの でも数年かかりますし、長いものでは10年以上かかるものもあるということです。これ への対応は喫緊の課題かと思っています。  私どもの企業の自助努力はもちろんであるのですが、国としても我が国のものづくり 基盤を支えてきた中小企業の技術・技能水準の維持・向上を図っていただく観点から、 中小企業やその事業主団体の自主的な取組みに対して、先ほど総務課長からもお話いた だきました論点の整理に示されているような中小企業労働力確保法の枠組みの拡大など を、是非しっかりとしていただいて、技術・技能の円滑な継承に向けて強力なご支援を いただければありがたいと思っています。  45頁の論点の整理の中の人材教育の在り方の見直しにおいて、現在、フリーターなど の自立支援策として実施されている「日本版デュアルシステム」について、実践力を求 める企業の現場のニーズを踏まえながら企業の中核を担う人材を育成するための制度へ と見直していくとあるのですが、どのようなイメージかというあたりもいろいろ教えて いただければと思っています。大体イメージとしては湧いていますが、よろしくお願い をしたいと思います。 ○今野分科会長  いまおっしゃられた前半部分はご意見ということでよろしいですね。 ○五嶋委員  そうです。 ○今野分科会長  いちばん最後のデュアルシステムのイメージをはっきりしたいということですが。 ○審議官  現在の「日本版デュアルシステム」と言われているものは教育訓練機関主導型と言い まして、各種学校・専修学校・能力開発大学校とか、そういう所へ入った中でその1コ ースとして実習部分を企業に委託して行うという形のものです。また、特徴として、離 職者・フリーターとか、そういう方を対象に効果的に就職に結びつけていく手法として やっているという形で、5ヶ月の短期のものが中心になっているという形です。したが って全体としてしますと、離職者・フリーター対策であり、かつ短期であり、かつ教育 訓練の1つのコースとしてやっているという性格です。  デュアルシステムを本格的な1つの教育訓練の大きな柱、学校教育と就職の中間に位 置する企業と教育機関の連携した実践的な教育システムとして本格的に太い柱としてつ くっていこうと。そうした場合に考えますのは、1つは、短期のものというだけでな く、ある程度一人前になっていくための期間、例えば1年なり2年というものをしっか りやるということ。それから、いま教育訓練機関の1つのコースとして位置づけられて いますが、これをどちらかと言いますとデュアル就職みたいな形で、企業と教育訓練機 関があらかじめコースをつくっておいて、企業から高卒予定の方と接触して、学校など もそういうことを念頭に、1つの就職形態としてデュアル就職みたいなことを普及させ ていくと。言わば企業がデュアル就職という形で期間雇用で受けるということを前提 に、学校の卒業生と接触して1つのコースとして誘導して、学卒から一人前になってい くという仕組みにしていく。言わば企業主導といいますか、そういう形のものにしてい く。そういうことで根幹から見直して大きな柱としていきたいという構想で、いまの研 究会で検討しているところです。 ○五嶋委員  よくわかりました。ありがとうございました。 ○中村(正)委員  いまの日本デュアルシステムに関わる内容ですが、いまおっしゃったように教育訓練 機関主導型と企業主導型、2つあるようですが、教育訓練機関主導型は効果、成果が挙 がっているというふうに話は聞いているのですが、企業主導型はなかなか効果が出てい ないという話を伺っているのです。これはなぜかと言うと、各企業と十分な連携を取っ ていないからこういう形になるのではないかと。これからはこうやっていきますという お話をされていましたが、それには企業と十分な連携を取っていくことが肝要ではない かと私は思っていますので、是非、連携を取った対応をお願いしたいと思います。 ○中村(紀)委員  質問をしたいと思います。45頁の人材教育の在り方の見直しという所です。大学のこ とについて全入時代ということで、今朝の新聞にも国公立のうちのいくつかは統廃合さ れてなくなっていくだろうという記事が出ていました。能力開発の受講生の中で社会福 祉関連の人たちが非常に増えているというご説明が先ほどありましたが、実はその社会 福祉関連の資格を取った方々がすぐ通用するかというと、様々な人対人の関連で仕事を していますから、ものづくりと同じようにフォローアップの研修、レベルアップの研修 は大変必要になってくるのです。  そうした中で特に現職の方々のレベルアップ講座を大学の講座の中に入れ込んでいく とか、専門職大学院というものを大学と組んでやっていこうと、あるいは社会人の中か ら新たにその資格を取りたいという人たちの資格取得講座を取ろうと、こういう動きが 国立大学をはじめとして新たな動きとして産学連携で出始めてきているのです。いま現 在、寄付講座のような形で企業が寄付をする形でそういう講座をつくって、そしてその 現職の人のレベルアップとか、あるいは保育士大学院のような形を推進しようという向 きがあるのです。  今後、こういった能力開発で国公立という大学に向けての関係、連携、あるいは何か その支援、そういうことをどのように考えていらっしゃるか。特にいままでは公共の職 業能力開発施設等々に対してはいろいろ連携があったと思うのですが、通常のこういう 国公立の人材教育に対してはどう考えていらっしゃるかをお尋ねしたいと思います。 ○今野分科会長  どなたにお聞きすればよろしいですか。いまのご質問で国公立の大学との連携という ことですが、是非とも国公立に加えて、私立を入れてほしいと思います。 ○能力開発課長  公共訓練の関係で申し上げると、委託訓練の枠組みで民間の教育訓練機関に訓練をお 願いするという仕組みがあります。その対象として大学も委託をしていただけるような 仕組みになっており、最近では大学の中での例えばMBAの養成講座など少し高度なも のということで、離職者訓練の委託の対象に含めてやれるようになってきています。た だ量的にはそれほど多くないので、受けていただける大学も社会人大学などの類の講座 を持っている所が受け皿としてやっていただけるのではないかと思っています。そうい う所を今後さらに開拓していく必要があると思っています。 ○審議官  その他に、教育訓練給付の講座の指定対象で、大学や大学院の講座も入っており、自 己啓発で受ける分について、大学の講座などを積極的に社会人の能力アップで活用して いただくことは考えています。また全入時代、非常に大学側にも人が入ってこないとい うことで倒れる所も出てきますが、折角の社会的な資産ですから、これから成人の能力 開発はますます必要になりますので、できればそういう方向へ切り替えていただくこと を、地域における産学官の協議会などでもお話はしています。なかなかそこら辺は言う は易く行うは難しということで、教える先生方の問題もあるようですが、簡単に切り替 えがきくような状況ではないということがあります。 ○中村(紀)委員  ありがとうございました。 ○山野委員  やはり先ほどの中小企業のお話に少し付け加えさせていただきたいのですが、定年の 延長というお話を黒澤委員がおっしゃっていましたが、なかなか中小企業というのは大 変な時期が一時あり、高齢者と次の世代とのギャップも結構あり、それで技術の継承が きちっとできるかというと、個々の企業で違いますがなかなか難しい面があるのではな いかということが1つです。あとは海外との競争に勝つためには、技術の高度化、技能 の高度化というのがとても求められると思うのです。それがいまの中小企業の体力で従 業員を教育していくというのは、とても大変なことだと思いますので、ここに書いてい ただいているように、中小企業の技能継承、人材確保に対する支援をしていただけると いうことについては、とても期待を持っているわけです。ただ助成金の対象に各中小企 業を、と書かれていますが、助成金というのは申請してからいただくまでが大変なこと で、私どもの仲間でも助成金をもらえたという人は、仲間のうちでは話題になるくら い、宝くじが当たったかなと思うぐらいの感じです。もらえたという人は何年間に1人 いらっしゃったらいいぐらいで、助成金というのはどのようにすればいただけるものな のか。助成金をいただくためには、どのような書類を、いつどのくらい揃えて、どのよ うにして出すのかは、プロになるぐらい勉強しなければいただけないという噂、話題に なっております。中小企業の経営者はそこまでやる時間もないのが実情です。ここにも 書いてあるように、3〜5人がいちばん多く、東京にもたくさんあるわけですから、そ の辺りの宣伝、PR、アナウンスなりをおやりいただくということは難しいものなので しょうか。もう少し簡単にいただけるようにはならないでしょうか。 ○今野分科会長  いまのご質問の中で、具体的な手続については後から事務局にお聞きいただき、使い やすいようにしてくださいという趣旨だと思うので、その点については室長からお願い します。 ○キャリア形成支援室長  あまり申し上げることはないかもしれませんが、私の直接の関連ではないのですが、 キャリア形成促進助成金で、昨年度に東京商工会議所と一緒に中小企業の研究をしたと きに気が付いたのですが、まずこの制度自体、認知度が低い。実際、私自身も自分が事 業者になったつもりで申請してみようとしたのですが、おっしゃるとおりで、煩雑なの です。簡単に申し上げると、都道府県職業能力開発サービスセンターで、助成金申請に 関するいろいろなサポート事務を行っています。しかし、実際に交付申請を受けて、決 定して、支給するのは雇用・能力開発機構になっています。この辺りにも、確かに見直 しする余地があると考えており、都道府県の職業能力開発サービスセンターと雇用・能 力開発機構の事務の連携は見直していかなければならないと考えています。ただ、今回 のご議論は大きな制度の中でやっていますので、こうしたことは私どもの通常業務の中 で見直していくべきことと考えています。 ○鈴木委員代理(岩松様)  論点整理の45頁、「近年企業においては即戦力志向が一層強まり」とありますが、確 かに中途採用であれば即戦力の方を求めていると思いますが、新規学卒者に対しては、 もちろん即戦力になる人がいればそれに越したことはないのですが、企業としてもやは りなかなか即戦力になる人はいないと考えており、やはり企業に入ってからきちんと育 てようという意識もあります。ここの書き振りを見ると、企業はもう全く即戦力でなけ れば採用しないと受け取られかねないので、この辺が少し気になりました。  先ほどから若年者の職業感、就労意識が稀薄化、多様化しているのではないかという お話もありましたが、この辺はやはり大学教育で勉強は教えるのですが、では企業に入 ってから勉強と仕事はどのように結び付いてくるのか、その辺の関連性がないために、 入ってからミスマッチを起こして、早期に離職する傾向があるのではないかと思ってい ます。もう1つ、デュアルシステムのお話で、中には成果が挙がっている所もあるとい うことでしたが、私の周りの企業の方々にお聞きすると、やはりデュアルシステムとい う言葉自体知らない方もいらっしゃいます。ですからこの辺はもう少し周知を図ってい ただきたいです。インターンシップは今は大分定着しましたので、企業の方々もインタ ーンシップと言えばすぐわかりますが、急にデュアルシステムと言われた場合に、何を したらいいのかわからないかと思うので、プログラム例でもいいのですが、もう少し企 業が導入しやすい方向に持っていっていただけるとありがたいと思いました。 ○今野分科会長  ご意見ということでよろしいでしょうか。いちばん最後のデュアルシステムについて は、皆さん知らないのでもう少し周知を図ってくださいというご意見だと思うので、そ れについて何か、こうして頑張っている、こうやるというようなことがあればお願いし ます。デュアルシステムについてはいま研究会もやっているので、また別途独立の話題 として提案されると思うので、そのときでも結構です。 ○審議官  次回、研究会報告をご説明します。そのときまとめてやりたいと思っています。いま の時点で普及していないのは1つには教育訓練機関のコースの最後部分を委託する形で やっているので、企業の方が直接デュアルシステムをやるという形には全くなっていま せん。教育訓練機関から受けてくれますかというときに、受けるかどうですかという選 択肢しかないような形での展開が中心なので、あまり事業主の方も意識もないというこ とだろうと思います。今後企業型をやっていく場合には、企業が主体ということなの で、やり方も普及の仕方も啓発の仕方も全く違ってくると思っています。その辺は新し いシステムの中で普及できるようにしたいと思います。名称の問題もデュアルと言って もピンとこないところがあるので、日本語でわかりやすいような名称を付け、普及でき るようにして、まとめて次回報告したいと思います。 ○草浦委員  先ほどのご意見と類似していますが、企業が実践的な即戦力志向ばかりを狙っている という表現がありましたが、私もあれっと思いました。新卒の学生については大学でき ちんと学んでくれて、理論的にも学んでくれた学生を選びたいというのが本音です。前 の資料で学部の進路別卒業者数、大学の入学者数、4年後の卒業者数の差がありました が、現在採用する際に、もう学部卒業者が非常に少なくなってきて、特に理系の学生の 8割が大学院卒を採らないと、少し言い方は失礼ですが、昔のレベルの学部卒業者の採 用ができなくなってきているというのが、正直なところ実態ではないかと思っていま す。したがってこのデータにおける大学卒業者の進学率、卒業後の進学者はおそらく 院、あるいは博士課程に進んだ方だと思います。その数字と4年後の卒業者数と入学者 数の乖離、この間には修士あるいは博士等の上部への進学者がかなりの数いるので、こ れが落ちているのではないかと受け取ったわけです。そういうことを見ながら、最後の 45頁を見ると、我々企業としては先ほどの方もおっしゃったように、しっかり学んで理 論的にも裏付けをもって、企業に入ってくれた人を企業としての見方で改めて教育して いく、それで戦力に統合していくというのが、いまの企業のあり方ではないかなと考え ております。その辺をご検討いただきたいと思います。  もう1つは、43頁の団塊の世代、「2007年問題」に関わる所です。やはり団塊世代と いうのは非常に大きな塊であることはご承知のとおりで、この2007年から4、5年間ぐ らいに非常に大量、社員数の10数パーセントが動く段階で、ただその後に続く人たちの ことを考えると、いたずらに定年延長をすることが次の世代の人たちの言うならば閉塞 感につながりかねないという面も絶えず考えておかないといけないということもあり、 なかなか定年延長に踏み切れず、継続雇用をいま検討しているのが実態になっていま す。その中でどのようにして懸案事項の現場力をきちんと伝承させていくのかというこ とが、企業が努力していかなければならない、いちばん大きなポイントになってきてい ると思います。意見ですが言わせていただきました。 ○今野分科会長  主に2点おっしゃいましたが、前者の企業の短期戦力化志向、即戦力化志向について は、こういう資料ですから強めに書いていると思うので、最終的な文、表現を考えてい ただきたいと思います。 ○審議官  おっしゃるとおりでここは即戦力志向というより実践力志向と言った方がいいと思い ます。要するに大学でやっている理論的な面と現場の実践力がやや乖離しているのでは ないかという指摘が中心です。ですから即戦力ということを必ずしも言う必要はないと 思います。2つ目の点は7頁ですが、もちろん大学院に進学される方は卒業者でもある わけで、4年後にきちんと卒業するか、大学院に進むために留年される方もいるかとは 思いますが、基本的には4年後の卒業者に入っているので、入学者数と4年後の卒業者 数の差が年々増加しているということは、やはり中退者、留年者が増えているというこ とです。 ○草浦委員  そちらだけの考え方でいいわけですね。 ○審議官  大学院へ進むこととは直接の関係はないとは思います。 ○中村(正)委員  職業能力評価制度について少し意見を申し上げたいと思います。いま17業種について 策定され、いままでの説明によると一層普及させていく、活用していくという方向で提 起されていますが、そういう観点から3点意見を申し上げます。1つはまだまだ十分な 活用になっていないのだろうという観点からすれば、十分に活用するためには各企業と 十分な連携を取って、周知徹底をさせていただきたいです。2つ目は、ご承知のように もう技術革新がすごいスピードで起こっておりますし、ますますこのテンポが早くなる だろうと思います。こういう中ではこの技術革新に遅れないように、是非適宜見直すよ うな計画も必要なのではないだろうかと思っております。3点目は、先ほどの説明であ りましたし、論点整理にもありますが、この職業能力評価制度というのは円滑な労働移 動を可能にするために整備をしたのだと謳ってあるわけで、そういうことであればこの 制度を是非賃金などの処遇制度に活かしていく必要があるのではないかと考えておりま す。この制度を活かすことにより、労働市場における賃金形成が起こってくる。このこ とが結果的には社会的な公正な賃金あるいは処遇システムの確立につながるのではない かとも考えていますので、是非有効に活用するためにも、賃金や処遇制度に活かすこと も検討してみたらいかがでしょうかという意見です。 ○今野分科会長  いかがでしょうか3点挙がりました。 ○能力評価課長  まず職業能力評価基準の整備は、当然ながら基準を作るときには業界団体の方々に参 画していただき、全面的な協力をいただきながら進めております。したがって基準を策 定した後は各業界団体を通じて、制度の周知を図っていただいていますが、いまのとこ ろまだそういう連携の中でやっていながら、周知に留まっている部分が多々ありますの で、一方で活用していただいている所があるので、そういう所の事例等をよく研究する とともに、これからやっていく中で、団体と連携する中で活用も一緒に見据えて、策定 していきたいと思っています。  いまは17業種で引き続き進めていきたいと思っていますが、大体就業者ベースで全体 の8割ぐらいをカバーした所で、この基準を増やしていくというのは、目的を大体達成 したところになるのかなと思います。そこから先は今度はそれを適宜見直していく段階 に移って参ると思っており、整備がある程度進んだ後については、定期的な検証をきち んとやっていきたいと思います。  処遇につなげていくというのは、なかなかの課題で、例えば技能検定も具体的な業務 独占的な資格ではないので、技能検定制度の意義を高めていくためには、技能検定に合 格した技能士の方々の地位を高めていく、あるいは技能の振興を全体として図ってい く、あるいは業界としてこの制度を主体的に業務振興のために活用していただくことが 不可欠かなと思っております。そういう取組みを通じて処遇に結び付いていく努力も速 効的になかなかできない部分があるのですが、やっていきたいと思っています。 ○今野分科会長  よろしいですか。 ○中村(正)委員  評価制度が全体的に出来上がるのは何年ぐらいになるのでしょうか。 ○能力評価課長  一応毎年度2年がかりで10職種、10業種ずつ追加をしており、平成19年度で一応、従 事就業者ベースで8割を超える段階に入るので、平成19年度以降については、今度は定 期的な見直し、検証の時期に入っていくと考えています。 ○中村(正)委員  ありがとうございました。 ○井上委員  資料35頁に関連して意見を述べさせていただきたいと思います。先ほどから中小企業 に対する支援ということで助成金の話は出ているのですが、訓練機会について意見を述 べさせていただきます。現在、事業主支援という形で雇用能力開発機構では「真に高度 な在職者訓練」が行われていると思います。ただ熟練技能の訓練機会が非常にその確保 が難しい現実に直面しているのではないかということを聞いています。そういう意味で は、在職の段階から、在職労働者の段階的体系的に熟練技能を訓練できる、そういう指 導者育成のための機会、そういうものを体系的に確保していくところで、中小企業の人 づくり支援の流れを重視した中で、助成金という支援、いわゆる能力開発セミナーとい う職業訓練を一体的に提供することが大切ではないかと思います。その辺りはどのよう にお考えかお聞かせいただければと思います。 ○能力開発課長  雇用能力開発機構では、大まかに分けて離職者訓練、学卒者訓練がありますが、在職 者訓練という範疇で企業に在職する労働者に対する職業訓練を実施しております。それ はいまご指摘のとおり、内容的には特殊法人整理合理化計画の中で、真に高度なもの、 民間が行わない、できない真に高度なものをやるということになっており、レベルが高 い訓練をやるという形で現在対応しています。いまご指摘のありました熟練技能につい ても、高度な部分、複合的あるいは管理的な要素が入ってくるような部分については、 引き続き実施するという位置付けになっており、その部分についても引き続き担当して いきたいと思っています。能開機構では雇用促進センターあるいは個々の能開施設にお いて、事業主あるいは事業主団体との接点を持っており、その中でいろいろご相談しな がら訓練をつくっているということもあります。事業主のオーダーに応じて、オーダー メイド型の訓練も作る場合もあるということで、その過程の中で助成金の活用について も、いろいろご相談に乗っているのではないかと思っております。そういう面では実際 に訓練をやるということといろいろな制度を活用して、できるだけ事業主の方たちにう まく受けていただけるような、仕組みも作っております。引き続きその辺はしっかりや っていきたいと思っております。 ○今野分科会長  いかがでしょうか。あまり司会者が質問してはいけないと思いますが私から1つよろ しいでしょうか。技能継承「2007年問題」ですが、もう2005年ですからどうせもう遅い ですね。人材育成というのは5年、10年、20年かかるわけですから、そうすると多分、 短期政策と長期政策をきちんと意識して組み合わせなければいけないのではないかと思 います。その辺はどのように切り分けているのだろうかです。ざっとお話いただきまし たが、この辺はどうも短期の政策かな、この辺は長期の政策かなというのが何となく不 明確なので、その辺について切り分けをうまくしているのでしたら、お話をいただける とわかりやすいと思います。例えば短期政策については、黒澤委員が言ったように対応 して、長期政策では教育訓練でいくなどというのも1つだと思います。その辺はいかが でしょうか。  それともう1つ、技能継承をすると言っても、継承の相手というのがどのような人か により違いますね。だからものづくりの現場で、この人を継承すると言っても、この人 というのはどのような能力で、どういうスキルを持っている人を想定しているのかによ り、政策のイメージも違うのではないかと思います。その辺について何かお考えがあれ ばいかがでしょうか。なければ考えておくでも結構です。 ○総務課長  十分なお答えになるかどうかわかりませんが、今日お配りした資料の中でご説明をす るならば、短期というかまさに2007年を控えた部分での取組みというのは、先ほど申し た相談窓口を作る、団体とコーディネートしてやっていくというような来年度の新政策 で予算要求しているような部分は2007年から向こう2、3年ぐらいを見据えた対策にな るのではないかと思っております。それをさらに長期にやるということになると、2007 年を直接ターゲットにしていると言えるかどうかわかりませんが、先ほど話題になって いるような若者に対するいろいろな取組み、あるいは現場力に対する取組みということ になれば、そこはそういう2007年問題がダイレクトにというわけではないかもしれませ んが、中長期的な方向での我が国における能力開発の方向性という意味では、そちらに 入るのではないかという気がします。ですからそこをこれは短期、これは長期というよ うに切然と分けられるものでは必ずしもないかもしれませんが、大まかに言うとそのよ うな感じなのかなという気はします。 ○今野分科会長  ほかに質問ございますか。 ○井上委員  少し目先を変えて、ユニバーサル技能五輪のパンフレットが付いていたので、何年か 前にプラハでのアビリンピックの模様をテレビでやっていたのを見たことがあります。 今回も大々的にというか、日本でこのようなものが開催されるということについて、プ ラハが4年ぐらい前でしたでしょうか、今回のユニバーサル技能五輪でも同じような形 で、そういうテレビ放映するようなことがあるのでしょうか。非常に見ていて感動する ものがありましたし、そういうもので国民の皆さん、普通一般の方々にこういうものづ くり、あるいはアビリンピックのようなものが広げられると思います。そういう意味で は非常にメディアというものは活用によっては、いい活用の方法があると思います。そ ういうものがもし何かあれば教えていただければと思います。 ○主任技能検定官  いまご指摘がありましたプラハの件については、その後のインド大会においてもやは り同じようにテレビ放映されております。先ほどからもありますように、ものづくりな どについてはなかなかイメージしにくいものであると認識しており、2007年大会を契機 にしていろいろな意味で広報していきたいと思っております。大会そのものは是非テレ ビでも放映されるようにしたいと思っていますが、その時期ですともう遅いので、いま からいろいろな意味での広報をしていきたいと思っており、来月からものづくり技能に 関するシンポジウムなども今年度全国7カ所で予定をしており、そういう形を進めるこ とにより機運を醸成していきたいと思っております。それからこの大会については残間 里江子さんに総合プロデューサーもお願いしており、建築家の隈健吾先生を始め、先生 方に専門プロデューサーとしてもご就任をお願いしておりますので、そういう方々のお 力もいただきながら、マスコミや企業の力もいただき、いろいろな意味で広報を進めて いきたいと思っております。 ○今野分科会長  ほかにございますか。いかがでしょうか。先ほどの「2007年問題」で、ものづくりの 現場で団塊の世代で中核的なものづくりの現場の人というのは、多分大企業でいくと養 成校出身者の最後の世代ぎりぎりかなという感じがします。多分、東芝の方もいらっし ゃるので東芝なども、もうぎりぎりかなと思います。その前の世代は中核的な人は養成 校で2年か3年をかけて養成をして、それで現場に送り出して、中核的な人材にして、 そして他の労働者をその周辺に付けていくというやり方をしてきたわけです。その人材 がもう完全にいなくなるというときに、その後の個々の細かいことはいいのですが、全 体としてそういう中核的労働者の養成の仕掛けはどうするのだろうか。しかも高度成長 ではないですから。いままでの日本の企業では、規模が大きくなり仕事がどんどん増え て、極端なことを言うと仕事が増えているから、自動的にOJTが機能して人材が形成 されてきたわけです。そういう意味での規模成長はなくなるということも条件変化の1 つだと思います。そういう中で今後どうしていくのだろうかは、ここの政策とは関係は ないのかもしれないですが、企業はどうしていくのかなと思います。そういうことも念 頭に入れながら、公的なものづくり人材の育成の仕方の仕組みを考えなければいけない と思っています。皆さんご質問がないので雑談を少しさせていただきました。ご質問ご ざいますか。 ○中村(紀)委員  2005年の技能五輪の話ですが、これは大体どういう方々が会場に見学に来られている のでしょうか。その辺りのデータはありますか。 ○主任技能検定官  お答えします。地元の中学生、高校生や、企業の関係者の方々が大勢いらしていま す。 ○中村(紀)委員  中学、高校、いわゆるやはりものづくりというのは小さいときに見たときの感動とい うのが、将来結構結び付きます。いくらテレビでこれが放映されたとしても、いわゆる 家庭の中にいる中学生、高校生がチャンネルを敢えてそこに当てて見ると私はあまり思 えないので、開かれている地域の中では必ず中学生、高校生ぐらいの方が4日間なら4 日の中に学校単位で視察に行く、見学に行くような形をどんどんされたらいいのではな いかなと思いました。 ○主任技能検定官  これから開かれる山口大会においても、県で学校単位の見学を推進していると思うの で、引き続き進めたいと思います。 ○今野分科会長  ほかにいかがですか。 ○黒澤委員  先ほどから中小企業の助成金の追加はよくないと発言したのではなく、それはそれで 能力開発の必要性は十分あると思いますが、そのときに新たにこういう形でやるのがベ ストなのかなということについて、ご提示いただいた資料でその辺が伝わってこないと いうことを申し上げたのです。もう1点付け加えさせていただくと、35頁にいま支援の イメージということが書かれていますが、このように新たに拡充されると、追加のポチ の定年退職者等を活用したマンツーマンのOJTの実施経費とコア技能、デジタル化・ マニュアル化をして行う訓練経費に限定されてしまうような形になるのでしょうか。下 に技能労働者の雇い入れ支援については別途検討とあるのですが、実はこれがいちばん 助かるのではないかという気はするのですが、この辺りについてご説明いただけたらと 思います。 ○能力評価課長  少しここの表現が言葉足らずということがあるかもしれませんが、いまの基本的な仕 組みは、資料のイメージ図にあるように、中小企業労働力確保法があります。いま現在 の例を申し上げると、中小企業団体として、あるいは個々の中小企業が例えばここで言 うと事業の高度化を図ろうとした際に、そのための計画を策定していただき、その計画 に基づき、例えば対象となる労働者を雇い入れた場合には、雇い入れ助成が行われま す。その計画に沿って高度化のための教育訓練をやった場合には、その教育訓練に要し た費用、例えば企業内でやる場合と企業外に派遣してやる場合とがあると思いますが、 企業内でやった場合には、例えば講師謝金、教材費、外に出した場合には外の受講料等 の一部を助成するという制度です。今回この枠組みをベースにして、技能継承という計 画の枠組みを作ろうということで、その結果どのようなものが支援の対象になるかです が、実はこれは別の部局の職業安定局の施策になります。この技能継承の計画に沿っ て、例えば辞められる方の後の方を雇い入れた場合の雇い入れ助成を並行して検討して います。  私どもの能力開発に関しては、事業内でOff−JTを行って、外部の講師を呼んだ 場合の謝金、Off−JTの期間中の賃金助成、そういういままでの枠組みでやってい たものはそのまま踏襲するということです。今回さらにそういうことに加えて、技能継 承の場合にはやはり事実上は最後はOJTでやっていくのが通例だと思いますし、やは りOJTの部分に関して全く支援しないということであれば、この支援策としての効果 も非常に少なくなってしまうということがあり、ただOJTについては通常の生産活動 と区別できない部分がありますから、基本的には他の助成金では一切対象にしていませ ん。今回はただそう申し上げてもOJTの一定なものは、対象にしていくべきではない かということで、いま考えているのは先ほどのような継続雇用の中でOJTをそのまま 引き続きされるという場合には、これは生産活動としてなかなか対象にしにくいと思い ますが、一旦企業を辞められた、その企業のOBの方を講師という形で現場にお呼びし て、その方が後継者の生産活動をしていく後方支援としてOJTをする場合に、呼んだ OBの方に対して、講師謝金という形で助成をすることはできるのではないか。そうい う形でOJTを取り込んでいきたいということです。  教材費ということの一環としては、技能伝承のためにその企業のコア的な技能の、こ こでいうデジタル化、マニュアル化を図っていくことが実際には不可欠だと思うので、 そういうものに要した費用をこの教材費という位置付けの中で、助成対象にしていこう ということです。そこがいままでの助成金と少し違うものなので、ここの2つを特記し ていますが、それ以外の能力開発に対する支援は同様に対象にしたいと考えておりま す。 ○今野分科会長  ほかにいかがですか。 ○職業能力開発局長  最初に黒澤委員が言われましたが、ベテランが卒業して、フレッシュマンが入ってく るのはいつも変わらないのですが、たくさん出てということで、平均化すると毎年220 万人くらい団塊の世代が卒業して、いまは150万人ぐらいが入職するということでしょ うか。その差があり、平均値で取ると質は下がるだろうということと、ニートやフリー ターが増えているという数字があるので、当然質が下がっているだろうと思いますが、 もっと具体的に大学卒業生、高校卒業生の質が下がっているという調査というのはある のですか。マスとしてはいま言ったような事情で質が低下する。だから遊休資源を活用 する、質のアップを図らなければいけないというのは、能力開発をこれからやらなけれ ばいけないということから要請されているのでしょうが、学校教育などで質が落ちてい るという調査はないですか。 ○黒澤委員  基礎的ないわゆる算数、数学というレベルでは、東大の苅谷先生などが中心になって なさっている経年的な調査で下がっているということがあります。それから企業に対す る調査でこれまたいつの時点でも、最近の若い者はと言うので、そういう意味ではバイ アスがかかっているかもしれませんが、どのように新入社員の質が、どういう面で例え ばコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力という所が劣ってきているかとい うようなことはあります。 ○職業能力開発局長  企業のアンケート調査ですね。 ○黒澤委員  それからそういう学力テストです。 ○今野分科会長  よろしいですか。何か先ほどから大学の教育が悪いような雰囲気になり居心地が悪い です。 ○職業能力開発局長  先ほどのこの書き方が「即戦力」と書いてあるということですが、私たちが卒業した 30年前ごろは、実学よりは理論重視みたいな雰囲気だったのですが、いまはむしろやは り実学、実学をどのような概念規定でとらえるかはありますが、社会に出るに当たっ て、そういう実学を学ぶような学部の方がそれなりに評価されているという時代の変化 はあるような気がするのですが、それはいかがなのでしょうか。 ○今野分科会長  立場が逆転ですね。そちらが質問して、こちらが答えるのですかね。そういう傾向は あると思います。ですから我々経済の関係で言うと、経済学と経営学があると、経済学 の方が人気はないです。1つの例です。 ○鈴木委員代理(岩松様)  いまの私ども日本経団連では、新卒者採用に関するアンケート調査を採っています。 1つは大学の新卒者もあり、東京経営者協会では高校の新卒者に関してもアンケートを 行っています。採用に当たり企業の担当者がどういう面を重視したかを聞いています が、やはり高校生になると、本当に読み、書き、そろばんではないのですが、例えば字 が読めない、会話が成り立たないという人が多いということなのです。ですから本当に 基礎学力をまず身に付けてほしいというのが、企業からの意見です。大学もやはり実際 に面接を行うと、なかなか会話が成り立たないということで、重視する要素としてはコ ミュニケーション能力になっています。ですから皆さんよく企業の方がおっしゃるのは もちろん学力はあった方がいいのですが、いまはそこまでもいかないレベルと言うか、 なかなかその辺がやはり働くということに対してのイメージ、どういうことなのかとい うことが分かっていないような面があるということです。ですから重視するのはコミュ ニケーション能力があるということ。やはりやる気、自分でチャレンジしよう、皆と協 調してやっていこうというような基本的な資質というか、そちらを重視して職場適応能 力が高い、皆とうまくやっていけるような人間性を重視してしまうという結果は出てお ります。 ○今野分科会長  何となく居心地が悪いから一言、言おうかなと思います。大学は大学で本当は言い分 があるのですが、黒澤委員どうぞ。 ○黒澤委員  先ほど自分が申し上げておきながら、きちんと整理して申し上げていなかったので、 一言だけ付け加えさせていただきます。世代ごとの能力の分布が、ずれて全体的に低く なっているかどうかが1つあると思います。もう1つは、やはり高学歴化ということ で、高卒としてのクオリティは大学進学率が高まるにつれてどんどん落ちて、先ほどお っしゃいましたように大学卒というクオリティも高等教育の大衆化により、やはり大学 院卒が昔の大学卒と同じくらいになってきているということは事実としてあると思うの です。ただし全体の分布として、いわゆる不登校などから始まっている形での意欲を喪 失して、ニートという形になってしまう人たちが増えていることは事実です。だからボ トムが膨れ上がってきていることは事実ですし、また例えば中学でのいわゆる教育のカ リキュラムの変化により、算数ができないという形での学力の低下が見られる。しかし ながらそれはもしかしたら創造性の高まりというのが、もう一方であるのかもしれませ んが、いくつかの指標で見た場合の基礎学力が低下しているという事実もあるというこ とです。 ○今野分科会長  黒澤委員に質問してよろしいですか。昔から勉強が嫌いな子はいくらでもいて、私の 同級生もそうですが、お金がなくて大学に行けなかったという子はもちろんいます。嫌 いな子はたくさんいて、でもその子たちは職人になったり、商人になったり、もしかし たら農業に行ったりなどです。その職業の幅がとても狭くなったことは事実なので、そ うすると全員サラリーマンにならなければいけなくなり、そうするとサラリーマンの論 理に合うような形で自分を作っていかないと、職業が得られないということになる。そ うすると勉強が嫌いな人というのは難しいという話になる。そういうことの影響はどう なのですか。 ○黒澤委員  1つの例として、いわゆる「キャリスタ」(注:文部科学省実施の「キャリア・スタ ート・ウィーク事業」のこと)というのがありますね。中2のときから職業教育という 形で本格的にインターンシップ的なことを取り入れているのが兵庫県、富山県です。そ の長期的な評価はまだ出てきていないのですが、短期的な評価の中で不登校の子どもた ちがそういうことを経験することにより、不登校ではなくなるという効果が見られてい ます。つまりいままでのレールに乗った学校教育の中では、学業ができないともう駄目 なわけです。ほかの何かに秀でていても、それを活かせる機会はないような中で、そう いう職業教育の少しでも窓を開けてあげることにより、そういうところでは駄目だった 人でも、これは面白いかもしれない、これだったら僕もやっていけるかもしれないとい うような、新しい世界、可能性を見つけてあげるという意味では、非常に有効なのでは ないかと思います。だからこそ最近になり、特にそういうキャリア教育というものの初 等教育、中等教育への導入というものの意義は、ますます大きくなっているのかなとい う気はします。 ○山野委員  いまのお話に関連して、この人材教育の在り方を読ませていただくと、すべてが大学 を卒業した方を対象に、すべての人が大学のときにいろいろ教育をというように読める のですが、最初の話の中でイメージする職業となりたい職業がありました。それのいち ばん高い職業が、例えば私どもが関係している美容師だったにしても、自分たちが本当 に小さいころからその場所に行って、その仕事の内容というのは熟知しているわけで す。だからすぐイメージできるし、こういうものならなってみたいというように、なり たい職業になれるわけです。ですからいまおっしゃったように、2007年の技能オリンピ ックは、そういうチャンスというのはとても貴重だと思いますので、これはここで話す ることではなく、文科省との関係もあるかと思いますが、中学、高校、本当に小さいと きからいろいろな職業が世の中にはあるのだということをやはり教えていかないと、そ れこそニートになったり、フリーター問題となったりするのではないかなと思います。 ○職業能力開発局長  今野分科会長からもありましたが、周りに職業が少なくなってきているのかもしれな いのですが、最初のときにお金ばかりかけてどうかという意見もありましたが、「私の しごと館」というのも40なり50種類の職種の体験ができるようにしています。そのとき も申し上げたかもしれませんが、最初は進学校というのは相手にもしないような雰囲気 の所があったらしいのですが、やはり進学校の生徒でも行って、いずれにしてもどこか で職業に就かなければいけないわけですから、そうすると進学校の生徒も学業に熱が入 るようになったという意見も寄せられたということも聞きました。ただあれも、いかん せんすぐ成果を求められるとなかなか難しいのですが、いろいろ寄せられる声は、いろ いろな職業があるというのがわかり参考になった、それが体験できたというようなこと です。そういう機会、インターンシップもありますし、いろいろなことをやっていけば と思っています。これには出ていませんが、なりたい職業で花火師というのもこの調査 のときは高かったのですが、あれはNHKの番組の影響だと思うのです。ですから職業 が目の前に出てくると、イメージされて、職業なり職人が目の前に出てくるとそれがイ メージされてることが強いと思います。そういうものをなるべく身近に見られるように していくことが大事かなと思います。 ○今野分科会長  そろそろ時間にもなってきました。今日のお話をずっと聞いていると、訓練、教育な どをもう少し職業と融合させて何か作っていったほうがいいぞという、そのような方向 はもう間違いはなさそうだと思います。そういう点では次回議論になると思いますが、 デュアルシステムもそういうことを向いた1つの仕掛けですので、次回にはゆっくり議 論したいと思います。それから「2007年問題」については、今日もいろいろ議論があ り、その中で教育訓練で対応するという部分があるのですが、もう1つは人材確保、人 材面で対応することも重要な一面だろうという議論がいくつかありました。したがって 人材の確保に関する施策についてはほかの分科会がありますので、そこで是非とも検討 していただきたいと、私から労働政策審議会の会長にお願いをして、ここでの検討状況 もお話をして、いくつかの分科会で総合的に検討していただくことにしようかと思って います。よろしいでしょうか。それではそのようにさせていただき、今日の分科会はこ れで終了といたします。今日の議事録の署名は労働者側委員の井上委員、使用者側委員 の五嶋委員にお願いをしたいと思います。次回の分科会は「若年をはじめとした世代ご との能力開発」をテーマにして議論をしていきたいと考えています。最後に事務局から 次回の日程についてお話をいただきます。 ○総務課長  ただいまお話がありましたように、次回は若年対策を中心に、先ほど議論にも出たデ ュアルシステムの今後の方向性も含めて、ご議論いただきたいと考えています。日にち は11月9日(水)の午後4時からにさせていただきます。場所はここ省議室ですので、 よろしくお願いいたします。以上です。 ○今野分科会長  それでは本日はこれで終了します。 【照会先】厚生労働省職業能力開発局 総務課 企画係 (内5313)