05/10/24 薬事・食品衛生審議会日本薬局方部会 平成17年10月24日議事録 薬事・食品衛生審議会 日本薬局方部会 議事録 1.日時及び場所   平成17年10月24日(月) 午後2時〜   厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(12名)五十音順   ○青 柳 伸 男、 菅 家 甫 子、 楠   文 代、 合 田 幸 広、    小久江 栄 一、 武 田   寧、 富 田 基 郎、 長谷川 鉱 司、   ◎早 川 堯 夫、 前 田 昌 子、 松 木 則 夫、 吉 田 仁 夫    (注) ◎部会長  ○部会長代理   欠席委員(3名)五十音順    乾   賢 一、 水 柿 道 直、 渡 邉 治 雄 3.行政機関出席者   黒 川 達 夫(大臣官房審議官)、    豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 岸 田 修 一(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、   新 見 裕 一(独立行政法人医薬品医療機器総合機構品質管理部長)  他 4.備考   本部会は、公開で開催された。 ○事務局 定刻になりましたので、ただいまから薬事・食品衛生審議会日本薬局方部会 を開催いたします。委員の先生方には、大変お忙しい中御出席いただきまして誠にあり がとうございます。本日は14名の当部会委員のうち、11名に御出席いただいておりま す。なお、乾委員、水柿委員、渡邉委員からは欠席との連絡を頂いております。また本 日、審査管理課長は別の公務により、本部会に出席できませんので御了承いただきたく、 よろしくお願いいたします。本会議は基準に関する審議ですので、公開にて開催いたし ます。御承知おきをお願いいたします。本日は第十五改正日本薬局方(案)について御審 議いただく予定です。よろしくお願いいたします。それでは部会長の早川先生、議事の 進行をお願いいたします。 ○早川部会長 本日はお忙しいところを当部会に御出席いただきまして、誠にありがと うございます。本日は9月28日付けで厚生労働大臣から薬事・食品衛生審議会長あてに 出された諮問書に基づきまして、日本薬局方の改正について皆様方に御審議をお願いし たいと考えております。まず事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。 ○事務局 事前に送付いたしました資料ですが、平成17年9月28日付けの諮問書、資 料1-1〜1-5の5分冊で「第十五改正日本薬局方(案)」。資料2として「参照紫外可視吸 収スペクトル(案)」、資料3として「参照赤外吸収スペクトル(案)」、資料4として「第 十五改正日本薬局方について」、資料5として「第十五改正日本薬局方改正案の概要」 となっております。また、本日配付した資料として当部会の議事次第、座席表、委員名 簿。それから資料6の「第十五改正日本薬局方(案)の修正」は、あらかじめ送らせてい ただいた局方案から変更したいと考えている点について記載した資料です。資料7とし て「漢方処方エキスの日本薬局方収載について」、資料8の「パブリックコメントの結 果」は横紙の一覧表です。資料9の「参考情報14.第十五改正日本薬局方における国際 調和」は、資料1-5の参考情報14の部分が事前にお送りした資料の中に入っておりませ んで、後日配付する旨の御連絡をしたところですので、その分を本日配付しております。 最後に、資料10として「日本薬局方新規収載候補品目(案)について」となっております。 ○早川部会長 資料がおそろいでしたら、審議議題に入りたいと思います。第十五改正 日本薬局方(案)について、事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○事務局 資料4「第十五改正日本薬局方について」を御覧ください。1ページから簡 単に御説明いたします。まず「日本薬局方の作成」ということですが、日本薬局方は薬 事法第41条の規定に基づき、医薬品の性状及び品質の適正を図るために作成されている 基準です。薬事法第41条の規定については、平成14年の薬事法改正により、これまで 第2項に第1部、第2部という構成に係る規定があったのですが、こちらが削除されて おります。これを受けて、第十五改正日本薬局方では大幅な構成の変更を行っておりま す。詳しい説明は後ほどいたします。  2ページは収載品目数の変遷をまとめております。平成3年以降、十二局から十三局、 十四局、十五局と収載品目数が書かれておりますが、御覧のように、第十三改正におい ては十二局と比べ71品目の増加。第十三改正から第十四改正の間は36品目の増加。こ れに比べて、第十四改正から今回御審議いただく第十五改正までの間は、155品目の増 加ということで大幅な品目数の増加が図られていることが分かると思います。  3ページの3.は「第十五改正日本薬局方の作成基本方針等」で、平成13年11月に当 部会において御審議いただいた結果を基に、日本薬局方の改正について日本薬局方改正 基本方針というものを取りまとめております。詳しくは、この資料の7ページ以降に参 考資料1として付いております。こちらでは日本薬局方の5本柱ということで、保健医 療上重要な医薬品を全面的に収載すること、国際調和の推進を図ること、日本薬局方改 正に係る透明性の確保及び日本薬局方の普及を図ること、最新の分析法の積極的導入及 び標準品の整備を促進するといったことが柱として掲げられております。  この基本方針を受け、平成14年12月に当部会で御審議いただきました内容を基に、 「今後の日本薬局方のあり方」ということで取りまとめが行われております。これはこ の資料の14ページ以降、参考資料2として付いております。この中では局方の収載規則 を具体的に示しております。通則、一般試験法などの策定方針についても具体的なこと が述べられております。平成14年12月には「第十五改正日本薬局方原案作成要領」、 平成16年1月には標準品の品質標準原案についての提出資料、及びその内容について取 りまとめた文書を、事務連絡としてそれぞれ出しております。こういったものを受けて、 今回第十五改正の日本薬局方(案)を作成しているという状況です。  次に、4の「日本薬局方の審議体制」について御説明いたします。平成16年4月に独 立行政法人医薬品医療機器総合機構が設立され、日本薬局方原案の作成は総合機構の方 で行うこととされました。これに伴い、局方の原案審議に必要な委員会をすべて総合機 構において設置しております。具体的には5ページに、「平成16年度からの日本薬局方 作成審議組織」という図が書かれてありますが、右側部分、医薬品医療機器総合機構の 総合委員会の下に18委員会が設置されており、ここで詳しい原案の審議を行っておりま す。なお、厚生労働省では引き続き日本薬局方部会、また、この部会の下に日本薬局方 調査会を設け、局方の作成方針の決定、収載品目の決定といった事項について決めてい くこととなっております。  6ページの5の「第十五改正日本薬局方の審議経過」には、十四局第二追補以降の審 議の経過について書かれております。平成16年1月から今年8月まで局方原案の審議を 行い、平成17年9月に総合機構から厚生労働省の方に、日本薬局方原案の報告をいただ いております。この結果を受けて、今年9月7日〜10月7日の1か月間、この原案につ いて厚生労働省のホームページにおいて意見募集を行っております。意見募集の結果を 踏まえて、本日10月24日日本薬局方部会で御審議いただくということになります。  第十五改正日本薬局方原案の概要について、資料5を基に簡単に御説明したいと思い ます。1ページの1.通則についてです。(1)医薬品各条の構成について規定するという ことで、冒頭に申し上げたとおり、薬事法第41条の規定が改正されたことをもって、局 方の構成について、改めて通則4ということで規定をいたしました。具体的には、この 資料の4ページにある通則の新旧対照表の一番下の4に、局方の構成についての記載が あります。生薬総則を適用する生薬及びこれらを有効成分として含む散剤等の製剤を「生 薬等」として一くくりにまとめて、これを医薬品各条の末尾に配置するといったことを 規定しております。新旧対照表の次ページ、通則5で適否の判定基準に関して、性状の 項の取扱いを整理することとしております。  1ページに戻りますが、2.製剤総則についてです。(1)として、製剤通則において、 添加剤の使用目的や使用規制について、より明確な規定となるような改正を製剤通則 (2)で行っております。(2)として、経口製剤について、即放性製剤と放出調節製剤を 規定しております。(4)は新たな剤型として、経皮吸収型製剤の追加を行っております。 (5)錠剤について、糖衣錠、フィルムコーティング錠、徐放錠、腸溶錠といったものを 規定しております。  次に、3.生薬総則についてです。(2)に「通則4の改訂に伴い」とありますが、これ は「通則5」になります。先ほど適否の判定基準に関して、性状の項を変更したことに ついて説明いたしましたが、それに伴い、生薬総則について、生薬の適否の判定基準に 関する規定を改正しております。具体的には生薬総則5に規定されております。今回の こういった改正を受けて、生薬については生薬の性状という項を、今まで単なる「性状」 だったのを「生薬の性状」という項に変更しております。これは、これまでの化学薬品 類での性状と生薬の性状というもので、適否の判定基準に関しての取扱いが異なるので 明確化するということで変更を行ったものです。  生薬総則の順番についてですが、あらかじめ送らせていただいた資料では、通則、製 剤総則、生薬総則、一般試験法といった順番になっていましたが、この順番を変更して、 通則の次に生薬総則、その後に製剤総則、一般試験法の順に制定したいと考えておりま す。これは現行の日本薬局方の第2部の順番でも、通則、生薬総則、製剤総則、一般試 験法という順番になっておりますので、これまでの取扱いと同様の順にするということ でこういった順にしたいと考えております。  次は4.一般試験法についてです。大きな変更点の一番目として、(1)質量偏差試験法 と含量均一性試験法を統合して、製剤均一性試験法として一つにまとめております。ま た、14の試験法について改正を行っております。14の試験法のうち6試験法については、 国際調和ということで日本薬局方、欧州薬局方、米国薬局方の3薬局方の調和に伴う改 正となっております。2ページの(3)には削除する予定の4試験法について書かれてお ります。(4)ですが、今回一般試験法をカテゴリー分類して、各試験法に固定番号を付 与することとしております。この資料の39ページに一般試験法のカテゴリー分類という ことで、化学的試験法、物理的試験法、生物学的試験法、製剤試験法といったように、 一般試験法をカテゴリー分類してそれぞれに番号を付しております。  2ページに戻り、5.医薬品各条について御説明いたします。今回、十五局においては、 新規収載品目として102品目を新たに収載することを予定しております。これは十五局 作成基本方針に基づき、保健医療上重要な医薬品を積極的に収載するという方針に基づ いて新たに収載するものです。102品目のうち、化学薬品は55品目あり、例えば保健医 療上重要な医薬品といったことで、汎用されている医薬品としてタムスロシン塩酸塩、 プラバスタチンナトリウム、ボグリボースといったものを収載しております。また、マ ラリア予防薬といったオーファンに指定されている医薬品として、メフロキン塩酸塩と いったものの収載も行っております。さらに、生物薬品としてセルモロイキンやテセロ イキンといったIL-2関係の医薬品の収載も行っているほか、添加剤としてカプセル基 剤としてプルランも、今回収載を行っております。十五局においては、漢方処方エキス 6品目として葛根湯、補中益気湯エキスといった汎用されている漢方処方エキスについ ても収載することとしております。漢方処方エキスについては、後ほど詳しく御説明い たします。新規収載品目102のほか、275品目について各条の改正を行い、セクレチン 等8品目について削除を行っております。  (2)は日本名の改正ですが、これは第十五改正日本薬局方の改正の中でも非常に大き な点になると思います。日本名、いわゆる正名399品目について改正するというもので す。日本名の改正の方針については、2ページの四角囲みに書かれてありますが、薬効 の本質成分を名称の最初に表記する、エステルを表記する、水和物については水和物を 表記するといった方針に従って日本名の改正を行っております。なお、十四局の正名は、 今回の十五局では別名として収載する方針です。2ページの四角囲みのところに2か所 誤字があります。ii)の「四級アンモニウム塩の場合は、『○○○***化合物』」とあ りますが、これは「化物」です。v)の上から2行目、括弧内に「二後表記」とあります が、これは「二語」です。  3ページの(3)は「日本名別名の削除について」ということで、(1)倍散表示の別名に ついて削除するということです。括弧の中にあるように、これまでは塩酸エフェドリン 10倍散といった倍散表示が別名として残っていましたが、これは医療事故防止の観点か らも使用は望ましくないということで、今改正をもってこの別名は削除する予定として おります。(4)は「構成の変更について」ということで、先ほど通則4で御説明しまし たが、医薬品各条については、生薬類とそれ以外ということで二つに分け、いわゆる化 学薬品類を冒頭に持ってきて、その後ろに生薬類を記載すると。各生薬類、化学薬品類 のところはそれぞれ五十音順に並べ換えるという変更を行っております。医薬品各条の 収載順については一点変更があり、コメデンプンが化学薬品類のところに分類されてお りましたが、これについては生薬総則を適用するということですので、コメデンプンに ついては生薬類の方に分類したいと考えております。  (5)の「一般試験法の固定番号の表示について」ですが、これは実際の例を見ていた だいた方が分かりやすいと思いますので、資料1-2、局方の医薬品各条の原案を御覧く ださい。化学薬品が入っている部分ですが、1枚めくっていただいて右の方にアクチノ マイシンDというのがあります。こういったものについて、確認試験(1)の2行目です が、「紫外可視吸光度測定法」といったときに、この後にこの試験法の固定番号である 2.24を括弧書きで記しております。262ページの左上に「旋光度〈2.49〉」、「乾燥減 量〈2.41〉」といったように、各試験法の固定番号を医薬品各条に付すことによって、 どの一般試験法による結果なのかが分かりやすく表記されることとしております。  資料5に戻り、3ページの6.その他の(1)、医薬品各条の日本名正名が変更されるこ とは御説明しましたが、この改正に伴い、日局標準品についても名称を変更することと しております。今回、日本薬局方標準品について24品目を新たに追加、10品目の削除 を行っております。(2)ですが、通則44の規定に基づき、欧州薬局方、米国薬局方との 調和合意に基づき規定した一般試験法や医薬品各条には、それぞれ冒頭に国際調和に基 づき規定したものである旨の記載をするとともに、具体的な試験法や医薬品各条には、 調和事項と異なる部分を黒い四角で囲むことにより、どの部分が異なっているかという ことを明記することとしております。本件については、前回6月の局方部会で採取容量 試験法について御審議いただいたときに御説明させていただきましたが、今回は採取容 量試験法以外の試験法で局方に収載されている一般試験法で、国際調和された10試験 法、医薬品各条、具体的には添加物ですが、添加物の24品目についてこのような記載を 入れております。  資料6の「第十五改正日本薬局方(案)の修正」を御覧ください。1は通則等の規定順 で、先ほど生薬総則のところで御説明いたしましたが、生薬総則の順番を通則の次に持 ってきたいというものです。2はコメデンプンを生薬類に分類するというものです。3 は日本名の変更ということで、お配りした資料にはセファクロル徐放顆粒となっており ましたが、セファクロル複合顆粒と名称を変更させていただきたいと思います。そもそ もこの顆粒については、胃で溶ける胃溶性顆粒と腸で溶ける腸溶性顆粒を含む顆粒剤と いうことで、特に徐放化を施したものではなく、二つの顆粒を混ぜただけですので、名 称としては複合顆粒とした方が適切だということで名称を変更したいと考えておりま す。4の溶出性の規定ですが、今回、医薬品各条に溶出性について規定を行っておりま す。このペーパーにある6品目の溶出性については、具体的な試験法ではなく、別に規 定する形で各承認書の規定によることとさせていただきたいと思います。以上四点が変 更点になります。  資料7の「漢方処方エキスの日本薬局方収載について」、合わせて、資料8の「パブ リックコメントの結果」という一覧表を御覧ください。資料8のパブリックコメントの 結果は、9月7日〜10月7日の1か月間、厚生労働省のホームページにおいてパブリッ クコメントを取った結果について、その意見概要と意見提出理由、それに対する回答(案) を取りまとめているものです。こちらの表には102件コメントがありますが、実際に厚 生労働省にはこれ以外に参考情報の部分に関して寄せられた意見、局方原案そのもので はなく運用上の取扱い、あるいはパブコメのやり方について寄せられた意見というのも ありました。それらについては102件の中には入っておりません。  最終的にパブコメに対する回答は、告示までに厚生労働省のホームページ上で正式に、 理由も付けた上で掲載、公表することを考えております。取り急ぎ、回答案は原案どお りといくのか、意見を受けて訂正をするのか、今後の局方審議の上での課題とするのか ということについて、概略を分けて書いております。このうち幾つかの点については、 回答案のところに委員会で対応と書かれています。五つの意見については委員会で対応 となっていますが、これらについては総合機構の方の委員会で個別に専門家による審議、 検討を行った結果を踏まえ、適切な改正を行いたいと考えております。このパブリック コメントの中に、漢方処方エキスの収載について意見が寄せられております。具体的に は資料8の最後のページの98の「漢方処方エキス」に、漢方処方エキス各条の公的基準 としての妥当性について御意見を頂いております。今回、漢方処方エキスについては十 五局で新たに収載することになっておりますので、その考え方について、資料7の「漢 方処方エキスの日本薬局方収載について」として1枚用意しております。  冒頭申し上げたとおり、十五局の作成基本方針の一つに、保健医療上重要な医薬品の 全面的収載による充実化ということをうたっております。したがって、汎用されている 漢方処方エキスの収載について、この基本方針を受けて検討を行ってきており、審議が 終了した6処方について、今回収載をしたいと考えております。また、パブリックコメ ントの中で、1日量として含量規格、製法を規定するのは不適切ではないかとの御意見 を受けて、資料7の変更案にあるとおり、1日量ではなく、「製法の項に規定した分量 で製したエキス当たり」といった表現で、1日量当たりとした記載を削除することで現 在考えております。長くなりましたが、十五局の原案についての説明は以上です。 ○早川部会長 ありがとうございました。大改正としては、十四局以来5年ぶりという ことになります。その間に第一追補、第二追補、部分改正が出ておりますので、今回こ こに出された資料は、その後のことを網羅した改正案ということです。ただいま御説明 があったとおり、実際には、その後の内容については平成16年1月から平成17年8月 までの間の改正作業、それに対する意見募集の結果といったものを集大成したものです。 説明にもありましたが、19の専門委員会、約160名の専門委員、それから委員会の開催 総数で申し上げると、この1年半ぐらいの間に175回、延べ500時間以上の正式な委員 会を開催しております。その他、5本柱の一つにうたわれているように国際調和の推進 ということでございまして、国際会議への出席、いろいろなディスカッション、更には 公式ではありませんが、各委員会間でのさまざまな打合せ、調整、当然のことながら、 事務局においては、先ほどの委員会の時間の何倍もの時間を掛けていろいろな作業に当 たられた、そうしたものの集大成です。  結果的に前の薬事・食品衛生審議会の答申に掲げられた、保健医療上重要な医薬品の 全面的収載による充実化に関しては、十四局から言えば、各条で155品目、今回の改正 だけですと102品目の新しいものがあります。一般試験法でも新規1、改正14、医薬品 各条の改正でも275です。更には、国際調和を反映した様々な改正が盛り込まれている ということです。繰り返しになりますが、資料5の通則、製剤総則、生薬総則、一般試 験法、医薬品各条といったものについて様々な改正がなされるというところです。これ を最後の半年で取りまとめることがこの部会の役割ですので、委員の方々の忌憚のない 御意見、あるいはコメント、質問等がありましたら、よろしくお願いいたします。いか がでしょうか。 ○菅家委員 資料1-1の6ページですが、これは製剤総則の一部で、製剤総則の中の6 のカプセル剤についてです。(2)の(ii)の「軟カプセル剤は」から始まる3行目、「カ プセル基剤にグリセリン又はソルビトールなどを加えて塑性を増し被包したものを、一 定の形状に成型する」となっていますが、この文章を読むと、被包してから成型すると 読めるのです。実際には、被包と成型が同時に行われるのが一般的な作り方だと思うの で、ちょっと工夫が要るのではないかと思いました。それが一点です。  もう一点は7ページの10の経皮吸収型製剤、これは十五局から新たに加わったもので す。(1)に「経皮吸収型製剤は、皮膚に適用したとき有効成分が皮膚を通して全身循環 血流に送達すべく設計された剤型である」となっています。ほかの製剤総則全部を見て も、定義のところで「剤型である」と言っているものはないのです。ですから他と合わ せて、「設計された製剤である」の方がほかとの調和がいいかなと思いました。それか ら(2)の最後の3行ですが、「また、有効成分と基剤又は添加剤からなる混合物を放出 調節膜及び支持体でできた容器に封入し」とありますが、容器という言葉はそぐわない、 適切ではないように感じるのです。特に学問的うんぬんということではないのですが、 例えば支持体でできたデバイス、あるいは放出体といった言葉の方がいいと思います。 ○早川部会長 ただいま二点コメントを頂きましたが、一番目のカプセル剤について、 (2)の(ii)の軟カプセルのところですが、この作り方が実態に即した表現にした方がい いというコメントを頂きましたけれども、先生の方で何かうまい表現の御提案はありま すでしょうか。 ○菅家委員 特にございません。 ○青柳部会長代理 製剤委員会の座長をしておりますが、これは変更していない前のま ま来ていると思いますけれども、実態を見たら、確かに包みながら軟カプセル化させて いますから、少し表現を考えなくてはいけないかなと思っています。もう一つのところ も、剤型というのは確かにここだけですので少し唐突な感じがしますから、これも表現 の変更が必要かと。最後の容器というのは、確かに容器とは何かを封入するものだとい うことで、これは多分USPかEPから訳して書いた可能性もあるのですが、そのとき の訳がこのようになっていたかもしれないので、それを見ながらちょっと検討してみた いと思います。 ○早川部会長 経皮吸収型製剤のところは、先生の御提案では設計された製剤であると すればいいのではないかということですが。 ○青柳部会長代理 これも多分英訳して製剤とするか、剤型とするか。 ○早川部会長 もし差し支えなければ、取りあえずここで決めた方がいいのではないか と思います。 ○青柳部会長代理 今までは「ものである」という表現が多いのです。 ○早川部会長 「製剤」の代わりに「もの」でよろしいですか。 ○菅家委員 例えば11の懸濁剤・乳剤だと、「液状の製剤である」となっております。 ○青柳部会長代理 そうすると製剤の方がいいかもしれないですね。 ○早川部会長 いろいろな表現があることに今気が付いたのですが、散剤は「ものであ る」となっていて、次の酒精剤は「製剤である」と交互になっているようです。 ○青柳部会長代理 こういうことは余り考えていないですね。 ○早川部会長 これは統一していただいた方がいいですね。「製剤」もしくは「もの」 のどちらかですね。 ○青柳部会長代理 多分剤型か製剤か悩みながら訳したと思いますので、製剤の方がい いかもしれません。 ○早川部会長 では製剤ということで決めさせていただきます。先ほどの「塑性を増し 被包したものを、一定の形状に成型する」ですが、ここは同時進行形ということですね。 ○菅家委員 例えば、「一定の形状に被包成型する」といった言葉がいいと思います。 ○早川部会長 「塑性を増し」はいいですか。そうすると、「ソルビトールなどを加え て塑性を増し、一定の形状に被包成型する」となりますが、このような案でいかがです か。 ○青柳部会長代理 よろしいかと思います。 ○早川部会長 もし異論がなければ、そのようなことで決めさせていただきたいと思い ます。最後の容器のところですが、先ほどデバイス若しくは放出体と言われましたが、 その趣旨から言えば放出体の方がいいような気がします。 ○青柳部会長代理 片仮名は余り使っていないですね。 ○早川部会長 デバイスではなく放出体ということですね。 ○青柳部会長代理 放出体とはどのような…。 ○早川部会長 放つ、出る、体です。多分この剤型のある種の特徴を表しているだろう と理解できますので、取りあえずここではそのような形にさせていただきます。どこの 項目でも結構ですが、その他はいかがですか。 ○富田委員 温度の範囲をきちんと「〜」でやってくださって非常にいいと思うのです けれども、ちょっと分からないのは資料1-1の通則のところの29で、「20±5℃」のよ うに、「±」で温度が書いてある場合があります。誤差範囲とか許容範囲ならいいので すが、「15〜25℃」と書いた場合とこのように書かれた場合とでは、薬局方で何か違い があるのでしょうか。 ○早川部会長 何ページでしょうか。 ○富田委員 1ページの通則の15で「15〜25℃」と、今回は室温などは書かないで原則 としてこのように書くようにしたわけですね。ところが通則29、2ページの左側の一番 下です。ここで溶解性を示すのに、「20±5℃」と書いてあります。この「±」の使い 方と「〜」の使い方が、誤差数ならば分かるのですが、温度で5℃も上がるときに、こ れを「〜」で書いたら何がいけないのかというのは読んでいて少し疑問を感じたのです が、「±」の書き方と「〜」で温度の許容範囲を示すのとでは、何か薬局方の考え方で 違いがあるのかどうか教えてください。 ○早川部会長 どなたかお答えいただく方がいらっしゃればと思いますが、いかがです か。 ○富田委員 誤差範囲だと思うから測れないのだということは分かるのですが。 ○青柳部会長代理 ±を付けてある場合20℃というのは目標温度なのです。なるべく20 ℃でやって、±5℃までは許容しましょうということで、「15〜25℃」と書くと15℃で やってもいいということになってしまいますが、できるだけ目標温度でやってください という意味が入っているのです。 ○富田委員 大体そうかなと思ったのですが、それは実験者にとって何か意味があるの かと。 ○青柳部会長代理 特に、溶解度の場合には15℃でやるか、25℃でやるかによって溶解 度の値が大分違ってきますので、なるべく標準温度の20℃に近いところでやってくださ いと。ただ、コントロールが非常に難しいと思うので、15〜25℃の変動が許されている のですけれども、目標としては20℃ということに意味があると思います。 ○富田委員 今の溶解性を示すのだったら、±5というのはちょっと許容範囲が広過ぎ ますし…。 ○青柳部会長代理 正確に溶解度を求めるのであれば、このような±5℃というのはと んでもない話で、0.5とか0.05℃ということはあるのですが、昔の局方では単に溶ける か、溶けないかの性状ですのでこのように書いているかと思います。 ○早川部会長 今御説明があったように、29のところは20℃が目標値で、5℃の許容が 広い可能性もありますが、精神としては20℃が目標値ということです。1ページの15 は、標準温度・常温・室温等々はもともとこういう規定で書かれていた、もとからこの ようなことであったのを、今回具体的な数値で記載すると直したのです。そうは言いな がら、以下の基準を用いることができるということで、従来の通則法はこのように書い てあるというふうに…。 ○富田委員 ここで気になったのは今のように「±」で書く場合と「〜」で書く場合に、 何か精神が変わってくるのでしょうか。 ○早川部会長 例えば、室温1〜30℃というのは、室温というものはこのような定義で あるということを示しているもので。 ○富田委員 今度は新しく数値を書けと書いてあるので、その場合書き方を何か新しく するのかということがちょっと気になったのですが、「±」を使っても「〜」を使って も、どちらでもいいということですか。 ○早川部会長 できれば数値で記載するのですが、室温と書いても…。 ○富田委員 具体的に数字で書く場合です。 ○早川部会長 どこまで深い議論がされていたか、武田委員は何か経緯を御存じですか。 ○武田委員 経緯は知りません。 ○機構 事務局からよろしいでしょうか。資料4の26ページを御覧ください。こちらに 第十五改正の日本薬局方の原案作成要領があって、左側の上から二つ目、「2.4.3温 度の表記における許容誤差」のところです。「試験操作法などにおいて、一点で温度を 示す場合、その許容誤差は、通例、±3℃とする。また、原則として、約○℃という温 度の表記は用いず、試験操作法などの必要に応じ、37±1℃又は32〜37℃のように範囲 を明確に設定する」ということになっております。おそらくこの試験の場合には、20℃ ±5℃の幅のどこかで試験を行うと。ただ、その幅の目標は20℃ですが、それ以外のと ころでもいいということでこのような書き方になったと思います。 ○富田委員 精神はやはり中央値を目標として取りなさいということと、どこでもいい ですよということと考えていいわけですか。違いがあるということですね。 ○早川部会長 ほかに何かあればお願いいたします。 ○楠委員 私は教育分野におりますので、一般試験法のカテゴリー分類をしたのは大変 いいと思うのですが、カテゴリー番号そのものを十五局に付けて、仮に十六局になった ときにこの番号が変わると、方法は全然変わっていないのに、しょっちゅう番号が変わ ることになるのか、あるいは医薬品の登録番号のようにそろうのか。教育の現場からす れば、できればそろってほしいと願うのですが、いかがでしょうか。 ○早川部会長 これは変わることは一切ございません。ある試験法が削除されれば、そ の番号は永久欠番になります。ほかにいかがでしょうか。この際ですから、どんなこと でも結構です。 ○武田委員 総論的な話になるのですが、今回漢方処方エキスあるいは製剤が新規収載 されておりますが、日局の収載ということの意味合いについての理解を確認しておきた いところがあります。日本薬局方に収載されている規格に適合する医薬品というのは、 承認を受ければ日本薬局方を標榜して日本薬局方何々と表示されて世の中に出ていくと 思うのですが、日本薬局方と表示された医薬品というものは、医療上同等であるという 認識が一般的ではないかと感じております。これは日本薬局方が制定された100年以上 前の話で、今回の資料には載っておりませんが、薬局方の沿革に書いてありますけれど も、名前が同じで質が違うもの、あるいは名前は違うが同じようなものなどは薬事規制 の上でいろいろな弊害を起こし得るので、そういった弊害を防ぐために薬局方を制定し たところから始まっていると思います。ですから、日本薬局方に適合するものについて は同じ名前で流通して、医薬品としては同等であるという受け止め方が一般的ではない かと思います。そのような目で今回の新規収載のものを見てみると、その辺のところが どうなっているか分からなくなってくるところがあります。  例を挙げると、一つは漢方処方エキスです。漢方処方エキスは処方が書いてあり、そ の製法欄には、「規定されている割合で生薬を取り、エキス剤の製法により乾燥エキス とする」となっております。実際のエキス剤の製法というのはいろいろあろうかと思わ れますが、既収載のものにエキスもあります。例えば甘草エキス、ベラドンナエキスと いったものは、エキスの製造について浸出液とか時間などといったものがある程度書か れておりますが、今回の漢方処方エキスでは、製法については一切何も書かれていない。 そうすると、同じ原料生薬を同じ配合比率で用いても、出来上がってくる処方エキスの 組成というものは必ずしも一定とは限らない。それに対して品質規格が設けられており、 確認試験によって組成となる生薬を確認する。それから定量法で構成生薬の指標成分を 定量することで、品質規格としては出来上がってきております。しかし、組成生薬のす べてについて確認あるいは定量といったものが規定されているわけではないので、製法 の違いによっての品質のばらつき、変化が考えられると思いますが、それを日本薬局方 何々エキスという形で流通することによって、それが医療上同等であると考えてよろし いのかどうか、そのような裏付けがあれば結構だと思います。  もう一つの例が徐放性製剤です。セファクロル徐放顆粒は複合顆粒ということで徐放 性製剤ではありませんが、ベザフィブラート徐放錠というものが今回新収載で出てきて おります。これは徐放性製剤ですので、放出制御機能の規定をすることによって、医療 上の同等性が確保できると思うのですが、薬局方に規定されているのはベザフィブラー トに関してはpH7.2の緩衝液でパドル法50回転1.5時間、2.5時間、8時間後の溶出率 が規定されているわけです。ベザフィブラートを主成分とする徐放性製剤であれば、放 出制御機構のいかんを問わず、この薬局方に規定された規格に適合するものは日本薬局 方ベザフィブラート徐放錠と称することになります。  そうすると、現実には徐放性製剤設計によって薬局方に規定されていないpHでの溶出 パターンといったものが異なってくる可能性もあるわけですので、単に薬局方の規定に 適合するから日本薬局方のベザフィブラート徐放錠であるという形で流通してくると、 臨床上の同等性が保証されないようなものが出回ってくるという危惧があります。日本 薬局方医薬品というものは、臨床上同等であるという方針に変わりはないのかどうかと いうことを確認したいと思います。そうであるならば、薬局方にこのように規定された ものを、運用上、臨床上の非同等が生じないような運用の仕方について、厚生労働省で はどのように考えているのか伺えればありがたいと思います。 ○早川部会長 ただいまの御意見について、何かお答えいただけることはありますでし ょうか。ポイントは日本薬局方医薬品は医療上同等であるというのが原則で今まできた と、これからもそうなのかということだと思いますが、そうでない可能性のものもこれ から出てくるかもしれないので、それに対してどのような対応をしていくかという話で あったかと思います。 ○武田委員 もう一つ。徐放性製剤で、本日事前配付資料に修正があって、溶出性は別 に規定するというものがありましたが、薬局方の上での矛盾というか不都合、問題は一 応回避できるわけですけれども、別に規定するということはどのようなことかと申しま すと、承認時にその規格を審査するということです。そうすると、別に規定するという ことで局方で規格が一本化されていない場合には、それぞれの申請内容に応じて審査、 承認されることになり、結果的にそのものは日本薬局方何々錠ということになって、そ のものの放出特性はイクイバレントでないということになり得るわけですので、実際に これを運用していく上でそのようなことをどう対処するかを考えておく必要があると思 います。なお、溶出性が異なるからバイオ・イクイバレントでないということではあり ませんが、溶出性というin vitroの試験で、生物学的同等性を評価しようという代替指 標でありますので、代替指標であるからそれは多少違ってもいいということには必ずし もならないのかなと思います。要するに、日本薬局方何々と標榜した医薬品が、臨床上 でイクイバレントであるのかどうか。これは将来の一般名処方というものにもかかわっ てくるのではないかということで発言をした次第です。 ○早川部会長 別に規定するという事項が出てきたときに、日本薬局方の医薬品は、日 本薬局方に記述されたことのみで同一であるという一つの流れは、そこで違った展開を 見せたのだろうと思います。つまり、かつてはというか、局方の医薬品は各条で言えば、 医療上の同一性をすべて局方上の規格及び試験方法で担保するという形で作られてきた ということだと思うのです。別に規定するという項が現れてきたのは、いろいろな製造 方法の違いもありますし、今指摘された溶出性において異なるものもある。逆に、一つ の共通の規格あるいは試験方法にしてしまうと、かえって不都合が生じるというところ から、それは別途承認事項として規定してあるということだと思います。  逆に言えば、日本薬局方の医薬品に登場してくる、つまり候補として挙がってくるも のは、もともとは新薬的に言えば承認審査を受けて、その時点での科学的水準で有効性、 安全性がよろしいと。それに必要な品質はどのようなことかという形で承認され、ある 一定期間以上、5年か10年か15年かによって違うと思いますが、相当以上の医療上の 使用という経験を前提にして、そこから薬局方の医薬品の収載候補として挙がってきて、 それについての品質規格をそのときの基準に照らして、もう一度見直して収載している と。そのときの見直し方が、かつてはすべてを表現しようとしたわけですが、現在は、 すべて表現するのは必ずしも適切ではないものもありますので、それぞれの個性に任せ てあるところはそれぞれの承認事項として別に取ってあるという理解をしております。 これからの方針もそのようなことを前提にしながらやっていくのだろうとは思っており ます。事務局から何かありますか。 ○事務局 基本的な考え方としては、局方に載っているもので、一つのモノグラフに入 っているものであれば、臨床上ある程度の同等性は担保されているべきものであると考 えられると思います。ただ、先ほどベザフィブラート徐放錠について、この溶出規格だ けでは不十分であるといった点について具体的に御指摘をいただきましたが、例えばこ れの後発品が出てきた場合についても、この局方の規格だけではなく、それ以外の試験 データも見ております。したがって、この溶出性についてpH一点だけでの規格しか局方 上にはありませんが、承認審査上は通常4液性でのデータを見ていますので、そういっ たものを必ず同等と考えられる先発なりと比較して担保しているということで、各承認 書上でそれぞれの臨床上の同等性も含めて承認を行い、世間一般に局方品として流通し ていると考えております。  また漢方処方エキスの一部のものに関しては、すべての構成生薬成分について確認試 験や含量規格が設定されていないものについて御指摘を頂いておりますが、確かに御指 摘のとおりでございます。ただ、現在の科学のレベルでは、すべてのものについてなか なかきちんとした指標成分を設定して、規格を定めることができておりませんので、こ れについては引き続き研究を進める中で、もし適切な指標成分なり方法が見付かれば、 随時規格の内容を改正していく、より良いものにしていくということで考えていきたい と思います。 ○武田委員 徐放性製剤の場合に4液性での比較ということで、それもそうですが、現 在の先発、後発という関係であれば、後発は先発に合わせるということで、相対的な評 価ができるわけです。今のところは、局方外の製剤についてはそのような評価がなされ ていると思いますが、これがいったん薬局方ということになると、新規の薬局方製剤の 承認に当たって、何と比較するか。結局、先発、後発の関係ということは親子関係がは っきりしているわけですが、これが公定規格というか、日本薬局方ということになると、 本当の親が見えなくなってきてしまう。そうしますと親と子という関係なのが、子と孫 ということになると、孫同士といいますか、いとこ同士のところで同等性の確保という のがかなり難しくなるのではないかという気がするのです。  薬局方でこのように改正した場合には、その後の品質、特にこのような製剤に関して は同等性、別に規定するというのが原薬の場合には、製法由来の不純物、残留溶媒など を別に規定するといった製法とリンクした形での規定ということですが、溶出性という ものは、製剤の生体内での挙動というか、バイオアベイラビリティの規定をすることに なるので、原薬の不純物などを別に規定することとは意味合いが違うような気がします。 結局、それはいかに運用するかということで、薬局方はこのようなことで、それはそれ でいいと思いますが、それによって薬局方の収載医薬品に非同等が生じないということ には、やはり運用に十分注意なり、そのようなことを考える必要があろうかと思います。  それから漢方処方製剤について、臨床上の同等性ということは非常に難しい問題だと 思うのです。厚生労働省として、このような規格にあるものについては臨床上同等であ るということを表明されるのであれば、これは方針ですからとやかく言う筋合いではな いのですが、その裏付けというものがあるに越したことはない。漢方処方のエキスを公 定書に収載するのは、多分日本が初めてだろうと思います。その場合、諸外国からその 裏付けを求められたときに、やはりそれなりの答えができるような形であることが望ま しいと考えます。 ○早川部会長 二点あるわけですが、一つは製剤特性が複数あって、その製剤特性の試 験の仕方が違っていた場合、例えば別に規定するという形で承認事項にしてしまうとい ったときに、審査当局としては局方に収載されていて、製剤特性に関しては別に規定す ることになっていると。そこのところの製剤特性については、後発品が出てきたときに、 出そうとする会社は何かは別に規定しなければならないわけで、そこは当然審査の対象 になるわけです。そこで既存のものとの同等性を十分見るという理解でおりますが、そ れでよろしいですね。 ○事務局 部会長のおっしゃるとおりです。一点、漢方処方エキスについて補足ですが、 基本的に後発が出てきた場合は、標準製剤での比較のデータを取ることとしております ので、その中で他のものとある程度同等であることを確認した上で、承認を行っており ます。 ○早川部会長 生薬エキスについても、今挙がっている指標成分が、本当に有効性とさ れているものと直接リンケージしているかどうかというのは、まだまだ発展途上で研究 を続けていかなければいけないことだと思うのですが、生薬の場合、このようなことは ステップ・バイ・ステップで、分かっているところからきちんと押さえていくと。さら に、いろいろな技術や学問が進歩していけば、それに伴って、当然のことながら改正を 引き続き行っていくという理解かなと思います。 ○合田委員 今部会長が言われたとおりですが、あと一点補足させていただきますと、 処方そのものが局方上に載っている国はたくさんありまして、例えば中国は400処方ぐ らい載っていますし、韓国も載っております。エキスという形でと言われたのでちょっ と形は違いますが、処方としてはたくさん諸外国の公定書に載っているということを付 け加えさせていただきます。 ○早川部会長 関連して、あるいはさらに追加の御発言があればお願いいたします。 ○武田委員 最初に強調しておきたいのは、決して収載に反対はしていないという立場 で申し上げているわけですけれども、漢方処方エキスの場合、複数の処方が規定されて いますが、収載された後はそれを同じものとして取り扱うのでしょうか、それとも別の ものとして取り扱うお考えでしょうか。例えば、一番たくさん処方があるものは補中益 気湯が4種類、葛根湯も4種類。微妙な違いで天と地ということではありませんが、処 方の組成が違うので、指標成分の比が規定されている処方のうち、例えばペオニフロリ ン、シャクヤクの成分だと思いますが、その含量の幅がこの4処方の下限と上限を見て みると14と63で、4.5倍の開きがあると。そういった幅があるものを含めて、一つの 葛根湯エキスとして扱うのか、あるいは処方ごとに別扱いをするのか、既に方針があれ ばお聞かせください。 ○事務局 当然局方には一つのエキスということで載っておりますので、そういった意 味では一つの取扱いになるかもしれませんが、個別の品目については承認でその中身、 どのような構成生薬で、どのような量からなるものか、それに応じて指標成分の量がそ れぞれ規定されているので、そこの部分は個別に各承認書の方で規格として設定され、 担保されているという取扱いになるかと思います。 ○早川部会長 漢方の話はどれが有効成分か、あるいはその組合せがどのような形であ れば目的とする薬効に達するのか。薬効の評価そのものが非常に難しい部分もあるかと 思うのですが、ここに至った経緯は、それぞれの処方でそれぞれの目的を達していたと いう前提で、後は何かを指標にしながら成分をはっきりさせて、指標成分もはっきりさ せていこうという過程の中の表現形になっているのだろうという理解で、さらによりい い方向に向けて生薬委員会で審議をしていただければと思います。 ○富田委員 ジェネリックで一番批評されているのは今言われた溶出試験のところで、 生薬の方はベザフィブラートの場合などで溶出試験をちょっとやってみると、確かに結 構ばらつくのです。例えば今回の溶出試験法で、資料5の88ページに三局で決まったと 書かれています。今度は読んでこれをやろうとしたときにちょっと気になるのが、例え ば下から16行目、結果に影響を及ぼさないように、どのようにしろといった書き方が三 局の中で書かれているわけです。例えば「結果に影響を及ぼすような揺動及び振動が生 じないようにする」という書き方は、今までの薬局方では余り見掛けなかったのですが、 結果がいいかどうか分からない時点で実際は試験をするので、実験所、試験センターで やったときに、振動、揺動が結果に影響を及ぼすか、及ぼさないかというのをどうやっ て測るかは、試験をする方にとっては非常に気になることですが、範囲とか何か、注釈 で決めるようなことが三局方で話し合ったときに書かれたのでしょうか。それはもう主 観で、ある程度揺れていても影響はないだろうと判断したら、やってしまっていいとい うことですか。 ○青柳部会長代理 答えが非常につらいのですが、溶出試験というのは非常に難しくて、 この製剤については振動は影響しないが、この製剤は非常に敏感に影響するというのが あるものですから、いろいろな物理的パラメータをもってこうしなさいということは言 いにくいところがあります。結局、個々の製品に応じて、自分の会社の製品が振動に影 響するのであったら、最初からきちんとコントロールするように、注意しながら設定し てくださいという意味があります。では第三者的にどうしたらいいのかということは手 だては考えないで、取りあえず該当品目に関してこうしましょうというルールを決めて いると思うのです。どうしたらいいのかという方法論のアプローチまでは決めていない というところですが、ばらついてもいいのかということになってしまうと、それはまず いので、それぞれ個々の品目ごとにきちんと評価しながらやってくださいというところ に趣旨があるのです。そうすると、第三者機関については非常につらいところで、何を コントロール、どのような制御をしたらいいのかというのが難しいところですが、会社 にとってみれば、自社の製品ですから、これは振動に影響することは分かりますから、 それについてはできるはずだという精神で書かれています。 ○富田委員 例えばオレンジブックに載せるときに、幾つかの試験センターでやってみ ようと、ジェネリックをこの次にやって、データがばらついたときに、お前のところが 悪いのではないかと言われたときに、このようなことが書かれていると非常に気になっ てくるのです。もう少し何かが具体的に書かれているとうれしいという感想です。 ○青柳部会長代理 溶出試験の歴史をさかのぼっていくと、ばらつきとの戦いなのです。 いかにそれをコントロールするかということはハード的にも難しくて、にっちもさっち もいかない。溶出試験はそういうばらつきが大きい試験法だという理解の上で、合否判 定内で、レギュレーションの監視指導でも使っていただくしか手がないと。ある会社で 合格、ある会社で不合格を出しても、その値が本当に意味のある合否判定なのか見極め ながら運用しなければいけないという性格であることを、レギュレーションサイドも会 社も全部が理解しながらやらなくてはいけないという難しい試験法なのです。そうは言 っても、いい加減にやっていいというものではないというところで、他のものとは根本 的に性質が違うということです。 ○富田委員 オレンジブックなどをやるとき、アメリカのように、最初はバイオアベイ ラビリティが1個入っていると、結構後発品同じですよと、ある程度補正的になるので 傍証になると思うのですが、薬局方はどうしてもバイオアベイラビリティまでは突っ込 みたくない何か制約があるのでしょうか。 ○青柳部会長代理 本当の意味で溶出試験が生物学的同等性の完全な証明になっている かというと、完全になっているとは言えません。ただし、過去の例を見てみると、今品 質再評価でやっている4液性のところで溶出が同じだったのに、バイオアベイラビリテ ィが違ったという例はまだ見たことがない。例外的には難溶性薬品、徐放性製剤などで あるのですが、普通の多くの製剤では4液性で同等というのはまず問題ないと。今の医 薬品の場合、生物学的同等性は多分後発医薬品も品質再評価を行っていますので問題は ないと思うのですが、局方に載せる場合の問題点は、先発品と後発品が完璧に同じにな るということはあり得ない、どうしてもアローアンスがあって動くのです。そうすると、 先発の規格に後発を必ず合わせなくてはいけないのかという問題があって、同等だった ら必ずしも合わせる必要がないのではないかと。武田委員がおっしゃったように、多様 性のある製剤を局方の中でどのように一本化していくかという問題があります。  それから徐放性製剤でも二つありまして、ニフェジピンでも1日1回投与型と1日2 回投与型がある。それを同じ徐放性製剤として引っくるめて局方の中で扱うことができ るのか。片方は1日1回で、片方は1日2回、これを局方の中で同じイクイバレントの 徐放性製剤と言えるかと言ったら、イクイバレントにはならないと。そうすると、1日 1回型と2回型を局方の中でどのように収載していくのかという難しい問題が出てくる のです。それについては、局方の中の製品が厳密な意味で同等なのか、同等でない場合 はどうやって使い分けていくのか、あるいは表現していくのかという問題があります。 武田委員の御意見は、最近の製剤の多様性について、局方はどう答えていくべきかとい う宿題を投げ掛けられたものです。今答えはある程度同等なことを言っているのですが、 将来的にはもう少し答えをきちんとして作っていく必要があるのではないかと思ってお ります。 ○早川部会長 ほかにいかがですか。将来に向けての貴重な御提言を頂いたように思い ますが、それは各委員会で課題としてより良い局方に向けて御努力いただきたいという ことで、今回の議題1の第十五改正日本薬局方(案)については、先ほど三点ほど字句の 修正を頂きましたが、それで御承認いただいたこととしたいと思います。今後の予定に ついて、事務局からお願いいたします。 ○事務局 本件については今年の12月の薬事分科会で御審議いただきまして、その結果 を踏まえたものを来年3月末までに告示、4月1日に施行という予定になっております。 ○早川部会長 それでは審議事項から報告事項に入りたいと思います。事務局から説明 をお願いいたします。 ○事務局 まず、第十五改正日本薬局方の参考情報(案)についてです。参考情報そのも のは資料1-5の1,319ページからです。これは日本薬局方と一体として運用することに より、日本薬局方の質的向上や利用者の利便性向上に資することを目的として、医薬食 品局長通知として発出されているものです。今般、十五局の施行に伴い、製薬用水の品 質管理等5項目を新たに追加、錠剤の摩損度試験法1項目を改正する予定です。 ○早川部会長 ただいまの説明について、御意見、御質問等があればお願いいたします。 よろしゅうございますか。それでは次の報告事項について、事務局より説明をお願いい たします。 ○事務局 報告事項の二点目です。英文版の「第十四改正日本薬局方第二追補について」 です。第十四改正日本薬局方第二追補は昨年12月に告示され、今年1月から施行されて いるものです。これについて現在英文版を作成しているところで、事務手続が間もなく 終了する予定です。早ければ来月に、第二追補の英文版を発行したいと考えております。 ○早川部会長 ただいまの件について、何か御質問等ございますでしょうか。 ○武田委員 英文版の発行は以前にも部会で話題になったことがあるような記憶があり ますが、今回、国際調和の成果を反映したことが一つの目玉のようになっておりますけ れども、日局が調和を取り込んだということの国際的な認知を得るには、英文版の発行 が必須であると思います。もし、日局をせめてEP並にというお考えであるとすると、 告示と英文版が同時発行ということになりますが、追補の薄いものが告示後11か月、今 回は大改正ですからかなり分厚いものになりますが、これを6か月以内に欧米やアジア の諸国に行き渡るような手当てが望ましいと思いますので、厚生労働省におかれまして は今後とも英文版の早期発行について御努力をお願いいたします。 ○事務局 英文版発行というのは大きな課題の一つと認識しております。十五局の英文 版についても、できるだけ速やかに発行できるよう、至急スケジュールを調整していき たいと考えております。 ○早川部会長 英文版に関してほかに何かありますか。よろしゅうございますか。それ では次の報告事項について説明をお願いいたします。 ○事務局 資料10の「日本薬局方新規収載候補品目(案)について」を御覧ください。本 日、十五局の御審議をいただきまして、この後十六局に向けて作成基本方針、それを踏 まえて収載ルールを決定し、収載品目を決定し、原案を作っていくこととしております が、それらの方針、あるいは品目の確定までにはしばらく時間が掛かるかと思います。 それまでの間、取りあえず十五局の作成基本方針、収載品目ルールにのっとり、審議を するべき収載候補品目(案)について、現在総合機構において選定を行っているところで す。これはまだ案の段階で、具体的には2ページの別紙に掲げているような原薬及びそ れらの製剤を今考えているところです。スケジュールとしてはこの案について確定した 後、総合機構で案に対する意見募集を今月あるいは来月に行い、その後正式に新規収載 品目リストを来年早々に発表し、そのリストに基づき原案作成者へ原案作成の依頼をし ていく予定です。 ○早川部会長 ただいまの説明について、何か御意見、御質問等があればお願いいたし ます。 ○武田委員 例えば11の「軟膏等」、20番の「錠等」と2割ぐらいのものに「等」が 付いているのですが、これはどのような意味ですか。 ○機構 初めにこのリストの選定の基準を簡単に御説明いたしますと、先ほどの保健医 療上重要な医薬品の収載を積極的に行うという十五局の在り方に従い、過去3年間で後 発品が出たもの等をこの中に選んでおります。「等」と付いているのは、例えば1の「ア シクロビル錠等」でございますと、アシクロビル軟膏、錠剤、シロップ等の複数の製剤 があります。現在、機構からパブコメを行う際にはすべての剤形を挙げる予定ですが、 複数の製剤のものはここでは取りあえず「等」という形でまとめさせていただいており ます。ここには原薬、製剤等を合わせて100品目を挙げておりますが、「等」について それぞれの製剤を個別に示すと、大体150品目ぐらいになる予定です。 ○早川部会長 合田委員から何かありますでしょうか。 ○合田委員 新規収載候補品目は逐次増えるものだと思うのですが、増え方のスケジュ ールはどのような形でいくか教えていただけますか。生薬関係の場合には、特に原案の 作成の幹事会社といったものがあるわけではないので。生薬等委員会で既に具体的に議 論を行っているのでこれ以上はいくと思いますが。この中に順次加わって、また部会に 上がってくるという具合に考えてよろしいですか。 ○事務局 今回は化学薬品のみこのリストに入っております。ほかの生薬、生物薬品、 抗生物質などといったものについては、逐次リストに加わっていくことになっておりま す。あくまでもこのリストは十六局の基本方針を受けて、十六局の収載候補品目が決ま るまでの間、化学薬品については今委員会の方で審議をしなくてはいけない品目が大分 減ってきておりますので、もう少しいろいろ審議ができるということで、取りあえず化 学薬品のみ先に十五局の収載原則にのっとって出しているという状況です。今後、十六 局の作成基本方針が出た後、生薬、生物薬品等を含めて十六局へ向けての収載候補品目 リストというものを作っていきたいと考えております。 ○早川部会長 ほかに御意見等がなければ、以上で報告事項は終了です。本日予定して おりました審議、報告事項は終了いたしました。全般を通じてで結構ですが、もしさら に追加のコメント等がありましたらお願いいたします。 ○富田委員 学会で見ていると、そろそろ遺伝子組換えの生薬が出そうな雰囲気なので すが、組換えした生薬が出た場合、局方の方としてはこれとは全然別個に扱うのでしょ うか。 ○早川部会長 合田委員、何かお考えがありますか。 ○合田委員 具体的にそのレベルまで上がっているというのは知りませんけれども、生 薬自身をいかに良くしていくかという形の中から、遺伝子組換えのものを作るというこ とは確かにありますが、それが市場のルートに乗るといったことは、まだかなり先では ないかと我々は考えております。具体的に出てきた場合には、そのことについてどう対 応するかは、当然考えなくてはいけないと思います。基本的にそのような状態になると、 多分遺伝子の規定をどうするかという話から始まっていきます。生薬等委員会が今考え ているのは、少なくとも何らかの形で遺伝子で生薬を規定していくことも、十六局の方 針として考えていかなければいけないのだろうということです。 ○早川部会長 そのようなものが実用化されて、使用実態が医療上しばらくあって、そ れから局方の方に上がってくるという、組換え生薬が出てきたときには、スケジュール 的にはそのような感じでしょうか。 ○合田委員 生薬の場合、かなりの部分がまだ最終段階以前ですので、具体的にこれと いうことで議論を進めるのは難しいと思います。 ○富田委員 出てきた場合、生薬として基本的に認めることは認める、何かそこに制限 をかける…。ある遺伝子を削ったものを今作ろうとしているのです。ある成分をこうや ったときに副産物が出ると嫌なので、そこの遺伝子をノックアウトしたものを作ろうと しているのですが、そのような生薬が出てきたときには制限はしない、市場に出しては いけないといったことはしないのですか。 ○早川部会長 承認との関係があるだろうと思うのです。まず承認ですね。 ○事務局 今言われたようなものについて、基本的に医薬品で使われるということであ れば承認が必要になりますので、それでの承認が一番最初になるかと思います。その後、 医療上重要なものであるという収載のルールが局方にあるわけですが、そのルールにの っとり、そういったものが医療上非常に重要なものだということであれば、それをまた 局方に収載していくことも一つの方向としてあるかとは思います。まず承認されて、日 本で医薬品として流通することが一番目の段階ではないかと思っております。 ○早川部会長 よろしいですか。その他事務局から何かありますか。 ○事務局 次回の部会の日程ですが、今日報告の2番のところで挙げましたが、新規収 載候補品目(案)について、今総合機構でリストの案を作っているということでしたが、 これの確定ということで、来年早々辺りに本部会を開催させていただきたいと考えてお ります。日程の調整は後日させていただきますので、よろしくお願いいたします。以上 です。 ○早川部会長 以上をもちまして、本日の日本薬局方部会を終了いたします。委員の先 生方、どうも御苦労様でございました。   ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 上野(内線2738) - 1 -